JP2003144541A - 易滑性医療用具 - Google Patents

易滑性医療用具

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JP2003144541A
JP2003144541A JP2001347759A JP2001347759A JP2003144541A JP 2003144541 A JP2003144541 A JP 2003144541A JP 2001347759 A JP2001347759 A JP 2001347759A JP 2001347759 A JP2001347759 A JP 2001347759A JP 2003144541 A JP2003144541 A JP 2003144541A
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slippery
meth
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JP2001347759A
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Kenichi Tabata
憲一 田畑
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】湿潤時の滑り性に優れ、下層との接着性が良好
で、手技中の損傷を受けにくい医療用具を得る。 【解決手段】基材上に、(メタ)アクリル酸塩単位とビ
ニルアルコール単位を含有する共重合体を含有するコー
ティング層を設けてなる医療用具であって、そのコーテ
ィング層の純水に対する膨潤率が50〜700%である
医療用具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、易滑性に優れた医
療用具、特に血液や体液組織に直接接触する医療用具の
表面に好ましく用いられる湿潤時に表面が潤滑性を示す
易滑性医療用具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】生理衛生材料等を含む医療用具、特にカ
テーテル、ガイドワイヤー、バルーン、カニューレにお
いて、その表面の低摩擦(易滑)化は必須の要求項目と
なっている。例えば、易滑性を有さないカテーテルの場
合、カテーテルを人体に挿入する際に痛みを伴ったり、
また組織粘膜を損傷したり、炎症を引き起こすおそれが
ある。
【0003】従来、医療用具への易滑性付与技術として
は、基材表面に種々のオイルを塗布する方法、ポリ四フ
ッ化エチレン樹脂等の低摩擦係数を有するポリマーをコ
ーティングする方法、および親水性ポリマーをコーティ
ングする方法等が公知である。特に、基材表面に親水性
ポリマーをコーティングする方法は、実用や安全性の面
から優れているとされている。
【0004】親水性ポリマーを基材表面にコーティング
する具体的な方法としては、イソシアネートを用いたポ
リビニルピロリドンの固定(特公昭59−19582号
公報、米国特許4100309号公報)、反応性官能基
を共重合した親水性ポリマーとイソシアネートを用いた
方法(特開昭59−81341号公報)、およびイソシ
アネートを用いたポリエチレンオキシドの固定(特開昭
58−193766号公報)等が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、基材表
面に種々オイルを塗布する方法は、耐久性が低く溶出物
による安全面での問題がある。また、基材表面にポリ四
フッ化エチレン樹脂等の低摩擦係数を有するポリマーを
コーティングする方法は、十分な潤滑性を得ることが困
難である。また、基材表面に親水性ポリマーをコーティ
ングする方法は、これらに比べ優れた易滑性を有しては
いるが、耐久性に問題がある。例えば、イソシアネート
を用いたポリビニルピロリドンの固定(特開昭59−1
9582号公報、米国特許4100309号明細書)で
は、ポリビニルピロリドンと基材との結合が不十分で溶
出が起こる。また、その改良方法である反応性官能基を
共重合した親水性ポリマーとイソシアネートを用いた方
法(特開昭59−81341号公報)においても、これ
らは完全に解決されていない。これは、その結合(アミ
ド結等)が比較的加水分解され易いことに起因するもの
と考えられる。さらに、イソシアネートを用いたポリエ
チレンオキシドの固定(特開昭58−193766号公
報)においても同様に耐久性に問題があった。このよう
に、従来の易滑性付与技術は、易滑性能と耐久性および
安全性を兼ね備えることが難しかった。
【0006】そこで本発明の目的は、かかる従来技術の
問題を解決し、優れた易滑性能と耐久性および安全性を
兼ね備えた易滑性医療用具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の易滑性医療用具
は上記目的を達成しようとするものであり、以下の構成
を有する。 (1)基材上に、(メタ)アクリル酸塩単位とビニルア
ルコール単位を構成単位とする共重合体を含有するコー
ティング層を備えた医療用具であって、そのコーティン
グ層の純水に対する膨潤率が50〜700%であること
を特徴とする易滑性医療用具。本発明において(メタ)
アクリル酸と表示した場合、アクリル酸および/または
メタアクリル酸の意味で使われる。 (2)コーティング層の純水に対する膨潤率が200〜
700%であることを特徴とする上記(1)記載の易滑
