JP2003128791A - 高分子複合体の製造方法 - Google Patents
高分子複合体の製造方法Info
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Abstract
少ない薬剤量で、分子レベルで複合化させて、熱成形性
に優れた複合体を容易に製造する方法を提供する。 【解決手段】 セルロース系高分子と熱可塑性高分子と
からなる高分子複合体を製造するに際して、前者の動的
粘弾性測定又は熱刺激電流測定において主分散領域に運
動性を与える溶液によってセルロース系高分子が膨潤さ
れた状態で、熱可塑性高分子と共に、粉砕、混合、混練
及び圧延から選ばれた少なくとも一種の処理を行うこと
を特徴とする高分子複合体の製造方法。
Description
子と熱可塑性高分子とからなる熱形成可能な複合体を製
造する方法に関するものである。
ばれている。石油資源の保全や二酸化炭素による地球温
暖化防止のために、石化系高分子の使用量を低減する方
法として、石化系高分子に、再生産可能な天然物である
セルロース系高分子を複合化させることが提案されてい
る。石化系高分子の10%をセルロース系高分子に代替
すると、二酸化炭素の排出量は1000万トン減り、全
排出量を90年対比で約1%削減できるとの試算もあ
る。
分子としては、木質系セルロース、綿等のセルロース、
甲殻類の殻成分であるキチン質等が挙げられ、これらは
天然バイオマス資源として地球上に大量に存在するが、
セルロース系高分子は非熱可塑性であり、単独で用いる
ことはもちろん、石化系高分子と複合化させて用いるこ
とも困難であった。セルロース系高分子単独の成形体を
得る方法としては、パルプモールド技術が知られてい
る。これは、抄紙工程に類似した方法で、パルプ水懸
濁、分散液から製造するものである。この方法では、大
型の成形体の製造が困難であると同時に、生産性が低
く、かつ、廃液処理が必要であるといった欠点があり、
石化系高分子成形体に比し、競争力が低い。この方法を
石化系高分子との複合化に応用させて、パルプや綿と、
繊維状又はアスペクト比の大きい粒状の石化系高分子と
を交絡した不織布状成形体を製造することは、原理的に
可能であるが、単なる物理的複合体に過ぎない。
を得る方法としては、大量の薬剤や溶液を用いて溶解
後、湿式で紡糸、製膜を行うため、立体成形が困難であ
ると同時に、成形プロセス自体、環境調和の点から好ま
しくない。天然バイオマスを誘導体化(特に、エステル
化)して熱的に立体成形したプラスチックは、既に市場
に存在するが、誘導体化プロセスでのエネルギー消費は
大きく、使用薬剤量も多く、汎用的に利用されないのが
現状であり、誘導体化によりセルロースの特徴である生
分解生性も損ねる結果となっている。
合体を得る方法としては、大鋸屑等の木質(リグノセル
ロース)と、ポリ塩化ビニルとを混合する方法(特開2
001−131370号公報)や、ポリオレフィンとを
混合する方法(特開昭61−151266号公報)が知
られている。これらの方法によると、複合体として、熱
成形可能なチップ、複合粉末等を得ることができるが、
これら先行技術は、単に、混合されたもののレオロジー
的な熱流動性の改良に力点が置かれているにすぎず、互
いの分子レベルでの複合化を意図したものではない。
非熱可塑性セルロース系天然高分子と熱可塑性高分子の
混合物を固体状態のまま乾式で機械的に粉砕し、熱可塑
性を有する複合体の製造法が開示されている。しかしな
がら、この公報記載の方法でセルロース系高分子を処理
すると、高分子の分子運動性が不十分な状態での処理と
なり、熱可塑性高分子との複合化が不十分なため、得ら
れる高分子複合体の熱成形性が不十分なものであるとい
う問題点があった。
ロース系高分子と熱可塑性高分子とを、少ない薬剤量
で、分子レベルで複合化させて、熱成形性に優れた複合
体を容易に製造する方法を提供することである。
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース系
