JP2003153636A - ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法 - Google Patents

ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法

Info

Publication number
JP2003153636A
JP2003153636A JP2001355575A JP2001355575A JP2003153636A JP 2003153636 A JP2003153636 A JP 2003153636A JP 2001355575 A JP2001355575 A JP 2001355575A JP 2001355575 A JP2001355575 A JP 2001355575A JP 2003153636 A JP2003153636 A JP 2003153636A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
water
nursery
reed
reeds
permeable container
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001355575A
Other languages
English (en)
Inventor
Manabu Terai
学 寺井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Obayashi Corp
Original Assignee
Obayashi Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Obayashi Corp filed Critical Obayashi Corp
Priority to JP2001355575A priority Critical patent/JP2003153636A/ja
Publication of JP2003153636A publication Critical patent/JP2003153636A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • Y02P60/216

Landscapes

  • Cultivation Of Plants (AREA)
  • Hydroponics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】移植可能なヨシの苗を大量かつ短期間に確保す
る。 【構成】本発明に係るヨシの育苗システム1は、苗床2
と、該苗床に水を供給する給水設備3と、発芽発根用貯
水池4とから概ね構成してある。苗床2は、水17を張
って構成してあり、該苗床内には、苗床資材16が収容
された生分解可能な透水性収容体である麻袋41を該麻
袋の内部が上方に露出するように配設してある。給水設
備3は、水源としての河川(図示せず)から導水された
水を貯水する開放型貯水槽6と、該開放型貯水槽内と苗
床2内とを連通させる給水管5とから構成してあり、苗
床2及び発芽発根用貯水池4内では、かかる給水設備3
から供給された水が流水するようになっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として干潟など
の湿地帯に移植するためにヨシの苗を育てるヨシの育苗
システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】自然環境の保全や復元を行うため、水辺
に干潟などの湿地帯を造成することによって、水生植物
や野鳥、魚介類などの生育環境を作り出し、良好な水辺
の景観をもたらすことが期待されている。
【0003】湿地帯で良好な自然環境を作り出すために
は、造成した湿地帯に水生植物を移植するのが有効であ
る。かかる場合には、周辺地域に生育している水生植物
の群落から植物を採取し、これを造成した湿地帯に移植
する方法が望ましく、かかる植物としてヨシを用いるこ
とが多い。
【0004】ヨシは湿地に群生するイネ科の多年草であ
り、毎年4月頃から地下茎より芽を出して葉を繁らせ、
8〜10月に穂を出し実を結ぶ。その後、冬に地上部は
枯れて、翌年の成長に備えて地下茎に養分を貯える。
【0005】ヨシを移植するにあたっては、かかるサイ
クルに基づいて考えられており、従来、10月〜11月
に種子を採取して播種し又は該種子を育苗して植える、
11月〜3月に地下茎を掘り取って植える、4月〜10
月に大株を地下茎ごと掘り取って植える、4月〜5月に
地上部の茎を根元から切り取って植える、刈り取った茎
を浸漬させるなどの方法で行われてきた。
【0006】浸漬法は、5月〜8月にヨシの茎を切り取
り、これを水に浸漬させて茎の節から発芽発根させ、次
いで発芽発根した茎を短く切り取ってポット等に植え替
え、かかる状態で半年以上育苗し、しかる後、育った苗
を移植する方法をいう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、種子を
利用する方法では、土壌や気候等の条件によって発芽率
にばらつきがあるうえ、育苗にも2年以上かかるという
問題を生じ、地下茎や大株を植える方法では、地下から
採取する際に大変な労力を要するうえ、ヨシが自生して
いる採取地を攪乱することになるため、ヨシの生育環境
を著しく損なうという問題を生じていた。
【0008】また、茎を植える方法では、4月〜5月頃
に陸上域に生育しているヨシを利用するのが望ましいと
言われているが、適期が限られるうえ、ヨシの群落は、
一般的には湿地帯に存在していることが多いため、実際
には陸上域のヨシを利用するのが難しいという問題を生
じていた。
【0009】また、浸漬法では、採取の労力は比較的少
ないが、ポットに植え替える作業が伴うのみならず、育
苗するのに半年〜1年の期間を要するという問題を生じ
ていた。
【0010】なお、市販されている苗を用いることも考
えられるが、これを大量に調達するにはコスト面で難が
あるという問題も生じていた。
【0011】本発明は、上述した事情を考慮してなされ
たもので、移植可能なヨシの苗を大量かつ短期間に確保
することが可能なヨシの育苗システム及びそれを用いた
育苗方法並びにヨシの移植方法を提供することを目的と
する。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係るヨシの育苗システムは請求項1に記載
したように、水が張られてなる苗床と該苗床に水を供給
する給水設備とを備えるとともに、該給水設備から供給
された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及
び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、所定の
苗床資材が収容された生分解可能な透水性収容体を該透
水性収容体の内部が上方に露出するようにかつ該透水性
収容体の内部に浸入した水の水位が前記苗床資材の天端
よりも高くなるように前記苗床内に配設したものであ
る。
【0013】また、本発明に係るヨシの育苗システム
は、前記給水設備を、河川、湖沼等の水源から導水され
た水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯水槽内と前
記苗床内とを連通させる給水管とから構成するととも
