JP2003012696A - 真珠タンパク質複合体およびその利用 - Google Patents

真珠タンパク質複合体およびその利用

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JP2003012696A
JP2003012696A JP2001202033A JP2001202033A JP2003012696A JP 2003012696 A JP2003012696 A JP 2003012696A JP 2001202033 A JP2001202033 A JP 2001202033A JP 2001202033 A JP2001202033 A JP 2001202033A JP 2003012696 A JP2003012696 A JP 2003012696A
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lys
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protein
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愛三 松代
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 真珠の形成に関与する真珠タンパク質複合体
を提供する。 【解決手段】 共にSDSゲル電気泳動によって決定され
た、15kDaおよび20kDaの分子量を有する二種の成分タン
パク質を含むタンパク質複合体(レーンB)、および15
kDa、20kDaおよび50kDaの分子量を有する三種の成分タ
ンパク質を含むタンパク質複合体(レーンA)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真珠を構成するタ
ンパク質、特に、天然真珠の真珠層の構築に関与するタ
ンパク質の複合体(真珠タンパク質複合体)と、その利
用に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】真珠
は、生物活動を利用して得られる唯一の宝石である。
真珠生産の現場では、アコヤ貝の殻体の一部が凝結した
真珠の珠を形成させる技術として、海中に吊下げた養殖
篭の中で1〜2年の歳月にわたってアコヤ貝を養殖する
という、自然環境に依存した真珠養殖技術が、1世紀以
上にわたって、今日まで厳然として主流をなしている。
そして、これら従来の真珠の養殖技術での不安定要因
を排除し、工業的に真珠を量産するための様々な試みが
これまでに行われている。
【0003】ところで、真珠層は、アラレ石(アラゴナ
イト)の結晶が層状構造をなし、コンキオリンと呼ばれ
る層間有機基質(層間タンパク質)が、アラレ石の層間
を埋めるバインダーのように存在している。 この層間
タンパク質の成分については、従来から、水溶性の物質
(WSM:Water Soluble Organic Matrix)と水不溶性の物
質(WISM:Water Insoluble Organic Matrix)の二つにつ
いて、個別に研究が続けられてきたが、未だ不明な部分
が多いままである。
【0004】このような状況下にあって、本発明者が先
に行ったナクレインの研究は、主要タンパク質の一つの
構造と機能を初めて明らかにしたものである。 すなわ
ち、ナクレインが、層間タンパク質でのWSMの主要構成
要素に該当し、かつ炭酸脱水酵素の活性を有する重要な
機能タンパク質であることを見出すに至っている(特願
平8−533949号:WO96/35786)。
【0005】このナクレインによってもたらされる炭酸
は、カルシウムイオン(Ca2+)と結合して炭酸カルシウム
を生成するが、真珠層において、この炭酸カルシウムが
結晶化してアラゴナイトに至る現象の作用機構の解明
は、結晶学などの学術的観点のみならず、真珠の人工生
産に向けた技術的観点からしても、当該技術分野におい
て未だ最大の課題として認識されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題に鑑
みて発明されたものであって、尿素を用いて水不溶性の
層間タンパク質を可溶化して真珠タンパク質複合体を取
得し、これを基板としてアラゴナイトの結晶化に成功し
たのである。 そして、この知見を踏まえて、真珠複合
タンパク質上にアラゴナイトの結晶を積み重ねること
で、真珠層の構成最小単位の構築にも成功したのであ
る。
【0007】すなわち、本発明は、真珠の形成に関与す
るタンパク質に関して、前述したように、本発明者がさ
らに詳細に探求を行った末に得られた知見、つまり新種
のタンパク質に基づくものであり、また、これら新種の
タンパク質を利用して真珠層を人工的に得ることも意図
している。
【0008】すなわち、本発明の要旨とするところは、
SDSゲル電気泳動によって決定された15kDa、20kDaおよ
び50kDaの分子量を有する三種の成分タンパク質の内、
少なくとも二種の成分タンパク質を含む真珠タンパク質
複合体と、これを利用したアラゴナイトの結晶化を経て
真珠層を製造する方法にある。
【0009】後述するように、本発明によって、真珠層
に存在する水不溶性物質を高濃度の尿素で可溶化するこ
とで、真珠タンパク質複合体の溶液の調製に成功し、な
おかつ、これら水不溶性物質が、真珠層を構築する上で
最も重要なアラゴナイトの結晶化を誘導する「構造的機
能的単位」であることが明らかになったのである。この
現象は、生体内でのヘモグロビンのような酵素やリボゾ
ームのように、あるタンパク質が他のタンパク質分子種
と会合してタンパク質複合体となって一つの「構造的に
も機能的にも一つにまとまった単位集団」を形成するこ
とと似ている。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。
【0011】真珠タンパク質複合体の抽出および精製 天然真珠として、真珠の真珠層のみを核から剥がして得
た真珠層と、真珠貝の殻体から稜柱層を物理的に除去し
て得た真珠層とを準備する。 次に、これら真珠層を図
1に示した工程図に従って処理して「粗抽出液」を得
る。 この粗抽出液から真珠タンパク質複合体を、イオ
ン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過によって精製
する。 イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過
の手法は、当該技術分野で周知のものが利用できる。
このようにして精製された本発明の真珠タンパク質複合
体を構成する成分タンパク質をSDSゲル電気泳動で分析
する。
【0012】以下の実施例1に記載したように、真珠由
来真珠層から得たタンパク質複合体は、15kDa、20kDa、
50kDaの分子量を有する三種の成分タンパク質から構成
されていたが、殻体由来真珠層では、50kDaの分子量を
有する成分タンパク質は存在せず、15kDaおよび20kDaの
分子量を有する二種の成分タンパク質が認められてい
る。
【0013】真珠タンパク質複合体によるアラゴナイト
形成能力 本発明の真珠タンパク質複合体によるアラゴナイト形成
能力を検定する。 具体的には、本発明の真珠タンパク
質複合体に炭酸カルシウムの飽和溶液を加え、これを、
一昼夜、室温に保ってアラゴナイトの結晶を出現せしめ
る。 これら出現結晶の形態を、光学顕微鏡で確認した
ところ、殻体由来真珠層から得たタンパク質複合体を用
いた場合には、多数のアラゴナイト微結晶が点在して出
現したのに対して、真珠由来真珠層から得たタンパク質
複合体を添加した場合には、多数のアラゴナイト微結晶
が線状に連なって出現していた。 次いで、これらアラ
ゴナイト微結晶を電子線回折分析と赤外線吸収スペクト
ル分析に供したところ、いずれの分析によっても、これ
らアラゴナイト微結晶が真正のアラゴナイトであること
が同定されている。
【0014】真珠タンパク質複合体と成分タンパク質と
の関係 真珠タンパク質複合体を、尿素処理して、その成分タン
パク質にまで解離せしめ、次いで、各構成タンパク質か
ら真珠タンパク質複合体を再形成する。
【0015】真珠タンパク質複合体にEDTAを加えて解離
処理した後に、遠心分離して脱塩濃縮したものを、ゲル
濾過カラムに適用して、その溶出曲線を取得する。 こ
の溶出曲線と、真珠タンパク質複合体(未処理の複合タ
ンパク質)に関するゲル濾過溶出曲線とを比較する。
つまり、真珠タンパク質複合体は、初期(void volum
e)にピークが形成されて溶出するのに対して、成分タ
ンパク質の溶出は、低分子成分の領域にピークが形成さ
れており、これにより、真珠タンパク質複合体の解離が
確認できる。
【0016】次に、成分タンパク質にカルシウムイオン
(Ca2+)を加えて尿素処理して、真珠タンパク質複合体に
再構築する。 この場合も、成分タンパク質と再構築さ
れた真珠タンパク質複合体それぞれのゲル濾過溶出曲線
を取得して、その溶出ピークの移動具合に基づいて検証
して、真珠タンパク質複合体の再構築が確認できる。
【0017】結論として、以下の実施例3で実証したよ
うに、本発明の真珠タンパク質複合体からその成分タン
パク質への解離と、これら成分タンパク質から本発明の
真珠タンパク質複合体への再構築に至る反応は可逆的に
進行させることができる。
【0018】精製パーリンの特徴 前出のSDSゲル電気泳動法によって検出された15kDaの成
分タンパク質(パーリン)が真珠形成に関与する主要タ
ンパク質であり、その性質の検討を行った。
【0019】このパーリンは、前述したように、真珠タ
ンパク質複合体を一旦精製した後に、それからパーリン
を精製することも可能であるが、後述するように、EDTA
不溶性画分を、0.3M EDTAを加えた8M尿素液で、60℃
で、12時間抽出すれば、パーリン(天然パーリン)のみ
が選択的に大量に抽出できる。
【0020】次に、パーリンを含む粗抽出液をSDSゲル
電気泳動に適用し、形成した15kDaのバンドを切り出し
て電気泳動エリューターで溶出し、そして、SDSと色素
をアセトンで取り除いて精製して変性パーリンを得る。
【0021】そして、カルシウムイオン(Ca2+)結合タン
パク質であるカルモジュリンと、ウシ血清アルブミン(B
SA)とを対照として用いて、これらパーリンとカルシウ
ムイオン(Ca2+)の結合性を調べる。 その結果、以下の
実施例4で実証されたように、天然パーリンでは定性的
乃至半定量的に明瞭なシグナルが検出されており、その
カルシウムイオン(Ca2+)の結合性が確認されている。
なお、変性パーリンではシグナルは検出されず、また、
天然パーリンを含むタンパク質複合体でも、明瞭なシグ
ナルが検出された。
【0022】また、天然パーリンおよび変性パーリン、
そして、それらにカルシウムイオンを添加したものに関
する構造上の変化を、分光蛍光光度計を用いて、蛍光ス
ペクトルの測定を行った。 以下の実施例4によれば、
この分光蛍光光度の測定において、天然パーリンにカル
シウムイオンを結合することで、蛍光強度の低下が認め
られ、その構造的変化が認められている。 このよう
に、パーリンにカルシウムイオンを結合することで、そ
の構造変化を起こし、これが発端となって、20kDaや50k
Daの成分タンパク質と結合して、本発明の真珠複合タン
パク質が形成されるものと考えられる。 このように、
パーリンは、一種のアロステリックタンパク質であると
考えられる。
【0023】精製パーリンの遺伝子工学的生産 当業者であれば、当該技術分野で周知の組み換え技術を
用いて、約750bpのパーリンcDNA(T. Miyashita et a
