JP2003088371A - 遺伝子導入用組成物 - Google Patents

遺伝子導入用組成物

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JP2003088371A
JP2003088371A JP2001266686A JP2001266686A JP2003088371A JP 2003088371 A JP2003088371 A JP 2003088371A JP 2001266686 A JP2001266686 A JP 2001266686A JP 2001266686 A JP2001266686 A JP 2001266686A JP 2003088371 A JP2003088371 A JP 2003088371A
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Kazuo Maruyama
一雄 丸山
Hironobu Yanagimori
宏宣 柳衛
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Mitsubishi Pharma Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 対象細胞において遺伝子置換あるいは遺伝子
産物の発現抑制を可能とすることで医薬用途に利用可能
な遺伝子導入用の組成物を提供する。 【解決手段】 遺伝子導入用の組成物であって、生理的
条件下において互いに電荷的に結合しない下記の2成
分:(1)例えば陰性に荷電している膜融合性ペプチドな
どの両親媒性の膜融合性化合物、及び(2)核酸又は核酸
を含有する複合体を含む組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は遺伝子治療のための
医薬などに有用な遺伝子導入用の組成物に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】遺伝子に異常のある細胞に対して外部か
ら正常な遺伝子を補充するあるいは置換することで疾患
をその根本から治療する遺伝子治療は全く新しい医療の
概念として期待さている。現在の遺伝子導入法として
は、局所投与に遺伝子導入用に組換えたウイルスを注入
する方法、あるいは対象となる細胞を対外に取り出し、
培養系でウイルスを用いて遺伝子を導入した後、再度生
体内に戻すex vivo法が主流になっている。これまで、
レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス
及びエイズウイルスなどの組換え体が遺伝子治療用のベ
クターとして用いられている。
【0003】しかし、ウイルス自体を用いることにはい
くつかの問題が指摘されている。すなわち、予期しない
変異ウイルスの出現による毒性や、ウイルスの免疫原性
によって生体内で活性が中和される可能性があること、
さらに使用可能な遺伝子サイズに制限があり、比較的小
サイズのもしか使用できなことなどが問題である。
【0004】ウイルスを用いない方法としては、カチオ
ニックリポソームやカチオニックポリマーを用いた非ウ
イルスベクターの研究が進展している。これらはアニオ
ン性のDNAがカチオン性の高分子(リポソームの場合
は分子集合体)とイオン的な複合体を形成することを利
用して微粒子を形成する方法である。カチオニックリポ
ソームは、カチオン性脂質を用いて作製したリポソーム
であり、DNAとの複合体を形成することにより遺伝子
の発現が増強することをFelgnerらが最初に報告した。
以来、カチオニックリポソームをプラスミドDNA導入
試薬として用いる研究が幅広く行われてきている。
【0005】カチオニックリポソーム−DNA複合体は
正電荷を帯びた微粒子であり、複合体は負に帯電した細
胞表面に吸着した後、エンドサイトーシスにより取り込
まれると考えられている。これら非ウイルスベクターに
より、ウイルスの問題点を一部改善できたものの、非ウ
イルスベクターは遺伝子発現効率が低いこと、複合体が
不均一であり時として生体内投与に適さない凝集体を形
成するなどの問題があった。
【0006】このような非ウイルスベクターの発現効率
が低い原因の一つとしてエンドサイトーシスされたDN
A複合体がライソゾームに移行し分解されることが考え
られている。当該複合体を効率的にライソゾームをくぐ
り抜けることを目的として、生理的条件で陰性を有する
膜融合性ペプチドをさらにこの複合体に加え、DNA−
