JP2003321745A - 疲労特性に優れた非調質ボルトおよびその製造方法 - Google Patents

疲労特性に優れた非調質ボルトおよびその製造方法

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JP2003321745A JP2002125411A JP2002125411A JP2003321745A JP 2003321745 A JP2003321745 A JP 2003321745A JP 2002125411 A JP2002125411 A JP 2002125411A JP 2002125411 A JP2002125411 A JP 2002125411A JP 2003321745 A JP2003321745 A JP 2003321745A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は疲労特性に優れた非調質ボルトおよ
びその製造方法に関する。 【解決手段】 圧延後、フェライト単相組織、析出処理
後、微細分散した粒径が10nm未満の微細析出物をフ
ェライト単相組織中に有し、鋼組成が、質量%で、C≦
0.10、Si≦0.3%、Mn≦2%、Ti:0.0
3〜0.20%、Mo:0.05〜0.6%、必要に応
じてNb≦0.08%、V≦0.15%、W≦1.5
%、S:0.03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦
50ppm,B≦200ppmの一種または二種以上、
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/9
6)+(Nb/93)+(V/51)+(W/19
2)}≦1.5、残部Fe及び不可避的不純物の非調質
ボルト。上記組成の鋼を1100℃以上で加熱後、終了
温度800℃で圧延、700〜550℃を0.5℃/s
ec超えで冷却し、その後、冷間によりボルト形状とし
た後、550〜700℃で10分以上保持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は引張強さ700MP
a以上の非調質ボルトおよびその製造方法に関し、特に
ボルト成形に必要な冷間加工、切削加工のための球状化
焼鈍やボルト成形後の強度確保のための焼入焼戻し処理
が不要なものに関する。
【0002】
【従来の技術】ボルトは、機械構造用炭素鋼や機械構造
用合金鋼を圧延後、球状化焼鈍にて軟質とし、冷間鍛造
により成形後、所望の強度、靭性に応じて熱処理し製造
されているが、その特性向上や生産性向上を目的にボル
ト用鋼やその製造方法に関して種々の提案がなされてい
る。
【0003】特開昭62−280326号公報は靭性に
優れた非調質ボルト用鋼に関し、低C鋼と圧延後の加速
冷却の組合せによりフェライトと低温変態生成相(ベイ
ナイト、マルテンサイト)とすることが記載されてい
る。しかしながら、圧延冷却後の強度は高く加工率の高
いボルトを製造することは困難である。
【0004】特開平10−53813号公報は非調質ボ
ルトの製造方法に関し、低C鋼と圧延後の高周波誘導加
熱またはメッキ用塩浴の組合せにより微細で軟質なフェ
ライト・パーライト組織とした鋼を伸線加工し、その後
ボルトに成形することが記載され、成形方法として伸線
加工時の減面率を高くし、バウシンガー効果で冷間鍛造
時の変形抵抗を抑制することが提案されている。
【0005】しかしながら、非調質ボルトの場合、ボル
ト軸部は、伸線加工の段階で、ほぼボルト強度にする必
要があり、調質ボルトと比較して伸線材は高強度で、バ
ウシンガー効果によっても変形抵抗を調質ボルトと同程
度にすることは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、非調
質ボルトに調質ボルトと同様の強度特性を付与しようと
した場合、そのボルト成形時の冷間加工が困難となり、
製品寸法に制約が生じることが多かった。
【0007】そこで本発明では、調質ボルトと同じよう
にボルト成形時の冷間加工が可能で、且つ強度特性に劣
らない非調質ボルトおよびその製造技術の提供を目的と
する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、ボルト成
形時の冷間加工性およびボルトとしての強度の向上につ
