JP2003329591A - 窒素酸化物の分析方法 - Google Patents

窒素酸化物の分析方法

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JP2003329591A JP2002132970A JP2002132970A JP2003329591A JP 2003329591 A JP2003329591 A JP 2003329591A JP 2002132970 A JP2002132970 A JP 2002132970A JP 2002132970 A JP2002132970 A JP 2002132970A JP 2003329591 A JP2003329591 A JP 2003329591A
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nitrogen oxides
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福岡隆夫
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Abstract

(57)【要約】 【課題】窒素酸化物の検出において高い蛍光量子収率を
示す発蛍光性試薬や、十分大きな吸光係数を示す色素を
生成する呈色試薬を用いずに窒素酸化物の検出を特異的
かつ定量的に行うこと、および分析対象物が含有される
試料中のきょう雑物の影響を極力排除させることを目的
とする。 【解決手段】窒素酸化物を芳香族ジアミノ化合物と反応
させた生成物の溶液に、貴金属微粒子からなる基質を共
存させて、表面増強ラマン散乱を測定した。この結果、
図に示すようにNO2−を0.4μMから2.0μMの
濃度範囲で測定することができた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、振動分光法におい
て表面増強効果を利用するすべての測定方法に関する。
特に、生体成分の分析を必要とするライフサイエンス分
野、また、環境中の有害物質などの分析を必要とする地
球・環境分野に関する。本発明は、ナノサイズの機能性
微粒子の分散状態の制御技術とこれを利用した機能性材
料に関する。
【0002】
【従来の技術】一酸化窒素(NO)や亜硝酸イオンなど
窒素酸化物は、生理機能や病態に深く関係する生体成分
であり、特にこれらの生理機能が生体中つまり水溶液中
にて行われることから、その分析も生体と組成的に近い
水溶液中にて行うことが望ましい。一方、窒素酸化物は
環境中においても環境水に含まれていることが多く、環
境中の汚染の程度を示す物質でもあり、やはり水中での
分析が望ましい。
【0003】一酸化窒素の生理活性作用はまず血管内皮
由来弛緩因子として報じられたが、情報伝達系、免疫
系、呼吸・循環器系、消化器系、中枢神経でも重要な役
割を果たしていること、感染、炎症、糖尿病等にも関係
することがその後の研究から明らかにされた(大柳善
彦、「NOと医学−一酸化窒素の生理作用と薬理作
用」、共立出版、1993年)。亜硝酸イオンは一酸化
窒素の酸化生成物でもあり、臨床検査の重要な検査項目
になっている。
【0004】水溶液中の一酸化窒素を光分析する方法に
は、オゾン法、オキシヘモグロビン法、グリース法、ル
ミノール過酸化水素法、Miskoらの蛍光法が知られ
ているが、特異性、簡便性、感度を同時に満足させるも
のではなかった。最近では、これらに優る方法として、
ジアミノフルオレッセイン誘導体を用いる方法が長野ら
によって開発された(長野哲雄、小嶋宏建、日本化学会
誌、11,721−729(1998))。この方法は
芳香族ジアミノ化合物が、一酸化窒素あるいはその酸化
生成物である亜硝酸イオンに特異的かつ量論的に反応
し、トリアゾール化合物を生成するという既知の反応に
基づいている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ジアミノフル
オレッセイン誘導体のような高い蛍光量子収率を示す発
蛍光性試薬や、十分大きな吸光係数を示す色素を生成す
る呈色試薬を開発するのには、多大な労力を要してい
た。しかも、特異性や定量性を併った優れた試薬の開発
はさらに困難を極めるものであった。
【0006】しかも、これまでの光分析方法では、吸収
波長、励起波長、蛍光波長が可視領域や紫外領域にある
ため、試料中のきょう雑物の影響を抑制するには十分と
は言えなかった。具体的には、一酸化窒素を含む試料は
通常、細胞や体液であるため、650nmよりも短波長
に吸収や蛍光を示す生体物質を含むことがあり、そのた
め正確な測定ができないことがあった。
【0007】生体成分の光分析では650nmよりも長
波長の近赤外光の利用が好ましいのであるが(G.Pa
tonay, M.D.Antoine, Anal.
