JP2003232333A - 内燃機関の軸受装置 - Google Patents
内燃機関の軸受装置Info
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Abstract
える内燃機関に適用可能で、シリンダ軸線の傾斜角度に
依存することなく、クランク軸の振動に起因する内燃機
関の振動・騒音の低減し、端部主軸受の摩耗や損傷を抑
制する軸受装置を提供する。 【解決手段】 垂直線Lvに対して傾斜したシリンダ軸線
を有するシリンダを備える内燃機関において、クランク
軸5の両端部5a1,5b1を支持する1対の主軸受101,10
2は、それぞれ、分割面D1,D2により二分割された軸
受半体12,12からなるすべり軸受により構成される。分
割面D1,D2は、各主軸受101,102に隣接するシリン
ダのシリンダ軸線とほぼ直交する平面P1,P2上にあ
り、主軸受101,102に作用する最大荷重Wの方向とほ
ぼ一致するシリンダ軸線方向K1,K2に、クランク軸5
と主軸受101,102との間の最小間隙20iが形成され
る。
Description
筒内燃機関のクランク軸を回転自在に支持する複数の主
軸受を備える内燃機関の軸受装置に関し、詳細には、ク
ランク軸の両端部を支持する端部主軸受がすべり軸受か
ら構成される軸受装置に関する。
に支持する主軸受がすべり軸受から構成される場合、主
軸受に供給された高圧の潤滑油は、クランク軸と主軸受
との間に存する径方向の間隙を満たして油膜を形成し、
該油膜により、クランク軸は主軸受から浮き上がった状
態となって回転する。そのため、クランク軸は主軸受と
接触することが回避されて、クランク軸と主軸受との間
の摩擦が減少する。
が分割面03により二分割された半円筒状の軸受半体02,
02からなるすべり軸受から構成される場合、潤滑油が満
たされる前記間隙04(この図では、間隙04は誇張して描
かれている。)は、クランク軸05の回転軸線06と主軸受
01の内周面に内接する円の中心線07とを一致させた状態
(以下、「基準状態」という。)で、分割面03を含む平
面08上で最大間隙04aとなり、該平面08に直交すると共
に回転軸線06を含む平面09上で最小間隙04iとなるよう
に、周方向に徐々に変化するように設定される。そし
て、軸受半体02,02の周方向端部02a,02a;02b,02bに
は、その内周面側に面取りが施されて、クランク軸05と
主軸受01との間に更に付加的な間隙を形成するクラッシ
ュリリーフ04c,04cが設けられる。このクラッシュリリ
ーフ04c,04cにより、主軸受01が機関本体に組み付けら
れたとき、その組付け誤差等により、軸受半体02,02の
互いに突き合わされる周方向端部02a,02a;02b,02bが
径方向内方に突出してクランク軸05と接触することが防
止される。
受から構成される主軸受を備える内燃機関の軸受装置と
して、例えば特開平7−139539号公報および特公
平5−31039号公報に開示されたものが知られてい
る。
た軸受装置(以下、「軸受装置A」という。)は、垂直
線に対して所定角度だけ傾斜した中心軸線(シリンダ軸
線に相当)を有するシリンダを備える直列エンジンの主
軸を回転自在に支持する1対の半割型平主軸受を備え
る。該1対の半割型平主軸受の合せ面(分割面に相当)
は垂直線と直交する平面上にあり、その半割型平軸受の
偏心寸法が0.004mm以下に設定されて、軸受の内
面が真円に近づくようにしている。また、同公報には、
垂直線と合致する中心軸線を有するシリンダを備える直
列エンジンにおいて、1対の半割型平主軸受の合せ面
(分割面に相当)が、垂直線すなわち中心軸線と直交す
る平面上にある軸受装置(以下、「軸受装置B」とい
う。)も開示されている。
された軸受装置(以下、「軸受装置C」という。)は、
