JP2003004397A - 冷却塔循環水の電磁気処理方法及び装置 - Google Patents

冷却塔循環水の電磁気処理方法及び装置

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JP2003004397A JP2001261070A JP2001261070A JP2003004397A JP 2003004397 A JP2003004397 A JP 2003004397A JP 2001261070 A JP2001261070 A JP 2001261070A JP 2001261070 A JP2001261070 A JP 2001261070A JP 2003004397 A JP2003004397 A JP 2003004397A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷却水系におけるスケール成長と微生物ある
いは藻類の繁殖によるアルジー形成とを、小さな磁力で
冷却水を電磁気処理することによって抑制でき、冷却効
率を高めるとともに、安価な装置で冷却設備の維持コス
トを低減できる冷却塔循環水の電磁気処理方法を提供す
る。 【解決手段】 冷却塔と熱交換器との間を循環する循環
水を電磁気処理する方法であって、前記循環水のイオン
伝導率を10μS/cm〜10mS/cmの範囲とし、
該循環水中に分散する電子伝導性の固体粒子を循環水の
流れに対して同一方向及び/又は逆方向に流動させると
ともに、磁場を通過する循環水の流速を5〜15cm/
secの範囲とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷却塔循環水の電
磁気処理方法及び装置に関し、詳しくは、冷却塔と熱交
換器とを循環する冷却塔循環水を電磁気処理することに
より、循環水への金属イオンの供給を積極的に促進し、
循環水の循環経路におけるスケールやアルジーの発生及
び付着を防止するとともに、循環水の固形成分濃縮率を
高めることができる冷却塔循環水の電磁気処理方法及び
装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】冷却塔
で大気と熱交換させて冷却した冷却水をポンプで熱交換
器へ送り、該熱交換器での熱交換で昇温した冷却水を冷
却塔に循環させる冷却水循環系では、冷却塔等での水の
蒸発によってイオン物質が冷却水中に濃縮され、冷却水
を送るパイプの内壁や熱交換器、冷却塔の内部にスケー
ルや錆が発生し、これらのスケールや錆が、冷却効率の
低下や設備の短寿命化等の一因となっている。また、水
の濃縮は、微生物や藻類の発生と増殖とを加速し、環境
衛生面からも問題となっている。
【0003】これらの問題を軽減するため、従来から、
有機りん酸系あるいは塩素系の薬剤を定期的に冷却水に
添加することが行われていたが、維持コストが高いとい
うだけでなく、冷却塔から薬剤が飛散することによる環
境汚染を防止する対策も必要なことから、薬剤使用を代
換えする新しい水処理方法が望まれている。
【0004】薬剤を使用しない水処理方法として、電磁
気処理方法が海外で考案され、各種の処理装置が導入さ
れるととともに、国内においても多くの電磁気処理方法
及び装置が提唱されている。この電磁気による水処理の
基本的な考え方は、カルシウムイオン、ケイ酸イオンあ
るいは鉄イオン等の電解質イオンを含有する循環水が磁
束に直交して流動するときに生じる磁場と電場とによる
物理的な作用により、スケール形成あるいは金属材料腐
食及び錆こぶ発生が抑制されるというものである。しか
しながら、水処理装置に導入される磁場及び電場の強さ
は、分子やイオンの構造を変えるレベルには数オーダ不
足しているため、水の電磁気処理に期待できる効果があ
るとすれば、含まれるコロイド粒子に及ぼす穏和なもの
であるとの報告もある(例えば、東谷公等、表面科学、
20、764(1999))。
【0005】冷却水循環系の循環水を電磁気処理するこ
とによってスケール成長が抑制された経験的な事実は多
