JP2003306860A - セルロース極細長繊維不織布 - Google Patents

セルロース極細長繊維不織布

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無漂白でも白度が高く、120℃以上の湿熱
処理でも白度の低下が極めて少なく、蒸気滅菌後も極め
て高い白度を持った医療衛生材料として有用なセルロー
ス長繊維不織布を提供する。 【解決手段】 (1)繊度が、0.1〜0.6dtex
であるセルロース極細長繊維から構成された無漂白の不
織布であって、フラジミール法による通気度が280c
3 /cm2 ・sec以下であり、(2)目付が10〜
100g/m2 で、嵩密度が0.12〜0.4g/cm
3 であり、(3)120℃以上の湿熱処理後の白度が7
5%以上であることを特徴とするセルロース極細長繊維
不織布。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セルロース極細長
繊維から構成される不織布に関するものであり、特に無
漂白の状態で、不織布の白度が高く、しかも湿熱処理後
も高い白度を維持していることを特徴とするセルロース
不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、医療用製品や家庭用衛生用品
等にセルロース繊維不織布が用いられており、これらは
特に、水に対する吸収性に優れた物である。しかしなが
ら、これらのセルロース繊維不織布は、主に再生セルロ
ース繊維で構成されており、無漂白の状態では白度も低
く、120℃以上の湿熱処理を行うと、どうしても高温
の湿熱処理に伴い、セルロースの酸化分解が生じ、その
為に更に不織布の白度が大きく低下し、時には黄変現象
を生じ、医療用や家庭用の衛生・滅菌製品として外観上
好ましくないと言う問題点があった。特に、不織布を用
いたガーゼなどの医療用分野で、蒸気滅菌を必要とする
場合、どうしても白度低下や、黄変現象を生じ、大きな
問題であった。
【0003】一方、セルロースの極細繊維としてはフィ
ブリル化セルロース繊維、例えばリヨセル繊維(登録商
標)が存在していたが、短繊維であり、この繊維から構
成されるセルロース繊維不織布は、短繊維状であるので
毛羽立ちが著しく、毛羽が発生して脱落しやすく、リン
トが出やすく医療用製品としては不向きであった。特開
昭51−105481号報には、セルロース繊維束の状
態でシート化し、流体交絡させるセルロース長繊維不織
布が開示されている。しかし、この方法では熱乾燥処理
が2回以上必要であり、熱によるセルロースの酸化分解
を促進させる恐れがあると言う観点で好ましい方法では
ない。また、セルロース長繊維不織布を漂白して、白度
を高くする方法が公知であるが、この方法では不織布を
構成するセルロースが漂白剤によって酸化分解され、不
織布の強度低下が生じやすく、また、低濃度で漂白処理
すると、漂白時間に長時間を要し、コストが高くつくと
言う問題があった。また、漂白剤の残留の恐れも懸念さ
れ、医療衛生材料としては不適である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な課題を解決する為に、セルロース極細長繊維から構成
される不織布を用いることにより、無漂白でも白度が高
く、120℃以上の湿熱処理でも白度の低下が極めて少
なく、蒸気滅菌後も極めて高い白度を持った医療衛生材
料として有用なセルロース長繊維不織布を提供するもの
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は次の通りのもの
である。 (1)繊度が0.1dtex〜0.6dtexであるセ
ルロース極細長繊維から構成された無漂白の不織布であ
って、フラジミール法による通気度が280/cm3
cm2 ・sec以下であることを特徴とするセルロース
極細長繊維不織布。 (2)目付が10〜100g/m2 で、嵩密度が0.1
2〜0.4g/cm3であることを特徴とする前記
(1)記載のセルロース極細長繊維不織布。 (3)セルロース極細長繊維から構成される無漂白の不
織布で、120℃以上の湿熱処理後の白度が75%以上
であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のセ
ルロース極細長繊維不織布。
【0006】本発明において、セルロース繊維不織布が
