JP2002528079A - インターロイキン−1のホモログzil1a4 - Google Patents

インターロイキン−1のホモログzil1a4

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JP2002528079A
JP2002528079A JP2000578451A JP2000578451A JP2002528079A JP 2002528079 A JP2002528079 A JP 2002528079A JP 2000578451 A JP2000578451 A JP 2000578451A JP 2000578451 A JP2000578451 A JP 2000578451A JP 2002528079 A JP2002528079 A JP 2002528079A
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アール. ウエスト,ロバート
オー. シェパード,ポール
ガオ,ゼレン
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ザイモジェネティクス,インコーポレイティド
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    • C07K2319/01Fusion polypeptide containing a localisation/targetting motif
    • C07K2319/02Fusion polypeptide containing a localisation/targetting motif containing a signal sequence

Abstract

(57)【要約】 インターロイキン−1の相同体、それらを作るための材料及び方法、それらを含む組成物、並びにそれらを用いる方法が開示される。本発明は、配列番号:7の残基60〜218又は配列番号:10の残基1〜157を含むポリペプチドを含む。本発明のポリペプチド及びポリヌクレオチドは、免疫応答の調節を含む、診断、治療、及び分析の分野で役立つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の背景 多細胞生物では、細胞の成長、分化、移動、代謝は、さまざまなポリペプチド
因子によって制御されている。これらの因子が、正常な発育と発病の両方に関係
している。
【0002】 インターロイキンはサイトカイン・ファミリーの一員であり、炎症などの免疫
応答に関係している。インターロイキン−1(IL-1)は、少なくとも3つのメンバ
ーからなるファミリーであり、それらのメンバーの間では相同配列が見られ、受
容体結合活性が共通している。IL-1αとIL-1βは炎症促進性サイトカインである
のに対し、このファミリーの第3のメンバーであるIL-1受容体アンタニスト(IL-
1ra)は、IL-1αとIL-1βの活性のアンタゴニストである。IL-1raは、明らかな
アゴニスト機能を持たない天然のサイトカイン受容体アンタゴニストとしては唯
一のものであるという点が普通とは違っている。IL-1raはIL-1受容体と結合する
がこの受容体を活性化はしないということから、IL-1raが炎症に関して負のレギ
ュレータであることが示唆される(ドリップス他、J. Biol. Chem.、第266巻、1
0331〜10336ページ、1991年;グラノヴィッツ他、Blood、第79巻、2356〜2363ペ
ージ、1992年)。
【0003】 インターロイキンは、さまざまな炎症性疾患に関係している。IL-1αとIL-1β
は、低濃度では単核食細胞と血管内皮細胞に対して局所的に作用し、IL-1とIL-6
のさらなる合成を誘起する。IL-1は白血球や好中球に対して直接的に作用を及ぼ
すことはないが、単核食細胞や血管内皮細胞に働きかけて白血球を活性化させる
。IL-1は、血流中に大量に分泌される場合には、発熱、急性期血漿タンパク質の
合成、カヘキシーなどの内分泌効果を持つ。
【0004】 初期の論文には、IL-1活性に対する天然のインヒビターが多くのものに含まれ
ていることが記載されている。例えば、発熱患者からの尿素(セキンガー他、J.
Immunol.、第139巻、1546〜1549ページ、1987年;マッツァイ他、Eur. J. Immu
nol.、第20巻、683〜689ページ、1990年)、単核白血球患者からの尿素(セキン
ガー他、上記文献)、若年性慢性関節炎を患っている患者からの尿素(プリユー
ル他、Lancet、第2巻、1240〜1242ページ、1987年);関節リューマチを患って
いる患者の滑液(ロッツ他、J. Clin. Invest.、第78巻、713〜721ページ、1986
年);ウイルスに感染した単核またはB細胞(スカラ他、J. Exp. Med.、第159
巻、1637〜1652ページ、1984年)が挙げられる。これらの抑制性生物活性は、分
子量が18〜67kDaの範囲では異種性であるように見えるが、ほとんどキャラクテ
リゼーションされないままになっている。本当のIL-1受容体アンタゴニストは、
IgGでコーティングしたプレート上で培養したヒト末梢血単核細胞(PMNC)から
得られた組み換えIL-1raや、フォルボール・エステル(PMA)で活性化したヒト
単核白血球細胞系U937から得られた組み換えIL-1raを精製およびクローニングす
ることによって初めて明らかにされた(カーター他、Nature、第344巻、633〜63
8ページ、1990年;ハンナム他、Nature、第343巻、336〜340ページ、1990年;ア
イゼンベルク他、Nature、第343巻、341〜346ページ、1990年)。
【0005】 健康な人の血清では、循環しているIL-1raの活性は低い(200〜400pg/ml)。
血清中のIL-1raのレベルが劇的に増加しているのは、急性または慢性の炎症性疾
患、ある種のガン、感染性疾患、敗血症ショックの患者(フィッシャー他、Bloo
d、第79巻、2196〜2200ページ、1992年)、ヒルシュスプラング病に対する大手
術を行なった患者(オヌアラン他、Clin. Exp. Immunol.、第93巻、218〜222ペ
ージ、1993年)、肝臓病の患者(セキヤマ他、Clin. Exp. Immunol.、第98巻、7
1〜77ページ、1994年)、ホジキン症の患者(グラス他、Lancet、第340巻、968
ページ、1992年)、大腸炎の患者(ハイアムズ他、Dig. Dis. Sci.、第39巻、18
93〜1899ページ、1994年)においてである。これ以外の急性または慢性の疾患も
、IL-1raの局所的な産生を誘導する。例えば、関節リューマチ(ファイアステイ
ン他、J. Immunol.、第149巻、1054〜1062ページ、1992年)、ライム関節炎(ミ
ラー他、Lancet、第341巻、146〜148ページ、1993年)、無穿孔性クローン病(
ギルバーツ他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第91巻、12721〜12724ページ、19
94年)といった疾患の場合である。ボランティアの人たちにエンドトキシン血症
を誘起することにより、血清中のIL-1raがIL-1βと比べて100倍も過剰になった
が、このレベルは、生体内でIL-1の活性を失わせるのに明らかにまだ不十分であ
る(グラノヴィッツ他、Lancet、第338巻、1423〜1424ページ、1991年)。多数
の実験が行なわれ、エンドトキシン血症または滑膜炎のモデル動物においてIL-1
raを全身に注入したり、静脈内注射したりすると、投与されたIL-1またはLPSの
効果が減少する可能性のあることが明らかにされている(ディナレロとトンプソ
ン、Immunol. Today、第12巻、404〜410ページ、1991年)。IL-1raに対する抗体
をホルマリンで誘起した大腸炎のモデル・ラットに投与したところ、腸炎が顕著
に悪化し、死亡率が有意に上昇した(フェレッティ他、J. Clin. Invest.、第94
巻、449〜453ページ、1994年)。
【0006】 IL-1raがいろいろな慢性の炎症性疾患の治療に使えるのではないかということ
で研究が続けられてきた。例えば、関節リューマチ(ヘンダーソン他、Cytokine
、第3巻、246〜249ページ、1991年)、慢性骨髄性白血病(CML)(シロ他、Bloo
d、第83巻、460〜465ページ、1994年)、炎症性腸疾患(IBD)(コミネッリ他、
Gastroenterology、第103巻、65〜71ページ、1992年)といった疾患の治療であ
る。IL-1raが乾癬の治療に有効である可能性を示唆する証拠もある。正常な皮膚
は、主として表皮の分化した顆粒層においてIL-1raを発現するのに対し、乾癬に
かかった皮膚は、IL-1raを基底層や中基底層において発現する(ハマーバーグ他
、J. Clin. Invest.、第90巻、571〜583ページ、1992年)。表皮のさまざまな層
におけるIL-1α:IL-1raの比が変化すると、表皮ケラチン細胞の増殖と分化が影
響を受ける可能性がある。クローン病と潰瘍性大腸炎においてはIL-1α:IL-1ra
の比が顕著に増大するため、慢性の炎症性腸疾患にもこの比の変化が関係してい
る可能性がある(コミネッリ他、Cytokine、第6巻、A171ページ、1994年)。IL-
1raが、慢性および急性の脳神経障害(レルトン他、Exp. Neurol.、第138巻、20
6〜213ページ、1996年;ロディック他、Biochem. Biophys. Res. Comm.、第234
巻、211〜215ページ、1997年)、インスリン依存性糖尿病(マドラップ−プルセ
ン他、Cytokine、第5巻、185〜191ページ、1993年)、糸球体腎炎(ラン他、Kid
ney Int.、第47巻、1303〜1309ページ、1995年)、膵臓炎(ノーマン他、Ann. S
urg.、第221巻、625ページ、1995年)に有効である可能性を示唆する実験的証拠
もある。
【0007】 さまざまなウイルス、バクテリア、菌類、寄生虫の感染、血管内血液凝固、IL
-2大量投与療法、充実性腫瘍、白血病性アルツハイマー病、HIV-1の感染、自己
免疫疾患、外傷(外科手術)、血液透析、虚血性疾患(心筋梗塞)、非感染性肝
炎、喘息、紫外線照射、閉鎖性頭部損傷、膵臓炎、腹膜炎(peridontitis)、移
植片対宿主疾患、移植拒絶反応などの患者や、激しい運動をした後の健康な人に
おいて、IL-1の産生が増加することが報告されている(ディナレロ、Blood、第8
7巻、2095〜2147ページ、1996年)。
【0008】 組み換えIL-1raは、ヒトに対する臨床試験(カンピオン他、Arthritis and Rh
eumatism、第39巻、1092〜1101ページ、1996年)において寛容性が高く、敗血症
ショック(フィッシャー他、JAMA、第271巻、1836〜1843ページ、1994年)、関
節リューマチ(カンピオン他、Arthritis and Rheumatism、第39巻、1092〜1101
ページ、1996年)、移植片対宿主疾患(GVHD)(アンティン他、Blood、第84巻
、1342〜1348ページ、1994年)の治療において効果をもたらす可能性があること
が示された。しかし、この分子の受容体結合アフィニティ、血漿半減期、組織透
過性のため、この分子が血清中に高濃度に存在することがしばしば要求される。
そのため従来技術では、炎症プロセスならびにその他の免疫プロセスを調節する
付加的分子が必要とされる状態が続いている。 本発明の要約 本発明は、新規なインターロイキン−1(IL-1)ホモログのファミリーを提供
するとともに、IL-1のホモログおよびそのホモログを含む組成物を作るための材
料および方法と、IL-1ホモログの使用方法を提供する。本発明の1つの側面によ
れば、配列番号:7の残基番号60〜218のアミノ酸残基と配列番号:10の残基番号
1〜157のアミノ酸残基からなるグループの中から選択したアミノ酸残基配列を含
む、単離されたタンパク質が提供される。本発明の一実施態様によれば、配列番