Chem., 63, 321A−327A(199
1))、しかし近赤外光での発蛍光性試薬や呈色試薬は
ほとんど知られていない。標識用の色素が知られている
ばかりである。
【0008】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であって、窒素酸化物の検出において高い蛍光量子収率
を示す発蛍光性試薬や、十分大きな吸光係数を示す色素
を生成する呈色試薬を用いずに窒素酸化物の検出を特異
的かつ定量的に行うこと、および分析対象物が含有され
る試料中のきょう雑物の影響を極力排除させることを目
的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の分析方法は、窒素酸化物を芳香族ジアミノ化
合物と反応させた生成物の溶液に、貴金属微粒子からな
る基質を共存させて、表面増強ラマン散乱を測定して行
うものである。
【0010】これにより、窒素酸化物と特異的、定量的
に反応し生成したトリアゾール化合物を含む溶液の表面
増強ラマン散乱を、表面増強効果を有する貴金属微粒子
からなる基質の共存下で測定するので、発蛍光性試薬や
呈色試薬を特に用いずに、窒素酸化物の検出を特異的か
つ定量的に行うことができる。
【0011】本発明では近赤外領域のレーザーを光源に
することができ、励起光、ラマン散乱光ともに近赤外光
であるため、容易に試料中のきょう雑物の影響が少ない
近赤外光での光分析となる。
【0012】ここで、貴金属微粒子からなる基質は、分
散性微粒子によって保持されているものとすることが望
ましい。これにより、表面増強効果を有する貴金属微粒
子からなる基質の安定性を向上させることができ、表面
増強ラマン散乱を簡便に利用することができる(PCT
/JP01/01854)。ここで、分散性微粒子には
合成スメクタイトなどの膨潤性層状ケイ酸塩を用いるこ
とができる。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明は、上記のように、窒素
酸化物と芳香族ジアミノ化合物とが特異的、定量的に反
応し生成したトリアゾール化合物を含む溶液の表面増強
ラマン散乱を、表面増強効果を有する貴金属微粒子から
なる基質の共存下で測定するものである。また、近赤外
領域のレーザーを光源に、表面増強ラマン散乱を測定し
て行うものである。このように、本発明は、大きくは3
つの工程からなると言える。 第1は、窒素酸化物を芳香族ジアミノ化合物と反応させ
る工程。 第2は、表面増強効果を備える貴金属微粒子からなる基
質を作製する工程。 第3は、表面増強ラマン散乱を測定する工程。
【0014】第1の工程では、試料溶液と芳香族ジアミ
ノ化合物溶液とを混合させる。反応に適するようにpH
を調整することもある。芳香族ジアミノ化合物の例はジ
アミノフルオレッセイン誘導体を開発した研究者の文献
に記載されているが(長野哲雄、小嶋宏建、日本化学会
誌、11,721−729(1998))、これに限定
されるものではない。
【0015】第2の工程には、一般に貴金属微粒子の分
散性の制御の技術が要求される。この分散状態の制御法
は通常、下記(a)、(b)の工程と(d)の工程の間
に、(c)の工程を含むことを特徴とする。 (a) 貴金属微粒子を液相に分散させる工程。 (b) 電解質を加え塩析させるなどして、凝集を開始
させる工程。 (c) 凝集が進み一定の分散状態になったときに、貴
金属微粒子よりも分散性の高い微粒子を、貴金属微粒子
の周囲を覆うに十分にたる濃度となるように加える工
程。 (d) 得られた貴金属微粒子の集団を分散複合体とし
て回収する工程。 このような分散複合体では、流れの管壁や容器の壁に貴
金属微粒子は吸着せず、少なくとも数ヶ月間の間、表面
増強効果の基質として機能するに極めて有効である。
【0016】貴金属微粒子は、特に限定されないが、粒
径が原子サイズに近い1〜100nmの金、銀、銅から
選ばれる少なくともひとつ以上の金属を主成分とする金
属微粒子を用いてよい。
【0017】凝集を開始させ、微粒子集団を得る方法
は、特に限定されないが、粒子濃度を上げる、電解質を
加えイオン強度を上げる、ポリマー系の凝集剤を加え
