JP2003201898A - 圧縮着火式内燃機関 - Google Patents

圧縮着火式内燃機関

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JP2003201898A
JP2003201898A JP2001400939A JP2001400939A JP2003201898A JP 2003201898 A JP2003201898 A JP 2003201898A JP 2001400939 A JP2001400939 A JP 2001400939A JP 2001400939 A JP2001400939 A JP 2001400939A JP 2003201898 A JP2003201898 A JP 2003201898A
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fuel
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pilot
fuel injection
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Yutaka Uematsu
豊 上松
Hitoshi Yokoyama
仁 横山
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Isuzu Motors Ltd
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    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 低発熱率パイロット・メイン燃焼を実現する
場合において、NOx吸蔵還元触媒と組み合わせて使用
することを可能にする。 【解決手段】 燃料噴射弁9から噴射される燃料の量と
タイミングとを制御すると共に、排気通路13にリーン
な運転状態にて排ガス中のNOxを吸蔵し、リッチな運
転状態で吸蔵したNOxを放出させるNOx吸蔵還元触
媒30を有する圧縮着火式内燃機関において、少なくと
もパイロット噴射が、その噴射された燃料による最大熱
発生率が60kJ/s以下になるような量とタイミング
とで実行される低発熱率パイロット・メイン噴射モード
を有し、NOx吸蔵還元触媒30に吸蔵されたNOxを
放出すべく、運転状態がリッチになるように燃料の噴射
が制御される場合には、上記低発熱率パイロット・メイ
ン噴射モードを禁止するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は圧縮着火式内燃機関
に係り、特に、燃焼形態の改善により排ガスの清浄化を
図ると共に、NOx吸蔵還元触媒との両立を可能とした
圧縮着火式内燃機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関、特にディーゼルエンジンに対
する環境対応の要請が近年益々高まっており、その排ガ
スの改善が急務となっている。このため、黒煙などの煤
を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DP
F)や、NOxを還元浄化するNOx吸蔵還元触媒等種
々の後処理技術が目覚ましい発展を遂げているが、やは
り燃焼形態そのものを改善する方が抜本的対策に繋がり
望ましい。
【0003】通常のディーゼル燃焼は、筒内圧力及び温
度が十分高まっている圧縮上死点付近(一般的には10
°BTDC〜10°ATDC程度)で単段(1回)の燃
料噴射を行い、その燃料を所定の着火遅れ期間を経た後
一部着火させ、その後燃料の拡散に応じて燃料の蒸発、
空気との混合及び燃焼を進行させ、火炎を順次乱流状態
で拡散させながら燃焼を行うという拡散燃焼の形態を採
る。
【0004】一方、近年の排ガスに対するスモークやN
Ox低減要求の高まりに対しては、様々な改良がなされ
てきている。NOxの低減にはEGR(Exthaus
tGas Recirculation:排気再循環)
が有効であることが従来から知られており、広く実現さ
れている。しかし、EGRは排ガスを環流するため、ス
モークの悪化を回避できない。
【0005】また、通常燃焼では急激な初期燃焼による
筒内圧力の急増が生じ、大きな燃焼騒音が発生する場合
がある。そこでこれを防止するため、通常のタイミング
で行われるメイン噴射(主噴射)の前に、少量のパイロ
ット噴射を実行するという2段噴射を行うことがある。
この場合、パイロット噴射による燃料が着火して火種が
作られた後、この火種を基にメイン噴射による燃料が燃
焼されるため、急激な初期燃焼及び筒内圧力の急増が抑
えられ、燃焼騒音が防止される。なおこのときの燃焼形
態は基本的に拡散燃焼と同様である。
【0006】しかしこのような通常のパイロット・メイ
ン噴射では、パイロット噴射を行うことでスモークが悪
化してしまうという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで近年、これら
の技術に対して新たな燃焼システムが提唱されている。
一つは、NOxとスモークとの同時低減を目的としたM
K(Modulated Kinetics)燃焼と称
するものである。これは低温予混合燃焼とも表現できる
もので、その概略は以下の通りである。即ち、NOx低
減には燃焼温度の低下が有効であるため、これを比較的
大量のEGRによって行う。するとスモークの増加が懸
念されるが、これは燃料の予混合化で対処する。予混合
化には、通常より早期に燃料噴射を行う早期噴射と、通
常より遅い時期に燃料噴射を行うリタード噴射との二つ
の方法があるが、早期噴射は着火時期制御の困難性等問
題を抱えていることから、リタード噴射を採用する。ま
とめていえば、大量EGRとリタード噴射との組み合せ
によりNOxとスモークとの同時低減を図るのがMK燃
焼である。なお参考文献としては「自動車技術会論文集
vol.28,No.1,1997−1,p.41」、
「同vol.28,No.2,1997−4,p.2
9」等がある。
【0008】しかしながら、MK燃焼では、圧縮上死点
以降で単段噴射を行い、比較的長期の予混合化期間を経
て緩やかに着火、燃焼させるため、燃費の悪化を招き易
く、また筒内温度が低いため燃焼が不安定であり、失火
や白煙を生じやすい。また大量のEGRを実行すること
が前提となるため、スモークの低減効果も大きく期待で
きない。
【0009】一方、特開2000−310150に示さ
れるように、パイロット噴射を通常より早期のタイミン