号:2の残基番号200に対応するアミノ酸残基はリシンである。本発明の別の実施
態様によれば、配列番号:2の残基番号200に対応するアミノ酸残基はアスパラギ
ン酸である。本発明のさらに別の実施態様によれば、配列番号:2の残基番号200
に対応するアミノ酸残基はグルタミン酸である。本発明の別の実施態様によれば
、上記タンパク質は、配列番号:11の残基番号60〜218のアミノ酸残基を含んで
いる。このようなタンパク質の具体例としては、配列番号:14または配列番号:
2の残基番号60〜218のアミノ酸残基を含むタンパク質が挙げられる。本発明のさ
らに別の実施態様によれば、上記タンパク質は配列番号:11の残基番号1〜218の
アミノ酸残基、あるいは配列番号:12の残基番号1〜157のアミノ酸残基を含んで
いる。このようなタンパク質の具体例としては、配列番号:14の残基番号1〜218
のアミノ酸残基、配列番号:2の残基番号1〜218のアミノ酸残基、配列番号:15
の残基番号1〜157のアミノ酸残基、または配列番号:9の残基番号1〜157のアミ
ノ酸残基を含むタンパク質が挙げられる。本発明の別の実施態様によれば、上記
タンパク質は長さがアミノ酸残基157〜1500個である。このタンパク質は、1つま
たはそれ超のアフィニティ・タグをさらに含んでいてもよい。
【0009】 本発明の第2の側面によれば、配列番号:7の残基番号60〜218のアミノ酸残基
と配列番号:10の残基番号1〜157のアミノ酸残基からなるグループの中から選択
したアミノ酸残基配列を含むタンパク質をコードする、単離されたポリヌクレオ
チドが提供される。一実施態様によれば、単離された上記ポリヌクレオチドはDN
Aである。別の実施態様によれば、このポリヌクレオチドによってコードされた
タンパク質は、配列番号:11の残基番号60〜218のアミノ酸残基と配列番号:12
の残基番号1〜157のアミノ酸残基からなるグループの中から選択したアミノ酸残
基配列を含んでいる。このようなタンパク質の具体例としては、配列番号:14の
残基番号1〜218のアミノ酸残基、配列番号:2の残基番号1〜218のアミノ酸残基
、配列番号:15の残基番号1〜157のアミノ酸残基、または配列番号:9の残基番
号1〜157のアミノ酸残基を含むタンパク質が挙げられる。
【0010】 本発明の第3の側面によれば、作用可能に結合した要素である、転写プロモー
タ、上記のタンパク質をコードしているDNA断片、転写ターミネータを含む発現
ベクターが提供される。一実施態様によれば、この発現ベクターは、このDNA断
片と機能上関連した分泌シグナル配列をさらに含んでいる。 本発明の第4の側面によれば、上記の発現ベクターを含む培養された細胞が提
供される。また、このDNA断片が発現する条件で細胞を培養し、このDNA断片によ
ってコードされているタンパク質を回収する操作を含むタンパク質産生方法も提
供される。
【0011】 本発明の第5の側面によれば、動物の免疫応答を調節するため、上記のタンパ
ク質を含む組成物を、医薬として許容される賦形剤とともにこの動物に投与する
ことを含む方法が提供される。 本発明のこれらの側面ならびにその他の側面は、本発明についての以下の詳細
な説明ならびに添付の図面から明らかになろう。 発明の詳細な説明 “アフィニティ・タグ”という用語は、本明細書では、ポリペプチド断片のう
ち、別のポリペプチドに結合させることができて、その別のポリペプチドの精製
を行なったり、その別のポリペプチドを基質に付着させるための部位を提供した
りするポリペプチド断片を指すのに用いる。原則として、抗体またはそれ以外の
特異的結合媒体を用いることができる任意のペプチドまたはタンパク質が、アフ
ィニティ・タグとして使用可能である。アフィニティ・タグとしては、ポリヒス
チジン領域、プロテインA(ニルソン他、EMBO J.、第4巻、1075ページ、1985年
;ニルソン他、Methods Enzymol.、第198巻、3ページ、1991年)、グルタチオン
S−トランスフェラーゼ(スミスとジョンソン、Gene、第67巻、31ページ、1988
年)、グルタミン酸−グルタミン酸アフィニティ・タグ(グルッセンメイヤー他
、Prog. Natl. Acad. Sci. USA、第82巻、7952〜7954ページ、1985年)(配列番
号:42)、サブスタンスP、Flag(登録商標)ペプチド(ホップ他、Biotechnolo
gy、第6巻、1204〜1210ページ、1988年)、ストレプトアビジン結合ペプチド、
マルトース結合タンパク質(グアン他、Gene、第67巻、21〜30ページ、1987年)
、セルロース結合タンパク質、チオレドキシン、ユビキチン、T7ポリメラーゼ、
あるいはこれ以外のエピトープや結合ドメインなどがある。一般的な参考文献と
して、フォード他、Protein Expression and Purification、第2巻、95〜107ペ
ージ、1991年を参照のこと。DNAをコードするアフィニティ・タグならびにその
他の試薬は、民間企業から調達することができる(例えばファルマシア・バイオ
テック社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州;ニュー・イングランド・バイ
オラブズ社、ベヴァリー、マサチューセッツ州;イーストマン・コダック社、ニ
ュー・ヘイヴン、コネチカット州)。
【0012】 “対立遺伝子変異体”という用語は、本明細書では、染色体の同じ遺伝子座を
占めている遺伝子の2つ以上の可能な形態のいずれをも示すのに用いる。対立遺
伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内で表現型の多型を生じさせる
可能性がある。遺伝子の突然変異は、サイレントである(コードされたポリペプ
チドには変化がない)場合と、アミノ酸配列が変化したポリペプチドをコードし
ている場合とがある。対立遺伝子変異体という用語は、本明細書では、対立遺伝
子変異が起こった遺伝子によってコードされたタンパク質を指すのにも用いる。
【0013】 “ポリヌクレオチド分子の相補体”という用語は、参照配列と相補的で向きが
逆の塩基配列を有するポリヌクレオチド分子のことを意味する。例えば5'-ATGCA
CGGG-3'は、5'-CCCGTGCAT-3'と相補的である。 “〜に対応する”という表現は、配列中のアミノ酸残基の位置について述べる
場合には、複数の配列が最適にアラインメントされているときにそれら配列中の
互いに対応する位置のことを意味する。
【0014】 “縮重したヌクレオチド配列”という用語は、(1つのポリペプチドをコード
している参照用ポリヌクレオチド分子と比較した場合に)縮重したコドンが1つ
またはそれ以上含まれているヌクレオチド配列のことを意味する。縮重したコド
ンは、異なるヌクレオチド・トリプレットを含んでいるが、同じアミノ酸残基を
コードしている(すなわちGAUとGACというトリプレットは、それぞれアスパラギ
ン酸をコードしている)。
【0015】 “発現ベクター”という用語は、目的とするポリペプチドをコードしている断
片と、その断片と機能上関連していてその断片の転写を行なう別の複数の断片と
を含む直線状または環状のDNA分子を指すのに用いる。これら別の断片にはプロ
モーター配列とターミネーター配列が含まれており、それ以外に、1つ以上の複
製起点、1つ以上の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなど
が含まれていてもよい。一般に発現ベクターはプラスミドまたはウイルスDNAに
由来するが、両方の要素を含んでいてもよい。
【0016】 “単離された”という用語は、ポリヌクレオチドに適用する場合には、ポリヌ
クレオチドが天然の遺伝子環境から取り出されていて、したがって他の外来性コ
ード配列または望まないコード配列からは自由であり、遺伝子工学によるタンパ
ク質産生系の中で使用するのに適した形態であることを意味する。このような単
離された分子は自然環境から隔離された分子であり、例としてcDNAやゲノム・ク
ローンが挙げられる。本発明の単離されたDNA分子は、普通なら付随している他
の遺伝子を含まないが、プロモータやターミネータなどの自然に発生する5'と3'
の非翻訳領域は含んでいてもよい。付随する領域の同定法は、当業者には明らか
であろう(例えば、ディナンとティジャン、Nature、第316巻、774〜778ページ
、1985年を参照のこと)。
【0017】 “単離された”ポリペプチドまたはタンパク質は、自然環境とは異なる条件、
例えば血液や動物組織から離れた状態で見つかったポリペプチドまたはタンパク
質である。単離されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物由来の他の
ポリペプチドを実質的に含んでいないことが好ましい。ポリペプチドは、高純度
の形態、すなわち95%を超える純度、さらに好ましくは99%を超える純度で提供
されることが好ましい。“単離された”という用語をこの文脈で使用する場合に
は、同じポリペプチドが別の物理的形態、例えば二量体、グリコシル化された別
の形態、または誘導化された別の形態で存在している状態も“単離された”状態
から除外されることはない。
【0018】 “モチーフ”とは、タンパク質の配列中で所定のアミノ酸残基が並んだアミノ
酸配列のことである。1つのモチーフは、そのようなそれぞれのアミノ酸配列に
おける可能な残基群を規定している。 “作用可能に結合”という用語は、DNA断片について述べるならば、複数の断
片が、望みとする目的、例えば転写がプロモーター内で始まりエンコード断片を
通ってターミネーターまで進むという目的のために協調して機能するように配置
されていることを意味する。
【0019】 “オーソログ”という用語は、1つの種から得られたポリペプチドまたはタン
パク質のうち、異なる種のポリペプチドまたはタンパク質の機能と同等なものを
意味する。種分化の結果、オーソログ間での配列の違いが生まれた。 “ポリヌクレオチド”は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸の塩基を5'末端か
ら3'末端まで読んだ一本鎖または二本鎖のポリマーである。ポリヌクレオチドに
はRNAとDNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、自然界から、あるいはインビトロ
での合成により、あるいは天然分子と合成分子の組み合わせによって調製するこ
とができる。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(“bp”と略記)、ヌクレオ
チド(“nt”)、またはキロ塩基(“kb”)で表わす。文脈上可能な場合には、
後ろの2つの用語は、一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドを記述するのに用
いてもよい。これら用語を二本鎖の分子に適用する場合には、全長を表わすのに
用い、“塩基対”という用語と同じであるものと理解する。当業者であれば、二
本鎖のポリヌクレオチドの2本の鎖は長さがわずかに異なっていてもよく、また
、その末端部は酵素による切断の結果として互いにずれていてもよいことが理解
できよう。したがって、1つの二本鎖ポリヌクレオチド分子の中のすべてのヌク
レオチドがペアになっていなければならないわけではない。そのようにペアにな
っていない末端部の長さは、一般に20ntを超えることはない。
【0020】 “ポリペプチド”は、天然のものであれ合成によるものであれ、ペプチド結合
によって結合した複数のアミノ酸残基からなるポリマーである。アミノ酸残基が
10個未満のポリペプチドは、普通は“ペプチド”と呼ばれる。 “プロモーター”という用語は、本明細書では、当業者の用語法と同じように
、RNAポリメラーゼの結合と転写の開始を行なうDNA配列を含む遺伝子の一部を指
すのに用いる。プロモーター配列は、普通は遺伝子の5'非コード領域に見いださ
れるが、必ずしもそうとは限らない。
【0021】 “タンパク質”は、1本以上のポリペプチド鎖を含む巨大分子である。タンパ
