JP2003074399A - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

内燃機関の空燃比制御装置

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JP2003074399A JP2002179145A JP2002179145A JP2003074399A JP 2003074399 A JP2003074399 A JP 2003074399A JP 2002179145 A JP2002179145 A JP 2002179145A JP 2002179145 A JP2002179145 A JP 2002179145A JP 2003074399 A JP2003074399 A JP 2003074399A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】触媒装置を含む排気系のモデルのパラメータの
信頼性の高い同定値を安定して求め、触媒装置の浄化性
能をさらに向上させることができる内燃機関の空燃比制
御装置を提供する。 【解決手段】排気側制御ユニット7aは、触媒装置3に
供給される排ガス流量に応じて排気系Eの無駄時間を逐
次可変的に設定し、この設定無駄時間の無駄時間要素を
有する排気系Eのモデルのパラメータの値を逐次同定す
る。さらにこの同定処理では重みパラメータの値を排ガ
ス流量に応じて逐次設定する。排気側制御ユニット7a
は、このパラメータの同定値を用いてO2センサ6の出
力を目標値に収束させるように目標空燃比KCMDを逐次算
出する。機関側制御ユニット7bは、この目標空燃比KC
MDに応じてエンジン1の空燃比を操作する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の空燃比
制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関の排気通路に備えた三元触媒等
の触媒装置の適正な浄化性能を確保するために、触媒装
置の下流側に設けた排ガスセンサ、例えばO2センサ
(酸素濃度センサ)の出力を所定の目標値(一定値)に
収束させるように内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比
を操作する技術が本願出願人により既に提案されている
(例えば特開平11-324767号公報、特開2000-179385号
等)。
【0003】これらの技術では、触媒装置の上流側から
下流側のO2センサにかけての排気系が、触媒装置に進
入する排ガスの空燃比を入力量、O2センサの出力を出
力量とする一つの制御対象とされている。そして、該排
気系への入力量を規定する操作量(例えば排気系への入
力量の目標値)が、O2センサの出力を前記目標値に収
束させるようにフィードバック制御(具体的には適応ス
ライディングモード制御)の処理により逐次生成され、
この操作量に応じて内燃機関で燃焼させる混合気の空燃
比が操作される。
【0004】この場合、一般に、前記排気系の挙動状態
や特性は、内燃機関の運転状態等、種々様々な要因によ
って変化する。また、触媒装置を含む前記排気系には一
般に比較的長い無駄時間が存在する。
【0005】そこで、前記の技術では、前記排気系を、
触媒装置に進入する排ガスの空燃比から、無駄時間要素
及び応答遅れ要素を介してO2センサの出力を生成する
系として、該排気系の挙動がモデル化表現され、この排
気系のモデルのパラメータ(無駄時間要素や応答遅れ要
素に係る係数パラメータ)の値が、O2センサの出力の
サンプリングデータや、触媒装置に進入する排ガスの空
燃比を検出すべく該触媒装置の上流側に備えた空燃比セ
ンサの出力のサンプリングデータ等を用いて逐次同定さ
れる。そして、このモデルに基づき構築されたフィード
バック制御の処理により、該モデルのパラメータの同定
値を用いて前記操作量が逐次生成される。
【0006】前記の技術では、上述のように排気系のモ
デルのパラメータの同定処理並びに、その同定値を用い
たフィードバック制御の処理を行うことにより、排気系
の挙動変化等の影響を補償し、O2センサの出力を目標
値に収束させる制御、換言すれば、触媒装置の適正な浄
化性能を確保するための空燃比制御を円滑に行うことを
可能としている。
【0007】ところで、前記の技術では、基本的には、
排気系の無駄時間が一定値であると見なし、前記排気系
のモデルにおける無駄時間要素の無駄時間の値としてあ
らかじめ固定的に定めた設定無駄時間を用いている。
【0008】ところが、本願発明者等の知見によれば、
排気系の実際の無駄時間は、内燃機関の回転数等の状態
によって変化し、その変化幅は、内燃機関の運転状態に
よって比較的大きなものとなることがある。このため、
内燃機関の運転状態によっては、排気系のモデルと実際
の排気系の挙動特性との間の誤差が大きくなることがあ
る。そして、この誤差に起因して、排気系のモデルのパ
ラメータの同定値の誤差やばらつきが大きくなる。
【0009】この場合、前記の技術では、前記操作量を
生成するフィードバック制御の処理に、適応スライディ
ングモード制御のような安定性の高い制御処理を用いて
いるため、基本的にはO2センサの出力の目標値への収
束制御の安定性が大きく損なわれるような事態を回避す
ることが可能となっている。
【0010】しかるに、上記のように排気系のモデルの
パラメータの同定値の誤差やばらつきが大きくなる状態
では、その同定値を用いて前記操作量を生成し、該操作
量に応じて混合気の空燃比を操作したときに、O2セン
サの出力が目標値に対してばらつきを生じ易くなった
り、O2センサの出力の目標値への収束制御の速応性が
低下し易くなる。そして、これが触媒装置の浄化性能を
さらに向上させる妨げとなっていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる背景に
鑑みてなされたものであり、触媒装置の下流側のO2
ンサ等の排ガスセンサの出力を所定の目標値に収束させ
るように空燃比を操作して触媒装置の適正な浄化性能を
確保するシステムにおいて、触媒装置を含む排気系のモ
デルのパラメータの信頼性の高い同定値を安定して求め
ることができ、ひいては、触媒装置の浄化性能をさらに
向上させることができる内燃機関の空燃比制御装置及び
空燃比制御方法を提供することを目的とする。さらに、
上記のような空燃比制御をコンピュータにより適正に行
うことができる空燃比制御用プログラムを記憶保持した
記録媒体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願発明者等の知見によ
れば、触媒装置を含む排気系の実際の無駄時間は、特
に、該触媒装置を流れる排ガスの流量状態と密接に関連
しており、該排ガスの流量が小さい程、排気系の実際の
無駄時間は長くなる(図4の実線cを参照)。また、前
記排気系の実際の応答遅れ時間も、排ガスの流量が小さ
い程、長くなる。本発明はこのような現象に着目してな
されたものであり、二つの態様がある。
【0013】すなわち、本発明の内燃機関の空燃比制御
装置の第1の態様は、内燃機関の排気通路に備えた触媒
装置の下流側に該触媒装置を通過した排ガス中の特定成
分の濃度を検出すべく設けられた排ガスセンサと、前記
触媒装置の上流側から前記排ガスセンサにかけての該触
媒装置を含む排気系を、該触媒装置に進入する排ガスの
空燃比から少なくとも無駄時間要素を介して前記排ガス
センサの出力を生成する系として該排気系の挙動を表現
するようあらかじめ定められた該排気系のモデルに対
し、該モデルの所定のパラメータの値を逐次同定する同
定手段と、前記排ガスセンサの出力を所定の目標値に収
束させるように、該モデルのパラメータの同定値を用い
て前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比を規定する操
作量を逐次生成する操作量生成手段と、該操作量に応じ
て前記内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比を操作する
空燃比操作手段とを基本構成として備えるものである。
そして、本発明の第1の態様は、前記触媒装置を流れる
排ガスの流量を表すデータを逐次生成する流量データ生
成手段と、該流量生成手段が生成したデータの値に応じ
て前記排気系のモデルの無駄時間要素の無駄時間として
の設定無駄時間を逐次設定する無駄時間設定手段を備
え、前記同定手段は、該無駄時間設定手段が設定した設
定無駄時間の値を用いて前記パラメータの値を同定する
ことを特徴とするものである。
【0014】かかる本発明の第1の態様では、前記無駄
時間設定手段は、流量データ生成手段が生成したデータ
の値、すなわち排ガスの流量を表すデータの値に応じて
前記排気系の設定無駄時間の値を設定する。このため、
この設定無駄時間を、排気系の実際の無駄時間に精度よ
く合致させることが可能となる。尚、この場合、前記設
定無駄時間は、基本的には、流量データ生成手段が生成
するデータが表す排ガスの流量が小さい程、大きくなる
ように設定されることとなる。
【0015】そして、前記同定手段は、排気系のモデル
の無駄時間要素の無駄時間として、この設定無駄時間の
値、すなわち、排気系の実際の無駄時間と精度よく合致
する設定無駄時間の値を用いる。このため、排気系のモ
デルと実際の排気系の挙動特性との整合性が高まり、該
モデルのパラメータの同定値の信頼性を高めることがで
きる。従って、このパラメータの同定値を用いて前記操
作量生成手段により操作量を生成し、該操作量に応じて
空燃比操作手段いより空燃比を操作することにより、排
ガスセンサの出力の目標値への制御の精度や速応性がよ
り高まり、ひいては触媒装置の浄化性能をより向上させ
ることができる。
【0016】また、本発明の第2の態様は、内燃機関の
排気通路に備えた触媒装置の下流側に該触媒装置を通過
した排ガス中の特定成分の濃度を検出すべく設けられた
排ガスセンサと、前記触媒装置の上流側から前記排ガス
センサにかけての該触媒装置を含む排気系を、該触媒装
置に進入する排ガスの空燃比から前記排ガスセンサの出
力を生成する系として該排気系の挙動を表現するようあ
らかじめ定められた該排気系のモデルに対し、該モデル
の所定のパラメータの値を逐次同定する同定手段と、前
記排ガスセンサの出力を所定の目標値に収束させるよう
に、該モデルのパラメータの同定値を用いて前記触媒装
置に進入する排ガスの空燃比を規定する操作量を逐次生
成する操作量生成手段と、該操作量に応じて前記内燃機
関で燃焼させる混合気の空燃比を操作する空燃比操作手
段とを基本構成として備えるものである。そして、本発
明の第2の態様は、前記同定手段が、前記排気系のモデ
ルにおける前記排ガスセンサの出力と該排ガスセンサの
実際の出力との間の誤差を最小化するアルゴリズム、例
えば重み付き最小2乗法のアルゴリズムにより前記パラ
メータの値を同定する手段であり、前記触媒装置を流れ
る排ガスの流量を表すデータを逐次生成する流量データ
生成手段と、前記同定手段のアルゴリズムの重みパラメ
ータの値を前記流量データ生成手段が生成したデータの
値に応じて可変的に設定する手段とを備えたことを特徴
とするものである。
【0017】すなわち、本願発明者等の知見によれば、
排気系の実際の無駄時間や、応答遅れ時間が長くなるほ
ど、排気系のモデルのパラメータの同定値の変動や誤差
を生じやすく、ひいては、排ガスセンサの出力の目標値
への制御の速応性等が損なわれ易い。この場合、同定手
段により排気系のモデルのパラメータの値を同定するた
めのアルゴリズムとして、重み付き最小2乗法等のアル
ゴリズムを用いたとき、その重みパラメータの値を調整
することにより、排気系のモデルのパラメータの同定値
の変動や誤差を抑えることが可能である。
【0018】このため、本発明の第2の態様では、排気
系のモデルのパラメータの値の同定処理のために重み付
き最小2乗法等のアルゴリズムが用いられ、その重みパ
ラメータの値が前記流量データ生成手段が生成したデー
タ、すなわち、排ガスの流量を表すデータの値に応じて
可変的に設定される。これにより、前記重みパラメータ
の値を排気系の実際の無駄時間や応答遅れ特性に合わせ
て調整することが可能となる。この結果、排気系のモデ
ルのパラメータの同定値の変動や誤差を抑えて、信頼性
の高い同定値を安定して得ることが可能となり、ひいて
は、排ガスセンサの出力の目標値への収束制御の速応性
や精度を高めることができる。その結果、触媒装置の浄
化性能を向上させることができる。
【0019】尚、本発明の第2の態様では、前記排気系
のモデルは、少なくとも無駄時間要素を含むもの(例え
ば無駄時間要素と応答遅れ要素とを含むもの)でよいこ
とはもちろんであるが、無駄時間要素を含まずに、応答
遅れ要素のみで構成されたものであってもよい。
【0020】また、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
では、これらの第1及び第2の態様の両者を具備するこ
とにより、排ガスセンサの出力の目標値への制御の精度
や速応性をさらに高めることができ、ひいては、触媒装
置の浄化性能をより向上させることができる。
【0021】尚、本発明の第1及び第2の態様では、前
記操作量としては、例えば前記触媒装置に進入する排ガ
スの空燃比の目標値(目標空燃比)や内燃機関の燃料供
給量の補正量等が挙げられる。そして、前記操作量を上
記目標空燃比とした場合には、触媒装置に進入する排ガ
スの空燃比を検出する空燃比センサを触媒装置の上流側
に設け、前記空燃比操作手段は、この空燃比センサの出
力(空燃比の検出値)を目標空燃比に収束させるように
フィードバック制御の処理により内燃機関で燃焼させる
混合気の空燃比を操作することが好適である。
【0022】また、本発明の第1及び第2の態様におけ
る前記同定手段は、より具体的には、触媒装置に進入す
る排ガスの空燃比(以下、触媒上流空燃比ということが
ある)を表すデータと、排ガスセンサの出力のデータ
と、排気系のモデルの設定無駄時間の値とを用いて逐次
型最小2乗法等のアルゴリズム(第2の態様では、重み
付き最小2乗法のアルゴリズム)により排気系のモデル
のパラメータの値を同定することが可能である。そし
て、この場合、いずれの態様においても、前記触媒上流
空燃比は、前記操作量により規定されるため、該触媒上
流空燃比を表すデータとして、該操作量のデータを用い
ることが可能である。但し、排気系のモデルのパラメー
タの同定値の信頼性をより高める上では、触媒上流空燃
比を検出する空燃比センサを触媒装置の上流側に備え、
その空燃比センサの出力のデータを触媒上流空燃比を表
すデータとして用いることが好適である。
【0023】また、本発明の第1及び第2の態様におけ
る前記排気系のモデルは、例えば、所定の制御サイクル
毎の排ガスセンサの出力のデータを、その制御サイクル
よりも過去の制御サイクルにおける排ガスセンサの出力
のデータと、前記排気系の設定無駄時間以前の制御サイ
クルにおける触媒上流空燃比を表すデータ(前記空燃比
センサの出力のデータ、前記操作量のデータ等)とによ
り表現するモデルであることが好ましい。別の言い方を
すれば、該モデルは、例えば、排気系の入力量としての
前記触媒上流空燃比に無駄時間(排気系の設定無駄時
間)を有する自己回帰モデルであることが好ましい。こ
の場合、該モデルのパラメータは、前記過去の制御サイ
クルにおける排ガスのセンサの出力のデータ(排気系の
出力量に関する自己回帰項)に係る係数や、前記触媒上
流空燃比を表すデータ(排気系の入力量)に係る係数で
ある。
【0024】また、以上説明した本発明の第1及び第2
の態様では、前記同定手段は、前記排気系のモデルのパ
ラメータの同定値を前記流量データ生成手段が生成した
データの値に応じて定めた所定の範囲内の値に制限して
求めることが好適である。
【0025】すなわち、O2センサの出力を円滑に目標
値に収束させ得る操作量を生成するために好適な前記パ
ラメータの同定値は、一般に、排ガスの流量の影響によ
り、排気系が有する実際の無駄時間の影響を受ける。そ
こで、本発明では、流量データ生成手段が生成したデー
タの値、すなわち、排ガスの流量を表すデータの値に応
じて定めた所定の範囲内の値に前記同定値を制限する。
これにより、O2センサの出力を円滑に目標値に収束さ
せ得る操作量を生成するために好適な前記同定値を前記
同定手段により求めることが可能となる。
【0026】尚、前記同定手段により同定する排気系の
モデルのパラメータが複数ある場合には、それらのパラ
メータの同定値を制限する前記所定の範囲は、それぞれ
のパラメータの同定値毎の範囲であってもよいが、複数
のパラメータの同定値の組合わせの範囲であってもよ
い。例えば、上述のように排気系のモデルが自己回帰モ
デルであって、その自己回帰項が1次目及び2次目の二
つの自己回帰項(これらは排気系の応答遅れ要素に対応
する)を有する場合には、各自己回帰項にそれぞれ係る
二つのパラメータの同定値の組合わせを所定の範囲(詳
しくは、二つのパラメータの値を二つの座標軸とする座
標平面上の所定の領域)内に制限することが好適であ
る。また、上記自己回帰モデルの前記触媒上流空燃比に
係るパラメータについては、そのパラメータの同定値を
所定の範囲(上下限値を有する範囲)内の値に制限する
ことが好適である。
【0027】尚、本発明の第1及び第2の態様におい
て、操作量生成手段が前記操作量を生成するためのフィ
ードバック制御の処理は、適応制御の処理が好ましく、
より具体的には、例えばスライディングモード制御の処
理が好適である。ここで、スライディングモード制御の
処理は、所謂、等価制御入力に係わる制御則と到達則と
に基づく通常的なスライディングモード制御の処理であ
ってもよいが、これらの制御則に加えてさらに適応則
(適応アルゴリズム)を付加した適応スライディングモ
ード制御の処理が好適である。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明の第1実施形態を図1〜図
17を参照して説明する。本実施形態は、本発明の第1
の態様に係わる実施形態であると同時に、第2の態様に
係わる実施形態でもある。
【0029】図1は本実施形態の装置の全体構成をブロ
ック図で表したものであり、図中、1は例えば自動車や
ハイブリッド車に車両の推進源として搭載された4気筒
のエンジン(内燃機関)である。このエンジン1が各気
筒毎に燃料及び空気の混合気の燃焼により生成する排ガ
スは、エンジン1の近傍で共通の排気管2(排気通路)
に集合され、該排気管2を介して大気中に放出される。
そして、排気管2には、排ガスを浄化するために、三元
触媒を用いて構成された二つの触媒装置3,4が該排気
管2の上流側から順に介装されている。尚、下流側の触
媒装置4はこれを省略してもよい。
【0030】本実施形態のシステムでは、触媒装置3の
最適な浄化性能を確保するようにエンジン1の空燃比
(より正確にはエンジン1で燃焼させる燃料及び空気の
混合気の空燃比。以下、同様)を制御する。そして、こ
の制御を行うために、本実施形態のシステムは、触媒装
置3の上流側(より詳しくはエンジン1の各気筒毎の排
ガスの集合箇所)で排気管2に設けられた空燃比センサ
5と、触媒装置3の下流側(触媒装置4の上流側)で排
気管2に設けられた排ガスセンサとしてのO2センサ
(酸素濃度センサ)6と、これらのセンサ5,6の出力
(検出値)等に基づき後述の制御処理を行う制御ユニッ
