JP2003178709A - エネルギーフィルタ - Google Patents

エネルギーフィルタ

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JP2003178709A
JP2003178709A JP2001374549A JP2001374549A JP2003178709A JP 2003178709 A JP2003178709 A JP 2003178709A JP 2001374549 A JP2001374549 A JP 2001374549A JP 2001374549 A JP2001374549 A JP 2001374549A JP 2003178709 A JP2003178709 A JP 2003178709A
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energy filter
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 非点結像を行う2段型エネルギーフィルタ
で、収差が少ないエネルギーフィルタを提供すること。 【解決手段】 荷電粒子の進行方向に1段目フィルタ1
1と2段目フィルタ12が間隔をおいて配置され、1段
目フィルタ11と2段目フィルタ12との間にエネルギ
ー選択スリット13を有し、特定エネルギーを持つ荷電
粒子のみを選択的に通過させるエネルギーフィルタであ
って、エネルギーフィルタ内を進行する荷電粒子が、荷
電粒子の進行方向に対して直交するX方向で1回収束
し、X方向と直角のY方向では一度も収束しないように
し、X方向における収束位置にエネルギー選択スリット
13を配置する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、特定エネルギー
を持つ荷電粒子のみを選択的に通過させるエネルギーフ
ィルタに関し、特に、透過型電子顕微鏡、エネルギー分
析装置などのモノクロメータ等に使用されるエネルギー
フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、試料を透過した電子ビームを蛍光
板に拡大投射する電子光学系内にエネルギーフィルタを
配置した透過型電子顕微鏡が開発されている。斯かるエ
ネルギーフィルタを有する透過型電子顕微鏡によれば、
試料によって影響を受けた透過電子(透過荷電粒子)の
うち、特定エネルギーの透過電子のみに基づく顕微鏡像
を形成することができる。このようなエネルギーフィル
タを用いる分析において高いエネルギー分解能を得るに
あたり、電子銃で作られる、試料をする照射する以前の
電子のエネルギーの拡がりが邪魔になる場合がある。こ
のような場合に、電子銃と試料との間にもエネルギーフ
ィルタを置き、照射ビームのエネルギー幅を狭くするこ
とが行われる。このような目的で使用されるエネルギー
フィルタはモノクロメータと呼ばれる。
【0003】(従来例1)図8は、一様電場と一様磁場
を用いるウィーンフィルタによる電子ビーム軌道を示
す。電子銃より出射された電子ビームは、フィルタ内で
の進行過程で、進行方向(Z方向)に対して直交するX
方向(ZX面内)で1回収束(結像)し、X方向と直角
のY方向では収束(結像)しない。
【0004】しかし、このウィーンフィルタでは、フィ
ルタの直前でクロスオバーを作って入射ビームをフィル
タへ入れると、フィルタから射出される電子ビームの形
は、X方向にはフォーカスして分散を生じるが、Y方向
には長く伸びたビームとなり、その後の取扱が困難であ
った。
【0005】(従来例2)図9は、上述の欠点を克服し
た不均一場ウィーンフィルタによる電子ビーム軌道を示
す。この不均一場ウィーンフィルタは、4極子場(不均
一場)を加えることにより、Y方向にもフォーカスを実
現し、フィルタ内のどこで見ても丸い横断面のビームと
なるラウンドレンズ型のフォーカスを行う。
