JP2003512435A5 - - Google Patents

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JP2003512435A5
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【書類名】 明細書
【発明の名称】 予防及び治療方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対象において粘膜抗原への応答としてのCTL免疫を実質的に回避しながら、細胞障害性Tリンパ球(CTL)耐性を誘導する方法であって、該粘膜抗原を選択する工程、又はMHCクラスIに限定されたエピトープの機能を発揮できないように粘膜抗原を改変する工程、及び次いで該粘膜抗原に対するCTL免疫を阻止若しくは低減させるのに十分な時間及び条件の下で該選択され若しくは改変された抗原を投与する工程を含む方法。
【請求項2】 該粘膜抗原が粘膜自己抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項3】 該粘膜抗原がペプチド又はポリペプチドとして投与されるものである、請求項2記載の方法。
【請求項4】 該粘膜抗原が該粘膜抗原をコードするDNAとして投与されるものである、請求項2記載の方法。
【請求項5】 該粘膜抗原又は該粘膜抗原をコードするDNAが粘膜表面に投与されるものである、請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】 投与が口、鼻、咽頭及び/又は気管支管の経路の一つ以上を経るものである、請求項5記載の方法。
【請求項7】 投与がエーロゾル投与を経るものである、請求項6記載の方法。
【請求項8】 対象における自己免疫疾患の状態を防止し、低減し、または緩和する方法であって、細胞により媒介される自己免疫の病状から護る免疫調節機構を誘導若しくは刺激するのに十分な時間及び条件の下で該自己免疫疾患と関連する抗原の有効量を該対象にエーロゾル投与する工程を含み、該抗原がMHCクラスIの相互作用領域を実質的に欠失しているものである方法。
【請求項9】 該対象がヒトである、請求項1又は請求項8記載の方法。
【請求項10】 該MHCクラスIエピトープがMHCクラスI(Kd ) に限定されるエピトープである、請求項1又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】 該抗原がインスリン依存性真正糖尿病(IDDM)、徐々に進行するIDDM(SPIDDM)及び/又は妊娠中の糖尿病に関連するものである、請求項1又は請求項8又は請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】 CTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させる工程と組合わせた、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】 対象におけるIDDM、SPIDDM又は妊娠中の糖尿病を防止、低減、または緩和する方法であって、調節性T細胞を誘導するのに及び/又はIDDMと関連する細胞媒介性の自己免疫病状を抑制するのに十分な他の適切な機構を誘導するのに十分な時間及び条件の下で、IDDMと関連する自己抗原の有効量を該対象にエーロゾルとして若しくは他の機能的に同等な手段により投与する工程を含み、該自己抗原が機能性のMHCクラスIの相互作用エピトープを実質的に欠失しているものである方法。
【請求項14】 該対象がヒトである、請求項13記載の方法。
【請求項15】 該MHCクラスIエピトープがMHCクラスI(Kd )に限定されるエピトープである、請求項13記載の方法。
【請求項16】 該調節性T細胞がCD8T細胞である、請求項13記載の方法。
【請求項17】 該CD8T細胞がCD8γδT細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項18】 該調節性T細胞がCD4T細胞である、請求項15記載の方法。
【請求項19】 該CD4T細胞がCD4αβT細胞である、請求項18記載の方法。
【請求項20】 該エーロゾル投与がスプレー、液の滴下、又は蒸気を経るものである、請求項13記載の方法。
【請求項21】 該抗原がプレプロインスリン又はプロインスリン又はそれらの断片である、請求項13〜請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】 該抗原がインスリン又はその断片である、請求項13〜請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】 該抗原がプロインスリンペプチド24〜36である、請求項21記載の方法。
【請求項24】 CTLの誘導及び/若しくは成熟を阻止または遅延させる工程と組合わせた、請求項13〜請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】 対象におけるIDDMを誘導し、抑制し、または緩和し若しくは防止する方法であって、CTL耐性を防止、低減、または誘導するのに十分な時間及び条件の下で、MHCクラスIに限定された任意のエピトープの機能を発揮できないようにそのC末端で抗原の先端を切断されたプロインスリンぺプチドを投与する工程を含む方法。
【請求項26】 該対象がヒトである、請求項25記載の方法。
【請求項27】 該プロインスリンペプチドがヒト、ネズミ又はブタ起源のものである、請求項26記載の方法。
【請求項28】 該プロインスリンペプチドがヒト起源のものである、請求項27記載の方法。
【請求項29】 該プロインスリンがエーロゾルを経て投与されるものである、請求項25記載の方法。
【請求項30】 該エーロゾル投与がスプレー、液の滴下、又は蒸気を経るものである、請求項29記載の方法。
【請求項31】 該プロインスリンが約1〜約20リットル/分の速度で投与されるものである、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【請求項32】 該プロインスリンがアジュバント内で投与されるものである、請求項29又は請求項30又は請求項31に記載の方法。
【請求項33】
該アジュバントがコレラ毒素13、大腸菌の熱不安定毒素、サポニカ若しくはその誘導体、クィルA抽出物、DEAE−デキストラン、硫酸デキストラン及びアルミニウム塩から選択されるものである、請求項32記載の方法。
【請求項34】 アジュバントがサイトカイン、ムラミル−ジぺプチド又は細胞壁成分である、請求項32記載の方法。
【請求項35】 CTLの誘導及び/若しくは成熟を阻止または遅延させる工程と組合わせた、請求項25〜請求項34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】 粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL免疫を防止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、該粘膜抗原又はそれをコードする核酸を投与する工程を含み、それと同時若しくはその後にCTLの誘導及び/又は成熟のアンタゴニストを投与する工程を含む方法。
【請求項37】 該アンタゴニストがCD40又はCD40Lの相互作用のアンタゴニストである、請求項36記載の方法。
【請求項38】 該アンタゴニストが抗CD40L抗体である、請求項37記載の方法。
【請求項39】 該対象がヒトである、請求項36記載の方法。
【請求項40】 該プロインスリンペプチドがヒト、ネズミ又はブタ起源のものである、請求項36記載の方法。
【請求項41】 該プロインスリンペプチドがヒト起源のものである、請求項36記載の方法。
【請求項42】 該プロインスリンがエーロゾルを経て投与されるものである、請求項36記載の方法。
【請求項43】 該エーロゾル投与がスプレー、液の滴下、又は蒸気を経るものである、請求項36記載の方法。
【請求項44】 粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させるのに十分な時間及び条件の下で、CD40L−CD40の相互作用のアンタゴニストを投与する工程を含む方法。
【請求項45】 該アンタゴニストが抗CD40抗体である、請求項44記載の方法。
【請求項46】 IDDM又はSPIDDMの治療又は予防のための物質であって、機能性のMHCクラスIに限定されたエピトープを欠失するよう改変されているプロインスリン又はインスリンを含む物質。
【請求項47】 CTLの誘導及び/又は成熟を阻害する物質を更に含む、請求項46記載の物質。
【請求項48】 CD40L−CD40の相互作用を阻害する、請求項47記載の物質。
【請求項49】 抗CD40L抗体である、請求項47記載の物質。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に自己免疫疾患状態の予防及び治療方法並びにそのために有用な物質に関する。関連する一つの実施態様において、本発明は、細胞障害性Tリンパ球(CTL)により媒介される自己免疫疾患の起こり易さ若しくはその危険を防止し又は少なくとも低減させるために、CTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させることができる粘膜抗原及び/又は物質の使用を意図する。より具体的には、本発明は自己免疫病理と関連する症状から護るため又は該症状を緩和させるための粘膜により媒介される耐性を意図する。さらに一層具体的には本発明は、IDDM関連の自己抗原を粘膜表面にエーロゾル投与により又はCTLの誘導及び/又は成熟を阻止する物質により、臨床的インスリン依存性真正糖尿病(IDDM)を防止する方法又は臨床的IDDMの効果を防止若しくは低減若しくは緩和する方法を提供する。
【0002】
発明の背景
本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、この先行技術がオーストラリア国又は他の国で一般常識の一部となっているとの認識又は如何なる意味での示唆でもなく、そしてそう解釈すべきでもない。
【0003】
本明細書で数値により言及した刊行物の書誌的詳細は明細書の末尾に収録してある。
【0004】
免疫系一般そしてとりわけ細胞の免疫機構についての知識の増加により、治療薬の設計及びその投与の代替的経路が大きく促進されつつある。研究の一つの重要な領域は、自己免疫疾患状態における特定抗原により誘導される細胞免疫低応答性を支配する機構である。
【0005】
自己抗原は、その投与が自己免疫疾患の通常の履歴を改変するときは病原性であると考えることができる。免疫耐性誘導のための自己抗原に特異的な戦術がゲッ歯類における実験的自己免疫疾患の通常の履歴を有利に改変することが示された(1〜6)。古典的な経口投与による可溶性タンパク質抗原の粘膜表面への提示は抗原特異的なT細胞により媒介される遅延型の過剰感作(DTH)及びIgE応答の選択的抑制を結果として生ずる(1,7,8)。「経口耐性」はT細胞(Th1)応答から抗体(Th2)応答までの免疫の分化と、調節T細胞の誘導と、そして高抗原用量でT細胞アネルギー及びT細胞欠失の両方と関連させられてきた(1,9)。
【0006】
特に衰弱している自己免疫状態は、自己免疫炎症性「インスリン炎」病巣内の、膵臓の島におけるインスリン生産性β細胞の選択的破壊から生ずるインスリン依存性の真正糖尿病(IDDM)である(10,11)。β細胞破壊を媒介する際の自己反応性T細胞の第一の役割は二つのIDDMの自然発生動物モデル、即ちバイオ−ブリーディング(BB)ラット(12)と非肥満糖尿病(NOD)マウス(2)で直接示された。β細胞への免疫反応の引金となり又はそれを駆動する標的自己抗原は診断的適用を有するだけでなく特異的免疫治療のための薬物候補でもある(3〜6)。病原性を持つと思われる幾つかの島/β細胞自己抗原が、ゲッ歯類で還流する抗体又はT細胞との反応性により、そしてヒトで準臨床的若しくは臨床的IDDM、とりわけインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)及びIA−2クラスのチロシンホスファターゼとの反応性により同定されてきた(13)。しかしながら、インスリン及びその前駆体であるプリ−プロインスリンはβ細胞特異的な唯一のIDDM自己抗原である。