l., "Complementary DNA Cloning and Characterizatio
n of Pearlin, a New Class of Matrix Protein in the
Nacreous Layerof Oyster Pearls", Marine Biotechno
logy, Springer-Verlag New York, pp.120-129 (200
0)、および T. Samata et al., "A new matrix protein
family related to the nacreous layer formation o
f Pinctada fucata", FEBS Letters462, pp. 225-229
(1999)を参照されたい)を適宜のプラスミドのクローニ
ングサイトに挿入したものを作成し、そして、これで形
質転換した大腸菌にパーリンを産生せしめることができ
る。
【0024】pK20(分子量20kDaの成分タンパク質)の特
成分タンパク質の一つであるpK20について、検討を行っ
た。 pK20は、図1に記載の工程に従って得た「粗抽出
液」を、12%または15% SDS-PAGEにかけて、前出の変
性パーリンを得る場合と同様の手法に従って、純粋に得
ることができる。
【0025】このpK20の標品を、シアン化臭素(BrCN)で
切断し、ペプチドマップを作成して、そのアミノ酸配列
を解析する。 その結果、それらアミノ酸配列には、ヒ
トとマウスのケラチンと相同な配列が認められ、これよ
り、pK20は、パールケラチンの一種であると考えられ
る。
【0026】
【実施例】以下に、本発明を実施例に沿ってさらに具体
的に説明するが、本発明がこれら実施例の開示に基づい
て限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【0027】実施例1:真珠タンパク質複合体の抽出お
よび精製 真珠タンパク質複合体の抽出、濃縮および精製を、図1
に概略的に示した手順に従って行った。
【0028】真珠タンパク質を得るための出発材料とし
て、次の2つの材料を準備した。 [真珠由来真珠層]粗真珠(屑真珠)の真珠層のみを核
から剥がして得た真珠層。 [殻体由来真珠層]歯科用グラインダー(SHOFU、Tas-35
S)を用いて、アコヤ貝の殻体(貝殻)から稜柱層を除去
して得た真珠層。
【0029】これら各真珠層を、粉砕機(Wonder Blend
er、輸入発売元:大阪ケミカル株式会社)を用いて粉砕
して、粉末状にしたもの約20g(必要に応じて倍量の約
40g)を出発材料とした。
【0030】図1の工程図での8M尿素抽出物を30,000
gで20分間遠心分離して得た上清を、粗抽出液とした。
この粗抽出液から、以下に述べる二つの精製法のいず
れかに従って、本発明の真珠タンパク質複合体を得た。
【0031】[イオン交換クロマトグラフィー]粗抽出
液から真珠タンパク質複合体を精製すべく、陰イオン交
換体であるDEAEsephacel (Pharmacia社)の約1ml相当
の樹脂を充填したカラムを30mM Tris-HCl(pH 8.0)で平
衡化させ、粗抽出液を流してタンパク質を吸着させた。
【0032】溶出は、30mM Tris-HCl (pH 8.0)に、0.2
M、0.4M、0.6Mと漸次食塩濃度を増量させた溶液を、カ
ラムに流すことで段階的な溶出を試みた。 図2に記載
の0.2Mの濃度の塩化ナトリウム(NaCl)で、大部分の複合
体が溶出された。
【0033】[ゲル濾過]粗抽出液から真珠タンパク質
複合体を精製するために、ゲル濾過(SephacrylS-300H
R、Pharmacia Biotech社)を用いた。 上述の粗抽出液
の5mlを、0.2M NaClを含む30mM Tris-HClを展開液とし
てカラムに流した。 図3のゲル濾過パターンに示した
ように、最も早い流出液(void volume)部分に本発明の
複合体が溶出し、その後に、高分子量の複合体から一定
の距離を置いて低分子量のタンパク質が溶出された。
【0034】真珠由来真珠層または殻体由来真珠層のい
ずれにも、上記二つの精製法のいずれによっても、ほぼ
同様のパターンが得られた。 また、この二つの精製法
を組み合わせることで、複合体の精製精度が向上した。
【0035】次に、本発明の真珠タンパク質複合体に関
して、以下の方法によって、真珠タンパク質複合体を構
成する成分タンパク質の分析を行った。
【0036】[SDSゲル電気泳動]精製された真珠タ
ンパク質複合体を、SDSゲル電気泳動で展開して、そこ
に含まれるタンパク質の分子種を検定した。 図4に示
すように、真珠由来真珠層から得たタンパク質複合体
(レーンA)は、主として、15kDaのパーリンに加えて、p
K20(20kDa)とpK50(50kDa)の三つの成分タンパク質か
らなることが判明した。
【0037】これに対して、殻体由来真珠層から得たタ
ンパク質複合体(レーンB)は、主として15kDaのパーリ
ンとpK20の二つの成分タンパク質からなることが明らか
となった。
【0038】実施例2:真珠タンパク質複合体による炭
酸カルシウムの結晶化 炭酸カルシウム飽和溶液(50mM Mg2+を含む)1mlに、
粗抽出液またはタンパク質複合体(0.2mgタンパク質/m
l)の5μlを加えて、プラスチック製の小さなシャーレ
またはウェルに注ぎ、一昼夜、室温に保って結晶を出現
せしめた。 その時に出現した結晶の光学顕微鏡写真
を、図5および6に示した。 また、対照として、マグ
ネシウムイオン(Mg2+)無添加のもの、あるいは真珠タン
パク質の代わりにウシ血清アルブミン(Bovine Serum Al
bumin:BSA)を加えたものなどを準備したが、方解石結晶
が若干認められるに過ぎず、アラゴナイト(Spherulite
s)の出現は皆無であった。
【0039】そして、殻体由来真珠層から得たタンパク
質複合体を添加した場合には、多数のアラゴナイト微結
晶が点在して出現した(図5)。 これに対して、真珠
由来真珠層から得たタンパク質複合体を添加した場合に
は、多数のアラゴナイト微結晶が線状に連なって出現し
た(図6)。
【0040】念のために、その他の対照試料として、ナ
クレイン、パーリンなどのその他の真珠タンパク質をそ
れ単独で加えてもみたが、どの場合でも、アラゴナイト
の出現は認められなかった。
【0041】[アラゴナイト結晶の電子線回折分析]殻
体由来真珠層および真珠由来真珠層から得たタンパク質
複合体が誘導したアラゴナイトの微結晶に関して、電子
線回折(JEOL-200CX電子顕微鏡、加速電圧200kV)を行
った。 その結果、図7に示したように、殻体由来真珠
層および真珠由来真珠層から得た複合タンパク質が誘導
した微結晶のいずれもが、アラゴナイト(アラレ石)の
結晶であることが確認された。
【0042】[アラゴナイト結晶の赤外線吸収スペクト
ル分析]殻体由来真珠層および真珠由来真珠層から得た
タンパク質複合体によって誘導された炭酸カルシウム(C
aCO3)の結晶を遠心分離によって回収し、これを臭化カ
リウム(KBr)と混合して打錠したものを、赤外光学分光
計(FTIR-8200)に適用して解析を行った。 殻体由来
真珠層から得たタンパク質複合体での分析結果を図8
に、また、真珠由来真珠層から得たタンパク質複合体で
の分析結果を図9に示した。
【0043】図8および9に記載の結果から明らかなよ
うに、殻体由来真珠層および真珠由来真珠層から得た複
合タンパク質によって誘導された結晶は、856.3にメイ
ンピークが現れ、この結晶がアラゴナイトであることが
明らかとなった。
【0044】実施例3:真珠タンパク質複合体の解離と
再構築 真珠タンパク質複合体の基本的な性質を解明するため
に、以下の関係式に表した反応を進めて、まず、真珠タ
ンパク質複合体を、その構成タンパク質にまで解離せし
め、次いで、各構成タンパク質から真珠タンパク質複合
体を再形成した。
【0045】
【化1】
【0046】実験には、HPLCのゲル濾過装置を用いた。
具体的には、HPLCとして、SC-8020(コントローラ
ー)、CCPM-II(ポンプ)、UV-8010(検出器)を具備し
た東ソー(TOSOH)社製のHPLCが、また、ゲル濾過カラム
として、TSK gel G3000 SWXL、内径7.8mm×長さ30cmを
用いた。 その結果を、図10および図11に示した。
【0047】真珠タンパク質複合体の解離 図10(a)は、実施例1のゲル濾過法に従って真珠由来真
珠層から精製した真珠タンパク質複合体(未処理の複合
タンパク質)が、初期に流出してピークを示すとの対照
試験の結果を示している。
【0048】次に、4M尿素、25mM EDTA、30mM Tris-H
Cl(pH 8.0)の存在下に、この真珠タンパク質複合体を、
60℃で、12時間かけて解離処理した後に、VIVASPIN6(1
0,000MWCOSartorius社製)を用いて遠心分離して脱塩濃
縮したものを、前出のゲル濾過カラムに適用した結果を
図10(b)に示した。 図10(b)から明らかなように、図10
(a)で形成されたピークは消失して、低分子成分に解離
していた。
【0049】真珠タンパク質複合体の再構築 成分タンパク質から真珠タンパク質複合体を再構築する
ために、成分タンパク質分画を、4M尿素、25mM CaC
l2、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の存在下で、60℃で、5時
間かけて処理したものを、前出のゲル濾過カラムに適用
した結果を、図11(a)に示した。
【0050】また、成分タンパク質分画を、4M尿素、
25mM CaCl2、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の存在下で、60℃
で、12時間かけて再構築処理した後に除冷したものを、
前出のゲル濾過カラムに適用した結果を図11(b)に示し
た。
【0051】図11(a)および(b)のグラフから、成分タン
パク質の減少に伴い、真珠タンパク質複合体の再構築が
進行していることが明らかとなった。
【0052】このことは、EDTAを添加することで、カル
シウムイオン(Ca2+)を除去すれば、真珠タンパク質複合
体の解離が進み、逆に、カルシウムイオン(Ca2+)の存在
下で加温すれば、成分タンパク質から真珠タンパク質複
合体への再構築が進行していることを指し示している。
また、高濃度の尿素の存在と、60℃への加温は、この
可逆反応の速度を速める効果がある。
【0053】ところで、図11(b)に示したゲル濾過カラ
ムにおいて初期に溶出したタンパク質画分をフラクショ
ンコレクターによって集めて脱塩濃縮したものに関し
て、実施例2に記載の結晶化手順に従って、それによる
アラゴナイトの結晶化の誘導の可能性を検討した。 そ
の結果、再構築した真珠タンパク質複合体は、解離以前
の構成タンパク質のものと全く同様にアラゴナイトの結
晶化を誘導することが判明した。 このことから、構造
上および機能上の双方の観点からして、当初の真珠タン
パク質複合体の再構築が可能であることが明らかとなっ
た。
【0054】実施例4:タンパク質複合体を構成する成
分タンパク質の検討パーリンの抽出・精製方法]実施例1に記載のSDSゲ
ル電気泳動法によって、真珠タンパク質複合体の組成に
おいてパーリンが主要タンパク質であることが明らかと
なった。 そこで、このパーリンに関して性質の検討を
行った。
【0055】パーリンの抽出・精製方法として、図1に
記載したような、複合体を一旦精製した後に、それから
パーリンを精製することも可能である。 しかしなが
ら、パーリンの直接精製を目指して、工夫を凝らしたと
ころ、EDTA不溶性画分を、0.3MEDTAを加えた8M尿素液
