JP2003289854A - Bacillusmojavensisに属するか又は近縁である細菌、及びそれを含むカビ防除剤 - Google Patents

Bacillusmojavensisに属するか又は近縁である細菌、及びそれを含むカビ防除剤

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JP2003289854A
JP2003289854A JP2002373037A JP2002373037A JP2003289854A JP 2003289854 A JP2003289854 A JP 2003289854A JP 2002373037 A JP2002373037 A JP 2002373037A JP 2002373037 A JP2002373037 A JP 2002373037A JP 2003289854 A JP2003289854 A JP 2003289854A
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Hatsuko Murayama
肇子 村山
Hisae Kondo
久恵 近藤
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MIROKU TECHNOLOGY KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 果樹等の植物における様々な病害の原因とな
る白紋羽病等の様々なカビを有効に防除する新たな細
菌、薬剤、及び方法を提供することを目的とするもので
ある。 【解決手段】 Bacillus mojavensis に属するか又は近
縁であり、カビ防除作用を有する細菌、該細菌の培養処
理物、該細菌及び/又はその培養処理物を有効成分(活
性成分)としてを含むカビ防除剤、及びかかるカビ防除
剤を施用することを特徴とする白紋羽病及び灰色カビ等
に対する防除方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、Bacillus mojav
ensis に属するものと推定され、カビ防除作用を有する
細菌、該細菌又はその生産物を有効成分として含むカビ
防除剤、及び、該防除剤を施用することを特徴とする、
白紋羽病等のカビに由来する各種病害に対する防除方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】カビは糸状菌とも呼ばれ、真核微生物の
うち菌糸状に生育するものの総称である。カビの中に
は、子嚢胞子をつくる子嚢菌綱に属するもの、きのこの
仲間である担子菌綱に属するもの、及び、有性生殖が知
られておらず醸造及び食品製造に用いられる不完全菌綱
に属するもの等がある。
【0003】このようなカビは、又、植物等の様々な病
害の原因となることが知られている。代表的な例とし
て、イチゴ、ブドウ、トマト、バラ等の多くの植物に灰
色カビ病を起こす菌としてBotrytis cinereaが知られて
おり、更に、カビ毒を生成するものもある。
【0004】又、白紋羽病は、子のう菌の一種である白
紋羽病菌(Rosellinia necatrix)による重要な土壌病害
であり、リンゴ、ナシ、ブドウ、及びウメなど果樹並び
に材木等の永年作物、更にはダイズ及びスイセン等の草
本植物を含む63属170種類以上の植物を侵す多犯性
の菌として知られている。本病の罹患植物は他の土壌病
害と同様に、生育不良、衰弱、萎凋、黄化、根腐れ、及
び早期落葉などが起こり枯死する。罹病植物体の地際部
には特異的な白色−灰褐色の扇状の白色菌糸膜、菌糸束
及び分生子柄束などが認められる。本病による永年作物
の被害は大きく、土壌中及び罹病根上では擬似細核で生
存し、その生存力は強く、防除の困難な土壌病害とされ
ている。尚、白紋羽病に関しては、「植物土壌病害の事
典」、渡辺恒雄著、朝倉書店、211頁〜217頁(1
998年)で詳細に解説されている。
【0005】現在のところ、白紋羽病に対しての化学合
