JP2002531861A - 光学的量子計算方法 - Google Patents
光学的量子計算方法Info
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- B82—NANOTECHNOLOGY
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- G—PHYSICS
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- G06N—COMPUTING ARRANGEMENTS BASED ON SPECIFIC COMPUTATIONAL MODELS
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Abstract
(57)【要約】
量子ゲートを構築するための非局在効果を利用した光学的量子計算方法。原子組が2つの光子と入れ替わる非局在相互作用によって、大きな非線形位相シフトが起こる。こうした非線形位相シフトは制御NOTなどの量子論理ゲートを構築するために用いられる。
Description
関連出願の相互参照 この出願は、先に出願された同時係属の米国仮出願第60/082,983号
(出願日1998年4月24日)の出願日遡及の特典を主張するものである。
(出願日1998年4月24日)の出願日遡及の特典を主張するものである。
【0001】 政府の関与に関する説明 本発明は、海軍省、国家安全保障庁、および陸軍省によりそれぞれ結ばれた契
約N00014−91−J−1485、MDA904−95−G−0363/5
007、およびDAAG55−98−1−0368に基づく政府支援によって達
成されたものである。
約N00014−91−J−1485、MDA904−95−G−0363/5
007、およびDAAG55−98−1−0368に基づく政府支援によって達
成されたものである。
【0002】 発明の背景 本発明は、量子計算(quantum computing) に関し、より詳細には、量子コンピ
ュータを構築するための新規な光学的方法に関するものである。
ュータを構築するための新規な光学的方法に関するものである。
【0003】 計算を完了するまで時間を要するために従来のコンピュータでは解くことがで
きない数値問題が数多くある。例えば、コンピュータがN桁の整数を因数分解す
るのに必要な時間はNに対し指数関数的に増加すると考えられている。現在利用
できる最速のスーパーコンピュータで150桁の数を因数分解するのに必要な時
間は、宇宙の年齢を超えると見積もられている。従来のコンピュータが将来その
速度が向上したとしても、このような問題の対応には不十分であることは明らか
である。この問題は、実用上非常に重要であることが多い。例えば、大きな数を
因数分解することの困難性は、最も一般的に使われている暗号手法の基本となっ
ている。
きない数値問題が数多くある。例えば、コンピュータがN桁の整数を因数分解す
るのに必要な時間はNに対し指数関数的に増加すると考えられている。現在利用
できる最速のスーパーコンピュータで150桁の数を因数分解するのに必要な時
間は、宇宙の年齢を超えると見積もられている。従来のコンピュータが将来その
速度が向上したとしても、このような問題の対応には不十分であることは明らか
である。この問題は、実用上非常に重要であることが多い。例えば、大きな数を
因数分解することの困難性は、最も一般的に使われている暗号手法の基本となっ
ている。
【0004】 量子構造コンピュータは、非古典的論理演算を用いて、大きな数の因数分解な
どのような幾つかの問題の効率的な解決法を提供しうることが既に分かっている
。非古典的な論理機能の例としては、単純に単独のビットを0から1に、1から
0に変換する従来のNOT(否定)演算が挙げられる。通常のNOTに加えて、
量子コンピュータは、NOTの平方根として理解される新しいタイプの論理演算
も実行することができる。この演算が2回行われた場合(2乗された場合)、通
常のNOTが生成される。しかし、この演算が1回だけ行われた場合には古典的
解釈のない論理演算となる。
どのような幾つかの問題の効率的な解決法を提供しうることが既に分かっている
。非古典的な論理機能の例としては、単純に単独のビットを0から1に、1から
0に変換する従来のNOT(否定)演算が挙げられる。通常のNOTに加えて、
量子コンピュータは、NOTの平方根として理解される新しいタイプの論理演算
も実行することができる。この演算が2回行われた場合(2乗された場合)、通
常のNOTが生成される。しかし、この演算が1回だけ行われた場合には古典的
解釈のない論理演算となる。
【0005】 量子コンピュータは、非古典的論理演算に加えて、従来のコンピュータでは明
らかに不可能であった、単一のプロセッサ(処理装置)上で多数の異なる計算を
同時に実行することを可能にするであろう。量子コンピュータにおける性能の向
上の大部分は、この並行処理に起因している。
らかに不可能であった、単一のプロセッサ(処理装置)上で多数の異なる計算を
同時に実行することを可能にするであろう。量子コンピュータにおける性能の向
上の大部分は、この並行処理に起因している。
【0006】 個々の量子論理ゲートの演算は提示されて来たが、動作可能な量子コンピュー
タは構築されてこなかった。最終的な目的は、現在の半導体技術と類似した形で
、多くの量子論理ゲートを単一の基板上に生成することであり、これによって実
践的な量子コンピュータの開発が可能になるであろう。
タは構築されてこなかった。最終的な目的は、現在の半導体技術と類似した形で
、多くの量子論理ゲートを単一の基板上に生成することであり、これによって実
践的な量子コンピュータの開発が可能になるであろう。
【0007】 量子コンピュータは、従来のコンピュータと同様に、数字を2値で表現するよ
うになっている。個々の量子ビットは、よくキュービット(qubit) と呼ばれ、量
子系の状態によって物理的に示されている。例えば、原子の基底状態は値0で表
され、一方、同じ原子の励起状態は値1で表される。量子計算に対する本発明の
光学的アプローチでは、所定の経路における単一の光子が0で表され、同じ光子
が別の経路では1で表される。
うになっている。個々の量子ビットは、よくキュービット(qubit) と呼ばれ、量
子系の状態によって物理的に示されている。例えば、原子の基底状態は値0で表
され、一方、同じ原子の励起状態は値1で表される。量子計算に対する本発明の
光学的アプローチでは、所定の経路における単一の光子が0で表され、同じ光子
が別の経路では1で表される。
【0008】 古典的なビットは常に明確に規定された値をとるが、キュービットは0と1の
2つの状態両方を示すことが頻繁にある。通常、量子系の普段の状態は|Ψ〉で
表され、|0〉および|1〉がそれぞれ値0および値1を表すものとする。量子
力学によって、これら2つの状態の重ね合わせ(superposition) は以下のように
示される。
2つの状態両方を示すことが頻繁にある。通常、量子系の普段の状態は|Ψ〉で
表され、|0〉および|1〉がそれぞれ値0および値1を表すものとする。量子
力学によって、これら2つの状態の重ね合わせ(superposition) は以下のように
示される。
【0009】 |Ψ〉=α|0〉+β|1〉 αおよびβは、複素数である。系が|0〉の状態である確率はα2 に等しく、
|1〉の状態はβ2 で表される。
|1〉の状態はβ2 で表される。
【0010】 こういった量子力学的重ね合わせは、系がいつでも1つの状態にあるとは限ら
ない点で、古典的確率とは根本的に異なる。例えば、単一の光子が、図1に示す
ように、位相変化φ1およびφ2が挿入された2つの経路を通って干渉計を通過
する場合を考えてみる。この場合、光子がビームスプリッタによって上側の経路
および下側の経路を通過する確率は、共に50%となる。光子の位置を判別する
ために測定をすると、2つの経路のうち1つの経路だけで光子が発見される。し
かし、位置判別の測定が行われない場合は、単一の光子で位相変化φ1およびφ
2の両方を同時に測定できる。これは、観測された干渉パターンが2つの位相の
違いによって変化するからである。つまり、位置判別のための測定が行われない
場合、光子は必ず両方の経路に位置する。多くの経路を有するさらに複雑な干渉
計の場合、単一の光子が経路のうち1つのみで検出されたとしても、光子によっ
て全ての経路の位相変化の組み合わせを同時に測定することができる。
ない点で、古典的確率とは根本的に異なる。例えば、単一の光子が、図1に示す
ように、位相変化φ1およびφ2が挿入された2つの経路を通って干渉計を通過
する場合を考えてみる。この場合、光子がビームスプリッタによって上側の経路
および下側の経路を通過する確率は、共に50%となる。光子の位置を判別する
ために測定をすると、2つの経路のうち1つの経路だけで光子が発見される。し
かし、位置判別の測定が行われない場合は、単一の光子で位相変化φ1およびφ
2の両方を同時に測定できる。これは、観測された干渉パターンが2つの位相の
違いによって変化するからである。つまり、位置判別のための測定が行われない
場合、光子は必ず両方の経路に位置する。多くの経路を有するさらに複雑な干渉
計の場合、単一の光子が経路のうち1つのみで検出されたとしても、光子によっ
て全ての経路の位相変化の組み合わせを同時に測定することができる。
【0011】 一つ以上の計算を同時に行うという量子コンピュータの能力は、上記の単一光
子干渉計の特徴と似ている。たとえコンピュータの活動を正確に判別する測定に
よって特定の計算のみ行うようにプログラミングされていたとしても、量子コン
ピュータは多くの計算を行うことによって結果を出すことができる。具体的には
、N個の入力ビット値に基づく特定の計算を行うようプログラミングされたコン
ピュータの場合、図2のように計算結果をN個の出力ビットで表す。入力ビット
には2N の異なる組み合わせがあり、各ビットは|input j 〉で表される特定の
入力状態に対応している。jには1から2N の全ての値が入る。同数の出力ビッ
トの特定の組み合わせは|outputk 〉で表される。各入力状態によって、可能な
出力状態の重ね合わせを形成することができる。
子干渉計の特徴と似ている。たとえコンピュータの活動を正確に判別する測定に
よって特定の計算のみ行うようにプログラミングされていたとしても、量子コン
ピュータは多くの計算を行うことによって結果を出すことができる。具体的には
、N個の入力ビット値に基づく特定の計算を行うようプログラミングされたコン
ピュータの場合、図2のように計算結果をN個の出力ビットで表す。入力ビット
には2N の異なる組み合わせがあり、各ビットは|input j 〉で表される特定の
入力状態に対応している。jには1から2N の全ての値が入る。同数の出力ビッ
トの特定の組み合わせは|outputk 〉で表される。各入力状態によって、可能な
出力状態の重ね合わせを形成することができる。
【0012】
【数1】
【0013】 複素係数βjkは行った計算を表す。さらに、入力状態を、コンピュータへのす
べての可能な入力の重ね合わせとすることができる。
べての可能な入力の重ね合わせとすることができる。
【0014】
【数2】
【0015】 この場合、量子力学の直線性によって以下の形式の出力状態が得られる。
【0016】
【数3】
【0017】 特定の出力状態kを得る確率Pk は、以下の式の係数を2乗して決定される。
【0018】
【数4】
【0019】 特定の出力を得る確率は、全ての係数βjkによって決まると思われる。この係
数は、コンピュータ上で得られうる全ての計算結果を示している。全ての入力状
態が互いに同相で影響するのであればPk は大きくなる。この点を考えれば、こ
の結果は、入力間で起こり得る全ての干渉によっても決定する。逆に、全ての初
期状態からの影響が打ち消しあう場合、Pk は小さくなる。量子計算の目的は、
誤った結果の起こる確率を低くしながら所望の結果を高い確率で得られるように
、コンピュータをプログラミングすることである。
数は、コンピュータ上で得られうる全ての計算結果を示している。全ての入力状
態が互いに同相で影響するのであればPk は大きくなる。この点を考えれば、こ
の結果は、入力間で起こり得る全ての干渉によっても決定する。逆に、全ての初
期状態からの影響が打ち消しあう場合、Pk は小さくなる。量子計算の目的は、
誤った結果の起こる確率を低くしながら所望の結果を高い確率で得られるように
、コンピュータをプログラミングすることである。
【0020】 このような重ね合わせ状態の有効性を示すため、ここで量Qを計算する。
【0021】
【数5】
【0022】 f(j)は、jの高度に非線形の関数を示す。量Qは、コンピュータへの全て
の入力に関する関数fの重み平均に対応している。これは、一種のフーリエ変換
と呼ばれる。f(j)を計算するようコンピュータをプログラミングし、さらに
、所望の重み平均に対応した入力状態の重ね合わせを形成することによって、上
記の計算が量子コンピュータ上で行われる。
の入力に関する関数fの重み平均に対応している。これは、一種のフーリエ変換
と呼ばれる。f(j)を計算するようコンピュータをプログラミングし、さらに
、所望の重み平均に対応した入力状態の重ね合わせを形成することによって、上
記の計算が量子コンピュータ上で行われる。
【0023】 上記のように、量子コンピュータは大きな数の因数分解を効率的に行うために
用いられる。これは量子計算において現在非常に重要である。関係するアルゴリ
ズムは、コンピュータの出力が所望の因数の1つに高い確率で対応するように、
干渉効果を利用する。
用いられる。これは量子計算において現在非常に重要である。関係するアルゴリ
ズムは、コンピュータの出力が所望の因数の1つに高い確率で対応するように、
干渉効果を利用する。
【0024】 量子コンピュータが実際どのように使われるにしても、従来のコンピュータの
配線に相当するものとして、多数の異なる論理ゲートを接続するためのモジュー
ル式アプローチが必要となるであろう。デコヒーレンス(decoherence) として知
られる、量子状態におけるエラーの増加を修正する機能も必要となる。個々の量
子ゲートは、トラップ内のイオンの核スピンを利用して示される。しかしながら
、このアプローチはモジュール式アプローチではなく、あるイオンから別のイオ
ンに情報を転送するのは非常に複雑な処理となる。
配線に相当するものとして、多数の異なる論理ゲートを接続するためのモジュー
ル式アプローチが必要となるであろう。デコヒーレンス(decoherence) として知
られる、量子状態におけるエラーの増加を修正する機能も必要となる。個々の量
子ゲートは、トラップ内のイオンの核スピンを利用して示される。しかしながら
、このアプローチはモジュール式アプローチではなく、あるイオンから別のイオ
ンに情報を転送するのは非常に複雑な処理となる。
【0025】 量子計算への光学的なアプローチは、実用上多くの利点をもたらす。全ての量
子コンピュータは、本質的に干渉効果に依存しており、適切な位相を維持しなけ
ればならない。光学干渉計は、その位相が比較的安定しており、フィードバック
(帰還)技術を利用して制御できることから、現在広く実用化されている。電子
など帯電した粒子は存在するが、迷電界に対して非常に敏感である。さらに、光
ファイバーや導波管は、所望の論理演算を行うために光子ゲートを接続する際に
容易に用いることができる。上記の理由やその他の理由で、量子コンピュータの
構築への最も実践的なアプローチは光学装置の利用を基盤にすることであろう。
子コンピュータは、本質的に干渉効果に依存しており、適切な位相を維持しなけ
ればならない。光学干渉計は、その位相が比較的安定しており、フィードバック
(帰還)技術を利用して制御できることから、現在広く実用化されている。電子
など帯電した粒子は存在するが、迷電界に対して非常に敏感である。さらに、光
ファイバーや導波管は、所望の論理演算を行うために光子ゲートを接続する際に
容易に用いることができる。上記の理由やその他の理由で、量子コンピュータの
構築への最も実践的なアプローチは光学装置の利用を基盤にすることであろう。
【0026】 こうした光学的アプローチにおいてまず問題となるのは、単一の光子に関係し
た電界は通常非常に弱いが上記の非線形効果は一般的に高い強度の電界を必要と
することである。しかし、単一の光子からの電界はそれが占める量の平方根に反
比例し、光子を充分小さな量に抑えることによって約10000V/mの電界を
形成することができる。2光子レベルにおけるこうした非線形位相変化は示され
ているが、そのアプローチには非常に高品質のミラーや、原子ビーム、媒質内の
原子の共鳴周波数に近い演算が必要となる。どれも稼働する量子コンピュータの
構築には実用的ではないようである。
た電界は通常非常に弱いが上記の非線形効果は一般的に高い強度の電界を必要と
することである。しかし、単一の光子からの電界はそれが占める量の平方根に反
比例し、光子を充分小さな量に抑えることによって約10000V/mの電界を
形成することができる。2光子レベルにおけるこうした非線形位相変化は示され
ているが、そのアプローチには非常に高品質のミラーや、原子ビーム、媒質内の
原子の共鳴周波数に近い演算が必要となる。どれも稼働する量子コンピュータの
構築には実用的ではないようである。
【0027】 発明の概要 図3に示す充分な数の制御NOT(XOR)ゲートに、容易に実行できる単一
ビット演算をさらに組み合わせることによって、どのような論理演算や数値計算
も実行できる。制御NOTはAとBの2値入力を有している。入力Aは常に変化
なく出力に送られるが、入力Bは、入力A=1の場合と入力A=1である場合の
みに反転(転換)する。よって、入力Aが入力Bの動作を制御できる。実践的な
制御NOTゲートの開発が、量子コンピュータの構築への最初のステップである
。
ビット演算をさらに組み合わせることによって、どのような論理演算や数値計算
も実行できる。制御NOTはAとBの2値入力を有している。入力Aは常に変化
なく出力に送られるが、入力Bは、入力A=1の場合と入力A=1である場合の
みに反転(転換)する。よって、入力Aが入力Bの動作を制御できる。実践的な
制御NOTゲートの開発が、量子コンピュータの構築への最初のステップである
。
【0028】 制御NOTゲートは、図4に示した光学的構造を用いて実行される。この場合
、単一の光子が点線で示される経路内にあればビットAは値1を有するが、その
光子が太線で示した経路にあれば値は0となる。入力Bは、第2の光子で同様に
表される。2つの光子はそれぞれ異なる周波数ω1およびω2を有し、この周波
数によって光子が区別できる。光子Bの2つの経路はビームスプリッタと組み合
わされ、非線形媒体を通過する1つのアームを有する干渉計を形成する。光子B
の位相変化は、媒体の屈折率に依存し、これはその位置の電界の強さによって変
わる(カー効果)。もし光子Aが同時に媒体を通過すれば、その電界は、さらに
πの位相変化をもたらし、これによって光子Bがとるべき出力経路が変化する。
その結果、光子Aは光子Bの経路を制御できる。
、単一の光子が点線で示される経路内にあればビットAは値1を有するが、その
光子が太線で示した経路にあれば値は0となる。入力Bは、第2の光子で同様に
表される。2つの光子はそれぞれ異なる周波数ω1およびω2を有し、この周波
数によって光子が区別できる。光子Bの2つの経路はビームスプリッタと組み合
わされ、非線形媒体を通過する1つのアームを有する干渉計を形成する。光子B
の位相変化は、媒体の屈折率に依存し、これはその位置の電界の強さによって変
わる(カー効果)。もし光子Aが同時に媒体を通過すれば、その電界は、さらに
πの位相変化をもたらし、これによって光子Bがとるべき出力経路が変化する。
その結果、光子Aは光子Bの経路を制御できる。
【0029】 本発明のアプローチは、こうした非線形の位相変化を非常に大きくする新たな
物理的効果に基づいている。従来の非線形機構は、2つの光子と個々の原子との
相互作用を有し、これによって溶媒中の原子数NAに比例した位相変化が起こる
。新しい機構は2つの光子と原子対との相互作用を有し、NA2 に比例した位相
変化が起こる。このNA2 は溶媒中の原子対の数である。図5に示す通り、提案
されている機構は、原子Aによる光子1の吸収および光子2の放射と、その後の
原子Bによる光子2の吸収および光子1の放射とから構成される。(量子力学系
のエネルギーは短い時間間隔では不確定であり、この工程の中間段階の間維持す
る必要はない。)光子を原子対と交換することは、系のエネルギー変化をもたら
す以外は実質的に効果はないが、この変化が所望の位相変化をもたらす。
物理的効果に基づいている。従来の非線形機構は、2つの光子と個々の原子との
相互作用を有し、これによって溶媒中の原子数NAに比例した位相変化が起こる
。新しい機構は2つの光子と原子対との相互作用を有し、NA2 に比例した位相
変化が起こる。このNA2 は溶媒中の原子対の数である。図5に示す通り、提案
されている機構は、原子Aによる光子1の吸収および光子2の放射と、その後の
原子Bによる光子2の吸収および光子1の放射とから構成される。(量子力学系
のエネルギーは短い時間間隔では不確定であり、この工程の中間段階の間維持す
る必要はない。)光子を原子対と交換することは、系のエネルギー変化をもたら
す以外は実質的に効果はないが、この変化が所望の位相変化をもたらす。
【0030】 NAが大きな値の場合には、この新しい機構は、2光子レベルで更に大きな位
相変化を起こす。これによって高品質ミラーや原子ビームなど他の設計上の必要
条件を緩めることができる。その結果、このアプローチによって、光導波路が必
要な論理接続を実現しつつ単一の基板上に多くの量子ゲートの構築を行うことが
可能になると考えられる。
相変化を起こす。これによって高品質ミラーや原子ビームなど他の設計上の必要
条件を緩めることができる。その結果、このアプローチによって、光導波路が必
要な論理接続を実現しつつ単一の基板上に多くの量子ゲートの構築を行うことが
可能になると考えられる。
【0031】 本発明の、他の技術に対する主な利点は以下の通りである。
【0032】 ・独立した論理ゲート ・光ファイバーや導波路を利用した独立論理ゲートを接続する能力 ・大幅な周波数離調での演算能力によって誤り率(デコヒーランス)が低いこ
と ・半導体技術同様、光導波路やマイクロ作製技術を利用した単一基板上に多く
の論理装置を形成できる潜在能力 ・光速で情報が伝えられることによる高い論理演算率 ・拡散効果への補償 上記の利点により、本発明の方法はフルサイズコンピュータへの実用的な拡大
手段を提供できると考えられる。さらに、ここで述べられている方法は従来の光
データ処理に適用可能である。つまり、上記の光学的アプローチは、標準的なコ
ンピュータの構築に用いることができ、速度を向上させ、部品から発生する熱を
低減することができる。
と ・半導体技術同様、光導波路やマイクロ作製技術を利用した単一基板上に多く
の論理装置を形成できる潜在能力 ・光速で情報が伝えられることによる高い論理演算率 ・拡散効果への補償 上記の利点により、本発明の方法はフルサイズコンピュータへの実用的な拡大
手段を提供できると考えられる。さらに、ここで述べられている方法は従来の光
データ処理に適用可能である。つまり、上記の光学的アプローチは、標準的なコ
ンピュータの構築に用いることができ、速度を向上させ、部品から発生する熱を
低減することができる。
【0033】 発明の詳細な記述 非線形光学効果を実現するには、通常、多数の光子を含んだ強度の高い光ビー
