JP2003339093A - 水中音源 - Google Patents

水中音源

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JP2003339093A JP2002147058A JP2002147058A JP2003339093A JP 2003339093 A JP2003339093 A JP 2003339093A JP 2002147058 A JP2002147058 A JP 2002147058A JP 2002147058 A JP2002147058 A JP 2002147058A JP 2003339093 A JP2003339093 A JP 2003339093A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】大きな音圧レベルと鋭い指向性を有する低周波
音波を送波可能な小型の水中音源を提供する。 【解決手段】複数周波数成分を送波する音源、水中に微
小気泡を発生する手段、音源の送波面全体を覆うように
配置された上記気泡の貯蔵手段を有し、送波面の法線方
向に対応する貯蔵手段の平均長さをLb、複数周波数の
差音周波数での水中の波長をλd、貯蔵手段内の平均密
度をρ、平均音速をc、等価非線形パラメータをβb、
上記複数周波数の中心角周波数をω、音圧の周波数スペ
クトルが最も大きい成分における送波面での音圧振幅を
p0、衝撃波形成距離xs=ρ・c /(βb・ω・p
0)とするとき、Lb/λdの値が4以下、xs/Lb
の値が0.2以上とし、貯蔵手段内にはωにおける共振
気泡より小さいか、望ましくはほぼ等しい気泡が多数含
まれるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ソーナーや水中通
信を行うための水中音源に関し、特に指向性の鋭い低周
波の音波を放射することによって、遠距離水中通信や海
底埋設物の探知および識別などを行うのに好適な水中音
源に関する。
【0002】
【従来の技術】遠距離水中通信や海底埋設物の探知およ
び識別などを行うための水中音源では、通常、減衰の小
さい低周波の音波が用いられる。しかし、指向性の鋭い
低周波の音波を送波するには、必然的に音源の開口長を
大きくする必要がある。音源の大型化にしたがって音源
の重量も増大するため、このような水中音源を水中航走
体などに実装することは困難であった。
【0003】特開平5−223923号公報では、海底
埋設物の検出を行うために、鋭い指向性を有する低周波
の音波を、開口長の小さな音源で送波することが可能
な、パラメトリック音源を利用する技術が開示されてい
る。パラメトリック音源は、周波数が高く指向性に優れ
る一次波のエネルギの一部が、海水の非線形音響伝播に
より二次波の成分である差周波数成分に移り、差周波数
成分に関して仮想的なエンドファイアアレイが形成され
たのと等価になる効果を利用した音源である。
【0004】ところが、パラメトリック音源は送信する
一次音波から変換される二次の音波へのエネルギの変換
効率が、高くとも百分の一程度であるため、その変換効
率の改善が望まれる。
【0005】パラメトリック音源の一次波から二次波へ
のエネルギ変換効率を高めるために、気泡の非線形振動
を利用することが考えられる。「日本音響学会誌、46
巻8号、p.622〜p.626、1990年」に述べ
られているように、気泡振動による非線形性の大きさは
音響媒質によって決定される非線形パラメータと等価な
ものとして考えることができる。通常、海水の非線形パ
ラメータは3.6程度であるが、気泡を含有している領
域では、等価的に非線形パラメータが数百から数千の大
きさになる。
【0006】このような気泡の効果を利用した水中音源
として、日本国特許第2911258号公報には、気泡
群の非線形振動を利用した水中用パラメトリック低周波
音源が開示されている。これは、気泡群を含有したウレ
タン樹脂やシリコン樹脂材料からなる二次波生成層を、
送波器からの放射音波の伝搬経路に配置し、水の音響非
線形性から生成される二次波だけでなく、気泡の非線形
振動によって二次波を生成し、一次波から二次波へのエ
ネルギ変換効率を向上させるものである。
【0007】また、特開平7−203579号公報で
は、パラメトリック効果を利用した送波器の前方に多数
の微細気泡を直接吐出、あるいは微細気泡の混入した水
を送波器前方に吐出させることによって、送波器前方に
一様な気泡領域を形成し、水中音場の音響非線形効果を
大きくして、二次波差音への変換効率を増大させた水中
音源装置が考案されている。この水中音源装置では、音
波の非線形効果により二次流が発生し、気泡が送波器か
ら遠くまで拡散されるので、二次波の発生する領域を長
くすることが可能であるとされている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、気泡
の非線形振動を用いることで、非線形パラメータが等価
的に数百から数千という大きな値になるため、気泡群を
含んだ領域では一次波から二次波への変換効率が非常に
