JP2003111832A - 硬組織代替材料及びその製造方法 - Google Patents
硬組織代替材料及びその製造方法Info
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Abstract
製造方法を提供することにある。 【解決手段】 本発明の硬組織代替材料は、配向性を有
するリン酸カルシウム系物質を含有することを特徴とす
る。また、本発明の硬組織代替材料の製造方法は、生体
硬組織中の有機成分を除去した後、前記生体硬組織を70
0〜1400℃までの間で焼成を行なうことを特徴とする。
Description
びその製造方法に関し、特に、配向性を有するリン酸カ
ルシウム硬組織代替材料及びその製造方法に関する。
及び骨置換材料に分けられる。骨補填材料には、荷重を
支える必要がなく骨内にできた空洞を補填し将来の骨新
生を期待するものと、骨欠損を補填し荷重を支える目的
で使用されるものとがある。骨置換材料は、十分な機械
的強度を持ち生体内で劣化せず、かつ、骨と界面で長期
に結合を維持できる材料である。
要なく、骨親和性に優れたものが望まれる。したがっ
て、高分子や金属に比べて親和性により優れたセラミッ
クスが用いられている。
との結合をはかれる材料が使用されている。機械的強度
の点からみると金属材料が優れている。長期間生体内に
埋入される材料ではイオン溶出が低く、生体内で化学的
に安定な不動態膜が形成されるものが適しており、ステ
ンレス鋼、Co−Cr合金及びチタン又はチタン合金の
3種類の金属が用いられている。
硬組織代替材料は、いずれも無配向性であり、生体本来
が持つ部位に応じた配向性を考慮することなく材料設計
が行なわれてきた。そのため、ある特定の部位におい
て、ヤング率又は破壊強度等が本来の生体硬組織材料と
異なり、耐久性、生体親和性又は骨再生等の面で問題を
生じていた。このようなことから、生体硬組織により近
い硬組織代替材料の開発が望まれていた。しかし、この
ような硬組織代替材料はこれまで知られていない。
組織代替材料及びその製造方法を提供することにある。
に、発明者らは、生体硬組織の微小領域における構造解
析について鋭意研究した結果、本発明の硬組織代替材料
及びその製造方法を見出すに至った。
るリン酸カルシウム系物質を含有することを特徴とす
る。
実施態様において、リン酸カルシウム系物質が、多孔質
であることを特徴とする。
実施態様において、リン酸カルシウム系物質が、ヒドロ
キシアパタイトに代表されるアパタイト、α−TCP、
β−TCP、TTCPからなる群から選択される少なく
とも1種であることを特徴とする。
は、生体硬組織中の有機成分を除去した後、前記生体硬
組織を700〜1400℃までの間で焼成を行なうことを特徴
とする。
の好ましい実施態様において、焼成の時間が、0〜60
0時間であることを特徴とする。
の好ましい実施態様において、生体硬組織中の有機成分
を、300〜700℃の温度で熱処理を行なうことによ
り除去することを特徴とする。
の好ましい実施態様において、熱処理の時間が、1〜1
000時間であることを特徴とする。
の好ましい実施態様において、熱処理の時間が、焼成時
間より長いことを特徴とする。
性を有するリン酸カルシウム系物質を含有する。本発明
に適用可能な硬組織代替材料としては、セラミックス、
アルミナ等の無機材料、ステンレス鋼、Co-Cr合金、チ
タン合金等の金属材料を挙げることができる。セラミッ
クスは、さらに、生体活性セラミックス、生体不活性セ
ラミックス等に分けることができる。生体セラミックス
としては、リン酸カルシウム系セラミックス、シリカ系
ガラス及び結晶化ガラスなどが挙げられる。リン酸カル
シウム系セラミックスとしては、ヒドロキシアパタイト
(HAp)、リン酸三カルシウムが良く知られており、こ
れらは、人工歯根、皮膚端子、金属コーティング材など
に使われている。本発明は、これらの硬組織代替材料が
含まれる。本発明においては、これらの硬組織代替材料
の一部又は全部について、配向性を有するリン酸カルシ
ウム系物質を含有する。
ン、酸素、カルシウムを主たる構成元素とする結晶性物
質のことを意味し、例えば、ヒドロキシアパタイトに代
表されるアパタイト、α−TCP,β−TCP、TTC
Pなどが含まれる。ここでは、アパタイトとは、六方晶
系若しくは斜方晶系に分類されるヒドロキシアパタイト
の一部イオンが、金属イオン、炭酸イオン、フッ素イオ
ン等で置き換わったものをも含む。本発明においては、