に、前記苗床内に設定された越流水位を前記苗床内の水
位が上回ったときに該苗床内の水がオーバーフロー水と
して前記苗床の外に排水されるように前記苗床を構成し
たものである。
【0014】また、本発明に係るヨシの育苗システム
は、前記オーバーフロー水を前記開放型貯水槽に循環さ
せるようにしたものである。
【0015】また、本発明に係るヨシの育苗システム
は、前記苗床を直列に複数配置するとともに、該苗床の
うち、互いに隣接する苗床同士を連通管で互いに連通さ
せて該連通管内を前記オーバーフロー水が上流側の苗床
から下流側の苗床に流入するようにし、前記各苗床のう
ち、最も上流側に位置する苗床に前記給水管を連通させ
たものである。
【0016】また、本発明に係るヨシの育苗システム
は、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された
脱水ケーキを前記苗床資材としたものである。
【0017】また、本発明に係るヨシの育苗システム
は、水が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎を浮上静置
可能な発芽発根用貯水池を設けたものである。
【0018】また、本発明に係るヨシの育苗方法は請求
項7に記載したように、水が張られてなる苗床内に所定
の苗床資材が収容された生分解可能な透水性収容体を該
透水性収容体の内部が上方に露出するようにかつ該透水
性収容体の内部に浸入した水の水位が前記苗床資材の天
端よりも高くなるように配設するとともに、前記透水性
収容体の内部にヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該
苗床内で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗
するものである。
【0019】また、本発明に係るヨシの育苗方法は、浚
渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケ
ーキを前記苗床資材としたものである。
【0020】また、本発明に係るヨシの育苗方法は、前
記透水性収容体の内部にヨシの茎を水平配置する前に、
水が貯留された発芽発根用貯水池の水の表面近傍に該ヨ
シの茎を浮上静置し、該ヨシの茎から発芽発根させるも
のである。
【0021】また、本発明に係るヨシの移植方法は請求
項10に記載したように、水辺にヨシが生育している水
域の底泥を浚渫し、該浚渫された浚渫泥土を脱水処理し
て脱水ケーキを生成し、水が張られてなる苗床を前記水
域近傍に設け、前記脱水ケーキが苗床資材として収容さ
れた生分解可能な透水性収容体を該透水性収容体の内部
が上方に露出するようにかつ該透水性収容体の内部に浸
入した水の水位が前記苗床資材の天端よりも高くなるよ
うに前記苗床内に配設するとともに、前記透水性収容体
の内部に前記ヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該苗
床内で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗
し、次いで該ヨシの苗が配置された前記透水性収容体を
前記水域近傍に形成された干潟等の湿地帯に埋設するも
のである。
【0022】また、本発明に係るヨシの移植方法は請求
項11に記載したように、水辺にヨシが生育している水
域の底泥を浚渫し、水が張られてなる苗床を前記水域近
傍に設け、前記浚渫された浚渫土が苗床資材として収容
された生分解可能な透水性収容体を該透水性収容体の内
部が上方に露出するようにかつ該透水性収容体の内部に
浸入した水の水位が前記苗床資材の天端よりも高くなる
ように前記苗床内に配設するとともに、前記透水性収容
体の内部に前記ヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該
苗床内で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗
し、次いで該ヨシの苗が配置された前記透水性収容体を
前記水域近傍に形成された干潟等の湿地帯に埋設するも
のである。
【0023】本発明に係るヨシの育苗システムにおいて
は、水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給
水設備とを備えるとともに、所定の苗床資材が収容され
た生分解可能な透水性収容体を苗床内に配設してあり、
ヨシの育苗を行う際は、透水性収容体の内部にヨシの茎
を水平配置し、給水設備で苗床に水を流水供給しながら
育苗する。
【0024】このようにすると、透水性収容体の内部に
配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資
材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、給水
設備から供給された水で苗床内の水が流水するように苗
床及び給水設備の少なくともいずれかを構成してあるの
で、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早
く、育苗を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状
態となる。これは、苗床内の水を流水させることによっ
て十分な酸素を含んだ水が透水性収容体内に供給される
ためと思われる。
【0025】また、苗床資材が収容された透水性収容体
を苗床内に配設してあるため、ヨシの苗を移植する際に
は、ヨシの苗を掘り出すのではなく、ヨシの苗が配置さ
れた透水性収容体を運搬してそのまま干潟などの湿地帯
に埋設すれば足りることとなり、移植時の作業性が向上
する。なお、透水性収容体は生分解可能な材料で構成し
てあるため、移植後は分解されて土壌と一体化する。
【0026】透水性収容体は、生分解、すなわち土中の
微生物によって分解可能な材料であればどのような材料
を用いてもよく、例えば、植物繊維を編み込んでなる麻
袋等の袋体や生分解性プラスチックからなる袋体を用い
ることが考えられる。なお、透水性に関しては、必ずし
も材料自体が透水性である必要はなく、生分解可能な不
透水性材料を透水性が確保されるように所定の透水孔を
設けて構成するようにしてもよい。
【0027】また、透水性収容体は、その内部を上方に
露出させることで該透水性収容体の内部に配置されたヨ
シの苗に十分な光を当てることができるのであれば、そ
の構造や形状は問わない。また、透水性収容体の内部に
浸入した水の水位が苗床資材の天端よりも高くなるよう
にする必要があるが、かかる構成については、透水性収
容体内に収容された苗床資材の天端高さや苗床内の水位
を適宜相対的に調整すればよい。
【0028】給水設備は、苗床に水を供給することがで
きるのであればどのように構成するかは任意である。ま
た、どのように苗床内の水を流水させるかも任意であ
り、地形の段差や斜面等を利用して苗床を作り、自然に
流水させるように構成してもかまわないし、所定の給水
ポンプや排水ポンプを用いて強制的に流水させるように
構成してもかまわない。
【0029】例えば、給水設備を、河川、湖沼等の水源
から導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型
貯水槽内と前記苗床内とを連通させる給水管とから構成
するとともに、前記苗床内に設定された越流水位を前記
苗床内の水位が上回ったときに該苗床内の水がオーバー