前気筒および後気筒を有するL型多気筒エンジンのクラ
ンク軸をクランクケースに回転自在に支持するすべり軸
受(主軸受に相当)を備える。軸受ハウジングと該軸受
ハウジングの内側に設けられるライニングとを備えるす
べり軸受は、前気筒および後気筒の中心線(シリンダ軸
線に相当)の側面視交角を二等分する線にほぼ直角な面
上にある分割面により二分割され、該すべり軸受を通る
ほぼ水平な割線により上下に分割可能とされたクランク
ケースに保持される。
を回転自在に支持するすべり軸受から構成される主軸受
には、ピストンに作用する爆発荷重および慣性力による
周期的な変動荷重が、ピストンからクランク軸を介して
加わる。この変動荷重により発生するクランク軸の振動
は、クランク軸と主軸受との間の間隙を満たす潤滑油の
油膜を介して主軸受に伝達され、さらに該主軸受を保持
するクランクケースなどの機関本体に伝達されて、内燃
機関の振動・騒音を発生させる原因となり、また主軸受
を摩耗させる原因となっている。そして、この振動・騒
音の発生および主軸受の摩耗に大きく影響するのは、燃
焼室での混合気の燃焼により周期的に発生して、変動荷
重のうちの最大荷重である爆発荷重であり、この爆発荷
重の方向は、シリンダのシリンダ軸線方向とほぼ一致す
る。
みると、軸受装置Cの主軸受では、前記基準状態で、ク
ランク軸の回転軸線を通るシリンダ軸線方向は、クラン
ク軸と主軸受との間の前記間隙のうちの最小間隙が存す
る方向から大きくずれているので、シリンダ軸線方向に
は比較的大きな前記間隙がある。そのため、シリンダ軸
線方向とほぼ同じ方向の前記最大荷重により、主軸受に
支持されるクランク軸の部分であるジャーナル部の曲げ
振動、すなわち振れ回りが大きくなって、この大きな振
動が油膜を介して主軸受を振動させる結果、振動・騒音
が発生し易く、しかも主軸受は摩耗し易くなっていた。
しかも、この軸受装置Cは、V型内燃機関の一種である
L型内燃機関のみを対象とするものであって、単気筒ま
たは直列多気筒内燃機関を対象とするものではない。
に開示された軸受装置Bでは、前記基準状態で、クラン
ク軸の回転軸線を通るシリンダ軸線方向に前記最小間隙
が存するため、軸受装置Cに比べて前記最大荷重に起因
するクランク軸の振動が低減されて、発生する振動・騒
音が低減され、主軸受の摩耗が抑制される。しかしなが
ら、この軸受装置Bは、主軸受の分割面を含む平面が垂
直線と直交するものであり、しかも軸受装置Bが使用さ
れる内燃機関も垂直線と合致するシリンダ軸線を有する
内燃機関に限られていて、V型内燃機関に代表されるよ
うに、垂直線に対して傾斜するシリンダ軸線を有するシ
リンダを備えた内燃機関への適用は考えられていない。
それゆえ、垂直線に対して傾斜したシリンダ軸線を有す
るシリンダを備える内燃機関に対しては、軸受装置Aが
案出されている。しかしながら、軸受装置Aでは、主軸
受の偏心寸法を設定するために高い加工精度が必要にな
ることから、その製造コストが高くなる難点がある。し
かも、シリンダ軸線の垂直線に対する傾斜角度が90°
付近の値になると、クランク軸の回転軸線を通るシリン
ダ軸線方向でのクランク軸と主軸受との前記間隙が大き
くなって、振動・騒音が発生し易く、主軸受が摩耗し易
くなるうえ、前記最大荷重が、主軸受の分割面の近傍部
分のクラッシュリリーフに作用すると、場合によって
は、該分割面の間から潤滑油が流出して、適正な油膜の
形成が困難となり、極端な場合は、クランク軸と主軸受
とが接触して、主軸受が損傷を受ける懸念がある。
ているために、それら端部には比較的大きな曲げ振動が
発生する。そのため、該端部のジャーナル部(端部ジャ
ーナル部)を支持する端部主軸受によりクランク軸の自
由端部の曲げ振動を低減し、さらに前記最大荷重による
