JP2003200172A - パルスパワーを利用した殺藻装置 - Google Patents

パルスパワーを利用した殺藻装置

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和生 石橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 太陽電池を電源とし、パルス幅が非常に短い
大電力を発生するパルスパワーを利用して閉鎖性水域で
発生する藻を殺死し、殺藻を通じて閉鎖水域浄化を効率
的に且つ在来方式に比べて格段な低コストで実現するこ
とにある。 【解決手段】 パルスパワー発生部5と、正極の高電圧
電極61とアース極の透過性枠体62からなるプラズマ
反応部6と、から構成されるパルス発生装置4を可動型
浮体2に取り付け、該パルス発生装置4の電源となる太
陽電池3を可動型浮体2に取り付け、上記プラズマ反応
部6を水中に配置すると共に、水中に配置されるプラズ
マ反応部6の正極の高電圧電極61の外周にこれを囲ん
でアース極の透過性枠体62を配置した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、湖沼、
池、ダム、ゲートで閉じられる河川上流側などの閉鎖性
水域で発生する藻を殺死させる殺藻装置に係り、特に、
太陽電池を電源とし、パルス幅が非常に短い大電力を発
生するパルスパワーを利用して閉鎖性水域で発生する藻
を殺死させるパルスパワーを利用した殺藻装置に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、湖沼、池、ダム、ゲートで閉じ
られる河川上流側などの富栄養化した閉鎖性水域に多発
する植物性プランクトン、例えば藻の増殖に伴って、水
面が緑色の物質に覆われ、水域の水質環境保全上、さら
に景観上、大きな問題とされる場合が内外に多発してい
る。これに対して従来、多くの殺藻対策が試みられた
が、それらは大別して次のようなものである。 (1)集約除去 (a)機械的集約・系外除去 (b)気泡浮上併用集約・系外除去 (2)分解・沈降 (a)バイオ製剤利用分解 (b)バイオ製剤利用沈降 (3)殺藻/細胞破壊 (a)機械的方法 (イ)高圧利用 (ロ)衝撃圧利用 (ハ)その他 (b)化学的方法 (イ)殺藻剤注入 (4)増殖条件の抑制制御 水温、PH、窒素、燐、成分比変更等のコントロール
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の(1)〜(4)のすべての対策が試みられた
が、比較的明らかな効果が認められたのは(3)の殺藻
剤注入位で、他は大きな努力の割に効果は殆どないか、
あっても極めて僅かであってコスト有効性が極めて低い
のが実態であった。
【0004】この発明は、上記のような課題に鑑み、そ
の課題を解決すべく創案されたものであって、その目的
とするところは、太陽電池を電源とし、パルス幅が非常
に短い大電力を発生するパルスパワーを利用して閉鎖性
水域で発生する藻を殺死し、殺藻を通じて閉鎖水域浄化
を効率的に且つ在来方式に比べて格段な低コストで実現
することのできるパルスパワーを利用した殺藻装置を提
供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するた
めに、この発明は、パルス幅の非常に短い大電力を発生
するパルスパワー発生部と、パルスパワー発生部で発生
するパルスを放電する正極の高電圧電極とアース極の透
過性枠体からなるプラズマ反応部と、から構成されるパ
ルス発生装置を可動型浮体に取り付け、該パルス発生装
置の電源となる太陽電池を可動型浮体に取り付け、上記
プラズマ反応部を水中に配置すると共に、水中に配置さ
れるプラズマ反応部の正極の高電圧電極の外周にこれを
囲んでアース極の透過性枠体を配置し、正極とアース極
の電極間に印加したパルスパワーにより透過性枠体の内
側水中の藻を殺死する手段よりなるものである。
【0006】ここで、好ましい態様として、正極の高電
圧電極は多電極からなり、アース極の透過性枠体は正極
を囲むスクリーンからなり、プラズマ反応部は昇降自在
であるのがよい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面に記載の発明の実施の
形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。こ
こで、図1はパルスパワーを利用した殺藻装置の一部切
り欠き側面図、図2はパルスパワーを利用した殺藻装置
の要部概略側面図、図3はパルスパワーを利用した殺藻