いて種々検討を行い、冷間加工性向上のため、伸線材を
低C鋼によりフェライト単相組織とし、その引張強さを
調質ボルトの球状化処理材と同等まで低減させ、一方、
強度向上はボルト成形後の微細析出物の析出強化を利用
する方法を着想した。
【0009】そして、従来にない全く新しい知見として
微細析出物により降伏比の向上、疲労特性の向上が得ら
れることを見出した。
【0010】本発明は以上の知見を基に更に検討を加え
てなされたものであり、すなわち、本発明は、 1.フェライト単相組織を有し、フェライト相中に粒径
が10nm未満の微細析出物が分散析出していることを
特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上
の非調質ボルト。
【0011】2.鋼組成が、質量%で、C≦0.1%、
Si≦0.3%、Mn≦2%、Ti:0.03〜0.2
0%、Mo:0.05〜0.6%、残部Fe及び不可避
的不純物よりなる1記載の疲労特性に優れた引張強さ7
00MPa以上の非調質ボルト。
【0012】3.鋼組成として更に式(1)を満足する
ことを特徴とする2記載の疲労特性に優れた引張強さ7
00MPa以上の非調質ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 (1) 但し、各元素は含有量(質量%)とする。
【0013】4.微細析出物がTi,Moの炭化物であ
ることを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の疲
労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボル
ト。
【0014】5.鋼組成として、更に質量%で、Nb≦
0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種また
は二種以上を含有する2記載の疲労特性に優れた引張強
さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0015】6.鋼組成として更に式(2)を満足する
ことを特徴とする5記載の疲労特性に優れた引張強さ7
00MPa以上の非調質ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93) +(V/51)+(W/184)}≦1.5 (2) 但し、各元素は含有量(%)とし、含まれないものは0
とする。
【0016】7.微細析出物がTiとMoとNb,V,
Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特
徴とする5または6の疲労特性に優れた引張強さ700
MPa以上の非調質ボルト。
【0017】8.鋼組成として更にS:0.03〜0.
1%、Pb≦0.2%、Ca≦50ppm,B≦200
ppmの一種または二種以上を含有することを特徴とす
る2,3、5,6のいずれか一つに記載の疲労特性に優
れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0018】9.鋼組成が2、3,5,6のいずれか一
つに記載の鋼を1100℃以上で加熱し、800℃以上
で圧延を終了後、700〜550℃を0.5℃/sec
超えで冷却し、その後、冷間によりボルト形状とした
後、550〜700℃で10分以上保持することを特徴
とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非
調質ボルトの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明のミクロ組織、成分組成お
よび製造条件について以下に詳細に説明する。
【0020】1.ミクロ組織 本発明ボルトはフェライト単相組織に粒径10nm未満
の微細析出物を含む組織とする。フェライト単相組織に
より優れた延性、靭性が得られ、微細析出物の析出によ
り引張強さ700MPa以上の強度が得られる。
【0021】析出処理後のボルトの組織がフェライト単
相組織でない場合、例えばベイナイトやパーライトなど
を含む組織の場合、Cが消費されるため10nm未満の
微細析出物であっても十分な析出強化が得られず引張強
さ700MPa以上の強度が得られない。
【0022】本発明ボルトは、圧延後においてフェライ
ト単相組織となる棒鋼を素材とし、その後、冷間伸線加
