JP2003294819A - 多重複合体の化学シフトを同定する方法、多重複合体の立体構造を解析する方法、多重複合体のモデルを構築する方法、新規核酸分子及び試薬 - Google Patents

多重複合体の化学シフトを同定する方法、多重複合体の立体構造を解析する方法、多重複合体のモデルを構築する方法、新規核酸分子及び試薬

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JP2003294819A JP2002093949A JP2002093949A JP2003294819A JP 2003294819 A JP2003294819 A JP 2003294819A JP 2002093949 A JP2002093949 A JP 2002093949A JP 2002093949 A JP2002093949 A JP 2002093949A JP 2003294819 A JP2003294819 A JP 2003294819A
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molecule
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Yoshifumi Nishimura
善文 西村
Jun Yokoyama
順 横山
Kazumi Hosono
和美 細野
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Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
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Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 多重複合体の水素原子の化学シフトを帰属す
る方法を提供すること。 【解決手段】 (a)2個以上の同種の分子が同種の結合
様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合してい
る多重複合体であって、一方の末端側で1個の分子と結
合する部位の化学的環境が他方の末端側で1個の分子と
結合する部位の化学的環境と相違している前記多重複合
体を用意し、(b)(a)の多重複合体の化学シフトを測定
し、(c) (i) (a)の多重複合体を構成している高分子の
両末端側の結合部位の化学的環境の相違により差が生じ
る測定値、または(ii) (a)の多重複合体において1個の
分子が一方の末端側で高分子に結合している部分に相当
する単一複合体の化学的環境と(a)の多重複合体におい
て1個の分子が他方の末端側で高分子に結合している部
分に相当する単一複合体の化学的環境との相違により差
が生じる測定値(d)、(c)で得た測定値に基づいて、(b)
で測定した化学シフトを同定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多重複合体の化学
シフトを同定する方法、多重複合体の立体構造を解析す
る方法、多重複合体のモデルを構築する方法、新規核酸
分子及び試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】タンパク質の立体構造解析法としては、
X線結晶構造解析法が非常に長い歴史を持ち、数多くの
実績を持っている。1980年代後半になってから、核
磁気共鳴(NMR)によるタンパク質の立体構造解析も
急速に進展した。
【0003】NMRは強い磁場のなかに置かれた核スピ
ンの共鳴を観測する分光法である。タンパク質の水溶液
のNMRでは、核スピン1/2をもった原子核のみが有効
に観測できる。通常のタンパク質中で観測可能な核スピ
ン1/2をもっているのは水素原子のみである。窒素原子
や炭素原子の安定同位体の15Nや13Cは核スピン1/2をも
っているので、これらの安定同位体でタンパク質を標識
すると水素原子と同じように観察が可能となる。
【0004】NMRでは、(1)化学シフト、(2)ス
ピン結合、(3)核オーバーハウザー効果(NOE)を
観察することができる。
【0005】化学シフトとは、同一の核種であっても核
の周囲の化学的環境が異なるために生じるNMRの共鳴
周波数の差をいう。
【0006】スピン結合は、3本以内の共有結合で結ば
れた核スピンの間の相互作用として観測される。スピン
結合を介した核の間の相関を測定するのが二次元の相関
分光法(COSY)であり、通常はその変法であるDQF-COSY
(二量子フィルターによる相関分光法)を使用する。ス
ピン結合を介した原子核の間の連続的な相関を測定する
のがTOCSY(全相関分光法)である。
【0007】タンパク質を15Nで標識すると、15NHの間
に共有結合1本から成る非常に強いスピン結合(約95H
z)が生じる。この相関を観測するのが二次元HSQC(異核
間の単量子コヒーレンス)である。通常は横軸を水素原
子の化学シフトに、縦軸を15Nの化学シフトにとって、
その相関ピークをみる。タンパク質中のプロリン以外の
すべてのアミノ酸は必ずアミドのNHを1個もっているの
で、タンパク質のNMRスペクトルの解析の基本とな
る。タンパク質を15Nと13Cで二重に標識すると、主鎖の
すべての原子間にスピン結合が存在し、主鎖骨格や側鎖
のすべての原子間で相関スペクトルが観測できる。
【0008】スピン結合のほかにスピン間の相互作用と
して核オーバーハウザー効果(NOE)がある。スピン
1/2の核と水素原子が空間的に近いと、お互いのスピン
間に双極子相互作用が生じる。たとえば、空間的に5オ
ングストロ−ム以内の水素原子の間には強いNOEが観
測される。どの水素原子の間にNOEがあるのかを二次
元上で観測するスペクトルがNOESYである。距離的に近
い各水素原子の化学シフトの交点にクロスピークが現れ
る。アミノ酸残基数が60を超えると、二次元のNOESY
では各ピークが重なって見えにくくなる。これを解消す
るために、15Nに結合した水素原子や13Cに結合した水素
原子間のNOEを測定するため、15Nや13Cで三次元に展開
することが行われる。
【0009】NMRでタンパク質の構造解析を行うに
は、種々のスペクトルを解析することにより、タンパク
質中の水素原子や13Cや15Nのシグナルを帰属する必要が
ある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、多重複合体
の水素原子の化学シフトを帰属する方法を提供すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下の通
りである。 (1) 2個以上の同種の分子が同種の結合様式で1個
の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多重複合
体の化学シフトを同定する方法であって、(a)2個以上
の同種の分子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞ
れ異なる部位で結合している多重複合体であって、該多
重複合体を構成する高分子において、一方の末端側で1
個の分子と結合する部位の化学的環境が他方の末端側で
1個の分子と結合する部位の化学的環境と相違している
前記多重複合体を用意し、(b)(a)の多重複合体の化学シ
フトを測定し、(c)下記の(i)または(ii)のいずれかの測
定値を得、(i) (a)の多重複合体を構成している高分子
の両末端側の結合部位の化学的環境の相違により差が生
じる、NMRで得られる測定値、または(ii) (a)の多重
複合体において1個の分子が一方の末端側で高分子に結
合している部分に相当する単一複合体の化学的環境と
(a)の多重複合体において1個の分子が他方の末端側で
高分子に結合している部分に相当する単一複合体の化学
的環境との相違により差が生じる、NMRで得られる測
定値(d)(c)で得た測定値に基づいて、(b)で測定した化
学シフトを同定することを含む、前記の方法。
【0012】(2) (a)の多重複合体を構成している
高分子の両末端側の結合部位の化学的環境の相違が、結
合部位の前および/または後の1個以上の原子の種類の
相違であり、(c)で得る測定値が、(a)の多重複合体にお
いて1個の分子が一方の末端側で高分子に結合している
部分に相当する単一複合体の化学シフトおよび(a)の多
