JP2003116569A - 血液凝固阻害活性を有するフタトゲチマダニ由来のHl−2蛋白質 - Google Patents
血液凝固阻害活性を有するフタトゲチマダニ由来のHl−2蛋白質Info
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Abstract
供することが、本発明の課題である。 【解決手段】 本発明により、フタトゲチマダニ(Haem
aphysalis longicornis)由来の新規な蛋白質であるHl-
2蛋白質、及び当該蛋白質をコードするHl-2遺伝子が与
えられた。Hl-2蛋白質は血液凝固阻害活性を有するため
に、Hl-2蛋白質を有効成分として含有する医薬は、血液
凝固阻害剤として、心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞の治療及
び予防に有効である。またHl-2蛋白質は、医薬開発の場
における血液凝固阻害剤のリード化合物としてもまた、
大きな可能性を有している。
Description
タトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis )の唾液
腺に由来し、血液凝固阻害活性を有するHl-2蛋白質、及
び当該Hl-2蛋白質をコードする遺伝子に関する。
要な社会問題となってきた。成人病に起因する症状、特
に血液関連の疾病、例えば高血圧症、肺高血圧症、心筋
梗塞、脳梗塞、肺梗塞、クモ膜下出血後の血管攣縮など
のように、血管が細くしかも硬くなることによって起こ
る疾病を治療したり、予防することは、高年齢層の社会
では重要な課題である。これらの疾病は、血管弛緩拡張
剤や血液凝固阻害剤によって治療したり予防することが
できる。その様な目的に使用が可能である抗凝固活性を
有するペプチドとしては、ヒルの唾液腺由来のヒルジン
がこれまでに知られていた。ヒルジンは吸血するムシの
唾液腺から同定された抗凝固活性ペプチドであり、トロ
ンビン阻害活性を有する。
ンは合成が困難であり、副作用を有するという欠点を有
していた。そのために大量に得て安全な医薬として用い
るには、これらの問題を解決する必要がある。そこで、
合成が容易であり、かつ副作用を有さない抗凝固活性を
有する蛋白質を採取することが求められていた。その様
な蛋白質は、抗血栓剤のリード化合物として有用であ
り、創薬の分野において高い有用性を有するものと考え
られる。
タトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis )の唾液
腺から単離され、血液凝固阻害活性を有する蛋白質を提
供することにある。そして、更にはバキュロウイルスの
系を用いてその様な蛋白質の大量供給を可能とすること
にある。
めに、本出願において以下の発明を提供するものであ
る。本発明は、配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番
号(-19)-60で示されるアミノ酸配列からなることを特徴
とする、フタトゲチマダニ由来のHl-2蛋白質である。血
液凝固阻害活性を有し、その一部が欠損、置換若しくは
付加された蛋白質もまた、本発明の範囲内である。
す、アミノ酸番号1-60で示されるアミノ酸配列からなる
ことを特徴とする、フタトゲチマダニ由来のHl-2蛋白質
である。血液凝固阻害活性を有し、その一部が欠損、置
換若しくは付加された蛋白質もまた、本発明の範囲内で
ある。
す、塩基番号1-240 で示される塩基配列からなることを
特徴とする、フタトゲチマダニ由来のHl-2遺伝子であ
る。血液凝固阻害活性を有し、その一部が欠損、置換若
しくは付加されたポリペプチドをコードする遺伝子もま
た、本発明の範囲内である。
して含有する血液凝固阻害剤である。
は動物の血液や血管に対して特異な活性をもつ物質が含
まれている。本発明者らは、唾液腺から抗凝血作用を持
つ活性物質を同定し、単離・精製し、それらの有効成分
の性状を解析することにより、また、遺伝子cDNAのクロ
ーニングを行うことにより、バキュロウイルス発現系に
よって血管弛緩機能を持つ蛋白質を多量に製造できるこ
とを明らかにして本発明を完成するに至った。
ゲチマダニ(Haemaphysalis longicorni:Hl )に注目
し、フタトゲチマダニ由来の抗凝結活性を有する蛋白質
を採取することを試みた。フタトゲチマダニ約30匹から
唾液腺を摘出し、全RNA を抽出し、poly(A)+RNA として
リバーストランスクリプターゼによりdsDNA を合成し、