ク質は、炭水化物などの非ペプチド要素も含んでいてよい。タンパク質には、そ
のタンパク質が合成される細胞を通じて炭水化物やそれ以外の非ペプチド置換基
を付加することができるが、付加するものは、細胞のタイプごとに異なる。タン
パク質は、本明細書では、骨格となるアミノ酸構造に基づいて決まる。一般に炭
水化物などの置換基を明記することはないが、そのような置換基が存在していて
もよい。
【0022】 “受容体”という用語は、生物活性分子(すなわちリガンド)と結合し、その
リガンドの効果を細胞に伝える細胞付随タンパク質のことを意味する。 “分泌シグナル配列”という用語は、ポリペプチド(“分泌ペプチド”)をコ
ードしているDNA配列を意味する。このポリペプチドは、より大きなポリペプチ
ドの一部として、このより大きなポリペプチドが細胞内で合成されてその細胞の
分泌経路を通っていくように仕向ける。一般に、そのより大きなポリペプチドは
切断されて、輸送の間に分泌ペプチドを分泌経路を通じて除去する。
【0023】 “断片”は、より大きな分子(例えばポリヌクレオチドまたはポリペプチド)
のうちの特定の性質を有する部分のことである。例えば特定のポリペプチドをコ
ードしているDNA断片は、プラスミドやプラスミドの断片など、より大きなDNA分
子の一部となっている。より大きなDNA分子のその部分を5'から3'の方向に読む
と、その特定のポリペプチドのアミノ酸配列がコードされている。
【0024】 “スプライス変異体”という用語は、本明細書では、1つの遺伝子から転写さ
れたRNAの可能なさまざまな形態を指すのに用いる。スプライス変異体は、転写
された1つのRNA分子の中で選択的スプライシング部位を利用して自然に生まれる
。あるいはそれより頻度は少ないが、別々に転写されたRNA分子同士の間でもス
プライス変異体は生まれる。その結果、同一の遺伝子からいくつかのmRNAが生ま
れることになる。スプライス変異体は、アミノ酸配列が変化したポリペプチドを
コードしている可能性がある。スプライス変異体という用語は、本明細書では、
1つの遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によってコードされたタン
パク質を指すのにも用いる。
【0025】 不正確な分析方法(例えばゲル電気泳動)で決定したポリマーの分子量と長さ
は、おおまかな値であると理解するものとする。そのような値が“約”Xとか“
ほぼ”Xと表記されている場合には、Xの申告値が±10%の精度であると理解する
ものとする。 本発明により、IL-1ファミリーのメンバーである新規なタンパク質群が提供さ
れる。これらのタンパク質を“zil1a4”と名づける。代表的なヒトzil1a4配列(
配列番号:1と2)を解析すると、このタンパク質は、同じファミリーの他のメン
バーと同様、12本のβ鎖が巻きついてβバレル構造になったコア構造を含んでい
ることがわかる。ただしこれらβ鎖は、ループによって互いに離れた状態にされ
ている。β鎖間のループは、ファミリーのメンバー同士で違いが非常に大きく、
受容体との結合に関係していると考えられている。これらループは、それぞれが
少なくとも3個のアミノ酸残基を含んでおり、最大で17残基までアミノ酸残基を
含むことができる。これらループは、β鎖またはヘリックスを形成することはな
いが、βターンを含むことができる(実際そうなっていることがしばしばある)
。配列番号:2を参照すると、12本のβ鎖は、残基60〜64、残基68〜72、残基77
〜79、残基90〜96、残基108〜113、残基118〜123、残基132〜138、残基154〜160
、残基165〜169、残基175〜179、残基187〜189、残基201〜204によって形成され
ていることがわかる。これらの鎖は、疎水性アミノ酸残基(ロイシン、バリン、
フェニルアラニン、イソロイシン)を多く含むという特徴がある。ループは、残
基65〜67、残基73〜76、残基80〜89、残基97〜107、残基114〜117、残基124〜13
1、残基139〜153、残基161〜164、残基170〜174、残基180〜186、残基190〜200
を含んでいる。
【0026】 zil1a4タンパク質は、β鎖とループに加え、保存されたモチーフを、(1)配
列番号:2の残基167〜171、(2)配列番号:2の残基173〜177、(3)配列番号:
2の残基186〜190、(4)配列番号:2の残基199〜204に対応する位置に有すると
いう特徴がある。これらモチーフを表1に示す。アミノ酸残基の表示には標準的
な1文字コードを用いた。角括弧は、モチーフ内の所定の位置で代替可能な残基
を示す。
【0027】
【表1】
【0028】 したがって本発明により、配列番号:7に示したzil1a4タンパク質のファミリ
ーが提供される。 IL-1ファミリーのタンパク質の高次構造は、4本鎖の共有結合モノマーが3つ組
み合わさって12本の鎖からなる構造体(“三つ葉のクローバー”)になることも
予想される。これらモノマーが互いに重なると、配列番号:2の残基90(イソロ
イシン)、残基155(イソロイシン)、残基200(グルタミン酸)が、それぞれの
モノマーで似たような位置を占める。
【0029】 第2のヒトzil1a4の選択的スプライシング形態を配列番号:8と配列番号:9に
示す。この短い形態を配列番号:2のタンパク質と比較し、対応するゲノム配列
を解析すると、配列番号:8のDNAには配列番号:1のDNAと比べて2つのエキソン
が欠けていることがわかる。配列番号:9に示したアミノ酸配列は、表1に示した
ように変えることができる。そこで本発明により、配列番号:10に示した第2のz
il1a4タンパク質のファミリーが提供される。
【0030】 本発明のタンパク質は免疫応答を調節する。この明細書においては、細胞の増
殖、細胞の分化、細胞の成熟、細胞の活性化のうちの1つ以上が“免疫応答”と
いう概念に含まれる。免疫応答の調節には炎症の調節が含まれる。免疫応答のこ
れら指標は公知の方法で測定する。それについて以下に詳しく説明する。 本発明のタンパク質は、個々のアミノ酸配列の違いに応じて炎症促進活性(ア
ゴニスト)または炎症抑制活性(アンタゴニスト)を有することが予想される。
一般に、配列番号:2の200番目の位置(配列番号:9の139番目の位置)にリシン
残基を有するzil1a4タンパク質は、炎症抑制活性を持つであろう。それに対して
この位置にグルタミン酸を有するzil1a4タンパク質は、炎症促進活性を持つであ
ろう。炎症促進活性は、この位置のグルタミン酸をアスパラギン酸で置換するこ
とによって小さくすることができる。配列番号:2の残基90と残基155(配列番号
:9の残基29と残基94にそれぞれ対応する)に対応する位置の配列の変異は、生
物活性にも影響する可能性がある。いくつかの実施態様によれば、配列番号:2
の残基90に対応する位置にリシン、グルタミン酸、またはイソロイシンを、配列
番号:2の残基155に対応する位置にアラニン、イソロイシン、またはトレオニン
を有するzil1a4タンパク質も本発明に含まれる。配列番号:2の残基番号90、155
、200に対応するアミノ酸残基が置換されたzil1a4タンパク質の配列を配列番号
:11と配列番号:12に示す。理論に囚われるつもりはないが、zil1a4タンパク質
は、IL-1受容体またはIL-1ホモログ受容体を通じて作用を及ぼすと考えられてい
る。これら受容体は、C-2タイプの免疫グロブリン・ドメインを有することを特
徴とする。そのような受容体としては、IL-1受容体タイプI(シムズ他、Proc. N
atl. Acad. Sci. USA、第86巻、8946〜8950ページ、1989年)、IL-1受容体タイ
プII(マクマハン他、EMBO J.、第10巻、2821〜2832ページ、1991年)、ST2(ト
ミナガ他、Biochim. Biophys. Acta、第1171巻、215〜218ページ、1992年)、オ
ピオイド結合タンパク質/細胞接着分子(シャークとリー、Gene、第155巻、213
〜217ページ、1995年)、塩基性FGF受容体(イサッキ他、Nuc. Acids Res.、第1
8巻、1906ページ、1990年;ディオンヌ他、EMBO J.、第9巻、2685〜2692ページ
、1990年)が挙げられる。炎症促進活性ならびに炎症抑制活性は、従来技術で公
知の標準的なIL-1活性分析法を用いて調べることができる。
【0031】 理論に囚われるつもりはないが、配列番号:2の残基番号1、12、43のメチオニ
ン残基は、翻訳開始部位となっている可能性がある。残基54と残基60はタンパク
質分解処理部位である可能性がある。そこで本発明により、配列番号:7のアミ
ノ酸残基60〜218を含むポリペプチド、好ましくは配列番号:11のアミノ酸残基6
0〜218を含むポリペプチド、さらに好ましくは配列番号:2または配列番号:14
のアミノ酸残基60〜218を含むポリペプチドが提供される。また、本発明により
、配列番号:7のアミノ酸残基54〜218を含むポリペプチド、好ましくは配列番号
:11のアミノ酸残基54〜218を含むポリペプチド、さらに好ましくは配列番号:2
または配列番号:14のアミノ酸残基54〜218を含むポリペプチドも提供される。
さらに本発明により、配列番号:7のアミノ酸残基43〜218を含むポリペプチド、
好ましくは配列番号:11のアミノ酸残基43〜218を含むポリペプチド、さらに好
ましくは配列番号:2または配列番号:14のアミノ酸残基43〜218を含むポリペプ
チドと、配列番号:7のアミノ酸残基12〜218を含むポリペプチド、好ましくは配
列番号:11のアミノ酸残基12〜218を含むポリペプチド、さらに好ましくは配列
番号:2または配列番号:14のアミノ酸残基12〜218を含むポリペプチドも提供さ
れる。これらタンパク質は、配列番号:2の残基167〜171、残基173〜177、残基1
86〜190、残基199〜204に対応する位置にそれぞれ上記のモチーフ1〜4を含んで
いる。さらに、このタンパク質は、配列番号:2の残基60〜64、残基68〜72、残
基77〜79、残基90〜96、残基108〜113、残基118〜123、残基132〜138、残基154
〜160、残基165〜169、残基175〜179、残基187〜189、残基201〜204に対応する
位置にβ鎖を含んでいる。なおこれらβ鎖は、上記のループによって互いに離れ
た状態になっている。
【0032】 当業者であれば、生物学的機能を変えずに本発明のタンパク質に対して小さな
変更を施しうることが理解できよう。例えば、分子のさまざまな領域の長さを変
えることによって、特にループの長さやβ鎖またはモチーフによって規定されて
いない他の配列の長さを変えることによって、zil1a4タンパク質の長さを変える
ことができる。β鎖をわずかに延長することもできる。アミノ酸の置換、挿入、
欠失の程度を制限して、得られるタンパク質が、配列番号:7の残基60〜218、ま
たは配列番号:10の残基1〜157と少なくとも95%一致しているようにすることが
好ましい。
【0033】 配列が一致する割合は、従来の方法で確認することができる。例えば、アルト
シュル他、Bull. Math. Bio.、第48巻、603〜616ページ、1986年と、ヘニコフと
ヘニコフ、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915〜10919ページ、1992年
を参照のこと。要するに、最初のギャップのペナルティを10、延長ギャップのペ
ナルティを1にし、表2に示したヘニコフとヘニコフ(前掲文献)の“BLOSUM 62
”スコアリング行列(アミノ酸は標準的な1文字記号で表記してある)を用いて
、アラインメント・スコアが最適になるように2つのアミノ酸配列をアラインメ
ントする。すると一致の割合が以下の式から計算できる。
【0034】 (一致の合計数/長いほうの配列の長さ+2つの配列をアラインメントするた
めに長いほうの配列に挿入したギャップの数)×100。
【0035】
【表2】
【0036】 アミノ酸配列間の一致の程度は、ピアーソンとリップマン(Proc. Natl. Acad
. Sci. USA、第85巻、2444ページ、1988年)およびピアーソン(Meth. Enzymol.
、第183巻、63ページ、1990年)の“FASTA”類似度検索アルゴリズムを用いて明
らかにすることができる。要するに、FASTAはまず最初に、調べている配列(例
えば配列番号:2)とテスト配列の間で、一致箇所(ktup変数が1の場合)が最も
多くなっているか、または一致ペアの箇所(ktup=2の場合)が最も多くなってい
る領域を明らかにすることによって配列の類似度を特徴づける。ただし、保存さ
れたアミノ酸の置換、挿入、欠失は考慮しない。アミノ酸置換行列を用いてすべ
てのアミノ酸対の類似度を比較することによって、一致箇所が多い上位から10の
領域のスコアを再度計算し、それら領域の端部を“トリミングして”最高スコア
に寄与するアミノ酸残基だけが含まれるようにする。(配列の長さとktup値に基
づいた所定の公式で計算した)“カットオフ”値よりも大きなスコアとなる領域
がいくつか存在している場合には、トリミングした最初の領域を調べ、その領域
を加えることでギャップを伴う大まかなアラインメントが形成されるかどうかを
確認する。最後に、2つのアミノ酸配列の最高スコアの領域を、ネーデルマン−
ヴンシュ−セラーズのアルゴリズム(ネーデルマンとヴンシュ、J. Mol. Biol.
、第48巻、444ページ、1970年;セラーズ、SIAM J. Appl. Math.、第26巻、787
ページ、1974年)を用いてアラインメントする。なおこのアルゴリズムでは、ア
ミノ酸の挿入と欠失が許されている。FASTA解析における好ましいパラメータは
、ktup=1、最初のギャップのペナルティ=10、延長ギャップのペナルティ=1、
置換行列=BLOSUM62である。これらパラメータは、ピアーソンの1990年の論文(
前掲文献)の付録2に説明してあるように、スコアリング行列ファイル(“SMATR
IX”)を変更することによってFASTAプログラムに導入することができる。
【0037】 上記の比を用いると、FASTAで核酸分子の配列の一致を決定することもできる
。ヌクレオチド配列を比較する場合には、ktup値は1〜6が可能であるが、その値
は3〜6であることが好ましく、それ以上に好ましいのは3であり、他のパラメー
タはデフォルトに設定する。 アミノ酸は、似た性質を持ったアミノ酸と置換されることが好ましい(“保存
された置換”)。BLOSUM62の表(表2)は、関連したタンパク質のグループ500以
上において高度に保存された領域となっているタンパク質配列断片群に対して約
2,000の局所的多重アラインメントを行なうことにより導き出されたアミノ酸置
換行列である(ヘニコフとヘニコフ、前掲文献)。したがって、BLOSUM62置換頻
度を用いて、本発明のアミノ酸配列において置換できる保存されたアミノ酸を決
定することができる。この明細書では、“保存されたアミノ酸の置換”という表
現は、BLOSUM62の値が-1よりも大きい置換について用いる。例えば、BLOSUM62の
値が0、1、2、または3で特徴づけられる置換の場合には、アミノ酸の置換は保存
されている。保存されたアミノ酸の好ましい置換は、BLOSUM62の値が1以上(例
えば1または2または3)であることを特徴とする。しかしそれよりも好ましい保
存されたアミノ酸の置換は、BLOSUM62の値が2以上(例えば2または3)であるこ
とを特徴とする。
【0038】 本発明のタンパク質は、自然界には存在しないアミノ酸残基を含んでいてもよ
い。自然界には存在しないアミノ酸としては、トランス-3-メチルプロリン、2,
4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリ
ン、N-メチルグリシン、アロ-トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチ
ルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグル
タミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-メチル
プロリン、4-メチルプロリン、3, 3-ジメチルプロリン、第3ロイシン、ノルバリ
ン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニ
ン、4-フルオロフェニルアラニンなどが挙げられるが、これがすべてではない。
自然界には存在しないアミノ酸をタンパク質に組み込む方法がいくつか従来技術
として知られている。例えば、ナンセンス突然変異を化学的にアミノアシル化し
たサプレッサーtRNAを用いて抑制するというインビトロの系を用いることができ
る。アミノ酸とアミノアシル化したtRNAを合成する方法が従来技術として知られ
ている。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写と翻訳は、大腸菌S30抽出
物と、市販されている酵素およびその他の試薬とを含む細胞フリーの系で行なわ
せる。タンパク質はクロマトグラフィーで精製する。例えばロバートソン他、J.
Am. Chem. Soc.、第113巻、2722ページ、1991年;エルマン他、Methods Enzymo
l.、第202巻、301ページ、1991年;チャン他、Science、第259巻、806〜809ペー
ジ、1993年;チャン他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第90巻、10145〜10149ペ
ージ、1993年を参照のこと。第2の方法では、突然変異したmRNAと化学的にアミ
ノアシル化したサプレッサーtRNAをアフリカツメガエルの卵母細胞に微量注入す
ることにより、翻訳をその卵母細胞の中で行なわせる(トゥルカッティ他、J. B
iol. Chem.、第271巻、19991〜19998ページ、1996年)。第3の方法では、大腸菌
の細胞を、置換されるはずの天然アミノ酸(例えばフェニルアラニン)が存在し
ていない状態、かつ、自然界には存在しない所望のアミノ酸(例えば2-アザフェ
ニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、または4-フ
ルオロフェニルアラニン)が存在している状態で培養する。自然界には存在しな
いそのアミノ酸が、それに対応する自然界のアミノ酸の代わりにタンパク質に組
み込まれる。コイデ他、Biochem.、第33巻、7470〜7476ページ、1994年を参照の
こと。自然界に存在するアミノ酸残基は、インビトロでの化学的修飾によって自
然界には存在しない種類のものに変換できる。化学的修飾に部位指向性突然変異
誘発を組み合わせると、置換の範囲をさらに広げることができる(ウィンとリチ
ャード、Protein Sci.、第2巻、395〜403ページ、1993年)。
【0039】 本発明では、配列番号:2に示したzil1a4の配列中のアミノ酸配列を変化させ
て別のzil1a4タンパク質を得ることができる。そのように変化させるのは、生物
活性にとって本質的な高次構造が壊れるのを最小にするためである。特に、β鎖
とループの配置が壊されないようにする。したがって、特に疎水性残基を置換す
るときに、β鎖内では保存されたアミノ酸を置換することが好ましい。当業者で
あれば、疎水性残基および芳香族残基が配列内でときに互いに置換できることを
認識しているであろう。例えばフェニルアラニンが上記のようにモチーフ1、2、
3、4の中に存在し、疎水性機能を担っていると考えられている。アミノ酸配列が
変化することの効果は、利用可能なソフトウエア(例えば、Insight II(登録商
標)という、ビューアーとホモロジー・モデル作成のためのツール;MSI社、サ
ン・ディエゴ、カリフォルニア州)を用いたコンピュータ・モデルを通じて予測
すること、あるいは、アラインメントと結晶構造の解析を通じて判断することが
できる。例えば、プリーストル他、EMBO J.、第7巻、339〜343ページ、1988年;
プリーストル他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第86巻、9667〜9671ページ、19
89年;フィンツェル他、J. Mol. Biol.、第209巻、779〜791ページ、1989年;グ
レイヴズ他、Biochem.、第29巻、2679〜2684ページ、1990年;クロアーとグロー
ネンボーン、J. Mol. Biol.、第221巻、47〜53ページ、1991年;ヴィガーズ他、
J. Biol. Chem.、第269巻、12874〜12879ページ、1994年;シュロイダー他、Eur
. J. Biochem.、第227巻、838〜847ページ、1995年;シュロイダー他、Nature、
第386巻、194〜200ページ、1997年を参照のこと。配列番号:2の親水性プロファ
イルを図1に示す。当業者であれば、zil1a4ポリペプチドのアミノ酸配列を変化
させるとき、全体のプロファイルを壊さないようにするため、疎水性と親水性を
考慮することを認識しているであろう。特に同じファミリーの他のメンバーにお
けるアミノ酸置換の効果に関する情報が利用できるときには、zil1a4を同じファ
ミリーの他のメンバーとアラインメントすると、置換するアミノ酸を選択する上
での指針ともなる。例えばアラインメントから、残基番号200(グルタミン酸)
をリシンと置換でき、その結果として活性がアゴニストからアンタゴニストへと
変化することが示唆される(ジュー他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第88巻、
2658〜2662ページ、1991年;オールドフィールド他、Protein Eng.、第6巻、865
〜871ページ、1993年)。配列番号:2のこのような変異体(“zil1a4-E200K”と
呼ぶ)を配列番号:14に示す。配列番号:9に対応する変異体を配列番号:15に
示す。一般に、ループの配列は変えないことが好ましい。というのも、分子のル
ープ領域は受容体の結合にとって重要であると考えられているからである。とは
いえ、配列番号:2の残基番号170、171、174、186、190、199、200は、この明細
書に示したモチーフの限界内で置換してもよい。しかしループをさらに変化させ
て、受容体の結合特異性やインターロイキン生物学の他の側面を研究するツール
にすることができる。
【0040】 本発明のポリペプチドに含まれる必須アミノ酸は、部位指向性突然変異誘発や
アラニン・スキャンニング突然変異誘発などの従来技術で知られている方法に従
って明らかにすることができる(カニンガムとウエルズ、Science、第244巻、10
81〜1085ページ、1989年;バス他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第88巻、4498
〜4502ページ、1991年)。後者の方法では、アラニンのみの突然変異を分子内の
すべての残基に導入し、その結果として得られる突然変異した分子の生物活性ま
たはその他の特性をテストして、その分子の活性にとって本質的なアミノ酸残基
を明らかにする。
【0041】 多数のアミノ酸の置換を既知の突然変異誘発法を用いて実現し、それを既知の
スクリーニング法でテストすることができる。そうした方法は、例えばライトハ
アル−オルソンとザウアー(Science、第241巻、53〜57ページ、1988年)または
ボヴィとザウアー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第86巻、2152〜2156ページ、
1989年)が記載している。要するに、これら研究者は、ポリペプチド内の2つ以
上の位置を同時にランダム化し、機能的なポリペプチドを選択し、次いで突然変
異したポリペプチドの配列を決定して、各位置で可能な置換の範囲を決定すると
いう方法を記載している。用いることのできる他の方法としては、ファージ提示
(例えばロウマン他、Biochem、第30巻、10832〜10837ページ、1991年;ラドナ
ー他、アメリカ合衆国特許第5,223,409号;フューズ、WIPO公開WO 92/06204)や
領域指向性突然変異誘発(ダービシャー他、Gene、第46巻、145ページ、1986年
;ナー他、DNA、第7巻、127ページ、1988年)などがある。
【0042】 本明細書に記載したzil1a4のDNAとzil1a4ポリペプチドの配列の変異体は、DNA
シャッフリングによって生み出すことができる。それについては、ステンマー、
Nature、第370巻、389〜391ページ、1994年;ステンマー、Proc. Natl. Acad. S
ci. USA、第91巻、10747〜10751ページ、1994年に記載されている。要するに、
変異体DNAは、親となるDNAをランダムに断片化してインビトロで相同的組み換え
を行なわせた後、PCRを利用して再度組み立てると、ランダム点突然変異が導入
されることによって生まれる。例えば対立遺伝子変異体や異なる種に由来する遺
伝子など、親となる遺伝子のファミリーを用いてこの方法を変更し、さらなる変
異をプロセス中に導入することができる。所望の活性を選択またはスクリーニン
グした後、突然変異誘発とアッセイを繰り返すと、所望の突然変異を選択すると
同時に害のある変化を除外することになり、配列が迅速に“進化”する。
【0043】 本明細書に記載した突然変異誘発法を大量または高スループットのスクリーニ
ング法と組み合わせると、zil1a4変異体タンパク質の生物活性を検出することが
できる。活性のあるzil1a4タンパク質をコードしている突然変異したDNA分子は
、宿主細胞から回収し、最新式の装置を用いて配列を迅速に決定することができ
る。これらの方法を用いると、目的とするポリペプチドの個々のアミノ酸残基の
重要度を迅速に決定することができる。したがってこれらの方法は、構造が未知
のポリペプチドに適用することができる。IL-1の生物活性ならびに受容体の結合
性のアッセイ法については従来技術において公知である。
【0044】 活性アッセイ法の具体例としては、IL-1に反応する細胞(例えばD10.N4.M細胞
)を二酸化炭素を5%含む大気中においてIL-1またはテスト用zil1a4タンパク質
の存在下で37℃にて72時間培養する分裂誘発アッセイが挙げられる。IL-2(と、
場合によってはさらにIL-4)を培地に添加し、アッセイの感度と特異性を向上さ
せる。次に[3H]チミジンを添加し、6時間にわたって培養を続ける。組み込ま
れる標識の量が、アゴニストの活性を示している。ホプキンズとハンフリーズ、
J. Immunol. Methods、第120巻、271〜276ページ、1989年;グリーンフェダー他
、J. Biol. Chem.、第270巻、22460〜22466ページ、1995年を参照のこと。zil1a
4によって細胞増殖が促進されるかどうかは、zil1a4タンパク質とフィトヘマグ
ルチニンの中で培養した胸腺細胞を用いて測定することもできる。増殖は、3H-
チミジンの組み込みとして、あるいは3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,
5-ジフェニル臭化テトラゾリウム(MTT)の代謝分解に基づいた色彩測定アッセ
イにより検出する(モスマン、J. Immunol. Meth.、第65巻、55〜63ページ、198
3年)。要するに、MTT溶液をアッセイ用細胞に100μl添加し、その細胞を37℃で
培養する。4時間後、イソプロパノールに溶かした0.04NのHClを200μl添加して
その溶液を混合し、サンプルの吸光度を570nmで測定する。
【0045】 受容体の結合を、ラブリオラ−トムキンズ他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、
第88巻、11182〜11186ページ、1991年の競合結合法により測定する。要するに、
EL-4胸腺腫細胞から調製した膜(パガネッリ他、J. Immunol.、第138巻、2249〜
2253ページ、1987年)をテスト用タンパク質の存在下で37℃にて30分間培養する
。次に、標識したIL-1αとIL-1βを添加し、60分間にわたって培養を続ける。膜
を濾過してアッセイが終了する。従来法(例えばγ線カウンタ)により、結合し
た標識の量を測定する。別のアッセイ法では、zil1a4タンパク質が培養したヒト
表皮繊維芽細胞に結合する際に、標識されたIL-1と競合する能力を、ダウアー他
(Nature、第324巻、266〜268ページ、1986年)の方法に従って測定する。要す
るに、細胞を、標識したIL-1の存在下、適切な培地(例えば、1%BSA、0.1%ア
ジ化ナトリウム、20mMのHEPES pH7.4を含むRPMI 1640)の中に入れた丸底でウエ
ルが96個あるプレートの中に入れ、このプレートをロッカー・プラットフォーム
の上に載せて8℃にて培養する。さまざまな濃度のzil1a4タンパク質を添加する
。培養後(典型的には約2時間後)、400μlのポリエチレン製遠心分離管に入れ
たフタレート油200μlの中でアリコート60μlを遠心分離し、その管の端をかみ
そりの刃で切り取ることにより、結合していない標識から細胞を分離する。これ
についてはシーガルとハーウィッツ、J. Immunol.、第118巻、1338〜1347ページ
、1977年に記載されている。受容体の結合は、固定化した受容体を用いて、ある
いはリガンド結合受容体の断片を用いて測定することもできる。例えば、固定化
したIL-1受容体を標識したIL-1および標識していないテスト用タンパク質と接触
させると、対照と比較した場合のIL-1の結合の減少が、テスト用タンパク質の受
容体結合活性を示していることがわかる。別の方法として、受容体またはリガン
ド結合受容体断片をバイオセンサー(例えば、BIACore(登録商標)、ファルマ
シア・バイオセンサー社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)上に固定化し
、結合を測定する。クローニングしたcDNAをコードしているマウスとヒトのIL-1
受容体が、ダウアー他のアメリカ合衆国特許第5,081,228号に開示されている。I
L-1のアンタゴニストは受容体結合活性を示すであろうが、IL-1と結合したとき
は、IL-1活性アッセイにおいてほとんど活性を示さないか、あるいはIL-1を媒介
とした応答が低下するであろう。IL-1に対する応答を発生させるのに必要な受容
体占有レベルが低いため、IL-1活性を中和するにはアンタゴニストがかなり過剰
に(典型的にはモル数で10〜1000倍の過剰)必要とされる可能性がある。
【0046】 細胞の活性化は、応答する細胞による接着分子またはサイトカインの発現を測
定することにより調べることができる。内皮細胞上のICAM、VCAM、E-セレクチン
などの接着分子は、IL-1βやそれ以外のサイトカインによって誘起されることが
知られている(コリンズ他、J. Biol. Chem.、第266巻、2466〜2473ページ、199
1年;イアデマルコ他、J. Biol. Chem.、第267巻、1623〜1632ページ、1992年;
ヴォラバーガー他、J. Immunol.、第147巻、2777〜2786ページ、1991年)。これ
らの分子やその他の分子がさまざまに組み合わさり、白血球が血管壁に接着した
り血管外に浸出したりすることを助けている。これが、感染、炎症、組織の損傷
に対する応答の重要なステップである(ベヴィラッカ、Annu. Rev. Immunol.、
第11巻、767〜804ページ、1993年)。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を臍帯静脈
から採取し、従来技術で周知の方法によって初代培養する。接着分子の上方調節
は、これら細胞表面のマーカーに対して特異的な抗体を用いたフローサイトメト
リー法によって、あるいはELISAタイプのアッセイによって、あるいは単球、T
細胞、好中球などの免疫細胞の接着を測定することによって、測定することがで
きる。分離した細胞は、これら系統に由来する不死化細胞であるTHP-1、U-937、
HL-60、またはジャーカット細胞と同様、この目的で用いることができる。これ
ら接着分子の発現は、IL-1βまたはその他のサイトカインの存在下または不在下
で測定することができる。サイトカインを産生するのは、主として、T細胞、ナ
チュラル・キラー(NK)細胞、単球/マクロファージである(カサテラ、Immuno
logy Today、第16巻、21〜26ページ、1995年)。さまざまな炎症刺激により、こ
れらの細胞においてサイトカインの放出が誘導される。サイトカインの放出は、
パリロ、N. Engl. J. Med.、第328巻、1471〜1477ページ、1993年、またはエペ
ロンとユンギ、J. Immunol. Methods、第194巻、121〜129ページ、1996年に記載
されているアッセイ法で測定することができる。そのようなアッセイ法の1つで
は、リポ多糖(LPS)によって誘導される単球細胞系THP-1を利用する。サイトカ
インの放出は、目的とするサイトカインに対して特異的な抗体を用いたELISAな
どのイムノアッセイにより検出することができる。サイトカイン放出の活性化と
抑制のいずれも、これらの方法で測定することができる。サンドボルグ他、J. I
mmunol.、第155巻、5206〜5212ページ、1995年を参照のこと。
【0047】 本発明のタンパク質は、アミノ末端延長部、カルボキシル末端延長部をさらに
含むことができる。含んでいてよいのは、例えば、アミノ末端のメチオニン残基
、長さが約20〜25残基までの小さなリンカー・ペプチド、あるいはすでに説明し
たアフィニティ・タグである。2つ以上のアフィニティ・タグを組み合わせて用
いてもよい。アフィニティ・タグを含むポリペプチドは、zil1a4ポリペプチドと
アフィニティ・タグの間に、ポリペプチド・リンカーおよび/またはタンパク質
切断部位をさらに含むことができる。好ましい切断部位としては、トロンビン切
断部位やXa因子切断部位が挙げられる。
【0048】 本発明によれば、さらに、他のさまざまなポリペプチド融合体が提供される。
例えば、アメリカ合衆国特許第5,155,027号と第5,567,584号に開示されているよ
うに、zil1a4ポリペプチドを二量化タンパク質との融合体として調製することが
できる。好ましいそのような二量化タンパク質としては、免疫グロブリンの定常
領域が挙げられる。免疫グロブリン−zil1a4ポリペプチド融合体を遺伝子改変細
胞の中で発現させて、さまざまな多量化zil1a4アナログを生み出すことができる
。さらに、zil1a4ポリペプチドをサイトカインなどの別の生物活性分子と結合さ
せて多機能分子を生み出すこともできる。zil1a4ポリペプチドの1本以上のヘリ
ックスを別のサイトカインと結合させてこのポリペプチドの生物学的特性を向上
または変化させることができる。付加ドメインをzil1a4ポリペプチドと融合させ
て、このポリペプチドを特定の細胞、組織、または巨大分子(例えばコラーゲン
)を標的とすることができる。例えば、zil1a4ポリペプチドまたはzil1a4タンパ
ク質が所定のタイプの細胞を標的とするようにできる。そのためには、zil1a4ポ
リペプチドを、標的とするその細胞の表面にある受容体と特異的に結合するリガ
ンドと融合させる。このようにして、治療または診断を目的として、ポリペプチ
ドとタンパク質を標的に向かわせることができる。zil1a4ポリペプチドを、2つ
またはそれ以上の部分と融合させることができる。そうした部分としては、精製
用のアフィニティ・タグや標的ドメインなどがある。ポリペプチド融合体は、1
つ以上の切断部位を特にドメイン間に含むことができる。トゥアン他、Connecti
ve Tissue Research、第34巻、1〜9ページ、1996年を参照のこと。
【0049】 本発明のポリペプチド融合体は、一般に、約1,500個以下のアミノ酸残基、好
ましくは約1,200個以下、さらに好ましくは1,000個以下のアミノ酸残基を含むこ
とになるが、アミノ酸残基の数は多くの場合にこれよりもかなり少ないであろう
。例えば218残基からなるzil1a4ポリペプチド(例えば配列番号:2の残基1〜218
)を、大腸菌のβ-ガラクトシダーゼ(1,021残基;カサダバン他、J. Bacteriol
.、第143巻、971〜980ページ、1980年を参照のこと)と、10残基からなるスペー
サと、4残基からなるXa因子切断部位と融合させ、1,253残基からなるポリペプチ
ドを生み出すことができる。第2の具体例として、配列番号:14の残基60〜218を
、マルトース結合タンパク質(約370残基)と、4残基からなる切断部位と、6残
基からなるポリヒスチジン・タグと融合させることができる。
【0050】 本発明によれば、さらに、zil1a4タンパク質をコードするポリヌクレオチド分
子(DNA分子とRNA分子が含まれる)が提供される。本発明のポリヌクレオチドは
、センス鎖と;アンチセンス鎖と;センス鎖とアンチセンス鎖の両方を含んでお
り、水素結合によってアニールされた二本鎖としてのDNAとを含んでいる。zil1a
4タンパク質をコードする代表的なDNA配列を配列番号:1、配列番号:8、配列番
号:13に示す。これらzil1a4タンパク質やそれ以外のzil1a4タンパク質をコード
する他のDNA配列は、当業者であれば遺伝暗号に基づいて容易に得ることができ
る。対応するRNA配列は、Tの代わりにUを用いることで得られる。
【0051】 当業者であれば、遺伝暗号が縮重しているためにこれらポリヌクレオチド分子
の配列に多くの変化形が可能であることが容易に理解できよう。配列番号:16は
、配列番号:2のzil1a4ポリペプチドをコードするあらゆるDNAをカバーする縮重
したDNA配列である。配列番号:17は、配列番号:14のzil1a4ポリペプチドをコ
ードするあらゆるDNAをカバーする縮重したDNA配列である。配列番号:18と配列
番号:19は、配列番号:9と配列番号:15のzil1a4ポリペプチドをそれぞれコー
ドするあらゆるDNAをカバーする縮重したDNA配列である。当業者であれば、配列
番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19の縮重した配列は、Tの
代わりにUを用いることで、それぞれ配列番号:2、配列番号:14、配列番号:9
、配列番号:15をコードするあらゆるRNA配列を与えることも理解できよう。し
たがって本発明では、配列番号:16のヌクレオチド1〜654、配列番号:17のヌク
レオチド1〜654、配列番号:18のヌクレオチド1〜471、配列番号:19のヌクレオ
チド1〜471を含む、zil1a4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、これら
配列の一部で、より短いzil1a4タンパク質をコードしている部分、これらのそれ
ぞれに対応するRNAを考えることができる。表3には、配列番号:16〜19において
縮重したヌクレオチドの位置を示すのに用いる1文字記号を記載してある。“分
割”は1文字コードによって表わしたヌクレオチドである。“相補物”は、相補
的なヌクレオチドのコードを示している。AはTと相補的であり、GはCと相補的で
あるので、例えばコードYはCまたはTを表わし、その相補物RはAまたはGを表わす
【0052】
【表3】
【0053】 配列番号:16〜19で用いた縮重したコドンは、任意のアミノ酸に対する可能な
すべてのコドンを網羅している。それを表4に記載する。
【0054】
【表4】
【0055】 当業者であれば、各アミノ酸をコードしている可能なあらゆるコドンの代表で
ある縮重したコドンを1つ決定する際に、いくらかあいまいさがあることが理解
できよう。例えばセリンに対する縮重したコドン(WSN)は、場合によってはア
ルギニン(AGR)をコードすることができ、アルギニンに対する縮重したコドン
(MGN)は、場合によってはセリン(AGY)をコードすることができる。似たよう
な関係が、フェニルアラニンをコードしているコドンとロイシンをコードしてい
るコドンの間に存在している。したがって、縮重した配列に含まれるいくつかの
ポリヌクレオチドは、さまざまなアミノ酸配列をコードする可能性があるが、当
業者であれば、配列番号:2、9、14、15のアミノ酸配列を参照してそのような配
列の変化形を容易に同定できる。配列の変化形は、本明細書に記載したようにし
て容易に機能をテストすることができる。
【0056】 本発明の好ましい実施態様によれば、単離されたポリヌクレオチドは、厳しい
条件のもとで、配列番号:1や配列番号:8の似たサイズの領域、またはこれらと
相補的な配列とハイブリダイズすることになる。一般に、厳しい条件は、温度が
、規定のイオン強度とpHにおける特定の配列に対する融点(Tm)よりも約5℃低
くなるように選択する。Tmは、目的とする配列の50%が、完全に相補的なプロー
ブと(規定のイオン強度とpHにおいて)ハイブリッドを形成する温度である。典
型的な厳しい条件とは、pH7において塩の濃度が約0.03Mまでであり、温度が少な
くとも約60℃よりも高いという条件である。
【0057】 当業者であれば、異なる種の間で“コドン利用法の好み”が存在しうることも
理解できよう。一般的な参考文献として、ガンサム他、Nuc. Acids Res.、第8巻
、1893〜1912ページ、1980年;ハアス他、Curr. Biol.、第6巻、315〜324ページ
、1996年;ウェイン−ホブソン他、Gene、第13巻、355〜364ページ、1981年;グ
ロスジャンとフィアース、Gene、第18巻、199〜209ページ、1982年;ホルム、Nu
c. Acids Res.、第14巻、3075〜3087ページ、1986年;イケムラ、J. Mol. Biol.
、第158巻、573〜597ページ、1982年を参照のこと。ある特定の種で好まれるコ
ドンを、当業者に知られているさまざまな方法で本発明のポリヌクレオチドに導
入することができる。組み換えDNAに好みのコドン配列を導入すると、例えば特
定のタイプの細胞または種においてタンパク質への翻訳がより効率的になってタ
ンパク質の生産が増える可能性がある。したがって配列番号:16〜19に示した縮
重コドン配列は、当業者が普通利用しているさまざまなタイプの細胞や種、およ
び本明細書に記載したさまざまなタイプの細胞や種におけるポリヌクレオチドの
発現を最適化するためのテンプレートとして役立つ。好みのコドンを含む配列は
、本明細書に記載したように、さまざまな種の宿主細胞で発現をテストして最適
化したり、機能をテストしたりすることができる。
【0058】 上述したように、本発明のzil1a4ポリヌクレオチドにはDNAとRNAが含まれる。
DNAとRNAを調製する方法は従来技術において周知である。一般に、RNAは大量のz
il1a4 RNAを産生する組織または細胞から分離される。そのような組織と細胞は
、ノーザン・ブロット法によって容易に明らかになる(トーマス、Proc. Natl.
Acad. Sci. USA、第77巻、5201ページ、1980年)。そのような組織と細胞として
は、骨髄、胎児の脳、胎児の肺、リンパ節、グリオブラストーマ、単球、ダウデ
ィ細胞(ヒト・バーキット・リンパ腫細胞系)、臍静脈内皮細胞(HUVEC)が挙
げられる。全RNAは、グアニジン−HCl抽出法の後、濃度傾斜のあるCsClの中で遠
心力を利用して分離することにより調製することができる(チャーグウィン他、
Biochemistry、第18巻、52〜94ページ、1979年)。ポリ(A)+RNAは、全RNAに対
してアヴィヴとレーダーの方法を用いて調製する(Proc. Natl. Acad. Sci. USA
、第69巻、1408〜1412ページ、1972年)。相補的DNA(cDNA)は、ポリ(A)+RNA
に対して公知の方法を用いることによって調製する。別の方法として、ゲノムDN
Aを分離することができる。次に、zil1a4ポリペプチドをコードしているポリヌ
クレオチドを同定し、例えばハイブリダイゼーションまたはPCRを利用して分離
する。
【0059】 本発明のポリヌクレオチドは、従来技術で公知の方法に従って自動装置(“遺
伝子マシン”)を用いて合成することもできる。例えば、グリックとパステルナ
ーク、『分子バイオテクノロジー:組み換えDNAの原理と応用』、ASMプレス社、
ワシントンD.C.、1994年;イケムラ他、Annu. Rev. Biochem.、第53巻、323〜35
6ページ、1984年;クリミー他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第87巻、633〜63
7ページ、1990年を参照のこと。
【0060】 この明細書に開示したzil1a4ポリヌクレオチドを用いて他のzil1a4タンパク質
をコードしているポリヌクレオチドを単離することができる。そのような他のタ
ンパク質としては、選択的スプライシングされたcDNA(分泌zil1a4タンパク質を
コードするcDNAを含む)と、他の種からの対応するポリヌクレオチド(オーソロ
グ)が挙げられる。これらオーソログ・ポリヌクレオチドを用いて、特に個々の
オーソログ・タンパク質を調製することができる。興味深い他の種としては、哺
乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫、それ以外の脊椎動物、無脊椎動物な
どであるが、それだけに限定されるわけではない。特に興味深いのは、他の哺乳
類に由来するzil1a4ヌクレオチドとzil1a4タンパク質、例えばヒト以外の霊長類
、ネズミ、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマのヌクレオチドとタンパク質
である。ヒトzil1a4のオーソログは、本発明により提供される情報と組成物を従
来のクローニング技術と組み合わせることでクローニングすることができる。例
えばcDNAは、zil1a4を発現するタイプの組織または細胞から得られたmRNAを用い
てクローニングできる。適切なmRNA源は、本明細書に記載した配列をもとにして
設計したプローブを用いてPCR法またはノーザン・ブロット法(トーマス、Proc.
Natl. Acad. Sci. USA、第77巻、5201ページ、1980年)を行なうことにより明
らかにできる。次に、ポジティブな組織または細胞系のmRNAからライブラリーを
調製する。次に、zil1a4をコードするcDNAをさまざまな方法で単離することがで
きる。例えば、ヒトcDNAの全体または一部を用いてプロービングする方法や、本
明細書に記載した配列に基づいた縮重プローブの集合を1つ以上用いてプロービ
ングする方法がある。一般に、ハイブリダイゼーションは緩やかな条件で実施す
る。すなわち、洗浄を1×SSCの中で行なうが、初回は40℃にて、以後は5℃ずつ
高くして、バックグラウンドが適度に小さくなるまで続ける。cDNAは、本明細書
に記載した代表的なヒトzil1a4ポリヌクレオチド配列をもとに設計したプライマ
ーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(マリス、アメリカ合衆国特許第4,683
,202号)を行なわせることによってクローニングすることもできる。別の方法と
して、cDNAライブラリーを利用して宿主細胞の形質変換を行なうか宿主細胞にト
ランスフェクトするかし、目的とするcDNAの発現をzil1a4ポリペプチドに対する
抗体を用いて検出することもできる。同様の技術を適用してゲノム・クローンを
単離することもできる。
【0061】 好ましいプローブとプライマーを以下の表5に示す。これらのプローブとプラ
イマーは、zil1a4(配列番号:1)、IL-1ra、IL-1α、IL-1βをアラインメント
したときに縮重が最小となっている領域からのものである。“コンセンサス”プ
ライマー、“相補”プライマーは、オーソログとパラログのどちらをクローニン
グするのにも役立つが、“zil1a4”プライマーは、一般に、パラログよりもオー
ソログをクローニングするのに役立つ。プライマーの各ペアについて対応するヒ
トzil1a4の残基(配列番号:2)を示してある。
【0062】
【表5】
【0063】 当業者であれば、配列番号:1に記載した配列がヒトzil1a4の1つの対立遺伝子
を表わしており、対立遺伝子変異や(例えば配列番号:8に示したような)選択
的スプライシングによる変異体も含め、自然の変異体の発生が予測できることが
理解できよう。この配列の対立遺伝子変異体は、異なる個体に由来するcDNAライ
ブラリーまたはゲノム・ライブラリーを標準的な方法に従ってプロービングする
ことによりクローニングできる。配列番号:1に示したDNAの対立遺伝子変異体は
、サイレント突然変異を含むものや、突然変異の結果としてアミノ酸配列が変化
したものも含め、本発明の範囲に含まれる。それと同様に、配列番号:2の対立
遺伝子変異体であるタンパク質も本発明の範囲に含まれる。mRNAの選択的スプラ
イシングにより生まれたcDNAは、zil1a4の免疫を調節する活性を保持しており、
本発明の範囲に含まれる。それと同様に、そのようなcDNAとmRNAによってコード
されたポリペプチドも本発明の範囲に含まれる。例えば、配列番号:2に示した
タンパク質は、シグナル・ペプチド配列が欠けているため、このタンパク質が細
胞質で発現した形態を示していると考えられている。分泌シグナル配列を含む選
択的スプライシングの形態のDNAが存在していることが予測される。
【0064】 これら配列の対立遺伝子変異体とスプライシング変異体は、異なる個体または
組織に由来するcDNAライブラリーまたはゲノム・ライブラリーを当業者に知られ
ている標準的な方法に従ってプロービングすることによりクローニングできる。 当業者であれば、変異体タンパク質、融合タンパク質も含め、任意のzil1a4ポ
リペプチドについて、上記の表3と4に記載した情報を用いて変異体をコードする
縮重したポリヌクレオチド配列の全体を容易に作り出すことができる。さらに、
当業者であれば、標準的なソフトウエアを用い、この明細書に記載したヌクレオ
チド配列とアミノ酸配列に基づいてzil1a4の変異体を考案することができる。し
たがって本発明により、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:7、配列番号:8
、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、
配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配
列番号:19の配列、ならびにこれら配列の一部からなるグループの中の少なくと
も1つの配列を与えるデータ構造がコードされた、コンピュータで読み出し可能
な媒体が提供される。コンピュータで読み出し可能な媒体の適切な形態としては
、磁性媒体と、光学的に読み取り可能な媒体が挙げられる。磁性媒体の具体例と
しては、ハード・ドライブまたは固定式ドライブ、ランダム・アクセス・メモリ
(RAM)チップ、フロッピー(登録商標)・ディスク、ディジタル・リニア・テ ープ(DLT)、ディスク・キャッシュ、ZIP(登録商標)ディスクが挙げられる。 光学的に読み取り可能な媒体としては、コンパクト・ディスク(例えば、CD-ROM 、再書き込み可能CD(RW)、記録可能CD、ディジタル多目的/ビデオ・ディスク (DVD)(例えばDVD-ROM、DVD-RAM、DVD+RW)が挙げられる。
【0065】 本発明のタンパク質は、完全長タンパク質、変異体タンパク質、融合タンパク
質も含め、従来技術に従って遺伝子工学で作った宿主細胞の中に産生させること
ができる。適切な宿主細胞は、形質転換ができるか、あるいは外来性DNAをトラ
ンスフェクトできて、しかも培養によって成長させることができるタイプの細胞
である。そうした宿主細胞としては、バクテリア、菌類の細胞、培養した高等な
真核細胞などがある。好ましいのは、真核細胞、中でも多細胞生物の培養した細
胞である。クローニングされたDNA分子を取り扱ったり、外来性DNAをさまざまな
宿主細胞に導入したりする技術については、サムブルック他、『分子クローニン
グ:実験室マニュアル』第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリ
ー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州、1989年と、オ
ースベル他編、『分子生物学における最新のプロトコル』、グリーン・アンド・
ワイリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク州、1993年に記載されている。
【0066】 一般に、zil1a4タンパク質をコードしているDNA配列は、発現ベクター内にあ
ってそのタンパク質の発現に必要とされる他の遺伝子要素と機能上関係している
。一般に、そのような遺伝子要素としては、転写プロモーターと転写ターミネー
ターがある。発現ベクターは、一般に、1つ以上の選択マーカーと1つ以上の複製
起点も含んでいる。もっとも当業者であれば、選択マーカーが別々のベクターに
あり、外来性DNAの複製は、宿主細胞のゲノムと一体化することによってなされ
るような系もあることが理解できよう。プロモーター、ターミネーター、選択マ
ーカー、ベクター、ならびにそれ以外の要素の選択は、当業者にとっては日常茶
飯事の仕事である。数多くのそうした要素が文献に記載されており、市販品とし
て提供されている。
【0067】 zil1a4タンパク質を宿主細胞の分泌経路へと導くため、分泌シグナル配列(リ
ーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列とも呼ばれる)を発現ベクターに組
み込む。分泌シグナル配列は、zil1a4遺伝子の分泌シグナル配列でも、別の分泌
タンパク質(例えばt-PA)に由来するものでも、新たに合成したタンパク質に由
来するものでもよい。分泌シグナル配列は、zil1a4 DNA配列と機能上関連してい
る。すなわち、これら2つの配列は正しいリーディング・フレームで結合して、
新たに合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くような位置になって
いる。分泌シグナル配列は、一般に、目的とするポリペプチドをコードしている
DNA配列に対して5'の位置にある。しかしある種の分泌シグナル配列は、目的と
するDNA配列の別の場所に位置していてもよい(例えばウェルチ他、アメリカ合
衆国特許第5,037,743号;ホランド他、アメリカ合衆国特許第5,143,830号を参照
のこと)。別の方法では、zil1a4タンパク質を細胞質で発現させ、宿主細胞を溶
解した後に単離する。
【0068】 培養した哺乳類の細胞は、本発明において用いるのに適した宿主である。外来
性DNAを哺乳類の宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウムを用いた
トランスフェクション法(ウィグラー他、Cell、第14巻、725ページ、1978年;
コルサロとピアーソン、Somatic Cell Genetics、第7巻、603ページ、1981年;
グラハムとファン・デア・エブ、Virology、第52巻、456ページ、1973年)、電
気穿孔法(ノイマン他、EMBO J.、第1巻、841〜845ページ、1982年)、DEAE-デ
キストランを用いたトランスフェクション法(オースベル他、前掲文献)、リポ
ソームを用いたトランスフェクション法(ホーレイ−ネルソン他、Focus、第15
巻、73ページ、1993年;チッカローネ他、Focus、第15巻、80ページ、1993年)
などがある。培養した哺乳類の細胞内における組み換えポリペプチドの産生につ
いて記載されているのは、例えば、レヴィンソン他、アメリカ合衆国特許第4,71
3,339号;ハーゲン他、アメリカ合衆国特許第4,784,950号;パーミター他、アメ
リカ合衆国特許第4,579,821号;リンゴールド、アメリカ合衆国特許第4,656,134
号である。培養した哺乳類の細胞として適切なのは、COS-1(ATCC番号CRL1650)
、COS-7(ATCC番号CRL1651)、BHK(ATCC番号CRL1632)、BHK570(ATCC番号CRL1
0314)、293(ATCC番号CRL1573;グラハム他、J. Gen. Virol.、第36巻、59〜72
ページ、1977年)、チャイニーズハムスターの卵巣(例えばCHO-K1;ATCC番号CC
L61)細胞系などである。さらに別の適切な細胞系が従来技術で知られており、
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド
州などの公的委託機関から入手することができる。一般には、強力な転写プロモ
ーター、例えばSV-40やサイトメガロウイルスに由来するプロモーターが好まし
い。例えば、アメリカ合衆国特許第4,956,288号を参照のこと。これ以外の適切
なプロモーターとしては、メタロチオネイン遺伝子に由来するプロモーター(ア
メリカ合衆国特許第4,579,821号と第4,601,978号)や、アデノウイルス主要後期
プロモーターなどがある。
【0069】 外来性DNAが挿入された哺乳類の培養細胞を選択するには、一般に薬剤選択が
利用される。そのような細胞は普通は“トランスフェクタント”と呼ばれる。選
択用試薬の存在下で培養されていて、目的とする遺伝子をその子孫に伝えること
のできる細胞は、“安定なトランスフェクタント”と呼ばれる。好ましい選択マ
ーカーは、抗生物質のネオマイシンに対する耐性をコードしている遺伝子である
。選択は、ネオマイシン・タイプの薬剤、例えばG-418などの存在下で行なう。
選択系は、目的とする遺伝子の発現レベルを上昇させるのに用いることも可能で
ある。このプロセスは“増幅”と呼ばれる。増幅は、選択用試薬を少量存在させ
た状態でトランスフェクタントを培養し、次に選択用試薬の量を増やしていき、
導入された遺伝子の産物を大量に産生する細胞を選択することにより行なう。増
幅が可能な選択マーカーとして好ましいのは、メトトレキセートに対する耐性を
与えるジヒドロ葉酸レダクターゼである。他の薬剤耐性遺伝子(例えばハイグロ
マイシン耐性、多剤耐性、ピューロマイシン・アセチルトランスフェラーゼ)も
用いることができる。
【0070】 昆虫の細胞、植物の細胞、鳥類の細胞など、上記以外の高等な真核細胞も宿主
として用いることができる。アグロバクテリウム・リゾゲネスを植物細胞の中で
遺伝子発現させるためのベクターとして用いることが、シンカー他、J. Biosci.
