JP2003347128A - 巻き鉄芯とその製造方法 - Google Patents

巻き鉄芯とその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁区制御された方向性電磁鋼板を巻き鉄芯に
使用することを可能ならしめ、磁気特性にすぐれた巻き
鉄芯とその製造方法を提供する。 【解決手段】 方向性電磁鋼板を形成し、歪み取り焼鈍
を行って製造された巻き鉄芯において、焼鈍工程後に鉄
芯を構成する鋼板の全て、あるいは一部の表面に、鋼板
の圧延方向に概垂直な線状歪みを圧延方向に概一定の間
隔で付与する巻き鉄芯の製造方法と当該方法によって製
造される巻き鉄芯である。また、レーザ照射により線状
歪みを付与することを特徴とする巻き鉄芯の製造方法で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気特性の優れた
巻きトランスの鉄芯とその製造方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】圧延方向に磁化容易軸がそろった方向性
電磁鋼板がトランス鉄芯材料として用いられている。方
向性電磁鋼板の製造方法として、特公昭58−2640
5号公報に方向性電磁鋼板の連続生産設備にて、圧延方
向にほぼ垂直に、且つ圧延方向に周期的な線状の歪みを
導入し、鉄損を低減する方法が開示されている。この方
法の原理は、表面歪みを起点として形成される板厚方向
に深い環流磁区により180°磁壁間隔が細分化される
結果、特に渦電流損が低減されるというものであり、磁
区制御と呼ばれる。歪み導入方法としてはレーザ照射を
用いる方法が非接触、高速処理、制御性の観点で最も優
れた方法として実用に供されている。
【0003】ところで、トランス鉄芯の種類には大別し
て積み鉄芯と巻き鉄芯の二種類がある。積み鉄芯の製造
工程では、方向性電磁鋼板は積層されるのみであり、特
に鋼板に変形は生じないため歪み取り焼鈍の必要はな
い。一方、巻き鉄芯の製造工程では、鋼板を積層した後
にロール状に巻き締めて、角形の鉄芯形状に圧縮加工す
る。その際に鋼板に変形が発生することから、そこでの
不要な歪みを取るために焼鈍を行う。その結果、レーザ
照射等により付与された線状歪みも同時に除去されるた
め磁区制御効果、すなわち鉄損低減効果も消失する。従
って、従来、磁区制御された方向性電磁鋼板は積み鉄芯
にのみにしか使用できないという問題があった。
【0004】そこで巻き鉄芯にも適用できる磁区制御方
法として、鋼板表面に周期的な溝を形成する方法が、例
えば特公昭63−44804号公報、US.PAT.4
750949号、特開平7−220913号公報等に歯
形プレス・ロール、エッチング、レーザ加工等を用いる
ことが種々提案されている。溝形成による磁区制御の原
理は空隙と鋼板の透磁率の違いを利用し、鋼板表面に磁
極を発生させ、環流磁区と同様の磁区細分化効果を得る
ものである。しかし、磁区細分化の源は鋼板表面に限ら
れるため、鉄損低減効果が歪みによる場合に比べ低いと
いう問題がある。また、鋼板に溝を形成するには歯形プ
レス等の機械方式は歯型の摩耗が問題であり、またエッ
チングによる方法はレジスト処理・除去等により工程が
複雑化する。レーザによる溝加工ではレーザ歪み導入に
比べ要求されるパワーが大幅に増加するという問題があ
った。すなわち磁気特性、製造プロセスの双方でレーザ
歪みによる磁区制御方法が優れており、これを巻き鉄芯
に使用することが望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、レー
ザ照射による歪み付与で周期的な環流磁区を形成し、磁
区制御された方向性電磁鋼板を巻き鉄芯に使用すること
を可能ならしめ、磁気特性にすぐれた巻き鉄芯とその製
造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは巻き鉄芯の
製造工程を詳細に検討し、巻き鉄芯の製造工程にて歪み
取り焼鈍を行った後に、積層された鋼板を分解して、一
枚毎にあるいは数枚単位で巻き線へ組み込み、鉄芯を再
構成する工程に着目した。この工程で鋼板毎に線状、ま
たは点列状歪みを付与するためのレーザ照射を行えば、
従来の製造効率を大きく損なうことなく、またこの工程
以降は焼鈍工程がないため、優れた鉄損特性を保持した
まま巻き鉄芯が製造可能であるという知見を得た。
【0007】すなわち本発明は、方向性電磁鋼板を用い
て形成し、歪み取り焼鈍を行って製造された巻き鉄芯で