で、60℃で、12時間抽出すれば、パーリンのみが選択的
に大量に抽出できることが明らかとなった(図12)。
【0056】このようにして得た粗抽出液を、30mM Tri
s-HCl(pH 8.0)で平衡化したDEAESephacelのイオン交
換クロマトカラムに適用すると、0.6〜0.8M塩化ナトリ
ウム(NaCl)でパーリンが溶出された。 この時の精製パ
ーリンの純度は、約90%であった。
【0057】この精製方法は、殻体由来真珠層および真
珠由来真珠層のいずれから得た複合タンパク質でも、同
様の結果が得られた。 このようにして得たパーリン標
品を、天然パーリン(native perlin)と称する。
【0058】次に、EDTAと尿素で抽出した粗抽出液を15
%アクリルアミドゲルで、SDSゲル電気泳動し、15kDaの
バンドをカッターナイフで切り出し、電気泳動エリュー
ター(Bio-Rad社、モデル422電気泳動エリューター)を
使用して溶出し、SDSと色素をアセトンで取り除いて精
製したパーリン標品を、変性パーリン(denatured perli
n)と称する。
【0059】[パーリンのカルシウムイオン結合性]パ
ーリンとカルシウムイオン(Ca2+)の結合性を調べるため
の実験条件として、0.1〜1.0μg/μlの濃度のタンパク
質の標品を用意して、これらをニトロセルロース膜(商
品名:Nitro Plus、MSI、ウェストボー、マサチューセ
ッツ州)に1μlずつスポットした。
【0060】カルモジュリンは、カルシウムイオン(Ca
2+)結合タンパク質であり、ポジティブシグナルを示す
正の対照として用いた。 また、BSAは、ネガティブシ
グナルを示す負の対照として用いた。
【0061】試料を所定位置にスポットした後にニトロ
セルロース膜をよく乾かし、放射性同位元素45Ca(0.185
-1.85Gbq/mg Ca、Amersham Pharmacia Biotech)が50μl
入った溶液(60mM KCl、5mM MgCl2、10mM イミダゾー
ル−HCl (pH 6.8))100mlに10分間浸した。 それを水
洗および乾燥して、イメージングプレートに定着させ、
Bas2500(フジフィルム)で現像した結果を図13に示し
た。 その結果、天然パーリンでは定性的乃至半定量的
に明瞭なシグナルが検出されたのに対して、変性パーリ
ンではシグナルは検出されなかった。 また、その他の
天然パーリンを含むタンパク質複合体では、明瞭なシグ
ナルが検出された。
【0062】しかしながら、パーリン以外の分子量20,0
00のタンパク質(pearl keratin)や、分子量50,000の
タンパク質がカルシウムイオン結合性を有するか否かに
ついては、本実施例では明確な判断はできなかった。
【0063】[パーリンの構造的変化]天然パーリンと
変性パーリンを準備した。 これらタンパク質を、0.02
mg/mlの濃度で、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の溶液として用
いた。
【0064】分光蛍光光度計(島津製作所 RF-5300PC)
を用いて、励起波長280nm、蛍光波長範囲300〜450nmの
条件で蛍光スペクトルの測定を行った。
【0065】図14において、ラインAは天然パーリン、
ラインBは天然パーリンにカルシウムイオン添加(最終
濃度10mM)したもの、ラインCは変性パーリン、そし
て、ラインDは変性パーリンにカルシウムイオン添加
(最終濃度10mM)したものの結果が、それぞれ示されて
いる。
【0066】図14に示した結果によれば、天然パーリン
は、カルシウムイオンを結合することで、231.3の蛍光
強度が182.1にまで低下し、構造的変化を招いているこ
とが明らかとなった。
【0067】同様な構造的変化は、カルシウムイオンに
特異的でなく、これまでに試みたすべての金属イオン
(Mg2+、Sn2+、K+、Na+など)においても同様に認めら
れた。
【0068】以上のことから、パーリンはカルシウムイ
オンを結合することで、その構造変化を起こし、これが
引き金となって、複合タンパク質のタンパク質成分であ
るpK20やpK50と結合して、ヘテロポリマーである複合タ
ンパク質の形成に導くものと考えられる。 このように
考えると、パーリンは一種のアロステリックタンパク質
である可能性が考えられる。
【0069】[パーリンの遺伝子工学的生産]パーリン
のcDNA遺伝子の塩基配列については、すでに本発明者の
グループ(Miyashita et al., 前出)および佐俣のグル
ープ(Samata et al., 前出)によって解明されて、発
表されている。
【0070】このパーリンcDNA(約750bp)を、図15に
示したように、SalI-NotI断片として、pGEXC1517プラス
ミドのクローニングサイトに挿入したものを作成し、こ
れを大腸菌DH5αに形質転換した。 このようにして得
られた菌を、LB培地で培養し、0.1M IPTGを1/1000の量
だけ加えて(最終濃度10-4M)、パーリンタンパク質の
産生を誘導し、5時間後に集菌した。 集菌した菌は、
cDNAを持たない対照の菌と比較して、35kDaのタンパク
質が産生されていることがSDS-PAGEにより確認された。
パーリンcDNAが、グルタチオン-S-トランスフェラー
ゼ(GST)の遺伝子の上流に接して挿入されているため、
パーリン(15kDa)とGST(26kDa)の融合タンパク質(41kDa)
の産生が当然期待されるが、実際に検出された融合タン
パク質は35kDaであった。 これは、大腸菌のプロテア
ーゼによって部分分解されたことによるものと考えられ
る。
【0071】35kDaの融合タンパク質を集めて、プロテ
アーゼ・トロンビン処理してパーリンからGSTを切断
し、GSTをグルタチオンセファローズ4Bカラムで分離を
試みた。
【0072】未だこの分離は完全ではないが、遺伝子工
学的に作成したパーリン(GSTを含有する)は、先に述
べた通り、放射性同位元素45Caによる結合試験での天然
パーリンと同様に、カルシウムイオンを結合する能力を
有するという結果が得られている。
【0073】今後、パールケラチンなども人工的に遺伝
子工学的に大量生産が可能となれば、これらを使って、
完全に人工的な手法によって、本発明のタンパク質複合
体が得られるものと思われる。
【0074】[pK20(分子量20kDaの成分タンパク質)の
検討]図1に記載の工程に従って真珠タンパク質の分画
を行い、EDTA不溶性分画から8M尿素で可溶化した粗抽
出液を、12%または15% SDS-PAGEに適用して、前出の
変性パーリンを得る場合と同様の手法(つまり、タンパ
ク質のバンドの切り出しと、電気泳動溶出)に従って、
pK20を純粋に得ることができる。
【0075】このpK20の標品を、BrCNで切断し、ペプチ
ドマップを作成して、そのアミノ酸配列を解析した。
その結果、それらアミノ酸配列には、ヒトとマウスのケ
ラチンと相同な配列が存在することが明らかとなった
(配列番号:1および2を参照)。 このことから、pK
20は、パールケラチンの一種であると判断した。
【0076】これらの配列からDNAプライマーを作成
し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によってcDNAの断片
を得ること、pK20のcDNAクローニング、そして、cDNAの
全塩基配列とアミノ酸配列が今後決定されるであろう。
【0077】配列表のフリーテキスト 配列番号:1の245〜255位は、ヒトのケラチンと相同で
ある。
【0078】配列番号:1の286〜294位は、ヒトのケラ
チンと相同である。
【0079】配列番号:1の296〜309位は、ヒトのケラ
チンと相同である。
【0080】配列番号:2の297〜307位は、マウスのケ
ラチンと相同である。
【0081】
【発明の効果】このように、本発明によると、人工的に
真珠タンパク質を形成する前途が開かれるのである。
そして、本発明を活用することで、自然界に大量に存在
するアコヤ貝をはじめ、アワビやサザエなどの殻体(貝
殻)を材料として、それから真珠タンパク質複合体を抽
出して、 真珠養殖の際に大量に排出される屑真珠の
真珠層のまきを増やして、真珠の商品価値を高めるこ
と、 真珠表面のみならず、浴槽や車体の表面への真
珠層のコーティングを容易ならしめて真珠の用途拡大を
図ること、そして、 本発明の真珠タンパク質複合体
の構成タンパク質を、大腸菌などの宿主細胞にて遺伝子
工学的に大量生産して、真珠タンパク質複合体の工業的
生産への途が期待できるなどの、優れた効果を奏するも
のである。
【0082】また、本発明によれば、炭酸カルシウムの
結晶を、熱力学的に最も安定な方解石(Calcite)ではな
く、タンパク質複合体を基板として、アラゴナイトの結
晶化分子を配位させることに成功したものである。 こ
のことは、タンパク質を利用することで、分子の配位を
左右できること、すなわち、まさしくナノテクノロジー
への応用が期待できると言える。
【0083】さらに、本発明によれば、タンパク質複合
体を、EDTAを使用してその成分タンパク質にまで解離せ
しめ、そして、成分タンパク質分画だけを回収してタン
パク質複合体の再構築実験に供しているので、タンパク
質複合体にはカルシウムは皆無であることになる。 こ
のような状況下に再びカルシウムイオン(Ca2+)を再導入
した場合に、タンパク質複合体が再構築され、それがア
ラゴナイトの結晶化を誘導する。つまり、アラゴナイト
の結晶からアラゴナイトの結晶を得るのではなく、タン
パク質複合体(要するに無結晶状態)からアラゴナイト
の結晶が誘導されるのであって、このことはアラゴナイ
ト結晶化の原理に関する全く新規の知見である。また、
この一連の過程は、真珠層の構築の重要な一工程に他な
らない。
【0084】
【配列表】 S E Q U E N C E L I S T I N G <110> MATSUSHIRO, Aizo <120> Pearl Protein Complex and Producing Method of the Same <130> 2001PA0188 <160> 2 <210> 1 <211> 600 <212> PRT <220> <222> (245)...(255) <223> This is homogenous to the human keratin. <220> <222> (286)...(294) <223> This is homogenous to the human keratin. <220> <222> (296)...