JP2003513733A - 赤外線サーモグラフィー - Google Patents

赤外線サーモグラフィー

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JP2003513733A JP2001537618A JP2001537618A JP2003513733A JP 2003513733 A JP2003513733 A JP 2003513733A JP 2001537618 A JP2001537618 A JP 2001537618A JP 2001537618 A JP2001537618 A JP 2001537618A JP 2003513733 A JP2003513733 A JP 2003513733A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、一般的にはサーモグラフィーに関するものであり、詳細には赤外線サーモグラフィーを用いて、動物(ヒトなど)、植物、組織、細胞および無細胞系での熱発生応答を誘発する生理的事象および分子的事象をモニタリングする方法に関する。本発明の方法を用いて、多数の疾患、障害および症状に関して候補薬物のスクリーニング、同定および評価を行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は、一般的にはサーモグラフィーに関するものであり、詳細には赤外線
サーモグラフィーを用いて、動物(ヒトなど)、植物、組織、細胞および無細胞
系での熱発生応答を誘発する生理的事象および分子的事象をモニタリングする方
法に関する。本発明の方法を用いて、多数の疾患、障害および症状に関して候補
薬物のスクリーニング、同定およびランク付けを行うことができる。特に有利な
点として、それを用いて患者のリポジストロフィー(脂肪異栄養)症候群を診断
することができる。
【0002】発明の背景 熱力学は、仕事と熱との間の関係に関する科学である。動物または細胞におけ
る実質的に全ての化学反応または生理学的プロセスが、熱の吸収または発生を伴
って生じることから、系によって吸収または発生される熱は、行われた仕事量に
比例する。結果的に、発熱量(すなわち、熱発生)の測定を用いて、化学反応お
よび生理学的プロセスで使用されたまたはそれらによって生じたエネルギーを推
算することができる。
【0003】 細胞における熱発生を調節するタンパク質(例:脱共役タンパク質、UCP)の
発現を検出するのに、各種方法(例:ノーザン・ブロッティングまたはウェスタ
ンブロッティング)が利用可能であるが、それらの方法は労働集約型であり、タ
ンパク質活性を直接測定するものではない。グアノシン5′二リン酸(GDP)結
合アッセイおよび蛍光色素(例:JC-1またはローダミン誘導体)は、UCP活性の
直接の評価基準を提供する(Nedergaard and Cannon, Am. J. Physiol. 248 (3P
t 1): C365-C371 (1985); (Reers et al, Biochemistry 30: 4480-4486 (1991)
)。しかしながら、GDP結合アッセイはタンパク質の精製を必要とし、色素の使
用は、非選択的染色、細胞障害性、および細胞による色素の代謝のために制限さ
れる。より重要な点として、これらの方法はいずれも、熱発生におけるリアルタ
イムの変動を直接測定するものではなく、しかも侵襲的である。
【0004】 ボンベ熱量計およびマイクロ熱量計は、培養細胞(Bottcher and Furst, J. B
iochem. Biophys. Methods 32: 191-194 (1996))または化学反応によって発生
または消費された熱量を定量的に測定する手段を提供する。しかしながら、マル
チチャンネル熱量計の開発において近年進歩があったにも拘わらず、多数の同時
反応(≧60)における熱量変化を迅速に分析する方法は提供されていない。さら
に、細胞培養プレートまたは皮膚表面における表面積のような一定の表面積にわ
たる温度グラデーションも、熱量計を用いて測定することはできない。
【0005】 特定の身体部位(例:耳管)から放出される赤外線エネルギーの大きさを測定
することができる赤外線温度計が開発されている。しかしながらその装置は、単
離された細胞、組織または化学反応の熱発生を測定するのに用いることができず
、長期間にわたる多数のサンプルによる発熱量のリアルタイム測定値を与えるこ
とができない。さらにその装置は、広い表面積にわたっての画像を提供するもの
ではない。
【0006】 赤外線体脂肪計(infrared interactance instrument)も開発されている。赤外
線温度計とは異なり、その装置は、<1000nmの波長の近赤外線を放出するダイオ
ードを有する。その装置は近赤外線の吸収を測定することから、熱発生の正確な
測定値を提供するものではない。
【0007】 本発明は、動物、植物、組織および培養細胞などの単離した細胞におけるリア
ルタイムの熱発生を測定するための迅速な非侵襲的方法を提供する。本発明は、
受容体−リガンド結合、酵素触媒作用、および発熱量が変化する他の化学反応な
どの分子相互作用に応用されるものである。赤外線サーモグラフィーの使用に基
づいた本発明の方法を用いて、各種疾患、障害および症状を治療するための候補
薬物をスクリーニングして同定することができる。さらに、本発明の方法を用い
て、動物の組織内または臓器内での熱変化を肉眼観察可能にすることができ、こ
れは被験者体内での各種作用および反応をモニタリングする上でかなりの用途を
有し得る。
【0008】 HIV/AIDS患者を治療する医師の間で、レトロウィルス療法の使用に関連した
身体形状および代謝変化が次第に関心を集めつつある。代謝におけるその変化は
、腹部脂肪の増加および皮下脂肪貯蔵の減少を特徴とするリポジストロフィー症
候群によるものである(Carr A., et al. Lancet 353,2093-2099 (1999))。有
利な点として、本発明の方法を用いて、患者において、特に病態生理学的データ
が通常使用可能となるよりかなり前に、リポジストロフィーの診断を下すことも
できる。そのような診断法により、かかる症候群の進行のより早期のステップで
治療が可能になるものと考えられる。
【0009】発明の概要 本発明は、一般的には、赤外線サーモグラフィーを用いて生理的変化および分
子相互作用をモニタリングする方法に関する。赤外線サーモグラフィーは、動物
、植物、培養細胞、および無細胞系での化学反応における熱発生に各種薬物が及
ぼす影響を分析するための非侵襲的方法を提供する。本発明により、熱放散を変
化させる能力に関して化合物をスクリーニングすること、ならびに各種疾患、障
害および症状の治療に利用される化合物を同定することが可能となる。
【0010】 本発明は、被験者のある身体領域におけるリポジストロフィーをin vivoで診
断する方法であって、赤外線サーモグラフィーを用いて該身体領域の温度を測定
することを含んでなり、正常被験者の同じ身体領域の温度と比較して温度上昇が
あると、それが被験者におけるリポジストロフィーの存在を示すこととなる、上
記方法を提供する。
【0011】 本発明はさらに、被験者におけるプロテアーゼ阻害薬による治療の脂肪代謝異
常(dyslipidemic)作用をモニタリングする方法であって、赤外線サーモグラフィ
ーを用いて、プロテアーゼ阻害薬治療中の被験者の体温をモニタリングすること
を含んでなり、該被験者のそれ以前の測定値と比較して該被験者の温度上昇があ
ると、それが脂肪代謝異常作用を示すこととなる、上記方法を提供する。
【0012】 本発明はさらに、被験者の体内組織または臓器の温度を測定する方法であって
、該組織または臓器の近辺にある身体領域における該被験者の皮膚の一部を赤外
線不可視性ポリマーで置き換え、赤外線サーモグラフィーを用いて該組織または
臓器の該領域の温度を測定することを含んでなる、上記方法を提供する。
【0013】 本発明は、細胞を含まないサンプルにおいて熱力学的変化を引き起こす能力に
ついて被験薬をスクリーニングする方法であって、 i)赤外線サーモグラフィーを用いて、該サンプルの温度を測定すること; ii)該サンプルを被験薬と接触させること; iii)赤外線サーモグラフィーを用いて、ステップ(ii)から得られた該サン
プルの温度を測定すること; iv)ステップ(i)で得られた温度をステップ(iii)で得られた温度と比較
すること; を含んでなり、その際、ステップ(i)で得られた温度とステップ(iii)で得
られた温度との間に差があると、それは前記被験薬が前記サンプルにおいて熱力
学的変化を生じさせることを示すこととなる、上記方法を提供する。
【0014】 本発明は、in vitroで細胞サンプルにおける熱力学的変化を引き起こす能力に
ついて被験薬をスクリーニングする方法であって、 i)赤外線サーモグラフィーを用いて、該サンプルの温度を測定すること; ii)該サンプルと被験薬を接触させること; iii)赤外線サーモグラフィーを用いて、ステップ(ii)から得られた該サン
プルの温度を測定すること; iv)ステップ(i)で得られた温度をステップ(iii)で得られた温度と比較
すること; を含んでなり、その際、ステップ(i)で得られた温度とステップ(iii)で得
られた温度との間に差があると、それは前記被験薬が前記サンプルにおいて熱力
学的変化を生じさせることを示すこととなる、上記方法を提供する。
【0015】 本発明はさらに、サンプルにおける熱力学的変化を引き起こす能力について被
験薬をスクリーニングする方法であって、 i)赤外線サーモグラフィーを用いて、該サンプルまたは該サンプルの一部の
温度を測定すること; ii)該サンプルまたは該サンプルの一部と被験薬を接触させること; iii)赤外線サーモグラフィーを用いて、ステップ(ii)から得られた該サン
プルまたは該サンプルの一部の温度を測定すること; iv)ステップ(i)〜(iii)を少なくとも1回繰り返すこと; v)ステップ(i)で得られた温度をステップ(iii)で得られた温度と比較
すること; を含んでなり、その際、ステップ(i)で得られた温度とステップ(iii)で得
られた温度との間に差があると、それは前記被験薬が前記サンプルにおいて熱力
学的変化を生じさせることを示すこととなる、上記方法を提供する。
【0016】 本発明はさらに、サンプルにおける熱力学的変化を引き起こす能力について複
数の被験薬をスクリーニングする方法であって、 i)赤外線サーモグラフィーを用いて、該サンプルまたは該サンプルの一部の
温度を測定すること; ii)該サンプルまたは該サンプルの一部と被験薬を接触させること; iii)赤外線サーモグラフィーを用いて、ステップ(ii)から得られた該サン
プルまたは該サンプルの一部の温度を測定すること; iv)複数の異なる被験薬を用いて、個別にステップ(ii)〜(iii)を繰り返
すこと; v)ステップ(i)で得られた温度をステップ(iii)で得られた温度と比較
すること; を含んでなり、その際、該サンプルまたは該サンプルの一部に複数の被験薬の1
種を加えることで温度差が生じた場合、それは複数の被験薬の前記1種が該サン
プルにおいて熱力学的変化を引き起こすことを示すこととなる、上記方法を提供
する。
【0017】 本発明は、赤外線サーモグラフィーを用いて化合物または組成物の温度を経時
的に測定することを含んでなる、該化合物または組成物の物理的状態をモニタリ
ングする方法を提供し、さらには容器中に存在する化合物または組成物の温度を
測定することを含んでなる、該容器中に存在する該化合物または組成物の量を測
定する方法をも提供する。
【0018】 本発明は、被験薬のサンプルに及ぼす熱発生効果を確認する方法であって、 i)該サンプルまたは該サンプルの一部を第1の量の被験薬と接触させ、生じ
る温度を赤外線サーモグラフィーを用いて測定すること、 ii)異なる第2の量の被験薬を用いて、ステップ(i)を少なくとも1回繰り
返すこと; を含んでなり、その際、前記量の少なくとも一方で、前記サンプルにおいて熱発
生変化を生じる被験薬は、前記サンプルに熱発生効果を及ぼす薬物である、上記
方法を提供する。
【0019】 本発明はさらに、被験薬のサンプルに及ぼす熱発生効果を確認する方法であっ
て、該サンプルまたは該サンプルの一部を被験薬と接触させ、生じる温度を、赤
外線サーモグラフィーを用いて複数の時点で測定することを含んでなり、その際
、複数の時点の少なくとも1時点で前記サンプルにおいて熱発生変化を引き起こ
す被験薬は、前記サンプルに熱発生効果を及ぼす薬物である、上記方法を提供す
る。
【0020】 本発明は、所望の様式で被験薬に対して熱発生的に応答する能力について動物
をスクリーニングする方法であって、該動物を被験薬と接触させ、赤外線サーモ
グラフィーを用いて該動物の熱発生応答を測定し、所望の熱発生応答を有する動
物を選択することを含んでなる上記方法を提供する。
【0021】 本発明の目的および利点は、下記の説明から明らかになろう。
【0022】発明の説明 本発明は、単離された細胞、組織、植物、動物(例:ヒト)で起こる温度変化
などの分子相互作用時に生じる温度変化をモニタリングする手段としての赤外線
サーモグラフィーの使用方法に関するものである。赤外線サーモグラフィーを用
いて、酵素触媒反応時、より一般的には結合相手とのリガンド相互作用時におけ
る各種細胞、組織、植物および動物における熱発生に及ぼす各種薬物の影響を分
析することができる。そこで、赤外線サーモグラフィーを用いて、熱発生応答の
変化が関与するものなどの各種疾患、障害および状態を治療する上で好適な薬物
を同定することができる。
【0023】 「赤外線」という名称は、波長約2.5〜約50μmの電磁波、または別の表現で
は、周波数約200〜約4000/cm(cm-1または「波数」)を有する電磁波を指す。
赤外線(IR)およびIRスペクトルに精通した技術者には明らかなように、一般に
