JP2003243692A - 光検出器 - Google Patents

光検出器

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JP2003243692A
JP2003243692A JP2002038560A JP2002038560A JP2003243692A JP 2003243692 A JP2003243692 A JP 2003243692A JP 2002038560 A JP2002038560 A JP 2002038560A JP 2002038560 A JP2002038560 A JP 2002038560A JP 2003243692 A JP2003243692 A JP 2003243692A
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light
electrode
photodetector
electron
light absorber
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JP2002038560A
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Hokuto Takada
北斗 高田
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】光検出素子の構造が簡素であり、光子のカウン
トおよび超微弱光の検出が可能であり、受光波長の波長
帯の設計(ピーク中心波長、受光波長の幅)が容易であ
り、磁場や極低温度などの特殊な動作環境を必要としな
い光検出器を提供すること。 【解決手段】受光体11と、該受光体とトンネル接合し
てなる第1の電極13及び第2の電極14と、を有する
受光素子10を備える光検出器であって、前記受光体
が、相互に電荷の供受が可能なように隣接する光吸収体
と電荷受容体とからなり、該光吸収体および/または該
電荷受容体が、量子ドットからなり、前記光吸収体が光
を受光した際に、前記第1の電極と前記第2の電極との
間に流れる電流の変化を検出することを特徴とする光検
出器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光および光子を検
出するための光検出器に関するものであり、さらに詳し
くは、量子ドットを用いた光検出器に関するものであ
る。
【従来の技術】
【0002】(従来の光検出器)通信、情報処理、分光
計測や撮像等の分野において、光検出器を用いた光検出
のニーズがある。例えば、情報通信の分野では、特に、
量子情報通信において、単一光子の生成・検出が必要と
される。また、分光計測・撮像用の分野では、赤外・可
視・紫外のさまざまな波長帯で、高感度の光検出、とく
に単一光子の検出が必要とされる。
【0003】このような分野にて通常利用されている従
来の光検出器としては、光電子増倍管(photomu
ltiplier。以下、「PMT」と略す)やアバラ
ンシェフォトダイオード(avalanche pho
todiode。以下、「APD」と略す)である。し
かしながら、これらの光検出器は、以下の本質的な欠点
を有する。
【0004】即ち、PMTの場合の欠点としては、装置
が大きく、その構成が複雑でありると共に、真空管を用
いているために経時的安定性が低く、機械的に壊れやす
く、高電圧を必要とし、測定に際しては量子効率が低い
といったことが挙げられる。また、APDの場合の欠点
としては、大きな印加電圧が必要であり、測定に際して
は、受光波長領域が限定され、光子カウントが困難であ
ることや、ダークカウント(暗電流)大きいことが挙げ
られる。
【0005】一方、光検出器の性能を示す主な指標とし
ては、検出感度、動作環境、受光波長領域、動作速度な
どが挙げられるが、これらのうち、光検出感度が最も重
要な指標である。しかしながら、RMT及びAPDのい
ずれにおいても、光検出感度に関しては、各分野での光
検出のニーズに十分に対応することができていない。
【0006】(SETを用いた光検出器)このような問
題を解決するために、単一電子トランジスタ(Sing
le Electron Transistor、以
下、「SET」と略す)を光検出素子として利用した光
検出器として、下記の(1)〜(5)に後述するような
提案がなされている。
【0007】(1)A.N.Cleland(「Ver
y low noise photodetector
based on the single elec
tron transistor」、APL,Vol.
61, p2820,1992)らは、SETをアンプ
として世界で初めて利用した光検出器(以下、「光検出
器(1)」と略す場合がある)を作製し、温度20mK
において、波長650nmの光の検出・増幅に利用でき
ることを示している。
【0008】この光検出器は、電荷分離部(Photo
detector)と、増幅部(Electromet
er)と、が完全に分離したSi系の光検出素子を有す
るものである。測定に際しては、この光検出器のSi基
板上の金属電極にバイアス電圧を印可し、電荷分離させ
ることが必要なため、前記光検出素子の電極とSET部
との間の静電遮蔽が必須である。しかしながら、電荷分
離効率が低いために、量子効率が低いのが課題である。
また、前記光検出素子は、その構造が複雑であり、電子
線リソグラフィ法によって作製されるため、室温動作は
厳しく、生産性も低いことが容易に推定される。
【0009】(2)J.M.Hergenrother
(「The single−electron tra
nsistor as an ultrasensit
ivemicrowave detector」、IE
EE transactions on applie
d superconductivity,Vol.
5,p2604,1995)らは、光検出素子として超
伝導体を用いた光検出器(以下、「光検出器(2)」と
略す場合がある)を作製し、これ用いてマイクロ波を検
出している。しかしながら、光検出素子として超伝導体
を用いているため、極低温度においてしか測定ができ
ず、また、用いている超伝導材料自体も特殊な材料であ
る。
【0010】(3)R.J.Schoelkopf
(「A concept for a submill
imeter−wave single−photon
countor」、IEEE transactio
ns on applied superconduc
tivity,Vol.9,p2935,1999)ら
は、超伝導体とSETとを組合せた光検出素子を有する
高量子効率、低NEP、サブμsスケールでの動作が可
能な光検出器(以下、「光検出器(3)」と略す場合が
ある)によりサブミリ波を測定している。
【0011】この光検出器による光検出のメカニズム
は、前記超伝導体によりサブミリ波を吸収して、準粒子
を励起し、この準粒子がSIS接合をトンネル(通過)
することによるものである。しかしながら、光検出素子
として超伝導体を用いているため、測定には100mK
以下の極低温環境が必須であり、また、SIS接合には
高純度の金属を用いることが必要である。
【0012】(4)H.Albert(欧州特許:EP
1077492、特開2001−60699号公報)ら
は、受光部と、SETと、からなる光検出素子を有する
光検出器を作製し、無機半導体材料(Si又はGaAs
系)からなる受光部に光を吸収させて励起させた電子
を、バイアス電圧の印加による電界で電荷分離した際の
静電ポテンシャルの変化を、SETで検出する光検出器
(以下、「光検出器(4)」と略す場合がある)提唱し
ている。また、この光検出器は、2つのSETで差動動
作させることにより、測定時のノイズをキャンセルする
工夫もなされている。
【0013】しかし、SETの動作を考慮した場合、印
加できるバイアス電圧には制限があるため十分な電荷分
離が行えるとはいい難い。さらに光検出素子の構造が複
雑であり、測定時の量子効率は低いと予想される。ま
た、光検出素子のスケールはEBリソグラフィの分解能
に支配され、現在の装置では、室温動作は難しく、生産
性も低いと予想される。
【0014】(5)S.Komiyama(特開200
1−119041号公報、Nature,Vol.40
3,p405,2000、Physical Revi
ewB,Vol.62,p16731,2000)ら
は、SETを用いた遠赤外光子検出器(以下、「光検出
器(5)」と略す場合がある)を作製し、飛躍的に高い
検出感度及びSN比で遠赤外光(波長0.2mm)が検
出できることを提唱している。
【0015】この光検出器は、2次元電子系(2DE
G)を利用したものであり、その測定メカニズムは、磁
場印加により生じるランダウ準位の準位間の電子遷移で
光子を吸収し、円盤状の量子ドット中に形成される各ラ
ンダウ準位の端状態の分布により、電荷を空間的に分離
し、量子ドット内に安定な分極状態を作ることを利用し
ている。
【0016】しかし、測定には磁場印加が必須である上
に、測定可能な波長域が0.2mmと非常に特殊であ
り、可視〜近赤外の波長域の測定に利用することができ
ない。また、光子の吸収および検出機構が、量子ドット
のスケールと、印加磁場と、の双方に関係しているた
め、光検出素子のスケールに制約があり、測定には極低
温環境下で前記光検出素子を動作させることが必須であ
る。さらに、2DEG系を利用するために、光検出素子
の構成が、複雑かつ限定的である。
【0017】(SETを用いた光検出器の基本的な動作
原理)上述したSETを用いた光検出器が高感度である
のは、SETの伝導度がその周囲の静電ポテンシャルに
非常に敏感であるというメカニズムに起因しており、こ
のようなメカニズムについては、例えば、A.F.Cl
ark(「Charge sensitivity o
f a single electron trans
istor」、APL,Vol65,p1847、19
94)らによって示されている。
【0018】また、SETとして動作するためには、電
荷の局在する領域の1電子の帯電エネルギーが、熱エネ
ルギーに比べて十分大きいことが必要である。実際に
は、例えば、H.Ishikuro(JJAP,Vo
l.40,p2010、2001)、L.Zhuang
(APL,Vol.72,p1205、1998)、
J.Shirakashi(APL,Vol.72,p
1893、1998)らにより、室温で動作するSET
が現実に作製されている。
【0019】(従来のSETを用いた光検出器の課題)
しかし、従来のSETを用いた光検出器には、以下のよ
うな課題がある。即ち、光検出器(1)及び光検出器
(4)は、電荷分離のためにバイアス電圧の印加が必要