グで行い、メイン噴射を、パイロット噴射無しでは失火
するようなタイミングで行うようにするものがある。こ
れはNOxのさらなる低減を狙いとしている。
【0010】しかし、これはNOx低減には有効である
ものの、パイロット噴射による連続的な燃焼がやはりメ
イン噴射の前に発生し、パイロット噴射による燃焼によ
りスモークが発生するため、スモークの悪化要因とな
る。
【0011】従って、これらの技術では特にスモークの
改善が困難であり、今後の厳しい排ガス規制に対処する
には必ずしも十分でない。
【0012】そこでこの解決策として、本発明者らは、
低発熱率パイロット・メイン燃焼(噴射)なる燃焼(噴
射)形態を新たに発明し、先に出願を行った(特願20
01−315289)。低発熱率パイロット噴射は、パ
イロット噴射による最大熱発生率が60kJ/s以下に
抑えられるようにパイロット噴射の量とタイミングとを
制御することで、パイロット噴射によるスートの発生を
低減するものである。ところが、この新たな燃焼(噴
射)形態と上述したNOx吸蔵還元触媒とを組み合わせ
て更なる排ガス改善を図ろうとしたところ、排ガスが逆
に悪化してしまうケースがあることが試験により判明し
た。
【0013】具体的には、NOx吸蔵還元触媒は、燃料
が理論空燃比よりもリーンな空燃比で燃焼される運転状
態であるときに排ガス中のNOxを吸蔵し、NOxの吸
蔵量が一定量に達したと思われる時期がきたら、運転状
態を一定期間だけリッチに切り換えて(リッチスパイ
ク)排ガス中の酸素濃度を低下させ、排ガス中のHCや
COを還元剤として吸蔵したNOxを還元・放出するも
のであるが、上述した新しい燃焼形態で運転状態をリッ
チにすると、スモークの発生量が増加してしまう場合が
あることが分かった。
【0014】そこで、以上の問題に鑑みて本発明は創案
され、その目的は、低発熱率パイロット・メイン燃焼
(噴射)形態を実現する場合において、NOx吸蔵還元
触媒と組み合わせて使用することを可能にすることにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、筒内の燃焼室
に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置と、
燃料噴射弁から噴射される燃料の量とタイミングとをエ
ンジンの運転状態に基づき制御するエンジン制御装置
と、排気通路にリーンな運転状態にて排ガス中のNOx
を吸蔵し、リッチな運転状態で吸蔵したNOxを放出さ
せるNOx吸蔵還元触媒を有する圧縮着火式内燃機関に
おいて、少なくともパイロット噴射が、その噴射された
燃料による最大熱発生率が60kJ/s以下になるよう
な量とタイミングとで実行される低発熱率パイロット・
メイン噴射モードを有しており、上記NOx吸蔵還元触
媒に吸蔵されたNOxを放出すべく、運転状態をリッチ
な運転状態になるように燃料の噴射が制御される場合に
は、上記低発熱率パイロット・メイン噴射モードが禁止
されるものである。
【0016】これによれば、NOx吸蔵還元触媒にてN
Oxを還元・放出すべくリッチ運転状態とするときには
低発熱率パイロット・メイン噴射モードを禁止するた
め、運転状態のリッチ化に伴うスモークの増加を抑制す
ることができる。従って、NOx吸蔵還元触媒との両立
が可能となる。
【0017】ここで、上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵さ
れたNOxを放出すべく、運転状態をリッチな運転状態
になるように燃料の噴射が制御される場合には、運転状
態をリッチな運転状態になるように燃料の噴射が制御さ
れる前に上記低発熱率パイロット・メイン噴射モードが
禁止され、上記リッチな運転状態が終了した後、上記低
発熱率パイロット・メイン噴射モードの禁止が解除され
ることが好ましい。
【0018】また、上記リッチな運転状態の空燃比が略
理論空燃比であっても良い。
【0019】また、上記燃料噴射制御モードの切り換え
時に、燃料噴射量の目標値の変化量に対して所定のなま
し制御が実行されるのが好ましい。
【0020】更に、上記低発熱率パイロット・メイン噴
射モードにおいて、EGR装置によるEGRが実行され
るのが好ましい。
【0021】また本発明は、筒内の燃焼室に燃料を噴射
する燃料噴射弁を備えた燃料噴射装置と、燃料噴射弁に
高圧燃料を常時供給するコモンレールと、燃料噴射弁か
ら実際に噴射される燃料の量とタイミングとがエンジン
運転状態に基づいて予め決定された目標燃料噴射量と目
標燃料噴射タイミングとになるように燃料噴射弁を制御
するエンジン制御手段と、排気通路にリーンな運転状態
にて排ガス中のNOxを吸蔵し、リッチな運転状態で吸
蔵したNOxを放出させるNOx吸蔵還元触媒を有する
コモンレール式ディーゼルエンジンにおいて、少なくと
もパイロット噴射が、その噴射された燃料による最大熱
発生率が60kJ/s以下になるような量とタイミング
とで実行される低発熱率パイロット・メイン噴射モード
を有しており、上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたN
Oxを放出すべく、運転状態をリッチな運転状態になる
ように燃料の噴射が制御される場合には、上記低発熱率
パイロット・メイン噴射モードが禁止されるものであ
る。
【0022】また本発明は、燃料噴射弁から筒内の燃焼
室に噴射される燃料の量とタイミングとをエンジン運転
状態に基づき制御すると共に、排気通路にリーンな運転
状態にて排ガス中のNOxを吸蔵し、リッチな運転状態
で吸蔵したNOxを放出させるNOx吸蔵還元触媒を有
する圧縮着火式内燃機関の制御方法において、少なくと
もパイロット噴射が、その噴射された燃料による最大熱
発生率が60kJ/s以下になるような量とタイミング
とで実行される低発熱率パイロット・メイン噴射モード
を有しており、上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたN
Oxを放出すべく、運転状態をリッチな運転状態になる
ように燃料の噴射が制御される場合には、上記低発熱率
パイロット・メイン噴射モードを禁止するようにした方
法である。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】図1に本実施形態に係る圧縮着火式内燃機
関を示す。ここでいう圧縮着火式内燃機関とは、筒内の
燃焼室に噴射された燃料を筒内の圧縮により自己着火さ
せる形式のエンジンをいい、代表的にはディーゼルエン
ジン、特に本実施形態ではコモンレール式燃料噴射装置