リポソーム(ポリマー)−膜融合性ペプチドの3重複合
体を形成することが最近報告された(Gottschalkら Gen
e Therapy (1996) 3, 448, JaaskelaineらEuropean J.o
urnal of Pharmaceutical Science (2000) 10, 187)。
これらの膜融合性ペプチドとしてはHA、JTS−1な
どのペプチドが知られている。もっとも、3重複合体形
成により遺伝子発現効率は改善されたものの、これらは
アニオン(陰性)、カチオン(陽性)、アニオン(陰
性)の複雑な、そして微妙な電荷のバランスの上になり
たっており、いっそう凝集体が形成し易いという問題を
有している。このため、凝集体形成を回避するために複
合体の形成条件を厳密に設定するといった高度な技術が
必要である。
【0007】一方で、このような複雑な複合体を形成す
ることなく、つまりDNA単独で遺伝子導入を行う試み
もなされている。そのような方法として、肝血管や胆管
から直接大量のDNAを投与する方法、臓器に直接イン
ジェクションする方法(NomuraらGan To Kagaku Ryoho
(1997) Feb. 24(4), 483-8; Kobayashiら J. Pharmaco
l. Exp. Ther. (2001) Jun. 297(3), 853-60)などが報
告されている。しかし、これらの方法では、大量のDN
Aと溶媒を必要とし、大量投与しているにも関わらず発
現率は低い。また、安全性の面からも医療用に用いられ
る可能性のあるものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、遺伝
子導入用の組成物を提供することにある。より具体的に
は、細胞への遺伝子導入に用いることができ、対象細胞
において遺伝子置換あるいは遺伝子産物の発現抑制を可
能とすることで、医薬用途として利用可能な遺伝子導入
用の組成物を提供することが本発明の課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、
生理的条件下において互いに電荷的に結合しない両親媒
性の膜融合性化合物と核酸を含有する複合体と共存させ
た組成物により遺伝子の発現効率を大幅に向上させるこ
とができることを見出した。さらに驚くべきことに、上
記の組成物をマウス尾静脈から投与したところ、肝臓に
おいて高い遺伝子発現を達成でき、特に組成物を投与
後、肝血流を物理的にごく短時間低下させた場合には非
常に高い遺伝子発現が得られることを見出した。本発明
は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】すなわち、本発明は、遺伝子導入用の組成
物であって、生理的条件下において互いに電荷的に結合
しない下記の2成分:(1)両親媒性の膜融合性化合物、
及び(2)核酸又は核酸を含有する複合体を含む組成物を
提供するものである。本発明の好ましい態様によれば、
両親媒性の膜結合性化合物が陰性に荷電している上記の
組成物;及び核酸を含有する複合体を含み、該複合体が
陰性に荷電している上記の組成物が提供される。
【0011】上記発明のさらに好ましい態様によれば、
親媒性の膜融合性化合物が膜融合性ペプチドである上記
の組成物;膜融合性ペプチドが陰性に荷電している上記
の組成物;膜融合性ペプチドが実質的に酸性領域で膜融
合性を有する上記の組成物;膜融合性ペプチドがグルタ
ミン酸及びアスパラギン酸からなる群から選ばれるアミ
ノ酸を4個以上有するペプチドである上記の組成物;膜
融合性ペプチドがアミノ酸配列GLFEALLELLE
SLWELLLEA(一文字表記による)を有するペプ
チド又は該ペプチドの誘導体である上記の組成物;及び
膜融合性ペプチドがJTS−1である上記の組成物が提
供される。
【0012】また、別の観点からは、遺伝子治療に用い
るための上記の組成物;上記の組成物を用いて該核酸に
含まれる遺伝子を動物細胞に導入する方法;上記の組成
物を用いて該核酸に含まれる遺伝子を動物細胞に導入し
て該遺伝子の産物を該細胞において発現させる方法;及
び、上記の組成物をヒトを含む哺乳類動物に投与して該
核酸に含まれる遺伝子を該動物の体内で発現させる方法
が本発明により提供される。
【0013】上記の組成物をヒトを含む哺乳類動物に投
与して該核酸に含まれる遺伝子を細胞において発現させ
るにあたり、該細胞を含む臓器又は組織の血流を該組成
物の投与に際して一時的に低下させることにより、その