このようなリン酸カルシウム系物質が配向性を有する。
は、硬組織代替材料に所望の力学特性、生体親和性を付
与することができる。配向性は、本来、生体硬組織に存
在するものであり、当該生体硬組織が部位に応じた特別
なヒドロキシアパタイト(HAp)結晶子のc軸配向を持
つことにより、生体内において最適な部位特性を有して
いる。本発明においては、このような部位特有の配向性
に着目し、見出されたものである。
する結晶子が一定方向に優先的に配列することをいう。
配向には、ポリエチレンフィルムに見られる面配向(例
えば、c軸がフィルム面内にあって、それ以外には配向
性がないもの。)、一軸配向(c軸が繊維方向に配向する
もの。)、木綿、麻に見られるらせん配向(c軸が繊維配
向と一定の傾きを持つもの。)、さらに二重配向(ある結
晶面が繊維軸を含む一定の面に平行なもの。)などがあ
る。したがって、正常な生体硬組織の配向性と同様の配
向性を有するように、硬組織代替材料を設計すれば、硬
組織代替材料に所望の力学特性を付与することができ
る。
リン酸カルシウム系物質が、多孔質であることが好まし
い。これは、多孔質である場合、骨芽細胞を含め細胞の
活動を活性化し、硬組織再生を促進することができ、ま
た、組織再生初期に形成される新たなコラーゲン繊維を
誘導し得るからである。
る傾向にある。したがって、所望の強度に併せて多孔質
度を決定することができる。たとえば、気孔の大きさと
しては、直径2〜300μm程度、好ましくは、100
〜300μmである。
したがって、強度を要求される部分については、120
0℃程度の熱処理によって気孔を消滅させても良い。こ
の場合であっても、配向性を保つことができ、緻密化に
よって特定方向に強化された材料を得る事ができる点有
利である。1200℃程度としたのは、かかる温度で通常の
硬組織中の気孔は消失すると考えられるからである。
について説明する。まず、硬組織代替材料が、主として
リン酸カルシウム系物質からなる場合について説明す
る。まず最初に、本発明の硬組織代替材料の製造方法で
は、生体硬組織中の有機成分を除去する。有機成分を除
去する理由は、適用する生体からの拒絶反応を少なくす
るためである。有機成分の除去方法としては、特に限定
されず、例えば、熱処理、酸性溶液への浸漬などを挙げ
ることができる。迅速、かつ完全に有機物質を除去する
という観点から、有機成分の除去方法としては、熱処理
が好ましい。
熱処理することにより、有機成分の除去が可能である。
有機成分を除去できない場合、上記の温度範囲より高く
ても、あるいは長時間でもよい。たとえば、強度を主目
的とした硬組織生体材料を得る場合、気孔が殆ど存在し
ないリン酸カルシウム系物質も想定され得る。この場
合、700℃以上の温度、たとえば、1200℃程度に温度を
上げて熱処理を行なう事により、気孔がほとんど消失
し、緻密性が優れ、かつ、配向性を有する硬組織生体材
料を作製することができる。
すぎる場合には、結晶がランダムに成長してしまうの
で、適宜成長を抑えながら熱処理を行なうことが望まし
い。
を700〜1400℃までの間で焼成を行なう。このような温
度範囲で焼成するのは、リン酸カルシウム系物質の結晶
粒径、多孔質度、配向性、力学特性を調製するためであ
る。通常、温度がより高いと、結晶粒径は増大し、多孔
質度は低下し、c軸配向性は増大する傾向がある。な
お、配向は結晶粒界の移動によって行なわれるため、最
初の組織に強く依存する。そのため、部位に応じて生体
硬組織そのものの配向性が異なることを利用して、出発
原料とすることができる。
の硬組織代替材料の大きさ、形態等にもより適宜変更可
能であり、特に限定されるものではない。熱処理時間の
短縮化、効率化という観点から、焼成の時間は、0〜5
00時間であることが好ましい。通常、焼成時間がより
長いと、結晶粒径は増大し、多孔質度は低下し、c軸配
向性は増大する傾向がある。また、有機成分を除去する
ための熱処理と、焼成との関係については、熱処理時間
を焼成時間より長めに設定することが好ましい。これ
は、専ら有機成分を効率的に除去するのに都合がいいか
らである。
配向性の評価は、微小領域X線回折法により、結晶粒径
と多孔質度は、走査型電子顕微鏡法(SEM法)、透過型電
子顕微鏡法(TEM法)等により測定することができる。
ム系物質以外のものを含む場合について説明する。この
場合、配向性を有するリン酸カルシウム系物質の製造
は、上述にしたがって行なうことができる。
シウム系物質に対し、その配向性を失うことなく、従来