である。このため、バイアス電圧端子等が必要となり、
これら光検出器の構造が複雑になる。また、バイアス電
圧によって発生する外部電界がSETの伝導度にも影響
することが容易に考えられ、検出感度の安定性・再現性
に本質的に問題がある。仮にこの影響を防止できるとし
ても、より複雑な構成が必要となる。
【0020】更に、受光層の有効厚さと、その光吸収係
数と、の関係から光の吸収効率に課題があると予想され
ること、および、バイアス電圧印加による外部電界で電
荷を分離する原理を採用していることから、入射した光
子を、電子と、ホールと、に分離する確率である量子効
率を高くすることは容易ではない。しかも、効率的に電
荷分離を行うためにバイアス電圧を高くすれば、逆に、
このバイアス電圧の印加に伴い発生する外部電界が、S
ETの伝導度に大きく影響するために、動作の安定性や
高い検出感度を得られなくなるというジレンマがある。
【0021】光検出器(2)および光検出器(3)は、
受光層に超伝導体を用いている。このため、測定に際し
ては極低温で動作させることが必要となるため、これら
の光検出器は、その構成が複雑かつ大掛かりである上
に、使い勝手が悪い。また、受光波長範囲もマイクロ波
〜サブミリ波に限られる。更に、使用する超伝導体が高
純度の材料からなることが必要であるため、必然的にこ
れら光検出器の作製コストは高くなる。
【0022】さらに光検出器(5)では、測定に際して
磁場が必須であることから、その構成が複雑かつ大掛か
りである。また、光(サブミリ波)の吸収および検出の
機構、用いる光検出素子の構造及びスケールと、印加磁
場の大きさと、が相互に関係しているために、他の光検
出素子の構成要素に関係なく、量子ドットのスケールを
独立して小さくすることができず、測定に際しては極低
温環境での動作を強いられる。更に、現実的に発生でき
る磁場の強さを考えると、中赤外域よりも短波長域の光
の検出は、非現実的である。
【0023】なお、光検出器(5)に関する技術文献で
ある特開2001−119041号公報には、磁場を用
いる必要のない単一の量子ドットからなる光検出素子を
光検出器に用いることも提唱されている。しかし、光検
出素子が単一の量子ドットからなる構成の場合、前記光
検出素子が光を吸収して励起した電子の励起状態の寿命
が短いために信号の検出が困難である。
【0024】一方、このような問題を解決するために、
光検出素子を、複数の量子ドットからなる構成とした場
合においても、前記光検出素子の構成が非常に複雑にな
るために、最先端の微細加工技術が必要とされる。この
ため、このような光検出素子を用いた光検出器では、そ
の生産性・コストに問題があり、また、多数のバイアス
電圧を制御する必要があるために前記光検出素子の動作
の安定性確保や、運用が容易でないなどの課題がある。
【0025】以上に説明したように、従来のSETを用
いた光検出器においては、該光検出器の光検出素子の構
造が複雑である、検出感度の安定性・再現性に問題があ
る、受光波長に制限がある、磁場や極低温度などの特殊
な動作環境が必要である等の課題があり、コストや測定
性能、生産性、取り扱いの容易さの、少なくともいずれ
かの点で実用性に欠けていた。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、
光検出素子の構造が簡素であり、光子のカウントおよ
び超微弱光の検出が可能であり、受光波長の波長帯の
設計(ピーク中心波長、受光波長の幅)が容易であり、
磁場や極低温度などの特殊な動作環境を必要としない
等、実用上、極めて優れた光検出器を提供することを課
題とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】上記課題は以下の本発明
により達成される。すなわち、本発明は、 <1> 受光体と、該受光体とトンネル接合してなる第
1の電極及び第2の電極と、を有する受光素子を備える
光検出器であって、前記受光体が、相互に電荷の供受が
可能なように隣接する光吸収体と電荷受容体とからな
り、前記光吸収体および/または前記電荷受容体が、量
子ドットからなり、前記光吸収体が光を受光した際に、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の
変化を検出することを特徴とする光検出器である。
【0028】<2> 前記光吸収体が、色素からなるこ
とを特徴とする<1>に記載の光検出器である。
【0029】<3> 前記光吸収体が、有機金属錯体か
らなることを特徴とする<1>に記載の光検出器であ
る。
【0030】<4> 前記量子ドットが、酸化チタン微
粒子からなることを特徴とする<1>に記載の光検出器
である。
【0031】<5> 前記受光素子が、前記受光体に対
して電気的に絶縁され、且つ、前記受光体に近接する、
第3の電極を有することを特徴する<1>〜<4>のい
ずれか1つに記載の光検出器である。
【0032】<6> 帯電体と、該帯電体とトンネル接
合してなる第1の電極及び第2の電極と、を有する受光
素子を備える光検出器であって、前記帯電体に近接す
る、光分極体を備え、該光分極体が光を受光した際に、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる電流の
変化を検出することを特徴とする光検出器である。
【0033】<7> 前記光分極体が、相互に電荷の供
受が可能なように隣接する光吸収体と電荷受容体とから
なり、前記光吸収体および/または前記電荷受容体が量
子ドットからなることを特徴とする<6>に記載の光検
出器である。
【0034】<8> 前記受光素子が、前記帯電体に対
して電気的に絶縁され、且つ、前記帯電体に近接する、
第3の電極を有することを特徴する<6>または<7>
に記載の光検出器である。
【0035】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、第1の本発明
の概要、第1の本発明の実施形態、第2の本発明、本発
明の光検出器に用いられる受光素子の構成、の順に大き
くわけて説明する。
【0036】(第1の本発明の概要)第1の本発明は、
受光体と、該受光体とトンネル接合してなる第1の電極
及び第2の電極と、を有する受光素子を備える光検出器
であって、前記受光体が、相互に電荷の供受が可能なよ
うに隣接する光吸収体と電荷受容体とからなり、前記光
吸収体および/または前記電荷受容体が、量子ドットか
らなり、前記光吸収体が光を受光した際に、前記第1の
電極と前記第2の電極との間に流れる電流の変化を検出
することを特徴とする。
【0037】本発明において、「受光体」とは、受光体
にトンネル接合した、第1の電極と、第2の電極と、の
間に電気を流した際に、前記受光体の帯電効果によって
電流が流れにくくなる現象、即ち、クーロン閉塞として
知られている現象が発生する機能を有する。加えて、前
記受光体は、光を受光して自己分極する機能も兼有する
ものである。
【0038】さらに、第1の本発明においては、前記受
光体は、受光体は、相互に電荷の供受が可能なように隣
接する光吸収体と電荷受容体とからなり、前記光吸収体
および/または前記電荷受容体が、量子ドットからなる
ものである。また、前記光吸収体および前記電荷受容体
を構成する材料は相互に異なることが好ましい。なお、
第1の本発明に用いられる受光体は、光を受光して自己
分極を有する機能を持つ部分(以下、「自己分極発生
部」と略す)と、この自己分極を静電ポテンシャルの変
化として変換する機能を持つ部分(以下、「分極感応
部」と略す)と、が一体化しているために受光素子の構
成を簡素にすることができる。
【0039】なお、本発明において、「自己分極」と
は、電場や磁場等の外部刺激を印加することなく、光を
受光した際に自発的に分極し、この分極状態が、第1の
電極と、第2の電極と、の間に流れる電流の変化として
測定可能な間、即ち、1ピコ秒〜10秒の間、より好ま
しくは、1ナノ秒〜10マイクロ秒の間維持されること
を意味する。従って、本発明に用いられる受光体は、光
を受光した際に、電場や磁場等を印加することなく、光
を検出するために必要な時間、分極状態を維持すること
ができるため、本発明の光検出器は電場や磁場を印加す
るための装置が不要であり、その構成が従来技術による
光検出器よりも簡素である。
【0040】第1の本発明において、受光体は、相互に
電荷の供受が可能なように隣接する、光吸収体と、電荷
受容体と、からなる。この「光吸収体」とは、光吸収体
が光(光子)を受光した際に、前記光吸収体の電子占有
準位に存在する電子が、前記光吸収体の電子非占有準位
へと励起することが可能な物質からなるものを意味す
る。なお、光吸収体として利用する材料を選択すること
により、所望の波長帯の光を検出することができる光検
出器を作製することができる。
【0041】第1の本発明に用いられる光吸収体として
は、上記の条件を満たすものであれば特に限定されない
が、色素や有機金属錯体を用いることが好ましい。前記
色素としては、公知のものを用いることができるが、例
えば、キサンテン系色素、シアニン系色素、トリアリル
カルボニウム系色素、ピリリウム系色素、メロシアニン
系色素、チアジン系色素等が挙げられ、前記有機金属錯
体としては、公知のものを用いることができるが、例え
ば、化学式1に示すような構造を有する有機金属錯体で
あるcis−(SCN)2bis(2,2'−bipy
ridyl−4,4'−dicarboxylate)
−ruthenium(II)(以下、「Ru錯体」と
略す)、亜鉛テトラポルフィリン、マグネシウムテトラ
ポルフィリン、金属フタロシアニン等が挙げられる。
【0042】また、「電荷受容体」とは、光励起によっ
て前記光吸収体の電子非占有準位へ移動した電子、ある
いは、光励起によって前記光吸収体の電子占有準位に発
生した正孔、を一時的に受容(トラップ)してエネルギ
ー緩和することにより、受光体内において、空間的に電
荷を分離し、該受光体を、自己分極させる機能を有する
物質を意味する。なお、光励起した場合の光吸収体と、
電荷受容体と、の間における電荷供受の詳細については
後述する。
【0043】但し、「電子占有準位」および「電子非占
有準位」とは、本発明においては、外部の系との間で、
熱や光等によるエネルギーのやり取りの無い定常状態に
おいて、前者が、電子により占有されているエネルギー
準位を意味し、後者が、電子により占有されていない
(空の)エネルギー準位を意味し、具体例としては以下
のようなものが挙げられる。
【0044】例えば、有機分子においては、HOMO
(最高占有分子軌道)およびHOMOの電子の電子エネ
ルギーよりも小さいエネルギーを持つ電子準位が、電子
占有準位に相当し、LUMO(最低非占有分子軌道)お