重複合体において1個の分子が他方の末端側で高分子に
結合している部分に相当する単一複合体の化学シフトで
ある(1)記載の方法。
【0013】(3) (a)の多重複合体を構成している
高分子の両末端側の結合部位の化学的環境の相違が、結
合部位の窒素および炭素原子の核種の相違であり、(c)
で得る測定値が、(a)の多重複合体の核オーバーハウザ
ー効果である(1)記載の方法。
【0014】(4) (1)〜(3)のいずれかに記載
の方法を利用して、2個以上の同種の分子が同種の結合
様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合してい
る多重複合体の立体構造を解析する方法。
【0015】(5) (1)〜(3)のいずれかに記載
の方法を利用して、2個以上の同種の分子が同種の結合
様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合してい
る多重複合体のモデルを構築する方法。
【0016】(6) 下記の塩基配列(I)を有する核酸
分子。
【0017】5'-R1TGTCAR2-3' (I) (塩基配列(I)中、R1は塩基数1〜100の塩基配列で
あり、Rは塩基数2〜100の塩基配列であり、R1
よびRの塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、
チミン及びシトシンからなる群より選択され、Tはチミ
ン、Gはグアニン、Cはチミン、Aはアデニンである)
【0018】(7) 下記の塩基配列(II)を有する核酸
分子。
【0019】5'-R3TGTCAR4TGTCAR5-3' (II) (塩基配列(II)中、R3は塩基数1〜100個の塩基配列
であり、R4は塩基数2〜50個の塩基配列であり、R5
塩基数2〜100個の塩基配列であり、R3、R4およびR5
の塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、チミン及
びシトシンからなる群より選択され、Tはチミン、Gはグ
アニン、Cはチミン、Aはアデニンである)
【0020】(8) 下記の塩基配列(III)を有する核
酸分子。
【0021】5'-R6 AGGGTTR7 AGGGTTR8-3' (III) (塩基配列(III)中、R6は塩基数1〜100個の塩基配
列であり、R7は塩基数0〜50個の塩基配列であり、R8
は塩基数1〜100個の塩基配列であり、R6、R7および
R8の塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、チミン
及びシトシンからなる群より選択され、Tはチミン、Gは
グアニン、Cはチミン、Aはアデニンであり、2箇所の下
線部の両方または片方の塩基において、窒素が15Nで標
識され、かつ炭素が13Cで標識されているか、窒素のみ
15Nで標識されているか、あるいは炭素のみが13Cで標
識されている)
【0022】(9) 2個以上の同種の分子が同種の結
合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合して
いる多重複合体を形成することができる高分子であっ
て、一方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的
環境が他方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学
的環境と相違している前記高分子を含む、2個以上の同
種の分子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異
なる部位で結合している多重複合体の化学シフトを同定
するための試薬。
【0023】(10) 2個以上の同種の分子が同種の
結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合し
ている多重複合体を形成することができる高分子であっ
て、一方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的
環境が他方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学
的環境と相違している前記高分子を含む、2個以上の同
種の分子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異
なる部位で結合している多重複合体の立体構造を解析す
るための試薬。
【0024】(11) 2個以上の同種の分子が同種の
結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合し
ている多重複合体を形成することができる高分子であっ
て、一方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的
環境が他方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学
的環境と相違している前記高分子を含む、2個以上の同
種の分子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異
なる部位で結合している多重複合体のモデルを構築する
ための試薬。
【0025】本発明において、多重複合体を構成する2
個以上の同種の分子としては、タンパク質などの高分子
から低分子化合物(例えば、医薬品として利用されてい
るようなもの)までのいかなる物質であってもよい。
【0026】多重複合体を構成する高分子としては、D
NA、RNA、タンパク質、多糖などを例示することが
できる。
【0027】「2個以上の同種の分子が同種の結合様式
で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多
重複合体」とは、2個以上の同種の分子が1個の高分子
中の異なる位置に存在する同じ配列(例えば、塩基配
列、アミノ酸配列、糖鎖の配列など)を認識して結合し
ている複合体をいう。このような多重複合体としては、
フォスフェート遺伝子のプロモーターのリン酸ボックス
に結合したPhoB、テロメアDNAに結合したテロメ
アタンパク質TRF1、TRF2など、DNAに結合し
た染色体タンパク質のヒストン8量体、アクチンフィラ
メントに結合したアクチン結合タンパク質(ミオシンな
ど)、DNAに結合した薬剤(アクチノマイシンD、ド
ウノマイシン、ブレオマイシンなど)、RNAに結合し
たRNP、グリコーゲンに結合したグリコーゲンホスホ
リラーゼなどを例示することができる。
【0028】「化学的環境」とは、原子の空間的な配置
をいう。この場合の原子とは、同位体を含む。
【0029】「一方の末端側で1個の分子と結合する部
位の化学的環境が他方の末端側で1個の分子と結合する
部位の化学的環境と相違している」例としては、多重複
合体を構成している高分子の両末端側の結合部位の前お
よび/または後の1個以上の原子の種類が相違している
こと(たとえば、結合部位の前後の配列(例えば、塩基
配列、アミノ酸配列、糖鎖の配列など)が異なるこ
と)、多重複合体を構成している高分子の両末端側の結
合部位の窒素および/または炭素原子の核種が相違して
いること(例えば、(1)片方の末端側の結合部位の窒
素と炭素がそれぞれ 15Nと13Cで標識され、もう片方の末
端側の結合部位の窒素と炭素はそれぞれ14Nと12Cである
こと、(2)片方の末端側の結合部位の窒素が15Nで標
識され、もう片方の末端側の結合部位の窒素は14Nであ
ること、(3)片方の末端側の結合部位の炭素が13Cで
標識され、もう片方の末端側の結合部位の炭素は12Cで
あることなど)などを挙げることができる。
【0030】「単一複合体」とは、1個の分子が1個の
高分子断片に結合して形成する複合体をいう。
【0031】「NMRで得られる測定値」としては、化
学シフト、NOE、スピン結合などを例示することがで
きる。
【0032】「化学シフトを同定する」とは、その化学
シフトが多重複合体のどの水素原子に由来するものであ
るかを決定することをいう。
【0033】「多重複合体の立体構造を解析する」と
は、多重複合体中の各々の分子が1個の高分子に結合し
ている3次元座標のすべてを実験的に求めることをい
う。
【0034】「多重複合体のモデルを構築する」とは、
1個の分子の3次元座標と1個の高分子の3次元座標に
基づいて、多重複合体中の各々の分子と1個の高分子の
