JP2003261777A - 高圧により形成される分子複合体 - Google Patents
高圧により形成される分子複合体Info
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Abstract
法論を提案し、水和状態を制御する新しい方法として高
圧処理法を提案する。 【解決手段】 液状媒体中で水素結合官能基や水素結
合性結合を有する高分子等を高圧(1000〜1500
0気圧程度)をかけることにより従来得られなかった分
子複合体を得ることができる。本発明は、液状媒体中で
下記1)、下記2)、又は下記1)並びに下記2)及び
下記3)の少なくとも一つから成る混合物を1000〜
15000気圧で加圧することにより形成する分子複合
体である。 1)水素結合官能基又は水素結合性結合を有する高分子
の1種又は2種以上 2)水素結合官能基を有する低分子の1種又は2種以上 3)無機物及び/又は金属
Description
等を有する高分子等を1000〜15000気圧で加圧
することにより形成される分子複合体に関する。
みがなされているが、注目を集めているものに超分子集
合体がある。超分子集合体の構築には、構成要素となる
基本構造単位、いわゆる分子ブロックを形成する必要
し、これを種々の相互作用を利用して構造形成を行わせ
る。最も典型的なものがLB膜である。超分子集合体の
構造を維持している力は分子間力である。分子間力に
は、ファンデアワールス力、静電的相互作用、疎水性相
互作用、水素結合等がある。このうち、ファンデアワー
ルス力、静電的相互作用および疎水性相互作用について
はポテンシャル型の相互作用力であり、相互作用の方向
性の制御が困難である。一方、水素結合は個々の結合エ
ネルギーは小さいものの分子構造によって規定される方
向性に沿って相互作用することができ、これを集合化す
ることによって巨大な集合体を形成することができる。
最も典型的なものは核酸(DNA、RNA)であり、ま
た部分的な水素結合によって強い構造体を形成するもの
にはセルロースがある。
ロックの構造化が達成できることは予測できるが、実際
にこれらを思い通りに組み上げることは困難である。こ
れは、うまく分子設計しても分子自体を分散させた状態
から集合化させる場合に、自己集合をうまく制御できな
いことに起因する。すなわち、合成した分子を分散媒に
分散させ、一定濃度で分散・集合の平衡が集合に偏った
状況で構造体形成を行うため、構造体形成はアトランダ
ムに起こる分子同士の相互作用に影響され、長距離にわ
たる構造形成が起こりにくくなるためである。核酸に関
しても、一本鎖の状態から相補的な二重鎖の形成には適
当な濃度、温度等の物理的条件が必要であり、鎖が長く
なればなるほどミスマッチの頻度が高まり、また3次構
造をとって広がりが規制される。
マイクロメートル、それ以上のスケールでの構造形成を
行うためには、相互作用の様式の工夫の他に、集合体形
成のためのある種の駆動力が必要である。これまで、溶
媒置換や環境変化(温度・pH)等の雰囲気変化型及び
光反応による局所環境変化などの方法論が提案されてき
た(Macromolecules 1999, 32, 1140-1146)。超分子集
合体の研究の多くが、水を分散媒として用いているが、
これは水素結合と疎水性相互作用の双方が構造形成の駆
動力として用いることができるためである。水素結合の
生成の要因としては、温度、分子の濃度の他に、水素結
合性官能基周囲の水和状態がある。これらのいずれを変
化させることによって、水素結合の形成・消失を制御す
ることができる。温度は直接的に操作可能であり、濃度
に関しては溶解量の調製、あるいは溶媒の留去等の手段
が用いられる。水和状態の変化に関しては、温度変化の
他に塩添加による塩析硬化および塩溶効果を用いること
ができる。すなわち、官能基の水和は、周辺の水の水素
結合性に大きく影響される。
成のための新しい方法論を提案し、水和状態を制御する
新しい方法として高圧処理法を提案する。これまでの高
圧処理の研究については、有機化学反応、食品工学およ
び酵素化学などの分野が対象であり、圧力もかなり低い
ものであった(林力丸編「生物と食品の高圧科学」さん
えい出版(1993), p171-177, 315-321)。我々はより
高圧下において水素結合性が強まる性質に着目し、水素
結合性分子の相互作用による構造体形成を試みた。
水素結合官能基や水素結合性結合を有する高分子等を高
圧をかけることにより従来得られなかった分子複合体を
得ることができることを見出した。ここで高圧とは10
00〜15000気圧程度をいう。即ち、本発明は、液
状媒体中で下記1)、下記2)、又は下記1)並びに下
記2)及び下記3)の少なくとも一つから成る混合物を
1000〜15000気圧で加圧することにより形成す
る分子複合体である。 1)水素結合官能基又は水素結合性結合を有する高分子
の1種又は2種以上 2)水素結合官能基を有する低分子の1種又は2種以上 3)無機物及び/又は金属 即ち、上記混合物は下記のいずれかである。 a)水素結合官能基又は水素結合性結合を有する高分子
の1種又は2種以上。 b)水素結合官能基を有する低分子の1種又は2種以
上。 c)上記a及びbの混合物。 d)上記a並びに無機物及び/又は金属の混合物。 e)上記a、b並びに無機物及び/又は金属の混合物。
理は水素結合の形成である。常圧で有用な構造体を得る
ためには、水素結合生成後の状態エネルギーが形成前の
それよりも低値であることが必須であるが、本発明のよ
うな高圧処理は水素結合性を高めて構造体形成のための
エネルギーギャップを低下させ、従って周囲との水和を
考慮する必要が無いため、水以外の液状媒体中において
も、複合体を形成することが可能になる。本発明の分子
複合体形成のメカニズムは以下のように考えられる。高
圧処理によって分子周囲の水和構造が破壊され、分子同
士の水素結合性官能基が相互作用することによって水素
結合が形成する。いったん形成した水素結合は常圧に戻
っても安定であるかもしくは崩壊の半減期が非常に長い
ため構造体として得られる。
温度、塩強度等の物理的因子に加え、水素結合を形成す
る官能基の3次元的な空間配置も重要な因子である。こ
れは分子構造のわずかな違いによって構造体形成が左右
されることを意味し、例えば、PVAの立体構造がハイ
ドロゲル形成に影響していることから立証されている。
また、相互の水素結合性官能基が十分な距離に近づく必
要がある。これを補助する他の相互作用が存在すること
で構造体形成を促進できる。例えば静電的相互作用、疎
水性相互作用および他の官能基同士による水素結合など
があげられる。これらは、高圧環境下で効果を発揮でき
ることが必要である。水素結合の生成のしやすさの違い
によって、処理圧力や塩濃度などの条件が変化する。こ
れは水素結合性官能基の運動性や周辺環境への分子構造
の影響による。これを積極的に利用して、複数の水素結
合性官能基が系に存在する場合に、圧力を多段階で印可
することによって、高次の構造体形成制御が行える。
用いられる物質は以下のものである。 1)水素結合官能基又は水素結合性結合を有する高分
子:この高分子は、水素結合性成分を有する高分子であ
ればよく、合成、天然および水溶性、非水溶性を問わな
い。ここで水素結合官能基とは、水酸基、アミド基、カ
ルボキシル基、アミノ基、硫酸基、アシル基、アルデヒ
ド基、アセチル基、ニトリル基等であり、水素結合性結
合とは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合等で
ある。これらを有する高分子の他、アルカロイド(窒
素)を含む高分子、求電子および求核性部位を有する高
分子、共役部位を有する高分子、ヘテロ原子を主鎖に有
する高分子等を用いることもできる。
ルアルコール、ポリ乳酸−ポリエチレングリコール共重
合体、ポリハイドロキシエチルメタクリレート、ポリビ
ニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル
酸、ポリビニルアミン、ポリビニル硫酸、ポリビニルス
ルホン酸、ポリメチルメタクリレート、ナイロン類、ポ
リアミド類、ポリイミド類、ポリフォスファゼン、ポリ
乳酸、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクタム、ポリ
Nイソプロピルアクリルアミド、ポリγベンジルLグル
タメート、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリア
クリロニトリル、ポリスルフォン、ポリアリルアミン、
ポリエチレングリコール、ポリメタクリロイルホスファ
チジルコリン、ポリグルコシルオキシエチルメタクリレ
ート、ポリNパラビニルベンジル4−O−ベータ−ガラ
クトピラノシル−D−グルコンアミド、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリカーボネート、シリコーン、フッ素
樹脂等が挙げられる。
核酸、糖、微生物由来粘質物、植物由来粘質物、デンプ
ン質等が挙げられ、具体的には、DNA、RNA、コラ
ーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、アルギ
ン酸、アガロース、デンプン、ペクチン、フィブロイ
ン、セルロース、γポリグルタミン酸、フィブリン、リ
グニン、エラスチン、キチン、キトサン等が挙げられ
る。また、半合成高分子としては、セルロース系、デン
プン系等が挙げられ、具体的には、再生セルロース、酸
化セルロース、セルロースアセテート、ショ糖エステル
等が挙げられる。
で水素結合官能基は上述のとうりであり、この低分子と
しては、例えば、界面活性剤、脂質、酵素、酵母、油脂
(オレフィン酸等)、炭水化物(単糖含む)、染料、色
素(顔料含む)、アミノ酸、アルコール誘導体(多価ア
ルコール含む)、アミン誘導体、カルボン酸誘導体(脂
肪酸含む)、オリゴ糖、薬物等であり、具体的には、グ
リセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、
ステアリン酸、ジパルミトイルフォスファチジルコリ
ン、ジパルミトイルフォスファチジルセリン、ジパルミ
トイルエタノールアミン、トリトンX100、ドキソル
ビシン、5フルオロウラシル、シスプラチン、マルトー
ス、ガラクトース、フルコース、トレハロース、ヘム、
シクロデキストリン、デンドリマー、C60、カーボン
ナノチューブ等が挙げられる。
制限は無く、例えば、酸化物、過酸化物、ハロゲン化
物、窒化物、炭化物、炭酸化物、硫化物、硝化物、塩化
物、酢化物、ケイ酸誘導体、チタン酸誘導体、鉱物等を
用いることができ、具体的には、ハイドロキシアパタイ
ト、トリカルシウムフォスフェイト、アラゴナイト、バ
テライト、酸化チタン、アルミナ、二酸化珪素、金、白
金、磁性粒子等が挙げられる。実施例(表面処理)に記
すように、無機材料や金属材料においても、酸化膜など
が表面にあれば、または水素結合成分を有していれば
(ガラスの場合にはシラノール基)、高圧処理で結合が
生成する。
を溶解した過飽和溶液を放置しておくと、結晶成長が起
こる。この系に、有機高分子を溶解させ、超高圧をかけ
ることによって、高分子の分子鎖と無機結晶が結合し、
有機・無機ハイブリッドが得られる。無機結晶の形成に
高分子の分子鎖がかかわるかどうかについては場合によ
って異なると考えられるが、いったん無機結晶が形成す
れば、それらは高圧処理によって高分子鎖と結合を形成
し、複雑な構造体へと成長する。
は有機溶媒を用い得る。特に水以外の極性又は非極性有
機溶媒を用いることができるのも本発明の特徴である。
使用される有機溶剤については、ベンゼン、トルエン、
キシレン、クロロフォルム、塩化メチレン、四塩化炭
素、DMF、アセトニトリル、DMSO,MEK,アセ
トン、低級アルコール、THFなどが挙げられ、対象化
合物を溶解する溶剤が好ましい。
で上記対象化合物又はそれらの混合物を1000〜15
000気圧、好ましくは3000〜15000気圧、よ
り好ましくは4000〜15000気圧で加圧すること
により形成する。この水素結合反応の場は、液相系又は
固相−液相系である。このような操作により形成される
分子複合体の形態は、ゲル又は微粒子であり。比較的対
象化合物の濃度が低い場合には微粒子が生成する。本発
明の高圧処理によって生成する分子複合体の形態は下記
のとうりである。巨視的には、 1)ハイドロゲル、有機ゲル 2)微粒子(ナノスフィア、マイクロスフィア) 3)繊維 4)ヘテロ凝集体 微視的には、 1)分子結晶 2)多点水素結合 3)IPN
る。例えば、PVAを溶解したリン酸カルシウム水溶液
を高圧処理することによって、PVAハイドロゲルとリ
ン酸カルシウムが分子混合したマトリクスが得られる。
高分子と塩化白金酸の水溶液を高圧処理することによっ
て、ゲル微粒子に白金が分子混合したマトリクスが得ら
れる。なお、塩析については、水素結合にあずかる化合
物の溶解度を低下させ、より低圧側で複合化される。塩
は、通常、塩析に用いられ得る、塩化ナトリウム、硫酸
アンモニウム、リチウムブロマイドなどが、使用されう
る。
処理によって、これまでの方法では形成不可能あるいは
困難であった構造体が得られる。PVAを用いたモデル
実験では水素結合の寄与が確認できたが、水和構造の変
化が構造形成の駆動力であるという観点から考えると、
疎水性相互作用、静電的相互作用の利用も考えられる。
本発明により、これまで得られなかったナノ粒子などの
種々ゲルが得られ、また、これらが、架橋剤を用いない
で得られ(生体適合性良好)、徐放性医薬、細胞注入医
薬、ドラッグデリバリーシステム、有機無機ハイブリッ
ド、などへの応用、展開が期待される。
挙げられる。 1)架橋剤を用いない物理ゲルの作成 例:デキストランを基体とした物理架橋ゲル。架橋剤を
用いていないので生体適合性が高く、かつ種々の薬物
(抗菌剤、抗ガン剤など)を担持可能である。 2)ドラックデリバリー用担体 例:低分子の抗ガン剤を内包した微粒子をPVAを用い
て作成できる。この微粒子はPVAの持つ生体不活性に
より、血管内滞留時間の向上が期待できる。有機溶媒、
架橋剤を用いないので生体適合性が高く、PVAの分子
量を調節することで放出制御、微粒子の分解・排出の制
御ができる。 3)遺伝子デリバリー用担体 例:DNAと複合体を形成することから遺伝子デリバリ
ーの新しい担体が作成できる。とくにPVAはカチオン
化することで高い導入効率を発揮することがすでに明ら
かになっている。粒子サイズをナノメートルオーダーに
調製することで、in vitroで応用可能な高機能
非ウイルス性ベクターとしての機能を実現できる。
については、生体のバイオミネラリゼーションを模倣し
た新しい材料合成法として注目されている。無機塩の飽
和溶液に高分子を溶解し、高圧処理することで、高分子
の微小集合体が無機結晶核のテンプレートとなり、分子
レベルで複合化した有機−無機ハイブリッド材料の開発
が可能となる。 5)光エネルギー伝達材料 例:光反応性デンドリマーの3次元方向への積層化ある
いは修飾DNAを直鎖状構造化による光エネルギー伝達
材料の可能性がある。 6)化学構造別分離法 例:高圧処理による構造化には高分子の立体構造が影響
する。これを用いて、混合物を高圧処理し、不溶部分と
可溶部分を分別することで、通常では分離不可能な微小
な化学構造とくに立体構造の異なる物質の分離が可能に
なる。
明を限定することを意図するものではない。実施例1 PVA(クラレ社製、PVA117HC,重合度170
0、ケン化度99.9)の10w/v%水溶液を100
00気圧で5〜30分間高圧処理するとによって、構造
体(ハイドロゲル)が得られた。従来法である凍結融解
法(2時間凍結(4℃)および2時間融解(室温))で
は4時間かけて作製しても強度の弱いゲルしか得られな
かった。得られた構造体をX線解析装置(Philip
s社製PW1729XRD)で測定したXRDスペクト
ルを図1に示す。2θ=40°付近に構造化に伴うPV
A結晶のピークが新たに観察された。形成した構造体の
強度に関して、凍結融解ゲル(PVA10w/v%水溶
液、2時間凍結(4℃)および2時間融解(室温)で作
製)と超高圧ゲル(PVA10 w/v%水溶液、10
000気圧、5分間)のそれぞれ1mm厚のゲルにおも
りをのせて破壊されるときのおもりの重量を比較した。
凍結融解ゲルでは2gのおもりをのせるとゲルが破断し
たが、超高圧ゲルでは100〜500gをのせても変化
はなかった。
v%水溶液を10000気圧で1〜30分間高圧処理す
ることによって、微粒子(ナノメートルからマイクロメ
ートルオーダー)が得られた。図2に0.01w/v%
PVA水溶液を10000気圧で1分間処理した際の光
散乱法により得られた結果を示す。粒子サイズ直径が2
50〜500ナノメートルの単分散性の粒子が得られ
た。また得られたPVA構造体を凍結乾燥し、走査型電
子顕微鏡(JEOL JSM−6301F,SEM)に
より観察すると球形の粒子が確認できた(図3)。これ
ら構造体形成に必要な圧力は従来の水性物質の処理圧力
よりも非常に高かった。構造体形成に影響する圧力と時
間の関係を表1に示す。
上である。また凍結融解法で作製したものと同等以上の
強度のハイドロゲルが非常に短時間で得られた(凍結融
解法10日、高圧処理法10分)。
す。反応時間10分で膨潤度は平衡に達し、また濃度を
制御することで種々の膨潤度を持つハイドロゲルの調製
が可能であることがわかった。第三成分を添加すること
で、より低圧力下でもハイドロゲルの合成が可能であっ
た。1M−NaClの無機塩添加溶液を用いた場合、4
000気圧以上から構造体を形成した(純水中では60
00気圧以上必要である。図5)。構造体形成に影響を
及ぼす因子は、温度、PVA濃度および水和構造に影響
を及ぼす添加物の濃度の他に、PVA鎖の二次構造も影
響することも示唆された。分子量が同程度で立体規則性
が異なるPVAを用いて高圧力処理を行うとより低濃度
および低圧力下(4000気圧)でも成形性の良いハイ
ドロゲルが得られた。実際にイソタクチック性の高い
(60%程度)PVAを用いた場合、5w/v%PVA
水溶液に4000気圧で10分間の圧力処理により強度
の高いハイドロゲルが得られた(通常のPVA(アタク
チック性)は同条件ではゲル形成できない)。従って、
分子の3次構造が影響していることがわかった。
0、ケン化度99.9)に所定量の水を加え、オートク
レーブにより121℃、1分間処理を三回繰り返すこと
で完全に溶解させ、0.01,0.1,0.5,1.0
w/v%PVA水溶液を調製した。ポリエチレン製袋に
1.0w/v%PVA水溶液2mLと0.2% trypan
blue(和光純薬、特級)水溶液25μl添加し密封後、4
0℃において10000気圧で所定時間処理した。処理
時間1分以上(例えば、5分又は10分)において溶液
が不透明になり、遠心分離により沈殿物(PVA−色素
複合体)の回収が可能であった。またPVA(クラレ社
製 PVA117HC,重合度1700、ケン化度9
9.9)に所定量の精製水を加え、オートクレーブによ
り121℃、1分間処理を三回繰り返すことで完全に溶
解させ、1w/v%PVA溶液を調製した。ポリエチレ
ン製袋に、PVA溶液10ml、0.1%サケ精巣DN
A(Sigma-Aldrichfine chemical)溶液1ml添加し、
40℃において10000気圧で所定時間処理した。1
分以上(1〜30分)処理したところ、溶液の白濁が観
察された。4℃での静置状態において沈殿物が分離さ
れ、上澄み液のDNA濃度を紫外可視分光光度計(JA
SCO V−550)を用い260nmの吸収ピークよ
り定量した。処理時間の増加と共に沈殿物が増加し、表
2に示すように、上澄み液の吸収強度が小さくなった。
これより沈殿物がPVAとDNAからなる複合体である
ことがわかった。
0、ケン化度99.9)に所定量の水を加え、オートク
レーブにより121℃、1分間処理を三回繰り返すこと
で完全に溶解させ、20w/v%PVA溶液を調製し
た。ポリエチレン製袋に、20w/vPVA溶液10m
l、SBF溶液(模擬体液溶液)10mlを加え、40
℃において10000気圧で所定時間処理した。5分以
上処理したところ、成形性のよいゲル様固体が得られ、
精製後、凍結乾燥することで回収した。X線回折測定
(Philips社製、PW1729XRD)により無
機結晶に伴う鋭い吸収ピークが2θ=32°及び46°
付近に確認され、有機・無機ハイブリットが得られた
(図6)。
ある。
径の分布を示す図である。
である。
度と反応時間との関係を示す図である。圧力は1000
0気圧である。
度と圧力との関係を示す図である。
ある。○で囲った部分は2θ=32°と46°の吸収ピ
ークを示す。
1)
みがなされているが、注目を集めているものに超分子集
合体がある。超分子集合体の構築には、構成要素となる
基本構造単位、いわゆる分子ブロックを形成する必要が
あり、これを種々の相互作用を利用して構造形成を行わ
せる。最も典型的なものがLB膜である。超分子集合体
の構造を維持している力は分子間力である。分子間力に
は、ファンデアワールス力、静電的相互作用、疎水性相
互作用、水素結合等がある。このうち、ファンデアワー
ルス力、静電的相互作用および疎水性相互作用について
はポテンシャル型の相互作用力であり、相互作用の方向
性の制御が困難である。一方、水素結合は個々の結合エ
ネルギーは小さいものの分子構造によって規定される方
向性に沿って相互作用することができ、これを集合化す
ることによって巨大な集合体を形成することができる。
最も典型的なものは核酸(DNA、RNA)であり、ま
た部分的な水素結合によって強い構造体を形成するもの
にはセルロースがある。
マイクロメートル、それ以上のスケールでの構造形成を
行うためには、相互作用の様式の工夫の他に、集合体形
成のためのある種の駆動力が必要である。これまで、溶
媒置換や環境変化(温度・pH)等の雰囲気変化型及び
光反応による局所環境変化などの方法論が提案されてき
た(Macromolecules 1999, 32, 1140-1146)。超分子集
合体の研究の多くが、水を分散媒として用いているが、
これは水素結合と疎水性相互作用の双方が構造形成の駆
動力として用いることができるためである。水素結合の
生成の要因としては、温度、分子の濃度の他に、水素結
合性官能基周囲の水和状態がある。これらのいずれを変
化させることによって、水素結合の形成・消失を制御す
ることができる。温度は直接的に操作可能であり、濃度
に関しては溶解量の調製、あるいは溶媒の留去等の手段
が用いられる。水和状態の変化に関しては、温度変化の
他に塩添加による塩析効果および塩溶効果を用いること
ができる。すなわち、官能基の水和は、周辺の水の水素
結合性に大きく影響される。
で上記対象化合物又はそれらの混合物を1000〜15
000気圧、好ましくは3000〜15000気圧、よ
り好ましくは4000〜15000気圧で加圧すること
により形成する。この水素結合反応の場は、液相系又は
固相−液相系である。このような操作により形成される
分子複合体の形態は、ゲル又は微粒子であり、比較的対
象化合物の濃度が低い場合には微粒子が生成する。本発
明の高圧処理によって生成する分子複合体の形態は下記
のとうりである。巨視的には、 1)ハイドロゲル、有機ゲル 2)微粒子(ナノスフィア、マイクロスフィア) 3)繊維 4)ヘテロ凝集体 微視的には、 1)分子結晶 2)多点水素結合 3)IPN
Claims (4)
- 【請求項1】 液状媒体中で下記1)、下記2)、又は
下記1)並びに下記2)及び下記3)の少なくとも一つ
から成る混合物を1000〜15000気圧で加圧する
ことにより形成する分子複合体。 1)水素結合官能基又は水素結合性結合を有する高分子
の1種又は2種以上 2)水素結合官能基を有する低分子の1種又は2種以上 3)無機物及び/又は金属 - 【請求項2】 前記水素結合官能基が、水酸基、アミド
基、カルボキシル基、アミノ基、硫酸基、アシル基、ア
ルデヒド基、アセチル基又はニトリル基であり、水素結
合性結合がアミド結合、エーテル結合又はエステル結合
である請求項1に記載の分子複合体。 - 【請求項3】 前記液状媒体が水又は有機溶媒である請
求項1又は2に記載の分子複合体。 - 【請求項4】 形態がゲル状又は微粒子である請求項1
〜3のいずれか一項に記載の分子複合体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002061796A JP2003261777A (ja) | 2002-03-07 | 2002-03-07 | 高圧により形成される分子複合体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002061796A JP2003261777A (ja) | 2002-03-07 | 2002-03-07 | 高圧により形成される分子複合体 |
Publications (1)
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---|---|
JP2003261777A true JP2003261777A (ja) | 2003-09-19 |
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