性医療用具。 (3)コーティング層が、(メタ)アクリル酸塩単位か
ら主として構成される相およびビニルアルコール単位か
ら主として構成される相の少なくとも2相から構成され
たミクロ相分離構造を有することを特徴とする上記
(1)または(2)記載の易滑性医療用具。 (4)コーティング層に含まれる共重合体が、架橋剤と
してアルデヒド、エポキシ、イソシアネート、アミンま
たはシランから選ばれた1つ以上の化合物による架橋を
有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか
に記載の易滑性医療用具。 (5)共重合体が、アルカリ触媒の存在下でケン化反応
せしめてなる共重合体である上記(1)〜(4)のいず
れかに記載の易滑性医療用具。 (6)(メタ)アクリル酸塩単位が(メタ)アクリル酸
エステルから誘導された単位であり、ビニルアルコール
単位が酢酸ビニルから誘導された単位であることを特徴
とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の易滑性医
療用具。 (7)基材上に、アンダーコーティング層、コーティン
グ層をこの順に塗布してなる上記(1)〜(6)のいず
れかに記載の易滑性医療用具。 (8)血液や体液組織に直接接触させて用いる上記
(1)〜(7)のいずれかに記載の易滑性医療用具。 (9)基材がチューブ状物であることを特徴とする上記
(1)〜(8)のいずれかに記載の易滑性医療用具。 (10)チューブ状物が、カテーテル、ガイドワイヤ
ー、バルーンまたはカニューレである上記(9)記載の
易滑性医療用具。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の易滑性医療用具は、好適
には湿潤時に表面が潤滑性を示す医療用具である。本発
明の易滑性医療用具がこのような優れた特徴を有する理
由は必ずしも明確ではないが、本発明で用いられる特定
の共重合体を含有するコーティング層を有し、湿潤時に
大量の水分をコーティング層内に蓄え、その結果高い膨
潤性を発現するため、血管内など生体内において優れた
滑り性が得られるものと推察される。
【0009】一般に、(メタ)アクリル酸塩単位を含有
する重合体は、代表的な吸水性高分子化合物として知ら
れており、重合時および/または重合後の架橋などによ
り形成されるゲルは、吸水すると高い割合で膨潤する。
しかしながら、このような(メタ)アクリル酸塩単位を
含有する重合体を、基材表面にコーティングすることは
非常に困難である。何故なら、重合体が膨潤するために
基材またはその上に設けられたアンダーコート層との接
着が不十分になり、また逆に下層との接着を強固にする
と重合体である吸水性高分子化合物が吸水・膨潤できな
かったりするからである。
【0010】これに対し、本発明におけるコーティング
層は、基材またはアンダーコーティング層に強固に接着
し、かつ湿潤時に優れた潤滑性を示す。
【0011】本発明におけるコーティング層は、(メ
タ)アクリル酸塩単位とビニルアルコール単位を構成単
位とする共重合体を含有するものである。
【0012】本発明で用いられる(メタ)アクリル酸塩
単位とビニルアルコール単位を構成単位とする共重合体
が潤滑性と下層との接着性および膜強度に特に優れてい
る理由は次のように推察される。共重合体中の(メタ)
アクリル酸塩部分が互いに集まってミセル構造を形成
し、ビニルアルコール単位の水酸基と相分離した構造を
とる。すなわち、高吸水性の(メタ)アクリル酸塩成分
の優位な領域と強靱な膜形成能を有するビニルアルコー
ル成分の優位な領域からなり、前者が後者を包含したミ
クロ相分離構造をとっているためである。ポリビニルア
ルコールの海の中にポリアクリル酸塩の島が混在する構
造で、結晶化されたビニルアルコールがポリアクリル酸
塩の架橋点として作用する。この構造が高吸水性と膜強
度の両立を可能ならしめている。また、下層との強力な
接着については、ビニルアルコール単位の水酸基が関与
したているものと推察される。
【0013】さらに、このようにミクロ相分離構造に加
えて、共重合体が有する水酸基を用いた架橋部分が架橋
点の作用を果たし、強靱かつ下層との接着性に優れた易
滑性コーティングを形成すると考えられる。
【0014】本発明において、コーティング層に用いら
れる、(メタ)アクリル酸塩単位とビニルアルコール単
位を構成単位とする共重合体は、例えば高分子化学、7
巻、142ページに記載されているように公知の方法を
用いて製造される。本発明で用いられる(メタ)アクリ
ル酸塩単位としては、アクリル酸またはメタクリル酸の
ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウ
ム塩等を挙げることができる。この共重合体としては、
酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸エステルを出発原料と
して製造することが好ましい。
【0015】本発明で用いられる共重合体としては、ア
クリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体、メタ
クリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体、アク
リル酸カリウム−ビニルアルコール共重合体、メタクリ
ル酸カリウム−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸
カルシウム−ビニルアルコール共重合体、メタクリル酸