る、温度を変える、分散媒の極性を変えるなどの手段を
選ぶことができる。
【0018】第3の工程は、前記表面増強効果を有する
基質を分析対象物質と共存させた状態で、分析対象物質
が機能性微粒子に接近して得られる表面増強効果を利用
し、分析対象物質の濃度あるいは性質を光学的計測手段
で測定するものである。具体的には、窒素酸化物と芳香
族ジアミノ化合物とが特異的、定量的に反応し、生成し
たトリアゾール化合物の表面増強ラマン散乱を測定す
る。また反応によって消費した芳香族ジアミノ化合物の
表面増強ラマン散乱を測定しても良い。また芳香族ジア
ミノ化合物とトリアゾール化合物との、表面増強ラマン
散乱の差を測定しても良い。
【0019】ラマン分光で分析する場合について言うと
その感度は一般に低いのであるが、試料が粗さを持った
金属面や、金属微粒子と相互作用するとき、シグナル強
度が増幅する表面増強効果が知られている(”Surf
ace EnhancedRaman Scatter
ing”, ed. by R. K. Chang
and T. E. Furtak, (Plenum
Publishing, N.Y., 198
2))。その増強感度は通常1万倍から100万倍であ
ると言われている。貴金属微粒子の凝集を用いた最近の
実験では、一分子検出を可能にする100兆倍にも達す
る表面増強効果が確認されており、このような金属面や
金属微粒子を表面増強効果の基質と呼ぶ。
【0020】表面増強効果の基質には、粗さを持った電
極の金属面、金属微粒子のコロイド、金属微粒子を島状
に沈積させたフィルム、ゾルゲル法でガラスマトリック
スに包括された金属微粒子、ポリマー中に包括された金
属微粒子が今まで報告されている。これらの基質のう
ち、水溶液中でのナノ貴金属微粒子のコロイドが実用上
もっとも便利であるとされる。その理由として、1)微
粒子が液相法で合成でき、取扱いが簡便である。2)連
続流れ分析系への適用ができる。3)粒子サイズと形状
の制御が可能である。4)簡単に表面積を定義できる。
5)理論的解析のために形態を変えられる。等の利点が
指摘されている(M. Kerker, D. S.
Wang, H. Chew. O. Siiman,
and L. A. Bumm, ”Surface
Enhanced Raman Scatterin
g”, ed. by R. K. Chang an
d T. E. Furtak, (Plenum P
ublishing,N.Y., 1982), p
p.109−128 ; EnhancedRaman
scattering by molecules
adsorbed at the surface o
f colloidal particles)。
【0021】この例のように、貴金属微粒子の集団で現
れる表面増強効果や量子効果は、貴金属微粒子の集合状
態に大きく依存する。例えば金ナノ微粒子集合を基質と
する表面増強ラマン散乱では近赤外レーザーによる励起
を好ましく用いることができるが、好ましい励起波長は
集合状態に依存している。したがって凝集状態の制御が
機能性微粒子の機能発現にとって重要な要因となる。そ
して、貴金属微粒子よりも分散性の高い微粒子を添加す
ることで、貴金属微粒子の凝集状態を制御することがで
き、テーラーメードの集合状態での貴金属微粒子の機能
発現が十分に行われる。
【0022】今まで水溶液中でのナノ貴金属微粒子のコ
ロイドのように、液体を分散媒とする機能性微粒子の分
散相中で、微粒子の機能性を保ったまま凝集を一定に制
御する技術は未発達であった。その結果、集合状態に依
存する表面増強効果の基質の製法の再現性や安定性は乏
しく、性能もまだ不十分であった。係る課題は、機能性
微粒子よりも分散性の高い微粒子を添加することで解消
される(詳細は、PCT/JP01/01854出願参
照)。
【0023】このような機能性微粒子よりも分散性の高
い微粒子の具体的な例には、スメクタイトなどの膨潤性
層状ケイ酸塩、特に好ましくは合成スメクタイトを挙げ
ることができる。スメクタイトや膨潤性層状ケイ酸塩の
種類と性質については、成書(H. Van Olph
en, ”An Introduction toCl
