JP2003132598A - 光磁気記録媒体及び再生装置 - Google Patents

光磁気記録媒体及び再生装置

Info

Publication number
JP2003132598A
JP2003132598A JP2002313522A JP2002313522A JP2003132598A JP 2003132598 A JP2003132598 A JP 2003132598A JP 2002313522 A JP2002313522 A JP 2002313522A JP 2002313522 A JP2002313522 A JP 2002313522A JP 2003132598 A JP2003132598 A JP 2003132598A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnetic layer
magnetic
magneto
layer
recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002313522A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4112332B2 (ja
Inventor
Junji Hirokane
順司 広兼
Noboru Iwata
昇 岩田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2002313522A priority Critical patent/JP4112332B2/ja
Publication of JP2003132598A publication Critical patent/JP2003132598A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4112332B2 publication Critical patent/JP4112332B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 繰り返し再生が発生しない磁区拡大再生を実
現し、再生信号振幅を低下させることなく、光の回折限
界以下の周期の信号を再生可能とし、記録密度を大幅に
向上させる。 【解決手段】 第6、第7、第2、第3磁性層21,2
2,2,3は順次積層されている。第6磁性層及び第7
磁性層は、再生温度近傍の温度において第3磁性層に比
べて相対的に磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな垂
直磁化膜からなる。第6磁性層21,第7磁性層22,
第2磁性層,第3磁性層のキュリー温度をそれぞれTc
6,Tc7,Tc2,Tc3としたとき、Tc2<Tc
6<Tc3,Tc2<Tc7<Tc3なる関係が成立す
る。情報の再生は、光ビーム照射により第6磁性層21
及び第7磁性層22をキュリー温度以上に加熱して行
う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光磁気ディスク、
光磁気テープ、光磁気カード等の光磁気記録媒体及びそ
れを再生する再生装置及び再生方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、書き換え可能な光記録媒体と
して、光磁気記録媒体が実用化されている。このような
光磁気記録媒体では、光磁気記録媒体上に集光された半
導体レーザから出射される光ビームのビーム径に対し
て、記録用磁区である記録ビット径及び記録ビット間隔
が小さくなってくると、再生特性が劣化してくるという
欠点がある。
【0003】このような欠点は、目的とする記録ビット
上に集光された光ビームのビーム径内に隣接する記録ビ
ットが入るために、個々の記録ビットを分離して再生す
ることができなくなることが原因である。
【0004】上記の欠点を解消するために、"High
−Density Magneto−Optical R
ecording with Domain WallD
isplacement Detection"(Joi
nt Magneto−Optical Recordi
ng International Symposium
/ International Symposium
onOpticalMemory 1997 Techn
ical Digest,Tu−E−04,p.38,
39)において、第1、第2、第3磁性層が順次積層さ
れている光磁気記録媒体であって、第1磁性層は、再生
温度近傍の温度において第3磁性層に比べて相対的に磁
壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな垂直磁化膜からな
り、第2磁性層のキュリー温度が第1磁性層及び第3磁
性層のキュリー温度より低い光磁気記録媒体を用いて、
光ビーム照射により温度上昇した領域に磁壁を移動さ
せ、小さな記録ビット径及び記録ビット間隔において
も、再生信号強度の低下を招くことなく、個々の記録ビ
ットを分離して再生する技術が記されている。
【0005】図19は、この再生方法を説明する図であ
る。図19において、第1磁性層1と第2磁性層2と第
3磁性層3とは交換結合状態で積層されており、各層の
キュリー温度をそれぞれTc1,Tc2,Tc3とする
と、Tc1とTc2はTc2<Tc1なる関係にある。
図中、矢印は、各磁性層の遷移金属磁気モーメントの向
きを示している。なお、図19において、第3磁性層3
には、記録された磁区がすでに形成されており、上向き
の磁区及び下向きの磁区が交互に繰り返し存在してい
る。
【0006】このような光磁気記録媒体において、第1
磁性層1側から、再生のための光ビーム4が集光照射さ
れると、第2磁性層2にキュリー温度以上に温度上昇し
た領域が発生するが、キュリー温度以下の領域において
は、交換結合により、第3磁性層3の磁区情報が第2磁
性層2を介して第1磁性層1へと転写される。すなわ
ち、光ビームが照射されている領域8の先端部分の上向
きの遷移金属磁気モーメントは、第3磁性層3から第1
磁性層1へとそのまま転写される。
【0007】一方、第2磁性層2におけるキュリー温度
以上に温度上昇した領域(ディスク基板の回転等に伴う
媒体移動により光ビーム4より後方に位置する)では、
第1磁性層1と第3磁性層3との交換結合が第2磁性層
2により遮断されるため、第1磁性層1の磁壁は、容易
に移動可能な状態となる。
【0008】第3磁性層3の情報がそのまま第1磁性層
1に転写されると、本来、磁壁5が形成されることにな
るが、第2磁性層2がキュリー温度以上になった領域に
おいては第1磁性層1の磁壁が容易に移動するため、磁
壁5は最も安定な位置へと移動することになる。ここ
で、磁壁エネルギー密度が温度上昇とともに小さくなる
ことを考慮すると、磁壁5は、光ビーム4の照射により
最も温度が上昇した位置へと移動し、磁壁6を形成する
ことになる。
【0009】このように、この光磁気記録媒体では、第
2磁性層2の性質によって、磁壁を移動させることがで
き、これにより第3磁性層3の記録磁区を第1磁性層1
において拡大することができる。よって、記録磁区を小
さくした場合においても第1磁性層1から得られる再生
信号振幅を大きくすることができ、光の回折限界以下の
周期の信号を再生することが可能となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
再生方法においては、先端部分からの磁壁移動と後端部
分からの磁壁移動が存在するため、一つの磁区を二度再
生するという問題がある。以下、図20及び図21を用
いて、この点について説明する。
【0011】図20は、第3磁性層3に形成された孤立
磁区7が光ビーム4の先端部分に存在し、孤立磁区7の
位置で、第3磁性層3と第1磁性層1とが交換結合し、
上向きモーメントが第1磁性層1に転写された際の様子
を示すものである。なお、この図における第2磁性層2
中の黒塗り部分は第2磁性層2がキュリー温度以上に加
熱される領域Xである。
【0012】この図20に示す状態では、上記したよう
に磁壁5が磁壁6の位置まで移動して磁区の拡大が実現
され、光ビーム4が照射されている領域8に対して上向
きモーメントを有する再生磁区9が形成されるため、大
きな再生信号振幅が得られる。
【0013】この図20の状態から媒体(光磁気記録媒
体)が光ビーム4に対して相対的に移動して、孤立磁区
7が領域Xを通過している際には、第1磁性層1には第
3磁性層3の下向きモーメントが転写され、領域9のモ
ーメントも下向きとなる(図示せず)。
【0014】更に、媒体が移動して、図21に示すよう
な状態、すなわち、孤立磁区7が第2磁性層2が領域X
の後端部分に存在する状態となると、第3磁性層3の孤
立磁区7の上向きモーメントが第1磁性層1へと転写さ
れ、磁壁5'は、最も安定な磁壁6'の位置まで移動する
ことになる。したがって、光ビーム4が照射されている
領域8に対して、上向きモーメントを有する再生磁区1
0が存在することになる。
【0015】以上のように、孤立磁区7は、光ビーム照
射により第2磁性層2がキュリー温度以上に加熱される
領域Xの前端部分の位置に存在する時(図20の状態)
に一度再生され、領域Xの後端部分の位置に存在する時
(図21の状態)に再度再生されることになる。この現
象については、"High−Density Magne
to−Optical Recording with
Domain WallDisplacement De
tection"(Joint Magneto−Opt
ical Recording Internation
al Symposium / Internation
al Symposium on Optical Mem
ory 1997 Technical Digest,
Tu−E−04,p.38,39)に記載されているよ
うに、第3磁性層3と第1磁性層1との交換結合が安定
している比較的長い記録磁区で顕著に発生するものであ
る。
【0016】上記のように、従来の光磁気記録媒体では
比較的長い記録磁区の再生を安定に行えず、より高密度
なマークエッジ記録方式での記録再生を行う際に、大き
な問題となる。
【0017】本発明は、上記従来の問題点を解決するた
めになされたものであり、その目的は、再生信号振幅を
低下させることなく光の回折限界以下の周期の信号を再
生するとともに、長い記録磁区においても、繰り返し再
生の発生しない光磁気記録媒体及び再生装置並びに再生
方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の光磁気記録媒体
は、少なくとも、第6,第7,第2,第3磁性層が順次
積層されており、第6磁性層及び第7磁性層は、所定温
度近傍の温度において第3磁性層に比べて相対的に磁壁
抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな垂直磁化膜からな
り、第6磁性層と第7磁性層は、互いに磁気的極性が異
なっており、且つ、第6磁性層,第7磁性層,第2磁性
層,第3磁性層のキュリー温度をそれぞれTc6,Tc
7,Tc2,Tc3としたときに、Tc2<Tc6<T
c3Tc2<Tc7<Tc3なる条件を満足することを
特徴とする。
【0019】本発明の光磁気記録媒体は、前記光磁気記
録媒体において、Tc6とTc7が略等しいことを特徴
とする。
【0020】本発明の再生装置は、再生時に、前記光磁
気記録媒体に光ビームを照射する照射手段と、光ビーム
の照射光強度を、前記光磁気記録媒体の第6磁性層及び
第7磁性層をキュリー温度以上に加熱できる強度に制御
する制御手段と、を有してなることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光磁気記録媒体に
ついて詳細に説明するが、まず、本発明の光磁気記録媒
体の原理について説明する。
【0022】図1は、本発明の参照例である光磁気記録
媒体における再生時の状態を示す断面模式図である。上
記光磁気記録媒体は、第1磁性層(再生層)1、第2磁
性層2、第3磁性層(記録層)3が順次積層されてお
