JP2003294660A - 熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法

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JP2003294660A
JP2003294660A JP2002095758A JP2002095758A JP2003294660A JP 2003294660 A JP2003294660 A JP 2003294660A JP 2002095758 A JP2002095758 A JP 2002095758A JP 2002095758 A JP2002095758 A JP 2002095758A JP 2003294660 A JP2003294660 A JP 2003294660A
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molecular
thermoplastic resin
softening temperature
assembly model
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Hideya Torii
秀哉 鳥井
Yoshisada Michiura
吉貞 道浦
Masayoshi Kitagawa
眞好 喜多川
Kenji Azuma
健司 東
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Kurimoto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱可塑性樹脂の軟化温度をできるだけ効率の
よい計算によって早く確実に予測し、合成前に熱可塑性
樹脂の熱的性質を簡易かつ確実に評価できるようにする
ことである。 【解決手段】 分子設計される熱可塑性樹脂の軟化温度
を分子動力学計算を用いた分子シミュレーションによっ
て予測する方法において、熱可塑性樹脂の分子量分布に
近似した分子量分布を有する300〜5000原子の集
合体からなる分子集合体モデルを分子量分布および密度
のデータを計算初期条件として入力することにより構築
し、この分子集合体モデルの非晶質状態での最安定構造
を分子力学計算によって求め、次いでこの最安定構造に
おいて温度を変化させた場合の分子集合体モデルの分子
内および分子間相互作用エネルギーの時系列変化を分子
動力学を用いたシミュレーション計算により求め、得ら
れたエネルギー収束値の変曲点に対応する温度を軟化温
度の予測値とすることを特徴とする熱可塑性樹脂の軟化
温度予測方法とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、分子設計される
熱可塑性樹脂の熱的性質に関するシミュレーションに関
し、詳しくは分子設計される熱可塑性樹脂の軟化温度予
測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂の多くは、単量体(モノマ
ー)として存在せず、数種類の重合体(ポリマー)が分
子量分布を形成することでその特性を示すものである。
このような熱可塑性樹脂は、各種の金属表面に塗布しや
すいものであり、その塗膜によって金属製物品の防食性
能、絶縁性能や耐熱性能を高めることができる。
【0003】熱可塑性樹脂の重要な物性評価のひとつ
は、熱に対する影響を評価することであり、熱的性質を
表す指標である軟化温度(軟化点に同じ。)は、合成実
験により製造された熱可塑性樹脂試料についてビカット
軟化温度の測定(JIS K 7206)等を行なうことで知るこ
とができる。
【0004】ところで、未知や既知の無機・有機化合物
の各種物性に関して、計算科学の各種理論を基本として
開発されたソフトウェアを使用し、コンピューターによ
って目的物質の物性評価を行なう方法(コンピューター
シミュレーション)が、分子設計支援技術として知られ
ている。
【0005】コンピューターを利用した分子設計支援技
術には、「分子力学法」や「分子動力学法」、「第一原
理分子動力学法」等に基づいた種々の計算科学手法が存
在し、各種ソフトウェアが市販されているが、計算対象
とする物質に応じてソフトウェアの選定やモデルの構築
および計算条件の設定を十分検討する必要があり、特に
熱可塑性樹脂のみに特化されたものではない。
【0006】また、ニュートン運動方程式を基本原理と
する古典力学に基づく「分子力学法」、「分子動力学