成物質による農薬としては、クロルピクリン剤、イソブ
ロチオン剤、チオファネートメチル剤、及びベノミル剤
などが知られているが、確実有効なものがないのが現状
である。更に、消費者の環境保全に対する意識及び食品
に対する安全志向は益々高まりを見せており、大量の化
学合成物質を使用する農薬漬けの作物栽培から有機・無
農薬による作物栽培への転換等が急務となっている。
【0006】そこで、これまでにも、化学合成殺菌剤に
代えて、微生物を使用する防除方法が提案されている。
例えば、桑白紋羽病の防除方法として、放線菌を用いる
方法が提案されている(「根圏環境の動態解明と制御技
術の開発」農林技術会議事務局研究成果274号、19
92年、49〜51ページ)。更に、特開平6−256
125号にはトリコデルマ属菌を含むによる白紋羽病防
除剤及び白紋羽病防除方法が開示されている。又、特開
平10−36211号にはグリオクラディウム属に属す
る真菌を含有することを特徴とする白紋羽病防除剤及び
白紋羽病防除方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、白紋羽病及
び灰色カビ等の様々なカビを有効に防除する新たな方法
を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、Bacill
us mojavensis に属するか又は近縁であり、カビ防除作
用を有する細菌、該細菌の培養処理物、該細菌及び/又
はその培養処理物を有効成分(活性成分)としてを含む
カビ防除剤、及びかかるカビ防除剤を施用することを特
徴とする白紋羽病及び灰色カビ等に対する防除方法に係
る。
【0009】ここで、カビには、特に、子嚢菌綱、担子
菌綱、不完全菌綱、及び、接合菌綱に属するものとして
当業者に公知の任意ものが含まれる。具体的には、例え
ば、白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)、灰色カビ病原
菌 (Botrytis cinerea) 、黒コウジカビ(Aspergillus n
iger) 、アカパンカビ(Neurospora crassa) 、ヒゲカビ
(Phycomyces blakesleeanus) 、ヒトヨタケ(Coprinus c
inereus) 及び菌核病菌(Botyrotinia fuckeliana)等
を挙げることが出来る。
【0010】本発明の細菌としては、本明細書において
後述するような平板試験により、土壌病害の病原菌であ
る白紋羽病菌及び灰色カビ等のカビに対して、有意な増
殖抑制効果を示す菌株を適宜選択して使用することがで
きる。又、本発明の防除剤は、一種又は複数種の細菌を
含むことが出来る。
【0011】このような条件を満たしている限り本発明
で使用し得る細菌に特に制限はないが、その例として、
B.sp.HK−a(FERMP−18669)及び
B.sp.HK−c(FERMP−18670)を挙げ
ることが出来る。これらの菌株は、平成13年12月2
7日付けで、茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6
の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ
ーに寄託されている。
【0012】上記の2種類の菌株は、土壌中から実施例
に示した手順により単離されたものである。
【0013】本発明の細菌は、当業者に公知の任意の方
法で培養することが出来る。例えば、寒天培地(PDA
培地及びLB培地等)、PYM培地、MYS−IV培地、
ポテト培地、並びにポテト・酵母培地等を使用して、2
7℃〜55℃の温度範囲で培養することが出来る。
【0014】Bacillus mojavensis に属するか又は近縁
である本発明の細菌等を有効成分として含む本発明の防
除剤は、乾燥粉状、顆粒状、ペースト状及び液状等の任
意の形態及び性状を取ることが可能である。例えば、該
細菌の培養後に、遠心分離等の適当な方法で分離された
一種の該細菌又はそれら数種類の混合物から成る細菌そ
