JP2003315327A - 生体レドックス均衡度の測定による抗酸化能の評価方法 - Google Patents

生体レドックス均衡度の測定による抗酸化能の評価方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】生体のレドックス均衡度の測定による抗酸化能
の評価方法を提供する。 【解決手段】レドックス均衡度が式、レドックス均衡度
=(投与後抗酸化指数/投与後酸化指数)/(投与前抗酸化
指数/投与前酸化指数)によりあらわされる。抗酸化指
数は、ブチルヒドロペルオキシドラジカルを5,5-ジメチ
ル-1-ピロリン-N-オキシドが捕捉することにより生じる
DMPO-OOLラジカルの血清添加によるシグナル強度の減衰
率を磁気共鳴スピン装置により定量的に測定することに
より得られる抗酸化能を10階級数度数分布により決定し
て指数化することにより得られ、酸化指数は、尿の8-ヒ
ドロキシデオキシグアノシンを定量的に測定することに
より得られる酸化能を10階級数度数分布により決定して
指数化することにより得られる。レドックス均衡度が1.
0を越える値の場合、抗酸化作用があるとし、レドック
ス均衡度100の場合、最も優れた抗酸化作用を有するも
のとして評価する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品および/又は
薬物の抗酸化能の測定技術に関するものであり、特に、
生体のレドックス均衡度の測定による食品および/又は
薬物の抗酸化能の評価する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、食品・薬物の抗酸化能を測定
するための方法が多く知られている。たとえば、吸光度
測定法、化学発光法あるいは磁気共鳴スピン装置などを
用いて、食品・薬物投与前後の活性酸素種を定量するこ
とにより、目的とする食品・薬物の活性酸素消去能を測
定する方法や、脂質過酸化反応によって生じる過酸化物
の定量を行うこと、又は溶存酸素濃度の変化を測定する
ことにより、目的とする食品・薬物の活性酸素消去能を
測定する方法である。
【本発明が解決しようとする課題】
【0003】食品・薬物の試験管内での抗酸化能の評価
は、活性酸素との反応速度定数の測定を含む詳細な検討
がすでに可能となっている。しかし、実際の食品・薬物
を実際に生体に投与した場合に、測定される抗酸化能
が、食品・薬物そのものの機能であるのか、又は食品・
薬物の分解・代謝産物の効果であるのかが不明瞭であ
る。また、食品・薬物の摂取による生体応答の影響など
を考慮する必要があるが、これらを考慮して測定を行う
ことは、従来の方法では困難である。このため、食品・
薬物を生体に投与した場合に、それらが実際にどの程度
の抗酸化能を発揮しているかどうかについては、推測の
域を出ていないのが現状である。
【0004】近年、代替医療の進歩に伴い、摂取した食
品、漢方などの東洋医学的薬物が生体において、がん、
糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病に有効であることが
示唆されているものの、そのメカニズムについては完全
には解明されていない。このため、摂取した食品、漢方
などの東洋医学的薬物が生体において、どの程度の抗酸
化能を発揮しているかどうかを定量的に評価する方法が
必要とされている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本願は、同一の遺伝子を
もち、同じ環境下で飼育された動物を用いて、食品およ
び/又は薬物投与前後の血清、尿を用いてレドックス均
衡を測定し、該レドックス均衡度により当該食品・薬物
の抗酸化能を評価する方法を提供する。本発明の方法に
よると、食品・薬物の吸収、代謝、生体応答に関係無
く、食品および/又は薬物投与前後のレッドクス均衡度
を測定し、食品・薬物の抗酸化能を定量的に評価するこ
とが可能となる。
【0006】本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結
果、以下の式で定義される、食品および/又は薬物投与
前後の抗酸化指数および酸化指数から得られるレドック
ス均衡度が、食品・薬物の抗酸化能を評価するために、
極めて有用であることを見出した。 レドックス均衡度=(投与後抗酸化指数/投与後酸化指
数)/(投与前抗酸化指数/投与前酸化指数)
【0007】ここで、抗酸化指数とは、後述のように、
磁気共鳴スピン装置による新規な方法により血清で測定
して得られたラジカル消去能を、任意に1点より10点
までに指数化したものをいう。
【0008】また、酸化指数とは、生体内酸化的DNA損