カルシウム−ビニルアルコール共重合体、アクリル酸マ
グネシウム−ビニルアルコール共重合体、メタクリル酸
マグネシウム−ビニルアルコール共重合体等を挙げるこ
とができる。
【0016】本発明で用いられる共重合体は、例えば、
ジ−t−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド
などのパーオキシド類、過硫酸カリウムなどの過硫酸
塩、あるいはアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化
合物などの重合開始剤を用いたラジカル重合によって合
成することができる。重合様式としては、溶液重合、乳
化重合、または懸濁重合などにより製造することができ
る。共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル成分が少
ないと吸水性が小さく、多すぎると高吸水状態となり膜
強度が極端に低下する傾向にある。したがって、出発物
質となる共重合体中における(メタ)アクリル酸エステ
ル成分の割合は、一般に20〜80モル%の範囲にある
ことが好ましく、吸水性および含水時の力学強度を両立
させるためには30〜70モル%であることが好まし
い。
【0017】上記に説明した共重合体は、アルカリ触媒
の存在下でケン化反応することが好ましい。また、ケン
化反応に用いられる触媒としては公知のアルカリ触媒を
用いることができるが、特に水酸化ナトリウムや水酸化
カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。ケン
化反応は、通常20〜80℃で1〜10時間で終結す
る。また、本発明のケン化反応物は、公知の方法によっ
て塩を任意に変えることが可能である。通常用いられる
塩形成物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化アンモニウム、モノメチルアミン、ジメチル
アミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチ
ルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミ
ン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプ
ロパノ−ルアミン、トリイソプロパンノールアミン、
N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチル
イソプロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、ベン
ジルアミン、アニリン、ピリジンなどが挙げられる。
【0018】また、マグネシウム、カルシウムなどのア
ルカリ土類金属塩の多価金属塩類も前記の塩と混合塩の
形態で添加することが可能である。
【0019】本発明において、コーティング層に用いら
れる共重合体は、(メタ)アクリル酸塩単位およびビニ
ルアルコール単位の2つの単位以外の他のモノマー単位
を含有する共重合体であってもよい。他のモノマーとし
ては、スチレン、アクリロニトリル、無水マレイン酸、
ジメチルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノメ
チルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレー
ト、ジメチルアミノエチルメタクリレート、tert−
ブチルアミノエチルアクリレート、tert−ブチルア
ミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メチルア
クリルアミド、プロピルアクリルアミド、2−ヒドロキ
シエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリ
レート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒ
ドロキシプロピルメタクリレート、N−アクロイルピペ
リジン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、エチレ
ン、プロピレン、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリ
デン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等を挙げるこ
とができる。
【0020】他のモノマー単位と組合せる場合、(メ
タ)アクリル酸単位は、通常全モノマー単位成分中10
モル%以上で、40モル%以下であることが好ましい。
【0021】これら共重合体はラジカル重合、懸濁重合
により調製される。重合度は特に限定されるものではな
いが、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分
子量で5000〜1000000が好ましく、5000
0〜1000000がさらに好ましい。
【0022】また、本発明で用いられる共重合体は、ナ
トリウム、カリウム、マグネシウム、またはバリウムな
どのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属の水酸化
物、酸化物または炭酸塩などの化合物、アンモニア、ア
ミンなどを用いてケン化反応させることによる親水性付
与が好ましく行われる。これらの反応は、該共重合体を
