JP2003127969A - 半潜水式水中翼船 - Google Patents

半潜水式水中翼船

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 航行時の造波抵抗を格段に低減可能な新規推
進方式による水中翼船を提供する。 【解決手段】 航行時に水面より上にある水上船体及び
水面より下にある水中船体、並びにこれらの船体を上下
に連結する1又は複数の支柱を具備する船本体を有し、
前記水中船体が、その前面から水を吸い込むべく開口す
る水吸入口と、吸い込まれた水を後方へ送出するプロペ
ラと、プロペラから送出された水を後方へ向かって噴射
するべく開口した少なくとも1つの水噴射口と、プロペ
ラの背後から少なくとも1つの水噴射口へと延びる少な
くとも1つの送水通路と、水中船体の両側面から張り出
す少なくとも一対の翼とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半潜水式の水中翼
船に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の水中翼船は、水上船体を水面より
上に持ち上げて水上を滑走することにより水の抵抗を小
さくし、高速で航行することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、航行時の造
波抵抗を格段に低減可能な新規推進方式による水中翼船
を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するべ
く本発明の半潜水式水中翼船は、次の構成を有する。
【0005】(1)本発明による半潜水式水中翼船の第
1の実施形態は、航行時に水面より上にある水上船体及
び水面より下にある水中船体、並びに前記水上船体と前
記水中船体とを上下に連結する1又は複数の支柱を具備
する船本体を有する。そして、前記水中船体がその前面
から水を吸い込むべく開口する水吸入口と、前記水吸入
口より吸い込まれた水を後方へ送出するプロペラと、前
記プロペラから送出された水を後方へ向かって噴射する
べく開口した少なくとも1つの水噴射口と、前記プロペ
ラの背後から前記少なくとも1つの水噴射口へと延びる
少なくとも1つの送水通路と、前記水中船体の両側面か
ら張り出す少なくとも一対の翼とを有する。
【0006】(2)上記(1)の形態において、一対の
前記水噴射口が前記水中船体の両側面にそれぞれ開口
し、前記送水通路が各水噴射口へと左右2本延びること
が好適である。
【0007】(3)上記(2)の形態において、前記水
中船体の側面において前記水噴射口が前記翼の下方に設
けられることが好適である。
【0008】(4)上記(1)〜(3)のいずれかの形
態において、前記水吸入口がその開口から後方へ向かっ
て断面が次第に小さくなるべく形成されることが好適で
ある。
【0009】(5)上記(1)〜(4)のいずれかの形
態において、前記翼の後端部に取り付けた回動可能なフ
ラップを有することが好適である。
【0010】(6)上記(1)〜(5)のいずれかの形
態において、前記翼が、前後方向に配置された主翼と補
助翼からなることが好適である。
【0011】(7)上記(1)〜(6)のいずれかの形
態において、前記翼が略平板状に形成され、その上下面
を流線型としかつその前端部をナイフ状エッジとするこ
とが好適である。
【0012】(8)上記(1)〜(7)のいずれかの形
態において、前記支柱が略平板状に形成され、その側面
を流線型としかつその前後端部をナイフ状エッジとする
ことが好適である。
【0013】(9)上記(1)〜(8)のいずれかの形
態において、前記支柱が上下方向の長さを調節可能であ
ることが好適である。
【0014】(10)本発明による半潜水式水中翼船の
第2の実施形態は、船体の前面から水を吸い込むべく開
口する水吸入口と、前記水吸入口より吸い込まれた水を
後方へ送出するプロペラと、前記プロペラから送出され
た水を後方へ向かって噴射するべく前記船体の後面に開
口した水噴射口と、前記プロペラの背後から前記水噴射
口へと延びる1本の送水通路と、前記水中船体の両側面
から張り出す少なくとも一対の翼とを有する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の
実施の形態を説明する。図1は、本発明による水中翼船