ay Colloid Chemistry, Sec
ond Edition”, Krieger Pub
lishment, Malabar, 1991、古
賀慎著, 「粘土とともに(粘土鉱物と材料開発)」,
三共出版,1997、須藤談話会編, 「粘土科学へ
の招待 粘土の素顔と魅力」, 三共出版, 200
0)や、WO97/16720の特許国際出願に詳述さ
れている。
【0024】このような膨潤性層状ケイ酸塩はいくつか
市販されており、たとえばコープケミカル(株)製の商
品名ルーセンタイトSWNもしくはルーセンタイトSW
F(合成ヘクトライト)またはME(フッ素雲母)、ク
ニミネ工業(株)製の商品名スメクトンSA(合成サポ
ナイト)もしくは商品名クニピアF(精製モンモリロナ
イト)、協和化学工業(株)製の商品名チキソピーW
(合成ヘクトライト)、ラポー社製の商品名ラポナイト
XLGもしくはラポナイトRDもしくはラポナイトXL
S(合成ヘクトライト)、(株)豊順鉱業社製の商品名
マルチゲル(ベントナイト)、トピー工業製の膨潤性合
成フッ素雲母等が挙げられる。
【0025】一酸化窒素が芳香族ジアミノ化合物と反応
しトリアゾール化合物を生成することは既知であった。
しかし、吸光係数や蛍光量子収率が低かったり、また、
吸収波長や蛍光波長が好ましくないなどの理由により、
光分析として利用される反応系は少なかった。一方、ラ
マン散乱では、分子構造がラマン活性であれば検出が可
能であり、色素である必要がない。これまで適切な呈色
試薬や発蛍光性試薬がなく利用が見送られてきた芳香族
ジアミノ化合物も本発明によれば検出反応となる。この
意味で、極めて実用的価値が高い。
【0026】本発明は、また、近赤外領域でラマン分光
法による高感度分析を可能とした点に大きな特徴があ
る。近赤外領域にて一酸化窒素の光測定を簡便に実施し
た例はいまだない。このように近赤外領域においてラマ
ン分光法によって分析することにより、分析対象物が含
有されるマトリックス中のきょう雑物の影響を排除し
て、分析対象物の検出において特異性・選択性を向上さ
せることが可能となるという、極めて実用的価値のある
効果が得られる。
【0027】生体関連微量物質の分析を例にとると、紫
外・可視領域の波長を利用して検出する場合は、通常、
検体に含まれるフラビン、ピリジン補酵素、及び血清た
んぱくなどの天然物の固有蛍光に基づく、バックグラウ
ンド(ブランク)が高くなる傾向にある。
【0028】このため、近赤外領域の波長を用いて分析
できれば、きょう雑物由来のバックグラウンドを排除で
き、結果的に分析対象物を高感度に検出できると考えら
れてはいた。一方、同じような考えに基づく試みとし
て、蛍光剤や色素によるラベリング法を利用したり、発
蛍光性物質や色素を生成する反応を利用して分析対象物
を検出する方法では、一般にできるだけ長波長側に検出
波長をシフトさせる開発が進められている。しかし、こ
のようなラベリング剤や生成色素は光分解しやすく取り
扱いが難しい上、嵩高い構造を持つため溶解性、特に水
溶性に難がある。
【0029】また、分散コロイドを利用し表面増強ラマ
ン散乱を分析するという技術もこれまで開発されてはい
たが、上記のように表面増強効果を有する貴金属微粒子
からなる基質の集合状態を制御する技術はまだ不十分で
あり、再現性良く分析するためには職人的な技量が要求
されていたのが実情である。
【0030】このような従来の実情を勘案した上で、本
発明は、表面増強効果を奏する基体の分散制御を行う技
術を開発し分散状態を安定に維持する方法を見出すこと
によってはじめて、職人的な技量を要さず再現性良くラ
マン分光分析を実現し、発蛍光性物質や色素を特に用い
ることなく窒素酸化物の測定を可能にし、またラマン分
光の励起レーザーに近赤外レーザーを用いることによっ
て近赤外領域の光測定を可能にした。
【0031】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
する。
【実施例1】凝集状態を制御した分散複合体の調製 文献(M. A. Hayat Ed. ”Collo
idal Gold”vol.1 and vol.