を備えたコモンレール式ディーゼルエンジンである。図
は便宜上単気筒で示すが、当然多気筒であってもよい。
このエンジンは車両に搭載されるものである。
【0025】1がエンジン本体で、これはシリンダ
(筒)2、シリンダヘッド3、ピストン4、吸気ポート
5、排気ポート6、吸気弁7、排気弁8、及び燃料噴射
弁としてのインジェクタ9を備えた燃料噴射装置等から
構成される。シリンダ2内に燃焼室10が形成され、燃
焼室10内にインジェクタ9から燃料が噴射される。ピ
ストン4の頂部にキャビティ11が形成され、キャビテ
ィ11は燃焼室10の一部をなす。キャビティ11は底
部中央が隆起したリエントラント型燃焼室の形態をな
す。インジェクタ9から噴射される燃料は常にキャビテ
ィ11内に到達する。これは燃料がシリンダ2側壁等に
付着すると未燃HC排出等の問題が生じるからである。
【0026】吸気ポート5は吸気管12に、排気ポート
6は排気管13にそれぞれ接続される。またこのエンジ
ンにはターボチャージャ14が設けられ、排気エネルギ
を利用して吸気を過給するようになっている。15がタ
ービン、16がコンプレッサである。コンプレッサ16
の上流側に吸気量を検出するための吸気量センサ17が
設けられ、コンプレッサ16の下流側に吸気を冷却する
ためのインタクーラ18が設けられる。ただし、本発明
はターボチャージャーのない自然吸気エンジンにも有効
であることは勿論である、排気管(排気通路)13の下
流側には、NOx吸蔵還元触媒30が設けられている。
このNOx吸蔵還元触媒30は例えば、特許第2586
739号公報に開示されているものと同様のものであ
り、例えばアルミナを担体とし、この担体上にカリウム
K、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs等の
ようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa等
のようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムY
等のような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金
Ptのような貴金属とが担持されている。ディーゼルエ
ンジンでは通常、燃料は空燃比の高いリーン状態で燃焼
されるが、このリーン運転時に排ガス中のNOxがNO
x吸蔵還元触媒30に吸蔵される。そして、NOxの吸
蔵量が一定量に達したと思われる時期がきたら、運転状
態を一定期間だけリッチに切り換えて(リッチスパイ
ク)排ガス中の酸素濃度を低下させ、排ガス中のHCや
COを還元剤として吸蔵したNOxを還元・放出するも
のである。リッチスパイクを行う時の空燃比は通常、理
論空燃比付近の約14.6程度である。
【0027】さらにこのエンジンはEGR装置19も具
備している。EGR装置19は、吸気管12と排気管1
3とを結ぶEGR管20と、EGR量を調節するための
EGR弁21と、EGR弁21の上流側にてEGRガス
を冷却するEGRクーラ22とを備える。吸気管12に
おいては、EGR管20との接続部の上流側にて吸気を
適宜絞るための吸気絞り弁23が設けられる。
【0028】インジェクタ9はコモンレール24に接続
され、そのコモンレール24に貯留された噴射圧力相当
の高圧燃料(20〜200MPa)がインジェクタ9に
常時供給されている。コモンレール24には高圧ポンプ
25により加圧圧送された燃料が随時供給される。
【0029】このエンジンを電子制御するため電子制御
ユニット(エンジン制御装置、以下ECUという)26
が設けられる。ECU26は各種センサ類から実際のエ
ンジン運転状態を検出し、このエンジン運転状態に基づ
きインジェクタ9、EGR弁21、吸気絞り弁23、及
び高圧ポンプ25からの燃料圧送量を調節する調量弁
(図示せず)等を制御する。前記センサ類としては前記
吸気量センサ17の他、アクセル開度センサ、エンジン
回転センサ、コモンレール圧センサ(いずれも図示せ
ず)等が含まれ、実際の吸気量、アクセル開度、エンジ
ン回転速度(回転数)、エンジンのクランク角、コモン
レール圧等がECU26により検知されるようになって
いる。
【0030】インジェクタ9は、ECU26によりON
/OFFされる電磁ソレノイドを有し、電磁ソレノイド
がONのとき開状態となって燃料を噴射すると共に、電
磁ソレノイドがOFFのとき閉状態となって燃料噴射を
停止する。ECU26は、主にエンジン回転速度とアク
セル開度とから目標燃料噴射量と目標燃料噴射タイミン
グ(時期)とを決定し、実際にそのタイミングが到来し
たと同時に、目標燃料噴射量に応じた時間だけ電磁ソレ
ノイドをONする。目標燃料噴射量が多いほどON時間
は長期である。
【0031】より詳しく述べると、ECU26は、比較
的少量のパイロット噴射と比較的多量のメイン噴射とに
よる2段噴射を実行する。具体的には、ECU26によ
り、エンジン運転状態に基づく目標燃料噴射タイミング
と目標燃料噴射量とを、予め定められたマップ等に従っ
てパイロット噴射及びメイン噴射各々について決定し、
それぞれの目標燃料噴射タイミングが到来したら、それ
ぞれの目標燃料噴射量に応じた時間だけインジェクタ9
をONし、それぞれの目標燃料噴射タイミングと目標燃
料噴射量とに見合ったパイロット噴射とメイン噴射とを
実行する。
【0032】またECU26は、エンジンの運転状態に
応じて目標コモンレール圧を決定し、実際のコモンレー
ル圧が目標コモンレール圧に近づくようコモンレール圧
をフィードバック制御する。
【0033】インジェクタ9はシリンダ2と略同軸に位
置され、複数の噴孔から同時に放射状に燃料を噴射す
る。各燃料噴霧Lとシリンダ中心Cとのなす角は常に一
定である。
【0034】次に、このエンジンにおける燃料噴射制御
の内容を説明する。
【0035】このエンジンないしECU26は二つの燃
料噴射制御モードを備えている。一つは低発熱率パイロ
ット・メイン噴射モード(第一噴射モード)と称するも
のであり、もう一つは通常噴射モード(第二噴射モー
ド)と称するものである。
【0036】通常噴射モードとは、通常のパイロット噴
射及びメイン噴射を実行するモードで、それら燃料噴射
タイミング及び燃料噴射量は後述する第一噴射モードの
条件を満たさない全ての噴射を含むものである。この燃
焼形態についてはパイロット噴射により作られた火種を
基にメイン噴射による燃料が着火して燃焼され、基本的
に拡散燃焼の形態を採る。このような2段噴射により急
激な初期燃焼及び筒内圧力の急増が防止され、燃焼騒音
