JP2003180235A - 菓子用生地の製造方法および装置 - Google Patents

菓子用生地の製造方法および装置

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JP2003180235A JP2001380575A JP2001380575A JP2003180235A JP 2003180235 A JP2003180235 A JP 2003180235A JP 2001380575 A JP2001380575 A JP 2001380575A JP 2001380575 A JP2001380575 A JP 2001380575A JP 2003180235 A JP2003180235 A JP 2003180235A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製品の形状安定性や湿潤感(しっとり感)を
低下させることなく、製品に柔らかさを与え、しかもき
めの細かい製品を得ることができる菓子用生地の製造方
法および装置の提供。 【解決手段】 縦型ミキサ1において、原料を混合する
とともに発泡させる一次発泡工程と、ミキサ4におい
て、一次発泡生地を撹拌し、さらに発泡させる二次発泡
工程とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内部に気泡を含む
菓子、例えばスポンジケーキ、カステラ、シフォンケー
キ、カスタードケーキ、ワッフルの生地を製造する方法
および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】スポンジケーキなどの菓子は、卵、砂
糖、小麦粉などを発泡させて得た発泡生地を焼成するこ
とによって製造される。生地の調製にあたって、卵を添
加する方法としては、別立法と共立法がある。別立法
は、卵黄と卵白を分離し、これらをそれぞれ発泡させた
後に混合する方法である。別立法では、生地のきめが粗
くなるものの、発泡が容易となる利点がある。共立法
は、卵黄と卵白とを分離することなく発泡させる方法で
ある。共立法では、発泡がしにくくなるものの、生地の
きめが細かくなり、しっとりとした食感が得られる特徴
がある。
【0003】小麦粉を添加する方法としては、後粉法と
オールイン法がある。後粉法は、小麦粉以外の原料を混
合し発泡させた後、これに小麦粉を添加する方法であ
る。一般に、小麦粉のタンパク質が生地中に多く溶出す
ると、架橋構造を有するグルテンが形成され、生地の特
性(硬さ、粘度、安定性等)や焼成後の食感に大きな影
響を与える。後粉法は、小麦粉の合わせかた(添加法)
や撹拌時間などの条件設定が難しいものの、タンパク質
の溶出量を少なくでき、グルテンを形成されにくくする
ことができるため、食感を向上させることができる利点
がある。オールイン法は、全ての原料を混合した後、発
泡させる方法であり、短時間で生地を調製することがで
きる特徴がある。
【0004】従来、原料を発泡させるには、小型の縦型
ミキサを用いて、少量の原料を回分式で撹拌する方法が
採られている。この方法では、線径が細い線条体(ワイ
ヤ)からなるホイッパを有する小型ミキサ(30コート
前後)を使用するため、細かな気泡を生成させることが
できるものの、生地の製造効率が低くなる問題がある。
製造効率を高めるには大型のミキサを用いることが有効
であるが、大型ミキサには、ホイッパの強度確保のため
太径の線条体が用いられていることから、大型ミキサを
用いる場合には、気泡サイズが大きくなり、生地の調製
時間が長くなる問題がある。このため、原料を連続的に
撹拌し、発泡させることが可能な連続発泡機を用いる方
法が提案されている。この方法では、連続処理が可能と
なるため、細かい気泡を含む生地を効率的に製造でき
る。
【0005】特開昭61−100145号公報、特開平
6−225682号公報、および特開平9−17294
0号公報には、生地を連続的に製造する方法および装置
が開示されている。特開昭61−100145号公報に
は、卵白側攪拌装置と、卵黄側攪拌装置と、これら攪拌
装置で得られた生地材料を混合するミキサ部とを備えた
製造装置が開示されている。この公報には、卵白側攪拌
装置で発泡させた卵白側材料と、卵黄側攪拌装置で発泡
させた卵黄側材料とを、ミキサ部で混合することによっ
て生地を製造する方法が示されている。
【0006】特開平6−225682号公報には、原料
を発泡させる発泡装置と、得られた種生地に小麦粉等を
混合するミキサを備え、ミキサが回転2軸構造を有する
製造装置が開示されている。この公報には、卵などの種
生地原料を発泡装置で発泡させた後、ミキサを用いて種
生地に小麦粉等を混合する製造方法が示されている。
【0007】特開平9−172940号公報には、卵白
用溶解槽と、卵黄用溶解槽と、これらからの卵生地を管
状に吐出するノズルと、卵生地を撹拌する撹拌機とを備
えた製造装置が開示されている。この公報には、卵黄と
卵白をそれぞれホイップした後、混合し、得られた卵生
地を管状に連続吐出し、管状の卵生地内に粉体材料を投
入した後、卵生地をほぐして粉体材料と卵生地とを混合
させる製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年では、従来品より
も柔らかい食感の菓子(スポンジケーキ等)が要望され
ている。しかしながら、従来の製造方法では、製品に柔
らかさを与えるために、発泡工程における撹拌条件を調
整して生地中の気泡を大きくすると、製品の形状安定性
や湿潤感(しっとり感)が低下する問題があった。さら
に、従来の製造方法では、発泡時に生地に大きなストレ
スが加えられるため、気泡膜中のタンパク質が変成し、
気泡の物理的強度が低下することがあった。気泡の強度
が低下すると、後粉工程や焼成工程において、気泡が潰
れたり、気泡どうしが合一することにより、製品の形状
安定性やきめの細かさが低下する問題があった。
【0009】また、特開昭61−100145号公報に
示された製造方法では、別立法が採用されているため装
置が複雑となる問題があった。さらに、卵白側攪拌装置
と、卵黄側攪拌装置とからの2種の生地材料が直接ミキ
サ部に導入されるため、ミキサ部において生地が均質に
なりにくく、気泡の安定性が低下し、製品の形状安定
性、きめの細かさ等の特性が低下することがあった。ま
た特開平6−225682号公報に示された製造方法で
は、回転2軸構造のミキサを用いるため、処理速度を一
定に維持しつつ撹拌条件を変更するのが難しい。このた
め、原料の品質や環境条件の変化に対応して製造条件を
変更するのが難しく、後粉工程においてグルテン形成量
を最適化するのが難しくなる問題があった。また特開平
9−172940号公報に示された製造方法では、別立
法が採用されているため装置が複雑となる問題があっ
た。
【0010】本発明は、前記事情に鑑みてなされたもの
で、その目的は以下のとおりである。 (1)製品の形状安定性や湿潤感(しっとり感)を低下
させることなく、製品に柔らかさを与え、しかもきめが
細かい製品を得ることができる菓子用生地の製造方法お
よび装置の提供。 (2)装置構成を簡略化することができる菓子用生地の
製造方法および装置の提供。 (3)生地中のグルテン形成量を容易に調整できる菓子
用生地の製造方法および装置の提供。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、食味の点で
優れた菓子を詳細に分析した結果、製品に形状安定性や
湿潤感(しっとり感)を与えるには、気泡を小さくする
のが好ましく、柔らかさを与えるには気泡を大きくする
のが好ましいことを見出した。このことから、生地中に
微細な気泡と粗大な気泡の双方を混在させることによっ
て、上記各特性を兼ね備えた製品を得ることができると
の知見を得た。本発明は、この知見に基づいてなされた
ものであり、その構成は以下の通りである。本発明の菓
子用生地の製造方法は、原料を混合するとともに発泡さ
せる一次発泡工程と、この工程で得られた一次発泡生地
を撹拌し、さらに発泡させる二次発泡工程とを有するこ