トランスファーベクターに組み込んで唾液腺cDNAライブ
ラリーを作製した。Hl唾液腺cDNAライブラリーからラン
ダムにコロニーをピックアップして、塩基配列の解析を
行った。1889個の配列を決め、重複を除いて分泌シグナ
ルを持つもの93個のcDNAを得た。このうち、12個の全塩
基配列を決めた。
ス(AcNPV ) を用いた蛋白質発現系で発現させるための
トランスファーベクターコンストラクトを作製し、ウイ
ルスにトランスフェクトし、多核体を作らない、即ち挿
入蛋白質を発現しているウイルスクローンを分離した。
蛋白質の発現をSDS-PAGEにより確認し、HPLCによるゲル
濾過・イオン交換クロマトグラフィーにより精製するこ
とにより、本発明のHl-2蛋白質を採取した。そして上記
の方法により採取した本発明の蛋白質が、血液凝固に及
ぼす作用を検討した。
機序の違いから、内因系凝固反応と外因系凝固反応の2
つの経路が知られている。内因系凝固反応は、血液が異
物面に接触することにより惹起される反応である。血液
凝固のカスケード系を、図1において示す。図1に示さ
れるように、異物面との接触により生成した活性化第XI
a 因子は、カルシウム存在下で第IX因子を活性化させて
IXa を生じ、それが引き金となってフィブリンが生成し
て血栓が形成する。一方、外因系凝固反応は、組織因子
(TF)が第VIIa因子と複合体を形成することにより開始
され、第IX因子、第X 因子をともに活性化することが引
き金となって血栓が形成される。
するまでの時間を測定することにより血液凝固阻害作用
の検討を行うことが、一般的に行われている。しかし、
この方法では最終的なフィブリン形成による凝固を観察
するため、血液凝固阻害剤の具体的な作用点および作用
機構の詳細については判断できない。すなわち、血液凝
固反応は複雑な連鎖反応であるので、反応経路の一部が
阻害されれば、結果的にそれ以降の反応は進行せず、凝
固は完結しないことになるからである。
価するために、活性化部分トロンボプラスチン時間(ac
tivated partial thromboplastin time:APTT)と、プロ
トロンビン時間(prothrombin time:PT )の測定を行っ
た。前者は内因系凝固時間を、後者は外因系凝固時間を
それぞれ反映する。その結果、Hl-2蛋白質は内因系凝固
時間を濃度依存的に延長した。よって本発明のHl-2蛋白
質は血液凝固を抑制する作用を有し、血液凝固阻害剤と
して有効であることが示された。そのために、Hl-2蛋白
質は、心筋梗塞、肺梗塞、脳梗塞等の治療薬や予防薬に
有効であると思われる。
す、アミノ酸番号(-19)-60で示されるアミノ酸配列によ
り特定される。本願明細書において、配列番号1に示す
蛋白質の一部が欠失、置換若しくは付加された蛋白質と
は、配列番号1に示すアミノ酸配列において、20個以
下、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下のア
ミノ酸が置換された蛋白質である。また、その様な蛋白
質と配列番号1に示すアミノ酸配列とは、95%以上、好
ましくは97%以上、更に好ましくは99%以上の相同性を
有する。その様な蛋白質も、血液凝固を阻害するHl-2蛋
白質としての機能を有する限り、本発明の範囲内であ
る。なお、配列表の配列番号1において、-19から-1の
部分はシグナルペプチドを示し、プロセシングを受けた
結果、成熟蛋白質はアミノ酸番号1-60で示される60個の
アミノ酸からなっている。
ードしており、配列表の配列番号2に示す、塩基番号1-
240 で示される塩基配列からなることを特徴とする。な
お、その塩基配列全体が読み枠であり、上記の蛋白質を
コードしている。遺伝子組み換え技術によれば、基本と
なるDNA の特定の部位に、当該DNA の基本的な特性を変
化させることなく、あるいはその特性を改善する様に、
人為的に変異を起こすことができる。本発明により提供
される天然の塩基配列を有する遺伝子、あるいは天然の
ものとは異なる塩基配列を有する遺伝子に関しても、同
様に人為的に挿入、欠失、置換を行う事により、天然の
遺伝子と同等のあるいは改善された特性を有するものと
することが可能であり、本発明はそのような変異遺伝子
を含むものである。
一部が欠失、置換若しくは付加された遺伝子とは、配列
番号2に示す塩基配列において、20個以下、好ましくは
10個以下、更に好ましくは5個以下の塩基が置換された
遺伝子である。また、その様な遺伝子と配列番号2に示