天然高分子には、僅かな親水性溶液の存在で分子運動す
る構造単位と僅かな疎水性溶液の存在で分子運動する構
造単位が混在し、それら溶液の存在下では、構造単位が
分子運動を開始する温度が低下すること、及び、親水性
溶液、例えば、水の存在下では、セルロース系高分子の
長周期構造が突然変化することを付きとめ、この原理の
もとに、種々の熱可塑性高分子との複合化を試みた結
果、分子レベルでの複合化が可能であり、熱成形性に優
れた複合体が得られることを見出し、本発明に到達し
た。
高分子複合体を製造するに際して、前者の動的粘弾性測
定又は熱刺激電流測定において、主分散領域に運動性を
与える溶液によってセルロース系高分子が膨潤された状
態で、熱可塑性高分子と共に、粉砕、混合、混練及び圧
延から選ばれた少なくとも一種の処理を行うことを特徴
とする高分子複合体の製造方法。 (2)セルロース系高分子が、セルロース、キチン、キ
トサン、微生物産生多糖類、それらの置換度0.1モル
以下の極低置換度誘導体、及びセルロース系天然複合体
から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする
(1)に記載の高分子複合体の製造方法。 (3)セルロースが、再生セルロースであることを特徴
とする(2)に記載の高分子複合体の製造方法。 (4)熱可塑性高分子が、ポリオレフィン系化合物、ポ
リアミド系化合物、ポリエステル系化合物、ポリアクリ
ル系化合物、ポリビニル系化合物、ポリエーテル系化合
物、ポリスチレン系化合物、ポリウレタン系化合物、ポ
リエーテルアミド系化合物、ポリエステルアミド系化合
物、ポリスルホン系化合物、ポリエーテルスルホン系化
合物及びポリフェニレンエーテル系化合物から選ばれた
少なくとも一種であることを特徴とする(1)に記載の
高分子複合体の製造方法。 (5)セルロース系高分子の動的粘弾性測定又は熱刺激
電流測定において、主分散領域に運動性を与える溶液
が、親水性溶液であることを特徴とする(1)に記載の
高分子複合体の製造方法。 (6)親水性溶液が、水、アルコール、アルキレングリ
コール、炭素数9以下の低級脂肪酸、重合度20以下の
低重合度ポリアルキレングリコール、グリセロール、芳
香族カルボン酸及びフェノール系化合物から選ばれた少
なくとも一種であることを特徴とする(5)に記載の高
分子複合体の製造方法。 (7)親水性溶液が水であって、乾燥セルロース系高分
子に対する水の割合が12質量%以上90質量%以下で
あることを特徴とする(5)に記載の高分子複合体を製
造する方法。 (8)セルロース系高分子の動的粘弾性測定又は熱刺激
電流測定において、主分散領域に運動性を与える溶液
が、両親媒性溶液であることを特徴とする(1)に記載
の高分子複合体の製造方法。 (9)両親媒性溶液が、アミド、スルホキシド、スルホ
ラン、ピロリドンから選ばれた少なくとも一種であるこ
とを特徴とする(8)に記載の高分子複合体の製造方
法。 (10)セルロース系高分子の動的粘弾性測定又は熱刺
激電流測定において、主分散領域に運動性を与える溶液
が、疎水性溶液であることを特徴とする(1)に記載の
高分子複合体の製造方法。 (11)疎水性溶液が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水
素、可塑剤から選ばれた少なくとも一種であることを特
徴とする(10)に記載の高分子複合体の製造方法。
は、セルロース、キチン、キトサン、微生物産生多糖
類、それらの置換度0.1モル以下の極低置換度誘導
体、及びセルロース系天然複合体から選ばれた少なくと
も一種が挙げられる。セルロースとしては、木綿、木材
由来のパルプ、バクテリアセルロース等の天然セルロー
スや、レーヨン繊維、キュプラアンモニウム繊維、セロ
ハン等の再生セルロース等が挙げられる。古紙等の廃バ
イオマスを用いることもできる。置換度0.1モル以下
の極低置換度誘導体とは、構成糖残基あたり置換度0.
