JP2003180729A - 角膜フラップを形成する装置 - Google Patents

角膜フラップを形成する装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 角膜再形成処置に使用するのに適当な、角膜
フラップを形成する効率的な外科手段を得ること、およ
び、角膜の所定部位に正確に角膜フラップの位置設定が
可能な外科的角膜形成手段を得ること。 【解決手段】 レーザビームを、間質薄膜層間の部位に
集束させ、該層間境界領域位置で組織を光切除する装置
を含み、間質薄膜層間に維持した焦点を間質内部の経路
に沿って移動させ、フラップの周縁32が光切除され
る。角膜前面から周縁まで達する切開部が設けられ、縁
部36が形成される。切開により境界づけられた角膜組
織が持ち上げられ、角膜の下の組織からフラップが機械
的に剥離される。フラップを持ち上げ、エキシマレーザ
を使用して、露出した間質組織を光切除し角膜24が再
形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、広くは眼科のレー
ザによる外科処置に関するものである。より詳しく言え
ば、本発明は、角膜再形成処置で使用する目的の角膜フ
ラップ形成システムに関するものである。本発明は、特
に、パルスレーザビームを使用して、持ち上げ可能な角
膜フラップを効率的に形成し、光切除目的で間質組織を
露出させるためのシステムとして有用だが、その目的に
限定されるわけではない。
【0002】
【従来の技術】角膜は、眼球の全集束力の約3分の2を
有している。水晶体とともに、角膜は、入射光を屈折さ
せ、その光を網膜上または網膜近くに集束させる。入射
光がどこに集束するかは、角膜の曲率によって決まる。
角膜の曲率が眼球長さに対し急勾配すぎる場合、離れた
光源からの光は、網膜前方に集束し、近視として知られ
る視力障害を生じさせる。同じように、角膜の曲率が眼
球長さに対しなだらか過ぎると、近い光源からの光が網
膜後方に集束し、遠視として知られる視力障害を生じ
る。最後に、角膜の曲率が不一様な場合は、遠近双方の
光源からの光が、網膜に適正に集束せず、乱視として知
られる視力のぶれが生じる。
【0003】前述の屈折誤差は、眼鏡またはコンタクト
レンズを使用することで概して矯正できる。あるいはま
た、角膜を外科処置によって再形成することで、必要な
視力矯正が可能になる。現在のところ、最も普及してい
る角膜再形成技術は、レーザ援用角膜切開(kerat
omileusis)(LASIK)である。広く利用
されているLASIK処置では、微小角膜切開刀を用い
て角膜にフラップを切開する。次に、このフラップを上
方へ開いて間質組織の下地を露出させる。露出させた間
質組織から成る下地を、エキシマレーザを使用して予め
決めた深さまで蒸発させる。レーザによる処置の後、フ
ラップは元の位置に戻され、回復できる。その結果、角
膜が再形成される。あいにく、微小角膜切開刀を用いた
フラップ形成は、かなり厄介である。例えば、微小角膜
切開刀による効率的なフラップ形成は、しばしば外科医
の技量に依存する。フラップが角膜から不適切に切開さ
れたり、完全に切り離されたりすれば、厄介なことにな
る。さらに、微小角膜切開刀を使用する場合、眼球の動
きを抑制しなければならず、これが患者にとっては不快
である。加えて、フラップ形成に微小角膜切開刀を使用
することに関係する欠点は、フラップ形状を調整でき
ず、かつまたフラップ形成のために、比較的多量の角膜
組織をカットする必要がある点である。
【0004】別の角膜再形成処置の一例として挙げられ
るのは、ビレ氏に付与された『眼球の再形成法』と題す
る米国特許第4907586号であり、これには、角膜
再形成のための間質内光切除技術が開示されている。本
発明の目的にとって重要な点は、前記米国特許には、間
質組織の光切除のためのパルスレーザビーム使用が開示
されている点である。エキシマレーザと異なり、パルス
レーザビームは、ビレが開示しているように、角膜組織
を透過し、角膜下の部位に集束させることで、焦点をな
す間質組織を光切除することができる。物理的な経路を
