JP2003281931A - プロトン伝導性材料およびその製造方法 - Google Patents
プロトン伝導性材料およびその製造方法Info
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Abstract
に、100℃以上の乾燥雰囲気下においても、その高い
プロトン伝導性を適切に保持し得るプロトン伝導性材料
を提供する。 【解決手段】 結晶性リン酸金属塩をメカニカルミリン
グにより処理することによって、そのプロトン伝導性を
向上させ、それを主成分としてプロトン伝導性材料を構
成する。上記結晶性リン酸金属塩としては、トリポリリ
ン酸二水素アルミニウム、セスキリン酸アルミニウムお
よびα−リン酸ジルコニウムよりなる群から選ばれる少
なくとも1種が好ましい。
Description
料およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、燃料電
池などの電気化学素子の電解質として使用するのに適し
たプロトン伝導性材料およびその製造方法に関する。
リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固
体酸化物型(SOFC)、固体高分子型(PEFC)な
どに分類される。
子型燃料電池は、他の電解質を用いた燃料電池に比べ
て、低温作動が可能で取り扱やすく、出力密度が高いの
で小型軽量化が可能であるなどの長所があり、最近で
は、車載用や家庭用電源、非常用電源として利用するこ
とが検討されている。また、固体高分子型燃料電池は、
出力が100kW以下の容量では、35%程度の発電効
率が得られ、エネルギー効率がディーゼルエンジンやガ
ソリンエンジンより勝っている。特に数kW〜数10k
W級の定置型(家庭用、業務用)電源や携帯用電源とし
ての分野への応用が見込め、従来のリン酸型燃料電池と
は比べものにならないほどの潜在需要が期待できると言
われている。
ては、これまで、主として、スルホン酸基を有するフッ
素樹脂系イオン交換膜の使用が検討されてきたが、上記
フッ素樹脂系イオン交換膜は、有機物を主体とするた
め、耐久性の面から80℃以下の温度で使用されてい
る。しかしながら、このような低い使用温度では、併用
する白金などの触媒が一酸化炭素による被毒で劣化が早
められ、熱効率も悪化するという問題があった。
常に加湿した状態に保たないと良好なプロトン伝導性が
得られず、加湿器などの付加設備が必要であるという問
題もあった。
好なプロトン伝導性を示す材料が求められ、それが実現
されることによって、以下のような効果が期待される。
化 廃熱の有効利用(給湯へのリサイクル)
質のように固体中をイオンが移動する物質は、電池をは
じめとする電気化学素子の電解質材料として盛んに研究
されており、現在、Li + 、Ag+ 、H+ 、F- など様
々な伝導イオン種のイオン伝導体が見出されている。そ
れらの中でも、プロトン(H+ )を伝導イオン種とする
ものは、燃料電池、キャパシター、エレクトロクロミッ
ク表示素子など様々な電気化学素子への応用が期待され
る。
子の電解質として使用するにあたっては、まず、該プロ
トン伝導体が常温付近で高いプロトン伝導性を示すこと
が必要であり、より高い実用性を持つようにするために
は、100℃以上の乾燥雰囲気下においてもその特性を
保持できる必要がある。
ニルリン酸水和物やモリブドリン酸水和物などの無機
物、あるいは前記のようなスルホン酸基を有するフッ素
樹脂系イオン交換膜などの有機物が知られている。
化合物のいくつかが、固体酸として特性を示すので有用
な可能性が期待されており、種々の検討が行われてい
る。例えば、Solid State Ionics
97(1997)227−232では、α−リン酸ジル
コニウムにシリカやアルミナを複合化させ、常温・65
%相対湿度下でのプロトン伝導性の向上を図っている。
ン伝導体では、有機系のものはもちろんのこと、無機系
のプロトン伝導体においても、フリーのリン酸がなく、
吸着水との相互作用が小さいため、100℃以上の乾燥
雰囲気下では、その特性が低下してしまう。