よびLUMOの電子の電子エネルギーよりも大きいエネ
ルギーを持つ電子準位が、電子非占有準位に相当する。
あるいは、金属や半導体等のようにフェルミ準位を有す
るような場合においては、フェルミ−ディラックの分布
関数に従い、確率的に電子の存在が許容されるエネルギ
ー準位が、電子占有準位に相当し、確率的に電子の存在
が許容されないエネルギー準位が、電子非占有準位に相
当する。
【0045】第1の本発明においては、光吸収体および
/または電荷受容体が、量子ドットからなることが必要
である。但し、本発明において、「量子ドット」とは、
この量子ドットに、2つの電極(以下「電極A」、「電
極B」と略す)をトンネル接合した回路を形成して電気
を流した際に、前記量子ドットの帯電効果によって電極
Aと電極Bとの間に電流が流れにくくなる現象、即ち、
クーロン閉塞として知られている現象が発生する機能を
必ず有する物質からなるものを意味する。但し、本発明
に用いられる量子ドットは、2つの電極とトンネル接合
した形態においてのみ使用されることに限定されるもの
ではない。また、第1の本発明においては、1つの量子
ドットは、上記した機能に加え、既述した光吸収体ある
いは電荷受容体のいずれか一方の機能を兼有するもので
ある。
【0046】第1の本発明に用いられる量子ドットとし
ては、既述した条件を満たすものであれば特に限定され
ないが、その形状が微粒子状の酸化チタン等が好適に用
いられる。なお、該酸化チタン以外からなる量子ドット
の具体例については後述する。
【0047】第1の本発明は、受光体と、該受光体とト
ンネル接合してなる第1の電極及び第2の電極と、を有
する受光素子を備える光検出器であるが、光を受光した
際に、前記第1の電極と前記第2の電極との間に流れる
電流の変化の検出を容易にするために、前記受光素子
が、前記受光体に対して電気的に絶縁され、且つ、近接
する、第3の電極を有することが好ましい。
【0048】但し、当該近接とは、第3の電極に対して
電圧を印加した際に、該電圧の印加に応じて発生する電
場によって、前記受光体の静電ポテンシャルを変化さ
せ、第1の電極と、第2の電極と、の間に流れる電流量
を制御できることが可能であることを意味する。
【0049】図1は、本発明の光検出器に用いられる受
光素子の構成の一例を示す模式図であり、第1の本発明
の光検出器において好適に用いることができる。図1
(a)は、絶縁体基板表面に形成された受光素子を、該
絶縁体基板表面に対して垂直方向から見た模式図であ
り、図1(b)は、図1(a)において、記号Aおよび
記号A’間の模式断面図である。
【0050】図1中、受光素子10は、絶縁体基板16
表面に、第1の電極13と、第2の電極14と、の間
に、トンネル接合12によって接合された受光体11が
設けられ、受光体11に対して近接する位置に第3の電
極15が設けられている。なお、第1の電極13、第2
の電極14および第3の電極15は、必要に応じて絶縁
部材により覆われていてもよい。また、受光体11も、
少なくとも受光波長の波長域を透過することが可能な絶
縁部材により覆われていてもよい。
【0051】図1に示される受光素子10の構成は、い
わゆる単一電子トランジスタ(以下、「SET」と略す
場合がある)として知られているものであるが、本発明
においては、受光体11が、光を受光する機能と、受光
により受光体11内で発生した自己分極、即ち、静電ポ
テンシャルの変化を電気的に増幅して検出可能とする機
能と、を兼ね備えていることが、従来のSETと大きく
異なる点である。なお、SETにおいては、図1に示す
第1の電極13はソース電極、第2の電極14はドレイ
ン電極、第3の電極15はゲート電極と呼ばれるもので
ある(以下、第1の電極を「ソース電極」、第2の電極
を「ゲート電極」、第3の電極を「ゲート電極」、と表
現する場合がある)。
【0052】第1の本発明において、図1に示した受光
素子10を構成する受光体11は、相互に電荷の供受が
可能なように隣接する、光吸収体と、電荷受容体と、か
らなるものであり、その具体例を図2に示す。図2は、
第1本発明の光検出器に用いられる受光素子を構成する
受光体の構成例を示す模式図である。図2(a)〜
(c)において、受光体20は、相互に電荷の供受が可
能なように隣接(以下、図2の説明において「付着」あ
るいは「接合」と略す場合がある)する光吸収体21
と、電荷受容体22と、からなる。
【0053】図2(a)は、電荷受容体22表面に、1
種類以上および/または1個以上からなる光吸収体21
が付着した例であり、図2(b)は、ひとつの光吸収体
と、ひとつの電荷受容体22と、が接合した例であり、
図2(c)は、電荷受容体22中に、光吸収体21が、
含有されることにより、前者と、後者と、が接合した例
である。但し、第1の本発明に用いられる受光体は、図
2に示した例に限定されるものでは無く、少なくとも、
相互に電荷の供受が可能なように隣接する、光吸収体
と、電荷受容体と、からなるものであれば特に限定され
るものではない。
【0054】光吸収体21と、電荷受容体22と、は両
者の間で電荷が移動できる程度に隣接していればよい
が、両者が相互に強く吸着していることが好ましい。光
吸収体21は、図2(a)に示すように電荷受容体22
の表面に担持させても良いし、また、図2(c)電荷受
容体22の内部に光吸収体21を埋め込んでも良い。電
荷受容体22の表面に光吸収体21を担持させる方法と
しては、光吸収体21を分散・溶解させた溶液中に電荷
受容体22を浸漬させる自然吸着法や、電荷受容体22
表面に光吸収体21を化学的に固定する化学吸着法な
ど、公知の技術を利用できる。
【0055】第1の本発明の光検出器は、図1に示す受
光素子10のような構成を有するSETに限定されるも
のではなく、後述する受光素子のような構成を有するS
ETや、公知のSETからなるものを利用することがで
きる。たとえば、パターン化されたAlなどの金属やS
iなどの半導体膜と、その絶縁性酸化膜によるSET;
GaAs系などのヘテロ界面に形成される2次元電子ガ
スを、基板表面に設けたゲート電極により静電的にパタ
ーン化した、いわゆる表面ゲート型のSET;金属や半
導体の微粒子を量子ドットとし、金属または半導体を電
極として利用したタイプのSET、などである。
【0056】ソース電極13およびドレイン電極14を
構成する材料は、導電性を有するものであればよく、公
知の導電性材料であれば特に限定されない。このような
材料としては、金属または半導体が利用できる。金属と
しては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、In、S
n、Ag、Tiなどが挙げられ、これらは単独でも合金
でも良い。半導体としては、例えば、SiなどのIV族
半導体、GaAsなどのIII−V族半導体、ZnSe
などのII−VI族半導体などが挙げられる。また、ア
ントラセン、ペンタセン、ポリフェニレン、ポリフェニ
レンビニレン、ポリチオフェンなどのπ電子共役系を有
する有機導電性材料や、TTF−TCNQ(テトラチア
フルバレン−テトラシアノキノジメタン)などの電荷移
動錯体、あるいはカーボンナノチューブ、でもよい。
【0057】ソース電極13およびドレイン電極14
は、絶縁性の基板上に一般的に知られたパターニング手
法により形成することができる。また、走査型トンネル
電子顕微鏡(STM)に用いられる探針のように、針状
の導電性材料を支持体により中空に支持されたものであ
ってもよい。ゲート電極15についても、任意の公知の
導電性材料を利用できる。ソース電極13およびドレイ
ン電極14と同様に、金属、半導体、有機物等の導電性
材料を用いることができ、絶縁性基板上に形成、または
針状の電極を中空に支持して用いる。また、受光素子1
0を設ける面に絶縁層を有する導電性基板を用いる場合
は、この導電性基板をゲート電極15として用いること
も出来る。
【0058】絶縁体基板16は、少なくとも受光素子1
0を設ける面が非導電性を有していればよく、公知の絶
縁性材料あるいはドーパントを添加していない無ドープ
の半導体材料等を用いた基板、および、導電性基板の表
面に絶縁層あるいは無ドープの半導体層等からなる非導
電性層を設けた基板等が利用できる。絶縁体基板16
が、絶縁性材料あるいは無ドープ半導体材料のみからな
る場合には、たとえば、無ドープのSi、GaAs、S
iCなどのような非導電性半導体基板、非導電性あるい
は絶縁性のSiO2、ZnO、TiO2などの酸化物基
板、Si34などの窒化物基板等の絶縁性無機材料や、
ポリエチレンテレフタラートなどの絶縁性有機材料を利
用できる。
【0059】絶縁体基板16が、導電性材料からなる導
電性基板の表面に非導電性層を設けてなる場合には、公
知の導電性材料からなる基板の表面に、上記の絶縁性材
料や無ドープ半導体材料等からなる非導電性層が設けら
れる。例えば、ボロンをドープしたp型SiあるいはA
sをドープしたn型Siのような導電性のSi基板表面
に、非導電性層(絶縁層)としてSiO2層を形成した
ものや、Au基板(導電性基板)表面に、非導電性層
(絶縁層)としてチオール基を有する有機分子を吸着さ
せたSelf−Assembled Monolaye
r(SAM)と呼ばれる単分子膜を形成したもの、など
が挙げられる。
【0060】第1の本発明の光検出器に用いられる量子
ドットは、公知のものを利用できる。この量子ドット
は、ソース電極あるいはドレイン電極との間で電子が移
動するための、電子準位を有すれば足りるが、SETと
して動作するためには、量子ドットのサイズは小さいほ
ど好ましい。量子ドットのスケールは、その形状が、微
粒子等の3次元的なものである場合は、その最大長が、
1μm以下であることが好ましく、100nm以下であ
ることがより好ましく、10nm以下であることが更に
好ましい。特に、量子ドットが粒子状の酸化チタンから
なる場合には、粒径が好ましくは1nm〜1μmの範
囲、より好ましくは1nm〜10nmの範囲である酸化
チタン微粒子が好適に用いられる。
【0061】また、第1の本発明に用いられる、光吸収
体および電荷受容体は、量子ドットも含め公知の材料用
いることが出来るが、前者は光吸収効率が高い色素や有
機金属錯体が好ましく、後者は、電荷を一時的に受容す
る能力が高いことが好ましい。なお、第1の本発明に用
いられる光吸収体、電荷受容体、および、量子ドットの
具体例については後述する。
【0062】(第1の本発明の実施形態)第1の本発明
は、光吸収体および/または電荷受容体が、量子ドット
からなることが必要であるが、電荷受容体のみが、量
子ドットからなることが好ましい場合、光吸収体のみ
が、量子ドットからなることが好ましい場合について、
前記に対しては第1および第2の実施形態として、前
記に対しては第3および第4の実施形態として以下に