(301) <223> This is homogenous to the human keratin. <400> 1 Met Ser Cys Arg Gln Phe Ser Ser Ser Tyr Lys Thr Ser Gly Gly Gly 1 5 10 15 Gly Gly Gly Gly Lys Gly Ser Gly Gly Ser Ile Arg Ser Ser Tyr Ser 20 25 30 Arg Phe Ser Ser Ser Gly Gly Arg Gly Gly Gly Gly Arg Phe Ser Ser 35 40 45 Ser Ser Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Ser Arg Val Cys Gly Arg Gly Gly 50 55 60 Gly Gly Ser Phe Gly Tyr Ser Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Phe 65 70 75 80 Ser Ala Ser Ser Lys Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Ser Arg Gly Phe 85 90 95 Gly Gly Ala Ser Gly Gly Gly Tyr Ser Ser Ser Gly Gly Phe Gly Gly 100 105 110 Gly Phe Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Tyr Gly Ser 115 120 125 Gly Phe Gly Gly Lys Gly Gly Phe Gly Gly Gly Ala Gly Gly Gly Asp 130 135 140 Gly Gly Ile Lys Thr Ala Asn Glu Lys Ser Thr Met Gln Glu Lys Asn 145 150 155 160 Ser Arg Lys Ala Ser Tyr Lys Asp Lys Val Gln Ala Lys Glu Glu Ala 165 170 175 Asn Asn Asp Lys Glu Asn Lys Ile Gln Asp Trp Tyr Asp Lys Lys Gly 180 185 190 Pro Ala Ala Ile Gln Lys Asn Tyr Ser Pro Tyr Tyr Asn Thr Ile Asp 195 200 205 Asp Lys Lys Asp Gln Ile Val Asp Lys Thr Val Gly Asn Asn Lys Thr 210 215 220 Lys Lys Asp Ile Asp Asn Thr Arg Met Thr Lys Asp Asp Phe Arg Ile 225 230 235 240 Lys Phe Glu Met Glu Gln Asn Lys Arg Gln Gly Val Asp Ala Asp Ile 245 250 255 Asn Gly Lys Arg Gln Val Lys Asp Asn Lys Thr Met Glu Lys Ser Asp 260 265 270 Lys Glu Met Gln Tyr Glu Thr Lys Gln Glu Glu Lys Met Ala Lys Lys 275 280 285 Lys Asn His Lys Glu Glu Met Ser Gln Lys Thr Gly Gln Asn Ser Gly 290 295 300 Asp Val Asn Val Glu Ile Asn Val Ala Pro Gly Lys Asp Lys Thr Lys 305 310 315 320 Thr Lys Asn Asp Met Arg Gln Glu Tyr Glu Gln Lys Ile Ala Lys Asn 325 330 335 Arg Lys Asp Ile Glu Asn Gln Tyr Glu Thr Gln Ile Thr Gln Ile Glu 340 345 350 His Glu Val Ser Ser Ser Gly Gln Glu Val Gln Ser Ser Ala Lys Glu 355 360 365 Val Thr Gln Lys Arg His Gly Val Gln Glu Cys Glu Ile Glu Lys Gln 370 375 380 Ser Gln Lys Ser Lys Lys Ala Ala Lys Glu Lys Ser Lys Glu Asp Thr 385 390 395 400 Lys Asn Arg Tyr Cys Gly Gln Lys Gln Met Ile Gln Glu Gln Ile Ser 405 410 415 Asn Lys Glu Ala Gln Ile Thr Asp Val Arg Gln Glu Ile Glu Cys Gln 420 425 430 Asn Gln Glu Tyr Ser Lys Lys Lys Ser Ile Lys Met Arg Lys Glu Lys 435 440 445 Glu Ile Glu Thr Tyr His Asn Lys Lys Glu Gly Gly Gln Glu Asp Phe 450 455 460 Glu Ser Ser Gly Ala Gly Lys Ile Gly Lys Gly Gly Arg Gly Gly Ser 465 470 475 480 Gly Gly Ser Tyr Gly Arg Gly Ser Arg Gly Gly Ser Gly Gly Ser Tyr 485 490 495 Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Ser Arg 500 505 510 Gly Gly Ser Gly Gly Ser Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Ser Gly Gly Gly 515 520 525 Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly His Ser Gly Gly 530 535 540 Ser Gly Gly Gly His Ser Gly Gly Ser Gly Gly Asn Tyr Gly Gly Gly 545 550 555 560 Ser Gly Ser Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly 565 570 575 Ser Arg Gly Gly Ser Gly Gly Ser His Gly Gly Gly Ser Gly Phe Gly 580 585 590 Gly Glu Ser Gly Gly Ser Tyr Gly 595 600 <210> 2 <211> 334 <212> PRT <220> <222> (297)...(307) <223> This is homogenous to the mouse keratin. <400> 2 Met Ser Val Arg Tyr Ser Ser Ser Ser Lys Gln Phe Ser Ser Ser Arg 1 5 10 15 Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser Val Arg Val Ser Ser 20 25 30 Thr Arg Gly Ser Lys Gly Gly Gly Tyr Ser Ser Gly Gly Phe Ser Gly 35 40 45 Gly Ser Phe Ser Arg Gly Ser Ser Gly Gly Gly Cys Phe Gly Gly Ser 50 55 60 Ser Gly Gly Tyr Gly Gly Phe Gly Gly Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly 65 70 75 80 Tyr Gly Gly Ser Ser Phe Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Ser Ser Phe Gly 85 90 95 Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly Ser Phe Gly 100 105 110 Gly Gly Ser Tyr Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Gly Phe Gly Gly Asp 115 120 125 Gly Gly Ser Lys Lys Ser Gly Asn Glu Lys Val Thr Met Gln Asn Lys 130 135 140 Asn Asp Arg Lys Ala Ser Tyr Met Asp Lys Val Arg Ala Lys Glu Glu 145 150 155 160 Ser Asn Tyr Glu Lys Glu Gly Lys Ile Lys Glu Trp Tyr Glu Lys His 165 170 175 Gly Asn Ser Ser Gln Arg Glu Pro Arg Asp Tyr Ser Lys Tyr Tyr Lys 180 185 190 Thr Ile Glu Asp Lys Lys Gly Gln Ile Lys Thr Lys Thr Thr Asp Asn 195 200 205 Ala Asn Val Lys Lys Gln Ile Asp Asn Ala Arg Lys Ala Ala Asp Asp 210 215 220 Phe Arg Lys Lys Tyr Glu Asn Glu Val Thr Lys Arg Gln Ser Val Glu 225 230 235 240 Ala Asp Ile Asn Gly Lys Arg Arg Val Lys Asp Glu Lys Thr Lys Ser 245 250 255 Lys Ser Asp Lys Glu Met Gln Ile Glu Ser Lys Asn Glu Glu Lys Ala 260 265 270 Tyr Lys Lys Lys Asn His Glu Glu Glu Met Arg Asp Lys Gln Asn Val 275 280 285 Ser Thr Gly Asp Val Asn Val Glu Met Asn Ala Ala Pro Gly Val Asp 290 295 300 Lys Thr Gln Lys Lys Asn Asn Met Arg Asn Gln Tyr Glu Gln Lys Ala 305 310 315 320 Glu Lys Asn Arg Lys Asp Ala Glu Glu Trp Phe Asn Gln Lys 325 330
【図面の簡単な説明】
【図1】 真珠タンパク質複合体の抽出および精製のた
めの概略を示した工程図である。
【図2】 真珠タンパク質複合体のイオン交換クロマト
グラフィーによる溶出曲線を示すグラフである。
【図3】 真珠タンパク質複合体のゲル濾過による溶出
曲線を示すグラフである。
【図4】 SDS電気泳動による真珠タンパク質複合体の
構成タンパク質成分の分析結果を示す泳動図である。
【図5】 殻体の真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の光学顕微鏡写真であ
る。
【図6】 真珠の真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の光学顕微鏡写真であ
る。
【図7】 真珠タンパク質複合体から出現したアラゴナ
イト微結晶の電子線解析の写真である。
【図8】 殻体真珠層由来の真珠タンパク質複合体から
出現したアラゴナイト微結晶の赤外線吸収スペクトルを
示すグラフである。
【図9】 真珠珠真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の赤外線吸収スペクトル
を示すグラフである。
【図10】 真珠タンパク質複合体の解離を表すHPLCゲ
ル濾過による溶出曲線を示すグラフである。
【図11】 真珠タンパク質複合体の再構築を表すHPLC
ゲル濾過による溶出曲線を示すグラフである。
【図12】 SDS電気泳動による精製パーリンの分析結
果を示す泳動図である。
【図13】 精製パーリンなどのカルシウムイオン結合
性を示す図である。
【図14】 カルシウムイオンの結合による真珠タンパ
ク質複合体の構造的変化を表すグラフである。
【図15】 プラスミドベクターPGEX4T-2の説明図であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年12月13日(2001.12.