ト7とを具備している。尚、制御ユニット7には、前記
空燃比センサ5やO2センサ6の出力の他に、回転数セ
ンサや吸気圧センサ、冷却水温センサ等、エンジン1の
運転状態を検出するための図示しない各種のセンサの出
力が与えられる。
【0031】O2センサ6は、触媒装置3を通過した排
ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力VO2/OUT(酸素
濃度の検出値を示す出力)を生成する通常的なO2セン
サである。ここで、排ガス中の酸素濃度は、燃焼により
その排ガスとなった混合気の空燃比に応じたものとな
る。そして、このO2センサ6の出力VO2/OUTは、図2に
実線aで示すように、排ガス中の酸素濃度に対応する空
燃比が理論空燃比近傍の比較的狭い範囲Δに存するよう
な状態で、該排ガス中の酸素濃度に対してほぼ線形に高
感度な変化を生じるものとなる。また、その範囲Δを逸
脱した空燃比に対応する酸素濃度では、O2センサ6の
出力VO2/OUTはほぼ一定のレベルに飽和する。
【0032】空燃比センサ5は、触媒装置3に進入する
排ガスの空燃比(より詳しくは触媒装置3に進入する排
ガスの酸素濃度により把握される空燃比)の検出値を表
す出力KACTを生成するものである。この空燃比センサ5
は、例えば本願出願人が特開平4−369471号公報
にて説明した広域空燃比センサにより構成されたもので
あり、図2に実線bで示すように、O2センサ5よりも
排ガス中の酸素濃度の広範囲にわたってそれに比例した
レベルの出力KACTを生成するものである。以下の説明で
は、この空燃比センサ5をLAFセンサ5と称し、触媒
装置3に進入する排ガスの空燃比を触媒上流空燃比と称
する。
【0033】制御ユニット7は、マイクロコンピュータ
を用いて構成されたものであり、触媒上流空燃比の目標
値である目標空燃比KCMD(これはLAFセンサ5の出力
KACTの目標値でもある)を触媒上流空燃比を規定する操
作量としてを逐次生成する処理を所定の制御サイクルで
実行する排気側制御ユニット7aと、該目標空燃比KCMD
に応じてエンジン1の燃料供給量を調整することによっ
て触媒上流空燃比を操作する処理を所定の制御サイクル
で逐次実行する機関側制御ユニット7bとを具備してい
る。これらの制御ユニット7a,7bは、それぞれ本発
明における操作量生成手段、空燃比操作手段に相当する
ものである。
【0034】ここで、本実施形態では、各制御ユニット
7a,7bがそれぞれの処理を実行する制御サイクルは
各別の制御サイクルとされている。すなわち、排気側制
御ユニット7aの処理の制御サイクルは、触媒装置3を
含む後述の排気系Eが有する比較的長い無駄時間や演算
負荷等を考慮し、あらかじめ定めた一定の周期(例えば
30〜100ms程度の周期)とされている。また、機
関側制御ユニット7bの処理の制御サイクルは、エンジ
ン1の燃料供給量の調整処理をエンジン1の燃焼サイク
ルに同期させて行う必要があることから、エンジン1の
クランク角周期(所謂TDC)に同期した周期とされて
いる。そして、排気側制御ユニット7aの制御サイクル
の周期は、エンジン1のクランク角周期(TDC)より
も長いものとされている。
【0035】これらの制御ユニット7a,7bの処理を
さらに説明する。まず、機関側制御ユニット7bは、そ
の機能的構成として、エンジン1への基本燃料噴射量T
imを求める基本燃料噴射量算出部8と、基本燃料噴射量
Timを補正するための第1補正係数KTOTAL及び第2補正
係数KCMDMをそれぞれ求める第1補正係数算出部9及び
第2補正係数算出部10とを具備する。
【0036】前記基本燃料噴射量算出部8は、エンジン
1の回転数NEと吸気圧PBとから、それらにより規定され
るエンジン1の基準の燃料噴射量(燃料供給量)をあら
かじめ設定されたマップを用いて求め、その基準の燃料
噴射量をエンジン1の図示しないスロットル弁の有効開
口面積に応じて補正することで基本燃料噴射量Timを算
出するものである。
【0037】また、第1補正係数算出部9が求める第1
補正係数KTOTALは、エンジン1の排気還流率(エンジン
1の吸入空気中に含まれる排ガスの割合)や、エンジン
1の図示しないキャニスタのパージ時にエンジン1に供
給される燃料のパージ量、エンジン1の冷却水温、吸気
温等を考慮して前記基本燃料噴射量Timを補正するため
のものである。
【0038】また、第2補正係数算出部10が求める第
2補正係数KCMDMは、排気側制御ユニット7aが後述の
如く算出する目標空燃比KCMDに対応してエンジン1へ流
入する燃料の冷却効果による吸入空気の充填効率を考慮
して基本燃料噴射量Timを補正するためのものである。
【0039】これらの第1補正係数KTOTAL及び第2補正
係数KCMDMによる基本燃料噴射量Timの補正は、第1補
正係数KTOTAL及び第2補正係数KCMDMを基本燃料噴射量
Timに乗算することで行われ、この補正によりエンジン
1の要求燃料噴射量Tcylが得られる。
【0040】尚、前記基本燃料噴射量Timや、第1補正
係数KTOTAL、第2補正係数KCMDMのより具体的な算出手
法は、特開平5−79374号公報等に本願出願人が開
示しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0041】機関側制御ユニット7bは、上記の機能的
構成の他、さらに、排気側制御ユニット7a(詳細は後
述する)が逐次算出する目標空燃比KCMDにLAFセンサ
5の出力KACT(触媒上流空燃比の検出値)を収束させる
ようにフィードバック制御の処理によりエンジン1の燃
料噴射量を調整することでエンジン1の空燃比を操作す
るフィードバック制御部14を備えている。
【0042】このフィードバック制御部14は、本実施
形態では、エンジン1の各気筒の全体的な空燃比をフィ
ードバック制御する大局的フィードバック制御部15
と、エンジン1の各気筒毎の空燃比をフィードバック制
御する局所的フィードバック制御部16とから構成され
ている。
【0043】前記大局的フィードバック制御部15は、
LAFセンサ5の出力KACTが前記目標空燃比KCMDに収束
するように、前記要求燃料噴射量Tcylを補正する(要
求燃料噴射量Tcylに乗算する)フィードバック補正係
数KFBを逐次求めるものである。そして、該大局的フィ
ードバック制御部15は、LAFセンサ5の出力KACTと
目標空燃比KCMDとの偏差に応じて周知のPID制御の処
理により前記フィードバック補正係数KFBとしてのフィ
ードバック操作量KLAFを生成するPID制御器17と、
LAFセンサ5の出力KACTと目標空燃比KCMDとからエン
ジン1の運転状態の変化や特性変化等を考慮して前記フ
ィードバック補正係数KFBを規定するフィードバック操
作量KSTRを適応的に求める適応制御器18(図ではST
Rと称している)とをそれぞれ独立的に具備している。
【0044】ここで、本実施形態では、前記PID制御
器17が生成するフィードバック操作量KLAFは、LAF
センサ5の出力KACT(触媒上流空燃比の検出値)が目標
空燃比KCMDに一致している状態で「1」となり、該操作
量KLAFをそのまま前記フィードバック補正係数KFBとし
て使用できるようになっている。一方、適応制御器18
が生成するフィードバック操作量KSTRはLAFセンサ5
の出力KACTが目標空燃比KCMDに一致する状態で「目標空
燃比KCMD」となるものである。このため、該フィードバ
ック操作量KSTRを除算処理部19で目標空燃比KCMDによ
り除算してなるフィードバック操作量kstr(=KSTR/KC
MD)が前記フィードバック補正係数KFBとして使用でき
るようになっている。
【0045】そして、大局的フィードバック制御部15
は、PID制御器17により生成されるフィードバック
操作量KLAFと、適応制御器18が生成するフィードバッ
ク操作量KSTRを目標空燃比KCMDにより除算してなるフィ
ードバック操作量kstrとを切換部20で適宜、択一的に
選択する。さらに、大局的フィードバック制御部15
は、その選択したフィードバック操作量KLAF又はkstrを
前記フィードバック補正係数KFBとして使用し、該補正
係数KFBを前記要求燃料噴射量Tcylに乗算することによ
り該要求燃料噴射量Tcylを補正する。尚、かかる大局
的フィードバック制御部15(特に適応制御器18)に
ついては後にさらに詳細に説明する。
【0046】前記局所的フィードバック制御部16は、
LAFセンサ5の出力KACTから各気筒毎の実空燃比#nA/
F(n=1,2,3,4)を推定するオブザーバ21と、このオ
ブザーバ21により推定された各気筒毎の実空燃比#nA/
Fから各気筒毎の空燃比のばらつきを解消するよう、P
ID制御を用いて各気筒毎の燃料噴射量のフィードバッ
ク補正係数#nKLAFをそれぞれ求める複数(気筒数個)の
PID制御器22とを具備する。
【0047】ここで、オブザーバ21は、それを簡単に
説明すると、各気筒毎の実空燃比#nA/Fの推定を次のよ
うに行うものである。すなわち、エンジン1からLAF
センサ5の箇所(各気筒毎の排ガスの集合部)にかけて
の系を、エンジン1の各気筒毎の実空燃比#nA/FからL
AFセンサ5が検出する触媒上流空燃比を生成する系と
考え、この系が、LAFセンサ5の検出応答遅れ(例え
ば一次遅れ)や、触媒上流空燃比に対するエンジン1の
各気筒毎の空燃比の時間的寄与度を考慮してあらかじめ
モデル化されている。そして、そのモデルの基で、LA
Fセンサ5の出力KACTから、逆算的に各気筒毎の実空燃
比#nA/Fを推定する。尚、このようなオブザーバ21
は、本願出願人が例えば特開平7−83094号公報に
詳細に開示しているので、ここでは、さらなる説明を省
略する。
【0048】また、局所的フィードバック制御部16の
各PID制御器22は、LAFセンサ5の出力KACTを、
前回の制御サイクルで各PID制御器22により求めら
れたフィードバック補正係数#nKLAFの全気筒についての
平均値により除算してなる値を各気筒の空燃比の目標値
とする。そして、各PID制御器22は、その目標値と
オブザーバ21により求められた各気筒毎の実空燃比#n
A/Fの推定値との偏差が解消するように、今回の制御サ
イクルにおける各気筒毎のフィードバック補正係数#nKL
AFを求める。そして、局所的フィードバック制御部16
は、前記要求燃料噴射量Tcylに大局的フィードバック
制御部15のフィードバック補正係数KFBを乗算してな
る値に、各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗
算することで、各気筒の出力燃料噴射量#nTout(n=1,
2,3,4)を求める。このようにして求められる各気筒の
出力燃料噴射量#nToutは、機関側制御ユニット7bに
備えた各気筒毎の付着補正部23により吸気管の壁面へ
の燃料の付着を考慮した補正が各気筒毎になされた後、
エンジン1の図示しない燃料噴射装置に与えられる。そ
して、その付着補正がなされた出力燃料噴射量#nTout
で、エンジン1の各気筒への燃料噴射が行われる。
【0049】尚、上記付着補正については、本願出願人
が例えば特開平8−21273号公報に詳細に開示して
いるので、ここではさらなる説明を省略する。また、図
1において、参照符号24を付したセンサ出力選択処理
部は、前記オブザーバ21による各気筒毎の実空燃比#n
A/Fの推定に適したLAFセンサ5の出力KACTをエンジ
ン1の運転状態に応じて選択するもので、これについて
は、本願出願人が特開平7−259588号公報にて詳
細に開示しているので、ここではさらなる説明を省略す
る。
【0050】一方、前記排気側制御ユニット7aは、L
AFセンサ5の出力KACTと所定の空燃比基準値FLAF/BAS
Eとの偏差kact(=KACT−FLAF/BASE)を逐次求める減算
処理部11と、O2センサ6の出力VO2/OUTとその目標値
VO2/TARGETとの偏差VO2(=VO2/OUT−VO2/TARGET)を逐
次求める減算処理部12とを備えている。
【0051】ここで、O2センサ6の出力VO2/OUTの目標
値VO2/TARGETは、触媒装置3の最適な浄化性能(具体的
には排ガス中のNOx、HC、CO等の浄化率)が得られるよ
うなO2センサ6の出力値としてあらかじめ定めた所定
値であり、図2に示すように排ガスの空燃比が理論空燃
比近傍の範囲Δに存するような状態においてO2センサ
6が生成し得る出力値である。また、LAFセンサ5の
出力KACTに係わる前記空燃比基準値FLAF/BASEは、本実
施形態では「理論空燃比」(一定値)に設定されてい
る。
【0052】尚、以下の説明において、前記減算処理部
11,12がそれぞれ求める偏差kact,VO2をそれぞれ
LAFセンサ5の偏差出力kact及びO2センサ6の偏差
出力VO2と称する。
【0053】排気側制御ユニット7aはさらに、上記の
偏差出力kact,VO2のデータをそれぞれLAFセンサ5
の出力及びO2センサ6の出力を表すデータとして用
い、それらのデータに基づいて前記目標空燃比KCMD(触
媒上流空燃比の目標値)を逐次算出する目標空燃比生成
処理部13を備えている。
【0054】この目標空燃比生成処理部13は、排気管
2のLAFセンサ5の箇所からO2センサ6の箇所にか
けての触媒装置3を含む排気系(図1で参照符号Eを付
した部分)を制御対象とする。そして、該目標空燃比生
成処理部13は、上記排気系Eが有する無駄時間や、前
記エンジン1及び機関側制御ユニット7bからなる空燃
比操作系が有する無駄時間、排気系Eの挙動変化等を考
慮しつつ、フィードバック制御の一手法であるスライデ
ィングモード制御(詳しくは適応スライディングモード
制御)の処理を用いてO2センサ6の出力VO2/OUTをその
目標値VO2/TARGETに収束(整定)させるようにエンジン
1の目標空燃比KCMDを逐次算出するものである。
【0055】このような目標空燃比生成処理部13の制
御処理を行うために、本実施形態では、前記排気系E
が、前記LAFセンサ5の出力KACT(LAFセンサ5が
検出する触媒上流空燃比)から無駄時間要素及び応答遅
れ要素を介してO2センサ6の出力VO2/OUTを生成する系
であるとして、該排気系Eの挙動を表現するモデルがあ
らかじめ構築されている。また、前記エンジン1及び機
関側制御ユニット7bから成る空燃比操作系が、目標空
燃比KCMDから無駄時間要素を介してLAFセンサ5の出
力KACTを生成する系であるとして、該空燃比操作系の挙
動を表現するモデルがあらかじめ構築されている。
【0056】この場合、排気系Eのモデル(以下、排気
系モデルという)に関しては、LAFセンサ5の出力KA
CT及びO2センサ6の出力VO2/OUTの代わりに、LAFセ
ンサ5の前記偏差出力kact(=KACT−FLAF/BASE)を排
気系Eに対する入力量、O2センサ6の前記偏差出力VO2
(=VO2/OUT−VO2/TARGET)を排気系Eの出力量とし、
次式(1)の離散時間系の自己回帰モデル(詳しくは、
排気系Eの入力量としての偏差出力kactに無駄時間を有
する自己回帰モデル)により排気系Eの挙動が表現され
ている。
【0057】
【数1】
【0058】ここで、上式(1)において、「k」は排
気側制御ユニット7aの離散時間的な制御サイクルの番
数を示し、「d1」は排気系Eの無駄時間(詳しくは、L
AFセンサ5が検出する各時点の触媒上流空燃比がO2
センサ6の出力VO2/OUTに反映されるようになるまでに
要する無駄時間)を制御サイクル数で表したものであ
る。この場合、排気系Eの実際の無駄時間は、触媒装置
3に供給される排ガスの流量と密接に関連しており、基
本的には、該排ガスの流量が少ないほど、該無駄時間が
長くなる。これは基本的には、排ガスの流量が少ないほ
ど、排ガスが触媒装置3を通過するのに要する時間が長
くなるためである。このため、本実施形態では、後述す
るように触媒装置3に供給される排ガスの流量を逐次把
握し、それに応じて、式(1)の排気系モデルにおける
無駄時間d1の値を適宜可変的に設定するようにしている
(以下、無駄時間d1の設定値を設定無駄時間d1とい
う)。
【0059】また、式(1)の右辺第1項及び第2項は
それぞれ排気系Eの応答遅れ要素に対応するもので、第
1項は1次目の自己回帰項、第2項は2次目の自己回帰
項である。そして、「a1」、「a2」はそれぞれ1次目の
自己回帰項のゲイン係数、2次目の自己回帰項のゲイン
係数である。該ゲイン係数a1,a2は別の言い方をすれ
ば、排気系Eの出力量としてのO2センサ6の偏差出力V
O2に係る係数である。
【0060】さらに、式(1)の右辺第3項は排気系E
の無駄時間要素に対応するもので、排気系Eの入力量で
あるLAFセンサ5の偏差出力kactに排気系Eの無駄時
間d1を含めて該無駄時間要素を表現したものである。そ
して、「b1」はその無駄時間要素(無駄時間d1を有する
入力量)に係るゲイン係数である。
【0061】そして、前記ゲイン係数a1,a2,b1は排気
系Eのモデルの挙動を規定する上である値に設定すべき
パラメータであり、本実施形態では後述の同定器によっ
て逐次同定されるものである。
【0062】このように式(1)により表現した排気系
モデルは、それを言葉で表現すれば、排気側制御ユニッ
ト7aの制御サイクル毎の排気系Eの入力量としてのO
2センサの偏差出力VO2(k+1)を、その制御サイクルより
も過去の制御サイクルにおける偏差出力VO2(k),VO2(k-
1)と、排気系Eの無駄時間d1以前の制御サイクルにおけ
る排気系Eの入力量(触媒上流空燃比)としてのLAF
センサ5の偏差出力kact(k-d1)とにより表現するもので
ある。
【0063】一方、エンジン1及び機関側制御ユニット
7bからなる前記空燃比操作系のモデル(以下、空燃比
操作系モデルという)に関しては、本実施形態では、前
記目標空燃比KCMDと前記空燃比基準値FLAF/BASEとの偏
差kcmd(=KCMD−FLAF/BASE。以下、目標偏差空燃比kcm
dという)を空燃比操作系の入力量、LAFセンサ5の
偏差出力kactを空燃比操作系の出力量とし、次式(2)
のモデルにより空燃比操作系モデルの挙動が表現されて
いる。
【0064】
【数2】
【0065】ここで、式(2)の「d2」は、空燃比操作
系が有する無駄時間(詳しくは、各時点の目標空燃比KC
MDがLAFセンサ5の出力KACTに反映されるようになる
までに要する無駄時間)を排気側制御ユニット7aの制
御サイクル数で表したものである。この場合、空燃比操
作系の実際の無駄時間は、排気系Eの無駄時間と同様
に、触媒装置3に供給される排ガスの流量と密接に関連
しており、基本的には、排ガスの流量が少ないほど、該
無駄時間が長くなる。これは基本的には、排ガスの流量
が少ないほど、エンジン1の回転数が低い(クランク角
周期が長い)ので、空燃比操作系の機関側制御ユニット
7bの制御サイクルの周期が長くなるからである。この
ため、本実施形態では、後述するように触媒装置3に供
給される排ガスの流量を逐次把握し、それに応じて、式
(2)の空燃比操作系モデルにおける無駄時間d2の値を
適宜可変的に設定するようにしている(以下、無駄時間
d2の設定値を設定無駄時間d2という)。
【0066】前記式(2)により表現した空燃比操作系
モデルは、該空燃比操作系が、その出力量(触媒上流空
燃比)としてのLAFセンサ5の偏差出力kactが、空燃
比操作系の無駄時間d2前の時点における空燃比操作系の
