JP2003129105A - ニッケル粉の表面処理方法及びその方法により得られたニッケル粉 - Google Patents

ニッケル粉の表面処理方法及びその方法により得られたニッケル粉

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JP2003129105A
JP2003129105A JP2001317735A JP2001317735A JP2003129105A JP 2003129105 A JP2003129105 A JP 2003129105A JP 2001317735 A JP2001317735 A JP 2001317735A JP 2001317735 A JP2001317735 A JP 2001317735A JP 2003129105 A JP2003129105 A JP 2003129105A
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nickel powder
fatty acid
nickel
surface treatment
powder
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Yasuhide Yamaguchi
靖英 山口
Takayuki Araki
隆之 荒木
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Mitsui Mining and Smelting Co Ltd
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Mitsui Mining and Smelting Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粗粒子を形成することなく、非常に均一な粒
度分布を有するとともに、優れた膜特性、特に、ニッケ
ルペースト高密度化、即ち、高い電極膜密度を実現でき
るニッケル粉の製造技術を提供する。 【解決手段】 第1のニッケル粉の表面処理方法とし
て、水溶性脂肪酸塩を含む水溶液にニッケル粉を投入し
て分散し、該水溶液スラリーを酸性から中性のpHに調
整し、該水溶液スラリーからニッケル粉を濾別し、得ら
れたニッケル粉を熱処理するものとし、第2の表面処理
方法として、溶媒と脂肪酸とニッケル粉とを混合して作
製した溶媒スラリーを、加熱撹拌することにより溶媒を
揮発させた後、得られたニッケル粉を熱処理するものと
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、積層セラミックコ
ンデンサの内部電極材料として用いるのに好適なニッケ
ル粉の表面処理方法およびその方法により得られたニッ
ケル粉に関する。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサは、セラミッ
ク誘電体と内部電極とを交互に層状に重ねて圧着し、焼
成することで一体化して形成される。このような積層セ
ラミックコンデンサの内部電極を形成する際には、内部
電極材料である金属微粉末をペースト化し、該ペースト
を用いてセラミック基材上に印刷し、印刷した基材を複
数枚重ねて加熱圧着して一体化した後、還元性雰囲気中
で加熱焼成を行うのが一般的である。この内部電極材料
として、従来は白金、パラジウム等の貴金属が使用され
ていたが、最近ではこれらの貴金属の代わりにニッケル
等の卑金属を用いる技術が開発され、進歩してきてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、積層セラミック
コンデンサの小型化、高容量化に伴い、誘電体及びニッ
ケル等の内部電極の積層数を増やすことが行われてい
る。そのため、より薄いニッケル内部電極を得るため
に、ニッケルペースト塗膜を薄層化する技術が必要とさ
れている。しかし、ニッケルペースト塗膜を薄層化する
と高温焼結時に、ニッケル粉の焼結による収縮が起こ
り、電極膜に穴が空いたり、電極自体が切断したりし
て、静電容量の低下現象が生じる傾向となる。
【0004】この高温焼結時の収縮による弊害に対して
は、焼成前の電極膜密度を予め高くするという対処法が
あり、これによれば焼結後のニッケル電極膜に穴や切断
部が発生し難くなる。この電極膜密度の高くする方法と
しては、例えば、微粒子からなるニッケル粉と、粗粒子
