JP2002533699A - 強力なプロファイル識別方法 - Google Patents

強力なプロファイル識別方法

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JP2002533699A JP2000591225A JP2000591225A JP2002533699A JP 2002533699 A JP2002533699 A JP 2002533699A JP 2000591225 A JP2000591225 A JP 2000591225A JP 2000591225 A JP2000591225 A JP 2000591225A JP 2002533699 A JP2002533699 A JP 2002533699A
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Abstract

(57)【要約】 生物学的サンプルに対する第1の摂動および第2の摂動の小さな効果を識別する方法を提供する。さらに、患者の疾病状態を確認する方法ならびに患者の薬物治療レジメを最適化する方法を提供する。また、生物学的系に対する薬物の小さな効果を判定する改良法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、Stoughtonらにより1998年12月23日付で出願された、「強力なプロ
ファイル識別方法」という表題の同時係属出願(出願番号第09/220,274号)の一
部継続出願であり、前記出願の全内容は参照により本明細書中に組み入れるもの
とする。
【0002】 1. 発明の分野 本発明の分野は、生物学的サンプルに対する第一の摂動(perturbation)と第二
の摂動とのわずかな効果を識別するための方法に関する。本発明はまた、患者の
疾病状態を同定するための改良された方法に関する。さらに本発明は、罹患した
被験者において薬物治療レジュメを最適化するための改良された方法を提供する
。本発明はまた一般に、生物学的系に対する薬剤のわずかな作用を測定するため
の改良された方法に関する。
【0003】 2. 発明の背景 2.1. 細胞構成要素のプロファイル 「細胞構成要素」には、生物学的サンプル中の遺伝子発現レベル、特定の遺伝
子をコードするmRNAの存在量、およびタンパク質発現レベルが含まれる。遺伝子
をコードするmRNAおよび/またはタンパク質発現レベルなどの、細胞の種々の構
成要素のレベルは薬剤による処理およびその他の細胞の生物学的状態の摂動に応
答して変化することが知られている。従って、そのような「細胞構成要素」を複
数測定した結果は、摂動が細胞の生物学的状態に与える影響についての豊富な情
報を含んでいる。そのような測定結果を集めたものは一般的には細胞の生物学的
状態の「プロファイル」と呼ばれる。 哺乳動物細胞では、10万オーダーの異なる細胞構成要素が存在し得る。従って
、特定の細胞のプロファイルは一般的に複雑である。生物学的サンプルの所与の
状態のいずれのプロファイルも、サンプルに摂動をもたらした後に測定すること
が多い。このような摂動には、例えば、サンプルの薬物候補物質への曝露、外因
性遺伝子の導入、サンプルからの遺伝子の欠失、または培養条件の変化が含まれ
る。従って細胞構成要素の包括的測定、または細胞における遺伝子およびタンパ
ク質発現プロファイル、ならびにそれらの摂動に対する応答プロファイルは、幅
広い用途範囲を有する。これらの用途には、薬物作用を比較および理解する能力
、疾患を診断する能力、および患者のための薬物レジュメを最適化する能力が含
まれる。加えて、これらはさらに基礎生命科学研究における適用性も有する。
【0004】 過去10年の間に、いくつかの技術の進歩によって、細胞構成要素の正確な測定
、そしてそれ故にプロファイルの誘導が可能となった。例えば、新技術により、
多数の転写産物の発現レベルをいかなる1時点でもモニターすることが可能とな
った(例えば、Schenaら, 1995, Quantitative monitoring of gene expression
patterns with a complementary DNA micro-array, Science 270:467-470; Lock
hartら, 1996, Expression monitoring by hybridization to high-density oli
gonucleotide arrays, Nature Biotechnology 14:1675-1680; Blanchardら, 199
6, Sequence to array:Probing the genome's secrets, Nature Biotechnology
14, 1649; 1996年10月29日にAshbyらに付与された米国特許第5,569,588号[名称
“Method for Drug Screening”]を参照されたい)。完全なゲノムが既知の生物
体では細胞内の全ての遺伝子の転写産物を分析することが可能である。ゲノムに
ついての知識が現在増加しつつあるヒトなどのその他の生物では、細胞内の多数
の遺伝子を同時にモニターすることが可能である。
【0005】 別の側面においては、タンパク質の存在量の直接的測定は、マイクロカラム逆
相液体クロマトグラフィー電子スプレーイオン化タンデムマススペクトロメトリ
ー(LC/MS/MS)を使用して、混合物中に含まれるタンパク質を直接同定することに
より改良されてきた。この技術は、生物学的サンプルにおいてタンパク質存在量
を測定できるダイナミックレンジを拡張するために有望である。McCormackらは
、LC/MS/MSを使用して、サンプル混合物中に存在するタンパク質をモル量で30倍
の差で容易に同定し得ること、この同定は再現性があること、また混合物中のタ
ンパク質はフェムトモルレベルの少量でも同定し得ることを実証した(McCormack
ら、1997, Direct analysis and identification of proteins in mixtures by
LC/MS/MS and database searching at low-femtomole level, Anal. Chem. 69:7
67-776)。タンデムマススペクトロメトリーの総説においては、Chaitは、この技
術のさらなる利点は、エドマン配列決定などの従来のアプローチよりも迅速な規
模(magnitude)のオーダーであると指摘している(Chait, 1996, Trawling for pr
oteins in the post-genome era, Nat. Biotech. 14:1544)。
【0006】 個々の遺伝的突然変異を伴う、生物学的サンプルを特異的に摂動させる能力に
関して、他の技術的進歩が提供されている。例えば、Mortensenらは、胚性幹(ES
)細胞系の作製方法を記述しており、該方法により相同性組換えで両方の対立遺
伝子を不活性化している。Mortensenらの方法を使用して、ホモ接合性突然変異
により改変された細胞、すなわちダブルノックアウトしたES細胞系を得ることが
できる。Mortensenらは、該方法は他の遺伝子およびES細胞以外の細胞系に対し
ても一般に適用し得ると提案している(Mortensenら、1992, Production homozyg
ous mutant ES cells with a single targeting construce, Cell Biol. 12:239
1-2395)。
【0007】 別の有望な技術において、Wachらは、全体が異種DNAからなるS.セレビシエ(S.
cerevisiae)形質転換体の選択のための優性耐性モジュールを提供する。またこ
のモジュールを使用して、PCRに基づく遺伝子破壊を提供し得る(Wachら、1994,
New heterologous modules for classical or PCR-based gene disruptions in
Saccharomyces cerevisiae, Yeast 10:1793-808)。
【0008】 技術的進歩(DNAマイクロアレイの使用など)は既に、薬物の発見において用い
られている(Martonら、1998, Drug target validation and identification of
secondary drug target effects using DNA microarrays, Nature Medicine in
press; Grayら、1998, Exploitint chemical libraries, structure, and genom
ics in the search for kinase inhibitors, Science 281:533-538)。
【0009】 2.2. プロファイルの比較 プロファイルのデータベース中での他のプロファイルとの比較(例えば1998年
7月7日にRineらに発行された米国特許第5,777,888号[表題“Systens for gen
erating and analyzing stimulus-response output signal matrices”]を参照
されたい)、または、類似性によるプロファイルのクラスタリングは、薬物の分
子標的および関連機能、薬物候補の効率および毒性の手がかりを提供する。また
このような比較を用いて、理想的な薬物活性または疾病状態を表示するコンセン
サスプロファイルを誘導し得る。プロファイル比較はまた、患者の疾患を初期に
検出する助けとなるであろうし、疾患を有すると診断された患者に対する改良さ
れた臨床結果の射影をもたらすであろう。
【0010】 これら全てのプロファイル比較の努力の中心にあるのは、異なるプルフィール
に関連していることが多い、実験的状態における活性のわずかな差異(「摂動」)
を強力に識別することについての必要性である。現在まで、かかる強力な識別は
なされていない。典型的な摂動実験においては、通常、数千もの細胞構成要素の
応答を測定するが、ごく少数の構成要素が有意に変化するにすぎない。細胞構成
要素のいずれもが全く変化しないことも頻繁にある。当然の帰結として、摂動の
わずかな効果の精確な評価を行うために従来のプロファイルにおいて入手し得る
情報は、十分ではないことが多い。図1は、当技術分野で認識されたこの問題を
例示している。図1に、365種のmRNA転写産物プロファイリング実験の結果を示
す。365の実験には、異なる濃度の薬物の存在下/不在下での実験、酵母株中の特
定の遺伝子の存在下/不在下での実験、薬物処理と遺伝子欠失の組合せ、培養密
度の変化、増殖温度、培地組成、および接合因子(mating factor)などの内因性
ホルモンによる刺激が含まれる。図1に示された各実験において数千の細胞構成
要素がプロファイリングされるにもかかわらず、典型的にはごく少数の構成要素
のみが有意に変化し、またいずれも全く変化しないことも頻繁にあった。その結
果、図1の365の実験のいずれの実験から誘導されたプロファイルも、特定の摂
動のわずかな効果を測定するために十分な情報を提供しないであろう。故に、従
来のプロファイルを用いるプロファイル比較は、生物学的系に対する摂動のわず
かな効果を識別するための十分な情報を提供できないという問題点を有している
【0011】 上述の背景の通り、当技術分野では強力なプロファイル比較方法が切望されて
いる。
【0012】 本明細書中の参照文献に関する考察もしくは引用は、その参照文献を本発明の
先行技術であると認めたものと解釈されるべきではない。
【0013】 3.発明の概要 本発明は、強力なプロファイル比較方法を提供する。これらの方法は、生物学
的系に対する第1の摂動の効果と第2の摂動の効果との類似性の程度を決定する
ために用いられる。本発明の方法は、予防的健康管理、薬物探索、薬物候補リー
ド選択、薬物候補の確認、さまざまな患者集団における薬物レジメの最適化、米
国食品医薬品局(FDA)の要件を満たす臨床試験プロトコル(研究上の新薬のため
のものを含む)の開発、米国以外の国々でのFDAと同様の行政機関の関連した臨
床試験プロトコル要件の達成、薬物および/または薬物候補の効力、薬物および
/または薬物候補の毒性、さまざまな患者集団における疾病モニタリングなどの
診断用途、の各分野において、さらには患者の臨床結果の予測のために、広範囲
に使用することができる。
【0014】 本発明の一つの態様は、(a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定する
こと、ただし、第1のセット中の各構成要素プロファイルは、生物学的サンプル
が所定の初期状態にある場合に、生物学的サンプルの第1の摂動に対する応答を
測定することにより、生物学的サンプルの複数の初期状態の異なった状態を用い
て決定されること、(b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、
ただし、第2のセットの各構成要素プロファイルは、生物学的サンプルが所定の
初期状態にある場合に、生物学的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定する
ことにより、生物学的サンプルの複数の初期状態の異なった状態を用いて決定さ
れること、(c) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強
プロファイルにすること、(d) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わ
せて第2の増強プロファイルにすること、(e) 第1の増強プロファイルを第2の
増強プロファイルと比較して、第1の摂動と第2の摂動の間の類似性の程度を決
定すること、からなる方法を含む。
【0015】 本発明の第二の態様によれば、第1の構成要素プロファイルのセットに含まれ
る少なくとも1つの構成要素プロファイルは第1の応答プロファイルであり、第
2の構成要素プロファイルのセットに含まれる少なくとも1つの構成要素プロフ
ァイルは第2の応答プロファイルである。第1の応答プロファイルは、生物学的
サンプルが複数の初期状態から選択された1つの初期状態にある場合の、生物学
的サンプル中の少なくとも1つの細胞構成要素の少なくとも1回の測定により決
定され、そして第2の応答プロファイルは、生物学的サンプルがその選ばれた初
期状態にある場合の、生物学的サンプル中の少なくとも1つの該細胞構成要素の
少なくとも1回の測定により決定される。
【0016】 本発明の別の態様によれば、第1の構成要素プロファイルのセットに含まれる
少なくとも1つの構成要素プロファイルは第1の射影プロファイルであり、第2
の構成要素プロファイルのセットに含まれる少なくとも1つの構成要素プロファ
イルは第2の射影プロファイルである。本発明のこの態様において、第1および
第2の射影プロファイルはそれぞれ、同時変化する細胞構成要素セットの定義に
従って誘導された複数の細胞構成要素セット値を含む。第1および第2の射影プ
ロファイルは生物学的サンプルの前記複数の初期状態から選択された1つの初期
状態により決定しうる。増強プロファイルは射影プロファイルと応答プロファイ
ルのあらゆる組合せを含むことができる。
【0017】 本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルは細胞系である。細胞系は単細
胞生物のいずれかであってよく、複数の初期状態に含まれる少なくとも1つの初
期状態は、細胞壁の透過性を変えるやり方で生物学的サンプルを変更することに
より決定されうる。他の態様において、生物学的サンプルはサッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)と実質的に同一遺伝子である。
【0018】 本発明の別の態様において、生物学的サンプルは薬物流出ポンプとして作用す
る巨大分子を発現する細胞系である。この実施形態において、初期生物学的状態
のいくつかは、薬物流出ポンプとして作用する能力のある巨大分子を含まない同
一遺伝子の細胞系を選択することにより得られる。
【0019】 別の実施形態においては、生物学的サンプルが細胞系であり、複数の初期状態
から選択された第1の初期状態が第1の培養増殖条件のセットにより決定され、
複数の初期状態から選択された第2の初期状態が第2の培養増殖条件のセットに
より決定される。この実施形態において、第1の培養増殖条件および第2の培養
増殖条件は、該細胞系の生存に必要な栄養素の量、微量元素の量、無機物の量、
培養温度、および/またはサンプルを培養する容器の性質などの可変要因により
異なっている。容器の例としては、振盪フラスコ、培養プレート、インキュベー
ターなどがあるが、これらに限らない。
【0020】 本発明の別の態様においては、生物学的サンプルが細胞系であり、複数の初期
状態から選択された第1の初期状態が細胞系の第1の培養増殖密度により決定さ
れ、複数の初期状態から選択された第2の初期状態が細胞系の第2の培養増殖密
度により決定され、その際、2つの培養増殖密度は量により異なっている。
【0021】 本発明の別の態様において、生物学的サンプルは細胞系であり、複数の初期状
態から選択された第1の初期状態は生物学的サンプルと接触する薬物の第1の量
により決定され、複数の初期状態から選択された第2の初期状態は生物学的サン
プルと接触する薬物の第2の量により決定される。
【0022】 本発明の別の態様によれば、第1の初期状態は生物学的サンプルの遺伝的特徴
により決定される。本発明のこの態様において、生物学的サンプルはゲノムを有
するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)であり、複数の初
期状態から選択された第1の初期状態は、該ゲノムの一倍体状態、該ゲノムの二
倍体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子のヘテロ接合体状態、該ゲノムに含まれる
遺伝子のホモ接合体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子の突然変異、該ゲノム由来
の遺伝子の一部の欠失、該ゲノムに含まれる遺伝子の調節配列の変異、該ゲノム
に組み込まれた外因性遺伝子、および該ゲノムに組み込まれた外因性オリゴヌク
レオチドからなる群より選択された遺伝的特徴により決定される。
【0023】 本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルはゲノムを有する細胞系であり
、ここで、複数の初期状態から選択された第1の初期状態は、該ゲノムに含まれ
る遺伝子のヘテロ接合体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子のホモ接合体状態、該
ゲノムに含まれる遺伝子の突然変異、該ゲノム由来の遺伝子の一部の欠失、該ゲ
ノムに含まれる遺伝子の調節配列の変異、該細胞系のゲノムに組み込まれた外因
性遺伝子、および該ゲノムに組み込まれた外因性オリゴヌクレオチドからなる群
より選択された遺伝的特徴により決定される。
【0024】 本発明の別の態様において、生物学的サンプルは細胞系であり、複数の初期状
態から選択された第1の初期状態は、該細胞系に存在する生物学的経路の一覧表
から選択された生物学的経路の状態により決定される。本発明の一つの態様にお
いては、生物学的サンプルはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerev
isiae)と実質的に同一遺伝子であり、生物学的経路は接合(mating)経路である。
【0025】 本発明のさらに別の態様において、第1の摂動は生物学的サンプルと接触する
第1の薬物の第1の量である。別の態様において、第2の摂動は生物学的サンプ
ルと接触する第1の薬物の第2の量であり、ここで、薬物の第1および第2の量
は異なるものである。別の態様において、第2の摂動は生物学的サンプルと接触
する第2の薬物の第2の量である。
【0026】 本発明の別の態様によれば、生物学的サンプルはゲノムを含み、第1の摂動は
該ゲノムへの外因性遺伝子の導入、および/または該ゲノム中の少なくとも1つ
の遺伝子の欠失により決定される。
【0027】 本発明の別の態様によれば、第1の摂動は方法であり、該方法は生物学的サン
プルにホルモン、薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチド、無機物、培地の組成物
、ファージ、微量元素、塩、コロニー刺激因子、または放射線源を接触させるこ
とを含む。別の態様において、第1の摂動は方法であり、該方法は分子量1000ダ
ルトン未満の有機化合物のある量に生物学的サンプルを接触させることを含む。
【0028】 本発明の別の態様によれば、第1の増強プロファイルは式: で表され、式中、 Piは、第1の増強プロファイルであり、 P'1は、生物学的サンプルが複数の初期状態から選択された第1の生物学的状
態にある場合に、生物学的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定することに
より決定される第1の構成要素プロファイルセット中の第1の構成要素プロファ
イルであり、 P'Nは、生物学的サンプルが複数の初期状態から選択されたN番目の生物学的状
態にある場合に、生物学的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定することに
より決定される、第1の構成要素プロファイルセット中のN番目の構成要素プロ
ファイルであり、そして 第2の増強プロファイルは式: であり、式中、 Pjは、第2の増強プロファイルであり、 P"1は、生物学的サンプルが第1の生物学的状態にある場合に、生物学的サン
プルの第2の摂動に対する応答を測定することにより決定される第2の構成要素
プロファイルセット中の第1の構成要素プロファイルであり、 P"Nは、生物学的サンプルが複数の初期状態から選択されたN番目の生物学的状
態にある場合に、生物学的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定することに
より決定される、第2の構成要素プロファイルセット中のN番目の構成要素プロ
ファイルであり、 Nは、前記複数の初期状態中の状態の数である。
【0029】 この実施形態において、第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルを
比較して相関関係を決定するステップは、類似性の定量的測度を用いてPiとPj
比較することにより行なわれる。一態様において、この類似性の定量的測度は一
般化したドット積: であり、式中、*はドット積を表し、‖はベクトルノルムを表し、rijは類似性
を表す。本発明の別の態様において、類似性の定量的測度はShannon相互情報理
論から誘導される。
【0030】 本発明の別の態様において、各構成要素プロファイルは、生物学的サンプル中
の細胞構成要素の量をそれぞれ表す複数のエレメントを含む。したがって、細胞
構成要素は独立して、遺伝子発現レベル、遺伝子をコードするmRNAの量、タンパ
ク質の量、酵素活性の量、巨大分子により提示されるエピトープの量、2価カチ
オンの量、リン酸化タンパク質の量、脱リン酸化タンパク質の量、ホルモンの量
、およびペプチドの量からなる群より選択される。
【0031】 本発明の別の態様は、被験体に対する第1の摂動の効果を決定する方法であり
、該方法は、(a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロ
ファイルは複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファ
イルセットを組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、異
なる時期に被験体から生物学的サンプルを得ることにより決定され、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、複数の摂動か
ら選択される異なった第2の摂動に対する生物学的サンプルの生物学的応答を測
定することにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、被験体に対する第1の摂動の効果を
決定すること、を含んでなる。第1の摂動は疾病状態、該被験体のゲノムへの外
因性遺伝子の導入、および行動衛生上の危険(behavioral health risk)からなる
群より選択される。場合により、複数の構成要素プロファイルセット中の第1の
構成要素プロファイルセットは基準状態を表し、複数の構成要素プロファイルセ
ット中の他の全ての構成要素プロファイルセットは第1の構成要素プロファイル
セットの比率または対数比率として表される。場合により、第1の摂動は対象の
被験体が規則的な間隔で摂取する薬物である。
【0032】 4. 図面の簡単な説明 (図面の簡単な説明については下記参照) 5. 発明の詳細な説明 本発明の基礎は、増強されたプロファイルにより、生物学的サンプルに対する
第1の摂動と第2の摂動との間のわずかな効果を強力に識別するための方法が提
供されるという予想外の発見である。増強プロファイルは複数の応答プロファイ
ルおよび/または射影プロファイルの組合せにより誘導され、これらは生物学的
サンプルが一連の異なる出発状態に置かれた場合に生物学サンプル内の細胞構成
要素の測定をベースとする。本節では、本発明の詳細な説明とその用途を提示す
る。
【0033】 5.1. 緒言 本発明の方法を評価するために、いくつかの予備的な概念(生物学的状態、応
答プロファイル、および射影プロファイルなど)を理解しておくことが必要であ
る。これらの概念を理解したのち、当業者は増強プロファイルの概念を理解する
であろう。さらに、増強プロファイルがプロファイル比較の分野において提供す
る改善点は、本発明の詳細が記述され、実施例が提示された後に明らかとなるで
あろう。
【0034】 5.1.1. 一般的定義 生物学的サンプルおよび/または生物学的系:本明細書で用いる場合、生物学
的サンプルおよび/または生物学的系には、細胞系、細胞系の培養物、Homo sapi
en、哺乳動物などの被験者から得た組織サンプル、サッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisiae)と実質的に同一遺伝子である酵母、および当技術
分野で生物学的系と認識されているものが含まれる。
【0035】 摂動:本明細書で用いる場合、摂動には、生物学的サンプルの薬物候補物質ま
たは薬物への接触、外因性遺伝子の生物学的サンプルへの導入、生物学的サンプ
ルからの遺伝子の欠失、生物学的サンプルの培養条件の変化、および生物学的サ
ンプルの摂動方法と認識されている他の任意の技術が含まれる。
【0036】 構成要素プロファイル:構成要素プロファイルとは、増強プロファイルを形成
する際に使用されるプロファイルである。構成要素プロファイルは、例えば、下
記の応答プロファイルまたは射影プロファイルであり得る。
【0037】 行動衛生上の危険:本明細書で用いる通り、行動衛生上の危険には、限定する