赤外線として特徴的な電磁波の周波数は、振動分子によって放出または吸収され
、そのような振動は、その周囲と比較した材料の熱状態に相当するものである。
温度が絶対零度より高い固体はいずれも、何らかの赤外線エネルギーを放射して
おり、約3500K(3227℃、5840F)以下の温度の場合、そのような熱放射は主と
して、電磁スペクトルの赤外線部分に入る。従って、体温と身体が放出する赤外
線の間にはかなり直接的な関係がある。本発明においては、3〜100μmの範囲で
の放射のモニタリングが好ましく、3〜15μmがより好ましく、3〜12μmが最も
好ましい(例:6〜12μm)。
【0024】 電磁波に精通している技術者にはさらに明らかなように、2.5 cm-1以下の波長
が、電磁スペクトルの「近IR」部分とみなされ、振動「倍音」および低レベルの
電子遷移を表す。本明細書で使用される「赤外線」という名称は、電磁スペクト
ルの「近IR」部分を包含するものではない。
【0025】 本発明によれば、赤外線イメージングシステム、有利には高分解能赤外線イメ
ージングシステムを用いて、例えば培養している細胞または組織からあるいは実
験動物からのリアルタイムの発熱量をモニタリングし、データ解析用の中央処理
ユニットによって画像が示される(図1および図2ならびに後述の実施例参照)
。好適なシステムの例としては、FLIRインフラレッド・システムズ社(FLIR Inf
rared Systems)製のもの(AGEMA 900またはQWIP SC3000)がある。同様に温度
は、リニア・ラボラトリーズ社(Linear Laboratories)製のもの(C-1600MP)
などの非接触型赤外線温度計を用いて測定することができる。これまでのところ
AGEMA 900およびC-1600MPのいずれも、通常は本発明の方法を実施するのに使用
されていない。しかしながら、当業者に公知の技術によってこれらの装置を調整
して、例えば5.0℃以上から0.000001℃以下の範囲、好ましくは1.0℃〜0.00001
℃または0.5℃〜0.0001℃の範囲、より好ましくは0.3℃〜0.0005℃または0.25℃
〜0.001℃の範囲、最も好ましくは0.2℃〜0.002℃の範囲での温度変化を測定す
ることが可能である(図1および図2ならびに後述の実施例参照)。
【0026】 1実施形態において本発明は、単離された細胞、組織または動物(霊長類など
(例:ヒト))における熱発生に及ぼす薬物の影響をモニタリングする方法に関
するものである。その方法は、i)赤外線サーモグラフィーを用いて、薬物への
曝露前に、細胞、組織または動物の所定の表面積が産生する熱量を測定する段階
、ii)前記細胞、組織または動物を薬物に曝露する段階(例えば、細胞または組
織を維持または増殖させている培地に薬物を加えることで、あるいは標準的な投
与方法を用いて動物に薬物を投与することで行う)、iii)赤外線サーモグラフ
ィーを用いて、薬物投与中および/または薬物投与後において、細胞、組織また
は動物が産生する熱量を測定する段階;ならびにiv)段階(i)と段階(iii)
で得られた測定値を比較する段階を有し;細胞、組織または動物の温度低下を生
じた薬物が熱発生の阻害剤であり、温度上昇を生じた薬物が熱発生の促進剤であ
る。
【0027】 本発明によってモニタリングすることができる細胞には、単離された天然細胞
(一次培養物および確立された細胞系など)および遺伝子操作細胞(例:単離さ
れた遺伝子操作細胞)などがある。その細胞は、懸濁液の状態であってもよいし
、あるいは単層または多層として固相支持体に結合しているものでもよい。好適
な支持体の例としては、プラスチックまたはガラス製のプレート、ディッシュま
たはスライド板、膜およびフィルター、フラスコ、管、ビーズならびに他の関連
する容器などがある。有利には、プラスチック製の複数ウェルプレートを用い、
96ウェルおよび384ウェル微量定量プレートが好ましい。好ましい細胞効能は、
接着細胞の場合で細胞100〜100000個/cm2であり、懸濁培養液の場合に細胞100〜
1000個/μLであるが、可能性として、いかなる細胞数/濃度も使用可能である
【0028】 本発明の方法に従ってモニタリング可能な単離天然細胞としては、真核細胞、
好ましくは哺乳動物細胞などが挙げられる。一次培養物および確立された細胞系
ならびにハイブリドーマ(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(Am
erican Type Culture Collection)から入手可能なものなど)が使用可能である
。具体的な例としては、脂肪由来の細胞または組織(例:含脂肪細胞およびそれ
の前駆物)、筋肉由来のもの(例:筋管、筋芽細胞、筋細胞)、肝臓由来のもの
(例:肝細胞、クッパー細胞)、消化系由来のもの(例:腸上皮、唾液腺)、膵
臓由来のもの(例:αおよびβ−細胞)、骨髄由来のもの(例:骨芽細胞、破骨
細胞およびそれらの前駆物)、血液由来のもの(例:リンパ球、線維芽細胞、網
状赤血球、造血始原細胞)、皮膚由来のもの(例:角質細胞、メラニン形成細胞
)、羊水または胎盤由来のもの(例:絨毛膜絨毛)、腫瘍由来のもの(例:癌腫
、肉腫、リンパ腫、白血病)、脳由来のもの(例:ニューロン、視床下部、副腎
および脳下垂体)、呼吸系由来のもの(例:肺、気管)、結合組織由来のもの(
例:軟骨細胞)、眼球、腎臓、心臓、膀胱、脾臓、胸腺、生殖腺、甲状腺および
内分泌調節に関与する他の臓器に由来するものなどがある。使用可能な細胞の種
類には制限はない。本発明の方法は、植物、真菌、原生動物およびモネラ界(例
:細菌)に由来する細胞に適用可能である。細胞は、確立された培養法を用いて
培養することができ、培養条件を至適化して、適宜に生存性、増殖および/また
は分化を確保することができる。
【0029】 本発明の方法によってモニタリング可能な遺伝子操作細胞には、温度調節、エ
ネルギーバランスおよびエネルギー源利用、増殖および分化、ならびに細胞が発
生する熱量を変える生理または代謝の他の状態に直接または間接に関与するタン
パク質を産生または過剰産生するよう操作された細胞などがある。そのような細
胞は、遺伝子操作原核細胞(モネラ界:例えば大腸菌)、それより高等または下
等な遺伝子操作真核細胞、あるいはトランスジェニック動物に存在するまたはそ
れから単離された細胞であることができる。高等真核細胞の例としては(例:植
物界および動物界からのもの)、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクショ
ンから入手可能な細胞系(例:CV-1、COS-2、C3H10T1/2、HeLaおよびSF9)など
が挙げられる。低級真核細胞の例としては、真菌(例:酵母)および原生動物(
例:粘菌および繊毛虫)などがある。細胞またはトランスジェニック動物を遺伝
子操作して、核受容体および転写因子(例:レチノイド受容体、PPAR類、CCAAT
−エンハンサー−結合タンパク質(CEBP)、ポリメラーゼ)、細胞表面受容体(
例:膜貫通および非膜貫通受容体、Gタンパク質共役型受容体、キナーゼ結合型
受容体)、膜輸送体およびチャンネル(例:脱共役タンパク質、糖輸送体、イオ
ンチャンネル)、シグナル伝達タンパク質(例:ホスホジエステラーゼ、シクラ
ーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ)ならびにウィルス(例:AIDSウィルス、ヘル
ペスウィルス、肝炎ウィルス、アデノウィルス)など(これらに限定されるもの
ではない)の各種タンパク質のいずれかを発現させることができる。遺伝子操作
細胞は、発現させるタンパク質をコードする配列、および機能しうる形で連結さ
れたプロモーターを含む構築物を特定の宿主に導入することで得ることができる
。適切なベクターおよびプロモーターを、所望の宿主に基づいて選択することが
でき、構築物の宿主への導入は、各種の標準的なトランスフェクション/形質転
換プロトコールのいずれかを用いて行うことができる(Molecular Biology, A L
aboratory Manual, second edition, J. Sambrook, E. F. Fritsch and T. Man
iatis, Cold Spring Harbor Press, 1989参照)。そうして得られた細胞は、確
立された培養法を用いて培養することができ、培養条件を至適化することで、導
入したタンパク質のコード配列の発現を行うことができる。
【0030】 本発明の方法を用いて、各種の無細胞、細胞、組織、植物、動物およびヒトに
基づく熱発生アッセイにおける薬物の効能、選択性、効力、薬物動態学および薬
力学に基づいて、各種疾患、障害および状態の治療における使用に好適な薬物(
例:医薬品または医薬候補剤)の同定、特性決定、評価および選択を行うことが
できる。例えば、赤外線サーモグラフィーを用いて、被験薬に関して異化剤また
は同化剤としての可能性についてスクリーニングを行うことができる。培養細胞
(例:脂肪細胞もしくは酵母などの一次細胞、またはC3H10T1/2間葉幹細胞、破
骨細胞もしくは脂肪細胞などの細胞系)、植物、動物またはヒト(医薬開発過程
の臨床試験における患者など)を被験薬で処理し、次に赤外線サーモグラフィー
を行って、熱符号(heat signature)における変化を測定することができる。熱
発生(細胞熱産生)を促進する薬物は異化作用薬として有用である可能性があり
、熱発生を抑制する薬物は同化作用薬として有用である可能性がある。
【0031】 さらに本発明を用いて、in vivoで被験者における身体領域でのリポジストロ
フィーを診断することができ、そのような方法は、赤外線サーモグラフィーを用
いてその身体領域の温度を測定する段階を含むものであり、正常被験者における
同じ身体領域と比較して温度上昇があれば、それが被験者においてリポジストロ
フィーがあることを示している。ある特に関連のある実施形態において、前記身
体領域は顔面であり、別の実施形態においてそれは頸後部である。その特定の診
断において、被験者は典型的にはHIV陽性とすることができる(図31参照)。
さらに、多くの場合その被験者は、過去にプロテアーゼ阻害薬投与を受けたこと
のある者である。
【0032】 本発明を用いて、被験者におけるプロテアーゼ阻害薬などの薬物療法による治
療の脂肪代謝異常作用をモニタリングすることもでき、その場合に、赤外線サー
モグラフィーを用いて薬物療法(例:プロテアーゼ阻害薬投与またはヌクレオシ
ド逆転写酵素阻害薬投与)時の被験者の体温をモニタリングすることを含み、そ
の被験者のそれ以前の測定値と比較して被験者体温に上昇があれば、それが脂肪
代謝異常作用を示すこととなる。多くの場合、関連する身体領域は顔面または頸
後部とすることができる。
【0033】 さらに、本発明を用いて、赤外線サーモグラフィーを利用して乾癬の診断、進
行および治療のモニタリングを行うことができる。その方法では、赤外線サーモ
グラフィーを用いて身体領域の体温を測定し、被験者における他の身体領域と比
較して特有の熱符号があれば、それが乾癬病変の存在を示す(図32参照)。
【0034】 さらに、本発明を用いて、被験者の体内の組織または臓器の温度を測定するこ
ともでき、その場合に、その被験者の組織または臓器に近位の身体領域の皮膚の
一部を赤外線不可視性ポリマーで置き換え、赤外線サーモグラフィーを用いてそ
の組織または臓器の領域の温度を測定する(図26AおよびB参照)。赤外線不
可視性ポリマーは、IR透過性ポリマーであればいかなるポリマーであってもよい
。そのような赤外線不可視性ポリマーの例としては、バイオクルーシブ(Bioclu
sive)接着剤(Johnson & Johnsonおよびサランラップ(Saran wrap)などのプ
ラスチックポリマー)などが挙げられる。IR透過を分析することで、選択したポ
リマーがIR透過性であるか否かを容易に確認することができる。その分析は、ポ
リマーのIR透過率を測定し、その定量的測定値をポリマー非存在下でのIR透過率
の測定値と比較することで行うことができ、所望のポリマーは、ポリマーが存在
しない場合の透過率にできるだけ類似した透過率を有するものである。
【0035】 本発明の方法を用いて、動物への被験薬投与の前後における体温を測定するこ
とができ、被験薬を投与したことで体温に差が生じた場合、それはその被験薬が
組織または臓器に対して熱力学的影響を有していたことを示している。さらにま
たは別の形態で、被験薬の1以上の用量を投与し(異なる動物にまたは同じ動物
に順次に)、各用量についての臓器の温度を測定・比較することで、被験薬の1
以上の用量について試験を行うことができる。さらに、被験薬投与後の1以上の
時点で温度を測定することで、経時的影響を確認することができる。
【0036】 代謝における変化以外に、熱発生における変化は、成長および分化における変
化を反映する場合がある。そこで本発明の方法を用いて、代謝、毒性、細胞増殖
、臓器発達および/または分化における変化に関連する疾患、障害または状態の
治療または予防での使用に好適な薬物(例:医薬品または医薬候補剤)の同定、
特性決定、評価および選択を行うことができる。
【0037】 赤外線サーモグラフィーによって確認される同化剤投与に対して感受性である
可能性のある病態生理の例としては、食欲不振、禿髪症、自己免疫、悪液質、癌
、加齢関連の代謝、糖尿病、移植片拒絶反応、成長遅延、骨粗鬆症、熱病、細菌
感染症およびウィルス感染症などが挙げられる。赤外線サーモグラフィーによっ
て確認される異化剤投与に対して感受性である可能性のある疾患、障害または状
態の例としては、肥満に関連する疾患、障害または状態(例:高血圧、脂肪代謝
異常および心血管疾患)ならびに成長亢進に関連する疾患、障害または状態(例
:癌、巨人症、ある種のウィルス感染症)などが挙げられる。赤外線サーモグラ
フィーを用いて確認される薬物を用いる治療に対して感受性である病態生理とし