の第1の実施形態を示す概略的側面図である。水中翼船
10の船本体は、航行時に水面より上に浮上する水上船
体20及び水面より下に沈む水中船体40、並びに水上
船体20と水中船体40とを上下に連結する支柱30を
有する。水上船体20には操縦室や客室等が設けられる
一方、水中船体40は推進動力を発生する構造を具備す
る。本発明の水中翼船10は、水上船体20と水中船体
40とが分離され、航行時には水中船体40が水面下に
あるすなわち潜水する点から「半潜水式」と称してい
る。
【0016】水中船体40の両側面には、略平板状に形
成された一対の主翼42と、一対の補助翼43が張り出
して設けられる。補助翼43は、通常、主翼42より小
さく主翼42の後方に設けられる。水の抵抗を低減する
ために、主翼42及び補助翼43の上下面は流線型と
し、かつ前端部はナイフ状エッジとすることが好まし
い。また、これらはバランス調整の役割を果たし、水中
翼船10を安定化させる。水中船体40の底部後尾には
舵45が設けられ、水中翼船10の方向を制御する。
尚、上記の説明からも理解できるところであるが、主翼
と補助翼を同大とすることや、補助翼を主翼よりも上部
若しくは下部に設置することも適宜可能である。
【0017】分離された水上船体20と水中船体40と
を連結する支柱30の上下方向の長さを調節することに
より、水上船体20と水中船体40の間隔を調整可能と
してもよい。なぜならば、水深状態によりこの支柱30
を上下に調節することが安定且つ安全航行になるからで
ある。
【0018】さらに水中船体40の両側面には、船体内
部を貫通する送水通路52の出口である一対の水噴射口
53が設けられている。これらの水噴射口53は、水中
翼船10の推進力を担う高圧水を噴射するべく船体後方
に向かって開口する。水噴射口53は、上記主翼42の
下方に設けられることが好適である。高圧水噴射により
主翼42に対して浮力を与えるためである。
【0019】図2は、主翼42の概略的側面図である。
図2(A)は好適例であり、主翼42は、上下面が流線
型に形成されかつその全体が水平軸49を中心として回
動可能である。主翼42を回動させて水平線に対する角
度を変化させることにより航行時の安定性確保、浮力調
整及び速度調整を行うことができる。図2(B)は、主翼
42の他の実施例であり、主翼42の後端部にフラップ
42aが取り付けられている。フラップ42aは主翼4
2への取り付け部を軸として回動可能である。この回動
により図2(A)の例と同様の作用を奏する。フラップ4
2aの上下面は、通常位置においてはそれぞれ主翼42
の流線型上下面と連続的な流線型となるように形成し、
かつ後端部はナイフ状エッジとすることが好ましい。水
の抵抗を低減するためである。図2(A)の主翼42及び
図2(B)のフラップ42aの動作は、手動制御及び/又
は自動制御可能である。また、これらの制御は、操舵室
(操縦室)から行うことが可能である。尚、補助翼43
についても、主翼42と同様の構造としてもよい。
【0020】図3は、図1のA−A断面を示す概略図で
ある。水中船体40を水上船体と連結する支柱30は、
図示の例では前後左右4本設けられている。他の例とし
ては、前後2本の支柱を設ける場合、中央に1本の支柱
を設ける場合等が可能である。各支柱30は全体が略平
板状に形成され、その側面を流線型としかつ前後端部を
ナイフ状エッジとした形状が好ましい。航行時に波を切
ることにより造波抵抗を少なくするためである。
【0021】図3には、水中船体40の両側面の主翼4
2及びフラップ42a並びに補助翼43及びフラップ4
3aの平面形状が示されているが、これらは一例であ
る。従って、例えば、フラップ42a、43aの部分のみ
を徐々に水中船体40から離れた状態で設置することも
可能である。もちろん図2(A)に示したフラップ42
a、43aを設けない好適例の如く、主翼42及び補助
翼43をそれぞれ全体として回動可能としてもよい。
【0022】図4は、図1の水中翼船10の前面図であ
る。水中船体40の先端部に前方に開口して設けられる
水吸入口51は、開口から後方へ向かって延びており、
その断面が次第に小さくなるよう側面を傾斜させテーパ
状に形成されている(斜線部分)。さらに、水吸入口5
1の後部にはプロペラ54が固定されている。プロペラ
54は、水吸入口51から吸入した水を後方へ送出す
る。水吸入口51の形状がテーパ状であることにより開