装置の一部切り欠き平面図、図4はパルスパワーを利用
した殺藻装置の一部切り欠き底面図、図5はパルス発生
装置の概略構成図である。
【0008】図において、パルスパワーを利用した殺藻
装置1は、パルスパワーを利用して閉鎖性水域に繁殖す
る藻aを殺死する装置で、水中に浮かぶ可動型浮体2、
可動型浮体2に取り付けられた太陽電池3、可動型浮体
2に取り付けられパルスパワー発生部5とプラズマ反応
部6からなるパルス発生装置4などから構成される。
【0009】可動型浮体2は、例えば、湖沼、池、ダ
ム、ゲートで閉じられる河川上流側などの閉鎖性水域に
浮かべて使用される移動可能な浮き構造物であり、板状
のフロートデッキ21、フロートデッキ21の縁側下部
に取り付けられたフロート22、フロートデッキ21の
中央に取り付けられた機器格納室23などから構成され
る。
【0010】フロートデッキ21は、例えば正方形又は
多角形の板状の形状からなり、その四角部の下部にフロ
ート22が取り付けられている。フロートデッキ21の
中央上部にはパルス発生装置4のパルスパワー発生部5
を構成する機器類を格納する機器格納室23が設けられ
ている。フロートデッキ21を挟んで機器格納室23の
真下下方にはパルス発生装置4のプラズマ反応部6が取
り付けられている。
【0011】フロート22は、可動型浮体2を浮かせる
ものであり、例えば内部が空洞になっていて、浮力で水
に浮くようになっている。フロート22の側周面は外側
に面する側が丸みを帯びた凸型円弧状に形成されてい
て、水流が流入し易い形状に形成されている。また、フ
ロート22の内側の側周面は丸みを帯びた凹型円弧状に
形成されていて、内部のフロートデッキ21の下方に配
置される円形の外部スクリーン24に当接しないように
配慮されている。
【0012】太陽電池3は、パルス発生装置4の電力源
であり、太陽の光エネルギーを利用して発電する。太陽
電池3は夜は発電しないが、藻aの活動時期は太陽の出
ている日中であり、藻aの活動時期と太陽電池3の発電
時期とは一致していて、太陽電池3の特性を遺憾なく利
用できる。太陽電池3はパネル式になっていて、機器格
納室23の屋根に上向き鈍角三角形状に取り付けられて
いる。
【0013】パルス発生装置4は、パルス幅の非常に短
い大電力を発生するパルスパワー発生部5と、パルスパ
ワー発生部5で発生するパルスを放電する正極の高電圧
電極61とアース極の透過性枠体62からなるプラズマ
反応部6とから構成される。
【0014】パルス発生装置4は、パルス幅が非常に短
くて大電力を発生するので、その消費電力を小さくで
き、太陽電池3で発電できる程度の消費電力で十分なた
め、太陽電池3を電力源として使用可能にしている。パ
ルス発生装置4は、コストゼロの太陽の光エネルギーを
利用して発電する太陽電池3を電力源として利用するた
めに、そのランニングコストを格段に低コストにするこ
とができる。
【0015】太陽電池3を電力源とするパルス発生装置
4には、太陽電池3との間に高電圧昇圧器41が装備さ
れている。高電圧昇圧器41は機器格納室23に配置さ
れている。太陽電池3で発電した数十ボルトの電圧は、
この高電圧昇圧器41で数十キロボルトに高められてパ
ルス発生装置4のパルスパワー発生部5に送られる。
【0016】パルス発生装置4のパルスパワー発生部5
は、太陽電池3の電力を使用してパルス幅の非常に短い
大電力のパルスパワーを造り出す箇所で、機器格納室2
3に配置されている。パルス出力電圧は数十キロボルト
〜数百キロボルト、パルス幅は数ナノ秒〜数十マイクロ
秒であり、パルス電力は数十キロワット〜数十ギガワッ
トである。
【0017】パルス発生装置4のプラズマ反応部6は、
パルスパワー発生部5で造り出したパルス幅の非常に短
い大電力のパルスパワーを電極間に印加することによ
り、水中で均一なストリーマ状の放電プラズマを生成
し、これにより発生する強電界によって藻aのガス胞内
部で放電してガス胞を破壊し、藻aを殺死させるもので
あり、藻aがいる水中に配置されるプラズマ反応部6
は、水中に配置される。
【0018】水中に配置されるプラズマ反応部6は、水
中に配置される正極の高電圧電極61と、この高電圧電
極61の外周にこれを囲んで水中に配置されるアース極
の透過性枠体62から構成される。アース極の透過性枠
体62は正極の高電圧電極61の外周の側面側と底面側
に配置されている。
【0019】水中に配置されるプラズマ反応部6では、
この高電圧電極61とその周囲のアース極の透過性枠体
62との間に印加にして、パルスパワーによるストリー
