JP2003027140A - 高耐食クラッド鋼板の製造方法 - Google Patents
高耐食クラッド鋼板の製造方法Info
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Abstract
金あるいはNi基合金を合せ材とし、靭性に優れた炭素
鋼を母材とするクラッド鋼板を能率的で且つ安価に製造
することができる。 【解決手段】 母材および合せ材からなるクラッドスラ
ブを1050℃以上に加熱し、次いで、熱間圧延により
クラッド鋼板を調製し、そして、前記クラッド鋼板を高
周波誘導加熱により表面温度が900℃以上、板厚中央
部が700℃以下となるように熱処理する。
Description
鋼板の製造方法、特に、耐食性に優れたステンレス鋼、
高Ni合金あるいはNi基合金を合せ材とし、靭性に優
れた炭素鋼を母材とするクラッド鋼板を能率的で且つ安
価に製造することができる、高耐食クラッド鋼板の製造
方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、プラント設備の使用環境激化とメ
ンテナンスフリー指向が高まるのに応じて、厳しい腐食
環境下での構造用材料として、ステンレスクラッド鋼板
が適用される傾向が強くなっている。中でも圧延による
クラッド鋼板の製造は、量産化、大型商品への対応、経
済性等の観点から注目されており、例えば、18Cr−
8Niステンレス鋼に代表されるCr−Ni系、およ
び、Cr−Ni−Mo系を主とするオーステナイト系ス
テンレス鋼は、クラッド化して主に化学プラントや圧力
容器等への使用に提供できる技術が確立されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】圧延法により製造した
クラッド鋼板は、圧延ままもしくは焼準、溶体化処理の
状態で使用されるが、高耐食が要求される用途において
は、圧延後の焼準および溶体化処理が合せ材の耐食性向
上の観点から欠かせないプロセスとなる。 【0004】ところが、クラッド鋼板に対してこれらの
高温加熱処理を適用すると、母材金属組織の結晶粒粗大
化を引き起こして、靭性を低下させるなどの機械的性質
の著しい劣化を招く結果となる。即ち、合せ材の耐食性
の向上と母材の機械的性質の向上とは両立し難いことが
問題であった。 【0005】従って、この発明の目的は、上記問題を克
服し、合せ材が優れた耐食性を示し、且つ、母材の機械
的性質の良好なクラッド鋼板を高能率に製造する方法を
提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、クラッド
鋼板の熱処理方法について鋭意検討を重ねた結果、以下
の知見を得た。 【0007】高周波誘導加熱により鋼板を加熱する場
合、板厚および板幅に応じて誘導加熱コイルの出力を選
択することにより、板厚方向に250℃以上の大きな温
度差をつけることが可能となる。これは、鋼板(母材)表
面での電流密度の減衰に起因し、母材表面は、電流密度
の減衰により鋼板内部に比べて発熱量が大きくなるから
である。これによって、鋼板表面と鋼板内部とに間に温
度差が生じるようになる。この温度差は、誘導加熱コイ
ルの出力の増加に伴い増大するため、板厚方向に大きな
温度差をつけるためには、誘導加熱コイルの出力を上げ
れば良い。また、裏面に非磁性の合せ材をもつクラッド
鋼板の場合においても、母材表面からの伝熱により合せ
材を高温に加熱させることができる。 【0008】この知見に基づいて、ステンレスクラッド
鋼板の合せ材の耐食性ならびに母材靭性に及ぼす加熱条
件の影響を検討した。この結果、熱間圧延終了後、高周
波誘導加熱によりクラッド鋼板を加熱すれば、合せ材が
存在する表(裏)層近傍について900℃以上で溶体化処
理することができ、しかも、板内部については700℃
以下の低温に留まるような、板厚方向に不均一な温度分
布を有する加熱を行うことができる。従って、合せ材の
耐食性を母材の靭性を損なわずに向上させることができ
るといった新たな知見を得た。 【0009】母材温度が700℃以下であるということ