入力量としての目標偏差空燃比kcmdに一致するような系
であるとして、該空燃比操作系の挙動を表現したもので
ある。
【0067】尚、空燃比操作系には、実際には、無駄時
間要素の他、エンジン1に起因した応答遅れ要素も含ま
れる。しかるに、目標空燃比KCMDに対する触媒上流空燃
比の応答遅れは、基本的には前記機関側制御ユニット7
bのフィードバック制御部14(特に詳細を後述する適
応制御器18)によって補償されるため、排気側制御ユ
ニット7aから見た空燃比操作系では、エンジン1に起
因する応答遅れ要素を考慮せずとも支障はない。
【0068】本実施形態における前記目標空燃比生成処
理部13は、式(1)により表した排気系モデル、並び
に式(2)により表した空燃比操作系モデルに基づいて
構築されたアルゴリズムによって、排気側制御ユニット
7aの制御サイクル毎に、目標空燃比KCMDを逐次算出す
る処理を行うものである。そして、該目標空燃比生成処
理部13は、その処理を行うために、図3に示すような
機能的構成を具備している。
【0069】すなわち、目標空燃比生成処理部13は、
エンジン1の回転数NE、吸気圧PBの検出値から、触媒装
置3に供給される排ガスの流量の推定値ABSV(以下、推
定排ガスボリュームABSVという)を逐次算出する流量デ
ータ生成手段28と、この推定排ガスボリュームABSVに
応じて排気系モデル及び空燃比操作系モデルのそれぞれ
の設定無駄時間d1,d2を逐次設定する無駄時間設定手段
29とを具備している。
【0070】この場合、触媒装置3に供給される排ガス
の流量は、エンジン1の回転数NEと吸気圧PBとの積に比
例するので、流量データ生成手段29は、エンジン1の
回転数NE、吸気圧PBの検出値(現在値)から次式(3)
により、前記推定排ガスボリュームABSVを逐次算出す
る。
【0071】
【数3】
【0072】ここで、式(3)においてSVPRAは、エン
ジン1の排気量(気筒容量)等に応じてあらかじめ設定
された定数である。尚、本実施形態では、エンジン1の
回転数NEが1500rpmであるときの排ガスの流量を基準と
しているため、式(3)では、回転数NEを1500[rpm]に
より除算している。
【0073】前記無駄時間設定手段29は、このように
流量データ生成手段28が逐次算出する推定排ガスボリ
ュームABSVの値から、例えば図4に実線cで示すように
あらかじめ設定されたデータテーブルにより、排気系E
の実際の無駄時間を表す値としての設定無駄時間d1を逐
次求める。また、これと同様に、無駄時間設定手段29
は、推定排ガスボリュームABSVの値から、図4に実線d
で示すようにあらかじめ設定されたデータテーブルによ
り、空燃比操作系の実際の無駄時間を表す値としての設
定無駄時間d2を逐次求める。
【0074】この場合、このようなデータテーブルは、
実験やシミュレーションに基づいて設定されている。そ
して、排気系Eの実際の無駄時間は、前述のように、基
本的には触媒装置3に供給される排ガスの流量が少ない
ほど、長くなるので、図4の実線cの設定無駄時間d1
は、このような傾向で、推定排ガスボリュームABSVに対
して変化する。同様に、空燃比操作系の実際の無駄時間
も、基本的には、触媒装置3に供給される排ガスの流量
が少ないほど、長くなるので、図4の実線dの設定無駄
時間d2も、このような傾向で、推定排ガスボリュームAB
SVに対して変化する。また、空燃比操作系の実際の無駄
時間の排ガス流量に対する変化の度合いは、排気系Eの
実際の無駄時間の変化度合いよりも小さいので、図4の
データテーブルにおいても、推定排ガスボリュームABSV
の変化に対する設定無駄時間d2の変化の度合いは、設定
無駄時間d1の変化度合いよりも小さいものとなってい
る。
【0075】尚、図4のデータテーブルでは、設定無駄
時間d1,d2は、推定排ガスボリュムABSVに対して連続的
に変化するものとなっているが、前記排気系モデルや空
燃比操作系モデルにおける設定無駄時間d1,d2は排気側
制御ユニット7aの制御サイクル数で表すため、該設定
無駄時間d1,d2は整数値である必要がある。このため、
無駄時間設定手段29は、実際には、例えば図4のデー
タテーブルに基づいて求められる設定無駄時間d1,d2の
値の小数点以下を四捨五入してなる整数値を設定無駄時
間d1,d2として求める。
【0076】また、本実施形態では、触媒装置3に供給
される排ガス流量を、エンジン1の回転数NE及び吸気圧
PBから推定するようにしているが、フローセンサ等を用
いて直接的に排ガス流量を検出するようにしてもよい。
【0077】目標空燃比生成処理部13は、さらに、排
気系モデルのパラメータである前記ゲイン係数a1,a2,
b1の値を逐次同定する同定器25(同定手段)と、排気
系Eの設定無駄時間d1及び空燃比操作系の設定無駄時間
d2を合わせた合計設定無駄時間d(=d1+d2)後のO2
センサ6の偏差出力VO 2の推定値VO2バー(以下、推定
偏差出力VO2バーという)を逐次求める推定器26(推
定手段)と、適応スライディングモード制御の処理によ
り前記目標空燃比KCMDを逐次求めるスライディングモー
ド制御器27とを具備している。
【0078】これらの同定器25、推定器26及びスラ
イディングモード制御器27の演算処理のアルゴリズム
は排気系モデルや空燃比操作系モデルに基づいて以下の
ように構築されている。
【0079】まず、同定器25に関し、排気系モデルの
ゲイン係数a1,a2,b1に対応する実際の排気系Eのゲイ
ン係数は一般に該排気系Eの挙動状態や経時的な特性変
化等によって変化する。従って、排気系モデル(式
(1))の実際の排気系Eに対するモデル化誤差を極力
少なくして該モデルの精度を高めるためには、ゲイン係
数a1,a2,b1を実際の対象排気系Eの挙動状態等に則し
て適宜、リアルタイムで同定することが好ましい。
【0080】前記同定器25は、上記のように排気系モ
デルのモデル化誤差を極力小さくするために、ゲイン係
数a1,a2,b1をリアルタイムで逐次同定するものであ
り、その同定処理は次のように行われる。
【0081】すなわち、同定器25は、排気側制御ユニ
ット7aの制御サイクル毎に、まず、今現在設定されて
いる排気系モデルの同定ゲイン係数a1ハット,a2ハッ
ト,b1ハット、すなわち前回の制御サイクルで決定した
同定ゲイン係数a1(k-1)ハット,a2(k-1)ハット,b1(k-
1)ハットと、LAFセンサ5の偏差出力kact及びO2
ンサ6の偏差出力VO2の過去に得られたデータと、前記
無駄時間設定手段29により設定された排気系Eの設定
無駄時間d1の最新値とを用いて、次式(4)により今現
在設定されている排気系モデル上でのO2センサ6の偏
差出力VO2の同定値VO2(k)ハット(以下、同定偏差出力V
O2(k)ハットという)を求める。
【0082】
【数4】
【0083】この式(4)は、排気系モデルを表す前記
式(1)を1制御サイクル分、過去側にシフトし、ゲイ
ン係数a1,a2,b1を同定ゲイン係数a1ハット(k-1),a2
ハット(k-1),b1ハット(k-1)で置き換えると共に、排気
系Eの無駄時間d1として設定無駄時間d1の最新値を用い
たものである。
【0084】ここで、次式(5),(6)で定義される
ベクトルΘ及びξを導入すると(式(5),(6)中の
添え字「T」は転置を意味する。以下同様。)、
【0085】
【数5】
【0086】
【数6】
【0087】前記式(4)は、次式(7)により表され
る。
【0088】
【数7】
【0089】さらに同定器25は、前記式(4)あるい
は式(7)により求められるO2センサ6の同定偏差出
力VO2(k)ハットと今現在のO2センサ6の偏差出力VO2
(k)との偏差id/e(k)を排気系モデルの実際の排気系Eに
対するモデル化誤差を表すものとして次式(8)により
求める(以下、偏差id/eを同定誤差id/eという)。
【0090】
【数8】
【0091】そして、同定器25は、上記同定誤差id/e
を最小にするように新たな同定ゲイン係数a1(k)ハッ
ト,a2(k)ハット,b1(k)ハット、換言すれば、これらの
同定ゲイン係数を要素とする新たな前記ベクトルΘ(k)
(以下、このベクトルを同定ゲイン係数ベクトルΘとい
う)を求めるもので、その算出を、次式(9)により行
う。すなわち、同定器25は、前回の制御サイクルで決
定した同定ゲイン係数a1ハット(k-1),a2ハット(k-1),
b1ハット(k-1)を、同定誤差id/e(k)に比例させた量だけ
変化させることで新たな同定ゲイン係数a1(k)ハット,a
2(k)ハット,b1(k)ハットを求める。
【0092】
【数9】
【0093】ここで、式(9)中の「Kθ」は次式(1
0)により決定される三次のベクトル(各同定ゲイン係
数a1ハット,a2ハット,b1ハットの同定誤差id/eに応じ
た変化度合いを規定するゲイン係数ベクトル)である。
【0094】
【数10】
【0095】また、上式(10)中の「P」は次式(1
1)の漸化式により逐次更新される三次の正方行列であ
る。
【0096】
【数11】
【0097】尚、式(11)中の「λ1」、「λ2」は0
<λ1≦1及び0≦λ2<2の条件を満たすように設定さ
れ、また、「P」の初期値P(0)は、その各対角成分を
正の数とする対角行列である。
【0098】ここで、式(11)中の「λ1」、「λ2」
の値の設定の仕方によって、固定ゲイン法、漸減ゲイン
法、重み付き最小二乗法、最小二乗法、固定トレース法
等、各種の具体的なアルゴリズムが構成される。本実施
形態では、例えば重み付き最小二乗法のアルゴリズムが
採用され、「λ1」、「λ2」の値は、0<λ1<1、λ2
=1である。
【0099】ここで、「λ1」は、重み付き最小2乗法
の重みパラメータであり、本実施形態では、この重みパ
ラメータλ1の値が、前記流量データ生成手段28が逐
次算出する推定排ガスボリュームABSVに応じて(結果的
には、設定無駄時間d1に応じて)可変的に設定される。
【0100】すなわち、本実施形態では、同定器25
は、排気側制御ユニット7aの制御サイクル毎に、流量
データ生成手段28が求めた推定排ガスボリュームABSV
の最新値から、図5に示すようにあらかじめ定められた
データテーブルに基づいて重みパラメータλ1の値を設
定する。この場合、図5のデータテーブルでは、重みパ
ラメータλ1の値は、基本的には、推定排ガスボリュー
ムABSVが少ないほど、値が大きくなって、「1」に近づ
くようになっている。そして、同定器25は、各制御サ
イクルで前記行列P(k)を式(11)により更新するに
際しては、上記のように推定排ガスボリュームAB SVに
応じて設定した重みパラメータλ1の値を用いる。
【0101】本実施形態における同定器25は基本的に
は前述のようなアルゴリズム(演算処理)によって、前
記同定誤差id/eを最小化するように逐次型の重み付き最
小2乗法のアルゴリズムにより、排気系モデルの同定ゲ
イン係数a1ハット,a2ハット,b1ハットを制御サイクル
毎に逐次求めるものである。
【0102】以上説明した演算処理が同定器25による
基本的な処理内容である。尚、本実施形態では、同定器
25は、同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハット
を求めるに際して、それらの値の制限処理等、付加的な
処理も行うのであるが、これらについては後述する。
【0103】次に、前記推定器26は、後に詳細を説明
するスライディングモード制御器27による目標空燃比
KCMDの算出処理に際しての排気系Eの無駄時間及び空燃
比操作系の無駄時間d2の影響を補償するために、前記合
計設定無駄時間d(=d1+d2)後のO2センサ6の偏差
出力VO2の推定値である前記推定偏差出力VO2バーを制御
サイクル毎に逐次求めるものである。その推定処理のア
ルゴリズムは、次のように構築されている。
【0104】まず、排気系モデルを表す前記式(1)
に、空燃比操作系モデルを表す式(2)を適用すると、
式(1)は次式(11)に書き換えられる。
【0105】
【数12】
【0106】この式(12)は、排気系E及び空燃比操
作系を合わせた系を、目標偏差空燃比kcmdから排気系E
及び空燃比操作系の両者の無駄時間要素と排気系Eの応
答遅れ要素とを介してO2センサ6の偏差出力VO2を生成
する系として、該系の挙動を離散時間系で表現したもの
である。
【0107】そして、この式(12)を用いることで、
各制御サイクルにおける合計設定無駄時間d後のO2
ンサの偏差出力VO2(k+d)バーは、O2センサ6の偏差出
力VO2の現在値及び過去値の時系列データVO2(k)及びVO2
(k-1)と、スライディングモード制御器27が求める目
標空燃比KCMD(詳細な求め方は後述する)に相当する目
標偏差空燃比kcmd(=KCMD−FLAF/BASE)の過去値の時
系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,d)とを用いて次
式(13)により表される。
【0108】
【数13】
【0109】ここで、式(13)において、α1,α2
は、それぞれ同式(13)中の但し書きで定義した行列
Aのべき乗Ad(d=d1+d2)の第1行第1列成分、第
1行第2列成分である。また、βj(j=1,2,…,d)
は、それぞれ行列Aのべき乗Aj -1(j=1,2,…,d)
と同式(13)中の但し書きで定義したベクトルBとの
積Aj-1・Bの第1行成分である。
【0110】さらに、式(13)中の目標偏差空燃比kc
mdの過去値の時系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,
d)のうち、現在から空燃比操作系の無駄時間d2以前の
目標偏差空燃比kcmdの過去値の時系列データkcmd(k-d
2),kcmd(k-d2-1),…,kcmd(k-d)は前記式(2)によ
って、それぞれ、LAFセンサ5の偏差出力kactの現在
以前に得られるデータkact(k),kact(k-1),…,kact(k
-d+d2)に置き換えることができる。そして、この置き換
えを行うことで、次式(14)が得られる。
【0111】
【数14】 この式(14)が本実施形態において、推定器26が推
定偏差出力VO2(k+d)バーを制御サイクル毎に逐次算出す
るための基本式である。つまり、本実施形態では、推定
器26は、O2センサ6の偏差出力VO2の現在値及び過去
値の時系列データVO2(k)及びVO2(k-1)と、スライディン
グモード制御器27が過去に求めた目標空燃比KCMDを表
す目標偏差空燃比kcmdの過去値のデータkcmd(k-j)(j
=1,2,…,d2-1)と、LAFセンサ5の偏差出力kact
の現在値及び過去値の時系列データkact(k-j)(j=0,
1,…,d1)とを用いて式(14)の演算を行うことに
よってO2センサ6の推定偏差出力VO2(k+d)バーを求め
る。
【0112】この場合、式(14)により推定偏差出力
VO2(k+d)バーを算出するために必要となる係数値α1,
α2及びβj(j=1,2,…,d)の値は、基本的には、前
記ゲイン係数a1,a2,b1(これらは式(13)の但し書
きで定義した行列A及びベクトルBの成分である)の最
新の同定値である同定ゲイン係数a1(k)ハット、a2(k)ハ
ット、b1(k)ハットが用いられる。また、式(14)の
演算で必要となる無駄時間d1,d2の値は、前記無駄時間
設定手段29が前述のように設定する設定無駄時間d1,
d2の最新値が用いられる。
【0113】ところで、本実施形態では、式(14)で
用いる設定無駄時間d1,d2の値は、推定排ガスボリュー
ムABSVによって変化し、これに伴い、式(14)により
推定偏差出力VO2(k+d)バーの算出に必要な目標偏差空燃
比kcmdのデータ及びLAFセンサ5の偏差出力kactのデ
ータの個数も変化する。そして、この場合、空燃比操作
系の設定無駄時間d2の値が「1」となる場合がある(本
実施形態ではd1>d2≧1である。図4参照)。この場合
には、式(13)中の目標偏差空燃比kcmdの過去値の時
系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,d)の全てをそ
れぞれLAFセンサ5の偏差出力kactの現在以前に得ら
れる時系列データkact(k),kact(k-1),…,kact(k-d+d
2)に置き換えることができる。このため、この場合に
は、式(13)は、目標偏差空燃比kcmdのデータを含ま
ない次式(15)に書き換えられる。
【0114】
【数15】
【0115】つまり、設定無駄時間d2の値が「1」であ
る場合には、O2センサ6の推定偏差出力VO2(k+d)バー
は、O2センサ6の偏差出力VO2の時系列データVO2(k)及
びVO2(k-1)と、LAFセンサ5の偏差出力kactの現在値
及び過去値の時系列データkact(k-j)(j=0,1,…,
d-1)と、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット、b1ハッ
トにより定まる係数値α1,α2及びβj(j=1,2,…,
d)と、設定無駄時間d1,d2の和の合計設定無駄時間d
(=d1+d2)とを用いて求めることができる。
【0116】このため、本実施形態では、推定器26
は、空燃比操作系の設定無駄時間d2がd2>1である場合
には、前記式(14)の演算により推定偏差出力VO2(k+
d)バーを求め、d2=1である場合には、式(15)の演
算により推定偏差出力VO2(k+d)を求める。
【0117】尚、推定偏差出力VO2(k+d)バーは、LAF
センサ5の偏差出力kactのデータを使用せずに、式(1
3)の演算により求めるようにしてもよい。この場合に
は、O2センサ6の推定偏差出力VO2(k+d)バーは、O2
ンサ6の偏差出力VO2の時系列データVO2(k)及びVO2(k-
1)と、目標偏差空燃比kcmdの過去値の時系列データkcmd
(k-j)(j=1,2,…,d)と、同定ゲイン係数a1ハッ
ト、a2ハット、b1ハットにより定まる係数値α1,α2及
びβj(j=1,2,…,d)と、設定無駄時間d1,d2の和
の合計設定無駄時間d(=d1+d2)とを用いて求められ
ることとなる。さらには、式(13)中の設定無駄時間
d2以前の目標偏差空燃比kcmdの時系列データのうちの一
部のみをLAFセンサ5の偏差出力kactに置き換えた式
によって推定偏差出力VO2(k+d)バーを求めることも可能
である。但し、推定偏差出力VO2(k+d)バーの信頼性を高
める上では、エンジン1等の実際の挙動が反映されるL
AFセンサ5の偏差出力kactのデータを可能な限り用い
た式(14)又は式(15)の演算により推定偏差出力
VO2(k+d)バーを求めることが好ましい。
【0118】以上説明した演算処理のアルゴリズムが、
推定器26により制御サイクル毎にO2センサ6の偏差
出力VO2の合計設定無駄時間d後の推定値である推定偏
差出力VO2(k+d)バーを求めるための基本的なアルゴリズ
ムである。
【0119】次に、前記スライディングモード制御器2
7を説明する。
【0120】スライディングモード制御器27は、通常
的なスライディングモード制御に外乱等の影響を極力排
除するための適応則(適応アルゴリズム)を加味した適
応スライディングモード制御の処理により、O2センサ
6の出力VO2/OUTをその目標値VO2/TARGETに収束させる
ように(O2センサ6の偏差出力VO2を「0」に収束させ