れ自体、又は、細菌を適当な方法で培養して得られる培
養物(固形状又は液状等)それ自体、若しくは該培養物
に必要に応じて、アセトン、酢酸エチル及びn−ブタノ
ール等の有機溶媒による溶解及び/又は抽出、濾過、粉
砕、遠心分離、濃縮及び/又は乾燥等の処理を適宜施し
て得られる培養処理物又は細菌の生産物を本発明の防除
剤の有効成分として挙げることが出来る。
【0015】更に、こうした細菌それ自体、培養物又は
培養処理物を適当な担体に担持させ、又は固定化させた
担持物の形態(例えば、粒状)で本発明のカビ防除剤と
して使用することもできる。該担体としては、有機質及
び無機質のいずれのものでも使用でき、有機質及び無機
質の両方を含むものでもよい。具体的には、例えば、ア
タパルジャイト、モンモリロナイト、ゼオライト、赤玉
土、鹿沼土、黒ボク土、赤玉土、焼成赤玉土、バーミキ
ュライト、パーライト、化石貝等の無機物、または、ピ
ートモス、木炭等の炭類、パルプ、藁、バガス、油か
す、魚かす、骨粉、血粉、カニがら、及び各種堆肥等の
有機物、更には、前記の有機素材、並びにそれらの混合
物が挙げられる。その中では、保水能、保肥能あるいは
使用上の利便性の観点より、アタパルジャイト、モンモ
リロナイト、ゼオライト、ピートモス、木炭等の多孔質
担体が好ましい。
【0016】本発明のカビ防除剤には、更に、当業界で
公知の任意の補助剤又は添加剤等を適宜含有させること
が出来る。このような補助剤又は添加剤の例としては、
例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸及び酪酸のような有
機酸、廃糖蜜、木酢液、デンプン、乳糖、並びにリン酸
等の好熱性細菌の栄養源又は基質となり得る物質等を挙
げることが出来る。本発明の防除剤における、細菌と担
体及び/又は補助剤又は添加剤等との混合割合は、防除
剤の形態及び性状、使用の目的、頻度及び方法、並びに
各成分の種類等に応じて当業者が適宜選択することが出
来る。
【0017】本発明は更に、かかる本発明のカビ防除剤
を施用することを特徴とするカビ、特に、白紋羽病及び
灰色カビに対する防除方法に係る。
【0018】本発明方法の実施に際しては、防除剤に加
えて、その他の成分として、有機酸組成物、リン酸及び
担体を施用することもできる。有機酸組成物は防除剤に
含まれる細菌の栄養源及び/又は白紋羽病菌に対する殺
菌剤として機能し、又、担体は細菌がそれに固定されて
土壌中で安定して増殖できるような環境を提供するもの
と考えれらる。しかしながら、このような有機酸組成物
及び担体の機能については未知・不確定の要素もあり、
これらが果たす機能によって本発明の範囲が限定される
ものではない。
【0019】有機酸組成物とは有機酸を主成分として含
有し任意の形態をとり得る組成物であって、例えば、酢
酸、プロピオン酸、乳酸及び酪酸のような有機酸を少な
くとも一種類含む液体、例えば、有機酸水溶液、又は木
酢液等を挙げることが出来る。ここで、木酢液とは、一
般に、木材を乾留する際に得られる水溶性溶液をいう。
その組成及び品質は、原料として使用する木材(樹
種)、かまの構造及び種類、採取保管装置の構造、採取
温度(排煙口温度)等の各条件によって異なるが、酢
酸、プロピオン酸、乳酸及び酪酸のような有機酸を主成
分として、各種有機フェノール、アルデヒド等のカルボ
ニル化合物、アルコール類、塩基、並びにその他の中性
成分等が含まれている(丸善:「木材工業ハンドブッ
ク」林業試験場編、1972年;創森社刊:「木酢液・
炭と有機農業」三枝敏郎著、2000年8月)。又、担
体としては上記の木炭等の多孔質担体を挙げることが出
来る。
【0020】更に、本発明のカビ防除剤等の他に、当該
技術分野で公知の土壌改良剤、有機及び/又はリン酸等
の無機肥料等の成分を任意に施用することが出来る。
【0021】本発明の白紋羽病及び灰色カビ等の各種カ
ビに対する防除方法において、防除剤を施用する対象と
なる植物に特に制限はなく、これらのカビに罹患し得る
植物は全て本発明方法の対象となり得る。例えば、ス
ギ、サワラ、ツガ、カラマツ、カエデ、クスノキ、ポプ
