JP2003174236A - 半導体レーザ素子とその製造方法 - Google Patents

半導体レーザ素子とその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 下部光閉じ込め層と上部光閉じ込め層におけ
る組成が厚み方向に連続的に変化し、その組成変化は活
性層を中心に対称形になっている半導体レーザ素子を提
供する。 【解決手段】 下部クラッド層2A、下部光閉じ込め層
3A、量子井戸構造の活性層4、上部光閉じ込め層3
B、および上部クラッド層2Bが基板の上にこの順序で
積層されている層構造を有する半導体レーザ素子におい
て、下部光閉じ込め層3Aおよび上部光閉じ込め層3B
が、いずれも、厚み方向に組成が連続変化する4元混晶
から成り、かつ、前記下部クラッド層2Aと前記下部光
閉じ込め層3Aの層間、前記下部光閉じ込め層3Aと前
記活性層4の層間、前記活性層4と前記上部光閉じ込め
層3Bの層間、または、前記上部光閉じ込め層3Bと前
記上部クラッド層2Bの層間の少なくともいずれか1つ
の層間には、微量ガス源の供給流量を調整した結果の結
晶層が介在している半導体レーザ素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、量子井戸構造の活
性層が下部光閉じ込め層と上部光閉じ込め層で挟まれて
いる半導体レーザ素子と、それを有機金属化学気相成長
法(MOCVD法)を適用して製造する方法に関する。
更に詳しくは、前記下部光閉じ込め層と前記上部光閉じ
込め層において、それらを構成する半導体材料の組成が
当該層の厚み方向に連続的に変化している半導体レーザ
素子と、MOCVD法によるその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】多重量子井戸(MQW)構造を活性層と
するレーザ素子は、しきい値電流が低位水準にあり、ま
た高光出力動作が可能である。そして一般的には、その
活性層の上下にSCH構造(Separate-confinement-het
erostructure)の下部光閉じ込め層と上部光閉じ込め層
をそれぞれヘテロ接合することにより、活性層へのキャ
リアの注入効率を高め、活性層で発振したレーザ光の閉
じ込め効果を高め、もってレーザ素子の外部微分量子効
率を高めて高光出力動作の実現が企られている。
【0003】その場合、SCH構造としては、互いに組
成比が異なる同一種類の半導体材料から成る層を当該組
成比を段階的に変化させた状態でヘテロ接合して積層し
て成るSCH構造や、組成比を連続的に変化させた状態
で同一種類の半導体材料を積層して成るSCH構造が設
計されている。これらSCH構造のうち、厚み方向に組
成を連続的に変化させるSCH構造を採用すると、活性
層へのキャリアの注入効率が高くなり、光閉じ込め効果
が大きくなる。また光閉じ込め層の中に結晶劣化の原因
となるヘテロ接合界面を含まないため、高光出力動作時
の信頼性が高くなるなどの効果の得られることが知られ
ている。
【0004】ここで、後者のSCH構造の下部光閉じ込
め層と上部光閉じ込め層が形成されているレーザ素子の
1例Aを図8に示す。また、このレーザ素子Aの層構造
Cにおける従来のエネルギーバンド図の例を図9に示
す。このレーザ素子Aの場合、例えばn−InPから成
る基板1の上にn−InPから成る厚み500nmの下部
クラッド層2Aが積層され、そして、下部クラッド層2
Aの上には、InGaAsPから成る後述の下部光閉じ
込め層3A、InGaAsP/InGaAsから成る後
述のMQW構造の活性層4、InGaAsPから成る後
述の上部光閉じ込め層3B、p−InPから成る厚み5
00nmの上部クラッド層2Bが順次積層されて層構造C
が形成されている。
【0005】なお、層構造Cの両側にはp型層6Bとn
型層6Aを順次積層して成る電流ブロッキング層6が形
成されている。そして層構造Cと電流ブロッキング層6
を埋設して上部クラッド層2Cが形成され、更にその上
には、p−InGaAsPから成る厚み50nmのキャッ
プ層が積層されている。キャップ層5の上に上部電極7
Bが形成され、また基板1の裏面には下部電極7Aが形