は、相対湿度の低い環境下で使用される場合が多く、し
かも電源に使用されるとなると、必然的にある程度の耐
熱性が必要となる。しかるに、従来のプロトン伝導体で
は、そのような過酷な環境下では、化学的安定性の面で
問題を有している場合が多く、プロトン伝導体が分解な
どせず、その特性を保持できるようにするためには、湿
度や温度を制御する付加設備が必要となるので、電源と
しては嵩張ってしまったり、充分な特性が得られないと
いう問題を有していた。
技術における問題点を解決し、常温付近で高いプロトン
伝導性を示すとともに、100℃以上の乾燥雰囲気下に
おいても、その高いプロトン伝導性を適切に保持し得る
プロトン伝導性材料を提供することを目的とする。
決するためになされたものであり、結晶性リン酸金属塩
をメカニカルミリングにより処理することによって、そ
のプロトン伝導性を向上させ、それを主成分としてプロ
トン伝導性材料を構成したものである。
に機械的な衝撃を与えて摩砕混合し、その構造、物性、
形態などを変化させたり、あるいは衝撃によって生じる
反応によって新たな物質を創製する操作をいうが、本発
明では、そのメカニカルミリングによる処理を結晶性リ
ン酸金属塩に対して行うことにより、結晶性リン酸金属
塩のプロトン伝導性を向上させることができることを見
出し、そのメカニカルミリングによる処理によってプロ
トン伝導性が高められた結晶性リン酸金属塩を主成分と
してプロトン伝導性材料を構成することにより、前記の
ように、常温付近で高いイオン伝導性を示すとともに、
100℃以上の乾燥雰囲気下においても、その高いプロ
トン伝導性を適切に保持し得るプロトン伝導性材料を提
供したものである。
属塩としては、結晶性を有するリン酸金属塩であればい
ずれも用いることができ、そのリン酸としては、トリポ
リリン酸、セスキリン酸、メタリン酸などのいずれであ
ってもよく、また、その金属としては、アルミニウム、
ジルコニウム、チタン、亜鉛およびセリウムから選ばれ
る少なくとも1種であればよく、この結晶性リン酸金属
塩を一般式で示すと、MHxPyOz(ただし、Mはア
ルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛およびセリウ
ムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属元素で
あり、x,y,zは自然数であり、xは0〜12が好ま
しく、yは1〜4が好ましく、zは2〜16が好まし
い)で示される結晶性リン酸金属塩が好適なものとして
挙げられ、その好ましい具体例としては、例えば、トリ
ポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2 P 3 O10・H
2 O)、セスキリン酸アルミニウム〔AlH3 (P
O4 )2 ・3H2O〕、α−リン酸ジルコニウム〔Zr
(HPO4 )2 ・H2 O〕などが挙げられる。
下、簡略化して「メカニカルミリング処理」という)の
実施にあたっては、ボールミルやサンドグラインドミル
などが用いられ、そのメカニカルミリング処理を行う際
には、水などの媒体を用い、いわゆる湿式による処理を
行ってもよいが、結晶性リン酸金属塩へのコンタミネー
ション(汚染)を生じて電気的特性の低下を招くおそれ
があるため、水や有機溶媒などを使用しない、いわゆる
乾式で行う方が好ましい。
ルミルを用いる際には、ボール自身やそのボールを納め
るポットの材質についても、上記コンタミネーションを
避けるための配慮を行うことが好ましく、めのう(シリ
カ)、ジルコニア、ステンレス鋼、硬度の高い樹脂など
を材質とするものを用いることが好ましい。
理を行う場合は、台盤の回転数が50〜2000rp
m、温度が5〜100℃、時間が1〜100時間の条件
下でメカニカルミリング処理を行うことが好ましい。
金属塩は、ゲル状の粉末状態にあることが多く、そのま
まの状態では特性を充分に生かし切れない場合があるた
め、バインダーを用いて成形性を持たせることが好まし
い。使用するバインダーとしては、成形性を付与できる
ものであれば、無機化合物、有機化合物のいずれであっ