り、第1磁性層1は、再生温度近傍の温度において該第
3磁性層3に比べて相対的に磁壁抗磁力が小さく磁壁移
動度が大きな垂直磁化膜からなっている。また、第1磁
性層1及び第2磁性層2及び第3磁性層3のキュリー温
度をそれぞれTc1,Tc2,Tc3としたとき、Tc
2<Tc1<Tc3なる条件を満足するよう各磁性層の
磁気特性が設定されている。
【0023】このような光磁気記録媒体では、第3磁性
層3に上向き及び下向きの磁気モーメントとして情報が
記録される。そして、再生動作は以下のように行われ
る。
【0024】室温において第1磁性層1,第2磁性層
2,第3磁性層3は交換結合しており、第3磁性層3に
記録された情報が第2磁性層2を介して第1磁性層1に
転写されている。
【0025】再生時には、第1磁性層1側から再生装置
の光ビーム照射手段が光ビーム4を照射して、第2磁性
層2にキュリー温度以上に加熱された領域を形成する。
このとき、上記加熱領域においては第2磁性層2の磁化
が消失しているため、上記交換結合が遮断され、第1磁
性層1の上記領域に位置する部分の磁壁は容易に移動可
能な状態となる。このため、第2磁性層2がキュリー温
度以上の領域においては、磁壁5が後方へと移動し、大
きな磁区が形成されることになる。
【0026】従来例では、ここにおいて、第1磁性層1
に照射される光ビーム4の後端からも磁壁の移動が生じ
るため、先に示したような同一記録磁区の繰り返し再生
を行ってしまう。
【0027】そこで、上記参照例では、Tc2<Tc1
<Tc3なる条件を満足すべく第1〜第3磁性層1〜3
を設定している。そして、情報の再生時には、再生装置
における光ビーム照射手段が光ビームを光磁気記録媒体
に照射して、光磁気記録媒体を所定温度(再生温度)以
上に加熱する。より詳しくは、第1磁性層1に、そのキ
ュリー温度以上となる領域を形成できるだけの強度に制
御された光ビームを光磁気記録媒体に照射する。なお、
光ビーム強度の制御は再生装置の制御手段が制御する。
【0028】これにより、第1磁性層1内に温度上昇に
より磁化が消失した領域11を形成することができ、こ
の領域11によって、磁壁5の光ビーム4の後端からの
移動を抑制することができる。
【0029】図2,図3は、従来技術の説明に用いた図
20,21と同様に、孤立磁区7が媒体移動に伴い移動
した時の様子を説明する断面模式図である。図2に示す
ように、孤立磁区7が先端部分に位置する場合、図20
と同様に、磁壁5は、キュリー温度領域11のエッジ1
2まで移動し、磁区の拡大再生が実現する。一方、図3
に示すように、孤立磁区7が後端部分に位置する場合、
磁壁5'は、キュリー温度領域のエッジ12'まで移動す
ることになる。ここで、この後端部分において拡大され
た磁区は、光ビーム4の照射領域8の範囲外に存在する
ため、光ビーム4により再生されることはなく、図20
及び図21において説明したような繰り返し再生が起こ
ることなく、先端領域のみからの磁区拡大再生を実現す
ることが可能となる。
【0030】したがって、長い記録磁区も正確に再生す
ることが可能となり、高密度なマークエッジ記録にも対
応することができる。
【0031】〔第1の実施の形態〕第1の実施の形態に
ついて、図面に基づいて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施の形態では、光磁気記録媒体として光磁気
ディスクを適用した場合について説明する。なお、第1
の実施の形態は、特許請求の範囲に記載の発明に係るも
のではない。
【0032】第1の実施の形態の光磁気記録媒体は、図
4に示すように、光磁気ディスク基板13上に透明誘電
体保護層14、第1磁性層1、第2磁性層2、第3磁性
層3、保護層15が順次形成された構成を有している。
【0033】このような光磁気ディスクでは、その記録
方式としてキュリー温度記録方式が用いられており、半
導体レーザから出射される光ビーム4が基板13及び透
明誘電体保護層14を通して、第1磁性層1へ絞りこま
れ、第3磁性層3をキュリー温度以上に温度上昇させる
と共に外部磁界を加えることにより、第3磁性層3の磁
化方向を制御することにより記録が行われる。また、再
生は、同一光ビーム4を記録時よりも弱いパワーに設定
し、極カー効果として知られる光磁気効果によって、情
報の再生が行われるようになっている。上記極カー効果
とは、光入射表面に垂直な磁化の向きにより、反射光の
偏光面の回転の向きが逆方向になる現象である。
【0034】基板13は、例えばポリカーボネート等の
透明な基材からなり、ディスク状に形成され、膜形成表
面に光ビーム4を導く案内溝16等を有している。第1
の実施の形態において、該案内溝16はランド17部分
のみまたは案内溝16部分のみに記録を行なうための案
内溝16であっても良く、また、ランド17部分及び案
内溝16部分の両方に記録を行なうための案内溝16で
あっても良いが、該案内溝16の深さが第1磁性層1の
膜厚の2倍以上であることが望ましい。
【0035】図5は、本光磁気記録媒体を案内溝16を
有する基板13上に形成した際の断面図を示ものである
が、案内溝16の深さは、100nmの矩形に形成して
あり、第1磁性層1の膜厚40nmの2倍以上の深さを
有している。このため、ランド17上に積層された第1
磁性層1は、案内溝16とランド17の段差部分18で
ほぼ分離されている。なお、実際には、スパッタリング
により第1磁性膜1が形成されるため、段差部分18に
も磁性膜が形成され、第1磁性層1が繋がってしまう
が、その膜厚が極めて薄くなるため、段差部分18にお
ける磁気的結合は無視できる。第1の実施の形態におい
ては、各情報トラック間で互いに磁気的に分離されてい
るとは、このような状態にあることを意味している。こ
のランド17上に溝幅いっぱいに反転磁区を形成する
と、図6に示すように、段差部分18における磁区の境
界部には、磁壁が形成されず、ランド17上の磁区の境
界部には閉じてない磁壁23が形成される。このような
閉じてない磁壁23は、トラック方向に移動させても、
段差部分18において磁壁の生成・消滅を伴わないた
め、容易に移動させることができる。
【0036】透明誘電体保護層14は、AlN,Si
N,AlSiN,Ta23等の透明誘電体を用いること
が望ましく、その膜厚は、入射する光ビーム4に対し
て、良好な干渉効果が実現し、媒体の極カー回転角が増
大すべく設定される必要があり、光ビーム4の波長を
λ、透明誘電体保護層14の屈折率をnとした場合、透
明誘電体保護層14の膜厚は(λ/(4n))程度に設
定される。例えば、光ビーム4の波長を680nmとし
た場合、透明誘電体保護層14の膜厚を40nm〜10
0nm程度に設定すれば良い。
【0037】第1磁性層1は、再生温度近傍の温度にお
いて第3磁性層3に比べて相対的に磁壁抗磁力が小さく
磁壁移動度が大きな垂直磁化膜からなり、該第3磁性層
3のキュリー温度より低いキュリー温度を有しており、
再生時、光ビーム4が照射されることにより、第1磁性
層1の温度上昇部分において、キュリー温度以上に温度
上昇した領域11が存在すべく、その組成が調整されて
いる。
【0038】第1磁性層1のキュリー温度Tc1は、1
40℃以上240℃以下であることが望ましい。Tc1
<140℃においては、第1磁性層1のキュリー温度低
下にともなうカー回転角の低下が顕著となり、再生信号
強度が低下し、良好な再生特性が得られなくなる。Tc
1>240℃においては、再生時に光ビーム4の照射に
より、第1磁性層1の一部を少なくとも240℃より高
い温度まで上昇させる必要があり、温度変動等によっ
て、第3磁性層3がキュリー温度以上に加熱されてしま
い記録された情報が消去される虞れがあるため、極めて
再生パワーマージンが狭くなってしまう。
【0039】また、第1磁性層1の膜厚は、20〜80
nmの範囲に設定されていることが望ましい。第1磁性
層1の膜厚が20nmより薄くなると、透過する光量が
大きくなることにより、良好なマスク効果が得られなく
なるとともに、再生信号強度が低下し、再生特性の劣化
を招くことになる。また、第1磁性層1の膜厚が80n
mより厚くなると、膜厚増加による記録感度劣化が顕著
となってくる。
【0040】上記磁気特性を満足する第1磁性層1とし
ては、GdFe、及び、GdFeD、または、GdFe
CoD(Dは、Y,Ti,V,Cr,Pd,Cu,S
i,Alの中から選ばれる元素、または、それら2種類
以上の元素からなるもの)、及び、GdHRFe、また
は、GdHRFeCo、または、GdHRFeCoD
(HRは重希土類金属であり、Tb,Dy,Ho,Er
の中から選ばれる元素、または、それら2種類以上の元
素からなる。一方、Dは、Y,Ti,V,Cr,Pd,
Cu,Si,Alの中から選ばれる元素、または、それ
ら2種類以上の元素からなるもの)、及び、GdLRF
e、または、GdLRFeCo、または、GdLRFe
CoD(LRは軽希土類金属であり、Ce,Pr,N
d,Smの中から選ばれる元素、または、それら2種類
以上の元素からなる。一方、Dは、Y,Ti,V,C
r,Pd,Cu,Si,Alの中から選ばれる元素、ま
たは、それら2種類以上の元素からなる)等の材料から
なる垂直磁化膜を採用することが可能である。
【0041】第2磁性層2は、希土類遷移金属合金から
なる磁性膜からなり、そのキュリー温度が、第1磁性層
1及び第3磁性層3のキュリー温度よりも低く設定され
ている。第2磁性層2のキュリー温度Tc2は、40℃
以上140℃以下であることが望ましい。Tc2<40
℃においては、第2磁性層2のキュリー温度が低くなり
過ぎることにより、温度上昇していない部分における第
1磁性層1と第3磁性層3との交換結合状態を安定に維
持することが困難となり、再生信号品質が劣化してしま
う。Tc2>140℃においては、高い温度領域まで、
第1磁性層1と第3磁性層3とが交換結合してしまうた
め、磁区拡大する領域が狭くなり、再生信号強度が低下
し、信号品質が劣化してしまう。また、第2磁性層2の
膜厚は2nm〜80nmの範囲に設定されていることが
望ましい。第2磁性層2の膜厚が2nmより薄くなる
と、第2磁性層2がキュリー温度以上に温度上昇した領
域において、第1磁性層1と第3磁性層3との交換結合
を遮断することができなくなり、第1磁性層1における
磁壁移動が阻害され、安定した磁区拡大再生を実現する
ことが困難となる。また、第2磁性層2の膜厚が80n
mより厚くなると、膜厚増加による記録感度劣化が顕著
となってくる。
【0042】上記磁気特性を満足する第2磁性層2とし
ては、TbFe、TbFeCo、DyFe、DyFeC
o、TbDyFe、TbDyFeCo、TbFeD、T
bFeCoD、DyFeD、DyFeCoD、TbDy
FeD、TbDyFeCoD(Dは、Y,Ti,V,C
r,Pd,Cu,Si,Alの中から選ばれる元素、ま
たは、それら2種類以上の元素からなる)等の材料から
なる垂直磁化膜を採用することが可能である。
【0043】第3磁性層3は、希土類遷移金属合金から
なる垂直磁化膜からなり、そのキュリー温度が、第1磁
性層1及び第2磁性層2のキュリー温度よりも高く設定
されている。第3磁性層3のキュリー温度Tc3は、1
80℃以上300℃以下であることが望ましい。Tc3
<180℃においては、第3磁性層3のキュリー温度が
低くなり過ぎることにより、再生時、第1磁性層1をキ
ュリー温度以上に加熱する際、わずかな温度上昇によ
り、第3磁性層3のキュリー温度以上に媒体が加熱さ
れ、記録された情報が消去されることになり、極めて再
生パワーマージンが狭くなってしまう。また、Tc3>
300℃においては、記録を行なうために、第3磁性層
3を300℃以上に加熱する必要があり、記録感度劣化
が顕著となってくるとともに、同時に、第1磁性層1及
び第2磁性層2及び第3磁性層が300℃以上に加熱さ
れることにより、各磁性層の磁気特性が劣化し、記録消
去にともない再生信号品質が劣化してしまう。
【0044】また、その膜厚は5nm〜80nmの範囲
に設定することが望ましい。第3磁性層3の膜厚が5n
mより薄くなると、安定した記録を行なうことが困難と
なり、記録ノイズが上昇することにより、再生信号品質
が劣化する。また、第3磁性層3の膜厚が80nmより