成されている。
【0006】上記した層構造Cにおいて、まず、活性層
4は次のように設計されている。すなわち、活性層4
は、井戸層4Aが厚み4nmのInGaAsP層から成
り、また障壁層4Bは、バンドギャップ波長が1.2μ
mである組成から成る、厚み10nmのInGaAsPで
形成され、全体として5個の量子井戸を有している(図
8を参照)。
【0007】一方、下部光閉じ込め層3Aと上部光閉じ
込め層3Bは次のように設計されている。すなわち、下
部光閉じ込め層3Aと上部光閉じ込め層3Bの厚みはい
ずれも40nmになっている。そして、下部光閉じ込め層
3Aの場合、下部クラッド層2Aとヘテロ接合する部分
(1)は、そのバンドギャップ波長が0.92μmであ
る組成のInGaAsPで構成され、活性層4の最初の
井戸層4Aとヘテロ接合する部分(2)は、そのバンド
ギャップ波長が1.2μmである組成のInGaAsP
で構成されている。
【0008】そして、上記した部分(1)から部分
(2)にまで至る領域は、バンドギャップ波長が0.9
2μmから1.2μmへと順次広くなっていく。すなわ
ち、この領域はバンドギャップエネルギーが順次小さく
なって屈折率は順次大きくなっていくような組成のIn
GaAsPを順次積層して形成されている。したがっ
て、下部光閉じ込め層3Aは、図9で示したように、そ
のバンドギャップ波長が下部クラッド層2Aから活性層
4の最初の井戸層4Aにかけて線形で広くなっていくよ
うな傾斜組成のInGaAsPで形成されている。
【0009】そして、他方の上部光閉じ込め層3Bは、
活性層4を中心にして上記した下部光閉じ込め層3と逆
の態様をとるように設計されている。すなわち、活性層
4の最後の井戸層4Aとヘテロ接合する部分は、そのバ
ンドギャップ波長が1.2μmである組成のInGaA
sPで形成され、上部クラッド層2Bとヘテロ接合する
部分はそのバンドギャップ波長が0.92μmである組
成のInGaAsPで形成され、その間は、バンドギャ
ップ波長が順次線形をなして狭くなっていくような傾斜
組成のInGaAsPで形成されている。
【0010】上記したレーザ素子の製造に際しては、通
常、MOCVD法が採用されている。例えば、In源と
してTMIn(トリメチルインジウム)を用い、Ga源
としてTMGa(トリメチルガリウム)を用い、As源
としてAsH3(アルシン)を用い、P源としてPH
3(ホスフィン)を用いる。そして、これらガス源をH2
で所定濃度となるように希釈し、成膜すべき半導体層の
種類に応じて、上記ガス源のそれぞれに対し、マスフロ
ーコントローラで正確な流量制御と時間制御を行い、そ
れぞれを反応炉に供給して所定の半導体層を順次成膜す
る。
【0011】例えば、上記した層構造Cにおける下部光
閉じ込め層3Aを形成する場合、次のような操作を行え
ばよい。TMIn(In源)とPH3(P源)を用い、
またn型不純物のガス源を用いてn−InPから成る下
部クラッド層の成膜工程を終了したのち、n型不純物の
ガス源の供給を停止する。ついで、In源とP源の供給
は継続しながら、TMGa(Ga源)のマスフローコン
トローラとAsH3(As源)のマスフローコントロー
ラを開弁して反応炉へのGa源とAs源の供給を開始す
る。
【0012】そして、In源とP源のマスフローコント
ローラの弁の開度を調節してそれらの供給流量を徐々に
減少させ、またGa源とAs源に関してはそれぞれのマ
スフローコントローラの弁の開度を調節してそれらの供
給流量をゼロから徐々に増加させていく。なお、これら
ガス源の供給流量は、各時点で成膜されるInGaAs
Pの組成が、図9で示した設計値のバンドギャップ波長
の組成となるような流量に制御される。
【0013】このような操作により、下部クラッド層2
Aの上には、In,Ga,As,Pの組成比が連続的に
変化するInGaAsPから成る下部光閉じ込め層3A
が成膜される。なお、上部クラッド層3Bの成膜に関し
ては、活性層4の形成後、上記した操作と逆の操作を行
えばよい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】図9で示したエネルギ
ーバンド図となるように設計されているレーザ素子を上