からなるニッケル粉とを混合することが挙げられる。特
に、粗粒子からなるニッケル粉を微粒子からなるニッケ
ル粉に対し一定量加えると、電極膜密度をより高くする
ことが可能となる。
【0005】しかし、内部電極や誘電体が薄層化される
と、必然的に微粒子からなるニッケル粉により形成され
た内部電極が要求される。つまり、粗粒子のニッケル粉
が混入していると、電極膜の表面が粗くなるので、その
粗粒子が誘電体層を突き破ることもあり、対となる電極
とショートを起こす恐れが生じる。そのため、均一な微
粒子でありながら高い電極膜密度を実現できるニッケル
粉が求められている。
【0006】ところで、ニッケル粉は、湿式、乾式何れ
の製法でも製造可能であるが、液相還元析出法に代表さ
れる湿式法によるニッケル粉は、粒度分布がシャープな
粉末を得易い。そのため、湿式法によるニッケル粉を導
電ペースト化し、積層セラミックコンデンサの内部電極
を形成した場合、粗粒子の混入が少ないために、内部電
極膜の表面に突起形成がなく、内部電極間のショートを
防止できるものである。
【0007】しかし、この湿式法により得られるニッケ
ル粉は、水溶液中での合成を伴うため、乾燥後のニッケ
ル粉表面には水酸化物や炭酸塩からなる表層を形成し易
く、この表層の存在が内部電極を形成した際の電極膜密
度を低下させることが判明した。即ち、ニッケル粉を構
成する各粒子表面の水酸化物や炭酸塩の表層を除去すれ
ば、膜密度の低下を防止できると考えられるが、この表
層を分解除去する温度は200〜400℃を必要とし、
このような分解温度で熱処理を行うと、ニッケル粉の各
粒子同士の焼結が進行して、粗い粒子を形成する傾向が
あり、このような粗粒子を含んだニッケル粉を用いる
と、上記したショートなどの問題が生じる。
【0008】本発明は、以上のような事情を背景になさ
れたもので、粗粒子を形成することなく、非常に均一な
粒度分布を有するとともに、優れた膜特性、特に、ニッ
ケルペースト高密度化、即ち、高い電極膜密度を実現で
きるニッケル粉の製造技術を提供することを目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題
を達成するために、ニッケル粉の表面処理に関し鋭意研
究を重ねた結果、ニッケル粉の各粒子表面に特定条件下
で脂肪酸の金属塩を形成した後、熱処理することで、好
適なニッケル粉が得られることを見出し、本発明を完成
するに至った。
【0010】本発明はニッケル粉の表面処理方法であっ
て、水溶性脂肪酸塩を含む水溶液にニッケル粉を投入し
て分散し、該水溶液スラリーを酸性から中性のpHに調
整し、該水溶液スラリーからニッケル粉を濾別し、得ら
れたニッケル粉を熱処理することを特徴とするものであ
る。
【0011】本発明者らの研究によると、ニッケル粉を
構成する各粒子表面に、脂肪酸又は脂肪酸塩を接触して
反応させると、各粒子表層に形成される水酸化物や炭酸
塩の原因となる水酸基や炭酸基を有効に除去できる現象
を見出したのである。本発明者等の推測では、脂肪酸ま
たは脂肪酸塩をニッケル粉の各粒子表面に接触させ、特
定条件下で反応させると、各粒子表面に脂肪酸ニッケル
を形成し、その時に表層に存在する水酸基や炭酸基を除
去するものと考えている。例えば、水酸基の場合で考え
ると、次の化学式で示す反応が、ニッケル粉の各粒子表
面で生じていると考えられる。
【0012】 [化1] R-COOH + OH-Ni = R-COO-Ni + H2O
【0013】このような知見に基づき、脂肪酸ニッケル
の効率的な表面形成を検討した結果、水溶性脂肪酸塩を
含む水溶液にニッケル粉を投入して分散し、該水溶液ス
ラリーを酸性から中性のpHに調整して、該水溶液スラ
リーからニッケル粉を濾別し、得られたニッケル粉を熱
処理するものとしたのである。
【0014】水溶性脂肪酸塩を含む水溶液にニッケル粉
を投入し分散させることで、ニッケル粉の各粒子表面に
脂肪酸塩を接触させた後、該水溶液スラリーを酸性から
中性領域に調整すると、ニッケル粉の各粒子表面に脂肪
酸ニッケルを均一に形成させることができる。好ましく
はpH3〜7の範囲に該水溶液スラリーを調整する。こ
の場合のpH調整は、pH3未満であるとニッケル粉の
溶解量が高くなる傾向があり、pH7を越えると、ニッ
ケル粉の各粒子表面に脂肪酸ニッケルを形成させること
が難しくなる。そして、ニッケル粉を構成する粒子表面
に形成された脂肪酸ニッケルを熱処理して分解すること
で、ニッケル粉の各粒子同士の焼結も進行することな