あって、鉄芯を構成する鋼板の全て、あるいは一部の表
面に、鋼板の圧延方向に概垂直な線状、または点列状の
歪みが圧延方向に概一定の間隔で付与されていることを
特徴とする巻き鉄芯である。また本発明は、方向性電磁
鋼板を使用した巻き鉄芯の製造方法において、所望の巻
形状の鉄芯を形成し、歪み取り焼鈍を行った後に、鉄芯
を構成する鋼板の全て、あるいは一部の表面に、鋼板の
圧延方向に概垂直な線状、または点列状の歪みを、圧延
方向に概一定の間隔で付与することを特徴とする巻き鉄
芯の製造方法である。また本発明は、方向性電磁鋼板を
使用した巻き鉄芯の製造方法において、複数枚の鋼板を
重ね合わせ所望の巻形状の鉄芯を形成し、歪み取り焼鈍
を行った後に、鉄芯を構成する鋼板の全て、あるいは一
部の表面に、鋼板の圧延方向に概垂直な線状、または点
列状の歪みを、圧延方向に概一定の間隔で付与すること
を特徴とする巻き鉄芯の製造方法。また本発明は、方向
性電磁鋼板を使用した巻き鉄芯の製造方法において、一
枚の帯状鋼板をロール成形して所望の巻形状の鉄芯を形
成し、歪み取り焼鈍を行った後に、鉄芯を巻き解く工程
にて鋼板表面に、圧延方向に概垂直な線状、または点列
状の歪みを、圧延方向に概一定の間隔で付与することを
特徴とする巻き鉄芯の製造方法である。また本発明は、
レーザ照射により歪みを付与することを特徴とする巻き
鉄芯の製造方法である。また本発明は、レーザ照射時の
集光ビーム形状、パワー密度、レーザ波長、または照射
速度の調整により鋼板表面の絶縁皮膜剥離痕が発生しな
いようにすることを特徴とする巻き鉄芯の製造方法であ
る。
【0008】尚、本発明で定義する線状、あるいは点列
状の歪みとは、環流磁区発生の源となる圧縮、あるいは
張力歪みであり、鋼板母材の溶融・再凝固、あるいは変
形などを伴わない比較的強度の弱い歪みである。且つ巻
き鉄芯製造工程で行う、歪み取り焼鈍条件である、例え
ば800℃、数時間の焼鈍では消失してしまう歪みであ
る。この歪みは例えばX線回折により測定が可能であ
り、且つ磁区観察用の電子顕微鏡により、歪み付与部の
環流磁区を観測することができるので、本発明で定義さ
れる歪みを判別することが可能である。また歪み取り焼
鈍を行うことで消失するため、焼鈍で消滅しにくい溶融
・再凝固部や変形等により発生する歪みとも区別が可能
である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下実施例を用いて、本発明の作
用を説明する。図1は本発明に係わる方法の説明図であ
る。まず、方向性電磁鋼板1を切断し積層する。この
時、方向性電磁鋼板の圧延方向は図中のL方向に相当す
る。次にロール状に巻き締めた後、所望の角形状に成形
する。その後、変形部の歪みを取るための焼鈍を行う。
焼鈍温度、時間は例えば800℃、4時間である。焼鈍
工程が完了した後、レーザ照射装置2を用いて、鋼板一
枚毎に分離し、L方向に垂直なC方向にレーザビームを
線状にスキャン照射する。レーザ光は光ファイバー7に
より導光され、照射装置2中の図示されないガルバノモ
ータ駆動のスキャンミラーとfθレンズによりレーザビ
ーム6は圧延方向に概垂直にスキャン集光照射される。
また、移動装置3により鋼板の外形に沿ってL方向に移
動し、鋼板全面にレーザビームが照射される。ここでス
キャン繰り返し周波数と照射装置2の移動速度によりL
方向照射間隔Plが調整され、線状、または点列状の歪
み4が得られる。
【0010】本発明において、レーザビームはパルスあ
るいは連続波レーザであり、また集光形状は点状、ある
いは楕円状であり、従来のレーザ歪み導入法で供されて
きたいずれの方法であっても構わない。レーザ照射によ
る周期的な歪みにより、方向性電磁鋼板の鉄損は低減さ
れる。また特に、レーザ集光ビーム形状、パワー密度、
波長、スキャン速度により、被照射部の到達温度を電磁
鋼板の表面被膜融点以下に調整することで、表面被膜の
剥離が抑制される。この様な特殊な方法によって形成さ
れた場合、表面に地鉄が露出しないため、より絶縁性に
優れるという利点を有する。レーザ照射の後、各鋼板は
分離前と同じ順番で巻き線を挟み込む様に鉄芯に再構成
され、最終的な巻きトランス5が製作される。
【0011】また巻き鉄芯を製造する別の方法として、
圧延方向に長い、一枚の帯状鋼板をロール状に巻き、更
に所望の角形状に成型して、歪み取り焼鈍を行う方法が
ある。この方法で成型した後、鉄芯を一層毎に巻き解く
と同時に切断する。本発明ではこの巻き解き工程にて鋼
板にレーザ照射を行う。これにより移動する鋼板に対し
