JP2003186867A - シミュレーション方法及びこれをコンピュータに実行させるためのプログラム - Google Patents

シミュレーション方法及びこれをコンピュータに実行させるためのプログラム

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JP2003186867A JP2001387081A JP2001387081A JP2003186867A JP 2003186867 A JP2003186867 A JP 2003186867A JP 2001387081 A JP2001387081 A JP 2001387081A JP 2001387081 A JP2001387081 A JP 2001387081A JP 2003186867 A JP2003186867 A JP 2003186867A
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resistance layer
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Koji Nagao
剛次 長尾
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  • Electrostatic Charge, Transfer And Separation In Electrography (AREA)
  • Complex Calculations (AREA)
  • Management, Administration, Business Operations System, And Electronic Commerce (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数の物体が移動して接触及び離反する状
態をモデル化し、数値的に解析するときの困難を回避す
るとともに、接触及び離反すると基の電界の状態を精度
よく再現して解析する。 【解決手段】 互いに接触して回転する2つのロール
1,2の周面のある位置に着目し、接近、接触及び離反
するときの電気的状態を、ロールの周面を形成する各層
及びその間の空気層をそれぞれ要素とし、一次元のモデ
ルとして解析する。2つのロール周面の空気層を隔てた
距離を演算し、所定の値以上であると空気層に相当する
要素を絶縁層として数値計算する。距離が所定値以下で
あると、上記空気層に代えて仮想抵抗層を介挿するもの
とし、この仮想抵抗層の導電率は、その両側にある層の
体積抵抗率の値に基づいて定める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、二つの物体及び
これらの間に介在する空気層を想定した要素を仮想空間
内又は仮想平面内に設定して電気的な状態を数値的に解
析するシミュレーション方法及びこのシミュレーション
方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関
するものである。
【0002】
【従来の技術】複数の物体間に形成される電界の計算
は、理論的には所定の境界条件のもとにポアソン方程式
を解くことによって行なわれる。このときの計算モデル
は、対象とする系の性質や解析に求められる解の精度に
応じて単純にも複雑にもなるが、多くの場合、方程式は
解析的な解を得ることは難しく、数値的に解かれる。特
にモデルが2次元以上である場合、あるいは1次元であ
っても、計算対象となる層の数が多い場合やパラメータ
が時間や電界などによって変化する対象を扱う場合には
方程式が複雑になる。そこで、2次元の場合には有限差
分法、有限要素法、1次元の場合には差分法やルンゲ−
クッタ法などを用いて空間もしくは時間またはその両方
を離散化して数値的に解く場合が多い。
【0003】そうした電界解析において、ふたつの離れ
た物体が接触したり、再び離反するような工程を扱う場
合、物理的・数学的な困難を伴う。これはふたつの物体
が理想的に接触した場合に、そこで境界の数がひとつ減
るが、離反する際に境界の数が再びひとつ増えることに
由来する。接触前、ふたつの物体のそれぞれには、ある
電荷がたまっている。ふたつの物体が理想的に接触する
とき、それらの電荷は足し合わされる。次に、ふたつの
物体が離反するとき、それぞれの物体表面に、直前の電
荷がどういう割合で振り分けられるかを決めることはで
きない。そこで、通常は、このような解析の際には接触
領域において微小な空気層を介在させることによってこ
の問題を回避している。
【0004】このような工程を扱った例として、ロール
及びベルトを用いたゼログラフィの転写プロセスの解析
に1次元の電界解析を適用した研究(”Performance of
anElectrically Biased Transfer Roller in a Kodak
Color Edge Copier", NIP7,1991, vol1, p73, Zaretzk
y) がある。この研究においては、転写ベルトから紙へ
のトナーの転写に関し、転写ニップ周辺の転写電界の解
析が扱われている。モデルは1次元であり、転写ロー
ル、紙、空気層、トナー層、転写ベルトが、積層された
層として扱われる。これらの5層のすべてに比誘電率と
体積抵抗率が与えられ、さらに空気層の厚さは転写ロー
ルの曲率とプロセススピードに応じて変化する。そし
て、転写ニップの中で紙とトナー層が接触するとき、上
記のように空気層をなくすのではなく、空気層の厚さと
して十分に小さな値を与えるものとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような解析では、次のような問題点がある。実際の現象
においては、トナー層と紙は、ある接触状態に置かれ
る。そして、通常トナーは高抵抗であるが、厳密にいえ
ば、トナー層から紙へ電流が生じる。ところが、先に述
べたようなモデルにおいては、紙とトナー層との間に空
気層(絶縁体)が介在しているため、紙とトナー層との