が抑制される。
【0037】次に、低発熱率パイロット・メイン噴射モ
ードについて説明する。
【0038】このモードは、スートの発生を抑えるた
め、パイロット噴射による最大熱発生率が60kJ/s
以下に抑えられるようにパイロット噴射の量とタイミン
グとを制御することを特徴とする。パイロット噴射によ
る最大熱発生率を抑えることで、パイロット噴射によっ
て気筒内に噴射された燃料がメイン噴射が行われるまで
の間、連続的な燃焼とならず、パイロット噴射によるス
ートの発生を抑制することでエンジンから排出されるス
ートの量を低減することができる。この燃焼(噴射)形
態を低発熱率パイロット・メイン燃焼(噴射)と称し、
この燃焼(噴射)形態が実現されるような燃料噴射制御
モードが低発熱率パイロット・メイン噴射モードであ
る。
【0039】図2は、パイロット噴射タイミングの変化
に対するシリンダ内の熱発生状況を調べた実機試験結果
である。横軸がクランク角である。縦軸については、最
下段の(a)図がインジェクタ9の電磁ソレノイドに流
れるソレノイド電流、(b)図が熱発生率(秒間当たり
の熱発生量;kJ/s)である。なお、(b)図の熱発
生率は筒内圧力の実測値から求めた計算結果である。
【0040】図は、メイン噴射のタイミング及び量と、
パイロット噴射の量とを一定とし、パイロット噴射のタ
イミングのみを変化させた四つの噴射形態〜を併記
している。、、、のパイロット噴射タイミング
はそれぞれ48°BTDC(−48°ATDC、以下同
様)、38°BTDC、28°BTDC、18°BTD
Cである。メイン噴射タイミングは5°ATDCであ
る。なおこれらタイミングは全てインジェクタ9のON
開始時刻で規定している。
【0041】一般的なパイロット噴射タイミングはなる
べくメイン噴射に近づけるように設定される。現在広く
使われているハードウェアの制約下では2500rpm
以下の中低速回転において15〜20°BTDC程度で
あるので、は一般的なパイロット噴射タイミングとい
える。これに対して、、、という順でパイロット
噴射タイミングが順次早期化ないし進角(アドバンス)
されている。
【0042】一方、本実施形態のメイン噴射タイミング
は圧縮上死点TDC以降に設定され、同一の運転条件に
おける一般的なメイン噴射タイミングに比較して遅角側
に設定される。即ちメインリタード噴射が実行されるの
である。これは筒内温度が低下した領域で、燃料の希薄
化、予混合化を促進してスモークの低減を図るためであ
る。
【0043】(b)図から理解されるように、、の
場合、パイロット噴射による熱発生率の顕著なピークが
見られ、、の場合このような顕著なピークは見られ
ない。そしてからへとパイロット噴射タイミングが
遅角化されるにつれ、熱発生率のピーク値(極大値)は
大きくなる傾向にある。、の場合、ピーク発生時期
でパイロット噴射による燃料(軽油)が連続的な着火或
いは燃焼を生じ、そのためスートが発生しているものと
予測される。従って、のパイロット噴射タイミング
はあまり好ましいものではない。
【0044】逆に、、の場合のように、パイロット
噴射タイミングが早いほど、筒内圧力及び筒内温度が低
い状態で燃料が噴射されるので、着火可能な筒内圧力及
び筒内温度に達するまでに十分な予混合化が可能にな
り、熱発生率の顕著なピークは生じず、スートの発生も
ないと考えられる。
【0045】この結果から、本発明者らは、パイロット
噴射による熱発生率に着目し、後述の試験を行ったとこ
ろ、パイロット噴射による熱発生率ピークと、メイン噴
射を合わせて実施した場合のスートの発生との間に強い
相関関係があることを新たに見出した。そこでパイロッ
ト噴射における燃料噴射量と燃料噴射タイミングとを後
述のように最適に定めることとした。
【0046】ところで、図示されるように、、では
、に比較して熱発生率のピークが生じなかった分、
パイロット噴射燃料が上死点後に実行されるメイン噴射
燃料と共に燃焼する傾向が強くなり、メイン噴射燃料の
燃焼時に熱発生率のピーク値が高くなる傾向にある。メ
イン噴射後に生じる熱発生率のピーク値は、で最も高
く、以下、、となるにつれ低くなっていく。つま
りパイロット噴射が早期に行われる程着火おくれ期間が
長くなり、メイン噴射燃料と一緒に一気に燃焼する傾向
が強くなる。
【0047】このように早期パイロット噴射では、通常
のパイロット噴射に比べ、上死点後に実行されるメイン
噴射後に高い熱発生率のピーク値が得られるので、燃焼
が比較的急激に行われ、出力の向上及び燃費低減が見込
まれる。
【0048】前述したように、パイロット噴射タイミン
グは早期の方が良いということがいえるが、あまりに早
期だとピストンがかなり下方に位置するためインジェク
タから噴射された燃料がキャビティに入らなくなってし
まう。そうなるとシリンダ側壁等に噴射燃料が付着し、
オイル希釈化、未燃HC増大等の問題を生じてしまう。
従って、パイロット噴射タイミングの進角側の限界は、
インジェクタから噴射された燃料がぎりぎりキャビティ
に入るようなタイミングが好ましい。言い換えれば、図
1に示されるように、インジェクタ9から噴射された燃
料Lがキャビティ11の入口端縁27を通過するような
クランク角になった時である。このクランク角は通常約
50°BTDC程度である。
【0049】一方、パイロット噴射タイミングの遅角側
の限界と、パイロット噴射量とは、上記のような熱発生
率及びスートの相関関係を考慮して最適に定めるべきで
ある。即ち、パイロット噴射タイミングをあまりに遅角
させたり、パイロット噴射量をあまりに多く設定してし
まうと、顕著な熱発生率のピークが生じ、スートが発生
してしまう。
【0050】そこでこれらを決定するために行った試験
の結果が図5及び図6である。
【0051】図5は、パイロット噴射タイミングとパイ
ロット噴射による最大熱発生率との関係を調べたもの
で、横軸がパイロット噴射タイミング(°ATDC)、
縦軸が最大熱発生率(kJ/s;キロジュール毎秒)で
ある。また図6は、パイロット噴射による最大熱発生率
とスート(煤)との関係を調べたもので、横軸がスート
(g/kWh)、縦軸が最大熱発生率(kJ/s)であ
る。ここでいう最大熱発生率とは、図2の熱発生率の線
図において上死点前に生じている、パイロット噴射によ
る熱発生率のピーク値(最大値)のことである。
【0052】試験は、気筒当たりの排気量約800cc
の多気筒エンジンにおける2種類のパイロット噴射量
(A;3mm3/st、B;6mm3/st)と、気筒当
たりの排気量約400ccの多気筒エンジンにおける1
種類のパイロット噴射量(C;1.2mm3 /st)と