ラ、ケヤキ、ナラ、カシ、ブナ、ハゼ、サクラ、コウ
ゾ、ミツマタ、クワ、チャ、柑橘類、イチゴ、ブドウ、
トマト、バラ、リンゴ、カキ、ナシ、モモ、スモモ、ウ
メ、アンズ、オウトウ、ビワ、イチジク、トウヒ、サツ
キ、ツツジ、クチナシ、ツゲ、マサキ、イチョウ、ウル
シ、ハクウンボク、クリ、及びクヌギなどの植物を挙げ
ることができる。
【0022】本発明のカビ防除方法において使用するカ
ビ防除剤に活性成分として含まれるBacillus mojavensi
s に属するか又は近縁の細菌、その培養処理物及びその
他の成分の種類及び量、並びに、防除剤、有機酸組成
物、担体等の種類、量及びそれらの割合は、防除剤を施
用する方法、施用する時期、対象となる植物の種類、植
物の栽培状況、土壌の種類、並びに病状の進行程度等の
様々な条件によって、当業者が適宜選択することが出来
る。更に、防除剤を施用する方法、時期等についても特
に制限はなく、防除の対象となるカビの種類、防除剤に
含まれる該細菌及びその他の成分の種類及び量、防除
剤、有機酸組成物、担体等の種類及び量、対象となる植
物の種類、植物の栽培状況、土地の種類、施用する時
期、並びに病状の進行程度等の様々な条件に基づき、当
業者が総合的に判断して選択することが出来る。
【0023】例えば、本発明のカビ防除剤は、10アー
ル当り、200〜300L程度の量で施用することが出
来る。又、それに対して、有機組成物は、例えば、上記
の酢酸、プロピオン酸、乳酸及び/又は酪酸のような有
機酸を少なくとも一種類含む水溶液の場合には、10ア
ール当り、1〜10L程度の量で施用することが出来
る。更に、例えば、木炭のような担体は、例えば、10
アール当り、100〜200L程度の量で施用すること
が出来る。又、異なる種類の細菌を含む数種類の本発明
のカビ防除剤を、本発明方法において適宜組み合わせて
施用することも可能である。
【0024】本発明の防除方法における具体的な施用方
法の例としては、例えば、罹患植物体の葉、及び根等の
各部に本発明の防除剤を直接塗布又は散布したり、根を
防除剤中に浸漬する方法、罹患した根の周囲の土壌に防
除剤及びその他の任意成分を灌注する方法、罹患植物体
の根の周りの土壌を除去し、根の周りにできた穴の中に
防除剤及びその他の任意成分を注入する方法などがあ
る。又、防除剤とその他の任意成分は同時に施用する必
要はなく、適当な間隔で施用することも出来る。更に、
防除剤とその他の任意成分を均質な状態で混合して施用
することもなく、例えば、防除剤とその他の任意成分を
交互に重層的に施用することも可能である。更に、例え
ば、住居の壁等に生育する黒カビ等に対して施用する場
合には、散布等の適当な手段により本発明の防除剤をカ
ビに直接に適用することが出来る。
【0025】更に、本発明の防除方法には、植物体が白
紋羽病及び灰色カビ等のカビに罹患する前に、予め予防
処置として、本発明の防除剤を施用することも含まれ
る。又、対象となる植物体を栽培する前に、本発明の防
除剤等で予め土壌を処理することも本発明の防除方法に
含まれる。
【0026】これらの各種の方法は、適当に組み合わせ
て実施したり、更に、罹患植物体の状態等に応じて、適
当な間隔で複数回実施することも可能である。
【0027】
【実施例】以下、実施例により更に詳細に説明するが、
この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるも
のではない。
【0028】
【実施例1】Bacillus mojavensis と推定される細菌の
単離・培養
【0029】土壌0.1gを10mlの滅菌水に懸濁し、これ
を1mlづつに分注して計5試料作成し、各々40℃、5
0℃、60℃、70℃及び80℃で1時間処理後、各試
料から200μl採り、1cm四方に切断した濾紙に滲み込ま
せた。1.5%寒天を含むMY培地(石川辰夫編「微生物
遺伝学実験法」共立出版(株)247頁)上で、カビ
(白紋羽病菌)を一方の辺に接種し、これと対角線の辺
にこの懸濁液を滲み込ませた濾紙を置き、27℃で静置
培養し、抗カビ効果に依る阻止線の出現を観察した。そ