設ける必要なしに表面下の部位に到達し得る能力によ
り、複雑な形状を有する間質組織を精密に切除できる一
方、切除する全組織量を最小化できる。本発明は、角膜
フラップの一部を形成するために、表面下光切除を利用
する。
【0005】フラップを設けて角膜を再形成するために
表面下光切除を利用する場合、眼球角膜の解剖学的な一
般知識が有用である。詳しく言えば、角膜は、構造の異
なる種々の組織層を含んでいる。角膜は、眼球の外側か
ら内側へ向かって後方へ順に上皮層、ボーマン膜、間
質、デシメット膜、内皮層の各層から成っている。これ
らの異なる構造物のうち、間質は最も広がりがあり、概
して約400マイクロメートル厚である。加えて、間質
組織の治癒反応は、概して他の角膜層より迅速である。
これらの理由で、屈折矯正処置での除去のさいに、間質
組織が概して選択される。
【0006】詳しく言えば、眼球の間質は、約200の
同定可能かつ区別可能な薄膜層から成っている。間質内
のこれら薄膜層のそれぞれは、角膜自体同様、概して丸
天井形であり、約9ミリメートル直径を有する円形区域
にわたり広がっている。特定の1つの薄膜を内部に有す
る層とは異なり、層内の各薄膜は、僅か約10分の1ミ
リメートル(0.1mm)から1と2分の1ミリメート
ル(1.5mm)の短距離にわたって延在する。こうし
たわけで、各層には数個の薄膜が含まれている。重要な
点は、各薄膜が多数の原繊維を含み、これらの原繊維
が、薄膜内部で事実上互いに平行に位置している点であ
る。1個の薄膜内の原繊維は、しかし、他の薄膜内の原
繊維とは概して平行ではない。このことは、同一層内の
薄膜についても、別の層内の薄膜についても当てはま
る。最後に注意すべき点は、各個の薄膜は、層に対して
直角方向に僅か2マイクロメートルの厚さを有するにす
ぎない点である。
【0007】本発明に或る程度関係するのが、2001
年2月14日付けでビレ氏が出願した『薄膜を分離する
方法』と題する米国同時係属出願第09/783665
号明細書に開示された方法であり、該方法は、波面アナ
ライザーおよびエリプソメータの使用により、光切除の
ために、薄膜の複数層間の境界領域を見出す方法であ
る。該係属出願の内容自体は、ここに引用することで、
本明細書に取り入れるものとする。また、該係属出願に
は、LASIKのために、角膜フラップを形成する処置
が提示されている。本発明とは異なり、前記係属出願
は、フラップ形成のために、表面下光切除を利用して全
内表面を切断するというものである。本発明の構想は、
これに対し、フラップ形成のため、周縁を形成するため
にだけ、境界領域に沿って表面下光切除を行うものであ
る。また、この周縁を開始点として利用することによ
り、薄膜層を境界領域に沿って互いに分離し、各膜の残
部からフラップを簡単に剥離できる。
【0008】前記の全体構造には、間質に係わる少なく
とも3つの重要な要因が存在するが、該要因は、角膜フ
ラップの形成に関係する限りにおいて重要である。これ
らの要因の第1は、構造的なもので、間質内にかなりの
異方性が存在するため、重要である。特に、薄膜の内部
組織の強度は、複数薄膜層を一緒に維持する接着組織に
より得られる強度の約50倍である。したがって、薄膜
切断に要するエネルギーより、1つの薄膜層を他の薄膜
層から分離する(つまり剥離する)のに要するエネルギ
ーは、はるかに小さい。第2の要因は、第1の要因に多
少係わりがあり、光切除に対する間質組織の反応に関係
する。特に、光切除レーザビームが一定エネルギーレベ
ルの場合、より強い薄膜組織内に光切除により発生する
気泡は、薄膜層間に発生する気泡よりかなり小さい。第
3の要因は、光学的なものであり、ここでこの要因が重
要なのは、連続する薄膜層の間で屈折率が変化するから
である。この原因は、各薄膜内の原繊維の配向が異なる
ためである。LASIK処置で角膜フラップを形成する
目的にレーザビームを使用しようと思えば、前記要因は
重要になり得る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のことに照らし