厚くなると、膜厚増加による記録感度劣化が顕著となっ
てくる。
【0045】上記磁気特性を満足する第3磁性層3とし
ては、TbFe,TbFeCo,DyFe,DyFeC
o,TbDyFe,TbDyFeCo等の材料からなる
垂直磁化膜を採用することが可能である。
【0046】保護層15は、AlN,SiN,AlSi
N,Ta23等の透明誘電体、または、Al,Ti,T
a,Ni等の金属からなる非磁性金属合金からなり、第
1磁性層1及び第2磁性層2及び第3磁性層3に用いる
希土類遷移金属合金の酸化を防止する目的で形成される
ものであり、その膜厚が5nm〜60nmの範囲に設定
されている。
【0047】また、この構成に、更に、保護層15の上
部にAl,AlTa,AlTi,AlCr,AlNi,
AlCo,Cu等からなる熱拡散金属層を付加すること
により、媒体の熱的特性を改善することが可能となる。
更に、場合によっては、保護層15上、または、上記熱
拡散金属層上に紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂または
潤滑層が形成されることもある。
【0048】また、低磁界記録を目的として、第3磁性
層3に接して、第3磁性層3の保磁力より小さな保磁力
を有し、第3磁性層3のキュリー温度よりも高いキュリ
ー温度を有する垂直磁化膜、例えば、GdFeCo、G
dTbFeCo、GdDyFeCo等の垂直磁化膜から
なる記録補助層を積層して形成しても良い。
【0049】以下、上記構成の光磁気ディスクの形成方
法及び記録再生方法の具体例を説明する。
【0050】<実施例1> (1) 光磁気ディスクの形成方法 上記構成の磁気ディスクの形成方法について説明する。
【0051】まず、AlターゲットとGdFeSi合金
ターゲットとTbFeCo合金ターゲットとDyFe合
金ターゲットとをそれぞれ備えたスパッタ装置内に、深
さ100nmの案内溝を有しディスク状に形成されたポ
リカーボネート製の基板13を配置する。そして、スパ
ッタ装置内を1×10-6Torrまで真空排気した後、
アルゴンと窒素の混合ガスを導入し、Alターゲットに
電力を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条件で、
該基板13上にAlNからなる透明誘電体保護層14を
膜厚80nmで形成する。
【0052】次に、再度、スパッタ装置内を1×10-6
Torrまで真空排気した後、アルゴンガスを導入し
て、GdFeSi合金ターゲットに電力を供給して、ガ
ス圧4×10-3Torrの条件で、上記透明誘電体保護
層14上に、(Gd0.27Fe0. 730.85Si0.15からな
る第1磁性層1を膜厚40nmで形成する。その第1磁
性層1は垂直磁化膜であり、補償温度が140℃,キュ
リー温度が180℃であった。
【0053】次に、引き続き、DyFe合金ターゲット
に電力を供給して、ガス圧4×10 -3Torrの条件
で、上記第1磁性層1上に、Dy0.25Fe0.75からなる
第2磁性層2を膜厚10nmで形成する。その第2磁性
層2は、垂直磁化膜であり、その補償温度が40℃であ
り、そのキュリー温度が80℃であった。
【0054】次に、引き続き、TbFeCo合金ターゲ
ットに電力を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条
件で、上記第2磁性層2上に、Tb0.27(Fe0.88Co
0.120.73からなる第3磁性層3を膜厚30nmで形成
する。その第3磁性層3は、垂直磁化膜であり、補償温
度が160℃であり、キュリー温度が260℃であっ
た。
【0055】次に、アルゴンと窒素の混合ガスを導入
し、Alターゲットに電力を供給して、ガス圧4×10
-3Torrの条件で、上記第3磁性層3上にAlNから
なる保護層15を膜厚20nmで形成する。
【0056】(2)記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0057】まず、記録再生用レーザを6mWで連続照
射しながら、記録磁界を±15kA/mで変調すること
により第3磁性層3に、記録磁界の向きに対応した上向
き磁化と下向き磁化との繰り返しパターンを形成した。
また、記録磁界の変調周波数を変えることにより、0.
1〜0.5μmの範囲のマーク長の磁区パターンを記録
した。ここで、マーク長とは、マーク長に対応する長さ
の記録磁区をマーク長の2倍の長さのピッチで形成して
いることを意味する。
【0058】次に、記録再生用レーザを1.5mWで連
続照射してCNR(信号対雑音比)のマーク長依存性を
測定した。図7は、その結果を実施例1として示す図で
ある。なお、図7では、比較のため、実施例1の構成に
おいて、第1磁性層1として、キュリー温度280℃の
GdFeCoを用いた場合の光磁気ディスクにおけるC
NRを比較例1として示している。
【0059】実施例1と比較例1とを比べると、マーク
長0.15μm以下の範囲において両者とも40dB以
上のCNRが得られているが、比較例1のCNRは、
0.15μm以上のマーク長においてCNRが急激に減
少していることがわかる。これは、比較例1において、
マーク長が長くなることにより、後端部分からの磁壁移
動による拡大磁区が、先端部分からの磁壁移動による拡
大磁区と同時に再生されることにより、再生ノイズが上
昇したことによるものである。一方、実施例1において
は、第1磁性層1がキュリー温度以上に温度上昇した部
分において、後端部分からの磁壁移動が停止し、光ビー
ムスポット内に後端部分からの磁壁移動による拡大磁区
が侵入してこないため、0.15μm以上のマーク長に
おいてもCNRの減少が全く観測されない。このよう
に、実施例1記載の光磁気記録媒体は、繰り返し再生が
起こることなく、先端領域のみからの磁区拡大再生を実
現することが可能となり、マークエッジ記録に対応可能
な光磁気記録媒体であることが確認された。
【0060】以上の説明においては、第1磁性層1とし
て、補償温度が140℃、キュリー温度が180℃の
(Gd0.27Fe0.730.85Si0.15からなる垂直磁化膜
を、第2磁性層2として、補償温度が40℃、キュリー
温度が80℃のDy0.25Fe0. 75からなる垂直磁化膜
を、第3磁性層3として、補償温度が160℃、キュリ
ー温度が260℃のTb0.27(Fe0.88Co0.120.73
からなる垂直磁化膜を用いた場合の記録再生特性につい
て調査した結果を示しているが、これ以外の磁気特性を
有する磁性層を用いることも可能である。
【0061】以下、各磁性層の磁気特性を変えた場合の
実施例についての記録再生特性を説明する。
【0062】<実施例2>実施例1の光磁気記録媒体に
おいて、第1磁性層1の磁気特性のみを組成調整により
変えて光磁気ディスクを作成し、記録再生特性を調査し
た。表1は、第1磁性層1の組成,補償温度,キュリー
温度を変化させた場合のマーク長0.1μmにおけるC
NRの測定結果を示す表である。なお、この測定に際し
ては、マーク長0.3μmにおいてCNRの低下が発生
しないように、すなわち、後端部分からの磁壁移動によ
る繰り返し再生が起こらないように、各ディスクにおけ
る再生パワーを調整して行なった。
【0063】
【表1】
【0064】ディスクNo.1−1は、第1磁性層1と
してGdFeCoを用いており、そのキュリー温度が2
60℃と極めて高く、再生時に照射する光ビーム4によ
り、第3磁性層3の一部がキュリー温度以上に温度上昇
し、記録情報の一部が消去されるため、良好な再生信号
を得ることができず、極めて低いCNRしか得られなか
った。
【0065】ディスクNo.1−2〜No.1−8は、
GdFeにSiを含有させることにより、第1磁性層1
のキュリー温度を変えた際のCNRを測定した結果であ
る。ディスクNo.1−2に示すように、第1磁性層1
としてGdFeを採用した場合、キュリー温度が240
℃と極めて第3磁性層3のキュリー温度に近接している
ため、再生パワーマージンが狭くなるが、良好なCNR
が得られている。また、30%のSiを含有したディス
クNo.1−8においては、キュリー温度が120℃と
低くなり、第1磁性層1自体のカー回転角が小さくなる
とともに、磁区拡大領域が狭くなるため、急激に再生信
号強度が低下し、CNRは極めて低くなっていることが
わかる。
【0066】以上の結果から、第1磁性層1のキュリー
温度は、140℃以上240℃以下である必要のあるこ
とがわかる。
【0067】次に、ディスクNo.1−9〜No.1−
16は、Si含有率を15%に保ち、GdとFeの比率
を変えて、第1磁性層1の補償温度を変えた際のCNR
を測定した結果である。表中、NEは補償温度が存在し
なかったことを意味している。
【0068】ディスクNo.1−10〜No.1−15
においては、良好なCNRが得られているが、ディスク
No.1−9とディスクNo.1−16のCNRが極め
て低くなっていることがわかる。これは、第1磁性層1
の補償温度が、再生温度近傍の温度から離れることによ
り、第1磁性層1のトータル磁化が大きくなり、第3磁
性層3から発生する漏洩磁束と強く静磁結合することに
より、第2磁性層2がキュリー温度以上に温度上昇した
領域での磁壁移動が阻害され、ノイズレベルが上昇した
ためである。
【0069】ここで、ディスクNo.1−9の第1磁性
層1は、トータル磁化の増大により、室温において面内
磁化状態であり、80℃の温度で垂直磁化状態となり、
そのキュリー温度165℃まで、希土類金属(RE)磁
気モーメントと遷移金属(TM)磁気モーメントの大き
さが釣り合う補償組成に対して常に希土類金属(RE)
磁気モーメントが大きくなるRErich組成の磁性膜
であり、ディスクNo.1−10は、ディスクNo.1
−9に比べてトータル磁化が小さくなることにより、2
5℃以上の温度からそのキュリー温度171℃まで、常
に垂直磁化膜であり、かつ、RErich組成の磁性膜
であった。
【0070】No.1−9とNo.1−10のCNRの
比較により、第1磁性層1としては、その補償温度が、
少なくとも25℃以上の温度において垂直磁化膜であ
り、そのキュリー温度まで常にRErich組成である
ことが望ましいことが分かる。また、No.1−15と
No.1−16のCNRの比較により、第1磁性層1と
しては、その補償温度が−60℃以上であることが望ま
しいことが分かる。
【0071】<実施例3>実施例1の光磁気記録媒体に
おいて、第2磁性層2の磁気特性のみを組成調整により
変えて光磁気ディスクを作成し、記録再生特性を調査し
た。表2は、第2磁性層2の組成,補償温度,キュリー
温度を変化させたときのマーク長0.1μmにおけるC
NRの測定結果を示す表である。なお、測定に際して
は、マーク長0.3μmにおいてCNRの低下が発生し
ないように、すなわち、後端部分からの磁壁移動による
繰り返し再生が起こらないように、各ディスクにおける
再生パワーを調整して行なった。
【0072】
【表2】
【0073】ここで、第2磁性層2の希土類金属と遷移
金属の含有比率を一定にしているため、第2磁性層2の
補償温度は、常に40℃であった。また、補償温度の欄
におけるNEなる表示は、キュリー温度が低くなったこ
とにより、補償温度が存在しないことを意味している。
また、第2磁性層2のキュリー温度調整は、Coまたは
Siを含有させることにより行なった。
【0074】ディスクNo.2−2〜No.2−7にお
いては、良好なCNRが得られており、第1磁性層1に
おける磁区拡大再生が問題無く行われていることがわか
る。ディスクNo.2−1は、第2磁性層2のキュリー
温度が165℃と極めて高く、第1磁性層1のキュリー
温度180℃との差が小さいため、磁区拡大する領域が
ほとんど存在せず、磁区拡大再生の効果が全く得られな
かったことにより、CNRが低くなったものである。こ
の結果より、第2磁性層2のキュリー温度は140℃以
下にすることが望ましいことがわかる。よって、第1磁
性層のキュリー温度(180℃)をTc1として、第2
磁性層2のキュリー温度をTc2とすると、Tc2≦T
c1−40℃であることが望ましい。
【0075】また、ディスクNo.2−8は、キュリー
