JP2003043023A - 血液中のオルセニルアルデヒド化合物の定量法 - Google Patents

血液中のオルセニルアルデヒド化合物の定量法

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JP2003043023A
JP2003043023A JP2001235920A JP2001235920A JP2003043023A JP 2003043023 A JP2003043023 A JP 2003043023A JP 2001235920 A JP2001235920 A JP 2001235920A JP 2001235920 A JP2001235920 A JP 2001235920A JP 2003043023 A JP2003043023 A JP 2003043023A
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Kunio Ando
邦雄 安藤
Tomoyoshi Hosokawa
知良 細川
Masakazu Yamamoto
雅一 山本
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Arigen Pharmaceuticals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オルセニルアルデヒド化合物の血中濃度の測
定において、血中濃度を測定するための常套手段である
高速液体クロマトグラフィー法の使用を可能にし、薬物
動態の検討を容易にする。 【解決手段】 オルセニルアルデヒド基にセスキテルペ
ンが結合したアスコクロリン、4-O-メチルアスコクロリ
ン、アスコフラノン、シリンドロクロリンやそれらの誘
導体 (オルセニルアルデヒド化合物) を投与した動物か
ら採血した血清試料において、血清タンパク質と反応し
て形成されたシッフ塩基を酸性条件下に加水分解してオ
ルセニルアルデヒド化合物を有機溶媒中に遊離させ、こ
れを高速液体クロマトグラフィーにより測定する。加水
分解は10℃以下で24時間以上行うのが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は医療における薬物の
測定技術に関する。さらに詳細には、分子内に芳香族ア
ルデヒド基を有するオルセニルアルデヒド化合物を動物
に投与した際の薬物動態を検討するための測定技術に関
する。
【0002】
【従来の技術】オルセニルアルデヒド基にセスキテルペ
ンが結合したアスコクロリン、4-O-メチルアスコクロリ
ン、シリンドロクロリン、アスコフラノン等およびそれ
らの誘導体は、動物に投与すると血清コレステロール低
下作用、血圧降下作用、II型糖尿病の代謝改善・合併
症治療予防作用、慢性炎症に対する消炎作用および抗ガ
ン作用等々を示し、医薬としての有効性が期待できる化
合物群である。また、オルセニルアルデヒド化合物は、
本発明者等により核内レセプター、RXR,RAR,PPARなどを
活性化し遺伝子の情報発現を制御する作用が見出されて
いる。
【0003】新しい化合物を医薬として研究開発する場
合、薬物動態、すなわち、吸収、分布、代謝及び排泄等
々に関する研究は必須である。その際、放射能で標識し
た化合物を使用するのは、動物またはヒトの健康に悪影
響を及ぼすので例外的な場合に限られ、また放射性同位
体は、その取り扱いや使用後の処理が煩雑であるという
欠点を有する。通常、薬物動態の研究に使うのは放射能
で標識していない化合物であり、ヒトにおける薬効の指
標となる血中薬物濃度の測定は、高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)または抗原抗体反応を利用した測定法を
用いて行われる。とりわけ、HPLCを使った方法が圧倒的
に多い。
【0004】一般的に、脂溶性化合物を哺乳動物に投与
すると、血液中を血清タンパク質と蛋白結合した形で各
臓器・各組織に運搬される。血液中には脂溶性低分子物
質の運搬をつかさどるキャリアーが存在するからであ
る。すなわち、主要な血清タンパク質の一つである血清
アルブミンは分子内に長鎖脂肪酸と疎水結合する複数個
の疎水領域を持ち、脂溶性薬物は血清アルブミンの長鎖
脂肪酸結合部位に入り込んで疎水結合し血流にのって運
搬される(薬物の蛋白結合)。