各種の有機溶媒または水に溶解または分散させ、そこに
前記したアルカリ金属化合物、アルカリ度類金属化合
物、アンモニア、アミンなどを撹拌下に添加することに
よって実施される。
【0023】本発明のコーティング材には、発明の効果
を損なわない範囲内で公知のメチルセルロース、ヒドロ
キシエチルセルロース、ヒアルロン酸、アガロース、コ
ラーゲン、カゼイン、グルー、ゼラチン、グルテン、ア
ルギン酸塩、アラビアガム、澱粉、寒天、デキストリ
ン、マンナンなどの天然高分子類やポリエチレンオキサ
イド、ポリ(エチレンオキサイド−co−プロピレンオ
キサイド)、水性ウレタン樹脂、水溶性ポリエステル、
ヒドロキシ(メタ)アクリート系ポリマー、ポリ(ビニ
ルメチルエーテル−co−無水マレイン酸)、無水マレ
イン酸系共重合体、ビニルピロリドン系共重合体、ポリ
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート系重合体、
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート系重
合体、ポリ(N−ビニルカルボン酸アミド)、N−ビニ
ルカルボン酸アミド共重合体等の親水性ポリマーを加え
ることが可能である。なお、上記の親水性ポリマーは発
明の効果を損わない範囲で、柔軟性を付与したり、親水
性を制御する目的から置換基が異なるモノマーや共重合
成分を、1種または2種以上を適宜混合して用いること
が可能である。
【0024】また、必要に応じて架橋剤を用いることに
より水に対する不溶化または一部不溶化を促進してもよ
い。架橋には該共重合体が有する反応性官能基を用いて
架橋反応することが好ましい。すなわち、水酸基と反応
しうる架橋剤を用いてもよい。また、該共重合体に共重
合された、(メタ)アクリル酸塩単位とビニルアルコー
ル単位以外の単位が備える官能基と反応しうる架橋剤を
用いてもよい。このような官能基または部位としては、
水酸基以外にカルボキシル基、アミノ基・アミド結合の
活性水素、二重結合、メルカプト基、エポキシ基などを
挙げることができる。架橋反応は、共有結合性の架橋で
あっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0025】架橋反応に用いられる化合物としては、架
橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエ
ポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリ(メ
タ)アクリル化合物、ポリメルカプト化合物、ポリアル
コキシシリル化合物、多価金属塩化合物、ポリアミン化
合物、アルデヒド化合物、ポリビニル化合物、ヒドラジ
ンなどが挙げられ、該架橋反応は公知の触媒を添加し、
反応を促進することが行なわれる。
【0026】これらの架橋剤は単独または2種以上を混
合して使用することが可能である。分散媒としては主と
して水が用いられるが、必要に応じて公知の有機溶剤を
添加することが可能である。
【0027】本発明の親水性膨潤層を形成する方法とし
ては、水溶液系で、必要に応じて架橋剤が添加される方
法が、均質な相分離構造を実現し易滑性を向上させる点
から好ましい。
【0028】したがって、用いられる架橋剤としては、
水溶性の多官能性化合物を用いることが特に好ましい。
すなわち、水溶性のポリエポキシ化合物、ポリアミン化
合物、メラミン化合物などを用いることが好ましい。
【0029】本発明に用いられる易滑性のコーティング
層は、以下の方法にしたがって算出される純水に対する
膨潤率が特定の範囲であることが好ましい。
【0030】[膨潤率の測定方法]測定しようとするコ
ーティング層を有する医療用具の部位をOsO4水溶液
の雰囲気下に1昼夜さらしてOsO4によりコーティン
グ層を固定した後、所定の部位が断面となるようにミク
ロトームで切削して超薄切片を作製する。この切片を透
過型電子顕微鏡(TEM)にて1〜5万倍程度の倍率で
当該部位のコーティング層の厚さを観察し、これをΘ
DRY(μm)とする。
【0031】一方、測定しようとするコーティング層を
有する医療用具の部位をOsO4水溶液に2〜3日浸漬
しコーティング層を水膨潤状態で固化/固定する。所定
の部位が断面となるようにミクロトームで切削して超薄
切片を作製し、この切片を透過型電子顕微鏡(TEM)
にて1〜5万倍程度の倍率で当該部位のコーティング層
の厚さを読みとり、これをΘWET(μm)とする。純水
に対する水膨潤率=(ΘWET−ΘDRY)/ΘDRY×100
本発明の易滑性コーティング層の膨潤率は、湿潤時の滑
り性、下層との接着性、コーティング層膜強度の観点か
ら、50〜700%であり、200〜700%であるこ
とが特に好ましい。水膨潤率が50%未満になると湿潤
時の滑り性が低下する。一方、水膨潤率が700%を超
える場合にはコーティング層の形態保持性が低く、また
膜強度が劣るためコーティング層が損傷を受け易くな
る。
【0032】次に、一例として本発明の易滑性表面の形
成方法について、溶媒コーティング法を例にとって詳細
に説明する。
【0033】コーティング層を形成するために用いられ
る基材は、使用目的によって種々選択されるが、種々の
プラスチック、無機材料や金属材料などが好ましく用い
られる。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリリウレタン、ポリ
ウレア、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン、ポリエス