記したMOCVD法の操作によって製作した層構造につ
き、2次イオン質量分析(secondary ion mass-spectro
scopy:SIMS)を行った結果を図10に示す。
【0015】図中、縦軸は各元素の2次イオンのカウン
ト数を示し、横軸は層構造Cにおける各層の位置を示し
ている。図10のSIMS曲線から明らかなように、G
a源とAs源の場合、その供給流量が少ない領域では二
次イオンのカウント数は不安定に変動している。すなわ
ち、MOCVD法で、ある組成の混晶を結晶成長させる
と、ある構成元素(図10の場合はAs)の供給流量が
少ない領域では、成膜された結晶層における当該構成元
素の組成比は安定しないことが図10から明らかとなっ
た。
【0016】とくに、Asに関するSIMS曲線の場
合、下部光閉じ込め層3Aの成膜の初期段階S1におい
てカウント数は顕著に不安定になっている。すなわち、
下部光閉じ込め層3Aにおいては、カウント数は円滑に
増加するのではなく厳しく振動している。そして、ある
厚みだけ結晶成長が進むと、そこから、例えば、図9の
3で示したように、SIMS曲線の傾斜は急峻になっ
ている。
【0017】また、上部光閉じ込め層3Bと上部クラッ
ド層2Bの接合部近辺S2においては、Asの2次イオ
ンのカウント数が急激に減少している。このような事態
は、設計通りの結晶層を安定して成膜することができな
いことを意味する。そのため、設計時に意図したキャリ
アの注入効率の向上や結晶性の向上を期待することがで
きず、逆に上記した性状の劣化を招く虞がある。
【0018】また、このような事態が発生すると、上・
下光閉じ込め層の屈折率も設計値から外れ、活性層への
光閉じ込めの態様が変わってきて不都合である。本発明
は、上記した問題を解決し、ある構成元素の供給流量が
少ない領域においても、成膜された結晶層において組成
比が安定し、キャリア注入効率や結晶性が向上している
層構造を有する半導体レーザ素子と、それをMOCVD
法で製造する方法の提供を目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、図10で
示した現象の原因を解明するために、層構造Cの形成時
におけるIn源、Ga源、As源の供給流量の変化を調
べてみた。図11で示した結果が得られた。図11から
明らかなように、下部光閉じ込め層3Aの成膜時におい
て、As源の供給流量には特異な現象が認められる。
【0020】すなわち、図11における時点B0におい
て、Ga源とAs源のマスフローコントローラを開弁す
ることにより、下部光閉じ込め層3Aの成膜工程が開始
される。その場合、Ga源の場合は開弁と同時に反応炉
に供給され、その供給流量はマスフローコントローラの
開度を高めていくと、それに応じて増量している。しか
しながら、As源の場合は、そのマスフローコントロー
ラを開弁してもしばらくの間は流れないで供給流量ゼロ
の状態を保持している。そして、ある時間経過後のある
時点B1で急激に流れはじめ、その後はマスフローコン
トローラの開度に応じて供給流量は増加している。
【0021】すなわち、As源の供給流量に関しては、
マスフローコントローラを開弁しても、供給流量と開弁
動作との間で一定のタイムラグが生じている。これは、
マスフローコントローラの開弁直後におけるAs源の供
給流量(設計値の)が、当該マスフローコントローラに
おける流量制御可能な流量の下限を下回っているからで
あると考えられる。
【0022】このことが、図10で示した下部光閉じ込
め層3AにおけるAsのSIMS曲線形状を決めている
ものと考えられる。すなわち、マスフローコントローラ
を開弁しても時点B1まではAs源が流れないので、図
10で示したAsの2次イオンカウント数は、S1で示
したように、少なく計測され、またカウント数が振動し
ているものと考えられる。そして、時点B1以降にはA
s源は急激に流れ始めるので、Asの2次イオンのカウ
ント数の曲線形状は急峻な傾斜を示しているものと考え
られる。
【0023】また、図11において、上部光閉じ込め層
3Bの成膜が終了する時点B2では、AsH3の供給流量
が急激に低下している。そして、その結果としては、図