クランク軸の端部ジャーナル部の曲げ振動を低減して端
部主軸受の振動を低減することが、内燃機関の振動・騒
音を低減するうえで効果的である。さらに、端部ジャー
ナル部の曲げ振動に加え、自由端での曲げ振動がが伝達
される端部主軸受の摩耗を抑制することが、クランク軸
を支持する複数の主軸受を備える軸受装置の耐久性を向
上させるうえで好ましい。
たものであり、請求項1ないし請求項3記載の発明は、
垂直線に対して傾斜したシリンダ軸線を有するシリンダ
を備える単気筒内燃機関、V型内燃機関および直列多気
筒内燃機関を含むあらゆるシリンダ配列の内燃機関に適
用可能で、シリンダ軸線の傾斜角度や傾斜方向に依存す
ることなく、クランク軸の振動に起因する内燃機関の振
動・騒音の低減することができると共に、端部主軸受の
摩耗や損傷を抑制することができ、しかも低コストの軸
受装置を提供することを目的とする。そして、請求項2
記載の発明は、さらに、V型内燃機関において、振動・
騒音の低減および主軸受の摩耗や損傷の抑制を図ること
を目的とし、請求項3記載の発明は、さらに、部品点数
を削減し、端部主軸受の組付け性を向上させることを目
的とする。
1記載の発明は、垂直線に対して傾斜したシリンダ軸線
を有するシリンダ内で往復動するピストンにより回転駆
動されるクランク軸を回転自在に支持する複数の主軸受
を備え、該主軸受のうち前記クランク軸の両端部を支持
する1対の端部主軸受が、それぞれ、分割面により二分
割された軸受半体からなるすべり軸受により構成される
内燃機関の軸受装置において、前記各端部主軸受の前記
分割面は、前記クランク軸の軸方向で隣接する前記シリ
ンダの前記シリンダ軸線とほぼ直交する平面上にあり、
基準状態で、前記クランク軸の回転軸線を通るシリンダ
軸線方向に、前記クランク軸と前記各端部主軸受との間
の径方向での最小間隙が形成される内燃機関の軸受装置
である。
リンダ軸線を有するシリンダを備えるあらゆる内燃機関
において、クランク軸と端部主軸受との間の最小間隙
は、隣接するシリンダ内を往復動するピストンからクラ
ンク軸に作用する最大荷重である爆発荷重の方向とほぼ
一致するシリンダ軸線方向にあることから、端部主軸受
により支持されるクランク軸の端部ジャーナル部および
該端部ジャーナル部からクランク軸の先端までの自由端
部を含むクランク軸の各端部の曲げ振動(振れ回り)が
低減される。
次の効果が奏される。すなわち、垂直線に対して傾斜し
たシリンダ軸線を有するシリンダを備える内燃機関の軸
受装置において、クランク軸の各端部を支持する主軸受
であって、1対の軸受半体からなるすべり軸受から構成
される各端部主軸受の分割面は、クランク軸の軸方向で
隣接するシリンダのシリンダ軸線とほぼ直交する平面上
にあり、基準状態で、クランク軸の回転軸線を通るシリ
ンダ軸線方向に、クランク軸と端部主軸受との間の径方
向での最小間隙が形成されることにより、クランク軸と
端部主軸受との間の最小間隙は、クランク軸に作用する
最大荷重である爆発荷重の方向とほぼ一致するシリンダ
軸線方向に存することから、端部主軸受により支持され
るクランク軸の端部ジャーナル部および該端部ジャーナ
ル部からクランク軸の先端までの自由端部を含むクラン
ク軸の各端部の曲げ振動(振れ回り)が低減されるの
で、垂直線に対して傾斜したシリンダ軸線を有するシリ
ンダを備える単気筒内燃機関、V型内燃機関および直列
多気筒内燃機関を含むあらゆるシリンダ配列の内燃機関
において、シリンダ軸線の傾斜角度や傾斜方向に依存す
ることなく、ピストンからクランク軸に作用する最大荷
重によりクランク軸の端部に発生する曲げ振動に起因す
る内燃機関の振動・騒音が低減されるうえ、クランク軸
から伝達される曲げ振動に起因する端部主軸受の摩耗や
損傷が抑制されて、クランク軸を支持する複数の主軸受