間で伝導電流は生じない。この問題は、トナー層が存在
しない場合(非画像部)の計算においてより大きな問題
となる。
【0006】トナー層が存在しない場合、転写ベルトと
紙とが直接接触することになる。転写ベルトは通常10
8 [Ωcm]〜1012[Ωcm]程度のいわゆる中抵抗の物
質である場合が多く、紙もまた、環境にも依存するが、
同程度の抵抗である。このような物質がある接触状態に
置かれた場合、両者間に生じる電流を無視することはで
きない。しかし計算においては、空気層の存在によっ
て、そのような電流が生じないため、計算結果と実際の
現象との間にずれが発生する。このずれは、物体の抵抗
が低ければ低いほど顕著になる。
【0007】一方、このような物体どうしの接触の問題
において、理想的あるいは完全な接触を仮定して理論的
に解析しようとすると、先に述べたように境界の増減の
問題を避けることはできない。つまり、境界の数が増え
るときに、電荷の振り分け方を原理的に決定できない。
さらに、実際には、物体どうしは理想的あるいは完全に
接触するわけでなく、たとえば、両者の表面粗さに応じ
た不完全な接触状態に置かれていると考えられる。した
がって、計算においてもそのような状態を再現すること
が望ましい。
【0008】本発明は、上記のような事情に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、二つの物体が移動し、接
触及び離反する状態をモデル化し、数値的に解析すると
きの困難を回避するとともに、接触及び離反するときの
電界の状態を精度よく再現して数値的に解析することで
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に係る発明は、 少なくとも一方が移動す
る二つの物体及びこれらの間に介在する空気層を想定し
た要素を仮想空間内又は仮想平面内に設定して、電荷の
移動を含む電気的な状態を数値的に解析するシミュレー
ション方法であって、 あらかじめ設定された各時刻に
おいて、前記複数の物体が前記空気層を介して離隔する
距離を演算する工程と、 演算された前記距離が0(ゼ
ロ)又はあらかじめ設定された所定の値以下であるか否
かの判別を行う工程と、 前記判別工程で、前記距離が
0(ゼロ)又は所定の値以下であると判別されたとき
に、前記物体を想定した要素間に、あらかじめ設定され
た厚さで所定の導電率及び比誘電率を有する仮想抵抗層
を要素として設定する工程と、 前記物体を想定した要
素が移動する過程における所定の時刻において、所定の
条件のもとに各要素における電界と表面電荷密度とを演
算する工程とを含み、前記仮想抵抗層の導電率は、接触
する前記物体の最表層の体積抵抗率と、前記仮想抵抗層
の導電率との関係をあらかじめ設定しておき、 接触す
る前記物体の最表層の体積抵抗率の値が設定された後、
この設定値に基づいて前記関係から前記仮想抵抗層の導
電率を定めるシミュレーション方法を提供する。
【0010】このシミュレーション方法では、二つの物
体を想定した要素間の距離が接触したとみなせる程度に
小さな値になったとき、又は0(ゼロ)になったとき
に、それまで物体間にあった空気層を想定した要素を所
定厚さの抵抗層におきかえる。したがって、解析モデル
における要素間の境界の数は変化せず、二つの物体が接
近し、接触する状態を、連続性をもって解析することが
できる。
【0011】なお、二つの物体の接触後に空気層を想定
した要素が消滅するものとすると、境界の数が減少し、
境界ごとに導かれる電界と表面電荷密度との関係式が接
触前と接触後で異なるものとなってしまう。このため、
接触前と接触後との連続性を維持しながら解析すること
が困難となってしまう。
【0012】一方、上記のように、境界の数を変えるこ
となく、空気層に相当する要素を仮想抵抗層に置き換
え、この要素の比誘電率、導電率を適切に設定すること
により、二つの物体の表面が粗な状態で電気的に抵抗を
有する状態で接触している場合等、現実的な接触状態を
再現することが可能となる。上記仮想抵抗層の選択は、
あらかじめ接触する層の体積抵抗率との関係が設定され
ているので、この関係から抽出することができ、適切な
値が容易に選択される。したがって、二つの物体が離間
状態から接触する工程について、電界の状態を簡単に精
度よく解析することができる。
【0013】請求項2に係る発明は、請求項1に記載の
シミュレーション方法において、接触する前記物体の最
表層の体積抵抗率と前記仮想抵抗層の導電率との関係
は、 二つの物体を接触させ、これらの間に電圧を印加
するとともに表面電位を測定する実験を、二つの物体の
最表層の体積抵抗率が異なる複数の場合について行い、
この結果に基づいて定めるものとする。
【0014】この方法では、二つの物体を実際に接触さ
せたときの表面電位の計測値に、数値解析の結果がほぼ
合致するように仮想抵抗層の導電率を定めることができ
る。このため、仮想抵抗層は二つの物体間の接触状態を
解析モデル上で精度良く再現するものとなり、シミュレ
ーションによる数値解析の精度が向上する。
【0015】請求項3に係る発明は、請求項1に記載の
シミュレーション方法において、少なくとも一方が移動
する二つの物体及びこれらの間に介在する空気層を想定
した要素を仮想空間内又は仮想平面内に設定して、電荷
の移動を含む電気的な状態を数値的に解析するシミュレ
ーション方法であって、 あらかじめ設定された各時刻
において、前記複数の物体が前記空気層を介して離隔す
る距離を演算する工程と、 演算された前記距離が0
(ゼロ)又はあらかじめ設定された所定の値以下である
か否かの判別を行う工程と、 前記判別工程で、前記距
離が0(ゼロ)又は所定の値以下であると判別されたと
きに、前記物体を想定した要素間に、あらかじめ設定さ
れた厚さで所定の導電率及び比誘電率を有する仮想抵抗
層を要素として設定する工程と、 前記物体を想定した
要素が移動する過程における所定の時刻において、所定
の条件のもとに各要素における電界と表面電荷密度とを