10のS2で示されているようなAsの2次イオンのカ
ウント数が急激に減少しているものと考えられる。この
ように、供給ガスの供給流量が微量であるため、当該供
給ガス源に対してマスフローコントローラによる流量制
御が極めて困難であり、そのため下部光閉じ込め層と上
部光閉じ込め層の傾斜組成が設計値から逸脱する他の事
例としては、図12で例示したような層構造がある。
【0024】この層構造はAlGaAsから成る下部ク
ラッド層2A’、傾斜組成を有するAlGaAsから成
る下部光閉じ込め層3A’、障壁層がGaAs、井戸層
がInGaAsから成る量子井戸構造の活性層4’、傾
斜組成を有するAlGaAsから成る上部光閉じ込め層
3B’、そしてAlGaAsから成る上部クラッド層2
B’で構成されている。
【0025】そして、下部光閉じ込め層3A’と上部光
閉じ込め層3B’は、バンドギャップエネルギーが下部
(上部)クラッド層から障壁層まで連続的に変化するよ
うに設計されている。また、この層構造の形成時に用い
るAl源は、通常、TMAl(トリメチルアルミニウ
ム)である。
【0026】この層構造における下部光閉じ込め層3
A’の形成に際しては、Al源、Ga源、およびAs源
に関して設計された流量をそれぞれのマスコントローラ
から反応炉に供給する。その場合、Al源の供給流量は
漸次減少させていく。したがって、下部光閉じ込め層3
A’の成膜終了時点の近傍(図の破線で囲った領域
1)では、Al源の供給流量は0値に接近して、マス
フローコントローラの流量制御可能な流量を下回るよう
になる。そして、Al源の供給流量は無秩序にばらつく
ようになる。
【0027】そのため、領域P1における組成は、設計
目標とした傾斜組成から外れてくる。このことは、領域
2についても観察される事態である。上記した2つの
事例に関して発明者らは次のような対応策を考えた。ま
ず、図10における下部光閉じ込め層3Aと上部光閉じ
込め層3Bに関するそれぞれのAsについては、As源
の供給流量が少ない領域において当該As源を円滑かつ
安定して変化させるためには、As源のマスフローコン
トローラを開弁すると同時に当該As源の所定流量が流
れはじめるようにすればよい。
【0028】そのためには、マスフローコントローラに
おける流量制御可能な流量の下限を上回る流量で、As
源を予め反応炉へ接続する流路以外の流路に流してお
き、下部光閉じ込め層3Aの成膜工程の開始時点B0
As源の流路を反応炉へと切換え、以後はマスフローコ
ントローラの開度を順次高めればよいと考えられる。こ
のような操作を行えば、図11で示されているような、
時点B1までAs源の供給流量がゼロになるという事態
は起こらなくなる。
【0029】ただし、その場合には、マスフローコント
ローラの開弁と同時にある流量のAs源が反応炉に供給
されるので、下部光閉じ込め層3Aにおける下部クラッ
ド層2Aとのヘテロ接合部、すなわち両層の層間にはあ
る厚みで当該As源の供給流量に対応した組成のInG
aAsPが成長し、それが介在層として存在することに
なる。
【0030】また、図12で示した領域P1における組
成の乱れに関しては、Al源の供給流量がマスフローコ
ントローラの流量制限可能な流量より下回った時点で、
Al源の供給を遮断し、代わりに活性層における障壁層
を形成するためのガス源の供給に切り換えれば、領域B
1における組成の乱れは解消できると推考した。更に領
域P2における組成の乱れに関しては、前記図10で示
した問題の解決策と同様の方法を適用すればよいと推考
した。
【0031】本発明は、このような知見と考察に基づい
て開発された半導体レーザ素子とその製造方法である。
すなわち、本発明のレーザ素子は、下部クラッド層、下
部光閉じ込め層、量子井戸構造の活性層、上部光閉じ込
め層、および上部クラッド層が基板の上にこの順序で積
層されている層構造を有する半導体レーザ素子におい
て、前記下部光閉じ込め層および前記上部光閉じ込め層
が、いずれも、厚み方向に組成が連続変化する化合物半
導体の混晶から成り、かつ、前記下部クラッド層と前記
下部光閉じ込め層の層間、前記下部光閉じ込め層と前記
活性層の層間、前記活性層と前記上部光閉じ込め層の層