位置を決めることをいう。
【0035】また、本発明は、塩基配列(I)を有する核
酸分子を提供する。
【0036】5'-R1TGTCAR2-3' (I)
【0037】塩基配列(I)中、R1は塩基数1〜100の
塩基配列であり、好ましくは、塩基数1〜50個の塩基
配列であり、より好ましくは、塩基数1〜10個の塩基
配列である。Rは塩基数2〜100個の塩基配列であ
り、好ましくは、塩基数2〜50個の塩基配列であり、
より好ましくは、塩基数2〜10個の塩基配列である。
【0038】塩基配列(I)を有する核酸分子としては、
下記の配列番号4の塩基配列を有する一本鎖DNA、下
記の配列番号4の塩基配列を有する一本鎖DNAとその
相補鎖からなる二本鎖DNA、下記の配列番号5の塩基
配列を有する一本鎖DNA、下記の配列番号5の塩基配
列を有する一本鎖DNAとその相補鎖からなる二本鎖D
NAなどを例示することができる。 5'-ACTGTCATAAATCTGT-3' (配列番号4) 5'-TCTGTCACCTGTTTGT-3'(配列番号5) (配列番号4および5の塩基配列中の下線部は、転写活
性化因子PhoBの認識配列である。)
【0039】さらに、本発明は、塩基配列(II)を有する
核酸分子を提供する。
【0040】5'-R3TGTCAR4TGTCAR5-3' (II)
【0041】塩基配列(II)中、R3は塩基数1〜100個
の塩基配列であり、好ましくは、塩基数1〜50個の塩
基配列であり、より好ましくは、塩基数1〜10個の塩
基配列である。R4は塩基数2〜50個の塩基配列であ
り、好ましくは、塩基数2〜25個の塩基配列であり、
より好ましくは、塩基数2〜10個の塩基配列である。
R5は塩基数2〜100個の塩基配列であり、好ましく
は、塩基数2〜50個の塩基配列であり、より好ましく
は、塩基数2〜10個の塩基配列である。
【0042】塩基配列(II)を有する核酸分子としては、
下記の配列番号1の塩基配列を有する一本鎖DNA、下
記の配列番号1の塩基配列を有する一本鎖DNAとその
相補鎖からなる二本鎖DNAなどを例示することができ
る。 5'-ACTGTCATAAATCTGTCACCTGTTTGT-3'(配列番号1) (配列番号1の塩基配列中の下線部は、転写活性化因子
PhoBの認識配列である。)
【0043】さらにまた、本発明は、下記の塩基配列(I
II)を有する核酸分子を提供する。
【0044】5'-R6 AGGGTTR7 AGGGTTR8-3' (III)
【0045】塩基配列(III)中、R6は塩基数1〜100
個の塩基配列であり、好ましくは、塩基数1〜50個の
塩基配列であり、より好ましくは、塩基数1〜10個の
塩基配列である。R7は塩基数0〜50個の塩基配列であ
り、好ましくは、塩基数0〜25個の塩基配列であり、
より好ましくは、塩基数0〜10個の塩基配列である。
R8は塩基数1〜100個の塩基配列であり、好ましく
は、塩基数1〜50個の塩基配列であり、より好ましく
は、塩基数1〜10個の塩基配列である。
【0046】塩基配列(III)の2箇所の下線部の両方ま
たは片方の塩基において、窒素が15Nで標識され、かつ
炭素が13Cで標識されているか、窒素のみが15Nで標識さ
れているか、あるいは炭素のみが13Cで標識されてい
る。さらに、R6、R7およびR8の塩基配列中の塩基のいず
れかが15Nおよび/または13Cで標識されていてもよい。
【0047】塩基配列(III)を有する核酸分子として
は、下記の配列番号6の塩基配列を有する一本鎖DN
A、下記の配列番号6の塩基配列を有する一本鎖DNA
とその相補鎖からなる二本鎖DNAなどを例示すること
ができる。 5'-TAGGGTT A*G*G*G*T*T* A*G*-3'(配列番号6) (配列番号6の塩基配列中の下線部は、テロメアDNA
結合因子TRF1の認識配列であり、右肩に*を付した
塩基は15Nおよび13Cで標識されている。)
【0048】本明細書において、「核酸分子」には、R
NAもDNAも含まれ、核酸分子がRNAの場合には、
塩基配列中のT(チミン)をU(ウラシル)に読みかえる
ものとし、核酸分子がDNAの場合には、一本鎖DN
A、その相補鎖も含む二本鎖DNAも含まれるものとす
る。
【0049】塩基配列(I)、(II)または(III)を有する核
酸分子は、公知の方法で製造することができる。
【0050】例えば、塩基配列(I)または(II)を有する
DNA分子は、市販のDNA合成機を用いて化学合成す
ることができる。
【0051】塩基配列(III)を有するDNA分子は、以
下のようにして製造することができる。
【0052】まず、13C,15N 標識dNTPを用意する。13C,
15N 標識dNTPは市販のもの(アイソテックインク(オハ
イオ州デイトン 米国)製)を購入してもよいし、Jour
nalof Biomolecular NMR, 10 (1997) 245-254、Deborah
E. Smith, Jin-Yuan Su and Fiona M. Jucker、Effici
ent enzymatic synthesis of 13C,15N-labeled DNAfor
NMR studiesなどの文献に従って調製することができ
る。
【0053】また、例えば以下のように13C,15N 標識dN
TPを調製してもよい。
【0054】13C標識炭酸ガス(13CO2)および15N標識
硝酸塩(15NO3 -)を唯一の炭素原および窒素原とした培
地で藍藻類を培養する。培養後,遠心分離にて藍藻体を
回収し,有機溶媒等を使ってDNAを抽出する。抽出された
DNAを市販のデオキシリボヌクレアーゼで加水分解し,陰
イオン交換カラムクロマトグラフィーで精製した後,
13C,15N 標識2'-デオキシリボヌクレオチド5'-モノリン
酸(以下dNMPs)を得る。dNMPsにリン酸基転移酵素を用
いてピロリン酸(PPi)を付加し,13C,15N 標識2'-デオキ
シリボヌクレオチド5'-トリリン酸(以下dNTPs)を得
る。
【0055】13C,15N 標識DNAは、13C,15N 標識dNTPを
用いて、Journal of Biomolecular NMR, 10 (1997) 245
-254、Deborah E. Smith, Jin-Yuan Su and Fiona M. J
ucker、Efficient enzymatic synthesis of 13C,15N-la
beled DNA for NMR studiesなどの文献に従って調製す
ることができる。
【0056】本発明の核酸分子は、塩基配列(I)、(II)
または(III)を構成成分として含む高分子とこれに結合
する2個以上の同種の分子から構成される多重複合体の
化学シフトを同定したり、そのような多重複合体の立体
構造解析やモデル構築に利用することができる。
【0057】本発明の試薬は、2個以上の同種の分子が
同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で
結合している多重複合体を形成することができる高分子
であって、一方の末端側で1個の分子と結合する部位の
化学的環境が他方の末端側で1個の分子と結合する部位
の化学的環境と相違している前記高分子を含む。多重複
合体を構成している高分子の両末端側の結合部位の化学
的環境の相違は、結合部位の窒素および/または炭素原
子の核種の相違であってもよい(例えば、(1)片方の
末端側の結合部位の窒素と炭素がそれぞれ15Nと13Cで標
識され、もう片方の末端側の結合部位の窒素と炭素はそ
れぞれ14Nと12Cである、(2)片方の末端側の結合部位
の窒素が15Nで標識され、もう片方の末端側の結合部位
の窒素は1 4Nである、(3)片方の末端側の結合部位の
炭素が13Cで標識され、もう片方の末端側の結合部位の
炭素は12Cであるなど)。本発明の試薬に含まれる高分
子としては、塩基配列(I)、(II)または(III)を構成成分
として含む高分子を例示することができる。
【0058】本発明の試薬は、さらに、脱イオン水、蒸
留水、リン酸などの緩衝液、塩(NaCl、KClな
ど)、重水などを含んでもよい。
【0059】
【発明の実施の形態】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
する。なお、これらの実施例は、本発明を説明するため
のものであって、本発明の範囲を限定するものではな
い。
【0060】[実施例1] リン酸ボックス上のPhoBの