は、鋼のオーステナイト変態点を超えない範囲に保つこ
とによりフェライト粒の粗大化を防止し、しかも、後続
の冷却中に、アッパーベイナイトの析出を防ぐことがで
き、総じて優れた母材靭性を得ることができることを意
味する。 【0010】この発明は、以上のような知見に基いてな
されたもので、合せ材の耐食性の向上と母材の機械的性
質の向上との両立を達成することができるクラッド鋼板
の高生産性製造技術を提供するものであり、下記を特徴
とするものである。 【0011】請求項1記載の発明は、炭素鋼を母材と
し、合せ材がステンレス鋼、高Ni合金あるいはNi基
合金からなるクラッド鋼板の製造方法において、前記母
材および前記合せ材からなるクラッドスラブを1050
℃以上に加熱し、次いで、前記クラッドスラブを熱間圧
延してクラッド鋼板を調製し、そして、前記クラッド鋼
板を高周波誘導加熱により表面温度が900℃以上、母
材板厚中央部が700℃以下となるように熱処理するこ
とに特徴を有するものである。 【0012】 【発明の実施の形態】この発明におけるクラッド鋼板の
母材は、基本的には、炭素鋼であれば良く、成分は特に
限定しない。 【0013】合せ材としては、非磁性であることが必要
であり、Cr−Ni系、および、Cr−Ni−Mo系を
主とするオーステナイト系ステンレス鋼、Ni量25%
以上の高Ni合金あるいはNi基ベースのNi基合金等
が使用できる。合せ材の成分元素は、特に規定されない
が、耐食性の観点からC量は、低い方が良く、0.03
%以下が好ましい。 【0014】この発明は、上記母材および上記合せ材か
らなるクラッドスラブを1050℃以上に加熱し、次い
で、熱間圧延によりクラッド鋼板を調製し、前記クラッ
ド鋼板を高周波誘導加熱により表面温度が900℃以
上、母材板厚中央部が700℃以下となるように加熱す
ることによって高耐食クラッド鋼板を製造するものであ
る。 【0015】クラッドスラブを1050℃以上の温度に
加熱するのは、高温強圧下圧延により母材と合せ材との
接合性を確保し、更に、合せ材の組織の均質化を図るた
めである。圧延終了後の加熱時のクラッド鋼板の表面温
度を900℃以上とするのは、圧延後、合せ材に析出し
たCr炭窒化物等の析出物を固溶させて、合せ材を溶体
化処理するためである。そして、板厚中央部が700℃
以下となるように加熱するのは、炭素鋼からなる母材の
金属組織の粗大化を抑制するためである。 【0016】上述のように、表面温度が900℃以上、
板厚中央部が700℃以下となるようにクラッド鋼板を
加熱するには、クラッド鋼板の平均密度ρ(kg/
m3)、クラッド鋼板の平均比熱Cp(J/K・g)、
クラッド鋼板の厚さH(m)、クラッド鋼板の幅W
(m)、加熱用コイルの長さL(m)として、ρ・Cp
・H・W・L・5(W:ワット)以上の出力を有する高
周波誘導加熱コイルを用い、このコイルに1kHz以上
の交流電流を、表面温度上昇率が5℃/sec以上とな
るように通電すれば良い。 【0017】3kHz以上の交流電流で高周波加熱する
ことにより、非磁性体である合せ材の表面と、母材の合
せ材のない側の表面が加熱されて、表面が主に高温にな
る。3kHz未満の場合、非磁性体である合せ材の発熱
が少なくなるが、1kHz以上であれば、母材の表面が
主に加熱されることによって、合せ材も接合界面の母材
表層の温度まで伝熱によって高温化する。このとき、母
材板厚中心温度の上昇を抑制するためには、母材表面の
温度上昇率を5℃/sec以上とする必要がある。これ
を実現するためには、ρ・Cp・H・W・L・5(W:
ワット)以上の出力を有する高周波誘導加熱コイルを使
用する必要がある。 【0018】加熱後の冷却速度については、特に規定し
ないが、更に卓越した耐食性を付与したい場合は、冷却
速度は早い方が好ましく、2℃/秒以上であることが望
ましい。 【0019】この高周波誘導加熱装置の設置場所は、特
に限定されるものではないが、ライン上に設置し、圧延
完了後、オンラインで処理すれば、製造工期短縮のメリ