を備える軸受装置の耐久性が向上する。しかも、端部主
軸受には極めて厳格な寸法管理は必要とされないので、
低コストな軸受装置とすることができる。
燃機関の軸受装置において、前記内燃機関はV型内燃機
関であり、前記クランク軸は前記1対の端部主軸受から
なる2つの前記主軸受のみにより支持されるものであ
る。
異なるにも拘わらず、クランク軸は請求項1で規定され
る端部主軸受のみで支持され、すべての主軸受で曲げ振
動が抑制される。
請求項1記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏され
る。すなわち、V型内燃機関のクランク軸が、1対の端
部主軸受からなる2つの主軸受のみにより回転自在に支
持されることにより、垂直線に対するシリンダ軸線の傾
斜角度が異なるにも拘わらず、すべての主軸受で曲げ振
動が低減されるので、内燃機関の振動・騒音を効果的に
低減でき、また全ての主軸受の摩耗や損傷が低減され
て、軸受装置の耐久性が向上する。
求項2記載の内燃機関の軸受装置において、前記内燃機
関は、第1および第2ケース部分に前記軸方向に分割さ
れるクランクケースを備え、前記両端部主軸受は前記第
1および前記第2ケース部分にそれぞれ圧入されたもの
である。
第1,第2ケース部分に圧入される各端部主軸受は、該
第1,第2ケース部分に直接固定される。この結果、請
求項3記載の発明によれば、引用された請求項記載の発
明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、内
燃機関は、第1,第2ケース部分とに前記軸方向に分割
されるクランクケースを備え、両端部主軸受が第1,第
2ケース部分に直接固定されるので、前記従来技術の軸
受装置Cの軸受ハウジングが不要となり、各端部主軸受
をクランクケースに固定するための部品点数および組立
工数が削減されて、内燃機関のコスト削減ができる。し
かも、シリンダ軸線が垂直線に対していかなる傾斜角度
を有していても、シリンダ軸線とほぼ直交する平面上に
ある分割面を有する端部主軸受を容易にクランクケース
に固定することができる。
は、クランク軸の回転軸線が水平状態にあるとき、該回
転軸線と直交する直線を意味する。また、「基準状態」
とは、クランク軸の回転軸線と主軸受の内周面に内接す
る円の中心線(すなわち、軸受中心線)とを一致させた
状態を意味する。さらに、「ほぼ直交する」とは、厳密
に直交する場合も含み、「ほぼ一致する」とは、厳密に
一致する場合も含み、「ほぼ同じ」とは、厳密に同じ場
合も含む。
し図4を参照して説明する。図1,図2を参照すると、
本発明の軸受装置が適用される内燃機関Eは、クランク
軸5が左右方向を指向するように横置きされて車両とし
ての自動二輪車に搭載される空冷式のV型2気筒内燃機
関である。内燃機関Eは、図1において反時計回りの回
転方向Rに回転するクランク軸5の回転軸線Lcの方向、
すなわち軸方向で並設される前後1対の第1,第2シリ
ンダ21,22がV字をなすシリンダブロック1と、第
1,第2シリンダ21,22の上端にそれぞれ結合され
る1対のシリンダヘッド3,3と、シリンダブロック1
の下端に結合されて、シリンダブロック1の下部と共に
クランク室を形成するクランクケース4とを備える。こ
こで、第1,第2シリンダ21,22は、それぞれ垂直
線Lvに対して傾斜したシリンダ軸線L1,L2を有し、両
シリンダ軸線L1,L2は、垂直線Lvに対して、異なる傾
斜角度および異なる傾斜方向を有する。
よび該クランク軸5の動力を前記自動二輪車の駆動輪に
伝達するクラッチや変速機が収納される。また、クラン
クケース4は、回転軸線Lcとほぼ直交する平面Pc上にあ
る分割面Dcにより前記軸方向に二分割された左右1対の
第1ケース部分41および第2ケース部分42から構成