に対して行った。A〜Cそれぞれについて、パイロット
噴射タイミングを−10〜−50°ATDCの範囲で変
化させてグラフ中の三本の線図A,B,Cを得ている。
共通の試験条件としては、エンジンの出力トルクがA〜
C各条件で一定になるようにトータルの燃料噴射量が設
定され、総噴射量が中負荷程度に設定され、メイン噴射
タイミングが圧縮上死点以降に設定される。ここでメイ
ン噴射は、圧縮上死点以降であってパイロット噴射無し
でも緩やかに燃焼が進行する程度のタイミングで行わ
れ、且つ、メイン噴射が完了するまでに着火しない程度
のタイミングと量とで行われる。ちなみに、メイン噴射
を上死点前及び上死点付近で行ったのでは即座に着火が
始まり、スモーク及びNOxを低減することはできな
い。
【0053】なお、これらA,B,Cにそれぞれ対応す
るのが図2,図3,図4のグラフである。言い換えれ
ば、A,B,Cの各条件における試験の結果に基づき図
2,図3,図4のグラフが作成され、さらに図5,図6
のグラフが作成される。
【0054】図5から分かるように、パイロット噴射タ
イミングが早期化(アドバンス)されるほど最大熱発生
率が小さくなる傾向にある。また、パイロット噴射量が
少ないほど最大熱発生率が小さくなり、タイミングの遅
角化に対する最大熱発生率の上昇率(つまり線図の傾
き)も小さくなる傾向にある。
【0055】次に、図6においては、線図が左側に向か
うにつれパイロット噴射タイミングが早期化され、最大
熱発生率が減少し、スートも減少する。そして最大熱発
生率が60kJ/s以下であれば、A,B,Cいずれの
条件においても良好なスートレベルを得られる。
【0056】そこで、この結果から、パイロット噴射に
おける燃料噴射量と燃料噴射タイミングとは、燃焼室内
における最大熱発生率が60kJ/s以下となるような
燃料噴射量と燃料噴射タイミングとに設定するものとす
る。このような燃料噴射量と燃料噴射タイミングとで行
われるパイロット噴射を低発熱率パイロット噴射と称
す。言い換えれば、最大熱発生率が60kJ/sとなる
パイロット噴射量及びタイミングが、噴射量の上限値及
びタイミングの遅角側限界値である。これにより、パイ
ロット噴射燃料単独での燃焼が防止され、結果的に上死
点以降に実施されるメイン噴射と合わせてスモークが抑
制できる。
【0057】図5に戻って、最大熱発生率が60kJ/
s以下となるのは、条件A(3mm 3/st)では約−
39°ATDC(39°BTDC)以前、条件B(6m
3/st)では約−40°ATDC(40°BTD
C)以前、条件C(1.2mm3/st)では約−27
°ATDC(27°BTDC)以前である。そこでこれ
らA,B,Cの条件では各々に対応するパイロット噴射
タイミングに設定するものとする。
【0058】以上のような、最大熱発生率が60kJ/
s以下となるようなパイロット噴射を伴う本実施形態の
燃焼(噴射)形態を低発熱率パイロット・メイン燃焼
(噴射)と称する。この燃焼形態をまとめていうと以下
のようになる。まず、上記のような最適量、最適タイミ
ングでパイロット噴射を行うと、この噴射燃料は燃焼室
内に十分拡散して希薄化、予混合化し、シリンダ内での
燃料が連続的に着火、燃焼することが抑制される。そし
てこの状態は圧縮上死点TDCを越えてメイン噴射の燃
焼時期まで持続される。上死点以降に設定されたメイン
噴射時期においてメイン噴射が実行されると、通常より
筒内圧力及び温度が低いため、通常より長期の着火遅れ
期間を経て、メイン噴射燃料がパイロット噴射による希
薄予混合気と一緒に着火、燃焼する。このとき既にメイ
ン噴射燃料の予混合化も十分進んでいるため、燃焼によ
るスートの発生は抑えられる。
【0059】低発熱率パイロット・メイン燃焼(以下
「本燃焼方式」ともいう)によれば、リタードメイン噴
射に併せて低発熱率パイロット噴射を行うため、単段噴
射のリタード燃焼に比べメイン噴射後の予混合化期間を
短縮でき、例えば図2のに示されるようにメイン噴射
後の燃焼をシリンダ内が低温である状態で急激に行うこ
とができる。これにより燃費の悪化を防止できる。また
パイロット噴射燃料の予混合化によりメイン噴射燃料燃
焼時の筒内温度を高くすることができ、燃焼を安定化さ
せることができる。
【0060】一方、本燃焼方式は上記のような最適量、
最適タイミングでパイロット噴射を行うため、メイン噴
射前におけるパイロット噴射燃料の燃焼は発生せず、特
開2000−310150の技術に比較してスモークを
改善できる。
【0061】このように、パイロット噴射を行い且つ圧
縮上死点以降にリタードメイン噴射を行う圧縮着火式内
燃機関において、パイロット噴射の量とタイミングとを
適正化することができ、パイロット噴射によるスモーク
を抑制することができる。
【0062】なお、低発熱率パイロット・メイン噴射モ
ード(第一噴射モード)においてはEGR装置19によ
るEGRが実行され、NOxが抑制される。
【0063】さて、以上のような利点を有した本燃焼方
式ではあるが、エンジンの運転状態が低負荷領域のとき
に、燃料の着火性の悪化により燃焼が不安定になるとい
う問題がある。
【0064】そこで、本実施形態のエンジンは、低負荷
領域では燃料噴射制御モードを前記低発熱率パイロット
噴射とならないタイミングと量によりパイロット噴射を
行う通常噴射モード(第二噴射モード)に切り換えて燃
料噴射制御を実行する。以下これについて詳しく説明す
る。
【0065】図7はECU26に予め記憶された燃料噴
射制御モードの切換えマップで、ECU26はこのマッ
プと、実際のエンジン回転数及び負荷とを比較して、第
一噴射モード又は第二噴射モードのいずれか一方を選択
して燃料噴射制御を実行する。このマップから分かるよ
うに、低負荷且つ低回転側の領域IIでは第二噴射モード
による燃料噴射制御を実行し、高負荷となる(低負荷を
越える)か又は高回転側となる領域I では第一噴射モー
ドによる燃料噴射制御を実行する。ここで、低負荷領域
において一律第二噴射モードとしてもよいが、低負荷で
あっても高回転側の領域では燃焼着火性悪化の問題が発
生しないので、低負荷であっても高回転側の領域では第
一噴射モードによる燃料噴射制御を実行し、本燃焼方式
による利益を得るようにしている。なお、全運転領域の
中で第一噴射モードを使用する領域I は第二噴射モード
を使用する領域IIより格段に広いので、広範な運転領域
で本燃焼方式による利益を得ることができる。
【0066】このように、低回転側のみではあるが、低
負荷領域では燃料噴射制御モードを第二噴射モードに切
り換えるので、燃焼の不安定を抑制することができる。