間、または、前記上部光閉じ込め層と前記上部クラッド
層の層間の少なくともいずれか1つの層間には、微量ガ
ス源の供給流量を調整した結果の結晶層(以下、介在層
という)が介在していることを特徴とする。
【0032】好適には、前記下部光閉じ込め層および前
記上部光閉じ込め層が、いずれも、厚み方向に組成が連
続変化する4元混晶から成り、かつ、少なくとも前記下
部光閉じ込め層と前記下部クラッド層の間には、バンド
ギャップ波長が0.93〜1.05μmである組成の前記
4元混晶から成る層が介在している半導体レーザ素子が
提供される。
【0033】また、本発明においては、下部クラッド
層、組成が厚み方向に連続変化する化合物半導体の混晶
から成る下部光閉じ込め層、量子井戸構造の活性層、組
成が前記活性層に対して前記下部光閉じ込め層と逆に連
続変化する化合物半導体の混晶から成る上部光閉じ込め
層、および上部クラッド層が基板の上にこの順序で積層
されている層構造を形成する半導体レーザ素子の製造方
法であって、前記層構造の各層はその構成元素のガス源
をマスフローコントローラで流量調節して反応炉に供給
する有機金属化学気相成長装置を用いて成膜され、か
つ、ガス源の供給流量が前記マスフローコントローラに
よる流量制御可能な流量よりも少なくなる場合には、前
記マスフローコントローラによる流量制御可能な流量で
予め排気経路に流しておいた前記ガス源を前記反応炉に
供給するか、または、前記ガス源の供給を遮断して次に
成膜する層の構成元素のガス源を前記反応炉に供給する
工程を含むことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方
法が提供され、具体的には、少なくとも前記下部光閉じ
込め層の成膜開始時点までは、前記混晶の構成元素のう
ち、前記下部クラッド層の成膜に用いなかった元素のガ
ス源を排気流路側に流しておき、前記下部光閉じ込め層
の成膜開始と同時に、前記ガス源を前記反応炉に供給す
る半導体レーザ素子の製造方法(第1の製造方法とい
う)、または、前記下部光閉じ込め層の成膜終了時点が
近づき、供給するガス源の流量が前記マスフローコント
ローラによる流量制御可能な流量よりも少なくなる時点
で、前記ガス源の供給を遮断し、ついで、活性層の構成
元素のガス源を前記反応炉に供給する半導体レーザ素子
の製造方法(第2の製造方法という)が提供される。
【0034】
【発明の実施の形態】まず第1の製造方法で製造された
レーザ素子について説明する。このレーザ素子の場合、
基板上における全体の層構造は図8で示した層構造と同
じになっている。しかし、下部光閉じ込め層3Aと下部
クラッド層2Aとの層間には、下部光閉じ込め層3Aと
同じ種類の4元混晶であるが、バンドギャップ波長が
0.93〜1.05μmの範囲内に存在するある組成から
成り、ある厚みを有する介在層3aが形成されているこ
とが相違点である。
【0035】また、上部光閉じ込め層3Bと上部クラッ
ド2Bとの層間にも上記した介在層3aと同じ組成、同
じ厚みの介在層3bが介在していてもよい。したがっ
て、本発明のレーザ素子における層構造Cの場合、その
エネルギーバンド図は図1で示したようになっている。
このような層構造における介在層3aと下部光閉じ込め
層3Aは次のようにして形成することができる。それ
を、上・下光閉じ込め層がInGaAsPで構成される
場合について説明する。
【0036】前記したように、下部光閉じ込め層3Aの
成膜開始の前段では、In源とP源を用いて既にn−I
nPから成る下部クラッド層2Aが成膜されている。そ
して、In源とP源に加えて、更にGa源とAs源をマ
スフローコントローラで流量調節して反応炉に供給して
下部光閉じ込め層3Aの成膜工程に入る。本発明におい
ては、図2で示したように、マスフローコントローラと
反応炉を結ぶ流路に切換え弁が配置されているGa源と
As源の供給システムを組み立て、上記した過程で次の
ような操作を実施する。
【0037】例えば、下部クラッド層2Aの成膜過程の
間、それぞれのマスフローコントローラを開弁し、同時
に切換え弁を操作して、Ga源とAs源をそれぞれのマ
スフローコントローラから排気経路の方に流し続ける。