ては、同化作用または異化作用の変化に一般に関連するものなどがあるが(例:
代謝疾患)、それに限定されるものではない。この手法は、男性勃起機能不全(
MED)、炎症、高血圧、消化管疾患、行動障害(CNS疾患)ならびに血流の変化に
関連する疾患などの他の疾患、障害および状態にも適用可能である。医薬の研究
・開発において本発明に従って分析可能な病態生理には制限はない(例:薬物の
効能、効力、毒性、薬物動態学および薬力学の分析)。
【0038】 本発明によれば、結合が熱発生応答を誘発する結合相手(蛋白性または非蛋白
性(例:核酸))へのリガンド(蛋白性または非蛋白性(例:核酸))の結合を
、赤外線サーモグラフィーを用いてモニタリングすることができる。前記リガン
ドおよび/または結合相手は、細胞に存在するものであってもよいし、あるいは
細胞のない環境(例:溶液)に存在してもよい。前記リガンドおよび/または結
合相手は、通常天然には存在しない合成化学物質であってもよいし、あるいは前
記リガンドおよび/または結合相手は、天然のタンパク質、核酸、多糖、脂質、
ホルモン、その他の天然物質または細胞などの天然物であってもよい。結合相手
によって生じる熱に対する被験薬(例:リガンド候補)の効果を、赤外線サーモ
グラフィーを用いて測定することができる。ある好適な方法には、i)結合相手
によって産生される熱量を測定する段階;ii)前記結合相手に被験薬を加える段
階;iii)リガンド候補(被験薬)と結合相手を混合した後に生じた熱量を測定
する段階;iv)(i)および(iii)での測定値を比較する段階があり、熱発生
を変化させる薬物が結合相手のリガンドである。さらに、結合相手へのリガンド
の結合によって生じる熱発生応答を変化させる能力に関して、被験薬のスクリー
ニングを行うことができる。そのような薬物は、前記リガンドおよび/または結
合相手のアロステリック調節剤、アゴニストまたはアンタゴニストでありうる。
そのようなスクリーニングは、i)赤外線サーモグラフィーを用いて、前記結合
ペアの第1のメンバー(リガンドもしくは結合相手)の前記結合ペアの第2のメ
ンバーへの添加で生じる熱量を測定する段階;ならびにii)前記結合ペアの第1
のメンバー、前記結合ペアの第2のメンバーおよび被験薬を加えることで生じた
熱量を測定する段階;ならびにiii)(i)における測定値と(ii)における測
定値を比較する段階を含むものであり、結合相手へのリガンド添加で観察される
熱発生を変化させる薬剤は、例えば前記結合ペアの一方または両方のメンバーに
結合することによるその相互作用の調節剤である。
【0039】 さらに本発明によれば、特定酵素の触媒作用速度を調節する能力について、薬
物のスクリーニングを行うことができる。その方法は、赤外線サーモグラフィー
を用いて、酵素をその基質に加えた際に生じる熱量を測定する段階;ならびに被
験薬、酵素およびその基質を加えた際に生じる熱量を測定する段階;ならびにそ
れらの結果を比較する段階を含みうる。熱産生を変化させる薬剤は、酵素の阻害
薬または活性化剤でありうる。そのような方法に従って用いることができる対照
には、被験化合物への酵素添加時(基質非存在下)および被験化合物への基質の
添加時(酵素非存在下)に生じる熱量の測定などがある。そのような対照を用い
ることによって、個々の添加から生じる熱産生に対する影響を測定することがで
きる。そのような手法を用いることで、基質として働く能力について被験薬のス
クリーニングを行うことができる。そのような薬剤は、他の公知の基質の非存在
下で酵素と混合した際に、熱産生を増加させることができる。
【0040】 別の実施形態において本発明は、上記のアッセイを用いて確認される薬物に関
する。上記アッセイに従って確認される薬物は、医薬組成物として製剤化するこ
とができる。そのような組成物は、前記薬物および製薬上許容される希釈剤また
は担体を含むものである。前記薬物は、投与単位剤形(例:錠剤またはカプセル
として)または液剤として配合することができ、特にそれを注射によって投与す
る場合には好ましくは無菌とする。用量および投与方法は、例えば患者、薬物お
よび所望の効果に応じて変動するものである。至適な用量および投与法は、当業
者であれば容易に決定することができる。
【0041】 別の実施形態において本発明は、各種生物(動物、植物、組織および細胞)で
の熱発生に及ぼす環境変化(例:飼料)および/または遺伝的背景の影響をモニ
タリングする方法に関する。その方法は、i)赤外線サーモグラフィーを用いて
、異なる環境条件下における(例:異なる飼料提供:高もしくは低含量の脂肪、
タンパク質もしくは炭水化物飼料)生物によって、あるいは異なる遺伝的背景を
有する生物(例:近交動物、動物群)によって産生される熱量を測定する段階;
ii)前記生物を各種薬剤に曝露する段階(例:プラシーボまたは熱発生剤;未投
与対照を含む);iii)赤外線サーモグラフィーを用いて、薬剤投与後に上記生
物により産生された熱量を測定する段階;iv)段階(i)と段階(iii)の測定
値を比較して、環境変化および遺伝的背景の影響を確認する段階を含みうる。
【0042】 本発明の方法を用いて、異なる環境(例:飼料)または遺伝子型が基底熱発生
または薬剤誘発熱発生にどの程度影響し得るかの確認、予測、特性決定、評価お
よび選択を行うことができる。生物の群、種類、系統、性別もしくは年齢、また
は使用可能な飼料もしくは環境条件に関して制限はない。その生物は、天然生物
(例:ハツカネズミ)、近交生物(例:AKR/Jマウス)または遺伝子操作生物(
例:トランスジェニックマウス)であることができる。この方法は、飼料、日周
期、日内リズム、海抜、気圧、湿度、温度、騒音、睡眠状況、物理的もしくは精
神的ストレス、および細胞もしくは生物の損傷に変化があった場合に、赤外線サ
ーモグラフィーを用いて、産生される熱量を測定する段階を含みうる。飼料は、
ほとんど規定できないか(例:カフェテリアでの食事)あるいは良好に特徴を表
すことができる(例:実験用飼料)。生物には、定期的に飼料を与えるか、自由
に摂取させることができる。熱発生を変化させる薬剤は、天然または合成、既知
または未知、安全または有毒、そして同化性、異化性または無効のものとするこ
とができる。熱発生(身体熱産生)を増大させる環境(飼料、その他)の変化、
遺伝子型または薬剤は、異化状態を確認する上で有用である可能性がある。熱発
生(身体熱産生)を抑制する環境(飼料、その他)の変化、遺伝子型または薬剤
は、同化状態を確認する上で有用である可能性がある。
【0043】 別の実施形態において本発明は、各種生物(ヒト、動物、植物、組織および細
胞)での薬剤−薬剤相互作用をモニタリングする方法に関する。その方法は、i
)薬剤への曝露前に、赤外線サーモグラフィーを用いて生物(細胞など)が産生
する熱量を測定する段階;ii)単一の薬剤および複数の薬剤に前記生物(細胞な
ど)を曝露する段階(例:培地を加える、あるいは注射、強制経口投与、局所塗
布などによって投与することにより行う)で;iii)赤外線サーモグラフィーを
用いて、単一薬剤投与後および複数薬剤投与後に、生物(細胞など)が産生する
熱量を測定する段階;iv)段階(i)および段階(iii)で産生された熱量にお
ける差を測定し、単一薬剤への曝露後に産生された熱量の差を、併用薬剤に曝露
した後に産生された熱量の差と比較する段階を含む。複数薬剤(単一薬剤に対す
るものとして)への曝露後に産生された熱量の差は、薬剤が相互作用するか、あ
るいは熱発生応答を誘発していることを示すものである。
【0044】 上記で示したように、単独で使用した場合と比較して、併用した際に熱発生に
変化を生じる薬剤は、薬力学的な薬剤−薬剤相互作用に関与することが示唆され
る。そのような相互作用は、生物、組織または細胞に対して有毒であるか有用で
ある可能性がある。従って、赤外線サーモグラフィーを用いて、異なる薬剤(例
:医薬品)が互いにどのように相互作用するかを確認、予測、特性決定、評価お
よび/または選択することが可能である。使用可能な薬剤、細胞、組織および生
物の種類および数に対しては制限はない。その薬剤は、天然、合成、アゴニスト
、アンタゴニスト、阻害剤、活性化剤、安全、有毒、同化性、異化性、公知また
は未知のものとすることができる。細胞、組織および生物は、植物、動物(例:
ヒト)、真菌、原生動物またはモネラ由来のものとすることができる。赤外線サ
ーモグラフィーを用いて、曝露期間、薬剤濃度、医薬組成物および使用薬剤数の
変更などの各種の薬物動態学パラメータおよび薬力学パラメータの変更時におい
て、細胞、組織および/または生物が産生する熱量を測定することができる。
【0045】 さらに別の実施形態において本発明は、脱毛(禿髪症)および毛髪再成長をモ
ニタリングする方法に関する。従って、赤外線サーモグラフィーを用いて、各種
の処置または環境刺激がどのように毛髪成長を変化させるかを確認、予測、特性
決定、評価および/または選択することができる。脱毛および毛髪成長を変化さ
せ得る処置または刺激の種類に制限はない。処置の種類には、食餌、運動、薬理
学的介入、放射線による介入または外科的介入などがあり、それらは侵襲的であ
ってもよいしまたは非侵襲的であってもよい。毛髪成長を変化させるための刺激
は、環境に天然に存在するもの(例:ラドンガス)であってもよいし、あるいは
環境汚染の結果(農薬などの汚染)であってもよい。そこで、赤外線サーモグラ
フィーを用いて、脱毛および毛髪成長に対する各種処置(天然または人工)の安
全性、効能および効力をモニタリングすることができる。
【0046】 別の実施態様において本発明は、医薬品の安全性プロファイルの評価方法に関
する。本実施形態によれば、薬剤が標的とする各種タンパク質(例:チトクロム
P450類など)、細胞小器官類(例:ミクロソーム類など)、細胞、組織および臓
器を単離し、各種濃度の薬剤で処理し、赤外線サーモグラフィーを用いて熱産生
をモニタリングすることができる。この方法は、i)所望の標的(例:薬剤の治
療効果に関与するタンパク質、細胞小器官、細胞、組織または臓器)における熱
産生の刺激または阻害に対する薬剤の効能および効力を測定する段階;ii)望ま
しくない標的(例:薬剤の毒性作用に関与するタンパク質、細胞小器官、細胞、
組織または臓器)における熱産生の刺激または阻害に対する薬剤の効能および効
力を測定する段階;iii)段階(i)および(ii)での効能および効力を比較す
ることで薬剤の選択性を決定する段階を含みうる。各種標的(例:タンパク質、
細胞小器官、細胞、組織および/または臓器)間での選択性向上を示す医薬品は
、改善された安全性プロファイルを有するものと予想することができる。この実
施形態と一致する点として、被験薬濃度の変動が結合相手および/または酵素触
媒反応によって生じる熱量に対して与える影響を用いて、複数の標的に対する選
択性および安全性プロファイルを評価することができる。所望の標的と望ましく
ない標的(例:細胞種、結合相手または酵素)との間の至適な選択性は、当業者
であれば容易に決定することができる。
【0047】 別の実施形態において本発明は、化合物の物理的状態および/または量を評価
する方法に関する。この実施形態によれば、この方法が固体(すなわち凍結液体
)から液体へ(すなわち融解)、液体から固体へ(すなわち結晶化)、液体から
気体へ(すなわち蒸発、気化)、固体から気体へ(すなわち昇華)の移行という
物性を変える化合物に関するものであることから、その方法を用いて化合物の物
理的状態を確認することができる。本実施形態は、開放容器、閉鎖系、加圧容器
(すなわち、吸入剤)中の化合物に適用可能であるが、それらに限定されるもの
ではない。本発明を用いて、液体の量を測定することができる。本実施形態と一
致する点として、変動させた各量の被験薬が固有の熱プロファイルを生じ、それ
によって、固有の熱特性から存在する薬剤の量を測定することができる。
【0048】 以上の説明から明らかな点として、本発明は実質的にあらゆる動物または動物
組織に関して利用可能である。例えば上記の方法を、霊長類(例:ヒト)および
一般に使用される実験動物(例:ラット、マウス、ハムスター、モルモットおよ
びウサギ)などの哺乳動物、ならびに鳥類、両生類および爬虫類および昆虫に適
用することが可能である。
【0049】 本発明の特定の態様について、以下の実施例でさらに詳細に説明するが、本発
明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0050】実施例 以下の実施例においては、下記の実験プロトコールおよび詳細を全体または部
分的に参照するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】 脂肪細胞 ヒト皮下脂肪細胞は、ゼン−バイオ社(Zen-Bio, Inc.; Research Triangle P
ark, NC)から購入した。C3H10T1/2クローン8線維芽細胞は、既報の方法に従っ
て脂肪細胞に分化させた(Lenhard et al., Biochem. Pharmacol. 54: 801-808
(1997), Paulik and Lenhard, Cell Tissue Res. 290: 79-87 (1997))。培養7
日後、リポタンパク質リパーゼおよびGPO−トリンダー(GPO-Trinder)試薬(ア
ッセイキット337-B、Sigma Diagnostics, St. Louis, MO)を細胞に加え(50μ
L/cm2)、溶解物を37℃で2時間インキュベートすることで、トリグリセリド
蓄積を測定した。波長540 nmに設定した分光計を用いて、光学密度を測定した。
既報の方法に従って、脂肪分解を測定した(Lenhard et al., Biochem. Pharmac
ol. 54: 801-808 (1997))。
【0052】 UCP2のクローニングおよび酵母形質転換 ヒト骨格筋cDNA(#7175-1)は、クローンテク(Clontech;Palo Alto, CA)か