工−ボルト成形後、析出処理して製造される。
【0023】素材の棒鋼をフェライト単相組織とするこ
とで、従来の調質ボルト製造における球状化処理材と同
等の優れた冷間加工性が得られる。さらなる冷間加工性
向上のため、フェライト単相組織の結晶粒径は50μm
以下が望ましい。
【0024】冷間加工後に析出処理した後においても、
圧延後のフェライト単相組織は維持され、優れた延性、
靭性が得られる。
【0025】本発明においてフェライト単相組織とは、
断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)でフェ
ライト面積率95%以上とし、好ましくは98%以上と
する。
【0026】冷間伸線加工−ボルト成形後の析出処理に
より、フェライト単相組織中に微細析出物を分散析出さ
せた場合、圧延後の組織がフェライト単相組織であって
も焼入れ焼戻し処理される調質ボルトと同等の優れた強
度が得られる。
【0027】本発明では微細析出物は粒径10nm未満
とする。析出物の粒径が10nm以上の場合、ボルトと
して必要な引張強さ700MPa以上が得られない。
【0028】微細析出物の粒径は小さいほど強度向上に
有効で、望ましくは5nm,更に望ましくは3nm以下
とし、そのような微細析出物としてTi、Moを複合含
有した炭化物、またそれらに更にNb,V,Wの一種ま
たは二種以上を含む炭化物が好ましい。
【0029】これらの微細析出物の分布形態は特に規定
しないが、母相中に均一分散(分散析出)することが望
ましい。
【0030】また、本発明において、微細析出物の大き
さは、全析出物の90%以上で満足すれば良く、目的と
する引張強さ700MPa以上が得られる。但し、10
nm以上の大きさの析出物は析出物形成元素を消費し、
強度に悪影響をあたえるため、50nm以下とすること
が好ましい。
【0031】上述した析出物とは別に少量のFe炭化物
を含有しても本発明の効果は損なわれないが、平均粒径
が1μm以上のFe炭化物を多量に含むと靭性を阻害す
るため、本発明においては含有されるFe炭化物の大き
さ上限は1μm、含有率は全体の1%以下とすることが
望ましい。
【0032】微細析出物の全析出物に占める割合は、以
下の方法により求める。電子顕微鏡試料を、ツインジェ
ット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200k
Vで観察する。
【0033】その際、微細析出物が母相に対して計測可
能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御
し、析出物の数え落としを最低限にするために焦点を正
焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。
【0034】また、析出物粒子の計測を行った領域の試
料の厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散
乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価
する。
【0035】この方法により、粒子数の計測と試料厚さ
の計測を同じ領域について実行することができる。粒子
数および粒子径の測定は試料の0.5×0.5μmの領
域4箇所について行い、1μm2当たりに分布する析出
物を粒径ごとの個数として算出する。
【0036】この値と試料厚さから、析出物の1μm3
当たりに分布する粒子径ごとの個数を算出し、径が10
nm未満の析出物について、測定した全析出物に占める
割合を算出する。
【0037】非調質ボルトは自動車その他の輸送機材、
建機用としては、引張強さ700MPa以上が要求され
ることが多く、また、700MPa未満では、既存の機
械構造用鋼であっても球状化焼鈍処理など要せずに冷間
伸線加工−ボルト成形が可能なため本発明ボルトは引張
強さ700MPa以上とする。
【0038】2.成分組成 本発明ボルトは上述したミクロ組織で目的とする性能が
得られるが、以下の成分組成が好ましい。
【0039】C Cは0.1%超えで含有すると圧延後、フェライト単相
組織が得られず、また微細析出物が粗大化し、強度が低
下するため0.1%以下とすることが好ましい。
【0040】Si Siは冷間加工性を向上させるため添加する。0.3%
をこえるとその効果が損なわれるようになるため、0.