このときのGa源とAs源の流量は、それぞれのマスフ
ローコントローラの流量制御可能な流量の下限値を上回
る流量に設定する。
【0038】そして、下部光閉じ込め層3Aの成膜工程
の開始と同時に切換え弁を切り換えてGa源とAs源を
反応炉に供給する。このとき、Ga源とAs源の流量
は、いずれも、マスフローコントローラの流量制御可能
な流量の下限値よりも多いので、当該排気経路の流量
は、そのまま、反応炉に供給される。すなわち、As源
に関しては、図11の地点B1で示したようなAs源の
供給に関する断絶状態は回避される。
【0039】その後、マスフローコントローラの開度を
高めてGa源とAs源の供給流量を徐々に増加させるこ
とにより、厚み方向で組成が連続的に変化している下部
光閉じ込め層3Aが成膜される。このとき、下部光閉じ
込め層3Aの成膜が開始される前段では、上記した排気
流量のGa源とAs源が反応炉に供給されているので、
これらのガス源でInGaAsPから成るある厚みの介
在層3aが下部クラッド層2Aの上に成膜され、下部ク
ラッド層2Aと下部光閉じ込め層3Aの層間には介在層
3aが介装される。
【0040】なお、介在層3bの形成に関しては、各ガ
ス源の供給流量は既に各マスフローコントローラの流量
制御可能な流量の下限値を大幅に上回っているので、各
マスフローコントローラの開度を所定値にまで絞り込め
ばよい。なお、上記した層構造の形成時に、図3のバン
ドギャップエネルギー図で示したように、下部光閉じ込
め層3Aと井戸層4Aとの層間、更には上部光閉じ込め
層3Bと井戸層4Aの層間に、それぞれ、障壁層4Bと
同じ材料で同じ厚みのバリアステップ5A,5Bを形成
してもよい。
【0041】第2の製造方法においては、図11で示し
た下部光閉じ込め層3A’の成膜過程で、Al源の供給
流量がマスフローコントローラの流量制御可能な流量を
下回る時点になったときに、Al源の反応炉への供給を
遮断し、活性層における障壁層(GaAs)用のガス源
(Ga源とAs源)の供給に切り換える。その結果、流
域P1には、図4で示したように、GaAsから成る障
壁層が形成される。ここで、領域P1までの下部光閉じ
込め層3A’の組成は設計目標の組成となっており、ま
た領域B1における障壁層の組成は特定組成のGaAs
になっているので、全体としては安定した特性を示す構
造になっている。
【0042】また、この製造方法により、図5で示した
ようなエネルギーバンド図の層構造を形成することがで
きる。この場合、下部クラッド層2A”の成膜過程で、
下部光閉じ込め層3A”用のガス源(Ga源とAs源と
Al源)を予め所定の量だけ排気経路の方に流し続けて
おく。そして、下部クラッド層2A”の成膜が終了する
と同時に反応炉へのガス源の供給を、既に排気経路の方
に流していた下部光閉じ込め層3A”用のガス源に切り
換える。
【0043】その結果、図5で示したように、下部クラ
ッド層2A”からただちに下部光閉じ込め層3A”の成
膜が進行する。同様の操作を、下部光閉じ込め層3A”
と最初の井戸層との間についても行うことにより、図5
で示したように、下部光閉じ込め層3A”に続けてただ
ちに井戸層の成膜を行うことができる。
【0044】
【実施例】下記の層構造を有するレーザ素子を設計し
た。 基板1:n−InP。 下部クラッド層2A:n−InP、厚み500nm。 介在層3a:バンドギャップ波長0.95μmのInG
aAsP、厚み3nm。
【0045】下部光閉じ込め層3A:成膜方向にバンド
ギャップ波長が0.95μmから1.2μmに連続的に変
化する組成のInGaAsP、全体の厚み40nm。 活性層4:InGaAsPから成る厚み4nmの井戸層
と、バンドギャップ波長が1.2μmである組成のIn
GaAsPから成る厚み10nmの障壁層。井戸数は5
個。
【0046】上部光閉じ込め層3B:成膜方向にバンド
ギャップ波長が1.2μmから0.95μmに連続的に変
化する組成のInGaAsP、全体の厚み40nm。 層3b:バンドギャップ波長0.95μmのInGaA
sP、厚み3nm。 上部クラッド層2B:p−InP、厚み500nm。 上部クラッド層2C:p−InP、厚み3.5μm。
【0047】キャップ層5:バンドギャップ波長が1.
