JP2003226653A - 多発性硬化症治療剤 - Google Patents

多発性硬化症治療剤

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JP2003226653A
JP2003226653A JP2002350088A JP2002350088A JP2003226653A JP 2003226653 A JP2003226653 A JP 2003226653A JP 2002350088 A JP2002350088 A JP 2002350088A JP 2002350088 A JP2002350088 A JP 2002350088A JP 2003226653 A JP2003226653 A JP 2003226653A
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mif
multiple sclerosis
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cells
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Jun Nishihira
順 西平
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Nishihira Jun
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Nishihira Jun
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Abstract

(57)【要約】 【課題】新規なMS治療薬を提供することである。 【解決手段】本発明は、マクロファージ遊走阻止因子
(MIF)に結合する抗体を有効成分として含む多発性
硬化症治療剤を提供するものであり、本発明の多発性硬
化症治療剤は、通常型多発性硬化症(C−MS)又は視
神経脊髄型多発性硬化症(OpS−MS)に有効であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多発性硬化症治療
薬に関し、さらに詳しくは抗マクロファージ遊走阻止因
子(Macrophage migration inhibitory factor:以下に
おいてMIFということもある)抗体を含む多発性硬化
症治療薬に関する。
【0002】
【従来技術】多発性硬化症(Multiple sclerosis:以下
においてMSということもある)は、脳、脊髄などの中枢
神経系(CNS)のあちこちに病巣ができ、さまざまな
神経症状(視覚障害、運動障害、感覚低下、異常感覚、
痛み、平衡障害・ふるえ、排尿障害、性機能障害、疲
労、認識・感情の障害など)を引き起こす免疫媒介性の
炎症性疾患である。MSの病因はまだ解明されていない
が、「免疫」が誤って自分自身を攻撃してしまう「自己
免疫疾患」の一つであると考えられている。この疾患は
T細胞とマクロファージが白質に浸潤して、脳や脊髄の
神経細胞の軸索を覆っている「自己のミエリン」を外敵
と見なして攻撃し、その結果ミエリンが炎症を起こし、
脱髄(ミエリンが壊れること)することによって起こる
と考えられている(Miller SID et al., Immunol Rev
(1996) 144:225-244)。
【0003】MSの治療は、急性期の炎症を抑えるこ
と、再発又は進行を抑えること、症状を和らげることの
3つに分けられる。急性期の治療としては、副腎皮質ス
テロイド剤を使って、ミエリンが壊されている部分の炎
症を抑えることが行われている。再発又は進行を抑える
治療としては、インターフェロンβや免疫抑制剤が有効
であると考えられている。また、T細胞増殖の抑制作用
をもつトランスフォーミング増殖因子(TGF)βが実
験的アレルギー脳脊髄炎(EAE)を阻害することが報
告されている(Racke MK et al., J Immunol (1991) 14
6: 3012-3017)。MSの病原メカニズムに基づいて免疫
学的治療が種々研究されているが、有効で満足のいく治
療法は確立されていない。多くのMS患者では、再発
(脳や脊髄に炎症が起こっている状態)と寛解(再発が
回復した状態)を繰り返すが、完治することは難しく、
新規で有効な治療薬の開発が望まれている。
【0004】マクロファージ遊走阻止因子(MIF)
は、全身、局所の炎症と免疫応答に重要な役割を果たす
(Bucala R., FASEB J (1996) 7:19-24; Nishihira J.,
J Interferon Cytokine Res, (2000) 20:751-762)。
MIFは活性リンパ球から分泌され、炎症部位中にマク
ロファージがランダムに遊走するのを阻止するT細胞由
来のリンホカインとして同定された可溶性因子である。
近年、MIFがグルタチンS−トランスフェラーゼ(G
ST)と相同性をもち、解毒作用を有することが明らか
になった他、エンドトキシンショック時に下垂体前葉か
ら分泌されること、低濃度のグルココルチコイドによっ
て誘導され、その免疫抑制作用に拮抗して働くことな
ど、免疫系のみならず、内分泌系、細胞の分化増殖な
ど、非常に多様な機能をもつことが報告されている。
【0005】特に、興味深いことに、MIFが脳下垂体
前葉由来のホルモンとして致死的な内毒素血症を増強
し、そして抗MIF抗体がマウスを敗血症ショックから
保護することがわかった(Bernhagen J et al., Nature
(1993) 365:756-759)。多能性サイトカインであるM
IFは様々な機能を持ち、これにはマクロファージの活
性化(密着、貪色作用、殺腫瘍活性)を含む(Nathan C
F et al., J Exp Med (1973) 137:275-288; Churchill
WH et al., J Immunol (1975) 115: 81-786)。さらに
重要なことは、MIFタンパク質はT細胞活性化に必須
であり、さまざまな細胞で発現しており、特にCNSで
最も多く発現している(Bacher M et al.,Proc Natl Ac
ed Sci USA (1996) 93:7849-7854)。また、抗MIF抗
体がショック、炎症、自己免疫疾患などのサイトカイン
で仲介される疾患の治療に有用であることが報告されて
いるが(WO94/26307公報)、これまでにMS
との関係を記載したり、あるいはMS治療に用いうると
の報告は全くない。
【0006】
【発明が解決すべき課題】本発明は、新規なMS治療薬
を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、MIFに
結合する抗体により、上記目的が達成されることを発見
して本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、マクロファージ遊走
阻止因子(MIF)に結合する抗体を有効成分として含
む多発性硬化症治療剤を提供する。本発明はまた、マク
ロファージ遊走阻止因子(MIF)に結合し、マクロフ
ァージ遊走阻止因子(MIF)とその受容体との結合を