タンデムな二量体のモデル構築 PhoBは、大腸菌のホスフェート遺伝子のプロモーターに
おけるリン酸ボックスに結合する転写活性化因子であ
る。PhoBには、2つの機能性ドメイン、すなわち、N末
部位のリン酸化ドメインとC末部位のDNA結合/転写活性
化ドメインが含まれる。DNA結合ドメインの三次構造をN
MRにより決定した。それは、N末端の4本のβシート、
中央部の3本のヘリックスバンドルおよびC末端のβヘ
アピンからなり、2本目と3本目のヘリックスはヘリッ
クス-ターン-ヘリックス変異体モチーフを形成してい
る。PhoBの結合部位はTGTCA配列であり、リン酸ボック
スには2つの結合部位が含まれている。我々は、TROSY
を用いたNMR実験により、リン酸ボックスを含むDNAに結
合した2つのDNA結合ドメインの42 kDa三重複合体を調
べた。このDNA結合ドメインのアミノ酸の大半は2つの
明らかに分離した主鎖シグナルを呈し、これらはリン酸
ボックスの2つの異なる結合部位に結合した2つのDNA
結合ドメインに相当する。DNA-非結合型とDNA-結合型の
間での化学シフトの大きな変化は、各ドメインのヘリッ
クス-ターン-ヘリックス領域において観察されたが、DN
A-結合型において、2つのDNA結合ドメイン間のヘリッ
クス-ターン-ヘリックス領域の骨格の化学シフトの差異
はかなり小さい。このことは、リン酸ボックス上のこの
2つのドメインのDNA-認識モードが互いにとても類似し
ていることを示している。一方、この2つのDNA結合ド
メイン間の骨格シグナルの有意な化学シフトの変化はN-
およびC末端領域において観察されており、両者はDNA結
合ドメインの三次元構造上の反対側に位置している。従
って、この2つのDNA結合ドメインはタンデムに並んで
おり、一方のC末端領域はもう一方のN末端領域と相互作
用している。リン酸ボックス上で、この2つのDNA結合
ドメインは、ヘッドトゥーテイルの様式で相互作用する
ことにより二量体を形成しているが、これがDNAの大き
な曲がりを引き起こしている可能性が高い。
【0061】使用されている略語 DDT:ジチオトレイトール IPTG:イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラ
ノシド NMR:核磁気共鳴法 NOE:核オーバーハウザー効果 NOESY: nuclear Overhauser enhancement spectroscopy ppm: parts per million TOCSY: total correlation spectroscopy TROSY: transverse relaxation-optimized spectroscop
y
【0062】結果と議論 DNAに結合したDNA結合ドメインのNMR 我々は、DNA分子のNHイミノシグナルをモニターするこ
とにより、PhoBの126-229番目のアミノ酸からなるDNA結
合ドメインと、リン酸ボックスを含む27個のヌクレオ
チドからなるDNA分子との結合の様式を調べたところ、
27個のヌクレオチドからなるDNA分子1個に結合した
2個のDNA結合ドメインの強固な複合体を得ることがで
きた。27個のヌクレオチドからなるDNAの配列は、5'-
ACTGTCATAAATCTGTCACCTGTTTGT-3'(配列番号1)であ
り、これには、PhoBの2個の認識配列TGTCA部位が含ま
れており、そのTGTCA部位の後の3'部分の各々はDNA結合
ドメインが強固に結合するには十分な長さである。この
複合体の分子量は約42 kDaである。図1は、TROSY23
用いた、15N標識DNA結合ドメインについてこの複合体の
1H-15N相関スペクトルを示す。スペクトル中のシグナル
は、TROSYを用いた三重共鳴実験24により同定した。5
個のプロリン残基およびN末端の3個の残基を除くほぼ
すべての残基(104残基中の96残基)について、骨
格のNHのシグナルの同定を行った。DNAに結合していな
いDNA結合ドメインにおいては、Arg219とGly220の骨格
のNHのシグナルははっきりとは観察されなかったが、DN
Aと複合体を形成することにより、両残基のNHのシグナ
ルははっきりと同定された。
【0063】ほとんどのアミノ酸(96個のアミノ酸の
うちの65個)は、リン酸ボックスの2個の異なる結合
部位に結合した2個のDNA結合ドメインに対応する2個
の明らかに分離した1H-15Nシグナルを示す。常法の1H-
15N相関実験と比較して、この42 kDaの複合体について
のTROSYを用いた実験は良好な感度と解像度を示す。こ
の複合体は同じDNA結合ドメインを含むため、TROSY実験
の解像度が良好であることは、リン酸ボックス中の異な
る結合部位に結合した2個のDNA結合ドメインを区別す
るのに大変役立つ。
【0064】異なる部位に結合した2個のDNA結合ドメ
インの各々に対する2個の分離したシグナルの各々を同
定するために、我々は27個のヌクレオチドからなるDN
Aの5'側の半分の部位を含む種々のDNA分子に結合した単
一のDNA結合ドメインのいくつかのDNA複合体を調べた。
18個のヌクレオチドからなるDNA(5'-CTGTCATAAATCTG
TCAC-3'(配列番号2)10)とDNA結合ドメインとの複合
体において、2個のTGTCA部位を含むDNAがたった一つの
DNA結合ドメインに結合し、5'側のTGTCA部位を認識して
いた。しかしながら、13個のヌクレオチドからなるDN
A(5'-ACTGTCATAAATC-3' (配列番号3))について
は、DNA結合ドメインの弱い結合が観察された(データ
は示さず)。これらのことは、DNA結合ドメインにはTGT
CA配列の後に3'部分の比較的長い領域が必要であること
を示している。16個のヌクレオチドからなるDNA(5'-
ACTGTCATAAATCTGT-3' (配列番号4)(16-5'))につ
いては、DNAに結合した単一のDNA結合ドメインの強固な
複合体が得られ、この複合体を27個のヌクレオチドか
らなるDNAとの複合体の参照として、NMR実験に用いた。
さらに、27個のヌクレオチドからなるDNAの3'側の
16個のDNA(5'-TCTGTCACCTGTTTGT-3' (配列番号
5)(16-3'))を調製し、このDNAと1個のDNA
結合ドメインとの強固な複合体も得て、27個のヌクレ
オチドからなるDNAとの複合体の参照として、NMR
実験に用いた。
【0065】図2は、TROSYを用いた2315N標識DNA結
合ドメインの16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5')
に対する1対1の複合体の1H-15N相関スペクトルを示
す。図3は、TROSYを用いた2315N標識DNA結合ドメイ
ンの16個のヌクレオチドからなるDNA(16-3')に対する
1対1の複合体の1H-15N相関スペクトルを示す。TROSY
を用いた三重共鳴実験24を用いて、シグナルを同定し
た。5個のプロリン残基およびN末端の3個の残基を除
き、104残基のうちの96残基について、骨格のNHの
シグナルを同定した(16-5')。5個のプロリン残基およ
びN末端の3個の残基を除き、104残基のうちの96
残基について、骨格のNHのシグナルを同定した(16-
3')。16個のヌクレオチドからなるDNAへの結合によ
り、Arg219とGly220の両方の骨格のNHのシグナルが再度
観察可能となった。
【0066】図2および3で、96個のアミノ酸のすべ
てが各NHアミド結合についてたった一つのシグナルを示
すことは明らかである。図4は、DNAに結合していない
状態と16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5'と16-
3')に結合した状態との間で生じた化学シフトの変化を
示す。同時に、DNAに結合していない状態と27個のヌ
クレオチドからなるDNAに結合した状態との間で生じた
化学シフトの変化も示す。両方の複合体において、3番
目のヘリックス領域の付近で大きな化学シフトが観察さ
れ、16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5'と16-3')
の複合体および27個のヌクレオチドからなるDNAの複
合体において、DNA結合ドメインの化学シフトの変化の
全体的なパターンは互いに非常に似通っていた。27個
のヌクレオチドからなるDNAとの複合体における2個の