細胞における該遺伝子発現を顕著に高めることが可能で
ある。従って、本発明により、上記の組成物であって、
遺伝子を発現させるべき細胞を含む臓器又は組織への投
与に際して、該臓器又は組織の血流を一時的に低下させ
て投与するための組成物、及び上記の組成物をヒトを含
む哺乳類動物に投与して該核酸に含まれる遺伝子を該動
物の細胞において発現させる方法であって、該細胞を含
む臓器又は組織の血流を該組成物の投与に際して一時的
に低下させる工程を含む方法が本発明により提供され
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の組成物は遺伝子導入用の
組成物であって、生理的条件下において互いに電荷的に
結合しない下記の2成分:(1)両親媒性の膜融合性化合
物、及び(2)核酸又は核酸を含有する複合体を含むこと
を特徴としている。上記成分(1)及び(2)は、生理的条件
下において、互いの電荷により結合しない性質を有して
いる。例えば、両親媒性の膜融合性化合物が電荷的に陰
性又は中性である場合には、核酸又は核酸を含有する複
合体は電荷的に陰性又は中性である。従って、上記成分
(1)及び(2)は生理的条件下において実質的に電荷による
複合体を形成することはない。
【0015】上記成分(1)と(2)とが電荷的に結合するか
否かは、これらの分子や複合体の表面に存在する電荷に
より決定される場合がある。例えば、核酸は表面にリン
酸基が露出しているところから、分子表面が陰性に荷電
しており、陰性に荷電する分子や複合体とは実質的に電
荷的な結合を形成しない。従って、このような分子や複
合体については、分子や複合体の電荷的な結合は表面電
荷を主として考慮する必要がある。
【0016】本明細書において用いられる「生理的条
件」の用語は、細胞、組織、酵素などが失活しない条件
を意味しており、通常は中性付近、より具体的にはpH
6.0〜8.0程度の水性条件を意味するが、緩衝剤を
含むことが好ましく、塩濃度はヒト生体の塩濃度と等張
となる条件であることが好ましい。もっとも、生理的条
件を保ちつつ、エタノールやグリセリンなどの有機溶媒
を添加することも可能であり、さらに生理的条件を保つ
範囲で酸化防止剤や防腐剤などの適宜の添加物が存在し
ていてもよい。
【0017】膜融合性化合物は両親媒性であり、親水性
領域及び疎水性領域の両方を有している。該膜融合性化
合物としては、生理的条件下で生体膜(典型的には細胞
膜を意味する)を融合する活性を有する化合物であれば
いかなるものでもよいが、好ましくは膜融合性ペプチド
を用いることができる。本明細書において生体膜の融合
とは、細胞膜やエンドソームやライソソームなどの細胞
内小胞の膜と外来性物質が混和すること、あるいは膜が
一部溶解することにより膜のバリアー能が消失あるいは
低下することを意味する。膜融合性ペプチドは生体膜を
融合する活性を有しており、疎水性部分と親水性部分と
を含んでいる。該ペプチドの親水性部分は、例えば、セ
リン残基やスレオニン残基などによって構成される水酸
基を含む部分構造、リジン残基やアルギニン残基などに
よって構成される陽イオン基を含む部分構造、又はグル
タミン酸残基又はアスパラギン酸残基などによって構成
される陰イオン基を含む部分の一つ又は2つ以上の組み
合わせを含むことができる。
【0018】膜融合性ペプチドは、親水性部分として、
グルタミン酸残基及びアスパラギン酸残基からなる群か
ら選ばれる陰イオン基を含む部分を有することが好まし
い。例えば、ペプチド鎖中にグルタミン酸及びアスパラ
ギン酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基を2〜1
5個含むことが好ましく、より好ましくはグルタミン酸
及びアスパラギン酸からなる群から選ばれるアミノ酸の
残基を4〜10個含むことがより好ましい。膜融合性ペ
プチドは、生理的条件下において電荷的に中性である
か、又は陰性に荷電するものであることが好ましく、陰
性に荷電するものであることがより好ましい。
【0019】より具体的には、膜融合性ペプチドとして
は、ウイルス由来の膜融合性ペプチドあるいはその誘導
体として知られているペプチドを用いることができる。
例えば、インフルエンザウイルスのHAペプチド、セン
ダイウイルスの膜融合性タンパク、JST1ペプチド、
又はそれらのペプチドの誘導体などを用いることができ
る。特に好ましくはJTS−1(1文字表記による配
列:GLFEALLELLESLWELLLEA;S.