2, Academic Press Inc.,19
84)に記載の方法で、金微粒子を水溶液中で合成し
た。電解質を加えて凝集を開始させると金微粒子の液の
色調は、当初の赤から、赤褐色、褐色、黒と変化し、最
後は沈殿していった。タイミング良く合成スメクタイト
を添加すると、凝集の進行は停止し、凝集の程度(凝集
状態A<B<Cの順に凝集が進行している)に応じて上
記色調を示す安定な分散複合体が得られた。調製した分
散複合体を室温で放置しても、色調に変化は見られなか
った。一方、合成スメクタイトを含まない系では金微粒
子は黒色の沈殿物となり、容器の底に沈積した。このこ
とから金微粒子の集団が制御された状態を保って長期に
わたり安定化されていることがわかった。
【0032】
【実施例2】表面増強効果の基質としての利用 実施例1の分散複合体を調製後一日経過した後に、その
570μl を採り、0.05Mのピリジン水溶液30
μlとよく混合させた。同様に、合成スメクタイトを含
まない金微粒子凝集を調製後一日経過した後に、その5
70μl を採り、0.05Mのピリジン水溶液30μ
lとよく混合させた。Ramanモジュールを備えたフ
ーリエ変換赤外分光装置 Nicolet Magna
650を用いて、励起波長1064nmでラマンスペク
トルを測定した結果を図1に示す。合成スメクタイトを
含む分散複合体では、通常のRaman分光では計測で
きない2.5mMの低濃度ピリジンの環呼吸振動(約1
010cm−1)が強く表れた(図1の・)。一方、合
成スメクタイトを含まない系では、調製後一日経過する
と表面増強効果はほとんど現れなかった(図1の・)。
このように分散複合体は、市販のラマン分光器を用いて
簡便に表面増強効果を用いた分析を可能とする、表面増
強効果の基質であることがわかった。また、近赤外領域
(上記例では励起波長1064nm、散乱波長1192
nm)で測定できることから、きょう雑物の影響も少な
く特異性・選択性にも優れる。しかも、表面増強効果の
基質の安定性に起因し再現性にも優れる。
【0033】
【実施例3】亜硝酸イオン(NO2−)の分析 実施例1の分散複合体(凝集状態B)を調製後77日経
過した後に、その570μlを採り、所定の濃度(0−
2.0μM)のNO2−水溶液(亜硝酸ナトリウム溶
液)と2、3−ジアミノナフタレンを含む反応溶液(同
仁化学研究所製、NO2/NO3 Assay Kit
−F)との混合溶液30μlとよく混合させた。この
2、3−ジアミノナフタレンはNO2−を芳香族ジアミ
ノ化合物である。発蛍光性試薬でもあり、生成したナフ
タレントリアゾール溶液はアルカリ性で蛍光を出す。し
かし我々は蛍光を出さない中性ないしは酸性の溶液を、
Ramanモジュールを備えたフーリエ変換赤外分光装
置 Nicolet Magna650を用いて、励起
波長1064nmでラマンスペクトルを測定した。この
結果、図2に示すようにNO2−を0.4μMから2.
0μMの濃度範囲で測定することができた。これによっ
て、ラマン活性を有さないNO2−をラマン活性を有し
た物質に変換したのち、表面増強効果を有する基質を共
存させると、近赤外領域(上記例では励起波長1064
nm)で測定でき、その結果、きょう雑物の影響も少な
く特異的・選択的に分析可能であることが確認された。
しかも、表面増強効果の基質の安定性に起因し再現性に
も優れる。一方、2、3−ジアミノナフタレンとNO2
−が反応して生成した発蛍光性物質の極大蛍光波長は4
10nmであるが、ブランクが大きいため、NO2/N
O3 Assay Kit−Fのマニュアルには450
nmで測定するように推奨している。反応生成物中に
は、反応生成物由来のさまざまなきょう雑物が共存す
る。通常、これらは、紫外・可視領域にて吸収を持ち、
分析対象物質の変換物を特異的・選択的に検出すること
は難しい。このようなことを考慮すると、本実施例にて
NO2−を特異的・選択的に検出することができたこと
は極めて意義深い。
【0034】
【実施例4】一酸化窒素(NO)の分析 実施例1の分散複合体(凝集状態B)を調製後77日経
過した後に、その570μl を採り、30μMのNO
C12水溶液から発生するNOを公知の酵素法によりN
O2−に還元して得られた水溶液と2、3−ジアミノナ
フタレンを含む反応溶液(同仁化学研究所製、NO2/
NO3 Assay Kit−F)との混合溶液30μ
lとよく混合させた。この溶液をRamanモジュール
を備えたフーリエ変換赤外分光装置 Nicolet
Magna650を用いて、励起波長1064nmでラ
マンスペクトルを測定した。この結果、図3に示すよう
にNOを既知の反応系を用いて近赤外領域の光で簡便に
測定することができた。今まで近赤外領域の光を用いて