【0067】さて、以上のような利点を有した本実施形
態ではあるが、第一噴射モード(低発熱率パイロット・
メイン噴射モード)で運転時に、上記NOx吸蔵還元触
媒30にて排ガスを還元・放出するためにリッチスパイ
クを行うと、スモークの発生量が増加する場合もあるこ
とが試験で確認された。
【0068】そこで、本実施形態のエンジンは、第一噴
射モードで運転しているときに、NOx吸蔵還元触媒に
てNOxを放出すべく運転状態をリッチな運転状態にな
るように燃料の噴射が制御される(リッチスパイクを行
う)時期が到来したら、第一噴射モード(低発熱率パイ
ロット・メイン噴射モード)を禁止して、第二噴射モー
ド(通常噴射モード)による燃料噴射制御を実行する。
以下これについて詳しく説明する。
【0069】図8は、NOx吸蔵還元触媒においてNO
xを還元するためにリッチスパイクを行う周期を示す図
であり、横軸は時間を示しており、縦軸λは空気過剰率
であって実際の空燃比と理論空燃比との比率を示してい
る。従って、λが大きくなるほど空燃比はリーンとな
り、逆にλが小さくなるほどリッチとなる。また、λ=
1.0のとき空燃比は理論空燃比(約14.6)と等し
い。
【0070】通常のリーン運転時にNOx吸蔵還元触媒
に吸蔵されるNOxの量は、エンジン運転状態に基づい
て予め推定されたマップ等に従って算出され、NOx吸
蔵量が一定量に達したならば、リッチスパイクを行って
NOxを還元・放出する。その周期は図に示すように、
20〜120sec程度リーン運転する毎に、0.5〜
2secの期間だけ瞬間的にリッチとする。
【0071】リッチスパイクを実行する方法としては、
燃料の噴射量を増加させる(インジェクタ9の電磁ソレ
ノイドをONとする時間を長くする)燃料系制御と、吸
気を絞る、および/又はEGR量を増加させる吸気系制
御による二通りの方法があり、燃料噴射制御モード(第
一噴射モード、第二噴射モード)の切換タイミングは、
これらリッチスパイクの実行方法によって異なる。
【0072】まず、図9は燃料系制御によりリッチスパ
イクを実行する場合を示しており、上段がリーン・リッ
チ切換タイミング、下段が燃料噴射制御モードの切換タ
イミングを示している。
【0073】まず、時間T1においてリーンからリッチ
への切換信号が発生し、それと同時に燃料噴射制御モー
ドの第一噴射モードから第二噴射モードへの切換信号が
発生する。
【0074】燃料系制御によるリッチスパイクを実行す
る場合、リーン・リッチ切換信号が発生してから実際に
インジェクタ9の電磁ソレノイドON時間を長期化する
までの間に0.1〜0.5s程度の遅延時間t1を設け
ている。従って、実際の運転状態は、T1から遅延時間
t1が経過した時間T2においてリッチ状態へと切り換
わる。
【0075】一方、燃料噴射制御モードは切換信号の発
生と同時に第二噴射モードへ切り換えられる。これによ
って、燃料噴射制御モードは、運転状態がリッチな運転
状態になるように燃料の噴射が制御される前に確実に第
二噴射モードへと切り換えられる。即ち、運転状態がリ
ッチな運転状態になるように燃料の噴射が制御される前
に第一噴射モードが禁止されるのである。
【0076】次に、T2から一定期間が経過(リッチス
パイクが終了)した時間T3においてリッチからリーン
への切換信号が発生する。リッチからリーンへと切り換
える場合は上記のような遅延時間は設けておらず、切換
信号の発生と同時にインジェクタ9の電磁ソレノイドO
N時間が短期化されて直ちにリーンへと切り換わる。
【0077】一方、燃料噴射制御モードは、時間T3か
ら遅延時間t2=0.1〜0.5s程度経過した時間T
4にて切換信号が発生して第二噴射モードから第一噴射
モードへと切り換えられる(第一噴射モードの禁止が解
除される)。従って、燃料噴射制御モードは、リッチな
運転状態が終了して運転状態がリーンへと戻った後に確
実に第一噴射モードへ切り換えられる。
【0078】次に、図10は吸気系制御によりリッチス
パイクを実行する場合を示しており、図9と同様に、上
段がリーン・リッチ切換タイミング、下段が燃料噴射制
御モードの切換タイミングを示している。
【0079】まず、時間T1においてリーンからリッチ
への切換信号が発生し、それと同時に燃料噴射制御モー
ドの第一噴射モードから第二噴射モードへの切換信号が
発生する。
【0080】吸気系制御によるリッチスパイクを実行す
る場合、リーン・リッチ切換信号が発生すると同時に、
吸気絞り弁23の絞り作動あるいはEGR弁21の開放
作動が行われる。
【0081】一方、燃料噴射制御モードもT1にて切換
信号の発生と同時に第二噴射モードへ切り換えられる。
【0082】吸気系制御によるリーン・リッチ切換を実
行する場合、吸気絞り弁23及び/又はEGR弁21の
作動に時間を要すること、吸気絞り弁23及び/又はE
GR弁21から燃焼室10までにある程度の距離がある
ことから切換動作を行ってから実際に空燃比が切り換わ
るまでに作動遅れ時間t3=2〜5s程度かかるため、
燃料系制御で説明したような遅延時間t1は設定してい
ない。即ち、切換信号の発生と同時に吸気絞り弁23及
び/又はEGR弁21の作動を行っても、燃料噴射制御
モードは運転状態がリッチな運転状態となる前に確実に
第二噴射モードへ切り換えられる(第一噴射モードが禁
止される)。
【0083】次に、T2から一定期間が経過(リッチス
パイクが終了)した時間T3においてリッチからリーン
への切換信号が発生し、それと同時に吸気絞り弁23及
び/又はEGR弁21が作動される。
【0084】一方、燃料噴射制御モードは、実際に運転
状態がリーンへと切り換わるまでの作動遅れ時間t4=
2〜5sを考慮して、T3から2〜5sが経過したT4
にて切換信号が発生して第二噴射モードから第一噴射モ
ードへと切り換えられる。従って、燃料噴射制御モード
は、リッチな運転状態が終了して運転状態がリーンへと
戻った後に確実に第一噴射モードへと切り換えられる
(第一噴射モードの禁止が解除される)。
【0085】このように、第一噴射モードで運転時に、
NOx吸蔵還元触媒30において排ガスの還元・放出を
行うべくリッチスパイクを行うときには、第一噴射モー
ドを禁止し、燃料噴射制御モードを第二噴射モードへと
切り換えることによって、リッチ運転状態と第一噴射モ
ードとの組合せに伴うスモークの増加という問題を回避
することができる。従って、第一噴射モードとNOx吸
蔵還元触媒とを組み合わせて使用することが可能とな
る。
【0086】ところで、燃料噴射制御モードの切換えに
は次のような問題がある。即ち、第一噴射モードと第二
噴射モードとでは、それぞれ異なる目標燃料噴射タイミ
ング及び目標燃料噴射量のマップが予め用意され、EC
U26に記憶されている。そして、切換えが行われると
き、燃料噴射タイミング及び量が変化することがあり、
車両に搭載されたエンジンの場合だとその変化に基づく
切換えショック(トルク変動)が乗員に認識されてしま
う。
【0087】そこで、この切換えショックを防止するた
め、以下に示す如きなまし制御を実行するのが好まし
い。
【0088】図11はなまし制御の内容を示し、上段に
燃料噴射制御モードを、下段にメイン噴射タイミングを
示す。下段に示されるように、モード切換点付近におけ
るメイン噴射タイミングの値(より具体的にはメイン噴
射の目標燃料噴射タイミングの値)は両モードでそれぞ
れ異なる。第二噴射モードの値をt1、第一噴射モード
の値をt2とする。
【0089】まず、リッチスパイクが終了して燃料噴射
制御モードが第二噴射モードから第一噴射モードに切り
換わったとき(a1)、メイン噴射タイミングは即座に
第二噴射モードの値t1から第一噴射モードの値t2へ
と切り換えず、第二噴射モードの値t1から徐々に第一
噴射モードの値t2へと移行させる(b1)。なお図示
例は移行に関してのランプ関数を設定した場合で、その
ランプ定数は切換えショックが出ない範囲の値に設定さ
れる。
【0090】次に、リッチスパイクを行う時期に到達し
て燃料噴射制御モードが第一噴射モードから第二噴射モ
ードに切り換わったとき(a2)にも、メイン噴射タイ
ミングは即座に第一噴射モードの値t2から第二噴射モ
ードの値t1へと切り換えず、第一噴射モードの値t2
から徐々に第二噴射モードの値t1へと移行させる(b
2)。このときの移行も前記同様にランプ関数に従って
行われる。
【0091】このようななまし制御を実行することによ
り、メイン噴射タイミングの急変が防止され、燃料噴射
制御モードの切換え時における切換えショックを防止で
きる。
【0092】なお、図示例はメイン噴射タイミングにつ
いてのものであったが、このようななまし制御はメイン
噴射量、パイロット噴射タイミング及びパイロット噴射
量についても必要に応じて行うのが好ましい。
【0093】また、本実施形態のエンジンでは、ターボ
チャージャ14のタービン15に設けられた可変ベーン
をエンジン運転状態に応じて制御すると共に、吸気絞り
弁23をエンジン運転状態に応じて制御し、吸気量を制
御可能としてある。そして可変ベーン開度、吸気絞り弁
開度、吸気量については、エンジン運転状態に応じた目
標値をそれぞれ各燃料噴射制御モード別にマップ形式で
ECU26に予め記憶させておき、実際のエンジン運転
状態とマップとを比較して各目標値を決定するようにし
ている。
【0094】この場合において、燃料噴射制御モードの
切換え時に、各モード間で可変ベーン開度、吸気絞り弁
開度又は吸気量の目標値が変化するようなときは、これ
らについても上述のなまし制御を実行するのが好まし
い。
【0095】以上、燃料噴射制御モードの切換に際し、
上記のようななまし制御を実行することで、モード切換
に伴うドライバビリティへの影響を抑えることが可能と
なり、切換えショック等の発生を抑えることができる。
そして乗員に切換えの事実を認識されるのも防止でき、
商品性能上も切換えを行うことが可能になって、エンジ
ンの全運転領域に亘って排ガスを改善することができ
る。上記各切換制御は適宜組み合わせることが可能であ
る。
【0096】更に、このようななまし制御は、燃料噴射
制御モードの切換についてのみでなく、上述したリーン
・リッチ切換時にも実行することが好ましい。即ち、リ
ッチスパイクを実行するときに、空燃比を瞬時に切り換
えるのではなく、所定時間をかけて除々に変更するよう
に制御することで、リッチスパイク時のショックがある
場合にはこれを防止できる。
【0097】なお、本実施形態では本発明にいう第二噴
射モードの一例として通常噴射モードを挙げたが、これ
に限らず、要は、第一噴射モードの条件を満たさない条
件に基づいてパイロット噴射及びメイン噴射を実行する
全ての噴射モードを第二噴射モードとすることができ
る。
【0098】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、低発熱率
パイロット・メイン燃焼方式により排ガス中のスモーク
を防止でき、かつNOx吸蔵還元触媒と組み合わせて使
用できるという、優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る圧縮着火式内燃機関を
示す構成図である。
【図2】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係
を示したグラフである。
【図3】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係
を示したグラフである。
【図4】パイロット噴射タイミングと熱発生率との関係
を示したグラフである。
【図5】パイロット噴射タイミングと最大熱発生率との
関係を示したグラフである。
【図6】スートと最大熱発生率との関係を示したグラフ
である。
【図7】燃料噴射制御モードの切換マップである。
【図8】リッチスパイクを行う周期を示すグラフであ
る。
【図9】燃料系制御によりリッチスパイクを実行する場
合における、リーン・リッチおよび燃料噴射制御モード
の切換タイミングを示す図である。
【図10】吸気系制御によりリッチスパイクを実行する
場合における、リーン・リッチおよび燃料噴射制御モー
ドの切換タイミングを示す図である。
【図11】なまし制御の内容を示すタイムチャートであ
る。
【符号の説明】
1 エンジン本体 2 シリンダ 4 ピストン 9 インジェクタ 10 燃焼室 11 キャビティ 19 EGR装置 24 コモンレール 26 電子制御ユニット(制御手段) 30 NOx吸蔵還元触媒
