JP2003321375A - ヒトt細胞による肝疾患治療剤 - Google Patents

ヒトt細胞による肝疾患治療剤

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潤 内海
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孝司 西村
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裕二 富樫
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 BおよびC型肝炎等のウイルス性肝炎、さらに
それを成因とする肝硬変および肝癌等の肝疾患の治療に
有効な肝疾患治療剤を提供すること。 【解決手段】 ヒトTh1細胞又はヒトTh1細胞を含む肝疾
患治療剤を提供した。 【効果】 本発明により、ウイルス性肝炎、肝硬変なら
びに肝癌に対して新たなTh1ならびにTh2細胞を含む治療
剤が提供された。また、本剤は、IFNなどの既存の抗ウ
イルス薬との併用や、肝癌の外科的切除後の再発防止に
も利用可能である。これによって、従来、治療効果が十
分でなかった肝疾患の治療効果を高めることができ、医
療上極めて有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒトT細胞による
肝疾患の治療剤に関する。本発明のヒトTh細胞による肝
疾患の治療剤は、特に肝炎や肝癌の細胞療法に有用であ
る。
【0002】
【従来の技術】ヒトにおける肝炎は特にウイルス性のB
型、C型肝炎が医療上、問題視されており、我が国のB型
肝炎ウイルス(HBV)キャリア(無症候性の肝炎ウイル
ス感染者)は人口の約1%、慢性B型肝炎患者は30〜50万
人、C型肝炎ウイルス(HCV)キャリアは100〜200万人、
40歳以上のHCVキャリアの65〜70%が慢性C型肝炎と言わ
れている。また、肝硬変患者は17000人程度で、その成
因はB型肝炎12%、C型肝炎65%であり、肝癌患者も1700
0人程度とされている。成因として最も問題とされてい
るC型肝炎の場合、HCVキャリアは、適切な治療を行われ
なかったとすると、20〜30年後には10〜16%が肝硬変
に、また同様に20〜25%が肝癌に進行すると言われてい
る。このため、C型肝炎を適切に治療することは、その
まま肝硬変や肝癌の抑制にもつながることになる(ウイ
ルス肝炎財団資料、平成14年2月版および臨床医、vol.
27、増刊号、2001)。
【0003】BおよびC型肝炎の主感染経路は血液とさ
れ、輸血血液や血液製剤のウイルス抗体検査による汚染
製品の排除やB型肝炎ではHBVワクチンの実用化などによ
って、予防的措置が取られている。
【0004】B型肝炎の治療には、抗ウイルス薬である
ラミブジンやインターフェロン(IFN)、ステロイド離
脱療法、漢方製剤である小紫胡湯、グリチルリチン製
剤、ウルソデオキシコール酸、プロパゲルマニウムなど
が、C型肝炎の治療には、抗ウイルス薬であるIFNやリバ
ビリン、グリチルリチン製剤、ウルソデオキシコール酸
などがを用いられる。これらの薬剤による効果はウイル
スの遺伝子型や量によって差があり、また副作用の問題
もあり、まだ十分とはいえない状況である。C型肝炎の
場合、IFN治療でHCVの排除(治癒)に成功する確率はま
だ30%程度で、リバビリンを併用した場合でも、それを
やや上回る程度と考えられる。
【0005】以上のように、BおよびC型肝炎に対する対
策と治療は医療上の重要課題であるが、まだ十分には解
決されていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、ウイル
ス性肝炎、さらにそれを成因とする肝硬変および肝癌に
対する治療法の開発は医療上の大きな課題となってい
る。本発明の目的は、これらの課題を解決し、これら肝
疾患に対してヒトTh細胞を利用した新たな治療剤を提供
することにある。特に従来の抗ウイルス薬等が奏効しな
い難治性の肝疾患の治療に有用な治療剤を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、患者の末梢血や骨髄細胞より、外来的なサイト
カインを用いて誘導されるヒトTh細胞を用いて肝炎や肝