Gottschalkら:Gene Thetapy
(1996),448−457)を用いることがで
き、あるいは上記のアミノ酸配列において数個のアミノ
酸が置換、挿入、及び/又は欠失したペプチドであっ
て、膜融合活性を示すペプチドを用いてもよい。また該
ペプチドのアミノ末端にアセチル化等の修飾を施すこと
ができ、及び/又は該ペプチドのカルボキシル末端にエ
ステル化等の修飾を施すことができる。なお、通常、細
胞内に取り込まれた物質は、酸性条件のライソソーム内
で異物として分解を受けるが、該膜融合性ペプチドはラ
イソソーム膜を融合して破壊する性質を有しており、ラ
イソソームに取り込まれてもライソソーム内での分解を
避けることができると推定される。
【0020】核酸としては、細胞内に導入して発現させ
るべき遺伝子を含むものであればいかなるものを用いて
もよい。例えば、環状のプラスミドDNA、直鎖プラス
ミドDNA、人工染色体、三重鎖DNAなどのいかなる
核酸を用いてもよい。あるいは、細胞機能を調整するこ
とができるRNA、例えばアンチセンスRNAを含む拡
散を用いることもできる。核酸としては、例えば、チオ
エステル型の核酸のような核酸誘導体を用いてもよい。
核酸に含まれる遺伝子によりコードされるタンパク質は
特に限定されないが、典型的な例として、例えば、HG
F、VEGF、p53、インターロイキン類、MDR、
GFP、CAT、βガラクトシダーゼ等があげられる。
もっとも、遺伝子によりコードされるタンパク質はこれ
らに限定されることはない。
【0021】本発明の組成物は、一般的には、両親媒性
の膜融合性化合物と核酸とを生理的条件下において混合
することにより調製できるが、使用直前に両者を混合し
て組成物を調製してもよく、あるいは混合により調製さ
れた組成物を使用時まで低温ないし室温で保存してもよ
い。いずれの態様も本発明の範囲に包含されることは言
うまでもない。両親媒性の膜融合性化合物と核酸との混
合比は使用目的にあわせて適宜選択できるが、好ましく
は核酸1mgに対して両親媒性の膜融合性化合物を0.