3%以下とする。
【0041】Mn Mnは強度、延性を向上させるため添加する。2%を超
えるとその効果が損なわれるため2%以下とする。
【0042】Ti TiはMoとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を
微細に析出させ、強度を向上させるため添加する。引張
強度700MPa以上を確保するため0.03%以上と
し、一方、0.20%を超えて添加すると析出物が粗大
化し、強度が低下するため0.03〜0.20%とす
る。
【0043】Mo MoはTiとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を
微細に析出させ、強度を向上させるため添加する。引張
強度700MPa以上を確保するため0.05%以上と
し、一方、0.6%を超えて添加するとベイナイト等の
低温変態相を形成し、微細析出物による析出強化が不足
し、強度が低下するため0.05〜0.6%とする。
【0044】Moは拡散速度が遅く、Tiとともに析出
する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が
得やすく顕著な析出強化が得られる。Ti−Mo系炭化
物の場合、原子比で0.5≦Ti/Mo≦1.5である
ことが観察された。
【0045】 (C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)} 本パラメータは、析出物の大きさに影響を与えるもの
で、0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm
未満の微細析出物の形成が容易となり好ましい。より好
ましくは0.7以上1.2以下である。
【0046】更に、特性を向上させる場合、Nb,V,
Wの一種または二種以上を添加することが好ましい。
【0047】Nb NbはTiと微細析出物を形成して強度向上に寄与す
る。また、組織を微細化し、結晶粒の整粒により延性を
向上させる。0.08%を超えると過度に微細化し、延
性が低下するため0.08%以下とする。
【0048】V VはTiと微細析出物を形成するが、0.15%を超え
ると析出物が粗大化するようになるため、0.15%以
下とする。
【0049】W WはTiと微細析出物を形成するが、1.5%を超える
と析出物が粗大化するようになるため、1.5%以下と
する。
【0050】これらの元素の添加においては、C,T
i,Mo,Nb,V,Wの原子比を規定することが炭化
物の微細化に有効で(C/12)/{(Ti/48)+
(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W
/184)}を0.5以上、1.5以下とした場合、粒
径10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。より
微細化させるためには0.7以上1.2以下とすること
が望ましい。
【0051】Ti−Mo−(Nb,V,W)系炭化物の
場合、原子比で(Ti+Nb+V)/(Mo+W)が
0.5〜1.5以内であることが観察された。
【0052】本発明鋼では上記添加元素以外の残部はF
e及び不可避不純物とするが、脱酸剤としてAlを0.
1%以下添加することができる。また、強度、延性を向
上させる場合、Ni,Crの一種または二種をNi≦2
%、Cr≦2%の範囲で添加しても構わない。冷間加工
性を更に向上させる場合には、不可避不純物であるP,
NをP≦0.040%、N≦0.0080%に規制する
ことが望ましい。
【0053】また、被削性を向上させる場合、S:0.
03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦50ppm,
B≦200ppmの一種または二種以上を添加すること
もできる。
【0054】尚、これらの元素添加の有無により本発明
の効果が損なわれることはない。
【0055】3.製造条件 図1に本発明に係る非調質ボルトの概略製造工程図を示
す。S1は棒線材製造工程、S2は搬送工程、S3は製
品仕上げ過程で、棒線材製造工程(S1)で鋼塊を熱間
圧延し棒線材とし、製品仕上げ過程(S3)で棒線材を
冷間伸線し、ボルトフォーマ等のボルト製造機器でボル
ト形状とした後、析出処理で微細析出物を析出させ引張
強さ700MPa以上とする。 以下に望ましい製造工
程について詳細に説明する。
【0056】圧延加熱温度 圧延加熱温度は1100℃以上とする。本発明では、圧
延後、球状化処理をしない圧延ままの棒線材の冷間伸線
加工−ボルト成形において、既存の調質ボルト用伸線材
(例えばS45C)の球状化処理材と同等以上の加工性
が得られるよう軟質化する必要があり、圧延時に溶解時
から残存する炭化物を固溶させる。
【0057】圧延加熱温度を1100℃未満とした場
合、溶解時から残存するTi−Mo系炭化物等が固溶し
ないため1100℃以上とする。
【0058】圧延終了温度 圧延終了温度は材質均一性に影響を与え、800℃未満