ドメインおよび16個のヌクレオチドからなるDNA(16-
5'と16-3')との複合体における各々のドメインはお互い
に非常に似通っていることが示唆される。
【0067】27個のヌクレオチドからなるDNAの異な
る部位に結合した2個のDNA結合ドメインの各々を順次
同定していくことは非常に難しい。なぜなら、27個の
ヌクレオチドからなるDNAに結合した2個のDNA結合ドメ
インの間で、13Cスペクトルの多くが重なり、1H-15Nシ
グナルのいくつかが重なるからである。1HN-1HN NOEシ
グナルを連続的につなげることにより、27個のヌクレ
オチドからなるDNA上の各ドメインをいくつかのセグメ
ントにおいて順次同定することができた。図4は、DNA
結合ドメインのうまく同定できたセグメントをアミノ酸
配列の上の矢印で示した。C末端のβヘアピンについ
て、27個のヌクレオチドからなるDNAの複合体におけ
る各DNA結合ドメインの骨格を順次完全に同定した。N末
端領域のセグメントを各DNA結合ドメインに分割したも
のをさらに同定するために、16個のヌクレオチドから
なるDNA(16-5'と16-3')の複合体の1H-15Nの帰属を用い
た。16個のヌクレオチドからなる複合体(16-5'と16-
3')におけるDNA結合ドメインは、27個のヌクレオチド
からなるDNAの複合体における5'部位のドメインと3'部
位のドメインの各々に相当した。N末端のβシート領域
について、2個の分離したNHシグナルの各々は、16個
のヌクレオチドからなるDNAの複合体(16-5'と16-3')の
対応するシグナルに非常に似通っていた。従って、一連
のNHシグナルを5'TGTCA部位と3'部位に結合したドメイ
ンと同定することができた。
【0068】図5は、現在の同定に基づいて、16個の
ヌクレオチドからなるDNA(16-5'と16-3')の複合体およ
び27個のヌクレオチドからなるDNAの複合体の間で生
じた化学シフトを示す。青で示した変化は27個のヌク
レオチドからなるDNAの複合体における5'部位のDNA結合
ドメインについての変化に対応し、赤で示した変化は3'
部位のドメインについての変化に対応する。
【0069】2個のDNA結合ドメインをリン酸ボックス
に割り当てる 図6は、DNA結合ドメインの3次構造上の有意な化学シ
フトの変化のマップを示す。図6(a)は、27個のヌ
クレオチドからなるDNAの複合体における2個のDNA結合
ドメイン間の有意な変化を示す。図6(b)および
(c)は、それぞれ、5'部位のドメインおよび3'部位の
ドメインに同定することができた、16個のヌクレオチ
ドからなるDNA(16-5'と16-3')の複合体および27個の
ヌクレオチドからなるDNAの複合体間の有意な化学シフ
トの変化のマップを示す。ほとんどすべての有意な変化
を同定することができ、有意な変化は5'部位のドメイン
のC末端側のβヘアピン、3'部位のドメインのN末端側の
βシートと1番目のヘリックスの一部において観察され
た。
【0070】このことは、明らかに、2個のDNA結合ドメ
インはタンデムにDNAに結合し、一つのDNA結合ドメイン
のC末端側のβヘアピンと、もう一つのDNA結合ドメイン
のN末端側のβシートと1番目のヘリックスの一部によ
って密接に接触していることを示している。図4は、1
6個のヌクレオチドからなるDNA複合体(16-5'と16-3')
において、N末端側のβシートは、DNAと複合体を形成す
ることにより、有意な化学シフトの変化を示さないこと
を示している。従って、27個のヌクレオチドからなる
DNAの複合体において観察されたN末端側のβシート領域
における有意な化学シフトの変化は、27個のヌクレオ
チドからなるDNA上の2個のDNA結合ドメイン間の相互作
用により生じたものである。図6(b)および(c)
は、リン酸ボックスを含む27個のヌクレオチドからな
るDNA上の2個のDNA結合ドメイン間の密に接触する部位
を示している。
【0071】DNA結合ドメインと16個のヌクレオチド
からなるDNA(16-5')との複合体において、いくつかのNO
Eシグナルが観察された。図7は、16個のヌクレオチ
ドからなるDNA(16-5')によって分子間NOEを示す残基を
示す。これらのNOEに基づいて、我々は27個のヌクレ
オチドからなるDNAに結合した2個のDNA結合ドメインの
モデルを構築して、図8に示した。着色した残基は2個
のタンデムなDNA結合ドメイン間の密な接触部位である
が、それらはこのモデル構造において互いにわずかに離
れている。これはPhoBの二量体の結合によるB型DNAのコ
ンフォメーションの変化を示唆している。我々の以前の
研究において、我々はPhoBのDNA結合ドメインの18個
のヌクレオチドへの結合によるDNAのイミノプロトンの
化学シフトの変化を調べた10。有意な変化はTGTCA部位
の後の3'部分の広い範囲において観察され、それはDNA
のコンフォメーションの変化によって説明することがで
きた。27個のヌクレオチドからなるDNAにおける2個
の認識TGTCA部位は11塩基対離れており、それは、通
常のB型DNAの1ピッチよりわずかに大きい。27個のヌ
クレオチドからなるDNA上の2個のDNA結合ドメイン間で
密接に接触するために、このDNA分子は曲がるのであろ
う。このことは、PhoBとDNAとの複合体のゲルデターデ
ーションアッセイによっても支持されている20
【0072】DNAが曲がった後、2個のDNA結合ドメイン
は互いに密接に接触する。2個のDNA結合ドメインの
2番目と3番目のヘリックスの間の2本のループは曲が
ったDNAの内側でRNAポリメラーゼに対する広い結合
面となる。それはRNAポリメラーゼのσ70サブユニット
の仮想の相互作用部位である。Phoレギュロンのプロモ
ーターであるpstSには11塩基対離れた2個のタンデム
なリン酸ボックスがあるので、4個のPhoB結合部位がそ
の中でタンデムに位置している20。4個のPhoB分子はこ
れらの部位でタンデムに結合している可能性が高く、Ph
oBの協調的な結合によりDNAの大きな曲がりが誘導され
うる。DNAのこのコンフォメーションの変化は、RNAポリ
メラーゼのσ70サブユニットの相互作用に必要だろう。
【0073】材料と方法 PhoBのDNA結合ドメインのサンプル調製 PhoBの残基126-229に相当する、DNA結合ドメインの遺伝
子配列をpT7-7発現ベクターに挿入した。このプラスミ
ドを大腸菌BL21(DE3)に導入した。この大腸菌を37℃
で[15N]塩化アンモニウムおよび[13C]グルコース含有M9
最小培地で培養した。部分的に重水素化したサンプルを
得るために、大腸菌を60%2H2Oの存在下で培養した。OD
600=1.0のときに1mMのイソプロピル−1−チオ−β−D
−ガラクトピラノシド(IPTG)を添加した。3.0時間後、
大腸菌を回収した。大腸菌のペレットを50mMリン酸緩衝
液(pH 7.0)、1mM PMSF、10mM EDTAおよび10mMジチオト
レイトール(DTT)中に再懸濁した。細胞を氷上で超音波
処理により破砕して遠心分離し、上清を60%硫酸アンモ
ニウム沈殿させた。沈殿を50mMリン酸緩衝液(pH 7.0, 1
mM EDTA)に溶解し、50mMリン酸緩衝液(pH 5.0, 1mM EDT
A)で透析し、CMセルロースカラム(CM52, Whatman)にか
けた。タンパク質サンプルを50mM〜200mMのリン酸緩衝
液直線勾配により溶離させた。タンパク質サンプルを含
有する画分を集め、硫酸アンモニウム(80%)を添加して
沈殿させた。沈殿を50mMリン酸緩衝液(pH6.8, 500mM Na
Cl)に溶解してから、Superdex 75(Pharmacia)にかけ、
サンプル画分を集めた。
【0074】2個のDNA結合ドメインと27個のヌクレ
オチドからなるDNAとの3重複合体のNMR実験 27個のヌクレオチドからなる2本鎖オリゴヌクレオチ
ド5'-ACTGTCATAAATCTGTCACCTGTTTGT-3'(配列番号1)
に、均一に13C, 15Nで標識し、部分的に60%2Hで標識し
たPhoBのDNA結合ドメインを2倍量で添加することによ
り、3重タンパク質−DNA複合体を調製した。NMR実験用
のサンプル溶液には、1.0mMの複合体がH 2O/2H2O(90%/10
%)中の10mMリン酸緩衝液(pH 6.8)に含まれていた。三重
共鳴勾配プローブを備えたBruker Avance 600分光計を
用いて、すべてのNMR実験を310Kで行った。データの処
