JP2003041395A - コンピュータを用いた解析処理方法、解析処理システムおよび記録媒体 - Google Patents

コンピュータを用いた解析処理方法、解析処理システムおよび記録媒体

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JP2003041395A
JP2003041395A JP2001235310A JP2001235310A JP2003041395A JP 2003041395 A JP2003041395 A JP 2003041395A JP 2001235310 A JP2001235310 A JP 2001235310A JP 2001235310 A JP2001235310 A JP 2001235310A JP 2003041395 A JP2003041395 A JP 2003041395A
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mesh
vehicle
analysis
processing
time
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Toru Komoriya
徹 小森谷
Kenei Chin
建栄 沈
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Subaru Corp
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Fuji Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】車両の移動を伴う動的な解析に適した解析処理
手法を提供するとともに、車両メッシュのメッシュ数の
低減を図ることによって、車両メッシュの生成時間と解
析処理時間とを短縮する。 【解決手段】処理環境をモデル化してメッシュで表現し
たバックグラウンドメッシュ上において、車両をメッシ
ュで表現した車両メッシュ5を、車両の移動軌跡を示す
移動パターンに従い移動させながら、バックグラウンド
メッシュと車両メッシュ5とを重ね合わせることによ
り、重合格子を時系列的に生成する。そして、時系列的
に生成された重合格子のそれぞれを用いて、車両の処理
状態を解析する。この車両メッシュ5は、解析において
注目する注目部位における部材の内部構造をメッシュで
表現したファインメッシュ5aと、注目部位以外におけ
る車体外板をメッシュで表現したラフメッシュ5bとで
構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、処理環境下で移動
する車両に対して施される処理の状態を、コンピュータ
を用いて解析する解析処理手法に係り、特に、車両の電
着塗装解析に適した解析処理手法に関する。
【0002】
【従来の技術】電着塗装は、高分子電解質の電気泳動現
象や電気透析現象等を利用した塗装法である。この塗装
は、被塗装物の表面に塗膜が均一に付着し、防食性にも
優れているため、車両ボディや部品といった各種部材の
下塗り塗装として広く用いられている。電着塗装によ
り、部材表面に付着する塗装膜厚を一定の範囲に収める
ことは、防錆対策、塗料消費量の減少、或いは部材軽量
化等の観点から重要な設計課題である。そのため、電着
塗装解析による塗膜析出状態の解析・検討が重要とな
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電着塗装に関する従来
の解析手法は、処理対象となる部材位置を電着液漕内に
固定した状態を対象とした静的な解析手法であった。こ
の手法は、全没通電方式(すなわち、電着処理の対象と
なる部材を電着液漕に全没させた後に通電する方式)に
は適しているが、通電入漕方式(すなわち、予め通電し
た部材を電着液漕に入漕していく方式)のような動的な
解析には対応できないという不都合がある。
【0004】また、従来の解析手法は、車両を構成する
個々の構成部材をメッシュで表現した部材メッシュを、
実車における部材の接合関係に従い配置していくこと
で、全ての部材を含む車両メッシュを生成していた。こ
の場合、部材の内部構造までもが詳細に表現された部材
メッシュを用いるため、車両メッシュの生成に時間が掛
かるという問題があった。また、車両メッシュのメッシ
ュ数が膨大となるため、解析処理に時間を要するという