て、本発明の目的は、角膜再形成処置に使用するのに適
当な角膜フラップを形成する効率的な外科的装置を得る
ことにある。本発明の別の目的は、フラップ形成のさい
に切断する角膜組織量が最小で済む角膜フラップ形成装
置を得ることである。本発明の更に別の目的は、角膜の
予め決められた部位に精密に角膜フラップを位置決め可
能な外科的角膜形成装置を得ることにある。本発明の更
に別の目的は、角膜フラップの寸法および形状を精密に
制御可能な、角膜フラップを形成する外科的装置を得る
ことにある。本発明の更に別の目的は、容易に実施可能
で、比較的費用効果のよい角膜フラップ形成装置を得る
ことにある。
【0010】
【課題を解決する手段】本発明によれば、角膜再形成手
術で好適に使用される角膜フラップ形成装置が、レーザ
ビームを間質薄膜層間部位に集束させて、該層間境界領
域位置で組織を光切除する装置を含む。間質薄膜層間の
部位に焦点を維持する一方、該焦点を間質内部の経路に
沿って移動させ、フラップ周縁を光切除する。フラップ
周縁が設けられたことで、角膜を角膜前面からフラップ
周縁まで切開することにより、フラップ縁部が形成され
る。フラップの縁部が形成されると、切開により境界づ
けられた角膜組織が持ち上げられて、角膜下の組織から
フラップが機械式に剥離される。具体的には、切開によ
り境界づけられた角膜組織が角膜の残部から剥離される
と、薄膜層は、互いに機械式に分離されてフラップが形
成される。具体的には、薄膜層が複数薄膜層間の境界領
域に沿って互いに機械的に分離される。フラップが形成
され持ち上げられると、エキシマレーザを使用して、露
出した間質組織を光切除し角膜が再成形される。露出間
質組織の光切除後、フラップは、露出間質組織上へ再配
置され治癒できる。その結果、角膜が再形成される。
【0011】前記のとおり、本発明によりフラップ周縁
を形成するには、レーザビームを薄膜層間の部位に集束
させて、薄膜層間の境界領域で組織を光切除しなければ
ならない。薄膜層間の境界領域に焦点を位置決めするに
は、レーザビームを先ず間質内の開始点に集束させる。
この開始点は、角膜前面から予め決めた距離にある間質
内に位置づけるのが好ましい。この予め決めた距離は、
フラップの目標厚にほぼ対応させる(例えば、約180
マイクロメートルの距離が可能)。
【0012】開始点にレーザビームを集束させて、開始
点の組織を光切除することで、光切除反応が発生する
(つまり、気泡が発生する)。この気泡のサイズを測定
して基準値と比較することで、気泡が、薄膜層間の境界
領域か薄膜層内部のいずれに発生しているかが検出され
る。気泡の測定は、波面検出器で行うのが好ましい。こ
の初期気泡が薄膜内部に発生していた場合には、次の気
泡は間質内の別の部位に発生させる。大抵の場合、次の
この気泡は、初期気泡よりも、角膜前面からより浅い深
さのところに発生させる。この新しい気泡も基準値と比
較され、薄膜層間の境界領域に発生しているか否かが検
出される。この過程は、光切除が薄膜層間の境界領域で
行われたことを示す気泡サイズが得られるまで継続され
る。
【0013】本発明の目的の場合、前記基準値は、光切
除の結果として間質内に発生するはずの、約15マイク
ロメートル直径の仮定気泡に対応するように選択され
る。測定された気泡が基準値を超えている場合には、組
織の光切除が、薄膜内部ではなく、薄膜層間の境界領域
のところの、より強い組織で行われていることを示して
いる。光切除が間質薄膜層間の境界領域で行われている
ことを示す気泡が発生した場合には、レーザビームの焦
点を間質内の経路に沿って移動させ、フラップの周縁を
光切除する。レーザビームが該経路に沿って移動するさ
い、焦点は間質薄膜層間の境界領域上に維持される。境
界領域上に位置する第1部位から次の光切除部位が、経
路に沿って第1部位とほぼ等しい深さのところに選択さ
れる。各部位の光切除後、結果として発生する気泡が測
定され、基準値と比較され、光切除が境界領域で行われ
たことが保証される。このようにして、経路に沿った光
切除が、測定気泡が基準値未満になるまで、一定深さで
継続される。測定気泡が基準値未満の場合は、焦点がも