く、清浄な表面の粒子からなる好適なニッケル粉が得ら
れるのである。また、焼結が進行しにくいため、粗い粒
子の形成が少なく、粒度分布が均一なニッケル粉となる
のである。
【0015】本発明における水溶性脂肪酸塩は、脂肪酸
のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であることが
好ましい。本発明者等の研究によると、例えば、オレイ
ン酸ナトリウムのような脂肪酸アルカリ金属塩を水に添
加し、これにニッケル粉を投入して分散した後、硫酸等
によりpH3〜7に調整すると、オレイン酸ナトリウム
がオレイン酸としてニッケル粉の各粒子表面に接触し、
撥水性を有するようになるのである。つまり、脂肪酸の
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩により作製した
脂肪酸塩水溶液を用いると、ニッケル粉の各粒子の表面
へ均一に脂肪酸を接触でき、且つ、各粒子が分散した状
態で脂肪酸ニッケルを形成することができるのである。
このようなオレイン酸ナトリウムと同様な効果を有する
水溶性脂肪酸塩としては、オレイン酸カリウム、オレイ
ン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、ステアリン
酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、カプロン酸ナト
リウム、カプリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0016】本発明に係る表面処理方法における水溶性
脂肪酸塩は、表面処理を行うニッケル粉全量に対し1〜
10質量%であることが好ましい。1質量%未満である
と、ニッケル粉を構成する各粒子表面への、脂肪酸ニッ
ケルの形成状態が不十分となり、熱処理時にニッケル粉
の各粒子同士が固着したり、凝集する傾向がある。10
質量%を越えると、過剰な脂肪酸成分が熱処理後も残存
する確率が高くなり、積層セラミックコンデンサの内部
電極を形成した際の導電性を阻害する恐れがあるためで
ある。
【0017】上記した本発明に係るニッケル粉の表面処
理方法においては、熱処理を不活性ガス雰囲気または微
還元性雰囲気下で、水溶液中の脂肪酸塩が中和して生成
する脂肪酸の沸点以上500℃以下の温度で行うことが
好ましい。水溶液中の脂肪酸塩はpH調整によりその一
部が反応して、ニッケル粉の粒子表面で脂肪酸ニッケル
になる。そして、水溶液中の残りの脂肪酸塩は、中和し
て脂肪酸となって水溶液中に存在することになる。そし
て、水溶液スラリーから濾別したニッケル粉は、脂肪酸
ニッケルと、中和して生じた脂肪酸とを有したものとな
る。ニッケル粉と共に濾別される脂肪酸は、積層セラミ
ックコンデンサの内部電極を形成した際の導電性を阻害
する恐れがあるので除去する必要がある。このような理
由から、熱処理は、水溶液中の脂肪酸塩が中和して生成
する脂肪酸の沸点以上500℃以下の温度で行うのであ
る。
【0018】この熱処理温度は、脂肪酸ニッケルの分解
温度程度まで高くすると、脂肪酸を分解してニッケル粉
の各粒子表面から一気に脱離させ、ニッケル粉の各粒子
表面に、水酸化物や炭酸塩が残存しない清浄な表面を実
現することができる。本発明では、様々な脂肪酸ニッケ
ルの分解温度がほぼ500℃以下であることを鑑み、上
限温度を500℃としているが、熱処理時の焼結、凝集
防止を考慮すれば、形成される脂肪酸ニッケルの分解温
度に10℃を加えた温度を上限値とすることがより好ま
しいものである。
【0019】また、熱処理を不活性ガスまたは微還元性
雰囲気下で行うと、ニッケル粉の酸化を抑制し、清浄な
表面の粒子からなるニッケル粉を得ることができる。こ
のような熱処理条件で得られたニッケル粉は、熱処理前
の分散性を維持した状態、即ち、粗粒子の存在が非常に
少なく粒度分布が均一で、且つ、各粒子表面が清浄なた
め、高い電極膜密度を容易に実現できる。
【0020】次に、本発明に係るニッケル粉の表面処理
方法のもう一つとして、溶媒と脂肪酸とニッケル粉とを
混合して作製した溶媒スラリーを、加熱撹拌することに
より溶媒を揮発させた後、得られたニッケル粉を熱処理
するものとした。
【0021】本発明者等の研究によると、溶媒と脂肪酸
とニッケル粉とを混合して作製した溶媒スラリーを加熱
撹拌して溶媒を揮発させると、ニッケル粉の各粒子表面