傷を尿中の8-ヒドロキシグアノシン(8-OHdG)の定量に
より測定して得られる生体内酸化度を、任意に1点より
10点までに指数化したものをいう。
【0009】レドックス均衡度は0.01より100までの値
をとりうるが、1.0を越える値の場合に、投与した食品
・薬物に抗酸化作用があったと評価し、レドックス均衡
度100の場合に、最も優れた抗酸化作用を有する食品・
薬物と評価することにより、食品・薬物の抗酸化能を定
量的に決定することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】本願は、同一の遺伝子をもち、同
じ環境下で飼育された動物が用いられる。この動物に、
抗酸化能を評価しようとしている食品および/又は薬物
を投与し、投与の前後の血清、尿を用いてレドックス均
衡度を測定することにより、食品・薬物の抗酸化能を評
価する方法を提供する。
【0011】抗酸化能の評価に用いられるレドックス均
衡度は、以下の式により定義される。
【0012】レドックス均衡度=(投与後抗酸化指数/
投与後酸化指数)/(投与前抗酸化指数/投与前酸化指
数)
【0013】<抗酸化指数>抗酸化指数とは、磁気共鳴
スピン装置による測定から、次のようにして得られるラ
ジカル消去能Rを、任意に1点より10点までに指数化
したものをいう。磁気共鳴スピン装置による測定は、ブ
チルヒドロペルオキシドラジカルをスピン捕捉剤5,5-ジ
メチル-1-ピロリン-N-オキシド(DMPO)が捕捉した結
果生じるDMPO-OOLラジカルを磁気共鳴スピン装置により
定量的に測定し、血清を添加することにより生じるシグ
ナル強度の減衰率を測定することにより行われる。ラジ
カル消去能Rはシグナル強度の50%抑制率とDMPO濃度よ
り以下の式で計算される。 ラジカル消去能R=[DMPO]/50%抑制濃度
【0014】好適には、磁気共鳴スピン装置による測定
は、100mMブチルヒドロペルオキシド、50μg/mlメトヘ
モグロビン、10mM DMPO、0.1mM ジエチレントリアミン
ペンタアセテックアシッドを10mMリン酸緩衝液中で反応
させ、開始1分後に磁気共鳴スピン装置でDMPO-OOLシグ
ナル強度を測定することにより行われる。
【0015】上記の方法を用いて求めた様々なラジカル
スカベンジャーのラジカル消去能Rを以下に示す。
【表1】
【0016】本発明の方法の従来技術を超える有利な特
徴は、シグナル強度の抑制率F(0< F < 1)から血清等
のラジカル消去能を決定できることである。すなわち、
本発明では、DMPO 1 M 相当のラジカル消去能を1U/Lと
定義することにより、血清のラジカル消去能を定量する
ことができる。本発明の方法を用いて測定した健康成人
9名の測定値の平均は0.293 + 0.014 U/Lであった。
【0017】<酸化指数>がん、糖尿病、動脈硬化など
の成因に深く関与する現象として遺伝子発現の異常が注
目されている。アポトーシスや細胞回転に関与する遺伝
子の発現異常が疾患の発症・進展の引き金になっている
ことが最近の研究により明らかにされてきている。これ
ら遺伝子発現の異常の誘因となるのが環境因子、炎症な
どにより生じる酸化ストレスであり、その最も代表的か
つ信頼のおける酸化的DNA損傷の指標が8-ヒドロキシデ
オキシグアノシン(8-OHdG)である。本発明では、尿中
の8-ヒドロキシグアノシン(8-OHdG)の定量により測定
して得られた生体内酸化度を、任意に1点より10点ま
でに指数化したものを酸化指数として扱う。
【0018】ここで、8-OHdGの測定はモノクローナル抗
体を用いた酵素免疫測定法により、定量的に測定され
る。
【0019】以下に糖尿病動物を用いた実験成績を提示
し、食品の抗酸化能の評価に尿中8-OHdGの測定が極めて
有用であることを示す。
【0020】実験 レプチン受容体欠損自然発症糖尿病db/dbマウス(ヒト
2型糖尿病類似の動物モデル)を用いて実験を行った。
レプチン受容体欠損自然発症糖尿病db/dbマウスの一群
に対して、抗酸化能が試験管内で証明されているアスタ
キサンチン(カロテノイド色素のひとつで海洋甲殻類に
多く存在する)を0.02%混餌として与えた。対照群のレ
プチン受容体欠損自然発症糖尿病db/dbマウスには、ア
スタキサンチンを与えなかった。表2に、両者の6週令
db/dbマウスを3ヶ月間飼育した結果を示す。
【0021】
【表2】
【0022】表2より、アスタキサンチンを与えない対
照群のdb/dbマウスでは、経時的に尿中アルブミン排泄
量が増加している。また、示さないが、対照群のdb/db
マウスでは、腎臓の組織像もメザンギウム細胞の増殖を
認めており、ヒト糖尿病性腎症と類似の病態であること
がわかる。この実験より、抗酸化能を有するアスタキサ