の結果、50℃及び60で処理した濾紙に依る阻止線の
出現が観られたので、これらの濾紙上の微生物から増殖
したものの懸濁液をPDA(Potato Dextrose Agar) 培
地(DIFCO 品番213400 (0013-17))において27℃で培
養し、単集落を形成させた処、11種類の集落形態が観
察された。これら形態の異なる単集落を各々単離し、抗
カビ効果の有無を調べた処、2種類の菌株に抗カビ効果
が観られ、これら2株を、夫々、「B.sp.HK−
a」及び「B.sp.HK−c」と命名した。
【0030】
【実施例2】菌株B.sp.HK−a及びB.sp.H
K−cの同定及び菌学的性質 上記のように単離・培養されたB.sp.HK−a(単
に、「HK−a」と表記)及びB.sp.HK−c(単
に、「HK−c」と表記)の2つの菌株について形態学
的性質及び培養的性質に関して同定試験を行った。その
結果を以下の表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】更に、これらの生理学的性質及び培養的性
質等の菌学的性質をより詳細に調べるための試験を実施
した。B.sp.HK−aに関する結果を表2及び表
3、並びにB.sp.HK−cに関する結果を表4及び
表5に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】以上の試験から、試験した2つの菌株のい
ずれも、Bacillus mojavensis と推定された。
【実施例3】平板上の各種カビに対する発育阻害効果試
実施例1で調製したB.sp.HK−a及びB.sp.
HK−cの2つの菌株が、各種カビの生育に対してどの
ような影響を与えるのかを微生物学・生理学・生化学的
見地から明らかにする目的で、以下のような試験を実施
した。
【0038】先ず、本発明の各菌株を各カビ用培地に接
種し、37℃で1日培養し、この近傍に各種カビを接種
し、25℃にて所定期間培養することにより影響を観察
した。
【0039】白紋羽病菌(千葉県農業試験場・梅本先生
より譲渡)を使用し、PDA培地で11日間培養した結
果を図1に示す。菌体集落の形状を観察したところ、図
1に示したように、本発明菌株集落の周辺領域では白紋
羽病菌の増殖が抑制されることが観察され、白紋羽病菌
に対する本発明菌株の優れた防除効果が示された。
【0040】更に、B.sp.HK−cをMY培地で1
日間培養した後の培養液を遠心分離して細胞を除去した
後、4%PDAと1.5%寒天を加え、120℃で20
分間滅菌処理して作成した培地で、白紋羽病菌を14日
間培養した結果を図2に示す。菌体集落の形状を観察し
たところ、図2に示したように、顕著な白紋羽病菌の成
長阻害が観察された。
【0041】同様に、灰色カビ病原菌 (Botrytis ciner
ea)(PDA培地、21〜28日間培養:図3)、黒コ
ウジカビ(Aspergillus niger) (PDA培地、9日間培
養:図4) 、アカパンカビ(Neurospora crassa) (M
Y培地、3日間培養:図5)、ヒゲカビ(Phycomyces bl
akesleenus) (S−IV培地、4日間培養:図6)、及び
ヒトヨタケ(Coprinus cinereus) (MY培地、8日間培
養:図7)を使用して、夫々所定の期間培養した結果を
図3〜図7に示す。いずれの場合も、本発明菌株コロニ
ーの周辺領域では各種カビの増殖が抑制されることが観
察され、それらに対する本発明菌株の優れた防除効果が
示された。
【0042】
【実施例4】培養処理物による平板上のカビに対する発
育阻害効果試験(抗菌試験) 抗菌試験に用いる検定菌として、Discomycetes(盤菌類)
ビョウタケ目Sclerotinia科(菌核病菌)のBotyrotinia属
に属するBotyrotinia fuckeliana IFO5365を用いた。検定方法 あらかじめ滅菌したぺ一パーディスク(Φ=6mm)上に検定
サンプルをしみこませ風乾した後、PDA培地(ポテトデ
キストロース寒天培地(Difco社製))上に生育するBot