【0007】
ヒトでは、インスリン自己抗体(IAA)は臨床的IDDMの発症の危険マーカーであり(14)、そして糖尿病の母親の子孫における他の島抗原に対する自己抗体の前に検出された(15)。準臨床IDDM対象及び最近診断されたIDDM対象の半数までに、ヒトインスリンへの末梢血T細胞の増殖の増加が証明できる(16)が、応答は比較的低い。これはおそらく優勢なヒトT細胞エピトープがプロインスリン中にあるからである。インスリンのB鎖とプロインスリン中の連結(C)ぺプチドの間の天然の開裂部位にまたがるぺプチドがIDDMの危険性のある親類の大部分でT細胞の増殖を誘導すると報告された(17)。NODマウスでは、IAAは糖尿病の発症の危険マーカーであると報告されており(18)、そしてインスリン炎病巣から生じたT細胞クローンの大部分はインスリンB鎖、アミノ酸9〜23と反応した(19)。
【0008】
幾つかの研究がNODマウスモデルにおいて粘膜により媒介されるインスリンへの耐性を評価した。例えば、ザングら(20)はブタインスリンの経口投与(1mg週2回)が糖尿病の発症を遅延させそしてその発症率を低下させること、そして糖尿病マウス由来の脾臓細胞により若い非糖尿病マウスへの糖尿病の移転を部分的に阻止する脾臓T細胞と関連があることを見出した。続いてベルゲロットら(21)は経口インスリンによる誘導された調節細胞がCD4+T細胞であったことを報告した。しかしながら、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)のルイスラットモデルにおけるモルモットのミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する経口耐性の初期の研究(1)では、IL−4、IL−10及びTGF−βを分泌し且つCD4及びCD8の両方を調節するT細胞が記述された。
【0009】
細胞により媒介される自己免疫状態の抑制を誘導するための抗原の送達のための有効な投与戦術を開発する必要がある。この投与戦術は免疫学的に効果的でなければならないだけでなく、便利で直接的で且つ安全でなければならない。本発明に至る研究において、本発明者らは自然発生IDDMの動物モデルである非肥満糖尿病(NOD)マウスで、インスリン及びその前駆体(プロインスリン)のエーロゾル吸入及び鼻孔内投与を研究し、これが膵臓島病状及び糖尿病の発症率を低減させるのに有効であることを明らかにした。さらに、エーロゾルインスリンは糖尿病の防止に寄与する調節的CD8γδT細胞を誘導した。代わりの戦術として、又は前述の方法と組み合わせて使用できる戦術として、本発明は、例えば、CD40とCD40リガンド(CD40L)の間の相互作用を阻止することによりCTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させる方法をさらに提供する。
【0010】
発明の概要
本明細書を通じ、文脈が他の意を要求しない限り、「含む(comprise) 」という用語、又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などのその変形は、述べられた要素若しくは整数又は要素群若しくは整数群を含むことを意味するが、如何なる他の要素若しくは整数又は要素群若しくは整数群を排除するものではないことを意味すると理解すべきである。
【0011】
本発明の一つの側面は、粘膜抗原への応答としてのCTL免疫を実質的に回避しながら、細胞障害性Tリンパ球(CTL)耐性を含む免疫耐性を誘導する方法を意図する。この方法は該粘膜抗原を選択する工程、又はMHCクラスIに限定されたエピトープの機能を発揮できないように粘膜抗原を改変する工程、及び次いで該粘膜抗原に対するCTL免疫を阻止又は低減させるのに十分な時間及び条件の下で該選択され又は改変された抗原を投与する工程を含む。
【0012】
本発明の別の一側面は、実質的に粘膜自己抗原への応答としてのCTL免疫を回避しながら細胞により媒介される自己免疫疾患を抑制する方法を意図する。この方法は該自己抗原を選択する工程、又はMHCクラスIに限定されたエピトープの機能を発揮できないように粘膜自己抗原を改変する工程、及び次いで該自己抗原に対する耐性を誘導するが該抗原に対するCTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で該選択され又は改変された自己抗原を投与する工程を含む。
【0013】
本発明のさらなる一側面は、対象における細胞により媒介される自己免疫疾患を抑制する方法であって、自己免疫の病状を防止し、低減し、または緩和するのに十分な時間及び条件の下で該自己免疫疾患と関連する抗原の有効量をエーロゾルとして投与する工程を含み、該抗原が機能性のMHCクラスIの相互作用領域を実質的に欠失しているものである方法を意図する。 【0014】
本発明のさらに別の一側面は、対象における自己免疫疾患状態を防止し、低減し、または緩和する方法であって、細胞により媒介される自己免疫の病状から護る免疫調節機構を誘導若しくは刺激するのに十分な時間及び条件の下で該自己免疫疾患と関連する抗原の有効量を該対象にエーロゾルとして投与する工程を含み、該抗原がMHCクラスIの相互作用領域を実質的に欠失しているものである方法を提供する。
【0015】
本発明のなお一層別の一側面は、対象におけるIDDM、徐々に進行する(SP)IDDM若しくは妊娠中のタイプI糖尿病を防止、低減、または緩和する方法であって、調節的T細胞を誘導するのに及び/又はIDDMと関連する細胞媒介性の自己免疫病状を抑制するために十分な他の適切な機構を誘導するのに十分な時間及び条件の下で、IDDMと関連する自己抗原の有効量を該対象にエーロゾルとして若しくは他の機能的に同等な手段により投与する工程を含み、該自己抗原が機能性のMHCクラスIの相互作用エピトープを実質的に欠失しているものである方法を意図する。
【0016】
本発明のさらに別の一側面は、対象におけるIDDMを誘導し、抑制し、または緩和し若しくは防止する方法であって、CTL免疫を阻止若しくは低減するのに、あるいはCTL耐性を含む免疫耐性を誘導するのに十分な時間及び条件の下で、MHCクラスIに限定された任意のエピトープの機能を発揮できないようにそのC末端で先端を切断されたプロインスリンぺプチド抗原を投与する工程を含む方法を意図する。
【0017】
本発明のさらに別の一側面は、一つ以上の薬学的に許容しうる担体及び/又は希釈剤を含むエーロゾル製剤中に自己免疫疾患と関連する抗原を含む組成物を提供する。
【0018】
本発明の別の一側面は、粘膜抗原への応答としてのCTL免疫を実質的に回避しながらCTL耐性を誘導する方法であって、CTL免疫の誘導を阻止若しくは低減するのに十分な時間及び条件の下で、機能性のMHCクラスIに限定されたエピトープを実質的に欠失している該粘膜抗原をコードする核酸分子若しくはその類縁物質を対象に投与する工程を含む方法を意図する。
【0019】
本発明のさらなる側面はCTL免疫を実質的に回避しながらIDDMを防止又は抑制する方法であって、IDDMの効果を防止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で機能性のMHCクラスIに限定されたエピトープを実質的に欠失するIDDM関連粘膜抗原をコードする核酸分子又はその類縁物質を対象に投与する工程を含む方法を意図する。
【0020】
本発明の別の一側面は、従って、該抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら粘膜抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、該粘膜抗原又はそれをコードする核酸を投与し、その前、同時若しくは後にCTLの誘導及び/又は成熟のアンタゴニストを投与する工程を含む方法を意図する。
【0021】
より具体的には、本発明は、粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、該粘膜抗原又はそれをコードする核酸を投与し、その前、同時若しくは後にCD40L−CD4相互作用のアンタゴニストを投与する工程を含む方法を意図する。
【0022】
本発明のさらに別の一側面は、粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させるのに十分な時間及び条件の下である物質を投与する工程を含む方法を提供する。
【0023】
より具体的には、本発明は粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL誘導及び/又は成熟を阻止し、または遅延させるのに十分な時間及び条件の下である物質を投与する工程を含み、該物質がCD40−CD40L相互作用を阻止または破壊するものである方法を提供する。
【0024】
本発明の別の一側面は、対象における疾患状態の治療又は予防のための医薬の製造における、不活性なMHCクラスIエピトープを持つ粘膜抗原の使用を意図する。
【0025】
本発明のさらに別の一側面は、疾患状態の治療又は予防のための医薬の製造における、CTL誘導及び/又は成熟を阻止できる物質の使用を意図する。
【0026】
本発明は、上に意図した方法のいずれかの組合せにおける使用をさらに提供する。
【0027】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明はインスリン又はその前駆体が免疫耐性を誘導するために使用されうるという驚くべき発見に基づいている。
【0028】
従って、本発明の一つの側面は、対象における粘膜抗原に対する応答としてのCTL免疫を実質的に回避しながら免疫耐性を誘導する方法であって、該粘膜抗原を選択する工程又はMHCクラスIに限定されたエピトープの機能を発揮できないように粘膜抗原を改変する工程、及び次いで該粘膜抗原に対するCTL免疫を阻止若しくは低減するのに十分な時間及び条件の下で該選択され又は改変された抗原を投与する工程を含む方法を意図する。
【0029】
一般に、粘膜抗原はCTLにより媒介される糖尿病そして取り分けIDDMなどの、これらに限定されるわけではないが、自己免疫疾患を防止するために用いられる。
【0030】
従って、本発明の別の一側面は、粘膜自己抗原への応答として生ずるCTL免疫を実質的に回避しながら細胞により媒介される自己免疫疾患を抑制する方法であって、自己抗原を選択する工程又はMHCクラスIに限定されるエピトープの機能を発揮できないように該粘膜自己抗原を改変する工程、及び次に該選択され又は改変された自己抗原を、該自己抗原に対する耐性を誘導するが該自己抗原に対するCTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、投与する工程を含む方法を意図する。
【0031】
この自己抗原の投与はDNA又はポリペプチド/ぺプチドの送達によるものでも、任意の適当な手段によるものでもよいが、好ましい投与経路は経口、経鼻、経咽頭又は経気管支管を含む粘膜表面を経るものであり、そして鼻孔内エーロゾルを含むエーロゾル経由である。
【0032】
本発明のさらに別の一側面は対象の細胞により媒介される自己免疫疾患を抑制する方法であって、自己免疫病状を阻止し、低減し、または緩和するのに十分な時間及び条件の下で該自己免疫疾患と関連する抗原の有効量をエーロゾルとして投与する工程を含み、該抗原が機能性MHCクラスI相互作用領域を実質的に欠失しているものである方法を意図する。
【0033】
より具体的には、本発明は対象の自己免疫疾患状態を阻止し、低減し、または緩和する方法であって、細胞により媒介される自己免疫病状から護る免疫調節機構を誘導し又は刺激するのに十分な時間及び条件の下で該自己免疫疾患と関連する抗原の有効量を該対象にエーロゾルとして投与する工程を含み、該抗原がMHCクラスI相互作用領域を実質的に欠失しているものである方法を提供する。
【0034】
本明細書で「免疫調節機構」というときは、細胞により媒介される免疫応答を調節する全ての機構に対する言及であると理解されるべきであり、例えば、T細胞の機能的活性の調節、一つ以上のサプレッサーCD4T細胞、Th1、Th2又はγδT細胞(本明細書で「調節性T細胞」と呼ぶ)を含むCD8T細胞による調節、又はリンパ球、骨髄細胞又はストローマ細胞によるサイトカイン生産の調節を経由するものなどであるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、本発明者らによる一部の粘膜自己抗原がMHCクラスIに限定されたCTLに対するエピトープを含むという認識に一部基礎を置く。結果として、これらの抗原の投与はCTL免疫及びCTL耐性を結果とし生じうる。従って、本発明は、機能性のMHCクラスIで相互作用するエピトープを欠失している抗原の選択又はこのエピトープを除去するように抗原を改変することを必要とする。