法」または「第一原理分子動力学法」に基づくシミュレ
ーションにおける汎用ソフトウェアシステムのいくつか
は既に市販されており、例えばaccelrys社製「Material
s Studio」、富士通株式会社製「WinMASPHYC」などがあ
る。
【0007】従来の熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法で
は、先ず、分子集合体モデルについて、規則的に分子が
配置された状態から温度を変化させて軟化するまで分子
動力学シミュレーションを行なっていた。
【0008】例えば、熱可塑性樹脂の軟化温度を0〜3
00℃の範囲内で予想するには、基本的に20℃毎に計
算を行ない、かつ変曲点付近では10℃毎に計算を行な
う。これによりシュミレーション計算を約20点の温度
条件で行なわれるが、結晶モデルの1計算が20ps分
以上でそれには35〜50時間を要するから、全20点
の温度条件での計算に要する時間は、700〜1000
時間である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、コンピュ
ーターシミュレーションを実行する場合、実際に計算対
象となる目的物質がどのような状態(有機/無機化合物
・結晶/非結晶状態等)で存在しているか等を考慮した
うえで、再現性および現実性のあるモデルを構築するた
めには、その目的物質の種類に応じて計算条件の設定や
計算手法の充分な検討が必要となり、効率よくシミュレ
ートすることは困難である。
【0010】したがって、分子量分布のある熱可塑性樹
脂では、実際の軟化温度を合成後の実験でしか確認でき
ず、分子設計段階の熱可塑性樹脂の軟化温度を簡易かつ
確実に知ることができなかった。
【0011】そこで、本願の各請求項に係る発明の課題
は、上記した問題点を解決して、分子量分布のある熱可
塑性樹脂に関し、分子設計支援技術のひとつである「分
子力学法」及び「分子動力学法」に基づくコンピュータ
ーシミュレーションを利用することにより、その合成実
験前に熱可塑性樹脂の熱的性質である「軟化温度」をで
きるだけ効率のよい計算によって早く確実に予測し、合
成前に予め熱可塑性樹脂の熱的性質を簡易かつ確実に評
価できるようにすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、本願の請求項に係る発明では、分子設計される熱可
塑性樹脂の軟化温度を分子動力学計算を用いた分子シミ
ュレーションによって予測する方法において、熱可塑性
樹脂の分子量分布に近似した分子量分布を有する分子集
合体モデルを構築し、この分子集合体モデルの非晶質状
態での最安定構造を分子力学計算によって求め、次いで
この最安定構造において温度を変化させた場合の分子集
合体モデルの分子内および分子間相互作用エネルギーの
時系列変化を分子動力学を用いたシミュレーション計算
により求め、得られたエネルギー収束値の変曲点に対応
する温度を軟化温度の予測値とすることを特徴とする熱
可塑性樹脂の軟化温度予測方法としたのである。
【0013】上記した方法で熱可塑性樹脂の軟化温度を
予測すると、熱可塑性樹脂の分子集合体モデルが、当初
から軟化温度付近における非晶質状態を想定して構築さ
れているから、軟化状態に至るまでのシミュレーション
計算時間が節約できる。
【0014】例えば、熱可塑性樹脂の軟化温度を0〜3
00℃の範囲内で予想する場合は、前述と同様に、20
℃毎に計算を行ない、かつ変曲点付近では10℃毎に計
算を行なって20点の温度条件で行なうと、非結晶モデ
ルの1計算が10ps分以下(コンピュータ上で再現さ
れる時間)であるから、1点の温度条件で15〜20時
間を要し、20点の計算に要する合計時間は、300〜
400時間である。これは従来の結晶モデルを基本にし
た場合のシミュレーション計算時間(700〜1000
時間)の半分以下である。
【0015】したがって、分子集合体モデルの非晶質状
態での最安定構造から分子動力学を用いたシミュレーシ
ョン計算を始めることにより、時間のかかる計算を省略
して極めて効率のよいシミュレーションにより軟化温度
を迅速に算出することができる。
【0016】この発明では、分子集合体モデルの構築
が、分子量分布および密度のデータを計算初期条件とし
て入力することによる分子集合体モデルの構築を行なう
ことが、より実際の熱可塑性樹脂に近似した結果を得る
ために好ましいことである。
【0017】また、この発明では分子集合体モデルが、
300〜5000原子の集合体からなる分子集合体モデ