【0006】しかし、この不均一場ウィーンフィルタで
は、フィルタの出口にエネルギー選択スリットが配置さ
れる。従って、これをモノクロメータとして用いる場
合、その後のビームはビームの位置によってエネルギー
が異なる(Chromatic)一方、ビーム形状がス
リットによって切断された細長形状となり、実用上不便
であった。
【0007】(従来例3)図10は、前記不均一場ウィ
ーンフィルタの欠点を克服する2段型エネルギーフィル
タによる電子ビーム軌道を示す。この2段型エネルギー
フィルタは、電子ビームの進行方向に間隔をおいて配置
された2個のウィーンフィルタを有し、1段目のエネル
ギーフィルタの後にエネルギー選択スリットを配置し、
エネルギー選択スリットによってエネルギー選択した後
に、2段目のエネルギーフィルタによりエネルギー分散
をゼロへ戻す(Achromatic)。
【0008】(従来例4)ところで、電子銃のすぐ近傍
で小さい加速電圧のもとでエネルギーフィルタが使用さ
れる場合、電子銃から出発した電子が、クロスオバーを
作り互いに接近して飛翔すると、電子間クローン相互作
用によってエネルギーの広がりやビーム径の増大を起こ
すことがある、と云う問題があった。図11は、前記問
題を解決する2段型エネルギーフィルタによる電子ビー
ム軌道を示す(特開2001−23558号公報)。同
図に示すように、このエネルギーフィルタでは、電子ビ
ームの進行方向に対して直交するX方向では2回フォー
カスし、Y方向では1回だけフォーカスする。従って、
ラウンドレンズ型のフォーカシングではなく、非点型の
フォーカスが行われる。そして前記X方向の第2フォー
カス位置にスリットが配置され、エネルギー選択が行わ
れる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来例4のエネルギー
フィルタでは、1段目フィルタに比べて2段目フィルタ
の軸長が短く、ビーム進行方向に於いてスリット位置
は、エネルギーフィルタ全長の中心に位置しない。従っ
て、エネルギーフィルタによる収差が発生する懸念があ
った。
【0010】この発明は、上述の如き問題点を解消する
ためになされたもので、収差の発生が少ないエネルギー
フィルタを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、この発明によるエネルギーフィルタは、特定のエ
ネルギーを持つ荷電粒子のみを通過させる為に電場と磁
場を組み合わせたエネルギーフィルタであって、当該エ
ネルギーフィルタ内を進行する荷電粒子は、進行方向に
平行なZ軸及びこれに直交するX軸で定まるZX面内に
於いて少なくとも一回収束し、前記Z軸及び、前記Z軸
・X軸と直交するY軸で定まるZY面内に於いて、前記
収束位置で所定値以上の幅を有し、前記ZX面内におけ
る収束位置に、エネルギー選択スリットが配置されてい
る。好ましくは、前記ZX面内及びZY面内に於ける縦
断面形状は、Z軸方向におけるエネルギーフィルタの中
心位置を中心として対称にされる。
【0012】前記エネルギーフィルタは、前記荷電粒子
が、前記ZX面内に於いて所定符合のX座標値を有する
少なくとも一つの第1フィルタ部分と、前記所定符合と
逆符合のX座標値を有する少なくとも一つの第2フィル
タ部分とを備え、各フィルタ部分の長さは、前記荷電粒
子が第1フィルタ部分を進行する際に発生する収差と、
第2フィルタ部分を進行する際に発生する収差とが相互
にうち消し合うように設定される。
【0013】好ましくは、前記エネルギーフィルタは、
光軸に沿って配置されたほぼ同じ長さを有する一つの第
1フィルタ部分と一つの第2フィルタ部分とを有し、前
記荷電粒子は、ZX面内に於いて当該第1フィルタ部分
と第2フィルタ部分との間で一回収束する。
【0014】好ましくは、磁場及び電場の分布は、光軸
に沿ったエネルギーフィルタの中心位置を含むXY面を
対称面として面対称を有し、前記荷電粒子の軌道は、前