される。そして、第1,第2シリンダ21,22および
シリンダヘッド3,3により、V字をなす前後1対のバ
ンクが構成される。また、シリンダブロック1、シリン
ダヘッド3,3およびクランクケース4は機関本体を構
成する。
位置する1対の端部ジャーナル部であるジャーナル部5a
1,5b1にて、第1,第2ケース部分41,42にそれぞ
れ固定される1対の端部主軸受である第1,第2主軸受
101,102を介してクランクケース4に回転自在に支持
される。そして、クランク軸5には、両ジャーナル部5a
1,5b1の間に、ジャーナル部5a1に隣接する第1ウェブ5
c1と、ジャーナル部5b1に隣接する第2ウェブ5c2と、第
1,第2ウェブ5c1,5c2の間に位置する第3ウェブ5c3
とが前記軸方向での間隔をおいて並設され、第1,第3
ウェブ5c1,5c3の間に第1シリンダ21に嵌合されるピ
ストン6に連結されるコンロッド7が連結されるクラン
クピン5dが設けられ、第2,第3ウェブ5c2,5c3の間に
第2シリンダ22に嵌合されるピストン6に連結される
コンロッド7が連結されるクランクピン5dが設けられ
る。
成されたシリンダ孔内で摺動自在であり、各シリンダヘ
ッド3,3には、前記シリンダ孔の上端に連なる燃焼室
8が形成される。そして、燃焼室8内の混合気が点火栓
で点火されて燃焼して発生する燃焼圧力により駆動され
てシリンダ21,22内で往復動する各ピストン6が、
コンロッド7を介してクランク軸5を回転駆動する。
ナル部5a1と、該ジャーナル部5a1よりも先端側の自由端
部5a2とから構成され、該自由端部5a2には交流発電機G
が設けられる。一方、クランク軸5の右端部5bは、ジャ
ーナル部5b1と、該ジャーナル部5b1よりも先端側の自由
端部5b2とから構成され、該自由端部5b2にはクランク軸
5の捩り振動を低減するためのダンパTが設けられる。
ス部分41,42にそれぞれ形成された軸受保持部1
11,112の円孔に圧入されて固定される第1,第2主
軸受101,102は、それぞれ、プレーンメタルからなる
円筒状のすべり軸受から構成され、該すべり軸受は、分
割面D1,D2により周方向に二分割された半円筒状の1
対の軸受半体12,12からなる。
12の内周面には前記軸方向での中央部に位置して分割面
D1,D2において相互に連通する半円環状の油溝13が設
けられ、さらに軸受半体12,12の外周面と油溝13とを連
通する複数、この実施例では3つの油孔14,…が設けら
れる。各軸受保持部111,112には、円孔を形成する壁
面に設けられた円環状の油溝15および該油溝15に連通す
る油孔16から構成される保持部側給油路が形成される。
該保持部側給油路には、クランク軸5の動力により駆動
されるオイルポンプから吐出された高圧の潤滑油が、図
示されない油路を介して供給され、該潤滑油は、前記保
持部側給油路から油孔14,…を経て油溝13に流入し、両
ジャーナル部5a1,5b1とそれらに対応する第1,第2主
軸受101,102との間に供給される。
高圧の潤滑油は、両ジャーナル部5a1,5b1と第1,第2
主軸受101,102との間の径方向の間隙20を満たして油
膜を形成し、該油膜により、クランク軸5は主軸受1
01,102から浮き上がった状態で回転し、クランク軸
5は主軸受101,102と接触することが回避されて、ク
ランク軸5と主軸受101,102との間の摩擦が減少す
る。それゆえ、油溝13および油孔14,…から構成される
軸受側給油路および前記保持部側給油路により、間隙20
に潤滑油を供給する給油路が構成される。そして、軸受
装置は、第1,第2主軸受101,102、軸受保持部1
11,112および前記給油路を備える。
は、ピストン6に作用する爆発荷重および慣性力による
周期的な変動荷重が、クランク軸5を介して作用する。