【0005】通常の薬物と血清蛋白のあいだの結合はご
く弱い疎水結合なので、エタノール、アセトン、ジメチ
ルフォルムアミド、テトラハイドロフラン等のように水
と任意の割合で混合する有機溶媒を血清に加えると、疎
水結合を破壊し脂溶性薬物を血清から有機溶媒中に抽出
することができる。従って、多量の有機溶媒を血清に添
加すると、血清タンパク質は沈殿して系外に除去される
一方、薬物分子とタンパク質疎水部のあいだの結合は有
機溶媒が入り込むことにより引き離され、薬物分子は有
機溶媒に溶け出してくる。そこで、薬物を投与した哺乳
動物から採血し、得られた血清をエタノール等で希釈し
てHPLCに注入し、血中薬物濃度を測定することが薬物動
態を調べるための常套手段であった。
【0006】分子内に芳香族アルデヒド基を有するオル
セニルアルデヒド化合物 (以下、オルセニルアルデヒド
化合物と称する) は高度に脂溶性である。しかしながら
オルセニルアルデヒド化合物を動物に投与した際には、
薬物動態を検討する上記常套手段が使用できない。例え
ば、アスコクロリン、4-O-メチルアスコクロリン、シリ
ンドロクロリン等をラット、マウス、ビーグル犬、ヒト
などの哺乳類に経口投与すると、血清コレステロールが
低下するにもかかわらず、この手段では上記化合物もし
くはその代謝産物を血清からほとんど検出することがで
きない。このことは従来のHPLC法を用いる手段では薬物
動態の検討が不可能であることを意味している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】薬物動態の検討は、薬
物の有効性および安全性を予測するうえで不可欠であ
る。しかし、オルセニルアルデヒド基を有する化合物で
は、血清コレステロール低下作用を始めいろいろな薬理
作用を示すにもかかわらず、薬物の血中濃度を測定する
常套手段である高速液体クロマトグラフィー法では正確
に定量できないため、薬物動態の検討が困難であった。
【0008】本発明の目的は、オルセニルアルデヒド化
合物の血中濃度を高速液体クロマトグラフィーによって
正確に定量しうる方法を提供することであり、また、そ
れによってこの化合物の薬物動態の検討を容易にするこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、オルセニ
ルアルデヒド化合物の生体内での挙動について、放射性
同位元素による標識や各種試験により検討した結果、こ
の化合物が通常の脂溶性薬物では認められない挙動を示
すことを見出した。通常の脂溶性薬物では、血液中にお
いて血清タンパク質、特に血清アルブミンとは疎水結合
により弱く結合しているが、オルセニルアルデヒド化合
物では血清タンパク質との間に共有結合による強い結合
が存在し、最終的にシッフ塩基を形成するという知見を
得て、さらにこのように形成されたシッフ塩基からオル
セニルアルデヒド化合物をほぼ完全に遊離させて定量す
るための特定の条件を見出し、本発明を完成した。
【0010】すなわち、本発明の要旨は、オルセニルア
ルデヒド化合物を投与した動物から採取した生体試料に
おいて、該化合物および/またはその代謝産物を高速液
体クロマトグラフィーにより定量する方法であり、該化
合物および/またはその代謝産物と生体中のタンパク質
との共有結合により形成した生成物を酸性条件下で加水
分解した後に高速液体クロマトグラフィーによる定量を
行うことを特徴とする、前記方法にある。
【0011】また本発明は、オルセニルアルデヒド化合
物を投与した動物から採血した血清において、該化合物
および/またはその代謝産物を高速液体クロマトグラフ
ィーにより定量する方法であり、該化合物および/また
はその代謝産物と血清中のタンパク質との共有結合によ
り形成した生成物を酸性条件下で加水分解した後に高速
液体クロマトグラフィーによる定量を行うことを特徴と
する、前記方法に関する。
【0012】上記方法において、酸性条件下での加水分
解は、鉱酸もしくは有機酸を含む有機溶媒中に生体試
料、特に血清を混合し、10℃以下の低温において24時間
以上放置することにより行うのが好ましい。
【0013】上記方法において、オルセニルアルデヒド
化合物はアスコクロリン、4-O-メチルアスコクロリン、
アスコフラノン、シリンドロクロリンおよびそれらの誘
導体からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】本明細書においてオルセニルアル