温度が25℃と極めて低く、環境温度において、第1磁
性層1と第3磁性層3の交換結合が不安定となり、安定
した磁区拡大再生が実現しなかったことにより、CNR
が低くなったものである。このことから、第2磁性層2
のキュリー温度は、40℃以上であることが望ましいこ
とがわかる。
【0076】<実施例4>実施例1の光磁気記録媒体に
おいて、第3磁性層3の磁気特性のみを組成調整により
変えて光磁気ディスクを作成し、記録再生特性を調査し
た。表3は、第3磁性層3の組成,補償温度,キュリー
温度を変化させたときに、マーク長0.1μmにおいて
CNRを測定した結果を示す表である。なお、測定に際
しては、各ディスクにおいて、最適な記録が行われるよ
うに、記録パワーを調整して記録を行い、マーク長0.
3μmにおいてCNRの低下が発生しないように、すな
わち、後端部分からの磁壁移動による繰り返し再生が起
こらないように、各ディスクにおける再生パワーを調整
して行なった。
【0077】
【表3】
【0078】ディスクNo.3−1〜ディスクNo.3
−6は、第3磁性層3の希土類金属と遷移金属との含有
比率を一定に保ち、FeとCoの比率を変えることによ
り、補償温度をほぼ160℃一定として、キュリー温度
を変えたものである。
【0079】ディスクNo.3−1においては、41d
Bと高いCNRが得られているが、1万回の記録消去を
繰り返した後、同一条件で測定した結果、20dBのC
NRしか得られなかった。これは、ディスクNo.3−
1の第3磁性層3のキュリー温度が325℃と高く、記
録消去のために、各磁性層が少なくとも325℃の温度
まで上昇し、各磁性層の磁気特性が劣化したことによる
ものであり、第3磁性層3のキュリー温度が300℃の
ディスクNo.3−2においては、1万回の記録消去後
も同じCNRが得られた。このことから、第3磁性層3
のキュリー温度は、300℃以下であることが望ましい
ことがわかる。
【0080】また、ディスクNo.3−6においてCN
Rが低くなっているが、これは、第3磁性層3のキュリ
ー温度が180℃と低くなっていることによるものであ
る。第1の実施の形態の光磁気記録媒体においては、再
生時、少なくとも第1磁性層1の一部をキュリー温度以
上に温度上昇させる必要があるが、ここで第1磁性層1
のキュリー温度が180℃であるため、再生時、第3磁
性層3のキュリー温度以上に温度上昇し、記録された情
報の一部が失われることにより、CNRが劣化すること
になる。このことから、第1磁性層1のキュリー温度を
Tc1、第3磁性層のキュリー温度をTc3とした場
合、少なくとも、Tc1<Tc3であることが望ましい
ことがわかる。
【0081】次に、ディスクNo.3−7〜ディスクN
o.3−12は、第3磁性層3のFeとCoの含有比率
を一定に保ち、希土類金属と遷移金属との含有比率を変
えることにより、補償温度を変えたものである。ディス
クNo.3−7における補償温度NEは、補償温度が存
在せず、キュリー温度まで常にRErich組成であっ
たことを意味している。
【0082】ディスクNo.3−7とディスクNo.3
−12においてCNRが極めて低くなっているが、第3
磁性層3の補償温度が、再生時の温度範囲から離れるこ
とにより、第3磁性層3のトータル磁化が大きくなり、
それに伴って、第3磁性層3から発生する漏洩磁束が大
きくなることにより、第1磁性層1における磁壁移動が
阻害されるため、再生信号のノイズが上昇し、CNRが
劣化してしまうものである。
【0083】以上のことから、第3磁性層3の補償温度
をTcomp3として、第3磁性層3のキュリー温度を
Tc3とした場合、−40℃≦Tcomp3<Tc3で
あることが望ましいことがわかる。
【0084】〔第2の実施の形態〕本発明の他の参照例
である第2の実施の形態の光磁気記録媒体について、図
8及び図9を用いて詳細に説明する。なお、第2の実施
の形態は、特許請求の範囲に記載の発明に係るものでは
ない。第1の実施の形態においては、第3磁性層3の磁
気特性を調整し、第3磁性層3から発生する漏洩磁束を
低減させ、第1磁性層1におけるスムーズな磁壁移動を
実現するものであったが、本実施の形態においては、図
8に示すように、第3磁性層3の代わりに、磁気的極性
の異なる第4磁性層19と第5磁性層20とを積層し
て、第4磁性層19と第5磁性層20とで記録層を形成
している。この構成により、第4磁性層19及び第5磁
性層20から発生する漏洩磁束を低く抑え、第1磁性層
1におけるスムーズな磁壁移動を実現する。
【0085】図9は、図8の第4磁性層19と第5磁性
層20のみの拡大断面図であり、図9を用いて、漏洩磁
束が抑制される様子を説明する。図9において、第4磁
性層19は、室温からそのキュリー温度まで常にREr
ich組成の垂直磁化膜からなり、TMモーメントの向
きとトータル磁化の向きとが反平行となっている。一
方、第5磁性層20は、室温からそのキュリー温度まで
常にTMrich組成の垂直磁化膜からなり、TMモー
メントの向きとトータル磁化の向きとが平行となってい
る。ここで、第4磁性層19と第5磁性層20とが積層
されることにより、交換結合力が働き、両層のTMモー
メントの向きが平行に揃えられることになる。この場
合、第4磁性層19のトータル磁化の向きと第5磁性層
20のトータル磁化の向きが反平行となる。第4磁性層
19及び第5磁性層20から発生する漏洩磁束は、この
トータル磁化の総和であり、第4磁性層19のトータル
磁化と第5磁性層20のトータル磁化とが打ち消し合う
ため、殆ど漏洩磁束の存在しない状態を実現することが
可能となり、第1磁性層1におけるスムーズな磁壁移動
を実現することが可能となる。
【0086】次に、第2の実施の形態を光磁気記録媒体
として光磁気ディスクを適用した場合について図面を用
いて説明する。
【0087】第2の実施の形態の光磁気記録媒体は、図
10に示すように、光磁気ディスク基板13上に透明誘
電体保護層14,第1磁性層1,第2磁性層2,第4磁
性層19,第5磁性層20,保護層15が順次形成され
た構成を有している。
【0088】なお、第2の実施の形態における基板1
3、透明誘電体保護層14、第1磁性層1、第2磁性層
2、保護層15は、第1の実施の形態に記載の材料を同
様にして用いることが可能である。
【0089】第4磁性層19及び第5磁性層20は、希
土類遷移金属合金からなる垂直磁化膜であり、両層のキ
ュリー温度は、第1磁性層1及び第2磁性層2のキュリ
ー温度よりも高く設定されており、漏洩磁束を抑制する
ため、第4磁性層19と第5磁性層20の磁気的極性は
異なるように設定されている。すなわち、第4磁性層1
9としてRErich組成の希土類遷移金属合金垂直磁
化膜を用いた場合、第5磁性層20として、TMric
h組成の希土類遷移金属合金垂直磁化膜が用いられ、第
4磁性層19としてTMrich組成の希土類遷移金属
合金垂直磁化膜を用いた場合、第5磁性層20として、
RErich組成の希土類遷移金属合金垂直磁化膜が用
いられる必要がある。
【0090】さらに、効果的に漏洩磁束を抑制するため
には、第4磁性層19と第5磁性層20のキュリー温度
をほぼ等しく設定することが望ましい。ここで、第4磁
性層19及び第5磁性層20のキュリー温度Tc4及び
Tc5は、180℃以上300℃以下であることが望ま
しい。Tc4,Tc5が180℃未満であると、第4磁
性層19及び第5磁性層20のキュリー温度が低くなり
過ぎることにより、再生時、第1磁性層1をキュリー温
度以上に加熱する際、わずかな温度上昇により、第4磁
性層19及び第5磁性層20のキュリー温度以上に媒体
が加熱され、記録された情報が消去されることになり、
極めて再生パワーマージンが狭くなってしまう。Tc
4,Tc5が300℃より高いと、記録を行うために、
第4磁性層19及び第5磁性層20を300℃以上に加
熱する必要があり、記録感度劣化が顕著となってくると
ともに、同時に、第1磁性層1及び第2磁性層2及び第
4磁性層19及び第5磁性層20が300℃以上に加熱
されることにより、各磁性層の磁気特性が劣化し、記録
消去にともない再生信号品質が劣化してしまう。
【0091】また、第4磁性層19と第5磁性層20の
トータル膜厚は10nm〜80nmの範囲に設定するこ
とが望ましい。トータル膜厚が10nmより薄くなる
と、安定した記録を行なうことが困難となり、記録ノイ
ズが上昇し、再生信号品質が劣化する。また、トータル
膜厚が80nmより厚くなると、膜厚増加による記録感
度劣化が顕著となってくる。
【0092】上記磁気特性を満足する第4磁性層19及
び第5磁性層20としては、TbFe,TbFeCo,
DyFe,DyFeCo,TbDyFe,TbDyFe
Co等の材料からなる垂直磁化膜を採用することが可能
である。
【0093】なお、本実施の形態においては、第4磁性
層19と第5磁性層20の磁気的極性が異なっていれば
よく、第4磁性層19と第5磁性層20の形成順序は図
10と逆であってもかまわない。
【0094】また、この構成に、更に、Al,AlT
a,AlTi,AlCr,AlNi,AlCo,Cu等
からなる熱拡散金属層を保護層15上に付加することに
より、媒体の熱的特性を改善することが可能となる。更
に、場合によっては、保護層15上、または、上記熱拡
散金属層上に紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂または潤
滑層を形成してもよい。
【0095】また、低磁界記録を目的として、第4磁性
層19,第5磁性層20のキュリー温度の高い方の磁性
層に接して、それよりも小さな保磁力を有し且つ高いキ
ュリー温度を有する垂直磁化膜、例えば、GdFeC
o、GdTbFeCo、GdDyFeCo等の垂直磁化
膜からなる記録補助層を積層しても良い。
【0096】次にこの構成の光磁気ディスクの形成方法
及び記録再生方法の具体例を説明する。
【0097】<実施例5> (1) 光磁気ディスクの形成方法 まず、実施例1と同様にして、基板13上に膜厚80n
mのAlNからなる透明誘電体保護層14、膜厚40n
mの(Gd0.27Fe0.730.85Si0.15からなる第1磁
性層1、及び、膜厚10nmのDy0.25Fe0.75からな
る第2磁性層2を形成した。
【0098】次に、第1のTbFeCo合金ターゲット
に電力を供給して、ガス圧4×10 -3Torrの条件
で、上記第2磁性層2上に、Tb0.20(Fe0.90Co
0.100. 80からなる第4磁性層19を膜厚15nmで形
成する。その第4磁性層19は、室温における保磁力が
640kA/mであり、キュリー温度が270℃であ
り、室温から該キュリー温度(270℃)まで、常にT
Mrich組成の垂直磁化膜であった。
【0099】次に、第2のTbFeCo合金ターゲット
に電力を供給して、ガス圧4×10 -3Torrの条件
で、上記第4磁性層19上に、Tb0.30(Fe0.87Co
0.13 0.70からなる第5磁性層20を膜厚15nmで形
成する。その第5磁性層20は、室温における保磁力が
400kA/mであり、キュリー温度が255℃であ
り、室温から該キュリー温度(255℃)まで、常にR
Erich組成の垂直磁化膜であった。
【0100】次に、上記第5磁性層20上に、実施例1
と同様にして、膜厚20nmのAlNからなる保護層1
5を形成する。
【0101】(2) 記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0102】まず、記録再生用レーザを6.5mWで連
続照射しながら、記録磁界を±15kA/mで変調する
ことにより第4磁性層19及び第5磁性層20に、記録
磁界の向きに対応した上向き磁化と下向き磁化との繰り
返しパターンを形成した。記録磁界の変調周波数を変え
ることにより、0.1〜0.5μmの範囲のマーク長の
磁区パターンを記録した。ここで、マーク長とは、マー
ク長に対応する長さの記録磁区をマーク長の2倍の長さ
のピッチで形成していることを意味する。
【0103】次に、記録再生用レーザを1.8mWで連
続照射して測定した。図11はそのときのCNR(信号
対雑音比)のマーク長依存性を示す図である。なお、こ
の図においては、上記工程で作成した光磁気ディスクの