ルである条件を採用することにより、また分子集合体モ
デルが、周期境界条件が与えられた分子集合体モデルで
あることにより、より実際に近い軟化温度を確実に予想
することができる。
【0018】分子集合体モデルを非晶質状態に近似させ
るには、分子集合体モデル内で分子をランダムに配置
し、かつ重ならないように配置した状態とすればよい。
【0019】このようにすると、熱可塑性樹脂の「軟化
温度」に関し、分子設計支援技術によるコンピューター
シミュレーションによる評価を行なうことが可能とな
り、特に熱的性質について目的の性能を得る分子構造を
簡単に予測できる。
【0020】また、「分子力学法」「分子動力学法」を
組み合わせ、計算対象となる熱可塑性樹脂の非結晶モデ
ルを構築した上でコンピューターシミュレーションを行
なうことにより、従来の「分子動力学法」を用いるのみ
のコンピューターシミュレーションよりも計算時間が短
縮され、これにより可及的に多くの原子数を扱うことが
可能となり、計算精度も高まる。
【0021】
【発明の実施の形態】この発明における実施形態ほ以下
に添付図面を参照しながら説明する。
【0022】図1のフローチャート(流れ図)に示すよ
うに、熱可塑性樹脂の熱的性質における「軟化温度」の
コンピューターシミュレーションを行うには、先ず計算
機ソフトウェアにて計算対象となる基本モデルを構築
し、モノマーやポリマーの重合度、分子量分布等の設定
条件を計算の基本となる分子集合体モデル(基本セルと
も称する。)に反映させる。なお、分子集合体モデルの
分子量分布は、これが不明な場合でも経験的データ等か
ら類推される実際の樹脂の分子量分布に近似させること
が好ましい。
【0023】分子集合体モデルは、計算対象となる熱可
塑性樹脂の種類にもよるが、一般的には1モデルについ
て約300〜5000原子でもって対象熱可塑性樹脂を
構築することが好ましい。
【0024】そして、モデル構築を行なうときには、分
子集合体モデルを非晶質状態に近似させて行なう。非晶
質状態に近似させるには、構築する分子集合体モデルに
ついて、分子をランダムかつ重なりの無いように配置す
ればよい。
【0025】次に、より実際に近い分子集合体モデルに
するために、周期境界条件を与える。
【0026】この発明における周期境界条件は、基本と
なる分子集合体モデル(基本セル。図2(a)参照。)
を形成した際、その基本セルを仮想的に3次元方向(X
YZ軸方向、図2(b)参照。)に繰り返し無限に配置
することによって、実際に存在する状態に近似するため
の条件である。
【0027】以上により、形成した周期境界条件を持つ
分子の集合体モデル(基本セル)について分子力学法を
用いたコンピューターシミュレーション計算によって基
本となる分子集合体モデルのエネルギー的に低い状態、
つまり分子構造(分子内の構造配置や基本セル内の分子
の配置)が特定され、これにより実際に存在しうる状態
に関する計算を実行することができる。
【0028】上記した分子力学法は、原子の持つ特性や
分子を形成する時における原子同士の結合に関し、実験
から得られた経験的条件(原子量・原子半径・結合次数
・原子間結合距離等)を設定し、この設定をパラメータ
として、目的とする熱可塑性樹脂を形成し、その形成し
た分子構造に関するエネルギー(分子内及び分子間相互
作用)をニュートンの運動方程式に従い、その分子構造
のエネルギーの最も低い状態を繰り返し計算により求め
ることである。
【0029】すなわち、得られた分子構造のエネルギー
が、最も低い状態の分子構造モデルを目的とする熱可塑
性樹脂の実際に存在するものに近い状態とし、これを模
擬的に表現するのである。
【0030】以上のようにして得られた周期境界条件を
付加した分子集合体モデルに対して、分子動力学法を用
いて圧力・温度・構成エネルギー等の計算条件を設定
し、時系列変化による挙動を計算によって求める。
【0031】この際、計算対象となる熱可塑性樹脂の計
算条件により、分子動力学法の条件設定は、1回の繰り
返し計算単位を0.1〜1fs(フェムトセカンド、1
0-15秒)とし、繰り返し計算回数を数千〜数万回、実
時間に換算して数十ps(ピコセカンド、10-12秒)分
以下の計算を行なう。これにより、分子動力学法を用い
た計算機シミュレーションによる熱可塑性樹脂の時間に
対する粒子(原子・分子)の位置と速度等の情報(時系
列変化情報)を得ることができる。
【0032】得られた時間に対する粒子(原子・分子)
の位置と速度等の情報は、分子構造の持つエネルギーや