口から吸い込まれた水は水吸入口51内で後方へ進むに
つれて圧縮される。圧縮された水は、高圧状態でプロペ
ラ54によりさらに後方へと送出される。これにより噴
射力すなわち推進力が高まる。
【0023】尚、図4に示す通り、水中船体40の両側
面に張り出す主翼42は、それぞれの側端が水上船体2
0の側面より突出しない長さに設定されている。水中翼
船10が着岸したとき主翼42が岸壁に衝突しないため
である。もちろん補助翼43についても同様である。
【0024】図5は、図1の水中翼船10の底面図すな
わち水中船体40の底面図である。図中の太矢印は、水
吸入口51に吸い込まれる水の方向と、水噴射口53か
ら噴射される水の方向をそれぞれ示している。プロペラ
54は、適宜の動力源55により回転駆動される。プロ
ペラの回転数を制御することにより水の噴射力すなわち
推進力を調節できる。動力源55としては、蒸気タービ
ン、ガスタービン等の大きな動力が得られるエンジンが
好適である。尚、図5ではプロペラ54及びタービン5
5を明示するために実線で描いているが、実際には水中
船体40の内部に設置されている(以下の図において同
じ)。プロペラ4の背後から後方へ送水通路52が延び
ており、プロペラにより送出された高圧水は送水通路5
2を通り後方へと送られる。図示の例では、水中船体4
0の両側面からそれぞれ高圧水噴射を行うため、送水通
路52が左右2本に分岐している。
【0025】図6は、本発明の水中翼船における水中船
体40の別の実施例を示す図であり、図5と同様の底面
図である。本例では、水吸入口51の側面がテーパ状で
はなく、同一断面のまま後方へ延びている。
【0026】また、図6は、主翼42及び補助翼43の
平面形状についての別の実施例も示している。主翼42
及び補助翼43として多様な形状が可能である。主翼4
2の形状によっては、補助翼43はなくともよい。例え
ば、主翼42が前後方向に相当の長さをもって延びる形
状とすれば補助翼は不要となる。
【0027】図7は、本発明の水中翼船における水中船
体40のさらに別の実施例を示す図であり、図5と同様
の底面図である。本例では、送水通路52が一本のみで
あり、プロペラ54の後方へ向かって直線上に延び、水
中船体40の後面に開口する水噴射口53を具備する。
図5及び図6に示した分岐式の送水通路52に比べて構
造が簡単であり、大きな推進力を必要としない小型船に
適用される。
【0028】さらに、図7を参照して本発明の別の実施
形態を説明する。小型船においては、図1のように水中
船体40と水上船体20を分離させた構造とせず、1つ
の船体としてもよい。この場合、かかる船体の底面図
は、図7と同様に表される。すなわち、船体下半部の前
面に水吸入口51を、船体下半部の後面に水噴射口53
を設け、水吸入口から吸い込んだ水をプロペラ54によ
り後方へ送出し、送水通路52を通して後面の水噴射口
53から噴射することとなる。また船体下半部の両側面
に主翼等を張り出させる。尚、船体上半部には操縦室や
客室が設けられることになる。
【0029】図5〜図7に示した水中船体40には、主
翼42及び補助翼43にそれぞれフラップ42a、43
aが示されているが、もちろん図2(A)で示したフラッ
プ42a、43aを設けない好適例の如く、主翼42及
び補助翼43をそれぞれ全体として回動可能としてもよ
い。
【0030】以上示した本発明の実施例では、造波抵抗
が通常船舶の約1/10に低減され、平均時速40km/
h、最高時速100km/h(通常船舶で約20km/h)が実
現可能である。
【0031】
【発明の効果】以上の通り、本発明による半潜水式の水
中翼船の好適形態では、支柱で連結された水上船体と水
中船体とを具備し、水中船体の前面の水吸入口から水を
吸い込み、水中船体の両側面若しくは後面から高圧水噴
射を行うことにより航行する。航行時には、水上船体と
水中船体を連結する支柱が波の抵抗を受けるが、支柱は
ナイフ状エッジと流線型側面を具備するので造波抵抗が
低減される。また、水中船体側面に設けた主翼等によっ
ても水の抵抗を低減すると共に全体の安定性を確保す
る。
【0032】水上船体と水中船体を分離することによ
り、水上船体の揺れを低減する。また、タービン等の推
進動力は水中船体に設けられるが、支柱により分離され
ているため水上船体へは騒音が伝達し難い。従って、水