高くなる。
【0009】しかし、非線形パラメータを大きくする
と、一次波の波形が急激に衝撃波波形へと移り、衝撃波
波形形成後には非線形吸収が生じるため、二次波の仮想
エンドファイアアレイの長さは、必然的に短くなってし
まう。その結果、遠方での二次波差音のビームは拡が
り、パラメトリック音源特有の鋭い指向性が得られなく
なる。また、ビームの拡がりによって、音響エネルギが
広い範囲に分布するため、遠方では二次波差音の音圧レ
ベルも、気泡がない場合に比べて小さくなってしまうこ
ともあり得る。
【0010】また、気泡を含んだ水と、気泡を含まない
水では、その減衰特性も変わり、特に共振気泡を含む場
合の吸収係数は、気泡を含まない海水のそれの数十倍か
ら数百倍にもなり得る。このため、気泡群を送波器前方
に遠くまで拡散させることができたとしても、上記非線
形吸収の他、気泡による減衰も加わることになり、一次
波は急激に減衰してしまうので、やはり仮想エンドファ
イアアレイ長は短くなってしまう。その結果、上述と同
じ理由により、遠方では気泡を用いた場合の方が、二次
波音圧レベルが小さくなってしまう。
【0011】本発明は、上述のような問題点に鑑みてな
されたもので、気泡群を利用してパラメトリック効果を
増大させる水中音源に関し、気泡を用いない場合と比較
して、遠方においても二次波差音の音圧レベルが大きく
とれる水中音源を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明の水中音源は、複数の周波数成分を送波
し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号として利用
する水中音源であって、水中に微小気泡を発生するため
の気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前方に、送波
面全体を覆うように配置され、上記気泡発生手段から生
じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上
記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さ
Lbと、上記差音周波数に対する水中での音波の波長λ
dとの比で定義されるLb/λdの値が、2以下であ
り、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音速および
等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよびβbと
し、上記複数の周波数成分の中心角周波数をωとし、上
記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数スペクト
ルが大きい周波数成分における、上記送波面での音圧振
幅をp0とした時に、 xs=ρ・c/(βb・ω・p0) として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段
の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、
0.5以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小
気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周
波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさの
気泡数が最大となる個数分布であることを特徴とする。
【0013】また、本発明の水中音源は、複数の周波数
成分を送波し、上記周波数成分の差音周波数成分を信号
として利用する水中音源であって、水中に微小気泡を発
生するための気泡発生手段と、上記水中音源の送波面前
方に、送波面全体を覆うように配置され、上記気泡発生
手段から生じた微小気泡を貯蔵するための貯蔵手段とを
具備し、上記送波面の法線方向に対応する上記貯蔵手段
の平均長さLbと、上記差音周波数に対する水中での音
波の波長λdとの比で定義されるLb/λdの値が、4
以下であり、上記貯蔵手段内における平均密度、平均音
速および等価非線形パラメータを、それぞれρ、cおよ
びβbとし、上記複数の周波数成分の中心角周波数をω
とし、上記複数の周波数成分の中で、最も音圧の周波数
スペクトルが大きい周波数成分における、上記送波面で
の音圧振幅をp0とした時に、 xs=ρ・c/(βb・ω・p0) として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段
の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、
0.2以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小
気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周
波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさよ
りも十分小さい気泡の数が最大となる個数分布であるこ
とを特徴とする。
【0014】また、上記の水中音源において、上記貯蔵
手段は、シリコン製か、ウレタン製の樹脂で囲まれて形
成されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例による水
中音源の基本構成を示す模式図である。本実施例の水中
音源は、基本的には、送波器1と、微小気泡発生手段2
と、微小気泡貯蔵手段3からなり、上記微小気泡発生手
段2と微小気泡貯蔵手段3は吐出管4で連結され、微小
気泡発生手段2で生じた微小気泡群21を含有する水
は、吐出管4を通って微小気泡貯蔵手段3に貯蔵され、
微小気泡生成層31を形成する。
【0016】微小気泡貯蔵手段3は、水と固有音響イン
ピーダンスがほとんど等しい、例えばシリコン製やウレ
タン製の樹脂で、中空になるように形成されており、送
波器1の送波面を全て覆うように設けられている。この
ような材質を選ぶことによって、気泡を固定された空間
に留め、この気泡領域に効率よく音波を透過させること
ができる。
【0017】送波器1からは複数の周波数成分を有する
一次波が放射され、信号としては、微小気泡生成層31
や水中において、音波の非線形効果によって生じる二次
波差音を利用する。例えば、一次波の周波数成分が50
kHzと60kHzの成分からなる場合、二次波差音と
して生じる10kHzの信号を利用する。
【0018】上記微小気泡生成層31に、一次波中心周
波数における共振気泡の大きさを有した気泡が多数含ま
れている場合、上記送波面の法線方向に対応する微小気
泡貯蔵手段3の平均長さLbは、信号として利用する2
次波差音周波数の音波の波長λdとの比Lb/λdが2
以下となる長さになっている。
【0019】例えば、上記のように、二次波差音の周波
数が10kHzで、海水中に音波を放射する場合には、
海水の平均音速を1487m/sとすると、Lbは約3
0cm以下にすればよい。なお、この例では、一次波中
心周波数は45kHzであり、このときの共振気泡の大
きさは、半径約70μmである。
【0020】さらに、微小気泡生成層31における平均
密度、平均音速および等価非線形パラメータを、それぞ
れρ、cおよびβbとし、上記複数の周波数成分の中心
角周波数をωとし、上記複数の周波数成分の中で、最も
音圧の周波数スペクトルが大きい周波数成分における、
上記送波面での音圧振幅をp0とした時に、 xs=ρ・c/(βb・ω・p0) として定義される衝撃波形成距離xsと、微小気泡貯蔵
手段3の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの
値が、0.5以上となるようになっている。
【0021】例えば、上記のように海水中での音波の放
射を考え、一次波の周波数が50kHzおよび60kH
zで、共に送波器1の送波面上における音圧振幅が14
1kPaであり、海水の平均密度が1028.6kg/
で、海水の平均音速が1487m/sであるとす
る。また、微小気泡貯蔵手段3には、半径70μmの共
振気泡が、気泡の体積含有比10−7で混入されている
とすると、微小気泡生成層31の等価非線形パラメータ
βbの値は、後述するように600程度になるため、衝
撃波形成距離xsの値は約14cmになる。したがっ
て、xs/Lb=1となるように設定すると、微小気泡
貯蔵手段3の平均長さLbは約14cmとなり、上記の
Lbが約30cm以下となる条件も満たされる。
【0022】一方、微小気泡生成層31に、一次波中心
周波数における共振気泡の大きさよりも十分小さい気泡
が、共振気泡に近い大きさの気泡に比べて数多く含まれ
ている場合には、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbと
2次波差音周波数の音波の波長λdとの比Lb/λdの
値が4以下となればよい。さらに、上述のように定義さ
れる衝撃波形成距離xsと、微小気泡貯蔵手段3の長さ
Lbとの比で定義されるxs/Lbの値は、0.2以上
となるようになっている。
【0023】例えば、上述の例では、Lbは約60cm
以下であればよい。また、微小気泡貯蔵手段3に、半径
が30μmの気泡が、体積含有比10−6で混入してい
る場合、後述するように、微小気泡生成層31での等価
非線形パラメータβbは700程度になり、衝撃波形成
距離xsは約12.1cmとなるので、微小気泡貯蔵手
段3の平均長さLbは60cm以下の値にすればよい。
【0024】次に、上述のような構成が有効である理由
について、以下、図面を用いて説明する。
【0025】送波器1から放射された一次波は、まず微
小気泡貯蔵手段3内に形成された微小気泡生成層31を
通過し、主に気泡振動の非線形性に伴う二次波の生成が
行われる。「日本音響学会誌、46巻8号、p.622
〜p.626、1990年」に記載されているように、
気泡群を含む水の音響非線形性は、等価的に非線形パラ
メータβbをもって表すことができる。等価非線形パラ
メータβbは、気泡の径や気泡の体積含有比、一次波お