るように)、排気系Eに与えるべき入力量(詳しくは、
LAFセンサ5の出力KACT(空燃比の検出値)と前記空
燃比基準値FLAF/BASEとの偏差の目標値で、これは前記
目標偏差空燃比kcmdに等しい。以下、この入力量をSL
D操作入力uslと称する)を逐次算出し、その算出した
SLD操作入力uslから前記目標空燃比KCMDを逐次求め
るものである。そして、その処理のためのアルゴリズム
は次のように構築されている。
【0121】まず、スライディングモード制御器27の
適応スライディングモード制御の処理に必要な切換関数
とこの切換関数により定義される超平面(これはすべり
面とも言われる)とについて説明する。
【0122】本実施形態におけるスライディングモード
制御の基本的な考え方としては、制御すべき状態量とし
て、例えば各制御サイクルで得られたO2センサ6の偏
差出力VO2(k)と、その1制御サイクル前に得られた偏差
出力VO2(k-1)とを用い、スライディングモード制御用の
切換関数σを次式(16)により定義する。すなわち、
該切換関数σは、O2センサ6の偏差出力VO2の時系列デ
ータVO2(k)、VO2(k-1)を成分とする線形関数により定義
される。尚、前記偏差出力VO2(k),VO2(k-1)を成分とす
るベクトルとして式(16)中で定義したベクトルXを
以下、状態量Xという。
【0123】
【数16】 この場合、切換関数σの成分VO2(k)、VO2(k-1)にそれぞ
れ係る係数s1,s2は、次式(17)の条件を満たすよう
に設定される。
【0124】
【数17】 尚、本実施形態では、簡略化のために係数s1をs1=1と
し(この場合、s2/s1=s2である)、−1<s2<1の条
件を満たすように係数s2の値を設定している。
【0125】このように切換関数σを定義したとき、ス
ライディングモード制御用の超平面はσ=0なる式によ
って定義されるものである。この場合、状態量Xは二次
系であるので超平面σ=0は図6に示すように直線とな
る。該超平面は位相空間の次数によって切換線又は切換
面とも言われる尚、本実施形態では、切換関数の変数成
分である状態量として、実際には前記推定器26により
求められる前記推定偏差出力VO2バーの時系列データを
用いるのであるがこれについては後述する。
【0126】本実施形態で用いる適応スライディングモ
ード制御は、状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))を上記の
如く設定した超平面σ=0に収束させる(切換関数σの
値を「0」に収束させるための制御則である到達則と、
その超平面σ=0への収束に際して外乱等の影響を補償
するための制御則である適応則(適応アルゴリズム)と
により該状態量Xを超平面σ=0に収束させる(図6の
モード1)。そして、該状態量Xを所謂、等価制御入力
によって超平面σ=0に拘束しつつ(切換関数σの値を
「0」に保持する)、該状態量Xを超平面σ=0上の平
衡点であるVO2(k)=VO2(k-1)=0となる点、すなわち、
O2センサ6の出力VO2/OUTの時系列データVO2/OUT(k),
VO2/OUT(k-1)が目標値VO2/TARGETに一致するような点に
収束させる(図6のモード2)。
【0127】上記のように状態量Xを超平面σ=0の平
衡点に収束させるためにスライディングモード制御器2
7が生成する前記SLD操作入力Usl(=目標偏差空燃
比kcmd)は、次式(18)のように、状態量Xを超平面
σ=0上に拘束するための制御則に従って排気系Eに与
えるべき入力量成分である等価制御入力Ueqと、前記到
達則に従って排気系Eに与えるべき入力量成分Urch
(以下、到達則入力Urchという)と、前記適応則に従
って排気系Eに与えるべき入力量成分Uadp(以下、適
応則入力Uadpという)との総和により表される。
【0128】
【数18】 そして、これらの等価制御入力Ueq、到達則入力Urch
及び適応則入力Uadpは、本実施形態では、排気系モデ
ルと空燃比操作系モデルとを合わせた前記式(12)に
基づいて、次のように求められる。
【0129】まず、状態量Xを超平面σ=0に拘束する
ために排気系Eに与えるべき入力量成分である前記等価
制御入力Ueqは、σ(k+1)=σ(k)=0という条件を満た
す目標偏差空燃比kcmdである。そして、このような条件
を満たす等価制御入力Ueqは、式(12)と式(16)
とを用いて次式(19)により与えられる。
【0130】
【数19】 この式(19)が本実施形態において、制御サイクル毎
に等価制御入力Ueq(k)を求めるための基本式である。
【0131】次に、前記到達則入力Urchは、本実施形
態では、基本的には次式(20)により求められる。
【0132】
【数20】 すなわち、到達則入力Urchは、排気系E及び空燃比操
作系の無駄時間を考慮し、前記合計設定無駄時間d後の
切換関数σの値σ(k+d)に比例するように決定される。
【0133】この場合、式(20)中の係数F(これは
到達則のゲインを規定する)は、次式(21)の条件を
満たすように設定される。
【0134】
【数21】 この式(21)の条件は、外乱等が無い場合において、
切換関数σの値を安定に超平面σ=0に収束させるため
の条件である。尚、式(21)中の好ましい条件は、切
換関数σの値が超平面σ=0に対して振動的な変化(所
謂チャタリング)を生じるのを抑制する上で好適な条件
である。
【0135】次に、前記適応則入力Uadpは、本実施形
態では、基本的には次式(22)により求められる。こ
こで、式(27)中のΔTは排気側制御ユニット7aの
制御サイクルの周期である)。
【0136】
【数22】 すなわち、適応則入力Uadpは、排気系E及び空燃比操
作系の無駄時間を考慮し、前記合計設定無駄時間d後ま
での切換関数σの値と排気側制御ユニット7aの制御サ
イクルの周期ΔTとの積の積算値(これは切換関数σの
値の積分値に相当する)に比例させるように決定する。
【0137】この場合、式(22)中の係数G(これは
適応則のゲインを規定する)は、次式(23)の条件を
満たすように設定する。
【0138】
【数23】 この式(23)の条件は、外乱等によらずに切換関数σ
の値を安定に超平面σ=0に収束させるための条件であ
る。
【0139】尚、前記式(17)、(21)、(23)
の設定条件のより具体的な導出の仕方については、本願
出願人が既に特開平11-93741号公報等にて詳細に説明し
ているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0140】本実施形態におけるスライディングモード
制御器27は、基本的には前記式(19)、(20)、
(22)により決定される等価制御入力Ueq、到達則入
力Urch及び適応則入力Uadpの総和(Ueq+Urch+Ua
dp)を排気系Eに与えるべきSLD操作入力Uslとして
決定するのであるが、前記式(19)、(20)、(2
2)で使用するO2センサ6の偏差出力VO2(k+d),VO2(k
+d-1)や、切換関数σの値σ(k+d)等は未来値であるので
直接的には得られない。
【0141】そこで、本実施形態では、スライディング
モード制御器27は、実際には、前記式(19)により
前記等価制御入力Ueqを決定するためのO2センサ6の
偏差出力VO2(k+d),VO2(k+d-1)の代わりに、前記推定器
26で求められる推定偏差出力VO2(k+d)バー,VO2(k+d-
1)バーを用い、次式(24)により制御サイクル毎の等
価制御入力Ueqを算出する。
【0142】
【数24】 また、本実施形態では、実際には、推定器26により前
述の如く逐次求められた推定偏差出力VO2バーの時系列
データを制御すべき状態量とし、前記式(16)により
設定された切換関数σに代えて、次式(25)により切
換関数σバーを定義する(この線形関数σバーは、前記
式(16)の偏差出力VO2の時系列データを推定偏差出
力VO2バーの時系列データで置き換えたものに相当す
る)。
【0143】
【数25】 そして、スライディングモード制御器27は、前記式
(20)により前記到達則入力Urchを決定するための
切換関数σの値の代わりに、前記式(25)により表さ
れる切換関数σバーの値を用いて次式(26)により制
御サイクル毎の到達則入力Urchを算出する。
【0144】
【数26】 同様に、スライディングモード制御器27は、前記式
(22)により前記適応則入力Uadpを決定するための
切換関数σの値の代わりに、前記式(25)により表さ
れる線形関数σバーの値を用いて次式(27)により制
御サイクル毎の適応則入力Uadpを算出する。
【0145】
【数27】 尚、前記式(24),(26),(27)により等価制
御入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを算
出する際に必要となる前記ゲイン係数a1,a2,b1として
は、本実施形態では基本的には前記同定器25により求
められた最新の同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハッ
ト,b1(k)ハットが用いられる。また、到達則入力Urch
及び適応則入力Uadpを算出する際に必要となる各制御
サイクルにおける切換関数σバーの値は、推定器26に
より求められた最新の推定偏差出力VO2(k+d)バーと、そ
の1制御サイクル前に推定器26により求められた推定
偏差出力VO2(k+d-1)バーである。
【0146】そして、スライディングモード制御器27
は、前記式(24)、(26)、(27)によりそれぞ
れ求められる等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び
適応則入力Uadpの総和を排気系Eに与えるべき前記S
LD操作入力Uslとして求める(前記式(18)を参
照)。尚、この場合において、前記式(24)、(2
6)、(27)中で用いる前記係数s1,s2,F,Gの設
定条件は前述の通りである。
【0147】これが、本実施形態において、スライディ
ングモード制御器27により、排気系Eに与えるべきS
LD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)を制御サイ
クル毎に求めるための基本的なアルゴリズムである。こ
のようにしてSLD操作入力Uslを求めることで、該S
LD操作入力Uslは、O2センサ6の推定偏差出力VO2バ
ーを「0」に収束させるように(結果的にはO2センサ
6の出力VO2/OUTを目標値VO2/TARGETに収束させるよう
に)求められる。
【0148】ところで、本実施形態におけるスライディ
ングモード制御器27は最終的には前記目標空燃比KCMD
を制御サイクル毎に逐次求めるものあるが、前述のよう
に求められるSLD操作入力Uslは、LAFセンサ5で
検出される触媒上流空燃比と前記空燃比基準値FLAF/BAS
Eとの偏差の目標値、すなわち前記目標偏差空燃比kcmd
である。このため、スライディングモード制御器27
は、最終的には、次式(28)に示すように、制御サイ
クル毎に、前述の如く求めたSLD操作入力Usl(k)に
空燃比基準値FLAF/BASEを加算することで、目標空燃比K
CMD(k)を求める。
【0149】
【数28】 以上が本実施形態でスライディングモード制御器27に
より目標空燃比KCMDを逐次求めるための基本的アルゴリ
ズムである。
【0150】尚、本実施形態では、スライディングモー
ド制御器27による適応スライディングモード制御の安
定性を判別して、前記SLD操作入力Uslの値を制限し
たりするのであるが、これについては後述する。
【0151】次に、前記機関側制御ユニット7bの大局
的フィードバック制御部15、特に前記適応制御器18
をさらに説明する。
【0152】前記図1を参照して、大局的フィードバッ
ク制御部15は、前述のようにLAFセンサ5の出力KA
CTを目標空燃比KCMDに収束させるようにフィードバック
制御を行うものである。このとき、このようなフィード
バック制御を周知のPID制御だけで行うようにする
と、エンジン1の運転状態の変化や経年的特性変化等、
動的な挙動変化に対して、安定した制御性を確保するこ
とが困難である。
【0153】前記適応制御器18は、上記のようなエン
ジン1の動的な挙動変化を補償したフィードバック制御
を可能とする漸化式形式の制御器であり、I.D.ラン
ダウ等により提唱されているパラメータ調整則を用い
て、図7に示すように、複数の適応パラメータを設定す
るパラメータ調整部30と、設定された適応パラメータ
を用いて前記フィードバック操作量KSTRを算出する操作
量算出部31とにより構成されている。
【0154】ここで、パラメータ調整部30について説
明すると、ランダウ等の調整則では、離散系の制御対象
の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1)の分母分子の多項式
を一般的に下記の式(29),(30)のようにおいた
とき、パラメータ調整部30が設定する適応パラメータ
θハット(j)(jは機関側制御ユニット7bの制御サイ
クルの番数を示す)は、式(31)のようにベクトル
(転置ベクトル)で表される。また、パラメータ調整部
30への入力ζ(j)は、式(32)のように表される。
この場合、本実施形態では、大局的フィードバック制御
部15の制御対象であるエンジン1が一次系で3制御サ
イクル分の無駄時間dp(エンジン1の燃焼サイクルの
3サイクル分の時間)を持つプラントと考え、式(2
9)〜式(32)でm=n=1,dp=3とし、設定す
る適応パラメータはs0,r1,r2,r3,b0の5個と
した(図7参照)。尚、式(32)の上段式及び中段式
におけるus,ysは、それぞれ、制御対象への入力(操
作量)及び制御対象の出力(制御量)を一般的に表した
ものであるが、本実施形態では、上記入力をフィードバ
ック操作量KSTR、制御対象(エンジン1)の出力を前記
LAFセンサ5の出力KACT(触媒上流空燃比の検出値)
とし、パラメータ調整部30への入力ζ(j)を、式(3
2)の下段式により表す(図7参照)。
【0155】
【数29】
【0156】
【数30】
【0157】
【数31】
【0158】
【数32】 ここで、前記式(36)に示される適応パラメータθハ
ットは、適応制御器18のゲインを決定するスカラ量要
素b0ハット(j)、操作量を用いて表現される制御要
素BRハット(Z-1,j)、及び制御量を用いて表現さ
れる制御要素S(Z-1,j)からなり、それぞれ、次式
(33)〜(35)により表現される(図7の操作量算
出部31のブロック図を参照)。
【0159】
【数33】
【0160】
【数34】
【0161】
【数35】 パラメータ調整部30は、これらのスカラ量要素や制御
要素の各係数を設定して、それを式(31)に示す適応
パラメータθハットとして操作量算出部31に与えるも
ので、現在から過去に渡るフィードバック操作量KSTRの
時系列データとLAFセンサ5の出力KACTとを用いて、
該出力KACTが前記目標空燃比KCMDに一致するように、適
応パラメータθハットを算出する。
【0162】この場合、具体的には、適応パラメータθ
ハットは、次式(36)により算出する。
【0163】
【数36】 同式(36)において、Γ(j)は、適応パラメータθハ
ットの設定速度を決定するゲイン行列(この行列の次数
はm+n+dp)、eアスタリスク(j)は、適応パラメー
タθハットの推定誤差を示すもので、それぞれ式(3
7),(38)のような漸化式で表される。
【0164】
【数37】
【0165】
【数38】 ここで、式(38)中の「D(Z-1)」は、収束性を調
整するための、漸近安定な多項式であり、本実施形態で
はD(Z-1)=1としている。
【0166】尚、式(37)のλ1(j),λ2(j)の選び方
により、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリ
ズム、固定トレースアルゴリズム、固定ゲインアルゴリ
ズム等の種々の具体的なアルゴリズムが得られる。エン
ジン1の燃料噴射あるいは空燃比等の時変プラントで
は、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリズ
ム、固定ゲインアルゴリズム、および固定トレースアル
ゴリズムのいずれもが適している。
【0167】前述のようにパラメータ調整部30により
設定される適応パラメータθハット(s0,r1,r2,
r3,b0)と、前記目標空燃比生成処理部13により決
定される目標空燃比KCMDとを用いて、操作量算出部31
は、次式(39)の漸化式により、フィードバック操作
量KSTRを求める。図7の操作量算出部31は、同式(3
9)の演算をブロック図で表したものである。
【0168】
【数39】 尚、式(39)により求められるフィードバック操作量
KSTRは、LAFセンサ5の出力KACTが目標空燃比KCMDに
一致する状態において、「目標空燃比KCM D」となる。
このために、前述の如く、フィードバック操作量KSTRを
除算処理部19によって目標空燃比KCMDで除算すること
で、前記フィードバック補正係数KFBとして使用できる
フィードバック操作量kstrを求めるようにしている。
【0169】このように構築された適応制御器18は、
前述したことから明らかなように、制御対象であるエン
ジン1の動的な挙動変化を考慮した漸化式形式の制御器
であり、換言すれば、エンジン1の動的な挙動変化を補
償するために、漸化式形式で記述された制御器である。
そして、より詳しくは、漸化式形式の適応パラメータ調
整機構を備えた制御器と定義することができる。
【0170】尚、この種の漸化式形式の制御器は、所
謂、最適レギュレータを用いて構築する場合もあるが、
この場合には、一般にはパラメータ調整機構は備えられ
ておらず、エンジン1の動的な挙動変化を補償する上で
は、前述のように構成された適応制御器18が好適であ
る。
【0171】以上が、本実施形態で採用した適応制御器
18の詳細である。
【0172】尚、適応制御器18と共に、大局的フィー
ドバック制御部15に具備したPID制御器17は、一
般のPID制御と同様に、LAFセンサ5の出力KACT
と、その目標空燃比KCMDとの偏差から、比例項(P
項)、積分項(I項)及び微分項(D項)を算出し、そ
れらの各項の総和をフィードバック操作量KLAFとして算
出する。この場合、本実施形態では、積分項(I項)の
初期値を「1」とすることで、LAFセンサ5の出力KA
CTが目標空燃比KCMDに一致する状態において、フィード
バック操作量KLAFが「1」になるようにし、該フィード
バック操作量KLAFをそのまま燃料噴射量を補正するため
の前記フィードバック補正係数KFBとして使用すること
ができるようしている。また、比例項、積分項及び微分
項のゲインは、エンジン1の回転数と吸気圧とから、あ
らかじめ定められたマップを用いて決定される。
【0173】また、大局的フィードバック制御部15の
前記切換部20は、エンジン1の冷却水温の低温時や、
高速回転運転時、吸気圧の低圧時等、エンジン1の燃焼
が不安定なものとなりやすい場合、あるいは、目標空燃
比KCMDの変化が大きい時や、空燃比のフィードバック制
御の開始直後等、これに応じたLAFセンサ6の出力KA
CTが、そのLAFセンサ5の応答遅れ等によって、信頼
性に欠ける場合、あるいは、エンジン1のアイドル運転