はや境界領域上にないことを示している。焦点がもはや
境界領域上にない場合、焦点深さは、基準値を超える気
泡が発生するまで(光切除が再び境界領域上で行われる
まで)変更される。
【0014】前述の経過は、フラップ周縁が完成するま
で継続される。その結果得られる周縁は、間質薄膜層間
の境界領域に沿った切除部から成る。概して、この周縁
は、ほぼ眼球の光軸を中心とする曲線に沿って、約27
0度の弧にわたって延在する。通常、この全周縁は、薄
膜層間の単一の共通の境界領域上に形成される。この目
的のために、エリプソメータを用いて、光切除される各
部位での複屈折状態を検出する。特に、この複屈折状態
は、薄膜内の原繊維の配向の結果である。さらに、薄膜
層間の1つの境界領域と他の境界領域とでは複屈折状態
が異なることが知られており、この相違は、約2分の1
度の位相変化として現れる。本発明によれば、複屈折変
化の検出により、1つの境界領域と他の境界領域とを区
別することができる。したがって、複屈折変化を検出す
ることで、焦点を経路に沿って移動させてフラップ周縁
を切除する間に、焦点を薄膜層間の単一の境界領域上に
設定し維持することが可能になる。その結果、フラップ
周縁が薄膜層間の単一の境界領域上に形成される。
【0015】角膜の解剖学的な構造または目標フラップ
の形状のため、薄膜層間の単一のインタフェースに全周
縁を形成できない場合がある。そうした場合には、フラ
ップ周縁を光切除するには、2つ以上の境界領域が必要
となる。これが要求される場合は、1つの境界領域から
他の境界領域へ移るさいに、レーザビームのエネルギー
レベルを変更するのが好ましい。詳しく言えば、薄膜層
内部での効果的光切除に要するエネルギーレベルのほう
が、薄膜層間のインタフェース上での効果的光切除に要
するそれより高い。例えば、薄膜層間のインタフェース
上での光切除には、10マイクロメートル直径の焦点寸
法当たり約5マイクロジュールのエネルギーが適するの
に対し、薄膜層内部での光切除には、それより幾分高い
値のエネルギーが効果的である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下で、本発明の新規な特徴およ
び本発明自体を添付図面につき説明する。図面では、等
しい部分には等しい符号が付されている。図1を見る
と、本発明の装置を実現するのに使用される装置が、全
体を符号10として、制御ループとして模式的に示され
ている。図示のとおり、装置10はレーザ発生源12を
含んでいる。レーザ発生源12は、超短パルス連鎖を発
生可能であり、各パルスのパルス持続時間は約1ピコ秒
である。具体的に言うと、各パルスは、間質組織の光切
除に要する閾値を超えるエネルギーレベル(すなわち1
0マイクロメートル直径の焦点寸法当たり約1.5マイ
クロジュールを超えるレベル)を有する必要がある。ま
た、装置10は、間質組織内部の複屈折特性を検出可能
なエリプソメータを含む。本発明の目的に照らし、ビレ
氏に付与された、『エリプソメータ』と題する米国特許
第5822035号に開示され、特許請求の範囲に記載
された種類のエリプソメータが適切である。さらに、図
1は、装置10が、波面のモデル化が可能なHartm
ann−Shackセンサ等の波面検出器16を含むこ
とを示している。また、装置10は、光学誘導手段18
を含み、該光学誘導手段は、予め定めた焦点にレーザビ
ームを誘導し集束させることができる。電源20も具備
する。これらの構成要素が組み合わされて互いに協働
し、レーザビーム22を発生させ、該レーザビームが、
予め定めたエネルギーレベルで眼球26の角膜24内の
焦点へ向けられる。焦点の位置決めとエネルギーレベル
の設定とを含むこの操作に対する制御は、エリプソメー
タ14と波面検出器16を用いて、角膜24からの反射
光をモニターすることによって可能になる。
【0017】次に、図2〜図4を見ると、本発明により
形成された角膜フラップ30が示されている。後で説明
するが、フラップ30は、フラップ30の周縁を切除し
て形成される。図2および図3を見比べれば、よく判る
ように、典型的な周縁32は、ほぼ眼球26の光軸33