て連続的にレーザ照射を行うことが可能であるため効率
的な製造を行える。レーザビームを照射し、切断した
後、各鋼板を一枚毎に巻き線に挿入することで巻きトラ
ンス5を製造する。
【0012】図1にて説明した製造方法にて、巻きトラ
ンスを製造した。製造条件は連続波YAGレーザ出力5
0W、照射ピッチPl=5mmである。この条件にて製造
した巻き鉄芯を使用したトランスと、レーザを照射せず
に製造したトランスの性能を比較を行ったところ、本発
明の方法のトランスが効率で約7%優れていた。またこ
の巻き鉄芯を分解し、各鋼板の磁区構造を磁区観察用電
子顕微鏡で観察したところ、レーザ照射を行い歪みを付
与した部分に環流磁区が形成され、180°磁壁間隔が
細分化されていることが確認された。
【0013】本発明では、巻き鉄芯製造工程の中で焼鈍
工程の後、巻きトランス最終組み立ての前にレーザ照射
歪みによる磁区制御を行うため、磁区制御効果が焼鈍に
より消失することがなく、鉄損特性の優れた材料を巻き
鉄芯材として使用することが可能となる。
【0014】
【発明の効果】以上の本発明によれば、レーザ歪み付与
により環流磁区を形成し、磁気特性を改善した方向性電
磁を巻き鉄芯に用いることができるため、磁気特性の優
れた巻きトランスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる巻き鉄芯とその製造方法の工程
説明図である。
【符号の説明】
1 方向性電磁鋼板 2 レーザ照射
装置 3 移動装置 4 線状歪み 5 巻き鉄芯 6 レーザビー
ム 7 光ファイバー L 方向性電磁
鋼板の圧延方向 C 方向性電磁鋼板の板幅方向

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性電磁鋼板を用いて形成し、歪み取
    り焼鈍を行って製造された巻き鉄芯であって、鉄芯を構
    成する鋼板の全て、あるいは一部の表面に、鋼板の圧延
    方向に概垂直な線状、または点列状の歪みが圧延方向に
    概一定の間隔で付与されていることを特徴とする巻き鉄
    芯。
  2. 【請求項2】 方向性電磁鋼板を使用した巻き鉄芯の製
    造方法において、所望の巻形状の鉄芯を形成し、歪み取
    り焼鈍を行った後に、鉄芯を構成する鋼板の全て、ある
    いは一部の表面に、鋼板の圧延方向に概垂直な線状、ま
    たは点列状歪みを、圧延方向に概一定の間隔で付与する
    ことを特徴とする巻き鉄芯の製造方法。
  3. 【請求項3】 方向性電磁鋼板を使用した巻き鉄芯の製
    造方法において、複数枚の鋼板を重ね合わせ所望の巻形
    状の鉄芯を形成し、歪み取り焼鈍を行った後に、鉄芯を
    構成する鋼板の全て、あるいは一部の表面に、鋼板の圧
    延方向に概垂直な線状、または点列状の歪みを、圧延方
    向に概一定の間隔で付与することを特徴とする巻き鉄芯
    の製造方法。
  4. 【請求項4】 方向性電磁鋼板を使用した巻き鉄芯の製
    造方法において、一枚の帯状鋼板をロール状に成形して
    所望の巻形状の鉄芯を形成し、歪み取り焼鈍を行った後
    に、鉄芯を巻き解く工程にて鋼板表面に、圧延方向に概
    垂直な線状、または点列状の歪みを、圧延方向に概一定
    の間隔で付与することを特徴とする巻き鉄芯の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 レーザ照射により歪みを付与することを
    特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の巻き鉄
    芯の製造方法。
  6. 【請求項6】 レーザ照射時の集光ビーム形状、パワー
    密度、レーザ波長、または照射速度の調整により鋼板表
    面の絶縁皮膜剥離痕が発生しないようにすることを特徴
    とする請求項5に記載の巻き鉄芯の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016201489A (ja) * 2015-04-13 2016-12-01 株式会社ダイヘン 巻鉄心の接合部分離方法、及び巻鉄心の最外周鋼板切断装置
JP2021163943A (ja) * 2020-04-03 2021-10-11 日本製鉄株式会社 巻鉄芯、巻鉄芯の製造方法および巻鉄芯製造装置
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