テル、ポリアクリロニトリルやそれらが被覆された金属
線、ステンレス、弾性金属、セラミックスや木材を挙げ
ることができる。また、該基材は上記の素材が複合され
たものであってもよい。また、これらの基材は、硫酸バ
リウム、タングステン、三酸化ビスマス、または次炭酸
ビスマスなどのX線不透過性の化合物を含有してもよ
い。
【0034】これら基材上へのコーティング方法として
は特に限定されないが、共重合体および/または架橋材
を含有する液を基材またはアンダーコート層に塗布また
は含浸する方法を挙げることができる。
【0035】共重合体を含有する液をコーティングする
際に用いる溶媒としては、水、アルコール類、芳香族炭
化水素、鎖状あるいは環状炭化水素類、ハロゲン化炭化
水素類、ケトン類やアミド類など添加成分を溶解するも
のであればよい。溶液中の共重合体濃度は、目的とする
コーティング層の膜厚によって適宜選択され得るが、
0.1〜50wt%の範囲が好ましく、1〜15wt%
が特に好ましい。コーティング層厚みは、0.1〜10
0μmが好ましく、0.3〜20μmがさらに好まし
い。
【0036】アンダーコート層は、コーティング層と基
材との接着性や耐久性向上あるいはコーティング層の表
面平滑性向上などの目的で必要に応じて塗設しても良
い。アンダーコート層は、特に限定されるものではない
が、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白、ポリ
ビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル
アミド、ポリビニルホスホン酸、フェノール樹脂、ポリ
ウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、、フェノ
キシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アミン樹脂、酢
酸ビニルのケン化物、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸
エステル共重合体のケン化物、などの高分子化合物およ
び/またはポリエポキシ化合物、ポリイソシアネート化
合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリ(メ
タ)アクリル化合物、ポリメルカプト化合物、ポリアル
コキシシリル化合物、多価金属塩化合物、ポリアミン化
合物、ポリアルデヒド化合物、ポリビニル化合物、シラ
ン化合物、有機チタネート化合物、等の内から選ばれた
1種以上の化合物を挙げることができる。アンダーコー
ト層の厚みは特に限定されるものではないが、0.1〜
20μmが好ましく、0.1〜5μmがさらに好まし
い。
【0037】本発明において、コーティング形成方法は
種々の分野に広く応用可能である。特に、易滑性と耐久
性(安全性)を併せ持つことから、種々のカテーテル、
ガイドワイヤー、内視鏡、コンタクトレンズなどの医療
材料や生理衛生材料などの表面処理などに適用可能であ
る。
【0038】以下に、実施例により本発明をさらに詳し
く説明する。
【0039】
【実施例】(合成例1)酢酸ビニル60gとアクリル酸
メチル40gに、重合開始剤としてベンゾイルパーオキ
シド0.5gを計量し、これを、分散安定剤として部分
ケン化ポリビニルアルコール3gとNaCl10gを含
む水300ml中に分散させた。該分散液を65℃×6
時間撹拌し、懸濁重合を行なった。得られた共重合体の
アクリル酸メチル成分と酢酸ビニル成分はNMRスペク
トルから同定した結果、それぞれ48モル%、52モル
%であった。また30℃におけるベンゼン溶液中での極
限粘度は2.10であった。
【0040】次に、該共重合体8.6gを200gのメ
タノールと10gの水および5NのNaOH40mlか
らなるケン化反応液中に添加し撹拌懸濁させ、25℃×
1時間ケン化反応を行なった後、温度を65℃に昇温
し、さらに5時間ケン化反応を行なった。
【0041】得られたケン化反応物はメタノールで十分
に洗浄し、凍結乾燥した。ケン化度は98.3モル%で
あり、赤外吸収スペクトルの測定の結果、1570cm
-1に−COO-基に帰属される強い吸収が確認された。
【0042】(合成例2)合成例1のアクリル酸メチル
をメタクリル酸n−ブチルに代えて用いたこと以外は合
成例1と同様にして、重合およびケン化反応を行ない、
共重合体を得た。懸濁重合後の共重合体のアクリル酸−
n−ブチル成分、酢酸ビニル成分はNMRスペクトルか
ら同定した結果、それぞれ45モル%、55モル%であ
った。また、30℃におけるベンゼン溶液中での極限粘
度は1.95であった。一方、ケン化反応後のケン化度
は98.8モル%であり、赤外吸収スペクトルの測定の
結果、1570cm−1に−COO−基に帰属される強
い吸収が確認された。
【0043】(合成例3)合成例1の酢酸ビニルおよび
アクリル酸メチル仕込み量を酢酸ビニル40gおよびア
クリル酸メチル60gに変更したこと以外は同様にし
て、重合およびケン化反応を行ない、共重合体を得た。
懸濁重合後の共重合体のアクリル酸メチル、酢酸ビニル
成分はNMRスペクトルから同定した結果、それぞれ5
4モル%、46モル%であった。一方、ケン化反応後の
ケン化度は98.5モル%であり、赤外吸収スペクトル
の測定の結果、1570cm−1に−COO−基に帰属
される強い吸収が確認された。
【0044】(実施例1)外径1.36mm、内径1.