そして、各主軸受101,102に変動荷重を加えるピスト
ン6のうち、最も影響を与えるのは、各主軸受101,10
2に前記軸方向で最も近接した位置にある、すなわち各
主軸受101,102に前記軸方向で隣接するシリンダに嵌
合するピストンである。また、変動荷重のうちの最大荷
重Wは、燃焼室8での混合気の燃焼により周期的に発生
する爆発荷重であり、その爆発荷重の方向は、シリンダ
のシリンダ軸線方向K1,K2とほぼ一致する。そして、
第1,第2主軸受101,102の分割面D 1,D2は、それ
ぞれ、回転軸線Lcを含み、かつ各主軸受101,102に前
記軸方向で隣接するシリンダ21,22のシリンダ軸線
L1,L2とほぼ直交する平面P 1,P2上にある。
が誇張して描かれた図3(A),(B)に示されるよう
に、第1主軸受101の分割面D1は第1シリンダ21の
シリンダ軸線L1(図1参照)とほぼ直交する平面P1上
にあり、第2主軸受102の分割面D2は、第2シリンダ
22のシリンダ軸線L2とほぼ直交する平面P2上にあ
る。それゆえ、第1主軸受101に対しては、第1主軸受
101に前記軸方向で隣接するシリンダである第1シリン
ダ21のピストン6から加えられる最大荷重Wの方向と
ほぼ一致する方向とほぼ直交する平面P1上に分割面D1
が位置し、第2主軸受102に対しては、第2主軸受102
に前記軸方向で隣接するシリンダである第2シリンダ2
2のピストン6から加えられる最大荷重Wの方向とほぼ
一致する方向とほぼ直交する平面P2上に分割面D2が位
置することになる。
ジャーナル部5a1,5b1と各主軸受10 1,102との径方向
の間隙20は、各主軸受101,102の1対の軸受半体12,
12が軸受保持部111,112にそれぞれ圧入されたとき、
前記基準状態で、すなわちクランク軸5の回転軸線Lcと
各主軸受101,102の軸受中心線Lbとを一致させた状態
で、分割面D1,D2を含む平面P1,P2上で最大間隙20
aとなり、また該平面P 1,P2に直交すると共にクラン
ク軸5の回転軸線Lcを含む平面P3,P4上で最小間隙20
iとなるように、周方向に徐々に変化するように設定さ
れる。その結果、各主軸受101,102の内周面の回転軸
線Lcと直交する平面での断面形状は、ほぼ楕円形状を呈
する。そして、前記基準状態にある第1,第2主軸受10
1,102のそれぞれにおいて、最小間隙20iは、シリン
ダ軸線方向K1,K2が回転軸線Lc(すなわち軸受中心線
Lb)を通る方向、換言すると、前記平面P3,P4上での
シリンダ軸線方向K1,K2の方向に形成される。そし
て、1対の軸受半体12,12の、分割面D1,D2の近傍部
分である周方向端部12a,12a;12b,12bには、クランク
軸5と各主軸受101,102との間に更に付加的な間隙を
形成するクラッシュリリーフ12c,12cが形成され、第
1,第2主軸受101,102が軸受保持部111,11 2の円
孔に圧入されたとき、相互に突き合わされる周方向端部
12a,12a;12b,12bが、組付け誤差等により径方向内方
に突出して、各ジャーナル部5a1,5b1と接触することが
防止される。
組み付けるには、先ず、第1,第2主軸受101,102が
軸受保持部111,112にそれぞれ圧入され、その後、ク
ランク軸5の各端部5a,5bが対応する第1,第2主軸受
101,102の内側に挿入される。
用および効果について説明する。内燃機関Eが運転され
て、クランク軸5が回転すると、オイルポンプから吐出
される潤滑油が、保持部側油路を経て第1,第2主軸受
101,102に供給されて、各ジャーナル部5a1,5b1と第
1,第2主軸受101,102との間の間隙20が高圧の潤滑
油で満たされる。そのため、各ジャーナル部5a1,5b1
は、間隙20の潤滑油が形成する油膜により浮動状態で支
持される。