時のようにエンジン1の運転状態が極めて安定してい
て、適応制御器18による高ゲイン制御を必要としない
場合には、PID制御器17により求められるフィード
バック操作量KLAFを燃料噴射量を補正するためのフィー
ドバック補正量数KFBとして出力する。そして、上記の
ような場合以外の状態で、適応制御器18により求めら
れるフィードバック操作量KSTRを目標空燃比KCMDで除算
してなるフィードバック操作量kstrを燃料噴射量を補正
するためのフィードバック補正係数KFBとして出力す
る。これは、適応制御器18が、高ゲイン制御で、LA
Fセンサ5の出力KA CTを急速に目標空燃比KCMDに収束
させるように機能するため、上記のようにエンジン1の
燃焼が不安定となったり、LAFセンサ5の出力KACTの
信頼性に欠ける等の場合に、適応制御器18のフィード
バック操作量KSTRを用いると、かえって空燃比の制御が
不安定なものとなる虞れがあるからである。
【0174】このような切換部20の作動は、例えば特
開平8−105345号公報に本願出願人が詳細に開示
しているので、ここでは、さらなる説明を省略する。
【0175】次に本実施形態の装置の作動の詳細を説明
する。
【0176】まず、図8のフローチャートを参照して、
前記機関側制御ユニット7bによる処理について説明す
る。機関側制御ユニット7bは、各気筒毎の出力燃料噴
射量#nToutの算出処理をエンジン1のクランク角周期
(TDC)と同期した制御サイクルで次のように行う。
【0177】機関側制御ユニット7bは、まず、前記L
AFセンサ5及びO2センサ6を含む各種センサの出力
を読み込む(STEPa)。この場合、LAFセンサ5
の出力KACT及びO2センサ6の出力VO2/OUTはそれぞれ過
去に得られたものを含めて時系列的に図示しないメモリ
に記憶保持される。
【0178】次いで、基本燃料噴射量算出部8によっ
て、前述の如くエンジン1の回転数NE及び吸気圧PBに対
応する燃料噴射量をスロットル弁の有効開口面積に応じ
て補正してなる基本燃料噴射量Timが求められる(ST
EPb)。さらに、第1補正係数算出部9によって、エ
ンジン1の冷却水温やキャニスタのパージ量等に応じた
第1補正係数KTOTALが算出される(STEPc)。
【0179】次いで、機関側制御ユニット7bは、エン
ジン1の運転モードが排気側制御ユニット7aの目標空
燃比生成処理部13が生成する目標空燃比KCMDを使用し
て燃料噴射量の調整を行う運転モード(以下、通常運転
モード)であるか否かの判別処理を行って、該運転モー
ドが通常運転モードであるか否かをそれぞれ値「1」,
「0」で表すフラグf/prism/onの値を設定する(STE
Pd)。
【0180】上記の判別処理では、図9に示すように、
2センサ6及びLAFセンサ5が活性化しているか否
かの判別が行われる(STEPd−1,d−2)。この
とき、いずれかが活性化していない場合には、目標空燃
比生成処理部13の処理に使用するO2センサ6やLA
Fセンサ5の検出データを精度よく得ることができな
い。従って、この場合には、エンジン1の運転モードは
通常運転モードではないとされ、フラグf/prism/onの値
が「0」にセットされる(STEPd−10)。
【0181】また、エンジン1のリーン運転中(希薄燃
焼運転)であるか否か(STEPd−3)、エンジン1
の始動直後の触媒装置3の早期活性化を図るためにエン
ジン1の点火時期が遅角側に制御されているか否か(S
TEPd−4)、エンジン1のスロットル弁が略全開で
あるか否か(STEPd−5)、及びエンジン1への燃
料供給の停止中(フュエルカット中)であるか否か(S
TEPd−6)の判別が行われる。これらのいずれかの
条件が成立している場合には、目標空燃比生成処理部1
3が生成する目標空燃比KCMDを使用してエンジン1の燃
料供給を制御することは好ましくないか、もしくは制御
することができない。従って、この場合には、エンジン
1の運転モードは通常運転モードではないとされ、フラ
グf/prism/onの値が「0」にセットされる(STEPd
−10)。
【0182】さらに、エンジン1の回転数NE及び吸気圧
PBがそれぞれ所定範囲内(正常な範囲内)にあるか否か
の判別が行われる(STEPd−7,d−8)。このと
き、いずれかが所定範囲内にない場合には、目標空燃比
生成処理部13が生成する目標空燃比KCMDを使用してエ
ンジン1の燃料供給を制御することは好ましくない。従
って、この場合には、エンジン1の運転モードは通常運
転モードではないとされ、フラグf/prism/onの値が
「0」にセットされる(STEPd−10)。
【0183】そして、STEPd−1,d−2,d−
7,d−8の条件が満たされ、且つ、STEPd−3,
d−4,d−5,d−6の条件が成立していない場合
(これは、エンジン1の通常的な運転状態である)に、
エンジン1の運転モードが通常運転モードであるとし
て、フラグf/prism/onの値が「1」にセットされる(S
TEPd−9)。
【0184】図8の説明に戻って、上記のようにフラグ
f/prism/onの値を設定した後、機関側制御ユニット7b
は、フラグf/prism/onの値を判断し(STEPe)、f/
prism/on=1である場合には、排気側制御ユニット7a
の目標空燃比生成処理部13で生成された最新の目標空
燃比KCMDを読み込む(STEPf)。また、f/prism/on
=0である場合には、目標空燃比KCMDを所定値に設定す
る(STEPg)。この場合、目標空燃比KCMDとして設
定する所定値は、例えばエンジン1の回転数NEや吸気圧
PBからあらかじめ定めたマップ等を用いて決定する。
【0185】次いで、機関側制御ユニット7bは、前記
局所的フィードバック制御部16において、前述の如く
オブザーバ21によりLAFセンサ5の出力KACTから推
定した各気筒毎の実空燃比#nA/Fに基づき、PID制御
器22により、各気筒毎のばらつきを解消するようにフ
ィードバック補正係数#nKLAFを算出する(STEP
h)。さらに、大局的フィードバック制御部15によ
り、フィードバック補正係数KFBを算出する(STEP
i)。
【0186】この場合、大局的フィードバック制御部1
5は、前述の如く、PID制御器17により求められる
フィードバック操作量KLAFと、適応制御器18により求
められるフィードバック操作量KSTRを目標空燃比KCMDで
除算してなるフィードバック操作量kstrとから、切換部
20によってエンジン1の運転状態等に応じていずれか
一方のフィードバック操作量KLAF又はkstrを選択する
(通常的には適応制御器18側のフィードバック操作量
kstrを選択する)。そして、選択したフィードバック操
作量KLAF又はkstrを燃料噴射量を補正するためのフィー
ドバック補正量数K FBとして出力する。
【0187】尚、フィードバック補正係数KFBを、PI
D制御器17側のフィードバック操作量KLAFから適応制
御器18側のフィードバック操作量kstrに切り換える際
には、該補正係数KFBの急変を回避するために、適応制
御器18は、その切換えの際の制御サイクルに限り、補
正係数KFBを前回の補正係数KFB(=KLAF)に保持するよ
うに、フィードバック操作量KSTRを求める。同様に、補
正係数KFBを、適応制御器18側のフィードバック操作
量kstrからPID制御器17側のフィードバック操作量
KLAFに切り換える際には、PID制御器17は、自身が
前回の制御サイクルで求めたフィードバック操作量KLAF
が、前回の補正係数KFB(=kstr)であったものとし
て、今回の補正係数KLAFを算出する。
【0188】上記のようにしてフィードバック補正係数
KFBが算出された後、さらに、前記STEPfあるいは
STEPgで決定された目標空燃比KCMDに応じた第2補
正係数KCMDMが第2補正係数算出部10により算出され
る(STEPj)。
【0189】次いで、機関側制御ユニット7bは、前述
のように求められた基本燃料噴射量Timに、第1補正係
数KTOTAL、第2補正係数KCMDM、フィードバック補正係
数KFB、及び各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAF
を乗算することで、各気筒毎の出力燃料噴射量#nTout
を求める(STEPk)。そして、この各気筒毎の出力
燃料噴射量#nToutが、付着補正部23によって、エン
ジン1の吸気管の壁面への燃料の付着を考慮した補正を
施された後(STEPm)、エンジン1の図示しない燃
料噴射装置に出力される(STEPn)。そして、エン
ジン1にあっては、各気筒毎の出力燃料噴射量#nTout
に従って、各気筒への燃料噴射が行われる。
【0190】以上のような各気筒毎の出力燃料噴射量#n
Toutの算出及びそれに応じたエンジン1への燃料噴射
がエンジン1のクランク角周期に同期したサイクルタイ
ムで逐次行われ、これによりLAFセンサ5の出力KACT
(触媒上流空燃比の検出値)が、目標空燃比KCMDに収束
するように、エンジン1の空燃比が制御される。この場
合、特に、フィードバック補正係数KFBとして、適応制
御器18側のフィードバック操作量kstrを使用している
状態では、エンジン1の運転状態の変化や特性変化等の
挙動変化に対して、高い安定性を有して、LAFセンサ
5の出力K ACTが迅速に目標空燃比KCMDに収束制御され
る。また、エンジン1が有する応答遅れの影響も適正に
補償される。
【0191】一方、前述のようなエンジン1の燃料供給
の制御と並行して、前記排気側制御ユニット7aは、一
定周期の制御サイクルで図10のフローチャートに示す
メインルーチン処理を実行する。
【0192】すなわち、排気側制御ユニット7aは、ま
ず、目標空燃比生成処理部13の演算処理(詳しくは同
定器25、推定器26及びスライディングモード制御器
27の演算処理)を実行するか否かの判別処理を行っ
て、その実行の可否を規定するフラグf/prism/calの値
を設定する(STEP1)。尚、フラグf/prism/calの
値は、それが「0」のとき、目標空燃比生成処理部13
における演算処理を行わないことを意味し、「1」のと
き、その演算処理を行うことを意味する。
【0193】上記の判別処理は、図11のフローチャー
トに示すように行われる。すなわち、O2センサ6及び
LAFセンサ5が活性化しているか否かの判別が行われ
る(STEP1−1,1−2)。このとき、いずれかが
活性化していない場合には、目標空燃比生成処理部13
の処理に使用するO2センサ6及びLAFセンサ5の検
出データを精度よく得ることができないため、フラグf/
prism/calの値を「0」にセットする(STEP1−
6)。さらにこのとき、同定器25の後述する初期化を
行うために、その初期化を行うか否かを規定するフラグ
f/id/resetの値を「1」にセットする(STEP1−
7)。ここで、フラグf/id/resetの値は、それが「1」
であるとき、同定器25の初期化を行うことを意味し、
「0」であるとき、初期化を行わないことを意味する。
【0194】また、エンジン1のリーン運転中(希薄燃
焼運転)であるか否か(STEP1−3)、及びエンジ
ン1の始動直後の触媒装置3の早期活性化を図るために
エンジン1の点火時期が遅角側に制御されているか否か
(STEP1−4)の判別が行われる。これらのいずれ
かの条件が成立している場合には、O2センサ6の出力V
O2/OUTを目標値VO2/TARGETに整定させるような目標空燃
比KCMDを算出しても、それをエンジン1の燃料供給の制
御に使用することはないので、フラグf/prism/calの値
を「0」にセットする(STEP1−6)。さらにこの
とき、同定器25の初期化を行うために、フラグf/id/r
esetの値を「1」にセットする(STEP1−7)。
【0195】図10の説明に戻って、上記のような判別
処理を行った後、排気側制御ユニット7aは、さらに、
同定器25による前記ゲイン係数a1,a2,b1の同定(更
新)処理を実行するか否かの判別処理を行って、その実
行の可否を規定するフラグf/id/calの値を設定する(S
TEP2)。尚、フラグf/id/calの値は、それが「0」
のとき、同定器25による前記ゲイン係数a1,a2,b1の
同定(更新)処理を行わないことを意味し、「1」のと
き、同定(更新)処理を行うことを意味する。
【0196】このSTEP2の判別処理では、エンジン
1のスロットル弁が略全開であるか否か、及びエンジン
1への燃料供給の停止中(フュエルカット中)であるか
否かの判別が行われる。これらのいずれかの条件が成立
している場合には、前記ゲイン係数a1,a2,b1を適正に
同定することが困難であるため、フラグf/id/calの値を
「0」にセットする。そして、上記のいずれの条件も成
立していない場合には、同定器25による前記ゲイン係
数a1,a2,b1の同定(更新)処理を実行すべくフラグf/
id/calの値を「1」にセットする。
【0197】次いで、排気側制御ユニット7aは、前記
流量データ生成手段28により、エンジン1の回転数NE
及び吸気圧PBの最新の検出値(これは前記図8のSTE
Paで機関側制御ユニット7bにより取得される)から
前記式(3)により推定排ガスボリュームABSVを算出す
る(STEP3)。そして、排気側制御ユニット7a
は、前記無駄時間設定手段29によって、この推定排ガ
スボリュームABSVの算出値から前記図4のデータテーブ
ルにより排気系E及び空燃比操作系のそれぞれの設定無
駄時間d1,d2の値を求める(STEP4)。尚、このS
TEP4で求められる設定無駄時間d1,d2の値は、詳し
くは、前述したように図4のデータテーブルに求められ
る値の小数点以下を四捨五入して得られる整数値であ
る。
【0198】次いで、排気側制御ユニット7aは、前記
減算処理部11,12によりそれぞれ最新の前記偏差出
力kact(k)(=KACT−FLAF/BASE)及びVO2(k)(=VO2/OU
T−VO2/TARGET)を算出する(STEP5)。この場
合、減算処理部11,12は、前記図8のSTEPaに
おいて取り込まれて図示しないメモリに記憶されたLA
Fセンサ5の出力KACT及びO2センサ6の出力VO2/OUTの
時系列データの中から、最新のものを選択して前記偏差
出力kact(k)及びVO2(k)を算出する。そしてこの偏差出
力kact(k)及びVO2(k)は、排気側制御ユニット7aにお
いて、過去に算出したものを含めて時系列的に図示しな
いメモリに記憶保持される。
【0199】次いで、排気側制御ユニット7aは、前記
STEP1で設定したフラグf/prism/calの値を判断す
る(STEP6)。このとき、f/prism/cal=0である
場合、すなわち、目標空燃比生成処理部13の演算処理
を行わない場合には、スライディングモード制御器27
で求めるべき前記SLD操作入力Usl(目標偏差空燃比
kcmd)を強制的に所定値に設定する(STEP14)。
この場合、該所定値は、例えばあらかじめ定めた固定値
(例えば「0」)あるいは前回の制御サイクルで決定し
たSLD操作入力Uslの値である。
【0200】尚、このようにSLD操作入力Uslを所定
値とした場合において、排気側制御ユニット7aは、そ
の所定値のSLD操作入力Uslに前記基準値FLAF/BASE
を加算することで、今回の制御サイクルにおける目標空
燃比KCMDを決定し(STEP15)、今回の制御サイク
ルの処理を終了する。
【0201】一方、STEP6の判断で、f/prism/cal
=1である場合、すなわち、目標空燃比生成処理部13
の演算処理を行う場合には、排気側制御ユニット7a
は、まず、前記同定器25による演算処理を行う(ST
EP7)。
【0202】この同定器25による演算処理は図12の
フローチャートに示すように行われる。すなわち、同定
器25は、まず、前記STEP2で設定されたフラグf/
id/calの値を判断する(STEP7−1)。このときf/
id/cal=0であれば、同定器25によるゲイン係数a1,
a2,b1の同定処理を行わないので、直ちに図10のメイ
ンルーチンに復帰する。
【0203】一方、f/id/cal=1であれば、同定器25
は、さらに該同定器25の初期化に係わる前記フラグf/
id/resetの値(これは、前記STEP1でその値が設定
される)を判断し(STEP7−2)、f/id/reset=1
である場合には、同定器25の初期化を行う(STEP
7−3)。この初期化では、前記同定ゲイン係数a1ハッ
ト,a2ハット,b1ハットの各値があらかじめ定めた初期
値に設定され(式(5)の同定ゲイン係数ベクトルΘの
初期化)、また、前記式(11)の行列P(対角行列)
の各成分があらかじめ定めた初期値に設定される。さら
に、フラグf/id/resetの値は「0」にリセットされる。
【0204】次いで、同定器25は、前記STEP3で
流量データ生成手段28が求めた推定排ガスボリューム
ABSVの現在値から、前記図5のデータテーブルにより同
定器25の重み付き最小2乗法のアルゴリズムの重みパ
ラメータλ1、すなわち前記式(11)で用いる重みパ
ラメータλ1の値を求める(STEP7−4)。
【0205】次いで、同定器25は、現在の同定ゲイン
係数a1(k-1)ハット,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハットの
値と、前記STEP5で制御サイクル毎に算出される偏
差出力VO2及びkactの過去値のデータVO2(k-1),VO2(k-
2),kact(k-d1-1)とを用いて、前記式(4)により前記
同定偏差出力VO2(k)ハットを算出する(STEP7−
5)。ここで、この算出に用いる偏差出力kact(k-d1-1)
は、より詳しく言えば、前記STEP4で無駄時間設定
手段29が設定した排気系Eの設定無駄時間d1により定
まる過去時点における偏差出力kactであり、現在の制御
サイクルから(d1+1)制御サイクル前の制御サイクルで
得られた偏差出力kactである。
【0206】さらに同定器25は、新たな同定ゲイン係
数a1ハット,a2ハット,b1ハットを求める際に使用する
前記ベクトルKθ(k)を式(10)により算出した後
(STEP7−6)、前記同定誤差id/e(k)(前記同定
偏差出力VO2ハットと、実際の偏差出力VO2との偏差。式
(8)参照)を算出する(STEP7−7)。
【0207】ここで、同定誤差id/e(k)は、基本的に
は、前記式(8)に従って算出すればよいのであるが、
本実施形態では、前記STEP3で制御サイクル毎に算
出する偏差出力VO2と、前記STEP7−5で制御サイ
クル毎に算出する同定偏差出力VO2ハットとから式
(8)の演算により得られた値(=VO2(k)−VO2(k)ハッ
ト)に、さらにローパス特性のフィルタリングを施すこ
とで同定誤差id/e(k)を求める。
【0208】これは、触媒装置3を含む排気系Eの挙動
は一般にローパス特性を有するため、排気系モデルのゲ
イン係数a1,a2,b1を適正に同定する上では、排気系E
の低周波数側の挙動を重視することが好ましいからであ
る。
【0209】尚、このようなフィルタリングは、結果的
に、偏差出力VO2及び同定偏差出力VO2ハットの両者に同
じローパス特性のフィルタリングが施されていればよ
く、例えば偏差出力VO2及び同定偏差出力VO2ハットにそ
れぞれ各別にフィルタリングを施した後に式(7)の演
算を行って同定誤差id/e(k)を求めるようにしてもよ