フロー水として前記苗床の外に排水されるように前記苗
床を構成することが考えられる。
【0030】このようにすると、水源から導水された水
を開放型貯水槽に貯水する際、水の中に多量の酸素が溶
け込む。そして、このように酸素を多く含んだ水が給水
管を介して苗床に流入し該苗床内を流水することとなる
ため、ヨシの育苗に必要な酸素が十分に苗床に供給され
ることとなる。
【0031】また、所定の越流水位を上回った水が苗床
の外に排水されることとなり、苗床内の水を確実に流水
させることができるとともに、苗床の水位をヨシの育苗
に適した水位に保つことが可能となる。
【0032】開放型貯水槽は、水の流入時あるいは貯水
時に該水の中に酸素を溶け込ませることができるよう、
流入貯水される水が大気に接しあるいは大気に連通する
ようにしてあれば、どのように構成するかは任意である
が、苗床への給水を考慮して苗床よりも高い位置へ設置
するのが望ましい。この場合には、開放型貯水槽と苗床
とのヘッド差によって苗床内の水が自然に流水する。
【0033】給水管は、開放型貯水槽内と苗床内とを連
通させるものであれば、どのように構成するかは任意で
あるが、苗床への給水量を調整できるように流量調整バ
ルブを設けておくのが望ましい。
【0034】また、オーバーフロー水は、これをそのま
ま河川、湖沼、排水溝等に排水するようにしてもかまわ
ないが、これに代えて、オーバーフロー水を開放型貯水
槽に循環させるようにすることも考えられる。
【0035】また、苗床の設置数については任意である
が、これを複数設ける場合において、前記苗床を直列に
複数配置するとともに、該苗床のうち、互いに隣接する
苗床同士を連通管で互いに連通させて該連通管内を前記
オーバーフロー水が上流側の苗床から下流側の苗床に流
入するようにし、前記各苗床のうち、最も上流側に位置
する苗床に前記給水管を連通させたしてもかまわない。
【0036】このようにすると、複数の苗床内の水を効
率よく流水させることが可能となる。
【0037】苗床資材は、ヨシを苗に成育させることが
できるのであればどのようなものを用いてもよく、例え
ば通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた土などを使用す
ることが考えられるが、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水
処理して生成された脱水ケーキを苗床資材としてもかま
わない。
【0038】かかる場合においては、浚渫泥土又は該浚
渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキに栄養塩が
多く含まれているため、ヨシの成育により適した環境と
なり、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短
縮される。また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加し
て盛土材等に利用されることが多いが、固化材を添加し
ない脱水ケーキや浚渫泥土については、これらを廃棄処
分することなく、有効利用することが可能となる。
【0039】また、水が貯留され該水の表面近傍にヨシ
の茎を浮上静置可能な発芽発根用貯水池を設けた場合に
おいては、まず、発芽発根用貯水池にヨシの茎を浮かべ
て発芽発根させ、次に、発芽発根した節が含まれるよう
に必要に応じてヨシの茎を短く切り取り、かかるヨシの
茎を透水性収容体の内部に配置して育苗する。したがっ
て、発芽発根したヨシの茎のみを選別して透水性収容体
の内部に配置することができるので、苗床を効率よく使
用することが可能となるとともに、ヨシの育苗効率を向
上させることが可能となる。
【0040】なお、ヨシの茎を浮上静置して発芽発根さ
せる際は、ヨシの茎が水中に沈まないように複数本のヨ
シの茎を緩く束ねて水に浮かべるのが望ましい。
【0041】また、発芽発根したヨシの茎を透水性収容
体の内部に入れる際は、ヨシの根が苗床資材に定着して
栄養分を苗床資材から吸収しやすいように、ヨシの茎を
苗床資材に少し埋めるように入れるのが望ましい。
【0042】発芽発根用貯水池は、水を溜めてヨシの茎
を浮上静置できるのであればどのように構成するかは任
意であるが、苗床の場合と同様、発芽発根用貯水池に水
を供給する給水設備を備えるとともに、給水設備から供
給された水で発芽発根用貯水池内の水が流水するように
構成してもかまわない。
【0043】また、本発明に係るヨシの育苗方法におい
ては、まず、水が張られてなる苗床内に所定の苗床資材
が収容された生分解可能な透水性収容体を該透水性収容
体の内部が上方に露出するようにかつ該透水性収容体の
内部に浸入した水の水位が苗床資材の天端よりも高くな
るように配設するとともに、透水性収容体の内部にヨシ
の茎を水平配置する。次に、かかる状態で該苗床内で水
を流水させつつヨシの茎からヨシを育苗する。
【0044】このようにすると、透水性収容体の内部に
配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資
材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、苗床
に水を流水供給しながらヨシの苗を育苗するので、従来
の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗
を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態とな
る。これは、苗床内の水を流水させることによって十分
な酸素を含んだ水が透水性収容体内に供給されるためと
思われる。
【0045】また、苗床資材が収容された透水性収容体
を苗床内に配設してあるため、ヨシの苗を移植する際に
は、ヨシの苗を掘り出すのではなく、ヨシの苗が配置さ
れた透水性収容体を運搬してそのまま干潟などの湿地帯
に埋設すれば足りることとなり、移植時の作業性が向上
する。なお、透水性収容体は生分解可能な材料で構成し
てあるため、移植後は分解されて土壌と一体化する。
【0046】透水性収容体は、生分解、すなわち土中の
微生物によって分解可能な材料であればどのような材料
を用いてもよく、例えば、植物繊維を編み込んでなる麻
袋等の袋体や生分解性プラスチックからなる袋体を用い
ることが考えられる。なお、透水性に関しては、必ずし
も材料自体が透水性である必要はなく、生分解可能な不
透水性材料を透水性が確保されるように所定の透水孔を
設けて構成するようにしてもよい。
【0047】また、透水性収容体は、その内部を上方に
露出させることで該透水性収容体の内部に配置されたヨ
シの苗に十分な光を当てることができるのであれば、そ
の形状は問わない。また、透水性収容体の内部に浸入し
た水の水位が苗床資材の天端よりも高くなるようにする
必要があるが、かかる構成については、透水性収容体内
に収容された苗床資材の天端高さや苗床内の水位を適宜
相対的に調整すればよい。
【0048】苗床資材は、ヨシを苗に成育させることが
できるのであればどのようなものを用いてもよく、例え
ば通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた土などを使用す
ることが考えられるが、浚渫泥土や該浚渫泥土を脱水処
理して生成された脱水ケーキを苗床資材としてもかまわ
ない。
【0049】かかる場合においては、浚渫泥土や該浚渫
泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキに栄養塩が多
く含まれているため、ヨシの成育により適した環境とな
り、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮
される。また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加して
盛土材等に利用されることが多いが、固化材を添加しな
い脱水ケーキや脱水処理しない浚渫泥土については、こ
れらを廃棄処分することなく、有効利用することが可能
となる。
【0050】また、透水性収容体の内部にヨシの茎を水
平配置する前に、水が貯留された発芽発根用貯水池の水
の表面近傍に該ヨシの茎を浮上静置し、該ヨシの茎から
発芽発根させるようにしてもかまわない。
【0051】かかる場合においては、まず、発芽発根用
貯水池にヨシの茎を浮かべて発芽発根させ、次に、発芽
発根した節が含まれるように必要に応じてヨシの茎を短
く切り取り、かかるヨシの茎を透水性収容体の内部に配
置して育苗する。したがって、発芽発根したヨシの茎の
みを選別して透水性収容体の内部に配置することができ
るので、苗床を効率よく使用することが可能となるとと
もに、ヨシの育苗効率を向上させることが可能となる。
【0052】なお、ヨシの茎を浮上静置して発芽発根さ
せる際は、ヨシの茎が水中に沈まないように複数本のヨ
シの茎を緩く束ねて水に浮かべるのが望ましい。
【0053】また、発芽発根したヨシの茎を透水性収容
体の内部に入れる際は、ヨシの根が苗床資材に定着して
栄養分を苗床資材から吸収しやすいように、ヨシの茎を
苗床資材に少し埋めるように入れるのが望ましい。
【0054】発芽発根用貯水池は、水を溜めてヨシの茎
を浮上静置できるのであればどのように構成するかは任
意であるが、苗床の場合と同様、発芽発根用貯水池に水
を供給する給水設備を備えるとともに、給水設備から供
給された水で発芽発根用貯水池内の水が流水するように
構成してもかまわない。
【0055】また、本発明に係るヨシの移植方法におい
ては、まず、水辺にヨシが生育している水域の底泥を浚
渫し、次いで、浚渫された浚渫泥土を脱水処理して脱水
ケーキを生成する。
【0056】一方、水が張られてなる苗床を前記水域近
傍に設けておく。
【0057】次に、上述した脱水ケーキが苗床資材とし
て収容された生分解可能な透水性収容体を該透水性収容
体の内部が上方に露出するようにかつ該透水性収容体の
内部に浸入した水の水位が苗床資材の天端よりも高くな
るように苗床内に配設するとともに、透水性収容体の内
部にヨシの茎を水平配置する。
【0058】次に、かかる状態で該苗床内で水を流水さ
せつつヨシの茎からヨシを育苗し、次いで該ヨシの苗が
配置された前記透水性収容体を前記水域近傍に形成され
た干潟等の湿地帯に埋設する。
【0059】また、本発明に係るヨシの移植方法におい
ては、まず、水辺にヨシが生育している水域の底泥を浚
渫する。
【0060】一方、水が張られてなる苗床を前記水域近
傍に設けておく。
【0061】次に、浚渫された浚渫土が苗床資材として
収容された生分解可能な透水性収容体を該透水性収容体
の内部が上方に露出するようにかつ該透水性収容体の内
部に浸入した水の水位が苗床資材の天端よりも高くなる
ように苗床内に配設するとともに、透水性収容体の内部
にヨシの茎を水平配置する。
【0062】次に、かかる状態で該苗床内で水を流水さ
せつつヨシの茎からヨシを育苗し、次いで該ヨシの苗が
配置された前記透水性収容体を前記水域近傍に形成され
た干潟等の湿地帯に埋設する。
【0063】このようにすると、透水性収容体の内部に
配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資
材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、苗床
に水を流水供給しながらヨシの苗を育苗するので、従来
の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗
を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態とな
る。これは、苗床内の水を流水させることによって十分
な酸素を含んだ水が透水性収容体内に供給されるためと
思われる。
【0064】また、苗床資材が収容された透水性収容体
を苗床内に配設してあるため、ヨシの苗を移植する際に
は、ヨシの苗を掘り出すのではなく、ヨシの苗が配置さ
れた透水性収容体を運搬してそのまま干潟などの湿地帯
に埋設すれば足りることとなり、移植時の作業性が向上
する。なお、透水性収容体は生分解可能な材料で構成し
てあるため、移植後は分解されて土壌と一体化する。
【0065】また、苗床資材として使用する脱水ケーキ
や浚渫泥土には栄養塩が多く含まれているため、ヨシの
成育により適した環境となり、かくしてヨシの成長が促
進され育苗期間がより短縮される。なお、脱水ケーキを
作製する際、わざわざ固化材を添加して所定の強度を確
保する必要がなくなるとともに、そもそも、脱水処理し
て脱水ケーキを作製する必要もなくなる。
【0066】また、底泥の浚渫を行っている水域近傍
で、苗床資材の調達、苗床の設置、ヨシの育苗、ヨシの
移植といった全ての作業を行うことができるため、ヨシ
を用いた自然修復作業の効率が向上するとともに、脱水
ケーキ、特に固化材が添加されていない脱水ケーキや浚
渫泥土を他の場所に移動して利用したり廃棄処分したり
することなく、その場で有効利用することができるた
め、経済性に優れた移植方法となるのみならず、固化処
理や脱水処理を省略することで浚渫作業のコストを落と
すことも可能となる。
【0067】また、全ての工程をもともとヨシが水辺に
生育していた水域で行うことができるため、ヨシの生育
環境を変動させる懸念がなくなり、ヨシの育苗及び移植
を大量かつ短期間に行うことが可能となる。
【0068】透水性収容体は、生分解、すなわち土中の
微生物によって分解可能な材料であればどのような材料
を用いてもよく、例えば、植物繊維を編み込んでなる麻
袋等の袋体や生分解性プラスチックからなる袋体を用い
ることが考えられる。なお、透水性に関しては、必ずし
も材料自体が透水性である必要はなく、生分解可能な不
透水性材料を透水性が確保されるように所定の透水孔を
設けて構成するようにしてもよい。
【0069】また、透水性収容体は、その内部を上方に
露出させることで該透水性収容体の内部に配置されたヨ
シの苗に十分な光を当てることができるのであれば、そ
の形状は問わない。また、透水性収容体の内部に浸入し
た水の水位が苗床資材の天端よりも高くなるようにする
必要があるが、かかる構成については、透水性収容体内
に収容された苗床資材の天端高さや苗床内の水位を適宜
相対的に調整すればよい。
【0070】なお、本発明に係るヨシの茎は、節を含ん
でいるのであればその長さは任意であるが、透水性収容
体の内部に配置できるように、育苗のしやすさや成長の
度合い等を勘案して、透水性収容体の内部に配置する前
に必要に応じて所望の長さに適宜切断することができ
る。
【0071】また、苗床の水位は、低すぎてヨシの茎が
乾燥したり、高すぎてヨシの茎が水没したりして発芽に
悪影響を及ぼすことがないよう、苗床内の流水性も考慮
しつつ、水位が透水性収容体内の苗床資材の天端よりも
高くなるように適宜設定すればよく、例えば、苗床資材
の天端から数cmとすることが考えられる。