ンチンは、尿中8-OHdG排泄量を有意に抑制し、糖尿病性
腎症の進展を有意に抑制することがわかる。以上より、
尿中の8-OHdGを測定は、マウスにおける酸化的DNA損傷
の有用な指標となりうることが明らかである。
【0023】本発明の方法はヒト尿への応用も容易であ
る。健常成人について測定した値は、以下の通りであ
る。
【0024】
【表3】
【0025】このように、動物においても、ヒトにおい
ても、尿中8-OHdGの測定法は酸化的DNA損傷の指標とし
て有用であることから、食品・薬物の酸化能の測定に有
用であることが明らかである。
【0026】より一般的には、食品・薬物などの抗酸化
能のスクリーニング法として確立する目的で、抗酸化指
標と同じように、多数検体(ヒト200名、動物100匹)の
測定を行い、その10階級数度数分布より、最低値群に
1点、最高値群に10点とする酸化指数を決定すること
ができる。
【0027】<レドックス均衡度の測定および抗酸可能
の評価>以上のようにして求められる抗酸化能および酸
化能を、以下の式 レドックス均衡度=(投与後抗酸化指数/投与後酸化指
数)/(投与前抗酸化指数/投与前酸化指数) に挿入してレドックス均衡度を求める。求められたレド
ックス均衡度は、0.01より100までの値をとりうるが、
1.0を越える値の場合に投与した食品・薬物に抗酸化作
用があったとして評価し、レドックス均衡度100の場
合、最も優れた抗酸化作用を有する食品・薬物として評
価する。
【0028】
【発明の効果】以上のような本発明の方法を用いると、
食品・薬物の吸収、代謝、生体応答に関係無く、食品投
与前後のレッドクス均衡度を測定することにより、食品
・薬物の抗酸化能を定量的に評価することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/577 G01N 24/08 510P (72)発明者 吉川 敏一 京都府宇治市菟道荒槇1−51 Fターム(参考) 2G045 AA15 CA26 CB03 DA13 FA36 FB01 FB03 GC30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】食品および/又は薬物の抗酸化能の評価方
    法であって、 食品および/又は薬物の投与前後の血清および尿を用い
    てレドックス均衡度を求める工程、およびレドックス均
    衡度より食品および/又は薬物の抗酸化能を評価する工
    程、 を含み、 ここで、レドックス均衡度が以下の式、 レドックス均衡度=(投与後抗酸化指数/投与後酸化指
    数)/(投与前抗酸化指数/投与前酸化指数) によりあらわされ、 抗酸化指数は、ブチルヒドロペルオキシドラジカルを5,
    5-ジメチル-1-ピロリン-N-オキシド(DMPO)が捕捉する
    ことにより生じるDMPO-OOLラジカルの血清添加によるシ
    グナル強度の減衰率を磁気共鳴スピン装置により定量的
    に測定することにより得られる抗酸化能を、1から10の1
    0階級数度数分布により決定して指数化することにより
    得られ、 酸化指数は、尿の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-
    OHdG)を定量的に測定することにより得られる酸化能
    を、1から10の10階級数度数分布により決定して指数化
    することにより得られる、ところの方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の方法であって、 前記磁気共鳴スピン装置による定量的測定は、 100mMブチルヒドロペルオキシド、50μ/gmlメトヘモグ
    ロビン、10mM DMPO、および0.1mMジエチレントリアミン
    ペンタアセテックアシッドを、10mMリン酸緩衝液中で反
    応させる工程、 前記反応開始1分後に、前記磁気共鳴スピン装置によりD
    MPO-OOLラジカルのシグナル強度を測定する工程、およ
    び以下の式、 ラジカル酸化能=DMPO濃度/シグナル強度50%抑制濃度 を用いることによりラジカル酸化能を求める工程、を含
    む、ところの方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の方法であって、 前記尿の8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG)の
    定量的測定は、モノクロナール抗体を用いた酵素免疫測
    定方法により行われる、ところの方法。
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