JP2003254958A - 新規な蛍光検出試薬及びそれを用いた高感度蛍光分析方法 - Google Patents

新規な蛍光検出試薬及びそれを用いた高感度蛍光分析方法

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JP2003254958A JP2002061322A JP2002061322A JP2003254958A JP 2003254958 A JP2003254958 A JP 2003254958A JP 2002061322 A JP2002061322 A JP 2002061322A JP 2002061322 A JP2002061322 A JP 2002061322A JP 2003254958 A JP2003254958 A JP 2003254958A
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Hirotoshi En
景利 袁
Isao Igarashi
庸 五十嵐
Takashi Fukui
崇 福井
Kazuko Matsumoto
和子 松本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 蛍光ラベル剤のマイクロカプセル化方法、お
よび新規な増強方法を提供する。 【解決手段】 希土類蛍光ラベル剤をマイクロカプセル
化する方法、および増強イオンやsynergistic配位子な
どを共存させるによる希土類蛍光ラベル剤の増強方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、希土類蛍光ラベル
剤を用いた蛍光検出試薬およびこれらを用いた高感度分
析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】希土類蛍光錯体を用いた蛍光測定法とし
ては、LKBシステムと呼ばれる方法とCyber Fluorシ
ステムと呼ばれる方法が用いられている。LKBシステ
ムは、蛍光を発しない安定なユウロピウム錯体を用いて
タンパク質を標識し、測定前に標識したユウロピウム錯
体からユウロピウムを遊離させ、ユウロピウムと錯形成
すると強い蛍光を発する配位子とトリオクチルホスフィ
ンオキシド(TOPO)をミセル溶液中に共存させるこ
とによって測定する方法である。この方法を用いた蛍光
の増強方法としては、ガドリニウムイオン、1,10−
フェナントロリンを用いた co- fluorescence Effect
が公知である(Y. -Y. Xu, I. A. Hemmila,T. N. -E. L
ovgren, Analyst, 117, 1061(1992))。しかしこの方法
では過剰の配位子が存在するため、環境からのユウロピ
ウムと反応すると、強い蛍光を発することが考えられ
る。従って、このシステムはユウロピウムの汚染を非常
にうけやすいという大きな欠点を有している。また、反
応のステップが多くアッセイの自動化には適さない。
【0003】一方 CyberFluor システムでは、タンパク
質を直接標識できる蛍光ラベル剤4,7−ビス(クロロ
スルホフェニル)−1,10−フェナントロリン−2,9
−ジカルボン酸(BCPDA)−Eu3+を開発した。し
かしこのラベル剤ではLKBシステムに比べて蛍光強度
が弱く検出感度が低いという問題がある。近年このラベ
ル剤の蛍光強度を克服すべく、高分子量のポリビニルア
ミン(PVA)にBCPDAを標識することにより蛍光
強度の増強を行っている(A. Scorlias, A. Bjartell,
H. Lija, C. Moller, E. P. Diamandis, Clinical Chem
istry, 46, 1450(2000))。しかしながら、この方法も
増強効果は十分なものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、蛍光増強さ
れた希土類蛍光ラベル剤と、それによる高感度な分析方
法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】ある種のβ−ジケトン構
造を有する希土類蛍光錯体は、配位子と錯形成しかつ蛍
光を発しないイオンと消光の原因となる水分子を排除さ
せる配位子を界面活性剤存在下で共存させ蛍光を測定す
ることによって、蛍光強度が数百倍以上増強することが
知られている。
【0006】本発明者らは、このような知見に基づいて