結果を実施例5として示している。また、比較のため、
第5磁性層20を設けず、第4磁性層19の膜厚を30
nmとした場合の光磁気ディスクにおけるCNRを比較
例5(実施の形態1に示した発明に係る光磁気ディス
ク)として同図に示している。
【0104】実施例5においては、極性の異なる第4磁
性層19と第5磁性層20とが積層されることにより、
漏洩磁束の発生が抑制され、実施例1と同様に0.1〜
0.5μmの範囲のマーク長において、40dB以上の
CNRが得られているのに対して、比較例5において
は、実施例5よりも低いCNRしか得られないことがわ
かる。これは、比較例5の光磁気記録媒体において、第
5磁性層20を設けることなく、TMrich組成の垂
直磁化膜を第4磁性層19として採用したことにより、
第4磁性層19からの漏洩磁束が大きくなり、第1磁性
層1におけるスムーズな磁壁移動が妨げられたことによ
るものである。
【0105】この現象は、マーク長が短いときに顕著と
なる。これは、第4磁性層19に記録された磁区周期が
短いと、同時に、そこから発生する漏洩磁束の反転周期
が短くなり、第1磁性層1における磁壁移動が受ける影
響が大きくなるからである。
【0106】〔第3の実施の形態〕第3の実施の形態の
光磁気記録媒体について、図12,図13を用いて詳細
に説明する。第1の実施の形態においては、第3磁性層
3の磁気特性を調整し、第3磁性層3から発生する漏洩
磁束を低減させ、第1磁性層1におけるスムーズな磁壁
移動を実現するものであったが、本実施の形態において
は、図12に示すように、第1磁性層1の代わりに、磁
気的極性の異なる第6磁性層21と第7磁性層22とを
積層して、第6磁性層21と第7磁性層22とで再生層
を形成している。この構成で、第6磁性層21及び第7
磁性層22における各層のトータル磁化を反平行とする
ことにより、第3磁性層3から発生する漏洩磁束、又
は、光ピックアップ等から発生する漏洩磁束が、第6磁
性層21及び第7磁性層22における磁壁移動に与える
影響を低く抑え、第6磁性層21及び第7磁性層22に
おけるスムーズな磁壁移動を実現する。
【0107】図13は、図12の第6磁性層21と第7
磁性層22のみの拡大断面図であり、図13を用いて、
漏洩磁束による影響が抑制される様子を説明する。図1
3において、第6磁性層21は、室温からそのキュリー
温度まで常にRErich組成の垂直磁化膜からなり、
TMモーメントの向きとトータル磁化の向きとが反平行
となっている。一方、第7磁性層22は、室温からその
キュリー温度まで常にTMrich組成の垂直磁化膜か
らなり、TMモーメントの向きとトータル磁化の向きと
が平行となっている。ここで、第6磁性層21と第7磁
性層22とが積層されると、交換結合力が働き、両層の
TMモーメントの向きが平行に揃えられる。この場合、
第6磁性層21のトータル磁化の向きと第7磁性層22
のトータル磁化の向きが反平行となる。第3磁性層3か
ら発生する漏洩磁束、又は、光ピックアップ等から発生
する漏洩磁束は、これらのトータル磁化と静磁結合し
て、第6磁性層21及び第7磁性層22における磁壁移
動に与える影響を与えることになるが、第6磁性層21
と第7磁性層22のトータル磁化が反平行であるため、
漏洩磁束との静磁結合による影響は打ち消し合うことに
なり、第6磁性層21及び第7磁性層22におけるスム
ーズな磁壁移動を実現されることになる。
【0108】なお、本実施の形態の光磁気記録媒体の再
生は、再生装置の光ビーム照射手段が、第6磁性層21
及び第7磁性層22をキュリー温度以上に加熱できるだ
けの強度の光ビームを照射する。光ビーム強度の制御は
再生装置の制御手段により行う。
【0109】次に、本発明の第3の実施の形態の光磁気
記録媒体を光磁気ディスクに適用した場合について図面
を用いて説明する。
【0110】本発明の光磁気記録媒体は、図14に示す
ように、光磁気ディスク基板13上に透明誘電体保護層
14、第6磁性層21、第7磁性層22、第2磁性層
2、第3磁性層3、保護層15が順次形成された構成を
有している。
【0111】第3の実施の形態における基板13、透明
誘電体保護層14、第2磁性層2、第3磁性層3、保護
層15は、第1の実施の形態に記載の材料を同様にして
用いることが可能である。
【0112】第6磁性層21及び第7磁性層22は、再
生温度近傍の温度において該第3磁性層3に比べて相対
的に磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな希土類遷移
金属合金からなる垂直磁化膜である。第6磁性層21及
び第7磁性層22及び第2磁性層2及び第3磁性層3
は、そのキュリー温度をそれぞれTc6,Tc7,Tc
2,Tc3とした時、Tc2<Tc6≒Tc7<Tc3
なる条件を満足するよう設定されており、かつ、第6磁
性層21と第7磁性層22のトータル磁化が反平行とな
るように、第6磁性層21と第7磁性層22の磁気的極
性は異なるように設定されている。すなわち、第6磁性
層21をRErich組成の希土類遷移金属合金垂直磁
化膜とした場合には、第7磁性層22をTMrich組
成の希土類遷移金属合金垂直磁化膜とし、第6磁性層2
1をTMrich組成の希土類遷移金属合金垂直磁化膜
とした場合、第7磁性層22はRErich組成の希土
類遷移金属合金垂直磁化膜と設定する。
【0113】効果的に漏洩磁束による磁壁移動への影響
を抑制するためには、第6磁性層21と第7磁性層22
のキュリー温度Tc6とTc7をほぼ等しく設定するこ
とが望ましい。ここで、第6磁性層21及び第7磁性層
22のキュリー温度Tc6及びTc7は、140℃以上
240℃以下であることが望ましい。Tc6,Tc7<
140℃においては、第6磁性層21及び第7磁性層2
2のキュリー温度低下にともなうカー回転角の低下が顕
著となり、再生信号強度が低下し、良好な再生特性が得
られなくなる。Tc6,Tc7>240℃においては、
再生時、光ビーム4を照射することにより、第6磁性層
21及び第7磁性層22の一部を少なくとも240℃よ
り高い温度まで上昇させる必要があり、わずかな温度上
昇により、第3磁性層3のキュリー温度以上に媒体が加
熱されることにより、記録された情報が消去されること
になり、極めて再生パワーマージンが狭くなってしま
う。また、第6磁性層21と第7磁性層22のトータル
膜厚は、20〜80nmの範囲に設定されていることが
望ましい。該トータル膜厚が20nmより薄くなると、
透過する光量が大きくなることにより、良好なマスク効
果が得られなくなるとともに、再生信号強度が低下し、
再生特性の劣化を招くことになる。また、該トータル膜
厚が80nmより厚くなると、膜厚増加による記録感度
劣化が顕著となってくる。
【0114】上記磁気特性を満足する第6磁性層21及
び第7磁性層22としては、GdFe、及び、GdFe
D、または、GdFeCoD(Dは、Y,Ti,V,C
r,Pd,Cu,Si,Alの中から選ばれる元素、ま
たは、それら2種類以上の元素からなる)、及び、Gd
HRFe、または、GdHRFeCo、または、GdH
RFeCoD(HRは重希土類金属であり、Tb,D
y,Ho,Erの中から選ばれる元素、または、それら
2種類以上の元素からなる。一方、Dは、Y,Ti,
V,Cr,Pd,Cu,Al,Si,Alの中から選ば
れる元素、または、それら2種類以上の元素からな
る)、及び、GdLRFe、または、GdLRFeC
o、または、GdLRFeCoD(LRは軽希土類金属
であり、Ce,Pr,Nd,Smの中から選ばれる元
素、または、それら2種類以上の元素からなる。一方、
Dは、Y,Ti,V,Cr,Pd,Cu,Al,Si,
Alの中から選ばれる元素、または、それら2種類以上
の元素からなる)等の材料からなる垂直磁化膜を採用す
ることが可能である。
【0115】本実施の形態においては、第6磁性層21
と第7磁性層22の磁気的極性が異なっていればよく、
第6磁性層21と第7磁性層22の形成順序は図14と
逆であってもかまわない。
【0116】また、この構成に、更に、Al,AlT
a,AlTi,AlCr,AlNi,AlCo,Cu等
からなる熱拡散金属層を付加することにより、媒体の熱
的特性を改善することが可能となる。更に、場合によっ
ては、保護層15上、または、上記熱拡散層上に紫外線
硬化樹脂または熱硬化樹脂または潤滑層を形成してもよ
い。
【0117】また、低磁界記録を目的として、第3磁性
層3に接して、該第3磁性層3の保磁力より小さな保磁
力を有し、該第3磁性層3のキュリー温度よりも高いキ
ュリー温度を有する垂直磁化膜、例えば、GdFeC
o,GdTbFeCo,GdDyFeCo等の垂直磁化
膜からなる記録補助層を積層して形成しても良い。
【0118】次にこの構成の光磁気ディスクの形成方法
及び記録再生方法の具体例を説明する。
【0119】<実施例6> (1) 光磁気ディスクの形成方法 上記構成の磁気ディスクの形成方法について説明する。
【0120】まず、実施例1と同様にして、基板13上
に膜厚80nmのAlNからなる透明誘電体保護層14
を形成する。
【0121】次に、再度、スパッタ装置内を1×10-6
Torrまで真空排気した後、アルゴンガスを導入し
て、第1のGdFeSi合金ターゲットに電力を供給し
て、ガス圧4×10-3Torrの条件で、上記透明誘電
体保護層14上に、(Gd0.30Fe0.700.89Si0.11
からなる第6磁性層21を膜厚20nmで形成する。そ
の第6磁性層21は、室温における保磁力が8kA/m
であり、キュリー温度が180℃であり、室温からその
キュリー温度まで常にRErich組成の垂直磁化膜で
あった。
【0122】引き続き、第2のGdFeSi合金ターゲ
ットに電力を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条
件で、上記第6磁性層21上に、(Gd0.21Fe0.79
0.83Si0.17からなる第7磁性層22を膜厚20nmで
形成する。その第7磁性層22は、室温における保磁力
が8kA/mであり、キュリー温度が180℃であり、
室温からそのキュリー温度まで常にTMrich組成の
垂直磁化膜であった。次に、実施例1と同様にして、上
記第7磁性層22上に、Dy0.25Fe0.75からなる第2
磁性層2を膜厚10nmで形成する。その第2磁性層2
は、垂直磁化膜であり、その補償温度が40℃であり、
そのキュリー温度が80℃であった。次に、実施例1と
同様にして、上記第2磁性層2上に、Tb0.27(Fe
0.88Co 0.120.73からなる第3磁性層3を膜厚30n
mで形成する。その第3磁性層3は、垂直磁化膜であ
り、補償温度が160℃であり、キュリー温度が260
℃であった。
【0123】次に、上記第3磁性層3上に、実施例1と
同様にして、膜厚20nmのAlNからなる保護層15
を形成する。
【0124】(2) 記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0125】まず、記録再生用レーザを6.8mWで連
続照射しながら、記録磁界を±15kA/mで変調する
ことにより第3磁性層3に、記録磁界の向きに対応した
上向き磁化と下向き磁化との繰り返しパターンを形成し
た。また、記録磁界の変調周波数を変えることにより、
0.1〜0.5μmの範囲のマーク長の磁区パターンを
記録した。ここで、マーク長とは、マーク長に対応する
長さの記録磁区をマーク長の2倍の長さのピッチで形成
していることを意味する。
【0126】次に、記録再生用レーザを2.0mWで連
続照射して測定したCNR(信号対雑音比)のマーク長
依存性を実施例6−1として図15に示す。
【0127】比較のため、実施例6の構成において、第
7磁性層22を設けず、第6磁性層21の膜厚を40n
mとした場合の光磁気ディスクにおけるCNRを比較例
6−1(第1の実施の形態に係る発明の一例)として同
図に示す。
【0128】また、実施例6−2、及び、比較例6−2
(第1の実施の形態に係る発明の一例)は、それぞれ、
光ピックアップからの漏洩磁束を想定して、実施例6−
1、及び、比較例6−1について、+4kA/mの一定
外部磁界の存在下でCNRを測定した結果である。