受101に前記軸方向で隣接するシリンダである第1シリ
ンダ21のシリンダ軸線方向K1とほぼ同じ方向の爆発
荷重である最大荷重Wが作用し、第2主軸受102には、
該第2主軸受102に前記軸方向で隣接するシリンダであ
る第2シリンダ22のシリンダ軸線方向K2とほぼ同じ
方向の爆発荷重である最大荷重Wが作用する。
ャーナル部5a1,5b1を支持する主軸受であって、2つの
軸受半体12,12からなるすべり軸受から構成される各主
軸受101,102の分割面D1,D2は、クランク軸5の前
記軸方向で隣接するシリンダ21,22のシリンダ軸線
L1,L2とほぼ直交する平面P1,P2上にあり、前記基
準状態で、クランク軸5の回転軸線Lc(軸受中心線Lb)
を通るシリンダ軸線方向K1,K2に、最小間隙20iが形
成されることにより、クランク軸5と主軸受10 1,102
との間の最小間隙20iは、隣接するシリンダ21,22
内を往復動するピストン6からクランク軸5に作用する
最大荷重Wである爆発荷重の方向とほぼ一致するシリン
ダ軸線方向K1,K2に存することから、主軸受101,10
2により支持されるジャーナル部5a1,5b1および該ジャ
ーナル部5a1,5b1からクランク軸5の先端までの自由端
部5a2,5b2を含むクランク軸5の各端部5a,5bの曲げ振
動が低減されるので、垂直線Lvに対して傾斜したシリン
ダ軸線L1,L2を有する第1,第2シリンダ21,22
を備える内燃機関Eにおいて、シリンダ軸線L1,L 2の
傾斜角度や傾斜方向に依存することなく、ピストン6か
らクランク軸5に作用する最大荷重Wによりクランク軸
5の端部5a,5bに発生する曲げ振動に起因する内燃機関
Eの振動・騒音が低減されるうえ、クランク軸5から伝
達される曲げ振動に起因する主軸受101,102の摩耗や
損傷が抑制されて、クランク軸5を支持する1対の主軸
受101,102を備える軸受装置の耐久性が向上する。し
かも、主軸受101,102には極めて厳格な寸法管理は必
要とされないので、低コストな軸受装置とすることがで
きる。なお、最大荷重Wが作用した状態でクランク軸5
が回転すると、クランク軸5の下方にくさび形の油膜が
形成されて、回転軸線Lcの位置は、最大荷重Wの方向か
ら回転方向Rに(図3においては、シリンダ軸線方向K
1,K2に対して右側に)変位することが知られている
が、その場合にも最大荷重Wの方向は最小間隙20iに近
接した位置となるので、前記従来技術に比べてクランク
軸5の曲げ振動が低減される。
受101,102のみにより回転自在に支持されることによ
り、垂直線Lvに対するシリンダ軸線L1,L2の傾斜角度
および傾斜方向が異なるにも拘わらず、すべての主軸受
101,102で曲げ振動が低減されるので、内燃機関Eの
振動・騒音を効果的に低減でき、またすべての主軸受10
1,102の摩耗や損傷が抑制されて、軸受装置の耐久性
が向上する。
41,42に前記軸方向に分割されるクランクケース4
を備え、第1,第2主軸受101,102は第1,第2ケー
ス部分4 1,42にそれぞれ圧入されることにより、両
主軸受101,102が第1,第2ケース部分41,42に
それぞれ直接固定されるので、前記従来技術の軸受装置
Cの軸受ハウジングが不要となり、各主軸受101,102
をクランクケース4に固定するための部品点数および組
立工数が削減されて、内燃機関Eのコスト削減ができ
る。しかも、シリンダ軸線L1,L2とほぼ直交する平面
P1,P2上にある分割面D1,D2を有する主軸受101,
102が、垂直線Lvに対してシリンダ軸線L1,L 2がいか
なる傾斜角度および傾斜方向を有する場合にも、容易に
クランクケース4に固定することができる。
した実施例について、変更した構成に関して説明する。
内燃機関は、前記実施例ではV型2気筒内燃機関であっ