へ脂肪酸ニッケルを緻密に形成できることが判明した。
【0022】この溶媒を揮発させる方法において重要な
ことは、脂肪酸とニッケル粉の各粒子とを十分、且つ効
率的に接触させることであり、予め溶媒に脂肪酸を溶解
し、それにニッケル粉を投入して分散させる方法や、或
いは、予め溶媒にニッケル粉を投入し、その後脂肪酸を
添加する方法などが挙げられる。より具体的には、予め
脂肪酸を添加したニッケル粉含有スラリーをメディア撹
拌式分散処理装置(例:装置名「ダイノーミル」Willy
A.Bachofen AG Mashchinenfabrik製)等で分散したり、
或いは、ニッケル粉含有スラリーをメディア撹拌式分散
処理装置等で分散した後に、該スラリーに脂肪酸を添加
する方法によって、ニッケル粉と脂肪酸とを接触させ
て、ニッケル粉の各粒子表面へ脂肪酸ニッケルを均一に
形成することができる。尚、この溶媒を揮発させる方法
に用いる脂肪酸は、溶媒に可溶なものである。
【0023】上記の表面処理方法における脂肪酸は、エ
ナント酸、カプロン酸、ステアリン酸、クロトン酸、オ
レイン酸のいずれかを用いることが好ましく、溶媒とし
ては、メタノール、アセトン等の有機溶媒を用いること
が望ましい。これらの脂肪酸は容易に溶解するので、ニ
ッケル粉の各粒子と脂肪酸との接触が十分に行われ、溶
媒揮発後に均一な脂肪酸ニッケルが形成でき、これらの
脂肪酸ニッケルは200〜450℃で分解するため、熱
処理におけるニッケル粉の各粒子同士の固着や凝集を効
果的に防止できるのである。
【0024】上記ニッケル粉の表面処理方法において、
脂肪酸は、表面処理を行うニッケル粉全量に対し1〜1
0質量%であることが好ましい。1質量%未満である
と、ニッケル粉を構成する各粒子表面への、脂肪酸ニッ
ケルの形成状態が不十分となり、熱処理時にニッケル粉
の各粒子同士が固着して凝集する傾向がある。10質量
%を越えると、過剰な脂肪酸成分が熱処理後も残存する
確率が高くなり、積層セラミックコンデンサの内部電極
を形成した際の導電性を阻害する恐れがあるためであ
る。
【0025】上記ニッケル粉の表面処理方法において
は、その熱処理を不活性ガス雰囲気または微還元性雰囲
気下で、脂肪酸の沸点以上500℃以下の温度で行うこ
とが好ましい。この溶媒を揮発させる表面処理方法で
は、脂肪酸が脂肪酸ニッケルになるとその分解温度は上
昇するが、その結果、熱処理中におけるニッケル粉の各
粒子同士の固着や凝集が有効に防止できることが判明し
たのである。溶媒中の脂肪酸は、その一部が反応して、
ニッケル粉の粒子表面で脂肪酸ニッケルになる。そし
て、溶媒中の残りの脂肪酸は、未反応として残存するこ
とになる。そして、加熱撹拌により溶媒を揮発させる
と、脂肪酸ニッケルと脂肪酸とを有したニッケル粉とな
る。このニッケル粉に含まれる未反応の脂肪酸は、積層
セラミックコンデンサの内部電極を形成した際の導電性
を阻害する恐れがあるので除去する必要がある。このよ
うな理由から、熱処理は、脂肪酸の沸点以上500℃以
下の温度で行うのである。
【0026】具体的に説明すると、例えば、ステアリン
酸は大気中250℃程度の熱で分解するが、ステアリン
酸ニッケルとなると、その分解温度は400℃程度まで
上昇する。そのため、ステアリン酸ニッケルを有したニ
ッケル粉は400℃付近の温度で重量減少が大きく生じ
ることが確認されている。よって、400℃付近の温度
まで、ニッケル粉の各粒子同士の固着や凝集が防止され
ることになり、このような効果は単なる有機物付着では
得ることができない。
【0027】この溶媒を揮発させる表面処理方法におけ
る熱処理温度の上限値および熱処理雰囲気に関しては、
水溶性脂肪酸塩を使用する場合の表面処理方法と同じ内
容であるので説明は省略する。
【0028】本発明のニッケル粉の表面処理方法は、湿
式法により得られたニッケル粉に対して特に有効である
が、乾式法により得られたニッケル粉についても同様な
効果がある。乾式法の場合、ニッケル粉の各粒子の表層
に存在する水酸化物や炭酸塩は湿式法のものに比べ非常
に少ないが、本発明に係るニッケル粉の表面処理方法を
行っておくと、未処理の場合に比べ、電極膜密度を高く
することができる。
【0029】以上のような本発明に係るニッケル粉の表
面処理方法によって得られるニッケル粉であって、レー
ザ散乱式粒度分布測定による重量累積径D50値及びS
EM観察による平均粒子径が下式の条件を満たしている
ニッケル粉となり、積層セラミックコンデンサの内部電