【0129】本実施例においては、第3磁性層として、
実施例1と同じ第3磁性層3を用いているため、第3磁
性層3から発生する漏洩磁束が低く抑え込まれている。
したがって、上記一定外部磁界が存在しない状態におい
ては、実施例6−1と比較例6−1に示すように、第7
磁性層22の有無に関わらず、良好なCNRが得られて
いる。しかし、上記一定外部磁界を印加した場合、第7
磁性層22を設けていない光磁気記録媒体においては、
比較例6−2に示すように、すべてのマーク長におい
て、比較例6−1より大幅に低いCNRしか得られな
い。一方、第7磁性層22を設けた光磁気記録媒体にお
いては、実施例6−2に示すように、実施例6−1と同
程度の良好なCNRが得られ、一定外部磁界に対する再
生安定性を得ることができる。
【0130】〔第4の実施の形態〕第4の実施の形態の
光磁気記録媒体の磁化状態を図16に示す。本実施の形
態は、第2の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合
わせた構成からなる光磁気記録媒体である。すなわち、
磁気的極性の異なる第4磁性層19と第5磁性層20と
を積層して、第4磁性層19及び第5磁性層20から発
生する漏洩磁束を低く抑えることで、読取側の磁性層
(第6磁性層21及び第7磁性層22)におけるスムー
ズな磁壁移動を実現するとともに、磁気的極性の異なる
第6磁性層21と第7磁性層22とを積層して、第6磁
性層21及び第7磁性層22における各層のトータル磁
化を反平行とすることにより、第4磁性層19及び第5
磁性層20から発生する漏洩磁束、又は、光ピックアッ
プ等から発生する漏洩磁束が、第6磁性層21及び第7
磁性層22における磁壁移動に与える影響を低く抑え、
第6磁性層21及び第7磁性層22におけるスムーズな
磁壁移動を実現するものである。
【0131】次に、本発明の第4の実施の形態を光磁気
記録媒体を光磁気ディスクに適用した場合について図面
を用いて説明する。
【0132】本発明の光磁気記録媒体は、図17に示す
ように、光磁気ディスク基板13上に透明誘電体保護層
14,第6磁性層21,第7磁性層22,第2磁性層
2,第4磁性層19,第5磁性層20,保護層15が順
次形成された構成を有している。
【0133】第4の実施の形態における基板13,透明
誘電体保護層14,第6磁性層21,第7磁性層22,
第2磁性層2,第4磁性層19,第5磁性層20,保護
層15は、それぞれ、第2の実施の形態及び第3の実施
の形態に記載の材料を同様にして用いることが可能であ
る。
【0134】本実施の形態においては、第4磁性層19
と第5磁性層20の磁気的極性が異なっていればよく、
第4磁性層19と第5磁性層20の形成順序は図17と
逆であってもかまわない。
【0135】また、本実施の形態においては、第6磁性
層21と第7磁性層22の磁気的極性が異なっていれば
よく、第6磁性層21と第7磁性層22の形成順序は図
17と逆であってもかまわない。
【0136】また、この構成に、更に、Al,AlT
a,AlTi,AlCr,AlNi,AlCo,Cu等
からなる熱拡散金属層を保護層15上に付加することに
より、媒体の熱的特性を改善することが可能となる。更
に、場合によっては、保護層15上、または、上記熱拡
散層金属層上に紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂または
潤滑層が形成されることもある。
【0137】また、低磁界記録を目的として、第4磁性
層19または第5磁性層20のよりキュリー温度の高い
磁性層に接して、該よりキュリー温度の高い磁性層の保
磁力より小さな保磁力を有し、該よりキュリー温度の高
い磁性層のキュリー温度よりも高いキュリー温度を有す
る垂直磁化膜、例えば、GdFeCo、GdTbFeC
o、GdDyFeCo等の垂直磁化膜からなる記録補助
層を積層して形成しても良い。
【0138】次にこの構成の光磁気ディスクの形成方法
及び記録再生方法の具体例を説明する。
【0139】<実施例7> (1) 光磁気ディスクの形成方法 上記構成の磁気ディスクの形成方法について説明する。
【0140】まず、実施例3と同様にして、基板13上
に膜厚80nmのAlNからなる透明誘電体保護層1
4、膜厚20nmの(Gd0.30Fe0.700.89Si0.11
からなる第6磁性層21、膜厚20nmの(Gd0.21
0.790.83Si0.17からなる第7磁性層22、膜厚1
0nmのDy0.25Fe0.75からなる第2磁性層2を形成
する。
【0141】次に、実施例2と同様にして、膜厚15n
mのTb0.20(Fe0.90Co0.10 0.80からなる第4磁
性層19、膜厚15nmのTb0.30(Fe0.87
0.130. 70からなる第5磁性層20、膜厚20nmの
AlNからなる保護層15を形成する。
【0142】(2) 記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0143】まず、記録再生用レーザを7.1mWで連
続照射しながら、記録磁界を±15kA/mで変調する
ことにより第4磁性層19及び第5磁性層20に、記録
磁界の向きに対応した上向き磁化と下向き磁化との繰り
返しパターンを形成した。また、記録磁界の変調周波数
を変えることにより、0.1〜0.5、μmの範囲のマ
ーク長の磁区パターンを記録した。ここで、マーク長と
は、マーク長に対応する長さの記録磁区をマーク長の2
倍の長さのピッチで形成していることを意味する。
【0144】次に、記録再生用レーザを2.2mWで連
続照射してCNR(信号対雑音比)を測定した。図18
は、そのマーク長依存性を実施例7−1として記したも
のである。なお、 比較のため、実施例7の構成におい
て、第7磁性層22を設けず、第6磁性層21の膜厚を
40nmとした場合の光磁気ディスクにおけるCNRを
比較例7−1(実施の形態2の発明に係る一例)として
同図に示す。
【0145】また、実施例7−2、及び、比較例7−2
は、それぞれ、光ピックアップからの漏洩磁束を想定し
て、実施例7−1、及び、比較例7−1について、+4
kA/mの一定外部磁界の存在下でCNRを測定した結
果である。
【0146】本実施例においては、実施例2と同様に、
磁気的極性の異なる第4磁性層19と第5磁性層20を
用いているため、第4磁性層19及び第5磁性層20か
ら発生する漏洩磁束が低く抑え込まれている。したがっ
て、上記一定外部磁界が存在しない状態においては、実
施例7−1と比較例7−1に示すように、第7磁性層2
2の有無に関わらず、良好なCNRが得られている。
【0147】しかし、一定外部磁界を印加した場合、第
7磁性層22を設けていない光磁気記録媒体において
は、比較例7−2に示すように、すべてのマーク長にお
いて、比較例7−1より大幅に低いCNRしか得られて
おらず、第7磁性層22を設けない場合、一定外部磁界
に対する再生安定性がないことがわかる。一方、第7磁
性層22を設けた光磁気記録媒体においては、実施例7
−2に示すように、実施例7−1と同程度の良好なCN
Rが得られ、一定外部磁界に対する再生安定性が得られ
ている。
【0148】〔第5の実施の形態〕実施の形態は、上述
した実施の形態の光磁気記録媒体の変形例であり、第1
磁性層(または第6磁性層及び第7磁性層)におけるス
ムーズな磁壁移動を実現するとともに、低磁界記録を実
現するものである。以下に説明する。
【0149】<実施例8>実施の形態2における実施例
5は、基板上に、膜厚80nmのAlNからなる透明誘
電体層14、膜厚40nmの(Gd0.27Fe0.730.85
Si0.15からなる第1磁性層1、膜厚10nmのDy
0.25Fe0.75からなる第2磁性層2、膜厚15nmのT
0.20(Fe0.90Co0.100.80からなる第4磁性層1
9、膜厚15nmのTb0.30(Fe0.87Co0.130.70
からなる第5磁性層20、膜厚20nmのAlNからな
る保護層15を形成した光磁気記録媒体であったが、こ
の光磁気記録媒体において低磁界記録を実現するために
は、第4磁性層19または第5磁性層20のキュリー温
度の高い方の磁性層に接して、それよりも小さな保磁力
を有し且つ高いキュリー温度を有する垂直磁化膜を記録
補助層として積層する必要がある。
【0150】本実施例では、第4磁性層19を第5磁性
層20よりも小さな保磁力を有し且つ高いキュリー温度
を有する垂直磁化膜とする。これにより、第4磁性層1
9と第5磁性層20から発生する漏洩磁束を抑制し、第
1磁性層1におけるスムーズな磁壁移動を実現するとと
もに、低磁界記録を実現する。ここで、第4磁性層19
は、第5磁性層20と交換結合しているため、再生が行
われる所定温度において磁壁が移動することはなく、第
1磁性層1よりも磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度の大き
な垂直磁化膜であっても良い。但し、第1磁性層1は、
所定温度において第5磁性層に比べて相対的に磁壁抗磁
力が小さく磁壁移動度が大きな垂直磁化膜であることが
必要である。以下、この構成の光磁気ディスクの形成方
法及び記録再生方法の具体例を説明する。
【0151】(1) 光磁気ディスクの形成方法 まず、実施例5と同様にして、基板13上に膜厚80n
mのAlNからなる透明誘電体保護層14、膜厚40n
mの(Gd0.27Fe0.730.85Si0.15からなる第1磁
性層1、及び、膜厚10nmのDy0.25Fe0.75からな
る第2磁性層2を形成した。
【0152】次に、GdFeCo合金ターゲットに電力
を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条件で、上記
第2磁性層2上に、Gd0.19(Fe0.93Co0.070.81
からなる第4磁性層19を膜厚15nmで形成する。そ
の第4磁性層19は、室温における保磁力が16kA/
mであり、キュリー温度が270℃であり、室温から該
キュリー温度(270℃)まで、常にTMrich組成
の垂直磁化膜であった。
【0153】次に、第2のTbFeCo合金ターゲット
に電力を供給して、ガス圧4×10 -3Torrの条件
で、上記第4磁性層19上に、Tb0.30(Fe0.87Co
0.13 0.70からなる第5磁性層20を膜厚15nmで形
成する。その第5磁性層20は、室温における保磁力が
400kA/mであり、キュリー温度が255℃であ
り、室温から該キュリー温度(255℃)まで、常にR
Erich組成の垂直磁化膜であった。
【0154】次に、上記第5磁性層20上に、実施例1
と同様にして、膜厚20nmのAlNからなる保護層1
5を形成する。
【0155】また、この構成に、更に、Al、AlT
a、AlTi、AlCr、AlNi、AlCo、Cu等
からなる熱拡散金属層を付加することにより、媒体の熱
的特性を改善することが可能となる。更に、場合によっ
ては、保護層15上、または、上記熱拡散層上に紫外線
硬化樹脂または熱硬化樹脂または潤滑層が形成されるこ
ともある。
【0156】(2) 記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0157】まず、記録再生用レーザを6.5mWで連
続照射しながら、記録磁界を±9kA/mで変調するこ
とにより第4磁性層19及び第5磁性層20に、記録磁
界の向きに対応した上向き磁化と下向き磁化との繰り返
しパターンを形成した。記録磁界の変調周波数を変える
ことにより、0.1〜0.5μmの範囲のマーク長の磁
区パターンを記録した。ここで、マーク長とは、マーク
長に対応する長さの記録磁区をマーク長の2倍の長さの
ピッチで形成していることを意味する。
【0158】次に、記録再生用レーザを1.8mWで連
続照射して測定したCNR(信号対雑音比)のマーク長
依存性を実施例8として図22に示す。比較のため、実
施例5の構成において、第5磁性層20を設けず、第4
磁性層19の膜厚を30nmとした場合の光磁気ディス
クにおけるCNRを比較例5として同図に示す。
【0159】実施例8においては、極性の異なる第4磁
性層19と第5磁性層20とが積層されることにより、