てもよいが、ポリビニルアルコールやゴムなどのポリマ
ーの中から適宜選択して用いることが好ましい。なお、
バインダー配合後にメカニカルミリング処理を行っても
よいが、その場合は、バインダーが変化して特性に影響
を与えないようにする配慮が必要である。
塩へのバインダーの配合比は、プロトン伝導性が充分に
発揮される成形体を形成することができる量であればよ
く、特に限定されることはないが、例えば、質量比で結
晶性リン酸金属塩100に対してバインダーを5〜15
程度にすることが好ましい。なお、本発明においては、
特定の結晶性リン酸金属塩を主成分としてプロトン伝導
性材料を構成するとしているが、これは上記結晶性リン
酸金属塩だけでプロトン伝導性材料を構成してもよい
し、また、上記のように上記結晶性リン酸金属塩にバイ
ンダーなどを添加してプロトン伝導性材料を構成しても
よいという意味である。
より、結晶性リン酸金属塩は、結晶構造が崩れてフリー
のリン酸が生成し、また、一見非晶質になったように見
えるが、そのように見えるのは結晶の有する長距離に及
ぶ構造の周期性(長距離秩序)が崩れるからであって、
原子数個分程度の短距離間の秩序構造は結晶構造から大
きく逸脱することがないので、結果として優れたプロト
ン伝導性を発揮できるようになるものと考えられる。
に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限
定されるものではない。
い、各々の試料に対して以下の手順でメカニカルミリン
グ処理を行った。 試料A:トリポリリン酸二水素アルミニウム(AlH2
P3 O10・H2 O) 試料B:セスキリン酸アルミニウム〔AlH3 (P
O4 )2 ・3H2 O〕 試料C:α−リン酸ジルコニウム〔Zr(HPO4 )2
・H2 O〕 試料D:無定形オルソリン酸アルミニウム(AlP
O4 )
リン酸金属塩であって実施例1〜3となるものであり、
試料Dの無定形オルソリン酸アルミニウムが比較例1と
なるものである。
5mlのポットにめのう製で直径10mmのボールを1
0個と上記試料A〜Dをそれぞれ1.0gずつ入れて、
Fritsch社製遊星ボールミル(Pulverse
tte7)にセットし、常温でメカニカルミリング処理
を行った。遊星ボールミルの台盤回転数は370rpm
であり、試料に応じて特定の処理時間ごとにサンプリン
グを行った。
セスキリン酸アルミニウムと試料Cのα−リン酸ジルコ
ニウムについては、処理時間が1時間、3時間および5
時間に達した時点でサンプリングを行い、X線回折測定
を行った。X線回折測定装置としては、マックサイエン
ス社製のM18XHF22−SRAを用い、X線回折測
定はガラス製サンプルホルダーの凹部分に試料を詰め込
んで行い、照射はCuKα線、管電圧は40kV、管電
流は50mV、スキャンスピードは4.00°/mi
n、回折角2θは10〜60°とした。
ジルコニウムについてはメカニカルミリング処理3時間
で結晶のピークが観察し難くなる程度にまで小さくな
り、試料Bのセスキリン酸アルミニウムについてはメカ
ニカルミリング処理5時間で結晶のピークが観察し難く
なる程度にまで小さくなった。
については、メカニカルミリング処理前後の示差熱・熱
質量分析も行った。
ックサイエンス社製の示差熱・熱質量分析装置(TG−
DTA 2000)を用い、測定容器としては直径5m
m、高さ5mmのアルミニウム製パン(蓋なし)を用い
た。そして、試料約20mgを上記パンに入れ、アルミ
ナ粉末を参照物質として用い、常温から500℃まで1
0℃/minの昇温速度で示差熱変化と損失質量を測定
した。
ルミリング処理前後における示差熱履歴および質量履歴
の変化はほとんど認められなかった。これらのX線回折
測定の結果および示差熱・熱質量分析の結果から、セス
キリン酸アルミニウムなどの結晶性リン酸金属塩は、結
晶性が一部乱されるものの、完全に結晶性を失ったわけ
ではないと考えられる。
ルミニウムと試料Dの無定形オルソリン酸アルミニウム
については、メカニカルミリング処理を5時間行った。
ルコールをバインダーとして加えて混合し、その混合物