理と分析はnmrPipe25およびPIPP26ソフトウェアを用い
て行った。タンパク質骨格の1H, 13Cおよび15N共鳴の同
定については、TROSYを用いた三重共鳴実験、1H-15N TR
OSY23, TROSY-HNCA, TROSY-HN(CO)CA, TROSY-HNCOおよ
びTROSY-HN(CA)CO24を記録した。
【0075】一つのDNA結合ドメインと16個のヌクレ
オチドからなるDNA(16-5'と16-3')との複合体のNMR実験 16個のヌクレオチドからなる2本鎖オリゴヌクレオチ
ド5'-ACTGTCATAAATCTGT-3' (配列番号4)(16-5')と5'
-TCTGTCACCTGTTTGT-3' (配列番号5)(16-3')の各々
を1:1で、均一に13C, 15Nで標識して、部分的に60%2
Hで標識したPhoBのDNA結合ドメインに添加することによ
り、タンパク質−DNA複合体を調製した。NMR実験用のサ
ンプル溶液は、2.0mMの複合体がH2O/2H2O(90%/10%)また
2H2O中の10mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.8)中に含ま
れていた。三重共鳴勾配プローブを備えたBruker Avanc
e 600またはDMX-600分光計のいずれかを用いて、すべて
のNMR実験を310Kで行った。データの処理と分析は、nmr
Pipe25およびPIPP26ソフトウェアを用いて行った。タン
パク質骨格の1H, 13Cおよび15N共鳴の同定については、
三重共鳴実験、HNCA、HN(CO)CA27を記録した。タンパク
質側鎖の1H, 13Cおよび15N共鳴の同定については、CBCA
(CO)NH, CBCANH, HBHA(CO)NH28,29, C(CO)NH, H(CCO)NH
30, HCCH-TOCSY31, (HB)CB(CDCG)HG, (HB)CB(CDCGCE)HE
32実験を記録した。タンパク質−DNA分子間NOEを得るた
めに、13C/15Nフィルター15N編集NOESY, 13C編集13Cフ
ィルターNOESY33を記録した。
【0076】[実施例2] テロメアDNAに結合した
TRF1のタンデムな二量体のモデル構築 1.DNAの調製材料 13 C,15N 標識 dNTP13 C,15N標識 2'-デオキシリボヌクレオチド5'-トリリン
酸(以下、「 dNTPs-1 3C,15N」という)は、アイソテッ
クインク(オハイオ州デイトン 米国)から購入した。 鋳型およびプライマーDNA 以下のオリゴヌクレオチドを北海道システムサイエンス
社(北海道西区発寒)より購入した。 5'−CTAACCCTAACCCTA−3' (1)(配列番号7) 5'−TAGGGTT−3' (2)(配列番号
8) DNA合成酵素 DNA合成酵素は純正化学(東京中央区日本橋)より購入
した。
【0077】 13C,15N 標識DNA調製方法 13 C,15N 標識DNAは以下の文献に従って調製した。 Journal of Biomolecular NMR, 10 (1997) 245-254 Deborah E. Smith, Jin-Yuan Su and Fiona M. Jucker Efficient enzymatic synthesis of 13C,15N-labeled D
NA for NMR studies
【0078】上記文献に記述されている調製方法によ
り、上記(1)(2)のDNAを使って、以下の13C,15N
標識DNAを得た。 5'−TAGGGTTA*G*G*G*T*T*A*G*−3' (右肩に*を付した
塩基は15Nおよび13Cで標識されている)(3)(配列番
号6)
【0079】2.テロメアDNA結合因子TRF1のDN
A結合ドメインの調製 ヒトTRF1のDNA結合ドメインは、アミノ酸371番〜439番
で、N末端にメチオニンを付加して、ベクターpET13A(Ge
rchman et al., 1994)を用いて、大腸菌BL21(DE3)pLysS
(Novagen)に大量発現させた。大腸菌を37℃で培養し
て、OD600が0.4となったところで、タンパク質発現を誘
導するために1mMのイソプロピル−1−チオ−β−D−ガ
ラクトピラノシド(IPTG)を加えた。添加後3時間培養
し、大腸菌を集めて、バッファーA(50 mM Tris-HCl, pH
8.0, 5 mM EDTA, 1mM PMSF, 1mMベンズアミジン及び5%
グリセロール)に懸濁した。安定同位体でラベルするた
めには、15NH4Cl(0.15%)及び/又は[13C]-グルコース
(0.2%)を含むM9最小培地を培養に使った。大腸菌は氷
上で超音波で破砕し、遠心して集めた。上清を次の精製
のために使った。DNA結合ドメインはイオン交換クロマ
トグラフィー(P11, CM52; Whatman)、ゲル濾過(Super
dex 75; Pharmacia)及び疎水(Phenyl sepharose; Phar
macia)カラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
サンプルの同定と純度は、MALDI-TOF質量分析法と電気
泳動法によって確認した。
【0080】3.テロメアDNA結合因子TRF1のDN
A結合ドメインとDNAとの複合体の作製 (1)のDNAと(3)の13C,15N 標識DNAを50 mM
リン酸カリウムバッファー(pH 6.8)中で90℃から徐
々に温度を下げて巻き戻す。試料の純度はゲル濾過によ
って確認する。
【0081】DNA結合ドメインとDNAとの複合体は、タン
パク質にDNA溶液を徐々に等量になるまで加えることに
よって得る。沈殿物が出るのを避けるために、タンパク
質及びDNAは、100 mM NaClを含有する50 mMリン酸カリ
ウム緩衝液(pH 6.8)に溶かし、試料の濃度は、混合前
には1 mM以下に抑える。さらに、NMR実験のために、そ
の溶液を濃縮して、3kDaカットオフメンブレンを持った
centricon(Amicon)で塩強度を薄める。
【0082】4.NMR実験 上記のようにして作製した複合体について、以下のNM
R測定を行う。 3D CBCA(CO)NH 3D CBCANH 3D HBHA(CO)NH 3D C(CO)NH 3D H(CCO)NH 3D TROSY-HNCO(hydrogen bond) 3D HCCH-TOCSY 2D (HB)CB(CDCG)HG 2D (HB)CB(CDCGCE)HE 3D HNHB 3D HN(CO) HB 3D HNHA 2D 15N-spin echo difference CT-HSQC 4D 13C-edited(F1) 15N-edited(F3) HMQC-NOESY-HSQC 4D 13C-edited(F1) 13C-edited(F3) HMQC-NOESY-HSQC 3D 15N-edited(F1) 15N-edited(F2) HMQC-NOESY-HSQC 2D 13C/15N-filtered(F1,F2) NOESY 2D 13C-filtered(F1,F2) NOESY 2D 13C-filtered(F1) DQF-COSY 2D 13C-filtered(F1) TOCSY 3D 13C/15N-filtered(F1) 15N-edited(F2) NOESY-HSQC 3D 15N-edited(F2) NOESY-HSQC 3D 13C-edited(F1) HSQC-NOESY 3D 13C-edited(F1) 13C-filtered(F3) HSQC-NOESY
【0083】
【発明の効果】本発明により、多重複合体の水素原子の
化学シフトを帰属することができるようになった。 引用文献
【0084】
【表1】