原子・分子運動に関する運動エネルギー、分子間相互作
用に関するエネルギー等であり、これらは定量的に算出
される。
【0033】算出された時間に対する粒子(原子・分
子)の位置と速度等の情報は、全エネルギー値に関して
時間に伴う変化が無く、ほぼ一定値に収束していること
を確認することができる。
【0034】このような収束により、計算対象となる有
機化合物の周期境界条件をもつ集合体モデルの原子・分
子位置が平衡化されていることを判断することができ
る。つまり、そのように判断される場合には、計算対象
となる熱可塑性樹脂における繰り返し計算回数が必要十
分に設定されており、分子動力学計算の結果として取り
扱うことが可能となる。
【0035】計算対象となる熱可塑性樹脂の分子動力学
計算結果について、構築した周期境界条件をもつ分子集
合体モデルの原子・分子位置の平衡化が確認できたら、
分子構造に関するエネルギー計算値について一定に収束
した値を抽出し、さらに温度条件を変えて繰り返して同
様の計算条件にて分子動力学計算を行なう。
【0036】このようにして算出された熱可塑性樹脂の
分子構造に関する一定に収束したエネルギー計算値をY
軸にプロットし、X軸に温度を記載してグラフ化する。
【0037】描かれたグラフより変曲点を検証し、その
変曲点におけるX軸数値、すなわち変曲点付近の温度
が、計算対象となる熱可塑性樹脂のコンピューターシミ
ュレーションによって算出された「軟化温度」の予測値
である。
【0038】
【実施例】分子設計する熱可塑性樹脂として下記の化1
に示すビスフェノールA型エポキシ樹脂を採用し、この
軟化温度を分子力学法及び分子動力学法を用いたシミュ
レーションによって予測し、実際の軟化温度と比較する
ことにより確認した。
【0039】
【化1】
【0040】分子力学法及び分子動力学法を用いたシミ
ュレーションには、市販ソフトウェア「Cerius2」(acc
elrys社製)を用い、各種条件設定パラメータは、既に
導入されているのものを用いた。計算機は、SGI社製の
コンピューター「Octane」「Origine2000」を用いた。
【0041】コンピューターシミュレーションを実行す
るにあたり、より実際のものに近似した分子集合体モデ
ルを構築するため、分子量分布に関し、図3に示すよう
に実際の分子量分布を近似させた分子集合体モデルを構
築した。因みに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、
その製造過程で、重合度(n)が偶数のもの(n=0,2,4,6,
8)で構成されている。
【0042】図3に示すように、分子量分布を近似した
ビスフェノールA型エポキシ樹脂を構築すると、約20
00〜3000原子から構成される分子集合体モデルと
なる。そのモデルを実際に存在する状態(固相)になる
ように設定条件を付加した。また、その基本となるビス
フェノールA型エポキシ樹脂分子の集合体モデルにおい
て、分子量分布測定結果や密度等の既知データを計算初
期条件として入力し、実験値との整合性を比較可能とし
てビスフェノールA型エポキシ樹脂分子集合体モデル
(基本セル)を形成した。
【0043】さらに、より実際に近いモデルとするた
め、ビスフェノールA型エポキシ樹脂分子集合体モデル
に周期境界条件を与えた。周期境界条件は、基本となる
分子集合体モデルを形成して、これを仮想的に3次元方
向(XYZ方向)に繰り返し無限に配置することによっ
て、実際に存在する状態に近似させるための条件であ
る。
【0044】以上により形成した周期境界条件を持たせ
たビスフェノールA型エポキシ樹脂の分子集合体モデル
について、分子力学法を用いたシミュレーション計算に
より、エネルギーの低い状態、つまり分子構造(分子内
の構造配置や基本セル内の分子の配置)が実際に存在し
うる状態でのエネルギー量の計算を行なった。
【0045】この実施例では、分子力学法を用いて計算
機シミュレーションを行なう場合に、原子の持つ特性や
分子を形成する時における原子同士の結合に関し、実験
より得られた経験的条件(原子量・原子半径・結合次数
・原子間結合距離等)設定等のパラメータは、市販ソフ
トウェア「Cerius2」(accelrys社製)において付属し
て導入されているのものを用いた。
【0046】そして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
の分子集合体モデルについて、その形成した分子構造に
関するエネルギー(分子内及び分子間相互作用)を、ニ
ュートンの運動方程式に従って計算し、その分子構造の