デヒド化合物とは、芳香環の1位がアルデヒド基、2位
および4位が水酸基により置換された化合物およびその
誘導体を意味する。本発明方法による測定の対象となる
オルセニルアルデヒド化合物は特に限定されないが、オ
ルセニルアルデヒド化合物の芳香環の3位がセスキテル
ペン由来の側鎖により置換されているアスコクロリン、
4-O-メチルアスコクロリン、アスコフラノン、シリンド
ロクロリンやそれらの誘導体などの測定に適している。
【0015】また、本発明方法を適用しうる動物は、ヒ
トを含む任意の温血動物であり、本発明の測定方法によ
れば上記オルセニルアルデヒド化合物を投与した動物よ
り血清を採取して濃度を測定することができる。また、
血液の他、各種臓器等の生体試料を採取し、生体試料中
のこの化合物の濃度を測定することも可能である。例え
ば臓器に取り込まれたオルセニルアルデヒド化合物は、
臓器をポリトロンホモジナイザーによって磨砕した後、
磨砕物中の化合物濃度を血清と同様にして定量すること
ができる。
【0016】本発明において使用する高速液体クロマト
グラフィー法は従来の方法を含む任意の方法でよく、何
ら限定されない。本発明方法においては、試料を高速液
体クロマトグラフィーにかける前に、血清中に生成して
いるオルセニルアルデヒド化合物と血清タンパク質との
シッフ塩基を酸性条件下で加水分解しておく。この加水
分解は、10℃以下の低温において、鉱酸もしくは有機酸
を含む有機溶媒中に血清を24時間以上、好ましくは 120
時間以上放置することにより行うことができる。有機溶
媒は水と任意の割合で混和しうるものを使用でき、例え
ば、エタノール、アセトン、ジメチルフォルムアミド、
テトラハイドロフラン等が例示される。また、添加する
鉱酸もしくは有機酸としては、酢酸、蟻酸、プロピオン
酸、酪酸等が挙げられ、その添加量は0.1 〜10%程度、
好ましくは1〜5%である。
【0017】上記のようにしてオルセニルアルデヒド化
合物と血清タンパク質から形成されたシッフ塩基を加水
分解し、再生したオルセニルアルデヒド化合物および/
またはその代謝産物を高速液体クロマトグラフィーによ
り定量する。
【0018】オルセニルアルデヒド化合物を動物に投与
した場合、前述した通常の測定法ではその血中濃度を測
定できないのは、この化合物が血清タンパク質との共有
結合によりシッフ塩基を形成しているためであること
は、本発明者等の以下の実験の結果から明らかになっ
た。すなわち、オルセニルアルデヒド化合物の生体内で
の挙動について、放射性同位元素による標識や各種試験
により検討した結果、次のような事実を見出した。
【0019】(1) アスコクロリン、4-O-メチルアスコク
ロリン、シリンドロクロリン等のオルセニルアルデヒド
化合物は、動物に経口投与しても、極端な投与形態の場
合を除いて、HPLC法では血中濃度を測定できない。ま
た、アスコフラノン、4-O-カルボキシメチルアスコクロ
リンなどは、通常の蛋白結合している薬物を測定する方
法で、血中におけるこれらの化合物と代謝産物の存在を
証明できるが、正確な定量はできない。
【0020】(2) 上記いずれの場合も、放射性同位元素
で標識して経口投与すると、血中濃度は、通常の蛋白結
合する脂溶性薬物と同様の推移をたどる。すなわち、オ
ルセニルアルデヒド化合物は、血液および各臓器に分布
しているので、消化管から吸収れれている。
【0021】(3) 放射性同位元素で標識して経口投与し
た場合、血清中のオルセニルアルデヒド化合物は血清蛋
白と同一挙動をとる。すなわち、この化合物は血清アル
ブミンの疎水領域に疎水結合で弱く結合しているのでは
ない。
【0022】(4) マウス、ラット等の動物にオルセニル
アルデヒド化合物を経口投与すると、投与量に比例して
血清が透明かつ鮮黄色に着色する。血清コレステロール
の低下率と色素の濃度は正相関する。この鮮黄色の色素
は血清蛋白と挙動をともにし、アルコール等の有機溶媒
加えると蛋白と一緒に沈殿する。従って、オルセニルア
ルデヒド化合物はアルコール等の有機溶媒では抽出でき
ない。
【0023】(5) アスコクロリン、4-O-メチルアスコク
ロリン、シリンドロクロリン等のオルセニルアルデヒド
化合物をエタノールやPEG400等に溶解して血清に添加し
室温に放置する。経時的に濃度をHPLCで定量すると、濃
度は次第に減少し24時間後にはほぼ0になる。