具体的に説明する。なお、第1〜第4の実施形態に共通
する要素については、既述したため省略する。
【0063】第1の実施形態は、受光体を構成する光吸
収体および電荷受容体のうち、該電荷受容体のみが量子
ドットからなる場合の第1の本発明の一例である。さら
に、第1の実施形態は、前記光吸収体が光を受光した際
の前記受光体の自己分極(および、自己分極による、静
電的ポテンシャルエネルギーの変化)の発生が、次のよ
うな動作原理に基づくところに特徴がある。
【0064】即ち、この動作原理とは、光吸収体の電子
非占有準位に光励起された電子が、この光吸収体の電子
非占有準位よりも低いエネルギー準位である電荷受容体
の電子非占有準位へ移動して一時的にトラップされるこ
とである。第1の実施形態の光検出器は、この時発生す
る自己分極を、第1の電極と、第2の電極と、の間に流
れる電流の変化として増幅・検出するものである。以下
に、上記の動作原理を詳細に説明する。
【0065】図3は、第1の本発明による光検出器の動
作原理の一例を示す概念図であり、第1の実施形態は、
図3に示す動作原理に基づき光を検出する。図3は、受
光体を構成する光吸収体および電荷受容体(即ち、第1
の実施形態においては量子ドット)の電子のエネルギー
準位、および、光吸収体が光を吸収した際の光吸収体
と、電荷受容体と、の間での電荷の供受を概念的に示し
たものである。図3(a)は、定常状態の場合、図3
(b)は、光吸収体が光を吸収することにより光励起が
発生した場合、図3(c)は、光励起した電子が、光吸
収体から電荷受容体へと移動して、電荷受容体に一時的
にトラップされた場合、図3(d)は、電荷受容体に一
時的にトラップされた電子が、再び光吸収体へと移動
し、定常状態に戻る場合、を示す概念図である。
【0066】また、図3中、実線で示される30は光吸
収体の電子占有準位、破線で示される31は光吸収体の
電子非占有準位、破線で示される32は電荷受容体の電
子非占有準位を示し、黒丸は電子、白丸は正孔を示し、
矢印は、光吸収体の電子占有準位30と、光吸収体の電
子非占有準位31と、電荷受容体の電子非占有準位32
と、の間の電子の移動が、光吸収体と、電荷受容体と、
の間の電子軌道の重なりを通して行われることを示すも
のである。
【0067】図3(a)において、定常状態では、光吸
収体の電子占有準位30に電子が存在する。ところが、
図3(b)に示したように、光吸収体が光を吸収した場
合は、光吸収体の電子占有準位30に存在する電子が、
矢印hν方向、即ち、光吸収体の電子非占有準位31に
光励起され、この際、光吸収体の電子占有準位30に正
孔が発生する。次に、図3(c)に示したように、光吸
収体の電子非占有準位31に光励起された電子が、矢印
T方向、即ち、電荷受容体の電子非占有準位32にトラ
ップされてエネルギー緩和する。
【0068】この際、光吸収体の電子占有準位30に正
孔が存在し、電荷受容体の電子非占有準位32に電子が
存在する、即ち、プラスの電荷と、マイナス電荷と、が
空間的に分離されてしまうために、受光体が自己分極す
る。その後、図3(d)に示したように、電荷受容体の
電子非占有準位32に一時的にトラップされていた電子
が、矢印R方向、即ち、光吸収体の電子占有準位30に
移動し、正孔と結合することにより、空間的な電荷の分
離が消失してしまうために、受光体の分極状態も消失す
る。
【0069】なお、第1の本発明は、上記した第1の実
施形態の例に限らず、受光体が光を受光した際に、空間
的に異なる位置を占める光吸収体と、電荷受容体と、が
一時的に相互に逆符号の電荷に帯電すると共にエネルギ
ー緩和が起こるために、自己分極することができる。
【0070】このように、光を受光した際に、受光体が
自己分極することにより、受光体近傍の静電ポテンシャ
ルが変化する。この際、図1に示す受光素子10におい
て、受光体11と、ソース電極13およびドレイン電極
14と、の間に形成されたトンネル接合部12のトンネ
ル確率が変化し、これが、ソース電極13と、ドレイン
電極14と、の間に流れる電流量を変化させる。この電
流量の変化は、図3(c)に示す、電荷の空間的な分離
状態が、図3(d)に示す、電子と正孔との再結合によ
り消失するまでの間、保持される。
【0071】すなわち、第1の実施形態の光検出器にお
いては、一つの光子の吸収によって、ソース電極13
と、ドレイン電極14と、の間の多数のキャリア輸送が
制御される。従って、第1の実施形態の光検出器は精度
の高い単一光子の検出を行うことができる。
【0072】また、光吸収体において、エネルギー的に
最も高い電子占有準位を、「PHO準位」、エネルギー
的に最も低い電子非占有準位を、「PLU準位」と表現
し、電荷受容体において、エネルギー的に最も低い電子
非占有準位を「CLU準位」と表現した場合において、
受光した際に高い確率で上記したような動作原理で受光
体11を自己分極させるためには、下式(1)の関係を
満たすことが好ましい。・式(1) PLU準位>CL
U準位>PHO準位なお、図3において、式(1)の関
係を適用した場合は、光吸収体の電子非占有準位31が
PLU準位に相当し、電荷受容体の電子非占有準位32
がCLU準位に相当し、光吸収体の電子占有準位30が
PHO準位に相当する。
【0073】次に、上記した一連の動作原理を、電流値
の変化として具体的に捉えた場合について説明する。図
4は、本発明による光検出器のゲート電圧と、ソース・
ドレイン電流との関係の一例を示す模式図であり、第1
の実施形態においては、光を検出した際に図4に示すよ
うな電流値の変化を示す。図4において、横軸がゲート
電圧(Vg)、縦軸がソース・ドレイン電流(I)を表
す。なお、ゲート電圧とは、例えば、光検出器に用いら
れる受光素子が、図1に示す受光素子10からなる場合
において、ゲート電極15に印加される電圧のことであ
る。同様に、ソース・ドレイン電流とは、ソース電極1
3と、ドレイン電極14と、の間に流れる電流のことで
ある。
【0074】図4において、実線で示されるゲート電圧
の増加に伴う、ソース・ドレイン電流のパルス状の鋭い
ピークは、クーロン閉塞の効果がゲート電圧に依存する
ことによって生じるクーロン振動と呼ばれる現象であ
り、本発明において第3の電極(ゲート電極)を有する
受光素子や、公知のSET素子において一般的に観察さ
れる現象である。第1の実施形態の光検出器において、
光を検出する際には、ソース電極と、ドレイン電極と、
の間の伝導度が極大になるようにゲート電圧を調整する
ことが好ましく、図4に示すように、定常状態におい
て、Vg=Vg1となるように調整されている。
【0075】上記したような状態で、第1の実施形態の
光検出器に光(光子)が入射すると、この光子は光吸収
体に吸収され、既述したような図3に示すプロセスによ
り、自己分極が発生する。この自己分極発生に伴う静電
ポテンシャルの変化により、実質的なゲート電圧は、V
g1からVg2へと、ΔVg12だけ減少し、この結果、ソー
ス・ドレイン電流は図4のΔI12だけ減少する。
【0076】このソース・ドレイン電流の変化した状態
は、光子吸収により発生した自己分極が、図3(d)に
示すように空間的に分離した電子と、正孔と、が再結合
によって消失するまでの間保持される。このため、この
ような単一光子の吸収がソース・ドレイン電流のパルス
状の変動として測定される。なお、自己分極が保持され
る時間は、量子ドットからなる電荷受容体と、光吸収体
と、の組み合わせによって異なるが、およそ1ns〜1
0μsの範囲である。
【0077】第1の実施形態に用いられる電荷受容体、
即ち、量子ドットとして用いられる材料としては、たと
えば、Al、Auなどの金属、Si、GaAs、InA
sなどの無機半導体、ZnO、TiO2などの酸化物半
導体、アントラセンやテトラセンなどのπ電子共役系を
有する有機分子、フラーレン(C60)、などが適当な例
として挙げられる。
【0078】また、第1の実施形態に用いられる光吸収
体の材料としては、例えば、CuInSe、CuIn
S、GaAs、InPなどの直接遷移型半導体;アゾ系
色素、キノン系色素、シアニン系色素、カチオン系色
素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、クロ
ロフィル系色素、インジゴ発色系の色素、フルギド系色
素、分子間電荷移動錯体型の色素などの有機材料や有機
金属錯体などを挙げることが出来る。
【0079】第1の実施形態において、受光体を構成す
る電荷受容体(量子ドット)と、光吸収体と、を構成す
る材料の組合せは、図3(a)に示すように、電荷受容
体の電子非占有準位32よりも、光吸収体の電子非占有
準位31の方が、エネルギーが高いことが必要であり、
さらに、既述した式(1)の関係を満たすことが好まし
い。このような条件を満たす材料の組合せ例を表1に示
す。
【0080】
【表1】
【0081】なお、電荷受容体(量子ドット)として用
いられる材料としては、表1に示したような太陽電池に
利用されるようなTiO2、SnO2、In23、Nb2
5、ZnO、CdSや、電子写真に利用されるような
PVK(ポリ−N−ビニルカルバゾール)や、銀塩写真
に利用されるようなAgBr等のハロゲン化銀や、その
他の材料が用いられる。表1においては、電荷受容体と
して微粒子状の酸化チタンからなる量子ドットと、光吸
収体として化学式1に示すRu錯体と、からなる組み合
わせが特に好ましい例として挙げられる。但し、第1の
実施形態の、電荷受容体(量子ドット)と、光吸収体
と、の組合せは、表1に示した例に限定されるものでは
なく、上記した条件を満たすものであれば特に限定され
ない。
【0082】
【化1】
【0083】第2の実施形態は、受光体を構成する光吸
収体および電荷受容体のうち、該電荷受容体のみが量子
ドットからなる場合の第1の本発明の他の例である。さ
らに、第2の実施形態は、前記光吸収体が光を受光した
際の前記受光体の一時的な自己分極(および、自己分極
による、静電的ポテンシャルエネルギーの変化)の発生
が、次ぎのような動作原理に基づくところに特徴があ
る。
【0084】即ち、この動作原理とは、光励起により光
吸収体の電子占有準位に発生した正孔に、この光吸収体
の電子占有準位よりも高いエネルギー準位である電荷受
容体の電子占有準位の電子が移動し、この電荷受容体の
電子占有準位に一時的に正孔が発生することである。第
2の実施形態の光検出器は、この時発生する自己分極
を、第1の電極と、第2の電極と、の間に流れる電流の
変化として増幅・検出するものである。以下に、上記の
動作原理を詳細に説明する。
【0085】図5は、第1の本発明による光検出器の動
作原理の他の例を示す概念図であり、第2の実施形態
は、図5に示す動作原理に基づき光を検出する。図5