ムが必要である。これは、大まかに説明すると、1つの光子では電界が弱く、他
の粒子と激しい物理的相互作用を起こさないことが原因である。2つの光子を大
きなQ因子と共に小さなキャビティに閉じ込めてしまうのがこの問題を克服する
方法の一つである。こうすることで、電界の規模が大きくなり、動作時間が長く
なる。2光子レベルでの非線形位相シフトはこうすることで実現するが、複雑な
高レベルQキャビティと原子トラップとが必要であり、こういった実現の手法を
、キュービット数の大きな、実用規模の量子コンピュータを構築するのに実際に
使用するには限界がある虞がある。
ムが必要である。これは、大まかに説明すると、1つの光子では電界が弱く、他
の粒子と激しい物理的相互作用を起こさないことが原因である。2つの光子を大
きなQ因子と共に小さなキャビティに閉じ込めてしまうのがこの問題を克服する
方法の一つである。こうすることで、電界の規模が大きくなり、動作時間が長く
なる。2光子レベルでの非線形位相シフトはこうすることで実現するが、複雑な
高レベルQキャビティと原子トラップとが必要であり、こういった実現の手法を
、キュービット数の大きな、実用規模の量子コンピュータを構築するのに実際に
使用するには限界がある虞がある。
【0034】 全く同じ2つの粒子間で物理的相互作用が起きない時であっても、その2つの
粒子の交換が起きる際には波動関数が対称もしくは非対称でなければならないと
いう条件があるので、該粒子は互いに反発もしくは引き付け合う傾向をはっきり
と示す。この現象の最も簡単な例は、光子のバンチング(bunching;集中)である
。2つの粒子間には力が存在しないので本当に反発しあったりあるいは引き付け
合ったりすることはありえないのだが、こういった場合には、全体として見ると
、あたかも力が存在しているような結果が色々な面で生じる。交換相互作用は、
中性子星の場合のように大きな効果を生むには、それに見合った比較的強い物理
的な力がなければならない系で大きな作用を生じることが多い。
粒子の交換が起きる際には波動関数が対称もしくは非対称でなければならないと
いう条件があるので、該粒子は互いに反発もしくは引き付け合う傾向をはっきり
と示す。この現象の最も簡単な例は、光子のバンチング(bunching;集中)である
。2つの粒子間には力が存在しないので本当に反発しあったりあるいは引き付け
合ったりすることはありえないのだが、こういった場合には、全体として見ると
、あたかも力が存在しているような結果が色々な面で生じる。交換相互作用は、
中性子星の場合のように大きな効果を生むには、それに見合った比較的強い物理
的な力がなければならない系で大きな作用を生じることが多い。
【0035】 交換相互作用の規模が上記のように比較的大きいことは、光子間の比較的弱い
物理的な相互作用ではなく、交換作用によって必要な非線形相互作用を発生させ
るような量子論理ゲートを光学的に実現できる可能性があることを示している。
以下に詳細するように、光子のバンチングにたとえれば、仮想的に励起した原子
がある媒体中に存在する確率は、2つの光子が同じ媒体を通過する場合、共鳴し
ていない2つの光子がそれぞれ別の媒体を通過する場合に比べて大きくなる。励
起状態にある原子の個数の差は、原子の励起状態に位相シフトを発生させるよう
、レーザーパルスをいくつか続けて照射すれば利用可能である。レーザーパルス
の効果は励起状態の個数によって変わるので、2つの光子が単一の媒体中に存在
するときには、それぞれが別の媒体を通過するときとは異なった位相シフトが得
られ、これは、一種の非線形効果に相当する。上記の手法ほどの効果は得られな
いようであるが、これ以外の手法もいくつか検討した。この検討の内容について
は、レーザーパルスではなく、緩衝気体(バッファガス)との衝突を利用する先
の提案も含めて、付録中に示す。
物理的な相互作用ではなく、交換作用によって必要な非線形相互作用を発生させ
るような量子論理ゲートを光学的に実現できる可能性があることを示している。
以下に詳細するように、光子のバンチングにたとえれば、仮想的に励起した原子
がある媒体中に存在する確率は、2つの光子が同じ媒体を通過する場合、共鳴し
ていない2つの光子がそれぞれ別の媒体を通過する場合に比べて大きくなる。励
起状態にある原子の個数の差は、原子の励起状態に位相シフトを発生させるよう
、レーザーパルスをいくつか続けて照射すれば利用可能である。レーザーパルス
の効果は励起状態の個数によって変わるので、2つの光子が単一の媒体中に存在
するときには、それぞれが別の媒体を通過するときとは異なった位相シフトが得
られ、これは、一種の非線形効果に相当する。上記の手法ほどの効果は得られな
いようであるが、これ以外の手法もいくつか検討した。この検討の内容について
は、レーザーパルスではなく、緩衝気体(バッファガス)との衝突を利用する先
の提案も含めて、付録中に示す。
【0036】 従来の手法を使って2光子レベルで非線形相互反応を実現するのが難しいこと
は、例えば原子蒸気セルなどの媒体を通過する共鳴していない1つの光子が該媒
体の原子と相互作用を起こす確率を考えれば理解できるであろう。この相互反応
が起きる確率を単位量のオーダーにするには、媒体中の原子数を単に増やすだけ
でいいが、こういった媒体中で2つの光子が同じ原子と相互作用を起こす確率は
一般に非常に低いものである。例えば、媒体が1010個の原子を含み、相互作用
が起きる合計確率が単位量のオーダーであると仮定すれば、2つの光子が同じ原
子と相互作用を起こす確率は10-10 のオーダーになる。こういった理由で、両
方の光子が同じ原子と相互作用を起こすことが要求される非線形光学的プロセス
が起きる確率は、どれも無視できるほどに低いと思われる。対照的に、ここで注
目している交換相互作用では、2つの原子からなる原子対が関与していて、2つ
の光子が両方とも同じ原子と相互作用を起こさなくてもよい。
は、例えば原子蒸気セルなどの媒体を通過する共鳴していない1つの光子が該媒
体の原子と相互作用を起こす確率を考えれば理解できるであろう。この相互反応
が起きる確率を単位量のオーダーにするには、媒体中の原子数を単に増やすだけ
でいいが、こういった媒体中で2つの光子が同じ原子と相互作用を起こす確率は
一般に非常に低いものである。例えば、媒体が1010個の原子を含み、相互作用
が起きる合計確率が単位量のオーダーであると仮定すれば、2つの光子が同じ原
子と相互作用を起こす確率は10-10 のオーダーになる。こういった理由で、両
方の光子が同じ原子と相互作用を起こすことが要求される非線形光学的プロセス
が起きる確率は、どれも無視できるほどに低いと思われる。対照的に、ここで注
目している交換相互作用では、2つの原子からなる原子対が関与していて、2つ
の光子が両方とも同じ原子と相互作用を起こさなくてもよい。
【0037】 図6には、非線形位相シフト(カー効果)を発生させる従来のプロセスの一つ
を例示している。図6は、周波数がω1 およびω2 である2つの光子が3つのレ
ベルの原子と相互反応を起こす様子を示している。光子2の周波数は原子レベル
2とレベル3との間の遷移周波数に比較的近く、光子2が一旦吸収された後、再
放出される仮想的な遷移によってその周波数の光子が位相シフトを起こす。光子
1がまず原子によって吸収されたときに限って、こういった仮想的な遷移が起こ
りえるが、これは、これ以外の場合に仮想的な遷移が起こったとすると、常温で
原子は基底状態であり、レベル2にはいないことになってしまうからである。以
上の過程全体を見ると、光子1が存在するかしないかで、光子2が受ける位相シ
フトを制御できることになる。こういった制御をするには、光子1と光子2に同
じ原子と相互作用を起こさせることが必要であるが、光子が1つしかない強度で
は実現するのはまれで、従来からあるこの種の機構は光子が1つしかない強度で
は通常あまり意味がない。我々の知る限りでは、低い強度の非線形位相シフトを
作り出す既存の機構では、全て2つの光子が1つの原子と相互作用を起こすこと
が条件である。この条件が常に要求されることは、情報の流れを基礎とする古典
力学にのっとった議論によって示されているが、以下の記述でさらに詳しく述べ
る。
を例示している。図6は、周波数がω1 およびω2 である2つの光子が3つのレ
ベルの原子と相互反応を起こす様子を示している。光子2の周波数は原子レベル
2とレベル3との間の遷移周波数に比較的近く、光子2が一旦吸収された後、再
放出される仮想的な遷移によってその周波数の光子が位相シフトを起こす。光子
1がまず原子によって吸収されたときに限って、こういった仮想的な遷移が起こ
りえるが、これは、これ以外の場合に仮想的な遷移が起こったとすると、常温で
原子は基底状態であり、レベル2にはいないことになってしまうからである。以
上の過程全体を見ると、光子1が存在するかしないかで、光子2が受ける位相シ
フトを制御できることになる。こういった制御をするには、光子1と光子2に同
じ原子と相互作用を起こさせることが必要であるが、光子が1つしかない強度で
は実現するのはまれで、従来からあるこの種の機構は光子が1つしかない強度で
は通常あまり意味がない。我々の知る限りでは、低い強度の非線形位相シフトを
作り出す既存の機構では、全て2つの光子が1つの原子と相互作用を起こすこと
が条件である。この条件が常に要求されることは、情報の流れを基礎とする古典
力学にのっとった議論によって示されているが、以下の記述でさらに詳しく述べ
る。
【0038】 以上で述べたこととは異なるが、我々の関心は、2つの光子が媒体の中で異な
った2つの原子と相互作用を起こすことの方にある。この原子の例をAとBとし
て図5に示す。この仮想的なプロセスで、原子Aは光子1を吸収して光子2を再
放出する。一方で、原子Bは光子2を吸収して光子1を再放出する。この2つの
光子の交換によって、摂動理論を使えば計算可能なエネルギーシフトが発生し、
このエネルギーシフトが今度は例えば系全体の位相をずらす。原子に吸収される
確率が個々の光子について単位量のオーダーになるほどの多数の原子が媒体中に
存在すれば、このようなプロセスが起こり得る確率振幅も単位量のオーダーにな
ると考えられる。媒体中の個数をNとすると、原子対の個数はN2 に比例するの
で、起こると考えられる非線形位相シフトも弱いカップリングの場合はN2 に比
例するはずである。一方で、2つの光子が1つの原子と相互作用を起こす従来の
メカニズムではに比例する非形位相シフトが得られる。しかし、先に示したよう
に、この類のファインマン(Feynman) 図全ての影響は打ち消し合い、例えば緩衝
気体との衝突などによって、系が何らかの摂動を受けない限り、全体としては何
の影響も与えない。さらに、詳細な計算をした結果、こういった目的で緩衝気体
を使用すると衝突のプロセスの性質が大きく影響し、衝突の無秩序性によって、
望ましくない位相ノイズが導入されることが分かった。
った2つの原子と相互作用を起こすことの方にある。この原子の例をAとBとし
て図5に示す。この仮想的なプロセスで、原子Aは光子1を吸収して光子2を再
放出する。一方で、原子Bは光子2を吸収して光子1を再放出する。この2つの
光子の交換によって、摂動理論を使えば計算可能なエネルギーシフトが発生し、
このエネルギーシフトが今度は例えば系全体の位相をずらす。原子に吸収される
確率が個々の光子について単位量のオーダーになるほどの多数の原子が媒体中に
存在すれば、このようなプロセスが起こり得る確率振幅も単位量のオーダーにな
ると考えられる。媒体中の個数をNとすると、原子対の個数はN2 に比例するの
で、起こると考えられる非線形位相シフトも弱いカップリングの場合はN2 に比
例するはずである。一方で、2つの光子が1つの原子と相互作用を起こす従来の
メカニズムではに比例する非形位相シフトが得られる。しかし、先に示したよう
に、この類のファインマン(Feynman) 図全ての影響は打ち消し合い、例えば緩衝
気体との衝突などによって、系が何らかの摂動を受けない限り、全体としては何
の影響も与えない。さらに、詳細な計算をした結果、こういった目的で緩衝気体
を使用すると衝突のプロセスの性質が大きく影響し、衝突の無秩序性によって、
望ましくない位相ノイズが導入されることが分かった。
【0039】 衝突の利用に伴う問題は、レーザーパルスを用いて原子の励起状態を摂動して
やれば解決できる。以下の記述ではこの手法について詳しく述べる。共鳴してい
ない光子2つが同じ媒体を通過する際に2つの原子が同時に仮想的に励起された
状態にある確率P2 を考えれば、この手法の仕組みが最も簡単に理解できよう。
この様子を図7(a)に示す。以下の記述では、P2 が、2つの光子両方が同じ
媒体を通過するときの方が、図7(b)に示すように別の個体であるという点を
除けば、全く同一の2つの媒体を光子がそれぞれ通過するときに比べて大きい値
を取ることを示す。このようにP2 が増加するのは、図8に示すように、原子B
が光子2によって励起した状態で原子Aが光子1によって励起したこと、あるい
は、原子Bが光子1によって励起した状態で原子Aが光子2によって励起したこ
とが原因である。これら2つのプロセスが起きる確率振幅には、次式(1)が成
立すると仮定すれば、構造的な干渉が発生する。
やれば解決できる。以下の記述ではこの手法について詳しく述べる。共鳴してい
ない光子2つが同じ媒体を通過する際に2つの原子が同時に仮想的に励起された
状態にある確率P2 を考えれば、この手法の仕組みが最も簡単に理解できよう。
この様子を図7(a)に示す。以下の記述では、P2 が、2つの光子両方が同じ
媒体を通過するときの方が、図7(b)に示すように別の個体であるという点を
除けば、全く同一の2つの媒体を光子がそれぞれ通過するときに比べて大きい値
を取ることを示す。このようにP2 が増加するのは、図8に示すように、原子B
が光子2によって励起した状態で原子Aが光子1によって励起したこと、あるい
は、原子Bが光子1によって励起した状態で原子Aが光子2によって励起したこ
とが原因である。これら2つのプロセスが起きる確率振幅には、次式(1)が成
立すると仮定すれば、構造的な干渉が発生する。
【0040】
【数6】
【0041】 ただし、ここで、δk は上記2つの光子のk個のベクトルにおける差であり、δ
r は上記2つの原子の位置の違いである。これは、ハンバリー−ブラウン(Hanbu
ry-Brown) およびトゥイス(Twiss)の効果(光子バンチング)を観察するのに必
要な条件と同じである。図8は、原子Aと原子Bを、ほぼ平行な光を出射する光
源の前に置いた2つの「検出子」だと考えれば、この効果を表していることにな
る。
r は上記2つの原子の位置の違いである。これは、ハンバリー−ブラウン(Hanbu
ry-Brown) およびトゥイス(Twiss)の効果(光子バンチング)を観察するのに必
要な条件と同じである。図8は、原子Aと原子Bを、ほぼ平行な光を出射する光
源の前に置いた2つの「検出子」だと考えれば、この効果を表していることにな
る。
【0042】 P2 の差は、レーザーパルスを照射して媒体中の原子が励起している状態で位
相シフトを発生させれば利用できる。上記のように、レーザーパルスの効果は原
子の励起状態の個数によって変わる。したがって、2つの光子が共に同じ媒体を
通過するときと、異なる2つの媒体を通過するときとでは、生成される位相シフ
トが異なる。これは、そもそも図8に示す交換相互作用に端を発する、非線形位
相シフトに相当する。適当なレーザーパルスをいくつか続けて照射すればπに等
しい非線形位相シフトが発生するが、これは制御NOT(XOR)量子論理ゲー
トを実現する干渉計の構成に使用できる。
相シフトを発生させれば利用できる。上記のように、レーザーパルスの効果は原
子の励起状態の個数によって変わる。したがって、2つの光子が共に同じ媒体を
通過するときと、異なる2つの媒体を通過するときとでは、生成される位相シフ
トが異なる。これは、そもそも図8に示す交換相互作用に端を発する、非線形位
相シフトに相当する。適当なレーザーパルスをいくつか続けて照射すればπに等
しい非線形位相シフトが発生するが、これは制御NOT(XOR)量子論理ゲー
トを実現する干渉計の構成に使用できる。
【0043】 まず、ここで取り上げる系を定義し、対応する状態ベクトル(state vector)
とハミルトニアンを説明する。散乱と分散は光子の離調が大きな場合には、いず
れも小さいので双方とも無視して断熱近似をすれば、系全体の量子状態を6個の
複素数の組み合わせで表すことができる。この複素数の組み合わせは、有効な6
次元の状態ベクトルの各成分を成すと考えられる。媒体中の光子の通過および光
子が複数のレーザーパルスと起こす相互作用は6次元の固有値問題を解くことで
決定できる。まず、最も簡単な単一のレーザーパルスの場合を考察し、次に、最
適に選んだ複数のレーザーパルスの場合を説明し、この結果が示す非古典力学的
な性質と、情報の流れや決定論など、結果が古典力学的な発想と一致しないこと
とを議論して締めくくる。
とハミルトニアンを説明する。散乱と分散は光子の離調が大きな場合には、いず
れも小さいので双方とも無視して断熱近似をすれば、系全体の量子状態を6個の
複素数の組み合わせで表すことができる。この複素数の組み合わせは、有効な6
次元の状態ベクトルの各成分を成すと考えられる。媒体中の光子の通過および光
子が複数のレーザーパルスと起こす相互作用は6次元の固有値問題を解くことで
決定できる。まず、最も簡単な単一のレーザーパルスの場合を考察し、次に、最
適に選んだ複数のレーザーパルスの場合を説明し、この結果が示す非古典力学的
な性質と、情報の流れや決定論など、結果が古典力学的な発想と一致しないこと
とを議論して締めくくる。
【0044】 考察を簡単にするために、光学媒体が原子蒸気セルであると仮定するが、基本
的な結果は固体物質にもよく当てはまるはずである。適度な厚さLを有する媒体
について、入射する2つの光子の周波数の差が平均周波数よりずっと小さく、こ
の光子が2つとも同じ方向に伝播する場合に式(1)が成立する。例えば、通常
の実験では、ω1 −ω2 が数ギガヘルツのオーダーであろうが、この場合、蒸気
セルの厚さは1cmのオーダーでよい。媒体の表面からの反射を最小にするため
に、図9(a)に示すように、媒体中の原子の密集度を光子の波長に比べてゆっ
くり変化させる。媒体中の原子の総数は大きいと考えられる(〜1010)。
的な結果は固体物質にもよく当てはまるはずである。適度な厚さLを有する媒体
について、入射する2つの光子の周波数の差が平均周波数よりずっと小さく、こ
の光子が2つとも同じ方向に伝播する場合に式(1)が成立する。例えば、通常
の実験では、ω1 −ω2 が数ギガヘルツのオーダーであろうが、この場合、蒸気
セルの厚さは1cmのオーダーでよい。媒体の表面からの反射を最小にするため
に、図9(a)に示すように、媒体中の原子の密集度を光子の波長に比べてゆっ
くり変化させる。媒体中の原子の総数は大きいと考えられる(〜1010)。
【0045】 図9(b)に示すように、原子の周期的な密度を用いれば、式(1)を満たし
ながら原子蒸気セルの厚さを大幅に増加させることができる。図9(b)では、
光子はz方向に伝播すると仮定している。図9(a)に示す薄膜構造をΔz δk
=2pπ(pは整数)を満たすΔzの間隔をおいて繰り返し形成する。この解決
策は、一般によく使われている準位相マッチングの技術に若干似ていて、2つの
光子の周波数の差が比較的大きくてもLは適度な値をとることができる。説明を
簡単にするために、本明細書では図9(a)に示す形状を前提として話を進める
が、結果は周期的な場合にも同様に得られる。
ながら原子蒸気セルの厚さを大幅に増加させることができる。図9(b)では、
光子はz方向に伝播すると仮定している。図9(a)に示す薄膜構造をΔz δk
=2pπ(pは整数)を満たすΔzの間隔をおいて繰り返し形成する。この解決
策は、一般によく使われている準位相マッチングの技術に若干似ていて、2つの
光子の周波数の差が比較的大きくてもLは適度な値をとることができる。説明を
簡単にするために、本明細書では図9(a)に示す形状を前提として話を進める
が、結果は周期的な場合にも同様に得られる。
【0046】 ここで注目する結果は、図5に示すような2つのレベルを持った原子に関連し
ているが、この系に外部から電界や磁場をかけて高い方の原子エネルギーレベル
を時間と共に変化させることが必要である。このエネルギーレベルの変化を実現
するには色々な方法がある。具体的に、ここでは、レーザービームを使って、図
10に示すように、第2の原子レベルを第3の原子状態にカップリングする方法
を取る。この第3の原子状態についてはこの点だけに注目する。光子1と光子2
は、レベル1とレベル2との間の原子の遷移とは完全に共鳴しているわけではな
い。また、レーザービームはレベル2とレベル3の間での原子の遷移とは共鳴か
らは程遠く、意味を持つほどの個数がレベル3に変化することがない。この場合
、レーザービームを使用することで、全体的には、摂動理論などの方法を用いて
計算できる量だけエネルギーレベル2をずらす(交流スタークシフト(AC Stark
shift))ことになる。レベル3において個数が不足していることによって、レベ
ル2に相当するエネルギーeA が時間の関数となっている、2つのレベルからな
る原子モデルを使うことができるようになる。
ているが、この系に外部から電界や磁場をかけて高い方の原子エネルギーレベル
を時間と共に変化させることが必要である。このエネルギーレベルの変化を実現
するには色々な方法がある。具体的に、ここでは、レーザービームを使って、図
10に示すように、第2の原子レベルを第3の原子状態にカップリングする方法
を取る。この第3の原子状態についてはこの点だけに注目する。光子1と光子2
は、レベル1とレベル2との間の原子の遷移とは完全に共鳴しているわけではな
い。また、レーザービームはレベル2とレベル3の間での原子の遷移とは共鳴か
らは程遠く、意味を持つほどの個数がレベル3に変化することがない。この場合
、レーザービームを使用することで、全体的には、摂動理論などの方法を用いて
計算できる量だけエネルギーレベル2をずらす(交流スタークシフト(AC Stark
shift))ことになる。レベル3において個数が不足していることによって、レベ
ル2に相当するエネルギーeA が時間の関数となっている、2つのレベルからな
る原子モデルを使うことができるようになる。
【0047】 入射する光子はz方向に伝播し、かつ、ガウスの波束に対応するマルチモード
のフォック(Fock)状態(単に干渉性が弱い状態ではない)で表現されると仮定
する。媒体を通過するのにかかる時間L/cに比べて波束の時間幅τp が十分に
長いので、光子の電界の大きさが媒体中ではどこでも実質一様であると仮定する
。ここで注目している結果を得るには、非線形位相シフトが2つの光子強さの積
の期待値に依存するので、マルチモードの解析をしなければならない。これは、
自由空間中の平面波の単一光子の場合には消えてしまう。入射する光子は、次式
(2)で定義される、2つの単一光子生成演算子a1 †とa2 †を使って表現で
きる。
のフォック(Fock)状態(単に干渉性が弱い状態ではない)で表現されると仮定
する。媒体を通過するのにかかる時間L/cに比べて波束の時間幅τp が十分に
長いので、光子の電界の大きさが媒体中ではどこでも実質一様であると仮定する
。ここで注目している結果を得るには、非線形位相シフトが2つの光子強さの積
の期待値に依存するので、マルチモードの解析をしなければならない。これは、
自由空間中の平面波の単一光子の場合には消えてしまう。入射する光子は、次式
(2)で定義される、2つの単一光子生成演算子a1 †とa2 †を使って表現で
きる。