【0085】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Nishimura, Yoshifumi NIPPON SANSO CORPORATION <120> A method for identifying chemical shifts of a multiple complex, a method for analyzing the steric structure of a multiple complex, a method for constructing a model of a multiple complex, novel nucleic acid molecules and reagents <130> P01-052 <140> <141> <160> 8 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 1 actgtcataa atctgtcacc tgtttgt 27 <210> 2 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 2 ctgtcataaa tctgtcac 18 <210> 3 <211> 13 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 3 actgtcataa atc 13 <210> 4 <211> 16 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 4 actgtcataa atctgt 16 <210> 5 <211> 16 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 5 tctgtcacct gtttgt 16 <210> 6 <211> 15 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 6 tagggttagg gttag 15 <210> 7 <211> 15 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 7 ctaaccctaa cccta 15 <210> 8 <211> 7 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:synthetic DNA <400> 8 tagggtt 7
【0086】
【配列表フリーテキスト】
【配列番号1】配列番号1は、PhoBの2個の認識配
列TGTCA部位を含む、27個のヌクレオチドからなるD
NAの塩基配列を示す。
【0087】
【配列番号2】配列番号2は、PhoBの2個の認識配
列TGTCA部位を含む、18個のヌクレオチドからなるD
NAの塩基配列を示す。
【0088】
【配列番号3】配列番号3は、PhoBの1個の認識配
列TGTCA部位を含む、13個のヌクレオチドからなるD
NAの塩基配列を示す。
【0089】
【配列番号4】配列番号4は、PhoBの1個の認識配
列TGTCA部位を含む、16個のヌクレオチドからなるD
NA(16-5')の塩基配列を示す。
【0090】
【配列番号5】配列番号5は、PhoBの1個の認識配
列TGTCA部位を含む、16個のヌクレオチドからなるD
NA(16-3')の塩基配列を示す。
【0091】
【配列番号6】配列番号6は、TRF1の2個の認識配
列AGGGTT部位を含む、15個のヌクレオチドからなるD
NAの塩基配列を示す。
【0092】
【配列番号7】配列番号7は、配列番号6の塩基配列を
有するDNAの相補鎖の塩基配列を示す。
【0093】
【配列番号8】配列番号8は、配列番号6の塩基配列を
有するDNAを調製するために使用するプライマーの塩
基配列を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】27個のヌクレオチドからなるDNAに結合したP
hoBの2個のDNA結合ドメインの 1H-15N TROSYスペクト
ル。
【図2】16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5')に結
合したPhoBのDNA結合ドメインの1H-15N TROSYスペクト
ル。
【図3】16個のヌクレオチドからなるDNA(16-3')に結
合したPhoBのDNA結合ドメインの1H-15N TROSYスペクト
ル。
【図4】DNAに結合していない状態とDNAに結合した状態
でのPhoBのDNA結合ドメインの化学シフトの変化のまと
め。 (a)16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5')との複
合体形成によるPhoBのDNA結合ドメインのアミドプロト
ンおよび窒素原子の化学シフトの変化。残基あたりのプ
ロトンの化学シフトの変化(Δδ(1H))および窒素の化
学シフトの変化(Δδ(15N))は以下の方程式を用いて
平均化する。 [{Δδ(1H)}2+{Δδ(15N)/αN}2]1/2 式中、αN=7 (b)27個のヌクレオチドからなるDNAとの複合体形
成によるPhoBの2個のDNA結合ドメインのアミドプロト
ンおよび窒素原子の化学シフトの変化。残基毎の2本の
棒は、27個のヌクレオチドからなるDNAの2個のDNA結
合ドメインに由来する。プロトンの化学シフトの変化お
よび窒素の化学シフトの変化は(a)と同様にして平均
化する。配列上の矢印は、27個のヌクレオチドからな
るDNA上のDNA結合ドメインの各々を順次うまく同定でき
たものを示す。 (c)(b)で観測された2個のDNA結合ドメインの
間の化学シフトの変化。残基あたりのプロトンの化学シ
フトの変化および窒素の化学シフトの変化は(a)と同
様にして平均化する。 (d)PhoBのDNA結合ドメインと16個のヌクレオチ
ドからなるDNAの16-5'と16-3'との複合体の間の化学
シフトの変化。残基あたりのプロトンの化学シフトの変
化および窒素の化学シフトの変化は(a)と同様にして
平均化する。 (e)16個のヌクレオチドからなるDNA(16-3')との複
合体形成によるPhoBのDNA結合ドメインのアミドプロト
ンおよび窒素原子の化学シフトの変化。残基あたりのプ
ロトンの化学シフトの変化および窒素の化学シフトの変
化は(a)と同様にして平均化する。
【図5】16個のヌクレオチドからなるDNA(16-5'と16-
3')との複合体形成および27個のヌクレオチドからな
るDNAとの複合体形成との間のPhoBのDNA結合ドメインの
化学シフトの変化のまとめ。27個のヌクレオチドから
なるDNA上の2個のドメイン間の有意な化学シフトの変
化を示す多くの残基を含む領域を示す。左と右の棒は、
それぞれ、5'部位のドメインの変化および3'部位のドメ
インの変化を示す。
【図6】化学シフトの変化のまとめ。 (a)27個のヌクレオチドからなるDNAの複合体にお
ける2個のDNA結合ドメイン間の有意な化学シフトの変
化(>0.1ppm)を示す残基。プロトンの化学シフトの変
化と窒素の化学シフトの変化を図3と同じ方程式を用い
て平均化する。 (b),(c)図4に基づく、16個のヌクレオチドか
らなるDNA(16-5'と16-3')の複合体中のドメインおよび
27個のヌクレオチドからなるDNAの複合体における5'
部位のDNA結合ドメイン(b)または3'部位のDNA結合ド
メイン(c)間の有意な化学シフトの変化(>0.1ppm)
を示す残基。これらの図はすべてMOLSCRIPT3 4プログラ
ムを用いて描いた。
【図7】16個のヌクレオチドからなるDNAの複合体に
おいてタンパク質−DNA分子間NOEが観察された残基。こ
の図はMOLSCRIPT34プログラムを用いて描いた。
【図8】27個のヌクレオチドからなるDNA上の2個のD
NA結合ドメインの複合体のモデル構造。DNAの構造は通
常のB形であると仮定した。黒塗りの残基は図5(b)
および(c)と同様である。DNAのコンフォメーション
の変化を最適化する試みは行わなかった。この図はMOLS
CRIPT34プログラムを用いて描いた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/50 C12N 15/00 ZTD G01R 33/28 G01N 24/08 510D 24/02 B (72)発明者 横山 順 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本酸 素株式会社内 (72)発明者 細野 和美 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日酸総 合サービス株式会社内 Fターム(参考) 2G045 DA13 FA36 JA01 4B024 AA11 AA20 CA01 CA11 CA20 HA01 HA11 HA20 4B063 QA11 QQ42 QQ52 QQ79 QR32 QR35 QR38 QR56 QS03 QS39 QX10