は、受光体を構成する光吸収体および電荷受容体(即
ち、第2の実施形態においては量子ドット)の電子のエ
ネルギー準位、および、光吸収体が光を吸収した際の光
吸収体と、電荷受容体と、の間での電荷の供受を模式的
に示したものである。図5(a)は、定常状態の場合、
図5(b)は、光吸収体が光を吸収することにより光励
起が発生した場合、図5(c)は、光励起により発生し
た正孔が、電荷受容体の電子を引き抜き、電荷受容体に
一時的に正孔が発生した場合、図5(d)は、電荷受容
体に一時的に発生した正孔が、励起した光吸収体の電子
を引き抜くことにより、再び定常状態に戻る場合、を示
している。
【0086】また、図5中、実線で示される50は光吸
収体の電子占有準位、破線で示される51は光吸収体の
電子非占有準位、実線で示される52は電荷受容体の電
子占有準位を示し、黒丸は電子、白丸は正孔を示し、矢
印は、光吸収体の電子占有準位50と、光吸収体の電子
非占有準位51と、電荷受容体の電子占有準位52と、
の間の電子の移動が、光吸収体と、電荷受容体と、の間
の電子軌道の重なりを通して行われることを示すもので
ある。
【0087】図5(a)において、定常状態では、光吸
収体の電子占有準位50に電子が存在する。ところが、
図5(b)に示したように、光吸収体が光を吸収した場
合は、光吸収体の電子占有準位50に存在する電子が、
矢印hν方向、即ち、光吸収体の電子非占有準位51に
光励起され、この際、光吸収体の電子占有準位50に正
孔が発生する。次に、図5(c)に示したように、電荷
受容体の電子占有準位52の電子が、矢印T方向、即
ち、光吸収体の電子占有準位50の正孔に引き抜かれる
ことにより、電荷受容体の電子占有準位52に正孔が発
生してエネルギー緩和する。
【0088】この際、光吸収体の電子非占有準位51に
電子が存在し、電荷受容体の電子占有準位52に正孔が
存在する、即ち、プラスの電荷と、マイナス電荷と、が
空間的に分離されてしまうために、受光体が自己分極す
る。その後、図3(d)に示したように、光吸収体の電
子非占有準位51に一時的にトラップされていた電子
が、矢印R方向、即ち、電荷受容体の電子占有準位52
に引き抜かれ、正孔と結合することにより、空間的な電
荷の分離が消失してしまうために、受光体の分極状態も
消失する。
【0089】このように、光を受光した際に、受光体が
自己分極することにより、受光体近傍の静電ポテンシャ
ルが変化する。この際、図1に示す受光素子10におい
て、受光体11と、ソース電極13およびドレイン電極
14と、の間に形成されたトンネル接合部12のトンネ
ル確率が変化し、これが、ソース電極13と、ドレイン
電極14と、の間に流れる電流量を変化させる。この電
流量の変化は、図5(c)に示す、電荷の空間的な分離
状態が、図5(d)に示す、電子と正孔との再結合によ
り消失するまでの間、保持される。
【0090】すなわち、第2の実施形態の光検出器にお
いては、一つの光子の吸収によって、ソース電極13
と、ドレイン電極14と、の間の多数のキャリア輸送が
制御される。従って、第2の実施形態の光検出器は精度
の高い単一光子の検出を行うことができる。
【0091】また、既述したような、光吸収体のPHO
準位およびPLU準位に加えて、電荷受容体において、
エネルギー的に最も高い電子占有準位を、「CHO準
位」と表現した場合において、受光した際に高い確率で
上記したような動作原理で受光体11を自己分極させる
ためには、下式(2)の関係を満たすことが好ましい。
・式(2) PLU準位>CHO準位>PHO準位な
お、図5において、式(2)の関係を適用した場合は、
光吸収体の電子非占有準位51がPLU準位に相当し、
電荷受容体の電子占有準位52がCHO準位に相当し、
光吸収体の電子占有準位50がPHO準位に相当する。
【0092】次に、上記した一連の動作原理を、電流値
の変化として具体的に捉えた場合について説明する。図
6は、本発明による光検出器のゲート電圧と、ソース・
ドレイン電流との関係の他の例を示す模式図であり、第
2の実施形態においては、光を検出した際に図6に示す
ような電流値の変化を示す。図6において、横軸がゲー
ト電圧(Vg)、縦軸がソース・ドレイン電流(I)を
表す。第2の実施形態の光検出器において、光を検出す
る際には、ソース電極と、ドレイン電極と、の間の伝導
度が極大になるようにゲート電圧を調整することが好ま
しく、図6に示すように、定常状態において、Vg=V
g1となるように調整されている。
【0093】上記したような状態で、第2の実施形態の
光検出器に光(光子)が入射すると、この光子は光吸収
体に吸収され、図5に既述したようなプロセスにより、
自己分極が発生する。この自己分極発生に伴う静電ポテ
ンシャルの変化により、実質的なゲート電圧は、Vg1
らVg2へと、ΔVg12だけ増加し、この結果、ソース・
ドレイン電流は図6のΔI12だけ減少する。
【0094】このソース・ドレイン電流の変化した状態
は、光子吸収により発生した自己分極が、図5(d)に
示すように空間的に分離した電子と、正孔と、が再結合
によって消失するまでの間保持される。このため、この
ような単一光子の吸収がソース・ドレイン電流のパルス
状の変動として測定される。なお、自己分極が保持され
る時間は、量子ドットからなる電荷受容体と、光吸収体
と、の組み合わせによって異なるが、およそ1ns〜1
0μsの範囲である。
【0095】第2の実施形態において、受光体を構成す
る電荷受容体(量子ドット)と、を構成する材料の組合
せは、図5(a)に示すように、電荷受容体の電子占有
準位52よりも、光吸収体の電子非占有準位51の方
が、エネルギーが高いことが必要であり、さらに、既述
した式(2)の関係を満たすことが好ましい。このよう
な条件を満たす材料の組合せ例を表2に示す。なお、電
荷受容体(量子ドット)として用いられる材料として
は、表1に示したような太陽電池に利用されるようなN
iO、p−GaP、Al、Ptが好適に用いられる。但
し、第2の実施形態の、電荷受容体(量子ドット)と、
光吸収体と、の組合せは、表1に示した例に限定される
ものではなく、上記した条件を満たすものであれば特に
限定されない。
【0096】
【表2】
【0097】第3の実施形態は、受光体を構成する光吸
収体および電荷受容体のうち、該光吸収体のみが量子ド
ットからなる場合の第1の本発明の一例である。さら
に、第3の実施形態は、前記光吸収体が光を受光した際
の前記受光体の一時的な自己分極(および、自己分極に
よる、静電的ポテンシャルエネルギーの変化)の発生
が、次ぎのような動作原理に基づくところに特徴があ
る。
【0098】即ち、この動作原理とは、光吸収体の電子
非占有準位に光励起された電子が、この光吸収体の電子
非占有準位よりも低いエネルギー準位である電荷受容体
の電子非占有準位へ移動して一時的にトラップされるこ
とである。第3の実施形態の光検出器は、この時発生す
る自己分極を、第1の電極と、第2の電極と、の間に流
れる電流の変化として増幅・検出するものである。
【0099】その詳細な動作原理は、既述した、第1の
実施形態の動作原理を説明する図3を用いて同様に説明
できるが、第3の実施形態においては、図3に示す光吸
収体が量子ドットからなり、電荷受容体が量子ドット以
外の物質から構成される。
【0100】すなわち、第3の実施形態の光検出器にお
いては、一つの光子の吸収によって、ソース電極13
と、ドレイン電極14と、の間の多数のキャリア輸送が
制御される。従って、第3の実施形態の光検出器は精度
の高い単一光子の検出を行うことができる。また、受光
した際に高い確率で上記したような動作原理で受光体1
1を自己分極させるためには、既述した式(1)の関係
を満たすことが好ましい。
【0101】また、上記した一連の動作原理を、電流値
の変化として具体的に捉えた場合には、既述した、第2
の実施形態の動作原理を説明する図6を用いて説明でき
る。第3の実施形態の光検出器において、光を検出する
際には、ソース電極と、ドレイン電極と、の間の伝導度
が極大になるようにゲート電圧を調整することが好まし
く、図6に示すように、定常状態において、Vg=Vg1
となるように調整されている。
【0102】上記したような状態で、第2の実施形態の
光検出器に光(光子)が入射すると、この光子は光吸収
体に吸収され、既述したような図3に示すプロセスによ
り、自己分極が発生する。この自己分極発生に伴う静電
ポテンシャルの変化により、実質的なゲート電圧は、V
g1からVg2へと、ΔVg12だけ増加し、この結果、ソー
ス・ドレイン電流は図6のΔI12だけ減少する。
【0103】このソース・ドレイン電流の変化した状態
は、光子吸収により形成された自己分極が、図3(d)
に示すように空間的に分離した電子と、正孔と、が再結
合によって消失するまでの間保持される。このため、こ
のような単一光子の吸収がソース・ドレイン電流のパル
ス状の変動として測定される。なお、自己分極が保持さ
れる時間は、量子ドットからなる電荷受容体と、光吸収
体と、の組み合わせによって異なるが、およそ1ns〜
10μsの範囲である。
【0104】第3の実施形態において、受光体を構成す
る電荷受容体と、光吸収体(量子ドット)と、を構成す
る材料の組合せは、図3(a)に示すように、電荷受容
体の電子非占有準位32よりも、光吸収体の電子非占有
準位31の方が、エネルギーが高いことが必要であり、
さらに、既述した式(1)の関係を満たすことが好まし
い。
【0105】第3の実施形態に用いられる光吸収体、即
ち、量子ドットは、光吸収体としての機能を兼有する必
要があるため、GaAs、InP、CdS、CdTe、
CuInSe2、CuInS2等の半導体、クロロフィル
分子やチアジン系色素分子(例えば、チオニン、メチレ
ンブルー、トルイジンブルー等)等の有機物・有機材料
を用いることが好ましい。
【0106】また、電荷受容体としては、図3に示すよ
うに電子を一時的に受容することが必要であるため、ニ
トロ基・シアノ基などの電子吸引性基を有する有機化合
物;NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
リン酸)、アズレン、アリルチオ硫酸等の有機化合物
や、仕事関数の大きな金属あるいは半導体;Pb、P
d、Ni、W、NiO、WO2、ZnO等などを用いる
ことが好ましい。
【0107】上記に列挙したような材料において、電荷
受容体と、光吸収体(量子ドット)と、の好ましい組合
せ例を表3に示す。但し、第3の実施形態の、電荷受容
体と、光吸収体(量子ドット)と、の組合せは、表3に
示した例に限定されるものではなく、上記した条件を満
たすものであれば特に限定されない。
【0108】
【表3】
【0109】第4の実施形態は、受光体を構成する光吸