記ZX面内に於いて、光軸上の前記エネルギーフィルタ
中心位置を中心に180°回転対称を有する。
【0015】好ましくは、荷電粒子ビームは、前記ZX
面内に於いて一回収束し、ZY面内に於いて、エネルギ
ーフィルタ全長に亘って所定値以上の幅を有し、スリッ
トは、前記Z軸に沿ってエネルギーフィルタの中央に配
置される。
【0016】好ましくは、荷電粒子ビームは、前記ZY
面内に於いて、エネルギーフィルタ全長に亘って平行ビ
ームを形成する。
【0017】好ましくは、前記エネルギーフィルタは、
Z軸方向に於ける長さがほぼ等しい2つのウィーンフィ
ルタを有する。
【0018】好ましくは、荷電粒子ビームは、前記ZX
面内及びZY面内に於ける縦断面形状がフィルタ入り口
において平行ビームを形成する。
【0019】好ましくは、前記エネルギーフィルタは、
間隔を置いて配置される複数のウィーンフィルタを含
み、各ウィーンフィルタは、一様な電場及び磁場をそれ
ぞれの内部に生成する。
【0020】この発明の他の側面は、前記何れかのエネ
ルギーフィルタを有する電子顕微鏡にある。
【0021】好ましくは、前記電子顕微鏡に於いて、エ
ネルギーフィルタの直前に配置されたレンズ又はレンズ
群は、当該エネルギーフィルタへ入射する電子ビーム
が、エネルギーフィルタ入り口において平行ビームを形
成するように調整されている。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、図1乃至4を参照してこの
発明の実施の形態を説明する。図1は、この発明による
エネルギーフィルタの一実施形態を示す概念図である。
また、図2は、この実施形態の物理的構成を示す模式
図、図3は、この実施形態で使用されるウィーンフィル
タの構造を例示する斜視図、図4は、この実施形態で使
用されるエネルギー選択スリット板の正面図である。
【0023】これらの図に示すように、この実施形態の
エネルギーフィルタ10は、一般的には、特定のエネル
ギーを持つ荷電粒子のみを通過させる為に電場と磁場を
組み合わせたエネルギーフィルタであって、当該エネル
ギーフィルタ内を進行する荷電粒子は、進行方向に平行
なZ軸及びこれに直交するX軸で定まるZX面内に於い
て少なくとも一回収束し、前記Z軸及び、前記Z軸・X
軸と直交するY軸で定まるZY面内に於いて、前記収束
位置で所定値以上の幅を有し、前記ZX面内における収
束位置にエネルギー選択スリット13aを配置したもの
である。
【0024】前記エネルギーフィルタ10は、前記荷電
粒子が、前記ZX面内に於いて所定符合のX座標値を有
する少なくとも一つの第1フィルタ部分11と、前記所
定符合と逆符合のX座標値を有する少なくとも一つの第
2フィルタ部分12とを備え、各フィルタ部分11,1
2の長さは、前記荷電粒子が第1フィルタ部分11を進
む際に発生する収差と、第2フィルタ部分12を進む際
に発生する収差とが相互にうち消し合うように設定され
る。
【0025】好ましくは、前記エネルギーフィルタは、
光軸Oに沿って配置されたほぼ同じ長さを有する一つの
第1フィルタ部分11と一つの第2フィルタ部分12と
を有し、前記荷電粒子は、ZX面内に於いて当該第1フ
ィルタ部分11と第2フィルタ部分12との間で一回収
束する。
【0026】また、磁場及び電場の分布は、光軸Oに沿
ったエネルギーフィルタ10の中心位置Mを含むXY面
を対称面として面対称を有し、前記荷電粒子の軌道は、
前記ZX面内に於いて、光軸O上の前記エネルギーフィ
ルタ中心位置Mを中心に180°回転対称を有する。
【0027】より詳細には、以下の通りである。図1及
び図2に示すように、例えば電子顕微鏡に使用される前
記エネルギーフィルタ10は、Z軸に平行な電子ビーム
中心軌道O(以下、光軸と称する。)に沿って配置され
た1段目フィルタ11と、2段目フィルタ12と、エネ
ルギーフィルタ10のZ軸方向の中央位置Mに配置され
たエネルギー選択スリット板13と、を有する。エネル