漏洩磁束の発生が抑制され、実施例1と同様に0.1〜
0.5μmの範囲のマーク長において、40dB以上の
CNRが得られているのに対して、比較例5において
は、実施例5よりも低いCNRしか得られないことがわ
かる。これは、比較例5の光磁気記録媒体において、第
5磁性層20を設けることなく、TMrich組成の垂
直磁化膜を第4磁性層19として採用したことにより、
第4磁性層19からの漏洩磁束が大きくなり、第1磁性
層1におけるスムーズな磁壁移動が妨げられたことによ
るものである。マーク長が短くなることにより、第4磁
性層19に記録された磁区周期が短くなり、同時に、そ
こから発生する漏洩磁束の反転周期が短くなることによ
り、第1磁性層1における磁壁移動がうける影響が大き
くなるため、該CNRの低下は、マーク長の短い領域に
おいてより顕著となる。
【0160】次に、図23は、実施例5と実施例8の光
磁気ディスクについて、マーク長0.2μmにおけるC
NRの記録磁界依存性を調べた結果を示している。第4
磁性層19としてTbFeCoを用いた実施例5におい
ては、CNRを飽和させるのに、およそ±15kA/m
の記録磁界が必要であるが、実施例8においては、CN
Rを飽和させるのに、およそ±8kA/mの記録磁界で
十分であることがわかる。
【0161】<実施例9>実施例7は、基板上に、膜厚
80nmのAlNからなる透明誘電体層14、膜厚20
nmの(Gd0.30Fe0.700.89Si0.11からなる第6
磁性層21、膜厚20nmの(Gd0.21Fe0.790.83
Si0.17からなる第7磁性層22、膜厚10nmのDy
0.25Fe0.75からなる第2磁性層2、膜厚15nmのT
0.20(Fe0.90Co0.100.80からなる第4磁性層1
9、膜厚15nmのTb0.30(Fe 0.87Co0.130.70
からなる第5磁性層20、膜厚20nmのAlNからな
る保護層15を形成した光磁気記録媒体であった。この
光磁気記録媒体では、低磁界記録を実現するためには、
第4磁性層19または第5磁性層20のキュリー温度の
高い方の磁性層に接して、それよりも小さな保磁力を有
し且つ高いキュリー温度を有する垂直磁化膜を記録補助
層として積層する必要がある。
【0162】本実施例では、第4磁性層19を第5磁性
層20よりも小さな保磁力を有し且つ高いキュリー温度
を有する垂直磁化膜とすることにより、第4磁性層19
と第5磁性層20から発生する漏洩磁束を抑制し、第6
磁性層21及び第7磁性層22におけるスムーズな磁壁
移動を実現するとともに、低磁界記録を実現するもので
ある。ここで、第4磁性層19は、第5磁性層20と交
換結合しているため、再生が行われる所定温度において
磁壁が移動することはなく、第6磁性層21及び第7磁
性層22よりも磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度の大きな
垂直磁化膜であっても良い。但し、第6磁性層21及び
第7磁性層22は、所定温度において第5磁性層に比べ
て相対的に磁壁抗磁力が小さく磁壁移動度が大きな垂直
磁化膜であることが必要である。以下、この構成の光磁
気ディスクの形成方法及び記録再生方法の具体例を説明
する。
【0163】(1) 光磁気ディスクの形成方法 まず、実施例7と同様にして、基板13上に膜厚80n
mのAlNからなる透明誘電体保護層14、膜厚20n
mの(Gd0.30Fe0.700.89Si0.11からなる第6磁
性層21、及び、膜厚20nmの(Gd0.21Fe0.79
0.83Si0.17からなる第7磁性層22、及び、膜厚10
nmのDy0.25Fe0.75からなる第2磁性層2を形成し
た。
【0164】次に、GdFeCo合金ターゲットに電力
を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条件で、上記
第2磁性層2上に、Gd0.19(Fe0.93Co0.070.81
からなる第4磁性層19を膜厚15nmで形成する。そ
の第4磁性層19は、室温における保磁力が16kA/
mであり、キュリー温度が270℃であり、室温から該
キュリー温度(270℃)まで、常にTMrich組成
の垂直磁化膜であった。
【0165】次に、TbFeCo合金ターゲットに電力
を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条件で、上記
第4磁性層19上に、Tb0.30(Fe0.87Co0.13
0.70からなる第5磁性層20を膜厚15nmで形成す
る。その第5磁性層20は、室温における保磁力が40
0kA/mであり、キュリー温度が255℃であり、室
温から該キュリー温度(255℃)まで、常にREri
ch組成の垂直磁化膜であった。
【0166】次に、上記第5磁性層20上に、膜厚20
nmのAlNからなる保護層15を形成する。
【0167】また、この構成に、更に、Al、AlT
a、AlTi、AlCr、AlNi、AlCo、Cu等
からなる熱拡散金属層を付加することにより、媒体の熱
的特性を改善することが可能となる。更に、場合によっ
ては、保護層15上、または、上記熱拡散層上に紫外線
硬化樹脂または熱硬化樹脂または潤滑層が形成されるこ
ともある。
【0168】(2) 記録再生特性 上記光磁気ディスクを、波長680nmの半導体レーザ
を用いた光磁気ピックアップで、線速2.5m/sの条
件で評価した結果について説明する。
【0169】まず、記録再生用レーザを6.5mWで連
続照射しながら、記録磁界を±9kA/mで変調するこ
とにより第4磁性層19及び第5磁性層20に、記録磁
界の向きに対応した上向き磁化と下向き磁化との繰り返
しパターンを形成した。記録磁界の変調周波数を変える
ことにより、0.1〜0.5μmの範囲のマーク長の磁
区パターンを記録した。ここで、マーク長とは、マーク
長に対応する長さの記録磁区をマーク長の2倍の長さの
ピッチで形成していることを意味する。
【0170】次に、記録再生用レーザを1.8mWで連
続照射して測定したCNR(信号対雑音比)のマーク長
依存性を実施例9として図24に示す。
【0171】比較のため、実施例7の光磁気ディスクに
おけるCNRを同図に示す。実施例9においては、極性
の異なる第4磁性層19と第5磁性層20とが積層され
ることにより、漏洩磁束の発生が抑制され、実施例7と
同様に0.1〜0.5μmの範囲のマーク長において、
40dB以上のCNRが得られていることがわかる。
【0172】次に、図25は、実施例7と実施例9の光
磁気ディスクについて、マーク長0.2μmにおけるC
NRの記録磁界依存性を調べた結果を示している。第4
磁性層19としてTbFeCoを用いた実施例7におい
ては、CNRを飽和させるのに、およそ±15kA/m
の記録磁界が必要であるが、実施例9においては、CN
Rを飽和させるのに、およそ±8kA/mの記録磁界で
十分であることがわかる。
【0173】
【発明の効果】以上のように、本発明の光磁気記録媒体
は、第6磁性層,第7磁性層,第2磁性層,第3磁性層
が順次積層されており、それらのキュリー温度をTc
6,Tc7,Tc2,Tc3としたときに、Tc2<T
c6<Tc3、Tc2<Tc7<Tc3が成立するもの
である。
【0174】このような光磁気記録媒体及びその再生方
法によれば、繰り返し再生が発生しない磁区拡大再生を
実現でき、再生信号振幅を低下させることなく、光の回
折限界以下の周期の信号が再生可能となり、記録密度を
大幅に向上させることができる。
【0175】また、磁気的極性の異なる第6磁性層,第
7磁性層を使用することで、漏洩磁束による影響が低減
され、第1磁性層における磁壁がスムーズに移動するこ
とにより、繰り返し再生が発生しない安定した磁区拡大
再生を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気ディスクの再生原理を説明する
断面模式図である。
【図2】図1の状態から媒体が移動したときの様子を説
明する断面模式図である。
【図3】図1の状態から媒体が移動したときの他の様子
を説明する断面模式図である。
【図4】第1の実施の形態の光磁気ディスクの構成を示
す断面図である。
【図5】案内溝を有する基板に形成した光磁気ディスク
の構成を示す断面図である。
【図6】図5の光磁気ディスクの磁壁を説明する平面図
である。
【図7】実施例1の光磁気ディスクのCNRのマーク長
依存性を示す図である。
【図8】第2実施の形態の光磁気ディスクの再生原理を
説明する断面模式図である。
【図9】図8の光磁気ディスクの磁気特性を説明する断
面模式図である。
【図10】第2の実施の形態の光磁気ディスクの構成を
示す断面図である。
【図11】実施例5の光磁気ディスクのCNRのマーク
長依存性を示す図である。
【図12】第3の実施の形態の光磁気ディスクの再生原
理を説明する断面模式図である。
【図13】図12の光磁気ディスクの磁気特性を説明す
る断面模式図である。
【図14】第3の実施の形態の光磁気ディスクの構成を
示す断面図である。
【図15】実施例6の光磁気ディスクのCNRのマーク
長依存性を示す図である。
【図16】第4の実施の形態の光磁気記録媒体を説明す
る断面模式図である。
【図17】第4の実施の形態の光磁気ディスクの構成を
示す断面図である。
【図18】実施例7の光磁気ディスクのCNRのマーク
長依存性を示す図である。
【図19】従来の光磁気ディスクの再生原理を説明する
断面模式図である。
【図20】図19の状態から媒体が移動したときの様子
を説明する断面模式図である。
【図21】図19の状態から媒体が移動したときの他の
様子を説明する断面模式図である。
【図22】実施例8の光磁気ディスクのCNRのマーク
長依存性を示す図である。
【図23】実施例8の光磁気ディスクのCNRの記録磁
界依存性を示す図である。
【図24】実施例9の光磁気ディスクのCNRのマーク
長依存性を示す図である。
【図25】実施例9の光磁気ディスクのCNRの記録磁
界依存性を示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも、第6,第7,第2,第3磁性
    層が順次積層されており、 第6磁性層及び第7磁性層は、所定温度近傍の温度にお
    いて第3磁性層に比べて相対的に磁壁抗磁力が小さく磁
    壁移動度が大きな垂直磁化膜からなり、 第6磁性層と第7磁性層は、互いに磁気的極性が異なっ
    ており、 且つ、第6磁性層,第7磁性層,第2磁性層,第3磁性
    層のキュリー温度をそれぞれTc6,Tc7,Tc2,
    Tc3としたときに、 Tc2<Tc6<Tc3 Tc2<Tc7<Tc3 なる条件を満足することを特徴とする光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の光磁気記録媒体におい
    て、 Tc6とTc7が略等しいことを特徴とする光磁気記録
    媒体。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の光磁気記
    録媒体を再生する再生装置であって、 再生時に、前記光磁気記録媒体に光ビームを照射する照
    射手段と、 光ビームの照射光強度を、前記光磁気記録媒体の第6磁
    性層及び第7磁性層をキュリー温度以上に加熱できる強
    度に制御する制御手段と、を有してなることを特徴とす
    る再生装置。
JP2002313522A 1998-04-27 2002-10-28 光磁気記録媒体及び再生装置 Expired - Fee Related JP4112332B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002313522A JP4112332B2 (ja) 1998-04-27 2002-10-28 光磁気記録媒体及び再生装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11633298 1998-04-27
JP10-116332 1998-04-27
JP2002313522A JP4112332B2 (ja) 1998-04-27 2002-10-28 光磁気記録媒体及び再生装置