【0072】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るヨシの育苗シ
ステム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法
の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一
の符号を付してその説明を省略する。
【0073】(第1実施形態)
【0074】図1は、本実施形態に係るヨシの育苗シス
テムを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線
に沿う断面図である。同図に示すように、本実施形態に
係るヨシの育苗システム1は、発芽発根用貯水池4と、
苗床2と、該発芽発根用貯水池及び苗床に水を供給する
給水設備3とから概ね構成してある。
【0075】発芽発根用貯水池4は、図2の詳細図でよ
くわかるように水17が貯留され該水の表面近傍にヨシ
の茎21を浮上静置できるように構成してある。かかる
発芽発根用貯水池4は、地盤11を矩形状に掘削してピ
ットとし、該ピットの内面側部に土留め用矢板14をめ
ぐらせてこれを支持杭13に固定するとともに、防水シ
ート12をピット内に敷き込み、かかる防水シート12
が敷き込まれたピット内に水17を張って構成してあ
る。
【0076】苗床2は、図3の詳細図でよくわかるよう
に、発芽発根用貯水池4と同様、地盤11を矩形状に掘
削してピットとし、該ピットの内面側部に土留め用矢板
14をめぐらせてこれを支持杭13に固定するととも
に、防水シート12をピット内に敷き込み、かかる防水
シート12が敷き込まれたピット内に水17を張って構
成してある。
【0077】ここで、苗床2内には、発芽発根用貯水池
4とは異なり、苗床資材16が収容された生分解可能な
透水性収容体である麻袋41を該麻袋の内部が上方に露
出するように配設してある。
【0078】苗床資材16は、ヨシを苗に成育させるこ
とができるよう、通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた
土などから適宜選択すればよい。
【0079】麻袋41は、植物繊維を袋状に編み込んで
構成してあり、透水性を有するとともに、生分解、すな
わち土中の微生物によって分解可能となっている。ま
た、麻袋41の内部に浸入した水の水位が苗床資材16
の天端よりも高くなるように、麻袋41内に収容された
苗床資材16の天端高さや苗床2内の水位を適宜相対的
に調整してある。
【0080】ここで、麻袋41内には、同図に示すよう
に発芽発根したヨシの茎15が配置されることとなる
が、苗床2内の水位ひいては麻袋41内の水の深さを設
定するにあたっては、低すぎてヨシの茎15が乾燥した
り、高すぎてヨシの茎15が水没したりすることで育苗
に悪影響が出ないよう留意する。例えば、ヨシの茎15
が冠水する程度の深さ、具体的には苗床資材16の天端
から数cmとすることが考えられる。
【0081】また、麻袋41を苗床2内に配置する形態
やピッチあるいは個数は任意であるが、苗床2内の流水
性が阻害されることがないよう留意する。
【0082】給水設備3は、水源としての河川(図示せ
ず)から導水された水を貯水する開放型貯水槽6と、該
開放型貯水槽内と発芽発根用貯水池4内や苗床2内とを
連通させる給水管5とから構成してあり、発芽発根用貯
水池4及び苗床2内では、かかる給水設備3から供給さ
れた水が流水するようになっている。
【0083】開放型貯水槽6は、水の流入時あるいは貯
水時に該水の中に酸素を溶け込ませることができるよ
う、流入貯水される水が大気に接するように上面を開放
して構成してある。かかる開放型貯水槽6は図1(b)で
よくわかるように、苗床2及び発芽発根用貯水池4より
も高い位置へ設置してあり、苗床2や発芽発根用貯水池
4とのヘッド差(高さに起因する水圧)によって苗床2
及び発芽発根用貯水池4への給水がスムーズに行われる
とともに、その結果として、苗床2や発芽発根用貯水池
4内の水が自然に流水するようになっている。
【0084】ここで、苗床2は、二つを直列に配置する
とともに、互いに隣接する苗床2,2同士を連通管7で
連通させてあり、該連通管内を上流側の苗床2(図1で
は右側)から下流側の苗床2(図1では左側)に水が流
入するように構成してあるとともに、各苗床2のうち、
上流側に位置する苗床には給水管5を連通させ、下流側
に位置する苗床には排水管8を連通させてあり、給水設
備3から給水された水が、給水管5、苗床2、連通管
7、苗床2の順序で流れ、排水管8を介して河川、湖
沼、排水溝等に排水されるようになっている。
【0085】発芽発根用貯水池4についても同様であ
り、その上流側には給水管5を連通させ、下流側には排
水管8を連通させることにより、給水設備3から給水さ
れた水を、給水管5を通じて発芽発根用貯水池4に流
し、これを排水管8を介して河川、湖沼、排水溝等に排
水するようになっている。
【0086】ここで、連通管7及び排水管8は、図2及
び図3でよくわかるようにそれらの上流側端部開口18
が鉛直上方を向くように該上流側端部にてほぼL字状に
曲げてあり、苗床2や発芽発根用貯水池4に張られた水
17の水位が上流側端部開口18を上回ったとき、水1
7は、該上流側端部開口18を越流して連通管7や排水
管8に流れ込むようになっている。すなわち、上流側端
部開口18の設置高さは、苗床2や発芽発根用貯水池4
内の水をオーバーフロー水として下流側に流しあるいは
排水する越流水位となる。
【0087】なお、給水管5の下流側端部には、苗床2
や発芽発根用貯水池4への給水量を調整できるよう、流
量調整バルブ19を設けてある。
【0088】本実施形態に係るヨシの育苗システムを用
いてヨシの育苗を行うには、まず、図2に示すように、
水17が貯留された発芽発根用貯水池4の水の表面近傍
にヨシの茎21を浮上静置し、次いで、該発芽発根用貯
水池に給水設備3で水を流水供給しながら、ヨシの茎2
1から発芽発根させる。
【0089】ヨシの茎21を浮上静置して発芽発根させ
る際は、必要に応じてヨシの茎21の頂部を切り取り、
茎の長さ方向への成長を止めた上で、かかるヨシの茎2
1を複数本緩く束ね、これを水に浮かべるのが望まし
い。
【0090】このようにすると、ヨシの茎21が反って
乾燥したり水没したりするのを防止することができるほ
か、発芽発根したヨシの茎21が倒れてしまうのを防止
することも可能となる。
【0091】なお、かかる工程により、1〜2週間でヨ
シの茎21から発芽発根させることができることを実験
で確認済みである。
【0092】次に、図3に示すように、発芽発根したヨ
シの茎21を麻袋41の内部に配置できるようにかつ節
が含まれるように必要に応じて短く切り取り、次いで、
かかるヨシの茎15を麻袋41の内部に水平配置し、こ
れらを苗床2内に配設する。
【0093】発芽発根したヨシの茎15を麻袋41の内
部に配置するにあたっては、ヨシの根が苗床資材16に
定着し栄養分を苗床資材16から吸収しやすいように、
ヨシの茎15を苗床資材16に若干埋設するように配置
するのが望ましいと考えられるが、発根発芽の状況によ
っては、苗床資材16の上に置いたり、水17に浮かべ
たりといった態様も考えられる。いずれにしろ、ヨシの
茎15の乾燥及び水没の防止には留意する。また、麻袋
41を苗床2内に配設するにあたっては、苗床2内を流
れる水が麻袋41内にスムーズに浸入するように、それ
らの配置間隔を適宜調整する。