ものではないが、アルコールの消費および喫煙が含まれる。
【0038】 5.1.2. 生物学的サンプル 本明細書で用いられる場合、「生物学的サンプル」という用語は、いかなる細
胞、組織、臓器または多細胞生物をも含むものと広範に定義される。生物学的サ
ンプルは、例えば、細胞または組織培養物から in vitro で誘導することができ
る。その代わりに、生物学的サンプルは生きている生物から、または単細胞生物
の集団から誘導してもよい。生物学的サンプルの状態は、その細胞構成要素の内
容物、活性または構造によって測定することができる。生物学的サンプルの状態
は、本明細書で用いられる場合、薬剤の作用または他の摂動の特性決定を含む意
図する目的のためにその細胞または生物を特性決定するのに十分である細胞構成
要素の集合の状態から測定される。また、「細胞構成要素」という用語は、この
開示においては、あらゆる種類の測定可能な生物学的変数を包含するように広範
に定義もされる。これらの構成要素の状態に関してなされる測定および/または
観察は、それらの量(すなわち、生物学的サンプル中の量もしくは濃度)、また
はそれらの活性、またはそれらの改変状態(例えば、リン酸化)、または生物学
的サンプルの生理学的状態に関連する他の測定のものであり得る。様々な実施形
態において、本発明は細胞構成要素の種々の集合に関してそのような測定および
/または観察をなすことを含む。これらの細胞構成要素の種々の集団は、生物学
的サンプルの生物学的状態の態様とも呼ばれる。
【0039】 本発明において有用に測定される生物学的サンプル(例えば、細胞もしくは細
胞培養物)の生物学的状態の一態様はその転写状態である。生物学的サンプルの
転写状態には、所定の条件のセットの下での細胞内の構成RNA種、特にmRNA種の
性質および存在量が含まれる。生物学的サンプル中の全ての構成RNA種の実質的
な画分を測定することが多いが、少なくとも目的の薬剤の作用または他の摂動を
特性決定するのに十分な画分を測定する。生物学的サンプルの転写状態は、幾つ
かの既存の遺伝子発現技術のいずれかによってcDNA存在量を測定することにより
都合よく決定することができる。多数の遺伝子のmRNAまたは転写産物レベルを測
定するためにDNAアレイを用いて、サンプルの生物学的状態を確認することがで
きる。
【0040】 有用に測定される生物学的サンプルの生物学的状態の他の態様はその翻訳状態
である。生物学的サンプルの翻訳状態には、所定の条件セット下での生物学的サ
ンプル中の構成タンパク質種の性質および存在量が含まれる。好ましくは生物学
的サンプル中の全ての構成タンパク質種の実質的な画分を測定するが、少なくと
も目的の薬剤の作用を特性決定するのに十分な画分を測定する。転写状態はしば
しば翻訳状態を代表するものである。
【0041】 生物学的サンプルの生物学的状態の他の態様もまた本発明において有用である
。例えば、生物学的サンプルの活性状態には、所定の条件セット下での生物学的
サンプル中の構成タンパク質種(および場合によっては触媒的に活性な核酸種)
の活性が含まれる。当業者には公知のように、翻訳状態はしばしば活性状態を代
表するものである。
【0042】 本発明は、関連性がある場合には、生物学的サンプルの生物学的状態の「混合
」態様にも適用可能であり、この態様においては、生物学的サンプルの生物学的
状態の異なる態様の測定を組み合わせる。例えば、混合態様の1つにおいては、
特定のRNA種の存在量および特定のタンパク質種の存在量を他の特定のタンパク
質種の活性の測定と組み合わせる。さらに、測定可能である生物学的サンプルの
生物学的状態の他のいずれの態様にも本発明を適用可能であることが以下の記載
から理解されるだろう。
【0043】 生物学的サンプル(例えば、細胞もしくは細胞培養物)の生物学的状態は幾つ
かの細胞構成要素のプロファイルで表される。このような細胞構成要素のプロフ
ァイルはベクトルSで表すことができる。 式中、Sは第i番目の細胞構成要素のレベル、例えば、遺伝子iの転写レベル
、あるいはタンパク質iの存在量もしくは活性レベルである。
【0044】 幾つかの実施形態においては、細胞構成要素を連続変数として測定する。例え
ば、転写速度は、典型的には、単位時間当たりに合成される分子数として測定す
る。また、転写速度は対照速度のパーセンテージとして測定することもできる。
しかしながら、幾つかの他の態様においては、細胞構成要素をカテゴリ的変数と
して測定することができる。例えば、転写速度を「オン」または「オフ」のいず
れかとして測定することができ、ここで値「オン」は所定の閾値を上回る転写速
度を示し、値「オフ」はその閾値を下回る転写速度を示す。
【0045】 5.1.3. 応答プロファイル 摂動、例えば、薬剤に対する生物学的サンプルの応答は、その生物学的サンプ
ルの生物学的状態の変化を観察することによって測定することができる。応答プ
ロファイルは細胞構成要素の変化の集合である。摂動mに対する生物学的サンプ
ル(例えば、細胞もしくは細胞培養物)の応答プロファイルはベクトルv(m) と定義し得る: 式中、v は摂動mの下での細胞構成要素iの応答の振幅である。幾つかの応
答プロファイルの実施形態においては、薬剤の適用に対する生物学的応答を、少
なくとも2つの遺伝子、好ましくは10を上回る遺伝子、より好ましくは100を上
回る遺伝子、および最も好ましくは1,000を上回る遺伝子の転写レベルの誘導さ
れた変化で測定する。
【0046】 幾つかの実施形態においては、生物学的応答プロファイルは、摂動の前後での
生物学的変数の差異を単に含む。幾つかの好ましい実施形態においては、この生
物学的応答は摂動が適用される前後での細胞構成要素の比と定義される。
【0047】 幾つかの好ましい実施形態においては、遺伝子iの応答が、閾値の振幅、また
は測定誤差挙動の知識から決定される信頼水準を下回る場合、v をゼロに設
定する。このような実施形態においては、測定される応答が閾値を下回る細胞構
成要素には応答値ゼロが与えられ、これに対して、測定される応答が閾値を上回
る細胞構成要素はそれらの測定応答値を保持する。この応答ベクトルの切捨て(t
runcation)は、より小さい応答のほとんどにおいて測定誤差が大きく優位を占め
るものと予想される場合、良好な方策である。切捨ての後、応答ベクトルv(m は、類似の摂動の存在に関する「一致ディテクタ(matched detector)」(例
えば、Van Trees, 1968, Detection, Estimation, and Modulation Theory Vol. I , Wiley & Sonsを参照されたい)にも近づく。切捨てのレベルが検出の目的お
よび測定誤差に基づいて設定できることは当業者に明らかである。例えば、幾つ
かの実施形態においては、転写レベルの変化が2倍、より好ましくは4倍未満で
ある遺伝子には値ゼロが与えられる。
【0048】 幾つかの応答プロファイルの好ましい実施形態においては、摂動を幾つかの強
度レベルで適用する。例えば、異なる量の薬剤を生物学的サンプルに適用してそ
の応答を観察することができる。このような実施形態においては、摂動強度uの
単一パラメータ化「モデル」関数によって各々を近似することにより摂動応答を
内挿することができる。転写状態データの近似に適する例示的モデル関数はHill
関数であり、これは調整可能パラメータa、u、およびnを有する。 これらの調整可能パラメータは、その摂動応答の細胞構成要素の各々について独 立に選択される。好ましくは、調整可能パラメータは、各摂動強度でのモデル関 数(例えば、Hill関数、式3)と対応する実験データとの差の平方の合計が最小 になるように細胞構成要素の各々について選択する。この好ましいパラメータ調
整法は最小二乗フィットとして当該技術分野において公知である。他の可能性の
あるモデル関数は多項式フィッティングに基づく。モデルフィッティングおよび
生物学的応答のより詳細な説明は、FriendおよびStoughtonによるMethods of De
termining Protein Activity Levels Using Gene Expression Profiles(米国仮
出願第60/084,742号、1998年5月8日出願)に開示されており、その全内容は全て
の目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】 5.1.4. 射影プロファイル 本発明の方法は、任意の数の応答プロファイルおよび/または射影プロファイ
ルを含む増強プロファイルを比較するために有用である。射影プロファイルは、
同時調節遺伝子である遺伝子セットの考察の後に最も良く理解されるであろう。
射影プロファイルは、遺伝子セットを含む多数の型の細胞構成要素を分析するた
めに有用である。
【0050】 5.1.4.1. 同時調節された遺伝子および遺伝子セット 特定の遺伝子は群をなしてそれらの発現を増加または減少させる傾向がある。
遺伝子は、それらが類似の調節配列パターン、すなわち、転写因子結合部位を有
する場合、それらの転写速度を協力して増加または減少させる傾向がある。これ
が特定のシグナル伝達入力に対する協調応答の機構である(例えば、Madhaniお
よびFink, 1998, The riddle of MAP kinase signaling specificity, Transact ions in Genetics 14:151-155;ArnoneおよびDavidson, 1997, The hardwiring
of development: organization and function of genomic regulatory systems,
Development 124:1851-1864を参照)。必要なタンパク質または細胞構造の異な
る成分を生成する個々の遺伝子は同時変化する傾向がある。重複遺伝子(例えば
、Wagner, 1996, Genetic redundancy caused by gene duplications and its e
volution in networks of transcriptional regulators, Biol. Cybern. 74:557
-567を参照されたい)も、突然変異が調節領域における機能的相違をもたらさな
い程度まで同時変化する傾向がある。さらに、調節配列はモジュラーであるため
(例えば、Yuhら, 1998, Genomic cis-regulatory logic: experimental and co
mputational analysis of a seaurchin gene, Science 279:1896-1902を参照さ
れたい)、2つの遺伝子が共通して有するモジュールが多いほど、それらの転写
速度が同時変化すると予想される条件の多様性が大きくなる。コアクチベーター
も関与するため、モジュール間の分離も重要な決定因子である。したがって、要
約すると、あらゆる有限の条件セットについて、遺伝子が全て独立に変化するわ
けではなく、かつ同時変化する遺伝子およびタンパク質の簡素化サブセットが存
在することが期待される。これらの同時変化する遺伝子セットは、有限の条件セ
ット内での全てのプロファイル変化を説明する、数学的な意味での完全な原理を
形成する。
【0051】5.1.4.2. クラスター分析による遺伝子セットの分類 多くの用途に対して、多種多様な条件にわたって同時調節される基本遺伝子セ
ットを見出すことが望ましい。このような基本遺伝子セットを同定するための好
ましい実施形態はクラスター化アルゴリズムを含む(クラスター化アルゴリズム
の概説は、例えば、Fukunaga, 1990, 「統計学的パターン認識(Statistical Pa
ttern Recongnition)」,第2版, Academic Press, San Diego;Everitt, 1974,
「クラスター分析(Cluster Analysis)」, London: Heinemann Educ. Books;H
artigan, 1975,「クラスター化アルゴリズム(Clustering Algorithms)」, New
York: Wiley;Sneath and Sokal, 1973,「数値分類学(Numerical Taxonomy)
」, Freeman;Anderberg, 1973,「応用のためのクラスター分析(Cluster Analy
sis for Applications)」, Academic Press: New Yorkを参照)。
【0052】 クラスター分析を用いる実施形態の幾つかにおいては、生物学的サンプルに多
種多様な摂動を施しながら、多数の遺伝子の発現をモニターする。遺伝子発現の
測定を含むデータの表がクラスター分析に用いられる。多種多様な条件にわたっ
て同時変化する遺伝子を含む基本遺伝子セットを得るためには、多数の摂動また
は条件を用いる。クラスター分析はm×k次元を有するデータの表に対して行い
、ここでmは条件または摂動の合計数であり、かつkは測定する遺伝子の数であ
る。
【0053】 多くのクラスター化アルゴリズムがクラスター化分析に有用である。クラスタ
ー化アルゴリズムは、クラスターを形成する場合に、対象物間の相違点または距
離を用いる。幾つかの実施形態においては、用いられる距離は多次元空間におけ
るユークリッド距離: であり、式中I(x,y)は遺伝子Xと遺伝子Yとの距離であり;XおよびY
は摂動iの下での遺伝子発現応答である。ユークリッド距離を平方してさらに遠
隔の対象物に徐々に大きくなる重みをかけることができる。あるいは、距離基準
は、例えば遺伝子XとYとの間の、マンハッタン距離であってもよく、これは:
によって与えられる。ここでもやはり、XおよびYは摂動iの下での遺伝子
発現応答である。他の幾つかの距離の定義は、チェビシェフ距離、パワー距離お
よび不一致率である。次元のデータが自然のままでカテゴリー的である場合、I
(x,y)=(X≠Yの数)/iとして定義される不一致率が本発明の方法に
特に有用である。細胞応答に関連して特に有用である、他の有用な距離定義はI
=1−rであり、式中rは応答ベクトルX、Y間の相関係数であって、正規化ド
ット積X・Y/|X||Y|とも呼ばれる。
【0054】 種々のクラスター連関法則が遺伝子セットの特定に有用である。単一連関法、
最近接点法は、2つの最も近い対象物間の距離を測定する。それとは反対に、完
全連関法は、異なるクラスターにある2つの対象物間の最大距離で距離を測定す
る。この方法は、遺伝子または他の細胞構成要素が天然に別個の「凝集(clump
)」を形成する場合には特に有用である。あるいは、非加重ペア群平均法が、2
つの異なるクラスターにおける対象物ペア全ての間の平均距離として距離を定義
する。この方法もまた、天然に別個の「凝集」を形成する遺伝子または他の細胞
構成要素をクラスター化するのに非常に有用である。最後に、加重ペア群平均法
も利用可能である。この方法は、それぞれのクラスターのサイズを重みとして使
用することを除けば非加重ペア群平均法と同じである。この方法は、クラスター
のサイズが非常に可変すると推測される実施形態に特に有用である(Sneathおよ
びSokal、1973,「数値分類学(Numerical taxonomy)」, San Francisco: W. H.
Freeman & Co.)。他のクラスター連関法則、例えば非加重および加重ペア群セ
ントロイドおよびウオード法もまた本発明のいくつかの実施形態に有用である。
例えば、Ward, 1963, J. Am. Stat Assn. 58: 236;Hartigan, 1975,「クラスタ
ー化アルゴリズム(Clustering algorithms)」, New York: Wileyを参照のこと
【0055】 クラスター化セットにおける摂動の多様性が大きくなるにつれて、明瞭に区別
し得る遺伝子セットはより小さく、より多くなる。しかしながら、非常に多数の
実験セットさえも上回る、統一性を保有する小さな遺伝子セットが存在する。こ
れらの遺伝子セットを「削減不能(irreducible)遺伝子セット」と称する。典型
的には、多数の多様な摂動を適用し、かかる削減不能遺伝子セットを得るもので
ある。
【0056】 遺伝子セットのクラスター化は、図表により示されることが多く、これは「樹
形図」と称する。遺伝子セットは、樹形図中の多数のより小さな分枝、または少
数のより大きな分枝に基づいて、異なるレベルで樹形図を横断してカットするこ
とにより定義され得る。カットのレベルの選択は、予測される個別の応答経路の
数に一致するように行い得る。経路の数についての、入手し得る以前の情報が少
ないかまたは皆無である場合には、樹形図を、実際に異なる数の分枝へ分割しな
ければならない。「実際に異なる」とは、個別の分枝間の距離の最小値によって
定義される。典型的な値は0.2〜0.4の範囲にあるが(0が完全な相関状態にあり
、1は相関が全くないことを示す)、より質の悪いデータ、またはトレーニング
セットにおけるより回数の少ない実験については値は大きくなるであろうし、良
質なデータおよびトレーニングセットにおいてより多く行った実験については、
値は小さくなるであろう。
【0057】 好ましくは、「実際に異なる」とは、樹形図中の各分枝に関する統計的有意性
の客観的な試験とともに定義され得る。本発明の一態様においては、実験のセッ
トを横断する各細胞構成要素の応答に関する実験の見出しを、モンテカルロ法で
無作為化することにより、客観的試験を定義した。
【0058】 実施形態のいくつかにおいては、客観的試験を以下の方法で定義する: pkiを、実験iにおける構成要素kの応答とする。Π(i)を実験のインデックスの
ランダム置換とする。次いで、多数(約100〜1000)の異なるランダム置換の各々
について、pkΠ(i)をたてる。元の樹形図の各分枝について、各置換に関して: (1)置換していない元のデータに対して用いたのと同じアルゴリズム(この
場合は「hclust」)を用いて階層的クラスター化を行う; (2)1つのクラスターから2つのクラスターへ移動する際の、クラスター中
心に関しての総分散における分別の改善fを計算する; 式中、Dkは、帰属するクラスターの中心に関しての構成要素kの距離基準(平均
)の二乗である。上付(superscript)の1または2は、それが全分枝の中心に関
するものであるのか、または2つのサブクラスターのうちの好適なクラスターの
中心に関するものであるのかを示す。このクラスター化法において使用する距離
関数Dの定義には、かなりの自由度がある。これらの例においては、D=1-rであり
、rは、実験セットを横断する1つの構成要素の応答間の、別の応答に対しての
(または平均クラスター応答に対しての)相関係数である。
【0059】 モンテカルロ法から得られた分別の改善(fractional improvement)の分布は、
特定の分枝が有意ではないという無意味な仮説の下での分布の推定である。その
後、置換していないデータによる分枝に関する現実の分別の改善は、有意性を規
定するその無意味な仮説から得られる累積的確立分布と比較する。標準偏差は、
無意味な仮説分布のための対数正規モデルに適合させることにより導かれる。こ
の手法を用いると、標準偏差は、例えば、約2より大きな数値は、その分枝が95
%の信頼水準で有意であることを示す。クラスター分析により特定された遺伝子
セットは典型的に、基礎的な生物学的有意性を有する。
【0060】 クラスター分析法の別の態様は、以下の節に記載するプロファイル射影(profi
le projection)において使用するための基準ベクトルの定義を提供する。
【0061】 基準ベクトルVのセットはk×nの次元を有し、kは遺伝子の数、nは遺伝子セッ
トの数を表す。
【0062】 V(n) kは基準ベクトルnにおける遺伝子インデックスkの振幅の寄与である。い
くつかの実施形態においては、遺伝子kが遺伝子セットnのメンバーであればV(n ) k =1となり、遺伝子kが遺伝子セットnのメンバーでないならば、V(n) k=0となる
。いくつかの実施形態において、遺伝子セットを定義するために使用したトレー
ニングデータセットにわたって、V(n) kは遺伝子セットにおける遺伝子kの応答に
比例する。
【0063】 いくつかの好ましい実施形態においては、エレメントV(n) kは、遺伝子セット
n内の遺伝子の数の平方根で除することにより、各V(n)が単位長さを有するよう
に正規化する。これにより、直交するだけでなく(クラスター樹形図をカットす
ることにより派生する遺伝子セットをバラバラにする)、正規直交(単位長さ)
の基準ベクトルが生じる。この正規化の選択によって、プロファイルにおけるラ
ンダム測定誤差が、振幅が各nに匹敵するように、V(n) k上に射影する。正規化
は、大きな遺伝子セットが、類似性演算の結果を支配することを防止する。
【0064】5.1.4.3. 調節機構に基づく遺伝子セットの分類 遺伝子セットは、遺伝子調節の機構に基づいて定義することもできる。その調
節領域が同じ転写因子結合部位を有している遺伝子は、より同時調節(co-regul
ated)されやすい。幾つかの好ましい実施態様では、目的とする遺伝子の調節領
域は、複合アラインメント分析を用いて比較され、可能な共有転写因子結合部位
が解読される(Stormo及びHartzell, 1989, 「非整列DNA断片由来のタンパク質
結合部位の同定(Identifying protein binding sites from unaligned DNA fra
gments)」, Proc Natl Acad Sci 86:1183-1187;Hertz及びStormo, 1995, 「非
整列DNA中の共通パターン及びタンパク質配列の同定:ペナライジングギャップ
の偏りの大きな統計的基礎(Identification of consensus patterns in unalig
ned DNA and protein sequences: a large-deviation statistical basis for p
enalizing gaps)」, Proc of 3rd Intl Conf on Bioinformatics and Genome R esearch , Lim及びCantor編集, World Scientific Publishing Co., Ltd. Singap
ore, pp.201-216)。例えば、下記の実施例3が示すように、20個の遺伝子中のGe
n4に応答する共通プロモーター配列は、それらの20個の遺伝子が多種多様な摂動
に亘って同時調節される原因となりうる。
【0065】 遺伝子の同時調節は、同じ転写因子に対する結合部位を有するものに限定され
ない。同時調節される(同時変化する)遺伝子は、上流の遺伝子の産物が下流の
遺伝子の活性を調節する、上流/下流関係にあってもよい。多種類の遺伝子調節
ネットワークが存在することは当業者には周知である。また、当業者であれば、
本発明の方法が、任意の特定種類の遺伝子調節機構に限定されないことを理解す
る。2つの遺伝子が摂動に応答してそれらの活性変化によって同時調節されるこ
とが、調節機構に由来する可能性があるならば、その2つの遺伝子は、ある遺伝
子セット中にクラスター化されているかもしれない。
【0066】 目的とする遺伝子の調節の完全な理解が不十分であるため、クラスター分析と
調節機構の知識(acknowledge)を組み合わせて、より明確化された遺伝子セッ
トを誘導することがしばしば好ましい。幾つかの実施形態では、目的の遺伝子調
節が部分的に知られている場合、K−平均クラスター化(K-means clustering)
を用いて、遺伝子セットをクラスター化することができる。K−平均クラスター
化は、多数の遺伝子セットが調節機構の理解によって予め決定されている場合に
特に有用である。一般に、K−平均クラスター化は、多数の所望のクラスターを
確実に生産することを強制される(constrained)。従って、プロモーター配列
の比較が、測定された遺伝子が3つの遺伝子セット中に入るはずであることを示
すなら、K−平均クラスター化を用いてクラスター間で可能な最大の区別(great
est possible distinction)をもった3つの遺伝子セットを確実に生産すること
ができる。
【0067】5.1.4.4. 射影プロファイルの表示 遺伝子の発現値は遺伝子セットの発現値に変換しうる。この工程は、射影と呼
ばれる。幾つかの実施形態では、射影は以下の通りである: 式中、pは発現プロファイルであり、Pは射影プロファイルであり、Piは遺伝子セ
ットiの発現値であり、Vは基準ベクトルの予め定義されたセットである。基準ベ
クトルは、式7で次のように予め定義されている(前記第5.1.4.2節): 式中、V(n) kは基準ベクトルnの細胞構成成分インデックスkの振幅である。
【0068】 1つの好ましい実施形態では、遺伝子セット発現値は、単に遺伝子セット内の
遺伝子の発現値の平均である。幾つかの他の実施形態では、高度に発現された遺
伝子が遺伝子セット値を支配しないように、平均に重きがおかれている(weight
ed)。遺伝子セットの発現値の集合(collection)が射影プロファイルである。
【0069】5.2. プロファイル比較及び分類 基準遺伝子セットが一旦選択されれば、射影プロファイルPiは、iによってイ
ンデックス化された(indexed)プロファイルの任意のセットについて得ること
ができる。Pi間の類似性は、2つの理由で、元のプロファイルpi間よりも明瞭に
見られる。第1に、外来(extraneous)遺伝子の測定誤差は、排除されているか
又は平均化されている(averaged out)。第2に、基準遺伝子セットは、プロフ
ァイルpiの生物学を捕らえる傾向にあり、それ故、それらの個々の応答成分に対
する検出器と合致している。プロファイルの分類及びクラスター化の両者は、目
的の類似性測定基準(これをSと呼ぶ)に基づいており、ここで、1つの有用な
定義は、 である。
【0070】 この定義は、ベクトルPi及びPjの間の一般化された角度コサインである。それ
は、Pi及びPjの間の従来の相関係数の射影バージョンである。プロファイルpi
、Sijが最大である他のプロファイルpjに最も類似しているように思われる。新
規なプロファイルは、既知の生物学的有意性のプロファイル(既知薬物に対する
応答パターン又は特定の生物学的経路での摂動など)とのそれらの類似性に応じ
て分類できる。新規なプロファイルのセットは、距離測定基準 (ここで、このクラスター化は、応答測定のセット全体の元のより大きな空間で
のクラスター化と類似しているが、正に述べたところの測定誤差を低減する効果
及び適切な生物学の増強した捕獲という利点を有している)を用いてクラスター
化できる。
【0071】 任意に観察された類似性Sijの統計的有意性は、相関関係なしという無意味な
仮説下に生成された経験的確率分布を用いて評価できる。この分布は、元のプロ
ファイルpにおける構成要素インデックスの多くの異なるランダム置換に対する
射影、上記式(9)及び(10)、を行うことによって生成される。すなわち、順序づ
けられたセットpkをpII(k)で置換する(ここで、II(k)は、100〜1000の異なるラ
ンダム置換に対する順列である)。偶然に上昇した類似性の確率Sijは、そのと