13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 真珠タンパク質複合体およびその
利用
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真珠を構成するタ
ンパク質、特に、天然真珠の真珠層の構築に関与するタ
ンパク質の複合体(真珠タンパク質複合体)と、その利
用に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】真珠
は、生物活動を利用して得られる唯一の宝石である。
真珠生産の現場では、アコヤ貝の殻体の一部が凝結した
真珠の珠を形成させる技術として、海中に吊下げた養殖
篭の中で1〜2年の歳月にわたってアコヤ貝を養殖する
という、自然環境に依存した真珠養殖技術が、1世紀以
上にわたって、今日まで厳然として主流をなしている。
そして、これら従来の真珠の養殖技術での不安定要因
を排除し、工業的に真珠を量産するための様々な試みが
これまでに行われている。
【0003】ところで、真珠層は、アラレ石(アラゴナ
イト)の結晶が層状構造をなし、コンキオリンと呼ばれ
る層間有機基質(層間タンパク質)が、アラレ石の層間
を埋めるバインダーのように存在している。 この層間
タンパク質の成分については、従来から、水溶性の物質
(WSM:Water Soluble Organic Matrix)と水不溶性の物
質(WISM:Water Insoluble Organic Matrix)の二つにつ
いて、個別に研究が続けられてきたが、未だ不明な部分
が多いままである。
【0004】このような状況下にあって、本発明者が先
に行ったナクレインの研究は、主要タンパク質の一つの
構造と機能を初めて明らかにしたものである。 すなわ
ち、ナクレインが、層間タンパク質でのWSMの主要構成
要素に該当し、かつ炭酸脱水酵素の活性を有する重要な
機能タンパク質であることを見出すに至っている(特願
平8−533949号:WO96/35786)。
【0005】このナクレインによってもたらされる炭酸
は、カルシウムイオン(Ca2+)と結合して炭酸カルシウム
を生成するが、真珠層において、この炭酸カルシウムが
結晶化してアラゴナイトに至る現象の作用機構の解明
は、結晶学などの学術的観点のみならず、真珠の養殖や
人工生産に向けた技術的観点からしても、当該技術分野
において最大の課題として認識されている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題に鑑
みて発明されたものであって、本発明者が真珠タンパク
質についてさらに詳細に探求を行った末に得られた知
見、つまり、新種のタンパク質に基づくものであり、ま
た、これら新種のタンパク質を利用して真珠層を人工的
に得ることも意図している
【0007】すなわち、本発明の要旨とするところは、
真珠タンパク質を構成する成分タンパク質、具体的に
は、SDSゲル電気泳動によって決定された15kDa、20kDa
および50kDaの分子量を有する三種の成分タンパク質の
内、少なくとも二種の成分タンパク質を含む真珠タンパ
ク質複合体と、これを利用したアラゴナイトの結晶化を
経て真珠層を製造する方法にある。
【0008】また、本発明者は、尿素を含む水溶液を真
珠層の水不溶性の層間タンパク質に作用させ、次いで、
この水溶液を加温して層間タンパク質を可溶化すること
で真珠タンパク質複合体を取得し、これを基板としてア
ラゴナイトの結晶化に成功したのである。 そして、こ
の知見を踏まえて、真珠複合タンパク質上にアラゴナイ
トの結晶を形成させることで、真珠層の構成最小単位の
構築にも成功したのである。 後述するように、所望の
タンパク質を変性させずに天然の形態で取得する上で、
約4M〜約8Mの濃度範囲に調整された尿素を含む水溶
液を用いることが好ましい
【0009】このように、真珠層に存在する水不溶性物
質を高濃度の尿素で可溶化することで、真珠タンパク質
複合体の溶液の調製に成功し、なおかつ、これら水不溶
性物質が、真珠層を構築する上で最も重要なアラゴナイ
トの結晶化を誘導する「構造的機能的単位」であること
が明らかになったのである。 この現象は、生体内での
ヘモグロビンのような酵素やリボゾームのように、ある
タンパク質が他のタンパク質分子種と会合してタンパク
質複合体となって一つの「構造的にも機能的にも一つに
まとまった単位集団」を形成することと似ている。
【0010】また、本発明の他の態様によれば、尿素を
含む水溶液を真珠タンパク質複合体に作用させて可溶化
および解離する工程を含む、真珠タンパク質の成分タン
パク質の製造方法が提供される。 この製造方法にあっ
ても、後述するように、所望のタンパク質を変性させず
に天然の形態で取得する上で、約4M〜約8Mの濃度範
囲に調整された尿素を含む水溶液を用いることが好まし
【0011】また、本発明のさらに他の態様によれば、
尿素を含む水溶液を真珠タンパク質の成分タンパク質に
作用させ、次いで、この水溶液を加温して成分タンパク
質を可溶化することによって、真珠タンパク質複合体を
製造(再構築)する方法が提供される。 この製造方法
でも、後述するように、所望のタンパク質を変性させず
に天然の形態で取得する上で、約4M〜約8Mの濃度範
囲に調整された尿素を含む水溶液を用いることが好まし
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。
【0013】真珠タンパク質複合体の抽出および精製 天然真珠として、真珠の真珠層のみを核から剥がして得
た真珠層と、真珠貝の殻体から稜柱層を物理的に除去し
て得た真珠層とを準備する。 次に、これら真珠層を図
1に示した工程図に従って処理して「粗抽出液」を得
る。 この粗抽出液から真珠タンパク質複合体を、イオ
ン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過によって精製
する。 イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過
の手法は、当該技術分野で周知のものが利用できる。
このようにして精製された本発明の真珠タンパク質複合
体を構成する成分タンパク質をSDSゲル電気泳動で分析
する。
【0014】以下の実施例1に記載したように、真珠由
来真珠層から得たタンパク質複合体は、15kDa、20kDa、
50kDaの分子量を有する三種の成分タンパク質から構成
されていたが、殻体由来真珠層では、50kDaの分子量を
有する成分タンパク質は存在せず、15kDaおよび20kDaの
分子量を有する二種の成分タンパク質が認められてい
る。
【0015】真珠タンパク質複合体によるアラゴナイト
形成能力 本発明の真珠タンパク質複合体によるアラゴナイト形成
能力を検定する。 具体的には、本発明の真珠タンパク
質複合体に炭酸カルシウムの飽和溶液を加え、これを、
一昼夜、室温に保ってアラゴナイトの結晶を出現せしめ
る。 これら出現結晶の形態を、光学顕微鏡で確認した
ところ、殻体由来真珠層から得たタンパク質複合体を用
いた場合には、多数のアラゴナイト微結晶が点在して出
現したのに対して、真珠由来真珠層から得たタンパク質
複合体を添加した場合には、多数のアラゴナイト微結晶
が線状に連なって出現していた。 次いで、これらアラ
ゴナイト微結晶を電子線回折分析と赤外線吸収スペクト
ル分析に供したところ、いずれの分析によっても、これ
らアラゴナイト微結晶が真正のアラゴナイトであること
が同定されている。
【0016】真珠タンパク質複合体と成分タンパク質と
の関係 真珠タンパク質複合体を、尿素処理して、その成分タン
パク質にまで解離せしめ、次いで、各成分タンパク質か
ら真珠タンパク質複合体を再形成する。
【0017】真珠タンパク質複合体にEDTAを加えて解離
処理した後に、遠心分離して脱塩濃縮したものを、ゲル
濾過カラムに適用して、その溶出曲線を取得する。 こ
の溶出曲線と、真珠タンパク質複合体(未処理の複合タ
ンパク質)に関するゲル濾過溶出曲線とを比較する。
つまり、真珠タンパク質複合体は、初期(void volum
e)にピークが形成されて溶出するのに対して、成分タ
ンパク質の溶出は、低分子成分の領域にピークが形成さ
れており、これにより、真珠タンパク質複合体の解離が
確認できる。
【0018】次に、成分タンパク質にカルシウムイオン
(Ca2+)を加えて尿素処理して、真珠タンパク質複合体に
再構築する。 この場合も、成分タンパク質と再構築さ
れた真珠タンパク質複合体それぞれのゲル濾過溶出曲線
を取得して、その溶出ピークの移動具合に基づいて検証
して、真珠タンパク質複合体の再構築が確認できる。
【0019】結論として、以下の実施例3で実証したよ
うに、本発明の真珠タンパク質複合体からその成分タン
パク質への解離と、これら成分タンパク質から本発明の
真珠タンパク質複合体への再構築に至る反応は高濃度の
尿素の存在下で可逆的に進行させることができる。
【0020】精製パーリンの特徴 前出のSDSゲル電気泳動法によって検出された15kDaの成
分タンパク質(パーリン)が真珠形成に関与する主要タ
ンパク質であり、その性質の検討を行った。
【0021】このパーリンは、前述したように、真珠タ
ンパク質複合体を一旦精製した後に、それからパーリン
を精製することも可能であるが、後述するように、EDTA
不溶性画分を、0.3M EDTAを加えた8M尿素液で、60℃
で、12時間抽出すれば、パーリン(天然パーリン)のみ
が選択的に大量に抽出できる。
【0022】次に、パーリンを含む粗抽出液をSDSゲル
電気泳動に適用し、形成した15kDaのバンドを切り出し
て電気泳動エリューターで溶出し、そして、SDSと色素
をアセトンで取り除いて精製して変性パーリンを得る。
【0023】そして、カルシウムイオン(Ca2+)結合タン
パク質であるカルモジュリンと、ウシ血清アルブミン(B
SA)とを対照として用いて、これらパーリンとカルシウ
ムイオン(Ca2+)の結合性を調べる。 その結果、以下の
実施例4で実証されたように、天然パーリンでは定性的
乃至半定量的に明瞭なシグナルが検出されており、その
カルシウムイオン(Ca2+)の結合性が確認されている。
なお、変性パーリンではシグナルは検出されず、また、
天然パーリンを含むタンパク質複合体でも、明瞭なシグ
ナルが検出された。
【0024】また、天然パーリンおよび変性パーリン、
そして、それらにカルシウムイオンを添加したものに関
する構造上の変化を、分光蛍光光度計を用いて、蛍光ス
ペクトルの測定を行った。 以下の実施例4によれば、
この分光蛍光光度の測定において、天然パーリンにカル
シウムイオンを結合することで、蛍光強度の低下が認め
られ、その構造的変化が認められている。 このよう
に、パーリンにカルシウムイオンを結合することで、そ
の構造変化を起こし、これが発端となって、20kDaや50k
Daの成分タンパク質と結合して、本発明の真珠複合タン
パク質が形成されるものと考えられる。 このように、
パーリンは、一種のアロステリックタンパク質であると
考えられる。
【0025】精製パーリンの遺伝子工学的生産 当業者であれば、当該技術分野で周知の組み換え技術を
用いて、約750bpのパーリンcDNA(T. Miyashita et a
l., "Complementary DNA Cloning and Characterizatio
n of Pearlin, a New Class of Matrix Protein in the
Nacreous Layerof Oyster Pearls", Marine Biotechno
logy, Springer-Verlag New York, pp.120-129 (200
0)、および T. Samata et al., "A new matrix protein
family related to the nacreous layer formation o
f Pinctada fucata", FEBS Letters462, pp. 225-229
(1999)を参照されたい)を適宜のプラスミドのクローニ
ングサイトに挿入したものを作成し、そして、これで形
質転換した大腸菌にパーリンを産生せしめることができ
る。