ギー選択スリット板13はエネルギー選択スリット13
aを有する。
【0028】このエネルギーフィルタ10の前段に、電
子銃の陰極16から射出された電子ビームの電子軌道を
調整する前段静電レンズ14が設けてある。また、エネ
ルギーフィルタ10の後段には、試料(図示せず)への
電子ビームの軌道を調整する後段静電レンズ15が設け
てある。
【0029】図2に示すように、前記1段目フィルタ1
1および2段目フィルタ12は、それぞれ、Z軸に沿っ
て進行する電子線eに対して、直交する電場E1及び磁
場H1或いは、電場E2及び磁場H2を印加するウィ−
ンフィルタから成る。
【0030】図3に示すように、各ウィーンフィルタ1
1,12は、前記磁場H1,H2を生成するために、前
記光軸Oを挟んで上下方向(Y方向)に対向配置される
磁極板(磁極N)21及び磁極板(磁極S)22を有す
る。この磁極板21,22は、ウィーンフィルタ内部に
一様な磁場H1,H2を生成する。
【0031】また、各ウィーンフィルタ11,12は、
前記電場E1,E2を生成するために、前記光軸Oを挟
んで左右方向(X方向)に対向配置される一対のプラス
電極板23及びマイナス電極板24を有する。この電極
板23,24は、ウィーンフィルタ内部に一様な電場E
1、E2を生成する。
【0032】図2に示すように、前記初段フィルタ11
及び2段目フィルタ12は、前記スリット13a(又は
スリット板13)の位置Mを含むXY面を対称面として
面対称の構造を有する。従って、前記フィルタ11,1
2のフィルタ長L1,L2は、ほぼ同じ長さを有する。
【0033】従って、前記電場E1,E2及び磁場H
1,H2の分布は、エネルギーフィルタ10のZ軸方向
の中心位置Mを含むXY面を対称面として面対称(図2
において左右対称)となる。
【0034】エネルギーフィルタ10の入り口部及び出
口部には、フィルタ11,12から発生する電磁場と周
囲の電子光学要素が発生する電磁場との干渉を防止する
ためのシャント部材101,103が設けてある。
【0035】上記構成により、Z軸に平行な光軸Oおよ
びその周辺に、当該光軸Oに直交するX方向に平行な電
場E1,E2及び、X方向に対して直角なY方向に平行
な磁場H1,H2が重畳された均一場が形成される。こ
のため、光軸Oに沿って入射した電子は、直交した電場
E1,E2と磁場H1,H2より受ける力と、個々の電
子のエネルギーにより定まる所定の軌道を進む。
【0036】より詳細には、前記電場E1,E2及び磁
場H1,H2の向き及び強さは、次の1,2の条件を充
足するように調整されている。
【0037】1.エネルギーフィルタ10内を進行する
荷電粒子ビームは、Z軸及X軸で定まるZX面内に於い
て一回収束し、Z軸及びY軸で定まるZY面内に於い
て、フィルタ10全長に亘って平行ビームを形成する。
【0038】2.電子軌道は、光軸O上に於けるエネル
ギーフィルタ10の中心位置Mを通るY軸を対称軸とし
て180°回転対称性を有する。
【0039】図4は、前記スリット13aを含むスリッ
ト板13の正面図を示す。同図に示すように、スリット
13aは、X軸方向に狭い幅dを有すると共にY軸方向
に広い幅Dを有する。また、スリット板13は、X軸方
向に移動自在に設けてある。
【0040】次に、図5及び図6を参照して、前記エネ
ルギーフィルタ10の作用を説明する。図5において、
各番号16,14,11,13a,12,15は、各番
号に対応する各要素のZ方向の位置を示す。
【0041】図5(a)は、前段静電レンズ14及び、
1段目フィルタ11、エネルギー選択スリット13、2
段目フィルタ12及び、後段静電レンズ15を通過する
電子線のZX面での軌道形状を示す。
【0042】同図に示すように、陰極16からの電子線
ERは収束性を持つことなく、前段静電レンズ14の電
子レンズ作用により平行ビームにされ、1段目フィルタ
11へ入射される(レンズ14は、光学で云うコリメー
タ・レンズとして作用する)。前記フィルタ11の入り