【0048】
【数7】
【0049】 ここで、演算子ak †は波動ベクトルkの平面波光子を生成し、f1 (k)と
f2 (k)とは初期時t0 におけるガウスの波束のフーリエ係数である。これら
の係数は、逆フーリエ変換が次式(3)によって表されるように選択する。
f2 (k)とは初期時t0 におけるガウスの波束のフーリエ係数である。これら
の係数は、逆フーリエ変換が次式(3)によって表されるように選択する。
【0050】
【数8】
【0051】 ここで、gは定数であり、z0 は波束の中心の初期位置である。この波束の中心
は、初期には原子と相互作用を起こさないよう、原子の位置から離れていている
。この波束は双方が同じ振幅と幅を持っているが、次の2つの式
は、初期には原子と相互作用を起こさないよう、原子の位置から離れていている
。この波束は双方が同じ振幅と幅を持っているが、次の2つの式
【0052】
【数9】
【0053】 によってそれぞれのフーリエ領域の中心周波数と関係づけられる中心ベクトル
【0054】
【数10】
【0055】 の値が異なっている。媒体も光子波束も、横切る方向にはわずかな空間的変化し
か起こさないので、考慮しなければならないほどではないと仮定すれば、上記の
式(3)の右辺はz座標だけを含むことになる。本明細書の主な結果は、G1(z
)の絶対値とG2(z)の絶対値とがzによってゆっくりと変化する関数であり、
波束の精確な形状は重要ではないという前提のもとに成り立っている。
か起こさないので、考慮しなければならないほどではないと仮定すれば、上記の
式(3)の右辺はz座標だけを含むことになる。本明細書の主な結果は、G1(z
)の絶対値とG2(z)の絶対値とがzによってゆっくりと変化する関数であり、
波束の精確な形状は重要ではないという前提のもとに成り立っている。
【0056】 ここで、場(field) の初期状態は次式(4)で表される。
【0057】
【数11】
【0058】 ただし、|0〉は真空状態である。次式(5)で定義する単一光子状態も考慮
に入れる。
に入れる。
【0059】
【数12】
【0060】 さらに、全く同じ光子を2つ含んだ、次式(6)で示す状態も考慮する。
【0061】
【数13】
【0062】 原子の全てが初期状態で基底状態にあると仮定する。この仮定によって、この系
の量子状態が初期状態では次式(7)で表されるようになる。
の量子状態が初期状態では次式(7)で表されるようになる。
【0063】
【数14】
【0064】 ここで、|Ψli〉は基底状態にある原子iを表している。
【0065】 ハミルトニアンを2つに分けて、次式(8)のように和の形で書くと便利であ
る。
る。
【0066】 H=H0 +Hint (8) ここで、H0 は、相互作用の一切無い、場のエネルギーと原子のエネルギーと
を表し、通常次式(9)で与えられる。
を表し、通常次式(9)で与えられる。
【0067】
【数15】
【0068】 ここで、原子には指数iで印がつけられ、eA は基底状態より高い励起状態(
レベル2)にある原子のエネルギーであり、σziは原子iの基底状態と励起状態
からなる2次元ヒルベルト(Hilbert) 空間中のパウリ(Pauli) のスピン行列の一
つである(これは、スピンの相互作用を意味しているわけではない)。
レベル2)にある原子のエネルギーであり、σziは原子iの基底状態と励起状態
からなる2次元ヒルベルト(Hilbert) 空間中のパウリ(Pauli) のスピン行列の一
つである(これは、スピンの相互作用を意味しているわけではない)。
【0069】 クーロンゲージと標準双極子近似における相互作用のハミルトニアンHint は
次式(10)で与えられる。
次式(10)で与えられる。
【0070】
【数16】
【0071】 ここで、qは電子の電荷であり、ri は原子iの電子の総対座標であって、水
素のような原子状態を前提としている。E(Ri )は原子iの質量中心の位置R i での第2の量子化電界演算子であり、シュレディンガーの描像とMKSA単位
によって次式(11)で表される。
素のような原子状態を前提としている。E(Ri )は原子iの質量中心の位置R i での第2の量子化電界演算子であり、シュレディンガーの描像とMKSA単位
によって次式(11)で表される。
【0072】
【数17】
【0073】 ここで、ε0 は自由空間の誘電率、Vは周期的境界条件に使われる体積、λj はある光子の直交する二つの偏光状態を表している。付録Aの対称性に関する議
論以外では、2つの光子双方が同じ偏光状態にあると仮定して、偏光指数を省略
する。これは、互いに直交する向きに偏光した2つの光子は、図5と図8に示す
ように、双極子遷移では交換相互作用を起こすことができないからである。
論以外では、2つの光子双方が同じ偏光状態にあると仮定して、偏光指数を省略
する。これは、互いに直交する向きに偏光した2つの光子は、図5と図8に示す
ように、双極子遷移では交換相互作用を起こすことができないからである。
【0074】 光子の波束はH0 の固有状態ではなく、相互作用が一切ない状態では光速で伝
播する。その結果、相互作用描像を扱った方がずっと便利である。相互作用描像
では、光子の状態ベクトルが相互作用が一切ない状態では一定であり、電界演算
子が時間に依存するようになる。この時、シュレディンガー方程式は、次式(1
2)の相互作用ハミルトニアンH'(t)だけを含む。
播する。その結果、相互作用描像を扱った方がずっと便利である。相互作用描像
では、光子の状態ベクトルが相互作用が一切ない状態では一定であり、電界演算
子が時間に依存するようになる。この時、シュレディンガー方程式は、次式(1
2)の相互作用ハミルトニアンH'(t)だけを含む。
【0075】
【数18】
【0076】 ここで、通常のように、
【0077】
【数19】
【0078】 である。H'(t)は、適当な単位変換をすれば、ゆっくりと時間と共に変化する
関数になることが分かる。これによって、断熱近似を使って、シュレディンガー
方程式の解法を固有値問題に帰結させることができる。この固有ベクトルは数値
で、あるいは分析的に計算が可能であるが、いずれにしても、適当な基底におけ
るH'(t)の行列の成分が分からなければ計算はできない。
関数になることが分かる。これによって、断熱近似を使って、シュレディンガー
方程式の解法を固有値問題に帰結させることができる。この固有ベクトルは数値
で、あるいは分析的に計算が可能であるが、いずれにしても、適当な基底におけ
るH'(t)の行列の成分が分からなければ計算はできない。
【0079】 量子力学の前提によると、ヒルベルト空間(光子の場合にはフォック空間)に
おける正規直交基底ベクトルの集合であればどんな集合でも選択可能である。注
目している非線形位相シフトは、全体的な位相の要素を別にすれば、光子が、入
射したときと同じ状態で媒体から外へ伝播する、干渉性があるプロセスに相当す
る。したがって、媒体中に光子が存在するときに光子が仮想的に吸収された結果
生じえる、|γ1 ,γ2 〉で表される最初の状態と|γ1 〉および|γ2 〉で表
される状態とを含んだフォック空間における基底ベクトルの集合を選んでおけば
都合がいい。ここでは正規直交基底ベクトルの全てが揃った集合が必要なので、
修正平面波生成演算子bk †の集合を定義する。この修正平面波生成演算子bk †は、次式(13)に示すように、a1 †とa2 †とによって生成される状態と
直交する状態を生成するように構成される。
おける正規直交基底ベクトルの集合であればどんな集合でも選択可能である。注
目している非線形位相シフトは、全体的な位相の要素を別にすれば、光子が、入
射したときと同じ状態で媒体から外へ伝播する、干渉性があるプロセスに相当す
る。したがって、媒体中に光子が存在するときに光子が仮想的に吸収された結果
生じえる、|γ1 ,γ2 〉で表される最初の状態と|γ1 〉および|γ2 〉で表
される状態とを含んだフォック空間における基底ベクトルの集合を選んでおけば
都合がいい。ここでは正規直交基底ベクトルの全てが揃った集合が必要なので、
修正平面波生成演算子bk †の集合を定義する。この修正平面波生成演算子bk †は、次式(13)に示すように、a1 †とa2 †とによって生成される状態と
直交する状態を生成するように構成される。
【0080】
【数20】
【0081】 ここで、cn は正規化定数であり、最後の2つの項が必要な直交性を与えてい
る。|ω1 −ω2 |がガウスの波束の周波数分布よりも遥かに大きいときには(
この条件は前提として既に成立している)、[a1 ,a2 †]と〈γ1 |γ2 〉
とは共に指数的に小さくなり、演算子a1 †とa2 †、およびbk †からなる集
合においてこの条件内で通常の交換関係が成立する。これによって、初期時t0 におけるa1 †とa2 †、およびbk †とによって生成される状態全てを含んだ
基底ベクトルからなる集合を選択することができる。これらの基底ベクトルは、
定義上、相互作用描像では時間に依存せず、また、シュレディンガー描像では相
互作用の影響を受けない自由伝播波束に対応している。
る。|ω1 −ω2 |がガウスの波束の周波数分布よりも遥かに大きいときには(
この条件は前提として既に成立している)、[a1 ,a2 †]と〈γ1 |γ2 〉
とは共に指数的に小さくなり、演算子a1 †とa2 †、およびbk †からなる集
合においてこの条件内で通常の交換関係が成立する。これによって、初期時t0 におけるa1 †とa2 †、およびbk †とによって生成される状態全てを含んだ
基底ベクトルからなる集合を選択することができる。これらの基底ベクトルは、
定義上、相互作用描像では時間に依存せず、また、シュレディンガー描像では相
互作用の影響を受けない自由伝播波束に対応している。
【0082】 次に、この基底において、関係する行列成分を計算する。例えば、次式(14
)で定義される電界演算子の行列成分
)で定義される電界演算子の行列成分
【0083】
【数21】
【0084】 および
【0085】
【数22】
【0086】 が必要である。
【0087】
【数23】
【0088】 上記の方程式(2)、(5)、および(11)を使えば、
【0089】
【数24】
【0090】 は次式(15)のように書くことができる。
【0091】
【数25】
【0092】 ここで、狭い光子の帯域では、
【0093】
【数26】
【0094】 の項が定数であるとして近似した。こうすることで、この項を和の外へ出すこと
ができる。この交換関係によって、k=pとなる場合を除いて項を全て消去する
ことができる。また、残りの和は、光子状態の密度
ができる。この交換関係によって、k=pとなる場合を除いて項を全て消去する
ことができる。また、残りの和は、光子状態の密度
【0095】
【数27】
【0096】 に比例する積分として表すことができ、さらに、
【0097】
【数28】
【0098】 は右辺の固有状態に作用するときにω1 =ck1 に帰結させることができる。こ
のとき、方程式(15)は、以下のように書き換えられる。
のとき、方程式(15)は、以下のように書き換えられる。
【0099】
【数29】
【0100】 方程式(3)と比較すると、この式は、定数を除けば、ガウス関数G1(Zi −
c(t−t0 ))と同じであることが分かる。媒体は十分に薄く、場の絶対値が
この距離についてはほぼ一様であると仮定できるので、説明を簡単にするために
、媒体の中心をz=0に置いて、そこでの行列成分を見積もる。z0 とt0 とは
、光子の波束が時間t=0には媒体を中心にして存在するように選択する。この
場合、行列成分を書き換えると次式(17)のようになる。
c(t−t0 ))と同じであることが分かる。媒体は十分に薄く、場の絶対値が
この距離についてはほぼ一様であると仮定できるので、説明を簡単にするために
、媒体の中心をz=0に置いて、そこでの行列成分を見積もる。z0 とt0 とは
、光子の波束が時間t=0には媒体を中心にして存在するように選択する。この
場合、行列成分を書き換えると次式(17)のようになる。
【0101】
【数30】
【0102】 ここで、g’は定数であり、
【0103】
【数31】
【0104】 は原子が存在する場所でゆっくりと変化するガウスの波束の包絡線(envelope)
に対応する実関数である。なお、波束の周波数分布は依然
に対応する実関数である。なお、波束の周波数分布は依然
【0105】
【数32】
【0106】 の時間依存性に反映されているが、指数で表した位相要素には現れていないこと
に注意されたい。このことは、これ以降の単位変換の結果を考慮する上で重要な
点である。
に注意されたい。このことは、これ以降の単位変換の結果を考慮する上で重要な
点である。
【0107】 修正平面波状態を含んだ行列成分も同様に見積もることができ、媒体の存在位
置で波束が重なるときの結果は次式(18)のようになる。
置で波束が重なるときの結果は次式(18)のようになる。
【0108】
【数33】
【0109】 ここで、
【0110】
【数34】
【0111】 は修正平面波基底状態の一つである。これは、光子1と光子2の場がその領域に
集中している一方で、平面波状態は局在化していないことを映し出している。そ
こで、近似を行って、修正平面波状態を含んだ行列成分が無視でき、それらのモ
ードへのカップリングがないとする。この近似は散乱と分散(離調が大きな場合
には双方ともに小さい)を無視することに当たり、さらに、ラムシフト(Lamb s
hift)などの小さな放射補正をも無視することになる。レーザーパルスを続けて
照射する際のこの近似の有効性については、以下で説明する。
集中している一方で、平面波状態は局在化していないことを映し出している。そ
こで、近似を行って、修正平面波状態を含んだ行列成分が無視でき、それらのモ
ードへのカップリングがないとする。この近似は散乱と分散(離調が大きな場合
には双方ともに小さい)を無視することに当たり、さらに、ラムシフト(Lamb s
hift)などの小さな放射補正をも無視することになる。レーザーパルスを続けて
照射する際のこの近似の有効性については、以下で説明する。
【0112】
【数35】
【0113】 および
【0114】
【数36】
【0115】 と定義される光子の離調の大きさは、
【0116】
【数37】
【0117】 より小さいと仮定する。この場合、回転波近似(エネルギー保存)をすることで
、光子の吸収に続いて原子の励起が確実に起きるようになる。平面波状態とのカ
ップリングを全て無視したので、図7(a)に示すように、両方の光子が同じ媒
体の中を伝播する際には、|γ1,γ2 〉、|γ1 〉、|γ2 〉、|0〉、|γ1,
γ1 〉および|γ2,γ2 〉の状態を線形結合した以外の場の状態は起こり得ない
。この6個の基底ベクトルはこの系がフォック空間の中で占めている領域にわた
って伸び、場の状態は、6次元の状態ベクトルの成分を形成する、この基底にお
ける確率振幅によって規定される。
、光子の吸収に続いて原子の励起が確実に起きるようになる。平面波状態とのカ
ップリングを全て無視したので、図7(a)に示すように、両方の光子が同じ媒
体の中を伝播する際には、|γ1,γ2 〉、|γ1 〉、|γ2 〉、|0〉、|γ1,
γ1 〉および|γ2,γ2 〉の状態を線形結合した以外の場の状態は起こり得ない
。この6個の基底ベクトルはこの系がフォック空間の中で占めている領域にわた
って伸び、場の状態は、6次元の状態ベクトルの成分を形成する、この基底にお
ける確率振幅によって規定される。
【0118】 光子が例えばx方向にそって直線偏光しているとすれば、関連する行列の成分
の原子部分は次式(19)で与えられる。
の原子部分は次式(19)で与えられる。
【0119】
【数38】
【0120】 ただし、d0 はこの2つの状態の間の双極子モーメントの大きさである。縮退し
た水素に類似した原子状態の場合、
た水素に類似した原子状態の場合、
【0121】
【数39】
【0122】 は直線偏光した光子を吸収したために励起した状態の線形結合に相当する。
【0123】 入射する光子は2つしかないので、励起した原子は多くても2つである。この
2つの原子をiとjと名づけることにする(ただし、同じ状態を重複して数える
ことを避けるためにi>jとする)。したがって、原子状態の総数はN2 のオー
ダーである。電磁界と原子を組み合わせた系の基底ベクトルは、様々な原子状態
と上記の6つの場の状態とのテンソル積から成る。この基底において、c(γ1,
γ2)を、元の光子が共にあり、励起した原子が1つもない確率振幅であると規定
する。光子1が残って、原子iが励起している確率振幅をc(γ1,i)で表し、
光子2が残って、原子iが励起している確率振幅をc(γ2,i)で表す。光子が
1つも残らずに原子iと原子jとが励起している確率振幅をi>jとして、c(
0,i,j)で表す。全く同じ光子が2つあり、励起した原子が1つもない確率
振幅をc(γ1,γ1)とc(γ2,γ2)で表す。
2つの原子をiとjと名づけることにする(ただし、同じ状態を重複して数える
ことを避けるためにi>jとする)。したがって、原子状態の総数はN2 のオー
ダーである。電磁界と原子を組み合わせた系の基底ベクトルは、様々な原子状態
と上記の6つの場の状態とのテンソル積から成る。この基底において、c(γ1,
γ2)を、元の光子が共にあり、励起した原子が1つもない確率振幅であると規定
する。光子1が残って、原子iが励起している確率振幅をc(γ1,i)で表し、
光子2が残って、原子iが励起している確率振幅をc(γ2,i)で表す。光子が
1つも残らずに原子iと原子jとが励起している確率振幅をi>jとして、c(
0,i,j)で表す。全く同じ光子が2つあり、励起した原子が1つもない確率
振幅をc(γ1,γ1)とc(γ2,γ2)で表す。
【0124】 これら確率振幅の時間依存性は、シュレディンガー方程式、方程式(12)、
および、H'(t)の対応する行列成分から得られる。
および、H'(t)の対応する行列成分から得られる。
【0125】
【数40】
【0126】 ここで、Mは次式(21)で定義される基礎行列の成分を簡単に表記したもので
あり、2つの原子状態の間で適当に選択した相対位相を示す実数である。
あり、2つの原子状態の間で適当に選択した相対位相を示す実数である。
【0127】
【数41】
【0128】 上記の方程式中で現れる√2の部分は、2つの光子を含んだ状態に活性化された
放出、あるいはそれらの状態からの吸収に原因しているようである。
放出、あるいはそれらの状態からの吸収に原因しているようである。
【0129】 原子は全て同じ場に影響されるから、i、i’、j、およびj’全ての値につ
いて、下記の確率振幅は皆等しい。
いて、下記の確率振幅は皆等しい。
【0130】 c(γ1,i)=c(γ1,i') c(γ2,i)=c(γ2,i') (22) c(0,i,j)=c(0,i',j') これを用いて変数の組み合わせを新たに導入すれば、方程式(20)は次式(2
3)のように簡単に表される。
3)のように簡単に表される。
【0131】
【数42】
【0132】 これらの新しい変数は、c(γ1)の絶対値の平方が、どの原子が励起しているか
とは無関係に、光子1が存在して光子2が吸収される合計確率振幅を表すように
選択されている。c(γ2)も同様に選択されている。同様にして、c(0)の絶
対値の平方は励起した原子が2つ存在し、光子は全く存在しない合計確率を表し
ている。このように変数を変更することで、式(20)は次式(24)のように
書き換えられる。
とは無関係に、光子1が存在して光子2が吸収される合計確率振幅を表すように
選択されている。c(γ2)も同様に選択されている。同様にして、c(0)の絶
対値の平方は励起した原子が2つ存在し、光子は全く存在しない合計確率を表し
ている。このように変数を変更することで、式(20)は次式(24)のように
書き換えられる。
【0133】
【数43】
【0134】 ここには、全部で6個の複素数の変数が含まれている。
【0135】 方程式(24)を調べれば、この方程式が、成分が次式(25)で表されると
考えられる、6次元ベクトルのシュレディンガーの方程式に相当することが分か
る。
考えられる、6次元ベクトルのシュレディンガーの方程式に相当することが分か
る。
【0136】
【数44】
【0137】 ただし、ハミルトニアンが次式(26)で表されていることが条件である。
【0138】
【数45】
【0139】 ただし、
【0140】
【数46】
【0141】 は表記を簡単にするために省略している。|Ψ〉eff の6個の成分が完全に系の
状態を決定してしまい、また、絶対値の平方が様々な光子状態の合計確率を表し
ているので、ここでは、|Ψ〉eff を系の有効状態ベクトルとして用いる。
状態を決定してしまい、また、絶対値の平方が様々な光子状態の合計確率を表し
ているので、ここでは、|Ψ〉eff を系の有効状態ベクトルとして用いる。
【0142】 有効状態ベクトルの物理的な意味は、各成分に対応する系全体の状態を考慮す
れば理解できる。例えば、第2の成分|Ψ〉eff は次式(27)で表される状態
に相当する。
れば理解できる。例えば、第2の成分|Ψ〉eff は次式(27)で表される状態
に相当する。
【0143】
【数47】
【0144】 ただし、励起する確率振幅はどの原子も等しい。|γ1,i〉で表される状態の線
形結合には、まだ他に約N(〜N)個の組み合わせがあるが、ハミルトニアンは
式(27)で示した特定の線形結合に初期状態をカップリングするだけで、他の
線形結合はどれも励起されていない、あるいは”暗い”状態であり、無視できる
。該ハミルトニアンの作用の下で初期状態から発展させることが可能な状態の線
形結合だけの確率振幅に相当する、|Ψ〉eff のこれ以外の成分についても同様
の議論が可能である。任意に上記6個の状態ベクトルを定義してハミルトニアン
が該状態ベクトルを他のどの状態にもカップリングしないことを示すことで、上
記式(26)のハミルトニアンを導くのが幾分簡単になる。その後、式(26)
の行列成分は、点検することで書くことができる。
形結合には、まだ他に約N(〜N)個の組み合わせがあるが、ハミルトニアンは
式(27)で示した特定の線形結合に初期状態をカップリングするだけで、他の
線形結合はどれも励起されていない、あるいは”暗い”状態であり、無視できる
。該ハミルトニアンの作用の下で初期状態から発展させることが可能な状態の線
形結合だけの確率振幅に相当する、|Ψ〉eff のこれ以外の成分についても同様
の議論が可能である。任意に上記6個の状態ベクトルを定義してハミルトニアン
が該状態ベクトルを他のどの状態にもカップリングしないことを示すことで、上
記式(26)のハミルトニアンを導くのが幾分簡単になる。その後、式(26)
の行列成分は、点検することで書くことができる。
【0145】 方程式(26)中の指数部分は変化が激しい時間の関数である。次式(28)
で与えられる単位変換をすることで時間変化を消すことができる。
で与えられる単位変換をすることで時間変化を消すことができる。
【0146】
【数48】
【0147】 ただし、行列h0 は次式(29)で表されるものであるとする。
【0148】
【数49】
【0149】 この変換の後、有効状態ベクトルは方程式(30)に従う。
【0150】
【数50】
【0151】 ただし、有効ハミルトニアンは、ここでは、次式(31)の形を取る。
【0152】
【数51】
【0153】 図7(a)のように、光子が2つとも同じ媒体中を伝播する場合、方程式(30
)と(31)とが系の時間展開を決定し、また、この2つの方程式を基礎にして
、残りの分析の大半が進められる。記述を簡単にするために、以下では、方程式
(30)と(31)の素(primes)を省略する。