演算する工程とを含み、 接触する二つの前記物体の最
表層について設定された体積抵抗率に基づき、 双方の
最表層の体積抵抗率が、1×1014[Ωcm]より大きい
ときには、前記仮想抵抗層の体積抵抗率を1×10
15[Ωcm]以上とし、いずれか一方又は双方の最表層の
体積抵抗率が、1×1014[Ωcm]未満のときには、仮
想抵抗層の体積抵抗率を3×1011[Ωcm]として、
前記仮想抵抗層の導電率を演算するシミュレーション方
法を提供するものである。
【0016】このシミュレーション方法では、計算の過
程で仮想抵抗層の導電率を簡単に設定することができ、
計算が簡略化されるとともに、実験における計測値とよ
く合致する結果を得ることができる。
【0017】請求項4に係る発明は、請求項1又は請求
項3に記載のシミュレーション方法において、 前記物
体を想定した要素が移動する過程における所定の時刻
は、前記物体を想定した各要素の時定数を演算し、その
最小値より小さい時間間隔で設定するものである。
【0018】このシミュレーション方法では、電荷、電
界等の計算を行う時間間隔が小さく設定されているの
で、演算の過程で結果を得られなくなる等の不都合を回
避することができるとともに、要素内の電荷の移動を適
切に評価した計算を行うことができ、計算結果の精度が
向上する。
【0019】請求項5に係る発明は、請求項1又は請求
項3に記載のシミュレーション方法において、 前記物
体を想定した要素を移動することなく、所定の間隔の複
数の時刻について、各要素における表面電荷密度を演算
し、全要素の表面電荷密度の時間変化が、所定の条件で
与えられる値以下となったことを確認した後、各要素の
移動を開始して演算を繰り返すものとする。
【0020】各要素の表面電荷密度等の初期条件を設定
した後、計算を開始して充分に時間が経過しないうちに
二つの要素が接触することになると、接触するまでに初
期状態から飽和状態すなわち定常状態へ電荷等が移動し
ておらず、実際の状態を正確に再現できなくなる可能性
が生じる。しかし、要素を移動させることなく飽和状態
となるまで計算を行うことにより、上記不都合を回避し
て、実際の状態を良好に再現することが可能となる。
【0021】請求項6に係る発明は、請求項1又は請求
項3に記載のシミュレーション方法において、 前記複
数の物体を想定した要素の移動は、互いに接触した状態
から離反する過程を含むものであり、 接触していた要
素間の距離が0(ゼロ)より大きい値又は所定の値より
大きくなったときに、前記仮想抵抗層として介挿した要
素を、空気層を想定した要素に置き換えるものとする。
【0022】このシミュレーション方法では、二つの物
体が接近し、接触した後離反する過程についても境界の
数は変わらず、精度の良い解析が可能となる。つまり、
二つの物体が接触し離反するときに、これらの間の空気
層を想定した要素を消滅させ、離反するときに再び挿入
するといった処理をすると、空気層を想定した要素を挿
入するときに、接触面に存在していた電荷を離反する双
方の物体に振り分ける必要が生じ、これを実際の状態の
対応させることが困難となってしまう。しかし、上記の
ように境界の数を変えることなく処理を行うのでこのよ
うな問題が生じることはなく、精度のよい解析が可能と
なるものである。
【0023】請求項7に係る発明は、 二つの物体を想
定した要素及びこれらの物体間に存在する空気層を想定
した要素が、仮想空間内又は仮想平面内で占める範囲、
及び該要素のそれぞれについて比誘電率と導電率とを設
定し、各要素間の電荷の移動を含む電気的状態の数値的
解析をコンピュータに実行させるためのプログラムであ
って、 時間の経過にともなって前記物体を想定した要
素が前記仮想空間内又は仮想平面内で移動するように、
各要素の位置を変化させ又は占める範囲を変化させる手
順と、 前記物体を想定した要素が移動する過程におけ
る所定の時刻において、該二つの物体を想定した要素が
空気層を介して隔てられた距離を演算する手順と、 前
記二つの物体を想定した要素間の距離が0(ゼロ)又は
あらかじめ設定された所定の値以下であるか否かを判別
する手順と、 前記距離が、0(ゼロ)又はあらかじめ
設定された所定の値以下であるときに、前記物体を想定
した要素間に、あらかじめ設定された厚さで所定の比誘
電率を有する仮想抵抗層を要素として設定する手順と、
入力された各要素の体積抵抗率の値から、設定された
仮想抵抗層の両側に接する要素の体積抵抗率を抽出し、
あらかじめ設定された、接触する前記物体の最表層の
体積抵抗率と、前記仮想抵抗層の導電率との関係に基づ
いて、前記仮想抵抗層の導電率を設定する手順と、 前
記物体を想定した要素が移動する過程における所定の時
刻において、所定の条件のもとに、各要素内における電
界と表面電荷密度とを演算する手順と、をコンピュータ
に実行させるためのプログラムを提供する。
【0024】このプログラムでは、物体が接触状態とな
ったときにも、空気層に相当する要素の代わりに仮想抵
抗層を要素として介在させるので境界の数は変わらず接
触の前後にわたり、連続性を有する演算を容易に行うこ
とができる。また、仮想抵抗層の導電率、比誘電率を簡
単かつ適切に設定することができ、物体が接触し、離反
する過程を精度良く再現してシミュレーションを行うこ
とができる。
【0025】請求項8に係る発明は、請求項7に記載の
プログラムにおいて、 入力された各要素の比誘電率と
体積抵抗率又は導電率とから、各要素の時定数を演算
し、その最小値又は最小値に基づいて計算された値が、
各要素における電界と表面電荷密度とを演算する所定の
時間間隔より大きいか否かを判別し、小さい場合には演
算を停止して警告信号を出力する手順を含むものとす
る。
【0026】このプログラムでは、計算を行う時間間隔
が大きくなりすぎることによる不都合を回避し、精度の
よい演算が可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本願に係る発明の一実施形
態であるシミュレーション方法を図に基づいて説明す