極を形成する場合に非常に好適な材料となる。
【0030】[数2]:(レーザ散乱式粒度分布測定に
よる重量累積径D50値)/(SEM観察による平均粒
子径DIA値)≦2.0
【0031】上式左辺は、ニッケル粉の凝集状態を特定
できる数値を算出するものである。SEM観察による平
均粒子径(DIA)は、ニッケル粉の各粒子、つまり一
次粒子径により得られるもので、レーザ散乱式粒度分布
による重量累積径D50は、凝集粒子径により得られる
ものである。従って、理論的には、完全に凝集粒子がな
いニッケル粉であれば、D50/DIAの値が1になる
と考えられる。本発明に係るニッケル粉の表面処理方法
により得られるニッケル粉は、その値が2.0以下とな
る凝集度が低い状態、即ち、各粒子が単分散した状態の
ものであり、これを積層セラミックコンデンサの内部電
極を形成する際のニッケルペーストにすると、高密度の
電極膜を形成できるので、電極膜の薄層化が容易に可能
となる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について、以下に示す実施例及び比較例に基づき具体的
に説明する。尚、以下の実施例及び比較例の出発原料で
あるニッケル超微粉は、次のようにして製造したものを
用いた。
【0033】本実施形態で用いたニッケル超微粉は、硫
酸ニッケル水溶液に水酸化ナトリウムを加えて水酸化ニ
ッケルを析出した後、これにヒドラジンを加えてニッケ
ル微粒子を析出させた。この析出したニッケル微粒子を
濾過、洗浄した後乾燥して、ニッケル超微粉を作製し
た。
【0034】実施例1:中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gをメタノール200mL中に入れ、撹拌
機を用いて分散させた。そして、そのニッケル超微粉含
有スラリーにオレイン酸を3g添加し、加熱しながらメ
タノール分を蒸発させオレイン酸ニッケル形成処理ニッ
ケル粉を得た。そして、この表面処理ニッケル粉を窒素
ガス雰囲気中で400℃、30分間熱処理してニッケル
粉を作製した。
【0035】実施例2:中心粒径0.2μmのニッケル
超微粉100gをメタノール200mL中に入れ、撹拌
機を用いて分散させた。そして、そのニッケル超微粉含
有スラリーにオレイン酸を5g添加し、加熱しながらメ
タノール分を蒸発させ、オレイン酸ニッケル形成処理ニ
ッケル粉を得た。そして、この表面処理ニッケル粉を窒
素ガス雰囲気中で400℃、30分間熱処理してニッケ
ル粉を作製した。
【0036】実施例3:ステアリン酸5gを溶解したア
セトン200mL中に、中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gを入れ、撹拌機を用いて分散させた。そ
して、そのニッケル超微粉含有スラリーを加熱しながら
アセトン分を蒸発させ、ステアリン酸ニッケル形成処理
ニッケル粉を得た。そして、この表面処理ニッケル粉を
窒素ガス雰囲気中で350℃、30分間熱処理してニッ
ケル粉を作製した。
【0037】実施例4:中心粒径0.2μmのニッケル
超微粉100gを、ステアリン酸ナトリウム3gを溶解
させた水溶液200mL中に入れ、撹拌機を用いて分散
させた。そして、そのニッケル超微粉含有スラリーを撹
拌しながら、硫酸(10%)をpH4となるまで添加し
た。このpH調整により、スラリー中のニッケル粉は撥
水性を有した状態で凝集して沈殿したが、更にスラリー
を撹拌して分散させると、水面へニッケル粉が浮上する
ような状態となった。水面に浮上したニッケル粉を回収
し、得られたステアリン酸ニッケル形成処理ニッケル粉
を、水素1%を含む窒素ガス雰囲気中で350℃、30
分間熱処理してニッケル粉を作製した。
【0038】実施例5:中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gをアセトン200mL中に入れ、撹拌機
を用いて分散させた。そして、そのニッケル超微粉含有
スラリーに、カプロン酸5gが溶解されたアセトンを添
加し、加熱しながらアセトン分を蒸発させ、カプロン酸
ニッケル形成処理ニッケル粉を得た。そして、この表面
処理ニッケル粉を窒素ガス雰囲気中で250℃、30分
間熱処理してニッケル粉を作製した。
【0039】比較例1:中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gを、何の処理も施すことなくそのまま使
用した。