長繊維から構成されていることが必要である。長繊維を
不織布とすることにより、繊維の脱落が少なく、医療衛
生用の材料として繊維の粉塵が出にくく、繊維の脱落も
少なく、リントフリー性に優れているものである。本発
明において、セルロース極細長繊維の繊度は0.1〜
0.6dtexであることが必要であり、極細化するこ
とにより繊維の表面積を大きくすることができる。繊度
が0.6dtexを越えると、不織布表面の繊維充填度
が大きくならず、セルロース不織布の白度が高くなら
ず、120℃以上の湿熱処理すると大幅な白度低下を生
じる。繊度が0.1dtex未満では繊度が低すぎて、
紡糸工程で糸切れが生じ易く、均一なシートが得られず
好ましくない。繊度としては、0.2〜0.4dtex
が更に好ましく、この範囲では、紡糸工程でも安定して
おり、そのため均一なシートが得られ、且つ高い白度を
有するシートを得ることが出来る。
【0007】本発明の、セルロース極細長繊維不織布の
目付は、10〜100g/m2 が好ましく、さらに好ま
しくは14〜60g/m2 である。目付が100g/m
2 を越えると、不織布の厚みが大きくなりすぎて、均一
なシートの形成が出来なくなり、毛羽立ちも多く、好ま
しくない。本発明の、セルロース極細長繊維不織布の嵩
密度は、0.12〜0.4g/cm3 が好ましく、さら
に好ましくは0.13〜0.25g/cm3 の範囲であ
る。本発明のセルロース極細長繊維不織布に於いては、
繊維を厚み方向に高密度に配列させることが好ましく、
カレンダーロール等の加圧処理を行わずに、しかも繊維
の断面を変形させずに、繊維の配列を厚み方向に高密度
化し、繊維の厚み方向の充填度を高めることが必要であ
り、不織布としての嵩密度が上記範囲に入ることが好ま
しい。
【0008】本発明におけるセルロース極細長繊維不織
布の通気度は、フラジミール法の測定で280cm3
cm2 ・sec以下であることが必要である。さらに好
ましくは、240cm3 /cm2 ・sec以下である。
不織布表面の繊維の占有率を大きくし、繊維表面積を大
きくし、不織布表面の開孔径をできるだけ小さくし、フ
ラジミール通気度を280cm3 /cm2 ・sec以下
とすることが必要である。本発明のセルロース極細長繊
維不織布の平均開孔径は、70μm以下が好ましく、さ
らに好ましくは50μm以下であり、特に好ましくは3
0μm以下である。不織布表面がセルロース極細繊維で
構成させ、その繊維間間隙の程度を示す平均開孔径を7
0μm以下と小さくすることにより、セルロース極細繊
維を均一に表面に配列させることが出来、その為に、セ
ルロース極細長繊維不織布表面の光の乱反射を大きくす
ることが出来る。
【0009】本発明のセルロース極細長繊維不織布にお
いては無漂白であることが必要であり、その白度が、湿
熱処理前で、80%以上であることが好ましく、より好
ましくは85%以上であり、特に好ましくは90以上で
ある。無漂白のセルロース長繊維不織布で、その白度
が、80%以上であれば、医療衛生材料としての外観色
相に何ら問題がなく、好ましい外観といえる。本発明に
おいて、セルロース極細長繊維から構成される無漂白の
不織布で、120℃以上の湿熱処理後の白度が75%以
上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上
であり、特に好ましくは85%以上である。120℃以
上の湿熱処理とは、通常医療衛生材料について行う蒸気
滅菌の条件であり、例えば、120℃で20分の処理条
件が挙げられる。120℃以上の湿熱処理後の白度が7
5%以上であれば、医療衛生材料として蒸気滅菌後の外
観色相としては、何ら問題なく、好ましい色相といえ
る。
【0010】セルロース極細長繊維としては、再生セル
ロース長繊維が好ましく、セルロースの極細繊維を工業
的に安定製造する観点から、流下緊張紡糸法で製造され
るキュプラ繊維が特に好ましい。キュプラ繊維は、紡糸
工程での延伸倍率が他のセルロース繊維に比べて格段に
大きく、極細繊維を生産する上で特に好ましい。セルロ
ース極細長繊維から構成される不織布としては、再生セ
ルロース長繊維の不織布であれば、特に限定されない
が、セルロース湿式スパンボンド法により製造されるベ
ンリーゼ(旭化成社;登録商標)が特に好ましい。
【0011】本発明は、セルロース極細長繊維から構成
される不織布であり、少なくともセルロース極細長繊維