口に於ける平行ビームのビーム幅BWは、例えば、レン
ズ14の前方又は、レンズ14とフィルタ11との間に
配置されるアパーチャ(図示せず)により設定され得
る。
【0043】1段目フィルタ11へ平行入射された電子
線ERは、(X方向又はXZ面軌道で)当該フィルタ1
1の生成する電場E1及び磁場H1により、当該フィル
タ11の後方であって、エネルギーフィルタ10のZ方
向における中心位置Mで収束(結像)する。
【0044】前記収束された電子線ERは、(後述する
エネルギー条件を充足することを前提として)当該位置
Mでスリット13aを通過する。
【0045】前記スリット13aを通過した電子線ER
は、前記1段目フィルタ11と面対称の構造及び電磁場
分布を有する2段目フィルタ12の生成する電場E2及
び磁場H2により、当該フィルタ12の出口において、
1段目フィルタ11の入り口に於けると同じビーム幅B
Wに戻される。
【0046】従って、ZX面内に於いて、電子線の軌道
ERは、前記フィルタ中心位置Mを中心に180°回転
対称を有する。
【0047】その際、前記電子線の収差は、スリット位
置(対称点)Mの前後でキャンセルされる。より詳細に
は、以下の通りである。
【0048】図5(a)に示すように、各電子線の軌道
(電子軌道)は、前記中間位置Mで光軸Oを通り、1段
目フィルタ11内部と2段目フィルタ12内部とで、そ
のX座標値が反転する。
【0049】一方、電子軌道の収差は、磁場或いは電場
の大きさと軌道の高さ(X座標値)の積で表される。
【0050】又、前記磁場及び電場は、1段目フィルタ
11と2段目フィルタ12とで同じ方向を向く。
【0051】従って、1段目フィルタ11内部と2段目
フィルタ12内部とで、電子軌道のX座標値が反転する
ことにより、前記第1フィルタ11での収差と第2フィ
ルタ12での収差が打ち消し合う。
【0052】例えば、ある軌道高さを有する電子軌道
が、1段目フィルタ11によりプラスの収差を有する場
合、2段目フィルタではほぼ同じ大きさのマイナスの収
差を有する。従って、これらの収差はうち消し合い、エ
ネルギーフィルタ全体としては、小さな収差を有する。
【0053】図5(b)は、YZ面での電子線の軌道形
状(又はビーム形状)を示す。陰極16からの電子線E
Rは、XZ面でのビーム形状と同様、収束性を持つこと
なく、前段静電レンズ14の電子レンズ作用により、ビ
ーム幅BWを有する平行ビームにされ、1段目フィルタ
11へ入射される。
【0054】従って、電子線ERは、1段目フィルタ1
1の入り口において、概略、直径BWの円形断面を有す
る。
【0055】一方、既に示したように(図2及び図
3)、ウイーンフィルタ11、12は、Y軸方向に於い
て電子線へ力を及ぼさない。
【0056】従って、YZ面に於いて、1段目フィルタ
11へ平行ビームとして入射された電子線ERは、エネ
ルギーフィルタ10内では一度も収束されることなく、
平行ビームのまま(即ち、ビーム幅BWを保った儘)、
2段目フィルタ12の出口から射出される。
【0057】従って、各電子線の軌道ERは、光軸O上
の前記位置Mを通るY軸を対称軸として180°回転対
称を有する。
【0058】なお、スリット13aのY軸方向の幅D
は、電子線ERのY軸方向の幅BWより大きく設定され
ている。
【0059】図5(c)は、前記電子線ERの電子分散
軌道(電子線ERの、X軸方向に於ける分散量のZ軸に
沿っての変動)を示す。
【0060】同図に示すように、前記電子線ERは、前
記位置Mにおいて所定値以上の分散量を有する。即ち、
異なるエネルギーを有する電子線は、位置Mにおいて異
なるX軸位置を通過する。
【0061】図6は、スリット板13上での電子線又は
電子ビームの形状を示す。同図に示すように、陰極16
から射出され、所定エネルギー(中心エネルギー値)を
有する電子ビームは、電子レンズ14及び1段目フィル
タ11により、位置Mにおいて、Y軸方向に長い幅(B
W)を有しX軸方向に短い幅を有する像IMを形成す