きは、元の置換されていないデータを用いて観察される類似性を超える類似性Si j (置換された)に対するこれらの順列の分数である。
【0072】5.3. 増強プロファイルおよび強力な識別 5.3.1. 強力な識別のための方法 本発明の方法において、生物学的サンプルは、例えば突然変異の導入または増
殖条件の変化により他の状態に配置され、所定の摂動に対してより応答する生物
学的サンプルを作製する。この概念を図2に例示する。図2の状態1において、
薬物は限定された応答のみを有し、それらの効果の比較は不明瞭であり、ほんの
わずかな情報に基づいている。多くの状態または条件から得たコンカテマー化プ
ロファイルからなる増強プロファイルを作成することによって、プロファイルは
さらに情報を与えるものとなる。プロファイルはより情報を与えるものとなるた
め、患者に及ぼす種々の摂動(例として薬物など)の効果に関する改善された詳
細を図で提供しうる。
【0073】 種々の状態は、いくつかを挙げると、異なる培養増殖条件、バックグラウンド
の遺伝子系統、またはさらなる薬物処置でありうる。これらのさらなる状態は、
非応答細胞における特定の応答を誘導するように従来の生物学的知識に基づいて
選択してもよいし、または、得られる増強応答プロファイルのさらなる多様性に
よって平均してより良好な識別が可能な傾向がある知識を用いて多少なりともラ
ンダムに選択してもよい。初期状態を変更して応答を誘導させうる技術には、例
えば、生物の遺伝的改変による薬物流出ポンプの阻害または細胞壁透過性の増大
、栄養不良培地における増殖、プレート上対容積中の培養による増殖、培地への
特定の微量元素または無機塩類の添加、一倍体、二倍体およびヘテロ接合バック
グラウンド株の使用、細胞状態に広く効果を及ぼす接合経路などの経路の活性化
が含まれ、これらは比較すべき刺激に対する応答性を変更すると考えられる。
【0074】 強力な増強プロファイル比較は、幅広い用途があり、例えばin vivoにおける
薬物活性または疾病状態の強力な識別のための方法を提供する。このような用途
では、多数の条件が、その時点または他の環境傷害もしくは医学的傷害による患
者により提供され、そしてこれらの種々の宿主条件にて得られた多数のプロファ
イルのコンカテマーにより提供される。プロファイルは、基準状態または任意の
第2摂動に関する構成要素レベルの比率もしくは対数(比)を作成することによ
り、基準状態からの偏差(departure)プロファイルとして表されうる。
【0075】 数学的には、増強プロファイルの比較は、第5.2節に記載のような単一状態に
おいて得られたプロファイルの比較と類似した様式で行われる。コンカテマー化
プロファイルは、長さNLのP=[pl; p2;...; pN] で記載されうる。この場合、p1
は第1状態のプロファイルであり、Nは状態の数であり、Lは単一状態において測
定される細胞構成要素の数である。一般化したドット積: などの類似性の測定は、単一状態プロファイルp1について定義するように、コン
カテマー化プロファイルを定義するために使用しうる。等式(12)において、*
はドット積を意味し、||はベクトルノルム(長さ)を意味する。類似性に関する
他の多くの定量的測度が可能であり、例えば、Shannon相互情報(mutual informa
tion) [S. E. ShannonおよびW. Weaver、「伝達の数学理論(The mathematical
theory of communication)」, University of Illinois Press, Urbana, IL, 1
949]、または等式 (12)の変形がある。この場合、プロファイルのエレメントは
、それらが正(負)の閾値を超える場合には「1」(「−1」)に設定され、そ
うでない場合には「0」に設定される。
【0076】 続いて、これらの類似性の測定は、問合せプロファイルに最も類似したプロフ
ァイルの増強プロファイルライブラリーの検索、および増強プロファイルセット
を毒性又は有効性などの特性を共有すると思われる群にクラスター化を支持する
【0077】5.3.2. 薬物探索用途の例示 増強プロファイルの強力な識別は、以下の節に概説する薬物探索の複数の状況
に幅広い用途がある。
【0078】5.3.2.1. 薬物候補リード選択 本発明の方法は、薬物候補リード選択の分野に用途がある。多くの薬物探索の
労力において、標的酵素は、所有および/または非所有の化合物の大きなライブ
ラリーに対してスクリーニングしうる。そのようなスクリーニングの労力は1次
アッセイと呼ばれる。1次アッセイによって、1日当たり数千もの化合物をスク
リーニングする強力なフォーマットまで少なくなることが多い。これらの労力は
、典型的に選択された標的酵素の活性を阻害する所望の活性を示す多数の化合物
を得ることができる。
【0079】 所有のアッセイにおいて成功した化合物は、典型的にヒットまたはリードと呼
ばれる。1次アッセイから得たヒットは、典型的に、適切に設計された2次アッセ
イにおいてスクリーニングされる。2次アッセイのフォーマットが薬物探索射影
の範囲によって変更しうるため、典型的に2次アッセイには全細胞に対する化合
物の用量応答が含まれる。従ってそのような細胞に基づくアッセイにおいて、い
くつかの細胞構成要素の存在、例えばTNF分泌などは、細胞を増大する濃度の試
験化合物中でインキュベートするなどのように測定される。
【0080】 試験化合物の適切性を測定するために、2次アッセイは、典型的に、いくつか
の基準化合物の活性を有する1次アッセイから得たヒットの活性と比較するため
に使用される。基準化合物は適切な臨床上設定された既知薬物または単純に従来
のリードにおいて効力が証明されているものでありうる。新規に開発される化合
物と活性を有する基準化合物との比較は、発展のため、および新規化合物と予測
されるかどうかを決定するために優れたツールとして機能する。
【0081】 一態様において、本発明の方法は、改良2次アッセイとして機能しうる。従っ
て、基準化合物を用いて適切な細胞系に投与する効果は、1次スクリーニングア
ッセイから得たヒットのそれぞれを用いて同じ細胞系に投与する効果と比較しう
る。この実施形態において、細胞系の適切な細胞構成要素は、本明細書に記載ま
たは当技術分野で公知の任意の技法を用いて測定しうる。さらに、これらの測定
は、細胞系が種々の異なる初期生物学的状態に配置された場合に行いうる。例え
ば細胞応答プロファイルは、基準化合物を、種々の細胞培養濃度、温度もしくは
他の培養条件において培養した後の細胞と接触させた場合に測定しうる。これら
の応答プロファイルをそれぞれ組み合わせて基準増強プロファイルを作成する。
類似の増強プロファイルは、1次スクリーニングアッセイから得たヒットのそれ
ぞれについて作成し、これらの増強プロファイルを基準プロファイルと比較する
。個々の応答または射影プロファイルよりもむしろ目的の各化合物から作成した
増強プロファイルを比較することにより、それぞれの試験化合物の効果の間のわ
ずかな相違を検出することができる。既知の毒性もしくは所望の生理学的事象に
関連する細胞構成要素のわずかな変化でさえも、本発明の方法を用いて統計学的
に有意となりうる。
【0082】5.3.2.2. 薬物候補確認 薬物探索プロセスにおいて、潜在的な薬物候補は、in vitroでの1次アッセイ
および細胞に基づく2次アッセイにおいて優れた活性を示すことが多い。化合物
が1次および2次アッセイの両方で成功した場合でも、依然として化合物を確認
する必要性がある。化合物の確認は、試験化合物が、多数の生理学的プロセスに
及ぼす非選択的影響よりも所望の標的に及ぼす選択的影響のために1次および2
次アッセイで成功したことを確認するという困難な問題に直面する。所望の標的
に対し選択的に影響を及ぼす化合物は、多種多様な細胞構成要素に対し選択的に
影響を及ぼす化合物よりも好ましい。例えば、過剰な疎水性を有する化合物は、
非選択的疎水性相互作用により標的酵素と結合する可能性がある。そのような過
剰な疎水性を有するタンパク質に関する問題は、おそらく、非選択的に複数の細
胞構成要素と結合すること、および/またはその上複数の細胞構成要素を阻害す
ることである。あるクラスの全ての酵素を非選択的に阻害する化合物もまた望ま
しくない。例えば、目的の標的キナーゼの阻害の他に、非選択的キナーゼ阻害剤
(スタウロスポリン(staurosporine))などは、数十個のキナーゼと結合し、そ
れを阻害するだろう。試験化合物は、それが細胞に対し毒性を有するか、または
該化合物が目的の生物学的経路に関連しない生物学的経路をノックアウトするた
め、2次アッセイにおいて十分に機能しうる。
【0083】 本発明の方法は、薬物探索の労力において試験化合物を確認するための改良手
段を提供する。本発明のこの実施形態において、生物学的サンプルに対し既知の
効果を及ぼす化合物に基づく増強プロファイル(基準増強プロファイル)は、確
認が必要な化合物から作成された増強プロファイルと比較される。例えば、生物
学的サンプルに対し一般的な毒性の効果を及ぼす基準化合物は、別個の増強プロ
ファイルを有しうる。従ってそのような基準毒性化合物と目的の試験化合物との
間の相関関係が低いことが望ましい。同様に、既に確認された化合物から得られ
た増強プロファイルと試験化合物との間の高い相関関係は、試験化合物が適切な
生物学的経路に選択的に影響を及ぼすことを示しうる。既に確認されている化合
物は、動物試験から得てもよいし、または適切な科学刊行物から得てもよい。
【0084】5.3.2.3. 種々の患者集団における薬物治療レジメの最適化 本発明の方法は、種々の患者集団における薬物治療レジメを最適化するための
改良方法を提供する。一実施形態において、患者から採取した生物学的サンプル
から作成した増強プロファイルは、好ましい臨床結果を有する患者のモデル薬物
応答を表す基準増強プロファイルと比較しうる。続いてそのような比較から得ら
れたデータを使用して、特定の薬物治療レジメを最適化し、それにより薬物処置
の有効性を最大化し、応答時間および出費の点でコストを低減させることができ
る。
【0085】 患者から得た増強プロファイルはまた、好ましくない症候を表す前に、不適当
な薬物暴露または望ましくない副作用による不十分な治療的応答を発見するため
に使用しうる。強力な増強プロファイルの比較はまた投与治療レジメによる低い
コンプライアンスを探知するために使用しうる。他の実施形態において、増強プ
ロファイルの定期的な比較を用いて、同時に摂取された薬物との相互作用または
患者の生理学的状態の変化の効果を検出およびモニターしうる。
【0086】5.3.3. 診断用途の例示 5.3.3.1. 予防的健康管理 生物学的サンプルに及ぼす摂動のわずかな効果の測定における改善された能力
のために、増強プロファイルの比較は、予防的健康管理の分野において非常に貴
重なサービスを提供しうる。本発明の一実施形態において、生物学的サンプルは
経時的に慣例的な基準に基づいて被験者から採取する。増強プロファイルは、こ
れらの生物学的サンプルに基づいて作成する。これらの増強プロファイルとデー
タベース(複数のモデル疾病状態を含む)との比較は、疾病が任意の外的な臨床
症候で発症する前に、被験者が特定の疾病を患うことの事前警告を提供する。そ
のような診断ツールは、癌などの疾病において特に評価される。なぜなら、早期
治療によって回復および/または生存の機会が改善させるからである。適切に選
択した増強プロファイルの比較は、また被験者の健康の危険に関して有用な情報
を提供するだろう。従って、適切に設計された増強プロファイルを用いて、患者
が食事の変更、運動量の増加、特定のビタミン類の摂取、または他の習慣状況の
変更をすべきかどうかを決定しうる。基準増強プロファイルのデータベースが拡
充されているため、強力なプロファイルの比較方法の有用性は高まるだろう。
【0087】5.3.3.2. 種々の患者集団における疾病のモニタリング 強力なプロファイルの比較は、疾病のモニタリングの分野において有用性があ
る。例えば、薬物治療レジメが開始する前および後の癌患者から得られた増強プ
ロファイルの強力な比較は、特定の癌薬物治療レジメが患者に及ぼす効果に関す
る評価可能な情報を医師に提供しうる。本発明の方法によれば、かかる増強プロ
ファイルを増強プロファイルのデータベースと比較して、被験者の増強プロファ
イルが、薬物が有効な効果、効果なし、毒性副作用またはそれらの任意の組み合
わせである患者と相関するかどうかを判定する。本発明の他の態様において、増
強プロファイルを使用してエイズ患者の健康を追跡する。現在のところ、生物学
的マーカー(T細胞の計数など)は、エイズウイルスの進行の初期の指標として
使用されている。しかしながら疾病の進行を判定することは困難がある。なぜな
ら、そのアプローチが、Epivir(登録商標)、Crixivan(登録商標)、Retrovir(登
録商標)、Viracept(登録商標)、およびZerit(登録商標)などの薬物の効力による
未知の時間経過にわたる休止に向けられているためである。エイズ患者の強力な
増強プロファイルの比較は、該患者が上記の薬物を摂取している場合であっても
、疾病の進行を追跡するための改良手段を提供しうる。そのような増強プロファ
イルはさらに、現在利用可能な薬物の組み合わせを任意の所定の患者について最
適化することに関する有用な情報を医師に提供しうる。
【0088】 5.3.3.3 患者の臨床的結果の予測 患者の臨床的結果の予測は疾患のモニタリングに関係する。患者が癌などの生
命をおびやかす疾患であると診断される時、しばしば、医師は患者に助言するの
に、同様な悩みを持つ患者の過去の生存率にもとづいて粗生存率統計に依存する
ことを余儀なくされる。例えば、癌が骨に転移していない乳癌の女性は、自分の
生存率が、乳癌で骨に転移していない他の女性の生存率と同等であると助言され
るであろう。しかしながら、生存統計にもとづく助言は、年齢、人種、健康習慣
、遺伝的罹患性、および/または病態を示す発現レベルの変化した遺伝子などの
さまざまな環境変数を考慮に入れないことがしばしばある。年齢、人種、健康習
慣、遺伝的罹患性などの、関連する環境変数にもとづく改善された死亡率統計を
提供する研究は、せいぜい断片的なものである。さらに、そのような研究は一般
的基準でおこなわれる。例えば、ある研究は生存に関する喫煙または人種の影響
を調査するかもしれない。しかし、このような研究は、何千という遺伝子の発現
レベルが追跡される喫煙者の総合的プロファイルを創り出すものではない。した
がって、人種、喫煙、などの環境変数に相関させようとする研究でさえも、正確
な臨床的結果を予測するという分野においては、有用性が限られている。
【0089】 本発明の他の実施形態においては、疾病の様々な段階をとおして患者から得ら
れる増強プロファイルは、国家のおよび/または個人のデータベースに保存する
ことができる。次に、本発明の強力なプロファイル比較法を用いて、新しい患者
から得られる増強プロファイルをデータベース内のプロファイルと比較すること
ができる。
【0090】 5.4 生物学的応答プロファイルの決定方法 本発明は、多くの種類の摂動に対する生物学的サンプルの応答を測定する能力
を利用するものである。この分節は、生物学的応答を測定するためのいくつかの
具体的な方法を提供する。
【0091】 5.4.1 DNAアレイを利用した転写物アッセイ 転写率は、次の分節で説明する核酸もしくは核酸模擬プローブのアレイへのハ
イブリダイゼーション法、または、後続の分節で説明するような他の遺伝子発現
法により、測定することができる。しかし、測定したとしても、結果は、転写物
の絶対的相対量、またはRNA存在量の比率(この比率は通常、DNA発現比率
(RNA分解速度に差はないものとする)を反映する)を表す数値を含む応答デ
ータのいずれかである。本発明の他の様々な実施形態では、転写状態以外の生物
学的状態の局面、例えば翻訳状態、活性状態、または混合局面を測定することが
できる。
【0092】 好ましくは、転写状態の測定は、この分節で記載されている転写物アレイへの
ハイブリダイゼーションによって行われる。転写状態を測定する他の方法がこの
分節で後述されている。
【0093】 好ましい実施形態では、本発明は、「転写物アレイ」(ここではマイクロアレ
イとも呼ぶ)を用いる。転写物アレイを用いて、生物学的サンプルの転写状態を
分析することができ、特に、対象薬物の段階的レベルに、もしくは、対象生物学
的経路への段階的摂動に暴露した生物学的サンプルの転写状態を測定することが
できる。
【0094】 ある実施形態では、細胞に存在するmRNA転写物を表す検出可能に標識したポリ
ヌクレオチド(例えば、全細胞mRNAから合成した蛍光標識cDNA)を、マイクロア
レイにハイブリダイズすることにより、転写物アレイを作製する。マイクロアレ
イは、細胞または生物のゲノム中の遺伝子の多く、好ましくは、これら遺伝子の
大部分またはほぼ全部の産物に対する結合(例えば、ハイブリダイゼーション)
部位の定序アレイを有する表面である。マイクロアレイは、多くの方法で作製す
ることができるが、そのいくつかを以下で説明する。どのように作製したとして
も、マイクロアレイは、共通した特定の特性を有する。すなわち、アレイは、再
現可能で、所定アレイの多数のコピーを作製することができ、容易に、相互に比
較される。好ましくは、マイクロアレイは小さく、通常5cm2より小さい。また
、マイクロアレイは、結合(例えば、核酸ハイブリダイゼーション)条件の下で
安定した材料から作製される。マイクロアレイ中の所定の結合部位、もしくは、
特異なセットの結合部位は、細胞中の単一遺伝子の産物を特異的に結合すること
になる。特定のmRNA当たり、2以上の物理的結合部位(以後、「部位」と呼ぶ)
が存在する可能性があるが、明瞭化のために、以下の説明では、単一の部位があ
ると仮定する。
【0095】 細胞のRNAに相補的なcDNAを作製し、適切なハイブリダイゼーション条件下で
マイクロアレイにハイブリダイズする場合には、特定の遺伝子に対応するアレイ
の部位へのハイブリダイゼーションのレベルが、その遺伝子から転写されたmRNA
の細胞における出現率を反映することは理解されよう。例えば、全細胞mRNAに相
補的な、検出可能に(例えば、蛍光団を用いて)標識したcDNAをマイクロアレイ
にハイブリダイズする場合には、該細胞中で転写されていない遺伝子に対応する
(すなわち、該遺伝子の産物を特異的に結合することが可能な)アレイ上の部位
は、シグナル(例えば、蛍光シグナル)をほとんど、もしくは全く持たず、また
、コードされたmRNAが出現する遺伝子は、比較的強いシグナルを持つことになる
【0096】 好ましい実施形態では、2つの異なる細胞に由来するcDNAを、マイクロアレイ
の結合部位にハイブリダイズさせる。薬物応答の場合には、1つの生物学的サン
プルを薬物に暴露し、同じタイプの別の生物学的サンプルを同薬物に暴露しない
でおく。経路応答の場合には、1つの細胞を経路摂動に暴露し、同じタイプの別
の細胞を同経路摂動に暴露しないでおく。2つの細胞型の各々に由来するcDNAは
それぞれ異なって標識し、これらを識別できるようにする。ある実施形態では、
例えば、薬物で処理した(もしくは、経路摂動に暴露した)細胞に由来するcDNA
は、フルオレセイン標識dNTPを用いて合成し、また、薬物に暴露していない第2
の細胞由来のcDNAは、ローダミン標識dNTPを用いて合成する。両cDNAを混合し、
マイクロアレイにハイブリダイズする場合には、該マイクロアレイの各部位につ
いて、各cDNAセットからのシグナルの相対強度を測定すると共に、特定のmRNAの
存在量の相対差を検出する。
【0097】 以上説明した実施例では、薬物処理(もしくは、経路摂動した)細胞に由来す
るcDNAは、蛍光団を刺激すると、緑色蛍光となるのに対し、処理していない細胞
に由来するcDNAは、赤色蛍光となる。その結果、薬物処理が細胞中の特定mRNAの
相対存在量に直接または間接的に何の作用も及ぼさない場合には、このmRNAは、
両細胞において均等に出現し、逆転写時に、赤色標識および緑色標識cDNAは、均
等に出現するだろう。マイクロアレイにハイブリダイズされると、その種のRNA
に対する結合部位は、両蛍光団に特有の波長を発する(また、組合わさって、茶
色を帯びる)。対照的に、薬物暴露細胞を、細胞におけるmRNAの出現率を直接ま
たは間接的に増加させる薬物で処理すると、緑色蛍光と赤色蛍光の比は高くなる
。薬物がmRNAの出現率を減じる場合には、この比は低下する。
【0098】 2色蛍光標識付けおよび検出スキームを使用して、遺伝子発現の変化を規定す
ることは、例えば、Shenaらの、1995、「相補性DNAマイクロアレイを用いた遺伝
子発現パターンの定量的モニタリング(Quantitative monitoring of gene expr
ession patterns with a complementary DNA microarray)」、Science 270:46
7-470に記載されている。2つの異なる蛍光団で標識したcDNAを使用する利点は
、2つの細胞状態における各アレイ化遺伝子に対応するmRNAレベルの直接的かつ
内部的に制御された比較ができること、また、実験条件(例えば、ハイブリダイ
ゼーション条件)の些細な相違による変動が、その後に行う分析に影響しないこ
とである。しかし、単一細胞からのcDNAを使用して、例えば、薬物処理細胞もし
くは経路摂動細胞と未処理細胞とにおける特定mRNAの絶対量を比較することも可
能であることが理解されよう。
【0099】 5.4.1.1 マイクロアレイの作製 マイクロアレイは当分野においては公知であり、遺伝子産物(例えば、cDNAや
mRNA、cRNA、ポリペプチド、およびこれらの断片)に対応する配列を有するプロ
ーブが特異的にハイブリダイズできるかまたは所定の位置で結合できる表面から
なる。1実施形態によれば、マイクロアレイはそれぞれの位置が遺伝子によりコ
ードされる産物(例えば、タンパク質またはRNA)に対して別々の結合部位を表示
するアレイ(すなわち、マトリックス)であるが、その結合部位は生物ゲノムの大
部分もしくはほとんど全部の産物に対して存在する。好ましい実施形態において
、「結合部位」(以下「部位」という)とは、特定のコグネイトcDNAが特異的にハ
イブリダイズできる核酸または核酸類似体である。結合部位の核酸または核酸類
似体は、例えば、合成オリゴマー、全長cDNA、全長より短いcDNAまたは遺伝子断
片であってもよい。
【0100】 好ましい実施形態によれば、マイクロアレイは標的生物ゲノムの全遺伝子また
はほとんどすべての遺伝子の産物に対する結合部位を含んでいるが、そうした包
括性は必ずしも必要ではない。通常、マイクロアレイは、ゲノム中の遺伝子の少
なくとも約50%、多くの場合は少なくとも約75%、より多くの場合は少なくとも約
85%、さらに多くの場合は約90%よりも多く、そしてほとんどの場合は少なくとも
約99%に対応する結合部位をもっている。好ましくは、マイクロアレイは対象薬
物の作用に関連するかまたは対象とする生物学的経路の中の遺伝子の結合部位を
もっている。「遺伝子」は、好ましくは少なくとも50、75または99個のアミノ酸
のオープンリーディングフレーム(ORF)であり、該ORFからはメッセンジャーRNA
が生物(例えば、単細胞の場合)において転写されるか、または多細胞生物では一
部の細胞において転写される。ゲノム中の遺伝子の数は、その生物によって発現
されるmRNAの数により、またはゲノムの十分に特性づけされた部分からの外挿(e
xtraporation)によって見積もることができる。対象生物のゲノムが配列決定さ
れている場合には、ORFの数を知ることができ、DNA配列の解析によりmRNAコード
領域を同定することができる。例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharo
myces cerevisiae)のゲノムは完全に配列決定されており、99個のアミノ酸より
長い約6275個のオープンリーディングフレーム(ORF)をもつと報告されている。
これらのORF解析によれば、タンパク質産物を特定する可能性のある5885個のORF
があることがわかっている(Goffeauら., 1996, Life with 6000 genes, Science
274:546-567、本文献はその全文を参考として組み込むものとする)。一方、ヒ
トゲノムは約105個の遺伝子をもつとされている。
【0101】 5.4.1.2 マイクロアレイ用核酸の調製 上記したように、特定のコグネイトcDNAが特異的にハイブリダイズする「結合
部位」は、通常、その結合部位に付着している核酸または核酸類似体である。1
実施形態において、マイクロアレイの結合部位は、生物ゲノムにおける各遺伝子
の少なくとも1部に相当するDNAポリヌクレオチドである。これらのDNAは、ゲノ
ムDNAやcDNA(例えば、RT-PCRによる)またはクローニングされた配列から遺伝子
セグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得ることができる。遺伝
子またはcDNAの既知配列に基づいてPCRプライマーを選択すると、非反復断片(す
なわち、10塩基より多い隣接する同一配列をマイクロアレイの他の断片と共有し
ない断片)の増幅が起こる。必要な特異性および最適な増幅特性をもつプライマ
ーをデザインするには、コンピュータプログラムが有用である。非常に長い遺伝
子に対応する結合部位の場合、その遺伝子の3'末端近くのセグメントを増幅する
のが望ましいことがある。そうすると、オリゴdTをプライマーとして得られるcD
NAプローブをマイクロアレイにハイブリダイズさせる場合に、全長よりも短いプ
ローブが効率的に結合する。マイクロアレイ上の各遺伝子断片は約50 bpから約2
000 bpまでの長さが典型的であるが、より典型的には約100 bpから約1000 bp、
通常は約300 bpから約800 bpの長さである。PCR法は周知であり、例えば、Innis
ら編、1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic
Press Inc. San Diego, CAに記載されている。この文献はその全文を参考とし
て組み込むものとする。マイクロアレイ用の核酸を作る他の方法は、例えば、N-
ホスホネートまたはホスホロアミダイト化学を用いる合成ポリヌクレオチドまた
はオリゴヌクレオチドの合成によるものである(Froehlerら, 1986, Nucleic Aci
d Res 14:5399-5407; McBrideら, 1983, Tetrahedron Lett. 24:245-248)。合成
配列は長さ約15〜約500塩基が典型的であり、さらに典型的には約20〜約50塩基
である。いくつかの実施形態において、合成核酸には、例えばイノシンのような
非天然塩基が含まれる。上記したように、ハイブリダイゼーションの結合部位と
して核酸類似体を使ってもよい。適当な核酸類似体の例としてはペプチド核酸が
ある(例えば、Egholmら, 1993, 「PNA はワトソン・クリック水素結合規則に従
う相補性オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする」Nature 365:566-568参照。