る。ここで説明するシミュレーションは、図1(a)に
示すように、二つのロール1,2が平行に配置され、周
面が接触して回転しているときの電荷の移動及び電界の
状態を数値的に解析するものである。そして解析は、そ
れぞれのロールの周方向の特定位置が、各ロールの回転
にともなって接近し、二つのロールのニップ部で接触し
た後、再び離反するときの状態を一次元モデルとして解
析するものである。
【0028】上記ロールは、いずれも導電性金属の芯材
1a,2aの周面上に誘電体層を設けたものであり、例
えば、図1(b)に示すように3層の誘電体層1b,1
c,1d,2b,2c,2dが形成され、双方の芯材間
に所定の電圧が印加される。
【0029】解析モデルは、図2に示すように、各誘電
体層を想定した要素とその間に介挿される空気層に相当
する要素とで構成されており、芯材との接触面に相当す
る面11,12を所定電位に設定する。上記誘電体層
は、いずれも層厚は変化するものではなく、比誘電率及
び導電率は該誘電体層を形成する材料に対応する値に設
定する。
【0030】上記空気層は、絶縁層として計算するもの
であり、導電率γair は0(ゼロ)に設定する。この
空気層の厚さdair(t)は時間tとともに変化するもので
あり、図3に示すように、二つのロールの回転に対応さ
せ、次式で示されるものとする。
【数1】 ここで、R1、R2は、第1のロール、第2のロールの半
径、ω1、ω2はそれぞれの角速度、doff1、doff2はロー
ルオフセット量である。
【0031】また、二つのロールの表面が、これらのロ
ールの回転にともなって接近し、接触したと想定される
ときには、次式に示されるように二つのロール周面間
に、厚さがδの仮想抵抗層が存在するものとする。
【数2】
【0032】上記解析モデルにより、設定された時間間
隔の各時刻における各要素の電荷、電界、電圧及び電位
は次のようにして解析する。解析方法を一般的に説明す
るために、層構造がN層からなるものとする。
【0033】ガウスの法則から、第i層、第i+1層に
形成される電界Ei,i+1と第i層と第i+1層間の表面
電荷密度σi,i+1,に以下の関係が成り立つ。
【数3】 ここで、εiは第i層の比誘電率であり、qiは第i層が
有する体積電荷である。
【0034】一方、定電圧制御では各層の分圧の総和は
常に印加電圧Vinに等しいから、次の関係が成り立つ。
【数4】 ここでdiは第i層の層厚である。
【0035】さらに、電荷保存則から、第i層と第i+
1層の境界の電荷密度σi,i+1の時間変化は、その前後
の層の電流密度Jの差に等しい。ここで第i層の電流密
度J iは、第i層の導電率をγiと書くと、オームの法則
から、
【数5】 と書けるから、電荷保存則は式(4)のように表され
る。
【0036】
【数6】
【0037】式(1)と式(4)から、第i層と第i+1
層の境界の電荷密度σi,i+1に関する微分方程式(5)
が得られる。
【数7】
【0038】さらに、式(1)と式(2)とから、各表
面電荷密度の関係式(8)が得られる。
【数8】
【0039】ここで、dk(t)は第k層の厚さであ
り、本実施例では、空気層以外の層厚は、時間に依存せ
ず、空気層は式(A)に示されるとおりである。また、
上記空気層は、二つのロールの周面が接触した状態で
は、式(B)に示されるように厚さがδの仮想抵抗層に
置き換えられる。つまり、二つのロールが接触した状態
でも、ロール周面間に一つの要素が介在しており、境界
の数は変化しない。
【0040】次に、上記設定によって電界及び電位等の
計算を行う時間tについて説明する。計算の時間間隔Δ
tは、それぞれの層(要素)の時定数τより小さい値に
設定する。時間間隔Δtが、いずれかの層の時定数τよ
り大きいと、計算は発散してしまう。また、時間間隔Δ
tが小さすぎると、計算時間が長くなってしまう。この
ため、時間間隔Δtは各層の時定数を次式により計算
し、その最小値τminより小さく設定する。望ましくは
τminの1/5以下とし、より望ましくはτminの1/1
0程度とする。 τi = ρi ×εi ×ε0 (11)
【0041】また、計算の開始時に、初期位置で各要素
を移動させることなく位置を固定し、上記時間間隔Δt
で初期設定状態から電荷の移動が飽和状態(定常状態)
となるまでの計算を行うのが望ましい。そして、飽和状
態とみなせる状態となったことを確認した後に、各要素
が移動する状態での計算に移行する。一般に、実際の物
体、例えばロールやベルト等は、充分に長い時間をかけ
て移動し接触するものであるが、計算においては、接触
する直前からの過程のみを計算するために、計算の開始
から接触状態となるまでに初期条件が定常状態になって
いない場合が生じ得る。このために計算の精度が低下す
るおそれがあり、これを回避するものである。
【0042】飽和状態となったことを確認する方法とし
ては、各層の境界の表面電荷密度σi(t)の時間増分
Δσi(t)が充分に小さくなったことを確認すればよ
い。具体的に示すと、次式でεを正の定数、例えばε=
1とし、全ての層(要素)で次式が成り立ったときに飽
和状態になったものとみなすことができる。 |Δσi|≦ε・|σi|・Δt (12)
【0043】このような設定で上記式(5)及び式
(8)として示される連立微分方程式を解くことによ
り、各層の電界、電荷、電圧、電位を求めることができ
る。
【0044】上記仮想抵抗層は、空気層と同じ扱いで絶
縁体とするとロール間に導電電流は流れない。これは、
現実の現象とは異なる。この違いは、ロールの抵抗が小
さいとき、さらに大きな違いとなる。このため、ロール
の周面が接触したときに、有限な抵抗を有する仮想的な
抵抗層として計算するものである。この仮想抵抗層は、
接触が続く間保持され、ロールが離反すると同時に再び
空気層すなわち絶縁層として扱われるようになる。
【0045】仮想抵抗層の層厚をδとしたとき、設定さ
れたδに対応する適正な体積抵抗率ρは、実験の結果と
の対比により定める。この値は、主に物理的な接触状態
(接触面積率)により規定されるものである。しかし、