【0026】pK20(分子量20kDaの成分タンパク質)の特
成分タンパク質の一つであるpK20について、検討を行っ
た。 pK20は、図1に記載の工程に従って得た「粗抽出
液」を、12%または15% SDS-PAGEにかけて、前出の変
性パーリンを得る場合と同様の手法に従って、純粋に得
ることができる。
【0027】このpK20の標品を、シアン化臭素(BrCN)で
切断し、ペプチドマップを作成して、そのアミノ酸配列
を解析する。 その結果、それらアミノ酸配列には、ヒ
トとマウスのケラチンと相同な配列が認められ、これよ
り、pK20は、パールケラチンの一種であると考えられ
る。
【0028】
【実施例】以下に、本発明を実施例に沿ってさらに具体
的に説明するが、本発明がこれら実施例の開示に基づい
て限定的に解釈されるべきでないことは勿論である。
【0029】実施例1:真珠タンパク質複合体の抽出お
よび精製 真珠タンパク質複合体の抽出、濃縮および精製を、図1
に概略的に示した手順に従って行った。
【0030】真珠タンパク質を得るための出発材料とし
て、次の2つの材料を準備した。 [真珠由来真珠層]粗真珠(屑真珠)の真珠層のみを核
から剥がして得た真珠層。 [殻体由来真珠層]歯科用グラインダー(SHOFU、Tas-35
S)を用いて、アコヤ貝の殻体(貝殻)から稜柱層を除去
して得た真珠層。
【0031】これら各真珠層を、粉砕機(Wonder Blend
er、輸入発売元:大阪ケミカル株式会社)を用いて粉砕
して、粉末状にしたもの約20g(必要に応じて倍量の約
40g)を出発材料とした。
【0032】図1の工程図での8M尿素抽出物を30,000
gで20分間遠心分離して得た上清を、粗抽出液とした。
この粗抽出液から、以下に述べる二つの精製法のいず
れかに従って、本発明の真珠タンパク質複合体を得た。
【0033】[イオン交換クロマトグラフィー]粗抽出
液から真珠タンパク質複合体を精製すべく、陰イオン交
換体であるDEAEsephacel (Pharmacia社)の約1ml相当
の樹脂を充填したカラムを30mM Tris-HCl(pH 8.0)で平
衡化させ、粗抽出液を流してタンパク質を吸着させた。
【0034】溶出は、30mM Tris-HCl (pH 8.0)に、0.2
M、0.4M、0.6Mと漸次食塩濃度を増量させた溶液を、カ
ラムに流すことで段階的な溶出を試みた。 図2に記載
の0.2Mの濃度の塩化ナトリウム(NaCl)で、大部分の複合
体が溶出された。
【0035】[ゲル濾過]粗抽出液から真珠タンパク質
複合体を精製するために、ゲル濾過(SephacrylS-300H
R、Pharmacia Biotech社)を用いた。 上述の粗抽出液
の5mlを、0.2M NaClを含む30mM Tris-HClを展開液とし
てカラムに流した。 図3のゲル濾過パターンに示した
ように、最も早い流出液(void volume)部分に本発明の
複合体が溶出し、その後に、高分子量の複合体から一定
の距離を置いて低分子量のタンパク質が溶出された。
【0036】真珠由来真珠層または殻体由来真珠層のい
ずれにも、上記二つの精製法のいずれによっても、ほぼ
同様のパターンが得られた。 また、この二つの精製法
を組み合わせることで、複合体の精製精度が向上した。
【0037】次に、本発明の真珠タンパク質複合体に関
して、以下の方法によって、真珠タンパク質複合体を構
成する成分タンパク質の分析を行った。
【0038】[SDSゲル電気泳動]精製された真珠タ
ンパク質複合体を、SDSゲル電気泳動で展開して、そこ
に含まれるタンパク質の分子種を検定した。 図4に示
すように、真珠由来真珠層から得たタンパク質複合体
(レーンA)は、主として、15kDaのパーリンに加えて、p
K20(20kDa)とpK50(50kDa)の三つの成分タンパク質か
らなることが判明した。
【0039】これに対して、殻体由来真珠層から得たタ
ンパク質複合体(レーンB)は、主として15kDaのパーリ
ンとpK20の二つの成分タンパク質からなることが明らか
となった。
【0040】実施例2:真珠タンパク質複合体による炭
酸カルシウムの結晶化 炭酸カルシウム飽和溶液(50mM Mg2+を含む)1mlに、
粗抽出液またはタンパク質複合体(0.2mgタンパク質/m
l)の5μlを加えて、プラスチック製の小さなシャーレ
またはウェルに注ぎ、一昼夜、室温に保って結晶を出現
せしめた。 その時に出現した結晶の光学顕微鏡写真
を、図5および6に示した。 また、対照として、マグ
ネシウムイオン(Mg2+)無添加のもの、あるいは真珠タン
パク質の代わりにウシ血清アルブミン(Bovine Serum Al
bumin:BSA)を加えたものなどを準備したが、方解石結晶
が若干認められるに過ぎず、アラゴナイト(Spherulite
s)の出現は皆無であった。
【0041】そして、殻体由来真珠層から得たタンパク
質複合体を添加した場合には、多数のアラゴナイト微結
晶が点在して出現した(図5)。 これに対して、真珠
由来真珠層から得たタンパク質複合体を添加した場合に
は、多数のアラゴナイト微結晶が線状に連なって出現し
た(図6)。
【0042】念のために、その他の対照試料として、ナ
クレイン、パーリンなどのその他の真珠タンパク質をそ
れ単独で加えてもみたが、どの場合でも、アラゴナイト
の出現は認められなかった。
【0043】[アラゴナイト結晶の電子線回折分析]殻
体由来真珠層および真珠由来真珠層から得たタンパク質
複合体が誘導したアラゴナイトの微結晶に関して、電子
線回折(JEOL-200CX電子顕微鏡、加速電圧200kV)を行
った。 その結果、図7に示したように、殻体由来真珠
層および真珠由来真珠層から得た複合タンパク質が誘導
した微結晶のいずれもが、アラゴナイト(アラレ石)の
結晶であることが確認された。
【0044】[アラゴナイト結晶の赤外線吸収スペクト
ル分析]殻体由来真珠層および真珠由来真珠層から得た
タンパク質複合体によって誘導された炭酸カルシウム(C
aCO3)の結晶を遠心分離によって回収し、これを臭化カ
リウム(KBr)と混合して打錠したものを、赤外光学分光
計(FTIR-8200)に適用して解析を行った。 殻体由来
真珠層から得たタンパク質複合体での分析結果を図8
に、また、真珠由来真珠層から得たタンパク質複合体で
の分析結果を図9に示した。
【0045】図8および9に記載の結果から明らかなよ
うに、殻体由来真珠層および真珠由来真珠層から得た複
合タンパク質によって誘導された結晶は、856.3にメイ
ンピークが現れ、この結晶がアラゴナイトであることが
明らかとなった。
【0046】実施例3:真珠タンパク質複合体の解離と
再構築 真珠タンパク質複合体の基本的な性質を解明するため
に、以下の関係式に表した反応を進めて、まず、真珠タ
ンパク質複合体を、その成分タンパク質にまで解離せし
め、次いで、各成分タンパク質から真珠タンパク質複合
体を再形成した。
【0047】
【化1】 実験には、HPLCのゲル濾過装置を用いた。 具体的に
は、HPLCとして、SC-8020(コントローラー)、CCPM-II
(ポンプ)、UV-8010(検出器)を具備した東ソー(TOSO
H)社製のHPLCが、また、ゲル濾過カラムとして、TSK ge
l G3000 SWXL、内径7.8mm×長さ30cmを用いた。 その
結果を、図10および図11に示した。
【0048】真珠タンパク質複合体の解離 図10(a)は、実施例1のゲル濾過法に従って真珠由来真
珠層から精製した真珠タンパク質複合体(未処理の複合
タンパク質)が、初期に流出してピークを示すとの対照
試験の結果を示している。
【0049】次に、4M尿素、25mM EDTA、30mM Tris-H
Cl(pH 8.0)の存在下に、この真珠タンパク質複合体を、
60℃で、12時間かけて解離処理した後に、VIVASPIN6(1
0,000MWCOSartorius社製)を用いて遠心分離して脱塩濃
縮したものを、前出のゲル濾過カラムに適用した結果を
図10(b)に示した。 図10(b)から明らかなように、図10
(a)で形成されたピークは消失して、低分子成分に解離
していた。
【0050】真珠タンパク質複合体の再構築 成分タンパク質から真珠タンパク質複合体を再構築する
ために、成分タンパク質分画を、4M尿素、25mM CaC
l2、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の存在下で、60℃で、5時
間かけて処理したものを、前出のゲル濾過カラムに適用
した結果を、図11(a)に示した。
【0051】また、成分タンパク質分画を、4M尿素、
25mM CaCl2、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の存在下で、60℃
で、12時間かけて再構築処理した後に除冷したものを、
前出のゲル濾過カラムに適用した結果を図11(b)に示し
た。
【0052】図11(a)および(b)のグラフから、成分タン
パク質の減少に伴い、真珠タンパク質複合体の再構築が
進行していることが明らかとなった。
【0053】このことは、EDTAを添加することで、カル
シウムイオン(Ca2+)を除去すれば、真珠タンパク質複合
体の解離が進み、逆に、カルシウムイオン(Ca2+)の存在
下で加温すれば、成分タンパク質から真珠タンパク質複
合体への再構築が進行していることを指し示している。
また、高濃度の尿素の存在と、60℃への加温は、この
可逆反応の速度を速める効果がある。
【0054】ところで、図11(b)に示したゲル濾過カラ
ムにおいて初期に溶出したタンパク質画分をフラクショ
ンコレクターによって集めて脱塩濃縮したものに関し
て、実施例2に記載の結晶化手順に従って、それによる
アラゴナイトの結晶化の誘導の可能性を検討した。 そ
の結果、再構築した真珠タンパク質複合体は、解離以前
の成分タンパク質のものと全く同様にアラゴナイトの結
晶化を誘導することが判明した。 このことから、構造
上および機能上の双方の観点からして、当初の真珠タン
パク質複合体の再構築が可能であることが明らかとなっ
た。
【0055】実施例4:タンパク質複合体を構成する成
分タンパク質の検討パーリンの抽出・精製方法]実施例1に記載のSDSゲ
ル電気泳動法によって、真珠タンパク質複合体の組成に
おいてパーリンが主要タンパク質であることが明らかと
なった。 そこで、このパーリンに関して性質の検討を
行った。
【0056】パーリンの抽出・精製方法として、図1に
記載したような、複合体を一旦精製した後に、それから
パーリンを精製することも可能である。 しかしなが
ら、パーリンの直接精製を目指して、工夫を凝らしたと
ころ、EDTA不溶性画分を、0.3MEDTAを加えた8M尿素液
で、60℃で、12時間抽出すれば、パーリンのみが選択的
に大量に抽出できることが明らかとなった(図12)。
【0057】このようにして得た粗抽出液を、30mM Tri
s-HCl(pH 8.0)で平衡化したDEAESephacelのイオン交
換クロマトカラムに適用すると、0.6〜0.8M塩化ナトリ
ウム(NaCl)でパーリンが溶出された。 この時の精製パ
ーリンの純度は、約90%であった。
【0058】この精製方法は、殻体由来真珠層および真
珠由来真珠層のいずれから得た複合タンパク質でも、同
様の結果が得られた。 このようにして得たパーリン標
品を、天然パーリン(native perlin)と称する。
【0059】次に、EDTAと尿素で抽出した粗抽出液を15
%アクリルアミドゲルで、SDSゲル電気泳動し、15kDaの
バンドをカッターナイフで切り出し、電気泳動エリュー
ター(Bio-Rad社、モデル422電気泳動エリューター)を
使用して溶出し、SDSと色素をアセトンで取り除いて精
製したパーリン標品を、変性パーリン(denatured perli
n)と称する。
【0060】[パーリンのカルシウムイオン結合性]パ
ーリンとカルシウムイオン(Ca2+)の結合性を調べるため
の実験条件として、0.1〜1.0μg/μlの濃度のタンパク
質の標品を用意して、これらをニトロセルロース膜(商
品名:Nitro Plus、MSI、ウェストボー、マサチューセ
ッツ州)に1μlずつスポットした。
【0061】カルモジュリンは、カルシウムイオン(Ca
2+)結合タンパク質であり、ポジティブシグナルを示す