癌等の治療を行うことができることに想到し、本発明を
完成した。
【0008】すなわち、本発明は、外来的なサイトカイ
ンを用いて誘導されるヒトTh細胞を含む新たな肝疾患治
療剤を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】T細胞の関する最近の免疫研究の
進展から、ヘルパーT細胞がTh1とTh2という2つのサブタ
イプに分かれ、多くの免疫反応がコントロールされてい
ることがマウスの系で明らかにされた(Mosmann, T.R.:
Ann. NY Acd. Sci. 664: 89, 1992)。同様のヘルパー
T細胞サブセットがヒトでも存在することも明らかとな
り、Th1とTh2のバランスが癌を含む数々の病気の発症に
重要な働きを持つことが推測された(Salgame, P. et a
l. Science, 254: 279, 1991, Abbas. A.K. et al. Nat
ure 383: 787, 1996)。それらによれば、Th1とTh2のバ
ランスが保たれている場合には健康な状態であるが、Th
1が過剰になると、自己免疫疾患、慢性関節リウマチ、
多発性硬化症等が、Th2が過剰になると癌、免疫不全、
アレルギー疾患等が発症するとされている。このTh1/T
h2バランスに基づく免疫制御法も癌の有効な治療に結び
つくと期待されるが、Th1細胞およびTh2細胞の効率的な
誘導法は確立されておらず、具体的な臨床応用もまだ行
われていない。
【0010】ただし、肝炎におけるTh1およびTh2細胞の
関与については、病態解析からの推察されるいくつか報
告がある。
【0011】慢性B型肝炎に関しては、Th1細胞の誘導能
があるインターロイキン(IL)-12を投与するとHBVが排
除される可能性が指摘され(Rossol, S et al. J Clin
Invest 99: 3025, 1997)、HBVの排除ができた患者のTh
細胞と細胞傷害性T細胞(CTL)の活性が高かったとする
報告(Lohr, HF et al. Liver 18:405, 1998)がある。
【0012】一方、慢性的なHCV感染にもTh1とTh2が関
与している可能性を示唆する報告には、HCVの持続感染
ではTh1サイトカイン(IL-2)よりTh2サイトカイン(IL
-4やIL-10)の血中濃度が優位でTh1/Th2細胞バランスが
Th2に偏向している可能性(Fan, XG et al. Mediators
Inflamm 7:295, 1998)やC型肝炎における肝障害には血
中のIL-2の濃度が上昇していること(Bozkaya, H et a
l. Infection 28:309,2000)から肝組織内のCD4陽性T細
胞が関わっていることが示唆されること(Sobue, S et
al. J Gastroenterol 36:544, 2001)などがある。
【0013】しかしながら、これらの報告はいずれも臨
床的観察からその免疫学的な関与を推察したり、診断学
的な意義を述べているに過ぎず、実際にTh1あるいはTh2
の細胞を肝炎の治療に用いたり、その応用のための検討
がなされているわけではなく、ましてや細胞治療の可能
性を提唱しているわけではない。実際に、ヒトの検体を
用いて肝疾患治療に対する細胞療法を具体的に検討した
報告は現在のところ見当たらない。逆に肝炎では上記の
報告ようにTh1細胞は細胞傷害性を示すことから、Th細
胞は肝障害の原因とも指摘されており、これを治療に応
用するという考えまでには想達されていない。
【0014】本発明は、一般的な免疫学的概念として提
唱されたTh1/Th2バランス理論を治療に応用すべく、鋭
意検討の結果、考案された。本発明は、肝疾患の中でも
従来の治療法には奏効しない特に難治性の肝炎、肝硬
変、肝癌等を対象とし、骨髄、臍帯血あるいは患者末梢
血等からT細胞亜集団を採取して、該T細胞亜集団を抗
CD抗体や適当なサイトカインで刺激後培養することで得
られるTh細胞集団を含む肝疾患の治療剤である。
【0015】ここで用いる抗T細胞抗原抗体としては抗
CD抗体であれば特に限定されないが、例えば抗CD1抗
体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗
CD6抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD27抗体、抗CD28
抗体、抗CD29抗体、抗CDw60抗体等が挙げられる。これ
らの抗体は担体に不溶化して用いるのが好ましく、用い
る担体としては、例えばキチン・キトサン、セルロ−
ス、アガロ−ス、ポリビニルアルコ−ル、ポリメチルメ
タアクリレ−ト、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブ
タジエン・スチレン樹脂、ガラス、シリカ等で、プレー
ト、ビーズ、繊維、中空糸等、その形態は特に限定され
ない。サイトカインにはIL-2が好ましく用いられる。以
上のTh細胞集団の製造方法は、本発明者らの特許第25
30966号に記載されている。
【0016】一方、サイトカインの組み合わせで、機能
的なT細胞集団を得ることもできる。すなわち、骨髄、
臍帯血あるいは患者末梢血から、外来的に抗原物質を加
えることなく、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
(GM-CSF)とIL-3により樹状細胞を誘導し、その培養系
にIL-2を加えることにより、わずかに存在するCD4陽性T
細胞を樹状細胞と相互作用させて増殖させ、さらに、こ
の増殖したCD4陽性T細胞をIL-12やIFN-γなどのTh1誘導
性サイトカインで培養することにより得られるTh1細胞
型CD4陽性ヘルパー/キラー細胞である。このTh1型のC
D4陽性ヘルパー/キラー細胞は強い細胞傷害活性を有
し、さらにIFN-γ産生能が高いため、患者体内で免疫応
答を惹起してTh1主導型の全身性細胞性免疫状態に誘導
する能力が期待できる(特願2001-255095)。
【0017】Th2細胞は、上記のTh1誘導条件のうち、Th
2誘導条件として、培養の最初よりIL-4の濃度で添加し
ておき、最後の段階のIL-12およびIFN-γを加えずに培
養することにより得ることができる。
【0018】用いる細胞は、健康人から提供された骨髄
や臍帯血、患者本人の骨髄や末梢血等を用いることがで
きるが、患者本来の自家細胞を使う場合は、安全性が高
く、重篤な副作用を回避することも期待できる。末梢血
または骨髄は新鮮試料、低温保存試料及び凍結保存試料
のいずれでもよい。本発明に必要とされる検体量は数m
L程度の極めて少量の骨髄または末梢血でもよいことか
ら、検査用の少量サンプルや残検体で済むほか、凍結保
存したサンプルでもよい。このため、患者にほとんど負
担をかけずに適用可能である利点がある。たとえば、1
〜2mLの患者の血液から通常の養子免疫療法に必要とさ
れる107〜108個の誘導も可能である。
【0019】末梢血は、全血を培養してもよいし、白血
球成分だけを分離して培養してもよいが、後者の方が効
率的で好ましい。さらに白血球成分の中でも単核球を分
離してもよい。また、骨髄や臍帯血を起源とする場合に
は、骨髄を構成する細胞全体を培養してもよいし、これ
から単核球を分離して培養してもよい。末梢血やその白
血球成分、骨髄細胞には、樹状細胞の起源となる単核
球、造血幹細胞又は未成熟樹状細胞やCD4陽性細胞等が
含まれている。
【0020】本発明で細胞の刺激に用いられるサイトカ
インは、GM-CSF、IL-3、IL-2、IFN-γやIL-4等である
が、これ以外に適宜他種のサイトカインも必要により用
いられる。特に本発明のTh1細胞誘導法の最終段階で
は、少なくともIFN-γ が用いられるが、IL-12も用いる
ことにより誘導効率の増強も期待できることから、好ま
しくはIL-12とIFN-γが用いられる。用いられるサイト
カインは、安全性と生理活性が確認された特性のもので
あれば、天然型、あるいは遺伝子組み換え型等、その生
産手法については問わないが、好ましくは医療用に用い
られる品質が確保された標品が必要最低量で用いられ
る。添加するサイトカインの濃度は、樹状細胞やTh1お
よびTh2細胞が誘導される濃度であれば特に限定され
ず、通常サイトカインの合計濃度で10〜1000ng/mL程度
が好ましく、さらに好ましくは20〜500ng/mL程度であ
る。培養は、白血球の培養に通常用いられている周知の
培地を用いて行うことができる。培養温度は白血球の増
殖が可能であれば特に限定されないが、ヒトの体温であ