い。また、前記のフィルタリングは、例えばディジタル
フィルタの一手法である移動平均処理によって行われ
る。
【0210】次いで、同定器25は、STEP7−7で
求めた同定誤差id/e(k)と、前記STEP7−6で算出
したKθ(k)とを用いて前記式(9)により新たな同定
ゲイン係数ベクトルΘ(k)、すなわち、新たな同定ゲイ
ン係数a1(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハットを算出
する(STEP7−8)。
【0211】このようにして新たな同定ゲイン係数a1
(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハットを算出した後、
同定器25は、該同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,
b1ハットの値を、所定の範囲に制限する処理を以下に説
明するように行う(STEP7−9)。そして、同定器
25は次回の制御サイクルの処理のために前記行列P
(k)を前記式(11)により更新した後(STEP7−
10)、図10のメインルーチンの処理に復帰する。
【0212】前記STEP7−9において同定ゲイン係
数a1ハット、a2ハット、b1ハットの値を制限する処理
は、スライディングモード制御器27により求められる
目標空燃比KCMDが高周波振動的な変化を生じるような状
況を排除するための処理である。すなわち、本願発明者
等の知見によれば、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハッ
ト、b1ハットの値を特に制限しない場合には、O2セン
サ6の出力VO2/OUTがその目標値VO2/TARGETに安定して
制御されている状態で、スライディングモード制御器2
7により求められる目標空燃比KCMDが平滑的な時間変化
を呈する状況と、高周波振動的な時間変化を呈する状況
との二種類の状況とがある。そして、目標空燃比KCMDが
平滑的なものとなるか高周波振動的なものとなるかは、
特に、排気系モデルの応答遅れ要素(より詳しくは式
(1)右辺の1次目の自己回帰項及び2次目の自己回帰
項)に係わる同定ゲイン係数a1ハット、a2ハットの値の
組み合わせや、排気系モデルの無駄時間要素に係わる同
定ゲイン係数b1ハットの値の影響を受ける。
【0213】このため、STEP7−9の制限処理は、
それを大別すると、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット
の値の組み合わせを所定の範囲に制限する処理と、同定
ゲイン係数b1ハットの値を所定の範囲に制限する処理と
がある。
【0214】この場合、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハ
ットの値の組み合わせを制限する範囲と、同定ゲイン係
数b1の値を制限する範囲は、次のように設定されてい
る。
【0215】まず、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット
の値の組み合わせを制限するための範囲に関し、本願発
明者等の検討によれば、目標空燃比KCMDが平滑的なもの
となるか高周波振動的なものとなるかは、前記推定器2
6が前記推定偏差出力VO2(k+d)バーを求めるために使用
する前記係数値α1,α2(これらの係数値α1,α2は前
記式(13)中で定義した行列Aのべき乗Adの第1行
第1列成分及び第1行第2列成分である)の組み合わせ
が密接に関連している。
【0216】具体的には、図13に示すように係数値α
1,α2をそれぞれ成分とする座標平面を設定したとき、
係数値α1,α2の組により定まる該座標平面上の点が図
13の斜線を付した領域(三角形Q1Q2Q3で囲まれた
領域(境界を含む)。以下、この領域を推定係数安定領
域という)に存するとき、目標空燃比KCMDの時間的変化
が平滑的なものとなりやすい。逆に、係数値α1,α2の
組により定まる点が上記の推定係数安定領域を逸脱して
いるような場合には、目標空燃比KCMDの時間的変化が高
周波振動的なものとなったり、あるいは、O2センサ6
の出力VO2/OUTの目標値VO2/TARGETへの制御性が悪化し
やすい。
【0217】従って、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハッ
トの値の組み合わせは、これらの値により定まる係数値
α1,α2の組に対応する図13の座標平面上の点が上記
推定係数安定領域内に存するように制限することが好ま
しい。
【0218】尚、図13において、上記推定係数安定領
域を含んで座標平面上に表した三角形領域Q1Q4Q3
は、次式(40)により定義される系、すなわち、前記
式(13)の右辺のVO2(k)及びVO2(k-1)をそれぞれVO2
(k)バー及びVO2(k-1)バー(これらのVO2(k)バー及びVO2
(k-1)バーは、それぞれ、推定器26により制御サイク
ル毎に求められる推定偏差出力及びその1制御サイクル
前に求められる推定偏差出力を意味する)により置き換
えてなる式により定義される系が、理論上、安定となる
ような係数値α1,α2の組み合わせを規定する領域であ
る。
【0219】
【数40】 すなわち、式(40)により表される系が安定となる条
件は、その系の極(これは、次式(41)により与えら
れる)が複素平面上の単位円内に存在することである。
【0220】
【数41】 そして、図13の三角形領域Q1Q4Q3は、上記の条件
を満たす係数値α1,α2の組み合わせを規定する領域で
ある。従って、前記推定係数安定領域は、前記式(4
0)により表される系が安定となるような係数値α1,
α2の組み合わせのうち、α1≧0となる組み合わせの領
域である。
【0221】一方、係数値α1,α2は、前記式(13)
中の定義から明らかなように、前記合計設定無駄時間d
の値をある値に定めたとき、ゲイン係数a1,a2の値の
組み合わせにより定まるので、その合計設定無駄時間d
の値を用いて逆算的に、係数値α1,α2の組み合わせか
らゲイン係数a1,a2の値の組み合わせも定まる。従っ
て、係数値α1,α2の好ましい組み合わせを規定する図
13の推定係数安定領域は、ゲイン係数a1,a2を座標成
分とする図14の座標平面上に変換することができる。
【0222】ここで、合計設定無駄時間dの値をある値
に定めて上記の変換を行うと、該推定係数安定領域は、
図14の座標平面上では、例えば同図の仮想線で囲まれ
た領域(下部に凹凸を有する大略三角形状の領域。以
下、同定係数安定領域という)に変換される。すなわ
ち、ゲイン係数a1,a2の値の組により定まる図14の座
標平面上の点が、同図の仮想線で囲まれた同定係数安定
領域に存するとき、それらのゲイン係数a1,a2の値によ
り定まる係数値α1,α2の組に対応する図13の座標平
面上の点が前記推定係数安定領域内に存することとな
る。尚、同定係数安定領域は、合計設定無駄時間dの値
によって変化するが、これについては後述する。以下の
説明では、しばらくの間、合計設定無駄時間dの値は、
ある値(ここでの説明では、以下、参照符号dxを付す
る)に固定されているものとする。
【0223】従って、同定器25により求める同定ゲイ
ン係数a1ハット、a2ハットの値の組合わせは、基本的に
は、それらの値により定まる図14の座標平面上の点が
前記同定係数安定領域に存するような範囲に制限するこ
とが好ましい。
【0224】但し、図14に仮想線で示した同定係数安
定領域の境界の一部(図の下部)は凹凸を有する複雑な
形状を呈しているため、実用上、同定ゲイン係数a1ハッ
ト、a2ハットの値により定まる図14の座標平面上の点
を同定係数安定領域内に制限するための処理が煩雑なも
のとなりやすい。
【0225】そこで、本実施形態では、同定係数安定領
域(合計設定無駄時間dxに対応する同定係数安定領
域)を、例えば図14の実線で囲まれた四角形Q5Q6Q
7Q8の領域(境界を直線状に形成した領域。以下、同定
係数制限領域という)により大略近似する。この同定係
数制限領域(合計設定無駄時間dxに対応する同定係数
制限領域)は、図示の如く、|a1|+a2=1なる関数式
により表される折れ線(線分Q5Q6及び線分Q5Q8を含
む線)と、a1=A1Lなる定値関数式により表される直線
(線分Q6Q7を含む直線)と、a2=A2Lなる定値関数式
により表される直線(線分Q7Q8を含む直線)とにより
囲まれた領域である。そして、本実施形態では、同定ゲ
イン係数a1ハット、a2ハットの値の組合わせを制限する
ための範囲として、この同定係数制限領域を用いる。こ
の場合、同定係数制限領域の下辺部の一部は、前記同定
係数安定領域を逸脱しているものの、現実には同定器2
5が求める同定ゲイン係数a1ハット、a2ハットの値によ
り定まる点は上記の逸脱領域には入らないことを実験的
に確認している。従って、上記の逸脱領域があっても、
実用上は支障がない。
【0226】ところで、前記同定係数制限領域の基礎と
なる同定係数安定領域は、前記式(13)の係数値α
1,α2の定義から明らかなように、前記合計設定無駄時
間dの値によって変化する。そして、本実施形態では、
排気系Eの設定無駄時間d1及び空燃比操作系の設定無駄
時間d2の値、ひいては、合計設定無駄時間d(=d1+d
2)の値は、推定排ガスボリュームABSVの応じて逐次可
変的に設定される。
【0227】この場合、本願発明者等の知見によれば、
同定係数安定領域は、主に、その下部(概ね図14のQ
7からQ8にかけての凹凸を有する部分)の形状のみが合
計設定無駄時間dの値に応じて変化し、基本的には該合
計設定無駄時間dの値が長くなる程、同定係数安定領域
の下部が下方(a2軸の負方向)に拡大する傾向がある。
そして、該同定係数安定領域の上半部(概ね図14の三
角形Q5Q6Q8で囲まれた部分)の形状は、合計設定無
駄時間dの値の影響をほとんど受けない。
【0228】そこで、本実施形態では、同定ゲイン係数
a1ハット、a2ハットの値の組合わせを制限するための同
定係数制限領域におけるゲイン係数a2の下限値A2Lを、
排気系E及び空燃比操作系の無駄時間d1,d2を規定する
推定排ガスボリュームABSVに応じて可変的に設定する。
この場合、本実施形態では、ゲイン係数a2の下限値A2L
は、例えば図15に実線eで示すようにあらかじめ定め
られたデータテーブルに基づいて、推定排ガスボリュー
ムABSVの値(最新値)から求められる。該データテーブ
ルでは、下限値A2Lの値(<0)は、基本的には、推定
排ガスボリュームABSVの値が大きい程(合計設定無駄時
間dが短いほど)、小さくなる(絶対値が大きくなる)
ように定められている。これにより、同定係数制限領域
は、推定排ガスボリュームABSVが大きい程(合計設定無
駄時間dが短いほど)、下方に拡大するように設定され
ることとなる。例えば、合計設定無駄時間dの値が、図
14の実線示の同定係数制限領域に対応する値dxよりも
長い場合には、図14に破線で示すように、同定係数制
限領域の下部がd=dxの同定係数制限領域よりも下方
に拡大する。
【0229】尚、上述のような同定係数制限領域の設定
の仕方は例示的なもので、該同定係数制限領域は、基本
的には、合計設定無駄時間dの各値に対応する前記同定
係数安定領域に等しいか、もしくは該同定係数安定領域
を大略近似し、あるいは、同定係数制限領域の大部分も
しくは全部が同定係数安定領域に属するように設定すれ
ば、どのような形状のものに設定してもよい。つまり、
同定係数制限領域は、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハッ
トの値の制限処理の容易さ、実際上の制御性等を考慮し
て種々の設定が可能である。例えば本実施形態では、同
定係数制限領域の上半部の境界を|a1|+a2=1なる関
数式により規定しているが、この関数式を満たすゲイン
係数a1,a2の値の組み合わせは、前記式(40)の系の
極が複素平面上の単位円周上に存するような理論上の安
定限界の組み合わせである。従って、同定係数制限領域
の上半部の境界を例えば|a1|+a2=r(但し、rは上
記の安定限界に対応する「1」よりも若干小さい値で、
例えば0.99)なる関数式により規定し、制御の安定
性をより高めるようにしてもよい。
【0230】次に、同定ゲイン係数b1ハットの値を制
限するための範囲は、次のように設定されている。
【0231】すなわち、本願発明者等の知見によれば、
前記目標空燃比KCMDの時間的変化が高周波振動的なもの
となる状況は、同定ゲイン係数b1ハットの値が過大もし
くは過小となるような場合にも生じ易い。また、目標空
燃比KCMDの時間的変化が平滑的なものとなるような好適
な同定ゲイン係数b 1ハットの値は、合計設定無駄時間
dの影響を受け、基本的には、該合計設定無駄時間dが
短いほど、好適な同定ゲイン係数b1ハットの値は大きく
なる傾向がある。そこで、本実施形態では、ゲイン係数
b1の値の範囲を規定する上限値B1H及び下限値B1L(B1H
>B1L>0)を、合計設定無駄時間dの値を規定する推
定排ガスボリュームABSVの値(最新値)に応じて逐次設
定し、その上限値B1H及び下限値B1Lにより定まる範囲に
同定ゲイン係数b1ハットの値を制限する。この場合、本
実施形態では、ゲイン係数b1の値の範囲を規定する上限
値B1H及び下限値B1Lは、推定排ガスボリュームABSVの値
から、図15に実線f,gでそれぞれ示すように実験や
シミュレーションを通じてあらかじめ定められたデータ
テーブルに基づいて求められる。そして、該データテー
ブルは、基本的には推定排ガスボリュームABSVが大きい
程(合計設定無駄時間dが短いほど)、上限値B1H及び
下限値B1Lが大きくなるように設定されている。
【0232】上述のように同定ゲイン係数a1ハット、a2
ハットの値の組合わせ、並びに、同定ゲイン係数b1の値
の範囲を制限する前記STEP7−9の処理は、具体的
には次のように行われる。
【0233】すなわち、図16のフローチャートを参照
して、同定器25は、まず、前記図10のSTEP3で
流量データ生成手段28が求めた推定排ガスボリューム
ABSVの最新値から、前記図15のデータテーブルに基づ
いて、前記同定係数制限領域におけるゲイン係数a2の下
限値A2L、並びに、ゲイン係数b1の上限値B1H及び下限値
B1Lをそれぞれ設定する(STEP7−9−1)。
【0234】そして、同定器25は、前記図12のST
EP7−8で前述の如く求めた同定ゲイン係数a1(k)ハ
ット、a2(k)ハット、b1(k)ハットについて、まず、同定
ゲイン係数a1(k)ハット、a2(k)ハットの値の組み合わせ
を前記同定係数制限領域内に制限するための処理をST
EP7−9−2〜7−9−9で行う。
【0235】具体的には、同定器25は、まず、STE
P7−8で求めた同定ゲイン係数a2(k)ハットの値が、
STEP7−9−1で設定した下限値A2L(図14参
照)以上の値であるか否かを判断する(STEP7−9
−2)。
【0236】このとき、a2(k)ハット<A2Lであれば、同
定ゲイン係数a1(k)ハット、a2(k)ハットの値の組により
定まる図14の座標平面上の点(以下、この点を(a1
(k)ハット,a2(k)ハット)で表す)が同定係数制限領域
から逸脱しているので、a2(k)ハットの値を強制的に上
記下限値A2Lに変更する(STEP7−9−3)。この
処理により、図14の座標平面上の点(a1(k)ハット,a
2(k)ハット)は、少なくともa2=A2Lにより表される直
線(線分Q7Q8を含む直線)の上側(該直線上を含む)
の点に制限される。
【0237】次いで、同定器25は、STEP7−8で
求めた同定ゲイン係数a1(k)ハットの値が、前記同定係
数制限領域におけるゲイン係数a1の下限値A1L(図14
参照)以上の値であるか否か、並びに、同定係数制限領
域におけるゲイン係数a1の上限値A1H(図14参照)以
下の値であるか否かを順次判断する(STEP7−9−
4、7−9−6)。尚、本実施形態ではゲイン係数a1の
下限値A1Lはあらかじめ定めた固定値である。また、ゲ
イン係数a1の上限値A1Hは、図14から明らかなように
折れ線|a1|+a2=1(但しa1>0)と、直線a2=A2L
との交点Q8のa1座標成分であるので、A1H=1−A2Lで
ある。従って、ゲイン係数a1の下限値A1Lは、STEP
7−9−1で設定されるゲイン係数a2の下限値A2Lに応
じて変化し、基本的には、推定排ガスボリュームABSVが
大きい程(合計設定無駄時間dが短いほど)、該下限値
A1Lは大きくなる。
【0238】このとき、a1(k)ハット<A1Lである場合、
あるいは、a1(k)ハット>A1Hである場合には、図14の
座標平面上の点(a1(k)ハット,a2(k)ハット)が同定係
数制限領域から逸脱しているので、a1(k)ハットの値を
それぞれの場合に応じて、強制的に上記下限値A1Lある
いは上限値A1Hに変更する(STEP7−9−5、7−
9−7)。
【0239】この処理により、図14の座標平面上の点
(a1(k)ハット,a2(k)ハット)は、a1=A1Lにより表さ
れる直線(線分Q6Q7を含む直線)と、a1=A1Hにより
表される直線(点Q8を通ってa1軸に直行する直線)と
の間の領域(両直線上を含む)に制限される。
【0240】尚、STEP7−9−4〜7−9−7の処
理は、前記STEP7−9−2及び7−9−3の処理の
前に行うようにしてもよい。
【0241】次いで、同定器25は、前記STEP7−
9−2〜7−9−7の処理を経た今現在のa1(k)ハッ
ト,a2(k)ハットの値が|a1|+a2≦1なる不等式を満
たすか否か、すなわち、点(a1(k)ハット,a2(k)ハッ
ト)が|a1|+a2=1なる関数式により表される折れ線
(線分Q5Q6及び線分Q5Q8を含む線)の下側(折れ線
上を含む)にあるか上側にあるかを判断する(STEP
7−9−8)。
【0242】このとき、|a1|+a2≦1なる不等式が成
立しておれば、前記STEP7−9−2〜7−9−7の
処理を経たa1(k)ハット,a2(k)ハットの値により定まる
点(a1(k)ハット,a2(k)ハット)は、同定係数制限領域
(その境界を含む)に存している。
【0243】一方、|a1|+a2>1である場合は、点
(a1(k)ハット,a2(k)ハット)が、同定係数制限領域か
らその上方側に逸脱している場合であり、この場合に
は、a2(k)ハットの値を強制的に、a1(k)ハットの値に応
じた値(1−|a1(k)ハット|)に変更する(STEP
7−9−9)。換言すれば、a1(k)ハットの値を現状に
保持したまま、点(a1(k)ハット,a2(k)ハット)を|a1
|+a2=1なる関数式により表される折れ線上(同定係
数制限領域の境界である線分Q5Q6上、もしくは線分Q
5Q8上)に移動させる。
【0244】以上のようなSTEP7−9−2〜7−9
−9の処理によって、同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2
(k)ハットの値は、それらの値により定まる点(a1(k)ハ
ット,a2(k)ハット)が同定係数制限領域内に存するよ
うに制限される。尚、前記STEP7−8で求められた
同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハットの値に対応す
る点(a1(k)ハット,a2(k)ハット)が同定係数制限領域
内に存する場合は、それらの値は保持される。
【0245】この場合、前述の処理によって、前記排気
系モデルの1次目の自己回帰項に係わる同定ゲイン係数
a1(k)ハットに関しては、その値が、同定係数制限領域
における下限値A1L及び上限値A1Hの間の値となっている
限り、その値が強制的に変更されることはない。また、
a1(k)ハット<A1Lである場合、あるいは、a1(k)ハット
>A1Hである場合には、それぞれ、同定ゲイン係数a1(k)
ハットの値は、同定係数制限領域においてゲイン係数a1
が採りうる最小値である下限値A1Lと、同定係数制限領
域においてゲイン係数a1が採りうる最大値である下限値
A1Hとに強制的に変更されるので、これらの場合におけ
る同定ゲイン係数a1(k)ハットの値の変更量は最小なも
のとなる。つまり、STEP7−8で求められた同定ゲ
イン係数a1(k)ハット,a2(k)ハットの値に対応する点
(a1(k)ハット,a2(k)ハット)が同定係数制限領域から
逸脱している場合には、同定ゲイン係数a1(k)ハットの
値の強制的な変更は最小限に留められる。
【0246】このようにして、同定ゲイン係数a1(k)ハ
ット,a2(k)ハットの値を制限したのち、同定器25
は、同定ゲイン係数b1(k)ハットの値を制限する処理を
STEP7−9−10〜7−9−13で行う。
【0247】すなわち、同定器25は、前記STEP7
−8で求めた同定ゲイン係数b1( k)ハットの値が、ST
EP7−9−1で設定したゲイン係数b1の下限値B1L以
上であるか否かを判断し(STEP7−9−10)、B1
L>b1(k)ハットである場合には、b1(k)ハットの値を強
制的に上記下限値B1Lに変更する(STEP7−9−1
1)。
【0248】さらに、同定器25は、同定ゲイン係数b1
(k)ハットの値が、STEP7−9−1で設定したゲイ
ン係数b1の上限値B1H以上であるか否かを判断し(ST
EP7−9−12)、B1H<b1(k)ハットである場合に
は、b1(k)ハットの値を強制的に上記上限値B1Hに変更す
る(STEP7−9−13)。
【0249】このようなSTEP7−9−10〜7−9
−13の処理によって、同定ゲイン係数b1(k)ハットの
値は、下限値B1L及び上限値B1Hの間の範囲の値に制限さ
れる。
【0250】このようにして、同定ゲイン係数a1(k)ハ
ット,a2(k)ハットの値の組み合わせと同定ゲイン係数b
1(k)ハットの値とを制限した後には、同定器25の処理
は図12のフローチャートの処理に復帰する。
【0251】尚、図12のSTEP7−8で同定ゲイン
係数a1(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハットを求める
ために使用する同定ゲイン係数の前回値a1(k-1)ハッ
ト,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハットは、前回の制御サイ
クルにおけるSTEP7−9の制限処理を施した同定ゲ
イン係数の値である。
【0252】以上説明した処理が図10のSTEP7に
おける同定器25の演算処理である。
【0253】図10の説明に戻って、上記のように同定
器25の演算処理を行った後、排気側制御ユニット7a
は、ゲイン係数a1,a2,b1の値を決定する(STEP
8)。この処理では、前記STEP2で設定されたフラ
グf/id/calの値が「1」である場合、すなわち、同定器
25によるゲイン係数a1,a2,b1の同定処理を行った場
合には、ゲイン係数a1,a2,b1の値として、それぞれ前
記STEP7で前述の通り同定器25により求められた
最新の同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハット,b1
(k)ハット(STEP7−9の制限処理を施したもの)
を設定する。また、f/id/cal=0である場合、すなわ
ち、同定器25によるゲイン係数a1,a2,b1の同定処理
を行わなかった場合には、ゲイン係数a1,a2,b1の値を
それぞれあらかじめ定めた所定値とする。
【0254】次いで、排気側制御ユニット7aは、前記
推定器26による演算処理を行う(STEP9)。
【0255】すなわち、推定器26は、まず、前記ST
EP8で決定されたゲイン係数a1,a2,b1(これらの値
は基本的には、同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1
ハットの最新値である)と、前記STEP4で設定され
た排気系Eの設定無駄時間d1及び空燃比操作系の設定無
駄時間d2の値とを用いて、前記式(14)あるいは式
(15)で使用する係数値α1,α2,βj(j=1,2,
…,d)を、式(13)の但し書きの定義に従って算出
する。
【0256】そして、推定器26は、空燃比操作系の設
定無駄時間d2が、d2>1(d2≧2)である場合には、前
記STEP5で制御サイクル毎に算出されるO2センサ
の偏差出力VO2の現在値及び過去値の時系列データVO2
(k),VO2(k-1)、並びにLAFセンサ5の偏差出力kact
の現在値及び過去値の時系列データkact(k-j)(j=0,
1,…,d1)と、スライディングモード制御器27から
制御サイクル毎に与えられる前記目標偏差空燃比kcmd
(=SLD操作入力Usl)の過去値のデータkcmd(k-j)
(=usl(k-j)。j=1,2,…,d2-1)と、上記の如く算
出した係数値α1,α2,βj(j=1,2,…,d)とを用
いて前記式(14)により、推定偏差出力VO2(k+d)バー
(今回の制御サイクルの時点から前記合計設定無駄時間
d後の偏差出力VO2の推定値)を算出する。
【0257】また、推定器26は、空燃比操作系の設定
無駄時間d2が、d2=1である場合には、O2センサの偏
差出力VO2の現在値及び過去値の時系列データVO2(k),V
O2(k-1)、並びにLAFセンサ5の偏差出力kactの現在
値及び過去値の時系列データkact(k-j)(j=0,1,…,d
-1)と、前記係数値α1,α2,βj(j= 1,2,…,d)
とを用いて前記式(15)により、推定偏差出力VO2(k+
d)バーを算出する。
【0258】排気側制御ユニット7aは、次に、スライ
ディングモード制御器27によって、前記SLD操作入
力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)を算出する(STEP
10)。
【0259】すなわち、スライディングモード制御器2
7は、まず、前記STEP9で推定器26により求めら
れた推定偏差出力VO2バーの時系列データVO2(k+d)バ
ー,VO2(k+d-1)バー(推定偏差出力VO2バーの今回値及
び前回値)を用いて、前記式(25)により定義された
切換関数σバーの今回値σ(k+d)バー(これは、式(1
6)で定義された切換関数σの合計設定無駄時間d後の
推定値に相当する)を算出する。
【0260】尚、この場合、切換関数σバーの値があら
かじめ定めた所定の許容範囲内に収まるようにし、上記
の如く求められるσ(k+d)バーがその許容範囲の上限値
又は下限値を超えた場合には、それぞれσバーの値σ(k
+d)バーを強制的に該上限値又は下限値に制限する。
【0261】さらに、スライディングモード制御器27
は、上記切換関数σバーの今回値σ(k+d)バーに、排気
側制御ユニット7aの制御サイクルの周期ΔTを乗算し
たものσ(k+d)バー・ΔTを累積的に加算していく、す
なわち、前回の制御サイクルで求められた加算結果に今
回の制御サイクルで算出されたσ(k+d)バーと周期ΔT
との積σ(k+d)バー・ΔTを加算することで、前記式
(27)のΣ(σバー・ΔT)の項の演算結果であるσ
バーの積算値(以下、この積算値をΣσバーにより表
す)を算出する。
【0262】尚、この場合、本実施形態では、上記積算
値Σσバーがあらかじめ定めた所定の許容範囲内に収ま
るようにし、該積算値Σσバーがその許容範囲の上限値
又は下限値を超えた場合には、それぞれ該積算値Σσバ
ーを強制的に該上限値又は下限値に制限する。
【0263】そして、スライディングモード制御器27
は、前記STEP9で推定器26により求められた推定
偏差出力VO2バーの現在値及び過去値の時系列データVO2
(k+d)バー,VO2(k+d-1)バーと、上記の如く求めた切換
関数の値σ(k+d) バー及びその積算値Σσバーと、ST
EP8で決定したゲイン係数a1,a2,b1(これらの値は
基本的には、最新の同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)
ハット,b1(k)ハットである)とを用いて、前記式(2
4)、(26)、(27)に従って、それぞれ等価制御
入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを算出
する。
【0264】さらにスライディングモード制御器27
は、この等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び適応
則入力Uadpを加算することで、前記SLD操作入力Us
l、すなわち、O2センサ6の出力VO2/OUTを目標値VO2/T
ARGETに収束させるために必要な排気系Eへの入力量
(=目標偏差空燃比kcmd)を算出する。
【0265】上記のようにSLD操作入力Uslを算出し
た後、スライディングモード制御器27は、適応スライ
ディングモード制御の安定性(より詳しくは、適応スラ
イディングモード制御に基づくO2センサ6の出力VO2/O
UTの制御状態(以下、SLD制御状態という)の安定
性)を判別する処理を行って、該SLD制御状態が安定
であるか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグ
f/sld/stbの値を設定する(STEP11)。
【0266】この安定性の判別処理は図17のフローチ
ャートに示すように行われる。
【0267】すなわち、スライディングモード制御器2
7は、まず、前記STEP10で算出される切換関数σ
バーの今回値σ(k+d)バーと前回値σ(k+d-1)バーとの偏
差Δσバー(これは切換関数σバーの変化速度に相当す
る)を算出する(STEP11−1)。
【0268】次いで、スライディングモード制御器27
は、上記偏差Δσバーと切換関数σバーの今回値σ(k+
d)バーとの積Δσバー・σ(k+d)バー(これはσバーに
関するリアプノフ関数σバー2/2の時間微分関数に相
当する)があらかじめ定めた所定値ε(≧0)以下であ
るか否かを判断する(STEP11−2)。
【0269】ここで、上記積Δσバー・σ(k+d)バー
(以下、これを安定判別パラメータPstbという)につ
いて説明すると、この安定判別パラメータPstbの値が
Pstb>0となる状態は、基本的には、切換関数σバー
の値が「0」から離間しつつある状態である。また、安
定判別パラメータPstbの値がPstb≦0となる状態は、
基本的には、切換関数σバーの値が「0」に収束してい
るか、もしくは収束しつつある状態である。そして、一
般に、スライディングモード制御ではその制御量を目標
値に安定に収束させるためには、切換関数の値が安定に
「0」に収束する必要がある。従って、基本的には、前
記安定判別パラメータPstbの値が「0」以下であるか
否かによって、それぞれ前記SLD制御状態が安定、不
安定であると判断することができる。
【0270】但し、安定判別パラメータPstbの値を
「0」と比較することでSLD制御状態の安定性を判断
すると、切換関数σバーの値に僅かなノイズが含まれた
だけで、安定性の判別結果に影響を及ぼしてしまう。こ
のため、本実施形態では、前記STEP11−2で安定
判別パラメータPstbと比較する所定値εは、「0」よ
りも若干大きな正の値としている。
【0271】そして、STEP11−2の判断で、Pst
b>εである場合には、SLD制御状態が不安定である
とされ、前記STEP10で算出されるSLD操作入力
Uslを用いた目標空燃比KCMDの決定を所定時間、禁止す
るためにタイマカウンタtm(カウントダウンタイマ)
の値が所定の初期値TMにセットされる(タイマカウン
タtmの起動。STEP11−4)。さらに、前記フラ
グf/sld/stbの値が「0」に設定された後(STEP1
1−5)、図10のメインルーチンの処理に復帰する。
【0272】一方、前記STEP11−2の判断で、P
stb≦εである場合には、スライディングモード制御器
27は、切換関数σバーの今回値σ(k+d)バーがあらか
じめ定めた所定範囲内にあるか否かを判断する(STE
P11−3)。
【0273】この場合、切換関数σバーの今回値σ(k+
d)バーが、所定範囲内に無い状態は、該今回値σ(k+d)
バーが「0」から大きく離間している状態であるので、
SLD制御状態が不安定であると考えられる。このた
め、STEP11−3の判断で、切換関数σバーの今回
値σ(k+d)バーが、所定範囲内に無い場合には、SLD
制御状態が不安定であるとされ、前述の場合と同様に、
STEP11−4及び11−5の処理により、タイマカ
ウンタtmが起動されると共に、フラグf/sld/stbの値が
「0」に設定される。
【0274】尚、本実施形態では、前述のSTEP10
の処理において、切換関数σバーの値を所定の許容範囲
内に制限するので、STEP11−3の判断処理は省略
してもよい。
【0275】また、STEP11−3の判断で、切換関
数σバーの今回値σ(k+d)バーが、所定範囲内にある場
合には、スライディングモード制御器27は、前記タイ
マカウンタtmを所定時間Δtm分、カウントダウンする
(STEP11−6)。そして、このタイマカウンタt
mの値が「0」以下であるか否か、すなわち、タイマカ
ウンタtmを起動してから前記初期値TM分の所定時間が
経過したか否かが判断される(STEP11−7)。
【0276】このとき、tm>0である場合、すなわ
ち、タイマカウンタtmが計時動作中でまだタイムアッ
プしていない場合は、STEP11−2あるいはSTE
P11−3の判断でSLD制御状態が不安定であると判
断されてから、さほど時間を経過していないので、SL
D制御状態が不安定なものとなりやすい。このため、S
TEP11−7でtm>0である場合には、前記STE
P11−5の処理により、前記フラグf/sld/stbの値が
「0」に設定される。
【0277】そして、STEP11−7の判断でtm≦
0である場合、すなわち、タイマカウンタtmがタイム
アップしている場合には、SLD制御状態が安定である
として、フラグf/sld/stbの値が「1」に設定される
(STEP9−8)。
【0278】以上のような処理によって、SLD制御状
態の安定性が判断され、不安定であると判断された場合
には、フラグf/sld/stbの値が「0」に設定され、安定
であると判断された場合には、フラグf/sld/stbの値が
「1」に設定される。
【0279】尚、以上説明したSLD制御状態の安定性
の判断の手法は例示的なもので、この他の手法によって
安定性の判断を行うようにすることも可能である。例え
ば制御サイクルよりも長い所定期間毎に、各所定期間内
における前記安定判別パラメータPstbの値が前記所定
値εよりも大きくなる頻度を計数する。そして、その頻
度があらかじめ定めた所定値を超えるような場合にSL
D制御状態が不安定であると判断し、逆の場合に、SL
D制御状態が安定であると判断するようにしてもよい。
【0280】図10の説明に戻って、上記のようにSL
D制御状態の安定性を示すフラグf/sld/stbの値を設定
した後、スライディングモード制御器27は、フラグf/
sld/stbの値を判断する(STEP12)。このとき、f
/sld/stb=1である場合、すなわち、SLD制御状態が
安定であると判断された場合には、スライディングモー
ド制御器27は前記STEP10で算出したSLD操作
入力Uslのリミット処理を行う(STEP13)。この
リミット処理では、STEP10で算出されたSLD操
作入力Uslの今回値Usl(k)が所定の許容範囲内にある
か否かが判断され、該今回値Uslがその許容範囲の上限
値又は下限値を超えている場合には、それぞれ、SLD
操作入力Uslの今回値usl(k)が強制的に該上限値又は
下限値に制限される。
【0281】尚、STEP13のリミット処理を経たS
LD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)は、図示し
ないメモリに時系列的に記憶保持され、それが、推定器
26の前述の演算処理のために使用される。
【0282】次いで、スライディングモード制御器27
は、STEP13のリミット処理を経たSLD操作入力
Uslに前記空燃比基準値FLAF/BASEを加算することで、
前記目標空燃比KCMDを算出する(STEP15)。これ
により、排気側制御ユニット7aの今回の制御サイクル
の処理が終了する。
【0283】また、前記STEP12の判断でf/sld/st
b=0である場合、すなわち、SLD制御状態が不安定
であると判断された場合には、スライディングモード制
御器27は、今回の制御サイクルにおけるSLD操作入
力Uslの値を強制的に所定値(固定値あるいはSLD操
作入力Uslの前回値)に設定した後(STEP14)、
このSLD操作入力Uslに空燃比基準値FLAF/BASEを加
算することで目標空燃比KCMDを算出する(STEP1
5)。これにより排気側制御ユニット7aの今回の制御
サイクルの処理が終了する。
【0284】尚、STEP15で最終的に決定される目
標空燃比KCMDは、制御サイクル毎に図示しないメモリに
時系列的に記憶保持される。そして、前記大局的フィー
ドバック制御器15等が、排気側制御ユニット7aで決
定された目標空燃比KCMDを用いるに際しては(図8のS
TEPfを参照)、上記のように時系列的に記憶保持さ
れた目標空燃比KCMDの中から最新のものが選択される。
【0285】以上説明した内容が本実施形態の装置の詳
細な作動である。
【0286】すなわち、その作動を要約すれば、排気側
制御ユニット7aによって、触媒装置3の下流側のO2
センサ6の出力VO2/OUTを目標値VO2/TARGETに収束(整
定)させるように、触媒上流空燃比の目標値である目標
空燃比KCMDが逐次算出される。さらに、この目標空燃比
KCMDにLAFセンサ5の出力を収束させるようにエンジ
ン1の燃料噴射量を調整することで、触媒上流空燃比が
目標空燃比KCMDにフィードバック制御され、ひいては、
2センサ6の出力VO2/OUTが目標値VO2/TARGETに収束制
御される。これにより、触媒装置3の最適な排ガス浄化
性能を確保することができる。
【0287】この場合、排気側制御ユニット7aは、ス
ライディングモード制御器27の適応スライディングモ
ード制御の処理により目標空燃比KCMDを算出するため
に、推定器26により求められた推定偏差出力VO2バ
ー、すなわち排気系Eの設定無駄時間d1と前記空燃比操
作系(エンジン1及び機関側制御ユニット7bからなる
システム)の設定無駄時間d2とを合わせた合計設定無駄
時間d後のO2センサ6の偏差出力VO2の推定値である推
定偏差出力VO2バーを用い、その推定偏差出力VO2バーに
より示される合計設定無駄時間d後のO2センサ6の出
力VO2/OUTの推定値を目標値VO2/TARGETに収束させるよ
うに目標空燃比KCMDを求める。
【0288】このとき、推定器26が求める推定偏差出
力VO2バーは、流量データ生成手段28が求めた推定排
ガスボリュームABSVに応じて無駄時間設定手段29が設
定した設定無駄時間d1,d2、すなわち、排気系E及び空
燃比操作系の実際の無駄時間にほぼ等しい設定無駄時間
d1,d2により定まる合計設定無駄時間d後のO2センサ
6の偏差出力VO2の推定値である。さらに、該推定器2
6により推定偏差出力VO2バーを算出するためのアルゴ
リズムは、設定無駄時間d1,d2の無駄時間要素をそれぞ
れ有する排気系モデル及び空燃比操作系モデルを基礎と
して構築されている。そして、特に排気系モデルのパラ
メータであるゲイン係数a1,a2,b1の値は、同定器25
によって、該排気系モデル上でのO2センサ6の偏差出
力VO2を表す前記同定偏差出力VO2ハットと実際の偏差出
力VO2との間の誤差を最小化するように逐次同定され、
その同定値a1ハット、a2ハット、b1ハットが推定器26
による推定偏差出力VO2バーの算出処理に用いられる。
この場合、排気系モデルの無駄時間として排気系Eの実
際の無駄時間とほぼ等しい前記設定無駄時間d1が用いら
れるため、排気系モデルと実際の排気系Eの挙動特性の
整合性が高まり、排気系Eの実際の挙動状態を的確に反
映した同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット、b1ハットが
同定器25により求められる。
【0289】このため、推定器26により求められる推
定偏差出力VO2バーは、排気系E及び空燃比操作系の実
際の無駄時間の変化によらずに、それらを合わせた合計
無駄時間後のO2センサ6の出力を表すものとして精度
の高いものとなる。そして、この推定偏差出力VO2バー
を用いてスライディングモード制御器27により目標空
燃比KCMDを求めることにより、排気系Eや空燃比操作系
の無駄時間の影響を最適に補償し得る目標空燃比KCMDを
求めることができ、ひいては、O2センサ6の出力VO2/O
UTの目標値VO2/TARGETへの収束制御を精度よく高い速応
性で行うことができる。この結果、触媒装置3の浄化性
能を高めることができる。
【0290】また、目標空燃比KCMDを求めるスライディ
ングモード制御器27の適応スライディングモード制御
のアルゴリズムは、推定器26と同様に、排気系Eの実
際の無駄時間とほぼ等しい設定無駄時間d1を有する排気
系モデルを基礎として構築され、該目標空燃比KCMDを求
めるために、前記同定器25が逐次求める同定ゲイン係
数a1ハット、a2ハット、b1ハットが用いられる。このた
め、排気系Eの実際の挙動状態を的確に反映させて目標
空燃比KCMDを求めることができ、ひいては、O 2センサ
6の出力VO2/OUTの目標値VO2/TARGETへの収束制御の速
応性等を高めて、触媒装置3の浄化性能を向上させるこ
とができる。
【0291】さらに、同定器25は、求める同定ゲイン
係数a1ハット、a2ハットの組合わせを、前記設定無駄時
間d1,d2を規定する推定排ガスボリュームABSVに応じて
可変的に設定する同定係数制限領域内の値に制限すると
共に、同定ゲイン係数b1の値も推定排ガスボリュームAB
SVに応じて可変的に設定する範囲内の値に制限する。ま
た、同定器25は、同定ゲイン係数a1ハット、a2ハッ
ト、b1ハットを求めるための重み付き最小2乗法のアル
ゴリズムにおける重みパラメータλ1の値を上記推定排
ガスボリュームABSVに応じて可変的に調整する。このた
め、排気系Eや空燃比操作系の実際の無駄時間や応答遅
れ特性の変化によらずに、これらの同定ゲイン係数a1ハ
ット、a2ハット、b1ハットの誤差やばらつきを抑制し、
その信頼性を高めることができる。この結果、該同定ゲ
イン係数a1ハット、a2ハット、b1ハットを用いて前記推
定器26により求められる推定偏差出力VO2の精度を安
定して確保することができると共に、O2センサの出力V
O2/OUTを目標値VO2/OUTに高い速応性で円滑に収束させ
得る目標空燃比KCMDを安定して求めることができ、ひい
ては、触媒装置3の高い浄化性能を安定して確保するこ
とができる。
【0292】次に、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
の第2実施形態を説明する。本実施形態は前記第1実施
形態と同様、本発明の第1及び第2の態様に係わる実施
形態である。尚、本実施形態は、基本的には前記推定器
26による演算処理のみが前述の実施形態と相違するも
のであるので、説明に際しての参照符号は前述の実施形
態と同一のものを用いる。
【0293】前述の実施形態では、排気系Eの無駄時間
d1と空燃比操作系(エンジン1及び機関側制御ユニット
7bからなる系)の無駄時間d2との両者の影響を補償す
るために、前記設定合計無駄時間d(=d1+d2)後のO
2センサ6の偏差出力VO2の推定値を求めるようにした。
しかるに、排気系Eの無駄時間d1に比して空燃比操作系
の無駄時間d2が十分に小さいような場合(d2≒0とみな
せる場合)には、排気系Eの設定無駄時間d1後のO2
ンサ6の偏差出力VO2の推定値VO2(k+d1)バー(以下の説
明ではこれを第2推定偏差出力VO2バーと称する)を求
め、その第2推定偏差出力VO2バーを用いて、目標空燃
比KCMDを求めるようにしてもよい。本実施形態は、この
ような第2推定偏差出力VO2バーを求めて、O2センサ6
の出力VO2/OUTの目標値VO2/TARGETへの収束制御を行う
ものである。
【0294】この場合、推定器26は次のようにして第
2推定偏差出力VO2バーを求める。すなわち、排気系E
の排気系モデルを表す前記式(1)を用いることで、各
制御サイクルにおける排気系Eの無駄時間d1後のO2
ンサ6の偏差出力VO2の推定値である前記第2推定偏差
出力VO2(k+d1)バーは、O2センサ6の偏差出力VO2の時
系列データVO2(k)及びVO2(k-1)と、LAFセンサ5の偏
差出力kact(=KACT−FLAF/BASE)の過去値の時系列デ
ータkact(k-j)(j=1,2,…,d1)とを用いて次式
(42)により表される。
【0295】
【数42】 ここで、式(42)において、α3,α4は、それぞれ前
記式(13)中のただし書きで定義した行列Aの巾乗A
d1(d1:排気系Eの無駄時間)の第1行第1列成分、第
1行第2列成分である。また、γj(j=1,2,…,d1)
は、それぞれ行列Aの巾乗Aj-1(j=1,2,…,d1)と
前記式(13)中のただし書きで定義したベクトルBと
の積Aj-1・Bの第1行成分である。
【0296】この式(42)が本実施形態において、推
定器26が前記第2推定偏差出力VO2(k+d1)バーを算出
するための式である。この式(42)は、前記第1実施
形態で説明した式(13)において、kcmd(k)=kact
(k)、d=d1とする(空燃比操作系の無駄時間d2を「0」
とみなす)ことで、該式(13)から得られる式であ
る。つまり、本実施形態では、推定器26は、制御サイ
クル毎に、O2センサ6の偏差出力VO2の時系列データVO
2(k)及びVO2(k-1)と、LAFセンサ5の偏差出力kactの
過去値の時系列データkact(k-j)(j=1,2,…,d1)
とを用いて式(42)の演算を行うことによって、O2
センサ6の第2推定偏差出力VO2(k+d1)バーを求める。
【0297】この場合、式(42)により第2推定偏差
出力VO2(k+d1)バーを算出するために必要となる係数値
α3,α4及びγj(j=1,2,…,d1)の値は、前述の実施
形態の場合と同様、前記ゲイン係数a1,a2,b1の同定値
である前記同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハッ
トを用いて算出される。また、式(42)の演算で必要
となる無駄時間d1の値は、第1実施形態と同様に前記無
駄時間設定手段29が制御サイクル毎に逐次求める設定
無駄時間d1が用いられる。尚、この場合、無駄時間設定
手段29は、空燃比操作系の設定無駄時間d2を求める必
要は無いことはもちろんである。
【0298】以上説明した以外の他の処理については前
述の第1実施形態と基本的には同一である。但し、この
場合において、スライディングモード制御器27は、S
LD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)の成分であ
る等価制御入力Ueqと到達則入力Urchと適応則入力Ua
dpとを、それぞれ前記式(24)、(26)、(27)
の「d」を「d1」で置き換えた式により求めることとな
る。
【0299】かかる本実施形態の内燃機関の空燃比制御
装置にあっては、O2センサ6の出力VO2/OUTを目標値VO
2/TARGET収束させる上で考慮すべき排気系Eの設定無駄
時間d1が実際の無駄時間とほぼ等しくなるように推定排
ガスボリュームに応じて可変的に設定される。そして、
この設定無駄時間d1の値を用いて、同定器25、推定器
26、スライディングモード制御器27による処理が前
記第1実施形態と同様に行われる。従って、前記第1実
施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0300】尚、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
は、前述した実施形態に限定されるものではなく、例え
ば次のような変形態様も可能である。
【0301】すなわち、前記第1及び第2実施形態で
は、触媒装置3の下流側の排ガスセンサとしてO2セン
サ6を用いたが、該排ガスセンサは、制御すべき触媒装
置下流の排ガスの特定成分の濃度を検出できるセンサで
あれば、他のセンサを用いてもよい。例えば触媒装置下
流の排ガス中の一酸化炭素(CO)を制御する場合はC
Oセンサ、窒素酸化物(NOX)を制御する場合にはN
Xセンサ、炭化水素(HC)を制御する場合にはHC
センサを用いるようにすればよい。
【0302】また、前記実施形態では、同定器25、推
定器26、スライディングモード制御器27の演算処理
において、LAFセンサ5の偏差出力kactやO2センサ
6の偏差出力VO2、目標偏差空燃比kcmdを用いたが、L
AFセンサ5の出力KACTやO2センサ6の出力VO2/OUT、
目標空燃比KCMDをそのまま用いて同定器25、推定器2
6、スライディングモード制御器27の演算処理を行う
ようにすることも可能である。
【0303】また、前記実施形態では、排気側制御ユニ
ット7aで生成する操作量を目標空燃比KCMD(排気系E
の目標入力)とし、その目標空燃比KCMDに従ってエンジ
ン1で燃焼させる混合気の空燃比を操作するようにした
が、例えばエンジン1の燃料供給量の補正量を排気側制
御ユニット7aで決定するようにすることも可能であ
り、また、目標空燃比KCMDからフィードフォワード的に
エンジン1の燃料供給量を調整して空燃比を操作するよ
うにすることも可能である。
【0304】また、前記実施形態では、スライディング
モード制御器27は、外乱の影響を考慮した適応則(適
応アルゴリズム)を加味した適応スライディングモード
制御の処理を用いたが、該適応則を省略した通常的なス
ライディングモード制御の処理を用いるようにしてもよ
い。さらには、スライディングモード制御器27に代え
て、他の形態の適応制御器、例えばバックステッピング
制御器等を用いることも可能である。
【0305】また、前記第2実施形態では、排気系Eの
無駄時間d1を考慮した排気系モデルを用いて空燃比の制
御系を構築したものを示したが、例えば排気系Eの無駄
時間d1が、排気側制御ユニット7aの制御サイクルに比
して比較的短いような場合には、前記式(1)でd1=0
とした排気系モデルを用いて制御系を構築するようにし
てもよい(これは本発明の第2の態様に関連する)。こ
の場合には、前記推定器26が不要となる。そして、同
定器25は、例えば前記式(4)でd1=0として前記第
1実施形態と同様に構築されたアルゴリズム(重み付き
最小2乗法のアルゴリズム)に基づいて排気系モデルの
パラメータの同定値である同定ゲイン係数a1ハット、a2
ハット、b1ハットを求めるようにすればよい。尚、この
とき前記重みパラメータλ1は、前記第1実施形態と同様
に推定排ガスボリュームABSVに応じて逐次可変的に設定
されることはもちろんである。また、スライディングモ
ード制御器27は、例えば前記式(19)、(20)、
(22)でd=0としてなる式と、前記式(18)とに
基づいて、前記第1実施形態と同様にSLD操作入力U
slを求めるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の内燃機関の空燃比制御装置の第1実施
形態の全体的システム構成図。
【図2】図1の装置で使用するO2センサの出力特性
図。
【図3】図1の装置の目標空燃比生成処理部の基本構成
を示すブロック図。
【図4】図3の目標空燃比生成処理部の無駄時間設定手
段の処理を説明するための線図。
【図5】図3の目標空燃比生成処理部の同定器の処理を
説明するための線図。
【図6】図3の目標空燃比生成処理部のスライディング
モード制御器に係わる説明図。
【図7】図1の装置の適応制御器の基本構成を示すブロ
ック図。
【図8】図1の装置の機関側制御ユニット(7b)の処
理を示すフローチャート。
【図9】図8のフローチャートにおけるサブルーチン処
理を示すフローチャート。
【図10】図1の装置の排気側制御ユニット(7a)の
全体的処理を示すフローチャート。
【図11】図10のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図12】図10のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図13】図12のフローチャートの部分的処理の説明
図。
【図14】図12のフローチャートの部分的処理の説明
図。
【図15】図12のフローチャートの部分的処理の説明
図。
【図16】図12のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図17】図10のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…エンジン(内燃機関)、2…排気管(排気通路)、
3…触媒装置、5…LAFセンサ(空燃比センサ)、6
…O2センサ、7a…排気側制御ユニット(操作量生成
手段)、7b…機関側制御ユニット(空燃比操作手
段)、25…同定器、28…流量データ生成手段、29
…無駄時間設定手段。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G084 BA09 BA24 DA02 DA10 DA12 EA07 EA11 EB12 EC04 FA02 FA20 FA26 FA29 FA33 3G301 HA01 JA02 JA26 LA01 MA01 NA06 NA09 NB05 NB18 ND03 NE14 PA10Z PA11Z PD01Z PD02Z PE01Z PE08Z

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の排気通路に備えた触媒装置の下
    流側に該触媒装置を通過した排ガス中の特定成分の濃度
    を検出すべく設けられた排ガスセンサと、前記触媒装置
    の上流側から前記排ガスセンサにかけての該触媒装置を
    含む排気系を、該触媒装置に進入する排ガスの空燃比か
    ら少なくとも無駄時間要素介して前記排ガスセンサの出
    力を生成する系として該排気系の挙動を表現するようあ
    らかじめ定められた該排気系のモデルに対し、該モデル
    の所定のパラメータの値を逐次同定する同定手段と、前
    記排ガスセンサの出力を所定の目標値に収束させるよう
    に、該モデルのパラメータの同定値を用いて前記触媒装
    置に進入する排ガスの空燃比を規定する操作量を逐次生
    成する操作量生成手段と、該操作量に応じて前記内燃機
    関で燃焼させる混合気の空燃比を操作する空燃比操作手
    段とを備えた内燃機関の空燃比制御装置において、 前記触媒装置を流れる排ガスの流量を表すデータを逐次
    生成する流量データ生成手段と、該流量生成手段が生成
    したデータの値に応じて前記排気系のモデルの無駄時間
    要素の無駄時間としての設定無駄時間を逐次設定する無
    駄時間設定手段を備え、前記同定手段は、該無駄時間設
    定手段が設定した設定無駄時間の値を用いて前記パラメ
    ータの値を同定することを特徴とする内燃機関の空燃比
    制御装置。
  2. 【請求項2】前記同定手段は、前記排気系のモデルにお
    ける前記排ガスセンサの出力と該排ガスセンサの実際の
    出力との間の誤差を最小化するアルゴリズムにより前記
    パラメータの値を同定する手段であり、 該アルゴリズムの重みパラメータの値を前記流量データ
    生成手段が生成したデータの値に応じて可変的に設定す
    る手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の内燃機
    関の空燃比制御装置。
  3. 【請求項3】内燃機関の排気通路に備えた触媒装置の下
    流側に該触媒装置を通過した排ガス中の特定成分の濃度
    を検出すべく設けられた排ガスセンサと、前記触媒装置
    の上流側から前記排ガスセンサにかけての該触媒装置を
    含む排気系を、該触媒装置に進入する排ガスの空燃比か
    ら前記排ガスセンサの出力を生成する系として該排気系
    の挙動を表現するようあらかじめ定められた該排気系の
    モデルに対し、該モデルの所定のパラメータの値を逐次
    同定する同定手段と、前記排ガスセンサの出力を所定の
    目標値に収束させるように、該モデルのパラメータの同
    定値を用いて前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比を
    規定する操作量を逐次生成する操作量生成手段と、該操
    作量に応じて前記内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比
    を操作する空燃比操作手段とを備えた内燃機関の空燃比
    制御装置において、 前記同定手段は、前記排気系のモデルにおける前記排ガ
    スセンサの出力と該排ガスセンサの実際の出力との間の
    誤差を最小化するアルゴリズムにより前記パラメータの
    値を同定する手段であり、 前記触媒装置を流れる排ガスの流量を表すデータを逐次
    生成する流量データ生成手段と、前記同定手段のアルゴ
    リズムの重みパラメータの値を前記流量データ生成手段
    が生成したデータの値に応じて可変的に設定する手段と
    を備えたことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  4. 【請求項4】前記同定手段は、前記排気系のモデルのパ
    ラメータの同定値を前記流量データ生成手段が生成した
    データの値に応じて定めた所定の範囲内の値に制限して
    求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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