1モル以下の誘導体をいい、具体例としては、エチルセ
ルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセル
ロース、セルロースアセテート及びこれらが混合した複
合誘導体等が挙げられる。セルロース系天然複合体とし
ては、リグノセルロース等が挙げられる。
測定(tanδ−温度曲線)、又は熱刺激電流測定(熱
刺激電流−温度曲線)を行うと、−150℃から300
℃の無定形領域の温度範囲に分散ピークが観測される。
分散ピークには、グルコピラノースリング間の振動運動
及びC6位の側鎖の回転運動に起因する、−150℃〜
−50℃の低温度域に観察される局所分散ピーク、及び
セルロース分子主鎖のミクロブラウン運動に起因する、
0℃から300℃の温度域に観察される主分散ピークが
ある。動的粘弾性測定と熱刺激電流測定とを対比する
と、測定原理上、前者の分散ピークの方が、後者より約
100℃以上高くなる。
域に運動性を与える溶液が存在すると、乾燥状態と比較
して、主分散ピーク温度の低下が観測される。主分散ピ
ーク温度の低下は、セルロース分子主鎖の運動性、すな
わち主分散領域の運動性の変化を示す。以下に、各測定
における主分散ピーク低下について、セルロースを例に
とって説明する。
温度曲線)を行うと、乾燥状態で210℃以上300℃
以下に観測される主分散ピーク(以下、α2分散とい
う)は、水分の存在で100℃以下まで低下し、乾燥状
態で120℃以上200℃以下に観測される主分散ピー
ク(以下、αsh分散という)は、疎水性溶液又は両親
媒性溶液の存在で100℃以下まで低下する。前者は、
水で運動する水素結合による分子凝集構造単位、後者
は、疎水性溶液で運動する分子凝集構造単位である。α
2分散及びαsh分散のピークは、広義のガラス転移点
(Tg)である。
するシート構造が基本構造であると考えられ、この構造
が無定形領域にも存在している。α2分散に代表される
親水性領域は、シート状構造の間隙の領域にアサインさ
れ、αsh分散は、シート状構造構造そのものの領域に
アサインされる。シート状構造はグルコピラノースリン
グが、その平面を接するように疎水性の相互作用により
形成された領域であって、ヘキサン等の疎水性の溶媒で
容易に緩和する。
的粘弾性測定の結果が、文献(福岡大学家政学部紀要、
平成7年1月発行、藤岡留美子、真鍋征一、p.18、
及びProceedings of '99 Pusan-Kyeongnam / Kyushu Se
ibu Joint Symposium on High Polymers (9th) and Fib
ers (7th), 1995[26](韓国)Rumiko Fujioka and Sei-
ichi Manabe, P13-20)に記載されており、αsh分散
が、乾燥状態の192℃から、ベンゼン存在下で10
℃、アセトン存在下で41℃、デカリン存在下で40
℃、四塩化炭素存在下で20℃、トルエン存在下で15
℃にまで低下する。
−温度曲線)を行うと、図1に示すように、乾燥状態で
あれば、χ1、χ2分散が見られるが、ヘキサンの存在
によって、これらが、約50℃低下して0℃近傍でχ分
散に収束する。以上の結果は、セルロース系高分子が親
水性であるだけでなく、セルロース系高分子中に、疎水
性溶液によって運動し得る分子凝集領域が存在すること
を示しており、この領域に、ポリオレフィン等の疎水性
ポリマーを収容できることを示唆している。
性が付与されることは、小角X線からも確認される場合
がある。例えば、溶液が水の場合、特定濃度で、突然、
長周期構造が出現することが、小角X線測定から確認さ
れている。再生セルロースの場合、乾燥再生セルロース
に対する水の割合が、30〜40質量%のときに長周期
が出現し、割合の増加に伴って、周期構造が大きくなっ
ている(図2、図3)。
の急激な増加)は、主鎖のミクロブラウン運動、なかで
も、特に活発なミクロブラウン運動の結果として起こ
る。セルロースに水を加えていき、水の割合を30質量
%まで増加させると、Tgは、乾燥状態における250
℃付近から、室温にまで低下する(繊維学会誌、53
[8](1997)p.321)。Tgが低下した状態
で、本発明のセルロース系高分子と熱可塑性高分子との
複合化の機械的処理を行うと効果的である。
用は、セルロース系高分子中に存在する水自身の緩和挙
動からも知られ、例えば、天然セルロースでは、水の割
合が5〜10質量%、30〜40質量%の2つの領域
で、構造を変化させている。本発明における主分散領域
に運動性を与える溶液とは、動的粘弾性測定において、
主分散ピークであるα2分散又はαsh分散の出現温度
を、好ましくは100℃以下まで低下させる溶液、又
は、熱刺激電流測定において、主分散χを好ましくは2
0℃以下まで低下させる溶液である。
アルコール、アルキレングリコール、低級脂肪酸、低重
合度ポリアルキレングリコール、グリセロール、芳香族
カルボン酸、フェノール系化合物等が挙げられる。アル
コールとしては、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノール、ペンタノール等、アルキレングリコー
ルとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、
ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール
等が挙げられる。炭素数9以下の低級脂肪酸としては、
酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。重合度20以下の
低重合度ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチ
レングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げら
れる。芳香族カルボン酸としては、安息香酸、アミノ安
息香酸、ベンゼンジカルボン酸等、フェノール系化合物
としては、フェノール、アミノフェノール、ジヒドロキ
シベンゼン等が挙げられる。これらの中で好ましいもの
は、水及びグリコールである。
ホキシド、スルホラン、ピロリドン等の両親媒性溶液等
が挙げられる。アミドとしては、酸アミド、ラクタム
等、スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド、ジ
エチルスルホキシド等、ピロリドンとしては、N−メチ
ル−2−ピロリドン等が挙げられる。両親媒性溶液は、
基本的にはセルロース系高分子の水素結合領域に作用す
るが、芳香族化合物であれば、ベンゼン構造部分が疎水
性領域にも作用する。
香族炭化水素、可塑剤等が使用可能である。脂肪族炭化
水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタ
ン、ノナン、デカン、ケロシン、シクロヘキサン、デカ
リン等、芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエ
ン、キシレン等、可塑剤としては、一般の熱成形に使用
されるものが使用でき、ジカルボン酸エステル、リン酸
エステル等が挙げられる。
ス系高分子の主分散領域に運動性を与える濃度であれば
制限されないが、溶液が水の場合は、乾燥したセルロー
ス系高分子に対する水分の割合が、12質量%以上90
質量%以下が好ましい。水分率が12%未満の場合はセ
ルロース固体同士の再凝集がおこり(高分子論文集、5
6[3](1999)p.166)、得られる複合体の熱
可塑化効果が少ない。水分率が90%を超えた場合にお
いても、得られる複合体の熱可塑化効果が少ない。溶液
は、単独でも、親水性溶液、疎水性溶液及び両親媒性溶
液から選ばれた2種以上の混合系でもよい。溶液種の選
択は、複合化すべき熱可塑性高分子により適宜決定され
るが、水を存在させるのが、コスト的により好ましい。
これら溶液は、加工助剤としての働きを兼ねる場合もあ
る。
ポリオレフィン系化合物、ポリアミド系化合物、ポリエ
ステル系化合物、ポリアクリル系化合物、ポリビニル系
化合物、ポリエーテル系化合物、ポリスチレン系化合
物、ポリウレタン系化合物、ポリエーテルアミド系化合
物、ポリエステルアミド系化合物、ポリスルホン系化合
物、ポリエーテルスルホン系化合物及びポリフェニレン
エーテル系化合物から選ばれた少なくとも一種が挙げら
れる。ポリオレフィン系化合物としては、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等、ポリアミド系化合物としては、
6−ナイロン、6,6−ナイロン等、ポリエステル系化
合物としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロ
ピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネー
ト、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン
等、ポリアクリル系化合物としては、ポリアクリロニト
リル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合
体等、ポリビニル系化合物としては、ポリビニルアルコ
ール、ポリメチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポ
リ塩化ビニリデン、イソブチレン、エチレン/酢酸ビニ
ル共重合体等、ポリエーテル系化合物としては、ポリア
セタール、ポリエチレングルコール、ポリプロピレング
リコール等、ポリスチレン系化合物としては、ポリスチ
レン等、ポリウレタン系化合物としては、ポリウレタン
等、ポリエーテルアミド系化合物としては、ポリエーテ
ルアミド等、ポリエステルアミド系化合物としては、ポ
リエステルアミド等、ポリスルホン系化合物としては、
ポリスルホン等、ポリエーテルスルホン系化合物として
は、ポリエーテルスルホン等、ポリフェニレンエーテル
系化合物としては、ポリフェニレンエーテル等が挙げら
れる。
を、主分散領域に運動性を与える溶液にヘキサンを用い
る場合には、セルロースの緩和される領域が疎水性の領
域であるため、熱可塑性高分子は、ポリエチレン等のよ
うな非極性ポリマーが好ましい。セルロースの疎水性領
域の表面エネルギーは、計算によると20mN/m程度
であり、これと同程度の表面エネルギーを持つポリマー
が複合化させやすいためである。表面エネルギー21.