【0036】
特に好ましい実施態様では、MHCクラスIエピトープはMHCクラスI(Kd )に限定されるエピトープである。
【0037】
本発明は以降にIDDM、成人における潜在性自己免疫糖尿病〔LADA〕とも呼ばれる徐々に進行するIDDM(SPIDDM)及びIDDMが根底にあることによる妊娠中の糖尿病の防止、低減、または緩和に関して記述する。これは、しかしながら、本発明が細胞により媒介されるある範囲の自己免疫状態に及ぶという理解の下でなされる。
【0038】
従って、本発明の別の一側面は、対象のIDDM、SPIDDM若しくは妊娠糖尿病を防止し、低減し、または緩和する方法であって、調節T細胞の誘導、及び/又はIDDMと関連する細胞媒介性の自己免疫病状を抑制するのに十分な他の適切な機構の誘導に十分な時間及び条件の下で、IDDMと関連する自己抗原の有効量をエーロゾルとして若しくは他の機能的に同等な手段により該対象に投与する工程を含み、該自己抗原が機能性MHCクラスI相互作用エピトープを実質的に欠失しているものである方法を意図する。 【0039】
本明細書で以降における「IDDM」への言及には、IDDM、SPIDDM及び妊娠IDDMが含まれる。
【0040】
誘導される調節T細胞は抗原の形及びその投与経路に依存する。例えば、分解されていない、立体構造的に完全なポリペプチド若しくはタンパク質分子全体(例えばインスリン)を投与するときは、CD8T細胞がそしてより具体的にはCD8γδT細胞が誘導される。プロインスリンぺプチド(例えば、プロインスリンぺプチド24〜36)などのより小さなぺプチドは一般的にCD4T細胞、そしてより具体的にはCD4αβT細胞を誘導する。特に経口ルートで投与するときCD4調節T細胞を優勢に形成するように、タンパク質全体を複数のぺプチドに分解してもよい。
【0041】
機能性のMHCクラスI相互作用エピトープの不存在には、このエピトープ領域の全部若しくは一部を含む1個若しくは複数のアミノ酸の欠失が含まれる。また、このエピトープは抗体又は他の分子と相互作用によるなどの他の手段により阻止されうる。
【0042】
特に好ましい投与剤形はエーロゾルスプレー、液の滴下、又は蒸気を経る鼻孔内投与である。
【0043】
鼻孔内投与又は他の投与経路のために用いられるIDDMと関連する好ましい抗原は、インスリン及びプレプロインスリン若しくはプロインスリン、及びそれらの免疫応答刺激性誘導体、例えばプロインスリン、プレプロインスリン若しくはインスリンのぺプチド断片であるが、これらに限定されない。ただし、これらの抗原はCTL免疫の誘導に関与する機能性のMHCクラスI関連領域を欠失しているか又は実質的に欠失していることが条件である。免疫応答刺激には、調節性T細胞刺激が含まれることが好ましい。しかしながら、種々のイソ型(例えば、GAD65及びGAD67)におけるグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)若しくはその誘導体及びチロシンホスファターゼIA−2若しくはその誘導体など、これらに限定されないが、のいずれの島抗原も使用することができる。これらの抗原はヒト由来のものであってもマウスなどの任意の非−ヒト種由来のものであってもよい。最も好ましい抗原は、アミノ酸24〜33により定義されたMHCクラスI相互作用領域を不活性化するように改変されたプロインスリンぺプチドである。この相互作用領域を改変して、重要なMHCクラスIアンカー残基の一つ以上を欠失しているぺプチド又はMHCクラスIの結合が低減するように改変された残基を含むぺプチドを形成させてもよい。このプロインスリンぺプチドはMHCクラスIエピトープを不活性化するためにC末端の先端切断を受けさせることが好ましい。その結果として、CTL免疫の誘導はCTL耐性を含む耐性の誘導から切り離される。 【0044】
従って、本明細書の別の一側面は、対象におけるIDDMを誘導し、抑制し、または緩和し若しくは防止する方法であって、CTL免疫を阻止若しくは低減させるのに、あるいはCTL耐性を含む免疫耐性を誘導するのに十分な時間及び条件の下で、MHCクラスIに限定されたいかなるエピトープの機能をも発揮できないようにするためそのC末端抗原で先端切断したプロインスリンぺプチドを投与する工程を含む方法を意図する。
【0045】
さらに以下に論ずるように、本発明の方法は、CTLの誘導及び/又は成熟を阻止するための戦術と組み合わせて用いてもよい。一つのアプローチでは、例えば、CD40−CD40リガンド(CD40L)の相互作用が阻止される。
【0046】
用語「誘導体」には、抗原の断片、一部、部分、化学的等価物、突然変異体、同族体及び類縁物質が含まれる。類縁物質は天然起源のものでも、合成又は組換え起源のものでもよく、融合タンパク質も含まれる。抗原の化学的等価物は抗原の機能的類縁物質として作用できる。化学的等価物は必ずしも抗原から誘導される必要はなく、ある種の立体構造的類似性を共有すればよい。また、化学的等価物は抗原のある種の物理化学的特性を模倣するように特異的に設計されてもよい。化学的等価物は化学的に合成してもよく、例えば天然生産物のスクリーニングの後に検出してもよい。
【0047】
本発明で意図される抗原の同族体は、ヒト由来の抗原又はマウスなどの任意の非ヒト種由来の抗原を含むが、必ずしもこれらに限定される必要はない。
【0048】
誘導体には、一つ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が含まれる。アミノ酸の挿入誘導体は、1個又は複数のアミノ酸の配列内挿入並びにアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合を含む。挿入アミノ酸配列変異型は一つ以上のアミノ酸残基が該ぺプチド中の予め定められた部位に導入されるものである、もっとも、得られる生産物の適切なスクリーニングを伴う無差別挿入も可能である。欠失変異型は該配列から一つ以上のアミノ酸の除去が特徴である。置換アミノ酸変異型は該配列中の少なくとも一つの残基が除去され異なる残基がその位置に挿入されたものである。アミノ酸配列への付加には、他のぺプチド又はポリペプチドとの融合が含まれる。例えば、好ましい対象のぺプチドを他のぺプチド又は機能性同族体若しくは類縁物質により置換することも可能である。ハイブリッドぺプチドはぺプチドの組合せを含みうる。
【0049】
用語「エーロゾル」はその最も一般的な意味て用いられ、鼻、咽喉、気管支又は経口の経路を経て投与できるいかなる製剤をも含む。エーロゾルは一般に気体又は蒸気中に懸濁された液体又は固体の粒子を含む。このエーロゾルは分散媒体が気体である霧のようなコロイド系であるのが便利である。エーロゾル製剤を投与する方法はいかなる手段でもよく、手動ポンプ、電動ポンプ、加圧ディスペンサー、点鼻薬、若しくは他の便利な手段を用いて達成してもよい。さらに、液滴の大きさは肺の浸透を決定しうる、そして液滴の大きさは投与の効率を最大にするように操作する必要がある。本発明の方法は鼻孔内表面に該製剤の直接適用にまで及ぶことが理解されるべきである。
【0050】
特に好ましい実施態様では、エーロゾルは約1から約20リットル/分の速度、好ましくは約2から約15リットル/分の速度で、そして液滴の大きさが約0.1から約10μm、より好ましくは約0.1から約6μmで送達される。抗原の貯蔵溶液は約0.5から約20mg/mlの濃度で、又はより好ましくは約1.0から約10mg/mlの担体溶液で調製されるのが便利である。市販されているインスリンは約4mg/mlであるのが特に有用である。有用な用量は貯蔵溶液から約50μlから1000μlであり、好ましくは100μlから500μlである。
【0051】
抗原はアジュバントの中で又はアジュバントと共に単独で又は製剤により投与されうる。このアジュバントは、コレラ毒素B、大腸菌の熱不安定毒素、サポニン、クィルA抽出物及び他のサポニン誘導体、DEAE−デキストラン、硫酸デキストラン、アルミニウム塩、及び非イオン性ブロック・コポリマーを含む免疫調節応答を増強するある範囲のアジュバントから選択される。アジュバントはサイトカイン(例えば、IL−4又はIL−13)、ムラミル−ジぺプチド及び誘導体、及び細胞壁成分、例えば大腸菌などのグラム陰性細菌由来の細胞壁リポタンパク質、ミコバクテリウム若しくはコリネバクテリウムの種由来の細胞壁成分などの他の免疫調節因子を含んでもよい。アジュバント製剤はリストしたアジュバントの二つ以上の組合せを含んでもよい。これらのリストは網羅的と解すべきではない。アジュバントの選択は、標的とされる種に部分的に依存し、求められる免疫応答のレベル及び期間及び反応原性(即ち、組織適合性)の欠如に基づく。活性成分及びアジュバントのレベルは必要なレベル及び免疫応答の期間を達成するように選択される。
【0052】
抗原は治療的に有効な量で投与される。治療的に有効な量とは所望の効果を達成するため、又は治療されるべき特定の状態の開始を遅延させるため、進行を阻止するため、又は両者合わせて開始又は進行を遅延又は阻止するために少なくとも部分的に必要な量を意味する。このような量は、勿論治療されるべき特定の状態、その状態の重篤度、及び年齢、肉体状態、大きさ、体重及び同時に行なわれる治療を含む個々の患者のパラメータに基づくものである。これらの因子は当業者には良く知られており、単なる機械的実験で取り組むことができる。最高用量が使用されるのが一般に好ましい、即ち健全な医学的判断に従った最高の安全な用量である。しかしながら、より低い用量又は耐用可能な用量が医学的な理由、生理学的理由又は事実上の他の任意の理由のため投与されうることは当業者には理解されることである。
【0053】
一般に、抗原の毎日の経口用量は約0.01mg/用量/対象/日から1000mg/用量/対象/日である。初めに小用量(0.01〜1mg)が投与され、その後用量を約1000mg/Kg/日まで増加させてもよい。このような投与で対象の応答が不十分である場合は、より高い用量(又は異なる経路、より局部的送達経路による効果的なより高い用量)さえも、患者の耐性が許す程度まで用いてもよい。1個の用量が投与されてもよく、複数の用量が毎時、毎日、毎週若しくは毎月の基準で投与されてもよい。抗原の効果的な量は個体により変わるが、対象当たりの用量当たりで、約0.1μgから約100mgまでの範囲であり、好ましくは約1μgから約10mgまで、より好ましくは約5μgから20mgの範囲である。特により低い用量はエーロゾル投与又は鼻孔内投与用に意図されており、例えばng〜μg用量が最適である。
【0054】
本発明の関連する側面では、治療を受ける対象は治療又は予防の処置が必要ないかなるヒト又は動物であってもよい。
【0055】
一般的に免疫状態そして特異的には調節T細胞及びサイトカインプロファイルのレベルは当業者に知られた通常の方法を用いて任意の治療計画を通じて容易に決定することができる。例えば、調節T細胞レベルはT細胞サブセットに特異的な市販の抗体で標識化した後サイトメトリー分析によりモニターすることができる。対象の状態を決定する適切な方法の他の例としては、密度遠心分離により末梢血の単核細胞の精製の後GAD、IA−2ファミリー構成員、プレプロインスリン、プロインスリン又はインスリン又はこれらの抗原由来のぺプチド配列などの周知の抗原とインキュベートすることによる刺激が挙げられる。その結果得られる増殖を 3Hチミジンの取込みを検定することにより定量できる。サイトカインプロファイルは抗原で刺激した後約24〜72時間で測定できる。該サイトカインは、例えば、サイトカイン特異的抗体を用いて検出できる。抗原で刺激した後約24時間以内に、刺激した細胞を、例えば活性化マーカー発現のフローサイトメトリー分析により表現型として特徴付けることができる(例えば、CD69、CD44、CTLA4、CD25)。活性化細胞の細胞表面標識化の後、該細胞をさらに固定しサイトカインに特異的な蛍光色素標識化抗体と共にインキュベートして細胞内のサイトカインレベルを測定する。特に、例えば、二重標識化検定により細胞をさらに評価してもよい。この二重標識化細胞はフローサイトメトリー分析又は蛍光顕微鏡法を用いて分析してもよい。
【0056】
本発明の別の一側面は、一つ以上の薬学的に許容しうる担体及び/又は希釈剤を含むエーロゾル製剤に自己免疫疾患と関連する抗原を含む組成物を提供する。
【0057】
自己免疫疾患はIDDMであることが好ましい。
【0058】
この抗原はインスリン、又はプレプロインスリン、プロインスリンなどのその前駆体の改変型又はそれらの誘導体(例えば、プロインスリンぺプチド24〜36)又はGAD又はチロシンホスファターゼIA−2若しくはその誘導体の改変型などの島抗原であることが好ましく、該抗原はMHCクラスIエピトープの機能を妨げるように改変されているものである。
【0059】
該抗原及び投与経路は、インスリンCD8T細胞などの分子全体に関しては調節T細胞そして最も好ましくはCD8γδT細胞、又はプロインスリンぺプチド24〜36などのより小さな分子に関してはCD4T細胞そして最も好ましくはCD4αβT細胞を誘導するものであることが好ましい。
【0060】
代替的実施態様では、IDDM関連自己抗原をコードする核酸分子が投与される。一般に、この実施態様によれば、プロインスリン又はその改変型をコードするDNAなどの核酸分子の鼻孔内若しくは他の適切な投与が糖尿病の発症を抑制するCD4T細胞の集団を誘導する。
【0061】
該核酸分子は機能性MHCクラスI相互作用分子を欠失しているぺプチドをコードすることが好ましい。
【0062】
該核酸分子は好ましくはcDNAなどのDNA又はゲノムDNAであり、DNA:RNAハイブリッドである。該核酸分子はプラスミド又はベクターの形であることがとりわけ好ましい。該核酸分子は安定性を増強するためにヌクレオチド塩基の付加又は置換類似体を含んでもよい。
【0063】
従って、本発明の別の一側面は、粘膜抗原への応答としてのCTL免疫を実質的に回避しながらCTL耐性を含む免疫耐性を誘導する方法であって、機能性MHCクラスIに限定されたエピトープを実質的に欠失している粘膜抗原をコードする核酸分子又はその類縁物質を、CTL免疫の誘導を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、対象に投与する工程を含む方法を意図する。
【0064】
より具体的には、本発明はCTL免疫を実質的に回避しながらIDDMを防止又は抑制する方法であって、機能性MHCクラスIに限定されたエピトープを実質的に欠いているIDDM関連自己抗原をコードする核酸分子又はその類縁物質を、IDDMの効果を防止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、対象に投与する工程を含む方法を意図する。
【0065】
本発明のさらに別の一側面はCTL耐性からCTL免疫を切り離すための他の方法を意図する。特に、CTLのエフェクターである「キラー」細胞への成熟は樹状細胞などの抗原提示細胞によるプライミングを要求する。この樹状細胞は該抗原ぺプチド(即ち、エピトープ)をMHCクラスI分子との複合体としてCD8CTLのT細胞受容体に提示する。樹状細胞それ自体は、T細胞上のCD40リガンド(CD40L)と樹状細胞上のCD40の間の相互作用を通じて「ヘルパー」CD4T細胞との先立つ相互作用によりこの機能を発揮するようにプライムされる(図11参照)。CD8T細胞自体もCD40Lを発現することが示された。従って、別の実施態様では、粘膜抗原の投与と連結してCD40L−CD40相互作用のアンタゴニストを投与することが提唱される。このようなアンタゴニストの1例はモノクローナル抗体などのCD40L抗体である。CD40L−CD40相互作用のアンタゴニストは粘膜抗原の投与の前、同時又はその後に投与されうる。逐次投与には、数秒以内、数分以内、数時間以内、数日以内又は数週間以内が含まれる。同時には実質的な同時が含まれる。この余分の処理は粘膜抗原又は粘膜抗原をコードする核酸分子の投与と一緒でもよい。
【0066】
本発明の別の一側面は、従って、粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、CTLの誘導及び/又は成熟のアンタゴニストの投与の前、同時若しくは後に、該粘膜抗原又はそれをコードする核酸を投与する工程を含む方法を意図する。
【0067】
より具体的には、本発明は、粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTL免疫を阻止又は低減するのに十分な時間及び条件の下で、CD40L−CD40相互作用のアンタゴニストの投与の前、同時若しくは後に、該粘膜抗原又はそれをコードする核酸を投与する工程を含む方法を意図する。
【0068】
本発明のさらに別の一側面は、粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させるのに十分な時間及び条件の下で、ある物質を投与する工程を含む方法を提供する。
【0069】
より具体的には、本発明は粘膜抗原に対するCTL免疫を実質的に回避しながら該抗原に対する耐性を誘導する方法であって、CTLの誘導及び/又は成熟を阻止または遅延させるのに十分な時間及び条件の下で、ある物質を投与する工程を含み、該物質がCD40−CD40L相互作用を阻止または妨害するものである方法を提供する。
【0070】
本発明の一層別の一側面は、ある疾患状態の治療又は予防のための医薬の製造におけるCTLの誘導及び/又は成熟を阻止できる物質の使用を意図する。
【0071】
本発明は下記の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【0072】
実施例1
エーロゾル治療と糖尿病評価
8匹の雌NODマウスを入れた準密封箱のそれぞれを、標準的な患者用電動ポンプ(メイメッド・エーロゾルMKV,アネステティック・サプライズ,シドニー,オーストラリア)及びアエロフロ・ネブライザー(ウエイト・アンド・コウ.,シドニー)に連結することによりエーロゾル化した。4mg/mlの組換えヒトインスリン(ヒュームリンR,イーライ・リリー)又は対照オボアルブミンタンパク質を、24〜32マウスの群に、流速12リットル/分、定格液滴サイズ<5.8μmで10分間以上送達した。すべての処置は0900及び1100時間の間に行なわれた。治療計画とマウスの世話は、インスティチューショナル・アニマル・エチック・コミティーにより承認され監督された。100日齢から少なくとも28日毎に後眼窩の静脈血を採取し、マウスは反復テストにより確認されたその血中グルコースが11mMより多いときは糖尿病であると判断された。グルコースは、麻酔をかけていないマウスの後眼窩の静脈叢からガラス毛細管を介して吸引した血液滴について、BM−Test Glycemie(登録商標)ストリップ及びReflolux(登録商標)IIメーター(ベーリンガー−マンハイム)を用いて測定した。
【0073】
実施例2
組織学
マウスをCO2 吸入により殺し、膵臓及び唾液腺を直ちにブインの定着液中に摘出し、パラフィン中に包埋した。島浸潤の重篤度の尺度であるインスリン炎評点は、ヘマトキシリンとエオシンで染色した一連の6μmの膵臓切片中の最小でも15の別々の島の等級付けとその平均をとることにより二人の独立の研究者によりブラインドで決定された。等級付けのスケールは、0,浸潤なし,島は無傷、1,島周辺に10未満のリンパ細胞,島は無傷、2.島周辺及び島内に10〜20個のリンパ細胞,島は無傷、3,島周辺及び島内に20より多くのリンパ細胞,島の50%未満が置換又は破壊、4,大量のリンパ細胞浸潤,50%以上の島が置換又は破壊、である。唾液腺の浸潤はクラスターにおけるリンパ細胞の数により等級付けされた。0,細胞なし、1,細胞が10未満、2,細胞が10〜50、3,細胞が50より大。
【0074】
実施例3
免疫応答
個々の正常血糖マウス由来の脾臓細胞を赤血球溶解緩衝液で処理し、示された濃度の抗原を含む丸底ウェル中の4連の50μモルの2−メルカプトエタノールを含む2×105 /200μlの無血清HL−1培地(ハイコール,アーヴィン,CA)に再懸濁し、インキュベートした。5%v/vCO2 /空気中、37℃で3日間の後、それぞれのレプリカ上清から100μlの部分標本をとり、サイトカイン検定のため−70℃で貯蔵した。次いで、細胞に3H−チミジンを加え、16時間後に収穫し、Topcount(商標)ミクロ−シンチレーション・カウンター(パッカード,メリデン,CT)で計数した。インスリンは、エーロゾル治療に用いたと同様の組換え体ヒト(ヒュームリンR,イーライ・リリー)であった。マウスインスリンIIのアミノ酸9〜23に対応するインスリンB鎖ぺプチド(ぺプチド・エクスプレス,フォート・コリンズ,CO)はHPLC分析により90%を越える純度であった。GAD65はバキュロウイルス系でC末端ヘキサヒスチジンを持って発現された組換え体ヒトであり、Ni2 + キレーションアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。それはSDS−PAGEで1本のバンドとして分離され、定量的リムルス・ライゼート検定(バイオ・ホイタッカー,ウォーカースヴィル,MD)により、内毒素フリーであった。
【0075】
IL−2、IL−4、IL−10及びIFN−γはモノクローナル抗体の対(ファーミンゲン)を用いてELISAにより測定した。検出の最低限界はそれぞれ、62、16、16及び55pg/mlであった。TGF−β1はELISAキット(プロメガ)を用いて最低検出限界16pg/mlで測定した。
【0076】
インスリン抗体を検出するため、 125I標識化ヒトインスリン(約100,000cpm,比活性120μCi/μg)を、プロテアーゼ阻害剤と逐次対数希釈したマウス血清の混合物を含むリン酸塩緩衝化食塩水中で、過剰の無標識インスリン(10μg/ml)を含め又は含めずに、4℃で5日間インキュベートした。次いで、複合体をウサギ抗マウスグロブリン抗血清を用いて沈殿させ、洗浄し、ガンマカウンターで計数した。ポジティブの対照の血清(モルモットの抗ブタインスリン血清、ヒトのIDDM血清)は、総放射活性のうちの37〜54%が最大沈殿した。過剰の非標識化インスリンの存在下での非特異的結合は3%以下であった。
【0077】
実施例4
糖尿病の養子免疫細胞移入
6〜9週齢の雄NODマウス(16/群)にコバルト線源から照射し(800R)、次いで3〜6時間後に最近糖尿病を発症した14〜19週齢の雌NODマウス由来の脾臓細胞プールの2×107 及びエーロゾルのインスリンかオブアルブミンで処理されたマウス由来の脾臓細胞の2×107 (又はこの数から分画された細胞)を200μl中に一緒に懸濁させ、尾の静脈経由で与えた。次いで、移入後2週間に血中グルコースの測定を開始することにより、糖尿病の発症を追跡監視した。
【0078】
実施例5
脾臓細胞集団の分画
脾臓細胞は赤血球溶解緩衝液で処理し、マウス等張リン酸塩緩衝化食塩水中に再懸濁した。全てのT細胞をナイロンウールへの非吸着により精製した。CD4細胞及びCD8細胞は製造者の説明書に従ってMACS・ミクロビーズ(ミルテニ・ビオテク,GmbH,ドイツ)に直接結合したモノクローナル抗体で磁気的にポジティブに選択/除去し、生存細胞(トリパン・ブルー染色が負)として計数した。フローサイトメトリーにより、CD4細胞又はCD8細胞の95%除去が明らかになり、それぞれの回収率は約80%及び約50%であった。
【0079】
γδT細胞は、エーロゾル処理マウス由来のT細胞を、まずビオチン化GL3−1A抗体(ファルマシア,サンジエゴ,CA)と、次いでストレプトアビジン−MACSミクロビーズとインキュベートし、その後磁気分離することにより、ポジティブに選択/除去した。フローサイトメトリーにより、γδ細胞は1〜2%のNOD脾臓細胞を含み、GL3−1A抗体でその全てを除去した。CD8γδT細胞を精製するために、CD8T細胞をまず抗CD8−FITC抱合体及び抗FITCミクロビーズを持つ全てのT細胞から磁気的に選択した。このミクロビーズを次にミルテニル・バイオテク・プロトコルに従って放出し、ついでCD8細胞をγδ陽性画分とγδ欠如画分とに磁気的に分離した。二重染色及びFACS分析により、γδ細胞の完全な欠如とCD8集団を表す高及び低GL3−1Aとしてのその回収が示された。
【0080】
実施例6
糖尿病とインスリン
エーロゾル・ヒトインスリン又はエーロゾル・オブアルブミンを28日齢の雌NODマウスに異なる計画で投与し、インスリン炎がマウス集団で検出可能となる最も早い時、及び糖尿病の発症率及びインスリン炎の重篤度を続いて測定する。
【0081】
糖尿病の発症率は28日齢での1回のエーロゾルインスリン処理では僅かしか影響されず、エーロゾル・オブアルブミン投与後の88%に比べ240日齢までで75%である。しかしながら、3又は10連続日の間の処理及びその後毎週1回の処理により、糖尿病の発症は有意に遅延しそしてその発症率は有意に低下した。5回の別々の実験で、156日齢における糖尿病の発症率は、オブアルブミン処理マウスにおける47%の中央値からインスリン処理マウスにおける23%まで低下し、糖尿病の累積発症率が最高に達する240日齢で、その値はそれぞれ79%及び49%であった(p=0.005、カプラン−マイアー生存統計)。最初の処理が3又は10日間であったときは相違はなかった。処理が10連続日次いで毎週1回なされたがインスリン炎が十分に確立された49日齢まで処理が開始されなかった別の実験では、エーロゾルインスリンは156日での糖尿病発症率を、58%から25%までなお有意に低下させた(p=0.001)。インスリン処理は、「インスリン炎評点」により判断すると、島病巣の重篤度の有意の低下と関連した。これは糖尿病発症率の減少と平行した(表1)。NODマウスでも起こった唾液腺のリンパ細胞による浸潤(シアリティス,sialitis)はエーロゾルインスリンにより影響を受けなかった。
【0082】
吸収促進物質の不存在下で、ヒトの鼻咽喉粘膜からのインスリンの全身取込みは微々たるものであった(22)。NODマウスでは、血中グルコースはエーロゾルインスリンにより短期間では変わらなかった。10%エバンス・ブルー色素で標識したインスリン溶液は鼻咽喉、気管、及び主要気管支部分並びに食道に沈着することが観察された。可溶性タンパク質のエーロゾル送達又は鼻孔内送達の後に一部の胃腸管への接触を避けることは、不可能ではないにしても、困難であるが、鼻咽喉のみへの送達で耐性を誘導するのに十分である(7、23、24)。
【0083】
【表1】
Figure 2003512435
【0084】
マウス(32/群)に28日齢から10連続日の間エーロゾル・インスリンか又はエーロゾル・オブアルブミンを投与し、ついで毎週1回投与した。105日齢の時に、各群からの5匹の非糖尿病マウスを殺して膵臓の組織検討を行なった。インスリン炎評点は平均値±SDとして表す。1 インスリン処理マウスのインスリン炎評点は有意に低下した(p<0.01、マン−ホイットニーUテスト)。2 インスリン処理マウスの糖尿病発症率は有意に低下した(p=0.04、フィッシャーのエグザクトテスト)。
【0085】
実施例7
免疫応答
【0086】
本発明者らは、エーロゾル・インスリン処理がインスリンに対する免疫応答を変えるか否かを研究した。プライムしていないT細胞の、インスリンを含む島抗原に対する増殖性の応答がNODマウスで報告された(25)が、必ずしも再現性がなかった(26)。インスリンか又はオブアルブミンで処理された56〜105日齢のマウス由来の脾臓細胞(0.5〜2.5×106 /ml)のヒトインスリン又はヒトオブアルブミン(0.2、2.0、20及び40μg/ml)に対する異なる血清補充培地若しくは無血清培地における増殖性応答は、基礎レベルの2倍未満まで変化し、通常はインスリンの最高濃度での基礎レベル未満に抑制された。高濃度のインスリンはT細胞の応答を阻害すると報告された(27)。対照的に、オブアルブミン処理の対照マウスでは、インスリンB鎖ぺプチドa9〜23、即ちNODマウス島由来のT鎖クローン(19)に対する優勢エピトープに対する応答は有意であった(表2)が、インスリン処理マウスではそうでなかった。さらに、オブアルブミンマウスはNODマウスで脾臓T鎖を刺激すると先に報告された(25)ヒトグルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)に対しインスリンマウスよりも有意に高い応答を示した。両処理群からのマウスで、コンカナバリンA又はT細胞受容体CD3モノクローナル抗体である145−2C11による非抗原特異的刺激への増殖性応答は同様であり(表2)、そして無処理マウスとの相違もなかった。このことはエーロゾル処理が一般的免疫抑制を惹起したのではなかったことを示す。インスリンB鎖9〜23への応答としてのIL−2、IFN−γ及びTGF−β1の分泌はインスリン処理マウスとオブアルブミン処理マウスの間で有意差はなかった。しかしながら、IL−4そしてとりわけIL−10のレベルはインスリン処理マウスの細胞の場合、より高かった(表3)。
【0087】
【表2】
Figure 2003512435
【0088】
群当たり3匹のマウスからの脾臓細胞を4連でHL−1無血清培地中で検定した。統計学的比較(マン−ホイットニーUテスト)は各群について12回の結果の間で行なった。
【0089】
【表3】
Figure 2003512435
【0090】
複製培養ウェルから得た上清(表2)を3日培養した後に試料とし、サイトカインについて検定した。
【0091】
インスリン抗体は、インスリン処理及びオブアルブミン処理の70〜105日齢のマウス(n=12/群)から得た血清について標準的免疫沈降検定法により測定した。インスリン処理マウスから得た血清中の抗体による 125I−インスリン放射活性の沈降(12.7±3.6%、沈降したcpmの平均値±SD)はオブアルブミン処理マウス(6.9±2.5%)よりも有意に高かった(p<0.01、マン−ホイットニーUテスト)。エーロゾルインスリン後のT細胞増殖の抑制及びインスリンB鎖ぺプチドへのIL−4及びIL−10の応答の増加と共にインスリン抗体の「レベル」の増加は、ルイスラットにおける経口MBP(1)及びNODマウスにおける鼻孔内GADぺプチド(28)の後に記述されたような、免疫偏向の現象と一致する。IDDMのDTH病巣内でのβ細胞の崩壊はTh1により媒介されるプロセスの1例であり(10,11)、エーロゾルインスリンによるその阻害は、重要な島抗原に対する応答としてTh1/Th2のバランスをTh2へとシフトさせると予想されるかも知れない。欠陥のあるサプレッサーT細胞の機能はIDDMにおいてこのバランスをTh1へシフトすることだと仮定された(11)。T細胞のGADに対する増殖性応答の減少はインスリンエーロゾルにより誘導された調節性細胞によるTh2サイトカインであるIL−4及びIL−10(1)の分泌の結果の「傍観者」抑制を反映するものであろうとは思われない。何故なら、GADを含む培養物中にインスリンを添加しなかったことを除いては、コンA及び抗CD−3への応答は損なわれなかったからである。直接的説明は、GADへの応答の減少はインスリン炎及びβ細胞破壊に及ぼすエーロゾルインスリンの保護効果を反映するというものである。このことは少なくとも一部のGAD免疫が二次的であり、(プロ)インスリンに対する免疫がβ細胞破壊においてより近接した役割を持ちうることを意味する。ヒトGAD65に対するNODマウスのT細胞の応答はより強力であり、天然のヒトインスリンに対する応答よりもより早いように見えると報告されてきた(25)が、NODマウスの抗原提示細胞におけるマウスプロインスリンIIのトランスジェニック発現はインスリン炎及び糖尿病を完全に阻止することが見出された(29)。
【0092】
実施例8
調節性CD8γδT細胞
本発明者らは、エーロゾルインスリンが病原性のエフェクターT細胞による糖尿病の養子免疫細胞移入を阻害できるであろう調節性細胞を誘導したか否かを研究した。古典的な養子免疫細胞移入モデル(30)(図6参照)においては、若齢の放射線照射された非糖尿病の同系の雄又は雌のレシピエントへ静脈注射された糖尿病のNOD雌マウス由来の脾臓細胞は、4週間以内に大部分に臨床的糖尿病を惹起する。老齢の糖尿病マウス由来の2×107 個の脾臓細胞をエーロゾルオブアルブミンマウス由来の同数の脾臓細胞と共に共注射すると、若齢のレシピエントの大部分が4〜5週間以内に糖尿病を発症した、対照的に、エーロゾルインスリンマウス由来の脾臓細胞との共注射後には、少数しか糖尿病を発症しなかった(図4A)。糖尿病の発症率は、エーロゾルインスリンマウス由来の脾臓細胞か又はナイロンウール非吸着性脾臓細胞(T細胞が濃縮)のいずれかを用いた六つの独立実験において75%以上抑制された。
【0093】
次に、脾臓細胞を、分画し、糖尿病移入の抑制の原因となる該調節性細胞を同定した。CD4細胞及びCD8細胞の涸渇選択並びにポジティブ選択は、CD8細胞が専ら移入の抑制の原因であることを明白に示した(図4B)。CD4細胞の涸渇は、エーロゾルインスリンマウス由来の残りの脾臓細胞の移入抑制能力を変えなかった(図4B)、そしてポジティブ選択されたCD4細胞は移入を抑制しなかった(図4C)。他方で、エーロゾルインスリンマウス由来のCD8の涸渇した脾臓細胞による抑制は存在しなかった(図4D)のに対して、ポジティブ選択されたCD8細胞は移入を抑制した(図4E)。ポジティブ選択されたCD8細胞による部分抑制は、これらの涸渇後の糖尿病の急速な進行と対比して、多分CD8細胞の非効率的な回収によるものである。この実験では、7x105 個の精製されたCD8細胞が糖尿病マウス由来の2x107 個の脾臓細胞とともに各レシピエント内に共注射されたのである。
【0094】
γδ受容体をもつT細胞は免疫調節の役割を果たすことが示されてきた(31〜36)。興味深いことに、全末梢血のγδ細胞は準臨床的IDDMのヒトにおけるβ細胞機能の喪失と同時に減少することが報告されている(37)。観察された糖尿病移入の抑制がγδT細胞によるものであったか否かを決定するために、本発明者らは抗γδT細胞モノクローナル抗体であるGL3−1Aを用いて脾臓細胞を分画した(38)。CD8細胞の涸渇と同様に、γδT細胞の涸渇により、インスリンエーロゾル処理されたマウスに由来するナイロンウール非吸着性脾臓細胞は糖尿病の養子免疫細胞移入を抑制する能力を完全に失った(図5A)。逆に、インスリンエーロゾル処理されたマウスに由来する比較的少数のγδT細胞は移入を抑制できた。移入後の糖尿病の発症率は、1.4x105 γδT細胞が糖尿病マウス由来の2x107 個の脾臓細胞と共に注射されると、少なくとも70日間で50%まで低下した(図5A)。糖尿病移入を抑制した脾臓のCD8及びγδT細胞は、同一物であり、二つの相互依存集団ではなかった。従って、それらがまずγδT細胞を涸渇させた場合、インスリンエーロゾル処理されたマウスに由来するCD8細胞の移入を抑制する能力は喪失したが、一方、該CD8細胞から精製された少数のγδ細胞は移入を防止した(図5B)。11の異なる共移入実験から得られた結果の概要は図6に提示する。
【0095】
FACS分析は、GL3抗体と反応するγδ細胞が12〜16週齢の雌NODマウスの脾臓における全細胞の1.6〜2.4%及びCD8+ 細胞の約1%を構成することを明らかにした。これらの値はインスリン又はオブアルブミンのエーロゾルで処理されたマウス群間で差異は無かった。しかしながら、それらの低い産出量のため、抗原に特異的なCD8γδT細胞の異なる亜集団はこの方法で識別するのは難しいであろう。分画された細胞、例えば逐次精製されたCD8γδ細胞を用いたより高い保護(図6)は、定量的であり未分画細胞のそれと比較してより高い絶対数を反映している。
【0096】
実施例9
インスリンのエーロゾル化
粘膜へのインスリン送達の様式としてのエーロゾル吸入は、NODマウスの糖尿病の発症率を減少させる際に経口インスリン(22、23)と同じく効果的であった。これがインスリン炎の発症後の治療であったという事実は、循環する島の抗原に反応する抗体及びT細胞の存在が潜在的なインスリン炎を反映すると解釈される、準臨床的疾患の危険性のあるヒトのIDDMの予防に特に重要である。実際、最近診断されたIDDMのヒトと比較して、NODマウスはより重いインスリン炎を患い、雌の大部分が糖尿病に進行する(10、11、24)。エーロゾルインスリンは明白な代謝効果を有しなかったが、調節性CD8γδT細胞の集団を誘導し、その少数は、病原性のエフェクターT細胞の糖尿病を養子免疫細胞移入する能力を抑制した。細胞に媒介された自己免疫病状から防御するこれらの抗原に誘導された「サプレッサー」T細胞はこれまでに記載されたことはなかった。
【0097】
経口耐性は、細胞性の抗原特異的免疫の低減並びに時折体液性の抗原特異的免疫の増大と関連させられ、TGF−β又はIL−4、IL−10及びTGF−β1をそれぞれ分泌するCD8T細胞又はCD4T細胞のいずれかと関連させられてきた(8)。しかしながら、これらの調節性細胞はγδ受容体を担うものとして同定されてこなかった。NODマウスでは、インスリンに対する経口耐性は調節性CD4T細胞に帰せられた(21)。本発明によれば、CD8γδT細胞がエーロゾルインスリンにより誘導される該調節性細胞である。
【0098】
実施例10
鼻腔内のインスリン(図1)、プロインスリン(図2)
又はプロインスリンペプチド24〜36(図3)
インスリン担体溶液又はマウス等張リン酸塩緩衝化食塩水のいずれかに溶解した4mg/mlの市販のインスリン、又は同液に溶解した1〜4mg/mlのプロインスリン若しくはプロインスリンペプチド24〜36を、28日齢又は56日齢のいずれかの麻酔をかけずに拘束したNOD雌マウスの鼻孔に10〜20μlの容量で適用した。56日齢までに全マウスは潜在的な島の炎症(インスリン炎)を呈することに留意せよ。
【0099】
28日齢又は56日齢のいずれかでのインスリン、プロインスリン又はプロインスリンペプチド24〜36の1回投与はそれぞれ、対照タンパク質のオブアルブミン又は鶏卵リゾチームと比較して、NOD雌マウスにおける糖尿病の発症を有意に遅延させた。比較用量のベースで、プロインスリン及びプロインスリンペプチド24〜36はインスリンより効果があった。これらの効果は該タンパク質又はペプチドの反復用量を用いるとより大きくなる。プロインスリン24〜36の1回鼻孔内投与(40μg)で前処理された雌のマウスにおいて、全脾臓細胞、及びCD8T細胞を涸渇させたがCD4T細胞は涸渇していない全脾臓細胞は、糖尿病マウス由来の脾臓細胞による糖尿病の養子免疫細胞移入を有意に抑制した(図7)。雌のマウスを28日齢で処理した後、屠殺し、それらの脾臓細胞を56日齢で養子免疫細胞共移入のために採取した。
【0100】
実施例11
危険性のある個体における鼻孔内インスリンの臨床試行
この鼻孔内インスリン試行(INIT)は、島の自己抗原と反応する循環する抗体及びT細胞を含むIDDMの免疫マーカーと共に、危険性があるが他方で健康な一親等の親類への鼻孔内インスリンの投与を含む。本発明者らの対象は、インスリン、GAD又はチロシンホスファターゼIA−2に対する少なくとも二つの抗体を有し、末梢血のT細胞はインスリン、プロインスリンペプチド24〜36に応答し、時々GAD及びIA−2ペプチドに応答する。この実験の理由は、インスリンに対する粘膜媒介性免疫耐性を誘導することであり、NODマウスの本アプローチの成功に基づいて、安全性を証明することである。市販のヒトの組換えインスリンを使用する。これは通常IDDMの人達への皮下注射又は静脈注射により日常的に投与される。この試行に参加した4〜30歳(平均11.4歳)の38人の危険性の高い対象において、有意な副作用は観察されなかった。粘膜刺激の可能性は存在するが、これはごく稀であり、その上大したことでなく一過性であった。エーロゾル又は鼻孔内のインスリンで処理されたNODマウスは臨床的合併症又は生検でも異常を示さなかった。
【0101】
このINIT試行はIDDMの代用免疫マーカーへの鼻孔内インスリンの影響を調べる。この計画は、無作為化された、二重盲検及びプラシーボ対照であり、6カ月で交差させた。プラシーボはインスリン用に通常使用される担体溶液である。本目的はインスリン及び他のベータ細胞の抗原に対する抗体及びT細胞のレベルに及ぼす有意な効果を証明することである。更に、グルコースの静脈注射への応答としての第一段階のインスリン放出(FPIR)、即ちベータ細胞の機能の測定は、開始時、6ヶ月及び12ヶ月に監視される。該交差の設計は、治療の機会を全対象に与え(危険性のある親類にとって重要な問題)、何らかの治療効果があれば測定は維持され、群内及び群間の分析を可能にする。治療は最初に10日連続で毎日、次いで一週間に二日連続で投与される。6ヶ月後、治療は交差される(インスリンからプラシーボへ、又は逆に)。
【0102】
鼻孔を通じたインスリンの投与用量は市販の4mg/ml溶液を約200μL(800μg)である。該プラシーボはインスリンが通常溶かされる担体溶液である。
【0103】
結果
鼻孔内インスリンは、インスリン抗体全長の有意な増加(p=0.01)、並びに変性したヒトのインスリンに対する末梢血の単核(T細胞)増殖の相伴う減少と関連しており、インスリン抗体のレベル及び変性したインスリンに対するT細胞の増殖性応答は第一期(p=0.05)及び第二期(p=0.01)で反比例の関係にあった。これらの結果はNODマウスで見られたものと一致している。FPIRが初期に第一のパーセンタイルより上で測定可能であったどの対象にもFPIRに変化は無かった。免疫パラメータの変化はFPIRの変化と関連しておらず、例えば、インスリンについてのインスリン抗体の増加は、第一のパーセンタイルよりFPIRが大きな対象でのベータ細胞機能の低下と関連していなかった。鼻孔内インスリンの副作用は明白でなかった。この結果は、長期FPIR及び糖尿病の発症率に対する鼻孔内インスリンの効果を決定するために更なる試行を勇気づける。
【0104】
実施例12
機能性MHCクラスIに相互作用するエピトープを除去するための
プロインスリンペプチド24〜36の改変
プロインスリンペプチド24〜36の投与後、糖尿病の養子免疫細胞移入をほとんど完全に阻止したCD4調節性T細胞が誘導されたが(単離され、エフェクター「糖尿病誘発性」T細胞を用いて若齢の放射線照射されたNODマウス中にトランスフェクトされた場合)、自然発生糖尿病の発症は遅延されたが防止されることはなかった。本発明者らは、該プロインスリンペプチドがMHCクラスI(H2−Kd )に限定されたCTL、即ちアミノ酸26〜34及びアミノ酸25〜34の推定エピトープを有することを観察した。従って、プロインスリンペプチド24〜36の投与により、CTL免疫及びCTL耐性の同時誘導が結果として生ずるであろう。まず、この投与は、26〜34及び特に25〜34がKd に結合でき(図8)そしてNODマウスにCTLを誘発できることを示した(図9にアミノ酸26〜34を示す)。次に、これらは、該プロインスリンアミノ酸24〜36ペプチドの一連のC末端の先端切断の効果を証明した(図10)。位置9のアンカー残基(アミノ酸34)の欠失によるMHCクラスI結合ペプチドの不活性化は、中核のMHCクラスII(I−Ag7)結合配列が鼻腔内投与後に糖尿病を防止する能力を有意に増強した。位置(p)9のC末端アミノ酸は、MHCクラスI分子への結合に必要とされる重要な「アンカー」残基である。
【0105】
実施例13
CD40L−CD40シグナル発信を標的化することによる
経口耐性からの細胞障害性Tリンパ球(CTL)免疫の切り離し材料及び方法
マウス
マウスはザ・ウォルター・アンド・イライザ・ホール・インスティチュート・オブ・メディカル・リサーチで飼育し維持した。経口耐性及びCTL活性は、6から8週齢の雌のC57B1/6マウスで決定した。MHCクラスIに限定されたOVA257-264 ペプチドに対するトランスジェニックCD8T細胞受容体(TCR)を保持するトランスジェニックOT−1/ラッグ(Rag)- / - マウス及びMHCクラスIIに限定されたOVA323-339 ペプチドに対するトランスジェニックCD4TCRを保持するOT−IIマウスは、Ly5.1/CD45.2同系C57B1/6マウス(OT−I細胞)内及びRIP−OVAトランスジェニックマウス(OT−I細胞及びOTII細胞)中への養子免疫細胞移入用にOVAに反応するT細胞のドナーとして6から12週間の間使用した。
【0106】
耐性の誘導
経口耐性は、報告された高用量及び低用量のOVAに対応する二つのプロトコルを用いて誘導された。
【0107】
OVA(V等級、シグマ社、セントルイス、ミズーリ州)は、弱いメトキシフルラン(Penthrane (商標))麻酔の下で胃内挿管を介して20mgを1日おきに3日間(高用量)又は0.5mgを1日おきに5日間(低用量)のいずれかで雌のC57B1/6マウスに投与した。リムルス・ライゼート検定(バイオ・ホイタッカー、ウォーカースヴィル、メリーランド州)で測定されたOVA溶液(10mg/ml)の内毒素濃度は0.5ng/ml以下であった。CD40Lのシグナル発信はハムスターIgG1抗マウスCD40LmAbMR−1(ATCC、ロックビル、メリーランド州)の投与により阻止され、その対照はヒトBcl−2に特異的なハムスターmAb6C8であった。両mAbを、Gタンパク質−セファロース(ファルマシア社、ウップサラ、スウェーデン)上でアフィニティークロマトグラフィーによりハイブリドーマ細胞培養液から精製し、記載したように250μgの用量で腹腔内投与(i.p.)した。
【0108】
細胞障害性Tリンパ球(CTL)検定
CTLは下記のように検定した。
【0109】
マウスは、20x106 個のOVA被覆H−2Kbm-1脾臓細胞(CD4T細胞の援助に依存している)を用いて静脈注射でプライムされ、又は200μgのOVAペプチド257〜264のCFA100μl(CD4T細胞の援助に依存しない)を用いて尾の基部に皮下注射(s.c.)でプライムされた。実験に応じて、マウスはmAb及び経口OVAを受容した2週間後又は3週間後にプライムされた。マウスはプライミングの7日後に屠殺され、その脾臓細胞は51Cr放出検定でエフェクターとして使用する前に更に6日間インビトロで刺激された。溶血ユニットは、各脾臓から生成したエフェクターの総数を30%のOVAに特異的な溶解に必要なエフェクターの総数で割ることにより算出した。
【0110】
CTL前駆体の経口OVA±抗CD40L処理の効果
経口OVAに対するOVAに特異的なCTL前駆体の応答並びにCD40L阻害の効果を決定するために、3×106 個のOT−I細胞をLy5.1同系雌マウス内に移入した後、該マウスに0日目及び3日目にMR−1又は対照の6C8mAbのいずれかを与えた。経口OVA20mgは1〜3日目に毎日与えた。マウスは14日目に屠殺され、脾臓OT−I細胞の数並びにそれらのCD44及びCD62L(L−セレクチン活性マーカー)の発現を Lysys2(商標)ソフトウェア(ベクトン・ディッキンソン、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いてFACScanにより分析した。細胞は、FITC結合抗CD44及び抗L−セレクチンmAb(ファーミンゲン社、サンノゼ、カリフォルニア州)とともにビオチン化抗Ly5.2mAb(ファーミンゲン社)及びPE結合抗CD8mAb(シグマ社)とインキュベートした後、ストレプトアビジン結合PerCp(ファーミンゲン社)と第二段階のインキュベーションを行いLy5.2を検出した。
【0111】
RIP−OVA lo マウスの糖尿病誘導に及ぼす経口OVA±抗CD40L処理の効果
CTLの経口OVAのインビボ活性化へのCD40L阻害の効果が経口OVAであることを調べるために、膵臓のβ細胞上でOVAを発現するRIP−OVAマウスに、0.3x106個のOT−1細胞及び0.2x106 個のOT−1細胞を養子免疫細胞移入し、移入日(0日目)にMR−1及び対照の6C8mAbを与えた。次に、マウスに一日目から始めて0.5mgを1日おきに5日間の経口OVAで処理した。血中グルコースは、14日目及び21日目に後眼窩の静脈血滴についてグルコメーターを用いて測定し、14mmol/lを上回る値は糖尿病の徴候とみなした。
【0112】
経口耐性の評価
全身プライミングに対するCTL耐性を評価するため、経口OVAの最終投与の14日後又は21日後に、マウスに20x106 個のOVA被覆H−2Kbm-1脾臓細胞を用いて静脈注射し又はCFA中0.1mgのOVAタンパク質を用いて皮下注射した。続いて、これらの脾臓CTL活性を上記のように測定した。粘膜耐性の通常のインデックスを評価するため、経口OVAの最終投与の7日後に、マウスにCFA中のOVA(0.1mg)を尾の基部に皮下注射により免疫化した。10日後、マウスに麻酔をかけ、後眼窩の静脈叢からガラスの毛細管を用いて給餌し、CO2 窒息により屠殺し、これらの脾臓及び鼠蹊リンパ節を摘出した。血清を回収しOVA抗体の検定用に−20℃で保存した。細胞懸濁液を、ステンレス鋼網を用いて機械的破壊により脾臓及び節から調製し、洗浄し、計数し、そしてOVAに対する増殖応答及びサイトカイン応答の検定用に2mMのグルタミン、5x10-5の2−メルカプトエタノール及び5%v/vの胎児牛血清を含有するRPMI−1640培地に再懸濁した。
【0113】
OVAに対するIgGサブクラス抗体は、前述したようにペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3抗体(サザン・バイオテクノロジー・アソシエイツ)を用いてELISAにより測定した。