よび二次波周波数などに依存する。
【0026】例えば、上記のように一次波の周波数成分
が50kHzと60kHzの成分からなり、10kHz
の二次波差音を利用する場合において、上記海水におけ
る気泡の体積含有比を10−7とすると、気泡半径と等
価非線形パラメータβbの関係は図2のようになる。一
次波の中心周波数45kHzにおける共振気泡の大きさ
は半径約70μmであり、共振気泡の利用によって、等
価非線形パラメータβbを600程度の非常に高い値に
することができる。
【0027】一方、気泡群を含む水における音波の伝播
では、気泡群のない水のそれに比べて、気泡での散乱な
どにより非常に大きな減衰特性を示すようになる。例え
ば、海水における気泡の体積含有比を10−7とし、気
泡半径を70μmとすると、音波の周波数と吸収係数の
関係は図3のようになる。図2において、約45kHz
に対するβbの値は、気泡径がほぼ共振気泡になった場
合の値を示しており、このときの吸収係数は約0.16
dB/cmとなる。45kHzにおける海水の吸収係数
は10−4dB/cm程度であり、これに比べて、共振
気泡が多数存在する場合の吸収係数は千倍以上もの大き
な値になる。
【0028】このように、水中に気泡群が含まれること
の効果は、等価非線形パラメータβbと、吸収係数の考
慮を行うことによって置き換えることができる。図2か
らも明らかなように、微小気泡生成層31を形成する
と、この領域における非線形パラメータが等価的に大き
くできるので、パラメトリック音源に対する一次波から
二次波へのエネルギ変換効率の改善が期待できる。しか
し、等価非線形パラメータβbが大きくなると、一次波
の波形は急激に歪み、衝撃波形成距離xsが短くなるた
め、衝撃波形成距離xs以降では非線形吸収によって一
次波のエネルギが急激に減少してしまう。さらに、気泡
領域を通過する一次波は気泡の散乱により、気泡のない
場合に比べて大きな減衰特性を示す。このため、二次波
仮想音源のエンドファイアアレイ長も短くなり、二次波
のビームは、気泡を含まない場合に比べて拡がってしま
う。その結果、音響空間に音響エネルギが広く分布する
ことになり、遠方における二次波音圧レベルは、気泡を
含まない場合よりも小さくなってしまう。
【0029】一例として、送波器1の送波面を直径30
cmの円形とし、一次波の周波数が40kHzおよび5
0kHzで、両周波数成分共に送波器1の送波面上にお
ける音圧振幅を141kPaとし、また、微小気泡貯蔵
手段3の平均長さLbを1mとする。微小気泡生成層3
1を形成する気泡の半径を、ほぼ共振気泡径に相当する
70μm、気泡の体積含有比を10−7とすると、図2
から微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβbは
600程度に見積もることができる。同様に、半径30
μm気泡の場合には、気泡の体積含有比を10−6とす
ると、微小気泡生成層31の等価非線形パラメータβb
は700程度に見積もることができる。
【0030】このような条件のもと、放物型非線形波動
方程式を差分法により計算し、非線形音場シミュレーシ
ョンを行った。まず、周波数10kHzの二次波差音に
関する音圧レベルの、音軸上距離特性のシミュレーショ
ン結果を示すと図4のようになる。図4において、点線
は微小気泡生成層31がない場合、実線は微小気泡生成
層31内の気泡の半径が70μmの場合、一点鎖線は微
小気泡生成層31内の気泡の半径が30μmの場合のシ
ミュレーション結果を示している。
【0031】また、図5は送波器1の送波面からの距離
900mの位置における、二次波差音の指向性に関する
シミュレーション結果を示したものである。図5におい
ても、図4と同様に、点線は微小気泡生成層31がない
場合、実線は微小気泡生成層31内の気泡の半径が70
μmの場合、一点鎖線は微小気泡生成層31内の気泡の
半径が30μmの場合のシミュレーション結果を示して
いる。
【0032】このシミュレーション条件下においては、
気泡の半径が70μmの場合、Ld/λd=6.7、x
s/Ld=0.14である。また、気泡の半径が30μ
mの場合、Ld/λd=6.7、xs/Ld=0.12
である。
【0033】これらの図から明らかなように、微小気泡
領域で一次波から二次波への変換効率を増大させ、なお
かつ仮想的な二次波エンドファイアアレイを形成しよう
とすると、非線形吸収や気泡の散乱による減衰によっ
て、必然的にアレイ長が短くなり、二次波ビームが拡が
ってしまう。このため、遠方において二次波の音響エネ
ルギも空間に広く分散されることになり、気泡を用いな
い場合に比べて、指向性、音圧レベルともに、劣化して
しまう。
【0034】次に、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLb
を15cmとし、その他の条件は上述と同様にした場合
の、二次波差音に関する音圧レベルの音軸上距離特性
と、送波器1の送波面からの距離900mの位置におけ
る、二次波差音の指向性のシミュレーション結果を、そ
れぞれ図6および図7に示す。このシミュレーション条