問題があった。
【0005】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、車両の移動を伴う動的な解析に
適した新規な解析処理手法を提供することである。
【0006】また、本発明の別の目的は、車両メッシュ
のメッシュ数の低減を図ることによって、車両メッシュ
の生成時間と解析処理時間とを短縮することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するた
めに、第1の発明は、処理環境下で移動する車両に対し
て施される処理の状態を解析する、コンピュータを用い
た解析処理方法を提供する。この処理方法は、車両をメ
ッシュで表現した車両メッシュを、処理環境をモデル化
してメッシュで表現したバックグラウンドメッシュ上
で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移動させ
ながら、バックグラウンドメッシュと重ね合わせること
により、重合格子を時系列的に生成する第1のステップ
と、時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用い
て、車両の処理状態を解析する第2のステップとを有す
る。この車両メッシュは、解析において注目する注目部
位における部材の内部構造をメッシュで表現したファイ
ンメッシュと、注目部位以外における車体外板をメッシ
ュで表現したラフメッシュとで構成されている。
【0008】第2の発明は、処理環境下で移動する車両
に対して施される処理の状態を解析する、コンピュータ
を用いた解析処理方法を提供する。この処理方法は、処
理環境をモデル化してメッシュで表現したバックグラウ
ンドメッシュ上において、車両の外板をラフメッシュで
表現した車両メッシュを、バックグラウンドメッシュ上
で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移動させ
ながら、バックグラウンドメッシュと重ね合わせること
により、重合格子を時系列的に生成する第1のステップ
と、時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用い
て、処理環境における電位分布を時系列的に算出する第
2のステップと、時系列的に算出された電位分布と、解
析において注目する注目部位における部材の内部構造を
ファインメッシュで表現した部材メッシュとに基づい
て、注目部位の処理状態を解析する第3のステップとを
有する。
【0009】第3の発明は、処理環境下で移動する車両
に対して施される処理の状態の解析をコンピュータに実
行させるプログラムを記録した記録媒体を提供する。こ
の記録媒体には、上記第1または第2の発明に規定され
た解析処理方法をコンピュータに実行させるためのプロ
グラムが記録されている。
【0010】第4の発明は、処理環境下で移動する車両
に対して施される処理の状態を解析する解析処理システ
ムを提供する。この処理システムは、記憶装置とコンピ
ュータとを有する。記憶装置は、解析において注目する
注目部位における部材の内部構造をメッシュで表現した
ファインメッシュと、注目部位以外における車体外板を
メッシュで表現したラフメッシュとで構成された車両メ
ッシュを記録するとともに、処理環境をモデル化してメ
ッシュで表現したバックグラウンドメッシュを記憶す
る。コンピュータは、車両メッシュを、バックグラウン
ドメッシュ上で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに
従い移動させながら、バックグラウンドメッシュと重ね
合わせることにより、時系列的な重合格子を生成する。
また、コンピュータは、生成された時系列的な重合格子
のそれぞれを用いて、車両の処理状態を解析する。
【0011】第5の発明は、処理環境下で移動する車両
に対して施される処理の状態を解析する解析処理システ
ムを提供する。この処理システムは、記憶装置とコンピ
ュータとを有する。記憶装置は、車両の外板をメッシュ
で表現した車両メッシュと、解析において注目する注目
部位における部材の内部構造をメッシュで表現した部材
メッシュと、処理環境をモデル化してメッシュで表現し
たバックグラウンドメッシュとを記憶する。コンピュー
タは、車両メッシュを、バックグラウンドメッシュ上