【0114】
200μLの培地中での脾臓細胞(1x106 )又は鼠蹊リンパ節細胞(5x105 )のOVAに対する増殖応答は、5%CO2 /大気中37℃で96時間0.1mg/mlのOVAの存在下又は非存在下でインキュベーションした後、96穴リンブロプレート(フローラブズ社、マックリーン、バージニア州)の丸底ウェルで8回反復して測定した。 3H−チミジン(1μCi)を細胞回収前10〜16時間に各ウェルに添加し、該細胞を回収し、洗浄し、トップカウントシンチレーションカウンターで計数した。OVAに対する脾臓細胞又は鼠蹊リンパ節細胞のIFN−γ及びIL−4の応答はELISPOT検定により測定した。細胞(5x105 /200μl)は、5μg/mlPBSのモノクローナルラット抗マウスIFNγ(クローンR4−6A2)又はIL−4(クローン11B11)抗体で一晩予め被覆したマルチスクリーン・インモビロン−P膜96穴プレート(MAIPS4510;ミリポア社、ノースライド、オーストラリア)の穴に添加した。細胞は、5%CO2/大気中37℃で24時間0.1mgのOVAの存在下又は非存在下でインキュベーションした後、洗浄して得た。膜に結合したサイトカインは、4μg/mlのビオチン複合モノクローナルラット抗マウスIFN−γ(クローンXMG1.2)又はIL−4(クローンBVD6−24G2)と4℃で一晩反応させた。洗浄後、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ、次いで3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC;ダコ社、カルピンテリア、カリフォルニア州)を用いて発色させた。全てのモノクローナル抗体はファーミンゲン社、サンディエゴ、カリフォルニア州から購入した。
【0115】
統計 治療群間の差異はフィッシャーの正確検定又はマン−ホイットニー試験により分析した。
【0116】
結果CD40Lの阻害は経口OVAによるCTL誘導を損なう
CD4T細胞の援助に依存する経路(図12A)によるCTLプライミングを阻害するMR−1mAbの用量(250μg、腹腔内注射)を決定した後、同様の用量の対照のmAb6C8又はMR−1mAbのいずれかをC57B1/6マウスに与えた後、1日おきに3日間該マウスに20mgのOVAを給餌した。経口OVAは、6C8で処理したマウスでは75%(9/12)にCTL応答を誘導したが、MR−1で処理したマウスでは25%(3/12)しか誘導しなかった(図12B)。
【0117】
経口OVAによるCTLの活性化及び増加はCD40Lを必要とする
経口OVAによるCTL誘導がCTL前駆体の活性化及び増加と関連したことを証明するため、養子免疫細胞移入されたOVAに特異的なトランスジェニックCTL(OT−I細胞)を実験未使用のLy5.1同系レシピエント内に移入し、OVAを給餌した。経口OVAに対するOT−I細胞の応答におけるCD40Lの役割は、対照のmAb6C8又は抗CD40LmAbMR1のいずれかでレシピエントマウスを前処理することにより調べた。最終結果を分析する前に活性化、増殖、再循環そしておそらくは細胞死を生じさせるために、本発明者らは経口OVAの最終投与の14日後に該脾臓から得たOT−I細胞を調べた。この部位及び時間は、例えばOVAに誘導されたCTLを測定するために用いた他のプロトコルに相当するものであった。経口OVA及び6C8に応答して、脾臓のOT−I細胞が非常に増加し(図13B)CD44の発現を増大させ(図13A、13C)並びにCD62Lの発現を減少させた(図13A、13D)。このことは多数が活性化/記憶表現型を獲得したことを示している。しかしながら、MR1の存在下で、OT−I細胞の増加(図13B)及び活性化(図13A、13C、13D)を誘導する経口OVAの能力は著しく損なわれた。
【0118】
抗CD40L処理はRIP−OVA lo マウスにおける経口OVAによる糖尿病の誘導を防止する
予備実験で、本発明者らは、0.3x106 個のOT−II細胞及び0.2x106 個のOT−I細胞の最少量の移入がOVA被覆脾臓細胞でレシピエントのRIP−OVAloマウスを全身プライミングした後の糖尿病の発症に必要であることを見出した。従って、これらの数のOT−II細胞及びOT−I細胞をRIP−OVAloマウスに移入し、その翌日に該マウスに対照のmAb6C8又は抗CD40LmAbMR1を与え、次いで1日おきに5日間0.5mgのOVAを給餌した。経口OVAの後、6C8を与えられたマウスの60%(9/15)が糖尿病を発症したのに対し、MR1を与えられたマウスではわずか14%(2/14)しか発症しなかった(p=0.02)(図14)。
【0119】
抗CD40L処理は経口耐性の誘導を防止しない
CD40L遺伝子を標的とするマウスの実験は、CD40Lシグナル発信が経口耐性の誘導に必要であることを示した(39)。しかしながら、この突然変異はパイアー斑(39)の発症及び胚中心(40)の発達に影響する。従って、抗CD40LmAbで短期処理され且つ遺伝子操作されていないマウスにおいて経口耐性が誘導できるか否かを決定することが重要であった。以前、CTL免疫を誘導しながら、経口OVAが全身OVAによる強力なCTL免疫の更なるプライミングを逆に抑制することが示された(41)。抗CD40L処理がCTLへの経口OVAのこの耐性原効果に影響するか否かを決定するために、C57B1/6マウスに250μgの対照mAb6C8又は抗CD40LmAbMR1を腹腔内投与し、次いでPBS又はPBS中のOVAを給餌した。14日後又は21日後、これらを、CD4T細胞に依存する様式で、OVA被覆脾臓細胞を静脈注射で(図15A)又は完全フロイントアジュバント(CFA)中100μgのOVAを皮下注射で(図15B)プライムした。後者の方法はCD4T細胞の援助と関わりなく直接的にCTLをプライムする。これらの実験は、MR1による抗CD40L処理がいずれかの方法によるCTLの全身プライミングへの経口OVAの該耐性原効果を改変しないことを証明した。これは、マウスが高用量(20mgを1日おきに3日間)又は低用量(0.5mgを1日おきに5日間)の経口OVAの14日後又は21日後にチャレンジされたかどうかを問わず、全実験で一致した(図15C、15D)。
【0120】
次に、抗CD40L処理が経口耐性の通常パラメータに影響するか否かを決定するための実験を行った。経口OVA(20mgを1日おきに3日間)の最初の投与前におけるMR1の1回注射は、全身OVAでプライムしたT細胞増殖又はIFN−γ生産(図16A及び図16Bに脾臓細胞をそれぞれ示す)又は血清抗OVA抗体(図16C)の抑制を限定しなかった。増殖の平均刺激インデックスは、6C8投与後3.50(経口PBS)から1.96(経口OVA)に低減し(p<0.05)、MR1投与後3.21から2.04に低減した(p<0.05)(図16A)。経口OVA後のプライムされたIFN−γELISPOT応答の抑制は、より劇的で抗CD40L処理により影響されなかった(図16B)。いずれの条件下でもIL−4ELISPOTS(4/穴以下)はほとんど検出されなかった。
【0121】
抗原の粘膜投与は、自己抗原の場合、該抗原に対する次の免疫応答に耐性となることができ、自己免疫抗原の場合には、自己免疫疾患の発症を抑制できる。しかしながら、該モデルタンパク質抗原のオブアルブミン(OVA)の粘膜投与も細胞障害性T細胞(CTL)免疫を誘導し、これは疾患を惹起しうる。本発明者らは、経口OVAに誘導された耐性とCTL免疫が、CD40LとCD40の間の相互作用を標的化することにより切り離すことができることを示す。CD40Lのモノクローナル抗体阻害はCTLの同時誘導を妨げることにより耐性を強化した。これは、経口OVAへの応答としての養子免疫細胞移入されたOVAに特異的なCTL(OT−1−CD8細胞)の活性化及び増大の阻害により反映された。更に、膵臓β細胞上でOVAをトランスジェニック発現するマウスにおいて、CD40Lの阻害は、OVAの経口投与に続くCTL(OT−1細胞)媒介性自己免疫糖尿病の発症を有意に阻害した。これらの結果は、CTLに対する粘膜耐性がCTLプライミングのためのCD40Lシグナル発信の要件とは無関係に誘導されることを示している。従って、CD40Lシグナル発信の阻害はCTL媒介性自己免疫疾患を予防するための粘膜抗原の有効性(及び安全性)を改良できるであろう。これを証明するために、8週齢の雌NODマウスに、1日目、3日目、10日目、24日目及び38日目にエーロゾルインスリン(4mg/ml、10分間)又は希釈対照の投与直前に抗CD40Lモノクローナル抗体であるMR−1又は対照抗体の6C8を用いて処理された(300μg、腹腔内注射)。エーロゾルインスリンによる抗CD40L抗体の処理は、希釈剤又は対照抗体並びにエーロゾルインスリン又は希釈剤のいずれかによる抗CD40L抗体処理と比較して糖尿病の発症率を著しく低減した(図17)。
【0122】
実施例14
鼻腔内プロインスリンDNAは糖尿病を予防するCD4T細胞を誘導する材料及び方法DNA
マウスのプロインスリンIIcDNA又はオブアルブミンゲノムDNAを、CMV初期プロモーターの制御下で哺乳動物発現ベクターのpCIに由来するプラスミドベクター内にサブクローニングした。該ベクターを改変し、CIGHと名付ける。プラスミドを、大腸菌から調製し、PEG沈降及びトリトンX114相分配により精製し、1mlのPBSに2mgのDNAを希釈し、−20℃で凍結した。
【0123】
マウス及び処理
マウスはザ・ウォルター・アンド・イライザ・ホール・インスティチュート・オブ・メディカル・リサーチで飼育し維持した。3週齢及び5週齢で、50μgのDNAを含む25μlのPBSを麻酔をかけていない雌マウスに5μlずつ繰り返し鼻腔内投与した。他の実験においては、マウスを開始時3週齢で4週間連続して25μgのDNAを鼻腔内投与した。
【0124】
糖尿病の決定
血中グルコースは、後眼窩の静脈叢から微細なガラスの毛細管を介して得られた血液滴についてアドバンテージモニター(ベーリンガーマンハイム社)を用いて測定した。これらの血中グルコースが連続した日で11mMを上回る場合、マウスは糖尿病とみなされた。養子免疫細胞移入研究で用いた糖尿病のドナーマウスは1週間未満で高い血中グルコースを示した。
【0125】
結果
初期の実験では、10週齢の鼻腔内DNA処理されたマウスから得られた脾臓細胞を、ナイロンウールを経る経路によりT細胞(以下の本明細書で脾臓T細胞と呼ぶ)について濃縮し、次いで、糖尿病になったばかりのNODマウスからの脾臓細胞と共に放射線照射した6週齢の雄NODマウスに静脈注射で共移入するか又はシクロホスファミド処理したNOD雌内に静脈注射で移入した。シクロホスファミド処理はNODマウスにおける糖尿病の発症を早めた。両実験モデルにおいて、プロインスリンDNA処理されたドナーからの細胞を受容したレシピエントマウスに糖尿病発症率の有意な低下が観察された。5x106 個の脾臓T細胞が2x107 個の「糖尿病」脾臓細胞とともに共移入された3つの実験において、移入4週間後のレシピエントにおける糖尿病の合計発症率は、オブアルブミンDNA処理されたドナーからの細胞のレシピエントの64%と比較してプロインスリンDNA処理されたドナーからの細胞のレシピエントでは14%であった(p=0.003)(表4)。平行して、5x106 個の脾臓T細胞を、300mg/kgのシクロホスファミドを腹腔内注射で受容した2日後の8〜10週齢の雌NODマウス内に移入した。シクロホスファミドの17日後に観察された糖尿病の最大発症率は、プロインスリンDNA処理されたドナーからの細胞のレシピエントの12.5%と比較してオブアルブミンDNA処理されたドナーからの細胞のレシピエントでは56%であった(p=0.02)(表5)。プロインスリンDNAの筋内注射を二回受けたマウスから得た5x106 個の脾臓T細胞をシクロホスファミド処理されたレシピエント内に注射した場合、防御は観察されなかった(表5)。
【0126】
鼻腔内プロインスリンIIDNAを投与されたNODマウスの脾臓CD4T細胞は糖尿病の養子免疫細胞移入を抑制する
【0127】
【表4】
Figure 2003512435
【0128】
*p=0.003、**p=0.02は、オブアルブミンDNA対照と比較してのもの、フィッシャーの正確検定
【0129】
鼻腔内プロインスリンIIDNAを投与されたNODマウスの脾臓CD4T細胞はシクロホスファミド誘導性糖尿病を抑制する