収体および電荷受容体のうち、該光吸収体のみが量子ド
ットからなる場合の第1の本発明の他の例である。さら
に、第4の実施形態は、前記光吸収体が光を受光した際
の前記受光体の自己分極(および、自己分極による、静
電的ポテンシャルエネルギーの変化)の発生が、次ぎの
ような動作原理に基づくところに特徴がある。
【0110】即ち、この動作原理とは、光励起により光
吸収体の電子占有準位に発生した正孔に、この光吸収体
の電子占有準位よりも高いエネルギー準位である電荷受
容体の電子占有準位の電子が移動し、この電荷受容体の
電子占有準位に一時的に正孔が発生することである。第
2の実施形態の光検出器は、この時発生する自己分極
を、第1の電極と、第2の電極と、の間に流れる電流の
変化として増幅・検出するものである
【0111】その詳細な動作原理は、既述した、第2の
実施形態の動作原理を説明する図5を用いて同様に説明
できるが、第4の実施形態においては、図5に示す光吸
収体が量子ドットからなり、電荷受容体が量子ドット以
外の物質から構成される。
【0112】すなわち、第4の実施形態の光検出器にお
いては、一つの光子の吸収によって、ソース電極13
と、ドレイン電極14と、の間の多数のキャリア輸送が
制御される。従って、第4の実施形態の光検出器は精度
の高い単一光子の検出を行うことができる。また、受光
した際に高い確率で上記したような動作原理で受光体1
1を自己分極させるためには、既述した式(2)の関係
を満たすことが好ましい。
【0113】また、上記した一連の動作原理を、電流値
の変化として具体的に捉えた場合には、既述した、第1
の実施形態の動作原理を説明する図4を用いて説明でき
る。第4の実施形態の光検出器において、光を検出する
際には、ソース電極と、ドレイン電極と、の間の伝導度
が極大になるようにゲート電圧を調整することが好まし
く、図4に示すように、定常状態において、Vg=Vg1
となるように調整されている。
【0114】上記したような状態で、第4の実施形態の
光検出器に光(光子)が入射すると、この光子は光吸収
体に吸収され、図5に既述したようなプロセスにより、
自己分極が発生する。この自己分極発生に伴う静電ポテ
ンシャルの変化により、実質的なゲート電圧は、Vg1
らVg2へと、ΔVg12だけ減少し、この結果、ソース・
ドレイン電流は図4のΔI12だけ増加する。
【0115】このソース・ドレイン電流の変化した状態
は、光子吸収により形成された自己分極が、図5(d)
に示すように空間的に分離した電子と、正孔と、が再結
合によって消失するまでの間保持される。このため、こ
のような単一光子の吸収がソース・ドレイン電流のパル
ス状の変動として測定される。なお、自己分極が保持さ
れる時間は、量子ドットからなる電荷受容体と、光吸収
体と、の組み合わせによって異なるが、およそ1ns〜
10μsの範囲である。
【0116】第4の実施形態において、受光体を構成す
る電荷受容体と、光吸収体(量子ドット)と、を構成す
る材料の組合せは、図5(a)に示すように、電荷受容
体の電子占有準位52よりも、光吸収体の電子非占有準
位51の方が、エネルギーが高いことが必要であり、さ
らに、既述した式(2)の関係を満たすことが好まし
い。
【0117】第4の実施形態に用いられる光吸収体、即
ち、量子ドットは、光吸収体としての機能を兼有する必
要があるため、GaAs、InP、CdS、CdTe、
CuInSe2、CuInS2等の半導体、クロロフィル
等の有機物・有機材料を用いることが好ましい。
【0118】また、電荷受容体としては、図5に示すよ
うに電子を一時的に放出して、正孔を発生させることが
必要であるため、アミノ基・ヒドロキシル基などの電子
供与性基を有する有機化合物;ADP(アデノシン−2
−リン酸)、C60等、仕事関数の小さな金属あるいは
半導体;Li、Ca、Mg、CaO、TiC、LaB 6
などを用いることが好ましい。
【0119】上記に列挙したような材料において、電荷
受容体と、光吸収体(量子ドット)と、の好ましい組合
せ例を表4に示す。但し、第4の実施形態の、電荷受容
体と、光吸収体(量子ドット)と、の組合せは、表4に
示した例に限定されるものではなく、上記した条件を満
たすものであれば特に限定されない。
【0120】
【表4】
【0121】(第2の本発明)第2の本発明は、帯電体
と、該帯電体とトンネル接合してなる第1の電極及び第
2の電極と、を有する受光素子を備える光検出器であっ
て、前記帯電体に近接する、光分極体を備え、該光分極
体が光を受光した際に、前記第1の電極と前記第2の電
極との間に流れる電流の変化を検出することを特徴とす
る。
【0122】第2の本発明において、「帯電体」とは、
第1の電極と、第2の電極と、にトンネル接合した量子
ドットからなり、この帯電体に近接する光分極体が自己
分極した際の該光分極体近傍の電場の変化を、前記帯電
体の静電ポテンシャルの変化として変換する機能を有す
るものである。
【0123】帯電体として用いられる量子ドットは、公
知のものであれば特に限定されるものではないが、金属
や半導体からなる微粒子が好ましく用いられる。さら
に、SETとして動作するためには、そのサイズは小さ
いほど好ましく、前記量子ドットのスケールは、その形
状が、微粒子等の3次元的なものである場合は、その最
大長が、1μm以下であることが好ましく、100nm
以下であることがより好ましく、10nm以下であるこ
とが更に好ましい。特に、量子ドットが粒子状の酸化チ
タンからなる場合には、粒径が好ましくは1nm〜1μ
mの範囲、より好ましくは1nm〜10nmの範囲であ
る酸化チタン微粒子が好適に用いられる。
【0124】また、「光分極体」とは、光を受光(光子
を吸収)した際に自己分極することができる機能を必ず
有するものであり、さらに、前記帯電体に近接する位置
に設けられることが必要である。
【0125】但し、当該近接とは、帯電体と、光分極体
と、の最短距離が、前記光分極体が光子を吸収して自己
分極した際に発生する前記光分極体近傍の電場の変化
を、前記帯電体の静電ポテンシャルの変化として変換し
た際に、第1の電極と第2の電極との間に流れる電流の
変化として測定可能な範囲内にあることを意味する。帯
電体と、光分極体と、の最短距離は、10μm以下であ
ることが好ましく、100nm以下であることがより好
ましい。
【0126】更に、光分極体が、双極子モーメントによ
り自己分極するものである場合には、帯電体と、光分極
体と、が接触していることが更に好ましい。この場合、
例えば、帯電体である量子ドット表面に光分極体を担持
させてもよく、また、前記量子ドットの内部に光分極体
を含有させてもよい。
【0127】なお、光分極体が、その周囲との電荷の供
受が可能な物質である場合は、前記光分極体の周囲は完
全に絶縁されていることが好ましい。この場合、帯電体
と、光分極体と、の最短距離は絶縁性を維持するため
に、少なくとも5nm以上の間隔を保つことが好まし
い。これにより、特に、電荷の空間的な分離により自己
分極する光分極体においては、この光分極体が光を受光
した際に自己分極の発生を確実なものとすることができ
る。
【0128】光分極体は、光を受光した際に自己分極す
るものであれば特に限定されないが、中でも好ましい例
として、分子内に電子供与性の基と電子吸引性の基とを
持つ分子内電荷移動型の発色系を有するアゾ系やキノン
系などの有機色素および有機金属錯体;カルバゾール類
などの電子供与性の分子と、ナフトキノンなどの電子吸
引性の分子とを組み合わせた分子間電荷移動錯体、を挙
げることが出来る。また、光分極体の光吸収効率が高い
ことが好ましく、このような物質として、以下に示す化
学式2および化学式3のような有機化合物やその誘導体
などが例示できる。なお、第1の本発明に用いられる受
光体を、光分極体として用いることもできる。
【0129】
【化2】
【0130】
【化3】
【0131】第2の本発明も、第1の本発明と同様に、
帯電体に対して、電気的に絶縁され、且つ、近接する第
3の電極(ゲート電極)を有することが好ましい。この
ような構成とすることにより、ゲート電圧を調整するこ
とにより、第1の電極(ソース電極)と、第2の電極
(ドレイン電極)と、の間に流れる電流量を制御するこ
とが可能である。
【0132】また、第2の本発明に用いられる受光素子
としては、例えば、第1の本発明と同様に、図1に示す
受光素子10のような構成を有するのであってもよい。
但し、図1における符号11は、第1の本発明において
は、受光体を意味するものであるが、第2の本発明にお
いては、帯電体と、光分極体と、が接触してなるもの
(以下、「帯電体・光分極体」と略す場合がある)であ
る。勿論、帯電体と、光分極体と、の最短距離が10μ
m以下の範囲内であれば、両者の間に間隔を設けて配置
してもよい。
【0133】なお、第2の本発明の光検出器は、第1の
本発明と同様に、図1に示す受光素子10のような構成
を有するSETに限定されるものではなく、後述する受
光素子のような構成を有するSETや、公知のSETか
らなるものを利用することができる。また、帯電体・光
分極体11を除き、受光素子10を構成するその他の部
分は、第1の本発明と同様のものを利用することができ
る。
【0134】第2の本発明においては、光を受光した際
の双極子モーメントの発生等により自己分極した光分極
体近傍の電場の変化を、量子ドットからなる帯電体の静
電ポテンシャルの変化として変換する。
【0135】このように、光を受光した際に、光分極体
が自己分極することにより、帯電体の静電ポテンシャル
が変化する。この際、図1に示す受光素子10におい
て、帯電体・光分極体11と、ソース電極13およびド
レイン電極14と、の間に形成されたトンネル接合部1
2のトンネル確率が変化し、これが、ソース電極13
と、ドレイン電極14と、の間に流れる電流量を変化さ
せる。
【0136】すなわち、第2の本発明の光検出器におい
ては、一つの光子の吸収によって、ソース電極13と、
ドレイン電極14と、の間の多数のキャリア輸送が制御
される。従って、第2の本発明の光検出器は精度の高い
単一光子の検出を行うことができる。
【0137】また、上記した一連の動作を、電流値の変
化として具体的に捉えた場合、例えば、図4に示す第1
の本発明の第1の実施形態と同様の変化を示す。具体的
に説明すると、第2の本発明の光検出器において、光を
検出する際には、ソース電極と、ドレイン電極と、の間
の伝導度が極大になるようにゲート電圧を調整すること
が好ましく、図4に示すように、定常状態において、V
g=Vg1となるように調整されている。
【0138】上記したような状態で、第2の本発明の光
検出器に光(光子)が入射すると、この光子は光吸収体
に吸収され、既述したような双極子モーメントの発生に