正の対照として用いた。 また、BSAは、ネガティブシ
グナルを示す負の対照として用いた。
【0062】試料を所定位置にスポットした後にニトロ
セルロース膜をよく乾かし、放射性同位元素45Ca(0.185
-1.85Gbq/mg Ca、Amersham Pharmacia Biotech)が50μl
入った溶液(60mM KCl、5mM MgCl2、10mM イミダゾー
ル−HCl (pH 6.8))100mlに10分間浸した。 それを水
洗および乾燥して、イメージングプレートに定着させ、
Bas2500(フジフィルム)で現像した結果を図13に示し
た。 その結果、天然パーリンでは定性的乃至半定量的
に明瞭なシグナルが検出されたのに対して、変性パーリ
ンではシグナルは検出されなかった。 また、その他の
天然パーリンを含むタンパク質複合体では、明瞭なシグ
ナルが検出された。
【0063】しかしながら、パーリン以外の分子量20,0
00のタンパク質(pearl keratin)や、分子量50,000の
タンパク質がカルシウムイオン結合性を有するか否かに
ついては、本実施例では明確な判断はできなかった。
【0064】[パーリンの構造的変化]天然パーリンと
変性パーリンを準備した。 これらタンパク質を、0.02
mg/mlの濃度で、30mM Tris-HCl(pH 8.0)の溶液として用
いた。
【0065】分光蛍光光度計(島津製作所 RF-5300PC)
を用いて、励起波長280nm、蛍光波長範囲300〜450nmの
条件で蛍光スペクトルの測定を行った。
【0066】図14において、ラインAは天然パーリン、
ラインBは天然パーリンにカルシウムイオン添加(最終
濃度10mM)したもの、ラインCは変性パーリン、そし
て、ラインDは変性パーリンにカルシウムイオン添加
(最終濃度10mM)したものの結果が、それぞれ示されて
いる。
【0067】図14に示した結果によれば、天然パーリン
は、カルシウムイオンを結合することで、231.3の蛍光
強度が182.1にまで低下し、構造的変化を招いているこ
とが明らかとなった。
【0068】同様な構造的変化は、カルシウムイオンに
特異的でなく、これまでに試みたすべての金属イオン
(Mg2+、Sn2+、K+、Na+など)においても同様に認めら
れた。
【0069】以上のことから、パーリンはカルシウムイ
オンを結合することで、その構造変化を起こし、これが
引き金となって、複合タンパク質のタンパク質成分であ
るpK20やpK50と結合して、ヘテロポリマーである複合タ
ンパク質の形成に導くものと考えられる。 このように
考えると、パーリンは一種のアロステリックタンパク質
である可能性が考えられる。
【0070】[パーリンの遺伝子工学的生産]パーリン
のcDNA遺伝子の塩基配列については、すでに本発明者の
グループ(Miyashita et al., 前出)および佐俣のグル
ープ(Samata et al., 前出)によって解明されて、発
表されている。
【0071】このパーリンcDNA(約750bp)を、図15に
示したように、SalI-NotI断片として、pGEXC1517プラス
ミドのクローニングサイトに挿入したものを作成し、こ
れを大腸菌DH5αに形質転換した。 このようにして得
られた菌を、LB培地で培養し、0.1M IPTGを1/1000の量
だけ加えて(最終濃度10-4M)、パーリンタンパク質の
産生を誘導し、5時間後に集菌した。 集菌した菌は、
cDNAを持たない対照の菌と比較して、35kDaのタンパク
質が産生されていることがSDS-PAGEにより確認された。
パーリンcDNAが、グルタチオン-S-トランスフェラー
ゼ(GST)の遺伝子の上流に接して挿入されているため、
パーリン(15kDa)とGST(26kDa)の融合タンパク質(41kDa)
の産生が当然期待されるが、実際に検出された融合タン
パク質は35kDaであった。 これは、大腸菌のプロテア
ーゼによって部分分解されたことによるものと考えられ
る。
【0072】35kDaの融合タンパク質を集めて、プロテ
アーゼ・トロンビン処理してパーリンからGSTを切断
し、GSTをグルタチオンセファローズ4Bカラムで分離を
試みた。
【0073】未だこの分離は完全ではないが、遺伝子工
学的に作成したパーリン(GSTを含有する)は、先に述
べた通り、放射性同位元素45Caによる結合試験での天然
パーリンと同様に、カルシウムイオンを結合する能力を
有するという結果が得られている。
【0074】今後、パールケラチンなども人工的に遺伝
子工学的に大量生産が可能となれば、これらを使って、
完全に人工的な手法によって、本発明のタンパク質複合
体が得られるものと思われる。
【0075】[pK20(分子量20kDaの成分タンパク質)の
検討]図1に記載の工程に従って真珠タンパク質の分画
を行い、EDTA不溶性分画から8M尿素で可溶化した粗抽
出液を、12%または15% SDS-PAGEに適用して、前出の
変性パーリンを得る場合と同様の手法(つまり、タンパ
ク質のバンドの切り出しと、電気泳動溶出)に従って、
pK20を純粋に得ることができる。
【0076】このpK20の標品を、BrCNで切断し、ペプチ
ドマップを作成して、そのアミノ酸配列を解析した。
その結果、それらアミノ酸配列には、ヒトとマウスのケ
ラチンと相同な配列が存在することが明らかとなった
(配列番号:1および2を参照)。 このことから、pK
20は、パールケラチンの一種であると判断した。
【0077】これらの配列からDNAプライマーを作成
し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によってcDNAの断片
を得ること、pK20のcDNAクローニング、そして、cDNAの
全塩基配列とアミノ酸配列が今後決定されるであろう。
【0078】配列表のフリーテキスト 配列番号:1の245〜255位は、ヒトのケラチンと相同で
ある。
【0079】配列番号:1の286〜294位は、ヒトのケラ
チンと相同である。
【0080】配列番号:1の296〜309位は、ヒトのケラ
チンと相同である。
【0081】配列番号:2の297〜307位は、マウスのケ
ラチンと相同である。
【0082】
【発明の効果】このように、本発明によると、人工的に
真珠タンパク質を形成する前途が開かれるのである。
そして、本発明を活用することで、自然界に大量に存在
するアコヤ貝をはじめ、アワビやサザエなどの殻体(貝
殻)を材料として、それから真珠タンパク質複合体を抽
出して、 真珠養殖の際に大量に排出される屑真珠の
真珠層のまきを増やして、真珠の商品価値を高めるこ
と、 真珠表面のみならず、浴槽や車体の表面への真
珠層のコーティングを容易ならしめて真珠の用途拡大を
図ること、そして、 本発明の真珠タンパク質複合体
の成分タンパク質を、大腸菌などの宿主細胞にて遺伝子
工学的に大量生産して、真珠タンパク質複合体の工業的
生産への途が期待できるなどの、優れた効果を奏するも
のである。
【0083】また、本発明によれば、炭酸カルシウムの
結晶を、熱力学的に最も安定な方解石(Calcite)ではな
く、タンパク質複合体を基板として、アラゴナイトの結
晶化分子を配位させることに成功したものである。 こ
のことは、タンパク質を利用することで、分子の配位を
左右できること、すなわち、まさしくナノテクノロジー
への応用が期待できると言える。
【0084】さらに、本発明によれば、タンパク質複合
体を、EDTAを使用してその成分タンパク質にまで解離せ
しめ、そして、成分タンパク質分画だけを回収してタン
パク質複合体の再構築実験に供しているので、タンパク
質複合体にはカルシウムは皆無であることになる。 こ
のような状況下に再びカルシウムイオン(Ca2+)を再導入
した場合に、タンパク質複合体が再構築され、それがア
ラゴナイトの結晶化を誘導する。つまり、アラゴナイト
の結晶からアラゴナイトの結晶を得るのではなく、タン
パク質複合体(要するに無結晶状態)からアラゴナイト
の結晶が誘導されるのであって、このことはアラゴナイ
ト結晶化の原理に関する全く新規の知見である。また、
この一連の過程は、真珠層の構築の重要な一工程に他な
らない。
【0085】
【配列表】 S E Q U E N C E L I S T I N G <110> MATSUSHIRO, Aizo <120> Pearl Protein Complex and Producing Method of the Same <130> 2001PA0188 <160> 2 <210> 1 <211> 600 <212> PRT <220> <222> (245)...(255) <223> This is homogenous to the human keratin. <220> <222> (286)...(294) <223> This is homogenous to the human keratin. <220> <222> (296)...(301) <223> This is homogenous to the human keratin. <400> 1 Met Ser Cys Arg Gln Phe Ser Ser Ser Tyr Lys Thr Ser Gly Gly Gly 1 5 10 15 Gly Gly Gly Gly Lys Gly Ser Gly Gly Ser Ile Arg Ser Ser Tyr Ser 20 25 30 Arg Phe Ser Ser Ser Gly Gly Arg Gly Gly Gly Gly Arg Phe Ser Ser 35 40 45 Ser Ser Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Ser Arg Val Cys Gly Arg Gly Gly 50 55 60 Gly Gly Ser Phe Gly Tyr Ser Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Phe 65 70 75 80 Ser Ala Ser Ser Lys Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Ser Arg Gly Phe 85 90 95 Gly Gly Ala Ser Gly Gly Gly Tyr Ser Ser Ser Gly Gly Phe Gly Gly 100 105 110 Gly Phe Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Tyr Gly Ser 115 120 125 Gly Phe Gly Gly Lys Gly Gly Phe Gly Gly Gly Ala Gly Gly Gly Asp 130 135 140 Gly Gly Ile Lys Thr Ala Asn Glu Lys Ser Thr Met Gln Glu Lys Asn 145 150 155 160 Ser Arg Lys Ala Ser Tyr Lys Asp Lys Val Gln Ala Lys Glu Glu Ala 165 170 175 Asn Asn Asp Lys Glu Asn Lys Ile Gln Asp Trp Tyr Asp Lys Lys Gly 180 185 190 Pro Ala Ala Ile Gln Lys Asn Tyr Ser Pro Tyr Tyr Asn Thr Ile Asp 195 200 205 Asp Lys Lys Asp Gln Ile Val Asp Lys Thr Val Gly Asn Asn Lys Thr 210 215 220 Lys Lys Asp Ile Asp Asn Thr Arg Met Thr Lys Asp Asp Phe Arg Ile 225 230 235 240 Lys Phe Glu Met Glu Gln Asn Lys Arg Gln Gly Val Asp Ala Asp Ile 245 250 255 Asn Gly Lys Arg Gln Val Lys Asp Asn Lys Thr Met Glu Lys Ser Asp 260 265 270 Lys Glu Met Gln Tyr Glu Thr Lys