る。ここに、像IMのY軸方向の幅BWは、X軸方向の
幅を1μmとするとき、その10倍程度以上に設定され
る。
【0062】また、前記エネルギーと異なるエネルギー
を有する電子ビームは、X軸方向において前記像IMか
らずれた位置に像IM´を形成する。
【0063】従って、前記スリット板13をX軸方向へ
移動し、エネルギー選択スリット13aを前記像IM、
IM´等の位置へ選択的に移動又は配置することによ
り、所望のエネルギーを持つ電子ビームのみを選択的に
通過させることができる。
【0064】この場合、前記像IM、IM´は、X軸方
向のみに収束され、Y軸方向には収束されていない。従
って、比較的低エネルギーの電子ビームであっても、前
記エネルギー選択の際、電子間クーロン相互作用の影響
による、エネルギーの広がりやビーム径の増大を生じる
ことがない。
【0065】また、上記エネルギーフィルタ10によれ
ば、磁場・電場の分布は、スリット板13の面(フィル
タ中心位置Mを含むXY面)を対称面として面対称(図
2、図4において左右対称)を有し、各電子線の軌跡
は、ビーム中心軸O及び前記位置Mを通るY軸を対称軸
として180°回転対称を有する。これにより、前述の
如く電子ビームの収差は、スリット位置(対称点)の前
後でキャンセルされ、エネルギーフィルタに於ける収差
の発生を低減することができる。
【0066】なお、上記において電場E1,E2及び磁
場H1,H2の分布は、フィルタ11,12内において
一様とした。しかし、エネルギーフィルタ10内におけ
る電場・磁場の分布が、Z軸方向の中心位置Mを含むX
Y面を対称面として面対称(図2において左右対称)で
あれば、どのようなものでも良い。
【0067】又、前記エネルギーフィルタ10は、1つ
の第1フィルタ部分11と1つの第2フィルタ部分12
とを有した。しかし、エネルギーフィルタ10は、複数
の第1フィルタ部分又は複数の第2フィルタ部分を有す
ることが出来る。この場合、第1フィルタ部分群による
収差の合計と、第2フィルタ部分群による収差の合計と
が、相互にうち消し合うように、第1フィルタ部分群の
長さの合計と第2フィルター部分群の長さの合計とを設
定するのが好ましい。又、図6において、像IMのY軸
方向の幅BWは、X軸方向の幅(例えば1μm)の数倍
程度とすることもできる。
【0068】図7(a)、(b)は、本発明のエネルギ
ーフィルタを組み込んだ電子顕微鏡の構成を示す。
【0069】図7(a)は、電界放射型電子銃(FE
G)と加速器の間に本発明のエネルギーフィルタを配置
した例を示す。
【0070】FEG51から発射された1keV〜数k
eV程度の比較的低いエネルギーの電子ビームは、入射
アパーチャ52、減速部53、エネルギーフィルタ部5
4、加速部55、出射アパーチャ56からなる減速型エ
ネルギーフィルタ57へ入射される。
【0071】この減速型エネルギーフィルタ57におい
て、入射電子は減速部53で数100eV程度のエネル
ギーに減速された後、フィルタ部54において所定のエ
ネルギーを持つもののみが選択され、加速部55によっ
て再び元のエネルギーを持つように加速されて出射アパ
ーチャ56から出射する。ここにエネルギーフィルタ部
54は、図1乃至図3に示した構造を有する。
【0072】出射アパーチャ56から出射された電子ビ
ームは、加速器58によって所望の高エネルギー(例え
ば200keV程度)まで加速された後、コンデンサレ
ンズ群59及び対物レンズ60を介して試料61へ照射
される。
【0073】図7(b)は、本発明のエネルギーフィル
タを加速器の後段に配置した例を示す。この例では、F
EG51から発射された1keV〜数keV程度の比較
的低いエネルギーの電子ビームは、加速器58によって
所望の高エネルギー(例えば200ekV程度)まで加
速された後、コンデンサレンズ62を介して減速型エネ
ルギーフィルタ57へ入射される。この減速型エネルギ
ーフィルタ57は、入射アパーチャ52、減速部53、