阻害する抗体を有効成分として含む多発性硬化症治療剤
を提供する。
【0009】本発明はさらに、抗体がヒト型化抗体又は
キメラ抗体である前記の多発性硬化症治療剤を提供す
る。本発明はさらに、抗体がモノクローナル抗体である
前記の多発性硬化症治療剤を提供する。
【0010】本発明はさらに、多発性硬化症が通常型多
発性硬化症(C−MS)又は視神経脊髄型多発性硬化症
(OpS−MS)である前記の多発性硬化症治療剤を提
供する。
【0011】
【発明を実施するための最良の形態】本発明の多発性硬
化症治療剤の有効成分である抗MIF抗体は、MS治療
剤の治療効果を有するものであれば、その由来、種類
(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わな
い。
【0012】MIFの塩基配列、アミノ酸配列は公知であ
り、当業者ならば容易に抗MIF抗体を作製することが可
能である(Weishui Y. Weiser et al., Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA., Vol.86 pp.7522-7526, (1989)、アメリ
カ特許番号US6030615、国際特許出願公開番号WO98/1731
4、国際特許出願公開番号WO01/64749、国際特許出願公
開番号WO94/26307)。
【0013】本発明で使用する抗MIF抗体は、MIFと結合
する限り特に制限はなく、公知の手段を用いてポリクロ
ーナルまたはモノクローナル抗体として得ることができ
る。本発明で使用される抗体として、特に哺乳動物由来
のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノ
クローナル抗体は、ハイブリドーマに産生されるもの、
および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベ
クターで形質転換した宿主に産生されるもの等を含む。
【0014】モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ
は、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作
製できる。すなわち、MIFを感作抗原として使用して、
これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免
疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合
させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナル
な抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製
できる。具体的には、モノクローナル抗体を作製するに
は次のようにすればよい。
【0015】MIFをコードする遺伝子配列を公知の発現
ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた
後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のMIFタ
ンパク質を公知の方法で精製する。
【0016】次に、このMIFタンパク質を感作抗原とし
て用いる。あるいは、MIFの部分ペプチドを感作抗原と
して使用することもできる。この際、部分ペプチドはMI
Fのアミノ酸配列より化学合成により得ることができ
る。
【0017】本発明の抗MIF抗体の認識するMIF分子上の
エピトープは特定のものに限定されず、MIF分子上に存
在するエピトープならばどのエピトープを認識してもよ
い。従って、本発明の抗MIF抗体を作製するための抗原
は、MIF分子上に存在するエピトープを含む断片なら
ば、如何なる断片も用いることが可能である。
【0018】感作抗原で免疫される哺乳動物としては、
特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親
細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般
的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハム
スター等が使用される。
【0019】感作抗原を動物に免疫するには、公知の方
法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、
感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射すること
により行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phospha
te-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、
懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えば
フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺
乳動物に4-21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫
時に適当な担体を使用することもできる。
【0020】このように哺乳動物を免疫し、血清中に所
望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物
から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好まし
い免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
【0021】前記免疫細胞と融合される他方の親細胞と
して、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエロ
ーマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63A
g8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、 P3x
63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immun
ology(1978)81, 1-7)、 NS-1 (Kohler. G. and Mil
stein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MP
C-11(Margulies. D.H. et al., Cell(1976)8, 405-4
15)、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature(1978)27
6, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. I
mmunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridg
e, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210
(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)
等が好適に使用される。
【0022】前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融
合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミ
ルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、M
ethods Enzymol.(1981)73, 3-46)等に準じて行うこ
とができる。
【0023】より具体的には、前記細胞融合は、例えば
細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施さ
れる。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコ
ール(PEG)、センダイウィルス(HVJ)等が使用され、
更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホ
キシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0024】免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は
任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞
に対して免疫細胞を1-10倍とするのが好ましい。前記細
胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエロー
マ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、
その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が
使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清
補液を併用することもできる。
【0025】細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細
胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程
度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000-6000程
度)を通常30-60%(w/v)の濃度で添加し、混合するこ
とによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形
成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して
上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドー
マの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
【0026】このようにして得られたハイブリドーマ
は、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサン
チン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で
培養することにより選択される。上記HAT培養液での培
養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細
胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)
継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的と
する抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングお
よび単一クローニングを行う。
【0027】また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上
記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitro
でMIFに感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能
を有するミエローマ細胞と融合させ、MIFへの結合活性
を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-
59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全ての
レパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原と
なるMIFを投与して抗MIF抗体産生細胞を取得し、これを
不死化させた細胞からMIFに対するヒト抗体を取得して
もよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585 号公報、WO
93/12227 号公報、WO 92/03918 号公報、WO 94/02602
号公報参照)。
【0028】このようにして作製されるモノクローナル
抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継
代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期
保存することが可能である。
【0029】当該ハイブリドーマからモノクローナル抗
体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に
したがい培養し、その培養上清として得る方法、あるい
はハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与
して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用され
る。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適してお
り、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適してい
る。
【0030】本発明では、モノクローナル抗体として、
抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当
なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子
組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いる
ことができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur.