Gln Glu Glu Lys Met Ala Lys Lys 275 280 285 Lys Asn His Lys Glu Glu Met Ser Gln Lys Thr Gly Gln Asn Ser Gly 290 295 300 Asp Val Asn Val Glu Ile Asn Val Ala Pro Gly Lys Asp Lys Thr Lys 305 310 315 320 Thr Lys Asn Asp Met Arg Gln Glu Tyr Glu Gln Lys Ile Ala Lys Asn 325 330 335 Arg Lys Asp Ile Glu Asn Gln Tyr Glu Thr Gln Ile Thr Gln Ile Glu 340 345 350 His Glu Val Ser Ser Ser Gly Gln Glu Val Gln Ser Ser Ala Lys Glu 355 360 365 Val Thr Gln Lys Arg His Gly Val Gln Glu Cys Glu Ile Glu Lys Gln 370 375 380 Ser Gln Lys Ser Lys Lys Ala Ala Lys Glu Lys Ser Lys Glu Asp Thr 385 390 395 400 Lys Asn Arg Tyr Cys Gly Gln Lys Gln Met Ile Gln Glu Gln Ile Ser 405 410 415 Asn Lys Glu Ala Gln Ile Thr Asp Val Arg Gln Glu Ile Glu Cys Gln 420 425 430 Asn Gln Glu Tyr Ser Lys Lys Lys Ser Ile Lys Met Arg Lys Glu Lys 435 440 445 Glu Ile Glu Thr Tyr His Asn Lys Lys Glu Gly Gly Gln Glu Asp Phe 450 455 460 Glu Ser Ser Gly Ala Gly Lys Ile Gly Lys Gly Gly Arg Gly Gly Ser 465 470 475 480 Gly Gly Ser Tyr Gly Arg Gly Ser Arg Gly Gly Ser Gly Gly Ser Tyr 485 490 495 Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Ser Arg 500 505 510 Gly Gly Ser Gly Gly Ser Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Ser Gly Gly Gly 515 520 525 Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly His Ser Gly Gly 530 535 540 Ser Gly Gly Gly His Ser Gly Gly Ser Gly Gly Asn Tyr Gly Gly Gly 545 550 555 560 Ser Gly Ser Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Gly Ser Gly 565 570 575 Ser Arg Gly Gly Ser Gly Gly Ser His Gly Gly Gly Ser Gly Phe Gly 580 585 590 Gly Glu Ser Gly Gly Ser Tyr Gly 595 600 <210> 2 <211> 334 <212> PRT <220> <222> (297)...(307) <223> This is homogenous to the mouse keratin. <400> 2 Met Ser Val Arg Tyr Ser Ser Ser Ser Lys Gln Phe Ser Ser Ser Arg 1 5 10 15 Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser Val Arg Val Ser Ser 20 25 30 Thr Arg Gly Ser Lys Gly Gly Gly Tyr Ser Ser Gly Gly Phe Ser Gly 35 40 45 Gly Ser Phe Ser Arg Gly Ser Ser Gly Gly Gly Cys Phe Gly Gly Ser 50 55 60 Ser Gly Gly Tyr Gly Gly Phe Gly Gly Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly 65 70 75 80 Tyr Gly Gly Ser Ser Phe Gly Gly Gly Tyr Gly Gly Ser Ser Phe Gly 85 90 95 Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly Gly Ser Phe Gly Gly Gly Ser Phe Gly 100 105 110 Gly Gly Ser Tyr Gly Gly Gly Phe Gly Gly Gly Gly Phe Gly Gly Asp 115 120 125 Gly Gly Ser Lys Lys Ser Gly Asn Glu Lys Val Thr Met Gln Asn Lys 130 135 140 Asn Asp Arg Lys Ala Ser Tyr Met Asp Lys Val Arg Ala Lys Glu Glu 145 150 155 160 Ser Asn Tyr Glu Lys Glu Gly Lys Ile Lys Glu Trp Tyr Glu Lys His 165 170 175 Gly Asn Ser Ser Gln Arg Glu Pro Arg Asp Tyr Ser Lys Tyr Tyr Lys 180 185 190 Thr Ile Glu Asp Lys Lys Gly Gln Ile Lys Thr Lys Thr Thr Asp Asn 195 200 205 Ala Asn Val Lys Lys Gln Ile Asp Asn Ala Arg Lys Ala Ala Asp Asp 210 215 220 Phe Arg Lys Lys Tyr Glu Asn Glu Val Thr Lys Arg Gln Ser Val Glu 225 230 235 240 Ala Asp Ile Asn Gly Lys Arg Arg Val Lys Asp Glu Lys Thr Lys Ser 245 250 255 Lys Ser Asp Lys Glu Met Gln Ile Glu Ser Lys Asn Glu Glu Lys Ala 260 265 270 Tyr Lys Lys Lys Asn His Glu Glu Glu Met Arg Asp Lys Gln Asn Val 275 280 285 Ser Thr Gly Asp Val Asn Val Glu Met Asn Ala Ala Pro Gly Val Asp 290 295 300 Lys Thr Gln Lys Lys Asn Asn Met Arg Asn Gln Tyr Glu Gln Lys Ala 305 310 315 320 Glu Lys Asn Arg Lys Asp Ala Glu Glu Trp Phe Asn Gln Lys 325 330
【図面の簡単な説明】
【図1】 真珠タンパク質複合体の抽出および精製のた
めの概略を示した工程図である。
【図2】 真珠タンパク質複合体のイオン交換クロマト
グラフィーによる溶出曲線を示すグラフである。
【図3】 真珠タンパク質複合体のゲル濾過による溶出
曲線を示すグラフである。
【図4】 SDS電気泳動による真珠タンパク質複合体の
成分タンパク質成分の分析結果を示す泳動図である。
【図5】 殻体の真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の光学顕微鏡写真であ
る。
【図6】 真珠の真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の光学顕微鏡写真であ
る。
【図7】 真珠タンパク質複合体から出現したアラゴナ
イト微結晶の電子線解析の写真である。
【図8】 殻体真珠層由来の真珠タンパク質複合体から
出現したアラゴナイト微結晶の赤外線吸収スペクトルを
示すグラフである。
【図9】 真珠珠真珠層由来の真珠タンパク質複合体か
ら出現したアラゴナイト微結晶の赤外線吸収スペクトル
を示すグラフである。
【図10】 真珠タンパク質複合体の解離を表すHPLCゲ
ル濾過による溶出曲線を示すグラフである。
【図11】 真珠タンパク質複合体の再構築を表すHPLC
ゲル濾過による溶出曲線を示すグラフである。
【図12】 SDS電気泳動による精製パーリンの分析結
果を示す泳動図である。
【図13】 精製パーリンなどのカルシウムイオン結合
性を示す図である。
【図14】 カルシウムイオンの結合による真珠タンパ
ク質複合体の構造的変化を表すグラフである。
【図15】 プラスミドベクターPGEX4T-2の説明図であ
る。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真珠を構成する少なくとも二つのタンパ
    ク質を含む真珠タンパク質複合体であって、該タンパク
    質が、SDSゲル電気泳動によって決定された15kDaおよび
    20kDaの分子量を有する二種の成分タンパク質からな
    る、ことを特徴とする真珠タンパク質複合体。
  2. 【請求項2】 前記成分タンパク質が、真珠貝の殻体か
    ら取得した真珠層から精製されたタンパク質である請求
    項1に記載の真珠タンパク質複合体。
  3. 【請求項3】 前記真珠貝が、アコヤ貝である請求項2
    に記載の真珠タンパク質複合体。
  4. 【請求項4】 アラゴナイトの結晶化を経て真珠層を製
    造する方法であって、請求項1乃至3のいずれかに記載
    の真珠タンパク質複合体に炭酸カルシウム飽和溶液を加
    える工程を含む、ことを特徴とする真珠層の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の製造方法によって結晶
    化したアラゴナイト。
  6. 【請求項6】 請求項4に記載の製造方法によって得ら
    れる真珠層。
  7. 【請求項7】 真珠を構成する少なくとも三つのタンパ
    ク質を含む真珠タンパク質複合体であって、該タンパク
    質が、SDSゲル電気泳動によって決定された15kDa、20kD
    aおよび50kDaの分子量を有する三種の成分タンパク質か
    らなる、ことを特徴とする真珠タンパク質複合体。
  8. 【請求項8】 前記成分タンパク質が、真珠の真珠層か
    ら精製されたタンパク質である請求項7に記載の真珠タ
    ンパク質複合体。
  9. 【請求項9】 アラゴナイトの結晶化を経て真珠層を製
    造する方法であって、請求項7または8に記載の真珠タ
    ンパク質複合体に炭酸カルシウム飽和溶液を加える工程
    を含む、ことを特徴とする真珠層の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の製造方法によって結
    晶化したアラゴナイト。
  11. 【請求項11】 請求項9に記載の製造方法によって得
    られる真珠層。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008081429A (ja) * 2006-09-27 2008-04-10 Kyoto Univ 合成ペプチド及びその利用
JP2010095464A (ja) * 2008-10-15 2010-04-30 Mikimoto Pharmaceut Co Ltd 皮膚外用剤およびその製造方法

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