yrotinia fuckeliana IFO5365に対して形成される生育
阻止円(胞子形成阻止円)を抗菌活性値として用いた。被験試料の作成 本発明の細菌であるHK−cを以下の培地で培養した。 培地(PYM培地):2,4%ポテトデキストロース(Difco社
製)、0,2%乾燥酵母(Difco社製)、0,2%肉エキス(Difco社
製)。 予備的な実験において、活性物質はn一ブタノールで抽
出可能であることが判明した。そこで、HK-cを上記のPY
M培地に植菌し4,5,6日目の培養液にアセトンを添加後、
菌体を溶解した。引き続き、ろ過した後、減圧下アセト
ンを除去した。得られた水溶液をpH7に調整しn一ブタノ
ールにより抽出した。n一ブタノール層を減圧下、濃縮
乾固後(図9の”sample A”に該当する)、メタノール
に溶解しぺ一パーディスク法を用いて抗菌活性試験を行
った。以下の表6の結果から明らかなように、6日目の
培養抽出物に最も強い抗菌活性が見出された。尚、ぺ一
パーディスクの様子を図8に示した。
【0043】
【表6】
【0044】上記結果に基づき、更に詳細な試験を以下
のとおり実施した。即ち、HK-c株をPYM培地にて37℃で6
日間培養した。得られた培養液についてBotyrotinia fu
ckeliana IFO5365に対する抗菌活性を指標に、上記の溶
媒抽出試験および熱安定性試験(80℃、5分間)を行
った。その結果を以下の表7に示す。
【0045】
【表7】
【0046】更に、図9に示すスキームで各種クロマト
グラフィを用いて活性物質を含むフラクション3および4
を精製した。その結果、活性物質はlipopeptin類、neop
eptin類、Xanthostatinなどの環状リポペプチド系抗生
物質と、その化学的諸性質が極めて類似しており、HK-c
が生産する活性物質が環状リポペプチド系であることが
示唆された。そこで、得られたフラクション3および4を
LC-MS(negative mode)により分析した結果、m/z 10l9,
1033のピークが観測され、図10に示した環状リポペプ
チドBacillopeptinA(C46H72N1016:分子量10
20)、及びBacillopeptinB(C 47H74N1016:分
子量1034)を含有していることが強く示唆された(Y.Kaj
imura et al., J.Antibiot.,48,1095(1995))。
【0047】
【発明の効果】本発明のBacillus mojavensis に属する
と推定される細菌及びその培養処理物が、白紋羽病菌
(Rosellinia necatrix)、灰色カビ(Botrytis cinerea)
及び菌核病菌(Botyrotinia fuckeliana)等の広範囲な
病原性カビに対して優れた防除効果を有することが確認
された。
【図面の簡単な説明】
【図1】寒天平板培地上における白紋羽病菌に対する、
本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及びB.s
p.HK−c(下図))による発育阻止効果試験の結果
を示す。
【図2】白紋羽病菌に対するB.sp.HK−cをMY
培地で1日間培養した後の培養液を濾過して得られた培
養処理物による成長阻害を示す(上図)。尚、下図はコ
ントロールの結果を示す。
【図3】PDA培地上における灰色カビ病原菌に対す
る、本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及びB.
sp.HK−c(下図))による発育阻止効果試験の結
果を示す。
【図4】PDA培地上における黒コウジカビ病原菌に対
する、本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及び
B.sp.HK−c(下図))による発育阻止効果試験
の結果を示す。
【図5】MY培地上におけるアカパンカビ病原菌に対す
る、本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及びB.