05〜0.5mg程度、より好ましくは0.1mgから
0.2mg程度である。
【0022】本発明の組成物において、核酸に替えて核
酸を含有する複合体を用いてもよい。核酸を含有する複
合体としては、例えば、核酸とカチオニックリポソーム
やカチオニックポリマーとの複合体を挙げることができ
る。核酸を含有する複合体を形成した後、膜融合性化合
物と混合することにより本発明の組成物を調製すること
ができる。
【0023】カチオニックリポソームとしては、当業者
が利用可能なカチオン性脂質を含むリポソームを用いる
ことができるが、例えば、DC−Chol(Chole
steryl−3β−N−(dimethylamin
oethyl)carbamate)、CDAN(N−
Cholesteryloxycarbonyl−3,
7−diazanonane−1,9−diamin
e)、CTAP(Pentamine N15−chol
esteryloxycarbonyl−3,7,12
−triazapentadecane−1,15−d
iamine)などのカチオン性コレステロール誘導体
をリン脂質や糖脂質と組み合わせたリポソームや、DO
TAP(1,2−Dioleoyl−3−trimet
hylammonium propane)、DOTA
M(Dioleoxy propyltrimethy
l ammonium chloride)、TMAG
(N−(α−Trimethylammonioace
tyl)−didodecyl−D−glutamat
e chloride)などのカチオン性脂質を単独で
あるいはコレステロールやDOPE(Dioleoyl
phosphatidylethanolamine)
と組み合わせたリポソームを挙げることができる。好ま
しくはDC−CholとDOPEとを組み合わせて含む
カチオニックリポソームを用いることができる。DC−
Chol又はDOPEを用いる場合には、より好ましく
はこれらの脂質の含有量は全脂質に対して30モル%か
ら60モル%程度、好ましくは40モル%程度である。
【0024】膜融合性化合物として陰性に荷電した化合
物を用いる場合には、リポソームと核酸とを複合体化す
るに際して、この複合体の電荷が実質的に中性または陰
性荷電となる量比で複合体化する必要がある。DC−C
hol及びDOPE(2:3m/m:モル比)を含むリ
ポソームを用いる場合、DNA 1μg(ヌクレオチド
当たりの平均分子量を329として、3nmolのリン
酸部分に相当)にリポソーム1nmol(カチオン性脂
質として0.4nmol)から7.5nmol(カチオ
ン性脂質として3nmol)、好ましくは2nmolか
ら4nmol、最も好ましくは3nmol(カチオン性
脂質として1.2nmol)を組み合わせることができ
る。
【0025】上記の複合体に陰性に荷電した膜融合性化
合物を混合する場合には、例えば膜融合性化合物として
JTS−1を用いることができる。例えば、DC−Ch
ol/DOPE(2:3 m/m)のカチオニックリポ
ソーム3nmolに対してDNA 1μgを用いて作製
した複合体にJTS−1を0.05から0.4μg、よ
り好ましくは0.1から0.2μg混合することができ
る。このようにして調製された組成物では、膜融合性化
合物と核酸を含有する複合体の両方が生理的条件下にお
いて陰性に荷電しており、実質的に両者が電荷的な結合
を形成することはない。
【0026】カチオニックポリマーを用いる時も、上述
のリポソームの場合と同様に一旦核酸とポリマーとの複
合体を作製して後、膜融合性化合物を添加して本発明の
組成物を調製することができる。カチオニックポリマー
としてはポリリジン、ポリアルギニンのようなアミノ酸
ポリマー、スペルミン、プロタミン、ヒストン由来ペプ
チド等の生体由来物質、ポリエチレンイミン等の合成高
分子を用いることができる。膜融合性化合物として陰性
に荷電した化合物を用いる場合には、これらのポリマー
と核酸とを複合体化するに際して、この複合体の電荷が
陰性または中性になる量比で複合体化することが必要で
あるが、その量比は当業者が適宜選択可能である。
【0027】本発明の組成物をイン・ビトロにおいて細
胞に接触させることにより核酸を細胞内に導入すること
ができ、該細胞内で核酸に含まれる遺伝子を発現させる
ことができる。本発明の組成物を用いてエクソ・ビボで
細胞内に核酸を導入した後、該細胞を生物に注入して生
体内で所望の遺伝子を発現をさせることもできる。ま