【0024】濃度が0になった血清に多量の5%酢酸を含
む有機溶媒を加え、一週間冷蔵庫に放置すると、添加し
た上記化合物は100 %有機溶媒中に回収できる。従っ
て、in vitroで上記化合物を添加し、HPLCで検出できな
くなっても、血清成分によって分解されるためではな
く、血清蛋白、特に血清アルブミンとシッフ塩基を形成
して新たな化合物に転換したためである。
【0025】(6) 上記(5) を裏付ける証拠として、放射
性同位元素で標識した上記化合物を経口投与したラット
血清の放射能 (投与放射能に対する血液1ml当たりの
%) と、上記化合物を5%酢酸含有エタノール中で一週間
冷蔵して測定した測定値とは極めてよく一致する。
【0026】これらについてより詳細に説明する。放射性同位元素標識化合物の動態 オルセニルアルデヒド化合物をトリチウムや原子量14の
炭素等の放射性同位元素で標識して、哺乳動物に経口投
与した場合、被検動物の血液から放射能を検出すること
ができる。例えば、ラットあるいはマウス等の哺乳動物
に4-O-メチルアスコクロリンの4-O-メチル基を14C で標
識して経口投与し、経時的に採血して血清の放射能を測
定すると、放射能が血液および各臓器に分布しているの
が検出されるので、この化合物が消化管から吸収されて
いることは明らかである。しかしながら、得られた血清
をエタノールで希釈してHPLCにかけても、4-O-メチルア
スコクロリンおよびその代謝産物を血中から検出するこ
とはできない。放射能は、エタノールを添加した際に沈
殿する血清蛋白画分に含まれている。
【0027】具体的に説明すると、4-O-メチル基を14C
の放射性同位元素で標識した4-O-メチルアスコクロリン
を、一夜絶食したラットに50mg/kg 経口投与して経時的
に採血して血清の放射能を測定すると、下記表1に示す
ように、放射能の血中濃度は投与6〜8時間後に最高に
達し、投与した全放射能の0.054 〜0.063 %が血液中に
出現した。しかし、血清を4倍量のエタノールに加え、
添加直後にHPLCにより4 -0- メチルアスコクロリンの測
定を試みたが、いずれの試料も検出限界以下であった。
また、血清をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにスポ
ットし有機溶媒で展開したが、放射能は原点に止まり、
4-O-メチルアスコクロリンに相当する位置に放射性スポ
ットは存在しなかった。一方、放射能は肝臓、白色脂肪
組織および副腎などに比較的高い密度で分布することが
分かった。
【0028】
【表1】
【0029】オルセニルアルデヒド化合物と血清タンパ
ク質との結合 オルセニルアルデヒド化合物について以下に示すような
詳細な薬物動態の検討を行ったところ、血漿成分との結
合が非常に強いことが明らかになった。このように強い
結合は、通常の薬物ではほとんど認められない特異な現
象である。溶解度法から求めたアスコクロリン、4-O-メ
チルアスコクロリン、シリンドロクロリン等の血漿成分
への結合率は99%以上と異常に高く、いったん、血漿成
分と結合すると5%酢酸を含む有機溶媒を血漿に加える
除蛋白法でも、有機溶媒を添加した直後では微量しか遊
離せず、大部分は凝集して沈降した蛋白質と同一挙動を
とる。凝集物中に存在するオルセニルアルデヒド化合物
が、例えば、5%酢酸を含む有機溶媒中に一週間以上10
℃以下の温度で保存することにより有機溶媒にほぼ完全
に溶解したことから、その結合は非常に強固であること
が分かる。これらの実験結果は、オルセニルアルデヒド
化合物と血清蛋白との反応が通常の疎水結合による弱い
結合ではなく、生体内で共有結合による新たな化合物の
形成を伴う反応であることを示している。
【0030】
【表2】
【0031】オルセニルアルデヒド化合物が生体内で血
清蛋白と共有結合を形成し、別の化合物に転換している
ことを証明するためin vitroでの実験を試みた。本化合
物をPEG-400 やエタノールに溶かして血漿に加えると、
強固に結合するまでにある程度の時間が必要であった。
また、表2に示すように4-O-メチルアスコクロリンはpH
7.4 の緩衝液中に約1.2 μg/mlしか溶解しないが、PEG-
400 ないしエタノールに溶解して血漿に添加すると、そ
の600 倍も溶解する。
【0032】さらに、ラットの静脈内に本化合物を投与
した場合、PEG-400 に溶解した場合とあらかじめ血漿成