タンパク質や核酸分子などに直接ラベルできる希土類蛍
光ラベル剤において、増強イオン、シネルジスティック
配位子を用いた蛍光の増強効果及びマイクロカプセル化
による安定化を見いだし、本発明を完成した。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、アミノ基、カルボキシ
ル基、水酸基などを有する分析目的物質に共有結合を介
して安定に結合できる希土類蛍光ラベル剤の蛍光増強方
法、希土類蛍光ラベル剤のマイクロカプセル化による安
定化、及びかかる希土類蛍光ラベル剤を用いた高感度蛍
光分析法を特徴とする。かかる希土類蛍光ラベル剤は、
β−ジケトン、または含窒素複素環構造を有し、三価の
希土類イオンと錯形成し強い蛍光を発するものが望まし
い。より詳しくは、かかる希土類蛍光ラベル剤として下
記一般式(I)
【化7】 (式中、R1は、水素原子、クロロスルホニル基等を示
し、nは1〜5の整数を示す)、または下記一般式(I
I)
【化8】 (式中、R2は、水素原子、スクシンイミジル基等を示
す)、または下記一般式(III)
【化9】 (式中、R3は芳香族基を示し、nは1〜5の整数を示
す)、または下記一般式(IV)
【化10】 (式中、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す)、
または下記一般式(V)
【化11】 (式中、XはCH2、NH、O、Sであり、そして、n
は1〜5の整数を示す)、または下記一般式(VI)
【化12】 (式中、R3は芳香族基を示し、nは1〜5の整数を示
す)で示される配位子が三価の希土類イオンに配位した
蛍光ラベル剤が好ましい。なお、本発明における芳香族
基とは、芳香族炭化水素基および複素環式芳香族基を示
すものであり、置換基を有してもよいフェニル基、ピリ
ジル基、フリル基、チエニル基、ナフチル基、4−ビフ
ェニルイル基、2−フェナントリル基等が例示できる。
上記における置換基とは枝分かれがあってもよい炭素数
1〜10個のアルキル基、芳香族基、アルコキシ基、ア
ルキルチオ基、アルキルアミノ基、アミノ基、クロロス
ルホニル基等が例示できる。そのなかでも4,4´−ビ
ス(1″,1″,1″,2″,2″,3″,3″−ヘプタフル
オロ−4″,6″−ヘキサンジオン−6″−イル)−o
−テルフェニル (BHHT)−Eu3+、4,4´−ビス
(1″,1″,1″,2″,2″,3″,3″−ヘプタフルオ
ロ−4″,6″−ヘキサンジオン−6−イル)クロロス
ルホ−o−テルフェニル (BHHCT)−Eu3+、N,
N,N´,N´−[2,6−ビス(3´−アミノメチル−
1´−ピラゾリル)−4−フェニルピリジン]四酢酸
(BPTA)−Tb3+、5−(4″−クロロスルホ−1
´,1″−ジフェニル−4´−イル)−1,1,1,2,2
−ペンタフルオロ−3,5−ペンタンジオン (CDPP)
−Eu3+などが好適である。
【0008】希土類蛍光錯体が蛍光を発するメカニズム
は以前から解明されており、配位子が吸収したエネルギ
ーが項間交差により配位子の三重項状態まで移動し、そ
こから分子内エネルギー移動によって中心金属まで移り
中心金属の発光として観測されるものである。この現象
は分子内だけに限定されるものではなく分子間でも起こ
ることが知られている。それには希土類金属などのイオ
ンと シネルジスティック配位子、さらにそれらを一つ
のミセルの中に取り込むための界面活性剤が必要とな
る。
【0009】本発明に用いる増強イオンとしては、蛍光
ラベル剤と錯形成はするが蛍光を発しないイオンが望ま
しい。かかる三価イオンとしてガドリニウム、テルビウ
ム、イットリウム、ルテチウム、ランタン、イッテルビ
ウム、ジスプロシウムなどがあるが、そのなかでもガド
リニウムが好適である。
【0010】一方 、本発明に用いるシネルジスティッ
ク配位子としては、中心金属に配位して消光の原因とな
っている水分子を排除し、かつ希土類金属と配位しても
蛍光を発しないものが望ましい。かかる配位子として
1,10−フェナントロリンやその誘導体である4,7−
ジメチル−1,10−フェナントロリン、4,7−ジフェ
ニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ピリ
ジン誘導体である2,2´−ジピリジル、2,2´−ジピ
リジルアミン、2,4,6−トリメチルピリジン、2,2
´:6´,2″−テトラピリジン、また1,3−ジフェニ
ルグアニジンやトリオクチルホスフィンオキシド(TO
PO)などがあるが、前記ラベル剤においてはTOPO
が最も好適である。界面活性剤としては、非イオン性界
面活性剤であれば特に制限するものではない。
【0011】蛍光の増強方法としては、前記ラベル剤に
上記のような増強イオン、シネルジスティック配位子、
界面活性剤を共存させて時間分解蛍光測定で分析するこ
とを特徴とする。目的のターゲットは特にこだわらな
い。そのためどの分析方法にも応用することができるの
を特徴とする。ただし測定条件が液相状態であることが
必要となる。目的物とラベル剤を温和な条件下で攪拌す
ることでラベルでき、特にLKBシステムと比べて目的
物に直接ラベル化を行うことができるためホモジニアス
系での分析方法の更なる高感度化が可能である。
【0012】上記の増強方法は、溶液中だけではなくマ
イクロカプセル中にラベル剤と増強イオン、シネルジス
ティック配位子を共存させることによっても実現でき
る。その場合は、マイクロカプセル表面を官能基化する
ことにより目的ターゲットに結合させる。使用するマイ
クロカプセルの材質は特に限定されないが、好適にはポ
リスチレンやポリメタクリル酸メチルなどが望ましい。
また、マイクロカプセルを生成するときの重合反応は特
に限定されないが、好適にはラジカル重合反応やオレフ
ィンメタセシス重合反応が望ましい。
【0013】マイクロカプセル中にラベル剤や増強イオ
ン、シネルジスティック配位子を共存させるときには、
マイクロカプセルを作成する系中で錯体を生成させても
よいが、あらかじめ錯体を単結晶として作成し、これを
マイクロカプセルを作成する系中に共存させてもよい。
【0014】蛍光錯体を含む溶液の蛍光の測定方法は、
特に制限されることではなく従来の測定装置でそのま
ま、あるいは必要な改変を行って測定することができ
る。その際の検出条件については容易に最適化すること
ができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定され
るものではない。 実施例1 BHHCT−Eu3+の増強イオンによる増強効果の検
討:特に断りがない限り実験は以下の条件下で行った。
BHHCTは10mMにエタノールにより希釈後、50mM
Tris−HCl pH7.8緩衝溶液によりEuCl3
とともに100nMに調製し、錯形成が安定するまで4℃
で2時間反応させた。BHHCT−Gd3+も同様に錯体
を4℃で2時間反応させた後に用いた。測定は96穴マ
イクロタイタープレート中に50mLずつ加えてDelfia 1
234 fluorometer (Wallac) で時間分解蛍光測定により
行った。測定条件はDelay time:0.2ms Window tim
e:0.4ms Cycling time:1ms とした。50mM Tr
is−HCl pH7.8緩衝溶液中でBHHCT−Eu
3+の濃度を100Mと一定にしたときにBHHCT−G
3+ の濃度を変化させて蛍光の測定を行った(図
1)。また緩衝溶液にTween20を加えて同条件で
測定を行った(図2)。
【0016】実施例2 BHHCT-Eu3+ の シネルジスティック配位子によ
る増強効果の検討:BHHCT-Eu3+(100nM)、
BHHCT-Gd3+(5mM)、Tween20(0.05
%)の条件で50mM Tris−HCl pH9.1緩衝溶
液中でシネルジスティック配位子にTOPOを用いて測
定を行った(図3)。
【0017】実施例3 BHHCT-Eu3+の増強効果による蛍光スペクトルの
測定:BHHCT-Eu 3+(100nM)、BHHCT−G
3+(5mM)、TOPO(10mM)、Tween20
(0.05%)を含む50mM Tris−HCl pH9.1
緩衝溶液中で蛍光スペクトルをF−4500(HITACH
I)にて測定した(図4および図5)。なお、図5は図
4の縦軸を拡大したものである。このBHHCT蛍光錯
体の励起波長は326nmであり、蛍光波長は615nmで
あった。またBHHCT−Eu3+(100nM)、BHH
CT-Gd3+(5mM)、TOPO(10mM)、Twee
n20(0.05%)を含む50mM Tris−HCl p
H9.1緩衝溶液中での蛍光強度の増強効果についてガ
ドリニウム、TOPOを加えることによる強度比とS/
N比を表1にまとめた。
【0018】
【表1】
【0019】実施例4 BPTA−Tb3+の増強効果による蛍光スペクトルの測
定:BPTA は10mMにジメチルホルムアミドにより
希釈後、50mMホウ酸pH9.1緩衝溶液によりTbCl
3とともに100nMに調製し、錯形成が安定するまで4
℃で2時間反応させた。BPTA−Gd3+も同様に錯体
を4℃で2時間反応させた後に用いた。BPTA−Tb
3+(100nM)、BPTA−Gd3+(5mM)、TOPO
(10mM)、Tween20(0.05%)を含む50m
Mホウ酸pH9.1緩衝溶液中で蛍光スペクトルをF−4
500(HITACHI)にて測定した(図6および図7)。
なお、図7は図6の縦軸を拡大したものである。この
BPTA 蛍光錯体の励起波長は325nmであり、蛍光
波長は545nmであった。またBPTA−Tb3+(10
0nM)、BPTA−Gd3+(5mM)、TOPO(10m
M)、Tween20(0.05%)を含む50mM ホウ酸
pH9.1緩衝溶液中での蛍光強度の増強効果についてガ
ドリニウム、TOPOを加えることによる強度比とS/
N比を表2にまとめた。
【0020】
【表2】
【0021】実施例5 CDPP−Eu3+の増強効果による蛍光スペクトルの測
定:CDPPは10 mMにエタノールにより希釈後、5
0mM Tris−HCl pH7.8緩衝溶液によりEuC
3とともに100nMに調製し、錯形成が安定するまで
4℃で2時間反応させた。CDPP−Gd3+も同様に錯
体を4℃で2時間反応させた後に用いた。CDPP−E
3+(100nM)、CDPP−Gd3+(5mM)、TOP
O(10mM)、Tween20(0.05%)を含む50
mM Tris−HCl pH9.1緩衝溶液中で蛍光スペク
トルをF−4500(HITACHI)にて測定した(図8お
よび図9)。なお、図8は図9の縦軸を拡大したもので
ある。このCDPP蛍光錯体の励起波長は325nmであ
り、蛍光波長は613nm であった。またCDPP−E
3+(100nM)、CDPP−Gd3+(5mM)、TOP
O(10mM)、Tween20(0.05%)を含む5
0mM Tris−HCl pH9.1緩衝溶液中での蛍光強
度の増強効果についてガドリニウム、TOPO を加え
ることによる強度比とS/N比を表3にまとめた。
【0022】
【表3】
【0023】実施例6 ユウロピウムの定量:BHHCT(100nM、81m
L)、BHHCT−Gd 3 +(10mM、81mL)、TOP
O(10mM、40.5mL)と100nMから1pMまで10
倍希釈した塩化ユウロピウム水溶液90mL それぞれを
50mM Tris−HCl pH9.1緩衝溶液7897.
5 mL中に加え4℃で2時間反応させた。反応後200m
Lずつ96穴マイクロタイタープレートに加え時間分解
蛍光測定によって測定を行った。それにより得られたユ
ウロピウムの検量線を図10に示した。測定条件につい
ては前述の通りである。BHHCTのみ、BHHCTと
TOPOの時も同条件で測定を行った。それらのユウロ
ピウムの検出限界(S/N=3)を表4に示した。
【0024】
【表4】
【0025】これらの結果からBHHCTによるユウロ
ピウムの定量の検出限界がガドリニウムイオン、TOP
Oを共存させることによりBHHCTのみのときと比べ
て2桁、TOPO を加えたときよりも1桁以上感度を
上げることができた。従って、本発明にかかる方法を用
いることでユウロピウムの定量のみならずさまざまな目
的物のより高感度な定量を行うことができる。
【0026】実施例7 BHHCT−Eu3+を含むマイクロカプセルの合成:エ
タノール50mL、メタクリル酸メチル4.0g、エチレン
グリコールジメタクリラート1.0g、2,2´−アゾビ
スイソブチロニトリル25mg、BHHCT−Eu3+(1
00mM、50mL)の混合物を毎分300回の撹拌条件
下、80℃にて5時間反応させた。冷却後、水を加え生
成したマイクロカプセルを沈殿させ、ろ別後乾燥した。
また、ガドリニウムを添加するときは、上記の条件に、
BHHCT−Gd3+(100mM、2.5mL)を加えた。
得られたマイクロカプセルの電子顕微鏡写真を図11に
示した。また、ガドリニウムを添加したマイクロカプセ
ルと添加しなかったマイクロカプセルの、エタノール中
に分散させたときの蛍光スペクトルをF−4500(HI
TACHI)にて測定した(図12)。またマイクロカプセ
ル中での蛍光の増強効果について、BHHCT−Gd3+
を加えることによる強度比を表5にまとめた。
【0027】
【表5】
【0028】実施例8 BPTA−Tb3+を含むマイクロカプセルの合成:エタ
ノール50mL、メタクリル酸メチル4.0g、エチレング
リコールジメタクリラート1.0g、2,2´−アゾビス
イソブチロニトリル25mg、BPTA−Tb3+(100
mM、50mL)の混合物を毎分300回の撹拌条件下、8
0℃にて5時間反応させた。冷却後、水を加え生成した
マイクロカプセルを沈殿させ、ろ別後乾燥した。また、
ガドリニウムを添加するときは、上記の条件に、BPT
A−Gd3+(100mM、2.5mL)を加えた。ガドリニ
ウムを添加したマイクロカプセルと添加しなかったマイ
クロカプセルの、エタノール中に分散させたときの蛍光
スペクトルをF−4500(HITACHI)にて測定した
(図13)。またマイクロカプセル中での蛍光の増強効
果について、BPTA−Gd3+を加えることによる強度
比を表6にまとめた。
【0029】
【表6】
【0030】実施例9 CDPP−Eu3+を含むマイクロカプセルの合成:エタ
ノール50mL、メタクリル酸メチル4.0g、エチレング
リコールジメタクリラート1.0g、2,2´−アゾビス
イソブチロニトリル25mg、CDPP−Eu3+(100
mM、50mL)の混合物を毎分300回の撹拌条件下、8
0℃にて5時間反応させた。冷却後、水を加え生成した
マイクロカプセルを沈殿させ、ろ別後乾燥した。また、
ガドリニウムを添加するときは、上記の条件に、CDP
P−Gd3+(100mM、2.5mL)を加えた。ガドリニ
ウムを添加したマイクロカプセルと添加しなかったマイ
クロカプセルの、エタノール中に分散させたときの蛍光
スペクトルをF−4500(HITACHI)にて測定した
(図14)。またマイクロカプセル中での蛍光の増強効
果について、CDPP−Gd3+ を加えることによる強
度比を表7にまとめた。
【0031】
【表7】
【0032】実施例10 ユウロピウム錯体の単結晶化 (1)4,4´−ビス(1″,1″,1″−トリフルオロ
−2″,4″−ブタンジオン−4″−イル)−o−テル
フェニルの合成(図15):文献公知の方法(J. Yuan,
K. Matsumoto, H. Kimura, Analytical Chemistry, 7
0, 596(1998))により合成した4,4´−ジアセチル−
o−テルフェニル3.14g、ナトリウムメトキシド
3.0g、トリフルオロ酢酸エチル3.55g、および脱
水ジエチルエーテル50 mLの混合物を室温にて48時
間反応させた。反応混合物より溶媒を減圧留去し、得ら
れた固体を15%硫酸水溶液に加え、室温にて30分撹
拌した。上澄み液を除き、得られた固体を水で洗浄し
た。得られた固体をエタノール40mLに加え、加熱して
溶解した。溶液を熱時ろ過し、ろ液に石油エーテル20
0mLを加え、室温にて10分間撹拌した。生成した沈殿
をろ別し、ろ液を減圧濃縮し、生成した固体を真空乾燥
することにより、目的物を収率78%で単離した。1 H-NMR (CDCl3, TMS): d = 6.93 (2H. s), 7.29 (4H,
d, J = 8.6 Hz), 7.39- 7.61 (4H, m), 7.84 (4H, d, J
= 8.6 Hz).
【0033】(2)単結晶ユウロピウム錯体の合成:
4,4´−ビス(1″,1″,1´−トリフルオロ−2″,
4″−ブタンジオン−4″−イル)−o−テルフェニル
253mg、2,2´−ビピリジン76mg、エタノール1
5mLの混合物に、水2mLに溶解した硝酸ユウロピウム6
水和物223mg を加え、その後5分間加熱還流した。
放冷後、溶媒を減圧留去し、生成した固体を水で洗浄
後、真空乾燥して粗錯体を得た。得られた粗錯体10mg
をアセトン7.5mL に溶解し、トリエチルアミン20m
g を含む石油エーテル6mLにて室温下拡散させ、黄色の
板状結晶を得た。得られた結晶をAFC−7R(Rigak
u)にて単結晶X線結晶構造解析を行った(図16)。
また、得られた単結晶の格子定数を表8に示した。1 H-NMR (Acetone - d6, TMS): d = 1.16 (18H, t, J =
7.3 Hz), 1.27 (3H, t, J = 7.3 Hz), 3.42 (2H, q, J
= 7.3 Hz), 4.23 (12H, q, J = 7.3 Hz), 6.94(8H, s),
7.41 (16H, d, J = 8.4 Hz), 7.52 ? 7.65 (16H, m),
8.06 (16H, d, J = 8.4 Hz). 元素分析:C118H94N2O17F24Eu2; 実測値 C, 55.31; H, 3.47; N, 0.99. 計算値 C, 55.10; H, 3.68; N, 1.09.