マ状の放電プラズマを生成し、アース極の透過性枠体6
2の内側に透過性枠体62の隙間を透過して入っている
藻aを殺死させる。
【0020】正極の高電圧電極61は例えば多電極から
なり、複数の高電圧電極61が放電し易い間隔で配置さ
れている。各高電圧電極61は絶縁材の先端側を5mm程
度を針状に露出させた構造になっている。この高電圧電
極61の最も好ましい材質としてはタングステン銅合金
がよく、使用可能な材質にはステンレスがある。
【0021】アース極の透過性枠体62には例えばスク
リーン型が使用される。スクリーンの各スクリーンバー
の左右の間隔は、藻aの流入の妨げとならない例えば5
cm〜10cmである。アース極のスクリーン型の透過性枠
体62は環状に形成され、正極の高電圧電極61の外周
の側周側に円形状に配置され、又その底面に配置されて
外周側を囲んでいる。
【0022】正極の高電圧電極61の外周は、アース極
のスクリーン型の透過性枠体62によって囲まれている
ため、漏電の心配はない。このアース極のスクリーン型
の透過性枠体62の最も好ましい材質としてはタングス
テン銅合金がよく、使用可能な材質にはステンレスがあ
る。
【0023】アース極のスクリーン型の透過性枠体62
の外周側面には、間をあけて円形状の外部スクリーン2
4が取り付けられている。外部スクリーン24のスクリ
ーンバーの間隔は、アース極のスクリーン型の透過性枠
体62のスクリーンバーの間隔と同程度になっている。
外部スクリーン24はアース極の透過性枠体62を保護
する機能と、アース極の透過性枠体62に接触して感電
するのを防止する機能を有する。外部スクリーン24の
材質には例えばFRP材が使用される。
【0024】円形状の外部スクリーン24の外周側に
は、適当間隔で複数の昇降支柱25が昇降自在に配置さ
れている。円形状の外部スクリーン24はこの昇降支柱
25に連結されていて、昇降自在になっている。同様に
外部スクリーン24の内側のアース極のスクリーン型の
透過性枠体62と正極の高電圧電極61も水平連結杆2
5aを通じて連結されていて、昇降支柱25の昇降によ
ってアース極の透過性枠体62と正極の高電圧電極61
のプラズマ反応部6は昇降自在になっている。
【0025】また、アース極のスクリーン型の透過性枠
体62の下方には、殺死した藻aを回収するために、す
り鉢状の潜水回収盆26が配置されている。潜水回収盆
26は昇降支柱25に連結されていて、昇降支柱25の
昇降によって潜水回収盆26は昇降可能になっている。
【0026】次に、上記発明の実施の形態の構成に基づ
く作用について以下説明する。パルスパワーを利用した
殺藻装置1を、例えば、湖沼、池、ダム、ゲートで閉じ
られる河川上流側などの閉鎖性水域に浮かべる。閉鎖性
水域で多発した藻aは浮遊しながら、外部スクリーン2
4及びアース極のスクリーン型の透過性枠体62の隙間
を通過して、プラズマ反応部6となるアース極の透過性
枠体62の内側に流入する。
【0027】パルス発生装置4では、太陽電池3で発電
された数十ボルトの電圧を高電圧昇圧器41で数十キロ
ボルトに高めてパルスパワー発生部5に導入し、パルス
パワー発生部5では数十キロボルト〜数百キロボルトの
電圧からパルス幅が数ナノ秒〜数十マイクロ秒の非常に
短く、しかも数十キロワット〜数十ギガワットの大電力
のパルスパワーを造り出す。
【0028】このパルスパワー発生部5で造り出された
パルスパワーを、プラズマ反応部6の正極の高電圧電極
61とアース極の透過性枠体62の電極間に印加するこ
とによって、正極の高電圧電極61とアース極の透過性
枠体62との間の水中では均一なストリーマ状の放電プ
ラズマが発生する。このストリーマ状の放電プラズマで
発生する強電界により、アース極の透過性枠体62の内
側の水中に浮遊する藻aのガス胞内部で放電して、藻a
のガス胞を破壊して、藻aを殺死させることができる。
【0029】殺死した藻aは沈下するが、アース極の透
過性枠体62の下方には潜水回収盆26が配置されてい
るので、殺死した藻aは下方の潜水回収盆26内に沈下
して回収されることになる。
【0030】殺藻に際して使用する電力は、太陽電池3
で発電された電力を使用するために、殺藻にかかる電力
コストを格段に低コストにすることが可能となる。しか
も、太陽電池3の使用のために、近くで商用電力が確保
できない閉鎖性水域においても問題なく使用することが
可能となり、さらに、電源ケーブルも不要なために、パ
ルスパワーを利用した殺藻装置1は電源ケーブルなどに
煩わされることなく、自由に閉鎖性水域内を移動して殺
藻することが可能となる。
【0031】なお、この発明は上記発明の実施の形態に