)と(31)とが系の時間展開を決定し、また、この2つの方程式を基礎にして
、残りの分析の大半が進められる。記述を簡単にするために、以下では、方程式
(30)と(31)の素(primes)を省略する。
【0154】 比較のためには、図7(b)に示すように、光子がそれぞれ別の媒体中を伝播
する際の系の特性も計算する必要がある。この場合、互いに独立した2つの系が
存在し、その時間展開が別々に計算可能である。計算後は、系全体の状態ベクト
ルが2つの個々の状態ベクトルのテンソル積に等しくなる。光子1だけが媒体に
入射する場合、ここで述べたのと同様の分析をすれば、次式(32)で表される
成分を持った有効状態ベクトルが得られる。
する際の系の特性も計算する必要がある。この場合、互いに独立した2つの系が
存在し、その時間展開が別々に計算可能である。計算後は、系全体の状態ベクト
ルが2つの個々の状態ベクトルのテンソル積に等しくなる。光子1だけが媒体に
入射する場合、ここで述べたのと同様の分析をすれば、次式(32)で表される
成分を持った有効状態ベクトルが得られる。
【0155】
【数52】
【0156】 ここで、c'(γ1)は光子1が残り、励起した原子が1つもない合計確率振幅で、
c'(0)は上記の入射した光子が吸収されて、励起した原子が1つある確率振幅
を表している。また、c'(γ2)は光子1が吸収され、周波数が
c'(0)は上記の入射した光子が吸収されて、励起した原子が1つある確率振幅
を表している。また、c'(γ2)は光子1が吸収され、周波数が
【0157】
【数53】
【0158】 であるもう1つの光子が再放出される確率振幅を表している。この系の有効ハミ
ルトニアンは次式(33)で与えられる。
ルトニアンは次式(33)で与えられる。
【0159】
【数54】
【0160】 光子2だけが媒体に入射する場合、上記の式(32)および(33)はそれぞれ
次のようになる。
次のようになる。
【0161】
【数55】
【0162】 光子の波束は初期時間t0 には媒体から離れていて、光子と原子との相互作用
は指数的に小さいと仮定する。初期状態ベクトル|Ψ0 〉は上記の基底に基づい
て次式(36)で表される。
は指数的に小さいと仮定する。初期状態ベクトル|Ψ0 〉は上記の基底に基づい
て次式(36)で表される。
【0163】
【数56】
【0164】 これは、M(t)=0でのHeff の固有状態である。ガウスの波束は十分に広く
、
、
【0165】
【数57】
【0166】 はHeff の対角線成分で規定される時間のスケールでゆっくりと変化すると仮定
する。この場合、断熱近似が有効になり、状態ベクトルはHeff の対応する瞬間
固有状態にゆっくりと変わっていく。仮に、媒体にレーザーパルスを全く照射し
なければ、散乱と分散をここでは無視してしまっているので、波束が伝播して媒
体から離れていくにつれて、状態ベクトル|Ψ0 〉に戻っていく。
する。この場合、断熱近似が有効になり、状態ベクトルはHeff の対応する瞬間
固有状態にゆっくりと変わっていく。仮に、媒体にレーザーパルスを全く照射し
なければ、散乱と分散をここでは無視してしまっているので、波束が伝播して媒
体から離れていくにつれて、状態ベクトル|Ψ0 〉に戻っていく。
【0167】 ここで主に注目しているのは
【0168】
【数58】
【0169】 の値であるが、この値は、|Ψ0 〉とはかなりの差があるものの、非断熱的にレ
ベルの垣根を越えるほど大きくはない摂動状態ベクトル|Ψ(t)〉を生成する
だけの十分な大きさを持っている。この程度の大きさの値を持った
ベルの垣根を越えるほど大きくはない摂動状態ベクトル|Ψ(t)〉を生成する
だけの十分な大きさを持っている。この程度の大きさの値を持った
【0170】
【数59】
【0171】 は、散乱と吸収が比較的小さいという条件を満たせば、原子蒸気セルの中で容易
に得られる。この激しく摂動された固有状態は、一種の2光子装着(dressed) 状
態と考えることができる。
に得られる。この激しく摂動された固有状態は、一種の2光子装着(dressed) 状
態と考えることができる。
【0172】 2つの光子の間の非線形相互作用は通常無視できるほどに小さいので、光子2
つが1つの媒体中を独立して伝播し、2光子装着(dressed) 状態が1光子装着状
態2つの単なるテンソル積に過ぎないと考えてもいいと思われるかもしれないが
、これは違う。理由は、図5と図8に示した種類の交換相互作用である。中でも
、図8は、2つの光子が同じ媒体中を伝播するときには、別の2つの媒体中を伝
播する場合と比較して、仮想的に励起した2つの原子が存在する確率が増えるべ
きであることを示唆している。この可能性を量的に調べるために、図7(a)の
ように光子が2つとも同じ媒体中を伝播する場合において、励起した原子が媒体
の中にちょうど1個存在する確率をP1S、2個存在する確率をP2Sとそれぞれ定
義する。また、図7(b)のように2つの光子が別々の媒体中を伝播する場合に
おいて、P1SとP2Sに対応する確率をそれぞれP1D、P2Dと定義する。ここで定
義した有効確率振幅に関して、該確率はそれぞれ(37)〜(40)で表される
。
つが1つの媒体中を独立して伝播し、2光子装着(dressed) 状態が1光子装着状
態2つの単なるテンソル積に過ぎないと考えてもいいと思われるかもしれないが
、これは違う。理由は、図5と図8に示した種類の交換相互作用である。中でも
、図8は、2つの光子が同じ媒体中を伝播するときには、別の2つの媒体中を伝
播する場合と比較して、仮想的に励起した2つの原子が存在する確率が増えるべ
きであることを示唆している。この可能性を量的に調べるために、図7(a)の
ように光子が2つとも同じ媒体中を伝播する場合において、励起した原子が媒体
の中にちょうど1個存在する確率をP1S、2個存在する確率をP2Sとそれぞれ定
義する。また、図7(b)のように2つの光子が別々の媒体中を伝播する場合に
おいて、P1SとP2Sに対応する確率をそれぞれP1D、P2Dと定義する。ここで定
義した有効確率振幅に関して、該確率はそれぞれ(37)〜(40)で表される
。
【0173】 P1S=|c(γ1)|2 +|c(γ2)|2 (37) P2S=|c(0)|2 (39) P1D=|c'(0)|2(1-|c"(0)|2)+|c"(0)|2(1-|c'(0)|2) (38) P2D=|c'(0)|2 |c"(0)|2 (40) 図8に示す2つのプロセスの間で構造的な干渉が起きることから、少なくとも摂
動理論の最も低い次数までは次式(41)が成り立つことが読み取れる。
動理論の最も低い次数までは次式(41)が成り立つことが読み取れる。
【0174】 P2S/P2D=2 (41) 断熱近似をすれば、これらの確率振幅は、初期状態ベクトルの摂動された形に
対応する瞬間固有ベクトルHeff 、H1 eff 、およびH2 eff を計算することで
得られる。適度な値の
対応する瞬間固有ベクトルHeff 、H1 eff 、およびH2 eff を計算することで
得られる。適度な値の
【0175】
【数60】
【0176】 を得るためには、それぞれの場合に適した固有ベクトルのエネルギーが初期値0
に最も近くなければならない。δ1 =−2、δ2 =−3、および
に最も近くなければならない。δ1 =−2、δ2 =−3、および
【0177】
【数61】
【0178】 の場合に、十分に大きなNに対して、関連する固有ベクトルを数値計算した結果
を表1にまとめた(ここでは、この種の実験ではよく行われているように、時間
をナノ秒を単位として表し、エネルギーを
を表1にまとめた(ここでは、この種の実験ではよく行われているように、時間
をナノ秒を単位として表し、エネルギーを
【0179】
【数62】
【0180】 を1ナノ秒で割ったものを単位として表して、グラフ表現や数値計算の結果の表
現に用いる)。表1の結果は数値計算によって有効数字40桁まで求めたが、表
の中では頭の20桁しか示していない。ハミルトニアンにおいて
現に用いる)。表1の結果は数値計算によって有効数字40桁まで求めたが、表
の中では頭の20桁しか示していない。ハミルトニアンにおいて
【0181】
【数63】
【0182】 を√Nで置き換えることによって、Nが十分に大きな値であるという条件を満た
す代わりに、Nに特徴的な大きな値と、それに対応する小さなMの値を使って数
値計算を行った。表1に示す具体的な結果は、N=1012およびM=0.5×1
0-6として得られたが、これらのパラメータが他の値をとっても同等の結果が得
られた。この手法の有利な点は、ここで注目している交換相互作用より1/N小
さいと考えられる相互作用を光子2つが同じ原子と起こす、非線形光学の通常の
メカニズムを含んでいることである。
す代わりに、Nに特徴的な大きな値と、それに対応する小さなMの値を使って数
値計算を行った。表1に示す具体的な結果は、N=1012およびM=0.5×1
0-6として得られたが、これらのパラメータが他の値をとっても同等の結果が得
られた。この手法の有利な点は、ここで注目している交換相互作用より1/N小
さいと考えられる相互作用を光子2つが同じ原子と起こす、非線形光学の通常の
メカニズムを含んでいることである。
【0183】 表1から、P2S/P2Dが予想通り有効数字12桁の精度で2に等しいことが分
かる。小数点以下第12桁目での値の差は1/Nにおよそ等しく、これは、光子
が2つとも同じ原子と相互作用を起こす従来の効果が影響していることを示して
いる。。例えば、光子1が吸収されると基底状態にある原子が1つ減り、その結
果、該原子が光子2を仮想的に吸収して再放出することを防ぎ、従来の非線形位
相シフト(カー効果)を生む。これらの効果はここでは考察しないが、個々の光
子間で起きる従来の非線形相互作用の規模が比較的小さいことをよく説明してい
る。固有値を計算することによっても、予想通り、弱いカップリングの場合(
かる。小数点以下第12桁目での値の差は1/Nにおよそ等しく、これは、光子
が2つとも同じ原子と相互作用を起こす従来の効果が影響していることを示して
いる。。例えば、光子1が吸収されると基底状態にある原子が1つ減り、その結
果、該原子が光子2を仮想的に吸収して再放出することを防ぎ、従来の非線形位
相シフト(カー効果)を生む。これらの効果はここでは考察しないが、個々の光
子間で起きる従来の非線形相互作用の規模が比較的小さいことをよく説明してい
る。固有値を計算することによっても、予想通り、弱いカップリングの場合(
【0184】
【数64】
【0185】 )にP2SがN2 に比例することが示された。
【0186】 図8で示す確率振幅の干渉が、最も次元の低いファインマン図にしか対応して
おらず、したがって、方程式(41)が摂動理論の最も低い次数までしか成立し
ないかもしれないと考えられることから、これほどまでに高い精度でP2S/P2D =2が成り立つことに少々驚くかもしれない。我々が実施した数値計算の結果か
らは、方程式(41)が、十分に大きなNの値に対して、少なくとも最初のレベ
ルの垣根を越えるところまでは
おらず、したがって、方程式(41)が摂動理論の最も低い次数までしか成立し
ないかもしれないと考えられることから、これほどまでに高い精度でP2S/P2D =2が成り立つことに少々驚くかもしれない。我々が実施した数値計算の結果か
らは、方程式(41)が、十分に大きなNの値に対して、少なくとも最初のレベ
ルの垣根を越えるところまでは
【0187】
【数65】
【0188】 の全ての値に対してきっちりと成立することが読み取れる。P2S≠P2Dという関
係が、2つの光子の間で有効な相互作用が起きること、および、該光子が媒体中
を互いに独立して伝播することはないことを示している。
係が、2つの光子の間で有効な相互作用が起きること、および、該光子が媒体中
を互いに独立して伝播することはないことを示している。
【0189】 表1を詳しく見ても、2つの光子が同じ媒体中を伝播しようが、あるいは異な
った2つの媒体中を伝播しようが、変わらない系の性質があることが分かる。2
個の光子が同じ媒体中を伝播するときに発生する2光子装着状態のエネルギーを
ES とし、光子がそれぞれ異なった媒体中を伝播するときに発生する1光子装着
状態のエネルギーをそれぞれE1 とE2 とする。数値的に固有値を計算すれば、
ES =E1 +E2 が1/Nの精度内で成立することが分かるが、これは、十分に
大きなNに対して、系全体の固有状態がいずれの場合においても同じエネルギー
を持っていることを示している。これが成り立たないと仮定すると、レーザーパ
ルス照射などの摂動がないときであっても非線形位相シフトが起きることになる
が、これは、対称性の議論によればありえないことである。高エネルギーの固有
状態(|Ψ0 〉に対応しない固有状態)も、いずれの場合でも同じエネルギーを
持っている。
った2つの媒体中を伝播しようが、変わらない系の性質があることが分かる。2
個の光子が同じ媒体中を伝播するときに発生する2光子装着状態のエネルギーを
ES とし、光子がそれぞれ異なった媒体中を伝播するときに発生する1光子装着
状態のエネルギーをそれぞれE1 とE2 とする。数値的に固有値を計算すれば、
ES =E1 +E2 が1/Nの精度内で成立することが分かるが、これは、十分に
大きなNに対して、系全体の固有状態がいずれの場合においても同じエネルギー
を持っていることを示している。これが成り立たないと仮定すると、レーザーパ
ルス照射などの摂動がないときであっても非線形位相シフトが起きることになる
が、これは、対称性の議論によればありえないことである。高エネルギーの固有
状態(|Ψ0 〉に対応しない固有状態)も、いずれの場合でも同じエネルギーを
持っている。
【0190】 光子が同じ媒体中を伝播する場合と異なる媒体中を伝播する場合とにおける、
励起している原子の平均個数を、それぞれ〈Ne 〉S および〈Ne 〉D と定義す
ると、次式(42)のように、上記と同様のことが起きるのが見られる。
励起している原子の平均個数を、それぞれ〈Ne 〉S および〈Ne 〉D と定義す
ると、次式(42)のように、上記と同様のことが起きるのが見られる。
【0191】 〈Ne 〉S ≡P1S+2P2S 〈Ne 〉D +P1D+2P2D (42) 表1に示す数値計算の結果から、十分に大きなNに対して、 〈Ne 〉S =〈Ne 〉D (43) が成立することが分かるが、これは、上記した励起状態の個数の平均値がいずれ
の場合においても等しいこと示している。また、対称性の議論からもこうならな
けばならない。方程式(41)〜(43)を合わせれば、次式(44)のように
、励起した原子がちょうど1個存在する確率の差を求めることができる。
の場合においても等しいこと示している。また、対称性の議論からもこうならな
けばならない。方程式(41)〜(43)を合わせれば、次式(44)のように
、励起した原子がちょうど1個存在する確率の差を求めることができる。
【0192】 P1S−P1D=−P2S (44) これは、2つの光子が同じ媒体中を伝播する場合、単一励起原子状態が起きる確
率が減少することを示している。この結果は、複励起原子状態(two-excited-ato
m state)を発生させるには単一励起原子状態の確率振幅を低下させるという代償
が必ず伴うことを考えれば(摂動理論にそって)理解できる。
率が減少することを示している。この結果は、複励起原子状態(two-excited-ato
m state)を発生させるには単一励起原子状態の確率振幅を低下させるという代償
が必ず伴うことを考えれば(摂動理論にそって)理解できる。
【0193】 数値計算をした結果、十分に大きなNに対してP2S/P2D=2が成立すること
に疑いの余地はなくなったが、我々は、さらに、固有ベクトルの解および関連す
る確率をMathematica を使って解析的に求めた。この結果得られた式はかなり長
く複雑で、実際にはあまり役に立たないので、ここでは記述しない。この解析的
に求めた解も、十分に大きなNに対して、少なくとも、解析式のパラメータにど
んな数値を代入しても上記のような結果が得られる限りは、方程式(41)と(
43)を満たす。ただ、我々は、解析式を簡単にして、方程式(41)と(43
)を直接求めるところまでは、まだできないでいる。離調が等しい(δ1 =δ2 )場合、因子2(factor of 2) は簡単に導くことができる。
に疑いの余地はなくなったが、我々は、さらに、固有ベクトルの解および関連す
る確率をMathematica を使って解析的に求めた。この結果得られた式はかなり長
く複雑で、実際にはあまり役に立たないので、ここでは記述しない。この解析的
に求めた解も、十分に大きなNに対して、少なくとも、解析式のパラメータにど
んな数値を代入しても上記のような結果が得られる限りは、方程式(41)と(
43)を満たす。ただ、我々は、解析式を簡単にして、方程式(41)と(43
)を直接求めるところまでは、まだできないでいる。離調が等しい(δ1 =δ2 )場合、因子2(factor of 2) は簡単に導くことができる。
【0194】 仮想的に励起した原子が2つ存在する確率の増加を使って非線形位相シフトを
作り出すには様々な方法がある。以下の記述では、まず、単一レーザーパルスの
効果を説明するが、これが最も簡単な方法である。次に、複数のレーザーパルス
を続けて照射して、任意の振幅の非線形位相シフトを損失を最小に抑えながら作
り出すことを検討する。さらに、緩衝気体との衝突、ベリー(Berry) の幾何位相
、レベルの垣根を越えるのを防ぐ方法などを説明するが、これらの方法は先の方
法に比べて効率が落ちる。
作り出すには様々な方法がある。以下の記述では、まず、単一レーザーパルスの
効果を説明するが、これが最も簡単な方法である。次に、複数のレーザーパルス
を続けて照射して、任意の振幅の非線形位相シフトを損失を最小に抑えながら作
り出すことを検討する。さらに、緩衝気体との衝突、ベリー(Berry) の幾何位相
、レベルの垣根を越えるのを防ぐ方法などを説明するが、これらの方法は先の方
法に比べて効率が落ちる。
【0195】 ここでは光子の波束が媒体を中心にして位置しているときに、単一のレーザー
パルスが媒体に照射されると仮定して話を進める。レーザーパルスの電界をかけ
ると、交流スタークシフトによって、励起している原子があればそのエネルギー
レベル2に変化が起きるが、一方で、図10に示すように、レベル3に遷移する
光子の個数は無視できる程度である。レーザーパルスの照射時間は、シュレディ
ンガー方程式とHeff とにしたがって系の量子状態の個数が変化を起こし得る、
関連する時間スケールよりずっと短いと仮定する。この場合、レーザーパルスを
使った結果、全体としては、次式(45)で与えられる衝撃(impulsive) 位相シ
フト
パルスが媒体に照射されると仮定して話を進める。レーザーパルスの電界をかけ
ると、交流スタークシフトによって、励起している原子があればそのエネルギー
レベル2に変化が起きるが、一方で、図10に示すように、レベル3に遷移する
光子の個数は無視できる程度である。レーザーパルスの照射時間は、シュレディ
ンガー方程式とHeff とにしたがって系の量子状態の個数が変化を起こし得る、
関連する時間スケールよりずっと短いと仮定する。この場合、レーザーパルスを
使った結果、全体としては、次式(45)で与えられる衝撃(impulsive) 位相シ
フト
【0196】
【数66】
【0197】 が、原子が励起した状態で発生することになる。
【0198】
【数67】
【0199】 ここで、ΔE(t)は場を印加することで生じる、励起状態のエネルギーの変化
である。
である。
【0200】
【数68】
【0201】 を所望の値(ここではπ/2として話を進める)にするためには、レーザーパル
スの強度と照射時間を調整すればいい。
スの強度と照射時間を調整すればいい。
【0202】 レーザーパルスの照射直前に状態ベクトル|Ψ〉が方程式(25)の形をして
いるとすれば、レーザーパルスの照射直後には、系は次式(46)で表される新
しい状態|Ψ’〉にある。
いるとすれば、レーザーパルスの照射直後には、系は次式(46)で表される新
しい状態|Ψ’〉にある。
【0203】
【数69】
【0204】 この状態ベクトルの第2の成分と第3の成分とは、励起原子1個に対応していて
、π/2の位相シフトを受ける。一方で、第4の成分は、励起原子2個に対応し
ていて、合計πの位相シフトを受ける。
、π/2の位相シフトを受ける。一方で、第4の成分は、励起原子2個に対応し
ていて、合計πの位相シフトを受ける。
【0205】 新しい状態ベクトル|Ψ’〉は元の状態ベクトルと、|Ψ〉に直交する別のベ
クトル
クトル
【0206】
【数70】
【0207】 との線形結合として上手く表現できる。
【0208】
【数71】
【0209】 ただし、rと
【0210】
【数72】
【0211】 はどちらも実数である。|Ψ〉の項の係数は|Ψ’〉の|Ψ〉の上への投影によ
って得られる。
って得られる。
【0212】
【数73】
【0213】 ここで、 r'=|c(γ1,γ2)|2-|c(0)|2+|c(γ1,γ1)|2+|c(γ2,γ2)|2 (49)
はレーザーパルスの影響を受けない項からの寄与と、さらに、2励起原子状態か
らの寄与とを含んだ実数である。説明を簡単にするために、r’が単位量にほぼ
等しく、
はレーザーパルスの影響を受けない項からの寄与と、さらに、2励起原子状態か
らの寄与とを含んだ実数である。説明を簡単にするために、r’が単位量にほぼ
等しく、
【0214】
【数74】
【0215】 を含んだ他の項がそれに比べてずっと小さい、カップリングが弱い範囲を考える
。そして、方程式(48)の左辺を
。そして、方程式(48)の左辺を
【0216】
【数75】
【0217】 において1次にまで展開すると、次式(50)が得られる。
【0218】
【数76】
【0219】 方程式(50)は、光子が2つとも同じ媒体中を伝播している場合に成り立つ。
また、光子が異なる2つの媒体中を伝播している場合にも同様の結果が得られる
。この2つの場合を次式(51)に示す。
また、光子が異なる2つの媒体中を伝播している場合にも同様の結果が得られる
。この2つの場合を次式(51)に示す。
【0220】
【数77】
【0221】 ただし、
【0222】
【数78】
【0223】 とはこの2つの場合それぞれの全体的な位相シフトである。このように表すこと
で、非線形位相シフト
で、非線形位相シフト
【0224】
【数79】
【0225】 は次式(52)のように、この両者の差に等しくなる。
【0226】
【数80】
【0227】 また、方程式(44)と比べれば、弱いカップリングの範囲内で次式(53)が
得られる。
得られる。
【0228】
【数81】
【0229】 方程式(53)は、非線形位相シフトが2つの原子が仮想的に同時に励起して
いる確率に正比例することを示している。この確率は、図8に示した交換相互作
用のために、光子が2つとも同じ媒体中を伝播するときの方が大きい。上記の固
有値計算によると、カップリングが弱い範囲内で非線形位相シフトはN2 に正比
例すると思われるが、この場合、図6に例示した従来のメカニズムによる位相シ
フトより大きくなる。この非線形性は2励起原子状態の位相がπずれるというこ
とに依存している。この位相のずれは正負の符号が変わることに相当し、その結
果、位相シフトではなく、r’に影響を与える。仮に、
いる確率に正比例することを示している。この確率は、図8に示した交換相互作
用のために、光子が2つとも同じ媒体中を伝播するときの方が大きい。上記の固
有値計算によると、カップリングが弱い範囲内で非線形位相シフトはN2 に正比
例すると思われるが、この場合、図6に例示した従来のメカニズムによる位相シ