上船体における快適な環境が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水中翼船の実施形態を示す概略的
側面図である。
【図2】(A)及び(B)は、各々、図1の水中翼船の
主翼の実施例の概略的側面図である。
【図3】図1の水中翼船のA−A断面を示す概略図であ
る。
【図4】図1の水中翼船の前面図である。
【図5】図1の水中翼船の底面図すなわち水中船体の底
面図である。
【図6】本発明の水中翼船における水中船体の別の実施
例を示す図であり、図5と同様の底面図である。
【図7】本発明の水中翼船における水中船体のさらに別
の実施例を示す図であり、図5と同様の底面図である。
【符号の説明】
10 水中翼船 20 水上船体 30 支柱 40 水中船体 42 主翼 42a フラップ 43 補助翼 49 主翼軸 51 水吸入口 52 送水通路 53 水噴射口 54 プロペラ 55 動力源

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 航行時に水面より上にある水上船体及び
    水面より下にある水中船体、並びに前記水上船体と前記
    水中船体とを上下に連結する1又は複数の支柱を具備す
    る船本体を有し、前記水中船体が、 前記水中船体の前面から水を吸い込むべく開口する水吸
    入口と、 前記水吸入口より吸い込まれた水を後方へ送出するプロ
    ペラと、 前記プロペラから送出された水を後方へ向かって噴射す
    るべく開口した少なくとも1つの水噴射口と、 前記プロペラの背後から前記少なくとも1つの水噴射口
    へと延びる少なくとも1つの送水通路と、 前記水中船体の両側面から張り出す少なくとも一対の翼
    とを有することを特徴とする半潜水式水中翼船。
  2. 【請求項2】 一対の前記水噴射口が前記水中船体の両
    側面にそれぞれ開口し、前記送水通路が各水噴射口へと
    左右2本延びることを特徴とする請求項1に記載の半潜
    水式水中翼船。
  3. 【請求項3】 前記水中船体の側面において前記水噴射
    口が前記翼の下方に設けられることを特徴とする請求項
    2に記載の半潜水式水中翼船。
  4. 【請求項4】 前記水吸入口がその開口から後方へ向か
    って断面が次第に小さくなるべく形成されることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれかに記載の半潜水式水中翼
    船。
  5. 【請求項5】 前記翼の後端部に取り付けた回動可能な
    フラップを有することを特徴とする請求項1〜4のいず
    れかに記載の半潜水式水中翼船。
  6. 【請求項6】 前記翼が、前後方向に配置された主翼と
    補助翼からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれ
    かに記載の半潜水式水中翼船。
  7. 【請求項7】 前記翼が略平板状に形成され、その上下
    面を流線型としかつその前端部をナイフ状エッジとする
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半潜
    水式水中翼船。
  8. 【請求項8】 前記支柱が略平板状に形成され、その側
    面を流線型としかつその前後端部をナイフ状エッジとす
    ることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半
    潜水式水中翼船。
  9. 【請求項9】 前記支柱が上下方向の長さを調節可能で
    あることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の
    半潜水式水中翼船。
  10. 【請求項10】 船体の前面から水を吸い込むべく開口
    する水吸入口と、 前記水吸入口より吸い込まれた水を後方へ送出するプロ
    ペラと、 前記プロペラから送出された水を後方へ向かって噴射す
    るべく前記船体の後面に開口した水噴射口と、 前記プロペラの背後から前記水噴射口へと延びる1本の
    送水通路と、 前記水中船体の両側面から張り出す少なくとも一対の翼
    とを有することを特徴とする半潜水式水中翼船。
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