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2個以上の同種の分子が同種の結合様式
    で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多
    重複合体の化学シフトを同定する方法であって、 (a)2個以上の同種の分子が同種の結合様式で1個の高
    分子にそれぞれ異なる部位で結合している多重複合体で
    あって、該多重複合体を構成する高分子において、一方
    の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境が他
    方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境と
    相違している前記多重複合体を用意し、 (b)(a)の多重複合体の化学シフトを測定し、 (c)下記の(i)または(ii)のいずれかの測定値を得、 (i) (a)の多重複合体を構成している高分子の両末端側
    の結合部位の化学的環境の相違により差が生じる、NM
    Rで得られる測定値、または(ii) (a)の多重複合体にお
    いて1個の分子が一方の末端側で高分子に結合している
    部分に相当する単一複合体の化学的環境と(a)の多重複
    合体において1個の分子が他方の末端側で高分子に結合
    している部分に相当する単一複合体の化学的環境との相
    違により差が生じる、NMRで得られる測定値 (d)(c)で得た測定値に基づいて、(b)で測定した化学シ
    フトを同定することを含む、前記の方法。
  2. 【請求項2】 (a)の多重複合体を構成している高分子
    の両末端側の結合部位の化学的環境の相違が、結合部位
    の前および/または後の1個以上の原子の種類の相違で
    あり、(c)で得る測定値が、(a)の多重複合体において1
    個の分子が一方の末端側で高分子に結合している部分に
    相当する単一複合体の化学シフトおよび(a)の多重複合
    体において1個の分子が他方の末端側で高分子に結合し
    ている部分に相当する単一複合体の化学シフトである請
    求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 (a)の多重複合体を構成している高分子
    の両末端側の結合部位の化学的環境の相違が、結合部位
    の窒素および炭素原子の核種の相違であり、(c)で得る
    測定値が、(a)の多重複合体の核オーバーハウザー効果
    である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法を
    利用して、2個以上の同種の分子が同種の結合様式で1
    個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多重複
    合体の立体構造を解析する方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法を
    利用して、2個以上の同種の分子が同種の結合様式で1
    個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多重複
    合体のモデルを構築する方法。
  6. 【請求項6】 下記の塩基配列(I)を有する核酸分子。 5'-R1TGTCAR2-3' (I) (塩基配列(I)中、R1は塩基数1〜100の塩基配列で
    あり、Rは塩基数2〜100の塩基配列であり、R1
    よびRの塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、
    チミン及びシトシンからなる群より選択され、Tはチミ
    ン、Gはグアニン、Cはチミン、Aはアデニンである)
  7. 【請求項7】 下記の塩基配列(II)を有する核酸分子。 5'-R3TGTCAR4TGTCAR5-3' (II) (塩基配列(II)中、R3は塩基数1〜100個の塩基配列
    であり、R4は塩基数2〜50個の塩基配列であり、R5
    塩基数2〜100個の塩基配列であり、R3、R4およびR5
    の塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、チミン及
    びシトシンからなる群より選択され、Tはチミン、Gはグ
    アニン、Cはチミン、Aはアデニンである)
  8. 【請求項8】 下記の塩基配列(III)を有する核酸分
    子。 5'-R6 AGGGTTR7 AGGGTTR8-3' (III) (塩基配列(III)中、R6は塩基数1〜100個の塩基配
    列であり、R7は塩基数0〜50個の塩基配列であり、R8
    は塩基数1〜100個の塩基配列であり、R6、R7および
    R8の塩基配列の各塩基は、アデニン、グアニン、チミン
    及びシトシンからなる群より選択され、Tはチミン、Gは
    グアニン、Cはチミン、Aはアデニンであり、2箇所の下
    線部の両方または片方の塩基において、窒素が15Nで標
    識され、かつ炭素が13Cで標識されているか、窒素のみ
    15Nで標識されているか、あるいは炭素のみが13Cで標
    識されている)
  9. 【請求項9】 2個以上の同種の分子が同種の結合様式
    で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している多
    重複合体を形成することができる高分子であって、一方
    の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境が他
    方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境と
    相違している前記高分子を含む、2個以上の同種の分子
    が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位
    で結合している多重複合体の化学シフトを同定するため
    の試薬。
  10. 【請求項10】 2個以上の同種の分子が同種の結合様
    式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している
    多重複合体を形成することができる高分子であって、一
    方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境が
    他方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境
    と相違している前記高分子を含む、2個以上の同種の分
    子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部
    位で結合している多重複合体の立体構造を解析するため
    の試薬。
  11. 【請求項11】 2個以上の同種の分子が同種の結合様
    式で1個の高分子にそれぞれ異なる部位で結合している
    多重複合体を形成することができる高分子であって、一
    方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境が
    他方の末端側で1個の分子と結合する部位の化学的環境
    と相違している前記高分子を含む、2個以上の同種の分
    子が同種の結合様式で1個の高分子にそれぞれ異なる部
    位で結合している多重複合体のモデルを構築するための
    試薬。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006082963A1 (ja) * 2005-02-07 2006-08-10 Mitsubishi Chemical Corporation 標的分子とリガンドあるいはリガンド候補化合物との結合検出方法
JP2007255910A (ja) * 2006-03-20 2007-10-04 Hokkaido Univ Nmrシグナルの帰属方法
JP2009506313A (ja) * 2005-08-24 2009-02-12 アイシス イノヴェーション リミテッド 群知能を伴う生体分子構造決定

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