フトより大きくなる。この非線形性は2励起原子状態の位相がπずれるというこ
とに依存している。この位相のずれは正負の符号が変わることに相当し、その結
果、位相シフトではなく、r’に影響を与える。仮に、
【0230】
【数82】
【0231】 に対して、2励起原子状態が単一励起原子状態の単純に2倍の寄与をするだけで
あれば、非線形位相シフトは得られない。例えば、レーザーパルスが弱い範囲(
あれば、非線形位相シフトは得られない。例えば、レーザーパルスが弱い範囲(
【0232】
【数83】
【0233】 )にあれば、非線形位相シフトは得られない。したがって、この仮定の下で、最
終的な位相シフトは励起原子の平均個数だけに依存する。なお、方程式(43)
によると、該平均個数はいずれの場合であっても同じである。2励起原子状態の
全体の位相に依存するこの特性は、後の記述で詳細を述べるように、系の非局在
的な特性であると見ることができる。
終的な位相シフトは励起原子の平均個数だけに依存する。なお、方程式(43)
によると、該平均個数はいずれの場合であっても同じである。2励起原子状態の
全体の位相に依存するこの特性は、後の記述で詳細を述べるように、系の非局在
的な特性であると見ることができる。
【0234】 量子論理ゲートを構築するにはの非線形位相シフトが必要であるが、方程式(
53)からは、単一のレーザーパルスでこの非線形位相シフトを作り出すことは
不可能である。方程式(47)において直交状態
53)からは、単一のレーザーパルスでこの非線形位相シフトを作り出すことは
不可能である。方程式(47)において直交状態
【0235】
【数84】
【0236】 ができる確率は、量子コンピュータにおいてキュービットを表す基礎的な状態か
ら系が逸脱する、損失のメカニズムに相当する。したがって、この確率は最小限
に抑えなければならない。単一レーザーパルスの場合、この逸脱が起きる確率は
P1 のオーダーであり、
ら系が逸脱する、損失のメカニズムに相当する。したがって、この確率は最小限
に抑えなければならない。単一レーザーパルスの場合、この逸脱が起きる確率は
P1 のオーダーであり、
【0237】
【数85】
【0238】 より大きい。この難点は、πの位相シフトを生じさせるように構成した、適当な
レーザーパルスを連続して
レーザーパルスを連続して
【0239】
【数86】
【0240】 として使えばどちらも避けられる。こういった連続したレーザーパルスをどう構
成すれば最適であるかは非線形最適化の問題であり、これはまだ調べている状態
である。ここでは、2つの手法を説明する。1つは、上記のような複数の短いレ
ーザーパルスを連続して利用する手法である。2つ目は長いけれども帯域幅の狭
いパルスを用いる手法で、1つ目の手法より効果的である。
成すれば最適であるかは非線形最適化の問題であり、これはまだ調べている状態
である。ここでは、2つの手法を説明する。1つは、上記のような複数の短いレ
ーザーパルスを連続して利用する手法である。2つ目は長いけれども帯域幅の狭
いパルスを用いる手法で、1つ目の手法より効果的である。
【0241】 まず、1つ目の手法では、一連のnp 個の短いパルスが、振幅aj で時間tj に照射される。パルスとパルスの時間間隔はτp に比べれば十分に小さく、複数
のパルスの照射を連続して受けている時間
のパルスの照射を連続して受けている時間
【0242】
【数87】
【0243】 はおおよそ一定であるとする。np の値は十分に大きくし(〜10)、
【0244】
【数88】
【0245】 の全ての成分を打ち消すのに十二分な自由度があると仮定する。ここではモンテ
カルロ法(Monte Carlo approach)を使って数値分析を行った。具体的には、tj とaj の初期値をランダムに選択し、これを、tj とaj とを変化させて、最終
的な非線形位相シフトに対する損失(
カルロ法(Monte Carlo approach)を使って数値分析を行った。具体的には、tj とaj の初期値をランダムに選択し、これを、tj とaj とを変化させて、最終
的な非線形位相シフトに対する損失(
【0246】
【数89】
【0247】 の絶対値の二乗)の割合を最小にする数値解析の開始点として使用した。この数
値解析ではシュレディンガー方程式の時間展開を数値解析によって計算した。ラ
ンダムに選択した初期値の組を用いたのでは局在的な最小値しか得られないかも
しれないが、最適な解が得られるまでこのプロセスを何度も繰り返した。ランダ
ムに選択した開始点から得られた解のほとんどで
値解析ではシュレディンガー方程式の時間展開を数値解析によって計算した。ラ
ンダムに選択した初期値の組を用いたのでは局在的な最小値しか得られないかも
しれないが、最適な解が得られるまでこのプロセスを何度も繰り返した。ランダ
ムに選択した開始点から得られた解のほとんどで
【0248】
【数90】
【0249】 が成立したが、対応する
【0250】
【数91】
【0251】 の値は大きく変化した。
【0252】 レーザーパルスを照射する間、系は励起して、図10に示すように、原子がレ
ベル3にあり、2つの光子の内のいずれか一方、あるいは両方が吸収された仮想
的な状態になる。この仮想的な状態の離調は|γ1 〉の状態の場合と|γ2 〉の
状態の場合とでは異なり、|γ2 〉の場合の位相シフトと|γ1 〉の場合の位相
シフトとではf倍の差ができる。このfはレーザーパルスの周波数を調整するこ
とで制御できる。この確率は、位相シフトが次式(54)で表されると考えて、
解析の際に考慮した。
ベル3にあり、2つの光子の内のいずれか一方、あるいは両方が吸収された仮想
的な状態になる。この仮想的な状態の離調は|γ1 〉の状態の場合と|γ2 〉の
状態の場合とでは異なり、|γ2 〉の場合の位相シフトと|γ1 〉の場合の位相
シフトとではf倍の差ができる。このfはレーザーパルスの周波数を調整するこ
とで制御できる。この確率は、位相シフトが次式(54)で表されると考えて、
解析の際に考慮した。
【0253】
【数92】
【0254】 こうすることで方程式(45)を一般化できる。ここで、
【0255】
【数93】
【0256】 は、それぞれ、|γ1 〉、|γ2 〉、および|0〉の状態における位相シフトで
ある。また、
ある。また、
【0257】
【数94】
【0258】 の値はレーザーパルスの振幅に依存する(パルスの照射時間は全て等しいと仮定
した)。
した)。
【0259】 10個の連続したレーザーパルスが照射された場合の最適な結果を、fの関数
として表2にまとめた。表中、このパルスの照射を連続して受けた後の
として表2にまとめた。表中、このパルスの照射を連続して受けた後の
【0260】
【数95】
【0261】 の絶対値の二乗はすべての場合で0である。この表から、fが1に近づくにつれ
て非線形位相シフトの最適値が減少すること、また、f=1の場合には
て非線形位相シフトの最適値が減少すること、また、f=1の場合には
【0262】
【数96】
【0263】 となる解が見つからないことが分かる。このことは、損失を全く出さないで非線
形位相シフトを得るためには、光子1と光子2の影響が非対称性であることが要
求されることを暗示している(付録Bで説明するように、レーザーパルスを使わ
ずに、緩衝気体との衝突を使う場合にも同様の非対称性が必要である)。連続し
た短いパルスから得られる
形位相シフトを得るためには、光子1と光子2の影響が非対称性であることが要
求されることを暗示している(付録Bで説明するように、レーザーパルスを使わ
ずに、緩衝気体との衝突を使う場合にも同様の非対称性が必要である)。連続し
た短いパルスから得られる
【0264】
【数97】
【0265】 の大きさはどの場合でも比較的小さく、これは問題に対して真っ直ぐに取り組む
手法ではあるが、限られた実用性しかない。
手法ではあるが、限られた実用性しかない。
【0266】 そこで、複雑ではあるが効率のいい、5個のパルスを使った手法を調べてみた
。この手法では、帯域は狭いが長めのレーザーパルスを使って、系の特定の状態
間で遷移を起こさせる。ここでは、図11に示すように、光子は2つともレベル
2との共鳴よりもレベル3との共鳴の方に近いと仮定するが、離調はまだ十分に
大きく、レベル3にある光子の個数は比較的少ない。レーザーパルスの周波数は
レベル2への共鳴遷移を起こさせるように合わせてあって、ある周波数では光子
1の共鳴吸収が起き、別の周波数では光子2の共鳴吸収が起きるようになってい
る。レベル3はここでも仮想的な状態なので、最終的な効果は、光子のレベル2
への吸収を示す有効行列成分として表現できる。
。この手法では、帯域は狭いが長めのレーザーパルスを使って、系の特定の状態
間で遷移を起こさせる。ここでは、図11に示すように、光子は2つともレベル
2との共鳴よりもレベル3との共鳴の方に近いと仮定するが、離調はまだ十分に
大きく、レベル3にある光子の個数は比較的少ない。レーザーパルスの周波数は
レベル2への共鳴遷移を起こさせるように合わせてあって、ある周波数では光子
1の共鳴吸収が起き、別の周波数では光子2の共鳴吸収が起きるようになってい
る。レベル3はここでも仮想的な状態なので、最終的な効果は、光子のレベル2
への吸収を示す有効行列成分として表現できる。
【0267】 1つ目のレーザーパルスの周波数と振幅は、図12に示すように、光子2の共
鳴吸収(πのラビ(Rabi)振動)が起きて、|γ1,γ2 〉の状態から|γ1 〉の状
態へ系が完全に遷移するように選択する。方程式(31)のHeff と方程式(3
5)のH2 eff とを行列成分について比較すると、この遷移のためのラビ周波数
は、光子が2つとも同じ媒体中にあっても、異なる2つの媒体にそれぞれあって
も同じであって、この遷移はいずれの場合であっても起きる。
鳴吸収(πのラビ(Rabi)振動)が起きて、|γ1,γ2 〉の状態から|γ1 〉の状
態へ系が完全に遷移するように選択する。方程式(31)のHeff と方程式(3
5)のH2 eff とを行列成分について比較すると、この遷移のためのラビ周波数
は、光子が2つとも同じ媒体中にあっても、異なる2つの媒体にそれぞれあって
も同じであって、この遷移はいずれの場合であっても起きる。
【0268】 次に、2つ目のパルスの周波数を光子1の遷移と共鳴するように選択し、振幅
については、2つの光子が別々の媒体中にある場合、完全な(つまり、2πの)
ラビ振動を起こして初期状態|γ1 〉に戻るように調整する。ここでHeff をH 1 eff と比較すると、光子が2つとも同じ媒体中にある場合には、図8に示す量
子干渉が原因となって、対応する行列成分が√2だけ大きいことが分かる。この
結果、|0〉の状態の確率振幅はゼロを横切って振動し、後者の場合には、図1
3(a)に示すように、系は|γ1 〉と|0〉との重ね合わせの状態にある。こ
れらの結果は、幅(標準偏差)30nsのガウスのレーザーパルスに対してシュ
レディンガーの方程式を数値積分することで得られた。
については、2つの光子が別々の媒体中にある場合、完全な(つまり、2πの)
ラビ振動を起こして初期状態|γ1 〉に戻るように調整する。ここでHeff をH 1 eff と比較すると、光子が2つとも同じ媒体中にある場合には、図8に示す量
子干渉が原因となって、対応する行列成分が√2だけ大きいことが分かる。この
結果、|0〉の状態の確率振幅はゼロを横切って振動し、後者の場合には、図1
3(a)に示すように、系は|γ1 〉と|0〉との重ね合わせの状態にある。こ
れらの結果は、幅(標準偏差)30nsのガウスのレーザーパルスに対してシュ
レディンガーの方程式を数値積分することで得られた。
【0269】 ここでは光子が2つとも同じ媒体中を伝播しているときに限って系が重ね合わ
せの状態にあるようにしたことによって、この場合、3つ目のパルスは任意の位
相シフトを作り出すことができる。パルス3の周波数は光子1の遷移との共鳴か
らわずかにずれるように選び、該パルスの振幅は、2つ目のパルスと同じく、2
つの光子が別々の媒体中にある場合、系を初期状態|γ1 〉に戻すように調整す
る(ここでもまた2πのラビ振動)。光子が2つとも同じ媒体中を伝播する場合
、状態|γ1 〉の確率振幅に対するこのパルスの効果は図14から読み取れる。
図中、破線で描いた円の半径はパルス照射直前のこの状態の確率振幅の絶対値に
等しい。図中のベクトルaはパルスを照射する前の状態|γ1 〉の確率振幅から
の寄与を表すが、この寄与は照射中には状態|0〉にカップリングすることによ
って大きさが減る。ベクトルbはパルスを照射する前の状態|0〉の確率振幅
からの寄与を表すが、この寄与は照射中にはカップリングされて元の状態|γ1 〉になる。ベクトルbの大きさはパルスの離調を変化させることで調整可能であ
る。また、パルスの位相を使って、2つのベクトルの和を上記の破線で描かれた
円周上に確実に載せることができる。こうすることで、状態|γ1 〉の振幅の絶
対値を元の値で保っておくことができるようになる。また、一方で、結果として
生じるベクトルを破線の円周上の任意の点に移動させることによって、任意の位
相シフトを導入することができる。
せの状態にあるようにしたことによって、この場合、3つ目のパルスは任意の位
相シフトを作り出すことができる。パルス3の周波数は光子1の遷移との共鳴か
らわずかにずれるように選び、該パルスの振幅は、2つ目のパルスと同じく、2
つの光子が別々の媒体中にある場合、系を初期状態|γ1 〉に戻すように調整す
る(ここでもまた2πのラビ振動)。光子が2つとも同じ媒体中を伝播する場合
、状態|γ1 〉の確率振幅に対するこのパルスの効果は図14から読み取れる。
図中、破線で描いた円の半径はパルス照射直前のこの状態の確率振幅の絶対値に
等しい。図中のベクトルaはパルスを照射する前の状態|γ1 〉の確率振幅から
の寄与を表すが、この寄与は照射中には状態|0〉にカップリングすることによ
って大きさが減る。ベクトルbはパルスを照射する前の状態|0〉の確率振幅
からの寄与を表すが、この寄与は照射中にはカップリングされて元の状態|γ1 〉になる。ベクトルbの大きさはパルスの離調を変化させることで調整可能であ
る。また、パルスの位相を使って、2つのベクトルの和を上記の破線で描かれた
円周上に確実に載せることができる。こうすることで、状態|γ1 〉の振幅の絶
対値を元の値で保っておくことができるようになる。また、一方で、結果として
生じるベクトルを破線の円周上の任意の点に移動させることによって、任意の位
相シフトを導入することができる。
【0270】 |γ1 〉の絶対値をパルス3の照射の間中一定に保っておくのは、こうすれば
、この時の系の状態は、位相シフトを除けばパルス2が照射された後と同じにな
り、4つ目のパルスがパルス2の逆として作用できるようになるからである。パ
ルス4の振幅と周波数は、したがって、パルス2の振幅と周波数に等しくなるよ
うに選ぶ。こうすることで、2つの光子が別々の媒体中にある場合、系は2πの
ラビ振動を受けて再び|γ1 〉の状態になる。図13(b)に示すように、これ
と同時に、光子が2つとも同じ媒体中にある場合、|0〉成分をなくして、系全
体を|γ1 〉の状態にするように、このパルスの位相を調整することができる。
、この時の系の状態は、位相シフトを除けばパルス2が照射された後と同じにな
り、4つ目のパルスがパルス2の逆として作用できるようになるからである。パ
ルス4の振幅と周波数は、したがって、パルス2の振幅と周波数に等しくなるよ
うに選ぶ。こうすることで、2つの光子が別々の媒体中にある場合、系は2πの
ラビ振動を受けて再び|γ1 〉の状態になる。図13(b)に示すように、これ
と同時に、光子が2つとも同じ媒体中にある場合、|0〉成分をなくして、系全
体を|γ1 〉の状態にするように、このパルスの位相を調整することができる。
【0271】 次に、5つ目のパルスとしてパルス1と全く同じパルスを照射してπのラビ振
動を作り出し、系を、パルス3の照射中に発生した位相シフト以外は元の|γ1,
γ2 〉と同じ状態に戻す。上記と同じく、光子が同じ媒体中を伝播しても、ある
いは、異なる媒体の中を伝播しても、行列成分とラビ周波数はここの遷移では変
わらない。
動を作り出し、系を、パルス3の照射中に発生した位相シフト以外は元の|γ1,
γ2 〉と同じ状態に戻す。上記と同じく、光子が同じ媒体中を伝播しても、ある
いは、異なる媒体の中を伝播しても、行列成分とラビ周波数はここの遷移では変
わらない。
【0272】 数値アルゴリズムを使って、上述した連続した5個のパルスに対するパラメー
タを正確に求めた。以上の過程から得られるパルスを連続して照射すれば、過程
全体では、光子が2つとも同じ媒体を通る場合の位相が、2つの異なる媒体を通
る場合に対して相対的にπずれるという効果が得られる。また、パルス3の周波
数、振幅、あるいは位相を変えて選んで使用すれば、任意の非線形位相シフトが
生じるという効果が得られる。この手法であれば、上記の近似の範囲内では(直
交する状態ベクトル
タを正確に求めた。以上の過程から得られるパルスを連続して照射すれば、過程
全体では、光子が2つとも同じ媒体を通る場合の位相が、2つの異なる媒体を通
る場合に対して相対的にπずれるという効果が得られる。また、パルス3の周波
数、振幅、あるいは位相を変えて選んで使用すれば、任意の非線形位相シフトが
生じるという効果が得られる。この手法であれば、上記の近似の範囲内では(直
交する状態ベクトル
【0273】
【数98】
【0274】 の形では)損失が生じることがない。
【0275】 以上の解析でも、再度、a1 †およびa2 †によってできた電磁場のモードだ
けが関与すると仮定した。この条件は、厚みのある媒体を使い、適当な位相整合
の条件を採用することで、実験的には満足できると思われる。この場合、エネル
ギーと運動量とが保存されることによって、光子の他のモードへの放出が大幅に
抑えられる。散乱と分散の効果も考慮した、さらに詳細な数値計算を行う予定で
ある。
けが関与すると仮定した。この条件は、厚みのある媒体を使い、適当な位相整合
の条件を採用することで、実験的には満足できると思われる。この場合、エネル
ギーと運動量とが保存されることによって、光子の他のモードへの放出が大幅に
抑えられる。散乱と分散の効果も考慮した、さらに詳細な数値計算を行う予定で
ある。
【0276】 ここで当然起こる疑問は、これらの非線形位相シフトについて古典力学で説明
ができるのか、あるいは、本質的に、量子力学を持ち出さないと理解できないの
かということである。以下の記述では、光子を古典力学における粒子、あるいは
波として記述することの可能性を考えていくが、この考察からは、どちらで記述
しても観察した事象と上手く合わないという結論が得られている。続いて、この
種の非線形位相シフトは、媒体が局在的に偏光できることが原因となって発生す
るのではないということを示す。さらに、正しく解釈するには、離れた2つの場
所で発生する媒体の偏光の変動の間に非局在的な相関関係を含まなければならな
いのではないかという提案をする。
ができるのか、あるいは、本質的に、量子力学を持ち出さないと理解できないの
かということである。以下の記述では、光子を古典力学における粒子、あるいは
波として記述することの可能性を考えていくが、この考察からは、どちらで記述
しても観察した事象と上手く合わないという結論が得られている。続いて、この
種の非線形位相シフトは、媒体が局在的に偏光できることが原因となって発生す
るのではないということを示す。さらに、正しく解釈するには、離れた2つの場
所で発生する媒体の偏光の変動の間に非局在的な相関関係を含まなければならな
いのではないかという提案をする。
【0277】 古典力学で筋の通った説明をつけるには、光の粒子に似た性質と、測定は、少
なくとも原則として、どの光子がどの原子と相互反応を起こすのかを決定するた
めに実施するのだということを考慮に入れなければならない。光子が古典的な粒
子であると仮定すると、上記のように、一般の媒体の場合、光子が2つとも1つ
の原子と相互反応を起こす確率は無視できるほど小さい。このことが、古典力学
では、ある光子が持つ、別の光子の状態を制御できる能力に本質的な制限を加え
ることになる。これは、一般に、ある古典的な系が他の系を制御できるのは、直
接、あるいは、図15(a)に図示するように一連の相互反応系を通じて、物理
的な相互作用(力)が2つの系の間をつないでいる時だけに限られるからである
。図15(b)に示すように、個々の系の相互作用が、他とは独立したグループ
の中だけに限られていると、制御は全く不可能である。図15(a)で2つの系
をつないでいる一連の物理的相互作用によって片方の系からもう1つの系に情報
が流れる経路ができる。また、この相互作用は、個々の事象について特定の原因
がなければならない(決定論)という仮定と一致する。これとは対照的に、図8
に示す量子力学における交換相互作用は、図15(b)に示す互いに独立した2
つの系と同じ形をしている。このことは、2つの光子の間に物理的な相互作用が
存在しなくても、その片方の光子がもう一方の光子の状態を制御できることを暗
示している。
なくとも原則として、どの光子がどの原子と相互反応を起こすのかを決定するた
めに実施するのだということを考慮に入れなければならない。光子が古典的な粒
子であると仮定すると、上記のように、一般の媒体の場合、光子が2つとも1つ
の原子と相互反応を起こす確率は無視できるほど小さい。このことが、古典力学
では、ある光子が持つ、別の光子の状態を制御できる能力に本質的な制限を加え
ることになる。これは、一般に、ある古典的な系が他の系を制御できるのは、直
接、あるいは、図15(a)に図示するように一連の相互反応系を通じて、物理
的な相互作用(力)が2つの系の間をつないでいる時だけに限られるからである
。図15(b)に示すように、個々の系の相互作用が、他とは独立したグループ
の中だけに限られていると、制御は全く不可能である。図15(a)で2つの系
をつないでいる一連の物理的相互作用によって片方の系からもう1つの系に情報
が流れる経路ができる。また、この相互作用は、個々の事象について特定の原因
がなければならない(決定論)という仮定と一致する。これとは対照的に、図8
に示す量子力学における交換相互作用は、図15(b)に示す互いに独立した2
つの系と同じ形をしている。このことは、2つの光子の間に物理的な相互作用が
存在しなくても、その片方の光子がもう一方の光子の状態を制御できることを暗
示している。
【0278】 図8に示す交換相互作用が図15(b)に示す互いに独立した2つの系と同じ
形をしているとはいっても、我々にはどの光子がどの原子と相互作用を起こすの
かが分からない。この不確かさは古典力学的とは無縁である。つまり、2つの光
子が決して同じ原子とは相互作用を起こさないのであれば、どちらの光子がどち
らの原子と相互反応を起こしても、いずれにしても情報が流れる経路は存在しな
いのである。量子力学では、2つの光子の間に古典的な意味での相互作用が存在
しなくても、プロセスを制御できる確率が確率振幅の干渉によって得られる。図
5に示す量子力学的な交換相互作用では、原子Aが光子1を吸収して光子2を再
放出し、一方で、原子Bが光子2を吸収して光子1を再放出するが、このことは
、量子力学的には、ある意味で、光子が2つとも原子2つと相互作用を起こさな
ければならないことを意味している。もっとも、これは、古典力学とはまた無縁
である。なぜならば、2つの光子が原因となって同じ原子に対して影響を及ぼす
ことがないし、古典的な意味での情報の流れの経路が結果として認識できないか
らである。
形をしているとはいっても、我々にはどの光子がどの原子と相互作用を起こすの
かが分からない。この不確かさは古典力学的とは無縁である。つまり、2つの光