【0094】次に、給水設備3で苗床2に水を流水供給
しながら、ヨシの茎15からヨシを育苗する。
【0095】このようにすると、麻袋41の内部に水平
配置されたヨシの茎15は、育苗資材16へと根を伸ば
して苗として成育するが、苗床2に流水供給させた水を
麻袋41内に浸入させながらヨシの苗を育苗するため、
従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシを早く成育させ
ることができる。なお、ヨシが十分育苗した後は、適宜
湿地帯へ移植したり、苗として出荷したりすることとな
る。
【0096】なお、かかる工程により、2〜3週間で移
植可能な状態の苗に育てることができることを実験で確
認済みである。
【0097】以上説明したように、本実施形態に係るヨ
シの育苗システム1及びそれを用いた育苗方法によれ
ば、ヨシの育苗を行う際、麻袋41の内部にヨシの茎1
5を水平配置し、給水設備3で苗床2に流水供給させた
水を麻袋41内に浸入させながら育苗するので、従来の
育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗作
業を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態にす
ることができる。これは、苗床2内の水を流水させるこ
とによって十分な酸素を含んだ水が麻袋41内に供給さ
れるためと思われる。
【0098】そのため、年間3〜4サイクルの育苗が可
能となり、大量の苗を効率よく育てることが可能とな
る。
【0099】また、苗床資材16が収容された麻袋41
を苗床2内に配設してあるため、ヨシの苗を移植する際
には、ヨシの茎15を掘り出すのではなく、ヨシの茎1
5が配置された麻袋41を運搬してそのまま干潟などの
湿地帯に埋設すれば足りることとなり、移植時の作業性
が向上する。なお、麻袋41は生分解可能な材料で構成
してあるため、移植後は分解されて土壌と一体化する。
【0100】また、本実施形態に係るヨシの育苗システ
ム1によれば、河川から導水された水を開放型貯水槽6
に貯水する際、水の中に多量の酸素が溶け込むため、酸
素を多く含んだ水を給水管5を介して苗床2に流入させ
該苗床内の水を流水させることが可能となり、ヨシの育
苗に必要な酸素を十分に苗床2ひいては麻袋41内に供
給することが可能となる。
【0101】また、所定の越流水位を上回った水が苗床
2の外に排水されるため、苗床2内の水を確実に流水さ
せることができるとともに、苗床2ひいては麻袋41内
の水位をヨシの育苗に適した水位に保つことが可能とな
る。
【0102】また、本実施形態に係るヨシの育苗システ
ム1によれば、苗床2を直列に複数配置し、該苗床のう
ち、互いに隣接する苗床2,2同士を連通管7で連通さ
せて該連通管内をオーバーフロー水が上流側の苗床2か
ら下流側の苗床2に流入するようにするとともに、各苗
床2のうち、最も上流側に位置する苗床2に給水管5を
連通させたので、複数の苗床2内の水を効率よく流水さ
せることが可能となる。
【0103】また、本実施形態に係るヨシの育苗システ
ム1及びそれを用いた育苗方法によれば、水が貯留され
該水の表面近傍にヨシの茎21を浮上静置可能な発芽発
根用貯水池4を設けたので、発芽発根したヨシの茎のみ
を選別して麻袋41の内部に配置することが可能とな
り、苗床2を効率よく使用することができるとともに、
ヨシの育苗効率を向上させることができる。
【0104】本実施形態では、生分解可能な透水性収容
体として、植物繊維を袋状に編み込んで構成した麻袋4
1を用いるようにしたが、透水性収容体は、生分解、す
なわち土中の微生物によって分解可能な材料であればど
のような材料を用いてもよく、例えば、生分解性プラス
チックからなる袋体を用いることが考えられる。なお、
透水性に関しては、必ずしも材料自体が透水性である必
要はなく、生分解可能な不透水性材料を透水性が確保さ
れるように所定の透水孔を設けて構成するようにしても
よい。
【0105】また、本実施形態では、発芽発根用貯水池
4でいったんヨシの茎21を発芽発根させ、しかる後、
麻袋41の内部に移すようにしたが、刈り取り時期等の
条件によっては、発芽発根用貯水池4での発芽発根工程
を省略し、ヨシの茎21を必要に応じて適宜長さに切断
した後、これらを直接麻袋41の内部に配置するととも
に該麻袋を苗床2内に配設して発芽発根させるととも
に、引き続いて育苗するようにしてもよい。この場合、
発芽発根用貯水池1を省略することができることは言う
までもない。
【0106】また、本実施形態では、給水設備3を構成
する開放型貯水槽6の設置高さを高くすることによっ
て、苗床2内の流水を確保するようにしたが、苗床内の
流水を確保する手段は、かかる構成に限定されるもので
はなく、所定の給水ポンプや排水ポンプを用いた給水設
備を用いて強制的に流水させるように構成してもかまわ
ない。また、給水設備によって流水を確保するのではな
く、苗床の構成によって該苗床内の流水を確保するよう
にしてもかまわない。例えば、地形の段差や斜面等を利
用して苗床を作れば、該苗床に自然に流水させることが
できる。
【0107】また、本実施形態では、オーバーフロー水
は、これをそのまま河川、湖沼、排水溝等に排水するよ
うにしたが、これに代えて、オーバーフロー水を開放型
貯水槽6に循環させるようにしてもかまわない。
【0108】また、本実施形態では、発芽発根用貯水池
4を一つ、苗床2を二つ設けるように構成したが、発芽
発根用貯水池や苗床の数が任意であることは言うまでも
ない。
【0109】また、本実施形態では、苗床2を直列に配
置するとともに隣接する苗床2,2同士を連通管7で互
いに連通させるようにしたが、各苗床2に水が供給され
るとともに該苗床内の水を流水させることができるので
あれば、苗床2をどのように配置するかは任意であり、
例えば、各苗床を直列に配置せずに並列に配置するよう
にしてもかまわないし、直列に配置した苗床を複数並列
させるようにしてもかまわない。
【0110】発芽発根用貯水池の数や配置についても同
様である。また、発芽発根用貯水池と苗床を組み合わせ
る、例えば、これらを直列配置するとともに所定の連通
管を介して互いに連通するように構成してもかまわな
い。
【0111】また、本実施形態では、苗床資材16とし
て砂や土などを使用するようにしたが、これに代えて、
浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水
ケーキを苗床資材としてもかまわない。
【0112】かかる場合においては、浚渫泥土又は該浚
渫泥土を脱水処理した脱水ケーキに栄養塩が多く含まれ
ているため、ヨシの成育により適した環境となり、かく
してヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮される。
また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加して盛土材等
に利用されることが多いが、固化材を添加しない脱水ケ
ーキや脱水処理しない浚渫泥土については、これらを廃
棄処分することなく、有効利用することが可能となる。
特に、浚渫泥土については、脱水処理や固化処理を省略
することが可能となる。
【0113】(第2実施形態)
【0114】次に、本実施形態に係るヨシの移植方法に
ついて説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の
部品等については同一の符号を付してその説明を省略す