る37℃程度が最も好ましい。また、培養中の気体環境は
白血球の増殖が可能であれば特に限定されないが、5%C
O2を通気することが好ましい。さらに培養期間は、必要
数のTh細胞が誘導される期間であれば特に限定されない
が、通常3日〜8週間の間で行われる。細胞の分離や培養
に供される機器は、適宜適当なものを用いることができ
るが、医療用に安全性が確認され、かつ操作が安定して
簡便であることが好ましい。特に細胞培養装置について
は、シャーレ、フラスコ、ボトル等の一般的容器に拘わ
らず、積層型容器や多段式容器、ローラーボトル、スピ
ナー式ボトル、バッグ式培養器、中空糸カラム等も用い
ることができる。
【0021】また、肝疾患の治療時には他の薬剤との併
用も可能である。たとえば、B型肝炎では、抗ウイルス
薬であるラミブジンやIFN、ステロイド離脱療法、漢方
製剤である小紫胡湯、グリチルリチン製剤、ウルソデオ
キシコール酸、プロパゲルマニウムなどが、C型肝炎で
は、抗ウイルス薬であるIFNやリバビリン、グリチルリ
チン製剤、ウルソデオキシコール酸などが挙げられる。
さらには、肝炎治療用のワクチンとして利用可能なオリ
ゴDNA、CpGモチ-フ、DNAヌクレオチドやウイルス抗原
タンパク質等も併用可能である。IFNの場合は、α、
β、γ、コンセンサス型などの分子種を問わず、また、
天然型や遺伝子組み替え型という製造方法も一切問わな
い。
【0022】具体的な治療形態としては次の手順が考え
られる。すなわち、得られた骨髄、臍帯血あるいは末梢
血から、リンパ球および白血球成分を分離して、培養を
始め、2〜4週間後に誘導されたTh1あるいはTh2細胞
を、患者自身に輸注する。この場合、患者の病態に注意
して副作用を回避するしながら行うことが重要である。
特にTh1細胞の輸注については、Th1細胞とそれから誘導
されるCTLによる肝炎ウイルスに感染した肝細胞の排除
という治療効果とそれに伴う肝障害の程度とを勘案しな
がら安全に処置する必要がある。また、好ましくは、IF
N投与によって、活動型ウイルス性肝炎がある程度鎮静
化してからTh細胞による治療を行い、有効性と安全性の
バランスを取ることも考慮される。
【0023】肝癌への適用では、外科手術後の肝癌や肝
臓への転移癌の再発防止にも有用である。
【0024】また、本発明には、ヒトTh1細胞あるいは
ヒトTh2細胞含む肝疾患治療剤のみならず、同剤による
肝疾患治療法、対象とする肝疾患が、ウイルス性B型肝
炎、ウイルス性C型肝炎、肝硬変、肝癌あるいは外科手
術後の肝癌の再発防止である治療法、併用する薬剤が、
抗ウイルス薬、インターフェロン、グリチルリチン製
剤、漢方薬、DNAヌクレオチドあるいはウイルス抗原で
ある治療法、用いるリンパ球が患者の血液、骨髄細胞あ
るいは臍帯血である治療法も含まれる。
【0025】本発明のTh1あるいはTh2細胞による肝疾
患の治療の場合、細胞を静脈内注射したり、点滴等によ
り末梢血へ投与、さらには肝組織中に直接に投与しても
よい。投与する細胞の数は、患者の症状等により適宜設
定できるが、末梢血に投与する場合、通常、成人患者1
回の治療当たり107〜1011個程度であり、好ましくは10 8
〜109個程度である。
【0026】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0027】実施例1 Th1細胞の製造(その1) 慢性B型肝炎患者より末梢血を20mL採血し、比重液によ
りリンパ球層を分離し、次にナイロンウ−ルを通し、単
球およびB細胞を除去したT細胞高純度液を得た。フィ
コエリスリンでラベリングした抗CD4抗体を用意し、該
T細胞高純度液を反応させた後、セルソ−タ−にて該抗
CD4抗体と反応したT細胞を1×106個分離した。あ
らかじめ、抗CD3抗体をプレ−トに固相化させた抗C
D3抗体固相化プレ−トを準備しておき、該プレ−トに
上記抗CD4抗体反応T細胞を一昼夜刺激培養した。該CD3
刺激T細胞をプレ−トを用いて37℃でIL-2およびウシ胎
児血清を含むRPMI1640培地で14日間培養を行った。培養
は1×106 個/mLに調整し培養を開始し、7日後に
増殖した細胞密度を測定し、再度1×106 個/mLに調
整し継代を行った。上記の方法による細胞密度は、7日