NOを簡便に検出した例は知られていない。
【0035】
【実施例5】実施例1の分散複合体(凝集状態B)を調
製後77日経過した後に、その570μl を採り、N
OC12水溶液から発生させた異なるNOを公知の酵素
法によりNO2−に還元して得られた水溶液と2、3−
ジアミノナフタレンを含む反応溶液(同仁化学研究所
製、NO2/NO3 Assay Kit−F)との混
合溶液30μlとよく混合させた。異なる濃度のNO
は、7.5μMおよび30μMの濃度のNOC12水溶
液から5分後、10分後、30分後に採取して得た。こ
の溶液をRamanモジュールを備えたフーリエ変換赤
外分光装置 Nicolet Magna650を用い
て、励起波長1064nmでラマンスペクトルを測定し
た。一方、この溶液を水酸化ナトリウムでpH11に
し、蛍光分光光度計で励起波長365nm、蛍光波長4
50nmで蛍光強度を測定した。蛍光強度を横軸に、1
442cm−1のラマン散乱強度を縦軸にプロットした
(図4)。本発明の方法では蛍光法と同等に一酸化窒素
の定量が近赤外領域の波長で可能であることがわかっ
た。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、窒素酸化物と特異的、
定量的に反応し生成したトリアゾール化合物を含む溶液
の表面増強ラマン散乱を、表面増強効果を有する貴金属
微粒子からなる基質の共存下で測定するので、発蛍光性
試薬や呈色試薬を特に用いずに、窒素酸化物の検出を特
異的かつ定量的に行うことができる。また近赤外光によ
る測定を容易に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分散複合体共存下におけるピリジンのラマンス
ペクトルを示す。
【図2】分散性複合体共存下におけるNO2−のラマン
スペクトルを示す。
【図3】分散性複合体共存下におけるNOのラマンスペ
クトルを示す。
【図4】異なる濃度のNOのラマン散乱強度と蛍光強度
との関係を示す。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素酸化物を芳香族ジアミノ化合物と反
    応させた生成物の溶液に、貴金属微粒子からなる基質を
    共存させて、表面増強ラマン散乱を測定して行う窒素酸
    化物の分析方法。
  2. 【請求項2】 貴金属微粒子からなる基質が、合成スメ
    クタイトなどの膨潤性層状ケイ酸塩からなる分散性微粒
    子によって保持されていることを特徴とする請求項1に
    記載の分析方法。
  3. 【請求項3】 窒素酸化物が一酸化窒素または亜硝酸イ
    オンであって、生成物がトリアゾール化合物であること
    を特徴とする請求項1に記載の分析方法。
  4. 【請求項4】 該芳香族ジアミノ化合物と該トリアゾー
    ル化合物との表面増強ラマン散乱の差を測定することを
    特徴とする請求項1に記載の分析方法。
  5. 【請求項5】 表面増強ラマン散乱の励起に、650n
    mより長波長の近赤外レーザーを用いることを特徴とす
    る請求項1に記載の分析方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の分析方法で用いられる
    表面増強効果を有する基質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008216046A (ja) * 2007-03-05 2008-09-18 Fujifilm Corp ローカルプラズモン増強蛍光センサ
JP2012515705A (ja) * 2009-01-26 2012-07-12 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー 硝酸塩を用いるグラファイト酸化物の製造方法
JP2017058304A (ja) * 2015-09-18 2017-03-23 セイコーエプソン株式会社 酸化窒素濃度検査装置、酸化窒素濃度検査システム、酸化窒素濃度検査サーバーおよび酸化窒素濃度検査端末装置
CN108362677A (zh) * 2018-01-22 2018-08-03 浙江大学 一种基于表面拉曼增强技术快速检测土壤水解氮的方法
US10060855B2 (en) 2015-12-08 2018-08-28 Seiko Epson Corporation Electric field enhancement element and raman spectrometer

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