限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない
範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。例え
ば、上記実施の形態では、アース極の透過性枠体62と
して、スクリーン状のもので説明したが、これに限定さ
れるものではなく、多孔板やネット状から形成されてい
てもよい。
【0032】
【発明の効果】以上の記載より明らかなように、この発
明に係る殺藻装置によれば、次のような効果を奏するこ
とができる。 (1)藻の内部のガス胞をパルスパワーによって発生す
る高電界により、ガス胞内部で放電してガス胞を破壊し
て、藻を殺死することができる。 (2)パルスパワーは、大電力を発生するがそのパルス
幅が非常に短いため、大電力を発生する割に消費電力が
小さくて済む。このため、太陽電池を電源として使用す
ることが可能となり、商用電力が確保できない水域でも
容易にこの装置を使用して藻を殺死させることができ
る。 (3)可動型浮体自体に太陽電池を備えているために、
商用電力用の電源ワイヤーを不要としてワイヤレスにす
ることができ、このため、装置を閉鎖性水域の任意の場
所に移動させて殺藻することができる。 (4)藻は太陽が出ているときに活動し、一方、太陽電
池も太陽が出ているときに太陽光エネルギーを吸収して
電力に変換して発電するため、藻の活動時間に太陽電池
を電源として有効に活用することができる。 (5)正極の高電圧電極の周囲をアース極の透過性枠体
で囲んでいるため、高電圧電極が人体などに直接、接触
するのを防ぐことができ、これにより、高電圧電極に接
触することに伴う事故を未然に防止することができ、安
全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示すパルスパワーを利
用した殺藻装置の一部切り欠き側面図である。
【図2】この発明の実施の形態を示すパルスパワーを利
用した殺藻装置の要部概略側面図である。
【図3】この発明の実施の形態を示すパルスパワーを利
用した殺藻装置の一部切り欠き平面図である。
【図4】この発明の実施の形態を示すパルスパワーを利
用した殺藻装置の一部切り欠き底面図である。
【図5】この発明の実施の形態を示すパルス発生装置の
概略構成図である。
【符号の説明】
1 パルスパワーを利用した殺藻装置 2 可動型浮体 21 フロートデッキ 22 フロート 23 機器格納室 24 外部スクリーン 25 昇降支柱 25a 水平連結杆 26 潜水回収盆 3 太陽電池 4 パルス発生装置 41 高電圧昇圧器 5 パルスパワー発生部 6 プラズマ反応部 61 正極の高電圧電極 62 アース極の透過性枠体 a 藻
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清崎 典昭 熊本県宇土市松山町1707−4 Fターム(参考) 4D061 DA09 DB01 EA02 EB01 EB07 EB19 EB35 EB40 4G075 AA15 AA37 AA42 CA15 CA47 DA01 DA16 EC21 EE15 FA03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パルス幅の非常に短い大電力を発生する
    パルスパワー発生部と、パルスパワー発生部で発生する
    パルスを放電する正極の高電圧電極とアース極の透過性
    枠体からなるプラズマ反応部と、から構成されるパルス
    発生装置を可動型浮体に取り付け、該パルス発生装置の
    電源となる太陽電池を可動型浮体に取り付け、上記プラ
    ズマ反応部を水中に配置すると共に、水中に配置される
    プラズマ反応部の正極の高電圧電極の外周にこれを囲ん
    でアース極の透過性枠体を配置し、正極とアース極の電
    極間に印加したパルスパワーにより透過性枠体の内側水
    中の藻を殺死することを特徴とするパルスパワーを利用
    した殺藻装置。
  2. 【請求項2】 正極の高電圧電極は多電極からなる請求
    項1記載のパルスパワーを利用した殺藻装置。
  3. 【請求項3】 アース極の透過性枠体は正極を囲むスク
    リーンからなる請求項1記載のパルスパワーを利用した
    殺藻装置。
  4. 【請求項4】 プラズマ反応部は昇降自在である請求項
    1記載のパルスパワーを利用した殺藻装置。
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