5mN/mであるテフロン(登録商標)(デュポン
(株)製)も複合化可能である。
散領域に運動性を与える溶液にトルエン及び水を用いる
場合には、セルロースの緩和される領域が疎水性及び親
水性の両領域であるため、あらゆる熱可塑性高分子が使
用できる。前述の疎水性領域の表面エネルギー値の20
mN/mは、ポリマー素材中最低レベルであったのに対
し、親水性領域の表面エネルギー値は、42mN/m
と、ポリマー素材中最高レベルの値であるため、ほぼす
べてのポリマー素材が複合化可能となる。
粘弾性測定又は熱刺激電流測定において主分散領域に運
動性を与えることの意味は、溶液によってセルロース分
子主鎖をミクロブラウン運動させることによって、運動
性を付与して膨潤させ、ゴム状とした状態で、熱可塑性
高分子と共に、粉砕、混合、混練及び圧延殻選ばれた少
なくとも一種の処理を行って、分子レベルでセルロース
系高分子と熱可塑性高分子を複合化させることにある。
なくとも一種の処理を行うとは、衝撃力及び/又はせん
断力及び/又は摩擦力及び/又は圧縮力等の多様な力
で、破壊、及び/又は、凝着、及び/又は、変形の繰り
返しを、溶液の添加によってゴム状態になっているセル
ロース系高分子と熱可塑性高分子とに与えることであ
る。具体的には、回転ボールミル、振動型ボールミル、
遊星ボールミル等の媒体型の粉砕機、バンバリーミキサ
ー等の攪拌羽根型の機械、又はプレス(圧延)の繰り返
し等で可能である。これらの組み合わせでもかまわな
い。処理条件は、処理機械の種類、高分子類の種類等に
よって大幅に異なるため限定できないが、セルロース系
高分子が結晶性の場合は、結晶化度が1/2になる程度
が目安である。
は、予め、溶液無しで処理されていてもよいが、この場
合は、溶液を添加し、再度処理する必要がある。本発明
においては、加工助剤、無機充填剤、熱安定剤、難燃
剤、発泡剤等を適宜、混合してもよい。加工助剤として
は、モノグリセリンエステル、ステアリルアルコール、
ステアリン酸、脂肪酸アミド、長鎖モンタン酸(炭素数
28〜32)、パラフィン、側鎖アルキル基を有する炭
化水素等が利用できる。無機充填剤としては、ケイ酸カ
ルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、
ケイ酸マグネシウム、珪藻土、タルク、ケイ酸アルミニ
ウム、種々のクレー、酸化チタン等の金属酸化物が利用
できる。発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、炭酸
水素ナトリウム、クエン酸等が利用できる。
明する。実施例において、良好な熱可塑性複合体が形成
されていることは、熱可塑性を持たないセルロース系高
分子と熱可塑性高分子とが、部分的にでも分子レベルで
複合化するためにおこる、複合体中の熱可塑性高分子成
分のガラス転移温度Tg又は融点Tmの低下によって確
認した。
ンリンターパルプ30質量%(乾燥換算)添加し、密閉
容器に一昼夜以上放置した。この水分の割合は、本文で
述べたようなセルロースの緩和現象に伴うセルロースの
構造変化を誘起させるに適当な割合である。コットンリ
ンターパルプ9g(乾燥換算)と6,6−ナイロン6gを
B型バンバリーミキサーにて、ローター比67/77に
て10分間機械的処理し、複合化した。得られたコット
ンリンターパルプ6,6−ナイロン複合体中のナイロン
のDSCよりもとめたTgは、60℃から52℃に低下
した。
により、結晶化度は、機械的処理前の45%から20ポ
イント低下し、25%になる。結晶性の低下は(11-
0)から選択的に起こっており、(11-0)結晶面
の、いわゆる、「へき解現象」が観察されることより、
ポリマーが(11−0)面間のα2領域に進入したことが
うかがわれる。これらのことから、セルロースと6,6
−ナイロンとは、分子状又はナノオーダーのスケールで
複合化されていることが示唆される。
−ナイロン複合体は、粉末状であったが、2軸型のニー
ダー(KRCニーダー(商標)、栗本鐵工所製)で28
0℃、200rpmで加工を行い、プラスチック状のチ
ップとした。得られたチップを280℃、5MPaで熱
プレス成形すると、均一なシートを形成することができ
た。
た以外は、実施例1と同様に行った。バンバリーミキサ
ー処理後、6,6−ナイロンのTgの変化は観測され
ず、ラジカル発生のためか著しく着色していた。ニーダ
ー加工及び熱プレス成形してもシートは得られなかっ