件下においては、気泡の半径が70μmの場合、Ld/
λd=1.0、xs/Ld=0.94である。また、気
泡の半径が30μmの場合、Ld/λd=1.0、xs
/Ld=0.81である。
【0035】このような構成にすることによって、上記
送波器から放射された一次波は、放射直後に、微小気泡
生成層31内で、強い音響非線形性による二次波仮想音
源領域を形成する。その後、気泡を含まない海水領域で
弱い音響非線形性に伴う二次波仮想音源のエンドファイ
アアレイが形成される。微小気泡生成層31内で形成さ
れた二次波仮想音源領域からの音波は点音源のように振
る舞うが、強い音響非線形性のために大きな音圧レベル
を有する。しかし、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLb
は短いため、一次波の減衰はほとんど無く、気泡を含ま
ない海水領域では、アレイ長の長い二次波仮想音源のエ
ンドファイアアレイの形成が可能になる。
【0036】以上に述べたように、本発明によれば微小
気泡生成層31内で形成された二次波仮想音源領域から
の大きな音圧レベルに加えられる形で、気泡を含まない
海水領域における二次波仮想音源のエンドファイアアレ
イによるビームが形成されるので、遠方においても高い
音圧レベルと鋭い指向性を有するパラメトリック音源が
可能となる。
【0037】この際、微小気泡生成層31を形成する気
泡の大きさが、共振気泡の大きさと同じくらいのものが
多数含まれている場合は、気泡の散乱による減衰が激し
く起こるので、微小気泡貯蔵手段3の平均長さLbは、
二次波の波長λdの2倍程度以下にするのが望ましい。
さらに、非線形吸収による減衰が大きく影響しないよう
に、微小気泡貯蔵手段3の長さLbは、この際に定義さ
れる衝撃波形成距離xsの2倍程度以下の長さ、すなわ
ちxs/Ldが0.5以上になるようにすることが望ま
しい。
【0038】また、微小気泡生成層31を形成する気泡
の大きさが、共振気泡の大きさよりも十分小さいものが
多数含まれている場合には、気泡の散乱による減衰が小
さいために、微小気泡貯蔵手段3の長さLbは比較的長
く取ることができ、二次波の波長λdの4倍程度以下に
すればよい。このときも、非線形吸収による減衰が大き
く影響しないように、微小気泡貯蔵手段3の長さLb
は、この際に定義される衝撃波形成距離xsの5倍程度
以下の長さ、すなわちxs/Ldが0.2以上になるよ
うにすることが望ましい。
【0039】なお、微小気泡生成層31の等価非線形パ
ラメータβbの値は、計算から求めてもよいが、実際に
は単一径の気泡群を形成することが困難であるので、微
小気泡生成層31を通過した音波の波形歪みなどから、
予め実験的に計測して求めておいてもよい。また、微小
気泡発生手段2と、微小気泡貯蔵手段3から構成される
部分は、例えば、気泡群を含むウレタン樹脂を送波器1
の送波面に設置するなどして、送波器1の送波面近傍で
等価的に非線形パラメータβbが大きくとれる手段にし
てもよい。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の水中音源
によれば、送波器の送波面近傍付近にのみ形成された気
泡領域を通して、複数の周波数成分を持った一次波が放
射されるため、この気泡領域では、一次波の音響非線形
効果によって、大きな音圧レベルの二次波差音成分が発
生する。また、気泡領域を通過後の一次波は、ほとんど
減衰せずに、水の弱い音響非線形性によって、アレイ長
の長い仮想的な二次波のエンドファイアアレイを形成す
る。このため、全体として生じる二次波差音は、気泡部
で発生した二次波音圧レベルに、気泡領域後のパラメト
リックアレイが上乗せした形になり、開口長の小さな送
波器で、高い音圧レベルと鋭い指向性を有する低周波音
波が、非常に遠距離まで送波可能になる。
【0041】また、本発明の水中音源によれば、微小気
泡貯蔵手段は、シリコン製か、あるいはウレタン製の樹
脂で中空になるように形成されており、送波器1の送波
面を全て覆うように設けられている。このような材質を
選ぶことによって、気泡群を送波面近傍付近の固定され
た空間に留め、さらに音波は、この気泡領域を効率よく
透過することができるため、気泡部における強い音響非
線形効果と、気泡領域通過後における水の弱い音響非線
形効果を十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による水中音源の基本的構成
を示す模式図。
【図2】多数の微小気泡を含む海水における、微小気泡
の大きさと等価非線形パラメータの関係を表す特性図。
【図3】多数の微小気泡を含む海水における、吸収係数
の周波数特性図。
【図4】送波面前方の微小気泡領域が長い場合の、音軸
上における二次波差音の音圧レベルを示す特性図。
【図5】送波面前方の微小気泡領域が長い場合の、二次
波差音の指向性を示す特性図。
【図6】本発明による水中音源の一実施の形態の、音軸
上における二次波差音の音圧レベルを示す特性図。
【図7】本発明による水中音源の一実施の形態の、二次
波差音の指向性を示す特性図。
【符号の説明】