をロッド形状(約3mm×3mm×20mm)に成形し
た。上記試料とポリビニルアルコールとの混合比は質量
比で10:1とした。成形試料の両3mm×3mm面に
ついて、銀ペーストを用いてリード線としての純金線と
接着した。その後、成形試料を両面テープでマコール製
の台に固定した。
ナライザー(SolartronSI 1260)を用
いて行い、測定周波数は8MHz〜10Hzの間で変化
させた。インピーダンス測定の結果を複素平面にプロッ
トし、半円が現れた場合は低周波数側の実軸との交点を
試料の抵抗値R(Ω)とし、円弧が現れなかった場合は
直線部分を外挿した点を試料の抵抗値とした。
a(cm)と横b(cm)の長さはマイクロメーターを
用いて求め、電極面積S(cm2 )を上記a(cm)×
b(cm)で算出した。形状係数K(cm-1)はK=d
/Sにより算出し、次の(1)式によりプロトン伝導度
σ(S/cm)を求めた。
い程、プロトン伝導性が高く好ましい。
プロトン伝導性を調べる際には、それらのサンプルホル
ダーをガラス製のプロトン伝導度測定用セル内に入れ、
外側にリボンヒーターを巻きつけ、熱電対で温度をモニ
ターしながら測定を行った。
によるプロトン伝導度の測定が困難であると判断した場
合には、形状係数を小さくするためペレット形状(直径
13mm、厚さ0.5mm)で測定を行った。この場
合、電極はペレットの両面にカーボンペーストを塗布
し、これを電極とした。
ン伝導度を、表1に示す。なお、表1における「常温」
とは、30℃・相対湿度60%の条件下で測定を行った
ことを示し、「中温」とは130℃・相対湿度0.7%
の条件下で測定を行ったことを示している。
例1〜3は、メカニカルミリング処理によりプロトン伝
導性が向上し、常温において高いプロトン伝導性を示す
とともに、100℃以上の乾燥雰囲気下においても、そ
の高いプロトン伝導性が適切に保持されていて、プロト
ン伝導性材料として優れた特性を有していた。これに対
して、比較例1の試料Dの無定形オルソリン酸アルミニ
ウムは、メカニカルミリング処理によるプロトン伝導度
の向上がなく、また、100℃以上の乾燥雰囲気下では
プロトン伝導度が大きく低下した。
伝導性材料は、常温付近において高いプロトン伝導性を
示すとともに、100℃以上の乾燥条件下においても劣
化を起こさず高いプロトン伝導性を適切に保持すること
ができ、プロトン伝導性材料として優れた特性を有して
いた。また、本発明のプロトン伝導性材料は、その製造
が簡単であり、生産性も優れていた。そして、本発明の
プロトン伝導性材料は、上記のような特性を有すること
から、燃料電池、キャパシター、エレクトロクロミック
表示素子などの種々の電気化学素子の電解質材料として
有用性が期待できる。
Claims (5)
- 【請求項1】 メカニカルミリングにより処理された結
晶性リン酸金属塩を主成分とすることを特徴とするプロ
トン伝導性材料。 - 【請求項2】 結晶性リン酸金属塩が、一般式MHxP
yOz(ただし、Mはアルミニウム、ジルコニウム、チ
タン、亜鉛およびセリウムよりなる群から選ばれた少な
くとも1種の金属元素であり、x,y,zは自然数であ
る)で示される請求項1記載のプロトン伝導性材料。 - 【請求項3】 結晶性リン酸金属塩が、トリポリリン酸
二水素アルミニウム、セスキリン酸アルミニウムおよび
α−リン酸ジルコニウムよりなる群から選ばれた少なく
とも1種である請求項1記載のプロトン伝導性材料。 - 【請求項4】 結晶性リン酸金属塩を主成分としてプロ
トン伝導性材料を製造するに当たり、結晶性リン酸金属
塩をメカニカルミリングで処理することによって、結晶
性リン酸金属塩のプロトン伝導度を向上させたことを特
徴とするプロトン伝導性材料の製造方法。 - 【請求項5】 メカニカルミリングによる処理に当た
り、遊星ボールミルを用い、台盤の回転数が50〜20
00rpm、温度が5〜100℃、時間が1〜100時
間の条件下でメカニカルミリングにより処理することを
特徴とする請求項4記載のプロトン伝導性材料の製造方
法。
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