数報告されており、薬剤を用いることなく系内のスケー
ル成長とアルジー生成を抑制できたとの報告はあるもの
の、従来の電磁気処理方法においては、効果発現の再現
性は絶対的なものではなく、また、その効果の程度にも
バラツキが大きく、十分な信頼性を得る水処理方法を提
供するものではなかった。加えて、この従来の方法で
は、非常に高い磁束密度を持つ磁気処理装置を必要とす
るため、装置の製造コストも高価となってしまう。
【0006】また、全く効果がないとする報告も多く、
スケール成長に電磁気処理効果が確認された場合は、ス
ケール結晶構造に変化を伴っており、その効果は長期間
の電磁気処理を継続することにより発現している。すな
わち、循環水の電磁気処理に期待される物理的な効果は
穏和なものであるため、循環水の組成あるいは冷却シス
テムの構造により、電磁気処理効果の発現の程度が異な
っている。
【0007】循環水の電磁気処理によるスケール成長の
抑制に加え、循環水系に設置された金属銅電極から電気
化学的に銅イオンを溶解させ、藻類の繁殖を抑制する電
磁処理方法及び装置が、特許第2728840号公報で
提唱されている。この発明における金属イオンの導入は
銅イオンに限定するものであり、かつ、その導入の方法
は、直流電源を用いた金属銅のアノード溶解によるもの
であるから、電磁処理のための磁石に加えて直流電源装
置が必要であること、循環水量が大きい冷却システムに
おいては大面積の銅電極が必要となることから、装置が
複雑になるとともに装置コスト、維持コスト共に増大し
てしまうという問題を抱えていた。
【0008】そこで本発明は、冷却水系におけるスケー
ル成長と微生物あるいは藻類の繁殖によるアルジー形成
とを、小さな磁力で冷却水を電磁気処理することによっ
て抑制でき、冷却効率を高めるとともに、安価な装置で
冷却設備の維持コストを低減できる冷却塔循環水の電磁
気処理方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の冷却塔循環水の電磁気処理方法は、冷却塔
と熱交換器との間を循環する循環水を電磁気処理する方
法であって、前記循環水のイオン伝導率を10μS/c
m〜10mS/cmの範囲とし、該循環水中に分散する
電子伝導性の固体粒子を循環水の流れに対して同一方向
及び/又は逆方向に流動させるとともに、磁場を通過す
る循環水の流速を5〜15cm/secの範囲とするこ
とを特徴とし、特に、前記循環水と固体粒子との流れ
(速度ベクトル)に直交する方向のベクトルを形成する
ように磁場を印加することを特徴としている。
【0010】また、本発明では、前記電子伝導性の固体
粒子が、電気化学的及び化学的に安定な非磁性担体と、
該担体に保持される金属微粒子とで構成されることを特
徴とし、前記非磁性担体が、アルミニウム、シリコン又
はチタンの酸化物、あるいは、ナイロン等の合成樹脂で
あることを特徴とし、前記金属微粒子が、銅、亜鉛、ス
ズ、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、コバルトの
いずれか一種、あるいは、これらの2種以上の混合物、
あるいは、これらの2種以上の合金であることを特徴と
している。
【0011】さらに、前記循環水の電磁気処理を、循環
水循環系から独立した系で、あるいは、循環水循環系か
ら分岐した系で行うことを特徴としている。
【0012】上述のような構成を有する本発明の循環水
の電磁気処理方法は、電子伝導性粒子を、その速度ベ
クトルと直交する磁場ベクトルを持つ電磁場内を流動さ
せることによって循環水中への金属イオンの溶解を加速
促進させ、溶存イオンが溶解した金属イオンを核とし
て取込むことにより 循環水中の溶存物質が析出する
際の構造を、通常は3次元ランダムに成長するところ
を、1次元直線方向のみに成長を促進させることがで
き、冷却水循環系内の付着性スケール成長の抑制や、微
生物及び藻類の繁殖によるアルジー形成を安価な装置
で、かつ、低ランニングコストで抑制することができ
る。