子が決して同じ原子とは相互作用を起こさないのであれば、どちらの光子がどち
らの原子と相互反応を起こしても、いずれにしても情報が流れる経路は存在しな
いのである。量子力学では、2つの光子の間に古典的な意味での相互作用が存在
しなくても、プロセスを制御できる確率が確率振幅の干渉によって得られる。図
5に示す量子力学的な交換相互作用では、原子Aが光子1を吸収して光子2を再
放出し、一方で、原子Bが光子2を吸収して光子1を再放出するが、このことは
、量子力学的には、ある意味で、光子が2つとも原子2つと相互作用を起こさな
ければならないことを意味している。もっとも、これは、古典力学とはまた無縁
である。なぜならば、2つの光子が原因となって同じ原子に対して影響を及ぼす
ことがないし、古典的な意味での情報の流れの経路が結果として認識できないか
らである。
【0279】 光の粒子に似た性質を単純に無視して、光子を古典的な波を用いて表現するの
であれば、光ビームの強度が非常に低過ぎて、原子の特性に及ぼす影響は無視で
きるほど小さく、また、媒体の屈折率を大きく変化させることができない。例え
ば、入射してくる2つの光ビームの前に、該ビームの強度を大きな因子fa で減
少させるために吸収フィルタを置いたとする。非線形効果が強度の積に比例する
古典力学では、非線形位相シフトが因子fa だけ減少する。対照的に、光子を2
つとも減衰器に通して実際に検出できる事象のみを認めるのであれば、ここで注
目している非線形位相シフトはこのような減衰プロセスの影響を受けない。強度
がいくら低くても非線形効果が現れるということが、非古典的な振る舞いの顕著
な特徴である。
であれば、光ビームの強度が非常に低過ぎて、原子の特性に及ぼす影響は無視で
きるほど小さく、また、媒体の屈折率を大きく変化させることができない。例え
ば、入射してくる2つの光ビームの前に、該ビームの強度を大きな因子fa で減
少させるために吸収フィルタを置いたとする。非線形効果が強度の積に比例する
古典力学では、非線形位相シフトが因子fa だけ減少する。対照的に、光子を2
つとも減衰器に通して実際に検出できる事象のみを認めるのであれば、ここで注
目している非線形位相シフトはこのような減衰プロセスの影響を受けない。強度
がいくら低くても非線形効果が現れるということが、非古典的な振る舞いの顕著
な特徴である。
【0280】 もっと一般的には、場の印加に対して媒体が局在的に反応する古典力学とは、
予想した位相シフトが一致しないという簡単な証明ができる。これを説明するた
めに、通常良くあるように、媒体の非線形応答が、一連の非線形磁化率の係数で
表現することができると仮定する。ここで関連する電界は4つ(入力が2つと出
力が2つ)だから、場所rで時間tに発生する、関連する誘起双極子モーメント
P(r,t)は次式(55)で与えられる。
予想した位相シフトが一致しないという簡単な証明ができる。これを説明するた
めに、通常良くあるように、媒体の非線形応答が、一連の非線形磁化率の係数で
表現することができると仮定する。ここで関連する電界は4つ(入力が2つと出
力が2つ)だから、場所rで時間tに発生する、関連する誘起双極子モーメント
P(r,t)は次式(55)で与えられる。
【0281】 P(r,t)=χ(3) ・E(r,t)3 (55) ただし、E(r,t)は古典的な場を表し、χ(3) は3次の磁化率係数である。
この場合、順方向に発生した電界の変化δE(r’,t’)は媒体の体積につい
て積分をすることで得られ、次式(56)のようになる。
この場合、順方向に発生した電界の変化δE(r’,t’)は媒体の体積につい
て積分をすることで得られ、次式(56)のようになる。
【0282】
【数99】
【0283】 ただし、G(r’,t’;r,t)は適当なグリーン(Green) 関数である。式(
55)中のE(r,t)は、弱い電界の範囲内で、入射電界E0(r,t)で置き
換えることができる。置き換えた結果を次式(57)に示す。
55)中のE(r,t)は、弱い電界の範囲内で、入射電界E0(r,t)で置き
換えることができる。置き換えた結果を次式(57)に示す。
【0284】
【数100】
【0285】 体積の成分は全て順方向に同じ位相で影響を与え、このとき、式(57)の積分
値は媒体の体積に比例する。発生した位相シフトがδEに比例するので、N2 で
はなく、Nに比例する非線形位相シフトが得られ、これは、発生した誘起双極子
モーメントの局在的な性質のために、非線形磁化率については上述の効果を記述
することができなくなることを示している。
値は媒体の体積に比例する。発生した位相シフトがδEに比例するので、N2 で
はなく、Nに比例する非線形位相シフトが得られ、これは、発生した誘起双極子
モーメントの局在的な性質のために、非線形磁化率については上述の効果を記述
することができなくなることを示している。
【0286】 上記の式(57)は、非線形位相シフトが、媒体の局在的な偏光に起因するこ
とはありえないことを示している。このことは、正確な解釈をするには、媒体の
中の離れた2つの場所での偏光どうしの間で非局在的相関関係がなければならな
いことを暗示している。このことは、各々が双極子モーメントを持った2個の励
起原子が存在する確率が増加することと一致する。単一光子に対応する古典的な
位相は全くランダムであり、したがって、発生したこれらの誘起双極子モーメン
トは平均値がゼロであり、因子2は両者間の非局在的な相関関係を示す。
とはありえないことを示している。このことは、正確な解釈をするには、媒体の
中の離れた2つの場所での偏光どうしの間で非局在的相関関係がなければならな
いことを暗示している。このことは、各々が双極子モーメントを持った2個の励
起原子が存在する確率が増加することと一致する。単一光子に対応する古典的な
位相は全くランダムであり、したがって、発生したこれらの誘起双極子モーメン
トは平均値がゼロであり、因子2は両者間の非局在的な相関関係を示す。
【0287】 これらの非線形位相シフトは量子力学的な確率振幅の干渉に起因する。このこ
とは、どの光子がどの原子と相互反応を起こしているのか我々には分からないこ
とを示している。このような量子干渉に対する依存性が、量子力学の相補性の面
白い例である。原則的に、測定は、どの光子がどの原子と相互作用を起こすのか
決定するために行うのであって、こういった測定からは、光子が2つとも同じ原
子と相互作用を起こした確率が無視できる程度ではあるが常に存在することが分
かる。一方で、こういった測定では、非線形位相シフト発生の原因となる量子干
渉を必ず破壊する。このような場合に、同じ原子とは決して相互作用を起こさな
かった光子が原因で位相シフトが 発生すると本当に言えるのであろうか。我々
に言えるのは、図15(b)に示すように、2つの光子の間には古典的な相互作
用は存在せず、また、通常の交換相互作用の場合のように、その効果は量子力学
のハミルトニアンにおける相互用の一連の項に起因するものではないということ
である。
とは、どの光子がどの原子と相互反応を起こしているのか我々には分からないこ
とを示している。このような量子干渉に対する依存性が、量子力学の相補性の面
白い例である。原則的に、測定は、どの光子がどの原子と相互作用を起こすのか
決定するために行うのであって、こういった測定からは、光子が2つとも同じ原
子と相互作用を起こした確率が無視できる程度ではあるが常に存在することが分
かる。一方で、こういった測定では、非線形位相シフト発生の原因となる量子干
渉を必ず破壊する。このような場合に、同じ原子とは決して相互作用を起こさな
かった光子が原因で位相シフトが 発生すると本当に言えるのであろうか。我々
に言えるのは、図15(b)に示すように、2つの光子の間には古典的な相互作
用は存在せず、また、通常の交換相互作用の場合のように、その効果は量子力学
のハミルトニアンにおける相互用の一連の項に起因するものではないということ
である。
【0288】 量子理論のランダムな性質は、個々の事象について特定の原因がなければなら
ない(決定論)という古典的な仮定とは明らかに相容れない。このことは、離れ
た所にある粒子の対を測定して得られるランダムな結果の間に成り立つ非局在的
な相互関係については、特にはっきりと言え、情報が光の速度より速くは伝わら
ないという決定論的な解釈と矛盾する。我々の結果によると、量子力学と古典的
決定論とが不一致するはランダムな事象に限らないことを示している。情報が流
れる経路やプロセスの結果を生む原因を特定したりすることが古典的な視点から
は不可能であるにもかかわらず、この種の量子制御プロセスでは結果を確定する
ことができる。
ない(決定論)という古典的な仮定とは明らかに相容れない。このことは、離れ
た所にある粒子の対を測定して得られるランダムな結果の間に成り立つ非局在的
な相互関係については、特にはっきりと言え、情報が光の速度より速くは伝わら
ないという決定論的な解釈と矛盾する。我々の結果によると、量子力学と古典的
決定論とが不一致するはランダムな事象に限らないことを示している。情報が流
れる経路やプロセスの結果を生む原因を特定したりすることが古典的な視点から
は不可能であるにもかかわらず、この種の量子制御プロセスでは結果を確定する
ことができる。
【0289】 最後に、方程式(46)から、上記の結果が、系の非局在的な性質である2光
子状態の全体の位相に本質的に依存していることが分かる。したがって、この結
果と2光子干渉計との間には類似するところがあり、このことはベル(Bell)の不
等式を破っている。この系はベルの不等式を破っていないし、重なるビームの中
で2つの光子の位置が確定しないにもかかわらず、上記の結果は本質的に局在的
ではなく、また、古典的でもないのは明らかである。
子状態の全体の位相に本質的に依存していることが分かる。したがって、この結
果と2光子干渉計との間には類似するところがあり、このことはベル(Bell)の不
等式を破っている。この系はベルの不等式を破っていないし、重なるビームの中
で2つの光子の位置が確定しないにもかかわらず、上記の結果は本質的に局在的
ではなく、また、古典的でもないのは明らかである。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】 制御NOTゲートは、図4に示すように、干渉計の構成(フレッドキン(Fredk
in) 状態)を用いて実現することができる。入力ビットAを2つの経路の何れか
に存在する1つの光子で表現し、図に示す光子の位置によって0か1かの値を割
り当てる。ここでは、これらの経路を2本の光ファイバーであると考えよう。同
様に、入力Bを別の2つの経路の内いずれかに存在する光子で表現する。干渉計
のアームがある媒体を通っている状態で、光子Bは干渉計に入る。これによって
、同様に媒体を通過する、0のビットを表す経路に光子1が位置するときに限っ
て位相シフトが発生する。位相シフトの大きさは、媒体の中の原子密度を変化さ
せれば調整でき、必要に応じていずれかの経路に一定の位相シフトを加えること
ができる。分子Bは、分子Aが作り出した位相シフトに応じて、入ったのと同じ
経路、あるいは別の経路から現れる。最終的には、ビットAが1のときに限って
、ビットBの値が変わる。
in) 状態)を用いて実現することができる。入力ビットAを2つの経路の何れか
に存在する1つの光子で表現し、図に示す光子の位置によって0か1かの値を割
り当てる。ここでは、これらの経路を2本の光ファイバーであると考えよう。同
様に、入力Bを別の2つの経路の内いずれかに存在する光子で表現する。干渉計
のアームがある媒体を通っている状態で、光子Bは干渉計に入る。これによって
、同様に媒体を通過する、0のビットを表す経路に光子1が位置するときに限っ
て位相シフトが発生する。位相シフトの大きさは、媒体の中の原子密度を変化さ
せれば調整でき、必要に応じていずれかの経路に一定の位相シフトを加えること
ができる。分子Bは、分子Aが作り出した位相シフトに応じて、入ったのと同じ
経路、あるいは別の経路から現れる。最終的には、ビットAが1のときに限って
、ビットBの値が変わる。
【0293】 図4に示した干渉計を使って、光子が所望の経路からゲートを出るようにでき
るが、色々ある出力状態の相対的な位相は、従来定義していたものとは違い、制
御NOTゲートの位相に対応していない。所望の位相は、図16に示す回路を持
ちいて導入することができる。ここでは、ある経路に置いた四角形で、ガラス片
で実現できるような種類の従来の単一光子位相シフトを表している。また、2つ
の経路につながった四角形は、光子がその経路どちらにも存在するときにのみ起
こる非線形位相シフトを表している。ここでもまた、媒体中の原子密度、あるい
は外部磁場などのパラメータを変えることによって、非線形位相シフトを所望の
大きさにすることができる。レーザーパルスを使用する以外に交換相互作用を増
加させる別の方法として、アルゴンなどの緩衝気体を加えて衝突率を大きくする
ことが挙げられる。
るが、色々ある出力状態の相対的な位相は、従来定義していたものとは違い、制
御NOTゲートの位相に対応していない。所望の位相は、図16に示す回路を持
ちいて導入することができる。ここでは、ある経路に置いた四角形で、ガラス片
で実現できるような種類の従来の単一光子位相シフトを表している。また、2つ
の経路につながった四角形は、光子がその経路どちらにも存在するときにのみ起
こる非線形位相シフトを表している。ここでもまた、媒体中の原子密度、あるい
は外部磁場などのパラメータを変えることによって、非線形位相シフトを所望の
大きさにすることができる。レーザーパルスを使用する以外に交換相互作用を増
加させる別の方法として、アルゴンなどの緩衝気体を加えて衝突率を大きくする
ことが挙げられる。
【0294】 ちょっとした単一ビットの操作(位相シフト)を制御NOTゲートと組み合わ
せることで、一般の量子コンピュータが十分に構築できることはよく知られてい
る。特に、図16を改良すれば、応用の仕方によっては便利な制御NOT平方根
ゲートを実現することができる。
せることで、一般の量子コンピュータが十分に構築できることはよく知られてい
る。特に、図16を改良すれば、応用の仕方によっては便利な制御NOT平方根
ゲートを実現することができる。
【0295】 非線形位相シフトを物理的に実現できるかどうかは、光子の経路の性質に依存
する。経路については、ビームの自由空間内での伝播、光ファイバー内での伝播
、それに基板表面に設けられた導波路内での伝播などの基本的な選択肢がある。
いずれの場合でも、基本的な実施方法は同じである。
する。経路については、ビームの自由空間内での伝播、光ファイバー内での伝播
、それに基板表面に設けられた導波路内での伝播などの基本的な選択肢がある。
いずれの場合でも、基本的な実施方法は同じである。
【0296】 光ファイバーでできた経路の場合、図17に示すように非線形位相シフトが実
現できる。原子蒸気セルが結晶性物質と入れ替わるが、こうすれば、原子密度が
高いという点が有利である。光子2つの電界は、ファイバーの研磨やエッチング
によって生じる瞬間的な場によって媒体と相互作用を起こし、さらに電界同士が
互いに相互作用を起こす(こういった瞬間的な場が、方向性結合器を光ファイバ
ーの中で形成するのに使われている)。ファイバー格子を使って、2つの異なる
周波数を持った出力光子を、必要な経路AとBの組み合わせに制限する(この種
のファイバー格子は、光ファイバーの中にフォトリソグラフィー技術を使ってよ
く形成されている)。そこで、図17は図4と図16に示す回路図中の非線形位
相シフトボックスを入れ替えたものと見なすことができる。一方で、干渉計は従
来のファイバー光学干渉計からなっている。図17はまた、一本のファイバーと
一個の結晶を使って、光子両方を同じファイバーに通すことによっても実現可能
である。
現できる。原子蒸気セルが結晶性物質と入れ替わるが、こうすれば、原子密度が
高いという点が有利である。光子2つの電界は、ファイバーの研磨やエッチング
によって生じる瞬間的な場によって媒体と相互作用を起こし、さらに電界同士が
互いに相互作用を起こす(こういった瞬間的な場が、方向性結合器を光ファイバ
ーの中で形成するのに使われている)。ファイバー格子を使って、2つの異なる
周波数を持った出力光子を、必要な経路AとBの組み合わせに制限する(この種
のファイバー格子は、光ファイバーの中にフォトリソグラフィー技術を使ってよ
く形成されている)。そこで、図17は図4と図16に示す回路図中の非線形位
相シフトボックスを入れ替えたものと見なすことができる。一方で、干渉計は従
来のファイバー光学干渉計からなっている。図17はまた、一本のファイバーと
一個の結晶を使って、光子両方を同じファイバーに通すことによっても実現可能
である。
【0297】 自由空間中で光子ビームを物理的に実現すれば、ビームスプリッタをエタロン
で置き換えられる。このエタロンは、周波数がω1 の光子は通過し、周波数がω 2 の光子は反射するように調整されている。こうすることで、通常の(周波数依
存型)ビームスプリッタとは違い、50%の損失を出さずに、光子を2つとも原
子蒸気セルを通る共通の経路1本にまとめることができる。続いて、2つの光子
は、第2のエタロンの通過、あるいはそこからの反射を利用して、2つの異なる
経路に振り分けられる。
で置き換えられる。このエタロンは、周波数がω1 の光子は通過し、周波数がω 2 の光子は反射するように調整されている。こうすることで、通常の(周波数依
存型)ビームスプリッタとは違い、50%の損失を出さずに、光子を2つとも原
子蒸気セルを通る共通の経路1本にまとめることができる。続いて、2つの光子
は、第2のエタロンの通過、あるいはそこからの反射を利用して、2つの異なる
経路に振り分けられる。
【0298】 図17に示すように実現した位相シフトを図16の回路図に組み込んで、制御
NOT論理ゲートを具体的に記述することができる。
NOT論理ゲートを具体的に記述することができる。
【0299】 上記非線形位相シフトの機構では、2つの光子の周波数が異なることが要求さ
れる。量子コンピュータの構築には、周波数が同じ光子が表す2つのビットにつ
いて論理演算を実行することが必要である。図18に示す回路は、周波数がとも
にω1 である2つの光子について、周波数ω2 で作業用ビット(scratch bit) を
利用して制御NOT演算を実行する。この作業用ビットは、初期状態では0に対
応する状態にあって、「屑」ビットが貯まらないように演算の最後には0に戻る
。実際には、キュービットのいくつかが周波数ω1 を持ち、他のキュービットが
周波数ω2 を持つように選べば効率が良くなって、この種の回路を設ける必要性
が最小限に抑えられる。
れる。量子コンピュータの構築には、周波数が同じ光子が表す2つのビットにつ
いて論理演算を実行することが必要である。図18に示す回路は、周波数がとも
にω1 である2つの光子について、周波数ω2 で作業用ビット(scratch bit) を
利用して制御NOT演算を実行する。この作業用ビットは、初期状態では0に対
応する状態にあって、「屑」ビットが貯まらないように演算の最後には0に戻る
。実際には、キュービットのいくつかが周波数ω1 を持ち、他のキュービットが
周波数ω2 を持つように選べば効率が良くなって、この種の回路を設ける必要性
が最小限に抑えられる。
【0300】 図17に示す制御NOTゲートと非線形位相シフトを使って、制御−制御NO
Tゲート(Controlled-Controlled-NOT gate)を実現することができる。この制御
−制御NOTゲートは、さらに、図19に示す2ビット加算回路に使用すること
ができる。
Tゲート(Controlled-Controlled-NOT gate)を実現することができる。この制御
−制御NOTゲートは、さらに、図19に示す2ビット加算回路に使用すること
ができる。
【0301】 量子演算を光学的手法で実現するに当たって存在する大きな障害の一つは、個
々のキュービットを表現するために、光子をちょうど1個だけ含んだ初期状態を
作り出すことである。この問題を解決する最も実際的な方法は、以下に記す単一
光子状態を得るのに使われる選択後プロセスに類似した方法であろう。
々のキュービットを表現するために、光子をちょうど1個だけ含んだ初期状態を
作り出すことである。この問題を解決する最も実際的な方法は、以下に記す単一
光子状態を得るのに使われる選択後プロセスに類似した方法であろう。
【0302】 制御NOT回路を使って、ビットAの”0”入力の経路(図4中では実線)に
光子があるのかないのかを、その経路内の光子の数を変えないで決めることがで
きる。こうすることで量子的非破壊測定が実現できる。これは、入力Bの経路の
いずれかに光子を一連にして注入し、逆の経路から出てくる光子があるかどうか
チェックすることで実施できる。互いに異なる非線形位相シフトの組み合わせを
使ってこの測定を繰り返し行うと、指数関数的に小さな誤差で、光子Aがちょう
ど1個だけ存在するようにすることができる。
光子があるのかないのかを、その経路内の光子の数を変えないで決めることがで
きる。こうすることで量子的非破壊測定が実現できる。これは、入力Bの経路の
いずれかに光子を一連にして注入し、逆の経路から出てくる光子があるかどうか
チェックすることで実施できる。互いに異なる非線形位相シフトの組み合わせを
使ってこの測定を繰り返し行うと、指数関数的に小さな誤差で、光子Aがちょう
ど1個だけ存在するようにすることができる。
【0303】 提案されている光源は、多数の光ファイバーのそれぞれにおいて干渉性が弱い
状態のパルスを使うことで初期化し、この時、1本のファイバー中の平均光子数
が1個になる。この状態は、レーザーパルス1個と方向性結合器1組とで簡単に
作り出せる。こうすることで、各々のファイバー中の光子の数は光子の数を変え
ずに計測可能である。各々が光子をちょうど1個含んだこれらのファイバーは、
次に、従来からあるファイバーを使った光学的スイッチを使って、量子コンピュ
ータの入力ポートに切り替えられる。この切り替えは、例えば、同時にN個の光
子を生成する確率を指数関数的に減少させる、自発的パラメトリックダウンコン
バージョン(spontaneous parametric down-conversion)を使用した場合よりずっ
と効率がいいはずである。
状態のパルスを使うことで初期化し、この時、1本のファイバー中の平均光子数
が1個になる。この状態は、レーザーパルス1個と方向性結合器1組とで簡単に
作り出せる。こうすることで、各々のファイバー中の光子の数は光子の数を変え
ずに計測可能である。各々が光子をちょうど1個含んだこれらのファイバーは、
次に、従来からあるファイバーを使った光学的スイッチを使って、量子コンピュ
ータの入力ポートに切り替えられる。この切り替えは、例えば、同時にN個の光
子を生成する確率を指数関数的に減少させる、自発的パラメトリックダウンコン
バージョン(spontaneous parametric down-conversion)を使用した場合よりずっ
と効率がいいはずである。
【0304】 光ファイバーを使って図17に示すような量子論理ゲートを構築することがで
きると、多数の論理ゲートを適度な価格で構築することが可能になる。この場合
、全てのレジスタについて行う加算や乗算などの比較的複雑な演算が、記憶装置
を過程途中で用いないで実行できる。例えば、図19に示す2ビット加算器は、
じっさいに、そこに示す通りに実現できる。この計算は光ファイバーからなる平
行ネットワークを通って進められ、ほぼ光速で実行できる。計算の途中のある過
程で処理されなかったキュービットは、それがどの処理過程であっても、次回必
要とされるまで光ファイバーを通って単に流れるだけである。