た、哺乳類動物(ヒトを含む)の皮下や筋肉内、腹腔内
あるいは血管内等に本発明の組成物を投与して、生体内
で直接遺伝子発現を行うことができる。
【0028】本発明の組成物を血管内に投与する場合、
投与に際して、好ましくは投与直後に、遺伝子を発現さ
せるべき臓器や組織の血流を一時的に低下させることが
好ましい。上記の操作により、目的の臓器や組織におい
て特に高い遺伝子発現を達成することができる。血流の
低下は、例えば1秒〜20秒程度、好ましくは数秒程度
行うのがよい。血流は完全に遮断してもよく、あるいは
部分的な血流の阻害であってもよい。本明細書において
「血流の低下」という用語は、臓器又は組織における完
全な血流遮断を含む概念として用いる。
【0029】好ましくは、血管内に本発明の組成物を投
与した直後、目的の臓器又は組織内の血管に該組成物が
到達した状態で該臓器又は組織を支配する動脈の血流を
2〜10秒程度、好ましくは数秒適度にわたり完全に遮
断することが好ましい。上記の操作を行うことにより、
その特定の臓器又は組織において特異的に、かつ高い効
率で所望の遺伝子発現を達成できる。血流を低下させる
手段は特に限定されず、当業者が利用可能な任意の方法
を適用することができるが、例えば直接血管を圧迫して
低下させたり、血管内にバルーンを設置する等の方法を
採用することができる。
【0030】本発明の組成物は、例えば、イン・ビトロ
での細胞内への遺伝子導入に用いることができほか、遺
伝子治療のための医薬として用いることもできる。本発
明の組成物を用いることにより、対象とする細胞への遺
伝子導入及び遺伝子発現を簡便かつ確実に達成できるほ
か、遺伝子置換又は遺伝子産物の発現抑制を行うことも
可能である。遺伝子治療を行うための医薬の適用対象と
なる疾患としては、例えば、癌又は遺伝病などの疾患が
挙げられる。また、本発明の組成物をワクチン、あるい
は血流障害又は脱毛などの治療のための医薬として用い
ることもできる。本発明の組成物を医薬として用いる場
合、医薬の投与量は、発現させるべき遺伝子の種類、遺
伝子発現を達成すべき臓器又は組織の種類、組成物の性
状などに応じて適宜選択すべきであるが、例えば下記に
示す実施例を参照することにより、当業者は好適な投与
量を適宜選択することができる。
【0031】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定される
ことはない。 実施例 1 ルシフェラーゼをコードするプラスミドDNA(pCM
V Luc)(50μg/ml)2mlに50μg/m
lのJTS−1(0.2ml/ml)0.2mlを添加
し激しく攪拌しpDNAとJTS−1とからなる組成物
を調製した。麻酔下に開腹したBalb/cマウスに上
記組成物(DNA25μg相当)を尾静脈より投与し
た。投与後肝静脈及び門脈を4秒間クリップではさむこ
とで血流を低下させた。マウスの腹部を閉じ、8時間後
にルシフェラーゼの遺伝子発現量を測定した。その際、
血液の影響を完全に除く目的で、左心室から生理食塩水
をゆっくり注入して、右心房から血液を排出させて完全
に脱血した。
【0032】肝臓を摘出して、その約200μgを一定
量のPBSでホモジネートした。遠心分離後、上清中の
タンパク質量とルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフ
ェラーゼ活性は市販キットにより測定した。JTS−1
を添加しないプラスミドDNAのみを投与したマウス、
JTS−1を添加した後に分割してプラスミドDNAを
投与したマウスを対照として、同様に肝臓中のルシフェ
ラーゼ活性を測定した。図1に示すようにDNA単独、
およびDNAとJTS−1を分割して投与したマウスに
比べ、本発明の組成物(DNA及びJTS−1とを含
む)では高い遺伝子発現の活性が認められた。また血流
を低下させずに投与した場合の肝臓における遺伝子発現
量の比較を図2に示す。各サンプルとも発現レベルは低
下していたが、DNAとJTS−1の分割投与した場
合、及びDNAのみを投与した場合よりも高い発現レベ
ルであった。
【0033】実施例2 DC−Chol(3.1mg、6.2μmol)とDO
PE(6.9mg、9.3μmol)をナシ型フラスコ
に入れクロロホルムに溶解した後、ロータリーエバポレ
ーターでクロロホルムを留去して脂質薄膜を形成した。
次にこの脂質薄膜に純水を加え水和し、EXTRUSION法で