sp.HK−c(下図))による発育阻止効果試験の結
果を示す。
【図6】S−IV培地上におけるヒゲカビ病原菌に対す
る、本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及びB.
sp.HK−c(下図))による発育阻止効果試験の結
果を示す。
【図7】MY培地上におけるヒトヨタケ病原菌に対す
る、本発明細菌(B.sp.HK−a(上図)及びB.
sp.HK−c(下図))による発育阻止効果試験の結
果を示す。
【図8】実施例4におけるぺ一パーディスクの様子を示
す。
【図9】本発明の培養処理物から各種クロマトグラフィ
を用いて活性物質を含むフラクションを単離・精製する
スキームを示す。
【図10】環状リポペプチドBacillopeptinA及びBacill
opeptinBの化学構造を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B065 AA15X AC14 BA23 BD16 CA34 CA47 4H011 AA01 BA01 BB21 BC03 BC08 DA15 DC05 DD03

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Bacillus mojavensis に属するか又は近縁
    であり、カビ防除作用を有する細菌。
  2. 【請求項2】カビが子嚢菌綱に属する、請求項1記載の
    細菌。
  3. 【請求項3】カビが担子菌綱に属する、請求項1記載の
    細菌。
  4. 【請求項4】カビが不完全菌綱に属する、請求項1記載
    の細菌。
  5. 【請求項5】カビが接合菌綱に属する、請求項1記載の
    細菌。
  6. 【請求項6】カビが、白紋羽病菌(Rosellinia necatri
    x)、灰色カビ病原菌(Botrytis cinerea) 、黒コウジカ
    ビ(Aspergillus niger) 、アカパンカビ(Neurospora cr
    assa) 、ヒゲカビ(Phycomyces blakesleeanus) 、ヒト
    ヨタケ(Coprinus cinereus) 及び菌核病菌(Botyrotini
    a fuckeliana)から成る群から選択される、請求項1乃
    至5のいずれか一項に記載の細菌。
  7. 【請求項7】B.sp.HK−a(FERMP−186
    69)である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の
    細菌。
  8. 【請求項8】B.sp.HK−c(FERMP−186
    70)である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の
    細菌。
  9. 【請求項9】請求項1乃至8のいずれか一項に記載の少
    なくとも一種の細菌を有効成分として含むカビ防除剤。
  10. 【請求項10】請求項1乃至8のいずれか一項に記載の
    細菌の培養処理物。
  11. 【請求項11】細菌の培養処理物が培養液の有機溶媒に
    よる抽出物である、請求項10記載の培養処理物。
  12. 【請求項12】有機溶媒がn−ブタノールである請求項
    11記載の培養処理物。
  13. 【請求項13】BacillopeptinA及び/又はBacillopepti
    nBを含む請求項11又は12記載の培養処理物。
  14. 【請求項14】請求項10ないし13のいずれか一項に
    記載の細菌の培養処理物を有効成分として含むカビ防除
    剤。
  15. 【請求項15】請求項9ないし14のいずれか一項に記
    載のカビ防除剤を施用することを特徴とする、カビ防除
    方法。
  16. 【請求項16】請求項9ないし14のいずれか一項に記
    載のカビ防除剤を施用することを特徴とする、白紋羽病
    に対する防除方法。
  17. 【請求項17】請求項9ないし14のいずれか一項に記
    載のカビ防除剤を施用することを特徴とする、灰色カビ
    に対する防除方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005082149A1 (ja) * 2004-02-27 2005-09-09 Itsuki Co., Ltd. バチルス属細菌を用いた植物病害の防除方法および防除剤
KR101074878B1 (ko) 2010-02-22 2011-10-19 현대약품 주식회사 항균 활성 및 항진균 활성이 있는 신규의 균주 바실러스 모자벤시스 케이제이에스-3

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