で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移動させ
ながら、バックグラウンドメッシュと重ね合わせること
により、重合格子を時系列的に生成する。また、コンピ
ュータは、時系列的に生成された重合格子のそれぞれを
用いて、処理環境における電位分布を時系列的に算出す
る。さらに、コンピュータは、時系列的に算出された電
位分布と、部材メッシュとに基づいて、注目部位の処理
状態を解析する。
【0012】ここで、第1から第5の発明のいずれかに
おいて、上記電位分布を部材メッシュの境界条件として
設定してもよい。
【0013】また、上記解析は電着塗装解析であって、
バックグラウンドメッシュは、電着塗装ラインをモデル
化してメッシュで表現した電着液漕メッシュであっても
よい。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明を、車両の電着塗装解析に
適用した例について説明する。図1は、本実施形態に係
る電着塗装解析システムの構成図である。このシステム
は、コンピュータ1,キーボードやマウス等の入力装置
2,CRTや液晶ディスプレイ等の表示装置3および磁
気ディスク等の記憶装置4で構成されている。コンピュ
ータ1は、CPU,RAM,ROM,入出力インターフ
ェース等で構成されており、電着塗装解析用の解析メッ
シュを生成する。オペレータは、表示装置3に表示され
た情報に基づき、入力装置2を操作して、メッシュ要素
(セル)やメッシュ領域の指定、或いは数値の入力等を
行う。記憶装置4には、車両メッシュ5、バックグラウ
ンドメッシュ6(以下、適宜「電着液漕メッシュ6」と
も呼ぶ)、部材メッシュ7等に関するデータが記憶され
る。
【0015】(第1の実施形態)車両メッシュ5は、車
両をメッシュで表現したものであり、車体形状とその周
囲の空間とがメッシュで表現されている。図2は、車両
メッシュの一例を示す図である。電着塗装解析で注目す
る部位であるフロントピラーおよびセンターピラーは、
部位形状を詳細にメッシュ表現したファインメッシュ5
aで表現されており、それ以外の部位は、部位形状をラ
フにメッシュ表現したラフメッシュ5bで表現されてい
る。この車両メッシュ5には、隣接したメッシュ要素間
の境界条件として、部材とその周りの空間との境界を示
す特定の境界名が設定されており、この境界名によって
部材表面が規定されている。なお、部材表面の規定は、
メッシュ要素毎に設定された材料特性値として、部材を
特定可能な値を設定することによって行うことも可能で
ある。
【0016】ここで、「材料特性値」とは、部位の属性
(名称)や物性(板厚、弾性係数等)を特定するための
パラメータであり、基本的に、同じ部材を構成する部位
には同一の材料特性値が設定される。また、部材の周囲
空間を表すメッシュの層数は、要求される空間の解析精
度に基づき適宜設定する。この点については、本願出願
人の先願である特願2000−386602号に開示さ
れているので必要ならば参照されたい。
【0017】従来は、車両を構成するすべての部材メッ
シュ(部材単体または複数部材の組立体をメッシュで表
現したもの)を作成し、これらを部材の接合関係に従い
配置することにより車両メッシュを生成していた。しか
しながら、この手法では、全ての部材メッシュを作成す
るのに手間と時間が掛かるという不都合がある。そこ
で、本実施形態に係る車両メッシュ5は、ファインメッ
シュ5aとラフメッシュ5bという2種類のメッシュを
作成し、これらを重ね合わせることによって生成してい
る。ここで、ファインメッシュ5aは、電着塗装解析に
おいて注目している部位(換言すれば、塗膜析出量を解
析したい注目部位)の内部構造をメッシュで表現したも
のである。例えば、フロントピラーやセンターピラーが
注目部位となっている場合、図3に示すように、車両外
板に相当するプレート11,12のみならず、内部の補
強部材13〜15までもを詳細に表現する。ファインメ
ッシュ5aは、電着塗装解析を行う際の解析精度の観点
より、後述するバックグラウンドメッシュ6よりもメッ
シュが細分化されている。
【0018】これに対して、ラフメッシュ5bは、上記
注目部位以外における車体外板をメッシュで表現したも
のであり、内部構造までは表現していない。例えば、フ
ロントピラーやセンターピラーをラフメッシュ5bで表
現する場合、図3のプレート11,12のみをメッシュ
表現する。注目部位以外の箇所においても車体外板をメ