る。
【0115】本実施形態に係るヨシの移植方法において
は、まず、図4に示すように、水辺31にヨシが生育し
ている水域32の底泥33を浚渫し、次いで、浚渫され
た浚渫泥土を脱水処理して脱水ケーキを生成する。
【0116】かかる工程は、例えば、高濃度浚渫船で底
泥33を浚渫し、これを土砂分離装置で土砂分離した
後、そのオーバー泥水をいったん沈砂槽に静置し、次い
で、その上澄み泥水を攪拌槽に移してから凝集剤を添加
して攪拌混合した後、スクリューデカンタやフィルター
プレス等の脱水装置で脱水し、そのアンダー分を脱水ケ
ーキとして使用することができる。
【0117】次に、かかる脱水ケーキを苗床資材16と
したヨシの育苗システム1でヨシを育苗する。ヨシの育
苗システム1及びそれを用いたヨシの育苗方法について
は、上述の実施形態及びその変形例で詳細に説明したの
で、ここではその説明を省略する。なお、ヨシの育苗シ
ステム1は、水域32の近傍、例えば沿岸部に適当な育
苗ヤードを造成し、該育苗ヤードに構築する。
【0118】ヨシの育苗システム1にて移植可能な状態
にヨシを育苗したならば、かかるヨシの苗が配置された
透水性収容体である麻袋41を水域32に形成された湿
地帯としての干潟34に埋設する。干潟34は、自然に
存在するものでもよいし、人工的に造成されたものでも
よい。
【0119】以上説明したように、本実施形態に係るヨ
シの移植方法によれば、底泥33の浚渫を行っている水
域32近傍で、脱水ケーキの生成、苗床2の設置、ヨシ
の育苗、ヨシの移植といった全ての作業を行うことがで
きるため、ヨシを用いた自然修復作業の効率が向上する
とともに、脱水ケーキを有効利用することによって、麻
袋41に収容する苗床資材16を別途用意する必要がな
くなり、経済性に優れた移植方法となる。
【0120】また、全ての工程をもともとヨシが水辺に
生育していた水域32で行うことができるため、ヨシの
生育環境を変動させる懸念がなくなり、ヨシの育苗及び
移植を大量かつ短期間に行うことが可能となる。
【0121】なお、ヨシの育苗システム1及びそれを用
いた育苗方法に係る作用効果については、第1実施形態
と同様であり、ここではその説明を省略する。
【0122】本実施形態では、苗床資材として脱水ケー
キを使用したが、これに代えて浚渫泥土を使用するよう
にしてもかまわない。
【0123】かかる構成においても、上述したと同様の
作用効果を奏するほか、浚渫作業において脱水処理をす
る必要がなくなるという顕著な作用効果を奏する。
【0124】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係るヨシの
育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移
植方法によれば、ヨシの育苗を行う際、透水性収容体の
内部にヨシの茎を水平配置し、給水設備で苗床に水を流
水供給しながら育苗するので、従来の育苗方法を用いた
場合よりもヨシの成育が早く、育苗作業を開始してから
1,2ヶ月ほどで移植可能な状態にすることができる。
【0125】また、ヨシの苗を移植する際には、ヨシの
茎を掘り出すのではなく、ヨシの茎が配置された透水性
収容体を運搬してそのまま干潟などの湿地帯に埋設すれ
ば足りることとなり、移植時の作業性が向上する。
【0126】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係るヨシの育苗システムを示し
た図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面
図。
【図2】第1実施形態に係るヨシの育苗システム及びそ
れを用いたヨシの育苗方法を示した図で、図1(a)のC
−C線に沿う断面詳細図。
【図3】第1実施形態に係るヨシの育苗システム及びそ
れを用いたヨシの育苗方法を示した図で、図1(a)のB
−B線に沿う断面詳細図。
【図4】第2実施形態に係るヨシの移植方法を実施して
いる様子を示した概念図。
【符号の説明】
1 育苗システム 2 苗床 3 給水設備 4 発芽発根用貯水池 5 給水管 6 開放型貯水槽 7 連通管 16 苗床資材 34 干潟(湿地帯) 41 麻袋(透水性収容体)

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水が張られてなる苗床と該苗床に水を供
    給する給水設備とを備えるとともに、該給水設備から供
    給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床
    及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、所定
    の苗床資材が収容された生分解可能な透水性収容体を該
    透水性収容体の内部が上方に露出するようにかつ該透水
    性収容体の内部に浸入した水の水位が前記苗床資材の天
    端よりも高くなるように前記苗床内に配設したことを特
    徴とするヨシの育苗システム。
  2. 【請求項2】 前記給水設備を、河川、湖沼等の水源か
    ら導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯
    水槽内と前記苗床内とを連通させる給水管とから構成す
    るとともに、前記苗床内に設定された越流水位を前記苗
    床内の水位が上回ったときに該苗床内の水がオーバーフ
    ロー水として前記苗床の外に排水されるように前記苗床
    を構成した請求項1記載のヨシの育苗システム。
  3. 【請求項3】 前記オーバーフロー水を前記開放型貯水
    槽に循環させるようにした請求項2記載のヨシの育苗シ
    ステム。
  4. 【請求項4】 前記苗床を直列に複数配置するととも
    に、該苗床のうち、互いに隣接する苗床同士を連通管で
    互いに連通させて該連通管内を前記オーバーフロー水が
    上流側の苗床から下流側の苗床に流入するようにし、前
    記各苗床のうち、最も上流側に位置する苗床に前記給水
    管を連通させた請求項2記載のヨシの育苗システム。
  5. 【請求項5】 浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して
    生成された脱水ケーキを前記苗床資材とした請求項1記
    載のヨシの育苗システム。
  6. 【請求項6】 水が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎
    を浮上静置可能な発芽発根用貯水池を設けた請求項1記
    載のヨシの育苗システム。
  7. 【請求項7】 水が張られてなる苗床内に所定の苗床資
    材が収容された生分解可能な透水性収容体を該透水性収
    容体の内部が上方に露出するようにかつ該透水性収容体
    の内部に浸入した水の水位が前記苗床資材の天端よりも
    高くなるように配設するとともに、前記透水性収容体の
    内部にヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該苗床内で
    水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗すること
    を特徴とするヨシの育苗方法。
  8. 【請求項8】 浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して