【0013】また、本発明の循環水の電磁気処理装置
は、冷却塔と熱交換器との間を循環する循環水を電磁気
処理するための装置であって、イオン伝導率を10μS
/cm〜10mS/cmの範囲とした循環水を5〜15
cm/secのの流速で流通させる処理槽と、該処理槽
内を流通する循環水中に分散させた電子伝導性の固体粒
子を循環水の流れに対して同一方向及び/又は逆方向に
流動させる手段と、前記循環水及び固体粒子の流れに直
交するように磁場を印可する手段とを備えていることを
特徴としている。
【0014】さらに、本発明の冷却塔循環水の電磁気処
理装置は、前記磁場を印可する手段が、処理槽の周壁内
面に永久磁石のN極とS極とを対向配置したものである
こと、あるいは、処理槽の周壁内面に沿うように配置し
たリング状の強磁性体金属製磁気シールド材の内周面に
永久磁石のN極とS極とを対向配置したものであること
を特徴としている。また、前記処理槽は、循環水が循環
する配管系統とは別の独立した配管で接続してもよく、
循環水が循環する配管系統から分岐した配管に接続して
もよい。
【0015】
【発明の実施の形態】まず、図1は、水に対する一般的
な電磁気処理効果を説明する原理図である。すなわち、
1対の固定された磁石により発生する磁場ベクトルBに
対して、直交する方向に速度(流速)ベクトルVを持つ
電子伝導性の固体粒子が通過したとき、磁場ベクトルB
と速度ベクトルVとのいずれにも直交する方向に電場ベ
クトルEが発生する。
【0016】一種の電解質水溶液である循環水中に電子
伝導性の固体粒子を分散させて流動させると、図2に模
式的に示すように、分散された個々の電子伝導性の固体
粒子内に電場Eによる電位差が誘起され、外部電源を用
いることなしに粒子内でカソードとアノードとに分極さ
せることができ、固体粒子表面での電気化学反応を加速
できる。ここで、固体粒子表面での電気化学反応の速度
は、循環水のイオン伝導率、即ち抵抗と磁場内を通過す
る粒子の速度とに依存する。本発明では、循環水のイオ
ン伝導率を10μS/cm〜10mS/cmの範囲と
し、磁場を通過する循環水の流速を5〜15cm/se
cの範囲としている。
【0017】上記イオン伝導率が10μS/cmより小
さい場合又は循環水の流速が5cm/secより小さい
場合は、電気化学反応の抵抗が大きく、循環水の電磁気
処理に必要な大きさの電気化学反応速度を得るのは難し
い。一方、イオン伝導率が10mS/cmより大きい場
合又は磁場を通過する循環水の流速が15cm/sec
より大きい場合は、固体粒子表面での電気化学反応速度
が大き過ぎるため、循環水の溶存成分の組成制御が難し
くなり、すなわち、総イオン量バランス、チャージバラ
ンスが崩れて溶存成分の析出を促進してしまう。また、
イオン伝導率が大きいということは、循環水自身が塩化
物イオン等の金属腐食を加速する電解質イオンの含有量
が大きいことでもあり、冷却用循環水としても好ましく
ない。
【0018】分散する電子伝導性の固体粒子の大きさ、
形状あるいは比重は特に限定されることはなく、循環水
の流動する方向(例えば垂直又は水平)、処理槽(パイ
プ)の内径、流速等の循環水電磁気処理装置の構造によ
って適宜選択される。また、分散させる電子伝導性の固
体粒子の数密度を変えることにより、電気化学反応の起
こる反応面積を調整できるので、循環水の電磁気処理の
目標に応じて数密度を選択できる。
【0019】本発明の循環水の電磁気処理方法は、図2
で模式的に示した電子伝導性の固体粒子表面でのカソー
ド反応とアノード反応とにより、冷却水循環系における
スケール成長とアルジー発生とを同時に抑制するもので
ある。循環水は、冷却塔を経由する過程で大気中の酸素
を溶解する。すなわち、溶解した酸素の還元反応が電子
伝導性の固体粒子表面における主たるカソード反応であ
る。 O+2HO+4e → 4OH (式1) アノード反応は、電子伝導性の固体粒子が含有する金属
の溶解反応である。 M → Mm++me (式2) 本発明の循環水の電磁気処理方法は、循環水中に含まれ
スケール形成及び成長の原因となるカルシウムイオン、
シリケートイオン、あるいはこれらのポリマーイオン
と、式2のアノード反応によって循環水中に溶解した金
属イオンとのコロイド科学的な相互作用により、スケー
ル成長を抑制するものである。
【0020】本発明の電子伝導性の固体粒子に含有され
てアノード反応で溶解する金属は、銅、亜鉛、スズ、ア
ルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、コバルトが最適で
ある。このような金属は、金属の微粒子として電気化学
的及び化学的に安定な非磁性担体の表面や内部に保持さ
れる。なお、金属微粒子は、上記金属のいずれか単独の
微粒子、あるいは複数金属種の混合微粒子、あるいは合
金の微粒子であってもよい。
【0021】循環水中に溶解した金属イオンがスケール
成長を抑制する機構は明確ではないが、スケール成長の
原因となるカルシウムイオンとシリケ−トイオンとが循
環水中でコロイド粒子として凝集成長することを促進
し、その結果、熱交換器、循環水配管あるいは冷却塔の
器壁表面でのスケール成長を抑制すると考えられる。例
えば、シリカ微粒子表面の中性pH領域における荷電密
度は、微量の金属イオンの存在で小さくなり、液相での
コロイド凝集速度が加速されることはコロイド科学的に
知られている(Journal of Colloid and Interface Scie
nce,40巻、53ページ、1972年)。カルシウム
イオンが炭酸カルシウムとして、あるいはシリケートイ
オンがシリカとして循環水中でのコロイド粒子凝集速度
が加速された場合、熱交換器、循環水配管あるいは冷却
塔の器壁表面には、粒子径の大きいコロイド粒子が衝突
することになり、粒子径の小さいコロイド粒子に比較し
て結合力が弱いため、スケール成長が抑制され、また、
形成されたスケールも剥離しやすい。
【0022】本発明の循環水の電磁気処理方法において
は、スケール成長の抑制により、浮遊するコロイド粒
子、即ち固形成分は循環水中に濃縮されるが、従来方法
と同様にして冷却塔から系外へ冷却水と共に放出するこ
とができる。換言すると、本発明の循環水の電磁気処理
方法により、高い濃縮度での冷却システムの運転が可能
となる。
【0023】循環水系内のスケール成長の抑制に加え、
アルジー発生の原因となる微生物あるいは藻類の繁殖を
抑制するには、循環水中に銀、銅、ニッケルイオン等の
特定金属イオンを共存させることが有効である。これら
のアルジー抑制効果が期待できる金属イオンのうち、比
較的安価な金属であること、及び、前記式2によりアノ
ード溶解できることの条件から、銅やニッケルが好まし
く、比較的環境に優しく、特に、1ppm以下の低濃度
においても効果が高い銅が、アルジー抑制金属として好
適である。すなわち、本発明の循環水の電磁気処理にお
いて、循環水に分散する電子伝導性の固体粒子に含まれ
る金属の少なくとも1種は銅であることが好ましい。
【0024】前記式2のアノード反応によって金属イオ
ンを循環水中に溶解させる金属微粒子を保持するための
非磁性担体には、化学的及び電気化学的に安定であり、
磁性を持たないアルミナ、チタニア、あるいはシリカが
好適である。これらの担体に金属微粒子を担持(保持)
させる方法は特に限定しないが、担体物質あるいはその
前駆体微粉に金属微粉末を混合して所定の形状に成形し
た後、不活性ガス雰囲気で焼結させる方法や、焼結した
担体物質の成形体に金属イオンを含ませ、乾燥後に水素
環境で加熱還元させる方法を採用できる。その他の担体
として、粒子の流動を良くするために金属よりも比重の
小さいナイロン等の合成樹脂を用いることができる。
【0025】本発明の循環水の電磁気処理方法において
は、循環水中に分散した電子伝導性の固体粒子が磁束を
横切るときに電場が誘起され、これが電極として作用す
ることを原理としているので、粒子の数を増やすことで
電極面積を大きくすることが可能であり、全循環水の一
部分に電子伝導性固体を分散させて電磁気処理すること
により、スケール成長とアルジー発生とを抑制するのに
十分な金属イオンを供給することが可能である。冷却塔
と熱交換器との間を循環する循環水の主配管系から分岐
して電磁気処理する方法は、電磁気処理装置の小型化、
処理水と固体粒子との固液分離、メンテナンスの容易さ
からも好ましい。
【0026】次に、本発明の循環水の電磁気処理装置に
ついて詳細に説明する。既に述べたように、本発明方法
は、純化水中に分散した電子電導性固体粒子が磁場を横
切るときに生じる電場を駆動力とし、固体粒子に含まれ
る金属が電気化学的に溶解することを利用している。し
たがって、誘起される電場を強めて電気化学反応を効率
よく進めるためには、磁場が固体粒子の流動方向に直交
するように磁石を配置することが好ましい。磁石には永
久磁石を用いることができ、磁石の強さ、即ち残留磁束
密度は大きいことが好ましい。また、磁石を循環水の配
管内に封じ、電磁気処理装置の外部への漏れを小さくす
る磁気シールド機能が備わっていることが望ましい。
【0027】図3及び図4は、本発明の電磁気処理装置
の一形態例を示すもので、図3は縦断面図、図4は横断
面図である。この電磁気処理装置は、循環水1が流れる
配管(処理槽)2の内周壁に沿うように配置した強磁性
体金属からなる断面八角形筒状の磁気シールド材3の内
側面に8個の永久磁石4a,4bを対向配置したもので
ある。また、処理槽2内には、電子伝導性の固体粒子5
が流動可能な状態で充填されており、図3に矢印Aで示
すように、処理槽2の下方中央部から導入される循環水
1の流れによって固体粒子5が上方に向かって流動し、
自重によって下方に向かって流動する上下方向の対流循
環が生じるように、処理槽2の内径、循環水1の流速、
磁気シールド材3の大きさが設定されている。
【0028】前記永久磁石4a,4bは、図4に示すよ
うに、N極とS極とが対峙するように設けられており、
これらの永久磁石4a,4bによって生じる磁場(磁力
線)7の方向と、前述のように流動する固体粒子5の流
動方向とが直交するようになっている。さらに、磁気シ
ールド材3によって装置外への磁気漏れを抑制するよう
にしている。
【0029】電磁気処理装置に収納される永久磁石4
a,4bの残留磁束密度は、大きいほど好ましいが、特
に、1万ガウス以上の高価な永久磁石である必要はな
く、1000〜7000ガウス程度の比較的に安価なネ
オジウム−鉄−ホウ素系のボンド磁石で十分な効果が得
られる。
【0030】銅等の金属微粒子を含む電子電導性固体粒
子5は、前述のような磁気シールド材3内での対流循環
を形成しており、その流動方向は、上昇時及び下降時の
いずれにおいても、固体粒子5の流動方向は磁場7と直
交することになる。循環水1は、処理槽2で電磁気処理
された後、処理槽2の上部から、例えば冷却塔に向かっ
て流れていくことになる。
【0031】前記磁気シールド材3に使用する強磁性体
金属は、汎用の普通鋼板を使用できるが、磁気シールド
効果を高めるためには、厚さが5mm以上、好ましくは
6mm以上のものが適当である。また、処理槽2内に収
納される磁気シールド材3や永久磁石4a,4bは、循
環水1による腐食や、固体粒子5との衝突による摩耗を
防止するため、合成樹脂で被覆しておくことが好まし
い。
【0032】磁気シールド材3の内側に対峙して設置す
る永久磁石4a,4bの配置は、固体粒子5の流動方向
に直交する磁場7が強くなる構造であれば特に限定され
るものではない。永久磁石4a,4bの好ましい配置方
法として、図4の横断面図に示すように、磁気シールド
材3の水平断面が正八角形で、各辺に1個の永久磁石を
それぞれ配置する場合は、連続する4辺に内側にS極を
向けた永久磁石4aをそれぞれ配置し、残りの連続する
4辺に内側にN極を向けた永久磁石4bをそれぞれ配置
することにより、S極とN極とを対峙させた状態にでき
る。さらに、図5の要部縦断面図に示すように、循環水
1の流れ方向に複数の永久磁石4a,4bを多段に配置
することにより、固体粒子5の流動方向に対して直行す
る方向の磁場7の領域を大きくすることができる。
【0033】図3乃至図5に示すように永久磁石4a,
4bを配置したとき、図6のxyz直交座標軸に示すよ
うに、循環水1の流れ方向、すなわち、固体粒子5の流
動方向を垂直方向のz軸とし、これに直交する水平方向
の2本の軸をx軸、y軸とすると、固体粒子5の流動方
向に平行な磁束密度(Bz1/2に対して、水平方
向の磁束密度(Bx+By1/2が十分に大きい
領域を形成することができる。
【0034】本発明では、冷却塔と熱交換器とを循環す
る循環水循環系から独立させた系あるいは分岐した系に
循環水の一部を引き込み、この循環水に電子伝導性の固
体粒子を分散させて電磁気処理することが好ましい。電
磁気処理での磁場と水及び体粒子の流れとで誘起される
電場により、固体粒子に保持された金属微粒子のアノー
ド反応で金属イオンが溶解し、この金属イオンのコロイ
ド科学的効果により、析出する溶存成分の構造を変化さ
せて冷却水系に付着するスケールの成長を抑制する。ま
た、溶解した金属イオンは、微生物、藻類の繁殖抑制効
果も持つので、アルジー発生も同時に抑制することがで
きる。
【0035】図7及び図8は、それぞれ電磁気処理槽の
設置例を示す概略系統図である。図7は、冷却塔11と
熱交換器12とをポンプ13によって循環する循環水循
環系14から独立させた状態で電磁気処理槽15を設置
し、その導入管16と導出管17とを冷却塔11の水槽
部分11aにそれぞれ接続し、ポンプ18で循環水の一
部を水槽部分11aから抜出し、所定流量、所定流速で
電磁気処理槽15に導入し、電磁気処理後の循環水を水
槽部分11aに戻すように独立した系を形成したもので
ある。電磁気処理槽15は、従来から用いられているも
のと同様のものを使用でき、水の流れに直行する方向に
磁場が形成されるように永久磁石19を配置し、その内
部に電子伝導性の固体粒子20を分散させて流動可能な
状態としている。なお、導入管16及び導出管17部分
には固液分離器を設けるとともに、導出管17部分で捕
捉した粒子を導入管16部分に戻せるようにしておくこ
ともできる。図8は、循環水循環系14に電磁気処理槽
15の導入管16と導出管17とをそれぞれ接続し、循
環水循環系14を流れる循環水の一部を分岐させ、電磁
気処理槽15に導いて電磁気処理を行うように分岐した
系を形成したものである。このように、独立した系ある
いは分岐した系で電磁気処理を行うことにより、電磁気
処理槽15における処理対象循環水の流量や流速を最適
な状態に調節することができる。
【0036】
【実施例】実施例1 市販の球状α−アルミナ粒子(直径4mm)に硫酸銅濃
厚水溶液を含侵させ、苛性ソーダ水溶液による加水分解
を繰り返してアルミナ粒子表面と細孔内とに酸化銅を保
持させた後、水素気流中で加熱還元して金属銅微粒子を
担持したアルミナ粒子を得た。イオン伝導率が1mS/
cmの硫酸ナトリウム水溶液を模擬循環水とし、前記金
属銅担持アルミナ粒子3kgを投入した。非磁性体から
なる槽内に粒子の流動方向に直交する方向に磁場を形成
するように永久磁石を配置した。この永久磁石により形
成される磁場は、中心部が約1キロガウスである。そし
て、この磁場内に、金属銅担持アルミナ粒子を含む模擬
循環水1mを毎秒10cmの速度で循環させ、循環水
中の銅イオン濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】比較例1 磁場を印加しなかった以外は実施例1と同じ条件で操作
を行い、循環水中の銅イオン濃度を測定した。その結果
を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1に示した電磁気処理の有無による銅イ
オンの溶解速度を比較すると、電磁気処理によって銅イ
オンの溶解速度を約1.3〜2.1倍に加速できること
がわかる。
【0040】実施例2 銅、亜鉛、錫、鉄、ステンレス及びコバルトの各金属粉
末とγ−アルミナ粉末とをそれぞれ窒素ガス中で混合
し、加熱成形により円柱状(直径2mm、長さ4mm)
の電子伝導性固体粒子を作成した。イオン伝導率が0.
2mS/cmの地下水1m3を循環水とし、約5リット
ルの固液分離機能をもつ電磁気処理部に容積率10%の
固体粒子を分散させ、永久磁石で形成した中心部が約1
キロガウスの磁場に直交して循環水を毎秒10cmの速
度、毎時4mで5時間循環させ、各金属イオンの濃度
を測定した。電磁気処理したときと、電磁気処理をしな
かったときとにおける24時間後の金属イオンの濃度を
それぞれ測定した。その結果を表2に示す。この結果か
ら、いずれの金属の場合も、循環水を電磁気処理するこ
とによって溶解が促進され、溶解の促進効果は、電気化
学的に貴な銅、錫で高いことがわかる。
【0041】
【表2】
【0042】実施例3 実施例2と同じ循環水の電磁気処理系を、毎時400m
の冷却水が循環する冷却水循環系冷却塔に、図8に示
したようにして分岐状態で設置し、冷却塔内に付着量測
定用のPVC板とステンレス鋼板とを固定し、夏期の3
カ月間の日中に運転する長期の電磁気処理試験を行っ
た。その結果、同一の地下水を循環水とする類似の冷却
水循環系に比較し、電磁気処理したときのPVC板上の
付着物の乾燥重量は、電磁気処理を行わないときの約3
分の1、ステンレス鋼板上では約2分の1となった。
【0043】実施例4 厚さ5mm、幅85mmの鋼板を使用し、一辺の長さが
40mmの断面正八角形の筒状磁気シールド材を作成
し、図4及び図5に示したように、各辺の内面に、直径
25mm、高さ13mmの円柱状永久磁石を循環水流れ
方向にそれぞれ等間隔で3段、合計24個取り付けた。
そして、図6に示したように、循環水流れ方向の磁束密
度(Bz1/2に対する水平方向の磁束密度(Bx
+By1/2の比、即ち磁束密度の比(Bx
By1/2/(Bz1/2を、永久磁石から5
mm離れた位置と、装置中央(軸線部分)とで測定し
た。表3に、磁気シールド材一端からの距離に対する磁
束密度の比を示す。この測定結果から、両端部を除き、
流れに直交する磁束密度が十分に大きいことがわかる。
また、処理槽外側の磁場は小さく、内側の磁場の千分の
一以下であり、十分に磁気シールドされていることが確
認できた。
【0044】
【表3】
【0045】実施例5 実施例2と同じ循環水の電磁気処理系を、地下水(Ca
硬度200ppm,電気伝導度800μS/cm)を循
環水とし、循環量が毎時5mの冷却水循環系冷却塔
に、図7に示すように、冷却水循環系から独立させて設
置し、3ヶ月間連続して運転した。その結果、電磁気処
理を行った循環水中からは、針状形状のCaの「アラゴ
ナイト結晶」が多量に検出されたのに対し、電磁気処理
しない系では、ランダム形状のCaの「カルサイト結
晶」のみが検出された。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
冷却水循環系の循環水に電磁気処理することにより、冷
却塔、配管系及び熱交換器の器壁への付着物量を少なく
でき、熱交換器の効率低下を抑制し、冷却システム全体
の冷却効率低下も抑えることができる。さらに、微生物
や藻類の繁殖による環境悪化を軽減することもできる。
しかも、安価な装置で、かつ、低ランニングコストで実
施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水に対する一般的な電磁気処理効果を説明す
るものであって、電磁気処理により印加する磁場の方向
と、電子伝導性粒子の流動方向と、発生する電場との関
係をす原理図である。
【図2】 電場により誘起される電子伝導性固体粒子表
面の電気化学反応を示す模式図である。
【図3】 本発明の電磁気処理装置の一形態例を示す縦
断面図である。
【図4】 同じく電磁気処理装置の横断面図である。
【図5】 永久磁石の多段配置状態を示す要部の縦断面
図である。
【図6】 磁束密度を説明するためのxyz直交座標軸
を示す図である。
【図7】 電磁気処理槽を循環水循環系から独立させて
設置した例を示す概略系統図である。
【図8】 電磁気処理槽を循環水循環系から分岐させて
設置した例を示す概略系統図である。
【符号の説明】
1…循環水、2…処理槽、3…磁気シールド材、4a,
4b…永久磁石、5…固体粒子、7…磁場、11…冷却
塔、12…熱交換器、13…ポンプ、14…循環水循環
系、15…電磁気処理槽、16…導入管、17…導出
管、18…ポンプ、19…永久磁石
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山崎 輝明 神奈川県平塚市真土2480番地 三菱樹脂株 式会社平塚工場内 (72)発明者 坂下 雅雄 神奈川県川崎市多摩区生田1−15−20− 504

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷却塔と熱交換器との間を循環する循環
    水を電磁気処理する方法であって、前記循環水のイオン
    伝導率を10μS/cm〜10mS/cmの範囲とし、
    該循環水中に分散する電子伝導性の固体粒子を循環水の
    流れに対して同一方向及び/又は逆方向に流動させると
    ともに、磁場を通過する循環水の流速を5〜15cm/
    secの範囲とすることを特徴とする冷却塔循環水の電
    磁気処理方法。
  2. 【請求項2】 前記循環水及び固体粒子の流れに直交す
    るように磁場を印加することを特徴とする請求項1記載
    の冷却塔循環水の電磁気処理方法。
  3. 【請求項3】 前記電子伝導性の固体粒子が、電気化学
    的及び化学的に安定な非磁性担体と、該担体に保持され
    る金属微粒子とで構成されることを特徴とする請求項1
    記載の冷却塔循環水の電磁気処理方法。
  4. 【請求項4】 前記非磁性担体が、アルミニウム、シリ
    コン又はチタンの酸化物であることを特徴とする請求項
    3記載の冷却塔循環水の電磁気処理方法。
  5. 【請求項5】 前記非磁性担体が、ナイロン等の合成樹
    脂であることを特徴とする請求項3記載の冷却塔循環水
    の電磁気処理方法。
  6. 【請求項6】 前記金属微粒子が、銅、亜鉛、スズ、ア
    ルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、コバルトのいずれ
    か一種、あるいは、これらの2種以上の混合物、あるい
    は、これらの2種以上の合金であることを特徴とする請
    求項3記載の冷却塔循環水の電磁気処理方法。
  7. 【請求項7】 前記循環水の電磁気処理を、循環水循環
    系から独立した系、あるいは、循環水循環系から分岐し
    た系で行うことを特徴とする請求項1記載の冷却塔循環
    水の電磁気処理方法。
  8. 【請求項8】 冷却塔と熱交換器との間を循環する循環
    水を電磁気処理するための装置であって、イオン伝導率
    を10μS/cm〜10mS/cmの範囲とした循環水
    を5〜15cm/secのの流速で流通させる処理槽
    と、該処理槽内を流通する循環水中に分散させた電子伝
    導性の固体粒子を循環水の流れに対して同一方向及び/
    又は逆方向に流動させる手段と、前記循環水及び固体粒
    子の流れに直交するように磁場を印可する手段とを備え
    ていることを特徴とする冷却塔循環水の電磁気処理装
    置。
  9. 【請求項9】 前記磁場を印可する手段は、処理槽の周
    壁内面に永久磁石のN極とS極とを対向配置したもので
    あることを特徴とする請求項8記載の冷却塔循環水の電
    磁気処理装置。
  10. 【請求項10】 前記磁場を印可する手段は、処理槽の
    周壁内面に沿うように配置したリング状の強磁性体金属
    製磁気シールド材の内周面に永久磁石のN極とS極とを
    対向配置したものであることを特徴とする請求項8記載
    の冷却塔循環水の電磁気処理装置。
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