ら購入した。公表された配列(GenBank U82819)の5′末端および3′末端が一
致しているオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、UCP2特異配列をサンプルか
らPCR増幅した。2 mMのMgSO4および5%DMSOを含む標準反応混合物中で、ベント
(Vent)ポリメラーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を用いた。サイク
ルパラメータは、94℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間であり、29回
繰り返した。サンプルをS-400スピンカラム(Pharmacia, Piscataway, NJ)に通
してから、大腸菌の形質転換用のベクターに連結した。クローンの信頼性をDNA
配列分析によって確認した。酵母での実験の場合、配列AAAAAACCCCGGATCGAATTCA
TGGTTGGGTTCAAGGCCA(配列番号1)(センス)およびCATTGTTCCTTATTCAGTTACTCG
AGTTAGAAGGGAGCCTCTCGGGA(配列番号2)(アンチセンス)を有するプライマー
を用いるPCRと、それに続いて配列TTAACGTCAAGGAGAAAAAACCCCGGATCG(配列番号
3)(センス)およびGAAAGGAAAAACGTTCATTGTTCCTTATTCAG(配列番号4)(アン
チセンス)を有するプライマーを用いる第2のPCRによって、UCP2コード配列の
増幅を行った。酵母株W303(ade2-1、his3-1、15leu2-3、112、trp1-1、ura3-1
に関してa/a同型接合体)での相同組換えにより、PCR産物をpYX233(R & D Syst
ems)にクローニングした。酵母形質転換体を、BSM−trp寒天(Bio 101, Vista,
CA)で選択した。酵母から大腸菌へ逆抽出したプラスミドの配列決定を行うこ
とで、正確なUCP2配列を確認した。
【0053】 UCP2発現および熱発生の分析を行うため、発現プラスミドを含む酵母をBSM-tr
p肉汁で24時間増殖させ、1回洗浄し、2%DL−乳酸(pH4.5)、1%エタノール
、0.1%カザミノ酸類および40 mg/mlアデニンを含むYPにA600=.001で接種した
。16時間後、ガラクトースを0.4%(w/v)まで加えることで培養を誘発した。UC
P2発現を評価するため、5%β−メルカプトエタノールおよび10%NuPAGEゲル(
Novex, San Diego, CA)で分離した可溶性タンパク質を含むNuPAGEサンプルバッ
ファー(Novex, San Diego, CA)中で、酵母(A600=0.1)を溶解した。UCP2ア
ミノ酸配列LKRALMAAYQSREAPF(配列番号5)を用いて合成ペプチドを合成し、そ
れを用いて抗体を形成した[Zeneca, Wilmington, DE]。発表されている方法(
Paulik and Lenhard, Cell Tissue Res. 290: 79-87 (1997))に従って、ウェス
タンブロット分析を行った。
【0054】 実験動物プロトコール 年齢および体重を一致させた雄+ob/+obマウス(Jackson Labs, Bar Harbor, M
E)を、約22℃(72゜F)および相対湿度50%、そして12時間の明−暗周期にて
、動物5匹/ケージで飼育し、固形飼料(NIH R & M/Auto 6F-Ovals 5K67, PMI
Feeds(登録商標) Inc., Richmond, Indiana)を摂取させた。41日齢から開始
した動物に、1日1回(午前8:00〜9:00)、0.05MN−メチルグルカミン(対
照)および5 mg/kg GW1929の0.05M N−メチルグルカミン溶液を強制経口投与し
た。投与2週間後、動物に1 mg/kgのCGP12177Aを投与し(腹腔内投与)、イソフ
ルオラン(isofluorane)で動物に麻酔を施した。赤外線サーモグラフィー画像
および温度計算値を、アジェマ・サーモビジョン(Agema Thermovision)900赤
外線システムを用いて記録した。データは、投与群当たり動物6匹以上で行った
実験からの平均+標準誤差として計算した。この研究は、実験動物管理規則(NI
H publication No.86-23、1985年改訂)ならびに動物の管理および使用に関す
る社内方針および関連する実施規定に準じて行われた。
【0055】 雄AKR/J、C57BL/6JおよびSWR/Jマウスは、ジャクソン・ラボラトリーズ(Jack
son Laboratories; Bar Harbor, ME)から、4〜8週齢のものを購入した。マウ
スには、サーウィットらの報告(Surwit et al., Metabolism 44(5): 645-651 (
1995))に規定のショ糖含有量の高い高脂肪飼料および低脂肪飼料を摂取させた
。これらの飼料で14日後、肩甲骨間柔毛を剃り、動物に1 mg/kgのBRL37344を投
与し(腹腔内投与)、イソフルオランで動物に麻酔を施した。ヌードマウス(BA
LB/C)は6〜8週齢であり、吸入剤を2回投与してから、熱プロファイル観察を
行った。MED実験および炎症実験のいずれにおいても、ルイスラット系(200−25
0g)を用いた。赤外線サーモグラフィー画像および温度計算値は、アジェマ・サ
ーモビジョン900赤外線システムを用いて記録した。
【0056】 IR透過性ポリマーの適用 IR透過性ポリマー適用に用いた動物はいずれも、イソフルオランで麻酔を施し
てから、手術によって背部皮膚を除去してIBATを露出させるか、あるいは腹腔を
開放して肝臓を露出させた。対象とする露出領域をIR透過性ポリマー(Johnson
& Johnson)で覆い、上記の方法に従って熱的プロファイルを得た。IBAT試験の
場合、水ビヒクル中0.0、0.01、0.1、0.3または1 mg/kgのBRL37344をマウスに投
与した(強制経口投与で0.25 ml、用量当たりn=20)。肝臓試験では、終夜絶
食させ、水ビヒクル中0、1、10、100または1000 mg/kgのグルコースを投与し
た(0.5 cc、強制経口投与)ob/obマウスを用いる必要があった。イソフルラン
によってマウスに麻酔を施し、手術によって開腹を行って肝臓を露出させた。露
出領域全体に、IR透過性ポリマーを載せた。肝臓領域のIR像が得られ、それを上
記の方法に従って分析した。LPS試験では、ob/obマウス(n=4)に、水ビヒク
ル中0.0、0.1、0.3または1.0 mg/kgのLPSを投与し(0.5 ml、腹腔内投与)、投
与90分後にイソフルランを用いて麻酔を施した。血清分析用に心臓穿刺によって
採血を行い、上記の方法に従って処理した。肝臓サンプルを液体窒素で新鮮な状
態にて冷凍し、mRNA分析用に−80℃で保存した。エタノール試験では、雌Spragu
e-Dawleyラット(n=6)に、1日2回で4日間にわたり生理食塩水ビヒクル中
0、0.1、0.5、1.0または5.0 g/kgのエタノールを投与した(3.0 ml、強制経口
投与)。5日目には、最終投与から1時間後に、イソフルランを用いて動物に麻
酔を施した。肝臓について、上記の方法に従ってIR透過性ポリマーを用いて画像
を得た。血清分析用に心臓穿刺によって採血を行い、上記の方法に従って処理し
た。肝臓サンプルを液体窒素で新鮮な状態にて冷凍し、mRNA発現用に−80℃で保
存した。d4T/抗酸化剤試験では、AKR/Jマウスに強制経口投与によって、1日2
回2週間にわたって、ビヒクル(0.1%Tween 80を含む0.5%メチルセルロース)
またはビヒクル中50mg/kgのd4Tまたは50mg/kgのアスコルビン酸/α−トコフェ
ロールという2種類の抗酸化剤を投与した。5日目に、上記の方法に従って動物
を処理し、肝臓の画像を得た。
【0057】 赤外線サーモグラフィー SWスキャナーおよび2〜5.4μmのスペクトル応答を検出する40×25レンズを
搭載したスターリング(Stirling)冷却アジェマ・サーモビジョン900赤外線シ
ステムAB(Marietta, GA)を用いて、熱発生を測定した。スキャナーには、精度
0.08℃の内部較正システムがあった。焦点距離は6 cmであった。画像は、16に設
定された再現機能または32に設定された平均加算機能を用いて取得した。データ
は、製造者の仕様書に従って(FLIR Infrared Systems AB, Danderyd, Sweden)
OS-9最新システムおよびERIKA 2.00ソフトウェアを用いて解析した。脂肪細胞の
サーモグラフィーは、インキュベータ(Queue Systems Inc., Parkersburg, W.
V.;QWJ500SABA型)を用いて、培養細胞の周囲温度を37±0.02℃に維持すること
で行った。酵母のスペクトル分析は、同じインキュベータシステムを用いて、30
±0.02℃で行った。細胞を被験薬(例:ロテノンなど)で処理した後、インキュ
ベータで温度を10分間平衡状態としてから、全てのマイクロタイタープレート注
入物についてリアルタイムの熱発生を測定した。可視波長での各種カラースケー
ルを用いて、記録された画像の温度変動を描出した。温度スケールは一定である
が、カラースケール像は変動し得るものであり、レベル制御および全長制御によ
って調節可能である。
【0058】 酵母および培養脂肪細胞の両方を用いて、各種赤外線検出システムパラメータ
を最適化した。酵母を用いる細胞力価測定実験から、密度A600=0.01での検出下
限および密度A600=0.1〜0.2での最大熱発生応答が明らかになった。C3H10T1/2
細胞懸濁液の熱活性は細胞8×103個/ウェルという低値で検出したが、最大シ
グナルは細胞1×105個/ウェルで得られた。予想通り、接着脂肪細胞の最大熱
発生応答が認められたのは、集密細胞を用いた場合であった。マイクロタイター
プレートの比較から、酵母懸濁液の熱発生測定には384ウェル方式が最も良く、
接着脂肪細胞の培養には96ウェル方式が最も好適であることがわかった。培養プ
レートの最外ウェルについては、プレート縁部では熱コンダクタンス上昇が生じ
たことから、検出システムから除外した。熱コンダクタンスが不均一になるメニ
スカス効果が認められたことから、径の大きいウェル(すなわち>1 cm)の方が
良くなかった。さらに、培地量が多すぎるとシグナルが低減し、培地量が少なす
ぎるとメニスカスが生じてバックグラウンドノイズが大きくなることから、ウェ
ル当たりの培地の量が非常に重要であった。最も良い結果が得られたのは、接着
脂肪細胞を含む96ウェルプレートおよび酵母懸濁液を含む384ウェルプレートの
いずれを用いた場合でも、50μL/ウェルを用いた場合であった。検出システム
およびプロファイル取得の対象物を密閉することが、それぞれ空気流および光に
よって生じる温度および反射率における変化(すなわち、熱ノイズ)を最小限と
する上で非常に重要であった。低い反射特性を示す材料(例:陽極処理アルミニ
ウム)、特に赤外線検出器の点から見てそうである材料が、熱プロファイル取得
時の外因性熱ノイズを低減する上で理想的であった(例:チャンバープレートな
ど)。最後に、温度平衡化時間の延長(すなわち>10分間)により、シグナル/
ノイズ比が向上した。
【0059】実施例1 赤外線サーモグラフィー装置の設計 本発明の方法は、有利には高分解能赤外線イメージングシステムおよびデータ
解析用の適切なソフトウェアを有する中央処理ユニットからなる装置を利用する
。好適なシステムの例としては、FLIRインフラレッド・システムズ社製造のもの
(AGEMA 900)またはリニア・ラボラトリーズ製造の非接触型赤外線温度計(C-1
600MP)である。図1には、無細胞系または細胞培養物の赤外線サーモグラフィ
ー用のそのような装置の模式図を示してある。温度変動を軽減するためのヒート
シンクを提供する非反射性材料(例:陽極処理アルミニウム)製の恒温室により
、培養プレートおよび周囲環境からの熱ノイズ(例:反射および空気流)が低減
される。恒温室の内部にはプレートホルダーを配置して、プレート全体での熱的
均一性を維持するようにすることができる。インキュベータを使用しても、周囲
温度の変動が防止され、細胞の応答および生存性が向上する。図1に示した模式
図では、カメラが培養細胞からのリアルタイム熱産生をモニタリングし、データ
取得用の中央処理ユニットおよびさらなるデータ解析用のソフトウェア解析手段
によって画像が記録される。図2には、マウスの肩甲骨間領域の赤外線サーモグ
ラフィー用装置の模式図を示してある。この装置は、赤外線カメラ、恒温室およ
びコンピュータインターフェースなど、図1の装置と同じ特徴を持っている。そ
れにはさらに、動物を麻酔状態に維持するための麻酔マニホールドを有する赤外
線スクリーニング台、例えば陽極処理アルミニウム製の精密に調節された加熱ブ
ロックおよび空気流を最小限に維持するための恒温室を有していても良い。
【0060】実施例2 培養細胞系における赤外線サーモグラフィー(例:脂肪細胞および酵母):熱発 生活性に及ぼす小分子の影響 ミトコンドリア熱産生のモニタリングへの赤外線サーモグラフィー使用のバリ
デーションを行う最初の試みの一環として、96ウェルマイクロタイタープレート
で培養したヒト脂肪細胞および384ウェルマイクロタイタープレートに懸濁させ
た酵母を、ロテノンまたはカルボニルシアニド・p−(トリフルオロメトキシ)
フェニルヒドラゾン(FCCP)で処理した。ロテノンはミトコンドリア電子伝達の
阻害薬であり(Ahmad-Junan et al., Biochem. Soc. Trans. 22: 237-241 (1994
))、FCCPはミトコンドリア呼吸の脱共役薬である(Terada, Biochem. Biophys.