たが、垂直線Lvに対して傾斜したシリンダ軸線を有する
1つのシリンダを備える単気筒内燃機関、または垂直線
Lvに対して傾斜したシリンダ軸線を有する2以上のシリ
ンダを備えるV型2気筒以外の多気筒内燃機関、例えば
直列2気筒内燃機関、3気筒以上の直列内燃機関または
V型内燃機関であってもよい。そして、単気筒の場合
は、両端部主軸受に隣接するシリンダは同一のシリンダ
となる。また、2気筒以上の多気筒内燃機関では、両端
部主軸受の間でクランク軸を支持する中間主軸受が、端
部主軸受と同様に、分割面により分割可能な1対の軸受
半体により構成される場合、該分割面は、該中間主軸受
に対して最大荷重を作用させるピストンが嵌合するシリ
ンダの軸線にほぼ直交する平面上にあるように設定され
る。
軸方向に分割されたが、クランク軸の回転軸線と平行で
あり、かつ軸受保持部111,112の円孔と交差する平面
からなる分割面により、分割されるものであってもよ
い。そして、この場合は、1対の軸受半体からなるすべ
り軸受から構成される主軸受がクランク軸のジャーナル
部に装着され、該主軸受が、その外周を覆う二分割可能
な円筒状の軸受ハウジングに固定された後、主軸受およ
び軸受ハウジングが組み付けられたクランク軸がクラン
クケースに固定される。
間隙20に潤滑油を供給するための給油路は、前記実施例
のように軸受保持部111,112に設けられる前記保持部
側給油路の代わりに、クランク軸5の内部に設けられる
油路から構成されてもよい。
用されるV型内燃機関のシリンダ軸線を含む平面での部
分断面図である。
燃機関の部分断面図である。線断面図である。
の断面図であり、(A)は、図2のIIIA−IIIA
線断面図であり、(B)は、図2のIIIB−IIIB
線断面図である。
準状態にあるときの主軸受の、クランク軸の回転軸線と
直交する平面での概略断面図である。
リンダヘッド、4…クランクケース、41,42…ケー
ス部分、5…クランク軸、6…ピストン、7…コンロッ
ド、8…燃焼室、101,102…主軸受、111,112…軸
受保持部、12…軸受半体、13,15…油溝、14,16…油
孔、20…間隙、20i…最小間隙、E…内燃機関、R…回
転方向、Lc…回転軸線、Lv…垂直線、L1,L2…シリン
ダ軸線、Lb…中心線、Dc,D1,D2…分割面、Pc,P1
〜P4…平面、G…交流発電機、T…ダンパ、K1,K2
…シリンダ軸線方向、W…最大荷重。
Claims (3)
- 【請求項1】 垂直線に対して傾斜したシリンダ軸線を
有するシリンダ内で往復動するピストンにより回転駆動
されるクランク軸を回転自在に支持する複数の主軸受を
備え、該主軸受のうち前記クランク軸の両端部を支持す
る1対の端部主軸受が、それぞれ、分割面により二分割
された軸受半体からなるすべり軸受により構成される内
燃機関の軸受装置において、 前記各端部主軸受の前記分割面は、前記クランク軸の軸
方向で隣接する前記シリンダの前記シリンダ軸線とほぼ
直交する平面上にあり、基準状態で、前記クランク軸の
回転軸線を通るシリンダ軸線方向に、前記クランク軸と
前記各端部主軸受との間の径方向での最小間隙が形成さ
れることを特徴とする内燃機関の軸受装置。 - 【請求項2】 前記内燃機関はV型内燃機関であり、前
記クランク軸は前記1対の端部主軸受からなる2つの前
記主軸受のみにより支持されることを特徴とする請求項
1記載の内燃機関の軸受装置。 - 【請求項3】 前記内燃機関は、第1および第2ケース
部分に前記軸方向に分割されるクランクケースを備え、
前記両端部主軸受は前記第1および前記第2ケース部分
にそれぞれ圧入されたことを特徴とする請求項1または
請求項2記載の内燃機関の軸受装置。
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