エネルギーの最も低い状態を繰り返し求めた。得られた
分子構造のエネルギーが最も低い状態の分子構造モデル
を、目的とする有機化合物の実際に存在するものに近い
状態として模擬的に表現した。
【0047】以上で得られた、ビスフェノールA型エポ
キシ樹脂における周期境界条件を付加した分子集合体モ
デルについて、分子動力学法における圧力・温度・構成
エネルギー等の計算条件を設定し、時系列変化による構
築モデルの挙動を計算により求めた。
【0048】ビスフェノールA型エポキシ樹脂における
周期境界条件を付加した分子の集合体(基本セル)モデ
ルに関し、分子動力学法の条件設定は1回の繰り返し計
算単位を0.1〜0.5fs(フェムトセカンド)と
し、繰り返し計算回数を数千〜数万回、実時間に換算し
て数十ps(ピコセカンド)分以下の計算を行なうこと
で、分子動力学法計算機シミュレーションによるビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂における周期境界条件を付加
した分子集合体モデルの時間に対する粒子(原子・分
子)の位置と速度等の情報(分子構造エネルギーの時系
列変化)を得た。
【0049】すなわち、図4に示す図表は、分子動力学
法計算機シミュレーションによるビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂における周期境界条件を付加した分子集合体
モデルの時間と、粒子(原子・分子)の位置と速度等の
エネルギー量(kcal/mol)の関係を示すグラフ(すなわ
ち、分子構造の全エネルギー値の時系列変化を示すグラ
フ)である。
【0050】図4の結果からも明らかなように、ビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂における周期境界条件を付加
した分子の集合体(基本セル)モデルについては、時間
に対する粒子(原子・分子)の位置と速度等から求めた
分子構造の全エネルギー値について、時間に伴う変化が
無くほぼ一定値に収束することがわかる。
【0051】この確認により、ビスフェノールA型エポ
キシ樹脂における周期境界条件を付加した分子の集合体
モデルでは、構築した周期境界条件をもつ基本セルの原
子・分子位置の平衡化が行なわれたと判断された。
【0052】これによって分子構造の持つエネルギーや
原子・分子運動に関する運動エネルギー・分子間力に関
するエネルギー等を定量的に算出することができ、ま
た、分子構造の持つエネルギーや原子・分子運動に関す
る運動エネルギー、分子間力に関するエネルギー等の一
定値に収束するエネルギー量が求められる。
【0053】以上のようにして、一連のコンピューター
シミュレーション計算を、温度条件を変化させて行な
い、各温度条件による計算結果より得られた各種エネル
ギーのうち、分子間力に関するエネルギーの一定値に収
束した値が得られ、各温度条件より抽出した分子間力に
関するエネルギーの一定値に収束した値をY軸、温度をX
軸としてグラフ化し、これを図5に示した。
【0054】このグラフにより変曲点を検証すると、そ
の変曲点におけるX軸数値、すなわち変曲点またはその
付近の温度が、計算対象となる熱可塑性樹脂のコンピュ
ーターシミュレーションによって算出された「軟化温
度」である。
【0055】このように算出されたビスフェノールA型
エポキシ樹脂における周期境界条件を付加した分子の集
合体(基本セル)モデルの一定値に収束した時間に対す
る粒子(原子・分子)の位置と速度等の情報から得られ
た「軟化温度」は、98℃であった。
【0056】一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に
おける実験より得られた既知の「軟化温度」は、94〜
100℃であり、正確に軟化温度が予測できた。
【0057】これにより新規開発の目的物性を有する熱
可塑性樹脂などの有機化合物の設計を行なう場合、蓄積
されたデータより目的とする物性値に近似した分子構造
の予測支援が可能となった。
【0058】すなわち、分子動力学シミュレーション計
算結果での分子間力エネルギー値といった一般的に算出
できるデータを使用して軟化温度が予測できるので、重
合度や分子量分布の異なる熱可塑性樹脂のみならず無機
・有機化合物全般にも応用でき、熱的性質が重要な化合
物の物性予測に有効な手段であると考えられる。
【0059】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように、分子