Acta 639: 225-242 (1981))。次に、アジェマ・サーモビジョン900赤外線イメ
ージングシステムを用いて、細胞から産生された熱量を測定した(図1)。図3
における用量−応答アッセイに示したように、ロテノン処理によって、酵母(図
3A)およびヒト脂肪細胞(図3B)での熱発生が阻害された。それとは対照的
に、FCCPは、未処理細胞と比較して、両方の細胞種で熱産生を刺激した。動力学
的分析から、熱産生における変化は、いずれの薬剤でも細胞処理後10分で検出可
能であったことが明らかになった。この結果は、培養細胞または無細胞系に対す
る小分子(例:FCCP、ロテノン)の用量依存的熱発生効果を測定する上で、赤外
線サーモグラフィーが妥当であることを示している。
【0061】実施例3 熱発生に対するタンパク質過剰発現の影響 齧歯類においては、肩甲骨間褐色脂肪組織(IBAT)が、適応熱発生において重
要な部位であり(Himms-Hagen, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 208: 159-169 (19
95))、齧歯類の肩甲骨間領域にある。この組織は、陰イオン輸送体である脱共
役タンパク質(UCP1、以前はUCPと称していた;Ricquier et al., FASEB J. 5:
2237-2242 (1991))を発現するミトコンドリアを豊富に含む。UCP1は、IBATにお
いて酸化的リン酸化を呼吸から切り離すことから、ATPではなく熱発生を生じさ
せる。UCP1はヒトでは豊富ではないが、UCP2(Fleury et al., Nat. Genet. 15:
269-272 (1997))はヒトにおいて豊富に発現される。UCP2 mRNAは遍在的に発現
され、その発現は肥満で変化する(Enerback et al., Nature 387: 90-94 (1997
))。さらに、抗糖尿病薬であるチアゾリジンジオン類(例:トログリタゾン(t
roglitazone))は、恐らく核受容体PPARγを活性化することでUCP2発現を増加
させるものであり、それはUCP2がエネルギーバランス調節において非常に重要な
役割を果たすことを示唆するものである(Shimabukuro et al., Biochem. Bioph
ys. Res. Commun. 237: 359-361 (1997))。
【0062】 UCP1は齧歯類におけるミトコンドリア介在熱発生を調節するが、UCP2が同様の
役割を果たすことを示す直接の証拠はない。熱発生におけるUCP2の役割を評価し
異種タンパク質を発現するよう操作された細胞での生理的変化の検出への赤外線
サーモグラフィー使用の妥当性評価を行うため、UCP2遺伝子をヒトcDNAライブラ
リーからクローニングし、ガラクトース誘発可能な発現系を用いて酵母で発現さ
せた。図4Aに示したように、酵母でのUCP2発現により、UCP2のない細胞と比較
して熱発生増加が生じた。予想通り、ロテノンで細胞を処理することで、UCP2介
在熱発生が阻害された(図4Aおよび4B)。参考として、ウェスタンブロット
分析により、この細胞においてUCP2が発現されたことが確認された(図4C)。
発現および熱発生のピークは、ガラクトースによるUCP2合成誘発から3〜4時間
後に認められた。その結果は、異種タンパク質を発現するよう操作された細胞モ
デル(例:真菌(例:酵母)、SF9、CHO、ニューロスポラなど)でのミトコンド
リア介在熱発生に対する各種分子(例:UCP2などのレポーター遺伝子)の影響を
測定する手段として赤外線サーモグラフィーを使用することの妥当性を示すもの
である。
【0063】 異種タンパク質を過剰発現するよう操作された細胞における生理的変化を検出
する上での赤外線サーモグラフィー使用の妥当性をさらに評価するため、β
ドレナリン受容体受容体(β3AR)を、ヒトcDNAライブラリーからクローニング
し、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させた。β3AR受容体を過剰
発現する改変CHO細胞について、十分に特性決定されたβ3ARアゴニストであるイ
ソプロテレノールに対する反応性に関して、熱的プロファイルを得た(図5)。
図5に示したように、CHO細胞は用量依存的にイソプロテレノールに対して反応
性であり、それは細胞表面受容体(例:β3AR)のリガンドを評価、同定および
順位付けする上で赤外線サーモグラフィーを使用可能であることを示していた。
その結果はさらに、異種タンパク質を過剰発現する遺伝子操作細胞モデルを用い
て医薬品発見のための化合物を評価、選択および同定するのに使用可能な、ある
いはアンチセンス発現に応用可能な非侵襲的手段として赤外線サーモグラフィー
を使用することが妥当であることを示している。さらに、赤外線イメージングを
用いて、十分に特性決定されたプロテインキナーゼA(PKA)アゴニストである
フォルスコリンを投与した場合のCHO細胞の用量依存的応答などの細胞内キナー
ゼ活性の活性をモニタリングすることができる(図5)。そこで、赤外線サーモ
グラフィーを用いて、細胞内酵素に影響を与える薬剤をモニタリングすることが
できる。
【0064】実施例4 PPARγおよびβARアゴニストで処理した細胞の赤外線分析:細胞の成長および分 化への影響 燃料代謝を変化させる薬剤の薬理効果の分析に赤外線サーモグラフィーを使用
可能であるか否かを確認することに関心が生じた。トログリタゾンは、C3H10T1/
2細胞において同化作用を高め(例:脂質生成およびミトコンドリア塊)、異化
作用を低下させる(例:基底線脂肪分解および好気的呼吸)抗糖尿病薬である(
Lenhard et al., Biochem. Pharmacol. 54: 801-808 (1997))。この細胞に対す
るトログリタゾンの効果は、転写因子PPARγ/RXRの活性化と、それに続く幹細胞
の脂肪細胞への分化誘発の結果である(Lenhard et al., Biochem. Pharmacol.
54: 801-808 (1997), Paulik and Lenhard, Cell Tissue Res. 290: 79-87 (199
7), Lehmann et al., J. Biol. Chem. 270: 12953-12956 (1995))。そこで、赤
外線サーモグラフィーを用いて、C3H10T1/2細胞での熱産生に対するトログリタ
ゾンおよび5種類の構造的に関連のあるアゴニストの効果を調べ、細胞トリグリ
セリド蓄積に対するこれら薬剤の効果も、脂肪生成のマーカーとして測定した(
図6および7)。図6に示したように、トログリタゾン処理によって、これらの
細胞におけるトリグリセリド蓄積が増加し、それはこの薬剤が脂肪生成を促進す
るという所見と一致している(Lenhard et al., Biochem. Pharmacol. 54: 801-
808 (1997), Lehmann et al., J. Biol. Chem. 270: 12953-12956 (1995))。そ
れとは対照的に、高濃度のトログリタゾンその他の関連するPPARγアゴニストで
処理した細胞では熱産生が低下し(図7)、この細胞が脂肪細胞に分化するに連
れて、熱発生が抑制されることを示唆している。さらに、熱発生アッセイおよび
脂肪生成アッセイで調べた各種PPARγアゴニストの効能順位は、BRL49653(EC50 (μM)=0.063)〜GW1929(EC50(μM)=0.052)>トログリタゾン(EC50
μM)=0.316)〜ピオグリタゾン(pioglitazone)(EC50(μM)=0.389)>
シグリタゾン(EC50(μM)=0.123)>エングリタゾン(englitazone)(EC50 (μM)=>10.0)であった(図7)。幹細胞が脂肪細胞に分化するに連れてUC
P発現が増加することから(Paulik and Lenhard, Cell Tissue Res. 290: 79-87
(1997), Tai et al., J. Biol. Chem. 271: 29909-29914 (1996))、この所見
は、UCP発現上昇が、脂肪細胞における熱発生を刺激するには十分ではないこと
を示唆するものである。この知見は、UCP発現増加以外に、脂肪細胞における熱
発生刺激には他のシグナル(例:βAR刺激)が必要であるという示唆と一致す
るものである(Lenhard et al., Biochem. Pharmacol. 54: 801-808 (1997), Pa
ulik and Lenhard, Cell Tissue Res. 290: 79-87 (1997))。さらにこの結果は
、赤外線サーモグラフィーを用いて、トログリタゾンおよび他の核受容体リガン
ドなどの細胞の成長および/または分化に影響する薬剤の熱産生に対する薬理効
果(すなわち、効力、効能、動力学など)を調べることができることを示してい
る。
【0065】実施例5 PPARγアゴニスト投与ob/obマウスでの肩甲骨間熱発生と最低有効用量との相関 転写因子PPARγ/RXRを活性化する試薬は、抗糖尿病薬としての薬理的可能性
を有する。本明細書に記載の方法を用いて、赤外線サーモグラフィーを利用して
動物モデル系でのそのような薬剤の効果をモニタリングすることができる。この
適用は、医薬品の開発および試験において非常に重要である。
【0066】 遺伝子型ob/obを有するマウスは、糖尿病の動物モデルとして用いられる。そ
のような動物は、抗糖尿病性PPARγアゴニストGW1929xの活性を調べるのに用い
ることができる。図8Aには、ob/obマウス群のGW1929x投与の熱発生効果を示し
ている。対照マウスについては、前記薬剤を含まない薬剤媒体を用いた以外は、
実験群と同様にして投与を行った。予想通り、アッセイに先だって2週間にわた
って前記抗糖尿病薬投与を行うことで、対照動物と比較して、投与マウスにおい
てIBAT熱発生の低下が生じる(図8A)。動物全身でのこの熱発生アッセイは、
医薬品の有効性の決定に関し定量的な意味を有する。動物全身でのPPARγアゴニ
スト群の最低有効用量(MED)(Henke et al. J. Med Chem. 41,5020-5036 (199
8))は、細胞培養における赤外線サーモグラフィーによって検出される熱発生を
薬剤が抑制する能力と直接相関する(実施例4に記載の図8Bおよび図7)。そ
れゆえ、細胞培養プレートで調べたPPARγアゴニストの効能順序(BRL49653〜GW
1929>トログリタゾン〜ピオグリタゾン>シグリタゾン>エングリタゾン)は、
動物試験でのMEDの順位に対応する(r2=0.95)。これらの結果は、赤外線サー
モグラフィーを用いて、動物における熱発生または熱放散に変化を与える能力に
応じて、化合物を研究、確認、順位付けおよび選択できることを示している。
【0067】実施例6 β 3 AR介在異化作用および熱発生:代謝介在熱活性の測定 カテコールアミン類は、恐らくはUCP発現(Rehnmark et al, J. Biol. Chem.
265: 16464-16471 (1990))または活性を調節することで、体温および組成を調
節するものと仮説されている(Blaak et al, Int. J. Obes. Relat. Metab. Dis
ord. 17 Suppl 3: S78-S81 (1993))。脂肪細胞においては、カテコールアミン
類はβ−アドレナリン受容体類(βAR)を活性化して、細胞内cAMP経路が刺激さ
れる(Lafontan and Berlan, J. Lipid Res. 34: 1057-1091 (1993))。動物で
のノルエピネフリン注射によるβAR経路の刺激は、IBATでのUCP1 mRNA発現にお
ける低温誘発増加と類似している(Silva, Mol. Endocrinol. 2: 706-713 (1988
))。同様に、ノルエピネフリン(Rehnmark et al, Exp. Cell Res. 182: 7583
(1989))およびβARアゴニスト(Champigny and Ricquier, J. Lipid Res. 37
: 1907-1914 (1996))は、細胞培養においてUCP1発現を直接刺激する。それゆえ
、カテコールアミン類およびβARアゴニストの熱発生効果にUCP発現増加が介
在するものとしばしば仮定される。しかしながら、βARアゴニストが、UCP発
現増加のない場合に熱発生を誘発するか否かについては今後明らかにすべき点で
ある。
【0068】 βARアゴニストは、糖尿病および肥満治療用の治療薬候補剤である。それら
薬剤の作用機構には、代謝速度上昇が関与しているものと考えられているが(Sc
arpace, Ann. N. Y. Acad. Sci. 813: 111-116 (1997))、βARアゴニストが脂
肪細胞による発熱量を増加させることはまだ示されていない。従って、赤外線イ
メージングを用いて、培養脂肪細胞における熱発生に対するβ3ARアゴニストの
効果をモニタリングするのに使えるか否かを確認した。C3H10T1/2脂肪細胞での
熱発生は、選択的β3ARアゴニストであるCL316243および非選択的β3ARアゴニス
トであるイソプロテレノール処理によって刺激された。βARアゴニストである
R0363およびβARアゴニストであるアルブテロールは、これらの細胞での熱発
生刺激ではCL316243やイソプロテレノールほど有効ではなく、複数のリガンドの
選択性および効力を確認するのに赤外線サーモグラフィーを用いることが可能で
あることを示していた。βARアゴニスト類とは対照的に、ミトコンドリア電子輸
送阻害薬であるロテノンは、50 nMの各種βARアゴニストで処理した細胞の熱発
生を阻害した(図9)。タンパク質合成の阻害薬であるシクロヘキシミド(100
μm)は、この細胞でのβAR介在熱発生に対して効果がなかった。さらに、熱
発生は、CL316243による18時間の処理後より15分の処理後の方が大きかった(CL
316243の用量依存的熱発生効果があった(使用した用量範囲は0.8〜100nMであっ
た))。そこで、βAR誘発熱発生は、タンパク質(例:UCP)合成増加を必要
としない急性応答である可能性がある。しかしながら、他の研究者が示唆してい
るように、この結果はUCP合成調節におけるβARの役割を排除するものではな
い(Rehnmark ら, J. Biol. Chem. 265: 16464-16471 (1990), Lafontan and Be
rlan, J. Lipid Res. 34: 1057-1091 (1993), Silva, Mol. Endocrinol. 2: 706
-713 (1988))。
【0069】 対照として、脂肪分解に対するβARアゴニストの効果も測定した。用量応答分
析から、各種のβARアゴニストが熱発生アッセイおよび脂肪分解アッセイの両方
で同様のEC50を有することがわかった(表1)。各種βARアゴニストの効能を両
方のアッセイで比較した場合、0.99という相関係数が認められ、同じβARシグナ
ル伝達経路が脂肪細胞における脂肪分解と熱発生に介在していることが示唆され
た。総合すると、これらの結果をは細胞におけるリガンドによって変化する代謝
活性をモニタリングする上で赤外線サーモグラフィーを使用することを正当化す
るものである。通常これは、潜在的な医薬品候補の異化作用介在効果および同化
介在効果の両方の熱発生活性の測定にまで広がる。
【0070】
【表1】
【0071】実施例8 細胞表面受容体に対するペプチドの影響;酵素反応の測定 血管内皮増殖因子(VEGF)は、キナーゼ領域受容体(KDR)の結合および活性
化を介して、血管発達のかなり部分を制御する二量体ホルモンである。VEGFに応
答して、細胞は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ類(例:MAPKKK、S6キ
ナーゼ(p90rsk))などの一連のシグナル伝達分子を急速に活性化する。VEGFも
、心筋細胞における転写因子2のリン酸化および活性化を引き起こす(Ferrara,
N., Davis-Smyth T, Endocr Rev 1997 Feb; 18 (1) : 4-25)。この経路の分析
について現在利用可能な方法では、VEGFに対する急性応答を捉えることができな
い。VEGF活性化は急性のキナーゼ/ホスファターゼ活性を必要とし、それは最終
的に結合の加水分解および形成を必要とすることから、使用する装置の感度が十
分であれば、これらの酵素反応から発生する熱量を測定可能である。この仮説に
ついて調べるため、赤外線サーモグラフィーを用いて、VEGFで処理したヒト血管
上皮細胞(HUVEC)によって発生する熱量を測定した。図10に示したように、V
EGFはHUVEC細胞において熱発生を誘発し、細胞培養における酵素反応(例:キナ
ーゼ/ホスファターゼ活性)のモニタリングに赤外線サーモグラフィーを使用可
能であることを示している。このように、赤外線サーモグラフィーを用いて、酵
素反応に対する化合物の効力および効能を評価することが可能である。
【0072】実施例9 化学反応のモニタリング(例:リガンド/結合パートナー相互作用) 結合の形成および加水分解は、個々のリガンドに結合する受容体に固有のプロ
セスである。このプロセスは通常、発熱反応を必要とし、現在までのところ、マ
イクロ熱量測定法を利用してのみ測定されていた(Koenigbauer, Pharm. Res. J
un; 11 (6): 777-783 (1994))。これらの測定が、受容体/薬剤相互作用につい
ての結合等温線確立の基礎となる。酸とアルカリの混合が、結合の加水分解/形
成のプロセスから発生する発熱応答を誘発することから、酸/塩基滴定を用いて
、赤外線イメージングを用いて分子内/分子間結合の動力学を測定することが可
能であるか否かを確認した。図11に示したように、0.25 mMのNaOHを各種濃度
のHClと混合することで、赤外線サーモグラフィーによって測定した場合に、用
量依存的熱発生応答が示された。これらのデータは、赤外線サーモグラフィーが
結合パートナー(例:受容体)とのリガンド(例:医薬品)相互作用などの分子
事象を測定する上で有用であることを裏付けるものである。さらなる例としては
、医薬品−受容体、タンパク質−タンパク質、タンパク質−DNA、DNA−DNA、DNA
−RNAおよびタンパク質−炭水化物相互作用のモニタリングへの赤外線サーモグ
ラフィーの使用がある。
【0073】実施例10 不活性固体表面(例:コンビ−ケムビーズ)での触媒反応のモニタリング 本発明で提供される赤外線サーモグラフィーを用いて、高度に規定された無細
胞系での熱発生を測定することもできる。触媒はしばしば、コンビ−ケムビーズ
(Borman, Chem. Eng. News 74: 37 (1996))などの不活性固体表面への結合に
よって固定化して特性決定される。従って、コンビ−ケムビーズでの触媒反応の
熱分析を、本発明を用いて試みた。触媒活性コンビ−ケムビーズを、25 mLビー
カーまたは96ウェルマイクロタイタープレート中の溶媒に浸漬しながら分析した
。図12には、熱発生が、ビーズの入ったビーカー領域(図12A、矢印)(0.