目2×107個/mL、14日目に5×107個に達した。全培養
期間を通じてCD4陽性率は99.2%以上を示した。
【0028】実施例2 Th1細胞の製造(その2) 慢性C型肝炎患者の骨髄細胞あるいは末梢血より単核球
を分離し、2x10個/mLの濃度で10%ヒト血清を含ん
だAIM-V培地(GIBCO-BRL社製)に顕濁し、12穴プレート
に播種しGM-CSF(30ng/mL)とIL-3(30ng/mL)を添加
し、2日間培養して樹状細胞を誘導した。その後培養液
にIL-2(100U/mL)を添加し、14〜21日間培養しCD4陽性
T細胞を大量に得た。なお、CD4陽性か否かは、Phycoery
thrin標識抗ヒトCD4抗体およびFluorescein isothiocya
nate標識抗ヒトCD8抗体にて細胞を染色し、フローサイ
トメーターにて確認した(免疫実験操作法I,II、1995
年、(株)南江堂)。このCD4陽性T細胞をIL-12(40U/m
L)、IFN-γ(30ng/mL)を含んだ培養液にて、さらに2
日間培養を続けた。なお培養期間中細胞濃度が5x10
個/mLを越えた場合には、細胞をガラスピペットで撹
拌しながら回収し、およそ1x10個/mL程度に上記の
サイトカインを添加した培養液で再顕濁し、すべて新た
なプレートに播種した。得られたCD4陽性T細胞をガラス
ピペットを用い、撹拌しながら遠心管に集め、遠心分離
することにより回収した。
【0029】実施例3 Th2細胞の製造 慢性C型肝炎患者の骨髄細胞あるいは末梢血より単核球
を分離し、2x10個/mLの濃度で10%ヒト血清を含ん
だAIM-V培地(GIBCO-BRL社製)に顕濁し、12穴プレート
に播種しGM-CSF(30ng/mL)とIL-3(30ng/mL)を添加
し、2日間培養して樹状細胞を誘導した。その後培養液
にIL-2(100U/mL)とIL-4(30ng/mL)を添加し、14〜21
日間培養しCD4陽性T細胞を大量に得た。なお、CD4陽性
か否かは、実施例2と同様にフローサイトメーターにて
確認した。なお培養期間中細胞濃度が5x10個/mLを
越えた場合には、細胞をガラスピペットで撹拌しながら
回収し、およそ1x10個/mL程度に上記のサイトカイ
ンを添加した培養液で再顕濁し、すべて新たなプレート
に播種した。得られたCD4陽性T細胞をガラスピペットを
用い、撹拌しながら遠心管に集め、遠心分離することに
より回収した。
【0030】実施例4 Th1細胞によるHBV感染細胞の傷
害 ヒト肝癌細胞Huh6にHBVを持続感染させたHB611細胞(Ts
urimoto, T et al. Proc.Natl. Acd. Sci. USA 84:444,
1987)を、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培地で24穴
プレートに5x104個/穴/1mLで播種し、37℃で2日間
培養した。この細胞を定法に従い51Crで放射標識し、こ
れに実施例1で得られたTh1細胞を各エフェクター細胞対
標的細胞比10:1にて混合培養し、4時間後に培養上清
に放出される放射能活性を測定し、細胞傷害活性を求め
た(免疫実験操作法I、II、1995年、(株)南江堂)。
その結果、HB611細胞に対してTh1細胞よる細胞傷害率は
約30%と高い値を示し、Th1細胞によりHBV感染細胞が傷
害されることが分かった。
【0031】参考例1 IFNによるHBV抗ウイルス作用 ヒト肝癌細胞Huh6にHBVを持続感染させたHB611細胞(Ts
urimoto, T et al. Proc.Natl. Acd. Sci. USA 84:444,
1987)を、10%のウシ胎仔血清を含むDMEM培地で24穴
プレートに5x104個/穴/1mLで播種し、37℃で2日間
培養した。この細胞をヒトIFN-β1000IU/mLを含む培地
で3日毎に培地交換し、15日間処理した。一部の細胞を
集め、細胞溶解液(10mM Tris-HCl, pH7.5, 5mM EDTA,
1% SDS,proteinase 0.1mg/mL)で細胞を溶かしてDNAを
抽出し、制限酵素HindIIIで処理してから1.5%アガロー
ス電気泳動でDNAバンドを分離し、ナイロンメンブラン
に転写した後、[32P]HBV-DNAプローブ(Ueda, K et al.