きると、多数の論理ゲートを適度な価格で構築することが可能になる。この場合
、全てのレジスタについて行う加算や乗算などの比較的複雑な演算が、記憶装置
を過程途中で用いないで実行できる。例えば、図19に示す2ビット加算器は、
じっさいに、そこに示す通りに実現できる。この計算は光ファイバーからなる平
行ネットワークを通って進められ、ほぼ光速で実行できる。計算の途中のある過
程で処理されなかったキュービットは、それがどの処理過程であっても、次回必
要とされるまで光ファイバーを通って単に流れるだけである。
【0305】 この並行処理能力には、潜在的な利点がいくつかある。並行処理することで、
必要な全体の計算時間が大幅に減縮ことが目立った利点であるが、この利点は、
デコヒーレンスが深刻な問題になる前に計算をする必要があるということを考え
れば、量子演算にとって特に有用である。
必要な全体の計算時間が大幅に減縮ことが目立った利点であるが、この利点は、
デコヒーレンスが深刻な問題になる前に計算をする必要があるということを考え
れば、量子演算にとって特に有用である。
【0306】 さらに、スイッチや別個の記憶装置を設ける必要がなく、設計が単純であるこ
とが利点として挙げられる。図17に示すように、ファイバーを近接させて瞬間
的に生じる場を通じてファイバー間で相互作用を起こさせることで論理ゲートが
構成できるので、異なるファイバー間の接続が最小限に抑えられるか、あるいは
全く接続しなくてもよくなる。接続部に関連して発生する損失が技術的なデコヒ
ーレンスの大きな原因であると考えられるので、設計が単純であるという点もも
重要な利点である。
とが利点として挙げられる。図17に示すように、ファイバーを近接させて瞬間
的に生じる場を通じてファイバー間で相互作用を起こさせることで論理ゲートが
構成できるので、異なるファイバー間の接続が最小限に抑えられるか、あるいは
全く接続しなくてもよくなる。接続部に関連して発生する損失が技術的なデコヒ
ーレンスの大きな原因であると考えられるので、設計が単純であるという点もも
重要な利点である。
【0307】 量子コンピュータを初めとする、量子情報技術の応用機器を作動させるには、
適当な量子記憶装置が必要である。量子記憶装置は量子ビット(キュービット)
の値を記憶できなければならない一方で、比較的長い時間にわたって、デコヒー
レンスの影響を避けなければならない。量子論理演算を実行するのに用いた、図
12に示した一連のレーザーパルスは、調整すればキュービットの情報を記憶す
るのに使用できる。この場合、パルス1はいずれかの光子を吸収してその情報(
光子の存在、欠乏、それに光子の偏光)を、各種の結晶を初めとする適当な固体
物質において、励起原子状態の重ね合わせの中に記憶するのに使用できる。情報
は、別のパルスが印加されるまで結晶の中に記憶されている。この別のパルスが
図12では5つ目のパルスに当たり、結晶に、元の方向と同じ方向に、かつ、元
の周波数と同じ周波数で光子を放出させる効果がある。このように、この種の量
子記憶装置では、わずか2つのパルスを使うだけであって、1つは情報を記憶し
、もう1つは必要に応じて元のキュービットを再生するのに使用する。このよう
にして、およそ100万回の論理演算が十分に実行可能な長さの、干渉性のある
記憶時間が達成できる。これだけの時間の長さがあれば、量子誤り訂正法を使っ
て、干渉性記憶時間を無制限に延長するには十分である。
適当な量子記憶装置が必要である。量子記憶装置は量子ビット(キュービット)
の値を記憶できなければならない一方で、比較的長い時間にわたって、デコヒー
レンスの影響を避けなければならない。量子論理演算を実行するのに用いた、図
12に示した一連のレーザーパルスは、調整すればキュービットの情報を記憶す
るのに使用できる。この場合、パルス1はいずれかの光子を吸収してその情報(
光子の存在、欠乏、それに光子の偏光)を、各種の結晶を初めとする適当な固体
物質において、励起原子状態の重ね合わせの中に記憶するのに使用できる。情報
は、別のパルスが印加されるまで結晶の中に記憶されている。この別のパルスが
図12では5つ目のパルスに当たり、結晶に、元の方向と同じ方向に、かつ、元
の周波数と同じ周波数で光子を放出させる効果がある。このように、この種の量
子記憶装置では、わずか2つのパルスを使うだけであって、1つは情報を記憶し
、もう1つは必要に応じて元のキュービットを再生するのに使用する。このよう
にして、およそ100万回の論理演算が十分に実行可能な長さの、干渉性のある
記憶時間が達成できる。これだけの時間の長さがあれば、量子誤り訂正法を使っ
て、干渉性記憶時間を無制限に延長するには十分である。
【0308】 量子コンピュータを使うだけの価値のある計算は1012以上の演算をする計算
であろう。これほど多数の演算を記憶装置を用いないで行うのは、並行処理を大
いに活用することを考慮したとしても実現可能なようには思えない。しかし、こ
の種の並行処理は、コンピュータ内部で行う比較的複雑な数学演算の実行全てに
応用できる。
であろう。これほど多数の演算を記憶装置を用いないで行うのは、並行処理を大
いに活用することを考慮したとしても実現可能なようには思えない。しかし、こ
の種の並行処理は、コンピュータ内部で行う比較的複雑な数学演算の実行全てに
応用できる。
【0309】 図17に示した非線形位相シフト装置の長さが例えば1cmであれば、光子は
光の速度で通過するから、論理演算を実行するのに必要なΔtopは33ピコ秒の
オーダーになる。商業用ファイバーの最小の減衰率は0.16dB/kmで、こ
れは、吸収される確率が50%になるまでに光子がおよそ20km移動できるこ
とを意味している。光ファイバーの量子暗号試験、および2光子干渉計実験によ
って、キュービットの量子力学的干渉性はこの距離を通過する間、つまり、約1
30マイクロ秒の伝播時間に相当する時間、保持することができることが示され
ている。これらの数値によれば、光子1個は、およそ4×106 の論理演算がで
きる長さの光ファイバーループに記憶することができる。
光の速度で通過するから、論理演算を実行するのに必要なΔtopは33ピコ秒の
オーダーになる。商業用ファイバーの最小の減衰率は0.16dB/kmで、こ
れは、吸収される確率が50%になるまでに光子がおよそ20km移動できるこ
とを意味している。光ファイバーの量子暗号試験、および2光子干渉計実験によ
って、キュービットの量子力学的干渉性はこの距離を通過する間、つまり、約1
30マイクロ秒の伝播時間に相当する時間、保持することができることが示され
ている。これらの数値によれば、光子1個は、およそ4×106 の論理演算がで
きる長さの光ファイバーループに記憶することができる。
【0310】 1012回の論理演算が必要であれば、光ファイバーループ内での光子の記憶時
間は明らかに不十分である。一方で、固有の記憶時間がΔtopよりもずっと長い
ということは、各種の誤り訂正技術を応用すれば、有効記憶時間Δtopをずっと
大きな値にまで増やすことが可能である。このことは図20に示した、提案され
ている記憶装置を使って説明できる。この記憶装置は光ファイバーを2本含み、
一方が論理値0を表し、もう一方が論理値1を表す。従来からのファイバーを使
った光学スイッチを使って、光子を蓄積ループの中に置いて、所望するときにそ
れを取り出すことが可能である(市販されているこの種のスイッチには、ファイ
バーでできた、電気光学的に位相シフトを制御した光学干渉計が含まれている)
。
間は明らかに不十分である。一方で、固有の記憶時間がΔtopよりもずっと長い
ということは、各種の誤り訂正技術を応用すれば、有効記憶時間Δtopをずっと
大きな値にまで増やすことが可能である。このことは図20に示した、提案され
ている記憶装置を使って説明できる。この記憶装置は光ファイバーを2本含み、
一方が論理値0を表し、もう一方が論理値1を表す。従来からのファイバーを使
った光学スイッチを使って、光子を蓄積ループの中に置いて、所望するときにそ
れを取り出すことが可能である(市販されているこの種のスイッチには、ファイ
バーでできた、電気光学的に位相シフトを制御した光学干渉計が含まれている)
。
【0311】 次に、冗長ビットを用いた誤り訂正技術を使って、干渉性を崩すようなあらゆ
る現象に対してこの情報を「保護」する。十分に短い時間間隔でビットをモニタ
すると仮定すれば、有効記憶時間の大幅な増加が可能である。先に述べた量子非
破壊測定がここで上手く利用できる。これは、この方法を用いれば、キュービッ
トの値を乱さずに、最も頻繁に発生する誤りの原因(吸収)がチェックできるか
らである。つまり、光子がどちらのループにあるかを決めずに、ループ2本中に
存在する光子の総数を計測することができる。こうすることで頻繁にチェックし
て、誤りが2つ以上は起きないようにすることが確実にでき、誤りが起きたとき
には誤り訂正技術を用いて正しいキュービットを回復することができる。このこ
とは、こういった機器の有効記憶時間が基礎的な量子ゲートの性能によってのみ
制限されることを暗に示している。
る現象に対してこの情報を「保護」する。十分に短い時間間隔でビットをモニタ
すると仮定すれば、有効記憶時間の大幅な増加が可能である。先に述べた量子非
破壊測定がここで上手く利用できる。これは、この方法を用いれば、キュービッ
トの値を乱さずに、最も頻繁に発生する誤りの原因(吸収)がチェックできるか
らである。つまり、光子がどちらのループにあるかを決めずに、ループ2本中に
存在する光子の総数を計測することができる。こうすることで頻繁にチェックし
て、誤りが2つ以上は起きないようにすることが確実にでき、誤りが起きたとき
には誤り訂正技術を用いて正しいキュービットを回復することができる。このこ
とは、こういった機器の有効記憶時間が基礎的な量子ゲートの性能によってのみ
制限されることを暗に示している。
【0312】 この種の機器で発生する誤りの大半は、ファイバーでできた光学ループよりも
、むしろスイッチに原因するものであろう。この問題は、ファイバーループの長
さが異なる記憶レジスタを備えることで最小限に抑えられる。キュービットを取
り出す必要のあるときは予め分かっているから、キュービットを正しい長さのル
ープを持った記憶装置に蓄積しておいて、わずか数回スイッチを通過すればいい
ようにすることができる。
、むしろスイッチに原因するものであろう。この問題は、ファイバーループの長
さが異なる記憶レジスタを備えることで最小限に抑えられる。キュービットを取
り出す必要のあるときは予め分かっているから、キュービットを正しい長さのル
ープを持った記憶装置に蓄積しておいて、わずか数回スイッチを通過すればいい
ようにすることができる。
【0313】 この種の記憶装置、あるいは一般の光学的手法に係わるもう一つの問題は、分
散によって、光子波束の形状が最終的に変わってしまい、論理ゲートに到達する
時間にいくぶん相違が生じることである。分散による影響は、図20のループ双
方に含まれている同期装置を用いることで、最小限に抑えられる。同期装置は(
古典的な)非線形装置であって、コンピュータのクロック周期中で厳密に定義さ
れた時間にスイッチが入れられる。該同期装置は、トリガーによって屈折率がタ
ーン・オンする電気光学的物質からなり、その屈折率は空間的に変化する。この
屈折率は装置の左側で大きく、通常の位置よりも前に存在する光子が速度を落と
すようになっている。屈折率は装置の右側で小さく、通常の位置よりも後ろに存
在する光子が速度を上げるようになっている。
散によって、光子波束の形状が最終的に変わってしまい、論理ゲートに到達する
時間にいくぶん相違が生じることである。分散による影響は、図20のループ双
方に含まれている同期装置を用いることで、最小限に抑えられる。同期装置は(
古典的な)非線形装置であって、コンピュータのクロック周期中で厳密に定義さ
れた時間にスイッチが入れられる。該同期装置は、トリガーによって屈折率がタ
ーン・オンする電気光学的物質からなり、その屈折率は空間的に変化する。この
屈折率は装置の左側で大きく、通常の位置よりも前に存在する光子が速度を落と
すようになっている。屈折率は装置の右側で小さく、通常の位置よりも後ろに存
在する光子が速度を上げるようになっている。
【0314】 こういった装置が作動すると、分散効果を制限し、平衡条件を満たすようにな
り、それ以上は波束が生じない。この状況は、固体系の中で分散を制限する、ア
ンダーソン(Anderson)の局在化にいくぶん似ている。分散を制御するほかの方法
としては、量子論理ゲート自身の非線形性を利用して、既に起こった分散を「逆
行させる」ものがある。これは、非線形光学系やパルス型レーザーで良く使われ
るパルス狭小化技術に類似している。これらの方法を組み合わせることがおそら
く必要であると思われる。
り、それ以上は波束が生じない。この状況は、固体系の中で分散を制限する、ア
ンダーソン(Anderson)の局在化にいくぶん似ている。分散を制御するほかの方法
としては、量子論理ゲート自身の非線形性を利用して、既に起こった分散を「逆
行させる」ものがある。これは、非線形光学系やパルス型レーザーで良く使われ
るパルス狭小化技術に類似している。これらの方法を組み合わせることがおそら
く必要であると思われる。
【0315】 計算の最後で、少なくとも1つ以上のキュービットレジスタの内容を測定する
必要がある。このためには非常に効率の高い光子検出器が必要である。
必要がある。このためには非常に効率の高い光子検出器が必要である。
【0316】 現在使用している単一光子検出器を測定すると効率は74%である。このよう
に非効率なのは、検出器の表面で光子が反射されることが主な原因である。反射
した光子を、まず第2の検出器、次に第3の検出器に集中して照射すると、99
%のオーダーの効率が達成できる。この技術はさらに洗練することが必要である
とはいえ、上記の事実は、従来の手法を使っても、単一光子の検出効率が常に9
9%に届く可能性のあることを暗示している。
に非効率なのは、検出器の表面で光子が反射されることが主な原因である。反射
した光子を、まず第2の検出器、次に第3の検出器に集中して照射すると、99
%のオーダーの効率が達成できる。この技術はさらに洗練することが必要である
とはいえ、上記の事実は、従来の手法を使っても、単一光子の検出効率が常に9
9%に届く可能性のあることを暗示している。
【0317】 図4に示す制御NOT回路を使えば量子を破壊せずに光子の個数を測定するこ
とができるということを再度利用して、さらに高い検出効率も達成可能である。
この過程は何度も繰り返すことができるから、光子を検出できない確率は指数的
に小さくなる。このように、最終的な単一光子の検出効率は、上述した基本的な
量子論理ゲートの性能に左右される。
とができるということを再度利用して、さらに高い検出効率も達成可能である。
この過程は何度も繰り返すことができるから、光子を検出できない確率は指数的
に小さくなる。このように、最終的な単一光子の検出効率は、上述した基本的な
量子論理ゲートの性能に左右される。
【0318】 基礎となる理論的計算に基づいて、固有の、あるいは物理的なデコヒーレンス
の発生源がいくつか確認できた。以下に列挙する。
の発生源がいくつか確認できた。以下に列挙する。
【0319】 線形吸収 非線形吸収 反跳運動量 衝突 原子密度振動 線形吸収は、他に光子がない状態で、媒体を通過する光子ビームの通常の減衰
に対応している。原子が吸収するエネルギーは通常別の光子となって再放出され
るので、この「吸収」は大半が光子の散乱に対応する。よく知られていることで
あるが、この種の散乱は、光子を原子の共鳴周波数から離調させることで、無視
できる程度にまで減少させることが可能である。光子を原子の共鳴周波数から離
調させると、屈折率の実数部が虚数部よりもはるかに大きくなるが、これがガラ
スが透明である理由であり、本発明の論理ゲートに対しても同じことが成立する
はずである。
に対応している。原子が吸収するエネルギーは通常別の光子となって再放出され
るので、この「吸収」は大半が光子の散乱に対応する。よく知られていることで
あるが、この種の散乱は、光子を原子の共鳴周波数から離調させることで、無視
できる程度にまで減少させることが可能である。光子を原子の共鳴周波数から離
調させると、屈折率の実数部が虚数部よりもはるかに大きくなるが、これがガラ
スが透明である理由であり、本発明の論理ゲートに対しても同じことが成立する
はずである。
【0320】 非線形吸収は、上述のように、媒体中に同時に2つ以上の光子が存在するとき
に起きる、上記とは異なった散乱である。この形で起きる散乱も、離調が大きな
場合には無視できる程度になり、その様子はリチウムヨウ素酸塩などの、よく使
われる非線形結晶が透明であることに類似している。
に起きる、上記とは異なった散乱である。この形で起きる散乱も、離調が大きな
場合には無視できる程度になり、その様子はリチウムヨウ素酸塩などの、よく使
われる非線形結晶が透明であることに類似している。
【0321】 デコヒーレンスにおける反跳運動量の影響は、媒体中の原子数が大きいと無視
できるほどになる。干渉性のない事象が発生する割合は媒体中に含まれる原子の
個数に比例し、一方で、注目している干渉性のある位相シフトは媒体中に含まれ
る原子の個数の2乗に比例するからである。ここでは採用しないが、同じことが
、緩衝気体との衝突を利用した方法によってデコヒーレンスが生じる際にも成立
すると考えられる。
できるほどになる。干渉性のない事象が発生する割合は媒体中に含まれる原子の
個数に比例し、一方で、注目している干渉性のある位相シフトは媒体中に含まれ
る原子の個数の2乗に比例するからである。ここでは採用しないが、同じことが
、緩衝気体との衝突を利用した方法によってデコヒーレンスが生じる際にも成立
すると考えられる。
【0322】 原子密度振動は、媒体によって生じる非線形位相シフトを変化させる。この振
動も、媒体中の原子数が増えるにつれて無視できるほどに小さくなる。
動も、媒体中の原子数が増えるにつれて無視できるほどに小さくなる。
【0323】 上記の理由から、原子の個数が十分に大きな場合で、また、十分に大きな離調
の技術的デコヒーレンスと比べれば、固有のデコヒーレンス発生源は分かってい
る限りでは全て無視できる程度にまで小さくなる。技術的デコヒーレンスが論理
演算1回について10-3のオーダーであると仮定すると、理論的には、離調は線
幅103 個より大きく、また、原子の個数は106 よりも多いことが必要である
。この条件はどちらも実現可能である。
の技術的デコヒーレンスと比べれば、固有のデコヒーレンス発生源は分かってい
る限りでは全て無視できる程度にまで小さくなる。技術的デコヒーレンスが論理
演算1回について10-3のオーダーであると仮定すると、理論的には、離調は線
幅103 個より大きく、また、原子の個数は106 よりも多いことが必要である
。この条件はどちらも実現可能である。
【0324】 技術的デコヒーレンスの発生源がいくつか確認できた。以下に列挙する。
【0325】 光ファイバー、あるいは導波路の中での吸収と散乱 ファイバーを利用した光学スイッチで発生する損失 分散 非線形シフトの大きさの誤り ファイバーを利用した光学接続器で発生する損失 現在手に入る構造の導波路では、吸収が明らかに大きすぎて、純粋な表面構造
では本発明の技術を適用することができない。この分野の技術が将来発展すれば
、一部の機能は導波路の構造を使って実行する一方、記憶装置はファイバールー
プを使って構成するという、ハイブリッド装置ができるかもしれない。
では本発明の技術を適用することができない。この分野の技術が将来発展すれば
、一部の機能は導波路の構造を使って実行する一方、記憶装置はファイバールー
プを使って構成するという、ハイブリッド装置ができるかもしれない。
【0326】 上述のように、市場で手に入るファイバーで発生する分散が原因で起こる吸収
によって、光子のキュービットの固有記憶時間がおよそ4×106 回の論理演算
に制限される。これは、演算1回について記憶誤り割合が10-6になる割合に相
当し、誤り訂正法で補正できると考えられる。
によって、光子のキュービットの固有記憶時間がおよそ4×106 回の論理演算
に制限される。これは、演算1回について記憶誤り割合が10-6になる割合に相
当し、誤り訂正法で補正できると考えられる。
【0327】 ファイバーを利用した光学スイッチで発生する損失は、これらのファイバー光
学干渉計における位相誤りに大きな原因がある。ファイバー光学干渉計では99
%以上の鮮明度(visibility)が日常的に得られ、この種の位相誤りは、以下に説
明するフィードバック技術を使って10-3より小さな値にできると考えられる。
ここでもまた、導波路構造において発生する損失は大きすぎて、媒体は古典的な
電気工学的媒体であるが、図17に示す装置に類似の、全てファイバーでできた
装置を使うことが必要なのかもしれない。
学干渉計における位相誤りに大きな原因がある。ファイバー光学干渉計では99
%以上の鮮明度(visibility)が日常的に得られ、この種の位相誤りは、以下に説
明するフィードバック技術を使って10-3より小さな値にできると考えられる。
ここでもまた、導波路構造において発生する損失は大きすぎて、媒体は古典的な
電気工学的媒体であるが、図17に示す装置に類似の、全てファイバーでできた
装置を使うことが必要なのかもしれない。
【0328】 分散は潜在的に大きな問題であり、何らかの形で補正をすることが必要である
。上記のように、この目的を達成する機構はいくつか見つかっているが、いずれ
も詳細に至るまでは研究されていない。原理的には、分散を低いレベルにまで減
少させることが不可能であるという理由は何もないが、分散が原因となって発生
する誤りを数量的に予測するには、詳細に計算と実験を行わなければならない。
。上記のように、この目的を達成する機構はいくつか見つかっているが、いずれ
も詳細に至るまでは研究されていない。原理的には、分散を低いレベルにまで減
少させることが不可能であるという理由は何もないが、分散が原因となって発生
する誤りを数量的に予測するには、詳細に計算と実験を行わなければならない。
【0329】 任意の量子論理ゲートに適用した非線形位相シフトの大きさは、装置の幾何学
的配置、離調の大きさ、媒体中の原子密度などの要素の影響を受ける。この種の
誤りは、量子暗号システムで使っている、同様の位相誤差を検出できるフィード
バック技術を使って、非常に低いレベルにまで減らすことができる。図21に示
すように、実際の計算とは無関係なテスト光子に論理ゲートを通過させて結果を
測定する。次に、例えば、外部磁界を変化させるなどして、位相シフトに対して
適当な訂正を加える。今までの経験からは、このようなシステマチックな誤差は
、この手法を使って10-3のレベルまで減らすことができる。個々のゲートは、
この種のフィードバックを備えていることが必要だと思われる。
的配置、離調の大きさ、媒体中の原子密度などの要素の影響を受ける。この種の
誤りは、量子暗号システムで使っている、同様の位相誤差を検出できるフィード
バック技術を使って、非常に低いレベルにまで減らすことができる。図21に示
すように、実際の計算とは無関係なテスト光子に論理ゲートを通過させて結果を
測定する。次に、例えば、外部磁界を変化させるなどして、位相シフトに対して
適当な訂正を加える。今までの経験からは、このようなシステマチックな誤差は
、この手法を使って10-3のレベルまで減らすことができる。個々のゲートは、
この種のフィードバックを備えていることが必要だと思われる。
【0330】 2本の光ファイバーの接続部では、損失が生じることが避けられない。市場で
一般に入手可能なファイバー接続システムでは、現在、接続一ヶ所について0.
003の割合で損失が生じる。この損失は、上述のように、並行処理アルゴリズ
ムを使用することである程度抑えられる。接続システムが将来的に改善されれば
、損失が10-3よりさらに低いレベルにまで減ると考えるのは、決して無理な話
ではない。
一般に入手可能なファイバー接続システムでは、現在、接続一ヶ所について0.
003の割合で損失が生じる。この損失は、上述のように、並行処理アルゴリズ
ムを使用することである程度抑えられる。接続システムが将来的に改善されれば
、損失が10-3よりさらに低いレベルにまで減ると考えるのは、決して無理な話
ではない。
【0331】 ほぼ標準的といえる光学的方法だけに基づいて、分散だけを例外として除けば
、技術的なデコヒーレンスの発生源全てを1回の計算について最終的に10-3よ
り低いレベルにまで減らすことができる。この程度の精度で光学的測定が日常的
に実現できる。
、技術的なデコヒーレンスの発生源全てを1回の計算について最終的に10-3よ
り低いレベルにまで減らすことができる。この程度の精度で光学的測定が日常的
に実現できる。
【0332】 誤り訂正に必要な余剰キュービットを考慮に入れれば、例えば、大きな数の因
数分解ななどの有用な計算を行うのに必要なキュービット総数は10-6のオーダ
ーであるという予測が最近出た。量子コンピュータを実現するには他の手法も提
案されてはいるが、中には、このオーダーのキュービットにまでどうやってスケ
ールアップしていくのか想像することさえ難しい方法もある。例えば、キャビテ
ィ−QED法では、百万個のキャビティーとトラップが必要であるが、百万個の
イオンを含んだイオントラップを実現するなどとは問題外であるように思える。
実用的な量子コンピュータの実現可能性を真剣に考えるのであれば、候補となり
得る手法で、必要なビット数までスケールアップできるかどうか検討しなけらば
ならない。
数分解ななどの有用な計算を行うのに必要なキュービット総数は10-6のオーダ
ーであるという予測が最近出た。量子コンピュータを実現するには他の手法も提
案されてはいるが、中には、このオーダーのキュービットにまでどうやってスケ
ールアップしていくのか想像することさえ難しい方法もある。例えば、キャビテ
ィ−QED法では、百万個のキャビティーとトラップが必要であるが、百万個の
イオンを含んだイオントラップを実現するなどとは問題外であるように思える。
実用的な量子コンピュータの実現可能性を真剣に考えるのであれば、候補となり
得る手法で、必要なビット数までスケールアップできるかどうか検討しなけらば
ならない。
【0333】 本発明による手法の大きな利点の一つは、正しく作動する量子論理ゲートが1
個構築できれば、費用は別にすれば、必要なだけの個数を造ることが可能である
という点にある。また、本発明の手法の別の大きな利点は、非常に高いQキャビ
ティーや、原子ビーム、原子トラップなどの複雑な構造が不要なことである。し
たがって、図17に示す構造に基づいた量子論理ゲートには、ゆくゆくはかなり
低いコストで大量生産ができるようになる可能性がある。
個構築できれば、費用は別にすれば、必要なだけの個数を造ることが可能である
という点にある。また、本発明の手法の別の大きな利点は、非常に高いQキャビ
ティーや、原子ビーム、原子トラップなどの複雑な構造が不要なことである。し
たがって、図17に示す構造に基づいた量子論理ゲートには、ゆくゆくはかなり
低いコストで大量生産ができるようになる可能性がある。
【0334】 単一光子源、記憶装置、および高効率光子検出器について述べた上記の記述の
中で、こういった機能が全て基本的な論理ゲートの性能に依存していることを述
べた。これらの装置が最終的にどれほどの性能を持つようになるかは、何よりも
論理ゲートの質に制限される。
中で、こういった機能が全て基本的な論理ゲートの性能に依存していることを述
べた。これらの装置が最終的にどれほどの性能を持つようになるかは、何よりも
論理ゲートの質に制限される。
【0335】 上記の記述の中で、論理計算1回毎に発生する誤りは、物理的なデコヒーレン
スではなく、技術的デコヒーレンスによって制限されること、および、分散を除
けば、これらの誤りは10-3よりも低いレベルにまで減らせる可能性があること
を述べた。一般に、光学的な測定はこの程度の精度で頻繁に行われている。
スではなく、技術的デコヒーレンスによって制限されること、および、分散を除
けば、これらの誤りは10-3よりも低いレベルにまで減らせる可能性があること
を述べた。一般に、光学的な測定はこの程度の精度で頻繁に行われている。
【0336】 量子計算は、研究が進めば、従来のコンピュータでは実行不可能な数値計算を
可能にできるかもしれない、未来の新技術である。この優れた能力は、非古典的
な論理部材と、1つのプロセッサで多数の計算を並行処理できる量子コンピュー
タの能力とを使用した結果としてもたらされる。量子コンピュータが実現すれば
情報処理科学と情報理論を革命的に変えることになる。量子コンピュータを実現
するための本発明の光学的手法には、他の候補となる手法と比較して利点がある
。光ファイバーや導波路と接続可能な独立した論理ゲートを構築することができ
ること、大きな離調を利用してデコヒーレンスを最小限に抑えられること、それ
に、高Qキャビティや、原子ビーム、それにトラップなどが不必要なことなどが
、具体的に利点として挙げられる。
可能にできるかもしれない、未来の新技術である。この優れた能力は、非古典的
な論理部材と、1つのプロセッサで多数の計算を並行処理できる量子コンピュー
タの能力とを使用した結果としてもたらされる。量子コンピュータが実現すれば
情報処理科学と情報理論を革命的に変えることになる。量子コンピュータを実現
するための本発明の光学的手法には、他の候補となる手法と比較して利点がある
。光ファイバーや導波路と接続可能な独立した論理ゲートを構築することができ
ること、大きな離調を利用してデコヒーレンスを最小限に抑えられること、それ
に、高Qキャビティや、原子ビーム、それにトラップなどが不必要なことなどが
、具体的に利点として挙げられる。
【図1】 干渉計を通過する単一の光子を示す図である。このような光子は、常に1つの
経路にのみに存在しても、両方の経路の位相変化を同時に測定できる。
経路にのみに存在しても、両方の経路の位相変化を同時に測定できる。
【図2】 N個の入力ビットとN個の出力ビットとを有する汎用的な量子コンピュータを
示す図である。異なる入出力状態を重ね合わせることによって、コンピュータが
効果的に多くの異なる計算を同時に行えるようになる。
示す図である。異なる入出力状態を重ね合わせることによって、コンピュータが
効果的に多くの異なる計算を同時に行えるようになる。
【図3】 量子コンピュータの基本論理要素を形成できる制御NOT(XOR)ゲートを
示す図である。ビットAが1である場合そして1である場合のみ、ビットBは反
転される。
示す図である。ビットAが1である場合そして1である場合のみ、ビットBは反
転される。
【図4】 干渉計の1つのアームにおける非線形屈折率に基づいて制御NOTを光学的に
実行する様子を示す図である。
実行する様子を示す図である。
【図5】 2光子レベルの非線形位相変化の増加に対する予想される機構を示す図である
。交換相互作用では、原子Aが光子2を再放射した後、基底状態から励起状態へ
と変化する間に、原子Aが光子1を吸収する。原子Bは逆に光子を吸収して再放
射する。このように2つの光子を交換することによって非線形位相変化が起こる
。こうした機構では、2つの光子が同じ原子と相互作用する必要がないため、単
一光子強度が比較的強いと思われる。
。交換相互作用では、原子Aが光子2を再放射した後、基底状態から励起状態へ
と変化する間に、原子Aが光子1を吸収する。原子Bは逆に光子を吸収して再放
射する。このように2つの光子を交換することによって非線形位相変化が起こる
。こうした機構では、2つの光子が同じ原子と相互作用する必要がないため、単
一光子強度が比較的強いと思われる。
【図6】 非線形位相変化(カー効果)を発生する従来の機構を示す図である。周波数ω 1 の光子がほぼレベル|1〉から|2〉へ変化した場合、周波数ω2 はほぼ原子
レベル|2〉と|3〉の間で位相変化する。こうした機構では両方の光子が同じ
原子と相互作用することが必要となる。これは単一光子レベルでは見られにくい
。
レベル|2〉と|3〉の間で位相変化する。こうした機構では両方の光子が同じ
原子と相互作用することが必要となる。これは単一光子レベルでは見られにくい
。
【図7】 図7(a)および図7(b)から構成されており、図7(a)は2つの光子が
原子蒸気セルなどの光媒体を通る様子を示す図であり、図7(b)は同じ2つの
光子が2つの異なる媒体を通る様子を示す図である。非線形位相変化は、2つの
ケースにおける位相の違いと等しく、これは交換相互作用によって大きく影響さ
れる。
原子蒸気セルなどの光媒体を通る様子を示す図であり、図7(b)は同じ2つの
光子が2つの異なる媒体を通る様子を示す図である。非線形位相変化は、2つの
ケースにおける位相の違いと等しく、これは交換相互作用によって大きく影響さ
れる。
【図8】 原子AおよびBが共に励起状態で2通りの方法で形成されている仮の状況を示
す図である。光子2が原子Bを励起させている間に光子1が原子Aを励起させる
、又は光子2が原子Aを励起させる間に光子1が原子Bを励起させているとする
。これら2つの確率振幅間の構造的干渉によって2つの励起原子が存在する確率
は2倍になる。
す図である。光子2が原子Bを励起させている間に光子1が原子Aを励起させる
、又は光子2が原子Aを励起させる間に光子1が原子Bを励起させているとする
。これら2つの確率振幅間の構造的干渉によって2つの励起原子が存在する確率
は2倍になる。
【図9】 図9(a)および図9(b)から構成されており、図9(a)は濃度ρが位置
zの変化の遅い関数であり、充分に薄く、かつ、δkδz≪π/2を満たす原子
媒体(δzは厚さ)を示す図である。図9(b)はδkΔz≪2pπ(Δzは周
期性、pは整数を示す)を満たす周期媒体を示す図である。どちらの場合も、図
8の確率振幅間に構造上の干渉が存在する。
zの変化の遅い関数であり、充分に薄く、かつ、δkδz≪π/2を満たす原子
媒体(δzは厚さ)を示す図である。図9(b)はδkΔz≪2pπ(Δzは周
期性、pは整数を示す)を満たす周期媒体を示す図である。どちらの場合も、図
8の確率振幅間に構造上の干渉が存在する。
【図10】 レベル2とレベル3との3間の遷移によって離調したレーザーパルスの適用状
態を示す図である。これは、レベル2のエネルギーとその状態における対応する
位相変化で、シュタルク変化を起こすのに用いられる。
態を示す図である。これは、レベル2のエネルギーとその状態における対応する
位相変化で、シュタルク変化を起こすのに用いられる。
【図11】 光子1または光子2がレベル3から非共鳴となっているが、レーザーパルスの
利用によって共鳴がレベル2へと遷移する、レーザーによる遷移を示す図である
。
利用によって共鳴がレベル2へと遷移する、レーザーによる遷移を示す図である
。
【図12】 πの非線形位相変化を形成する次の5つのパルスのシーケンスを示す図である
。(a)パルス1は、初期状態|γ1 、γ2 〉から、光子1のみが存在する状態
|γ1 〉へと変化させる。(b)パルス2は、光子が2つの異なる媒体に存在す
る場合効果はないが、どちらの光子も同じ媒体に存在する場合は状態|γ1 〉と
状態|0〉の重ね合わせを形成する。(c)パルス3は、両方の光子が同じ媒体
に存在する場合、状態|γ〉で位相変化を起こす。(d)パルス4は、系を状態
|γ1 〉に戻す。(e)最終パルスは、πの比較位相変化とは別に、系を初期状
態に戻す。
。(a)パルス1は、初期状態|γ1 、γ2 〉から、光子1のみが存在する状態
|γ1 〉へと変化させる。(b)パルス2は、光子が2つの異なる媒体に存在す
る場合効果はないが、どちらの光子も同じ媒体に存在する場合は状態|γ1 〉と
状態|0〉の重ね合わせを形成する。(c)パルス3は、両方の光子が同じ媒体
に存在する場合、状態|γ〉で位相変化を起こす。(d)パルス4は、系を状態
|γ1 〉に戻す。(e)最終パルスは、πの比較位相変化とは別に、系を初期状
態に戻す。
【図13】 図13(a)および図13(b)から構成されており、両方の光子が同じ媒体
で広がる場合の時間関数として、状態|0〉の確率振幅の実数部Rのグラフを示
す。これは5レーザーパルスのシーケンスの効果を表す。図13(a)は、状態
|γ1 〉と状態|0〉の重ね合わせを形成するパルス2の効果を示す図である。
図13(b)は、パルス3の制御による位相変化とは別に、パルス2の効果を反
転させ系を状態|γ1 〉に戻すパルス4の効果を示す図である。
で広がる場合の時間関数として、状態|0〉の確率振幅の実数部Rのグラフを示
す。これは5レーザーパルスのシーケンスの効果を表す。図13(a)は、状態
|γ1 〉と状態|0〉の重ね合わせを形成するパルス2の効果を示す図である。
図13(b)は、パルス3の制御による位相変化とは別に、パルス2の効果を反
転させ系を状態|γ1 〉に戻すパルス4の効果を示す図である。
【図14】 両方の光子が同じ媒体で広がる場合のパルス3の結果として、状態|γ1 〉の
確率振幅の実数部と虚数部を示す図である。点線で示した円の半径は、そのパル
スの前の状態|γ1 〉の確率振幅の大きさを表す。一方ベクトルaは、そのパル
スが部分的に振幅確率を状態|0〉に結合させた後の、確率振幅からのみの影響
を表している。ベクトルbは、パルスによって部分的に|γ1 〉に結合された、
状態|0〉の初期振幅確率からの影響を示す。パルスの位相と離調を調整するこ
とで、最終的に得られたベクトルを点線の円のどこにでも存在させることができ
る。これによって任意に位相変化を起こすことができる。
確率振幅の実数部と虚数部を示す図である。点線で示した円の半径は、そのパル
スの前の状態|γ1 〉の確率振幅の大きさを表す。一方ベクトルaは、そのパル
スが部分的に振幅確率を状態|0〉に結合させた後の、確率振幅からのみの影響
を表している。ベクトルbは、パルスによって部分的に|γ1 〉に結合された、
状態|0〉の初期振幅確率からの影響を示す。パルスの位相と離調を調整するこ
とで、最終的に得られたベクトルを点線の円のどこにでも存在させることができ
る。これによって任意に位相変化を起こすことができる。
【図15】 図15(a)および図15(b)から構成されている。図15(a)は、Aと
表示されたひとつ若しくは複数の補助系と関係し得る一連の物理的な相互作用に
よって接続された、2つの古典系S1とS2を示す図である。図15(b)は、
一連の物理的相互作用によって接続されない2つの古典系を示す図である。後者
の場合は、情報を流す経路がなく、古典的な制御プロセスは発生しない。
表示されたひとつ若しくは複数の補助系と関係し得る一連の物理的な相互作用に
よって接続された、2つの古典系S1とS2を示す図である。図15(b)は、
一連の物理的相互作用によって接続されない2つの古典系を示す図である。後者
の場合は、情報を流す経路がなく、古典的な制御プロセスは発生しない。
【図16】 従来の位相変化を起こす制御NOTゲートを実行する様子を示す図である。
【図17】 薄い液晶に僅かに重なり合う領域を有することによって、光ファイバー内で2
つの光子が相互作用する様子を示す図である。この機構は、量子論理ゲートの演
算に必要な非線形位相変化を起こすために利用される。
つの光子が相互作用する様子を示す図である。この機構は、量子論理ゲートの演
算に必要な非線形位相変化を起こすために利用される。
【図18】 同じ周波数で2つの光子AとBに作用する制御NOTを示す図である。異なる
周波数で作業用キュービットが用いられるが0の初期状態に戻される。
周波数で作業用キュービットが用いられるが0の初期状態に戻される。
【図19】 2ビット加算回路を示す図である。
【図20】 電気光学スイッチを有する光ファイバーの2つのループからなる記憶装置を示
す図である。
す図である。
【図21】 位相誤差をできるだけ小さくするフィードバックが用いられる様子を示す図で
ある。
ある。
Claims (5)
- 【請求項1】 光子と一対の原子との間で交換相互作用を発生させるために、複数対の原子を
含む第1媒体へ2つの非共鳴光子を伝播させ、これによって、励起状態の原子を
より高い確率で存在させるステップと、 一方の非共鳴光子を、複数の原子を含む第1媒体および第2媒体のうちの第1
媒体へ伝播させ、他方の非共鳴光子を第2の媒体へ伝播させ、これによって、光
子が異なる媒体に存在する場合に交換相互作用を無くし、励起状態の原子をより
低い確率で存在させるステップと、 2つの光子が異なる媒体に存在する場合よりも2つの光子が同じ媒体に存在す
る場合に大きくなるような位相変化を原子の励起状態に発生させるために、原子
の励起状態を摂動させ、これによって、非線形位相変化を発生させるステップと
を含む非共鳴光子による非線形位相変化の発生方法。 - 【請求項2】 上記の摂動させるステップは、原子の励起状態を摂動させるためにレーザーパ
ルスを第1媒体および第2媒体に照射するステップを含む請求項1に記載の非共
鳴光子による非線形位相変化の発生方法。 - 【請求項3】 上記の摂動させるステップは、原子の励起状態を摂動させるために複数のレー
ザーパルスを第1媒体および第2媒体に照射するステップを含む請求項1記載の
非共鳴光子による非線形位相変化の発生方法。 - 【請求項4】 上記の摂動させるステップは、光子と原子との間の衝突回数を増加させるとと
もに、それによって交換相互作用の数および非線形位相変化の大きさを増大させ
るために、緩衝気体を上記媒体に加えるステップを含む請求項1に記載の非共鳴
光子による非線形位相変化の発生方法。 - 【請求項5】 第1レーザーパルスを用いて光子を吸収し、これにより、固体材料中の原子の
励起状態における重ね合わせ状態で情報を記憶するステップと、 要求があり次第、第2レーザーパルスを用いて光子を再生するステップとを含
む量子記憶装置の製造方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US8298398P | 1998-04-24 | 1998-04-24 | |
US60/082,983 | 1998-04-24 | ||
PCT/US1999/008982 WO1999056392A2 (en) | 1998-04-24 | 1999-04-26 | Optical method for quantum computing |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002531861A true JP2002531861A (ja) | 2002-09-24 |
Family
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000546454A Withdrawn JP2002531861A (ja) | 1998-04-24 | 1999-04-26 | 光学的量子計算方法 |
Country Status (6)
Country | Link |
---|---|
EP (1) | EP1183778A2 (ja) |
JP (1) | JP2002531861A (ja) |
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CA (1) | CA2326187A1 (ja) |
WO (1) | WO1999056392A2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6680473B2 (en) | 2000-12-27 | 2004-01-20 | Communications Research Laboratory | Atomic beam control apparatus and method |
JP2021519444A (ja) * | 2018-03-28 | 2021-08-10 | ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク | 周囲温度の量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法 |
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GB0516565D0 (en) * | 2005-08-12 | 2005-09-21 | Hewlett Packard Development Co | A quantum repeater |
KR100915171B1 (ko) * | 2007-12-06 | 2009-09-03 | 인하대학교 산학협력단 | 시간 지연 광 논리 게이트 및 그 구동 방법 |
WO2009072693A1 (en) * | 2007-12-06 | 2009-06-11 | Inha-Industry Partnership Institute | Delayed optical logic gates |
US8642998B2 (en) * | 2011-06-14 | 2014-02-04 | International Business Machines Corporation | Array of quantum systems in a cavity for quantum computing |
CN103699352A (zh) * | 2012-09-27 | 2014-04-02 | 陈志波 | 量子数码 |
EP3380996A4 (en) * | 2015-11-27 | 2018-11-14 | Qoherence Instruments Corp. | Systems, devices, and methods to interact with quantum information stored in spins |
GB2553848B (en) * | 2016-09-19 | 2022-06-22 | Royal Holloway & Bedford New College | Quantum power sensor |
US10176432B2 (en) * | 2017-03-07 | 2019-01-08 | International Business Machines Corporation | Weakly tunable qubit based on two coupled disparate transmons |
CN109004989B (zh) * | 2018-08-06 | 2019-10-15 | 合肥本源量子计算科技有限责任公司 | 一种量子比特逻辑信号的生成系统和方法 |
CN112910454B (zh) * | 2021-01-15 | 2022-03-29 | 宁波大学 | 一种可异步置数的可逆单边沿jk触发器 |
CN112865756B (zh) * | 2021-01-15 | 2022-03-29 | 宁波大学 | 一种可异步置数的可逆双边沿d触发器 |
CN113642279B (zh) * | 2021-10-18 | 2022-02-18 | 阿里巴巴达摩院(杭州)科技有限公司 | 量子比特处理方法、装置及计算机设备 |
CN114446401A (zh) * | 2022-02-07 | 2022-05-06 | 上海图灵智算量子科技有限公司 | 量子线路生成晶体原子坐标的方法、装置、产品及介质 |
CN114627971B (zh) * | 2022-03-18 | 2023-10-31 | 北京有竹居网络技术有限公司 | 用于固体系统的数据处理方法和装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US3940748A (en) * | 1966-02-07 | 1976-02-24 | Carson Arthur N | Optical information processing system with color center crystal |
JPH01129237A (ja) * | 1987-11-16 | 1989-05-22 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 光論理回路 |
US5771117A (en) * | 1996-06-17 | 1998-06-23 | The Board Of Trustees Of The Leland Stanford Junior University | Method and apparatus for nonlinear frequency generation using a strongly-driven local oscillator |
US5917322A (en) * | 1996-10-08 | 1999-06-29 | Massachusetts Institute Of Technology | Method and apparatus for quantum information processing |
-
1999
- 1999-04-26 KR KR1020007011561A patent/KR20010085237A/ko not_active Application Discontinuation
- 1999-04-26 JP JP2000546454A patent/JP2002531861A/ja not_active Withdrawn
- 1999-04-26 CN CNB998051187A patent/CN1163788C/zh not_active Expired - Fee Related
- 1999-04-26 EP EP99918827A patent/EP1183778A2/en not_active Withdrawn
- 1999-04-26 CA CA002326187A patent/CA2326187A1/en not_active Abandoned
- 1999-04-26 WO PCT/US1999/008982 patent/WO1999056392A2/en not_active Application Discontinuation
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JP2021519444A (ja) * | 2018-03-28 | 2021-08-10 | ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク | 周囲温度の量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法 |
JP7304362B2 (ja) | 2018-03-28 | 2023-07-06 | ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク | 周囲温度の量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法 |
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CN1163788C (zh) | 2004-08-25 |
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CA2326187A1 (en) | 1999-11-04 |
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