ッシュで表現する理由は、電着液槽内の電位分布を求め
る際に車体外板が影響を与えるからである。
【0019】一方、バックグラウンドメッシュである電
着液漕メッシュ6は、車両の処理環境をモデル化してメ
ッシュ表現したものであり、電着塗装解析では電着液漕
メッシュに相当する。図4は、この電着液漕メッシュ6
の一例を示す図である。すなわち、電着塗装液が貯留し
ている領域は、電着塗装液を示す材料特性値が設定され
た電着液領域メッシュ6bとして表されている。また、
電着塗装液上の空間は、空気を示す材料特性値が設定さ
れた空気領域メッシュ6aとして表されている。電着液
領域メッシュ6bと空気領域メッシュ6aとの境界に
は、液面境界が設定されている。その他にも、陽極板の
境界(Anode境界)や電着液漕の壁部境界(Wall境界)
等も設定されている。なお、電着液漕メッシュ6は、電
着液領域メッシュ6bと空気領域メッシュ6aとを予め
別個に作成しておいて、これらを重ね合わせることによ
って生成してもよい。
【0020】図5は、本実施形態に係る電着塗装解析の
手順を示すフローチャートである。この解析手順自体は
周知なものであるので概略的に説明する。まず、ステッ
プ1において、車両メッシュ5や電着液漕メッシュ6等
の計算格子と、塗料データベースとを入力し、解析を行
う上で必要な各種条件(例えば、境界条件や計算条件
等)を設定する。つぎに、電着塗装液槽の電位分布、被
塗装物の塗膜厚さ分布等の初期値を設定した上で(ステ
ップ2)、計算前の値(電位分布、塗膜厚さ分布)を磁
気ディスク等の記憶装置に格納する(ステップ3)。そ
して、計算のタイムステップをΔt[sec]だけ進め(ス
テップ4)、現在の時刻tnewにおける車両メッシュ5
の位置を更新し、コンベアラインに沿って車両メッシュ
5を進める(ステップ5)。そして、ステップ6で境界
条件を更新した後に、有限体積法、有限要素法、或いは
有限差分法等により、周知の電位拡散方程式を解いて、
電着塗装液槽内の電位分布を算出する(ステップ7)。
このステップ7で算出された電位分布より、被塗装物の
表面に吸着している塗料の膜厚抵抗を考慮して、被塗装
物の表面の電流密度を算出する(ステップ8)。ステッ
プ9では、予め実験やシミュレーション等を通じて確認
した、電流密度と塗膜析出量との関係を示す実験相関式
に、電流密度を入力変数として代入することにより、被
塗装物表面の塗膜析出量を算出する。ステップ10で
は、直前(1タイムステップ前)の塗膜厚さに、今回算
出された塗膜析出量を加算することにより、現在の塗膜
厚さを算出する。以上のようなステップ3からステップ
10までの一連の手順は、ステップ11の判断によっ
て、所定の設定時間が経過するまで繰り返される。そし
て、所定の設定時間が経過した場合には、ステップ11
からステップ12に進み、塗膜析出量に関する計算結果
を出力して、電着塗装解析を終了する。
【0021】図6は、車両移動状態における重合格子の
時系列的な推移を示す図である。また、図7は、通電入
漕方式における電圧履歴の一例を示す図である。車両の
移動軌跡を示す移動パターンに従い、バックグラウンド
メッシュ6上で車両メッシュ5を移動させながら、これ
らのメッシュ5,6を重ね合わせ、重合格子を時系列的
に生成する。同図(a)は、車両が初期位置に配置され
た状態における重合格子例を示す(t=A)。通電入漕
方式では、電着液槽内に浸入する前の状態が初期状態で
あり、この状態から通電が開始される。ただし、車両メ
ッシュ5は、電着液漕メッシュ6の空気領域メッシュ6
a上に位置しているため、塗膜は析出しない。同図
(b)は、車両入漕状態における重合格子例を示す(t
=B)。通電された状態で電着液内に入漕し、車両メッ
シュ5の先端が、電着液領域メッシュ6b上に位置して
いるため、その部分において塗膜が析出し始める。同図
(c)は、全没状態における重合格子例を示す(t=
C)。車両メッシュ5が電着液漕メッシュ6b内に全没
するため、車体の全体において塗膜が析出する。なお、
全没通電方式の場合には、この位置が初期位置となる。
同図(d)は、通電終了状態における重合格子例を示す
(t=D)。通電を停止することで塗膜も析出しなくな
るため、この位置で計算を終了させてもよい。同図
(e)は、車両出槽状態における重合格子例を示す。後
続車両への影響を考慮する場合は、車両が出るまでの状
態を計算する。