分と結合させた場合とでは、血中濃度推移に差が認めら
れ、特にαPhase では異なった消失速度定数が特徴的で
ある。
【0033】これらの結果から血漿(血清)中における
オルセニルアルデヒド化合物は、そのアルデヒド基が蛋
白質、とりわけ、血清アルブミンの遊離アミノ基と共有
結合してシッフの塩基を形成し、血清タンパクと共有結
合した複合体として存在しているものと推定される。下
記に4-O-メチルアスコクロリンと血清タンパク質一級ア
ミノ基からのシッフ塩基生成の反応式を示す。
【0034】
【化1】
【0035】生体内で非酵素的におこる類似の反応とし
ては、グルコースが血漿タンパク質リジン残基の一級ア
ミノ基と反応するグリケーション反応がある。オルセニ
ルアルデヒド化合物の呈する反応がグリケーション反応
と異なるところは、オルセニルアルデヒド化合物とタン
パク質の一級アミノ基が反応した生成物は、新たに生成
した共有結合に隣接する水酸基がないので、脱水してア
マドリ化合物に転換され、さらに重合してグリケーショ
ン最終生成物 (g1ycation endproducts)を形成すること
がないことである。
【0036】4-O- メチルアスコクロリンを結合した血
漿蛋白からの回収 通常、血漿タンパクと結合した薬物は、有機溶媒を加え
て除蛋白すると完全に遊離し、有機溶媒中に回収するこ
とができる。しかし、血清と長時間放置した4-O-メチル
アスコクロリンは、有機溶媒を加え除タンパクした後、
上清を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定して
も4-O-メチルアスコクロリンをほとんど検出できない。
それは次に示す実験の結果からも明らかである。
【0037】イヌの血漿2mlに4-O-メチルアスコクロリ
ンのエタノール溶液(5 mg/ml)を40μl 加え、4-O-メ
チルアスコクロリンが100 μg/mlが含まれる血漿を調製
する。この血漿を、4-O-メチルアスコクロリンが血漿成
分と充分結合するように24時間10℃に保存した。次に試
料0.25mlに5%酢酸を含有する各種の有機溶媒1mlを加
え、遠心分離した後、沈殿物(析出蛋白)が存在する状
態で保存し、その上清を経時的に高速液体クロマトグラ
フィーにより4-O-メチルアスコクロリンを測定した。結
果は図1に示す通り、血漿に5%酢酸を含む各有機溶媒
に加えると、有機溶媒中の4-O-メチルアスコクロリン濃
度は時間の経過とともに徐々に増加し、7日間以上放置
するとほぼ100 %が溶媒中に回収された。このように、
血清蛋白と結合した4-O-メチルアスコクロリンを完全に
遊離させるには7日以上かかるが、薬物動態の検討など
に必要な定量には、目的によって異なるが、通常24時間
以上の放置で十分であり、好ましくは120 時間以上放置
する。
【0038】図2はイヌ血漿に4倍量の5%酢酸含有エ
タノールを添加して24時間放置した4-O-メチルアスコク
ロリンの経時的な回収率を示したものである。図2から
明らかなように回収率は時間の経過とともに上昇する傾
向があり、120 時間後で回収率は88%となる。
【0039】オルセニルアルデヒド化合物と血漿蛋白と
が反応して生成するシッフ塩基は、溶液中では遊離型と
平衡にあるはずであるが、この系はエタノールにより蛋
白が凝集沈降しているので、解離の方向に進む。従っ
て、解離した4-O-メチルアスコクロリンが再結合せず、
回収率が増大していくと考えられる。
【0040】表3および図3に、飽食ラットに放射能標
識した4-O-メチルアスコクロリンを50mg/kg 経口投与し
た際の血中濃度の推移を示す (後述の実施例1参照) 。
表3の2段目は、投与した放射能がどの程度の割合で血
中に出現するかを示し、これから明らかなように、4-O-
メチルアスコクロリンは消化管から徐々に吸収され、血
中濃度のピークは投与6〜24時間の間にある。絶食ラッ
トに投与した表1の結果と比べると、飽食時のピークの
方が2倍以上高く、ピークに到達する時間が遅くなる傾
向が認められた。
【0041】表3の3段目の欄は、得られた血清を4倍
量のエタノールで希釈し、HPLCで4-O-メチルアスコクロ
リンを検出した結果を示す。血清中の放射能強度は投与
した全放射能の0.005 〜0.04%であるにもかかわらず、
いずれの時点においても4-0-メチルアスコクロリンは検
出限界以下であった。一方、同じ血清を4倍量の5%酢