とを特徴とする。一次発泡生地の比重は、0.35〜
0.5g/cm3とするのが好ましい。二次発泡工程で
得られる二次発泡生地の比重S2と、一次発泡生地の比
重S1との差(S1−S2)は、0.2g/cm3以下とす
るのが好ましい。本発明の製造方法では、原料として卵
を用い、この卵を、卵黄と卵白に分離せずに一次発泡工
程に用いるのが好ましい。本発明の製造方法では、二次
発泡工程に続いて、二次発泡生地に小麦粉を添加し、混
合する後粉工程を行うことができる。後粉工程において
は、回分式混合機を用いて二次発泡生地と小麦粉を混合
することができる。本発明の菓子用生地の製造装置は、
原料を混合するとともに発泡させる一次発泡機と、この
工程で得られた一次発泡生地を撹拌し、さらに発泡させ
る二次発泡機とを備えていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の菓子用生地の製
造装置の一実施形態を示すものである。図1において、
符号1は、原料を混合するとともに発泡させる縦型ミキ
サ(一次発泡機)を示し、符号2は、縦型ミキサ1から
の一次発泡生地を移送する移送機を示し、符号3は、移
送機2からの一次発泡生地を撹拌し、さらに発泡させる
発泡機(二次発泡機)を示し、符号4は、発泡機3から
の二次発泡生地を小麦粉と混合するミキサ(混合機)を
示す。
【0013】縦型ミキサ1としては、原料を収容する容
器(ミキサボウル)と、容器内の材料を混合するホイッ
パと、ホイッパを回転させるモータとを備えたものが好
適である。縦型ミキサ1としては、比較的大型のものを
用いるのが好ましい。例えば90コート以上(容器の容
量が90コート以上)のものを用いるのが好適である。
なお、コートとは1/4ガロンの容量を指し、0.94
6L(米)または1.136L(英)を意味する。縦型
ミキサ1として90コート未満のものを用いると、一次
発泡工程において生地中に形成される気泡が小さくなり
すぎ、製品の柔らかさが低下するため好ましくない。
【0014】発泡機3としては、円筒状のケーシング内
に、円筒状のドラムが挿通され、ケーシング内面および
ドラム外面に撹拌ピンが形成され、これらケーシングと
ドラムとの間で生地を連続的に撹拌し発泡させる連続発
泡機が使用可能である。また発泡機3としては、縦型ミ
キサを用いることもできる。この縦型ミキサとしては、
比較的小型のものを用いるのが好ましい。例えば50コ
ート以下のものを用いるのが好ましい。50コートを越
えるミキサを用いる場合には、二次発泡工程において生
地中に形成される気泡が大きくなりすぎ、製品の形状安
定性や湿潤感(しっとり感)が低下するため好ましくな
い。
【0015】ミキサ4としては、回分式のものを用いて
もよいし、連続式のものを用いてもよい。特に、回分式
ミキサ(回分式混合機)は、連続式ミキサに比べ、生産
性は低いものの、撹拌時間を調節することによって容易
にグルテン生成量を調整できるため、高品質な菓子用生
地の製造に適している。ミキサ4の処理能力が焼成装置
の処理能力を上回る場合には、ミキサ4で得られた生地
を直ちに焼成するのが難しくなるため、この生地を長時
間放置することになり、生地中のグルテン量増加による
菓子の品質低下を招く。このため、ミキサ4の処理能力
は、焼成装置の処理能力に応じて定めるのが好ましい。
【0016】次いで、上記製造装置を用いた場合を例と
して、本発明の菓子用生地の製造方法の一実施形態を説
明する。以下に示す製造方法は、次の3つの工程を有す
る。 (1)原料を混合し、発泡させる一次発泡工程 (2)一次発泡工程で得られた一次発泡生地を撹拌し、
さらに発泡させる二次発泡工程 (3)二次発泡工程で得られた二次発泡生地に小麦粉を
混合する後粉工程 以下、各工程について詳しく説明する。
【0017】(1)一次発泡工程 この工程では、原料、例えば卵、砂糖、油脂類、安定剤
(乳化剤、気泡安定剤)を縦型ミキサ1に投入し、撹拌
する。この際、撹拌条件、例えば撹拌速度(撹拌羽根等
の回転速度)を適宜設定することによって、原料を混合