【0022】このように、本実施形態では、通電入漕方
式等の動的な解析が可能となり、各種塗装ライン工程が
シミュレーション可能となる。すなわち、一連の移動ポ
イントによって構成された移動パターンに従い、バック
グラウンドメッシュ6上において車両メッシュ5を経時
的に移動・重合することにより、時系列的な重合格子を
生成する。そして、これらの重合格子を用いて電着塗装
解析を行う。そして、経時的に算出された塗膜析出量を
累積していけば、部材の移動を伴う動的な電着塗装解析
を実現することが可能になる。
【0023】また、車両メッシュ5は、解析において注
目する注目部位における部材の内部構造をメッシュで表
現したファインメッシュ5aと、注目部位以外における
車体外板をメッシュで表現したラフメッシュ5bとで構
成されている。このように、解析で注目している部位以
外は部材の内部構造を省略することで、車両メッシュ5
の生成時間を短縮することができる。それとともに、車
両メッシュ5のメッシュ数を低減したことで、電着塗装
解析に要する計算時間を短縮することが可能となる。
【0024】(第2の実施形態)第1の実施形態では、
解析での注目部位をファインメッシュで表現し、それ以
外の部分をラフメッシュで表現した単一の車両メッシュ
を用いて、電位分布の算出とそれに続く電着塗装解析と
を行っていた。これに対して、本実施形態は、ラフメッ
シュとファインメッシュとを別個に用意し、ラフメッシ
ュで電位分布計算を行うとともに、ファインメッシュで
電着塗装解析を行う手法に関する。本実施形態では、第
1の実施形態と異なり、ラフメッシュとファインメッシ
ュとの重合は行わない。なお、バックグラウンドメッシ
ュは、第1の実施形態と同様のメッシュ、例えば図4に
示した電着液漕メッシュ6を用いる。
【0025】電位分布計算用のラフメッシュは、図8に
示すように、車体外板をメッシュ表現したラフメッシュ
のみで構成された車両メッシュ5’である。これに対し
て、電着塗装解析用のファインメッシュは、図9に示す
ように、電着塗装解析で注目したい部位に関して、部材
(部材単体または複数部材の組立体)の内部構造を含め
て表現した部材メッシュ7である。部材メッシュ7は、
電着塗装処理の対象となる部材をメッシュ表現したもの
であり、部材形状とその周囲の空間とがメッシュで表現
されている。この部材メッシュ7には、隣接したメッシ
ュ要素間の境界条件として、部材とその周りの空間との
境界を示す特定の境界名が設定されており、この境界名
によって部材の表面が規定されている。なお、部材表面
の規定は、メッシュ要素毎に設定された材料特性値とし
て、部材を特定可能な値を設定することによって行うこ
とも可能である。なお、部材メッシュ7は、電着塗装解
析を行う際の解析精度の観点より、電着液漕メッシュ6
よりもメッシュが細分化されている。
【0026】図10は、第2の実施形態に係る電着塗装
解析の手順を示すフローチャートである。まず、ステッ
プ21において、電位分布計算用のラフメッシュである
車両メッシュ5’、電着塗装解析用のファインメッシュ
である部材メッシュ7、電着液漕メッシュ6等の計算格
子と、塗料データベースとを入力し、解析を行う上で必
要な各種条件(例えば、境界条件や計算条件等)を設定
する。つぎに、電着塗装液槽の電位分布、被塗装物の塗
膜厚さ分布等の初期値を設定した上で(ステップ2
2)、計算前の値(電位分布、塗膜厚さ分布)を磁気デ
ィスク等の記憶装置に格納する(ステップ23)。そし
て、計算のタイムステップをΔt[sec]だけ進める(ス
テップ24)。ステップ25では、現在の時刻tnewに
おける車両メッシュ5の位置を更新し、その位置に車両
メッシュ5’を配置した上で、2つのメッシュ5’,6
を重ね合わせて、重合格子を生成する。そして、ステッ
プ26で境界条件を更新した後に、上記の重合格子をベ
ースとした電位拡散方程式を解いて、図11に示すよう
な電着液槽内の電位分布を算出する(ステップ27)。
【0027】ステップ28では、先のステップ27で算
出された電位分布から、電着塗装解析で注目する部材メ
ッシュ7周囲の電位分布を出力する(図11参照)。そ
して、ステップ29において、この電位分布を車両メッ
シュ5’とは別個に用意した電着塗装解析用の部材メッ
シュ7の境界条件として使用する(図12参照)。
【0028】そして、境界条件が設定された部材メッシ
ュ7を用いて、被塗装物の表面に吸着している塗料の膜
厚抵抗を考慮して、被塗装物の表面の電流密度を算出す