    生成された脱水ケーキを前記苗床資材とした請求項7記
    載のヨシの育苗方法。
  9. 【請求項9】 前記透水性収容体の内部にヨシの茎を水
    平配置する前に、水が貯留された発芽発根用貯水池の水
    の表面近傍に該ヨシの茎を浮上静置し、該ヨシの茎から
    発芽発根させる請求項7記載のヨシの育苗方法。
  10. 【請求項10】 水辺にヨシが生育している水域の底泥
    を浚渫し、該浚渫された浚渫泥土を脱水処理して脱水ケ
    ーキを生成し、水が張られてなる苗床を前記水域近傍に
    設け、前記脱水ケーキが苗床資材として収容された生分
    解可能な透水性収容体を該透水性収容体の内部が上方に
    露出するようにかつ該透水性収容体の内部に浸入した水
    の水位が前記苗床資材の天端よりも高くなるように前記
    苗床内に配設するとともに、前記透水性収容体の内部に
    前記ヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該苗床内で水
    を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗し、次いで
    該ヨシの苗が配置された前記透水性収容体を前記水域近
    傍に形成された干潟等の湿地帯に埋設することを特徴と
    するヨシの移植方法。
  11. 【請求項11】 水辺にヨシが生育している水域の底泥
    を浚渫し、水が張られてなる苗床を前記水域近傍に設
    け、前記浚渫された浚渫土が苗床資材として収容された
    生分解可能な透水性収容体を該透水性収容体の内部が上
    方に露出するようにかつ該透水性収容体の内部に浸入し
    た水の水位が前記苗床資材の天端よりも高くなるように
    前記苗床内に配設するとともに、前記透水性収容体の内
    部に前記ヨシの茎を水平配置し、かかる状態で該苗床内
    で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗し、次
    いで該ヨシの苗が配置された前記透水性収容体を前記水
    域近傍に形成された干潟等の湿地帯に埋設することを特
    徴とするヨシの移植方法。
JP2001355575A 2001-11-21 2001-11-21 ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法 Withdrawn JP2003153636A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001355575A JP2003153636A (ja) 2001-11-21 2001-11-21 ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001355575A JP2003153636A (ja) 2001-11-21 2001-11-21 ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003153636A true JP2003153636A (ja) 2003-05-27

Family

ID=19167255

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001355575A Withdrawn JP2003153636A (ja) 2001-11-21 2001-11-21 ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003153636A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012065598A (ja) * 2010-09-24 2012-04-05 Kamihata Yogyo Kk 観賞用水草の育成方法
CN109956628A (zh) * 2019-04-28 2019-07-02 湖南鑫恒环境科技有限公司 一种淤泥无害化凝缩育树袋及方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012065598A (ja) * 2010-09-24 2012-04-05 Kamihata Yogyo Kk 観賞用水草の育成方法
CN109956628A (zh) * 2019-04-28 2019-07-02 湖南鑫恒环境科技有限公司 一种淤泥无害化凝缩育树袋及方法
CN109956628B (zh) * 2019-04-28 2023-10-20 深圳市洪桦环保科技有限公司 一种淤泥无害化凝缩育树袋及方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN101790933B (zh) 利用乔灌草垂直配置构建三峡水库消涨带植被的方法
CN108834462B (zh) 一种防治干热河谷冲沟发育区水土流失的植被配置方法
JP4916294B2 (ja) 草体移植具および水底における草体の移植方法
CN104787891A (zh) 一种基于微地形改造的藻类水华生态控制系统、控制藻类水华的生态方法及应用
CN111011095B (zh) 潟湖中营造红树林的方法
Broome et al. Shoreline erosion control using marsh vegetation and low-cost structures
KR101101343B1 (ko) 잘피의 용이한 안착을 도모하는 잘피이식체 및 이를 이용한 잘피이식방법
CN210184021U (zh) 一种用于泥滩种植红树种苗的培育保护装置
WO2005070194A1 (en) A process for the re-vegetation of an area of land
CN111742834A (zh) 一种硬质水底水生植物快速定植方法
JP4217946B2 (ja) ヨシの育苗方法及び移植方法
CN113748909B (zh) 一种基于水松的库尾消落带林泽生态系统高效构建方法
CN111727871A (zh) 一种硬质基底锚定式水生植物快速定植方法
CN107114097B (zh) 一种贝壳砂原生境杠柳苗木高效培育体系及其培育方法
CN109566216A (zh) 提高斜坡树种植成活率的方法
JP2003153636A (ja) ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法
CN213539018U (zh) 一种河流边坡防护固土结构
CN104986859B (zh) 一种保护和美化北方城市景观水体的草本植被过滤带及其制备方法
KR100863673B1 (ko) 수생식물 종근블록 및 그 식재방법
JP4693063B2 (ja) ヨシの育苗システム
JP2003169555A (ja) ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法
JP2912938B1 (ja) 耐波浪性・耐水性に優れた竹材を使用主材とした湛水法面の緑化方法
JP2701136B2 (ja) コンクリート製植栽基盤
JP2002017167A (ja) 植物栽培方法
KR100590221B1 (ko) 식생복원용 수생식물 매트

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050201