が50wt%以上含有されていることが好ましく、さら
に好ましくは70wt%以上、特に好ましくは100w
t%である。セルロース極細長繊維から構成される不織
布において、セルロース極細長繊維を表面層に多く含有
していれば、不織布表面の光の乱反射率が大きくなり、
白度を高めることができる。本発明は、セルロース極細
長繊維と、合繊長繊維の混合、複合であっても良く、ま
た、セルロース極細長繊維不織布と合繊長繊維不織布と
の多層複合であっても良い。
【0012】ここで、本発明のセルロース極細長繊維不
織布の製法について述べる。本発明の望ましい態様とし
ては、キュプラ不織布であるセルロース湿式スパンボン
ド法により製造されるベンリーゼ(旭化成社;登録商
標)極細不織布が挙げられる。キュプラ不織布において
は、紡糸工程で、100倍から500倍の延伸が可能で
あり、紡糸漏斗の形状と、その中を流下させる紡糸水量
を変えることにより、延伸倍率の調整が任意に可能であ
る。キュプラ紡糸用原液としては、銅アンモニアセルロ
ース溶液が用いられ、セルロースとして精製されたコッ
トンリンターが通常用いられる。紡糸漏斗の形状として
は、矩形型が好ましく、流下させる紡糸漏斗の長さは1
00〜400mm、流下出口のスリット幅は2〜5mm
が好ましい。本発明に用いる紡糸口の径は0.1〜0.
5mm、形状は丸型が好ましい。不織布を構成する積層
枚数は3〜10枚が好ましい。特許第787914号公
報、特許第877579号公報に記載の通常の方法によ
り、精練、穴あけ、乾燥、巻き取りを行うことができ
る。
【0013】
【作用】本発明のセルロース極細長繊維不織布に於い
て、無漂白の不織布で高い白度を有する作用について以
下に述べる。本発明では、セルロース長繊維の繊度を従
来には見られないほどに極細化することで、初めて不織
布の表面を構成する繊維の露出表面積を極端に大きくす
ることができ、更に繊維を細くすることで、繊維間相互
の接合箇所を極端に多くすることができ、その為に、繊
維表面での光の乱反射を多くすることが出来た。従来の
セルロース長繊維の繊度は、安定生産からの制限上、せ
いぜい1〜2dtexが限界であり、本発明の極細繊維
の繊度は、その1/10のレベルである。その為に、本
発明のセルロース極細長繊維不織布は、従来のセルロー
ス繊維不織布よりもはるかに大きな乱反射率を持つもの
といえる。
【0014】本発明のセルロース極細長繊維不織布にお
いては、その不織布の平均開孔径を70μm以下と小さ
くし、さらにフラジミール通気度を280cm3 /cm
2 ・secと低く抑えることにより、不織布における極
細繊維間の隙間を小さくして、その充填度を高めること
ができ、不織布の厚み方向に対しても繊維の充填度を大
きくすることができた。その為に、不織布表面における
極細繊維の占有率を高くすることにより、光の乱反射を
更に大きくすることができたのである。この二つの作用
により、従来のセルロース繊維不織布に見られなかった
高白度のセルロース極細長繊維不織布を得ることができ
たのである。
【0015】医療用に用いられる綿ガーゼの白色度は本
発明のレベルの範囲であり、本発明により得られたセル
ロース極細長繊維不織布を医療用に用いることが出来
る。更に、本発明のセルロース極細長繊維不織布におい
ては、従来のセルロース繊維不織布に対して極細繊維に
よる毛細管現象の向上効果があり、吸水速度や液の拡散
性が向上する。セルロース極細長繊維よる拭き取り性向
上及びリントフリー性の向上等、工業用ワイパーとして
の性能の向上が期待される。
【0016】
【実施例】本発明の実施例、比較例で用いる評価方法に
ついて述べる。 1)通気度(フラジミール法): JIS−L−109
6、1018の通気性試験方法A法にて、フラジミール
型試験機を用いて評価した。 2)平均開孔径: Pore Wick(有機溶媒)を
用いたバブルポイント法(JIS−K−3832法)に
より測定した。 3)白度 : SUGA試験(株)社製の白色度測定器
を用いて測定した。 4)湿熱処理: TOMY AUTOCLAVE(SS
−320)を使用して、温度120℃にて20分の処理
条件で実施した。
【0017】5)繊度: 走査型電子顕微鏡から実測し
た。 6)目付: 試料を恒温室に一昼夜放置後、所定のサイ
ズ(タテ10cm*ヨコ10cm)に切り、乾燥機で絶
乾し(105℃*2時間)、その後公定水分とした後、