酸含有エタノールで希釈し、10℃に1週間放置した後HP
LCで測定した場合には0.5 〜6μg /ml の4-O-メチルア
スコクロリンが検出され、各時間における測定値は、血
清中への分布率から算出した理論値と相関係数が0.95以
上の高い相関を示した。従って、本化合物を動物に経口
投与した場合、血中濃度の測定は血清タンパク質と反応
して生成したシッフ塩基を酸性条件下で完全に加水分解
してからHPLCによって測定すればよい。
【0042】上記実験ではオルセニルアルデヒド化合物
をラットに経口投与した場合を示すが、本発明方法はヒ
トを含むあらゆる温血動物に適用することが可能であ
る。また、本発明方法は、血中濃度だけでなく、臓器内
濃度の測定にも利用できる。
【0043】
【実施例】
【実施例1】(1) 飽食ラットの作製 体重約250gのウイスター系雄ラットを用いた。投与時に
飽食しているラットは次のようにして作製した。ラット
を40時間個別ケージに収容し、飲料水は自由摂取させる
条件下で絶食させた。絶食40時間目の早期に2時間だけ
ラット・マウス用標準固形飼料 (日本クレア、CE−2)を
自由に摂取させた。この方法は、Controlled Reverse-P
hase Feedingと呼ばれる。2時間後に飼料を取り去って
秤量し、摂餌量を測定したところ、摂取した飼料の量は
一頭あたり10g 前後であった。Controlled Reverse-Pha
se Feedingを連続して7 日間繰り返し、体重が安定して
増加し、摂餌量も一定の個体を選んで実験に供した。
【0044】(2) 14C を均一に標識したアスコクロリン
の調製 U-14C-glucoseを含む培地にアスコクロリン生産菌Asco
chyta viciaeを30℃で72時間培養し、培養液を3000rpm
で遠心分離して得た沈殿部に約10倍量のアセトンを加え
てアスコクロリンを抽出した。抽出液を濃縮して得た油
状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製
し、 [14C ]で均一に標織されたアスコクロリンの結晶
を分離した。この精製アスコクロリン結晶を出発物質と
してCH3Iと反応させて[U-14C]4-O- メチルアスコク
ロリンを合成した。こうして合成した [U−14C]4-O-メ
チルアスコクロリンの比放射能は1.4mci/mg 、放射化学
的純度は98.7%であった。
【0045】(3) 投与用懸濁液の調製 [U-14C] 4-O-メチルアスコクロリン32mgと非標識4-O-
メチルアスコクロリン68mgを混合し、240mg のヒドロキ
シプロピルセルロースを12mlの蒸留水に溶解した液を少
量ずつ加え、ガラスホモジナイザーで10分間ホモジナイ
ズした後、10mlにフィル・アップして投与用懸濁液とし
た。こうして調製した懸濁液中の4-O-メチルアスコクロ
リン粒子の平均直径は、158 μmであった。調製した懸
濁液の4 -0- メチルアスコクロリン含量は、100mg/10ml
となり、ラットの体重100gあたり0.5ml を投与すると、
投与量は50mg/kg となる。
【0046】(4) 投与と採血 一群3頭の飽食ラットは実験当日の朝、2 時間だけ10g
の市販固形飼料(日本クレア製;CE−2)を自由に摂取
させ、飼料摂取直後に4-O-メチルアスコクロリンを強制
経口投与した。ラットは72時間後まで、飲料水は自由摂
取とし、Controlled Reverse-Phase Feedingを続けた。
4-O-メチルアスコクロリンを投与した1、2、4、6、
8、24、48、72時間後に尾静脈から採血し、血中の放射
能を測定した。血中の放射能は表3に示すように投与24
時間後が最高値を示した。
【0047】(5) 4-O- メチルアスコクロリンの定量 尾静脈から採血した血液から血清を分離し、各50μl を
それぞれ200 μ1 のエタノールおよび5%酢酸含有エタ
ノールに添加した。エタノールで希釈した血清は直ちに
HPLCによって血清に含まれる4-O-メチルアスコクロリン
濃度を測定した。一方、5%酢酸含有エタノールで希釈
した血清は、冷蔵庫に1週間放置した後、HPLCによって
血清中の4-O-メチルアスコクロリンを測定した (本発明
例) 。結果は表3および図3に示す通りである。
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、投与されたオルセニル