Virology, 169:213, 1989)でDNAバンドをサザンブロ
ッティングで検出した。デンシトメトリーの結果、IFN
処理によりHBV-DNAバンドは約1/4にまで減少し、著明な
抗ウイルス効果が認められた。
【0032】参考例2 IFNによるヒト肝癌細胞におけ
る抗ウイルス作用 ヒト肝癌細胞HepG2細胞を、10%のウシ胎仔血清を含むD
MEM培地で24穴プレートに5x104個/穴/1mLで播種
し、37℃で5日間培養した。この細胞をヒトIFN-β1000I
U/mLを含む培地で1日間処理し、宗川らの方法(Sokawa
et al. J.Biochem 96:215, 1984)により処理し、細胞
内抗ウイルス因子である2‘5’オリゴアデニル酸合成酵
素(2-5AS)を測定した。その結果、IFN処理により2-5A
Sは最大誘導量(400pmol/hr/mg)の約50%の誘導が認
められ、HepG2細胞には抗ウイルス状態が誘導されたこ
とがわかった。
【0033】実施例5 IFNとTh1細胞によるHBV感染細
胞の傷害 実施例5で得られたHB611細胞を計数したところ、IFN処
理後の細胞数は非処理群に比べ約40%にまで減少してい
た。さらにこの細胞を定法に従い51Crで放射標識し、こ
れに実施例1で得られたTh1細胞をエフェクター細胞対標
的細胞比10:1にて混合培養し、実施例4と同様に、細胞
傷害活性を求めた。その結果、HB611細胞に対してTh1細
胞よる細胞傷害率は約40%と高い値を示し、IFN処理とT
h1細胞処理の併用により、HBV感染細胞が高度に傷害さ
れることが分かった。
【0034】実施例6 Th1細胞による肝癌細胞の傷害 参考例2で得られた抗ウイルス状態のHepG2細胞は、生体
内で肝炎ウイルスの攻撃を受けて抗ウイルス状態を獲得
した細胞と想定できる。この細胞を定法に従い 51Crで放
射標識し、これに実施例2で得られた実施例2で得られた
慢性C型肝炎患者から誘導して得られたTh1細胞をエフェ
クター細胞として、エフェクター細胞対標的細胞比10:
1にて混合培養し、実施例5と同様に、細胞傷害活性を求
めた。その結果、HepG2細胞に対してTh1細胞よる細胞傷
害率は約25%と高い値を示し、IFN処理とTh1細胞処理の
併用により、抗ウイルス状態の肝癌細胞が高度に傷害さ
れることが分かった。このことは、ウイルス性肝炎にお
けるウイルス感染細胞の排除のみならず、ウイルス肝炎
後に発症した肝癌細胞の抑制あるいは肝癌切除後の再発
予防の治療法として本方法が有効であることを示唆して
いる。
【0035】参考例3 ヒトB型肝炎ウィルス抗原(HBsAg)特異的マウスTh1細
胞を、上記のTh1細胞誘導の方法と同様に誘導した。す
なわちHBsAgで免疫したマウスの脾細胞を、抗原提示細
胞(マウス脾細胞)とともに、HBsAg(20μg/mL)、I
L-12 (20U/mL)、IFN-γ(1ng/mL)、IL-2 (20U/mL)、抗IL
-4抗体(50μg/mL)、ウシ胎児血清(10%)を添加した
RPMI-1640培地で培養し、HBsAg特異的Th1細胞を誘導し
た。HBsAgを静脈内投与したマウスに、誘導したHBsAg特
異的Th1細胞(2 x 107 cells)を移入した。その結果、
マウスに肝細胞傷害の指標である血清トランスアミナー
ゼの上昇(Aspartate aminotransferase;AST=約2500IU/
L、Alanine aminotransferase;ALT=約3000IU/L)が認め
られた。この結果は、Th1/Th2バランスがTh1に偏向する
と、Th1細胞誘発の細胞傷害性免疫反応(この場合は、
肝細胞傷害)が発症することを示している。
【0036】参考例4 マウスのオブアルブミン(OVA)抗原特異的リンパ球
を、抗原提示細胞(マウス脾細胞)とともに、OVAペプ
チド(10μg/mL)、IL-4(30ng/mL)、IL-2(20U/mL)、
抗IFN-γ抗体(50μg/mL)、抗IL-12抗体(50μg/mL) をウ
シ胎児血清(10%)を添加したRPMI-1640培地で培養
し、OVA抗原特異的Th2細胞を誘導した。マウス6匹にOVA