実際には実験の結果との比較により現象論的に決めれば
よい。その具体的な例は後述する。
【0046】なお、上記のように仮想抵抗層を設定せ
ず、接触領域では完全にロール間にどんな層も存在しな
いものとして計算した場合には、二つのロールの表面が
空気層を介することなく幾何学的にも電気的にも完全に
接触したことになる。この場合、ロール表面の電荷は、
接触の瞬間に足し合わされるが、離反するときに電荷が
どのように二つのロール表面に振り分けられるかが決定
できない。このような方法では、接触部にいわゆる接触
抵抗を有するような一般的な接触を表現することができ
ない。
【0047】一方、上記解析において、電荷の移動は各
要素の体積抵抗率に従って生じるものであり、絶縁体
(導電率γ=0)である空気層では電荷の移動が生じな
い。しかし、現実のロール間では、接触前及び接触後離
反するときの微少空隙内で放電が生じ、電荷が移動す
る。この現象を、図2に示す解析モデルでの演算におい
て、次のように考慮する。
【0048】まず計算過程において、各時刻における空
気層の厚さdairと、空気層の両側にかかる電圧Vairとの
関係をPaschen 電圧Vpas と比較して放電が発生してい
るか否かを判定させる。
【0049】Paschen則は式(13)で表され、計算過程
の各時刻において、VairとVpasが比較される。Vair<V
pasの場合は計算はそのまま次のステップへ進むが、V
air>Vp asの場合には放電が発生するとみなし、ロール
表面電荷に放電に相当する処理を行う。処理は、Vair
Vpasに戻るような電荷を、第1のロール及び第2のロー
ルそれぞれの最表層の表面電荷から差し引きすることで
行われる。
【数9】 上記処理は、式(5)及び式(8)に示される連立微分
方程式をルンゲ−クッタ(Runge-Kutta)法等によって
数値的に解くときに考慮することができる。
【0050】次に、上記仮想抵抗層の体積抵抗率を定め
る方法について説明する。この方法は、実際のロールを
接触させ、双方間に電圧を印加したときのロール表面電
位の実測値と数値解析によって得られた結果との対比に
よって定めるものである。
【0051】ロール表面電位の実測は、図1(a)に示
すように2本のロールの軸を回転可能に支持した状態
で、平行に設定する。位置を固定した第1のロール1に
接する位置から第2のロール2を第1のロール側に0.
1mm押し付ける。第1のロール1の軸にはモータ(図示
しない)から駆動力を伝達し、周面速度96mm/sで回転さ
せる。これにともない、第2のロール2は第1のロール
1の回転に伴って同じ周速で回転する。
【0052】ここで用いたロール1,2は、図4に示す
ように、いずれもアルミニウムのパイプ状の芯材1a,
2a上に、厚さが5mmの第1抵抗層を設け、さらにそ
の上に厚さ30μmの第2抵抗層を積層する。第1抵抗
層の体積抵抗率は、1×10 15[Ωcm]とし、第2抵
抗層の体積抵抗率が異なる複数のロールについて実験を
行う。
【0053】これらのロールには、図4に示すように、
双方が圧接されるニップを通過した後45°の位置に電
位測定用プローブ3,4が設置され、表面電位計5,6
によってロールの表面電位が測定できるようになってい
る。そして、第1のロール1及び第2のロール2には、
アルミニウムの軸および芯材1a,2aを介して電源7
からバイアス電圧が与えられる。この実験においては、
第1のロール1は接地され、第2のロール2には500
[V]の電位が与えられる。
【0054】一方、上記実験の結果と対比する数値解析
は、図5(a)に示すように、二つのロールの第1抵抗
層及び第2抵抗層を考慮した一次元モデルとし、接触状
態では、図5(b)に示すように二つのロール間に仮想
抵抗層を介挿するものである。第1抵抗層及び第2抵抗
層の体積抵抗率は、実験で用いたロールのそれぞれの体
積抵抗率を用い、仮想抵抗層の層厚及び体積抵抗率を変
化させて、先に説明した演算を行う。そして、表面電位
の値が実験における計測値と最も近くなる仮想抵抗層の
体積抵抗率を抽出する。
【0055】体積抵抗率が異なる各ロールの組み合わせ
について、仮想抵抗層の層厚を1μmとしたときの仮想
抵抗層の最適な体積抵抗率を表1に示す。
【表1】
【0056】この結果から解るように、接触するロール
の双方の表面層が高抵抗(ほぼ絶縁体)であるときに
は、仮想抵抗層の体積抵抗率ρを高抵抗(1×1015 [Ωc
m])とし、両方が中・低抵抗または片方が高抵抗でもう
一方が中・低抵抗の場合には、仮想抵抗層の体積抵抗率
ρを中抵抗(3×1011 [Ωcm])とすることによって、数値
計算の結果は実験値とよく合致する。したがって、数値
計算によるシミュレーションを行う際に、接触する二つ
の物体の表面層が、双方とも体積抵抗率が1×1014[Ωc
m]以上であれば、仮想抵抗層の体積抵抗率ρを1×1015
[Ωcm]に設定し、それ外のケースでは仮想抵抗層の体積
抵抗率ρを3×1011 [Ωcm]に設定することによって適切
な演算が可能となる。
【0057】上記のような体積抵抗率の値を、もっとも
簡易に仮想抵抗層のパラメータとして自動的に設定する
ためには、計算工程において、次のようなアルゴリズム
を加えればよい。まず、入力データを読み込んだ段階
で、どの層が空気層であるかを判別し、次に、その上下
の層(互いに接触する層)の体積抵抗率が1×1014 [Ωcm]
以上か以下かを判定する。両方の体積抵抗率が1×1014
[Ωcm]以上ならば、仮想抵抗層の体積抵抗率ρを1×10
15 [Ωcm]に設定し、それ以外のケースでは仮想抵抗層
の体積抵抗率ρを3×1011 [Ωcm]に設定するようにす
る。
【0058】上記仮想抵抗層の設定値の妥当性を確認す
るために、他の二つのロールについて、実験による計測
値と計算値とを対比した結果を次に示す。ここで、二つ
のロールは、導電性の芯金の周面に3層の誘導体層を形
成したものであり、それぞれのロールの誘電体層を形成
する樹脂の物性は、表2に示すとおりである。
【表2】
【0059】上記二つのロールを平行に当接し、周速9