1…送波器、2…微小気泡発生手段、21…微小気泡
群、3…微小気泡貯蔵手段、31…微小気泡生成層、4
…吐出管。
フロントページの続き Fターム(参考) 5D019 AA02 EE01 FF02 5J083 AA01 AB12 AC04 AC15 AC18 AC28 BA09 BA16 CA04 CA18 CA19

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の周波数成分を送波し、上記周波数成
    分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であ
    って、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段
    と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うよ
    うに配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を
    貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線
    方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差
    音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義
    されるLb/λdの値が、2以下であり、上記貯蔵手段
    内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメ
    ータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周
    波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成
    分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数
    成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時
    に、 xs=ρ・c/(βb・ω・p0) として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段
    の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、
    0.5以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小
    気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周
    波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさの
    気泡数が最大となる個数分布であることを特徴とする水
    中音源。
  2. 【請求項2】複数の周波数成分を送波し、上記周波数成
    分の差音周波数成分を信号として利用する水中音源であ
    って、水中に微小気泡を発生するための気泡発生手段
    と、上記水中音源の送波面前方に、送波面全体を覆うよ
    うに配置され、上記気泡発生手段から生じた微小気泡を
    貯蔵するための貯蔵手段とを具備し、上記送波面の法線
    方向に対応する上記貯蔵手段の平均長さLbと、上記差
    音周波数に対する水中での音波の波長λdとの比で定義
    されるLb/λdの値が、4以下であり、上記貯蔵手段
    内における平均密度、平均音速および等価非線形パラメ
    ータを、それぞれρ、cおよびβbとし、上記複数の周
    波数成分の中心角周波数をωとし、上記複数の周波数成
    分の中で、最も音圧の周波数スペクトルが大きい周波数
    成分における、上記送波面での音圧振幅をp0とした時
    に、 xs=ρ・c/(βb・ω・p0) として定義される衝撃波形成距離xsと、上記貯蔵手段
    の平均長さLbとの比で定義されるxs/Lbの値が、
    0.2以上であり、上記貯蔵手段の中に生成される微小
    気泡群の気泡の大きさによる個数分布が、上記複数の周
    波数成分の中心角周波数ωに対する共振気泡の大きさよ
    りも十分小さい気泡の数が最大となる個数分布であるこ
    とを特徴とする水中音源。
  3. 【請求項3】上記貯蔵手段は、シリコン製か、ウレタン
    製の樹脂で囲まれて形成されていることを特徴とする請
    求項1または2に記載の水中音源。
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CN107527624A (zh) * 2017-07-17 2017-12-29 北京捷通华声科技股份有限公司 一种声纹识别方法及装置

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