抗原を遺伝子導入により発現させた肝癌細胞 (HepG2-OV
A)をマウスの皮内に2x10個移植し、OVA抗原発現の癌
腫が6〜8mmに増殖した時点で、誘導したOVA抗原特異
的Th2細胞2x10個をその担癌マウスに移入した。その
結果、全例で癌細胞の炎症性壊死が認められ、抗原特異
的Th2細胞に注入による著明な抗腫瘍効果を認めた。
【0037】
【発明の効果】本発明は、ウイルス性肝炎、肝硬変なら
びに肝癌に対して新たなTh1ならびにTh2細胞を含む治療
剤を提供する。また、本剤は、IFNなどの既存の抗ウイ
ルス薬との併用や、肝癌の外科的切除後の再発防止にも
利用可能である。これによって、従来、治療効果が十分
でなかった肝疾患の治療効果を高めることができ、医療
上極めて有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 38/21 A61K 39/12 39/12 45/00 45/00 A61P 1/16 A61P 1/16 31/14 31/14 31/20 31/20 35/00 35/00 A61K 37/66 G (72)発明者 西村 孝司 北海道札幌市南区澄川5条5丁目10番17号 (72)発明者 富樫 裕二 北海道札幌市東区北31条東16丁目5番1号 サニーコーポB101号 Fターム(参考) 4C084 AA18 DA21 MA02 NA14 ZA75 ZB26 ZB33 4C085 AA02 BA51 BA89 BA92 CC08 EE03 4C086 AA01 AA02 DA42 MA02 NA14 ZA75 ZB26 ZB33 4C087 AA02 BB43 BB44 BB59 BB63 MA02 NA14 ZA75 ZB26 ZB33

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒトTh1細胞を含む肝疾患治療剤。
  2. 【請求項2】 ヒトTh2細胞を含む肝疾患治療剤。
  3. 【請求項3】 対象とする肝疾患が、ウイルス性肝炎、
    肝硬変あるいは肝癌である請求項1ないし2記載の肝疾患
    治療剤。
  4. 【請求項4】 対象とするウイルス性肝炎が、B型ある
    いはC型肝炎である請求項3記載の肝疾患治療剤。
  5. 【請求項5】 ヒトTh1細胞あるいはTh2細胞が患者の血
    液由来である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の肝
    疾患治療剤。
  6. 【請求項6】 ヒトTh1細胞あるいはTh2細胞が骨髄細胞
    由来である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の肝疾
    患治療剤。
  7. 【請求項7】 ヒトTh1細胞あるいはTh2細胞が臍帯血由
    来である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の肝疾患
    治療剤。
  8. 【請求項8】 ヒトTh1細胞あるいはヒトTh2細胞による
    肝疾患治療法。
  9. 【請求項9】 対象とする肝疾患が、ウイルス性B型肝
    炎、ウイルス性C型肝炎、肝硬変、肝癌あるいは外科手
    術後の肝癌の再発防止である請求8記載の治療法。
  10. 【請求項10】 併用する薬剤が、抗ウイルス薬、イン
    ターフェロン、グリチルリチン製剤、漢方薬、DNAヌク
    レオチドあるいはウイルス抗原である請求項8ないし9記
    載の治療法。
  11. 【請求項11】 用いるリンパ球が患者の血液、骨髄細
    胞あるいは臍帯血である請求項8ないし10記載の治療
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010509337A (ja) * 2006-11-13 2010-03-25 イミュノバティブ セラピーズ, リミテッド 切除的免疫療法

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