2μmである組成のp−InGaAsP、厚み50nm。 電流ブロッキング層6A:n−InP、厚み1.5μ
m。 電流ブロッキング層6B:p−InP、厚み0.9μ
m。 上記した層構造の形成に当たり、TMGa(Ga源)と
AsH3(As源)に関しては図2で示した供給システ
ムを用いて反応炉に供給した。このときのTMGa,A
sH3,TMIn(In源)の供給状態を図6に示す。
【0048】図6から明らかなように、この実施例で
は、下部光閉じ込め層3Aの成膜開始時点(B0)まで
の間、TMGaに関しては、マスフローコントローラの
開度を約22%程度にした状態における流量で排気経路
に流し続け、またAsH3に関しては、マスフローコン
トローラの開度を約10%にした状態における流量で排
気経路に流し続けて、そして、成膜開始と同時にTMG
aとAsH3をそのまま反応炉に供給し、更にマスフロ
ーコントローラの開度を徐々に大きくして反応炉への供
給流量を増量している。
【0049】ガス源を図6で示した態様で供給して製造
したレーザ素子の層構造につき、SIMSを行った。結
果を図7に示した。図7から明らかなように、下部光閉
じ込め層3Aと上部光閉じ込め層3BのSIMSプロフ
ァイルは、図10の場合に比べれば、As源の供給流量
が少ない領域で、供給が遅れたり、振動したり、ある流
量以下でゼロになったりはしない。したがって、図8で
示した層構造は、設計値に則った層構造になっており、
そのエネルギーバンド図は図1で示した形状になってい
るものと考えてよい。
【0050】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明の
半導体レーザ素子は、その下部光閉じ込め層と上部光閉
じ込め層における半導体材料の組成が厚み方向で連続的
に変化しており、少なくとも下部クラッド層と下部光閉
じ込め層の間にバンドギャップ波長が0.93〜1.05
μmであり、かつ下部光閉じ込め層と同じ種類の半導体
材料から成る層を介在させることによって可能にしてい
る。
【0051】したがって、本発明のレーザ素子は、構成
元素の供給流量が少ない領域であっても、安定した結晶
層を形成することができるので、キャリア注入効率や結
晶性が向上している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーザ素子における層構造のバンドギ
ャップエネルギー図である。
【図2】本発明で用いるGa源とAs源の供給システム
を示す概略図である。
【図3】本発明における層構造の別のバンドギャップエ
ネルギー図である。
【図4】本発明における下部光閉じ込め層と活性層のヘ
テロ接合部における更に別のバンドギャップエネルギー
図である。
【図5】本発明における別のバンドギャップエネルギー
図である。
【図6】実施例におけるTMIn,TMGa,AsH3
の供給状態を示すグラフである。
【図7】実施例で得られた層構造において、In,G
a,As,PのSIMSの結果を示すプロファイルであ
る。
【図8】層構造Cを有するレーザ素子Aの断面図であ
る。
【図9】レーザ素子Aにおける従来の層構造Cのバンド
ギャップエネルギー図である。
【図10】従来の層構造CにおけるIn,Ga,As,
PのSIMSの結果を示すプロファイルである。
【図11】従来の層構造Cを形成する際のTMIn,T
MGa,AsH3の供給状態を示すグラフである。
【図12】従来の別の層構造のバンドギャップエネルギ
ー図である。
【符号の説明】
1 基板 2A 下部クラッド層 2B 上部クラッド層 2C 上部クラッド層 3A 下部光閉じ込め層 3B 上部光閉じ込め層 4 活性層 4A 井戸層 4B 障壁層 5 キャップ層 6 電流ブロッキング層 7 上部電極 8 上部電極 B0 下部光閉じ込め層の成膜開始時点