た。
ンリンターパルプ100質量%(乾燥換算)添加した以
外は、実施例1と同様に行った。バンバリーミキサーで
機械的粉砕しても、コットンリンターパルプ及び6,6
−ナイロンは複合化されず、単に微細化するだけであ
り、処理後、6,6−ナイロンのTgの変化は観測され
なかった。ニーダー加工、熱プレス成形してもシートは
得られなかった。
ル(実施例2)、疎水性溶液として、ベンゼン(実施例
3)、トルエン(実施例4)、四塩化炭素(実施例
5)、デカリン(実施例6)、混合溶液として、エチレ
ングリコールとトルエンの混合液(混合質量比1:1,
実施例7)をそれぞれ用いて、パルプ(NDSP(商
標)、日本製紙製、サルファイト法溶解パルプ)に対し
て40質量%添加し、密閉容器に一昼夜以上放置した。
算)とポリプロピレン6gを、密閉型の振動型ボールミ
ル(型式P6、フリッチュジャパン(株)製、実験用遠
心式ボールミル)で24時間、機械的処理し複合化し
た。機械的処理により、温度が上昇するが、温度が50
℃を超えないよう、間欠運転した。粉砕には、直径20
mmのジルコニアビーズを使用した。この時のビーズの
加速度は8Gである。得られたパルプ/ポリプロピレン
を充分に乾燥し、ポリプロピレンの融点Tmを測定した
ところ、Tmは、ポリプロピレン単独で粉砕したときの
180℃から、いずれの実施例においても低下した。セ
ルロースも、この機械的粉砕処理により、結晶化度が3
0ポイント低下した。
ロピレンコンポジットは、粉末状であったが、220
℃、2MPaの条件でプレス成型したところ、容易に平
面板が形成された。得られた平面板の伸度は20%以上
もあり、十分な柔軟性があることが確認された。実施例
2〜7の結果をまとめて、表1に示す。
サルファイト法溶解パルプ)に、ヘキサンを対パルプ1
0質量%(乾燥換算)添加し、密閉容器に一昼夜以上放
置した。ヘキサンを含浸させたパルプ9g(乾燥換算)
とポリエチレン6gを、振動型ボールミル(型式P6、
フリッチュジャパン製、実験用遠心式ボールミル)で2
4時間機械的処理した。機械的処理により、温度は上昇
するが、温度が50℃を超えないように間欠運転した。
粉砕には直径20mmのジルコニアビーズを使用した。
この時のビーズの加速度は8Gである。
白色粉末状であり、構成体中のポリエチレンの融点Tm
は、145℃から138℃に低下した。これを2軸型の
ニーダ(型式75C100、東洋精機社製、ラボプラス
トミル)で200℃、200rpmで加工すると、プラ
スチック状のチップが得られた。
がい、乾燥状態のパルプとポリエチレンを、実施例8と
同条件で、振動ボールミルにて機械的処理した。構成体
中のポリエチレンのTmはやや低下したものの、得られ
た複合体は灰色に変質しており、熱プレスによるシート
形成も困難であった。
サルファイト法溶解パルプ)に、ヘキサンを対パルプ1
0質量%(乾燥換算)、及び水30質量%添加し、密閉
容器に一昼夜以上放置した。この処理により、セルロー
スの疎水性領域及び親水性領域の両領域を緩和させるこ
とができる。ヘキサン及び水を含浸させたパルプ9g
(乾燥換算)とポリスルホン6gを、振動型ボールミル
(型式P6、フリッチュジャパン製、実験用遠心式ボー
ルミル)で24時間機械的処理した。機械的処理により
温度は上昇するが、温度が50℃を超えないように間欠
運転した。粉砕には直径20mmのジルコニアビーズを
使用した。この時のビーズの加速度は8Gである。
ポリスルホンのTgは、190℃から167℃に低下し
た。得られた複合体は、ほとんど無臭の白色粉末状であ
ったが、これを310℃、2MPaの条件でプレス成型
したところ、容易に平面板が形成された。得られた平面
板の伸度は20%以上もあり、十分な柔軟性があること
が確認された。
がって、乾燥状態のパルプとポリスルホンを、実施例9
と同条件で振動ボールミル粉砕にて機械的処理したが、
強い硫黄臭を発し、灰褐色に変化し、熱プレス体はボロ
ボロの物としかならなかった。
に、トルエンを対パルプ30質量%(乾燥換算)及び水
30質量%添加し、密閉容器に一昼夜以上放置した。こ
の処理によりセルロースの疎水性領域及び親水性領域の
両領域を緩和させることができる。トルエン及び水を含
浸させたバクテリアセルロース9g(乾燥換算)と(ポ
リフェニレンエーテル/ポリスチレン)混合物(質量比
1:1)9gを、振動型ボールミル(型式P6、フリッ
チュジャパン製、実験用遠心式ボールミル)で24時間