するだけでなく発泡させ、一次発泡生地を得る。この工
程では、縦型ミキサ1として、比較的大型のもの(例え
ば90コート以上)を用いることによって、原料中に生
成する気泡を大きくすることができる。
【0018】卵(液卵)を添加する際には、卵黄と卵白
を分離せずに添加する共立法を採用するのが好ましい。
また、原料に過大なストレスが加えられるのを防ぐた
め、縦型ミキサ1における撹拌速度(撹拌羽根等の回転
速度)は、生産効率を低下させない範囲でなるべく遅く
設定するのが好ましい。
【0019】原料を撹拌する際の縦型ミキサ1内の原料
温度は、20〜25℃とするのが好ましい。この温度が
上記範囲未満である場合、または上記範囲を越える場合
には、発泡が不十分となりやすくなる。
【0020】発泡によって、原料は乳化し、流動性が低
下するため、その保形性が向上する。流動性が低くなる
ため、比重が異なる複数の原料が再分離するのを防ぎ、
これらを均一に混合することができる。例えば主原料で
ある液卵と、液卵に対し比重が異なる油脂類、安定剤と
を均一に混合することができる。
【0021】この工程では、生地中に気泡が生成するた
め、その比重は低下する。すなわち一次発泡生地の比重
は、発泡前の原料の比重より小さくなる。一次発泡生地
の比重は、菓子の種類によって適宜選択されるが、0.
35〜0.5g/cm3(好ましくは0.4〜0.45
g/cm3)とするのが好適である。この比重が上記範
囲未満となる場合には、一次発泡生地の調製時間が長く
なる。また気泡が小さくなり過ぎるおそれがある。この
比重が上記範囲を越える値となる場合には、一次発泡生
地が不均一となりやすくなる。また大きな気泡が形成さ
れるため、この気泡が壊れやすくなり、生地の形状が不
安定となりやすくなる。
【0022】また、この工程では、生地中に気泡が生成
するため、粘度が低下する。すなわち発泡後の一次発泡
生地の粘度は、発泡前の原料の粘度より小さくなる。
【0023】(2)二次発泡工程 この工程は、菓子用生地に必要な量の気泡を生地中に生
成させる工程である。この工程では、一次発泡工程で得
られた一次発泡生地を移送機2により発泡機3に移送
し、ここで撹拌し、発泡させる。ケーシング内にドラム
を備えた連続発泡機を用いる場合には、一次発泡生地を
ケーシングとドラムとの間に投入し、ドラムを回転させ
ることによって、撹拌ピンにより生地に剪断力を加え、
生地中に気泡が抱き込まれるようにする。これによっ
て、一次発泡工程で生地中に形成された粗大な気泡の一
部が剪断され微細化するとともに、新たに微細気泡が生
成する。比較的小型の縦型ミキサ(例えば50コート以
下)を用いる場合においても、粗大気泡の一部が剪断さ
れ微細化するとともに、新たに微細な気泡が生成する。
従って、粗大気泡と微細気泡とが混在した二次発泡生地
が得られる。二次発泡工程において、一次発泡工程とは
大きさが異なる気泡を生成させることができるのは、二
次発泡工程では、一次発泡工程で用いられる縦型ミキサ
1とは気泡形成能力(線径や撹拌機構)が異なる発泡機
3を用いるためである。
【0024】上述のように、一次発泡生地は、粘度が低
くなっているため、二次発泡工程においては、撹拌時に
生地に加えられるストレスが小さくなる。さらに、一次
発泡生地が、流動性が低く原料の再分離が起こりにくい
ため均質であることから、二次発泡工程において、生地
に大きなストレスを与えることなく、十分な発泡が可能
となる。
【0025】二次発泡生地の比重は、菓子の種類によっ
て適宜選択されるが、0.25〜0.4g/cm3(好
ましくは0.3〜0.35g/cm3)とするのが好適
である。この比重を上記範囲未満とする場合には、気泡
が小さく、かつ均一になりすぎる。この場合には、気泡
膜が薄くなり、後粉工程や焼成工程において気泡が潰
れ、製品の形状安定性が低下することがある。この比重
を上記範囲を越える値とする場合には、気泡の安定性が
悪化し、製品のきめが粗くなるため好ましくない。
【0026】二次発泡生地の比重S2と一次発泡生地の
比重S1との差(S1−S2)は、0.2g/cm3以下で