では圧延荷重が高く真円度が劣化するため800℃以上
とする。
【0059】冷却速度 圧延終了後の冷却速度は冷却中に微細析出物を析出させ
ないよう析出温度範囲の700〜550℃を微細析出物
が得られる限界冷却速度である0.5℃/sec超えの
速度で冷却する。
【0060】析出処理 圧延材を冷間伸線加工−ボルト成形後、析出処理により
引張強さ700MPa以上とする。析出処理においては
母相をフェライト単相とし、強度向上に寄与する微細析
出物を析出させることが必要で、加熱温度は550℃未
満ではベイナイトが生成し、700℃を超えると析出物
が粗大化するため550〜700℃とする。
【0061】また、微細なTi,Moなどの炭化物を生
成、析出させることが有効で該温度域において10分以
上保持する。
【0062】
【実施例】表1に示す組成の鋼(No.1〜11)につ
いて、伸線加工材の特性、ボルト成形性、およびボルト
成形後の特性について調査した。
【0063】供試鋼を150kg真空溶解炉にて溶製
し、11mm径の線材に圧延した。No.1〜10は球
状化焼鈍せずに冷間伸線加工で10.5mm径とし、従
来材のNo.11は圧延後、球状化焼鈍し、その後冷間
伸線加工で10.5mm径とした。
【0064】圧延は鋼塊を1150℃に加熱して圧延を
開始し、950℃にて終了後、3℃/secにて450
℃まで冷却した後、巻き取りを行い、コイル形状とし
た。
【0065】その後No.1〜10は球状化焼鈍せずに
冷間伸線加工で10.5mm径とし、従来材のNo.1
1は圧延後、球状化焼鈍し、冷間伸線加工で10.5m
m径とした。
【0066】ボルトフォーマでボルト成形し、No.1
〜10は、析出処理(525〜725℃に保持された炉
で15分間保持)後、室温まで冷却した。No.11は
析出処理せず焼入れ焼戻しを行った。
【0067】伸線加工材から冷間据えこみ加工用の試験
片(伸線ままの径,高さ/直径比:1.5)を採取し、
同心円状溝突付きダイスを取りつけた拘束圧縮盤により
圧縮加工時の変形抵抗、割れ発生限界加工率を平均歪速
度0.01/secで調査した。また、引張試験を行っ
た。
【0068】変形抵抗は平均歪が1.5(圧下率70
%)の荷重を拘束係数と変形前の初期面積で除して求め
た。割れ発生限界加工率は実際に割れの発生した圧下率
とした。
【0069】尚、変形抵抗、割れ発生限界加工率はボル
ト加工時の圧造工具寿命、割れ発生不良率と相関がある
ことが知られている。
【0070】ボルトに成形後、割れ発生の有無を確認
し、更にこれらのボルトからの切り出し試験片で引張試
験、くさび引張試験(くさび角度15°)、疲労試験お
よび組織観察を行った。
【0071】疲労試験はサーボパルス型疲労試験機によ
り、引張疲労試験(平均応力420MPa)で疲労限度
を求めた。
【0072】組織観察は断面を光学顕微鏡で観察すると
ともに、析出物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察
し、その組成をエネルギー分散型X線分光装置(ED
X)により求めた。
【0073】表2に伸線加工材の特性、ボルト成形性
を、表3にボルト特性を示す。No.1〜6が本発明
例、No.7〜10が比較例、No.11が既存の調質
ボルト用鋼(従来例)である。
【0074】表から明らかなように、No.1〜6の圧
延まま−冷間伸線加工材とNo.11の従来材の球状化
処理−冷間伸線加工材は引張強さが同等で、変形抵抗、
限界加工率および析出処理後の強度の全てにおいて従来
材と同等の特性が得られ,ボルト成形時の割れも観察さ
れなかった。
【0075】また、ボルト成形後の引張強さ、くさび引
張強さ、永久伸びは従来材と同じであるが、降伏比が高
く、疲労強度に優れていた。
【0076】No.7は析出加熱温度が本発明範囲外で
高いため、析出処理後、フェライト+パーライト組織と
なり、また、析出物の粒径も大きいため引張強さが70
0MPa以下と本発明範囲外で、疲労強度も劣ってい
る。
【0077】No.8は析出加熱温度が本発明範囲外で
低いため、析出処理後、ベイナイト組織となり、Cが固
溶されたため、析出強化が不足し引張強さが700MP
a以下と本発明範囲外で、降伏比が低く永久伸びも大き
く、疲労強度に劣っている。
【0078】No.9はCが本発明範囲外で高いため冷
間伸線加工材の引張強さが高く、変形抵抗、限界加工率
が従来材に及ばず、ボルト成形時に割れが観察された。
また、析出処理後、フェライト・パーライト組織とな
り、析出物も大きく十分な析出強化が得られず、従来材
より強度が低い。
【0079】No.10は低Ti、Moのため、十分な
炭化物が得られず、またCがパーライトになるために圧
延ままの強度が高くなり、冷間加工性が悪くなる。また
析出物は粗大化するので十分な析出強化が得られない。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【発明の効果】本発明によれば、ボルト成形前の球状化
処理や、ボルト成形後の焼入れ焼戻しを行うことなく、
調質ボルトと同等の冷間伸線加工性、ボルト成形性を備