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5F045 AA04 AB18 AC01 AC08 AF04 BB05 CA12 DA52 DA57 EE04 EE18 5F073 AA22 AA74 CA17 CB02 DA05 EA29

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下部クラッド層、下部光閉じ込め層、量
    子井戸構造の活性層、上部光閉じ込め層、および上部ク
    ラッド層が基板の上にこの順序で積層されている層構造
    を有する半導体レーザ素子において、 前記下部光閉じ込め層および前記上部光閉じ込め層が、
    いずれも、厚み方向に組成が連続変化する化合物半導体
    の混晶から成り、かつ、前記下部クラッド層と前記下部
    光閉じ込め層の層間、前記下部光閉じ込め層と前記活性
    層の層間、前記活性層と前記上部光閉じ込め層の層間、
    または、前記上部光閉じ込め層と前記上部クラッド層の
    層間の少なくともいずれか1つの層間には、微量ガス源
    の供給流量を調整した結果の結晶層が介在していること
    を特徴とする半導体レーザ素子。
  2. 【請求項2】 前記下部光閉じ込め層および前記上部光
    閉じ込め層が、いずれも、厚み方向に組成が連続変化す
    る4元混晶から成り、かつ、少なくとも前記下部光閉じ
    込め層と前記下部クラッド層の間には、バンドギャップ
    波長が0.93〜1.05μmである組成の前記4元混晶
    から成る層が介在している請求項1の半導体レーザ素
    子。
  3. 【請求項3】 前記4元混晶がInGaAsPから成る
    請求項2の半導体レーザ素子。
  4. 【請求項4】 1.3〜1.6μmの波長域で発振する請
    求項2または3の半導体レーザ素子。
  5. 【請求項5】 下部クラッド層、組成が厚み方向に連続
    変化する化合物半導体の混晶から成る下部光閉じ込め
    層、量子井戸構造の活性層、組成が厚み方向に対して連
    続変化する化合物半導体の混晶から成る上部光閉じ込め
    層、および上部クラッド層が基板の上にこの順序で積層
    されている層構造を形成する半導体レーザ素子の製造方
    法であって、 前記層構造の各層はその構成元素のガス源をマスフロー
    コントローラで流量調節して反応炉に供給する有機金属
    化学気相成長装置を用いて成膜され、かつ、ガス源の供
    給流量が前記マスフローコントローラによる流量制御可
    能な流量よりも少なくなる場合には、前記マスフローコ
    ントローラによる流量制御可能な流量で予め排気経路に
    流しておいた前記ガス源を前記反応炉に供給するか、ま
    たは、前記ガス源の供給を遮断して次に成膜する層の構
    成元素のガス源を前記反応炉に供給する工程を含むこと
    を特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 少なくとも前記下部光閉じ込め層の成膜
    開始時点までは、前記混晶の構成元素のうち、前記下部
    クラッド層の成膜に用いなかった元素のガス源を排気流
    路側に流しておき、前記下部光閉じ込め層の成膜開始と
    同時に、前記ガス源を前記反応炉に供給する請求項5の
    半導体レーザ素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記下部光閉じ込め層の成膜終了時点が
    近づき、供給するガス源の流量が前記マスフローコント
    ローラによる流量制御可能な流量よりも少なくなる時点
    で、前記ガス源の供給を遮断し、ついで、活性層の構成
    元素のガス源を前記反応炉に供給する請求項5の半導体
    レーザ素子の製造方法。
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