02mmのポリウレタンチューブ(基材)の内外面に、
合成例1の共重合体水溶液を、乾燥後の厚さが約2μm
となるように浸漬により塗設し、60℃×30分間熱風
乾燥した。コーティング層を有するポリウレタンチュー
ブを生理食塩水で湿潤させると、下記のとおり滑り性に
優れた表面が得られた。コーティング層の純水に対する
膨潤率は350%であった。また、60分の煮沸後にお
いても優れた滑り性を示し、耐久性に優れることが分か
った。コーティング層を有するポリウレタンチューブを
精製水に浸した後、OsO4染色し、TEM(透過型電
子顕微鏡)観察した。観察の結果、コーティング層が、
(メタ)アクリル酸単位から主として構成される相およ
びビニルアルコール単位から主として構成される相の2
相から構成されたミクロ相分離構造を有することが確認
された。
【0045】易滑性の定量は、以下のようにして摩擦係
数の測定により行った。 (1)スライドガラス上にカテーテルを敷き詰める。 (2)カテーテルを生理食塩水に浸す。 (3)カテーテル上に底面をポリウレタンで被覆した1
00gの分銅を置く。 (4)スライドガラスの長軸方向の一端を固定し、もう
一端を徐々に持ち上げ、分銅の滑り始める時の傾斜角度
θを測定する。 (5)求めた傾斜角度θから、式μ=tanθ を用
い、最大静止摩擦係数μを算出する。
【0046】以上の方法により評価したところ、摩擦係
数μ=0.028であり、60分煮沸後においてもμ=
0.028であり、優れた易滑性を示した。コーティン
グのカテーテル前は、μ=0.36であり、易滑性を示
さなかった。
【0047】(実施例2)外径0.90mm、内径0.
50mmのポリアミドチューブの外面に、合成例2の共
重合体水溶液を乾燥後の厚さが約5μmとなるように塗
設し、50℃×60分間乾燥した。コーティング層を有
するポリアミドチューブを精製水で湿潤させると、下記
のとおり滑り性に優れた表面が得られた。水膨潤率は6
20%であった。また、60分の煮沸後においても優れ
た滑り性を示し、耐久性に優れることが分かった。実施
例1の方法により評価したところ、摩擦係数μ=0.0
25であり、60分煮沸後においてもμ=0.025で
あり、優れた易滑性を示した。
【0048】(実施例3)実施例2において、共重合体
水溶液として合成例3で得られた共重合体を使用したこ
と以外は、実施例1と同様の方法でコーティング層を有
するポリアミドチューブを得た。コーティング層を有す
るポリアミドチューブを生理食塩水で湿潤させると、滑
り性に優れた表面が得られた。純水に対する膨潤率は2
00%であった。また、60分の煮沸後においても優れ
た滑り性を示し、耐久性に優れることが分かった。実施
例1の方法により評価したところ、摩擦係数μ=0.0
35であり、60分煮沸後においてもμ=0.037で
あり、優れた易滑性を示した。
【0049】(実施例4)外径1.36mm、内径1.