【0130】
【表5】
Figure 2003512435
【0131】
*p=0.002、**p=0.04は、オブアルブミンDNA対照と比較してのもの、フィッシャーの正確検定
【0132】
本発明者らは、次に、分画した脾臓T細胞集団を移入することにより防御の原因となるT細胞の表現型を同定することに努めた。脾臓T細胞を、磁気MACSマイクロビーズと結合させた抗マウスCD4モノクローナル抗体又は抗マウスCD8モノクローナル抗体のいずれかとインキュベートし、ポジティブ選択カラム(ミルテニー社)上で精製した。FACS分析によるCD4T細胞及びCD8T細胞の純度はそれぞれ>95%及び>85%であった。次に、4x106 個のCD4T細胞又は1x106 個のCD8T細胞のいずれかを2x107 個の糖尿病脾臓細胞と共に6週齢の放射線照射された雄内に共移入された。移入4週間後の糖尿病の発症率は、オブアルブミンDNA処理された対照からのCD4T細胞のレシピエントの71%と比較してプロインスリンDNA処理されたドナーからのCD4T細胞のレシピエントでは36%であった(p=0.02)(表4)。対照的に、プロインスリンDNA又はオブアルブミンDNAのいずれかで処理されたマウスからのCD8細胞を共移入されたレシピエントでは糖尿病の発症率(94%対83%)に差異はなかった(表4)。4x106 個のCD4T細胞又は2.5x106 個のCD4涸渇(CD8T細胞が濃縮された)脾臓T細胞を、シクロホスファミド処理された10週齢の雌マウス内に注射した場合に同様の結果が得られた。従って、プロインスリンDNA処理されたドナーからのCD4T細胞を受容したマウスの糖尿病発症率(17%)は、オブアルブミンDNA処理されたドナーからCD4T細胞を受容したマウス(56%)と比較して有意に低下し(p=0.04)、一方、プロインスリンDNA又はオブアルブミンDNAで処理されたドナーからのCD4涸渇脾臓T細胞を受容したマウスでは糖尿病発症率の差異はなかった(表5及び表6)。
【0133】
【表6】
Figure 2003512435
【0134】
*p=0.007、**p=0.4は、オブアルブミンDNA対照と比較してのもの、フィッシャーの正確検定
【0135】
ヒト及びNODマウスの両方で、高血糖症の発症は「インスリン炎」の後に起き、「インスリン炎」は、該島の血管の極又は境界でのリンパ球の島周囲の蓄積からβ細胞破壊に関連した該島内への重度の浸潤まで及ぶ。次に、本発明者らは、NODマウスの島を調べ、インスリン炎の程度が70日齢及び100日齢の両方でオブアルブミンDNA処理されたマウスと比べてプロインスリンDNA処理されたマウスで有意に低いことを見出した(0.89±0.08対1.6±0.12、p<0.01、マンーホイットニー試験)。
【0136】
当業者は本明細書に記載された本発明が具体的に記載されたもの以外の変形及び修飾を受け入れる余地があることを理解するであろう。本発明はこのようなあらゆる変形及び修飾を包含することが理解されるべきである。本発明は、この明細書中で言及し又は示した段階、特徴、組成物及び化合物の全てを個別に又は集合的に包含し、並びに任意の二つ以上の該段階若しくは特徴の任意の組合わせ又は全ての組合わせも包含する。
【0137】
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【0145】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、日齢56日におけるヒトインスリン(80μg)の経鼻投与が雌NODマウスにおける糖尿病発症開始を遅延させることを示すグラフ表示である。
【図2】 図2は、日齢56日におけるヒトプロインスリン(40μg)の経鼻投与が糖尿病開始を遅延させることを示すグラフ表示である。
【図3】 図3は、ヒトプロインスリンアミノ酸24〜36の経鼻投与(日齢56日に40μg)が糖尿病開始を遅延させることを示すグラフ表示である。
【図4】 図4は、エーロゾルインスリンが糖尿病の移入を抑制するCD8T細胞を誘導することを示すグラフ表示である。週齢6〜9週のNOD雄マウス(n=16/群)に、エーロゾルインスリン処理又はオバルブミン処理したNOD雌マウス由来の分画していない(A)又は分画した(B〜E)脾臓細胞と共に、最近糖尿病にかかった14〜19週齢の雌マウス由来のプールした脾臓細胞を注射し、それらの糖尿病発症率をその後追跡監視した。示した実験では、エーロゾル供与マウスは10連続日の間次いで49日齢からは毎週1回処理されたが、156日齢で犠牲にしたときは正常血糖値であった。
【図5】 図5は、エーロゾルインスリンが糖尿病移入を抑制するCD8γδT細胞を誘導することを示すグラフ表示である。若い雄NODマウスに「糖尿病」脾臓細胞(2×107 )と図4の説明のようにエーロゾル処理されたマウス由来の総又は分画した脾臓T細胞とを同時注射した。注射した分画細胞の数は、A)で、エーロゾルインスリンマウス由来であり、約107 総T細胞であり、約107 のγδ欠失T細胞又は1.4×105 γδT細胞であり、B)では、エーロゾルインスリンマウス由来であり、約107 総T細胞、2×106 CD8T細胞、2×106 γδ欠失CD8T細胞又は1.5×105 CD8γδ陽性T細胞であった。
【図6】 図6は、糖尿病の養子免疫細胞移入はエーロゾルインスリンにより誘導されたCD8γδT細胞により抑制されることを示す図式的表示である。11の実験の要約である。
【図7】 図7は、ヒトプロインスリンアミノ酸24〜36(日齢56日に40μg)の経鼻投与がNODマウスにおいて糖尿病の養子免疫細胞移入を抑制するCD4T細胞を誘導することを示すグラフ表示である。
【図8】 図8は、マウスのプロインスリンアミノ酸26〜34及びある程度までマウスプロインスリンアミノ酸25〜34がMHCクラスI分子Kd に結合することを示すグラフ表示である。この検定では、RMA−S細胞の表面でのKd の発現がフローサイトメーター中での蛍光により検出されるモノクローナル抗Kd 抗体の結合によって監視される。該細胞へのKd 結合ぺプチドの付加はKd を安定化し、シグナル応答における右側シフトにより示されるように細胞表面でのその発現を増加させる。イソ型対照=対照のモノクローナル抗体、ぺプチドなし=構成的Kd 発現、HAP及びLLO=Kd に結合することが知られており、陽性対照として用いられたフル・ヘマグルチニン及びリステリア由来のぺプチド。
【図9】 図9は、マウスプロインスリンアミノ酸25〜34がNODマウスにおいてKd に限定された細胞障害性Tリンパ球(CTL)を誘導することを示すグラフ表示である。6週齢の雌マウスを、完全フロイントアジュバント中のぺプチド50μgで皮下に免疫化した。14日後にその脾臓を摘出し、脾臓細胞をイン・ビトロで10μg/mlのぺプチドで6日間、再刺激した。脾臓細胞を次に51Cr及びぺプチド負荷RMA−S標的細胞に対するCTL活性についてテストした。
【図10】 図10A及び図10Bは、C−末端切断が経鼻投与のプロインスリンB−Cぺプチドの糖尿病抑制効果を増強することを示す図式的表示である。
【図11】 図11は、CD8T細胞を活性化してCTLとするCD40L−CD40相互作用の役割を含む、I型糖尿病におけるβ細胞破壊の仮定された機構を示す図式的表示である。
【図12】 図12は、CTLの全身プライミング(A)及び経口プライミング(B)がCD40Lのシグナル発信を要求することを示すグラフ表示である。(A)対照mAbである6C8(白抜き四角)又は抗CD40LmAbであるMR1(白丸)の250μgを、CTLをプライムするためにOVA被覆H−2Kbm-1脾臓細胞の20×106 個を静脈注射でチャレンジする1日前にC57B1/6マウスに1回腹腔内注射した。14日後にマウスを殺し、その脾臓細胞をCTL活性についてテストし、代表的個々のマウスについてOVA特異的溶解として表した。(B)6C8又はMR1の同じ用量をマウスに給餌し、次いで1日おきに3日間20mgのOVAを給餌した。14日後にさらにプライミングすることなく、マウスを殺し、その脾臓細胞をCTL活性についてテストし、今度は個々のマウスの脾臓当たりの溶解ユニットとして表した(n=12/群)。
【図13】 図13は、経口OVAによるOVA特異的CTLの活性化及び拡大がCD40Lを要求することを示すグラフ表示である。Ly5.1に対して類遺伝子的なレシピエントマウスC57B1/6を、3×106 トランスジェニックOT−I細胞(Ly5.2)で養子免疫細胞移入し、次いで対照mAbである6C8又は抗CD40LmAbであるMR1の250μgを腹腔内投与した。各処理群からのマウスを次に二つの群に分け、PBSか又はPBS中の20mgOVAのいずれかを1日おきに3日間に給餌した。mAb処理は第3回目の給餌の前に繰り返した。給餌開始から14日目にマウスを殺し、それらの脾臓中のOT−I細胞の数及び表現型をフローサイトメトリーにより分析した。(A)個々のマウスのドット−プロットは、OT−I細胞上でのCD44発現(左)及びCD62L(L−セレクチン)発現(右)を示す。高レベルのCD44又は低レベルのCD62Lを発現する細胞の百分率は対応する四半分に示してある。6C8又はMR1で処理され次いでPBS又はOVAを給餌された個々のレシピエントマウスにおける脾臓当たりのOT−I細胞の数(B)、CD44の発現(C)及びCD62Llo(D)OT−I細胞の%は1回の実験について示されるが、類似の結果が3回の実験で得られた。
【図14】 図14は、抗CD40L処理がRIP−OVAloマウスの経口OVAによる糖尿病の誘導を防止することを示すグラフ表示である。OT−I細胞及びOT−II細胞を保持するRIP−OVAloマウスに、対照mAbである6C8又は抗CD40LmAbであるMR1を250μg腹腔内注射した。低用量経口耐性計画を模倣するため、次に1日おきに5日間0.5mgのOVAをマウスに給餌した。給餌の開始後12日目に血中グルコースを測定し、13ミリモル/lを越える価を糖尿病の診断と考えた。データは2回の実験からプールする。
【図15】 図1は、抗CD40L処理がCTLの全身プライミングに対する経口耐性を制限しないことを示すグラフ表示である。OVA被覆脾臓細胞での静脈内プライミング(A)又はCFAにおけるOVAでの皮下プライミング(B)への応答としてのCTL活性は、対照mAbである6C8及び抗CD40LmAbであるMR1で処理されたマウスにおける経口OVAによって同じ様に減弱されない。マウスを6C8又はMR1の250μgで腹腔内注射し、次いで1日おきに3日間PBS(黒四角)又はPBS中の20mgOVA(白丸)のいずれかを給餌した。14日又は21日(示していない)の後に、マウスを全身的にプライムし、7日後に殺し、それらの脾臓細胞を、CTL活性の標準的なイン・ビトロ51Cr放出検定のために回収した。エフェクター(E)としてプライムした脾臓細胞を、標的(T)としての51Cr負荷細胞に対してテストした。それぞれのプロットは個々のマウスを表す。個々のマウスに対するCTL活性プロットを、(A)におけるようにプライミング後の4回の実験(C)からそして(B)におけるようなプライミング後の2回の実験(D)からの溶解性ユニットに変換した。これらの実験では、マウスはPBSか又は20mgの経口OVAのいずれかを1日おきに3日(C)又はPBSか0.5mgの経口OVAのいずれかを1日おきに5日間(D)投与された。
【図16】 図16は、抗CD40L処理が、T細胞増殖応答(A)及びIFN−γ応答(B)、又は抗体生産(C)の全身プライミングに対する経口耐性を制限しないことを示すグラフ表示である。マウス(n=3/群)に、対照mAbである6C8又は抗CD40LmAbであるMR1の250μgを腹腔内注射した。次いでそれらにPBSか又はPBS中の20mgOVAのいずれかを1日おきに3日間給餌した。7日後に、尾の基部にCFA中のOVA(0.1mg)を皮下注射してマウスを免疫化した。10日後に脾臓及び鼠蹊部のリンパ節及び血清を採取して、0.1mg/mlのOVA(平均値及び標準偏差は脾臓に対するもの)及び抗OVA抗体の非存在下(黒線)又は存在下(縞模様)におけるT細胞増殖及びサイトカイン生産の測定を、方法の部で記載したように行なった。
【図17】 図17は、エーロゾルインスリンを投与されたNODマウスにおける糖尿病発症率に及ぼす抗CD40Lモノクローナル抗体(MR−1)による処理の効果を示すグラフ表示である。
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