る(ステップ30)。ステップ31では、予め実験やシ
ミュレーション等を通じて確認した、電流密度と塗膜析
出量との関係を示す実験相関式に、電流密度を入力変数
として代入することにより、被塗装物表面の塗膜析出量
を算出する。ステップ32では、直前(1タイムステッ
プ前)の塗膜厚さに、今回算出された塗膜析出量を加算
することにより、現在の塗膜厚さを算出する。以上のよ
うなステップ23からステップ32までの一連の手順
は、ステップ33の判断によって、所定の設定時間が経
過するまで繰り返される。そして、所定の設定時間が経
過した場合には、ステップ33からステップ34に進
み、塗膜析出量に関する計算結果を出力して、電着塗装
解析を終了する。
【0029】このように、本実施形態によれば、第1の
実施形態と同様に、通電入漕方式等の動的な解析が可能
となり、各種塗装ライン工程がシミュレーション可能と
なる。また、車体外板をラフメッシュで表現した車両メ
ッシュ5’をベースとして電位分布を計算し、それとは
別個に用意したファインメッシュである部材メッシュ7
をベースとして解析で注目する部位の電着塗装解析を行
う。これにより、第1の実施形態と同様に、解析で注目
している部位以外は部材の内部構造を省略することで、
車両メッシュ5の生成時間を短縮することができる。ま
た、電着液槽内の電位分布をラフメッシュで計算するこ
とで、第1の実施形態と比べて計算時間を更に短縮する
ことが可能となる。
【0030】なお、本実施形態では、電位分布計算と電
着塗装解析とを同一の処理プロセスで行っているが、こ
れらを別個の処理プロセスで行ってもよい。すなわち、
まず、車両メッシュ5’をベースに電位分布の経時的な
推移を求め、この電位分布の経時的な推移を電位履歴フ
ァイルとして保存しておく。その後、別処理として電着
塗装解析処理を行い、電位履歴ファイルを参照して、部
材メッシュ7をベースに塗膜の析出量を算出する。この
場合、電着塗装解析で注目する部材の形状修正が軽微で
あれば、電着液槽内の電位分布計算を再度行う必要がな
く、電位履歴ファイルをそのまま使用できるため、電着
塗装解析時間を短縮できる。
【0031】本発明に係る解析処理の特徴の一つは、バ
ックグラウンドメッシュ上で車両メッシュを移動させな
がら、バックグラウンドメッシュと車両メッシュとの重
合格子を時系列的に生成し、時系列的に生成された重合
格子のそれぞれを用いて、車両の処理状態を解析する点
にある。したがって、本発明に係る解析処理手法は、上
述した電着塗装解析以外にも、所定の処理環境下におい
て移動する車両の処理状態を解析する様々なコンピュー
タ解析処理に広く適用可能である。このような解析に
は、例えば、熱流れ解析や電場解析等が挙げられる。
【0032】また、上述した実施形態の機能を実現する
コンピュータプログラムを記録した記録媒体を、図1の
ような構成を有するシステムに対して供給してもよい。
この場合、このシステム中のコンピュータ1が、記録媒
体に格納されたコンピュータプログラムを読み取り実行
することによって、本発明の目的を達成することができ
る。したがって、記録媒体から読み取られたコンピュー
タプログラム自体が本発明の新規な機能を実現するた
め、そのプログラムを記録した記録媒体が本発明を構成
する。コンピュータプログラムを記録した記録媒体とし
ては、例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、
ハードディスク、メモリカード、光ディスク、DVD−
ROM、DVD−RAM等が挙げられる。また、上述し
た実施形態の機能を実現するコンピュータプログラム自
体も新規な機能を有している。
【0033】
【発明の効果】、本発明によれば、処理環境下で移動す
る車両に対して施される処理状態を動的に解析すること
ができる。また、車両メッシュのメッシュ数の低減を図
ることによって、車両メッシュの生成時間と解析処理時
間との短縮化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】解析処理システムの構成図
【図2】第1の実施形態に係る車両メッシュの一例を示
す図
【図3】部材の内部構造の一例を示す図
【図4】電着液漕メッシュの一例を示す図
【図5】第1の実施形態に係る電着塗装解析の手順を示
すフローチャート
【図6】車両移動状態における重合格子の時系列的な推
移を示す図