機械的処理した。機械的処理により温度は上昇するが温
度が50℃を超えないように間欠運転した。粉砕には直
径20mmのジルコニアビーズを使用した。この時のビ
ーズの加速度は8Gである。
ル/ポリスチレン)複合体中の(ポリフェニレンエーテ
ル/ポリスチレン)のTgは、155℃から141℃に
低下した。得られた複合体は粉末状であったが、これを
280℃、2MPaの条件でプレス成型したところ、容
易に平面板が形成された。得られた平面板の伸度は20
%以上もあり、十分な柔軟性があることが確認された。
分子と熱可塑性高分子とを、少ない薬剤量で、分子レベ
ルで複合化させて、熱成形性に優れた複合体を容易に製
造することができる。
を示すグラフ。
径方向の小角X線プロファイルを示すグラフ。
ス繊維の長周期変化を示すグラフ。
Claims (11)
- 【請求項1】 セルロース系高分子と熱可塑性高分子と
からなる高分子複合体を製造するに際して、前者の動的
粘弾性測定又は熱刺激電流測定において、主分散領域に
運動性を与える溶液によってセルロース系高分子が膨潤
された状態で、熱可塑性高分子と共に、粉砕、混合、混
練及び圧延から選ばれた少なくとも一種の処理を行うこ
とを特徴とする高分子複合体の製造方法。 - 【請求項2】 セルロース系高分子が、セルロース、キ
チン、キトサン、微生物産生多糖類、それらの置換度
0.1モル以下の極低置換度誘導体、及びセルロース系
天然複合体から選ばれた少なくとも一種であることを特
徴とする請求項1記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項3】 セルロースが、再生セルロースであるこ
とを特徴とする請求項2記載の高分子複合体の製造方
法。 - 【請求項4】 熱可塑性高分子が、ポリオレフィン系化
合物、ポリアミド系化合物、ポリエステル系化合物、ポ
リアクリル系化合物、ポリビニル系化合物、ポリエーテ
ル系化合物、ポリスチレン系化合物、ポリウレタン系化
合物、ポリエーテルアミド系化合物、ポリエステルアミ
ド系化合物、ポリスルホン系化合物、ポリエーテルスル
ホン系化合物及びポリフェニレンエーテル系化合物から
選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項
1記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項5】 セルロース系高分子の動的粘弾性測定又
は熱刺激電流測定において、主分散領域に運動性を与え
る溶液が、親水性溶液であることを特徴とする請求項1
記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項6】 親水性溶液が、水、アルコール、アルキ
レングリコール、炭素数9以下の低級脂肪酸、重合度2
0以下の低重合度ポリアルキレングリコール、グリセロ
ール、芳香族カルボン酸及びフェノール系化合物から選
ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項5
記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項7】 親水性溶液が水であって、乾燥セルロー
ス系高分子に対する水の割合が12質量%以上90質量
%以下であることを特徴とする請求項5記載の高分子複
合体を製造する方法。 - 【請求項8】 セルロース系高分子の動的粘弾性測定又
は熱刺激電流測定において、主分散領域に運動性を与え
る溶液が、両親媒性溶液であることを特徴とする請求項
1記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項9】 両親媒性溶液が、アミド、スルホキシ
ド、スルホラン、ピロリドンから選ばれた少なくとも一
種であることを特徴とする請求項8記載の高分子複合体
の製造方法。 - 【請求項10】 セルロース系高分子の動的粘弾性測定
又は熱刺激電流測定において、主分散領域に運動性を与
える溶液が、疎水性溶液であることを特徴とする請求項
1記載の高分子複合体の製造方法。 - 【請求項11】 疎水性溶液が、脂肪族炭化水素、芳香
族炭化水素、可塑剤から選ばれた少なくとも一種である
ことを特徴とする請求項10記載の高分子複合体の製造
方法。
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