より、自己分極が発生する。この自己分極発生に伴う静
電ポテンシャルの変化により、実質的なゲート電圧は、
g1からVg2へと、ΔVg12だけ減少し、この結果、ソ
ース・ドレイン電流は図4のΔI12だけ減少する。
【0139】このソース・ドレイン電流の変化した状態
は、双極子モーメントの発生に起因する自己分極が消失
するまでの間保持される。このため、このような単一光
子の吸収がソース・ドレイン電流のパルス状の変動とし
て測定される。なお、自己分極が保持される時間は、光
分極体の構成によって異なるが、およそ1ns〜10μ
sの範囲である。このようなソース・ドレイン電流の変
化は、第2の本発明に用いる帯電体および光分極体の組
合せによっては、図6に示す第1の本発明の第2の実施
形態のような挙動を示す場合もある。
【0140】第2の本発明は、自己分極が可能な光分極
体を用いているために、分極発生部と、分極感応部と、
からなる従来のSETを用いた光検出器のように、前記
分極発生部において発生した分極状態の寿命を延ばすた
めの磁場や電場等の外部刺激が不要である。また、光分
極体として利用する材料を選択することにより、所望の
波長帯の光を検出することができる光検出器を作製する
ことができる。
【0141】さらに、第2の本発明は、第1の本発明と
比べ、自己分極発生部と、分極感応部と、が空間的に分
離独立して機能することが可能であるため、前者と、後
者と、が空間的に分離可能であるところに特徴がある。
このため、必要に応じて、自己分極発生部を、2つの電
極とトンネル接合した量子ドットからなる帯電体から離
して設置した受光素子を作製することが可能である。
【0142】(本発明の光検出器に用いられる受光素子
の構成)本発明の光検出器に用いられる受光素子の構成
は、図1に示す受光素子10に限定されるものではな
く、第1の本発明においては、受光体と、該受光体とト
ンネル接合してなる第1の電極及び第2の電極と、から
なる受光素子であれば特に限定されるものではない。ま
た、第2の本発明においては、帯電体と、該帯電体とト
ンネル接合してなる第1の電極及び第2の電極と、から
なる受光素子において、前記帯電体に近接するように、
光分極体が設けられているものであれば特に限定される
ものではない。
【0143】図7は、本発明の光検出器に用いられる受
光素子の構成の他の例を示す模式図であり、図7(a)
は、絶縁体基板表面に形成された受光素子を、該絶縁体
基板表面に対して垂直方向から見た模式図であり、図7
(b)は、図7(a)において、記号Bおよび記号B’
間の模式断面図である。
【0144】第1の本発明において、図7の受光素子1
00は、絶縁体基板106表面に、第1の電極103
と、第2の電極104と、の間に、トンネル接合12に
よって接合された複数の受光体101が設けられ、受光
体101に対して近接する位置に第3の電極105が設
けられている。
【0145】なお、図7に示す受光素子100の符号1
01、102、103、104、105および106で
示される各々の構成部分は、図1に示す受光素子10の
符号11、12、13、14、15および16で示され
る各々の構成部分と同一の機能を有するものである。
【0146】図7に示す受光素子100は、図1に示す
受光素子10と比較すると、複数の受光体101を用い
ていることろに特徴がある。この場合、隣り合う受光体
101同志はトンネル接合していることが必要である。
なお、受光体101は、全て同じ構成を有するものであ
ってもよく、また、異なる構成を有するものであっても
よい。
【0147】なお、第2の本発明においては、図7中の
符号101は、帯電体と光分極体とが接合してなる帯電
体・光分極体からなるものであり、符号101が帯電体
のみから構成される場合は、符号101に近接する位置
に光分極体が設けられる。なお、この符号101部分お
よび/またはこれに近接する範囲内の構成の違いを除け
ば、その他の構成については、上記した第1の本発明の
場合と同様である。
【0148】
【実施例】以下に本発明を実施例を挙げてより具体的に
説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるも
のではない。
【0149】(実施例1)量子ドットからなる電荷受容
体として酸化チタン微粒子(Solaronix社、平
均粒径約10nm)を分散させたエタノール溶液中に、
光吸収体として化学式1に示すRu錯体を、濃度が0.
3mmol/lとなるように加え、この溶液を12時間
攪拌しながら保持することにより、酸化チタン微粒子の
表面にRu錯体を吸着させた受光体を分散させたエタノ
ール溶液を得た。
【0150】得られた受光体に用いられた電荷受容体
(量子ドット)および光吸収体は以下のような物性を有
するものである。すなわち、電荷受容体(量子ドット)
として用いた酸化チタン微粒子は、光を受光してもそれ
自体では自己分極することができないものである。ま
た、光吸収体は図8に示すような光吸収特性を有するも
のである。
【0151】図8は、実施例1に示す本発明に用いられ
る光吸収体(Ru錯体)をエタノール中に分散させた溶
液の光吸収スペクトルである。図8からわかるように、
光吸収体として用いるRu錯体は波長400nmおよび
538nm近辺に強い光吸収ピークを有するものであ
る。なお、Ru錯体がその表面に吸着した酸化チタン微
粒子においては、Ru錯体の光吸収により励起した電子
がRu錯体から酸化チタン微粒子に移動することが報告
されている(Journal of Physical
Chemistry Vol.100,p20056
−20062(1996)等)。
【0152】次に、実施例1に用いる光検出器の電極付
き基板について示す。図9は、実施例1に示す本発明の
光検出器の電極付き基板の模式図を示したものである。
図9(a)は絶縁体基板表面に対して垂直方向から見た
場合の模式図を、図9(b)は、図9(a)において、
記号Cおよび記号C’間の模式断面図を示したものであ
る。図9において、電極付き基板は、ゲート電極を兼ね
る導電性基板であるボロンドープp型シリコン基板20
5表面に設けられた厚みが100nmの絶縁性シリコン
酸化膜206上に、ソース電極としてAu電極203
と、ドレイン電極としてAu電極204と、を設てなる
ものである。Au電極203およびAu電極204の厚
みは約20nmであり、Au電極203およびAu電極
204と、絶縁性シリコン酸化膜206と、の間には接
着層としてNiとCrとの原子数比が8:2であるNi
−Cr接着層207および208が設けられている。ま
た、Au電極203と、Au電極204と、の最短距離
部分(以下、「電極ギャップ部」と略す)の間隔は約1
5nmである。
【0153】図9に示す電極付き基板は、ボロンドープ
p型シリコン基板205の絶縁性シリコン酸化膜206
が形成された面に、電子線リソグラフィー法によりAu
電極203およびAu電極204を形成することにより
作製した。電子線リソグラフィーにおいては、PMMA
(ポリメチルメタクルレート)レジストマスクを使用
し、露光・現像後に真空蒸着法によりNi−Cr膜およ
びAu膜を順次斜め蒸着し、その後リフトオフにより未
露光のPMMAレジストマスクを除去した。なお、図9
に示す電極付き基板を構成する符号203、204、2
05および206は、図1に示す光学素子10を構成す
る符号13、14、15および16と同等の機能を有す
るものである。
【0154】このようにして作製した電極付き基板を、
濃度が1mmol/lの16−mercaptohex
adecanoic acid(HS(CH215CO2
H)のアルコール溶液に12時間浸漬した。16−me
rcaptohexadecanoic acidは、
その一端にチオール基が、他の一端にはカルボキシル基
を有する直鎖状の有機分子であり、その分子長は約2n
mである。この浸漬処理において、該有機分子のチオー
ル基がAu電極203およびAu電極204表面にのみ
選択的に吸着し、Au電極203およびAu電極204
表面には、前記有機分子のカルボキシル基が表面に並ん
だ16−mercaptohexadecanoic
acidの自己組織化膜(Self Assemble
d Monolayer、以下、「SAM」と略す)が
形成される。
【0155】その後、Au電極203およびAu電極2
04表面にSAMが形成された電極付き基板を、先に得
られた受光体を分散させたエタノール溶液中に、12時
間浸漬した。この浸漬処理によりAu電極203および
Au電極204の表面を覆うSAMの表面のカルボキシ
ル基と、受光体を構成する酸化チタン微粒子と、が選択
的に結合し、Au電極203、Au電極204表面およ
び電極ギャップ部に受光体が吸着・固定される。
【0156】このようにして、図8に示す電極付き基板
の電極ギャップ部に、絶縁性のSAMを介して、Au電
極203およびAu電極204にトンネル接合した受光
体を設けた、いわゆる単一電子トランジスタの構造を有
する、実施例1の光検出器(光検出器1)を作製した。
【0157】光検出器1を用いた光の測定は、ソース電
極であるAu電極203、ドレイン電極であるAu電極
204およびゲート電極であるボロンドープp型シリコ
ン基板205に対して以下のように電源と電流計とを接
続することにより実施した。まず、ソース電極203
と、ドレイン電極204と、の間に定電圧源を接続し、
ゲート電極205と、ドレイン電極204と、の間に定
電圧源を接続した。さらに、ソース電極203と、ドレ
イン電極204と、の間の回路には、オペアンプを用い
た直流電流計を挿入した。次に、ソース電極203と、
ドレイン電極204と、の間に−500mV〜+500
mVの範囲内、典型的には+150mV程度の定電圧を
印加し、ゲート電極205と、ドレイン電極204と、
の間に−5000mV〜+5000mVの範囲内、典型
的には+1500mV程度の定電圧を印加した状態で、
光検出器1に光が照射された際のソース・ドレイン電流
の変化を観測した。
【0158】光検出器1は、温度77Kにおいて、クー
ロン振動現象が明瞭に観測され、また波長540nmの
光を照射したところ、光照射によりソース・ドレイン電
流にパルス状の変動が生じることを観測した。また、温
度300Kにおいても、波長540nmの光照射による
ソース・ドレイン電流のパルス状の変動を観測した。
【0159】以上の結果から、光検出器1においては、
光励起されたRu錯体中の電子が酸化チタン微粒子に一
時的にトラップされることにより、ソース・ドレイン電
流にパルス状の変動が生じ、これにより、単一の光子の
検出が可能であることが確認された。
【0160】(実施例2)実施例1の受光体の作製工程
において、Ru錯体の代わりに、化学式4に示すクマリ
ン343(Coumarin343)を用いたことを除