J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990参照)。
【0031】具体的には、抗MIF抗体を産生するハイブ
リドーマから、抗MIF抗体の可変(V)領域をコードする
mRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、
グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Bioche
mistry(1979)18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynsk
i, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)
等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit
(Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。
また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia
製)を用いることによりmRNAを直接調製することもでき
る。
【0032】得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体
V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse T
ranscriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化
学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および
増幅を行うには、5'-AmpliFINDER RACE Kit(Clontech
製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A.et a
l., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-900
2、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)
17, 2919-2932)等を使用することができる。
【0033】得られたPCR産物から目的とするDNA断片を
精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組
換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを
選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目
的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオ
キシヌクレオチドチェインターミネーション法等により
確認する。
【0034】目的とする抗MIF抗体のV領域をコードする
DNAを得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)
をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗MIF抗体を製造するには、抗体遺
伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモー
ターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込
む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転
換し、抗体を発現させる。
【0035】抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)ま
たは軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクター
に組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、
あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベ
クターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい
(WO 94/11523 号公報参照)。
【0036】また、組換え型抗体の産生には上記宿主細
胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用するこ
とができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産
生される蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺
伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体
遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの
胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容し
たヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその
子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トラ
ンスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳
汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェ
ニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bi
o/Technology(1994)12, 699-702)。
【0037】本発明では、上記抗体のほかに、ヒトに対
する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的
に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、
ヒト型化(Humanized)抗体を使用できる。これらの改
変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0038】キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体
V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNA
と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入
し産生させることにより得られる。この既知の方法を用
いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0039】ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト
抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えば
マウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity d
etermining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移
植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知
られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、W
O 96/02576 号公報参照)。
【0040】具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体
のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連
結するように設計したDNA配列を、CDR及びFR両方の末端
領域にオーバーラップする部分を有するように作製した
数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPC
R法により合成する(WO98/13388号公報に記載の方法を参
照)。
【0041】CDRを介して連結されるヒト抗体のフレー
ムワーク領域は、相補性決定領域が良好な抗原結合部位
を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト
抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成する
ように、抗体の可変領域におけるフレームワーク領域の
アミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., CancerRe
s.(1993)53, 851-856)。
【0042】キメラ抗体及びヒト型化抗体のC領域に
は、ヒト抗体のものが使用され、例えばH鎖では、Cγ
1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を、L鎖ではCκ、Cλを
使用することができる。また、抗体またはその産生の安
定性を改善するために、ヒト抗体C領域を修飾してもよ
い。
【0043】キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗
体の可変領域とヒト抗体由来の定常領域とからなる。一
方、ヒト型化抗体は、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の相
補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域お
よびC領域とからなる。ヒト型化抗体はヒト体内におけ
る抗原性が低下されているため、本発明の治療剤の有効
成分として有用である。
【0044】本発明で使用される抗体は、抗体の全体分
子に限られずMIFに結合する限り、抗体の断片又はその
修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれ
る。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、F
v、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若し
くはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチ
ェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵
素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成
させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子
を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿
主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Im
munol.(1994)152, 2968-2976、Better,M. & Horwitz,
A. H. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496,
AcademicPress, Inc.、Plueckthun, A. & Skerra, A. M
ethods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic
Press, Inc.、Lamoyi, E., Methods in Enzymology(1
989)121, 652-663、Rousseaux, J. et al., Methods i
n Enzymology(1989)121,663-669、Bird, R. E. et a
l., TIBTECH(1991)9, 132-137参照)。
【0045】scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連
結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領
域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカ
ーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc.
Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1988)85, 5879-5883)。sc
FvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体
として記載されたもののいずれの由来であってもよい。
V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばア
ミノ酸12-19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用い
られる。
【0046】scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖ま
たはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領
域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部
又は所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型と
し、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法に
より増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコ
ードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結さ
れるように規定するプライマー対を組み合せて増幅する
ことにより得られる。
【0047】また、一旦scFvをコードするDNAが作製さ
れると、それらを含有する発現ベクター、および該発現
ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得る
ことができ、また、その宿主を用いることにより、常法
に従ってscFvを得ることができる。
【0048】これら抗体の断片は、前記と同様にしてそ
の遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させること
ができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の
断片も包含される。
【0049】抗体の修飾物として、ポリエチレングリコ
ール(PEG)等の各種分子と結合した抗MIF抗体を使用す
ることもできる。本発明における「抗体」にはこれらの
抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得
られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ること
ができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてす
でに確立されている。
【0050】さらに、本発明で使用される抗体は、二重
特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。
二重特異性抗体はMIF分子上の異なるエピトープを認識
する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよ
いし、一方の抗原結合部位がMIFを認識し、他方の抗原
結合部位が化学療法剤、細胞由来トキシン等のMIFでは
ない物質を認識してもよい。二重特異性抗体は2種類の
抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異な
るモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合
させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ること
もできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性
抗体を作製することも可能である。
【0051】前記のように構築した抗体遺伝子は、公知
の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類
細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させ
る抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的
に結合させて発現させることができる。例えばプロモー
ター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィル
ス前期プロモーター/エンハンサー( human cytomegal
ovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げる
ことができる。
【0052】また、その他に本発明で使用される抗体発
現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レ
トロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、
シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター
/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファク
ター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモータ
ー/エンハンサー等が挙げられる。
【0053】SV40プロモーター/エンハンサーを使用す
る場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277, 108)
により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使
用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.