す塩基配列とは、95%以上、好ましくは97%以上、更に
好ましくは99%以上の相同性を有する。その様な遺伝子
も、血液凝固を阻害するHl-2蛋白質としての機能を有す
る蛋白質をコードする限り、本発明の範囲内である。ま
た、その様な遺伝子はストリンジェントな条件下で、配
列表の配列番号2に示す遺伝子とハイブリッドを形成す
る。
のcDNAを組みこんだバキュロウイルス発現系で多量に製
造することができる。それらの一例を次に挙げる。カイ
コ(Bombyx mori )の核多角体ウイルス(BmNPV )を用
い、カイコの培養細胞BmN4又はカイコの幼虫を用いて発
現させることができ、それぞれ培養液又はカイコ体液か
らクロマトグラフィーにより単離できる。また、Hl-2蛋
白質のcDNAをオートグラファカリフォルニカ(Autograp
ha californica)の核多角体ウイルス(AcNPV)に組込
み、ヨトウムシ(Spodoptera frugiperda )のSF9 細
胞、あるいはイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni )
のTn5 細胞で発現させ、培養上清から同様にクロマトグ
ラフィーにより精製することができる。
白質のcDNAを組みこんだ大腸菌による発現系を用いるこ
とによっても多量に製造することができる。その様な目
的のために、Hl-2蛋白質のcDNAを増幅し、pGEX6P-1,pGE
X-2T,pGEX-3X等のプラスミドに組み込んだglutathione-
S transferase(GST)融合蛋白質発現ベクターを作製する
ことができる。そして、その発現ベクターにより大腸菌
を形質転換し、IPTGを含む培地中で培養することによ
り、大腸菌においてGST 融合Hl-2蛋白質の発現を誘導す
ることができる。この様な目的のために使用可能な大腸
菌株としては、例えばBL21株、DH5α株、NM522 株等を
挙げることができる。そして、大腸菌体内において誘導
されたGST 融合Hl-2蛋白質を、大腸菌を破砕することに
より回収することができる。その様にして回収されたGS
T 融合Hl-2蛋白質を、グルタチオンビーズを用いたアフ
ィニティークロマトグラフィーにより、精製することが
できる。
腺より血液凝固阻害作用を持つ活性物質を同定し、単離
・精製し、その遺伝子cDNAのクローニングを行うことに
より、バキュロウイルス発現系により血液凝固阻害作用
を持つ蛋白質を多量に製造できるものである。また、蛋
白質の血液凝固阻害作用に起因する活性部位を究明し、
構造解析が進めば、分子設計手法で活性物質を一般の化
学合成手法で製造することも可能である。
作用を有する医薬のリード化合物としても高い有用性を
有すると思われる。即ちHl-2蛋白質に種々の改変を行う
ことにより、より血液凝固阻害作用の高い物質を得るこ
とができる可能性がある。本発明のHl-2蛋白質は、その
様な検討の基礎となる生理活性物質を与えるものであ
り、更なる新規な抗凝血物質を得るためのリード化合物
としても大きな有用性を有するものである。
るが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(Haemaphysalis longicornis )胸部より唾液腺を摘出
した。 これより、Microprep mRNA Purification kit(Am
ersham pharmacia社製)を用いて、唾液腺mRNAを抽出・
精製した。 次にこのmRNAをテンプレートに用い、Supers
cript Plasmid system(Life technologies 社製)で唾
液腺cDNAライブラリーを構築した。このライブラリーか
らランダムにクローン(総数1889クローン)を拾い上
げ、QIA Prep spin miniprep kit(QIAGEN 社製)にてプ
ラスミド抽出・精製した。このプラスミドに組み込まれ
ているcDNAの塩基配列をABI PRISM 310 Genetic analye
r( PE biosystems社製)を用いて解読した。 解読された
cDNAの塩基配列は、Genetyx MAC ver7.3(Software dev
elopment社製)を用いて解析した。その結果、 同一の塩
基配列を有する12個のcDNAクローンが見いだされ、これ
をH1-2と命名した。
予想される分泌シグナル配列部分を除いたcDNAをPCR 法
にて増幅した後、プラスミドpGEX6-1 (Amersham pharm