エネルギーフィルタ部54、加速部55、出射アパーチ
ャ56からなる。
【0074】この減速型エネルギーフィルタ57におい
て、入射電子は減速部53で数100eV程度のエネル
ギーに減速された後、エネルギーフィルタ部54におい
て所定のエネルギーを持つもののみが選択され、加速部
55によって再び元のエネルギーに加速されて出射アパ
ーチャ57から出射する。エネルギーフィルタ部54
は、図1乃至図3に示す構造を有する。
【0075】出射アパーチャ56から出射された電子ビ
ームは、コンデンサレンズ群59及び対物レンズ60を
介して試料61へ照射される。
【0076】なお、上記減速型エネルギーフィルタ57
の減速部53及び加速部55は、高エネルギーの電子を
数100eV程度のエネルギーに減速し、更に元の高エ
ネルギーに加速することが必要なため、本来の加速器5
8と同様多段加速とするのが好ましい。
【0077】上記電子顕微鏡によれば、FEG51から
放射された電子ビームは、加速管を通りすぎて高電圧に
加速されるまでの間にモノクロメータを通過したにも拘
わらず、スリット位置において、X方向に1回だけしか
フォーカスせず、フォーカス回数が少ないことによっ
て、同種のエネルギーフィルタに比して、クーロン相互
作用によるエネルギーの広がりやビーム径の増大を抑え
ることができる。
【0078】また、収差の少ない前記エネルギーフィル
タ10をモノクロメータとして用いることにより、フィ
ルタを通過したビームの大きさを増大させないで、小さ
いビーム径のままで、試料を照射することができる。
【0079】以上説明したように、この実施形態のエネ
ルギーフィルタによれば、スリット位置に対して荷電粒
子の軌道、磁場電場の分布が対称形となり、収差がスリ
ット位置の前後でキャンセルされ、収差の発生を低減す
ることが出来る。
【0080】
【発明の効果】以上の説明から理解される如く、この発
明によるエネルギーフィルタによれば、収差の発生を低
減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエネルギーフィルタの一実施形
態を示す全体概念図である。
【図2】前記実施形態の物理的構成を示す模式図であ
る。
【図3】前記実施形態で使用されるウィーンフィルタの
構造を例示する斜視図である。
【図4】前記実施形態で使用されるエネルギー選択スリ
ット板の正面図である。
【図5】図5(a)は前記エネルギーフィルタを通過す
る電子ビームのZX面での軌道を示す説明図である。図
5(b)は同じく電子ビームのZY面での軌道を示す。
図5(c)は同じく電子ビームの電子分散軌道を示す。
【図6】前記スリット板上での電子ビームの形状を示す
模式図である。
【図7】図7(a)、(b)は各々本発明の実施形態の
エネルギーフィルタを組み込んだ電子顕微鏡の構成を示
す模式図である。
【図8】従来例1のエネルギーフィルタにおける電子ビ
ームの軌道を示す説明図である。
【図9】従来例2のエネルギーフィルタにおける電子ビ
ームの軌道を示す説明図である。
【図10】従来例3のエネルギーフィルタにおける電子
ビームの軌道を示す説明図である。
【図11】従来例4のエネルギーフィルタにおける電子
ビームの軌道を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01J 37/26 H01J 37/26

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 特定のエネルギーを持つ荷電粒子のみを
    通過させる為に電場と磁場を組み合わせたエネルギーフ
    ィルタであって、 当該エネルギーフィルタ内を進行する荷電粒子は、進行
    方向に平行なZ軸及びこれに直交するX軸で定まるZX
    面内に於いて少なくとも一回収束し、前記Z軸及び、前
    記Z軸・X軸と直交するY軸で定まるZY面内に於い