え、且つ優れた疲労特性の引張強さ700MPa以上の
非調質ボルトおよびその製造方法が得られ、産業上極め
て有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ボルトの製造工程の一例を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16B 35/00 F16B 35/00 J (72)発明者 福岡 和明 東京都中央区新川2丁目12番8号 エヌケ ーケー条鋼株式会社内 (72)発明者 冨田 邦和 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 船川 義正 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩崎 毅 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K032 AA02 AA04 AA08 AA16 AA19 AA22 AA28 AA29 AA31 AA35 AA36 AA37 BA02 CA02 CA03 CC03 CC04 CD01 CD02 CD03 CH04 4K042 AA25 BA04 CA02 CA03 CA08 CA09 CA12 CA13 DA05 DC02 DC03

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライト単相組織を有し、フェライト
    相中に粒径が10nm未満の微細析出物が分散析出して
    いることを特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700
    MPa以上の非調質ボルト。
  2. 【請求項2】 鋼組成が、質量%で、C≦0.1%、S
    i≦0.3%、Mn≦2%、Ti:0.03〜0.20
    %、Mo:0.05〜0.6%、残部Fe及び不可避的
    不純物よりなる請求項1記載の疲労特性に優れた引張強
    さ700MPa以上の非調質ボルト。
  3. 【請求項3】 鋼組成として更に式(1)を満足するこ
    とを特徴とする請求項2記載の疲労特性に優れた引張強
    さ700MPa以上の非調質ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5(1) 但し、各元素は含有量(質量%)とする。
  4. 【請求項4】 微細析出物がTi,Moの炭化物である
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載
    の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質
    ボルト。
  5. 【請求項5】 鋼組成として、更に質量%で、Nb≦
    0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種また
    は二種以上を含有する請求項2記載の疲労特性に優れた
    引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  6. 【請求項6】 鋼組成として更に式(2)を満足するこ
    とを特徴とする請求項5記載の疲労特性に優れた引張強
    さ700MPa以上の非調質ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93) +(V/51)+(W/184)}≦1.5 (2) 但し、各元素は含有量(%)とし、含まれないものは0
    とする。
  7. 【請求項7】 微細析出物がTiとMoとNb,V,W
    の内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴
    とする請求項5または6の疲労特性に優れた引張強さ7
    00MPa以上の非調質ボルト。
  8. 【請求項8】 鋼組成として更にS:0.03〜0.1
    %、Pb≦0.2%、Ca≦50ppm,B≦200p
    pmの一種または二種以上を含有することを特徴とする
    請求項2,3、5,6のいずれか一つに記載の疲労特性
    に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  9. 【請求項9】 鋼組成が請求項2、3,5,6のいずれ
    か一つに記載の鋼を1100℃以上で加熱し、800℃
    以上で圧延を終了後、700〜550℃を0.5℃/s
    ec超えで冷却し、その後、冷間によりボルト形状とし
    た後、550〜700℃で10分以上保持することを特
    徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の
    非調質ボルトの製造方法。
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