アルデヒド化合物が血清中のタンパク質と結合して形成
したシッフ塩基を予め加水分解しておくので、オルセニ
ルアルデヒド化合物の血中濃度を、薬物の血中濃度を測
定するための常法である高速液体クロマトグラフィーを
使用して測定することができる。従って、薬物の有効性
および安全性を評価するのに不可欠である薬物動態の検
討が、汎用の高速液体クロマトグラフィーによる定量法
を用いて可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】血漿に添加した4-O-メチルアスコクロリンの回
収率を示す図である。
【図2】4-O-メチルアスコクロリン回収率の経時的増加
を示す図である。
【図3】飽食ラットに経口投与した4-O-メチルアスコク
ロリンの血中濃度を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オルセニルアルデヒド化合物を投与した
    動物から採取した生体試料において、該化合物および/
    またはその代謝産物を高速液体クロマトグラフィーによ
    り定量する方法であり、該化合物および/またはその代
    謝産物と生体中のタンパク質との共有結合により形成し
    た生成物を酸性条件下で加水分解した後に高速液体クロ
    マトグラフィーによる定量を行うことを特徴とする、前
    記方法。
  2. 【請求項2】 オルセニルアルデヒド化合物を投与した
    動物から採血した血清において、該化合物および/また
    はその代謝産物を高速液体クロマトグラフィーにより定
    量する方法であり、該化合物および/またはその代謝産
    物と血清中のタンパク質との共有結合により形成した生
    成物を酸性条件下で加水分解した後に高速液体クロマト
    グラフィーによる定量を行うことを特徴とする、前記方
    法。
  3. 【請求項3】 酸性条件下での加水分解を、鉱酸もしく
    は有機酸を含む有機溶媒中に生体試料を混合し、10℃以
    下の低温において24時間以上放置することにより行う、
    請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 有機溶媒が水と任意の割合で混和しうる
    ものである、請求項3記載の方法。
  5. 【請求項5】 オルセニルアルデヒド化合物がアスコク
    ロリン、4-O-メチルアスコクロリン、アスコフラノン、
    シリンドロクロリンおよびそれらの誘導体からなる群よ
    り選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
JP2001235920A 2001-08-03 2001-08-03 血液中のオルセニルアルデヒド化合物の定量法 Withdrawn JP2003043023A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10426841B2 (en) 2010-04-19 2019-10-01 Vergell Medical S.A. Combination of drugs with protein-binding prodrugs
CN110554119A (zh) * 2019-10-17 2019-12-10 云南中烟工业有限责任公司 一种树苔香酚类物质的定量检测方法
CN110568107A (zh) * 2019-10-17 2019-12-13 云南中烟工业有限责任公司 一种树苔香植物或提取物中树苔香酚类物质的检测方法

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CN110568107A (zh) * 2019-10-17 2019-12-13 云南中烟工业有限责任公司 一种树苔香植物或提取物中树苔香酚类物质的检测方法
CN110568107B (zh) * 2019-10-17 2021-08-03 云南中烟工业有限责任公司 一种树苔香植物或提取物中树苔香酚类物质的检测方法
CN110554119B (zh) * 2019-10-17 2021-08-03 云南中烟工业有限责任公司 一种树苔香酚类物质的定量检测方法

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