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02D 41/02 380 F02D 41/02 380E 41/04 380 41/04 380Z 41/14 310 41/14 310F 310L 41/40 41/40 C 43/00 301 43/00 301H 301J 301N 301W F02M 25/07 570 F02M 25/07 570D 570J Fターム(参考) 3G062 AA01 AA05 BA04 BA05 BA06 CA06 DA01 DA02 EA10 ED01 ED04 ED08 ED10 FA02 FA03 FA23 GA01 GA04 GA06 GA15 3G084 AA01 BA05 BA08 BA09 BA13 BA15 BA19 BA20 CA03 CA04 DA10 EA04 EA11 EB08 EB25 EC01 EC03 FA07 FA10 FA33 FA38 3G091 AA02 AA10 AA11 AA18 AB03 AB06 AB09 BA01 BA14 CB02 CB03 CB07 DA05 DB01 DB10 DC03 DC07 EA01 EA02 EA03 EA05 EA08 EA09 FA08 FB09 FB10 FB11 FB12 GB02W GB03W GB04W GB04X GB05W GB06W GB10X HB05 HB06 3G092 AA02 AA06 AA17 AA18 AB03 BA01 BA03 BA04 BA07 BB01 BB06 BB13 DC08 DC15 DE01S DE03S DF01 DF02 DF06 EA05 EA06 EA11 EA14 EA15 EA22 EB01 EC09 FA03 FA05 FA11 FA17 FA18 FA21 GA05 GA17 HA01X HA15X HB01X HB02X HE01Z HE03Z 3G301 HA02 HA04 HA11 HA13 JA03 JA24 JA25 KA06 KA08 KA23 KA24 LA01 LB11 LB12 MA01 MA11 MA18 MA23 NA01 NA08 NC02 ND03 NE13 NE14 PA01A PA16Z PB03A PB05Z PD15Z PE01Z PE03Z

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒内の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射
    弁を備えた燃料噴射装置と、該燃料噴射弁から噴射され
    る燃料の量とタイミングとをエンジンの運転状態に基づ
    き制御するエンジン制御装置と、排気通路にリーンな運
    転状態にて排ガス中のNOxを吸蔵し、リッチな運転状
    態で吸蔵したNOxを放出させるNOx吸蔵還元触媒を
    有する圧縮着火式内燃機関において、 少なくともパイロット噴射が、その噴射された燃料によ
    る最大熱発生率が60kJ/s以下になるような量とタ
    イミングとで実行される低発熱率パイロット・メイン噴
    射モードを有しており、 上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを放出すべ
    く、運転状態をリッチな運転状態になるように燃料の噴
    射が制御される場合には、上記低発熱率パイロット・メ
    イン噴射モードが禁止されることを特徴とする圧縮着火
    式内燃機関。
  2. 【請求項2】 上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたN
    Oxを放出すべく、運転状態をリッチな運転状態になる
    ように燃料の噴射が制御される場合には、運転状態をリ
    ッチな運転状態になるように燃料の噴射が制御される前
    に上記低発熱率パイロット・メイン噴射モードが禁止さ
    れ、上記リッチな運転状態が終了した後、上記低発熱率
    パイロット・メイン噴射モードの禁止が解除される請求
    項1記載の圧縮着火式内燃機関。
  3. 【請求項3】 上記リッチな運転状態の空燃比が略理論
    空燃比である請求項1又は2記載の圧縮着火式内燃機
    関。
  4. 【請求項4】 上記燃料噴射制御モードの切り換え時
    に、燃料噴射量の目標値の変化量に対して所定のなまし
    制御が実行される請求項1乃至3いずれかに記載の圧縮
    着火式内燃機関。
  5. 【請求項5】 上記低発熱率パイロット・メイン噴射モ
    ードにおいて、EGR装置によるEGRが実行される請
    求項1乃至4いずれかに記載の圧縮着火式内燃機関。
  6. 【請求項6】 筒内の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射
    弁を備えた燃料噴射装置と、該燃料噴射弁に高圧燃料を
    常時供給するコモンレールと、燃料噴射弁から実際に噴
    射される燃料の量とタイミングとがエンジン運転状態に
    基づいて予め決定された目標燃料噴射量と目標燃料噴射
    タイミングとになるように燃料噴射弁を制御するエンジ
    ン制御手段と、排気通路にリーンな運転状態にて排ガス
    中のNOxを吸蔵し、リッチな運転状態で吸蔵したNO
    xを放出させるNOx吸蔵還元触媒を有するコモンレー
    ル式ディーゼルエンジンにおいて、 少なくともパイロット噴射が、その噴射された燃料によ
    る最大熱発生率が60kJ/s以下になるような量とタ
    イミングとで実行される低発熱率パイロット・メイン噴
    射モードを有しており、 上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを放出すべ
    く、運転状態をリッチな運転状態になるように燃料の噴
    射が制御される場合には、上記低発熱率パイロット・メ
    イン噴射モードが禁止されることを特徴とするコモンレ
    ール式ディーゼルエンジン。
  7. 【請求項7】 燃料噴射弁から筒内の燃焼室に噴射され
    る燃料の量とタイミングとをエンジン運転状態に基づき
    制御すると共に、排気通路にリーンな運転状態にて排ガ
    ス中のNOxを吸蔵し、リッチな運転状態で吸蔵したN
    Oxを放出させるNOx吸蔵還元触媒を有する圧縮着火
    式内燃機関の制御方法において、 少なくともパイロット噴射が、その噴射された燃料によ
    る最大熱発生率が60kJ/s以下になるような量とタ
    イミングとで実行される低発熱率パイロット・メイン噴
    射モードを有しており、 上記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを放出すべ
    く、運転状態をリッチな運転状態になるように燃料の噴
    射が制御される場合には、上記低発熱率パイロット・メ
    イン噴射モードを禁止することを特徴とする圧縮着火式
    内燃機関の制御方法。
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