(1990)18, 5322)により、容易に遺伝子発現を行うこ
とができる。
【0054】大腸菌の場合、常用される有用なプロモー
ター、抗体分泌のためのシグナル配列及び発現させる抗
体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させる
ことができる。プロモーターとしては、例えばlaczプロ
モーター、araBプロモーターを挙げることができる。la
czプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature
(1098)341, 544-546 ; FASEB J.(1992)6, 2422-242
7)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合
はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)
により発現することができる。
【0055】抗体分泌のためのシグナル配列としては、
大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル
配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4
379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生
された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直し
て(refold)使用する。
【0056】複製起源としては、SV40、ポリオーマウィ
ルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BP
V)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主
細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、
選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラー
ゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大
腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラ
ーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)
遺伝子等を含むことができる。
【0057】本発明で使用される抗体の製造のために、
任意の発現系、例えば真核細胞又は原核細胞系を使用す
ることができる。真核細胞としては、例えば樹立された
哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細
胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例
えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。好ましく
は、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCH
O、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現さ
れる。
【0058】次に、形質転換された宿主細胞をin vitro
またはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させ
る。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、
培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用する
ことができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用す
ることもできる。
【0059】前記のように発現、産生された抗体は、細
胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができ
る。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニテ
ィーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテ
インAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、S
epharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その
他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法
を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例え
ば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィ
ーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜
選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製する
ことができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed H
arlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory,
1988)。
【0060】本発明では、モノクローナル抗体として、
抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当
なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子
組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いる
ことができる(例えば、Vandamme, A.M.eta1,,Eur.J.Bio
chem.(1990)192,767-775,1990参照)。
【0061】本発明で使用される抗体の抗原結合活性
(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow, David
Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)、の測
定には公知の手段を使用することができる。
【0062】本発明で使用される抗MIF抗体の抗原結合
活性を測定する方法として、ELISA(酵素結合免疫吸着
検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定
法)あるいは蛍光抗体法を用いることができる。例え
ば、酵素免疫測定法を用いる場合、MIFをコーティング
したプレートに、抗MIF抗体を含む試料、例えば、抗MIF
抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加える。アルカリ
フォスファターゼ等の酵素で標識した二次抗体を添加
し、プレートをインキュベートし、洗浄した後、p-ニト
ロフェニル燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定す
ることで抗原結合活性を評価することができる。
【0063】本発明の治療剤は、多発性硬化症に対する
治療又は改善を目的として使用される。多発性硬化症は
C−MS及びOpS−MSを含む。有効投与量は、一回
につき体重1kgあたり0.001mgから1000mgの範囲で選ばれ
る。あるいは、患者あたり0.0l〜100000mg/body、好ま
しくは0.1〜10000mg/body、さらに好ましくは0.5〜1000
mg/body、さらに好ましくは1〜100mg/bodyの薬剤の投与
量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗MI
F抗体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限される
ものではない。
【0064】本発明の抗MIF抗体を有効成分として含
有する治療剤は、常法にしたがって製剤化することがで
き(Remington's Pharmaceutical Science, latest edit
ion,Mark Publishing Company, Easton, 米国)、医薬的
に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよ
い。
【0065】本発明の治療剤には等張化剤として、ポリ
エチレングリコール;デキストラン、マンニトール、ソ
ルビトール、イノシトール、グルコース、フラクトー
ス、ラクトース、キシロース、マンノース、マルトー
ス、ラフィノースなどの糖類を用いることができる。
【0066】本発明の治療剤には界面活性剤をさらに含
むことができる。界面活性剤としては、非イオン界面活
性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタン
モノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソル
ビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、
グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレー
ト等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノ
ステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグ
リセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エス
テル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオ
キシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシ
エチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチ
レンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソ
ルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビット
テトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテ
トラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪
酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステア
レート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステ
ル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエ
チレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン
ラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエー
テル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコ
ールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレ
ンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプ
ロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオ
キシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレ
ンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアル
キルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン
水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;
ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシ
エチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン
等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエ
チレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪
酸アミド等のHLB6〜18を有するもの;陰イオン界
面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸
ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数1
0〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオ
キシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオ
キシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原
子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリ
ウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18のアルキ
ルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例
えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン
等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜18の脂肪酸
のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げること
ができる。本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1
種または2種以上を組み合わせて添加することができ
る。
【0067】本発明の治療剤には、所望によりさらに希
釈剤、溶解補助剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩
衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。例
えば、含硫還元剤としては、N−アセチルシステイン、
N−アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリ
コール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チ
オソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫
酸ナトリウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7
のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等
が挙げられる。また、酸化防止剤としては、エリソルビ
ン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシ
アニソール、α−トコフェロール、酢酸トコフェロー
ル、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビン
酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜
硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリ
アミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四
酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウ
ム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられ
る。さらには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カ
ルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水
素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエ
ン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの有機塩などの通常
添加される成分を含んでいてよい。
【0068】本発明の治療剤は、これらの成分をリン酸
緩衝液などの緩衝液に溶解して調製することができる。
好ましいpHは5〜8である。本発明の治療剤は通常非
経口投与経路で、例えば注射剤(皮下注、静注、筋注、
腹腔内注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与
されるが、経口投与も可能である。
【0069】本発明の治療剤は、溶液製剤であっても、
使用前に溶解再構成するために凍結乾燥したものであっ
てもよい。凍結乾燥のための賦形剤としては例えばマン
ニトール、ブドウ糖などの糖アルコールや糖類を使用す
ることが出来る。
【0070】本発明の製剤中に含まれる抗MIF抗体の
量は、治療すべき疾患の種類、疾患の重症度、患者の年
齢などに応じて決定できるが、一般には最終投与濃度で
0.1〜200mg/ml、好ましくは1〜120mg
/mlである。
【0071】本発明では、MSにおけるMIFの関与の
可能性を研究するために、MS患者のCNSにおけるM
IF発現をin situハイブリダイゼーションにより検討
した。その結果、MS病巣での高いMIFmRNAの発
現が観察され、MIFが病気の進行と直接関係すること
を示唆する。
【0072】MSにおけるMIFの病原役割をさらに理
解するために、2種の異なるタイプ(多発性硬化症のよ
くあるタイプであるC−MSと、この症状のoptic-spin
al型であるOpS−MS)のMS患者の脳脊髄液(CS
F)中のMIF濃度を調べた。その結果、MS患者のC
SF中で高濃度のMIFが観察された。急性再発期のC
−MS又はOpS−Ms患者は対照患者よりもCSF中
のMIF濃度が有意に高かった。さらに、再発過程にあ
るOpS−MS患者のCSF中のMIF濃度は再発過程
にあるC−MS患者よりも高かった。再発中のC−MS
患者のCSF中の平均MIF濃度は寛解期の値よりも有
意に高かった。一方、寛解期のC−MSグループの平均
値と対照グループの値は有意な差がなかった。これらか
ら、MSとMIF濃度との相関が確認された。
【0073】さらに、本発明では、実験的アレルギー脳
脊髄炎(EAE)のモデルを用いて自己免疫疾患の制御
におけるMIFの役割を評価した。その結果、EAEの
マウスモデルでは、抗MIF抗体がMSの臨床コースの
改善に有効であった。
【0074】また、実験的自己免疫uveoretinitis(E
AU)をラットで誘導し、次いでレチナール抗原である
interphotoreceptor retinoid-binding protein (IRBP)
で感作した。この実験では、ラットをIRBP由来ペプ
チド(ADGSSWEGVGVVPDV)の一回注射で
感作し、0−6日又は8−14日に1日おきにMIFに
対する中和モノクローナル抗体を腹腔内投与した。抗M
IFモノクローナル抗体で処理したラットでは、ペプチ
ドに対するT細胞増殖応答が阻害され、8−14日で処
理した群と比べて0−6日で処理した群のラットではE
AUの発生が有意に遅延した。これらの事実は、EAU
の初期にMIFが重要な役割を果たすこと、また免疫媒
介性の神経障害の開始に寄与することを示している。
【0075】本発明は特定の理論に拘束されるものでは
ないが、抗MIF抗体の作用メカニズムの仮説を図2に
示すものとして考えている。すなわち、抗MIF抗体は
MSの病態生理学において、以下に記載する複数の段階
で阻害作用を示すものと思われる:1.Tリンパ球の活
性化段階;2.単球が循環系から血液−脳関門(BB
B)を通ってCNS組織に走化する段階;3.炎症性サ
イトカイン(例えばTNFα,IFNγ)を抗原提示細
胞(APC)から放出する段階;4.APCがミエリン
の壊死組織片を貪食する段階。
【0076】
【産業上の利用可能性】本発明のマクロファージ遊走阻
止因子(MIF)とその受容体との結合を阻害する物質