き、実施例1と同様にして、実施例2の光検出器(光検
出器2)を作成した。なお、クマリン343は、波長4
00nm近辺に強い光吸収を示す物質である。実施例1
と同様に測定を実施したところ、光検出器2は、温度7
7Kにおいてクーロン振動現象が明瞭に観測され、また
波長400nmの光を照射したところ、光照射によりソ
ース・ドレイン電流にパルス状の変動が生じることを観
測した。
【0161】
【化4】
【0162】以上の結果から、光検出器2においては、
光励起されたクマリン343中の電子が酸化チタン微粒
子に一時的にトラップされることにより、ソース・ドレ
イン電流にパルス状の変動が生じ、これにより、単一の
光子の検出が可能であることが確認された。
【0163】(実施例3)実施例1の受光体の作製工程
において、Ru錯体の代わりに、化学式5に示すZnP
c(テトラカルボキシ亜鉛フタロシアニン)を用いたこ
とを除き、実施例1と同様にして、実施例3の光検出器
(光検出器3)を作成した。なお、ZnPcは、波長6
90nm近辺に強い光吸収ピークを有する物質である。
実施例1と同様に測定を実施したところ、光検出器3
は、温度77Kにおいてクーロン振動現象が明瞭に観測
され、また波長700nmの光を照射したところ、光照
射によりソース・ドレイン電流にパルス状の変動が生じ
ることを観測した。
【0164】
【化5】
【0165】以上の結果から、光検出器3においては、
光励起されたZnPc中の電子が酸化チタン微粒子に一
時的にトラップされることにより、ソース・ドレイン電
流にパルス状の変動が生じ、これにより、単一の光子の
検出が可能であることが確認された。
【0166】(実施例4)量子ドットからなる帯電体と
して酸化チタン微粒子(Solaronix社、平均粒
径約10nm)を分散させたエタノール溶液中に、光分
極体として化学式6に示すアゾ系色素を、濃度が0.3
mmol/lとなるように加え、この溶液を12時間攪
拌しながら保持することにより、酸化チタン微粒子の表
面にアゾ系色素を吸着させてなる帯電体・光分極体を分
散させたエタノール溶液を得た。なお、化学式6に示す
アゾ系色素は、波長500nm近辺に強い光吸収ピーク
を有する物質である。
【0167】
【化6】
【0168】その後、実施例1において、受光体の代わ
りに、上記の帯電体・光分極体を用いたことを除き、実
施例1と同様にして、実施例4の光検出器(光検出器
4)を作製した。実施例1と同様に測定を実施したとこ
ろ、光検出器4は、温度77Kにおいてクーロン振動現
象が明瞭に観測され、また波長500nmの光を照射し
たところ、光照射によりソース・ドレイン電流にパルス
状の変動が生じることを観測した。
【0169】以上の結果から、光検出器4においては、
光を受光した際に自己分極したアゾ系色素近傍の電場の
変化を、酸化チタン微粒子からなる帯電体の静電ポテン
シャルの変化として変換することにより、ソース・ドレ
イン電流にパルス状の変動が生じ、これにより、単一の
光子の検出が可能であることが確認された。
【0170】(比較例1)実施例1〜4の受光体あるい
は帯電体・光分極体の作製工程において、酸化チタン微
粒子(Solaronix社、平均粒径約10nm)か
らなる量子ドットのみを用いたエタノール溶液を作製し
たことを除いて、実施例1と同様にして、比較例1の光
検出器Aを作成した。実施例1と同様に測定を実施した
ところ、光検出器Aは、温度77Kにおいてクーロン振
動現象が明瞭に観測されたが、波長540nmの光の照
射によるソース・ドレイン電流のパルス状の変動は観測
されなかった。従って、比較例1の光検出器Aでは単一
の光子の検出が出来ないことが確認された。
【0171】
【発明の効果】以上に説明したように本発明によれば、
光検出素子の構造が簡素であり、光子のカウントお
よび超微弱光の検出が可能であり、受光波長の波長帯
の設計(ピーク中心波長、受光波長の幅)が容易であ
り、磁場や極低温度などの特殊な動作環境を必要とし
ない等、実用上、極めて優れた光検出器を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光検出器に用いられる受光素子の構
成の一例を示す模式図であり、図1(a)は、絶縁体基
板表面に形成された受光素子を、該絶縁体基板表面に対
して垂直方向から見た模式図であり、図1(b)は、図
1(a)において、記号Aおよび記号A’間の模式断面
図である。
【図2】 第1の本発明の光検出器に用いられる受光素
子を構成する受光体の構成例を示す模式図であり、図2
(a)は、電荷受容体22表面に、1種類以上および/
または1個以上からなる光吸収体21が付着した例であ
り、図2(b)は、ひとつの光吸収体21と、ひとつの
電荷受容体22と、が接合した例であり、図2(c)
は、電荷受容体22中に、光吸収体21が、含有される
ことにより、前者と、後者と、が接合した例である。
【図3】 第1の本発明による光検出器の動作原理の一
例を示す概念図であり、図3(a)は、定常状態の場
合、図3(b)は、光吸収体が光を吸収することにより
光励起が発生した場合、図3(c)は、光励起した電子
が、光吸収体から電荷受容体へと移動して、電荷受容体
に一時的にトラップされた場合、図3(d)は、電荷受
容体に一時的にトラップされた電子が、再び光吸収体へ
と移動し、定常状態に戻る場合、を示す。
【図4】 本発明による光検出器のゲート電圧と、ソー
ス・ドレイン電流との関係の一例を示す模式図である。
【図5】 第1の本発明による光検出器の動作原理の他
の例を示す概念図であり、図5(a)は、定常状態の場
合、図5(b)は、光吸収体が光を吸収することにより
光励起が発生した場合、図5(c)は、光励起により発
生した正孔が、電荷受容体の電子を引き抜き、電荷受容
体に一時的に正孔が発生した場合、図5(d)は、電荷
受容体に一時的に発生した正孔が、励起した光吸収体の
電子を引き抜くことにより、再び定常状態に戻る場合、
を示す。
【図6】 本発明による光検出器のゲート電圧と、ソー
ス・ドレイン電流との関係の他の例を示す模式図であ
る。
【図7】 本発明の光検出器に用いられる受光素子の構
成の他の例を示す模式図であり、図7(a)は、絶縁体
基板表面に形成された受光素子を、該絶縁体基板表面に
対して垂直方向から見た模式図であり、図7(b)は、
図7(a)において、記号Bおよび記号B’間の模式断
面図である。
【図8】 実施例1に示す本発明に用いられる光吸収体
(Ru錯体)をエタノール中に分散させた溶液の光吸収
スペクトルである。
【図9】 実施例1に示す本発明の光検出器の電極付き
基板の模式図であり、図9(a)は絶縁体基板表面に対
して垂直方向から見た場合の模式図を、図9(b)は、
図9(a)において、記号Cおよび記号C’間の模式断
面図である。
【符号の説明】
10 受光素子 11 受光体(第1の本発明)、帯電体・光分極体(第
2の本発明) 12 トンネル接合 13 第1の電極(ソース電極) 14 第2の電極(ドレイン電極) 15 第3の電極(ゲート電極) 16 絶縁体基板 20 受光体 21 光吸収体 22 電荷受容体 100 受光素子 101 受光体(第1の本発明)、帯電体・光分極体
(第2の本発明) 102 トンネル接合 103 第1の電極(ソース電極) 104 第2の電極(ドレイン電極) 105 第3の電極(ゲート電極) 106 絶縁体基板 203 Au電極(ソース電極) 204 Au電極(ドレイン電極) 205 ボロンドープp型シリコン基板(ゲート電極) 206 絶縁性シリコン酸化膜 207 Ni−Cr接着層 208 Ni−Cr接着層

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 受光体と、該受光体とトンネル接合して
    なる第1の電極及び第2の電極と、を有する受光素子を
    備える光検出器であって、 前記受光体が、相互に電荷の供受が可能なように隣接す
    る光吸収体と電荷受容体とからなり、 前記光吸収体および/または前記電荷受容体が、量子ド
    ットからなり、 前記光吸収体が光を受光した際に、前記第1の電極と前
    記第2の電極との間に流れる電流の変化を検出すること
    を特徴とする光検出器。
  2. 【請求項2】 前記光吸収体が、色素からなることを特
    徴とする請求項1に記載の光検出器。
  3. 【請求項3】 前記光吸収体が、有機金属錯体からなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
  4. 【請求項4】 前記量子ドットが、酸化チタン微粒子か
    らなることを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
  5. 【請求項5】 前記受光素子が、前記受光体に対して電
    気的に絶縁され、且つ、前記受光体に近接する、第3の
    電極を有することを特徴する請求項1〜4のいずれか1
    つに記載の光検出器。
  6. 【請求項6】 帯電体と、該帯電体とトンネル接合して
    なる第1の電極及び第2の電極と、を有する受光素子を
    備える光検出器であって、 前記帯電体に近接する、光分極体を備え、 該光分極体が光を受光した際に、前記第1の電極と前記
    第2の電極との間に流れる電流の変化を検出することを
    特徴とする光検出器。
  7. 【請求項7】前記光分極体が、相互に電荷の供受が可能
    なように隣接する光吸収体と電荷受容体とからなり、前
    記光吸収体および/または前記電荷受容体が量子ドット
    からなることを特徴とする請求項6に記載の光検出器。
  8. 【請求項8】 前記受光素子が、前記帯電体に対して電
    気的に絶縁され、且つ、前記帯電体に近接する、第3の
    電極を有することを特徴する請求項6または請求項7に
    記載の光検出器。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006210620A (ja) * 2005-01-27 2006-08-10 Hokkaido Univ 超高感度画像検出装置およびその製造方法
JP2008004791A (ja) * 2006-06-23 2008-01-10 Sony Corp 負性抵抗素子およびその製造方法ならびに単電子トンネル素子およびその製造方法ならびに光センサおよびその製造方法ならびに機能素子およびその製造方法
KR101059486B1 (ko) 2007-09-18 2011-08-25 한국과학기술원 나노 광 검출 소자 및 그 구동방법, 이를 구비한 이미지센서

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