6mm/sで回転させるとともに、第1のロールの芯金
は電気的に接地し、第2のロールの芯金には500vの
電圧を印加する。そして、このようなロールを3回転さ
せたときの、それぞれの回転毎に表面電位を計測する。
【0060】一方、二つのロールの表面層は、体積抵抗
率が1×1013 [Ωcm]であり、1×101 4 [Ωcm]より小さく
なっているので、数値計算における仮想抵抗層の体積抵
抗率を3×1011 [Ωcm]に設定する。そして、先に説明し
た方法によって表面電位を計算する。このとき3回転に
相当するように接触及び離間する工程を3回繰り返す。
【0061】上記計測値と、仮想抵抗層を前述のように
設定した数値解析による計算値とを対比した結果を図6
に示す。このようなロールにおいても実験における計測
値と計算値とはほぼ一致しており、仮想抵抗層が適切に
設定されていると考えることができる。
【0062】次に、別の条件における計測値と計算値と
の対比を示す。この例は、電子写真装置における感光体
から中間転写体へトナー層が転写される状態について計
測し、対応するシミュレーションを行ったものである。
つまり感光体の表面と中間転写体とが徐々に接近し、ニ
ップ部で接触した後、離れるものであり、感光体上に担
持されているトナー層がニップ部で中間転写体上に転移
する。
【0063】感光体及び中間転写体を構成する材料の物
性値は表3に示す。また、トナーの電荷及びトナー層の
体積抵抗率等、その他のデータは表4に示すとおりであ
る。
【表3】
【0064】
【表4】 実験及び計測は、トナー層がない場合、すなわち背景部
に相当する状態、マゼンタトナーの層が形成されている
場合、イエロートナーの層が形成されている場合、及び
マゼンタトナーとイエロートナーの層が積層して形成さ
れている状態について行ったものである。
【0065】ニップ部を通過し、トナーの転移が行われ
たあとの中間転写体の表面電位の測定結果は、表5に示
すとおりである。
【表5】 一方、数値計算は、初期状態では、図7(a)に示すよ
うに、感光体上に仮想抵抗層を介してトナー層が付着し
ており、このトナー層が中間転写体の表面層と接近し、
接触した状態では、図7(b)に示すように、トナー層
と中間転写体の表面層との間に、空気層に代わる仮想抵
抗層を設定する。そして、感光体が中間転写体から離れ
た状態では、転移したトナー層と感光体との間の仮想抵
抗層を空気層(絶縁体)に置き換える。
【0066】上記仮想抵抗層の体積抵抗率は、次によう
に設定される。トナー層がない場合は、感光体と中間転
写体の表面層とが直接に接触するものであり、中間転写
体の表面層の体積抵抗率が1×1010 [Ωcm]と小さな値と
なっているので、仮想抵抗層の体積抵抗率は、3×1011
[Ωcm]に設定される。感光体とトナー層との間に設定さ
れる仮想抵抗層は、双方の体積抵抗率が1×1014 [Ωcm]
以上となっているので、1×1015 [Ωcm]に設定される。
また、中間転写体の表面層とトナー層との間の仮想抵抗
層は、3×1011 [Ωcm]に設定される。
【0067】上記条件で計算された中間転写体の表面電
位は、表6に示すとおりである。
【表6】 表5と表6に示される結果を対比すると、計測された値
と計算の結果とは、ほぼ一致していることが解る。
【0068】次に、仮想抵抗層の体積抵抗率を設定する
別の方法について説明する。ここまでに説明した実施形
態では、仮想抵抗層の体積抵抗率を、接触するロールの
体積抵抗率に応じて2値から選択するものであったが、
表面層の体積抵抗率に対応する連続的な数値を設定する
のがより望ましい。その方法として、例えば次に説明す
るものがある。
【0069】表面層の体積抵抗率を変化させた複数のロ
ールについて、上記実施形態と同様に表面電位を測定す
る。そして、二つのロールの表面層の体積抵抗率を説明
変数、仮想抵抗層の体積抵抗率を目的変数として重回帰
分析を行う。この結果次式が得られる。
【数10】 ここで、ρVCL :仮想抵抗層の体積抵抗率 ρ1 :ロール1の体積抵抗率 ρ2 :ロール2の体積抵抗率 である。
【0070】接触する二つの層のデータが解ると、これ
らの層の体積抵抗率ρ1、ρ2から上式にしたがって最適
な仮想抵抗率ρVCLを算出することができる。
【0071】なお、以上に説明した実施形態は、一次元
問題としてシミュレーションを行うものであるが、二次
元解析、三次元解析においても適用することができる。
また、微分方程式を解く手段としては、上記ルンゲ−ク
ッタ法の他に、有限要素法、有限差分法を用いることも
できる。
【0072】次に、上記シミュレーションをコンピュー
タに実行させるためのプログラムであって、請求項7又
は請求項8に係る発明の一実施形態であるコンピュータ
プログラムを、図8及び図9に基づいて説明する。この
コンピュータプログラムは、次のような処理を行うよう
に構成されている。
【0073】・二つのロールの周面に形成された誘電体
層を想定した要素を仮想平面上に設定する(ST1)。
この処理は、入力装置から入力された層厚・物性等のデ
ータを用いて行うのが一般的であるが、その他のデータ
から演算処理等によって設定するものであってもよい。
この処理によって、図2に示されるような解析モデルが
コンピュータ内に設定される。
【0074】・また、データの入力により、二つのロー
ル間にある空気層の層厚dairが時間の経過とともに変
化する量を設定する。この設定は、あらかじめ定められ
た時刻についてそれぞれデータを入力して設定するもの
であってもよいし、時間tをパラメータとする所定の関
数を入力するものであってもよい。
【0075】・さらに、計算を行う時間間隔Δtを設定
する。この時間間隔は、外部から入力された値とするこ
とができる。 ・設定された全要素について時定数τを計算し(ST
2)、その最小値τminに基づいて定められる値、例え
ば、τmin/10と上記時間間隔Δtとを比較する(S
T3)。そして、時間間隔Δtが大きいときには警告を
出し(ST4)、演算を一時停止する。この後に入力さ