ットは非常に大きくなる。 【0020】 【実施例】次に、この発明を実施例により更に説明す
る。 【0021】炭素鋼からなる母材と、表1に示す化学成
分からなる合せ材A、Bを使用して、表2に示す熱間圧
延条件に従って本発明クラッド鋼板No.1から5およ
び比較クラッド鋼板No.6から10をそれぞれ製造し
た。そして、各クラッド鋼板から試験片を切り出し、各
試験片に対して、合せ材の耐食性試験および母材の靭性
試験を行なった。これらの結果を表2に併せて示す。 【0022】 【表1】 【0023】 【表2】【0024】各クラッド鋼板の厚さは20から50mm
で、クラッド比は、1:4から1:8の範囲内であっ
た。圧延後の熱処理には、4000から16000kw
の出力を有する高周波誘導加熱コイルを使用し、所定の
熱履歴をクラッド鋼板に付与した。 【0025】合せ材の耐食性試験は、JIS G057
1に規定する、10%シュウ酸エッチ試験方法により評
価した。粒界腐食が全く認められない段状組織を○印、
結晶粒界に一部粒界腐食が認められる混合組織を△印、
結晶粒が完全に粒界腐食により囲まれたみぞ状組織を×
印で示した。 【0026】母材の靭性については、板厚中央部よりV
ノッチシャルピー試験片を切り出し、試験温度−40℃
における3本平均の吸収エネルギーで評価した。試験温
度−40℃以上で50J以上の吸収エネルギーを示す場
合を良好と判定した。 【0027】表2から明らかなように、本発明クラッド
鋼板1から5は、本発明範囲内の条件で製造したクラッ
ド鋼板であり、優れた合せ材の耐食性と母材の高靭性が
得られていた。 【0028】一方、比較クラッド鋼板6は、高周波誘導
加熱による加熱を行なわなかったので、合せ材の耐食性
が劣っていた。 【0029】比較クラッド鋼板7は、合せ材の加熱温度
が本発明範囲を外れて若干低いので、合せ材の耐食性が
若干劣っていた。 【0030】比較クラッド鋼板8は、母材の加熱温度が
本発明範囲を外れて高いので、合せ材の耐食性は優れて
いるものの、母材の靭性が劣っていた。 【0031】比較クラッド鋼板9は、合せ材の加熱温度
が本発明範囲を外れて大幅に低いので、合せ材の耐食性
が劣っていた。 【0032】比較クラッド鋼板10は、母材の加熱温度
が本発明範囲を外れて高いので、合せ材の耐食性は優れ
ているものの、母材の靭性が劣っていた。 【0033】以上のように、比較クラッド鋼板6から1
0は、本発明範囲外の条件で製造したクラッド鋼板であ
るので、何れも合せ材の耐食性、あるいは母材の靭性に
おいて性能が十分でないことが分かった。 【0034】 【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、母材および前記合せ材からなるクラッドスラブを1
050℃以上に加熱し、次いで、熱間圧延によりクラッ
ド鋼板を調製し、そして、前記クラッド鋼板を高周波誘
導加熱により表面温度が900℃以上、母材板厚中央部
が700℃以下となるように再加熱することによって、
耐食性が極めて高いステンレス鋼を合せ材とし、靭性の
優れた炭素鋼を母材とするクラッド鋼板を能率的で且つ
安価に製造することができる。そして、この発明により
製造したクラッド鋼板をプラント等に使用すれば、耐久
性に優れ、維持補修が軽度でひいてはライフサイクルコ
ストの最小化要望に適合するので、極めて好ましいとい
った有用な効果がもたらされる。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭素鋼を母材とし、合せ材がステンレス
鋼、高Ni合金あるいはNi基合金からなるクラッド鋼
板の製造方法において、 前記母材および前記合せ材からなるクラッドスラブを1
050℃以上に加熱し、次いで、前記クラッドスラブを
熱間圧延してクラッド鋼板を調製し、そして、前記クラ
ッド鋼板を高周波誘導加熱により表面温度が900℃以
上、母材板厚中央部が700℃以下となるように熱処理
することを特徴とする、高耐食クラッド鋼板の製造方
法。
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