【図7】通電入漕方式における電圧履歴の一例を示す図
【図8】第2の実施形態に係る車両メッシュの一例を示
す図
【図9】第2の実施形態に係る部材メッシュの一例を示
す図
【図10】第2の実施形態に係る電着塗装解析の手順を
示すフローチャート
【図11】電着液漕内の電位分布の様子を示す図であ
る。
【図12】部材メッシュの境界条件として使用される電
位分布の説明図
【符号の説明】
1 コンピュータ、 2 入力装置、 3 表示装置、 4 記憶装置、 5 車両メッシュ、 5a ファインメッシュ、 5b ラフメッシュ、 6 バックグラウンドメッシュ(電着液漕メッシュ)、 6a 空気領域メッシュ、 6b 電着液領域メッシュ、 7 部材メッシュ

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態を解析する、コンピュータを用いた解析処
    理方法において、 車両をメッシュで表現した車両メッシュを、処理環境を
    モデル化してメッシュで表現したバックグラウンドメッ
    シュ上で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移
    動させながら、前記バックグラウンドメッシュと重ね合
    わせることにより、重合格子を時系列的に生成する第1
    のステップと、 時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用いて、車
    両の処理状態を解析する第2のステップとを有し、 前記車両メッシュは、解析において注目する注目部位に
    おける部材の内部構造をメッシュで表現したファインメ
    ッシュと、前記注目部位以外における車体外板をメッシ
    ュで表現したラフメッシュとで構成されていることを特
    徴とするコンピュータを用いた解析処理方法。
  2. 【請求項2】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態を解析する、コンピュータを用いた解析処
    理方法において、 車両の外板をラフメッシュで表現した車両メッシュを、
    処理環境をモデル化してメッシュで表現したバックグラ
    ウンドメッシュ上で、車両の移動軌跡を示す移動パター
    ンに従い移動させながら、前記バックグラウンドメッシ
    ュと重ね合わせることにより、重合格子を時系列的に生
    成する第1のステップと、 時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用いて、処
    理環境における電位分布を時系列的に算出する第2のス
    テップと、 時系列的に算出された電位分布と、解析において注目す
    る注目部位における部材の内部構造をファインメッシュ
    で表現した部材メッシュとに基づいて、前記注目部位の
    処理状態を解析する第3のステップとを有することを特
    徴とするコンピュータを用いた解析処理方法。
  3. 【請求項3】上記第3のステップは、前記電位分布を前
    記部材メッシュの境界条件として設定する第4のステッ
    プを含むことを特徴とする請求項2に記載されたコンピ
    ュータを用いた解析処理方法。
  4. 【請求項4】前記解析処理方法は電着塗装解析方法であ
    って、 前記バックグラウンドメッシュは、電着塗装ラインをモ
    デル化してメッシュで表現した電着液漕メッシュである
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載され
    たコンピュータを用いた解析処理方法。
  5. 【請求項5】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態の解析をコンピュータに実行させるプログ
    ラムを記録した記録媒体において、 解析において注目する注目部位における部材の内部構造
    をファインメッシュで表現したファインメッシュと前記
    注目部位以外における車体外板をラフメッシュで表現し
    たラフメッシュとで構成されている車両メッシュを、処
    理環境をモデル化してメッシュで表現したバックグラウ
    ンドメッシュ上で、車両の移動軌跡を示す移動パターン
    に従い移動させながら、前記バックグラウンドメッシュ
    と重ね合わせることにより、重合格子を時系列的に生成
    する第1のステップと、 時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用いて、車
    両の処理状態を解析する第2のステップとを有する解析
    処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム
    が記録された記録媒体。
  6. 【請求項6】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態の解析を、コンピュータに実行させるプロ
    グラムを記録した記録媒体において、 車両の外板をラフメッシュで表現した車両メッシュを、
    処理環境をモデル化してメッシュで表現したバックグラ
    ウンドメッシュ上で、車両の移動軌跡を示す移動パター
    ンに従い移動させながら、前記バックグラウンドメッシ
    ュと重ね合わせることにより、重合格子を時系列的に生
    成する第1のステップと、 時系列的に生成された重合格子のそれぞれを用いて、処
    理環境における電位分布を時系列的に算出する第2のス
    テップと、 時系列的に算出された電位分布と、解析において注目す
    る注目部位における部材の内部構造をファインメッシュ
    で表現した部材メッシュとに基づいて、前記注目部位の
    処理状態を解析する第3のステップとを有する解析処理
    方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記
    録された記録媒体。
  7. 【請求項7】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態を解析する解析処理システムにおいて、 解析において注目する注目部位における部材の内部構造
    をメッシュで表現したファインメッシュと前記注目部位
    以外における車体外板をメッシュで表現したラフメッシ
    ュとで構成された車両メッシュを記憶するとともに、処
    理環境をモデル化してメッシュで表現したバックグラウ
    ンドメッシュを記憶する記憶装置と、 前記車両メッシュを、前記バックグラウンドメッシュ上
    で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移動させ
    ながら、前記バックグラウンドメッシュと重ね合わせる
    ことにより、時系列的な重合格子を生成するとともに、
    時系列的な重合格子のそれぞれを用いて、車両の処理状
    態を解析するコンピュータとを有することを特徴とする
    解析処理システム。
  8. 【請求項8】処理環境下で移動する車両に対して施され
    る処理の状態を解析する解析処理システムにおいて、 車両の外板をメッシュで表現した車両メッシュと、解析
    において注目する注目部位における部材の内部構造をメ
    ッシュで表現した部材メッシュと、処理環境をモデル化
    してメッシュで表現したバックグラウンドメッシュとを
    記憶する記憶装置と、 前記車両メッシュを、前記バックグラウンドメッシュ上
    で、車両の移動軌跡を示す移動パターンに従い移動させ
    ながら、前記バックグラウンドメッシュと重ね合わせる
    ことにより、重合格子を時系列的に生成し、時系列的に
    生成された重合格子のそれぞれを用いて、処理環境にお
    ける電位分布を時系列的に算出するとともに、時系列的
    に算出された電位分布と、前記部材メッシュとに基づい
    て、前記注目部位の処理状態を解析するコンピュータと
    を有することを特徴とする解析処理システム。
  9. 【請求項9】前記コンピュータは、前記電位分布を前記
    部材メッシュの境界条件として設定することを特徴とす
    る請求項8に記載された解析処理システム。
  10. 【請求項10】前記解析処理ステムは電着塗装解析シス
    テムであって、 前記バックグラウンドメッシュは、電着塗装ラインをモ
    デル化してメッシュで表現した電着液漕メッシュである
    ことを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載され
    た解析処理システム。
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