を中心として、約270度の弧にわたって延在する曲線
で形成される。周縁32が設定されると、角膜24の前
面34から周縁32までが切り込み切開され、フラップ
30の縁部36が形成される。縁部36が形成される
と、フラップ30が角膜24の残部から剥離され、間質
組織38から成る下地が露出させられる。露出後、間質
組織38から成る下地は、エキシマレーザ(図示せず)
を使用して光切除される。エキシマレーザによる光切除
後、フラップ30は、間質組織38から成る下地上に再
配置され、治癒に任せる。かくして、角膜24が再形成
がなされる。
【0018】図3Aには、角膜24内の、複数薄膜42
を含む間質40の一部が示されている。薄膜のうち、薄
膜42a,42b,42cのみが例示されている。間質
40内の薄膜42のそれぞれの寸法は、深さ44が約2
ミクロン、幅46が約1/10〜1.5ミリメートルで
ある。このように薄膜42は、それぞれ極めて薄いディ
スク形状を有スる。解剖学的には、薄膜42は互いに層
状に重なり、これらの層が約9ミリメートルの距離48
にわたり角膜を横断する方向に延在する。図3Aに示す
ように、個々の薄膜42は、或る程度重なり合い、幾分
ランダムに層状に位置している。図示のように、薄膜4
2の隣接層同士が境界領域50によって隔てられてい
る。図3Aに示す境界領域50は、それらの一例であ
る。一般に、境界領域50は、事実上互いに平行であ
り、角膜24の横断方向に延在している。重要な点は、
境界領域50位置の組織が薄膜42の内部組織と異なる
特性を有し、光切除時に異なる挙動を示す。
【0019】図3、図3Aを見比べると、本発明によれ
ば、薄膜層42の間の境界領域50に沿った経路を光切
除することにより、フラップ30の周縁32が作られる
ことが判るだろう。境界領域50に周縁を作ることで、
角膜24の前面34から周縁32まで達する切開部を外
科用切開刀で形成し、フラップ30の縁部36が作られ
る。必要に応じて、角膜24の前面34から周縁32ま
での切開部は、パルスレーザビーム22(図1に示
す)、または他の適当な公知技術で形成できる。重要な
点は、周縁32が境界領域50に設けられているので、
縁部36により境界づけられる角膜組織は、境界領域5
0に沿って一方の薄膜42の層を他方の薄膜42の層か
ら剥離することにより、フラップ30を形成できる点で
ある。
【0020】薄膜層間の境界領域50上に周縁を設ける
際の、装置10の操作は、角膜24の間質34内に開始
点(動作ブロック52)を設定することで開始される
(図3、図3A、図5参照)。具体的には、前面34に
対し事実上直角方向に角膜34の前面34から測定した
距離54位置に開始点が設定される。装置10によれ
ば、波面検出器16を用いて前面34の精密な位置を検
出でき、次いで、フラップ30の厚さを規定する距離5
4が、前面34から約180ミクロンになるように任意
に選択することができる。
【0021】開始点が間質40内に設定されると、図5
の動作ブロック56が示すように、本発明の手法によれ
ば、開始点で光切除されることで反応が生じる(すなわ
ち、間質組織内に気泡が発生する)。質問ブロック58
が示すように、この反応は基準値(例えば15μm)と
比較される。エネルギーレベルが一定の場合、発生する
気泡のサイズは、光切除される組織の種類の関数となろ
う。その場合、エネルギーレベルが等しければ、薄膜4
2内の強いほうの組織には、より小さい気泡が発生し、
境界領域50のところの弱い方の組織には、より大きい
気泡が発生する。幸いにも、本発明の場合に利用されて
いるように、気泡の各サイズは、光切除反応として役立
ち、該反応が、比較的周知の波面技術を利用する波面検
出器16により測定される。したがって、気泡の光切除
反応を基準値と比較することで、該気泡が境界領域50
上か薄膜内か、いずれに発生したかを確定できる。
【0022】図3Aについて続けると、反応が基準値未
満の場合は、動作ブロック60で、焦点の深さ(すなわ
ち、距離54)を変更するよう指示される。この距離5
4の変更は、前方へ(図3Aの矢印62で示す)行うの
が好ましく、ほぼ2マイクロメートル未満であるのが最
も好ましい。焦点の深さを変更した後、図5に示すよう
に、新しい焦点が光切除され(動作ブロック56)、新
しい気泡が測定され、基準値と比較される(質問ブロッ
ク58)。この処置(ブロック56、58、60)を、
気泡が基準値(例えば15μm)を超えるまで、つまり
光切除がインタフェース50上で行われるまで継続す
る。
【0023】最初の気泡が境界領域50上に見出された
場合(質問ブロック64)、角膜24からの反射光28
は、エリプソメータ14によりモニタされ、インタフェ
ース50に対する複屈折基準値(動作ブロック66)が
検出される。既述のように、一方の境界領域50と他方
の境界領域とでは、異なる複屈折値が測定される。複屈
折特性のこの変化は、薄膜42内の原繊維(図示せず)
配向の変化による。したがって、間質40内の異なる部
位の複屈折特性を測定することにより、該異なる部位が
共通の境界領域50上にあるか否かが検出できる。境界
領域50の複屈折基準値が測定されると、動作ブロック
68には、次の動作、すなわちレーザビーム22(図1
に示す)の焦点を目標経路に沿ってスキャンし、周縁3
2を形成することが示される。
【0024】新たな部位で光切除した場合(動作ブロッ
ク56)、発生した気泡は標準的な基準値と比較される
(質問ブロック58)。これにより、新たな部位がイン
タフェース50上にあるか薄膜42内部にあるかが検出
される。反応値が基準値未満であれば、動作ブロック6
0が示すように、焦点の深さを変更せねばならない。こ
の処置(ブロック56、58、60)は、気泡が基準値
(例えば15μm)を超え、光切除が境界領域50上で
行われたことを示すまで継続される。次に、動作ブロッ
ク66に示すように、新たな部位(動作ブロック70)
での複屈折特性が、エリプソメータ14を使用して測定
され、複屈折基準値と比較される。質問ブロック72に
よって示されるように、この測定値(すなわち動作ブロ
ック70)は、新たな部位が、先行光切除部位と等しい
境界領域50上にあるか否かを検出するのに使用され
る。2つの異なる境界領域50上の部位では、プラスマ
イナス2分の1度程度の屈折率変化が生じるだろう。
【0025】さらに、図5を見ると、質問ブロック72
は、新たな気泡が適切な境界領域50上に位置しない場
合は、焦点の深さが変更されることを示している(動作
ブロック60)。次に、焦点が適切な境界領域50上に
位置しない場合は、ブロック56,58,70,72が
反復される。この処置は、焦点が適切な境界領域50上
にある場合、かつまた質問ブロック74で、周縁32が
未完であることが示された場合、周縁が完了するまで継
続される(動作ブロック68で開始される)。全周縁3
2が、角膜24の解剖学的構造のため、または所望フラ
ップ30の形状のため、薄膜42の複数層間の単一の境
界領域50上に形成できない場合は、2つ以上の境界領
域50を光切除して、フラップ30の周縁32を形成す
る必要がある。それが必要な場合は、1つの境界領域5
0のカットから他の境界領域のカットへ移るさい、レー
ザビーム22(図1)のエネルギーレベルを変えるのが
好ましい。詳しく言えば、薄膜42の層内で効果的に光
切除するには、境界領域50上で効果的に光切除するの
に要するエネルギーレベルより高いエネルギーレベル
が、概して必要である。境界領域50上での光切除に
は、例えば、直径寸法10マイクロメートルの焦点に対
して約5マイクロジュールのエネルギーが適当である
が、薄膜42の層内部での光切除には、幾分、より高い
エネルギーが効果的である。
【0026】次に、図3、図6を見ると、周縁32が設
けられた後、角膜24の前面34から周縁32までの切
開部が、施術者の望みに応じて外科用レーザまたは外科
用切開刀で形成され、フラップ30の縁部36が設けら
れるのが判る。重要な点は、周縁32は境界領域50に
設けられるので、縁部36により境界付けられた角膜組
織は、境界領域50に沿って薄膜42の1つの層を他の
層から持ち上げて剥離でき、それによりフラップ30が
形成される点である。以上、詳細に図示かつ説明した角
膜フラップを形成する特定の装置は、課題の解決が可能
であり、かつまた既述の利点を得ることができるが、該
システムは、本発明の現時点で好ましい実施例を示すも
のに過ぎず、特許請求の範囲の記載以外の構成または設
計の細部には限定の意図はないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置に有用な装置の操作構成要素を閉
ループ型フィードバック制御形式で示す模式図。
【図2】角膜フラップの斜視図。
【図3】フラップの周縁と縁部とが形成された後の角膜
の断面図。
【図3A】図3の3−3線に沿った角膜の拡大断面図
で、間質薄膜層間の境界領域を示す図。
【図4】フラップの周縁と縁部とが形成された後の角膜
の平面図。
【図5】本発明の方法により達成される継続するステッ
プの論理フローチャート。
【図6】角膜フラップを角膜の残部から剥離した後の角
膜フラップの断面図。
【符号の説明】
10 装置 12 レーザ発生源 14 エリプソメータ 16 波面検出器 20 電源 22 レーザビーム 24 角膜 26 眼球 30 フラップ 32 周縁 33 光軸 34 眼球の前面 36 縁部 38 間質組織 40 間質 42 薄膜 50 境界領域

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 柔らかい透明材料にフラップを形成する
    装置であって、前記材料が表面を有するとともに複数層
    を含み、各層間の境界領域位置で複屈折変化を検出可能
    である形式の装置において、前記装置が、 レーザビームを発生させるレーザ発生源と、 層間境界領域上の部位に設定した焦点のところで材料を
    光切除し、その反応として、或る直径を有する気泡を発
    生させるために、前記レーザビームを該焦点に指向させ
    る光学誘導手段と、 前記気泡が層間境界領域にあるか否かを検出するため
    に、前記気泡直径を基準値と比較する波面検出器とを含
    み、該波面検出器が前記光学誘導手段に接続されてお
    り、これにより、前記気泡が層間境界領域に位置しない
    ことを前記波面検出器が検出した場合には、前記レーザ
    ビームが別の部位に再集束され、さらに、 前記フラップの周縁を光切除する目的で、予め定めた経
    路に沿って前記複数焦点へ前記レーザビームを順次に移
    動させるために、前記光学誘導手段に接続された機構
    と、前記フラップに縁部を形成するために、材料表面と
    前記周縁との間の材料を切断する切開用具と、 前記フラップを形成するために、前記境界領域位置で材
    料層を互いに剥離する用具とを含む、柔らかい透明材料
    にフラップを形成する装置。
  2. 【請求項2】 前記焦点での材料複屈折特性を測定する
    エリプソメータと、 前記焦点の深さを変更することで前記複屈折特性の測定
    値変化を最小化するために、前記エリプソメータを前記
    光学誘導手段と相互接続する電子装置とを更に含む請求
    項1に記載された柔らかい透明材料にフラップを形成す
    る装置。
  3. 【請求項3】 前記基準値が、直径約15ミクロンの材
    料内気泡を表す請求項2に記載された柔らかい透明材料
    にフラップを形成する装置。
  4. 【請求項4】 前記切開用具がレーザビームである請求
    項1に記載された柔らかい透明材料にフラップを形成す
    る装置。
  5. 【請求項5】 前記切開用具が切開刃である請求項1に
    記載された柔らかい透明材料にフラップを形成する装
    置。
  6. 【請求項6】 前記剥離用具が、前記境界領域位置で材
    料層を互いに機械的に剥離する請求項1に記載された装
    置。
  7. 【請求項7】 前記周縁が、曲率半径約4.5ミリメー
    トルの曲線で構成され、かつ該曲線が約270度の弧に
    わたり延在する請求項1に記載された柔らかい透明材料
    にフラップを形成する装置。
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