を有効成分として含む多発性硬化症治療剤が新規で有効
な多発性硬化症治療剤となることが示された。
【0077】本発明を以下の実施例によってさらに詳し
く説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。本
発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能
であり、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。
【0078】
【実施例】実施例1:MS患者のCNSにおけるMIF
発現 MSの典型的な病気の特徴は、血管周囲の炎症性細胞の
浸潤とミエリンの喪失で、最も多いのは血管周囲の白質
周辺、視神経管内、脳幹及び脳梁である。脱髄の過程
で、ミクログリア細胞と星状細胞が活性化されて、次に
astrogliosisが発生する。MSの女性患者(21歳)の
髄質病巣由来の剖検標本を観察した。脱髄と血管周囲の
白血球浸潤を示しており、これは典型的な活性MSプラ
ークを示す。In situハイブリダイゼーションによりM
IFmRNAが血管周囲の白血球、星状細胞及び白質病
巣のミクログリアで発現していた(図1)。MS病巣で
の高いMIFmRNAの発現は、MIFが病気の進行と
直接関係することを示唆する。
【0079】実施例2:MS患者のCSF中のMIF濃
度 MSにおけるMIFの病原役割をもっと理解するため
に、2種の異なるタイプ(多発性硬化症のよくあるタイ
プであるC−MSと、この症状のoptic-spinal型である
OpS−MS)のMS患者の脳脊髄液(CSF)中のM
IF濃度を調べた。
【0080】得られた結果を表1に示す。
【0081】免疫仲介の疾患をもつ患者のCSF中で高
濃度のMIFが観察された。急性再発のC−MS又はO
pS−Ms患者は対照患者よりもCSF中のMIF濃度
が有意に高かった。さらに、再発過程にあるOpS−M
S患者のCSF中のMIF濃度は再発過程にあるC−M
S患者よりも高かった。再発中のC−MS患者のCSF
中の平均MIF濃度は寛解期の値よりも有意に高かっ
た。逆に、寛解期のC−MSグループの平均値と対照グ
ループの値は有意な差がなかった。寛解期のC−MS患
者とOpS−MS患者のCSF中の平均MIF濃度を比
較すると、OpS−MS患者の平均MIF濃度はC−M
S患者よりも有意に高かった。従って、C−MS患者よ
りもOpS−MS患者のCSF中のMIF濃度の方が高
いということは、CNS中の内皮細胞の損傷によるもの
かも知れない。
【0082】実施例3:EAEマウスモデルによる抗M
IF抗体の効果 EAEに関与するT細胞受容体と脳炎誘発性のエピトー
プを研究することによって、MS治療の候補となる多数
の実験的治療戦略が得られている。慢性再発EAEが、
CNSにおける炎症と脱髄を特徴とする自己免疫疾患で
あることが知られている。簡単に述べると、ナイーブ同
系マウスにミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的
CD4+クラスII MHC−限定的T細胞を養子免疫
細胞移入すると、ヒトのMSと似た病状を示す(Pettin
elli CB et al., J Immunol (1981) 127:1420-1423)。
従って、EAEのモデルを用いて自己免疫疾患の制御に
おけるMIFの役割を評価した。
【0083】<病理組織スコアー>上述の公知の方法
(Pettinelli CB et al., J Immunol (1981) 127:1420-
1423)によりC57マウスにEAEを誘導した。EAEを
誘導したマウスに、抗MIF抗体(マウスリコンビナン
トMIFをウサギに免疫して得られたポリクローナル抗体;
自家製)200μgを48時間おきに3回(最初の投与はEA
E誘導の24時間後から)投与した。EAE誘導1日後
の抗MIF抗体投与マウス(20匹)及び、対照として抗
MIF抗体非投与のコントロールマウス(コントロール
群はウサギnon-immune IgGを投与、20匹)について、細
胞浸潤や組織破壊の程度などを指標に病理組織をスコア
ー化した(スコアーは実験したマウスの平均値)。病理
組織スコアー化の結果を図3に示す。抗MIF抗体投与
マウスでは病理組織スコアーの改善が観察された。
【0084】<臨床症状スコアー>上述の公知の方法
(Pettinelli CB et al., J Immunol (1981) 127:1420-
1423)によりC57マウスにEAEを誘導した。EAEを
誘導したマウスに、抗MIF抗体200μgを48時間おきに
3回(最初の投与はEAE誘導の24時間後から)投与
した。抗MIF抗体投与マウス(20匹)及び、抗MIF
抗体非投与のコントロールマウス(コントロール群はウ
サギnon-immune IgGを投与、20匹)について、EAE誘
導から1日目〜50日目まで臨床症状を観察し、スコア
ー化した(スコアーは実験したマウスの平均値)。臨床
症状のスコアー化は、一般的なEAEの臨床症状(歩行
困難など)を指標に行った。臨床症状スコアー化の結果
を図4に示す。抗MIF抗体投与マウスでは、臨床症状
スコアーの改善が観察された。以上の結果から、EAE
のマウスモデルでは、抗MIF抗体がMSの臨床コース
の改善に有効であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【図1】MS患者の髄質病巣由来の剖検標本のin situ
ハイブリダイゼーションを示す。矢印の個所には脱髄と
血管周囲の白血球浸潤が観察される。
【図2】MSにおける神経障害の改善に対する抗MIF
抗体の推定作用を示す図である。
【図3】コントロールマウスと抗MIF抗体投与マウス
の病理組織をスコア化した図である。
【図4】コントロールマウスと抗MIF抗体投与マウス
の臨床症状をスコア化した図である。□はコントロール
マウス、◇は抗MIF抗体投与マウスを示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】マクロファージ遊走阻止因子(MIF)に
    結合する抗体を有効成分として含む多発性硬化症治療
    剤。
  2. 【請求項2】マクロファージ遊走阻止因子(MIF)に
    結合し、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)とその
    受容体との結合を阻害する抗体を有効成分として含む多
    発性硬化症治療剤。
  3. 【請求項3】多発性硬化症が通常型多発性硬化症(C−
    MS)又は視神経脊髄型多発性硬化症(OpS−MS)
    である請求項1〜4のいずれかに記載の多発性硬化症治
    療剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011515416A (ja) * 2008-03-20 2011-05-19 カロラス セラピューティクス, インク. 抗mif抗体を用いる処置方法

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