【0040】比較例2:中心粒径0.2μmのニッケル
超微粉100gを、何の処理も施すことなくそのまま使
用した。
【0041】比較例3:中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gを、窒素ガス中で400℃、30分間熱
処理したニッケル粉とした。
【0042】比較例4:中心粒径0.2μmのニッケル
超微粉100gを、窒素ガス中で350℃、30分間熱
処理したニッケル粉とした。
【0043】比較例5:中心粒径0.5μmのニッケル
超微粉100gをメタノール200mL中に入れ、撹拌
機を用いて分散させた。そして、そのニッケル超微粉含
有スラリーにテルピネオールを3g添加し、加熱しなが
らメタノール分を蒸発させ、テルピネオール付着ニッケ
ル粉を得た。そして、この表面処理ニッケル粉を窒素ガ
ス雰囲気中で400℃、30分間熱処理してニッケル粉
を作製した。
【0044】比較例6:中心粒径0.2μmのニッケル
超微粉100gをメタノール200mL中に入れ、撹拌
機を用いて分散させた。そして、そのニッケル超微粉含
有スラリーにエチルセルロースを3g添加し、加熱しな
がらメタノール分を蒸発させエチルセルロース付着ニッ
ケル粉を得た。そして、この表面処理ニッケル粉を窒素
ガス雰囲気中で350℃、30分間熱処理してニッケル
粉を作製した。
【0045】以上のようにして得られた各実施例及び比
較例のニッケル粉は、レーザ回折散乱式粒度分布測定に
よる重量累積径(D10、D50、90値)、SEM
観察による平均粒子径(DIA値)、ペースト膜の乾燥
密度、ペースト膜の表面粗さ、電気特性について評価し
た。この評価結果を表1及び表2に示す。ここで各評価
方法の具体的な説明をする。
【0046】(1)レーザ回折散乱式粒度分布測定によ
る重量累積径(D10、D50、 値):試料0.
1gをSNデイスパーサント4657溶液と混合し、超
音波ホモジナイザで5分間分散させた後、レーザ散乱式
粒度分布測定装置 Micro TracHRA 9320-X100 型(Leads
+Northrup製)を用いて重量累積径を測定した。
【0047】(2)SEM観察による平均粒子径(D
IA値):走査型電子顕微鏡を用いて、倍率2万倍の写
真を撮影し、無作為に選んだ5視野の合計で1500個
の粒子のフェレ径を測定し、算出した。
【0048】(3)ペースト膜の乾燥密度:エチルセル
ロース5質量部、ミネラルスピリット60質量部及びブ
チルカルビトール35質量部からなるビヒクル50部
と、ニッケル粉50部とを混合した後、3本ロールで混
練して導電ペーストを調製した。この導電ペーストを用
い塗膜を形成し、100℃で乾燥して約30μm厚さの
乾燥膜を得た。そして、ポンチにより乾燥膜から直径2
0mmの円状試料を抜き取り、その円状試料の重量を精
密測定するとともに、マイクロメータにより塗膜厚みを
測定した。この測定した重量と厚みとからペースト膜の
乾燥密度を算出した。
【0049】(4)ペースト膜の表面粗さ:上述した導
電ペーストにより、アプリケータを用いてガラス板上に
塗膜を形成して100℃で乾燥した後に、その乾燥膜
(約30μm厚)表面の表面粗さ(Ra)を測定した。
この表面粗さ(Ra)は複数箇所を測定して、その上限
と下限とを特定することで評価するものとした。
【0050】(5)電気特性評価:(3)で作成した導
電ペーストを用いて誘電体層厚5μm、内部電極層厚2
μm、積層数30層で圧着、切断し、還元性雰囲気中1
300℃で焼成して、2.0×1.25mmのコンデン
サを焼成した。得られたセラミックコンデンサ500個
について、静電容量欠損部を有すコンデンサ比率(不良
率)を調べた。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】表1のデータから明らかなように、実施例
1〜5のニッケル粉は、D50/D IA値が2.0よりも
小さく、粒子同士の固着や凝着が少なくシャープな粒度
分布であることが判る。一方、比較例3〜6に関して
は、熱処理後のニッケル粉が、各粒子同士の溶着がかな
り進行しており、塊状となってしまっていたため、レー
ザ回折散乱式粒度分布測定によって、重量累積径を測定
することができなかった。
【0054】表2を見ると判るように、実施例1〜5の
ニッケル粉を用いた導電ペーストは、膜密度が高く充填
性がよいため、収縮による歪みやクラックの発生が少な
くなるうえ、熱収縮により電極膜に穴が空いたり電極自