    て、前記収束位置で所定値以上の幅を有し、 前記ZX面内における収束位置に、エネルギー選択スリ
    ットが配置され、当該エネルギーフィルタは、前記荷電
    粒子の軌道が、前記ZX面内に於いてスリット面を境に
    して反転する少なくとも一つの第1フィルタ部分と少な
    くとも一つの第2フィルタ部分とを備え、第1フィルタ
    部分と第2フィルタ部分との長さがほぼ等しいエネルギ
    ーフィルタ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のエネルギーフィルタで
    あって、磁場及び電場の分布は、光軸に沿ったエネルギ
    ーフィルタの中心位置を含むXY面を対称面として面対
    称を有し、前記荷電粒子の軌道は、前記ZX面内に於い
    て、光軸上の前記エネルギーフィルタ中心位置を中心に
    180°回転対称を有する。
  3. 【請求項3】 特定のエネルギーを持つ荷電粒子のみを
    通過させる為に電場と磁場を組み合わせたエネルギーフ
    ィルタであって、 当該エネルギーフィルタ内を進行する荷電粒子は、進行
    方向に平行なZ軸及びこれに直交するX軸で定まるZX
    面内に於いて少なくとも一回収束し、前記Z軸及び、前
    記Z軸・X軸と直交するY軸で定まるZY面内に於い
    て、前記収束位置で所定値以上の幅を有し、 前記ZX面内における収束位置に、エネルギー選択スリ
    ットが配置され、当該エネルギーフィルタは、前記荷電
    粒子の軌道が、前記ZX面内に於いてスリット面を境に
    して反転する少なくとも一つの第1フィルタ部分と少な
    くとも一つの第2フィルタ部分とを備え、各フィルタ部
    分の長さは、前記荷電粒子が第1フィルタ部分を進む際
    に発生する収差と、第2フィルタ部分を進む際に発生す
    る収差とが相互にうち消し合うように設定されるエネル
    ギーフィルタ。
  4. 【請求項4】 請求項1又は3に記載のエネルギーフィ
    ルタであって、 光軸に沿って配置されたほぼ同じ長さを有する一つの第
    1フィルタ部分と一つの第2フィルタ部分とを有し、前
    記荷電粒子は、ZX面内に於いて当該第1フィルタ部分
    と第2フィルタ部分との間で一回収束する。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載のエネルギーフィルタで
    あって、 荷電粒子ビームは、前記ZY面内に於いて、エネルギー
    フィルタ全長に亘ってほぼ平行ビームを形成するもの。
  6. 【請求項6】 請求項1、2又は4に記載のエネルギー
    フィルタであって、 荷電粒子ビームは、前記ZX面内及びZY面内に於ける
    縦断面形状がフィルタ入り口においてほぼ平行ビームを
    形成するもの。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至4に記載の何れかのエネル
    ギーフィルタであって、 間隔を置いて配置される複数のウィーンフィルタを含
    み、各ウィーンフィルタは、一様な電場及び磁場をそれ
    ぞれの内部に生成するもの。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至5に記載の何れかのエネル
    ギーフィルタを試料より電子銃側に配置した電子顕微
    鏡。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の電子顕微鏡であって、
    前記エネルギーフィルタの直前に配置されたレンズ又は
    レンズ群は、当該エネルギーフィルタへ入射する電子ビ
    ームが、エネルギーフィルタ入り口において平行ビーム
    を形成するように調整されているもの。
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