れる指示により、演算の続行(ST5)又は時間間隔Δ
の変更(ST6)を行う。
【0076】・上記空気層の層厚の変化をともなう状態
の計算を行う前に、初期位置で層厚を変化させることな
く初期条件から定常状態となるまでの計算を行うか否か
を選択する(ST7)。 ・定常状態となるまでの計算を行わない場合は、層厚を
変化させる状態での計算に移行する。
【0077】・層厚を変化させることなく定常状態まで
の計算を行う場合には、所定の時間間隔Δtで、上記解
析モデルで層厚を変化させることなく、式(5)及び式
(8)に示される連立微分方程式を解く(ST8)。そ
して、時刻毎に各層の表面電荷の変化量が所定値以下で
あるか否かを判断し(ST9)、所定値以下であるとき
には、層厚が変化する状態での計算に移行する。所定値
を超えるときには、次の時刻の計算を行う。
【0078】・層厚が変化する状態では、各時刻tmに
ついて各層の電荷計算を行う(ST11)。計算は、上
記のように設定された要素の集合体、つまり解析モデル
について、式(5)及び式(8)に示される連立微分方
程式をルンゲ−クッタ法によって解く。 ・次の時刻の計算に移るときに、要素を変更する。つま
り、空気層の層厚が時間の経過によって変化した量を考
慮して、要素を設定する(ST12)。そして、このモ
デルについて、空気層の層厚dairが0(ゼロ)又は所
定の値以下である否かを判別する。つまり、二つのロー
ルが接触状態であるとして処理するか、離れた状態であ
るとして処理するかを判別する(ST13)。なお、上
記所定の値は、あらかじめプログラムに組み込んであっ
てもよいし、入力装置から入力されたものでもよい。
【0079】・二つのロールが接触していない状態であ
ると判別されたときには、変更されたモデルについて、
上記連立微分方程式を解き、各層の電荷計算を行う。
【0080】・上記電荷計算を所定の時刻について順次
行い、二つのロールが接触している状態である判別され
たときには、空気層に代えて設定する仮想抵抗層の導電
率γを定める(ST14)。導電率γの値の選定は、ま
ず接触する2つの層(要素)の体積抵抗率を抽出し、こ
れに基づき、あらかじめ設定されている条件つまり接触
する層の体積抵抗率と仮想抵抗層の導電率との関係から
抽出するものである。 ・空気層に代えて仮想抵抗層を設定し、層厚δを所定の
値に設定するとともに導電率γを上記にように選定され
た値とする。そして、このモデルについて各層の電荷計
算を行う(ST15)。
【0081】・さらに次の時刻の計算に移り、当該時刻
に対応したものに解析モデルを変更する(ST16)。 ・この変更された解析モデルについて、二つのロールが
接触状態か又は離れた状態かを判別する(ST17)。 ・接触した状態であると判別された場合は当該解析モデ
ルについて、各層の電荷計算を繰り返す。
【0082】・二つのロールが離れたと判別されると、
仮想抵抗層を空気層に置き換え、空気層の層厚d
airは、設定された値d(t)とする。そして、導電率
は0(ゼロ)として各層の電荷計算を行う(ST1
8)。 ・その後、設定された各々の時刻についての計算を繰り
返し、変化する空気層の層厚が所定の値となるまで続け
る。
【0083】上記のような計算の結果は、ディスプレイ
への表示又はプリンタへの出力を行う。この結果によ
り、二つのロールが接触して回転するときの、各ロール
の電気的な状態を容易に予測することができる。
【0084】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明のシミュ
レーション方法では、複数の物体が移動し、空気層を介
して離れた状態から接触した状態に移行する過程につい
て、さらに接触した状態から離反した状態に移行する過
程について、電気的な状態の数値的解析を一般的な手法
により高い精度で行うことができる。また、本願発明の
コンピュータプログラムでは、上記シミュレーションを
コンピュータに実行させ、精度の高い結果を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るシミュレーション方法によって
適切に解析することができる二つのロールの接触状態を
示す概略斜視図及び断面図である。
【図2】図1に示す二つのロールの電気的状態を解析す
るためのモデルを示す図である。
【図3】図1に示すロール間の空気層の厚さを示す説明
図である。
【図4】二つのロールの表面電位を測定する方法を示す
概略図である。
【図5】仮想抵抗層の適値を求めるための数値計算に用
いる解析モデルを示す概略図である。
【図6】表面電位の計測値と計算値とを対比して示す図
である。
【図7】数値計算に用いる解析モデルの他の例を示す概
略図である。
【図8】請求項8又は請求項9に係る発明の一実施形態
であるコンピュータプログラムの要旨を示すフロー図で
ある。
【図9】請求項8又は請求項9に係る発明の一実施形態
であるコンピュータプログラムの要旨を示すフロー図で
ある。
【符号の説明】
1 第1のロール 2 第2のロール 3,4 プローブ 5,6 表面電位計 7 電源 11,12 電位が設定される面

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一方が移動する二つの物体
    及びこれらの間に介在する空気層を想定した要素を仮想
    空間内又は仮想平面内に設定して、電荷の移動を含む電
    気的な状態を数値的に解析するシミュレーション方法で
    あって、 あらかじめ設定された各時刻において、前記複数の物体
    が前記空気層を介して離隔する距離を演算する工程と、 演算された前記距離が0(ゼロ)又はあらかじめ設定さ
    れた所定の値以下であるか否かの判別を行う工程と、 前記判別工程で、前記距離が0(ゼロ)又は所定の値以
    下であると判別されたときに、前記物体を想定した要素
    間に、あらかじめ設定された厚さで所定の導電率及び比
    誘電率を有する仮想抵抗層を要素として設定する工程
    と、 前記物体を想定した要素が移動する過程における所定の