一枚膜リポソームを調製した。リポソームの粒子径は、
約200nmであった。得られたリポソーム(DC−C
hol:DOPE 2:3 m/m)3nmolにβガ
ラクトシダーゼをコードしたプラスミドDNA1μg
(ヌクレオチドとして3.1nmol)を攪拌しながら
混合し、室温で数分放置することでリポソーム−DNA
複合体を形成した。この複合体にJTS−1を0.05
μg、0.1μg、0.2μg、0.4μg添加し各組
成比のサンプルを調製した。
【0034】培養用48穴プレートでRPMI1640
培地(10%FBS)を用い培養したCHO(4×10
4個/穴)を同培地(無血清)で希釈した各サンプル
(DNAとして1μg/穴)を添加し5%CO2下37
℃で4時間インキュベートすることで遺伝子導入を行っ
た。遺伝子導入後、サンプルを除去し、血清入り培地で
洗浄後、同培地中でさらに48時間培養した。発現遺伝
子量は以下の方法で測定した。βガラクトシダーゼの活
性測定はMillerらの方法に従って行った。細胞溶
解液30μlに対して、基質溶液(200mM Na2
HPO4、2mM MgCl2,100mM 2−mer
captoethanol、1.33mg/mg ON
PG)100μlを加えて攪拌し、37℃で30分反応
させた。反応終了後、1M Na2CO3を100μl加
えて反応を停止し、microplate reade
rを用いて、420nmの吸光度を測定した。同時にβ
ガラクトシダーゼ標準液で作成した検量線によりβガラ
クトシダーゼ量を算出した。同時に細胞溶解液30μl
中のタンパク質量を定量し、遺伝子発現量は細胞のタン
パク質あたりの酵素量として示した。
【0035】結果を図3に示す。JTS−1添加により
明らかに遺伝子発現が向上したことが示された。すなわ
ち、DC−Chol/DOPE(2:3 m/m)のカ
チオニックリポソーム3nmolにDNA 1μgを用
い作製したコンプレックスにJTS−1を0.05から
0.4μg混合した場合に発現が認められ、JTS−1
を0.1から2μg混合した場合が高発現活性であっ
た。
【0036】実施例3 リポソームをTransFast (N,N-ビス(2-ハイドロキシエチ
ル)-N-メチル-N-[2,3-ジ(テトラデカノオイルオキシ)プ
ロピル]アンモニウム・ヨーダイド:DOPE(3:1
m/m) に換え、1.5nmolのリポソームを複合
体化に用いる以外は実施例2と同様にして遺伝子導入を
行った。その結果、図4(A及びB)に示すように、J
TS−1添加による明らかな遺伝子発現向上が示され
た。AはCHO細胞に対する遺伝子導入の効果を、Bは
AsPC−1細胞に対する遺伝子導入の効果を示す。共
に発現したβガラクトシダーゼ活性を比較した。
【0037】実施例4 リポソームをLipofectamineに換え、2nmolのリポ
ソームを複合体化に用いる以外は実施例2と同様にして
遺伝子導入を行った。その結果、図4(C及びD)に示
すように、JTS−1添加による明らかな遺伝子発現向
上が示された。CはCHO細胞に対する遺伝子導入の効
果を、DはAsPC−1細胞に対する遺伝子導入の効果
を示す。共に発現したβガラクトシダーゼ活性を比較し
た。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】 マウス尾静脈からDNAとJTS−1とを混
合した組成物を投与し、8時間後の肝臓におけるルシフ
ェラーゼ遺伝子の発現量を測定した結果を示した図であ
る。DNAのみを投与した場合、及びJTS−1を投与
した後にDNAを分割投与した場合を対照として用い、
いずれの場合にも投与直後に肝血流を低下させた。
【図2】 投与直後に肝血流を低下させないこと以外は
図1の場合と同様の試験を行った結果を示した図であ
る。
【図3】 DC−Chol/DOPEからなるリポソー
ムとプラスミドDNAとの複合体(リポソーム:DNA
3nmol/1μg)に各量のJTS−1を添加し、
in vitroでCHO細胞へトランスフェクション
した結果を示した図である。縦軸はβガラクトシダーゼ
の発現量を示し、横軸はJTS−1の添加量を示す。
【図4】 A及びBは、リポソームとしてTransFastを
用い、リポソーム−DNA及びJTS−1を含む組成物
(リポソーム:DNA:JTS−1 1.5nmol:
1μg:0.1μg)の遺伝子導入活性をin vit