acia社製)のクローニングサイトに組み込んだglutathi
one-S transferase( GST)融合蛋白発現ベクターを作製
し、定法に従い組み換え蛋白質を大腸菌BL-21 株にて発
現させた。 超音波処理した大腸菌破砕物からのGST 融合
Hl-2蛋白質の回収は、glutathione Sepharose 4B(Amer
sham pharmacia社製)を用いたアフィニティークロマト
グラフィーにより行った。さらに回収したGST 融合H1-2
をMono-Q(Amersham pharmacia社製)を用いた陰イオン
交換クロマトグラフィーにかけ、純化し、以下の実験に
供した。
びプロトロンビン時間の計測)ヒト血漿標品(商品名:
カリプラズマインデックス100 ,bioMerieux社製)20μ
1 に対し、50 mM TrisHCl pH7.0 ,150mM NaClに溶解し
た精製H1-2を20μ1 加え、37℃でインキュベートした。
5 分後、1/10に希釈したアクチン(商品名:データファ
イ・APTT CYSMEX 社製)あるいはトロンボプラスチン
(商品名:オーソブレーントロンポプラスチン、オーソ
・クリニカル・ダイアグノスティックス社製)を35μ1
加えさらに2 分間インキュベートした。最後に25mM CaC
12を25μl加え、これより凝固が完了するまでの時間をA
melung KC-10A micro(エム・シナ・メディカル社製)
により計測した。
す。この結果より、Hl-2は濃度依存的にAPTTを延長させ
る活性を示した。すなわち、フタトゲチマダニ唾液腺由
来蛋白質Hl-2は内因系瀬固反応を阻害する蛋白質である
ことが明らかとなった。
新規な蛋白質であるHl-2蛋白質、及び当該蛋白質をコー
ドするHl-2遺伝子が与えられた。Hl-2蛋白質は血液凝固
阻害活性を有するために、Hl-2蛋白質を有効成分として
含有する医薬は、血液凝固阻害剤として、心筋梗塞、肺
梗塞、脳梗塞の治療及び予防に有効である。またHl-2蛋
白質は、医薬開発の場における血液凝固阻害剤のリード
化合物としてもまた、大きな可能性を有している。
ケード系を示す図である。
伝子の配列を示す図である。
ラスチン時間(APTT)に及ぼす影響を示すグラフであ
る。
Claims (5)
- 【請求項1】 フタトゲチマダニ由来の蛋白質であり、
以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなる
ことを特徴とする蛋白質。 (a)配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号(-19)-
60で示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする蛋
白質。 (b)血液凝固阻害活性を有し、(a)の一部が欠損、
置換若しくは付加された蛋白質。 - 【請求項2】 請求項1記載の蛋白質をコードする遺伝
子。 - 【請求項3】 フタトゲチマダニ由来の蛋白質であり、
以下の(c)または(d)に示すアミノ酸配列からなる
ことを特徴とする蛋白質。 (c)配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1-60で
示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする蛋白
質。 (d)血液凝固阻害活性を有し、(c)の一部が欠損、
置換若しくは付加された蛋白質。 - 【請求項4】 フタトゲチマダニ由来の蛋白質をコード
し、以下の(e)または(f)に示す塩基配列からなる
ことを特徴とする遺伝子。 (e)配列表の配列番号2に示す、塩基番号1-240 で示
される塩基配列からなることを特徴とする遺伝子。 (f)血液凝固阻害活性を有する蛋白質をコードし、
(e)の一部が欠損、置換若しくは付加された遺伝子。 - 【請求項5】 請求項3記載の蛋白質を有効成分として
含有する、血液凝固阻害剤。
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JP2001317155A JP3648544B2 (ja) | 2001-10-15 | 2001-10-15 | 血液凝固阻害活性を有するフタトゲチマダニ由来のHl−2蛋白質 |
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2001
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