あることが好ましい。この比重差は、0.08〜0.1
6とするのがさらに好ましい。この比重差が上記範囲を
越える場合には、生地中の気泡の大きさが均一化しやす
くなり、製品が硬くなると共に形状安定性が低下する。
また比重差が上記範囲を下回る場合には、一次発泡時に
生成する気泡の大きさが不十分となるか、または二次発
泡時に生成する気泡の微細化が不十分となりやすい。こ
のため、製品のしっとり感または柔らかさが低下すると
共に形状安定性が低下する。
【0027】生地に過大なストレスが加えられるのを防
ぐため、発泡機3における撹拌速度(撹拌羽根等の回転
速度)は、生産効率を低下させない範囲でなるべく遅く
設定するのが好ましい。
【0028】(3)後粉工程 この工程では、ミキサ4において二次発泡生地に小麦粉
を添加し、これらを撹拌、混合する。この際、少量の水
を加えてもよい。これによって、二次発泡生地と小麦粉
とが混合した菓子用生地が得られる。なお、小麦粉を含
まない菓子を製造する場合には、この後粉工程は不要で
ある。
【0029】以上の工程を経て得られた菓子用生地は、
焼成により、スポンジケーキなどの製品となる。生地の
焼成は、ピールレスオーブンなどを用いて行うことがで
きる。
【0030】本実施形態の製造方法は、原料を混合する
とともに発泡させる一次発泡工程と、一次発泡生地を撹
拌し、さらに発泡させる二次発泡工程とを有するので、
以下の効果を得ることができる。 (i)一次発泡工程において、生地中に粗大な気泡を生
成させ、二次発泡工程において、粗大気泡の一部を剪断
し微細化するとともに、新たに微細気泡を生成させるこ
とができる。このため、粗大気泡と微細気泡とが混在し
た製品(スポンジケーキ等)を得ることができる。よっ
て、粗大な気泡によって製品に柔らかさを与え、かつ微
細な気泡によって製品に形状安定性および湿潤感(しっ
とり感)を与えることができる。従って、柔らかく、か
つ形状安定性に優れ、しかも湿潤感(しっとり感)に富
んだ製品を得ることができる。
【0031】(ii)一次発泡工程において、原料を発泡
させるため、低粘度の一次発泡生地を得ることができる
ことから、二次発泡工程において、撹拌時に生地に加え
られるストレスを小さくすることができる。さらに、一
次発泡生地が、流動性が低く原料の再分離が起こりにく
いため均質であることから、二次発泡工程において、生
地に大きなストレスを与える必要がない。よって、二次
発泡工程において生地に過大なストレスが与えられるこ
とに起因して気泡膜中のタンパク質が変成するのを防
ぎ、気泡の物理的強度低下を防ぐことができる。このた
め、後粉工程や焼成工程において、気泡が潰れたり気泡
どうしが合一することにより、製品の形状安定性やきめ
の細かさが低下するのを未然に防ぐことができる。従っ
て、形状安定性およびきめの細かさの点で優れた製品を
得ることができる。
【0032】(iii)一次発泡生地の比重が低くすぎる
場合には、気泡が小さくなり過ぎ、製品の形状安定性や
湿潤感(しっとり感)が低下し、高くなりすぎる場合に
は、生地が不均一となりやすい。よって、この比重を
0.35〜0.5g/cm3とすることによって、形状
安定性や湿潤感(しっとり感)に優れ、しかも均質な製
品を得ることができる。
【0033】(iv)二次発泡生地の比重S2と一次発泡
生地の比重S1との差(S1−S2)が大きすぎる場合に
は、生地中の気泡の大きさが均一化しやすくなり、形状
安定性が低下する。よって、この比重差を0.2g/c
3以下とすることによって、形状安定性の点で優れた
製品を得ることができる。
【0034】(iv)卵を、卵黄と卵白に分離することな
く用いる共立法を採用することによって、卵黄用および
卵白用のミキサを不要とし、装置構成を簡略化すること
ができる。従って、装置コスト低減を図ることができ
る。
【0035】(v)ミキサ4として回分式ミキサ(回分
式混合機)を用いる場合には、撹拌時間等を調節するこ
とによって、容易に撹拌条件を変更することができる。
従って、原料の品質や環境条件の変化に対応して製造条
件を適宜変更し、後粉工程においてグルテン形成量を最
適化するのが容易となる。
【0036】
【実施例】(実施例1)図1に示す製造装置を用いて、
次のようにして菓子用生地を製造した。 (1)一次発泡工程 液全卵30kg(温度30℃)と、グラニュー糖12k
gと、副原料(乳化剤、水飴、水等)6kgとを、縦型
ミキサ1(愛工舎製12コートミキサ)を用いて6分間
撹拌し、一次発泡生地を得た。一次発泡生地の比重は
0.45g/cm3となった。 (2)二次発泡工程 一次発泡生地を、連続発泡機3(関西久保長製、ロータ
180rpm、エア流量2.45L/min)を用いて
撹拌し、発泡させ、二次発泡生地を得た。二次発泡生地
の比重は0.33g/cm3となった。 (3)後粉工程 予め篩いを通した小麦粉4kgと水720gとを、二次
発泡生地14kgに添加し、ミキサ4(関東混合機工業
製120コートミキサ)を用いて混合した。この際、撹
拌羽根の回転速度は中速度とし、撹拌時間は4分間とし
た。得られた菓子用生地の比重は0.33g/cm3
なった。この菓子用生地1100gを、ビールレスオー
ブンを用い、185℃の温度で32分間焼成し、20個
の円筒状のスポンジケーキを得た。
【0037】(比較例1)一次発泡工程を行わずに菓子
用生地を製造した。後粉工程における撹拌時間は3分間
とした。その他の試験条件は実施例1に準じて定めた。
得られた菓子用生地の比重は0.33g/cm3となっ
た。この菓子用生地を実施例1と同様にして焼成し、2
0個のスポンジケーキを得た。
【0038】(比較例2)一次発泡工程を行わずに菓子
用生地を製造した。後粉工程における撹拌時間は5分間
とした。その他の試験条件は実施例1に準じて定めた。
得られた菓子用生地の比重は0.32g/cm3となっ
た。この菓子用生地を実施例1と同様にして焼成し、2
0個のスポンジケーキを得た。
【0039】(食味試験)実施例および比較例で得られ
たスポンジケーキを食味し、柔らかさ、湿潤感(しっと
り感)、きめの細かさ等の点で評価した。その結果、比
較例1のスポンジケーキは、口溶けはよいが、全体的に
柔らかさに乏しかった。また、比較例2のスポンジケー
キは、全体的に硬く、口溶けが悪かった。これに対し、
実施例1のスポンジケーキは、柔らかく、口溶けの点で
優れていた。このことから、実施例1では、生地の比重
が、比較例1、2の生地の比重と同程度であるにもかか
わらず、食味が優れていることがわかった。
【0040】(形状安定性評価)実施例および比較例で
得られたスポンジケーキの形状を調べ、落ち込み(中央
部の沈み込み)が生じているかどうかを確認した。その
結果、比較例1、2のスポンジケーキでは、20個中、
それぞれ5個、8個において落ち込みが見られたのに対
し、実施例1のスポンジケーキでは、落ち込みが見られ
なかった。このことから、実施例1のスポンジケーキ
は、形状安定性に優れていることがわかった。
【0041】(実施例2)一次発泡工程における撹拌時
間を変化させ、一次発泡生地の比重を表1に示すとおり
とし、かつ二次発泡工程における撹拌条件(撹拌速度
等)を変化させ、二次発泡生地の比重を表1に示すとお
りとして菓子用生地を作製し、これを焼成して20個の
スポンジケーキを得た。その他の試験条件は実施例1に
準じて定めた。得られたスポンジケーキを上記食味試験
に供した。また形状安定性の評価を行った。結果を表1
に示す。
【0042】
【表1】
【0043】表1より、一次発泡生地の比重が0.35
〜0.5g/cm3であるときに、形状安定性および食
味の点で優れたスポンジケーキが得られたことがわか
る。また、二次発泡生地の比重が0.25〜0.4g/
cm3であるとき(特に0.3〜0.35g/cm3であ
るとき)に形状安定性および食味の点で優れたスポンジ
ケーキが得られたことがわかる。また、比重差が0.2
g/cm3以下であるとき(特に0.08〜0.16g
/cm3であるとき)に形状安定性および食味の点で優
れたスポンジケーキが得られたことがわかる。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の菓子用生
地の製造方法は、原料を混合するとともに発泡させる一
次発泡工程と、一次発泡生地を撹拌し、さらに発泡させ
る二次発泡工程とを有するので、一次発泡工程におい
て、生地中に粗大な気泡を生成させ、二次発泡工程にお
いて、粗大気泡の一部を剪断し微細化するとともに、新
たに微細気泡を生成させることができる。このため、粗
大気泡と微細気泡とが混在した製品(スポンジケーキ
等)を得ることができる。よって、粗大な気泡によって
製品に柔らかさを与え、かつ微細な気泡によって製品に
形状安定性および湿潤感(しっとり感)を与えることが
できる。また、一次発泡工程において、原料を発泡させ
るため、低粘度、かつ流動性が低い一次発泡生地を得る
ことができる。このため、二次発泡工程において、生地
に過大なストレスが与えられるのを防ぐことができる。
よって、二次発泡工程において生地に過大なストレスが
与えられることに起因して、製品の形状安定性やきめの
細かさが低下するのを未然に防ぐことができる。従っ
て、柔らかさ、形状安定性、湿潤感(しっとり感)、き
めの細かさの点で優れた製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の菓子用生地の製造方法の一実施形態
に用いられる製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1・・・縦型ミキサ(一次発泡機)、3・・・発泡機(二次発
泡機)、4・・・ミキサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三宅 啓介 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本酸 素株式会社内 (72)発明者 須佐 亮一 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本酸 素株式会社内 Fターム(参考) 4B031 CA14 CA15 CC09 4B032 DB06 DB07 DB11 DP14

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原料を混合するとともに発泡させる一
    次発泡工程と、この工程で得られた一次発泡生地を撹拌
    し、さらに発泡させる二次発泡工程とを有することを特
    徴とする菓子用生地の製造方法。
  2. 【請求項2】 一次発泡生地の比重を、0.35〜
    0.5g/cm3とすることを特徴とする請求項1記載
    の菓子用生地の製造方法。
  3. 【請求項3】 二次発泡工程で得られる二次発泡生地
    の比重S2と、一次発泡生地の比重S1との差(S1
    2)を、0.2g/cm3以下とすることを特徴とする
    請求項1または2記載の菓子用生地の製造方法。
  4. 【請求項4】 原料として卵を用い、この卵を、卵黄
    と卵白に分離せずに一次発泡工程に用いることを特徴と
    する請求項1〜3のうちいずれか1項記載の菓子用生地
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 二次発泡工程に続いて、二次発泡生地
    に小麦粉を混合する後粉工程を行うことを特徴とする請
    求項1〜4のうちいずれか1項記載の菓子用生地の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 後粉工程において、回分式混合機を用
    いて二次発泡生地と小麦粉を混合することを特徴とする
    請求項5記載の菓子用生地の製造方法。
  7. 【請求項7】 原料を混合するとともに発泡させる一
    次発泡機と、この工程で得られた一次発泡生地を撹拌
    し、さらに発泡させる二次発泡機とを備えていることを
    特徴とする菓子用生地の製造装置。
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