体が切断することがなかった。一方、導電ペーストの作
製が可能であった比較例1及び2(比較例3〜6のニッ
ケル粉では導電ペーストの作製ができないため特性評価
不能)では、ペースト膜の乾燥密度は小さく、その表面
は非常に粗いものとなっていた。このような導電ペース
トの特性の相違により、セラミックコンデンサを作製し
て静電容量欠損を有するコンデンサ比率、即ち、電気特
性不良率は実施例1〜5のニッケル粉の場合、極めて小
さいものであった。従って、実施例1〜5のニッケル粉
は、高温焼結時におけるニッケル粉の焼結による収縮が
なく、電極膜に穴が空いたり、電極自体が切断すること
が無く、静電容量の低下現象を引き起こしにくく、焼結
性に極めて優れたものといえる。
【0055】
【発明の効果】本発明に係るニッケル粉の表面処理方法
によれば、ニッケル粉の各粒子表面に脂肪酸ニッケルが
形成され、その後の熱処理において焼結、凝集などを防
ぐので、極めて清浄な表面を有した粒子で、且つ、シャ
ープな粒度分布を示すニッケル粉を得ることができる。
そして、この本発明に係るニッケル粉の表面処理方法に
より得られたニッケル粉を用いたペーストにより電極膜
を形成すると、非常に高い電極膜密度を実現することが
でき、薄層化した内部電極の形成が容易に行える。従っ
て、積層セラミックコンデンサの小型化、高容量化に伴
う内部電極の積層数を増やすために、薄膜状のニッケル
内部電極を形成する材料として非常に好適なものとな
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K018 AA08 AC04 BA04 BB05 BC01 BC09 BC29 BD04 KA37 KA39 5E001 AB03 AE02 AH01 AH09 AJ01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性脂肪酸塩を含む水溶液にニッケル
    粉を投入して分散し、該水溶液スラリーを酸性から中性
    のpHに調整し、該水溶液スラリーからニッケル粉を濾
    別し、得られたニッケル粉を熱処理することを特徴とす
    るニッケル粉の表面処理方法。
  2. 【請求項2】 水溶性脂肪酸塩は、脂肪酸のアルカリ金
    属塩またはアルカリ土類金属塩である請求項1記載のニ
    ッケル粉の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 水溶性脂肪酸塩は、ニッケル粉全量に対
    し1〜10質量%である請求項1又は請求項2に記載の
    ニッケル粉の表面処理方法
  4. 【請求項4】 熱処理は、不活性ガス雰囲気または微還
    元性雰囲気であるとともに、水溶液中の脂肪酸塩が中和
    して生成する脂肪酸の沸点以上500℃以下の温度で行
    うものである請求項1〜請求項3いずれかに記載のニッ
    ケル粉の表面処理方法。
  5. 【請求項5】 溶媒と脂肪酸とニッケル粉とを混合して
    作製した溶媒スラリーを、加熱撹拌することにより溶媒
    を揮発させた後、得られたニッケル粉を熱処理すること
    を特徴とするニッケル粉の表面処理方法。
  6. 【請求項6】 脂肪酸は、エナント酸、カプロン酸、ス
    テアリン酸、クロトン酸、オレイン酸のいずれかを用い
    るものである請求項5に記載のニッケル粉の表面処理方
    法。
  7. 【請求項7】 脂肪酸は、表面処理を行うニッケル粉全
    量に対し1〜10質量%である請求項5又は請求項6に
    記載のニッケル粉の表面処理方法。
  8. 【請求項8】 熱処理は、不活性ガス雰囲気または微還
    元性雰囲気であるとともに、脂肪酸の沸点以上500℃
    以下の温度で行うものである請求項5〜請求項7いずれ
    かに記載のニッケル粉の表面処理方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜請求項8のいずれかに記載す
    る表面処理方法により得られたニッケル粉であって、 レーザ散乱式粒度分布測定によるD50値及びSEM観
    察による平均粒子径が次式の条件を満たしているニッケ
    ル粉。 [数1]:(レーザ散乱式粒度分布測定による重量累積
    径D50値)/(SEM観察による平均粒子径D
    IA値)≦2.0
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