3℃の温度差)または、不活性ではなく活性なビーズの入ったマイクロタイター
プレートのウェル(図12B)に局在していたことを示している。従って、赤外
線サーモグラフィーを、非侵襲的および非破壊的な方法でリアルタイムの触媒活
性を測定するのに適用可能である。
【0074】実施例11 エアロゾル誘発冷却の熱発生分析 薬剤送達に用いられるエアロゾルシステム、計量式吸入器(MDI)は、送達時
に装置での温度低下を生じる。この効果は、薬剤送達の効率において重要な示唆
を有するものである。チャンバ温度の低下は多くの場合、MDIチャンバおよびス
テム内での薬剤結晶化を生じるため、最終的には効果のない薬剤投与となる。赤
外線熱画像技術を用いて、薬剤送達時の温度低下をモニタリングし、その問題を
軽減または改善する改良装置の試験を行うことができる。そこで赤外線サーモグ
ラフィーを、MDIの駆動誘発チャンバ冷却の一手段としてテストした。図13A
には、0回、1回または5回の連続駆動後におけるMDIのリアルタイムでの熱プ
ロファイルを示してある。熱画像を、領域1−バルブステム/膨張チャンバの表
面;領域2−キャニスター中央の表面;領域3−計量チャンバが内部に入ってい
るキャニスターヘッドという3領域での温度変動について分析した。図13Bに
示した経時的な領域温度のグラフ表示は、駆動依存の温度低下が、具体的にはバ
ルブステム/膨張チャンバで起こることを示している。駆動ごとに、反復的に温
度降下が生じる。
【0075】 さらに、動物およびヒトでの吸入剤の生物学的利用能および生物活性について
は、測定および定量が困難な場合が多い。吸入剤の生物学的利用能の測定に使用
可能なアッセイでは、特定の組織(例:肺)での放射能標識吸入剤取り込みの測
定を行う。赤外線サーモグラフィーは、吸入剤化合物の生物学的利用能/生物活
性を測定する非侵襲的方法を提供する。そこで、赤外線サーモグラフィーを用い
て、ヌードマウスの胸部領域で吸入剤によって誘発される熱活性を測定した。図
13Cには、ビヒクルかアルブテロールのどちらかを含む吸入剤を投与したヌー
ドマウスの熱プロファイルを示してある。胴部領域温度のグラフ表示は、胴部温
度が吸入剤投与の2.5分後に上昇することを示している(図13D)。これらの
結果を総合すると、赤外線サーモグラフィーを用いて、装置内の吸入剤の運搬な
らびに動物モデルでの吸入剤の生物学的利用能/生物活性を非侵襲的に測定可能
であることがわかる。
【0076】実施例12 β ARアゴニストを投与したマウスでのIBAT熱発生測定が可能な赤外線サーモグ ラフィー βARアゴニストが培養脂肪細胞およびCHO細胞における熱発生を刺激する能
力は、上記の実施例3および6ならびに図5、8および9で示し、考察した。糖
尿病および肥満の治療における異化作用薬(例:βARアゴニスト類)使用が臨
床的に適用可能であることから、赤外線サーモグラフィーによって、動物の全身
におけるβARアゴニスト誘発効果を測定できることを示すことが重要である。
図14Aおよび14Bには、赤外線サーモグラフィーを用いて、βARアゴニス
トを負荷した動物での肩甲骨間褐色脂肪組織領域(IBAT)熱発生における用量依
存的および時間依存的上昇を測定可能であることが示してある。βARアゴニス
ト誘発熱発生が異化作用活性上昇を反映しているという仮説について、投与動物
における血清グリセロールの直接測定によって調べた。βARアゴニスト誘発熱
発生は、投与マウスにおける血清グリセロール上昇と相関している(相関係数=
0.92)。従ってそれにより、動物における異化作用薬のin vivo効果をモニタリ
ングする上での赤外線サーモグラフィー使用が妥当であることがわかる。
【0077】実施例13 各種の時点および薬剤濃度でのモノアミン再取り込み阻害薬を投与したob/obマ
ウスのサーモグラフ分析 モノアミン再取り込み阻害薬は、異化作用活性を刺激する薬剤群である(Stoc
k, Int. J. Obesity 21: 525-29 (1997))。代表的なモノアミン再取り込み阻害
薬であるGW473559Aの効果を、投与マウスの赤外線サーモグラフィーによってモ
ニタリングした。図15には、GW473559A投与ob/obマウスでのIBAT熱発生におけ
る用量依存的(図15A)および時間依存的(図15B)上昇が赤外線サーモグ
ラフィーによって測定されることを示してある。そこで赤外線サーモグラフィー
は、化合物の生物学的利用能および活性に関する非侵襲的、高感度および確実な
代替アッセイを提供するものである。
【0078】実施例14 体重変化を予測するための代替アッセイとしてのサーモグラフ分析 βARアゴニスト投与による糖尿病または肥満の抑制では、長期間にわたる治
療が必要となる場合がある(数週間または数ヶ月)。βARアゴニスト投与に望
まれる結果の一つとして、体重減量があり得る。図16に示したデータは、赤外
線サーモグラフィーを用いて、薬剤投与によって生じる体重減少を予測可能であ
ることを示している。AKRマウスを高脂肪飼料で飼育し、2週間にわたってプラ
シーボまたはβARアゴニスト(1日2回)を投与した。試験中、肩甲骨間領域
の赤外線サーモグラフィーによって測定される熱発生活性と体重減少の両方を測
定した。2週間後の体重減少は、肩甲骨間領域熱発生と相関があった(r=0.97
)。従って赤外線サーモグラフィーは、非侵襲的化合物選択のための前臨床使用
および臨床使用ならびに効力および効能の評価の両方のための非侵襲的代替アッ
セイを提供することができる。
【0079】 糖尿病患者および肥満患者における体重減少のための薬剤投与は、長期療法で
ある場合が多い。赤外線サーモグラフィーは、薬剤投与を行うと必ず、薬剤誘発
代謝変化を検出する。動物にモノアミン再取り込み阻害薬を投与した後の赤外線
サーモグラフィーによって記録されるIBAT熱発生における変化は、急性(投与=
時間;r=0.92)および慢性(投与=14日間、投与後2時間;r=0.94)の両方
の治療プロトコールにおける体重増の減少%において妥当な相関を提供する。赤
外線サーモグラフィーは、体重減少予測のための非侵襲的代替アッセイを提供す
ることから、労働集約型、長期間の、また費用のかかる減量研究を行わなくてす
む。
【0080】実施例15 食事誘発熱発生に対する遺伝的影響 かなりの証拠が、遺伝的および環境的因子が代謝に影響することを示している
。糖尿病、異脂肪症または肥満への遺伝的素因を有する個体における代謝速度を
変化させる環境的要素の一つは食事である。サーモグラフィーを用いて、各種遺
伝子型を有する動物での熱産生における薬剤誘発変化に対する食事の影響を測定
することが可能であるか否かは未知であった。そこで、3種類の異なる近交系マ
ウスAKR/J、C57BL/6JおよびSWR/Jを高脂肪および低脂肪飼料で14週間維持してか
ら、β−アドレナリン受容体アゴニストBRL37344を投与した。肩甲骨間領域で
産生される熱量を、赤外線サーモグラフィーを用いて投与の前後60分で測定した
。図17に示したように、肥満傾向のあるマウスAKR/Jは、相対的に高脂肪の飼
料を摂取させた場合にBRL37344に対する熱発生応答が比較的高かった。それとは
対照的に、肥満抵抗性マウスSWR/Jは、相対的に低脂肪の飼料を摂取させた場合
に熱発生応答が比較的高かった。高脂肪または低脂肪飼料でのC57BL/6Jマウスの
熱発生応答に差はほとんどなかった。これらの結果は、遺伝子型および環境変化
(例:飼料)が薬剤誘発発熱量変化に影響するかを測定する上で赤外線サーモグ
ラフィーを使用することが妥当であることを示している。それゆえ、この技術を
用いて、与えられた環境または遺伝的背景に対して、所望の特性を有する化合物
の効力および効能を選択、評価することができる。同様に、この技術を用いて、
与えられた医薬候補剤に対して、所望の特性を有する動物および環境因子を確認
、評価および選択することができる。
【0081】実施例16 ヒトでの食事誘発熱発生の赤外線サーモグラフィー カロリー摂取は、ヒトにおける代謝活性に大幅かつ急性の影響を与える。従っ
て、ヒト被験者の背領域の熱発生量は、一日の中の時間および被験者の食物摂取
パターンの関数として変動する。それは、食事前後の時点で背体温を赤外線サー
モグラフィーによってモニタリングされている患者のプロファイルに示されてい
る。図18Aは、昼食前後の時点におけるサーモグラフィープロファイルの定量
的分析を示す。図18Bは、3回の別々の機会に、男性被験者2名および女性被
験者1名で行った同様の測定値をまとめたグラフである(胴部ΔT)。このデー
タのセットは一貫性があり、再現性もあり、ヒトの赤外線サーモグラフィーが熱
発生のモニタリングに対し可能であることを示している。この方法は、食事調節
、薬剤投与、薬剤/薬剤相互作用ならびに薬剤/環境相互作用などのヒト患者に
対して適用可能な多くの状況をモニタリングする上で有用である可能性がある。
赤外線サーモグラフィーを用いた結果に基づいて、食事および環境における変更
および薬剤使用を処方することができる。
【0082】実施例17 ヒトにおける薬物誘発熱発生の赤外線サーモグラフィー 交感神経興奮剤であるエフェドリンは、齧歯類において強力な熱発生特性およ
び抗肥満特性を有することが報告されている(Astrup et al, Am. J. Clin. Nut
r. 42: 183-94 (1985))。体重減少および身体組成の測定値が、肥満に対する薬
理治療の有効性を確認するのに主として使用されるマーカーである。しかしなが
ら、これらのマーカーを利用する試験は、時間を要し、大規模で高コストとなる
傾向がある。これらの問題を回避するため、代替マーカーが開発されている。間
接的熱量測定法を用いて安静時代謝速度を測定するが、複雑であることを理由に
、あまり広くは使用されていない。グルコース、グリセリン、非エステル化脂肪
酸、トリグリセリド類などの生化学的マーカーが用いられているが、侵襲的であ
る。しかしながら、熱発生イメージングを用いて、ヒトにおけるエフェドリンの
特性が測定されたことはない。
【0083】 0.6〜0.7 mg/kgの用量でエフェドリンを投与してから60分後の赤外線イメージ
ングによって、ヒト被験者2名での熱発生に対するエフェドリンの効果を検出し
た。図19は、被験者AおよびBでのエフェドリン誘発熱発生応答を示す熱画像
である(ΔT℃はそれぞれ、0.63および0.46)。このようにして、赤外線サーモ
グラフィーを非侵襲的代替アッセイとして用いて、臨床試験における薬剤の効力
、効能、薬物動態、薬力学について評価することができる。
【0084】実施例18 db/dbマウスにおける薬物−薬物相互作用の赤外線サーモグラフィー 薬力学的薬物−薬物相互作用の結果は多様であり、生命を脅かす可能性のある
状況から救命療法までの幅があり得る。従って、薬物相互作用の迅速な評価方法
を確認する必要性が大いにある。多くの薬剤が代謝速度を変えることを考慮する
と、培養細胞および/または動物における熱産生に対する各種薬剤の相加的、相
殺的および/または相乗的効果があり得ると推定される。そこで、赤外線サーモ
グラフィーを用いて、in vivoでの熱発生に対する各種薬剤混合物の効果を分析
することが可能であるか否かを決定することが重要であった。またその一方で、
赤外線サーモグラフィーを用いて、前臨床試験および臨床試験の両方で、併用療
法の効力、効能および毒性を確認、評価することができる。
【0085】 GW1929は、リガンド活性化核受容体PPARγの転写活性を活性化することにより
、糖尿病動物における血糖管理を改善する薬剤である。CGP12177Aは、細胞表面
β−アドレナリン受容体の刺激を介して作用する抗肥満薬である(Kenakin, L
enhard and Paulik, Curr Prot Pharm; 1 (unit 4.6) : 1-36 (1998))。多くの
糖尿病患者が肥満であることから、上記の2薬剤(すなわちGW1929およびCGP121
77A)が薬力学的相互作用を調べることが重要である。そこで、db/dbマウスに2
週間にわたってGW1929を投与し、あるいはそれを投与しなかった。試験終了後、
動物にCGP12177Aを投与し、あるいは投与せず、肩甲骨間領域で産生された熱量
を赤外線サーモグラフィーを用いて測定した。図20に示したように、いずれか
一方の薬剤を投与した場合と比較して、GW1929とCGP12177Aの両方を投与した動
物での熱発生応答がより大きかった。従って、これらの結果は、薬力学的薬物−
薬物相互作用が熱産生をどの程度変化させるかを測定する上で、赤外線サーモグ
ラフィーの使用が妥当であることを示している。
【0086】実施例19 VEGFによる組織血管形成のサーモグラフィー分析 腫瘍は、腫瘍成長性を高める局所血管形成によって支持された、組織が活発に
成長および代謝を行う領域である。サーモグラフィーは、組織血管形成に関連す
るものなど、腫瘍関連の熱発生増加を検出することができる。血管内皮増殖因子
(VEGF)が腫瘍組織で認められ、その存在はVEGFが局在する組織における熱発生
増加に関連している。そこで、露出した表皮血管を有するヌードマウスモデルを
用いて、腫瘍検出および血管形成におけるサーモグラフィーの有用性を示した。
ヌードマウスには、VEGFペプチドまたは対照を投与し、次に両方の注射部位にお
けるサーモグラフィーイメージングを行った。図21は、VEGF注射の局所領域で
の熱発生増加を示すが、対照注射の局所領域ではそれを示さない、サーモグラフ
ィー画像を示す。このようにして、赤外線イメージングを用いて、組織血管形成
を変化させる薬物の効果をモニタリングすることができる。
【0087】実施例20 赤外線サーモグラフィーによる腫瘍温度のモニタリング 腫瘍温度は、腫瘍における代謝速度の指標である。腫瘍は、その最大代謝活性
をVEGFの存在に依存し、腫瘍温度はVEGFの利用能における変化を反映する。この
関係は、抗VEGF抗体または非特異的抗IgG抗体のいずれかを投与した腫瘍を有す
るマウスのサーモグラフィー分析によって示される。図22は、定量的サーモグ
ラフィー分析を示し、抗VEGF抗体の存在によってVEGFが中和されると、腫瘍温度
が低下することが明らかになっている。そこで、赤外線イメージングを用いて、
抗癌療法の効果をモニタリングすることができ、抗癌剤開発における補助として
用いることができる。
【0088】実施例21 赤外線サーモグラフィーによる禿髪症(脱毛)のモニタリング 脱毛は、各種療法の望ましくない副作用によって生じる場合があり(例:癌患
者の放射線療法、手術など)、また、加齢とともに自然に生じる場合があるが、
外科的または薬理的に毛髪成長を回復させることができる。毛髪は熱損失に対し
て保温状態を提供し、一定の体温を維持する上での補助手段となることから、赤
外線サーモグラフィーを用いて脱毛を測定可能であるか否かを調べることは重要
である。化学療法誘発禿髪症の治療および予防において進歩がみられないのは、
一部には、再現性のある動物モデルおよび脱毛を測定する定量的方法がないこと
が原因となっている。赤外線イメージングを用いて、化学療法誘発脱毛を定量的
に測定可能であるか否かを確認するため、既知の抗癌剤であるエトポシドを子宮
内に投与した新生ラットについて、脱毛の熱的プロファイルを得た。図23では
、熱画像(図23A)および定量的分析(図23B)を示してあり、それらは脱
毛の結果として正面および背面の両方で熱活性が高くなっていることを示してい
る。したがって、これらの結果は、禿髪症および脱毛に対する治療法を同定する
上で役立つ方法として、あるいは有害反応として脱毛を引き起こし得る薬剤を同
定する方法(例:毒性スクリーニング)として、脱毛を測定するのに赤外線サー
モグラフィーを使用することの妥当性を示している。
【0089】実施例22 男性勃起機能不全の薬物療法後のサーモグラフィー 男性勃起機能不全(MED)は、生殖器への血流を増加させる薬剤によって治療
可能である。局所的な血流量増加には、局所的熱発生の増加が伴う。このような
作用を有する、MEDを治療する薬剤に、ピナシジルがある。図24は、3.0 mg/kg
または0.3 mg/kgのピナシジルを投与してから2時間後のラット生殖器における
ピナシジル誘発熱発生増加が赤外線サーモグラフィーによって検出されることを
示す。従って赤外線サーモグラフィーは、MEDを適応症とする薬物候補の同定お
よび評価を行うため、ならびに、副作用として勃起を引き起こし得る候補物質を
同定するための定量的かつ非侵襲的方法を提供する。
【0090】実施例23 サーモグラフィーによる抗炎症剤の効果のモニタリング 関節炎は、関節の炎症を特徴とする疾患であり、抗炎症剤によって治療するこ
とができる。炎症反応は反応部位での熱発生増加を伴うことから、関節炎および
関節炎薬の効力を、サーモグラフィーによってモニタリングすることができる。
この応用例を示すため、正常動物の片足にペプチドグリカン多糖(PGPS)を2週
間注射することで、関節炎モデルを確立した。他方の足には投与を行わなかった
。関節炎誘発処置後の両足における赤外線サーモグラフィーは、処置していない
方の足と比較して処置したほうの足において熱発生レベルが高いことを示してお
り(図25A)、赤外線サーモグラフィーを用いて、薬剤が炎症を引き起こす能
力をモニタリングすることが可能であることを示している。その後、抗炎症薬プ
レドニゾロンを投与することによって、両足が投与後に同様のサーモグラフィー
プロファイルを有するように熱発生上昇が逆転する(図25B)。従って赤外線
サーモグラフィーは、炎症反応および抗炎症剤の効力をモニタリングし、しかも
関節炎適応症治療のための候補薬物の有効性をスクリーニング、選択および評価
する方法を提供する有用な手段である。
【0091】実施例24 IR透過性ポリマーを用いる体内臓器のIR分析 IRサーモグラフィーは表面温度を測定することから、理論的には、IBATを覆う
皮膚を除去しなければ、直接皮下を測定することはできない。しかしながら、皮
膚の除去は組織を環境の影響下に曝すため、制御されない蒸発や熱放散を生じる
。これらの望ましくない効果を克服するため、露出組織をIR透過性ポリマーで覆
った。図26Aは、IR透過性ポリマーで皮膚を置き換えることで、経皮的に測定
を行った剃毛マウス(「正常皮膚」)と比較して、蝶形IBATの解像度が高くなっ
たことが示されている。重要な点として、IR透過性ポリマーを施したマウスおよ
び「正常皮膚」マウスは、βARアゴニストBRL37344に対してほぼ同等の用量−
応答を示した(r=0.99、p<0.003)(図26B)。この結果は、IR透過性
包帯を用いた体内臓器の表面下熱画像が、生理的応答性に影響することなく、組
織描写(IR画像とCCD画像)を向上させるという仮説を裏付けるものである。
【0092】実施例25 IRサーモグラフィーを用いて測定可能な肝臓における熱発生の代謝による変化お よび薬剤誘発変化の測定 IR透過性ポリマーを用いて、体内臓器の熱画像を得ることができるか否かを確
認するため、グルコースを投与することで、絶食ob/obマウスにおける肝臓代謝
を刺激した。投与から90分後に手術によって露出させた肝臓にIRポリマーを乗せ
た。図27Aに示したように、グルコースを経口投与したマウスは、投与90分後
に、肝臓熱発生において用量依存的上昇を示している(図27Aおよび27B)
。さらに、1 g/kgのグルコースを投与することで、肝臓熱発生において時間依存
的上昇が生じ、それは90分でピークとなり、投与5時間後に対照レベルまで戻っ
た(図27C)。直腸プローブを用いた身体中心体温の測定値は、グルコース投
与動物において身体中心体温における上昇がごくわずかであることを示しており
(0.25℃、p=0.4(ANOVA))、それは熱発生増加はほとんどが肝臓特異的であ
ったことを示している。このデータは、肝臓での基礎代謝活性の測定におけるIR
透過性ポリマーの有効性を示すものである。
【0093】 本発明者らはさらに、本発明の新規体内臓器イメージング法が、肝臓毒性を測
定および予測する上で有用である可能性を検討した。この仮説について調べるた
め、雌Sprague-Dawleyラットに1日2回4日間にわたってエタノールを投与し、
第5日に手術で露出させた肝臓にバイオクルーシブ(Bioclusive)ポリマーを乗
せた。結果は、エタノールによって、肝臓熱発生に用量依存的上昇が生じたこと
を示している(図28Aおよび28B)。直腸プローブを用いて測定した中心体
温は、エタノール投与ラットにおいて変化しなかった(p=0.08(ANOVA))。
肝臓毒性の従来のマーカーである血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は対照レベルより高く
はなかったが(AST、p=0.3;ALT、p=0.4(ANOVA))、UCP2 mRNA発現は肝臓
熱発生と良好な相関関係にあり(r=0.95、p<0.01)、1日2回5日間1 g/kg
エタノールを投与した動物ではほぼ2倍に上昇した。これらの所見は、4週間に
わたってエタノール投与を受けたマウスでのUCP2 mRNA発現の2倍上昇を示した
最近の研究と良好に一致している(Rashid et al., Hepatology 29 (4): 1131-8
(1999))。
【0094】 エタノール誘発肝臓毒性の従来の評価基準は、脂肪症(脂肪肝)、血清トラン
スアミナーゼ類増加(ASTおよびALT)、線維症および肝硬変などがある。これら
のパラメータにおいて測定可能な上昇を達成するには、ラットに対して、4〜8
週間にわたり、エタノール投与と併用して、特殊な高脂肪飼料を摂取させなけれ
ばならない(Zhong et al., Transplantation Proceedings. 27 (1) : 528-30,
(1995); Tsukamoto et al., Am J Physiol 247 R 595-R599, (1984))。しかし
ながら、本発明の試験ではラットにはエタノールを投与しただけであり、肝臓熱
発生における検出可能な上昇が5日以内に検出された。これらの試験を総合する
と、IRサーモグラフィーが、エタノール誘発肝臓毒性の検出に関して、従来のマ
ーカーと比較して感度が高いことから、肝臓毒性の早期指標として使用可能であ
ることがわかる。
【0095】 興味深いことに、グラム陰性菌の細胞壁の成分である腸由来内毒素(リポ多糖
すなわちLPS)がアルコール性肝臓損傷に関与することが最近の証拠から示され
ている(Thurman et al., Am J Physiol, 275 G605-G611 (1998))。LPSが肝臓
熱発生を刺激するという仮説を調べるため、LPSの用量を増加させながらob/obマ
ウスに投与し、その肝臓のIR画像を投与90分後に得た。図29Aおよび29Bに
示したように、LPSを投与した動物では用量依存的に熱発生が増加した。さらに
、LPS投与は、TNFαおよびUCP2発現の増加を引き起こすことが知られている(Co
rtez-Pinto et al., Biochem Biophys Res Commun 251 (1) : 313-9 (1998); Fa
ggioni et al., Am J Physiol. 276, R136-42, (1999))。これらの実験は、LPS
誘発熱発生が、TNFαおよびUCP2 mRNA発現の両方と良好に相関していることを示
した(それぞれr=0.78、p<0.001およびr=0.77、p<0.01)。しかしなが
ら、LPS誘発肝細胞壊死の従来のマーカーであるアスパラギン酸アミノトランス
フェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清レベ
ルは、LPS投与90分後では未変化であった(ALT、p=0.94;AST、p=0.38(ANO
VA))。同様に、組織検査では、LPS投与90分後において炎症や壊死は示されず
、このことは、UCP2活性上昇などの初期代謝変化が、炎症性浸潤や肝臓壊死では
なく、LPS誘発肝臓熱発生の原因となっている可能性があるという仮説を裏付け
るものである。
【0096】 急性熱発生が慢性肝臓損傷と相関しているか否かを確認するため、ob/obマウ
スにそれぞれLPSを90分間および10時間投与した。投与90分後に測定した熱発生
は、投与10時間後のAST放出(図29B、r=0.91、p<0.01)およびALT放出(
r=0.76、p<0.01)と相関していた。さらに、肝臓の組織検査から、LPSが肝
細胞アポトーシスおよび肝臓壊死において用量依存的上昇を引き起こすことが明
らかになり、それは、熱発生におけるLPS誘発上昇が肝臓毒性より前に起こるこ
とを示している。
【0097】 肝臓毒性およびその後の毒性からの回復の測定におけるIRサーモグラフィーの
有用性をさらに示すため、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬d4Tを投与したマウス
からの肝臓について、レスキュー薬(アスコルビン酸およびα−トコフェロール
)の存在下および非存在下で、熱的プロファイルを得た。AKRマウスへのd4T投与
が、その動物において代謝変化(すなわち、乳酸、トランスアミナーゼ類および
酸化的ストレスの上昇)を誘発することが以前に明らかになっている。さらに、
アスコルビン酸およびα−トコフェロールなどの抗酸化剤の投与によって、これ
らの影響から回復した。従って、IRサーモグラフィーがd4T誘発毒性およびその
後の抗酸化剤による回復の測定に使用可能であるか否かを確認するため、AKRマ
ウスに50mg/kgのd4T(薬剤)および/または抗酸化剤(50mg/kgのアスコルビン
酸およびα−トコフェロール)(レスキュー薬)を5日間投与し、肝臓の熱的プ
ロファイルを得た。肝臓熱発生はd4T(薬剤)単独で上昇したが、抗酸化剤存在
下でのd4Tによって熱発生上昇は回復した(図30)。抗酸化剤の存在下および
非存在下でのd4Tによる肝臓熱発生で測定された変化は、血清学的エンドポイン
ト(すなわち血清乳酸)および遺伝学的エンドポイント(すなわち、酸化ストレ
スおよび肝臓代謝遺伝子における変化)の両方によって測定される変化と一致し
ている。しかしながら、血清学的および遺伝学的発現エンドポイントにおける測
定可能な変化が起こるまでに、少なくとも2週間を要する。従ってこれらの試験
は、IRサーモグラフィーが薬剤誘発肝臓毒性の検出に関して、従来のマーカーよ
り感度が高いことから、肝臓毒性の早期指標として使用可能であることをさらに
示すものである。総合するとこれらのデータは、肝臓などの体内内臓のIRサーモ
グラフィーが、代謝活性における急性の薬剤誘発変化および/または代謝物誘発
変化を測定するものであるという仮説に一致する。
【0098】実施例26 リポディストロフィーについての臨床的代替法/診断法としてのIRサーモグラフ ィー IRサーモグラフィーは、ヒト被験者が関与する利用分野において大きい可能性
を有する。その可能性を評価するため、代謝活性における変化を示す被験者で症
例試験を行った。レトロウィルス療法の使用に関連する体型および代謝の変化が
、HIV/AIDS患者の治療を行う医師の間で懸念となりつつある。代謝におけるこ
れらの変化は、腹部脂肪の増加および皮下脂肪貯蔵の喪失を特徴とするリポディ
ストロフィー症候群によるものである(Carr A., et al. Lancet 353,2093-2099
(1999))。その症状は代謝活性における変化を反映することから、IRサーモグ
ラフィーは、熱プロファイルに基づく代謝活性変化に関して患者のスクリーニン
グを行う非侵襲的方法を提供することができる。従って、リポディストロフィー
の代替マーカーとしてのIRサーモグラフィーの使用について調べるため、正常患
者の熱プロファイルとHIV療法を受けているリポディストロフィーと診断されたA
IDS患者の熱プロファイルを比較する症例試験を行った。図31には、HIV患者と
比較して正常者の熱プロファイルに大きい相違があることが示されている。熱パ
ターンにおける変化は、患者胴部の代謝活性における変化と一致している(すな
わち、顔面における脂肪消費=熱発生増加;腹部での脂肪再分配=熱発生低下)
。総合するとこの症例試験は、IRサーモグラフィーを、リポディストロフィーの
進行を診断およびモニタリングする臨床的代替手段として使用可能であることを
示唆している。IRサーモグラフィーによって得られるデータから、それに従って
医師は、患者の治療法を処方および/または変更することが可能となる。
【0099】実施例27 乾癬の臨床的代替法/診断法としてのIRサーモグラフィー 乾癬は、EGF/EGFR系の過剰発現の結果として生じると考えられており、角質細
胞増殖および表皮過形成の調節機能不全を生じる(Elder JT et al., Science (
1989))。乾癬の主な治療法の一つである、PUVAとも称されるソラレン(psorale
ns)とUVA光の併用が、EGF細胞結合およびEGFRチロシンキナーゼ活性の強力な阻
害薬であることが明らかになっている(Laskin JD et al., Proc. Natl Acad. S
ci. USA, (1986))。未制御の細胞増殖および表皮過形成の乾癬症状は、皮膚表
面での代謝活性における変化として反映され得る。従って、熱プロファイルに基
づいて、IRサーモグラフィーは、代謝活性における変化(すなわち、乾癬プラー
ク)に関して患者のスクリーニングを行う非侵襲的方法を提供することができる
。従って、乾癬に関する臨床的代替手段としてIRが使用可能であるという仮説を
調べるため、乾癬と診断された被験者について熱プロファイルを得る症例試験を
行った。図32には、乾癬病変の熱パターンにおける相違を示してある(矢印、
1)。熱パターンにおける変化は、患者の乾癬病変の代謝活性における変化と一
致している(すなわち、過形成亢進=熱発生増加、図32(1))。総合すると
、この症例試験は、乾癬進行の診断およびモニタリングのための臨床的代替手段
としてIRサーモグラフィーが使用可能であることを示唆している。IRサーモグラ
フィーによって得られるデータによって医師は、それに従った患者の治療法を処
方および/または変更することが可能となる。
【0100】 上記で引用の文書はいずれも、参照によってその全体が本明細書に組み込まれ
るものとする。
【0101】 本開示の内容から当業者には、本発明の真正の範囲を逸脱しない限りにおいて
、形式および詳細における各種変更を行うことが可能であることは明らかであろ
う。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 培養細胞における赤外線熱発生のイメージングに使用するのに好適な装置の模
式図である。1=赤外線カメラ;2=細胞培養インキュベータ(37±.02℃);
3=恒温室;4=プレートホルダー;5=コンピュータインターフェース。
【図2】 生存動物における熱発生のイメージングに使用するのに好適な赤外線サーモグ
ラフィー装置の模式図である。1=赤外線カメラ;2=恒温室;3=加熱パッド
(37℃);4=コンピュータインターフェース;5=肩甲骨間褐色脂肪組織(IB
AT)。
【図3】 グレースケール指数またはグラフィカル数値軸を用いて表した、ロテノンおよ
びFCCPで処理した酵母(図3A;384ウェルプレート)およびヒト脂肪細胞培養
物(図3B;96ウェルプレート)の赤外線サーモグラフィーデータ(ロテノン=
−○−;FCCP=−△−)を示す図である。
【図4】 脱共役タンパク質2(UCP2)を発現する酵母細胞のサーモグラフィー分析(図
4Aおよび4B)および酵母細胞におけるUCP2発現の分子分析(図4C)を示す
図である。
【図5】 フォルスコリン(−□−)またはイソプロテレノール(−○−)存在下でβ AR受容体を過剰発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)における熱発
生の赤外線サーモグラフィー分析(ブランク=−△−)の図である。
【図6】 脂肪細胞におけるトリグリセリド蓄積(−○−)および熱発生(−△−)の分
析を示す図である。
【図7】 インシュリンおよび9−シスレチノイン酸存在下での数種のペルオキシソーム
増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニストについての用量応答曲線を表す分
化性脂肪細胞の赤外線サーモグラフィー像である。
【図8】 PPARγアゴニストであるGW1929 で処理したob/obマウスの肩甲骨間領域の赤外
線サーモグラフィー分析(図8A)、およびマウスでのサーモグラフィー信号と
各種PPARγアゴニストの最小有効用量(MED)との間の相関(図8B)(r=0
.954)をまとめて示した図である。
【図9】 脂肪細胞におけるβARアゴニスト(50nM)誘発熱発生のロテノン感受性を示す
図である。
【図10】 血管内皮増殖因子(VEGF)の存在下(密な灰色バー)および非存在下(斜線を
施したバー)での一次ヒト表皮細胞(HUVEC細胞)の10分後の赤外線サーモグラ
フィー分析を示した図である。
【図11】 HClにNaOHを添加した後の化学反応の赤外線サーモグラフィー分析を示す図で
ある。
【図12】 25mLビーカー中(図12A)(1=バルク溶媒;2=活性ビーズ;3=O−リ
ング)および96ウェルマイクロタイタープレート(図12B;不活性および活性
ビーズ)でのコンビケム(combi-chem)ビーズ上での触媒反応の赤外線サーモグ
ラフィー分析を示す図である。
【図13】 定用量吸入器(MDI)(図13A;駆動0、1および5)の5連続駆動の途中
およびその後(図13B)における赤外線サーモグラフィー分析を示す図と、吸
入薬アルブテロールを投与したヌードマウスの赤外線サーモグラフィー分析を示
した図(図13C)、ならびにアルブテロール活性の動力学を示すその後の胸部
領域の定量データ(図13D)を示す図である。
【図14】 用量応答曲線を示す、マウスの肩甲骨間熱発生の赤外線サーモグラフィー分析
ならびにβARアゴニストを投与した後の動力学的データを示す図である(1.0
mg/kg=−○−;0.1 mg/kg=−□−;0.01 mg/kg=−△−)。
【図15】 ob/obマウスの肩甲骨間熱発生の赤外線サーモグラフィー分析であり、モノア
ミン再取り込み阻害薬GW473559A投与後の用量−応答(図15A)および動力学
的データ(図15B)を示す図である(10.0 mg/kg=−○−;5.0 mg/kg=−
□−;1.0 mg/kg=−△−)。
【図16】 β3ARアゴニストを投与したマウスでの肩甲骨間熱発生と体重減少とを相関さ
せたグラフである(IBAT熱発生=バー、2週間体重減少=−○−)(r=0.97)
【図17】 肩甲骨間熱発生に関する19週齢齧歯類動物モデルのβAR介在熱発生に対する
遺伝的背景および飼料の影響について特徴付けを行うための赤外線サーモグラフ
ィー使用を示すグラフである(低脂肪飼料=密な灰色バー;高脂肪飼料=斜線バ
ー(飼育14週の動物))。
【図18】 ヒトにおける食事誘発熱発生の赤外線サーモグラフィー分析を示す図である。
図18Aは背部(dosal)体温−時間を示す図であり;図18Bは昼食前後での
男性2名および女性1名の平均背部体温差を示す図である(平均=異なる3〜5
日/被験者)。
【図19】 エフェドリンを投与したヒト(被験者Aおよび被験者B)での薬剤誘発熱発生
の赤外線サーモグラフィー分析を示す図である(左=0分間;右=60分間)(用
量=0.6〜0.7 mg/kg−ΔT℃(背中全体=被験者Aで0.63および被験者Bで0.4
6))。
【図20】 ob/obマウスでの肩甲骨間熱発生に影響を与える2種類の薬剤βARアゴニス
トCGP12177(腹腔内投与1 mg/kg)およびPPARγアゴニストGW1929の間の相互作
用に関する赤外線サーモグラフィー特性決定を示す図である(1=肩甲骨間領域
)。
【図21】 ヌードマウスでのVEGFペプチド誘発熱発生活性の赤外線サーモグラフィー分析
を示す図である(1=VEGF;2=対照)。
【図22】 腫瘍温度に及ぼす抗VEGF抗体の影響についての赤外線サーモグラフィー分析を
示す図である。
【図23】 マウス新生仔における毛髪減少に対する子宮でのエトポシド投与(6 mg/kg)
の効果に関する赤外線サーモグラフィー分析を示す図である。図23Aは、0日
目、3日目および5日目に得られたサーモグラフィー像を示す図である。図23
Bは、胴部ΔT(℃)−投与後時間(日数)を示す図である(背面=オープンバ
ー、正面=密な灰色バー)。
【図24】 ラット交尾器におけるピナシジル誘発熱発生変化についての赤外線サーモグラ
フィー分析を示す図である(経口投与の2時間後)。
【図25】 プロテオグリカン多糖(PGPS)によって誘発され(図25A;1=非関節四肢
;2=関節四肢)、6 mg/kg経口プレドニゾロンによって軽減される(図25B
)(ビヒクル=HPMC+0.1%TW80;経口)四肢炎症についての赤外線サーモグラ
フィー分析を示す図である。
【図26】 図26Aは、皮膚を除去し、β−アドレナリン受容体アゴニスト投与後にIB
AT 全体にIR透過性ポリマーを施したマウスの肩甲骨間領域についての赤外線サ
ーモグラフィー分析を示す図であり;図26Bは、剃毛を行った(円形)マウス
または皮膚を除去し、各種濃度のβ−アドレナリン受容体アゴニストを投与し
てから1時間後にIR透過性ポリマー(三角形)で置き換えたマウスについてのIB
ATΔ温度の量的表示を示した図である。
【図27】 図27Aは、グルコース投与90分後のob/obマウスにおける肝臓熱発生をIR透
過性ポリマーによって肉眼観察できるようにした赤外線分析を示す図であり;図
27Bは、指定用量のグルコースを投与してから90分後における肝臓領域でのIR
信号の定量表示を示した図であり;図27Cは、1 g/kgのグルコースを投与し
た後のマウスにおける肝臓熱発生の経時変化を示す図である。
【図28】 図28Aは、5日間エタノールを投与したラットにおけるIR透過性ポリマーを
用いたIRサーモグラフィーによって検出される肝臓熱発生を示す図であり;図2
8Bは、ビヒクルまたはエタノールを投与したラットにおける肝臓領域でのIR信
号の定量的表示を示した図である。
【図29】 図29Aは、リポ多糖(LPS)を投与したマウスでIR透過性ポリマーを利用し
た肝臓熱発生の上昇検出を示す図であり;図29Bは、LPS投与90分後の肝臓熱
発生とLPS投与10時間後における肝臓損傷の古典的血清マーカーであるアスパラ
ギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)との間の相関を示す図である。
【図30】 d4T(薬剤)および/または抗酸化剤(レスキュー薬)を投与したマウスの肝
臓熱発生に関するプロファイルを得る上での赤外線サーモグラフィーおよびIR透
過性ポリマーの使用を示すグラフである。
【図31】 リポジストロフィーを患うHIV患者と正常被験者のサーモグラフィーであって
、特には脂肪消費が生じている顔面および頸後部の区別された熱プロファイルを
、IRサーモグラフィーによって肉眼で観察できるようにした図である。
【図32】 乾癬患者のIRサーモグラフィーであって、熱的に区別された領域(矢印1)が
、乾癬病変と全く同じ領域にプロファイルされている図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 レンハード,ジェームズ,マーティン アメリカ合衆国 27709 ノースカロライ ナ州,リサーチ トライアングル パー ク,ピー.オー.ボックス 13398,ファ イブ ムーア ドライブ,グラクソスミス クライン (72)発明者 ポーリク,マーク,アンドリュー アメリカ合衆国 27709 ノースカロライ ナ州,リサーチ トライアングル パー ク,ピー.オー.ボックス 13398,ファ イブ ムーア ドライブ,グラクソスミス クライン

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被験者のある身体領域におけるリポジストロフィーをin viv
    oで診断する方法であって、赤外線サーモグラフィーを用いて該身体領域の温度
    を測定することを含んでなり、正常被験者の同一の身体領域の温度と比較して温
    度上昇があると、それが被験者におけるリポジストロフィーの存在を示すことと
    なる、上記方法。
  2. 【請求項2】 前記身体領域が顔面である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記身体領域が頸後部である、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記被験者がHIV陽性である、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記患者が、以前にプロテアーゼ阻害薬による治療を受けた
    ことがある、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 被験者における薬物療法による治療の脂肪代謝異常作用をモ
    ニタリングする方法であって、赤外線サーモグラフィーを用いて、薬物療法中の
    被験者の体温をモニタリングすることを含んでなり、該被験者のそれ以前の測定
    値と比較して該被験者の温度上昇があると、それが脂肪代謝異常作用を示すこと
    となる、上記方法。
  7. 【請求項7】 前記薬物療法がプロテアーゼ阻害薬による治療である、請求
    項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記身体領域が顔面または頸後部である、請求項6に記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 被験者の体内組織または臓器の温度を測定する方法であって
    、該組織または臓器の近辺にある身体領域における該被験者の皮膚の一部を赤外
    線不可視性ポリマーで置き換え、赤外線サーモグラフィーを用いて該組織または
    臓器の該領域の温度を測定することを含んでなる、上記方法。
  10. 【請求項10】 前記温度測定が、動物への被験薬の投与前および投与後の
    温度を測定するために用いられ;被験薬の投与によって温度差が生じると、それ
    は被験薬が該組織または臓器に対して熱力学的作用を有することを示すこととな
    る、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記被験薬の1以上の薬用量を投与し、各用量につき前記
    臓器の温度を測定する、請求項10に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記被験薬の投与後の1以上の時点で温度を測定する、請
    求項10に記載の方法。
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