02mmのポリウレタンチューブの内外面に、合成例1
の共重合体水溶液100g(5重量%濃度)とテトラエ
チレングリコールジグリシジルエーテル0.8gを良く
撹拌して、乾燥後の厚さが約1.5μmとなるように浸
漬により塗設し、60℃×5分間熱風乾燥した。コーテ
ィング層を有するポリウレタンチューブを精製水で湿潤
させると、下記のとおり滑り性に優れた表面が得られ
た。純水に対する膨潤率は280%であった。また、6
0分の煮沸後においても優れた滑り性を示し、耐久性に
優れることが分かった。実施例1に記載の方法で測定し
たところ、摩擦係数はμ=0.026であり、60分煮
沸後においてもμ=0.026であり、優れた易滑性を
示した。
【0050】(実施例5)ポリエチレングリコール(分
子量2000)20g、ペンタエリスリトール4g、ト
リレンジイソシアネート16gを反応させ、末端イソシ
アネート基を有するポリウレタン樹脂を調製した。外径
1.36mm、内径1.02mmのポリウレタンチュー
ブの外面に、上記のようにして調整したポリウレタン樹
脂溶液を塗設し、40℃で24時間乾燥した後、合成例
1の共重合体水溶液を乾燥後の厚さが約3μmとなるよ
うに塗設し、50℃×5分間熱風乾燥してコーティング
層を有するポリウレタンチューブを得た。コーティング
層を有するポリウレタンチューブを生理食塩水で湿潤さ
せると、下記のとおり滑り性に優れた表面が得られた。
純水に対する膨潤率は530%であった。また、60分
の煮沸後においても優れた滑り性を示し、耐久性に優れ
ることが分かった。実施例1に記載の方法で測定したと
ころ、摩擦係数はμ=0.024であり、60分煮沸後
においてもμ=0.024であり、優れた易滑性を示し
た。
【0051】以上のように本発明の易滑性医療用具は、
湿潤時の滑り性に優れ、下層との接着に優れ、膜強度に
優れていることが分かる。本発明の医療用具は、使用時
に易滑性に優れているため、血管などを傷つけ難く、安
全性の点においても有用である。
【0052】
【発明の効果】本発明の易滑性医療用具は、特定の共重
合体を用いることにより、滑り性に優れ、下層に強固に
接着し、膜強度が高く、引っ掻きなどに対しても損傷を
受けにくく耐久性があり、安全性が高い。したがって、
種々のカテーテル、ガイドワイヤー、内視鏡、コンタク
トレンズなどの医療材料や生理衛生材料などの表面処理
などに好適である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に、(メタ)アクリル酸塩単位と
    ビニルアルコール単位を構成単位とする共重合体を含有
    するコーティング層を備えた医療用具であって、該コー
    ティング層の純水に対する膨潤率が50〜700%であ
    ることを特徴とする易滑性医療用具。
  2. 【請求項2】 コーティング層の純水に対する膨潤率が
    200〜700%であることを特徴とする請求項1記載
    の易滑性医療用具。
  3. 【請求項3】 コーティング層が、(メタ)アクリル酸
    塩単位から主として構成される相とビニルアルコール単
    位から主として構成される相の少なくとも2相から構成
    されたミクロ相分離構造を有することを特徴とする請求
    項1または2記載の易滑性医療用具。
  4. 【請求項4】 コーティング層に含まれる共重合体が、
    架橋剤としてアルデヒド、エポキシ、イソシアネート、
    アミンまたはシランから選ばれた1つ以上の化合物によ
    り架橋された構造を有することを特徴とする請求項1〜
    3のいずれかに記載の易滑性医療用具。
  5. 【請求項5】 共重合体が、アルカリ触媒の存在下でケ
    ン化反応せしめてなる共重合体である請求項1〜4のい
    ずれかに記載の易滑性医療用具。
  6. 【請求項6】 (メタ)アクリル酸塩単位が(メタ)ア
    クリル酸エステルから誘導された単位であり、ビニルア
    ルコール単位が酢酸ビニルから誘導された単位であるこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の易滑性
    医療用具。
  7. 【請求項7】 基材上に、アンダーコーティング層とコ
    ーティング層をこの順に塗布してなる請求項1〜6のい
    ずれかに記載の易滑性医療用具。
  8. 【請求項8】 血液や体液組織に直接接触させて用いる
    請求項1〜7のいずれかに記載の易滑性医療用具。
  9. 【請求項9】 基材がチューブ状物であることを特徴と
    する請求項1〜8のいずれかに記載の易滑性医療用具。
  10. 【請求項10】 チューブ状物が、カテーテル、ガイド
    ワイヤー、バルーン、またはカニューレである請求項9
    記載の易滑性医療用具。
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