    時刻において、所定の条件のもとに各要素における電界
    と表面電荷密度とを演算する工程とを含み、 前記仮想抵抗層の導電率は、接触する前記物体の最表層
    の体積抵抗率と、前記仮想抵抗層の導電率との関係をあ
    らかじめ設定しておき、 接触する前記物体の最表層の体積抵抗率の値が設定され
    た後、この設定値に基づいて前記関係から前記仮想抵抗
    層の導電率を定めることを特徴とするシミュレーション
    方法。
  2. 【請求項2】 接触する前記物体の最表層の体積抵抗
    率と前記仮想抵抗層の導電率との関係は、 二つの物体を接触させ、これらの間に電圧を印加すると
    ともに表面電位を測定する実験を、二つの物体の最表層
    の体積抵抗率が異なる複数の場合について行い、この結
    果に基づいて定めることを特徴とする請求項1に記載の
    シミュレーション方法。
  3. 【請求項3】 少なくとも一方が移動する二つの物体
    及びこれらの間に介在する空気層を想定した要素を仮想
    空間内又は仮想平面内に設定して、電荷の移動を含む電
    気的な状態を数値的に解析するシミュレーション方法で
    あって、 あらかじめ設定された各時刻において、前記複数の物体
    が前記空気層を介して離隔する距離を演算する工程と、 演算された前記距離が0(ゼロ)又はあらかじめ設定さ
    れた所定の値以下であるか否かの判別を行う工程と、 前記判別工程で、前記距離が0(ゼロ)又は所定の値以
    下であると判別されたときに、前記物体を想定した要素
    間に、あらかじめ設定された厚さで所定の導電率及び比
    誘電率を有する仮想抵抗層を要素として設定する工程
    と、 前記物体を想定した要素が移動する過程における所定の
    時刻において、所定の条件のもとに各要素における電界
    と表面電荷密度とを演算する工程とを含み、 接触する二つの前記物体の最表層について設定された体
    積抵抗率に基づき、 双方の最表層の体積抵抗率が、1×1014[Ωcm]より
    大きいときには、前記仮想抵抗層の体積抵抗率を1×1
    15[Ωcm]以上とし、 いずれか一方又は双方の最表層の体積抵抗率が、1×1
    14[Ωcm]未満のときには、仮想抵抗層の体積抵抗率
    を3×1011[Ωcm]として、 前記仮想抵抗層の導電率を演算することを特徴とするシ
    ミュレーション方法。
  4. 【請求項4】 前記物体を想定した要素が移動する過
    程における所定の時刻は、 前記物体を想定した各要素
    の時定数を演算し、その最小値より小さい時間間隔で設
    定することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の
    シミュレーション方法。
  5. 【請求項5】 前記物体を想定した要素を移動するこ
    となく、所定の間隔の複数の時刻について、各要素にお
    ける表面電荷密度を演算し、全要素の表面電荷密度の時
    間変化が、所定の条件で与えられる値以下となったこと
    を確認した後、各要素の移動を開始して演算を繰り返す
    ことを特徴とする請求項1又は請求項3に記載のシミュ
    レーション方法。
  6. 【請求項6】 前記複数の物体を想定した要素の移動
    は、互いに接触した状態から離反する過程を含むもので
    あり、 接触していた要素間の距離が0(ゼロ)より大きい値又
    は所定の値より大きくなったときに、前記仮想抵抗層と
    して介挿した要素を、空気層を想定した要素に置き換え
    ること特徴とする請求項1又は請求項3に記載のシミュ
    レーション方法。
  7. 【請求項7】 二つの物体を想定した要素及びこれら
    の物体間に存在する空気層を想定した要素が、仮想空間
    内又は仮想平面内で占める範囲、及び該要素のそれぞれ
    について比誘電率と導電率とを設定し、各要素間の電荷
    の移動を含む電気的状態の数値的解析をコンピュータに
    実行させるためのプログラムであって、 時間の経過にともなって前記物体を想定した要素が前記
    仮想空間内又は仮想平面内で移動するように、各要素の
    位置を変化させ又は占める範囲を変化させる手順と、 前記物体を想定した要素が移動する過程における所定の
    時刻において、該二つの物体を想定した要素が空気層を
    介して隔てられた距離を演算する手順と、 前記二つの物体を想定した要素間の距離が0(ゼロ)又
    はあらかじめ設定された所定の値以下であるか否かを判
    別する手順と、 前記距離が、0(ゼロ)又はあらかじめ設定された所定
    の値以下であるときに、前記物体を想定した要素間に、
    あらかじめ設定された厚さで所定の比誘電率を有する仮
    想抵抗層を要素として設定する手順と、 入力された各要素の体積抵抗率の値から、設定された仮
    想抵抗層の両側に接する要素の体積抵抗率を抽出し、
    あらかじめ設定された、接触する前記物体の最表層の体
    積抵抗率と、前記仮想抵抗層の導電率との関係に基づい
    て、前記仮想抵抗層の導電率を設定する手順と、 前記物体を想定した要素が移動する過程における所定の
    時刻において、所定の条件のもとに、各要素内における
    電界と表面電荷密度とを演算する手順と、をコンピュー
    タに実行させるためのプログラム。
  8. 【請求項8】 入力された各要素の比誘電率と体積抵
    抗率又は導電率とから、各要素の時定数を演算し、その
    最小値又は最小値に基づいて計算された値が、各要素に
    おける電界と表面電荷密度とを演算する所定の時間間隔
    より大きいか否かを判別し、小さい場合には演算を停止
    して警告信号を出力する手順を含むことを特徴とする請
    求項7に記載のプログラム。
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