からある硬組織代替材料と組み合わせることで,複合化
し、材料とすることが可能である。複合化には、従来材
の粉末、もしくはバルク状態での組み合わせ,さらには
熱処理等による、複合組織界面の結合の促進を行うか、
もしくは従来材の溶融状態でのリン酸系物質への浸漬
等、リン酸系物質の配向性を保持しつつ複相組織形成を
可能とする全ての手段を含む。
発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではな
い。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更
することが可能であることは言うまでもない。
骨間部を600℃近傍の低温度域にて100時間熱処理するこ
とで、HAp結晶を成長させることなく、有機成分のみ
を除去した。その後、種々の温度域により適宜焼成を行
なうことで、HApの結晶粒径、多孔質度、配向性、力学
特性の異なる配向性多孔質材料を作製した。
後、種々の温度で焼成したリン酸カルシウム系物質につ
いて、SEMで撮影した写真を示す。図1aは、600℃
で100時間熱処理を施したものを示し、図1bは、6
00℃での熱処理後、900℃で1時間焼成したもの
を、図1cは、600℃での熱処理後、1000℃で1
時間焼成したものを、図1dは、600℃での熱処理
後、1100℃で1時間焼成したものを、図1eは、6
00℃での熱処理後、1200℃で1時間焼成したもの
を、図1fは、600℃での熱処理後、1300℃で1
時間焼成したものを、それぞれ示す。
酸カルシウム系物質の熱処理温度依存性を示す。具体的
に、600℃、100hでの熱処理直後、1000℃、1100℃、12
00℃、1300℃で1時間の間、大気中で焼成した場合の大
腿骨長手方向へのc軸配向性の変化を示している。図2
(a)は、リン酸カルシウム系物質の概略図を示す。図2
(b)及び(c)において、縦軸は、回折強度比(回折強度
比は、(002)面からの回折強度比を、(310)の回折強度比
で割ったものであり、a軸に対するc軸の相対的な回折強
度比を示す。)、すなわち、縦軸はc軸配向性の強さ表
す回折X線の強度比を示し、横軸は、リン酸カルシウム
系物質の位置を示す。この位置は、具体的に図2(a)に
記された番号の位置と一致している。
手断面内での位置を示している。この図2(b)から、
4〜5の位置で最高のC軸配向性を有している事、温度
を上げるとC軸配向性が増す事が分かる。これは、4〜5
の位置は皮質骨のほぼ中心付近に相当し、中心部付近ほ
ど骨の成熟度が高く、高配向性を示しているものと考え
られる。ランダム材料の配向性を示す縦軸強度比は、5
以下であるので、図2(b)の結果から、すべての熱処理
状態でHApのc軸配向性を保持できていることを示し
ている。
とともに、結晶粒径は増大し、多孔質度は低下、c軸配
向性は強調される傾向があることが分かる。1300℃以上
の焼鈍では、HAp以外のα−TCP、TTCP、Ca
Oといったリン酸カルシウムが形成される場合がある
が、この場合、材料の溶解性の向上につながる。
接線方向から見たc軸の配向性を示す図である。こちら
では大きなc軸配向性は最初から見られず、熱処理を行
ってもその配向性は大きくは変化しない事が分かる。
手方向に沿っての配向性が強く,熱処理によってこの傾
向が強められることを意味することがわかる。
調べた。図3(a)は、リン酸カルシウム系物質の模式図
を示す。図3(b)は、熱処理温度と、変化率等との関
係を示す。
を、Sは、面積を、Vは、体積を示す。この図3から、
1200℃で完全に緻密化が達成されたと考えられる。この
結果から、試料の体積収縮を求めて気孔率を算出した。
例えばhは骨の長手方向に沿っての長さ変化であり、S
はそれに垂直な面での面積の変化、S1/2はそれゆえ長
さの次元に換算したものです。hとS1/2の温度変化を
比較した場合、大きな違いは観察されなかったので、配
向性や組織の異方性(長手方向とそれに垂直な方向へ
の)が存在するものの、気孔消滅(収縮)に対しては方
位に対する異方性はないことが分かる。
気孔率が低下し緻密化が進行し、1200℃でほぼ完全な緻
密体となること、その間、粒界エネルギーの低下を駆動
力に粒界が移動することで、c軸配向したアパタイト粒
が優先的に取り残され、配向性が高まることが分かっ
た。また、表面エネルギーの減少を駆動力にして緻密化
も同時進行することが分かる。
グ率、破壊強度といった力学的特性に異方性が生じると
ともに、生体原組織に近い配向性を実現することができ