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP36586098A Division JP3380483B2 (ja) 1998-04-27 1998-12-24 光磁気記録媒体及び再生装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003132598A true JP2003132598A (ja) 2003-05-09
JP4112332B2 JP4112332B2 (ja) 2008-07-02

Family

ID=26454684

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002313522A Expired - Fee Related JP4112332B2 (ja) 1998-04-27 2002-10-28 光磁気記録媒体及び再生装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4112332B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP4112332B2 (ja) 2008-07-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3380483B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
JP3400251B2 (ja) 光磁気記録媒体の再生方法及び光磁気記録媒体
JP3492525B2 (ja) 光磁気記録媒体
JP3568787B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
JP3519293B2 (ja) 光磁気記録媒体、光磁気記録媒体の再生方法、光磁気記録再生装置
JP3545133B2 (ja) 光磁気記録媒体の再生方法及び光磁気記録媒体
JPH09231631A (ja) 光磁気記録媒体
JP3477386B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
JP3492233B2 (ja) 光磁気記録媒体及びその再生方法
JP3434242B2 (ja) 光磁気記録媒体及びその再生方法
JP2703587B2 (ja) 光磁気記録媒体および記録方法
JP3626050B2 (ja) 光磁気記録媒体及びその記録方法
JP3477385B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
KR19980025025A (ko) 광자기 기록 매체 및 그 기록 방법과 광자기 기록 장치
JP4112332B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
JP3436709B2 (ja) 光磁気記録媒体及びその再生方法
JP3476698B2 (ja) 光磁気記録媒体
JP2003132599A (ja) 光磁気記録媒体並びにその再生方法
EP1331637A1 (en) Magnetooptic recording medium and reproducing method and device therefor
JP3516865B2 (ja) 光磁気記録媒体及び再生装置
US20020119347A1 (en) Magneto-optical recording medium and method of reproducing the same
WO2002077987A1 (fr) Support d'enregistrement magneto-optique et procede de reproduction
JP2674815B2 (ja) 光磁気記録方法
JP3075048B2 (ja) 光磁気記録媒体及びその再生方法
JP2001014746A (ja) 光磁気記録媒体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041015

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071016

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071207

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20071207

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080115

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080311

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080408

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080409

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110418

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120418

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees