JP2003053303A - コラゲナーゼを用いたクラゲ処理方法 - Google Patents

コラゲナーゼを用いたクラゲ処理方法

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JP2003053303A JP2001211048A JP2001211048A JP2003053303A JP 2003053303 A JP2003053303 A JP 2003053303A JP 2001211048 A JP2001211048 A JP 2001211048A JP 2001211048 A JP2001211048 A JP 2001211048A JP 2003053303 A JP2003053303 A JP 2003053303A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コラゲナーゼ又はクラゲ分解能力を有する海
洋ビブリオ属(Vibrio sp.)菌又はバチルス属(Bacill
us sp.)菌が分泌するコラゲナーゼでクラゲを生物学的
に処理することによりクラゲを減容化する方法、並びに
該方法に好適な細菌の提供。 【解決手段】 タンパク質(コラーゲン)の高保水能に
より体内水分が95〜98%となっており、これにより
脱水や焼却処理が極めて困難であり、さらにゼリー状で
流動性に乏しいために通常の廃水処理も困難であるクラ
ゲを、海洋細菌ビブリオ属(Vibrio sp.)(HIH-1株)
(受託番号FERM P-17897)又はバチルス属(Bacillus s
p.)(J26W株)(受託番号FERM P-18313)の分泌するコラ
ーゲナーゼにより、処理することにより、迅速かつ高い
効率をもってクラゲを減容化することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クラゲを酵素によ
り処理する方法に関する。本発明はさらに、海域に大量
発生したクラゲに、その場で又は陸上げされた状態で、
コラゲナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用する
ことにより、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維
を破壊して、上記体に含有される水を除去し、もってク
ラゲの体積を減少させる(以下、減容化という。)方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】夏季になると日本近海には大量のクラゲ
が発生する。臨海地域に立地し、冷却水として大量の海
水を必要とする発電所等のプラント施設においては、発
生したクラゲが潮流にのって押し寄せ、冷却水の取水口
から取り込まれると、フィルタの目詰まり等多くの弊害
をもたらす。そのため、発電所等では回転式除塵機等を
使用してクラゲを捕獲・回収している。このように陸揚
げされたクラゲは、そのまま陸地に埋め立て処分される
か、自然乾燥されるか、あるいは、機械的、化学的又は
生物学的に処理されている。
【0003】陸揚げされたクラゲ処理には、以下のよう
な問題点がある: (1)死んだクラゲは魚が腐ったような臭気を発生して
悪臭源となる。 (2)クラゲはその体に占める水分が95〜98%であるた
め焼却処理が可能であるとしてもエネルギー消費量が高
く、しかもゼリー状で流動性に乏しいため、そのままで
は通常の廃水処理工程での処理も困難である。 (3)埋め立て処分する場合にも用地の確保が難しい。
【0004】かかる問題を解決すべく、特開平11−1
79327号公報は、陸揚げされたクラゲを嫌気性条件
下で、嫌気性細菌により生物学的及び機械的に処理し、
その後廃水処理する簡易な処理方法・装置について記載
している。また、特開平11−244833号公報は、
陸揚げされたクラゲを加圧下で加熱し、その後瞬時に脱
圧して膨化処理してクラゲ水を得、このクラゲ水に次亜
塩素酸ナトリウムを添加して、廃水処理する方法につい
て記載している。しかしながら、特開平11−1793
27号公報に記載の発明においては、そのクラゲ分解処
理が嫌気性菌の自然発生又は下水処理後の活性汚泥に含
まれる嫌気性細菌の添加によるので、嫌気性環境を作り
出さなければならず、また、その分解処理には、3日間
と長期間を要するので、迅速かつ効率のよい処理とは言
い難い。特開平11−244833号公報に記載の発明
においては、加熱蒸気の供給設備、加圧槽、次亜塩素酸
ナトリウム添加設備等の装置が必要であり、それらの装
置群の建設・維持費は高い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、陸揚げクラゲの処理に関する上記の諸問題を解決す
べく、また、上記従来技術のクラゲ処理方法・装置の不
具合を解消すべく、迅速、かつ、効率のよいクラゲの生
物学的処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の第一の態様においては、クラゲをコラゲナ
ーゼで処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊
維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去するこ
とを含む、上記クラゲの減容化方法を提供する。前記コ
ラゲナーゼは通性嫌気性のビブリオ属(Vibrio sp.)又
は好気性のバチルス属(Bacillus sp.)に属する細菌由
来であることができる。本発明の第二の態様において
は、クラゲを、クラゲ分解酵素を分泌する細菌で処理し
て上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、
そして上記体に含有される水を除去することを含む、上
記クラゲの減容化方法を提供する。同様に、前記細菌は
ビブリオ属又はバチルス属に属する細菌であることがで
きる。好ましくは、前記細菌は、1999年6月14日
に工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託された海洋
細菌ビブリオ属(Vibrio sp.)(HIH-1株) (受託番号FE
RM P-17897)又は2001年4月25日に独立行政法人
産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託された
海洋細菌バチルス属(Bacillus sp.)(J26W株)(受託番
号FERM P-18313)である。前記コラゲナーゼ又は前記細
菌は、前記クラゲが大量発生した海域に適用することが
できるが、好ましくは、前記のクラゲが大量発生した海
域を周りの海域と隔離することが望ましい。あるいは、
前記コラゲナーゼ又は前記細菌は、陸揚げされた前記ク
ラゲに適用する。
【0007】本明細書中、クラゲの減容化とは、コラゲ
ナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用することに
より、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊
して、上記体に含有される水を除去し、もってクラゲの
体積を減少させることをいう。したがって、減容率は、
コラゲナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌適用後のクラ
ゲの残渣湿重量を適用前のクラゲの重量で除して100
を乗じた値である。ここで、クラゲ重量は容器・反応液
を含めた重量の増加分として、そして分解後残渣重量
は、反応液をろ過し、残った固形分の重量を乾燥させな
い状態で測定した。
【0008】クラゲは、その体を構成するタンパク質
(コラーゲン)が繊維状構造をとり、その網目に水を閉じ
込めてゼリー状となっている。この網目構造を構成する
コラーゲン繊維をコラゲナーゼ、好ましくは、海洋性Vi
brio 属細菌又はBacillus属細菌が分泌するコラゲナー
ゼによって切断し、上記の閉じ込められた水を溶出させ
て(解放して)、クラゲを減容化する。クラゲの減溶化
に伴って、クラゲと溶出水の混合物は流動化する。図1
にクラゲ分解のイメージを示す。
【0009】陸揚げされたクラゲを処理する場合には、
予め抽出したコラゲナーゼを入れた容器又はコラゲナー
ゼを分泌する細菌を培養した容器に減容化すべきクラゲ
を投入する。投入されたクラゲは、抽出したコラゲナー
ゼ又は細菌より培地中に分泌されたコラゲナーゼにより
減容化される。かかるクラゲの投入は、繰り返し行われ
ることができる。減容化後の処理水を、環境上の理由か
らそのままクラゲ捕獲海域に戻せない場合には、その処
理水をさらに廃水処理にかけてCODやBODを低下さ
せた後に、上記海域に戻すことができる。一方、コラゲ
ナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌をクラゲ発生海域に
そのまま適用する場合には、95〜98%の体内保持水
分が除去された減容化クラゲだけを、従来技術のクラゲ
処理を行うか又はそのまま埋め立て処分等をすることが
できる。
【0010】重要なことは、本発明に係るクラゲ減容化
方法は、厳密なる嫌気条件下でなくても実施することが
できるということであり、そしてこれが、本発明に係る
クラゲの減容化を迅速かつ効率の高いものにする。
【0011】
【実施例】実施例1:ビブリオ属細菌の単離及び同定 海洋細菌ビブリオ属(Vibrio sp.)(HIH-1株) (受託番
号FERM P-17897)を、広島県呉市阿賀海岸から採取し、
以下の方法で単離・同定した。
【0012】約1gの上記海洋土壌を、選択培地(ミズ
クラゲ熱水抽出物(ミズクラゲを121℃で15分間熱
処理して得られた上清))10mlに植菌し、そして2
5℃で14日間集積培養した。その後、この培養液0.
1mlを、選択寒天培地(ミズクラゲ熱水抽出物、1.
5%寒天)上に塗布し、そして25℃で3日間培養し
た。培養により上記培地上にクリア・ゾーンを形成した
コロニーを、釣菌操作を繰り返すことにより、単一分離
した。
【0013】以上のようにして、コラーゲンに対して高
い分解活性を有する分解菌を選別し、その中で最優秀の
菌株について遺伝子レベルでの解析を行い、新種として
単離・同定した。
【0014】上記菌株のDNAをHigh pure PCR Templa
te Kit(Roche社)を用いて抽出し、PCR法により16
S rDNAを増幅させた。シーケンサー(Applied Bi
osystems社)を用いて塩基配列を読み取り、DNA Data B
ank of Japan(DDBJ)にデータを送信し、分子系統学的解
析に基づく同定を行った。
【0015】本発明者は、この株をビブリオ属(Vibrio
sp.)(HIH-1株)と命名し、工業技術院生命工学工業
技術研究所に1999年6月14日に寄託申請した。こ
の株は、受託番号FERM P-17897として受託された。
【0016】実施例2:上記ビブリオ属細菌分泌酵素含
有培地を用いたクラゲ処理 図2に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から採
取した海洋細菌Vibriosp.(HIH-1株)FERM P-17897を、
ミズクラゲ熱水抽出物を含む培地上で、室温で振とう培
養して、増殖させた。この海洋細菌は増殖時にコラゲナ
ーゼを培地中に分泌する。分泌されたコラゲナーゼを含
む培地30mlを150mlの海水に添加した。これに、ミズ
クラゲ(学名Aurelia aurita)個体(直径約5cm;体重
35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、ク
ラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉
じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容
化率は、約90%以上であった。本実施例により減容化
されたクラゲ溶出物を含む海水のCODは200mg/lと
高かったので、環境上の理由により海洋と隔離した状態
で処理したクラゲ溶出物をそのまま放流することはでき
なかった。そこでクラゲ溶出物を含む海水のCOD除去の
ために空気吹き込み処理を行い、海水中のCODを放流可
能な数値15mg/l以下まで減少させた。
【0017】実施例3:凍結乾燥させた上記ビブリオ属
細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理 図3に本実施例のクラゲ処理手順を示す。前記の分泌さ
れたコラゲナーゼを含む培地30mlを液体窒素で凍結さ
せた後、真空ポンプを用いて水分を除去した。この凍結
乾燥物をビニール袋に入れて密封し、室温、遮光状態で
1年間保存した。これを30mlの水で溶解させた後、1
50mlの海水に添加し、ミズクラゲ個体(直径約5cm;
体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日
後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断され
て、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされ
た。減容化率は、約90%以上であった。
【0018】実施例4:精製酵素を用いたクラゲ処理 図4に精製酵素を用いたクラゲ処理手順を示す。実施例
2における分泌されたコラゲナーゼを含む培地に、硫酸
アンモニウム溶液を加えタンパク質を沈殿させ、遠心分
離によりタンパク質画分を得た。このタンパク質画分を
セロハンチューブに入れ、海水で透析して硫酸アンモニ
ウムを除去した。このタンパク質画分からゲル濾過によ
りコラゲナーゼ活性を持つ酵素を精製した。上記精製酵
素溶液1mlを3Lの海水中に添加して、ミズクラゲ個体(直
径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した。
ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が
切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化が
なされた。減容化率は、約90%以上であった。
【0019】実施例5:上記ビブリオ属細菌自体を用い
たクラゲ処理 図5に海洋細菌自体を用いたクラゲ処理手順を示す。海
底泥から取得した海洋細菌Vibrio sp.(HIH-1株)FERM
P-17897を、クラゲ熱水抽出物を含む培地で増殖させ
た後、遠心分離により上記細菌を、5g回収した。15
0mlの海水中のミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35
g)に上記回収細菌1gを散布し、静置した。ほぼ1日
後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断され
て、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされ
た。減容化率は、約90%以上であった。
【0020】実施例6:バチルス属細菌の単離及び同定 海洋細菌バチルス属 (Bacillus sp.)(J26W株)(受
託番号FERM P-18313)を、広島県安芸津町の海岸から採
取し、以下の方法で単離・同定した。
【0021】約1gの上記海洋土壌を、選択培地ミズク
ラゲ熱水抽出物(ミズクラゲを121℃で15分間熱処理して
得られた上清))10mlに植菌し、そして25℃で14日間
集積培養した。その後、この培養液0.1mlを、選択
寒天培地(ミズクラゲ熱水抽出物、1.5%寒天)上に塗
布し、そして25℃で3日間培養した。培養により上記培
地上にクリア・ゾーンを形成したコロニーを、釣菌操作
を繰り返すことにより、単一分離した。
【0022】以上のようにして、コラーゲンに対して高
い分解活性を有する分解菌を選別し、その中で最優秀の
菌株について遺伝子レベルでの解析を行い、新種として
単離・同定した。
【0023】上記菌株のDNAをHigh pure PCR Template
Kit (Roche社)を用いて抽出し、PCR法により16S rDNAを
増幅させた。シーケンサー(Applied Biosystems社)を用
いて塩基配列を読み取り、DNA Data Bank of Japan (DD
BJ)にデータを送信し、分子系統学的解析に基づく同定
を行った。
【0024】本発明者は、この株をバチルス属(Bacill
us sp.)(J26W株)と命名し、独立行政法人産業技術総
合研究所 特許生物寄託センターに2001年4月25
日に寄託申請した。この株は、受託番号FERM P-18313と
して受託された。
【0025】実施例7:上記バチルス属細菌分泌酵素含
有培地を用いたクラゲ処理 図6に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から採
取した海洋細菌Bacillus sp.(J26W株)FERM P-18313
を、ミズクラゲ熱水抽出物を含む培地上で、室温で振と
う培養して、増殖させた。この海洋細菌は増殖時にコラ
ゲナーゼを培地中に分泌する。分泌されたコラゲナーゼ
を含む培地30mlを150mlの海水に添加した。これに、ミ
ズクラゲ(学名Aurelia aurita)個体(直径約5cm;体重
35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲ
の体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込
められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率
は、約90%以上であった。このミズクラゲが分解した海
水に新たに同様にミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35
g)を入れて、25℃で静置した結果、更にほぼ1日後、
同様にクラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断さ
れて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされ
た。この操作によるクラゲの減容化は少なくとも6回の
繰り返しが可能であった。
【0026】実施例8:凍結乾燥させた上記バチルス属
細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理 本実施例における凍結乾燥させたバチルス属細菌分泌酵
素含有培地を用いたクラゲ処理手順は、実施例3におい
て用いたクラゲ処理手順(図3)と同様のものであっ
た。実施例7における分泌されたコラゲナーゼを含む培
地30mlを液体窒素で凍結させた後、真空ポンプを用いて
水分を除去した。この凍結乾燥物をビニール袋に入れて
密封し、室温、遮光状態で1年間保存した。これを30ml
の水で溶解させた後、150mlの海水に添加し、ミズクラ
ゲ個体(直径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置し
た。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊
維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減容
化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。
【0027】実施例9:精製酵素を用いたクラゲ処理 本実施例における精製酵素を用いたクラゲ処理手順は、
実施例4において用いたクラゲ処理手順(図4)と同様
のものであった。実施例7における分泌されたコラゲナ
ーゼを含む培地に、硫酸アンモニウム溶液を加えタンパ
ク質を沈殿させ、遠心分離によりタンパク質画分を得
た。このタンパク質画分をセロハンチューブに入れ、海
水で透析して硫酸アンモニウムを除去した。このタンパ
ク質画分からゲル濾過によりコラゲナーゼ活性を持つ酵
素を精製した。上記精製酵素溶液50μlを150mlの海水中
に添加して、ミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)を
入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構
成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められて
いた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90
%以上であった。
【0028】実施例10:上記バチルス属細菌自体を用
いたクラゲ処理 本実施例における海洋細菌自体を用いたクラゲ処理手順
は、実施例5において用いたクラゲ処理手順(図5)と
同様のものであった。海底泥から取得した海洋細菌Baci
llus sp.(J26W株)FERM P-18313を、クラゲ熱水抽出物
を含む培地で増殖させた後、遠心分離により上記細菌
を、5g回収した。150mlの海水中のミズクラゲ個体(直
径約5cm;体重35g)に上記回収細菌1gを散布し、静置
した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの
繊維が切断されて、閉じ込められていた水が溶出し、減
容化がなされた。減容化率は、約90%以上であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】クラゲ分解のイメージ図。
【図2】海洋細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処
理。
【図3】凍結乾燥させた海洋細菌分泌酵素含有培地を用
いたクラゲ処理。
【図4】精製酵素を用いたクラゲ処理。
【図5】海洋細菌自体を用いたクラゲ処理。
【図6】バチルス属細菌分泌酵素含有培地を用いたクラ
ゲ処理(繰り返し処理を含む)。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年7月19日(2002.7.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 コラゲナーゼを用いたクラゲ処理方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、クラゲを酵素によ
り処理する方法に関する。本発明はさらに、海域に大量
発生したクラゲに、その場で又は陸上げされた状態で、
コラゲナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用する
ことにより、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維
を破壊して、上記体に含有される水を除去し、もってク
ラゲの体積を減少させる(以下、減容化という。)方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】夏季になると日本近海には大量のクラゲ
が発生する。臨海地域に立地し、冷却水として大量の海
水を必要とする発電所等のプラント施設においては、発
生したクラゲが潮流にのって押し寄せ、冷却水の取水口
から取り込まれると、フィルタの目詰まり等多くの弊害
をもたらす。そのため、発電所等では回転式除塵機等を
使用してクラゲを捕獲・回収している。このように陸揚
げされたクラゲは、そのまま陸地に埋め立て処分される
か、自然乾燥されるか、あるいは、機械的、化学的又は
生物学的に処理されている。
【0003】陸揚げされたクラゲ処理には、以下のよう
な問題点がある: (1)死んだクラゲは魚が腐ったような臭気を発生して
悪臭源となる。 (2)クラゲはその体に占める水分が95〜98%であるた
め焼却処理が可能であるとしてもエネルギー消費量が高
く、しかもゼリー状で流動性に乏しいため、そのままで
は通常の廃水処理工程での処理も困難である。 (3)埋め立て処分する場合にも用地の確保が難しい。
【0004】かかる問題を解決すべく、特開平11−1
79327号公報は、陸揚げされたクラゲを嫌気性条件
下で、嫌気性細菌により生物学的及び機械的に処理し、
その後廃水処理する簡易な処理方法・装置について記載
している。また、特開平11−244833号公報は、
陸揚げされたクラゲを加圧下で加熱し、その後瞬時に脱
圧して膨化処理してクラゲ水を得、このクラゲ水に次亜
塩素酸ナトリウムを添加して、廃水処理する方法につい
て記載している。しかしながら、特開平11−1793
27号公報に記載の発明においては、そのクラゲ分解処
理が嫌気性菌の自然発生又は下水処理後の活性汚泥に含
まれる嫌気性細菌の添加によるので、嫌気性環境を作り
出さなければならず、また、その分解処理には、3日間
と長期間を要するので、迅速かつ効率のよい処理とは言
い難い。特開平11−244833号公報に記載の発明
においては、加熱蒸気の供給設備、加圧槽、次亜塩素酸
ナトリウム添加設備等の装置が必要であり、それらの装
置群の建設・維持費は高い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、陸揚げクラゲの処理に関する上記の諸問題を解決す
べく、また、上記従来技術のクラゲ処理方法・装置の不
具合を解消すべく、迅速、かつ、効率のよいクラゲの生
物学的処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の第一の態様においては、クラゲをコラゲナ
ーゼで処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊
維を破壊し、そして上記体に含有される水を除去するこ
とを含む、上記クラゲの減容化方法を提供する。前記コ
ラゲナーゼは通性嫌気性のビブリオ属(Vibrio sp.)又
は好気性のバチルス属(Bacillus sp.)に属する細菌由
来であることができる。本発明の第二の態様において
は、クラゲを、クラゲ分解酵素を分泌する細菌で処理し
て上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊し、
そして上記体に含有される水を除去することを含む、上
記クラゲの減容化方法を提供する。同様に、前記細菌は
ビブリオ属又はバチルス属に属する細菌であることがで
きる。好ましくは、前記細菌は、2001年4月25日
に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センタ
ーに寄託された海洋細菌バチルス属(Bacillus sp.)(J
26W株)(受託番号FERM P-18313)である。前記コラゲナ
ーゼ又は前記細菌は、前記クラゲが大量発生した海域に
適用することができるが、好ましくは、前記のクラゲが
大量発生した海域を周りの海域と隔離することが望まし
い。あるいは、前記コラゲナーゼ又は前記細菌は、陸揚
げされた前記クラゲに適用する。
【0007】本明細書中、クラゲの減容化とは、コラゲ
ナーゼを又はクラゲ分解酵素分泌細菌を適用することに
より、上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破壊
して、上記体に含有される水を除去し、もってクラゲの
体積を減少させることをいう。したがって、減容率は、
コラゲナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌適用後のクラ
ゲの残渣湿重量を適用前のクラゲの重量で除して100
を乗じた値である。ここで、クラゲ重量は容器・反応液
を含めた重量の増加分として、そして分解後残渣重量
は、反応液をろ過し、残った固形分の重量を乾燥させな
い状態で測定した。
【0008】クラゲは、その体を構成するタンパク質
(コラーゲン)が繊維状構造をとり、その網目に水を閉じ
込めてゼリー状となっている。この網目構造を構成する
コラーゲン繊維をコラゲナーゼ、好ましくは、海洋性Vi
brio 属細菌又はBacillus属細菌が分泌するコラゲナー
ゼによって切断し、上記の閉じ込められた水を溶出させ
て(解放して)、クラゲを減容化する。クラゲの減溶化
に伴って、クラゲと溶出水の混合物は流動化する。図1
にクラゲ分解のイメージを示す。
【0009】陸揚げされたクラゲを処理する場合には、
予め抽出したコラゲナーゼを入れた容器又はコラゲナー
ゼを分泌する細菌を培養した容器に減容化すべきクラゲ
を投入する。投入されたクラゲは、抽出したコラゲナー
ゼ又は細菌より培地中に分泌されたコラゲナーゼにより
減容化される。かかるクラゲの投入は、繰り返し行われ
ることができる。減容化後の処理水を、環境上の理由か
らそのままクラゲ捕獲海域に戻せない場合には、その処
理水をさらに廃水処理にかけてCODやBODを低下さ
せた後に、上記海域に戻すことができる。一方、コラゲ
ナーゼ又はクラゲ分解酵素分泌細菌をクラゲ発生海域に
そのまま適用する場合には、95〜98%の体内保持水
分が除去された減容化クラゲだけを、従来技術のクラゲ
処理を行うか又はそのまま埋め立て処分等をすることが
できる。
【0010】重要なことは、本発明に係るクラゲ減容化
方法は、厳密なる嫌気条件下でなくても実施することが
できるということであり、そしてこれが、本発明に係る
クラゲの減容化を迅速かつ効率の高いものにする。
【0011】実施例1:バチルス属細菌の単離及び同定 海洋細菌バチルス属 (Bacillus sp.)(J26W株)(受
託番号FERM P-18313)を、広島県安芸津町の海岸から採
取し、以下の方法で単離・同定した。
【0012】約1gの上記海洋土壌を、選択培地ミズク
ラゲ熱水抽出物(ミズクラゲを121℃で15分間熱処理して
得られた上清))10mlに植菌し、そして25℃で14日間
集積培養した。その後、この培養液0.1mlを、選択
寒天培地(ミズクラゲ熱水抽出物、1.5%寒天)上に塗
布し、そして25℃で3日間培養した。培養により上記培
地上にクリア・ゾーンを形成したコロニーを、釣菌操作
を繰り返すことにより、単一分離した。
【0013】以上のようにして、コラーゲンに対して高
い分解活性を有する分解菌を選別し、その中で最優秀の
菌株について遺伝子レベルでの解析を行い、新種として
単離・同定した。
【0014】上記菌株のDNAをHigh pure PCR Template
Kit (Roche社)を用いて抽出し、PCR法により16S rDNAを
増幅させた。シーケンサー(Applied Biosystems社)を用
いて塩基配列を読み取り、DNA Data Bank of Japan (DD
BJ)にデータを送信し、分子系統学的解析に基づく同定
を行った。
【0015】本発明者は、この株をバチルス属(Bacill
us sp.)(J26W株)と命名し、独立行政法人産業技術総
合研究所 特許生物寄託センターに2001年4月25
日に寄託申請した。この株は、受託番号FERM P-18313と
して受託された。
【0016】実施例2:上記バチルス属細菌分泌酵素含
有培地を用いたクラゲ処理 図2に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から採
取した海洋細菌Bacillus sp.(J26W株)FERM P-18313
を、ミズクラゲ熱水抽出物を含む培地上で、室温で振と
う培養して、増殖させた。この海洋細菌は増殖時にコラ
ゲナーゼを培地中に分泌する。分泌されたコラゲナーゼ
を含む培地30mlを150mlの海水に添加した。これに、ミ
ズクラゲ(学名Aurelia aurita)個体(直径約5cm;体重
35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、クラゲ
の体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込
められていた水が溶出し、減容化がなされた。減容化率
は、約90%以上であった。このミズクラゲが分解した海
水に新たに同様にミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35
g)を入れて、25℃で静置した結果、更にほぼ1日後、
同様にクラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断さ
れて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされ
た。この操作によるクラゲの減容化は少なくとも6回の
繰り返しが可能であった。
【0017】実施例3:凍結乾燥させた上記バチルス属
細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理 図3に本実施例のクラゲ処理手順を示す。実施例2にお
ける分泌されたコラゲナーゼを含む培地30mlを液体窒素
で凍結させた後、真空ポンプを用いて水分を除去した。
この凍結乾燥物をビニール袋に入れて密封し、室温、遮
光状態で1年間保存した。これを30mlの水で溶解させた
後、150mlの海水に添加し、ミズクラゲ個体(直径約5c
m;体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1日後、
クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断されて、
閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされた。減
容化率は、約90%以上であった。
【0018】実施例4:精製酵素を用いたクラゲ処理 図4に本実施例のクラゲ処理手順を示す。実施例2にお
ける分泌されたコラゲナーゼを含む培地に、硫酸アンモ
ニウム溶液を加えタンパク質を沈殿させ、遠心分離によ
りタンパク質画分を得た。このタンパク質画分をセロハ
ンチューブに入れ、海水で透析して硫酸アンモニウムを
除去した。このタンパク質画分からゲル濾過によりコラ
ゲナーゼ活性を持つ酵素を精製した。上記精製酵素溶液
50μlを150mlの海水中に添加して、ミズクラゲ個体(直
径約5cm;体重35g)を入れて、25℃で静置した。ほぼ1
日後、クラゲの体を構成するコラーゲンの繊維が切断さ
れて、閉じ込められていた水が溶出し、減容化がなされ
た。減容化率は、約90%以上であった。
【0019】実施例5:上記バチルス属細菌自体を用い
たクラゲ処理 図5に本実施例のクラゲ処理手順を示す。海底泥から取
得した海洋細菌Bacillus sp.(J26W株)FERM P-18313
を、クラゲ熱水抽出物を含む培地で増殖させた後、遠心
分離により上記細菌を、5g回収した。150mlの海水中の
ミズクラゲ個体(直径約5cm;体重35g)に上記回収細菌1
gを散布し、静置した。ほぼ1日後、クラゲの体を構成
するコラーゲンの繊維が切断されて、閉じ込められてい
た水が溶出し、減容化がなされた。減容化率は、約90%
以上であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】クラゲ分解のイメージ図。
【図2】海洋細菌分泌酵素含有培地を用いたクラゲ処理
(繰り返し処理を含む)。
【図3】凍結乾燥させた海洋細菌分泌酵素含有培地を用
いたクラゲ処理。
【図4】精製酵素を用いたクラゲ処理。
【図5】海洋細菌自体を用いたクラゲ処理。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】削除
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12N 1/20 C12R 1:63) (72)発明者 竹内 善幸 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 河野 進 広島県広島市西区観音新町四丁目6番22号 三菱重工業株式会社広島研究所内 (72)発明者 中山 博之 神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社基盤技術研究所内 (72)発明者 川端 豊喜 広島県広島市中区小町4番33号 中国電力 株式会社内 (72)発明者 岡 洋祐 広島県広島市中区小町4番33号 中国電力 株式会社内 (72)発明者 柳川 敏治 広島県広島市中区小町4番33号 中国電力 株式会社内 (72)発明者 長沼 毅 広島県東広島市鏡山一丁目3番2号 広島 大学内 (72)発明者 永尾 浩司 広島県東広島市鏡山一丁目3番2号 広島 大学内 Fターム(参考) 4B065 AA15X AA55X AC14 BB22 BB40 CA54 CA60 4D004 AA02 AB01 AC07 CA20 CC07

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クラゲをコラゲナーゼ(collagenase)で
    処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維を破
    壊し、そして上記体に含有される水を除去することを含
    む、上記クラゲの減容化方法。
  2. 【請求項2】 前記コラゲナーゼがビブリオ属(Vibrio
    sp.)に属する細菌由来である、請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 前記コラゲナーゼがバチルス属(Bacill
    us sp.)に属する細菌由来である、請求項1に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 クラゲを、クラゲ分解酵素を分泌する細
    菌で処理して上記クラゲの体を構成するコラーゲン繊維
    を破壊し、そして上記体に含有される水を除去すること
    を含む、上記クラゲの減容化方法。
  5. 【請求項5】 前記細菌がビブリオ属(Vibrio sp.)に
    属する、請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記細菌が海洋細菌ビブリオ属(Vibrio
    sp.)(HIH-1株) FERM P-17897である、請求項2又は5
    に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記細菌がバチルス属(Bacillus sp.)
    に属する、請求項4に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記細菌が海洋細菌バチルス属(Bacill
    us sp.)(J26W株) FERM P-18313である、請求項3又は
    7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記クラゲが大量発生した海域に前記コ
    ラゲナーゼ又は前記細菌を適用する、請求項1〜8のい
    ずれか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記のクラゲが大量発生した海域を周
    りの海域と隔離する、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記クラゲが陸揚げされている、請求
    項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 クラゲ分解能力の高い海洋細菌ビブリ
    オ属(Vibrio sp.)(HIH-1株) FERM P-17897。
  13. 【請求項13】 クラゲ分解能力の高い海洋細菌バチル
    ス属(Bacillus sp.)(J26W株) FERM P-18313。
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