るという有利な効果を奏する。
質が除去されているので、適用する生体からの拒絶反応
が極めて少ないという有利な効果を奏する。
組織の部位に応じた配向性を有するので、力学特性、生
体親和性を含めた骨再生を促進し得るという有利な効果
を奏する。
の場合、組織再生初期に形成される新たなコラーゲン繊
維を誘導し得るという有利な効果を奏する。
系物質のSEMによる写真を示す図である。
の熱処理温度依存性を示す図である。
の変化を示す図である。
Claims (8)
- 【請求項1】 配向性を有するリン酸カルシウム系物質
を含有する硬組織代替材料。 - 【請求項2】 リン酸カルシウム系物質が、多孔質であ
る請求項1記載の硬組織代替材料。 - 【請求項3】 リン酸カルシウム系物質が、ヒドロキシ
アパタイトに代表されるアパタイト、α−第3リン酸カ
ルシウム(α−TCP)、β−第3リン酸カルシウム
(β−TCP)、リン酸4カルシウム(TTCP)から
なる群から選択される少なくとも1種であることを特徴
とする請求項1又は2項に記載の硬組織代替材料。 - 【請求項4】 生体硬組織中の有機成分を除去した後、
前記生体硬組織を700〜1400℃までの間で焼成を行なう
ことを特徴とする硬組織代替材料の製造方法。 - 【請求項5】 焼成の時間が、0〜500時間であるこ
とを特徴とする請求項4記載の方法。 - 【請求項6】 生体硬組織中の有機成分を、300〜7
00℃の温度で熱処理を行なうことにより除去すること
を特徴とする請求項5記載の方法。 - 【請求項7】 前記熱処理の時間が、1〜1000時間
であることを特徴とする請求項6記載の方法。 - 【請求項8】 前記熱処理の時間が、焼成時間より長い
ことを特徴とする請求項6又は7項に記載の方法。
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JP2001311060A JP3994152B2 (ja) | 2001-10-09 | 2001-10-09 | 硬組織代替材料及びその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005336023A (ja) * | 2004-05-28 | 2005-12-08 | National Institute For Materials Science | 配向アパタイト焼結体の製造方法 |
JP2007303944A (ja) * | 2006-05-10 | 2007-11-22 | Osaka Univ | 硬組織の評価方法 |
WO2007148431A1 (ja) * | 2006-06-20 | 2007-12-27 | Osaka University | インプラント材料及び当該インプラント材料の製造方法 |
WO2008041563A1 (fr) * | 2006-09-26 | 2008-04-10 | National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology | Biomatériau, procédé de construction de celui-ci et son utilisation |
-
2001
- 2001-10-09 JP JP2001311060A patent/JP3994152B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP4504100B2 (ja) * | 2004-05-28 | 2010-07-14 | 独立行政法人物質・材料研究機構 | 配向アパタイト焼結体の製造方法 |
JP2007303944A (ja) * | 2006-05-10 | 2007-11-22 | Osaka Univ | 硬組織の評価方法 |
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WO2008041563A1 (fr) * | 2006-09-26 | 2008-04-10 | National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology | Biomatériau, procédé de construction de celui-ci et son utilisation |
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