集合体モデルの非晶質状態での最安定構造を分子力学計
算によって求め、次いで分子内および分子間相互作用エ
ネルギーの時系列変化を分子動力学を用いたシミュレー
ション計算により求めることにより、軟化温度を予測す
るようにしたので、時間のかかる工程の計算を省略して
極めて効率のよいシミュレーションにより軟化温度を迅
速に算出することができる利点がある。
【0060】これにより、従来は経験的に推測または実
際に合成後に測定することでしか得られなかった熱可塑
性樹脂の信頼できる軟化温度を、分子設計支援技術によ
るコンピューターシミュレーションを行なうことで定量
的に予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱可塑性樹脂の軟化温度を求めるシミュレーシ
ョンの各工程を順に示す流れ図
【図2】(a)分子集合体モデルの概念を示す説明図
(b)分子集合体モデルを繰り返し配置する周期境界条
件モデルの概念を示す説明図
【図3】エポキシ樹脂の重合度別の分子数の分布を示す
図表
【図4】分子集合体モデルのエネルギー量の時系列変化
を示す図表
【図5】温度と分子間力エネルギーの収束値との関係を
示す図表
フロントページの続き (72)発明者 道浦 吉貞 大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会 社栗本鐵工所内 (72)発明者 喜多川 眞好 大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会 社栗本鐵工所内 (72)発明者 東 健司 富田林市寺池台3丁目4番9号 Fターム(参考) 2G040 AA01 AB01 BA02 HA16 5B046 AA00 JA04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子設計される熱可塑性樹脂の軟化温度
    を分子動力学計算を用いた分子シミュレーションによっ
    て予測する方法において、 熱可塑性樹脂の分子量分布に近似した分子量分布を有す
    る分子集合体モデルを構築し、この分子集合体モデルの
    非晶質状態での最安定構造を分子力学計算によって求
    め、次いでこの最安定構造において温度を変化させた場
    合の分子集合体モデルの分子内および分子間相互作用エ
    ネルギーの時系列変化を分子動力学を用いたシミュレー
    ション計算により求め、得られたエネルギー収束値の変
    曲点に対応する温度を軟化温度の予測値とすることを特
    徴とする熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法。
  2. 【請求項2】 分子集合体モデルの構築が、分子量分布
    および密度のデータを計算初期条件として入力すること
    による分子集合体モデルの構築である請求項1に記載の
    熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法。
  3. 【請求項3】 分子集合体モデルが、300〜5000
    原子の集合体からなる分子集合体モデルである請求項1
    または2記載の熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法。
  4. 【請求項4】 分子集合体モデルが、周期境界条件が与
    えられた分子集合体モデルである請求項1〜3のいずれ
    か1項に記載の熱可塑性樹脂の軟化温度予測方法。
  5. 【請求項5】 非晶質状態が、分子集合体モデル内で分
    子をランダムに配置し、かつ重ならないように配置した
    状態である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑
    性樹脂の軟化温度予測方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021140701A (ja) * 2020-03-09 2021-09-16 株式会社豊田中央研究所 材料設計プログラム

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021140701A (ja) * 2020-03-09 2021-09-16 株式会社豊田中央研究所 材料設計プログラム
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