試料の重量を測定する。得られた値の平均値を単位面積
当たり(m2 )に換算して目付けとする。 7)厚み:厚み測定機を用い、一定荷重(100g/c
2 )を一定時間(10秒間)かけた後の厚みを測定し
た平均値。 8)嵩密度:(目付け/厚み)から算出した計算値。
【0018】
【実施例1〜5】銅安セルロース溶液として、精製コッ
トンリンター(重合度900)が10wt%、アンモニ
ア7wt%、銅3.6wt%になるように調合された紡
糸原液を用いて、湿式スパンボンド紡糸法によりセルロ
ース長繊維不織布としてキュプラ長繊維不織布を得た。
湿式紡糸で用いた紡糸漏斗は、矩形タイプの一段型漏斗
形状であり、幅30cm、流下長さ73cm、出口スリ
ット幅2mmの形状を有するものである。湿式紡糸で用
いた紡口の径は、0.3mmφであり、紡糸口金全体の
形状は、平板状であり、一つの紡糸口金面の寸法は幅4
cm*長さ33cmであり、この口金面に23700個
の孔を有するように、紡口孔が配置されている。
【0019】1ホール当たりの紡糸原液の吐出量は、
0.019cc/minであり、5枚重ねで幅35cm
のシートを5枚積層して不織布を形成し、通常の方法
(特許第787914号公報、特許第877579号公
報に記載の方法)を用いて、精練・穴開け・乾燥・巻き
取りした。実施例1は穴開け処理がなしで、目付が1
4.6g/m2 のものである。実施例2は目付が18.
5g/m2 で、穴開け条件として、下層ネットが40メ
ッシュであり、穴開け圧力が30kg/cm2 のもので
ある。
【0020】実施例3は目付が29.6g/m2 であり
穴明け条件として、下層ネットが30メッシュであり、
穴明け圧力が40kg/m2 のものである。実施例4は
実施例3で得られた原反を後加工で、再度圧力70kg
/cm2 、下層ネット70メッシュで穴明けしたもので
ある。実施例5は、実施例3において、繊度を0.4d
texにしたものである。各実施例1〜5について、表
1に記載の特性を評価し、その評価結果を表1に示す。
【比較例1】旭化成社製、登録商標ベンリーゼ(銘柄S
S303)を用いてセルロース長繊維不織布を製造し、
表1に記載の特性を評価し、その評価結果を表1に示
す。
【0021】
【表1】
【0022】表1の実施例1〜4に示す様に、繊度0.
2dtexの極細繊維からなるセルロース長繊維不織布
であって、フラジミール法の通気度が240cm3 /c
2・sec以下である場合は、120℃*20分の湿
熱処理後の白度が80%以上であり、また実施例5の繊
度0.4dtexの極細繊維からなるセルロース長繊維
不織布も湿熱処理後の白度が75%であり、白度が高
く、高圧蒸気滅菌後も、優れた白度を有し、医療衛生用
材料として適しているといえる。
【0023】
【発明の効果】本発明のセルロース極細長繊維から構成
される不織布は、特に無漂白の状態で、不織布の白度が
高く、しかも湿熱処理後も高い白度を維持し、医療衛生
用材料として適している。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊度が0.1dtex〜0.6dtex
    であるセルロース極細長繊維から構成される無漂白の不
    織布であって、フラジミール法による通気度が280c
    3 /cm2 ・sec以下であることを特徴とするセル
    ロース極細長繊維不織布。
  2. 【請求項2】 目付が10〜100g/m2 で、嵩密度
    が0.12〜0.4g/cm3 であることを特徴とする
    請求項1記載のセルロース極細長繊維不織布。
  3. 【請求項3】 セルロース極細長繊維から構成される無
    漂白の不織布が、120℃以上の湿熱処理後の白度が7
    5%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の
    セルロース極細長繊維不織布。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006022463A (ja) * 2004-06-08 2006-01-26 Rikogaku Shinkokai 構造発色性材料及びその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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