【0034】
【表8】
【0035】
【発明の効果】本発明にかかる蛍光ラベル剤の増強効果
は、共有結合を形成する官能基を有し、目的物に直接ラ
ベルできるのであるから多様の目的物に対して1ステッ
プで測定することができる。さらに本発明における蛍光
ラベル剤の増強効果と生体高分子へのラベルによる標識
率の向上の技術を応用することによって、イムノアッセ
イ、DNAハイブリダイゼーションアッセイ等のさらな
る高感度化が期待される。さらに、配位子と金属との錯
体の安定性も、蛍光錯体をつつんだポリマーによりコー
ティングすることによって増加する。また、ポリマーの
表面にカルボキシル基やアミノ基をコーティングするこ
とにより、ストレプトアビジンへの標識や、DNAへの
直接ラベル化による時間分解蛍光イムノアッセイやDN
Aハイブリダイゼーションアッセイなどのラベル剤とし
て更に高感度な測定法が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】BHHCT−Eu3+にBHHCT−Gd3+を添
加した時の蛍光測定のデータを示す図である。
【図2】BHHCT−Eu3+に0.05% Tween2
0を加えた時のBHHCT−Gd3+の濃度変化による蛍
光測定のデータを示す図である。
【図3】BHHCT−Eu3+にTOPOを添加した時の
蛍光測定のデータを示す図である。
【図4】BHHCT−Eu3+に BHHCT−Gd3+
TOPOを加えた時の蛍光スペクトルを示す図である。
なお、点線はBHHCT−Eu3+(100nM)の蛍光ス
ペクトル、破線はBHHCT−Gd3+(1mM)の蛍光ス
ペクトルである。
【図5】図4の縦軸を拡大したデータを示す図である。
【図6】BPTA−Tb3+にBHHCT−Gd3+、TO
POを加えた時の蛍光スペクトルを示す図である。な
お、点線はBPTA−Tb3+(100nM)の蛍光スペク
トル、破線はBPTA−Tb3+(1mM)の蛍光スペクト
ルである。
【図7】図6の縦軸を拡大したデータを示す図である。
【図8】CDPP−Eu3+にCDPP−Gd3+、TOP
Oを加えた時の蛍光スペクトルを示す図である。なお、
点線はCDPP−Eu3+(100nM)の蛍光スペクト
ル、破線はCDPP−Gd3+(1mM)の蛍光スペクトル
である。
【図9】図8の縦軸を拡大したデータを示す図である。
【図10】蛍光ラベル剤を用いたユウロピウムの検量線
を示す図である。
【図11】合成したマイクロカプセルの電子顕微鏡写真
を示す図である。
【図12】BHHCT−Eu3+を含むマイクロカプセル
の蛍光スペクトルを示す図である。なお、点線は BH
HCT−Gd3+を添加せずに合成したマイクロカプセル
の蛍光スペクトルである。
【図13】BPTA−Tb3+を含むマイクロカプセルの
蛍光スペクトルを示す図である。なお、点線は BPT
A−Gd3+を添加せずに合成したマイクロカプセルの蛍
光スペクトルである。
【図14】CDPP−Eu3+を含むマイクロカプセルの
蛍光スペクトルを示す図である。なお、点線は CDP
P−Gd3+を添加せずに合成したマイクロカプセルの蛍
光スペクトルである。
【図15】4,4´−ビス(1″,1″,1″−トリフル
オロ−2″,4″−ブタンジオン−4″−イル)−o−
テルフェニルの合成経路を示す図である。
【図16】単結晶X線結晶構造解析により得られた、生
成した結晶の構造を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 和子 東京都世田谷区代沢3−9−12−105 Fターム(参考) 2G042 AA01 BD19 DA06 DA08 EA13 FA11 FA17 FB02 FB05 2G045 BA11 BA13 BB22 BB29 DA12 DA13 DA14 DA36 FB02 FB03 FB07 FB12 FB15

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 三価の希土類イオンと以下の一般式
    (I)〜(VI)のいずれかの配位子からなる希土類蛍光
    ラベル剤に増強イオンを添加してなる蛍光検出試薬。 一般式(I)〜(VI): 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 【化6】 上記式中、 R1は水素原子、クロロスルホニル基等であり、 R2は水素原子、スクシンイミジル基等であり、 R3は芳香族基であり、 XはCH2、NH、O、Sであり、そして、 mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。
  2. 【請求項2】 三価の希土類イオンの配位子としてシネ
    ルジスティク配位子を用いる請求項1に記載の蛍光検出
    試薬。
  3. 【請求項3】 希土類蛍光ラベル剤がマイクロカプセル
    化されている請求項1または2に記載の蛍光検出試薬。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光検
    出試薬を用いた高感度蛍光分析方法。
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