また米国特許第5,539,083号参照)。
【0102】 その他の実施形態において、結合(ハイブリダイゼーション)部位は遺伝子のプ
ラスミドもしくはファージクローン、cDNA(例えば、発現配列タグ)またはそれ
らのインサートから作られる(Nguyenら, 1995, 「cDNAクローンアレイの定量ハ
イブリダイゼーションにより測定したマウス胸腺の差次的遺伝子発現」Genomics
29:207-209)。さらに他の実施形態によれば、結合部位のポリヌクレオチドはRN
Aである。
【0103】 5.4.1.3 固体表面への核酸付着 ガラス、プラスティック(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリル
アミド、ニトロセルロースもしくはその他の材料で作られた固相支持体に核酸ま
たはその類似体を付着させる。核酸を表面に付着させる好ましい方法は、Schena
et al., 1995, Quantitative monitoring of gene expression patterns with
a complementary DNA microarray, Science 270:467-470に概説されているよう
に、ガラス板にプリントする方法である。この方法は、cDNAのマイクロアレイを
作るのに特に有用である。DeRisi et al., 1996, Use of a cDNA microarray to
analyze gene expression patterns in human cancer, Nature Genetics 14:45
7-460;Shalon et al., 1996, A DNA microarray system for analyzing comple
x DNA samples using two-color fluorescent probe hybridization, Genome Re
s. 6:639-645;およびSchena et al., 1995, Parallel human genome analysis;
microarray-based expression of 1000 genes, Proc. Natl. Acad. Sci. USA
93:10539-11286も参照されたい。
【0104】 マイクロアレイを作る第2の好ましい方法は、高密度オリゴヌクレオチドアレ
イを作る方法である。in situ合成用写真リソグラフィー手法(Fodor et al., 19
91, Light-directed spatially addressable parallel chemical synthesis, Sc
ience 251:767-773; Pease et al., 1994, Light-directed oligonucleotide ar
rays for rapid DNA sequence analysis, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:502
2-5026; Lockhart et al., 1996, Expression monitoring by hybridization to
high-density oligonucleotide arrays, Nature Biotech 14:1675;米国特許第5
,578,832号、第5,556,752号および第5,510,270号参照。これらはいずれもその全
文を参考として組み込むものとする)または所定のオリゴヌクレオチド類を迅速
に合成して付着させるその他の方法(Blanchard et al., 1996, High-Density ol
igonucleotide arrays, Biosensors & Bioelectronics 11:687-90)を用いて、表
面上の所定位置で所定の配列に相補性のオリゴヌクレオチド数千個を含むアレイ
を作る方法は公知である。これらの方法を使用する場合、既知の配列をもつオリ
ゴヌクレオチド(例えば、20-mer)が誘導体化したガラススライドのような表面に
直接合成される。通常、得られたアレイは、標的とする各転写物に対し複数のプ
ローブを含む。オリゴヌクレオチドプローブは選択的にスプライシングされたmR
NAを検出するように、あるいは色々なタイプの対照として作用するように選択す
ることができる。
【0105】 他の好ましいマイクロアレイ作製法は、インクジェット印刷法により固相上に
直接オリゴヌクレオチドを合成することであるが、この方法は例えば、1998年1
月16日に出願されたBlanchardによる米国特許出願第09/008,120号、発明の名称
「溶媒微小滴を用いる化学合成」に記載されている。本文献はその全文を参考と
して本明細書に組み込むものとする。
【0106】 例えばマスキング(Maskos and Southern, 1992, Nuc. Acids Res. 20:1679-16
84)によりマイクロアレイを作るその他の方法も使用することができる。原理的
には、任意のタイプのアレイ、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜上の
ドットブロットを使用することができる(Sambrook et al., Molecular Cloning
- A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory
, Cold Spring Harbor, New York, 1989)が、当業者には理解されるように、ハ
イブリダイゼーションの容量は小さいので、非常に小さいアレイが好ましい。
【0107】 5.4.1.4 標識プローブの作製 全RNAおよびポリ(A)+RNAを作る方法は公知であり、一般的には、上記Sambrook
らにより記載されている。1実施形態によれば、グアニジニウムチオシアネート
溶解のあとCsCl遠心分離を用いて、本発明の対象となる各種細胞からRNAを抽出
する(Chirgwin et al., 1979, Biochemistry 18:5294-5299)。オリゴdTセルロー
スによる選択でポリ(A)+RNAを選択する(上記Sambrookら参照)。対象細胞には野
生型細胞、薬物に暴露した野生型細胞、改変細胞および薬物に暴露した改変細胞
が含まれる。
【0108】 オリゴdTプライマーまたはランダムプライマーを用いる逆転写によりmRNAから
標識cDNAを作る。これらはともに当分野で公知の方法である(例えば、Klug and
Berger, 1987, Methods Enzymol. 152:316-325参照)。逆転写は、検出可能な標
識に結合させたdNTP、最も好ましくは蛍光標識したdNTPの存在下で行うことがで
きる。あるいは、単離されたmRNAは、標識dNTPの存在下での2本鎖cDNAのin vitr
o転写により合成した標識アンチセンスRNAに変換することができる(Lockhart et
al., 1996, Expression monitoring by hybridization to high-density oligo
ncleotide arrays, Nature Biotech. 14:1675 - 本文献はその全文を参考として
組み込むものとする)。その他の実施形態によれば、cDNAまたはRNAプローブは検
出可能な標識の非存在下で合成することができ、その後、例えば、ビオチン化dN
TPやrNTPを導入するか、もしくは何らかの類似手段(例えば、ビオチンのソラレ
ン誘導体をRNAと光架橋する)と、その後の標識ストレプトアビジン(例えば、フ
ィコエリトリン結合ストレプトアビジン)またはその同等物の添加により、標識
を行ってもよい。
【0109】 蛍光標識したプローブを用いる場合、適当な蛍光発光団が多数知られており、
フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetu
s)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX (Amersham)などがある(例えば
、Kricka, 1992, Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Die
go, CA参照)。蛍光団として、容易に識別できるように明らかに異なる発光スペ
クトルをもつ蛍光団の対を選択できることが理解されよう。
【0110】 他の実施形態においては、蛍光標識以外の標識が使用される。例えば、放射性
標識または異なる放射スペクトルをもつ放射性標識の対を使用することができる
(Zhao et al., 1995, High density cDNA filter analysis: a novel approach
for large-scale, quantitative analysis of gene expression, Gene 156:207
; Pietu et al., 1996, Novel gene transcripts preferentially expressed in
human muscles revealed by quantitative hybridization of a high density
cDNA array, Genome Res. 6:492)。しかしながら、放射性粒子が散乱し、従って
広い間隔の結合部位が必要であるため、放射性アイソトープを使用する実施形態
はそれほど好ましいものではない。
【0111】 1実施形態において、標識cDNAは、0.5 mM dGTP、dATP、dCTP、さらに0.1 mM d
TTPおよび蛍光デオキシリボヌクレオチド(例えば、0.1 mM ローダミン110 UTP (
Perkin Elmer Cetus)または0.1 mM Cy3 dUTP (Amersham))を含有する混合物を42
℃で60分間、逆転写酵素(例えば、SuperScriptTM II, LTI Inc.)とともにインキ
ュベーションすることによって合成する。
【0112】 5.4.1.5 マイクロアレイへのハイブリダイゼーション 核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件は、プローブが特定のアレイ部
位と「特異的に結合する」かまたは「特異的にハイブリダイズする」ように選ぶ
。すなわち、プローブは相補性核酸配列をもつ配列アレイ部位とハイブリダイズ
し、2本鎖を作り、またはこれと結合する。1本のポリヌクレオチド配列は、ポリ
ヌクレオチドの短い方が25塩基以下である場合には、標準の塩基対則を用いると
ミスマッチがないとき、またはポリヌクレオチドの短い方が25塩基より長い場合
には、5%以下のミスマッチしかないときに、もう一方の配列と相補的であるとさ
れる。好ましくは、ポリヌクレオチド類は完全に相補性である(ミスマッチなし)
。陰性対照を含むハイブリダイゼーションアッセイを行うことにより、特定のハ
イブリダイゼーション条件では特異的なハイブリダイゼーションが生じることを
容易に示すことができる(例えば、上記Shalon et al.および上記Chee et al.参
照)。
【0113】 最適なハイブリダイゼーション条件は標識されたプローブおよび固定化された
ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの長さ(例えば、オリゴマー対200
塩基より大きいポリヌクレオチド)およびタイプ(例えば、RNA、DNA、PNA)に依存
する。核酸の特異的(すなわち、ストリンジェントな)ハイブリダイゼーション条
件の一般的なパラメーターは、上記Sambrookら、およびAusubel et al., 1987,
Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Inte
rscience, New Yorkに記載されている。SchenaらのcDNAマイクロアレイを使用す
る場合、ハイブリダイゼーション条件は、5 x SSCプラス0.2% SDS中、65℃で4時
間のハイブリダイゼーションを行った後、低いストリンジェンシーの洗浄緩衝液
(1 x SSCプラス0.2% SDS)中、25℃で洗浄し、次いで高いストリンジェンシーの
洗浄緩衝液(0.1 x SSCプラス0.2% SDS)中、25℃で10分間洗浄するのが典型的で
ある(Shena et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:10614)。有効な
ハイブリダイゼーション条件は、例えば、Tijessen, 1993, Hybridization With
Nucleic Acid Probes, Elsevier Science Publishers B. V.およびKricka, 199
2, Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press San Diego, CAにも記
載されている。
【0114】 5.4.1.6 シグナル検出およびデータ解析 蛍光標識プローブを使用する場合、転写物アレイの各部位における蛍光発光は
走査型共焦点レーザー顕微鏡により検出するのが好ましい。1実施形態によれば
、適当な励起線を用いて、使用した2つの発光団それぞれについて別々の走査を
行う。あるいはまた、2つの蛍光団に特異的な波長において同時に試料を発光さ
せ、その2つの蛍光団からの発光を同時に分析できるようなレーザーを使用する
ことができる(例えば、Shalon et al., 1996, A DNA microarray system for an
alyzing complex DNA samples using two-color fluorescent probe hybridizat
ion, Genome Research 6:639-645 - 本文献はその全文を参考として本明細書に
組み込むものとする)。好ましい実施形態によれば、コンピュータ制御X-Yステー
ジと顕微鏡対物レンズを備えたレーザー蛍光スキャナーによりアレイを走査する
。2つの蛍光団をマルチラインの混合ガスレーザーで順次励起し、その発光を波
長により分けて、2つの光電子増倍管で検出する。蛍光レーザー走査装置はSchen
a et al., 1996, Genome Res. 6:639-645および本書に引用された他の文献に記
載されている。あるいはまた、Ferguson et al., 1996, Nature Biotech. 14:16
81-1684に記載された光ファイバー束を使用して、多数の部位で同時にmRNA存在
量をモニターしてもよい。
【0115】 シグナルを記録し、そして好ましい実施形態においては、例えば、デジタルボ
ードに12ビットアナログを用いてコンピュータ解析を行う。1実施形態によれば
、グラフィックプログラム(例えば、Hijaak Graphics Suite)を用いて走査イメ
ージの斑点を除いた後、各部位の各波長において平均的なハイブリダイゼーショ
ンのスプレッドシートを作るイメージ格子プログラムにより解析する。必要であ
れば、2つの蛍光チャンネル間の「混線」(またはオーバラップ)について実験的
に決定した補正をおこなってもよい。転写物アレイ上にある特定のハイブリダイ
ゼーション部位については、2つの蛍光団の発光比を計算することができる。発
光比はコグネイト遺伝子の絶対発現レベルとは独立しているが、その発現が薬物
投与、遺伝子欠失あるいはその他の試験した現象により有意に変わる遺伝子にと
っては有用である。
【0116】 したがって、2つの生物学的サンプル中のmRNAの相対存在量は、摂動および決
定されたその大きさとして評価する(すなわち、存在量は試験したmRNAの2つのソ
ースにおいて異なる)か、または摂動されないとして評価する(すなわち、相対存
在量が同じ)。種々の実施形態において、少なくとも約25%、より一般的には約50
%の係数の2つのRNAソース間の差(一方のソースからのRNAはそのソースにおいて
他のソースよりも25%多く存在する)、大抵の場合は約2(2倍多い)、3(3倍多い)ま
たは5(5倍多い)の倍率の2つのRNAソース間の差があれば、摂動として評価される
【0117】 好ましくは、ポジティブもしくはネガティブとして摂動を同定する他、摂動の
大きさを決定するのが有利である。これは、上記したように、示差標識付けに使
用した2つの蛍光団の発光比を算出するか、あるいは当業者に自明の類似方法に
よって行うことができる。
【0118】 5.4.2 生物学的経路応答と遺伝子セット 特定の生物学的経路に対する摂動の遺伝子発現応答を観察することによって、
遺伝子セットを決定することができる。例えば、対象となる生物学的サンプルの
転写状態を反映する転写物アレイは、異なる対象サンプルのmRNAにそれぞれ対応
する(すなわち相補的な)、異なって標識された2種類のプローブの混合物をマイ
クロアレイにハイブリダイズさせることによって作製される。2つのサンプルは
同じ型、すなわち、同じ種および株であってもよいが、限られた数の遺伝子座で
遺伝的に異なるものである。あるいは、それらは同一遺伝子(isogeneic)であ
り、環境歴において異なるものである(例えば、薬物暴露対非暴露)。
【0119】 本発明の1態様においては、遺伝子セットを定義する目的として、多数の摂動
に応答した遺伝子発現の変化が、クラスター化の樹形図の構築に使用される。好
ましくは、摂動は異なる生物学的応答経路を標的とするべきである。経路摂動に
対する発現応答を測定するために、生物学的サンプルは対象経路に対する段階的
摂動にさらされる。摂動に暴露したサンプルと摂動に暴露しなかったサンプルを
用いて転写物アレイを構築する。転写物アレイは薬物へ暴露することによって発
現が変更されたmRNAを発見し、その変更の程度を測定するためのものである。こ
れによって経路-応答関係が得られる。
【0120】 段階的薬物暴露および段階的摂動制御パラメーターのレベル密度は個々の遺伝
子応答における鮮明度と構造により支配される。応答の最も急な部分が急であれ
ばあるほど、応答を適切に分解するのに必要なレベルは密になる。
【0121】 さらに、実験誤差を減少させるために、2色の異なるハイブリダイゼーション
実験における蛍光標識を逆転させて、個々の遺伝子やアレイのスポット位置に特
有の偏りを減少させることが好ましい。言い換えれば、最初に、測定する2つの
細胞由来のmRNAの一方のラベリング法(例えば、摂動細胞を第1の蛍光物質で標
識し、非摂動細胞を第2の蛍光物質で標識する)により遺伝子発現を測定し、次
いで、逆のラベリング法(例えば、摂動細胞を第2の蛍光物質で標識し、非摂動
細胞を第1の蛍光物質で標識する)により2つの細胞からの遺伝子発現を測定す
ることが好ましい。暴露のレベルや摂動制御パラメーターレベルにわたる複数の
測定により、追加的な実験誤差の調節が提供される。十分なサンプリングを行う
ことにより、誤差の平均化と応答機能の構造消失の間の応答データを内挿するた
めに用いるスプライン関数Sの幅を選択する場合に、うまく折り合いをつけるこ
とができる。
【0122】 5.4.3 段階的摂動応答データの測定 薬物応答データを測定するために、段階的に変化させた量の目的の薬物、対象
の候補薬物、または段階的強度の他の摂動に前記細胞を暴露する。細胞をin vit
roで増殖させる際には、通常、細胞用の栄養培地に化合物を加える。酵母の場合
、初期対数期に酵母を収穫することが好ましいが、これは、この初期対数期には
発現パターンが収穫時期に比較的影響を受けないからである。いくつかのレベル
の薬物または他の化合物を添加することができる。使用されるこの特定のレベル
は該薬物の特定の性質に依存し、通常約1ng/ml〜100 mg/mlの間であろう。ある
場合には、DMSOなどの溶媒に薬物を可溶化してもよい。
【0123】 前記薬物に暴露された細胞および暴露されない細胞を用いて転写物アレイを構
築し、このアレイを測定して、薬物への暴露によって発現が変化したmRNAを見つ
け出す。これによって薬物応答が得られる。
【0124】 経路応答の測定についてと同様に薬物応答についても、二色示差ハイブリダイ
ゼーションの場合、逆ラベリングを用いて測定することも好ましい。また、薬物
応答が急速に変化する領域の十分な分解能が、薬物暴露の使用レベル(例えば約1
0のレベルの薬物暴露を使用)によって証明されることも好ましい。
【0125】 5.4.4 転写状態の他の測定方法 細胞の転写状態は当業界で公知の他の遺伝子発現技術によって測定可能である
。そのような技術のいくつか、例えば二重制限酵素消化と段階的に導入するプラ
イマーとを組合わせる方法(例えばZabeauらによって1992年9月24日に出願され
た欧州特許出願公開第0 534 858A1号明細書参照)、あるいは、特定のmRNA末端
に最も近接する部位をもつ制限断片を選択する方法(例えばPrasharら, 1996, P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 93:659-663参照)によって、電気泳動分析のための
ある程度複雑な制限断片のプールが作られる。他の方法はcDNAプールを統計的
にサンプリングするものであり、このようなサンプリングは例えば複数のcDNA
の各々における十分な塩基(例えば20〜50塩基)を配列決定して各cDNAを同定す
ることによるか、あるいは、特定のmRNA末端に対する既知の位置に形成される
短いタグ(例えば9〜10塩基)を配列決定することによる(例えばVelculescu, 199
5, Science 270:484-487参照)。
【0126】 5.4.5 生物学的状態についての他の態様の測定 射影および応答プロファイルを生成するため、翻訳状態や活性状態などの転写
状態以外の生物学的状態の態様、もしくはそれらの混合した態様を測定して、薬
物および経路応答を得ることができる。本節ではこれら実施形態の詳細を説明す
る。
【0127】 5.4.5.1. 翻訳状態の測定にもとづく実施形態 翻訳状態の測定はいくつかの方法で行うことができる。例えば、全ゲノムのタ
ンパク質のモニタリング(すなわち「プロテオーム」Goffeauら、前掲)は、結
合部位が細胞ゲノムによってコードされた固定化された複数のタンパク質種に特
異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含むマイクロアレイを構築するこ
とにより、実施することができる。抗体は、コードされたタンパク質の実質的な
部分に対するものであるか、または、少なくとも目的とする薬物の作用に関連す
るそれらタンパク質に対するものであるのが好ましい。モノクローナル抗体を作
る方法は周知である(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laborato
ry Manual, Cold Spring Harbor, New York参照。本文献は参照により実際上そ
の実体を明細書中に組み入れるものとする)。好ましい実施形態によれば、細胞
のゲノム配列にもとづいてデザインされた合成ペプチド断片に対するモノクロー
ナル抗体を構築する。そのような抗体アレイを用い、細胞由来のタンパク質を上
記アレイと接触させ、その結合を当分野で公知のアッセイ法によりアッセイする
【0128】 他の実施形態によれば、タンパク質は2次元ゲル電気泳動システムによって分
離することができる。2次元ゲル電気泳動は当分野で周知であり、典型的には、1
次元で等電点電気泳動の後、2次元でSDS-PAGE電気泳動を行うことからなる。例
えば、Hames et al., 1990, Gel Electrophoresis of Proteins: A Practical A
pproach, IRL Press, New York; Shevchenko et al., 1996, Proc. Nat'l. Acad
. Sci. USA 93:1440-1445; Sagliocco et al., 1996, Yeast 12:1519-1533; Lan
der, 1996, Science 274:536-539参照。得られた電気泳動図は、質量分析法、ウ
ェスタンブロッティングならびにポリクローナルおよびモノクローナル抗体を用
いるイムノブロット分析、ならびに内部およびN末端マイクロシーケンシングを
含む、多数の手法により分析することができる。これらの手法を用いると、薬物
に暴露された細胞中(例えば、酵母中)、または、特異的な遺伝子の、例えば、欠
失もしくは過剰発現により改変された細胞中を含む、所定の生理条件下で産生さ
れる全タンパク質の実質的な画分を同定することができる。
【0129】 5.4.5.2 生物学的状態についての他の態様に基づく実施形態 本発明の方法は、モニター可能な細胞構成要素であればいかなる構成要素にも
適用することができる。例えば、摂動の特性評価に関連するタンパク質の活性、
例えば、薬物作用が測定可能な場合、プロファイルはそのような測定に基づくこ
とができる。活性の測定は、特性評価しようとする特定の活性適するものであれ
ば、いかなる機能的、生化学的または物理的手段によっても行うことができる。
上記活性が化学的な形質転換を伴う場合には、細胞タンパク質を天然の基質と接
触させて形質転換の速度を測定することができる。上記活性が多量体ユニットに
おける結合に関与する場合、例えば、活性化DNA結合複合体とDNAとの結合にから
む場合には、結合したタンパク質の量もしくは転写されたmRNA量などの、その結
合による2次的な結果を測定することができる。また、例えば、細胞サイクル制
御などの機能的な活性だけが公知である場合には、該機能の性能を観察すること
ができる。しかしながら、公知であれ測定されたものであれ、タンパク質活性の
変化は応答データとなる。
【0130】 限定するものではない代替の実施形態によれば、応答データは、細胞の生物学
的状態についての態様を組み合わせて構成されていてもよい。応答データは、例
えば、あるmRNAの量の変化、あるタンパク質の量の変化およびあるタンパク質活
性の変化により構成することもできる。
【0131】 5.5 細胞状態を調査する方法 様々な細胞レベルにおける細胞状態を標的化して摂動させる方法は、当分野で
次第に知られるようになってきており、その応用も増えてきている。特定の細胞
構成要素 (例えば、遺伝子発現、RNA濃度、タンパク質の量、タンパク質活性な
ど)を特異的に標的とし(例えば、徐々に増加したり活性化するかまたは徐々に
減少させたり阻害することによって)制御可能に改変できる方法であれば、いか
なる方法も細胞状態の摂動を生じさせるのに用いることができる。細胞構成要素
の制御可能な改変は、その結果として、改変された細胞構成要素において生じる
細胞状態を制御可能に摂動させる。好ましい改変方法では、複数の各細胞構成要
素、最も好ましくは、そのような細胞構成要素の実質的画分を個々に標的とする
ことができる。
【0132】 以下の方法は、細胞構成要素を改変して、細胞状態応答を生じる細胞状態摂動
を作り出すのに使用できる方法の例示である。細胞状態の摂動は、そのゲノムま
たは発現された配列情報が利用でき、かつ、特定の遺伝子の発現を制御可能に改
変できる方法が利用可能な生物体由来の細胞腫において生じさせることができる
。ゲノム配列決定情報は、ヒト、センチュウ、シロイヌナズナ(Arabidopsis)
およびSaccharomyces cerevisiaeなど、いくつかの真核生物に使用することがで
きる。
【0133】 以下に記載する例示方法には、タイトレート可能な発現系の使用、トランスフ
ェクションまたはウイルス形質導入系の使用、RNAの量または活性を直接に改変
すること、タンパク質の量を直接に改変すること、そして特定の公知作用をもつ
薬物(もしくは一般に化学的な部分)の使用を含むタンパク質活性の直接的な改変
がある。
【0134】 5.5.1 タイトレート可能な発現系 出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて利用できる、いくつかの公知でか
つタイトレート可能な、もしくは同等に制御可能な発現系はいずれも有用である
(Mumberg et al., 1994, Regulatable promoter of Saccharomyces cerevisiae:
comparison of transcriptional activity and their use for heterologous e
xpression, Nucl. Acids Res. 22: 5767-5768)。通常、遺伝子発現は、その染色
体上で、制御しようとする遺伝子のプロモーターを、制御可能な外因性プロモー
ターで置換して翻訳を制御することにより制御される。酵母において最も普通に
用いられる制御可能なプロモーターはGAL1プロモーターである(Johnston et al.
, 1984, Sequences that regulate the divergent GAL1-GAL10 promoer in Sacc
haromyces cerevisiae, Mol Cell. Biol. 8:1440-1448)。このGAL1プロモーター
は、増殖培地中のグルコースの存在により強く抑制され、グルコース量の減少と
ガラクトースの存在とにより、ゆるやかな勾配で高レベルの発現へと徐々に変わ
っていく。GAL1プロモーターは、通常、目的遺伝子の発現の制御を5〜100倍の範
囲にわたって行うことを可能にする。
【0135】 他のよく用いられるプロモーター系としては、増殖培地中メチオニンの不存在
により誘導されるMET25プロモーター(Kerjan et al., 1986, Nucleotide sequen
ce of the Saccharomyces cerevisiae MET25 gene, Nucl. Acids. Res. 14: 786
1-7871)、および銅によって誘導されるCUP1プロモーター(Mascorro-Gallardo et
al., 1996, Construction of a CUP1 promoer-based vector to modulate gene
expression in Saccharomyces cerevisiae, Gene 172: 169-170)がある。これ
らのプロモーター系はすべて、増殖培地での制御部分の量が徐々に増加して変化
することにより遺伝子発現を徐々に増加するように制御できるという点で、制御
可能である。
【0136】 上記に挙げた発現系で1つ不利なことは、プロモーター活性(例えば、炭素源の
変化やある種のアミノ酸の除去により影響される)の制御がしばしば、細胞生理
学上の他の変化をもたらし、その他の遺伝子の発現レベルを独立に変化させてし
まうことである。酵母について最近開発された系、すなわち、Tet系は、この問
題点を大幅に軽減している(Gari et al., 1997, A set of vectors with a tetr
acycline-regulatable promoter system for modulated gene expression in Sa
ccharomyces cerevisiae, Yeast 13: 837-848)。哺乳動物の発現系から採用され
たTetプロモーター(Gossen et al., 1995, Transcriptional activation by tet
racyclines in mammalian cells, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-5551)
は、抗生物質テトラサイクリンまたは構造的に関連する化合物であるドキシサイ
クリンの濃度によってモジュレートされる。従って、ドキシサイクリンの不存在
下では、プロモーターは高レベルの発現を誘導し、ドキシサイクリンのレベル増
加が加わると、プロモーター活性の抑制が増強される。中程度レベルの遺伝子発
現は、中程度の濃度の薬物を添加することにより定常状態で達成することができ
る。さらに、プロモーター活性の最大抑制を与えるドキシサイクリンの濃度(10
μg/ml)では、野生型酵母細胞の増殖速度になんら有意な影響はない(Gari et al
., 1997, A set of vectors with a tetracycline-regulatable promoter syste
m for modulated gene expression in Saccharomyces cerevisiae, Yeast 13: 8
37-848)。
【0137】 哺乳動物細胞では、遺伝子発現をタイトレートするいくつかの手段が利用でき
る(Spencer, 1996, Creating conditional mutations in mammals, Trends Gene
t. 12:181-187)。上記のとおり、Tet系は、その原形である、ドキシサイクリン
の添加が転写を抑制する「正(Forward)」の系においても、また、ドキシサイ
クリン添加が転写を刺激するより新しい「逆(Reverse)」の系においても広く
使われている(Gossen et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5547-555
1; Hoffmann et al., 1997, Nucl. Acids. Res. 25:1078-1079; Hofmann et al.
, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5185-5190; Paulus et al., 1996, Jo
urnal of Virology 70:62-67)。通常、哺乳動物細胞で使用される制御可能なも
う1つのプロモーター系は、エバンスらが開発したエクダイソン誘導系(No et al
., 1996, Ecdysone-inducible gene expression in mammalian cells and trans
genic mice, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:3346-3351)であり、この系では、
発現は培養細胞に添加するムリステロン(muristerone)レベルにより制御される
。さらに、Schreiber, Crabtreeらによって開発された「化学物質誘導二量化」(
CID)系(Belshaw et al., 1996, Controlling protein association and subcell
ular localization with a synthetic ligand that induces heterodimerizatio
n of proteins, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:4604-4607; Spencer, 1996, C
reating conditional mutations in mammals, Trends Genet. 12:181-187)およ
び同様な系を酵母で利用すれば、発現をモジュレートすることができる。この系
においては、目的とする遺伝子をCID応答性プロモーターの制御下におき、2個の
相異なるハイブリッドタンパク質を発現する細胞中にトランスフェクトする。ハ
イブリッドタンパク質の1つはFK506に結合するFKBP12と融合したDNA結合ドメイ
ンを含んでなる。もう一方のハイブリッドタンパク質は、これもまたFKBP12と融
合した転写活性化ドメインを含む。CIDを誘導する分子は、FK1012、すなわち、D
NA結合ハイブリッドタンパク質および転写活性化ハイブリッドタンパク質の両方
と同時に結合することができるFK506のホモ二量体型である。FK1012の存在が徐
々に増えていくことにより、制御された遺伝子が徐々に転写されて活性化される
のである。
【0138】 上記の哺乳動物発現系のそれぞれについては、当業者に広く知られているよう
に、目的とする遺伝子を制御可能なプロモーターの制御下におき、そして抗生物
質耐性遺伝子と共にこの構築物をもつプラスミドを培養した哺乳動物細胞にトラ
ンスフェクトする。一般に、プラスミドDNAをゲノムに組み込んだ後、薬物耐性
のコロニーを選択し、制御された遺伝子の適当な発現についてスクリーニングを
行う。あるいは、制御された遺伝子は、プラスミドの複製に必要なエプスタイン
・バーウイルスの成分を含有するpCEP4 (Invitrogen, Inc.)のような、エピソー
ムプラスミドに挿入することもできる。
【0139】 好ましい実施形態によれば、上記のごときタイトレート可能な系は、対応する
外因性遺伝子および/または遺伝子活性を欠いた細胞や生物体、例えば、外因性
遺伝子が破壊されているか欠損している生物体に組み込んで使用する。そのよう
な「ノックアウト」を作る方法は当業者に周知である。例えば、Pettitt et al.
, 1996, Development 122:4149-4157; Spradling et al., 1995, Proc. Natl. A
cad. Sci. USA, 92:10824-10830; Ramirez-Solis et al., 1993, Methods Enzym
ol. 225:855-878; and Thomas et al., 1987, Cell 51:503-512を参照されたい
【0140】 5.5.2 哺乳動物細胞に対するトランスフェクション系 標的とする遺伝子のトランスフェクションまたはウイルス形質導入により、哺
乳動物細胞の生物学的細胞状態に制御可能な摂動を導入することができる。好ま
しくは、標的遺伝子のトランスフェクションまたは形質導入は、目的とする標的
遺伝子を自然には発現しない細胞と一緒に用いることができる。そのような非発
現細胞は、通常は標的遺伝子を発現しない組織から誘導することができるか、ま
たは、細胞中標的遺伝子を特異的に突然変異させることができる。目的とする標
的遺伝子は、例えば、pcDNA3.1+/-系(Invitrogen, Inc.)やレトロウイルスベク
ターなど、多くの哺乳動物の発現プラスミドの1つにクローニングすることがで
き、そして非発現宿主細胞に導入することができる。標的遺伝子を発現するトラ
ンスフェクトまたは形質導入された細胞は、発現ベクターによりコードされた薬
物耐性マーカーに対する選択性によって単離しうる。遺伝子転写レベルは、トラ
ンスフェクション量だけに関連する。この方法により、標的遺伝子のレベルの変
異による影響を検討することができる。
【0141】 この方法を使用する特定の例としては、T細胞レセプター活性化細胞状態の核
となる成分であるsrc-ファミリータンパク質チロシンキナーゼ、lck、を標的と
する薬物の探索がある(Anderson et al., 1994, Involvement of the protein t
yrosine kinase p56 (lck) in T cell signaling and thymocyte development,
Adv. Immunol. 56:171-178)。本酵素の阻害剤は、潜在的な免疫抑制剤として関
心をもたれている(Hanke, 1996, Discovery of a Novel, Potent, and src fami
ly-selective tyrosine kinase inhibitor, J. Biol Chem 271:695-701)。lckキ
ナーゼを発現しないジャーカットT細胞系(JcaM1)の特定の突然変異株が利用でき
る(Straus et al., 1992, Genetic evidence for the involvement of the lck
tyrosine kinase in signal transduction through the T cell antigen recept
or, Cell 70:585-593)。従って、トランスフェクションまたは形質導入によって
lck遺伝子をJCaM1に導入すると、このlckキナーゼにより制御されたT細胞活性化
細胞状態の特異的摂動が可能となる。トランスフェクションまたは形質導入の効
率、従って摂動のレベルは用量と関連する。通常は摂動の対象となる遺伝子を発
現しない細胞で遺伝子発現量またはタンパク質量の摂動を生じさせる方法として
は、一般にこの方法が有用である。
【0142】 5.5.3 RNAの量または活性を改変する方法 RNAの量または活性を改変する方法は、現在、リボザイム、アンチセンス種お
よびRNAアプタマーという3クラスに分類される(Good et al., 1997, Gene Thera
py 4:45-54)。これらの個体に対して細胞を制御可能に適用しまたは暴露すると
、RNA量を制御可能に摂動させることができる。
【0143】 リボザイムは、RNA開裂反応を触媒できるRNAである(Cech, 1987, Science 236
:1532-1539; PCT International Publication WO 90/11364, published October
4, 1990; Sarver et al., 1990, Science 247:1222-1225)。「ヘアピン」およ
び「ハンマーヘッド」RNAリボザイムは、特定の標的mRNAを特異的に開裂するよ
うにデザインすることができる。リボザイム活性をもつショートRNA分子が高度
に配列特異的な方法で他のRNA分子を開裂することができ、かつ、事実上全種類
のRNAを標的とし得るようにデザインするルールが確立されている(Haseloff et
al., 1988, Nature 334:585-591; Koizumi et al., 1988, FEBS Lett., 228:228
-230; Koizumi et al., 1988, FEBS Lett., 239:285-288)。リボザイム法は、小
さいRNAリボザイム分子に細胞を暴露し、そのような小さいRNAリボザイム分子の
細胞での発現を誘導することからなる(Grassi and Marini, 1996, Annals of Me
dicine 28:499-510; Gibson, 1996, Cancer and Metastasis Reviews 15:287-29
9)。
【0144】 リボザイムは、常法により、mRNAの開裂において触媒的に十分有効な数をin v
ivoで発現させることができ、それによって細胞中のmRNA量を変更することがで
きる(Cotten et al., 1989, Ribozyme mediated destruction of RNA in vivo,
The EMBO J. 8:3861-3866)。特に、前記ルールに従ってデザインされ、かつ、例
えば、標準のホスホロアミダイト化学によって合成されたDNA配列をコードする
リボザイムは、tRNAをコードする遺伝子のアンチコドンステムとアンチコドンル
ープの制限酵素部位に連結することができ、次いで、当分野の常法によって、目
的とする細胞に形質転換した後、その細胞で発現させることができる。誘導可能
なプロモーター(例えば、グルココルチコイドやテトラサイクリン応答エレメン
ト)もまたこの構築物に導入するのが好ましく、その結果リボザイム発現を選択
的に制御することができる。tDNA遺伝子(すなわち、tRNAsをコードする遺伝子)
は、そのサイズが小さいこと、高い転写率、そして異なる種類の組織で偏在して
発現するため、この適用に有用である。従って、事実上どのmRNA配列も開裂する
よう、常法によってリボザイムをデザインすることができるので、そのようなリ
ボザイム配列をコードするDNAで常法により細胞を形質転換し、制御可能であっ
て触媒有効量のリボザイムを発現させることができる。従って、事実上細胞中の
いかなるRNA種であってもその量を摂動させることができる。
【0145】 標的遺伝子(好ましくはmRNA)種の活性、具体的にはその翻訳速度は、アンチセ
ンス核酸によって制御可能に抑制することができる。「アンチセンス核酸」とは
、コード領域および/または非コード領域に対する、いくらかの配列相補性に基
づいて、標的RNAの配列特異的(例えば、非ポリA)な部分、例えば、その翻訳開始
領域とハイブリダイズできる核酸をいう。本発明のアンチセンス核酸は、2本鎖
または1本鎖のRNAもしくはDNA、またはその修飾型もしくは誘導体であるオリゴ
ヌクレオチドであってもよく、これらは制御可能な方法で細胞に直接与えること
ができ、または、標的RNAの翻訳を摂動するのに十分な制御可能量で、外因性の
導入された配列の翻訳によって、細胞内に産生させることができる。
【0146】 アンチセンス核酸は、少なくとも6個のヌクレオチドからなるのが典型的であ
り、好ましくはオリゴヌクレオチド(6から約200個のヌクレオチド)である。オリ
ゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNAまたはそのキメラ混合物もしくは誘導体また
はその修飾型であってもよく、1本鎖であってもまた2本鎖であってもよい。オリ
ゴヌクレオチドは、その塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖において改変する
ことができる。オリゴヌクレオチドは、ペプチドのような他の付加基、または細
胞膜を通る輸送を促す薬物(例えば、Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Aca
d. Sci. U.S.A., 86:6553-6556; Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. S
ci. 84:648-652; PCT Publication No. WO 88/09810, published December 15,
1988参照)、ハイブリダイゼーショントリガー開裂剤(例えば、Krol et al., 198
8, BioTechniques 6:958-976参照)またはインターカレーション剤(例えば、Zon,
1988, Pharm. Res. 5:539-549参照)を含んでいてもよい。
【0147】 アンチセンスオリゴヌクレオチドは、典型的には1本鎖DNAの形をしている。オ
リゴヌクレオチドは、構造上のどの位置ででも、当分野で一般に公知の成分で改
変することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル
、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、
キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、
5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノ
メチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルケオシン、イノシ
ン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-
ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、
5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウ
ラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルケオシ
ン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチ
オ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン
(wybutoxosine)、シュードウラシル、ケオシン(queosine)、2-チオシトシン
、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラ
シル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-
メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(a
cp3)wおよび2,6-ジアミノプリンのような、少なくとも1個の修飾された塩基部分
を含みうる。
【0148】 アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2-フルオロアラビノース
、キシルロースおよびヘキソースのような修飾された糖部分を含んでいてもよい
。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエ
ート、ホスホロアミドチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート
、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルムアセタール
またはその類似体のような、修飾ホスフェート主鎖を含んでいてもよい。アンチ
センスオリゴヌクレオチドは、2-α-アノマーオリゴヌクレオチドであってもよ
い。α-アノマーオリゴヌクレオチドは、相補性RNAと特定の2本鎖ハイブリッド
を形成し、通常のβ-ユニットとは違って、その2本鎖は互いに平行している(Gau
tier et al., 1987, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641)。オリゴヌクレオチドは
、他の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーショントリガー架橋剤、輸送
剤、ハイブリダイゼーショントリガー開裂剤などと結合していてもよい。 アン
チセンス核酸は、標的RNA種の少なくとも1部と相補性の配列を含んでなる。しか
しながら、完全な相補性が必要な訳ではない。本明細書にいう「標的RNA種の少
なくとも1部と相補性の」配列とは、当該RNAとハイブリダイズ可能な程度に十分
な相補性をもち、安定な2本鎖を形成する配列をいう。2本鎖アンチセンス核酸の
場合、2本鎖DNAのうちの1本鎖をテストしてもよいし、または、3本鎖の形成を
アッセイしてもよい。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度とアンチセンス
核酸の長さの両方に依存する。一般に、ハイブリダイズする核酸が長ければ長い
ほど、標的RNAとマッチしない塩基をより多く含み、そしてなお安定な2本鎖(も
しくは、場合により3本鎖)を生成しうる。当業者であれば、ハイブリダイズした
複合体の融点を測定する標準方法を用いることによってミスマッチの許容できる
限度を確認することができる。標的RNAの翻訳を阻害するのに有効なアンチセン
ス核酸の量は、標準のアッセイ法によって決定することができる。
【0149】 アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成器(Biosearch, App
lied Biosystemsなどから市販されているようなもの)を用いて、当業界に標準的
な方法により合成することができる。例として挙げると、ホスホロチオエートオ
リゴヌクレオチドは、Stein et al. (1988, Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法
により合成でき、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは、制御された細孔ガ
ラスポリマー支持体を使用して製造することができる(Sarin et al., 1988, Pro
c. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:7448-7451)。他の実施形態によれば、オリゴ
ヌクレオチドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucl. Acid
s Res. 15:6131-6148)であるかまたはキメラRNA-DNA類似体(Inoue et al., 1987
, FEBS Lett. 215:327-330)である。
【0150】 合成されたアンチセンスオリゴヌクレオチドは次いで、制御された方法で細胞
に与えることができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞に取り
込まれる制御された濃度で、細胞の増殖環境下に置くことができる。このアンチ
センスオリゴヌクレオチドの取り込みは、当分野で周知の方法を用いて補助する
ことができる。
【0151】 あるいはまた、アンチセンス核酸は、外因性配列からの転写によって制御可能
な程度に細胞内で発現される。例えば、in vivoでベクターが細胞によって取り
込まれるようにベクターを導入することができ、細胞内ではベクターもしくはそ
の1部が転写されて本発明のアンチセンス核酸(RNA)を産生する。そのようなベク
ターは、アンチセンス核酸をコードする配列を含む。転写により所望のアンチセ
ンスRNAを産生できるのであれば、そのようなベクターはエピソームのままであ
ってもよいし、または染色体に組み込むこともできる。そのようなベクターは、
当分野で標準の組み換えDNA技術により構築することができる。ベクターは、哺
乳動物細胞で複製および発現するのに用いられるプラスミド、ウイルスまたはそ
の他当分野公知のものであってもよい。アンチセンスRNAをコードする配列は、
目的とする細胞で作用する、当分野において公知のプロモーターにより発現させ
ることができる。そのようなプロモーターは誘導性であってもまた構成性であっ
てもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドを制御発現させるために、外因性成
分を投与することにより、プロモーターが制御可能であるか、または誘導できる
のが最も好ましい。そのような制御可能なプロモーターとしてはTetプロモータ
ーがある。好ましさの程度はより低いが、哺乳動物細胞に使用できるプロモータ
ーとしては、SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon, 1981, Nature
290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復に含まれるプロモーター(Yam
amoto et al., 1980, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモータ
ー(Wagner et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メ
タロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinster et al., 1982, Nature 296:39-42)
などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0152】 従って、アンチセンス核酸は、事実上いかなるmRNA配列をも標的とするよう、
常法によりデザインすることができ、そして細胞をアンチセス配列をコードする
核酸で形質転換するか、または該核酸に暴露して、アンチセンス核酸の有効かつ
制御可能な量を発現させることができる。従って、細胞中の事実上いかなるmRNA
種であってもその翻訳は制御可能に摂動させることができる。
【0153】 最後に、さらに他の実施形態によれば、RNAアプタマーは細胞に導入するか細
胞中で発現させることができる。RNAアプタマーは、TatおよびRev RNA(Good et
al., 1997, Gene Therapy 4:45-54)のような、その翻訳を特異的に阻害できるタ
ンパク質に特異的なRNAリガンドである。
【0154】 5.5.4. タンパク質存在量の改変方法 タンパク質存在量を改変する方法としては、特にタンパク質分解速度を変更す
るものや抗体(天然の標的タンパク質種活性の存在量に影響を及ぼすタンパク質
に結合する)を用いるものが挙げられる。タンパク質種の分解速度が高まる(また
は低下する)と、その種の存在量が減少する(または増加する)。高温および/ま
たは当技術分野で公知の特定の薬剤への曝露に応じて標的タンパク質の分解速度
を制御し得る形で高める方法が使用できる。例えば、かかる方法の1つは熱誘導
性または薬物誘導性N末端デグロンを用いるが、これは比較的高い温度(例えば37
℃)で急速なタンパク質分解を促進する分解シグナルを露出するN末端タンパク質
断片であり、より低い温度(例えば23℃)では隠されていて急速分解を妨げる(Doh
menら, 1994, Science 263:1273-1276)。かかるデグロンの例としては、N末端の
ValがArgで置換され、66位のProがLeuで置換されているマウス・ジヒドロ葉酸レ
ダクターゼの変異体であるArg-DHFRtsがある。この方法によれば、標的タンパク
質Pの遺伝子は、当技術分野で公知の標準的な遺伝子ターゲッティング法により(
Lodishら, 1995, Molecular Biology of the Cell, W.H. Freeman and Co., New
York, 特に第8節)、融合タンパク質Ub-Arg-DHFRts-P(「Ub」はユビキチンをさ
す)をコードする遺伝子で置き換えられている。N末端ユビキチンはN末端デグロ
ンを露出する翻訳の後ですぐさま切断される。低温ではArg-DHFRtsの内部のリシ
ンは露出されず、融合タンパク質のユビキチン化は起こらず、分解が遅くなり、
活性型の標的タンパク質レベルが高くなる。高温では(メトトレキセートの非存
在下)、Arg-DHFRtsの内部のリシンが露出され、融合タンパク質のユビキチン化
が起こり、分解が急速になり、活性型の標的タンパク質レベルが低くなる。熱に
よる分解の活性化はメトトレキセートに暴露することで制御可能にブロックされ
る。この方法は薬物および温度変化などの要因を含めた他の要因に応答するその
他のN末端の程度に適用できる。
【0155】 標的タンパク質の存在量および直接的または間接的にそれらの活性は抗体(中
和抗体)によって低下させることができる。かかる抗体への制御された曝露を提
供することで、タンパク質の存在量/活性を制御可能に改変することができる。
例えば、タンパク質表面の好適なエピトープに対する抗体は、野生型活性形態の
標的タンパク質の存在量を減少させ、それにより非凝集形態の野生型と比較して
低いまたは最小の活性しか持たない複合体へと活性型を凝集させることで間接的
にその活性を低下させる。あるいは、抗体は例えば活性部位と直接相互作用する
ことで、または基質が活性部位へ接近するのを遮断することで直接的にタンパク
質活性を直接低下させ得る。これに対し、ある場合には、(活性化)抗体もまたタ
ンパク質およびそれらの活性部位と相互作用して、結果としての活性を高め得る
。いずれの場合にも、(記載される種々のタイプの)抗体は特定のタンパク質種に
対して(記載される方法により)作製でき、それらの作用がスクリーニングされる
。抗体の作用をアッセイし、標的タンパク質種の濃度および/または活性を高め
るまたは低下させる好適な抗体を選択することができる。かかるアッセイには、
細胞に抗体を導入し(以下を参照)、当技術分野で公知の標準的手段(イムノアッ
セイなど)によって標的タンパク質の野生型量の濃度または活性をアッセイする
ことが含まれる。野生型の正味の活性は標的タンパク質の知られている活性に適
当なアッセイ手段によってアッセイすることができる。
【0156】 抗体は例えば細胞への抗体のマイクロインジェクション(Morganら, 1988, Imm
unology Today 9:84-86)または所望の抗体をコードするハイブリドーマmRNAを細
胞へ形質転換する(Burkeら, 1984, Cell 36:847-858)ことをはじめ、多くの方法
で細胞へ導入することができる。さらなる技術では、組換え抗体を遺伝子工学的
に操作して多様な非リンパ系細胞種で異所的に発現させ、標的タンパク質と結合
させ、と同時に標的タンパク質活性をブロックすることができる(Bioccaら, 199
5, Trends in Cell Biology 5:248-252)。抗体の発現はTetプロモーターなどの
制御可能なプロモーターの制御下にあることが好ましい。第1のステップでは、
標的タンパク質に対して適当な特異性を有する特定のモノクローナル抗体を選択
する(以下を参照)。次ぎに選択された抗体の可変領域をコードする配列を、例え
ば、全抗体、Fabフラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメント(ペプチ
ドリンカーにより連結したVHおよびVL領域)(「ScFv」フラグメント)、二価抗体(
異なる特異性を有するScFvフラグメントが2つ結合したもの)などをはじめ、遺
伝子工学的に操作された種々の抗体形態へクローニングすることができる(Hayde
nら, 1997, Current Opinion in Immunology 9:210-212)。細胞内で発現した種
々の形態の抗体は、種々の公知の細胞内リーダー配列との融合物として発現させ
ることにより細胞コンパートメント(例えば、細胞質、核、ミトコンドリアなど)
にターゲッティングできる(Bradburyら, 1995, Antibody Engineering (vol.2)(
Borrebaeck編), 295-361頁, IRL Press)。特にScFv形態は細胞質ターゲッティン
グに特に適していると思われる。
【0157】 抗体タイプとしては、限定されるものではないが、ポリクローナル、モノクロ
ーナル、キメラ、一本鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーが挙げ
られる。標的タンパク質に対するポリクローナル抗体の製造には当技術分野で公
知の種々の方法を用いればよい。抗体の生産の場合には、種々の宿主動物を標的
タンパク質の注射により免疫すればよく、かかる宿主動物としては、限定される
ものではないが、ウサギ、マウス、ラットなどが挙げられる。宿主の種にもよる
が、免疫学的応答を高めるには種々のアジュバントを使用することができ、限定
されるものではないが、フロインドアジュバント(完全・不完全)、水酸化アルミ
ニウムなどの無機物ゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオ
ン、ペプチド、オイル・エマルション、ジニトロフェノールなどの界面活性物質
、およびバチルスCalmette-Guerin(BCG)などの有用である可能性のあるヒトアジ
ュバントおよびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)が挙げ
られる。
【0158】 標的タンパク質に対するモノクローナル抗体の生産の場合は、培養下の連続細
胞系に抗体分子を生産させるいずれの技術を用いてもよい。かかる技術としては
、限定されるものではないが、KohlerおよびMilstein (1975, Nature 256:495-4
97)によって独自に開発されたハイブリドーマ法、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイ
ブリドーマ法(Kozborら, 1983, Immunology Today 4:72)、およびヒトモノクロ
ーナル抗体を生産するためのEBVハイブリドーマ法(Coleら, 1985, in Monoclona
l Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-96頁)が挙げられ
る。本発明のさらなる実施形態では、モノクローナル抗体は最近の技術(PCT/US9
0/02545)を用いる無菌動物で生産することができる。本発明によればヒト抗体を
用いてもよく、ヒトハイブリドーマを用いることで(Coteら, 1983, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、またはin vitroにてEBVウイルスでヒトB細胞
を形質転換することで(Coleら, 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer T
herapy. Alan R. Liss, Inc., 77-96頁)得ることができる。実際、本発明によれ
ば、適当な生物学的活性のヒト抗体分子に由来する遺伝子とともに標的タンパク
質に特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる「キ
メラ抗体」の生産のために開発された技術(Morrisonら, 1984, Proc. Natl. Aca
d. Sci. USA 81:6851-6855; Neubergerら, 1984, Nature 312:604-608)を用いる
ことができ、かかる抗体は本発明の範囲内にある。
【0159】 さらに、モノクローナル抗体が有利である場合、それらはファージ・ディスプ
レー技術を用いて大きな抗体ライブラリーから択一的に選択することができる(M
arksら, 1992, J. Biol. Chem. 267:16007-16010)。この技術を用いると、1012
までの異なる抗体のライブラリーがfd繊維状ファージの表面に発現しており、モ
ノクローナル抗体の選択に利用できる抗体の「シングル・ポット」in vitro免疫
系を作出できる(Griffithsら, 1994, EMBO J. 13:3245-3260)。かかるライブラ
リーからの抗体の選択は、ファージを固定化標的タンパク質と接触させ、標的に
結合したファージを選択してクローニングし、抗体可変領域をコードする配列を
所望の抗体形態を発現する適当なベクターへサブクローニングすることを含む、
当技術分野で公知の技術によってなすことができる。
【0160】 5.5.5 タンパク質活性の改変方法 タンパク質活性を直接改変する方法としては、特にドミナントネガティブ変異
、特定の薬物(本願の範囲内で使用される)または化学成分が一般的に含まれ、抗
体の使用も含まれる。
【0161】 ドミナントネガティブ変異とは、細胞内で発現した際に標的タンパク質種の活
性を破壊する内因性遺伝子に対する突然変異または外因性遺伝子変異体である。
標的タンパク質の構造および活性にもよるが、一般的な規則は標的の活性を破壊
するドミナントネガティブ変異の構築に適当な戦略を選択する指針にある(Hersh
kowitz, 1987, Nature 329:219-222)。活性型モノマー形態の場合、不活性型の
過剰発現は標的タンパク質の正味の活性を有意に低下させるに十分な天然基質ま
たはリガンドの競合を起こさせる。かかる過剰発現は例えば活性の増強したプロ
モーター、好ましくは制御可能または誘導プロモーターと変異型遺伝子とを結合
させることによって達成できる。あるいは、活性部位の残基の変化は、標的リガ
ンドと事実上不可逆な会合が起こるようになすことができる。これは活性部位の
セリン残基の慎重な置換により特定のチロシンキナーゼの場合に達成できる(Per
imutterら, 1996, Current Opinion in Immunology 8:285-290)。
【0162】 活性型多量体形態の場合では、いくつかの戦略はドミナントネガティブ変異の
選択の指針となり得る。多量体活性は多量体結合ドメインと結合して多量体の形
成を阻害する外因性タンパク質断片をコードする遺伝子の発現によって制御可能
に低下させることができる。あるいは、特定のタイプの不活性なタンパク質ユニ
ットの制御可能な過剰発現は不活性な多量体の野生型活性ユニットと結びつき、
それにより多量体活性を低下させることができる(Nockeら, 1990, The EMBO J.
9:1805-1813)。例えば、二量体DNA結合タンパク質の場合では、DNA結合ドメイン
をDNA結合ユニットから欠失させることができ、あるいは活性化ドメインを活性
化ユニットから欠失させることができる。また、この場合、DNA結合ドメインユ
ニットは活性化ユニットとの結合を起こすドメインなしに発現させることができ
る。それにより、DNA結合部位は発現の活性化の可能性なく結びつく。特定のタ
イプのユニットが通常、活性の間にコンホメーション変化を受ける場合は、剛性
ユニットの発現は得られる複合体を不活性にし得る。さらなる例では、細胞の運
動性、有糸分裂プロセス、細胞の構造などのような細胞のメカニズムに関わるタ
ンパク質は典型的にはいくつかのタイプの多くのサブユニットの結合を含む。こ
れらの構造はしばしば、構造的欠陥をもついくつかの単量体ユニットを含めるこ
とによって破壊に対して極めて感受性になる。かかる変異型モノマーは関係する
タンパク質活性を破壊し、細胞内で制御可能に発現させることができる。
【0163】 ドミナントネガティブ変異のほかに、温度(またはその他の外的因子)感受性の
ある変異型標的タンパク質は当技術分野で公知の突然変異誘発およびスクリーニ
ング法によって見出すことができる。
【0164】 また当業者ならば、標的タンパク質と結合してそれを阻害する抗体の発現は、
もう1つのドミナントネガティブ戦略として使用できることが理解されよう。
【0165】 最後に、ある種の標的タンパク質の活性は外因性薬物またはリガンドに暴露す
ることによって制御可能に変更することができる。好ましい場合では、薬物は細
胞内で唯一の標的タンパク質と相互作用してその唯一の標的タンパク質の活性を
変更することが知られている。細胞を種々の量の薬物に段階的に曝すことにより
、そのタンパク質の起源である細胞状態の段階的摂動が生じる。この変更は活性
の低下または増強のいずれであってもよい。あまり好ましくはないが、個別の、
識別可能な、重複していない作用を持ついくつかの(例えば、2〜5種の)標的タン
パク質の活性だけを変更する薬物が知られており、使用される。かかる薬物への
段階的曝露は、標的タンパク質の起源であるいくつかの細胞状態に対して段階的
摂動を引き起こす。
【0166】 6.強力な識別の実施例 6.1 結果 例として、免疫抑制剤シクロスポリンAおよびFK506を用いて得られた2つのプ
ロフィールは本発明の1つの態様を示す。これらのプロフィールはM. Martonら
、上記および下記実施例に記載されるように、酵母S.CerevisiaeのmRNA転写物ア
レイで得られたものである。これらの薬物の転写シグネチャーは図3に示されて
いる。これらのプロットの横軸はマイクロアレイ上の個々のハイブリダイゼーシ
ョンスポットの強度であり、両者のそれぞれのmRNA種の存在量を表している。縦
軸は一方の蛍光標識(培養物1)で測定された強度と他方の標識(培養物2)で測定さ
れた強度との比率の対数(log10)である。誤差バーおよび名称は、信頼率95%以上
の水準で有意であった薬物によりアップレギュレートまたはダウンレギュレート
された遺伝子についてだけ表示してある。図4は1μg/ml FK506および30μg/mlシ
クロスポリンの濃度での両者の薬物の作用間の高い相関(類似性)を示しており、
ここでは両薬物は主としてヒトのT細胞活性化経路の酵母類似物であるカルシニ
ューリン媒介経路に作用する。log10の相関係数(発現比)は0.98であり、これは
いずれかの実験で信頼率95%水準で有意にアップレギュレートまたはダウンレギ
ュレートされた遺伝子に基づいてコンピュータで計算したものである。
【0167】 相関計算にすべての遺伝子を含めると相関係数は0.73まで低下する。これはほ
とんどの遺伝子が変化していないか、または変化が極めて少なく、相関係数への
寄与が測定誤差によって占められているためである。これらのランダム誤差は観
測された相関を低下させる傾向にある。大方の目的の場合は、ノイズによる変化
がより小さい遺伝子を排除することで、より有意性の高い結果が得られる。その
結果、相関は0.98となり、2つの応答プロファイルは実質的に識別できないもの
となる。2つの薬物間の実際の違いは、付加的な異なる開始状態の細胞に加えら
れた場合にのみ明らかとなる。ここで2つの付加的な状態は、FK506結合タンパ
ク質FPRおよびシクロスポリンと結合するシクロスポリンタンパク質CPH1を欠く
遺伝子欠損株によってもたらされる。これらの株は、本方法を例示するために、
研究下にある薬物の中間体結合パートナーのこれまでの情報によって選択される
【0168】 これら付加的状態における薬物の応答プロファイルは図5に示されている。こ
れらの付加的状態では、CPH1変異体はシクロスポリンに応答できず、FRB変異体
はFK506に応答できない(上記単一状態での相関に対して用いたものと同濃度)。
長さ3x6000=18000の増強プロファイルは図2に示されているようにして導き出し
、新たな相関係数はr=0.18と算出される。この低い相関は図6の点図表プロット
に示されている。
【0169】 増強プロファイル間の類似性の程度が細胞の基準状態におけるプロファイル間
で見られたものより低いことは、FK506とシクロスポリンAは双方ともそれらの最
終的な標的としてカルシニューリンを有しているが、それらは完全に異なるタン
パク質結合パートナーを介してそれに達するという生物学的事実を反映している
。もとの「野生型」酵母株では、これらの薬物は同一の機能を持っていると思わ
れる。この2つの薬物は、異なる作用経路を明らかにさせる細胞状態に薬物が投
与される場合、増強プロファイルにおける実験を含めることで、より強力に識別
された。
【0170】 6.2 実験 酵母株の構築、増殖および薬物処理 本研究に用いた株は標準的な技術によって構築した。例えば、Schiestlら, 19
93, Introducing DNA into yeast by transformation, Methods: A companion t o Methods in Enzymology 5:79-85参照。FK506に関する実験では、Garrett-Enge
leら, 1995, Calcineurin, the Ca2+/calmodulin-dependent protein phosphate
, is essential in yeast mutants with cell integrity defects and in mutan
ts that lack functional vacular H(+)-ATPase, Mol. Cell. Biol. 15:4103-41
14に以前に記載されたように、10mM塩化カルシウムを添加したYAPD培地(YPD+0.0
04%アデニン)中で3世代増殖させて密度1x107細胞/mlとした。示した場合には、F
K506は培養物インキュベーションの0.5時間後に最終濃度1μg/mlで加えた。シ
クロスポリンA(CsA)は30μg/mlの濃度で加えた。以下のように改変した標準的な
方法(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wil
ey & Sons, Inc. (New York), 12.12.1-13.12.5参照)によって細胞を破壊した。
細胞ペレットを破壊バッファー(0.2M Tris HCl pH 7.6, 0.5M NaCl, 10mM EDTA,
1% SDS)に再懸濁し、60%ガラスビーズ(425-600μmメッシュ; Sigma)およびフェ
ノール:クロロホルム(50:50v/v)の存在下で8に設定したVWRマルチチューブ・ボ
ルテックサーで2分間混合した。分離した後、水相を再び抽出してエタノール沈
殿させた。確立されたプロトコル(例えば、Ausubelら, 上記参照)を用いてオリ
ゴdTセルロース(NEB)で二連クロマトグラフィー精製によってポリA+RNAを単離し
た。
【0171】標識サンプルの調製およびハイブリダイゼーション 実質的にDeRisiら, 1997, Exploring the metabolic and genetic control of
gene expression on a genomic scale, Science 278:680-686に記載のように蛍
光標識したcDNAを調製し、精製してハイブリダイズさせた。要するに、逆転写中
にCy3-またはCy5-dUTP(Amersham)をcDNAに組み込んだ(Superscript II, LTI, In
c.)。これをマイクロコン-30マイクロコンセントレーター(Amicon)で10μl未満
に濃縮することで精製した。対合したcDNAを20〜26μlのハイブリダイゼーショ
ン溶液(3xSSC, 0.75μg/mlポリA DNA, 0.2% SDS)に再懸濁し、63℃で6時間、22x
30mmカバーガラス下でマイクロアレイに適用した。すべてはDeRisiら, (1997)前
掲に従った。
【0172】マイクロアレイの組立ておよび走査 アミノ修飾したフォワードプライマーおよび非修飾リバースプライマーととも
に、鋳型として共通5'よおび3'配列を有するPCR産物(Research Genetics)を用い
て、S. cerevisiaeゲノムから6065のORFをPCR増幅した。初回通過成功率は94%で
あった。期待されない大きさの産物が得られた増幅反応は次の解析から排除した
。購入した鋳型から複製することができないORFはゲノムDNAから増幅した。100
μl反応物からのDNAサンプルをイソプロパノールで沈殿させ、水に再懸濁し、3x
SSCで総量15μlとし、384ウェルのマイクロタイタープレート(Genetix)に移した
。PCR産物を1x3インチのポリスチレン処理スライドガラスに、Schenaら, 上記;
DeRisiら, 1996, Discovery and analysis of inflammatory disease-related g
enes using cDNA microarrays, PNAS USA, 94:2150-2155; およびDeRisiら, (19
97)に示された仕様に従って作製したロボットによりスポットした。プリントし
た後、公開されているプロトコルに従ってスライドを処理した。DeRisiら, (199
7)参照。
【0173】 マイクロアレイをApplied Precision, Inc. (Seattle, WA)で開発中のプロト
タイプマルチフレームCCDカメラで画像化した。各CCD画像のフレームは約2mm角
であった。各フレームにつき露光時間はCy5チャンネル(クロマ(Chroma)618-648n
m励起フィルター、クロマ657-727nm発光フィルターを通した白色光)で2秒および
Cy3チャンネル(クロマ535-560nm励起フィルター、クロマ570-620nm発光フィルタ
ー)で1秒で連続的に行った後、次の空間的に連続したフレームへ移した。Cy3お
よびCy5チャンネル間の色の単離は約100:1以上であった。フレームはソフトウェ
アで一緒に結合させ、完全な画像とした。スポットの強度(約100μm)は、フレー
ムのバックグラウンドを消去して各チャンネルで強度平均をとることで10μm画
素から定量した。得られたスポット強度の動的範囲は典型的には最も明るいスポ
ットとバックグラウンドを消去した付加誤差レベルとの間で1000の割当て(ratio
n)であった。チャンネル間の正規化はすべての遺伝子の平均強度に対して各チャ
ンネルを正規化することで行った。この手法はゲノムDNAスポットの強度割当て
を用いるチャンネル間の正規化とほとんど等しい(DeRisiら, 1997参照)が、それ
はこのアレイ上に分布する数千のスポットの強度に基づいているのでより強力で
あると思われる。
【0174】シグネチャー(signature)の相関係数の決定およびそれらの信頼限界 種々の実験のシグネチャー(signature)ORF間の相関係数は、 (式中、xkはシグネチャーxにおけるk番目の遺伝子の発現比のlog10であり、yk
シグネチャーyにおけるk番目の遺伝子の発現比のlog10である)を用いて算出した
。総和は、いずれかの実験で信頼水準95%でアップレギュレーションまたはダウ
ンレギュレーションされた遺伝子にわたっている。これらの遺伝子は各々、実際
には調節されない5%未満の偶然を伴っていた(測定誤差だけのために単一性から
離れた発現比を有する)。この信頼水準は、反復測定(名目上同じ実験条件におけ
る反復アレイ)において観測される分散および個々のアレイハイブリダイゼーシ
ョンの質に基づく特徴の幅を持つ各遺伝子発現比に対して対数正規確率分布を割
り付ける誤差モデルに基づいて割り付けれたものである。この後者の依存は、Cy
3およびCy5サンプルの双方が同じRNAサンプルから由来した対照実験から得られ
たものであった。多数の反復測定では、誤差は観測される分散に対して減少する
。1回の測定では、誤差はアレイの質およびスポット強度に基づく。
【0175】 シグネチャーxおよびyにおけるランダムな測定誤差は、相関をゼロに偏らせる
傾向がある。ほとんどの実験では、遺伝子の大多数は有意に影響を及ぼされない
が、小さなランダム測定誤差を示す。相関の算出のためにすべてのゲノムではな
く95%の信頼率の遺伝子だけを選択すると、この偏りは小さくなり、実際の生物
学的相関がより明確になる。
【0176】 プロファイルとそれ自身の間の相関は定義により単一性という。相関における
誤差限界は個々の測定誤差バーに基づいた95%信頼限界であり、相関しない誤差
が仮定される。それらは上記の偏りを含まないので、単一性からρの隔たりは基
底にある生物学的相関が完全なものではないことを必ずしも意味しない。しかし
ながら例えば0.7±0.1の相関は、ゼロとは極めて有意に異なる。表およびテキス
トにおける小さい(ρ<0.2の規模)が見かけ上有意な相関はおそらくは、95%信頼
限界を形成するのに用いた独立した測定誤差の仮定をおかすCy5/Cy3比における
小さな体系的偏りによるものであろう。従ってこれらの小さな相関値は有意では
ないものとして処理すべきである。非正確な体系的な偏りのあり得る源は、Cy3
およびCy5検出チャンネルに異なる影響を与える部分的に正確なスキャナー検出
装置の非線形性である。
【0177】 1μg/ml FK506処理のシグネチャーを40の関連のない欠失変異体の、または薬
剤のシグネチャーと比較した。これらの対照プロファイルは、標準偏差0.16(デ
ータは示されていない)でゼロ付近に分布したFK506プロファイルを有する相関係
数を持ち、ρ=0.38より大きい相関をどれも持っていなかった。同様に、カルシ
ネウリン変異体のシグネチャーはCsA処理のシグネチャーとはよく相関する(ρ=0
.71±0.04)が、陰性対照からのシグネチャーとは相関しない(平均ρ=0.02、標準
偏差0.18)。
【0178】品質管理 発現比の測定精度に対する徹底的なチェックは、Cy3とCy5の双方で標識した同
じmRNAを用いて、また名目上同じ株および条件の独立した培養物から単離したCy
3およびCy5 mRNAサンプルを用いて反復ハイブリダイゼーションにおける分散を
解析することで行った。この手法では検出されない偏り(例えば、おそらくはCy
3-およびCy5-dUTPのcDNAへの種々の組み込みによるものであると考えられる遺伝
子特異的偏り)は、生物学的条件のCy3/Cy5標識がその他の点についてはある実
験内で逆転しているフルオロが逆転した対でハイブリダイゼーションを実施する
ことで最小にした。次ぎに各遺伝子についての発現比をその対の2回の実験間の
比率の比とする。その他の偏りは、アルゴリズム的数値デトレンディング(detr
ending)によって取り除いた。デトレンディング(detrending)およびフルオル逆
転の不在下のこれらの偏りの大きさは典型的には比率において30%のオーダーに
あるが、ORFによっては2倍といった大きさの場合がある。
【0179】 発現比は各スポットに対する平均強度に基づいている。スポットが小さいほど
平均画像画素は少なくなる場合がある。これは画素数が10より小さくなる(この
場合データセットからスポットが棄却される)までは著しく精度が落ちることは
ない。名目上のグリッドに対するスポットの位置の逸脱は画像処理ソフトウェア
によるアレイの小区画に適宜割り付けられる。スポット空間の半分より大きい小
区画内の等しくないスポットの逸脱は自動定量アルゴリズムには問題となり、こ
の場合にはそのスポットはヒトの逸脱検討に基づく解析から棄却される。部分的
に重複するスポットはデータセットから除かれる。これらの理由によって典型的
にはスポットの1%未満が棄却される。
【0180】 7. 引用した参照文献 本明細書中で引用した参照文献はすべて、各々の刊行物または特許もしくは特
許出願が特異的かつ個々に示され、あらゆる目的ためにその全内容が参照により
本明細書中に組み入れられるのと同じ程度まで、あらゆる目的のためにその全内
容を参照により本明細書中に組み入れるものとする。
【0181】 当業者には明らかであろうが、その精神および範囲を逸脱しない限り、本発明
の多くの改変およびバリエーションをなし得る。本明細書に記載の具体的な実施
態様は単に例示のために示されるものであって、本発明は添付の請求の範囲の他
に、かかる請求の範囲と表題を付したものの等価物全てによってのみ制限される
【0182】 8. コンピュータの実行 これまでの節に記載の解析方法は以下のプログラムおよび方法に従い、以下の
コンピュータシステムの使用によって実行できる。図7は本発明の解析方法の実
行に好適なコンピュータ・システム例を示す。コンピュータ・システム501は内
部構成部品からなり、外部構成部品に接続していることが示されている。このコ
ンピュータ・システムの内部構成部品にはメインメモリ503と相互に連絡したプ
ロセッサ・エレメント502が含まれる。例えば、コンピュータ・システム501は、
好ましくは32MB以上のメインメモリを搭載するインテル8086、80386、ペンティ
アムまたはペンティアムに基づくプロセッサであればよい。
【0183】 外部構成部品には大容量記憶装置504が含まれる。この大容量記憶装置は1以
上のハードディスク(典型的にはプロセッサおよびメモリとともにパッケージン
グされている)であってよい。かかるハードディスクは1GB以上の記憶容量を持つ
のが好ましい。その他の外部構成部品としては、ユーザー・インターフェース・
デバイス505が含まれ、これは入力デバイス506(「マウス」であってもよいし、
あるいは示されていないがグラフィック入力デバイスであってもよいし、かつ/
またはキーボードであってもよい)を伴うモニターであり得る。印刷デバイス508
もコンピュータ501に接続していてよい。
【0184】 典型的には、コンピュータ・システム501はネットワークリンク507にも接続さ
れており、これは他のローカル・コンピュータ・システム、リモート・コンピュ
ータ・システムまたはインターネットなどの広域コミュニケーションネットワー
クへのEthernetリンクの一部となっていてもよい。このネットワークリンクによ
ってコンピュータ・システム501は他のコンピュータシステムとデータおよび処
理タスクを共有できる。
【0185】 このシステムの作動中のメモリへロードされるのはいくつかのソフトウエア・
コンポーネントであり、これらはいずれも当技術分野で標準的なものであるとと
もに本発明に特殊なものである。これらのソフトウエア・コンポーネントは共同
してこのコンピュータ・システムを本発明の方法に従って機能させる。これらの
ソフトウエア・コンポーネントは通常、大容量記憶装置504にインストールされ
ている。ソフトウエア・コンポーネントは510はオペレーティング・システムを
表し、これはコンピュータ・システム501およびそのネットワーク相互連絡の管
理を担う。このオペレーティング・システムとしては例えば、マイクロソフト・
ウインドウズ(登録商標)系のウインドウズ3.1、ウインドウズ95、ウインドウズ9
8またはウインドウズNTなどが挙げられる。ソフトウエア・コンポーネント511は
本発明に特異的な方法を実行するプログラムを支援するために本システム上に便
宜に存在する共通言語および関数を表す。本発明の解析方法をプログラムするの
には多くの高レベルまたは低レベルのコンピュータ言語が使用できる。命令は稼
働時に翻訳できるか、あるいはコンパイルされ得る。好ましい言語としてはC/ C
++、FORTRANおよびJAVAyが挙げられる。最も好ましくは、本発明の方法は、方程
式の記号入力やアルゴリズムをはじめ高レベル仕様の処理が使用でき、それによ
ってユーザーが個々の方程式またはアルゴリズムの手順に従ったプログラミング
を必要としない、数学的ソフトウエア・パッケージにプログラムされている。か
かるパッケージとしてはMathworks(Natick, MA)製のMatlab、Wolfman Research
(Champaign, IL)製のMathematica(登録商標)、またはMath Soft (Cambridge, MA
)製のS-Plus(登録商標)が挙げられる。従って、ソフトウエア・コンポーネント5
12および/または513は、手順言語または記号パッケージにプログラムされる本
発明の解析方法を表す。
【0186】 実行例では、本発明の方法を実施するため、ユーザーはまず実験データをコン
ピュータシステム501にロードする。これらのデータはモニター505、キーボード
506から、もしくはネットワーク接続507によってリンクされた他のコンピュータ
システムから、またはCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(示されていな い)、テープドライブ(示されていない)、ZIP(登録商標)ドライブ(示されていな い)などの取り外し可能な記憶媒体上に、またはネットワーク(507)を通じてユー ザにより直接入力できる。次に、ユーザーは本発明の方法を実施する発現プロフ ィール解析ソフトウエア512を実行する。
【0187】 もう1つの実行例では、ユーザーはまず実験データおよび/またはデータベー
スをコンピュータシステムにロードする。このデータは記憶媒体(504)から、ま
たはリモート・コンピュータから、好ましくはネットワーク(507)を介して動的
遺伝子セット・データベース・システムからメモリにロードされる。次に、ユー
ザーは本発明のステップを実施するソフトウエアを実行する。
【0188】 本発明の解析方法を実行する他のコンピュータシステムおよびソフトウエアは
当業者には明らかであり、添付の請求の範囲内で理解されるものとする。特に、
添付の請求の範囲は、当業者に容易に明らかになる本発明の方法を実行するため
の別のプログラム構造を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、365のmRNA転写産物プロフィーリング実験の結果を示す。方法は、上述
の第6節におけるこれらの実験のサブセットについて記載した通りであった。こ
の画像中の365の並び(row)は、最大の解像度で印刷した場合、実験ペアの細胞ペ
ア条件の間の、6000種の酵母遺伝子のmRNA発現の比を示す6000グレースケール
ピクセルを有する。黒い部分は遺伝子の転写のアップレギュレーションを示し、
白い部分はダウンレギュレーションを示す。中程度の灰色の部分は変化がないか
または非常に少ないことを示す。図1下部のグレースケールのバーはlog10(比)=
-1(10倍のダウンレギュレーション)〜log10(比)=+1(10倍のアップレギュレーシ
ョン)を参照用に示している。365種の条件のペアには、異なる濃度での薬物の存
在下/不在下での比較、酵母株における特定の遺伝子の存在下/不在下での比較、
薬物処理と遺伝子欠失との組合せ、培養密度の変化、増殖温度、培地組成、およ
び交接因子などの内因性ホルモンの刺激などが含まれる。
【図2】 図2は、複数の条件での薬物に対するプロファイルを示す。出発時の状態1で
の薬物に対する応答は存在しないかまたはごく小さいが、異なる状態で得られる
連鎖的な応答プロファイルにより、異なる化合物の活性を強力に識別できる。↑
はアップレギュレーションを示し、↓はダウンレギュレーションを示す。矢印が
無いということは、その細胞構成要素に関しては変化が見られなかったことを示
す。
【図3】 図3Aは、免疫抑制剤シクロスポリンAについてのプロファイルを示す。図3Bは
、免疫抑制剤FK506についてのプロファイルを示す。どちらの図面においても、
水平軸はマイクロアレイ上でハイブリダイズした個々のスポットの強度であり、
2つの培養物中の個々のmRNA種の存在量を示すものである。垂直軸は、1つの蛍
光ラベル(培養物1)に関して測定された強度の、別のラベル(培養物2)に関して
測定された強度に対する比のlog10である。エラーバーおよび名称を、95%また
はより良好な信頼水準で有意であった薬物によるアップレギュレーションまたは
ダウンレギュレーションを示した遺伝子に関してのみ示す。
【図4】 図4は、1μg/mlのFK506および30μg/mlのシクロスポリンの存在下でそれぞ
れ培養したS.セレビシエ(S.cerevisiae)に対する、シクロスポリンAの効果とFK5
06の効果との間の高い相関(類似性)を示す。
【図5】 図5Aは1μg/mlのFK506の存在下で培養した遺伝子欠損株FPRの応答プロファイ
ルを示す。 図5Bは1μg/mlのFK506の存在下で培養した遺伝子欠損株CPH1の応答プロファ
イルを示す。 図5Cは50μg/mlのシクロスポリンの存在下で培養した遺伝子欠損株FPRの応答
プロファイルを示す。 図5Dは50μg/mlのシクロスポリンの存在下で培養した遺伝子欠損株CPH1の応答
プロファイルを示す。
【図6】 図6は、増強プロファイルを用いた場合の、酵母におけるシクロスポリンの作
用とFK506の作用との相関の減少を示す。
【図7】 図7は本発明の実施形態に有用なコンピューターシステムを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD ,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL, PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,S L,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN ,YU,ZA,ZW (72)発明者 ストウトン,ローランド アメリカ合衆国 92103 カリフォルニア 州 サンディエゴ,ウエスト スプルス ストリート 425 Fターム(参考) 2G045 AA24 BB07 BB20 CB25 FA19 FA29 FB02 FB12 GC15 4B024 AA01 AA11 CA04 CA09 DA12 HA14 HA17 4B063 QA01 QA17 QA18 QA19 QQ07 QQ08 QQ43 QQ53 QR56 QR62 QR76 QR77 QS03 QS25 QS34 QX02

Claims (71)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生物学的サンプルに対する第1の摂動の効果と第2の摂動の
    効果との類似性の程度を決定する方法であって、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なっ
    た状態にある場合に、生物学的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定するこ
    とにより、生物学的サンプルの複数の初期状態の異なった状態を用いて決定され
    ること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第2のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なっ
    た状態にある場合に、生物学的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定するこ
    とにより、生物学的サンプルの複数の初期状態の異なった状態を用いて決定され
    ること、 (c) 第1の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (d) 第2の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、 (e) 第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して、類似性
    の程度を決定すること、 を含んでなる上記方法。
  2. 【請求項2】 生物学的サンプルに対する第1の摂動の効果と第2の摂動の
    効果との類似性の程度を決定する方法であって、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、ただし、第1のセットの各構成要素プロファイルは生物学的サ
    ンプルの複数の初期状態の異なった状態により決定され、ここで、生物学的サン
    プルが複数の初期状態の異なった状態にあるときの、生物学的サンプルの第1の
    摂動に対する応答が測定されること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、ただし、第2のセットの各構成要素プロファイルは生物学的サ
    ンプルの複数の初期状態の異なった状態により決定され、ここで、生物学的サン
    プルが複数の初期状態の異なった状態にあるときの、生物学的サンプルの第2の
    摂動に対する応答が測定されること、 (C) 第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して、類似性
    の程度を決定すること、 を含んでなる上記方法。
  3. 【請求項3】 生物学的サンプルに対する第1の摂動の効果と第2の摂動の
    効果との類似性の程度を、第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルと
    を比較して類似性の程度を決定することにより決定する方法であって、 (i) 第1の構成要素プロファイルのセットを組み合わせることにより第1の増
    強プロファイルを決定すること、ただし、第1のセットの各構成要素プロファイ
    ルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なった状態にある場合に、生物学
    的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定することにより、生物学的サンプル
    の複数の初期状態の異なった状態を用いて決定されること、 (ii) 第2の構成要素プロファイルのセットを組み合わせることにより第2の増
    強プロファイルを決定すること、ただし、第2のセットの各構成要素プロファイ
    ルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なった状態にある場合に、生物学
    的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定することにより、生物学的サンプル
    の複数の初期状態の異なった状態を用いて決定されること、 を含んでなる上記方法。
  4. 【請求項4】 前記初期状態がそれぞれ異なっている、請求項1、2または
    3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記初期状態の2以上が同一である、請求項1、2または3
    に記載の方法。
  6. 【請求項6】 第1の構成要素プロファイルのセット中の少なくとも1つの
    構成要素プロファイルが第1の応答プロファイルであり、第2の構成要素プロフ
    ァイルのセット中の少なくとも1つの構成要素プロファイルが第2の応答プロフ
    ァイルであり、ここで、第1の応答プロファイルは、生物学的サンプルが複数の
    初期状態から選択された1つの初期状態にある場合に、生物学的サンプル中の少
    なくとも1つの細胞構成要素の少なくとも1回の測定により決定され、そして第
    2の応答プロファイルは、生物学的サンプルが該初期状態にある場合に、生物学
    的サンプル中の少なくとも1つの該細胞構成要素の少なくとも1回の測定により
    決定される、請求項1、2または3に記載の方法。
  7. 【請求項7】 第1の応答プロファイルおよび第2の応答プロファイルが、
    前記測定を行なうときの生物学的サンプルの前記初期状態により決定される、請
    求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 第1の構成要素プロファイルのセット中の少なくとも1つの
    構成要素プロファイルが第1の射影プロファイルであり、第2の構成要素プロフ
    ァイルのセット中の少なくとも1つの構成要素プロファイルが第2の射影プロフ
    ァイルであり、ここで、第1および第2の射影プロファイルはそれぞれ、同時変
    化する細胞構成要素セットの定義に従って誘導された複数の細胞構成要素セット
    値を含む、請求項1、2または3に記載の方法。
  9. 【請求項9】 第1の射影プロファイルおよび第2の射影プロファイルが、
    複数の初期状態から選択された1つの初期状態により決定される、請求項8に記
    載の方法。
  10. 【請求項10】 前記定義が複数の異なった摂動のもとでの前記細胞構成要
    素の共分散に基づくものである、請求項8に記載の方法。
  11. 【請求項11】 同時変化する細胞構成要素セットの前記定義が、前記複数
    の摂動のもとでの前記細胞構成要素のクラスター分析により誘導された類似性の
    樹形図により定義される、請求項8に記載の方法。
  12. 【請求項12】 同時変化する細胞構成要素セットが類似性樹形図の分枝と
    して定義される、請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 生物学的サンプルが細胞壁のある生物であり、前記複数の
    初期状態から選択された少なくとも1つの初期状態が、細胞壁の透過性を変える
    様式で生物学的サンプルを変更することにより決定される、請求項1、2または
    3に記載の方法。
  14. 【請求項14】 生物学的サンプルが細胞系である、請求項1、2または3
    に記載の方法。
  15. 【請求項15】 生物学的サンプルがサッカロミセス・セレビシエ(Sacchar
    omyces cerevisiae)と実質的に同一遺伝子である、請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記細胞系が薬物流出ポンプとして作用する能力のある巨
    大分子を発現し、前記複数の初期状態から選択された1つの初期状態が該細胞系
    における該巨大分子の突然変異活性により決定される、請求項14に記載の方法
  17. 【請求項17】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が第1
    の培養増殖条件のセットにより決定され、前記複数の初期状態から選択された第
    2の初期状態が第2の培養増殖条件のセットにより決定され、ここで、第1の培
    養増殖条件および第2の培養増殖条件は該培養増殖条件の1成分の量で異なって
    いる、請求項14に記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記培養増殖条件の成分が細胞系の生存に必要な栄養素の
    量である、請求項17に記載の方法。
  19. 【請求項19】 前記培養増殖条件の成分が微量元素の量である、請求項1
    7に記載の方法。
  20. 【請求項20】 前記成分が鉄、マンガン、亜鉛、銅、モリブデン、ホウ素
    、塩素、カルシウム、ナトリウム、クロム、カリウム、マグネシウム、およびセ
    レンからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 前記培養増殖条件の成分がインキュベーション温度である
    、請求項17に記載の方法。
  22. 【請求項22】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が細胞
    系の第1の培養増殖密度により決定され、前記複数の初期状態から選択された第
    2の初期状態が細胞系の第2の培養増殖密度により決定され、ここで、第1の培
    養増殖密度および第2の培養増殖密度は量で異なっている、請求項14に記載の
    方法。
  23. 【請求項23】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が生物
    学的サンプルと接触する薬物の第1の量により決定され、前記複数の初期状態か
    ら選択された第2の初期状態が生物学的サンプルと接触する薬物の第2の量によ
    り決定される、請求項14に記載の方法。
  24. 【請求項24】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が細胞
    系を表面上でインキュベートすることにより決定される、請求項14に記載の方
    法。
  25. 【請求項25】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が細胞
    系を液体中でインキュベートすることにより決定される、請求項14に記載の方
    法。
  26. 【請求項26】 生物学的サンプルを容器内でインキュベートし、前記複数
    の初期状態から選択された第1の初期状態が、生物学的サンプルをその中でイン
    キュベートする容器により決定され、該容器が振盪フラスコ、培養プレート、イ
    ンキュベーター、96ウェルマイクロタイタープレート、および384ウェルマイク
    ロタイタープレートからなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
  27. 【請求項27】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が、生
    物学的サンプルの遺伝的特徴により決定される、請求項1、2または3に記載の
    方法。
  28. 【請求項28】 生物学的サンプルがゲノムを有するサッカロミセス・セレ
    ビシエ(Saccharomyces cerevisiae)と実質的に同一遺伝子であり、前記複数の初
    期状態から選択された第1の初期状態が、該ゲノムの一倍体状態、該ゲノムの二
    倍体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子のヘテロ接合体状態、該ゲノムに含まれる
    遺伝子のホモ接合体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子の突然変異、該ゲノム由来
    の遺伝子の一部の欠失、該ゲノムに含まれる遺伝子の調節配列の変異、該ゲノム
    に組み込まれた外因性遺伝子、および該ゲノムに組み込まれた外因性オリゴヌク
    レオチドからなる群より選択された遺伝的特徴により決定される、請求項27に
    記載の方法。
  29. 【請求項29】 生物学的サンプルがゲノムを有する細胞系であり、ここで
    、第1の初期状態が前記複数の初期状態から選択され、該第1の初期状態が、該
    ゲノムに含まれる遺伝子のヘテロ接合体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子のホモ
    接合体状態、該ゲノムに含まれる遺伝子の突然変異、該ゲノム由来の遺伝子の一
    部の欠失、該ゲノムに含まれる遺伝子の調節配列の変異、該細胞系のゲノムに組
    み込まれた外因性遺伝子、および該ゲノムに組み込まれた外因性オリゴヌクレオ
    チドからなる群より選択された遺伝的特徴により決定される、請求項27に記載
    の方法。
  30. 【請求項30】 前記複数の初期状態から選択された第2の初期状態が、生
    物学的サンプルにある量の組成物を接触させることにより決定され、ここで、該
    組成物は薬物、内因性ホルモン、増殖因子、ペプチド、またはオリゴヌクレオチ
    ドを含む、請求項29に記載の方法。
  31. 【請求項31】 前記複数の初期状態から選択された第1の初期状態が生物
    学的経路の状態により決定され、ここで、該生物学的経路は該細胞系に存在する
    生物学的経路の一覧表から選択される、請求項14に記載の方法。
  32. 【請求項32】 生物学的サンプルがサッカロミセス・セレビシエ(Sacchar
    omyces cerevisiae)と実質的に同一遺伝子であり、前記生物学的経路が接合経路
    である、請求項31に記載の方法。
  33. 【請求項33】 第1の摂動が生物学的サンプルと接触する第1の薬物の第
    1の量である、請求項1、2または3に記載の方法。
  34. 【請求項34】 第2の摂動が生物学的サンプルと接触する第1の薬物の第
    2の量であり、ここで、第1の薬物の第1および第2の量は異なるものである、
    請求項33に記載の方法。
  35. 【請求項35】 第2の摂動が生物学的サンプルと接触する第2の薬物の量
    である、請求項33に記載の方法。
  36. 【請求項36】 生物学的サンプルがゲノムを含み、第1の摂動が該ゲノム
    への外因性遺伝子の導入により決定される、請求項1、2または3に記載の方法
  37. 【請求項37】 生物学的サンプルがゲノムを含み、第1の摂動が該ゲノム
    中の1遺伝子の少なくとも実質的部分の欠失を含む、請求項1、2または3に記
    載の方法。
  38. 【請求項38】 第1の摂動が方法であり、該方法が生物学的サンプルにホ
    ルモン、薬物、ペプチド、オリゴヌクレオチド、無機物、培地の組成物、ファー
    ジ、微量元素、塩、コロニー刺激因子、および放射線源からなる群より選択され
    た物質を接触させることを含む、請求項1、2または3に記載の方法。
  39. 【請求項39】 第1の摂動が方法であり、該方法が分子量1000ダルトン未
    満の有機化合物のある量を生物学的サンプルに接触させることを含む、請求項1
    、2または3に記載の方法。
  40. 【請求項40】 第1のセットの構成要素プロファイルをコンカテマー化す
    ることにより第1の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第1の増強プ
    ロファイルにし、第2のセットの構成要素プロファイルをコンカテマー化するこ
    とにより第2の構成要素プロファイルのセットを組み合わせて第2の増強プロフ
    ァイルにする、請求項1、2または3に記載の方法。
  41. 【請求項41】 第1の増強プロファイルが式: であり、式中、 Piは、第1の増強プロファイルであり、 P'1は、生物学的サンプルが第1の生物学的状態にある場合に、生物学的サン
    プルの第1の摂動に対する応答を測定することにより決定された第1の構成要素
    プロファイルセット中の第1の構成要素プロファイルであり、 P'Nは、生物学的サンプルが複数の初期状態から選択されたN番目の生物学的状
    態にある場合に、生物学的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定することに
    より決定される第1の構成要素プロファイルセット中のN番目の構成要素プロフ
    ァイルであり、そして 第2の増強プロファイルが式: であり、式中、 Pjは、第2の増強プロファイルであり、 P"1は、生物学的サンプルが第1の生物学的状態にある場合に、生物学的サン
    プルの第2の摂動に対する応答を測定することにより決定された第2の構成要素
    プロファイルセット中の第1の構成要素プロファイルであり、 P"Nは、生物学的サンプルが複数の初期状態から選択されたN番目の生物学的状
    態にある場合に、生物学的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定することに
    より決定された第2の構成要素プロファイルセット中のN番目の構成要素プロフ
    ァイルであり、 Nは、前記複数の初期状態中の状態の数であり、そして第1の増強プロファイ
    ルと第2の増強プロファイルとを比較して相関関係を決定する前記ステップが、
    類似性の定量的測度を用いてPiとPjを比較することにより行なわれる、請求項1
    、2または3に記載の方法。
  42. 【請求項42】 類似性の定量的測度が一般化したドット積: であり、式中、*はドット積を表し、‖はベクトルノルムを表し、rijは類似性
    を表す、請求項41に記載の方法。
  43. 【請求項43】 類似性の定量的測度がShannon相互情報理論から誘導され
    る、請求項41に記載の方法。
  44. 【請求項44】 各構成要素プロファイルが複数のエレメントを含み、各エ
    レメントが生物学的サンプル中の細胞構成要素の量を表す、請求項1、2または
    3に記載の方法。
  45. 【請求項45】 第1のセット中の少なくとも1つの構成要素プロファイル
    の各エレメント、および第2のセット中の少なくとも1つの構成要素プロファイ
    ルの各エレメントは、 該エレメントが負の閾値を超える場合は「-1」、 該エレメントが正の閾値を超える場合は「1」、 該エレメントが正および負の閾値を超えない場合は「0」、 を指定され、 正の閾値は生物学的サンプル中の1以上の細胞構成要素の第1の量に対応し、
    第2の閾値は生物学的サンプル中の1以上の細胞構成要素の第2の量に対応する
    、請求項44に記載の方法。
  46. 【請求項46】 それぞれの細胞構成要素が、遺伝子発現レベル、遺伝子を
    コードするmRNAの量、タンパク質の量、酵素活性の量、巨大分子により提示され
    るエピトープの量、2価カチオンの量、リン酸化タンパク質の量、脱リン酸化タ
    ンパク質の量、ホルモンの量、およびペプチドの量からなる群より独立して選択
    される、請求項44に記載の方法。
  47. 【請求項47】 生物学的サンプルの各初期状態が、生物学的サンプルを異
    なった時期に選択することにより提供される、請求項1、2または3に記載の方
    法。
  48. 【請求項48】 第2の構成要素プロファイルのセットが生物学的サンプル
    の基準状態を表す、請求項1、2または3に記載の方法。
  49. 【請求項49】 第2の摂動が野生型活性であり、第2の構成要素プロファ
    イルのセットが生物学的サンプルの野生型状態を表す、請求項1、2または3に
    記載の方法。
  50. 【請求項50】 被験体に対する第1の摂動の効果を決定する方法であって
    、 (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、異
    なる時期に被験体から生物学的サンプルを得ることにより決定され、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、複数の摂動か
    ら選択される異なった第2の摂動に対する生物学的サンプルの生物学的応答を測
    定することにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、被験体に対する第1の摂動の効果を
    決定すること、 を含んでなる上記方法。
  51. 【請求項51】 第1の摂動が疾病状態、該被験体のゲノムへの外因性遺伝
    子の導入、および行動衛生上の危険からなる群より選択される、請求項50に記
    載の方法。
  52. 【請求項52】 被験体に対する第1の摂動の効果を決定する方法であって
    、 (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、環
    境傷害の異なった段階に該被験体から生物学的サンプルを得ることにより決定さ
    れ、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、複数の摂動か
    ら選択される異なった第2の摂動に対する生物学的サンプルの生物学的応答を測
    定することにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、被験体に対する第1の摂動の効果を
    決定すること、 を含んでなる上記方法。
  53. 【請求項53】 環境傷害が該被験体を苦しめている疾病である、請求項5
    2に記載の方法。
  54. 【請求項54】 複数の構成要素プロファイルセット中の第1の構成要素プ
    ロファイルセットが基準状態を表し、複数の構成要素プロファイルセット中の他
    の全ての構成要素プロファイルセットが第1の構成要素プロファイルセットの比
    率として表される、請求項50または52に記載の方法。
  55. 【請求項55】 複数の構成要素プロファイルセット中の第1の構成要素プ
    ロファイルセットが基準状態を表し、複数の構成要素プロファイルセット中の他
    の全ての構成要素プロファイルセットが第1の構成要素プロファイルセットの対
    数比率として表される、請求項50または52に記載の方法。
  56. 【請求項56】 第1の摂動が被験体により規則的な間隔で摂取される薬物
    である、請求項50または52に記載の方法。
  57. 【請求項57】 第1の被験体の生物学的状態を決定する方法であって、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、第1の被験体に由来する生物学的サンプルの
    摂動に対する応答を異なる時期に測定することにより決定されること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第2のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的状態が知られている第2の被験体に
    由来する第2の生物学的サンプルの該摂動に対する応答を異なる時期に測定する
    ことにより決定されること、 (c) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (d) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、 (e) 第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して、第1の
    被験体の生物学的状態を予想すること、 を含んでなる上記方法。
  58. 【請求項58】 被験体の疾病状態を診断する方法であって、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、該被験体から得られた生物学的サンプルの、
    複数の摂動から選択される異なった摂動に対する応答を測定することにより決定
    されること、 (b) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (c) 第1の増強プロファイルを増強プロファイルのライブラリーと比較して、
    該疾病状態を診断すること、ここで、増強プロファイルのライブラリー中の各増
    強プロファイルは、生物学的状態が知られている異なった生物学的サンプルから
    誘導されたものであること、 を含んでなる上記方法。
  59. 【請求項59】 前記比較ステップが第1の増強プロファイルに対する類似
    性に基づいて該ライブラリーをグループにまとめるステップを含む、請求項58
    に記載の方法。
  60. 【請求項60】 薬物探索方法であって、次のステップ: (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、試
    験化合物の使用により決定され、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、該試験化合物
    に、複数の生物学的状態から選択される異なった生物学的状態にある細胞系を接
    触させることにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、該細胞系に対する試験化合物の効果
    を決定すること、 を含んでなる上記方法。
  61. 【請求項61】 第1の被験体の生物学的状態を決定する方法であって、該
    方法は、第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して第1の
    被験体の生物学的状態を予想することを含んでなり、ここで、第1および第2の
    増強プロファイルが、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、第1の被験体に由来する生物学的サンプルの
    摂動に対する応答を異なる時期に測定することにより決定されること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第2のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的状態が知られている第2の被験体に
    由来する第2の生物学的サンプルの該摂動に対する応答を異なる時期に測定する
    ことにより決定されること、 (c) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (d) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、 により誘導される、ことを特徴とする上記方法。
  62. 【請求項62】 被験体の疾病状態を診断する方法であって、該方法は、第
    1の増強プロファイルを増強プロファイルのライブラリーと比較することを含ん
    でなり、ここで、増強プロファイルのライブラリー中の各増強プロファイルは生
    物学的状態が知られている異なった生物学的サンプルから誘導され、該第1の増
    強プロファイルは、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、該被験体に由来する生物学的サンプルの、複
    数の摂動から選択される異なった摂動に対する応答を測定することにより決定さ
    れること、 (b) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルを誘導すること、 により誘導される、ことを特徴とする上記方法。
  63. 【請求項63】 生物学的系に対する第1の摂動の効果と第2の摂動の効果
    との類似性の程度を決定するためのコンピュータシステムであって、該コンピュ
    ータシステムはプロセッサと該プロセッサに接続されたメモリを含み、該メモリ
    は1以上のプログラムをコードしており、該1以上のプログラムが該プロセッサ
    に下記のステップ: (a) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、ただし、第1のセット中の各構成要素プロファイルは、生物学
    的系の複数の初期状態の異なった状態により決定され、その際、生物学的系が複
    数の初期状態の異なった状態にある場合の、生物学的系の第1の摂動に対する応
    答が測定されること、 (b) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、ただし、第2のセットの各構成要素プロファイルは、生物学的
    系の複数の初期状態の異なった状態により決定され、その際、生物学的系が複数
    の初期状態の異なった状態にある場合の、生物学的系の第2の摂動に対する応答
    が測定されること、 (c) 第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して類似性の
    程度を決定すること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  64. 【請求項64】 生物学的サンプルに対する第1の摂動の効果と第2の摂動
    の効果との類似性の程度を決定するためのコンピュータシステムであって、該コ
    ンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接続されたメモリを含み、該
    メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1以上のプログラムが該プロ
    セッサに、第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して類似
    性の程度を決定することを含む方法を実行させるものであり、ここで、 (i) 第1の増強プロファイルは第1のセットの構成要素プロファイルを組み合
    わせることにより決定されること、ただし、第1のセットの各構成要素プロファ
    イルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なった状態にある場合に、生物
    学的サンプルの第1の摂動に対する応答を測定することにより、生物学的サンプ
    ルの複数の初期状態の異なった状態を用いて決定されること、 (ii) 第2の増強プロファイルは第2のセットの構成要素プロファイルを組み合
    わせることにより決定されること、ただし、第2のセットの各構成要素プロファ
    イルは、生物学的サンプルが複数の初期状態の異なった状態にある場合に、生物
    学的サンプルの第2の摂動に対する応答を測定することにより、生物学的サンプ
    ルの複数の初期状態の異なった状態を用いて決定されること、 を特徴とする、上記コンピュータシステム。
  65. 【請求項65】 被験体に対する第1の摂動の効果を決定するためのコンピ
    ュータシステムであって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサ
    に接続されたメモリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、
    該1以上のプログラムが該プロセッサに下記のステップ: (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、異
    なる時期に該被験体から生物学的サンプルを得ることにより決定され、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、複数の摂動か
    ら選択される異なった第2の摂動に対する生物学的サンプルの生物学的応答を測
    定することにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、被験体に対する第1の摂動の効果を
    決定すること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  66. 【請求項66】 被験体に対する第1の摂動の効果を決定するためのコンピ
    ュータシステムであって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサ
    に接続されたメモリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、
    該1以上のプログラムが該プロセッサに下記のステップ: (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、環
    境傷害の異なった段階に該被験体から生物学的サンプルを得ることにより決定さ
    れ、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、複数の摂動か
    ら選択される異なった第2の摂動に対する生物学的サンプルの生物学的応答を測
    定することにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、被験体に対する第1の摂動の効果を
    決定すること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  67. 【請求項67】 第1の被験体の生物学的状態を決定するためのコンピュー
    タシステムであって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接
    続されたメモリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1
    以上のプログラムが該プロセッサに下記のステップ: (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、第1の被験体に由来する生物学的サンプルの
    摂動に対する応答を異なる時期に測定することにより決定されること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第2のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的状態が知られている第2の被験体に
    由来する第2の生物学的サンプルの該摂動に対する応答を異なる時期に測定する
    ことにより決定されること、 (c) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (d) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、 (e) 第1の増強プロファイルと第2の増強プロファイルとを比較して、第1の
    被験体の生物学的状態を予想すること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  68. 【請求項68】 被験体の疾病状態を診断するためのコンピュータシステム
    であって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接続されたメ
    モリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1以上のプロ
    グラムが該プロセッサに下記のステップ: (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、該被験体に由来する生物学的サンプルの、複
    数の摂動から選択される異なった摂動に対する応答を測定することにより決定さ
    れること、 (b) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (c) 第1の増強プロファイルを増強プロファイルのライブラリーと比較して疾
    病状態を診断すること、ただし、増強プロファイルのライブラリー中の各増強プ
    ロファイルは生物学的状態が知られている異なった生物学的サンプルから誘導さ
    れること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  69. 【請求項69】 薬物探索を促進するためのコンピュータシステムであって
    、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接続されたメモリを含
    み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1以上のプログラムが
    該プロセッサに下記のステップ: (a) 複数の増強プロファイルを決定すること、ただし、各増強プロファイルは
    複数の構成要素プロファイルセットから選択された構成要素プロファイルセット
    を組み合わせることにより決定され、ここで、 複数の構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルセットは、試
    験化合物の使用により決定され、 該構成要素プロファイルセット中の各構成要素プロファイルは、該試験化合物
    に、複数の生物学的状態から選択される異なった生物学的状態にある細胞系を接
    触させることにより決定されること、 (b) 複数の増強プロファイルを比較して、該細胞系に対する試験化合物の効果
    を決定すること、 を含む方法を実行させるものである、上記コンピュータシステム。
  70. 【請求項70】 第1の被験体の生物学的状態を決定するためのコンピュー
    タシステムであって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接
    続されたメモリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1
    以上のプログラムが該プロセッサに、第1の増強プロファイルと第2の増強プロ
    ファイルとを比較して第1の被験体の生物学的状態を予想することを含む方法を
    実行させるものであり、ここで、第1および第2の増強プロファイルが、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、第1の被験体に由来する生物学的サンプルの
    摂動に対する応答を異なる時期に測定することにより決定されること、 (b) 第2の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第2のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、生物学的状態が知られている第2の被験体に
    由来する第2の生物学的サンプルの該摂動に対する応答を異なる時期に測定する
    ことにより決定されること、 (c) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルにすること、 (d) 第2のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第2の増強プロファ
    イルにすること、 により誘導される、上記コンピュータシステム。
  71. 【請求項71】 被験体の疾病状態を診断するためのコンピュータシステム
    であって、該コンピュータシステムはプロセッサと該プロセッサに接続されたメ
    モリを含み、該メモリは1以上のプログラムをコードしており、該1以上のプロ
    グラムが該プロセッサに、第1の増強プロファイルを増強プロファイルのライブ
    ラリーと比較することを含む方法を実行させるものであり、ここで、増強プロフ
    ァイルのライブラリー中の各増強プロファイルは生物学的状態が知られている異
    なった生物学的サンプルから誘導され、そして該第1の増強プロファイルは、 (a) 第1の構成要素プロファイルのセットを決定すること、ただし、第1のセ
    ットの各構成要素プロファイルは、該被験体に由来する生物学的サンプルの、複
    数の摂動から選択される異なった摂動に対する応答を測定することにより決定さ
    れること、 (b) 第1のセットの構成要素プロファイルを組み合わせて第1の増強プロファ
    イルを誘導すること、 により誘導される、上記コンピュータシステム。
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