roでCHO細胞において測定した結果を示す。AはC
HO細胞に対する遺伝子導入の効果を示し、BはAsP
C−1細胞に対する遺伝子導入の効果を示す。縦軸はタ
ンパク質あたりの発現したβガラクトシダーゼ活性を比
較した結果を示す。C及びDは、リポソームとしてLipo
fectamineを用いリポソーム−DNA及びJTS−1を
含む組成物(リポソーム:DNA:JTS−1 2 n
mol:1μg:0.1μg)の遺伝子導入活性をin
vitroでCHO細胞において測定した結果を示
す。CはCHO細胞に対する遺伝子導入の効果を示し、
DはAsPC−1細胞に対する遺伝子導入の効果を示
す。縦軸はタンパク質あたりの発現したβガラクトシダ
ーゼ活性を比較した結果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 35/00 A61P 43/00 105 43/00 105 A61K 9/127 // A61K 9/127 31/711 31/711 C12N 15/00 ZNAA Fターム(参考) 4B024 AA01 CA01 EA10 FA20 GA11 HA17 4C076 AA19 AA95 AA97 BB11 CC09 CC11 CC18 CC27 EE41 FF11 FF15 FF34 FF68 4C084 AA13 MA05 NA05 NA10 NA13 ZA361 ZA921 ZB212 ZB261 4C086 AA01 EA16 MA02 MA05 NA05 NA10 NA13 ZA36 ZA92 ZB21 ZB26

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遺伝子導入用の組成物であって、生理的
    条件下において互いに電荷的に結合しない下記の2成
    分:(1)両親媒性の膜融合性化合物、及び(2)核酸又は核
    酸を含有する複合体を含む組成物。
  2. 【請求項2】 両親媒性の膜結合性化合物が陰性に荷電
    している請求項1に記載の組成物。
  3. 【請求項3】 核酸を含有する複合体を含み、該複合体
    が陰性に荷電している請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 【請求項4】 両親媒性の膜融合性化合物が膜融合性ペ
    プチドである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の
    組成物。
  5. 【請求項5】 膜融合性ペプチドがグルタミン酸及びア
    スパラギン酸からなる群から選ばれるアミノ酸を4個以
    上有するペプチドである請求項4に記載の組成物。
  6. 【請求項6】 膜融合性ペプチドがJTS−1である請
    求項4に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 遺伝子治療に用いるための請求項1ない
    し6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 【請求項8】 遺伝子を発現させるべき細胞を含む臓器
    又は組織への投与に際して、該組織又は臓器の血流を一
    時的に低下させて投与するための請求項7に記載の組成
    物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006126267A1 (ja) * 2005-05-26 2006-11-30 Mebiopharm Co., Ltd. 遺伝子類導入方法
JP2015525209A (ja) * 2012-05-23 2015-09-03 ジ・オハイオ・ステート・ユニバーシティ 脂質ナノ粒子組成物と、それを作製する方法、及びそれを使用する方法

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WO2006126267A1 (ja) * 2005-05-26 2006-11-30 Mebiopharm Co., Ltd. 遺伝子類導入方法
JP2015525209A (ja) * 2012-05-23 2015-09-03 ジ・オハイオ・ステート・ユニバーシティ 脂質ナノ粒子組成物と、それを作製する方法、及びそれを使用する方法

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