(Bangalore)、第11巻、47〜58ページ、1987年に記載されている。昆虫細胞を
形質転換し、外部のポリペプチドをその細胞の中で産生させることが、グアリノ
他、アメリカ合衆国特許第5,162,222号とWIPO公開WO 94/06463に記載されている
【0071】 昆虫細胞に組み換えバキュロウイルスを感染させることができる。組み換えバ
キュロウイルスは、普通は、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa cal
ifornica)核多角化体病ウイルス(AcNPV)に由来する。キングとポッシー、『
バキュロウイルス発現系:実験室ガイド』、ロンドン、チャップマン&ホール社
;オライリー他、『バキュロウイルス発現ベクター:実験室マニュアル』、ニュ
ーヨーク、オックスフォード大学出版社、1994年;リチャードソン編、『バキュ
ロウイルス発現プロトコル:分子生物学における方法』、ヒューマナ出版社、ト
トワ、ニュージャージー州、1995年を参照のこと。組み換えバキュロウイルスは
、ラッコウ達によるトランスポゾンに基づいた系を用いて産生させることもでき
る(ラッコウ他、J. Virol.、第67巻、4566〜4579ページ、1993年)。この系は
トランスファー・ベクターを利用しており、キットの形で市販されている(Bac-
to-Bac(登録商標)キット、ライフ・テクノロジーズ社、ロックヴィル、メリー
ランド州)。トランスファー・ベクター(例えばpFastBac1(登録商標)、ライ
フ・テクノロジーズ社)はTn7トランスポゾンを含んでおり、目的のタンパク質
をコードしているDNAを、“バクミド(bacmid)”と呼ばれる大きなプラスミド
として、大腸菌の中に維持されているバキュロウイルスの遺伝子の中に移動させ
る。ヒル−パーキンズとポッシー、J. Gen. Virol.、第71巻、971〜976ページ、
1990年;ボンニング他、J. Gen. Virol.、第75巻、1551〜1556ページ、1994年;
チャゼンバルクとラポポート、J. Biol. Chem.、第270巻、1543〜1549ページ、1
995年を参照のこと。タンパク質を産生させるためには組み換えウイルスを宿主
細胞にトランスフェクトする。代表的な宿主細胞は、ヨトウガの一種であるスポ
ドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)(例えばSf9細胞またはSf21
細胞)またはトリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)(例えばHigh Five(登録
商標)細胞;インヴィトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)に由
来する細胞系である。一般的な参考文献として、グリックとパステルナーク、『
分子バイオテクノロジー:組み換えDNAの原理と応用』、ASMプレス、ワシントン
D.C.、1994年を参照のこと。また、アメリカ合衆国特許第5,300,435号も参照の
こと。用いる方法は、たいてい、入手可能な実験室マニュアルに記載されている
(キングとポッシー、前掲文献;オライリー他、前掲文献;リチャードソン、前
掲文献)。
【0072】 酵母の細胞も含め、菌類の細胞も本発明で利用することができる。特に興味深
い酵母の種類としては、サッカロミセス・セレヴィジエ、ピキア・パストリス(
Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)などがある。
サッカロミセス・セレヴィジエの細胞を外来性DNAで形質転換し、その細胞に組
み換えポリペプチドを産生させる方法は、例えばカワサキ、アメリカ合衆国特許
第4,599,311号;カワサキ他、アメリカ合衆国特許第4,931,373号;ブレイク、ア
メリカ合衆国特許第4,870,008号;ウェルチ他、アメリカ合衆国特許第5,037,743
号;マレイ他、アメリカ合衆国特許第4,845,075号に記載されている。形質転換
された細胞は、表現型で判断して選択する。表現型の確認は、選択マーカー、一
般には薬剤耐性のある選択マーカーによって行なうか、あるいは特定の栄養素(
例えばロイシン)の不在下において成長する能力によって行なう。サッカロミセ
ス・セレヴィジエの中で用いるのが好ましいベクター系は、カワサキ達が記載し
ているPOT1ベクター系(アメリカ合衆国特許第4,931,373号)である。この系を
用いると、形質転換された細胞をグルコースを含む培地における成長度の違いに
よって選択することができる。酵母の中で用いるのに適したプロモーターとター
ミネーターとしては、解糖酵素遺伝子に由来するもの(例えば、カワサキ、アメ
リカ合衆国特許第4,599,311号;キングスマン他、アメリカ合衆国特許第4,615,9
74号;ビター、アメリカ合衆国特許第4,977,092号を参照のこと)やアルコール
・デヒドロゲナーゼ遺伝子に由来するものなどがある。また、アメリカ合衆国特
許第4,990,446号、第5,063,154号、第5,139,936号、第4,661,454号も参照のこと
。他の酵母、例えばハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、スキ
ゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クルイヴェロミセ
ス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、クルイヴェロミセス・フラジリス(
Kluyveromyces fragilis)、ウスティラゴ・マイディス(Ustilago maydis)、
ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、ピキア・グイレルモンディイ(Pich
ia guillermondii)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)に対する形質
転換系も従来技術で知られている。例えば、グリーソン他、J. Gen. Microbiol.
、第132巻、3459〜3465ページ、1986年;クレッグ、アメリカ合衆国特許第4,882
,279号;レイモンド他、Yeast、第14巻、11〜23ページ、1998年を参照のこと。
コウジカビの細胞をマクナイト他、アメリカ合衆国特許第4,935,349号の方法に
従って用いることもできる。アクレモニウム・クリソゲヌム(Acremonium chrys
ogenum)を形質転換する方法は、スミノ他、アメリカ合衆国特許第5,162,228号
に記載されている。アカパンカビを形質転換する方法は、ランボヴィッツ、アメ
リカ合衆国特許第4,486,533号に記載されている。ピキア・メタノリカの中で組
み換えタンパク質を産生させる方法は、アメリカ合衆国特許第5,716,808号、第5
,736,383号、第5,854,039号、第5,888,768号、WIPO公開WO 99/14347、WO 99/143
20に記載されている。
【0073】 本発明では、大腸菌株やバチルス、およびその他の属のバクテリアなどの原核
細胞も宿主細胞として用いることができる。これら宿主細胞を形質転換し、その
細胞内でクローニングされた外来性DNA配列を発現させる方法は従来技術で周知
である(例えばサムブルック他、前掲文献を参照のこと)。zil1a4ポリペプチド
を大腸菌などのバクテリアの中で発現させるとき、そのポリペプチドは、細胞質
の中に可溶性の形態または不溶性の粒子として保持されるか、バクテリアの分泌
配列によって細胞周辺腔へと導かれるかのいずれかである。ポリペプチドが不溶
性の粒子として存在している場合、細胞を溶解させて粒子を回収し、例えばグア
ニジン・イソチオシアナートまたは尿素を用いて変性させる。変性したポリペプ
チドは、その変性剤を希釈すると再び折り畳まれて二量化する。変性剤の希釈は
、例えば、尿素溶液と、還元と酸化を組み合わせたグルタチオンとに対して透析
を行ない、それに続けて緩衝生理溶液に対して透析を行なうことにより実現され
る。ポリペプチドが細胞周辺腔へと導かれる場合、そのポリペプチドは、細胞周
辺腔から可溶かつ機能的な形態で回収することができる。それが可能になるのは
、(例えば超音波処理または浸透圧衝撃によって)細胞を破裂させることで細胞
周辺腔の内容物を放出させ、その中からタンパク質を回収しているため、変性と
再度の折り畳みが不要になるからである。
【0074】 形質転換された宿主細胞またはトランスフェクトされた宿主細胞は、栄養素と
、その宿主細胞の成長に必要な他の要素とを含む培地の中で、一般的な方法に従
って培養する。特定用途の培地や複合培地も含め、適切なさまざまな培地が従来
技術で知られている。培地には、一般に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタ
ミン、ミネラルなどが含まれている。培地には、必要に応じて成長因子、血清な
どが含まれていてもよい。一般に、成長用培地を用いると、例えば薬剤選択また
は必須栄養素の欠乏によって、外部から添加されたDNAを含む細胞を選び出すこ
とができる。なお欠乏した必須栄養素は、発現ベクターによって運ばれる選択マ
ーカー、または宿主細胞に同時トランスフェクトされた選択マーカーによって補
う。
【0075】 当業者であれば、上記の方法を用いて免疫活性を有するさまざまなzil1a4タン
パク質を同定および/または調製することができる。そのようなポリペプチドに
は上記のような一般的な付加的ポリペプチド断片も含まれる。 本発明のタンパク質は、80%以上の純度に精製することが好ましい。純度は90
%以上であることがより好ましく、95%以上だとさらに好ましい。特に好ましい
のは、不純物である巨大分子、特に他のタンパク質と核酸に関して薬理学的に純
粋な状態である99.9%以上となっており、感染源と発熱源の含まれていないもの
である。精製したポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリ
ペプチドを実質的に含んでいないことが好ましい。zil1a4タンパク質(融合タン
パク質を含む)は、従来のタンパク質精製法を用いて精製する。代表的な方法は
、クロマトグラフィー法を組み合わせる方法である。一般的な参考文献として、
『アフィニティ・クロマトグラフィー:原理と方法』、ファルマシアLKBバイオ
テクノロジー社、ウプサラ、スウェーデン、1988年;スコープス、『タンパク質
の精製:原理と実践』、シュプリンガー−フェアラーク社、ニューヨーク、1994
年を参照のこと。ポリヒスチジン・アフィニティ・タグ(典型的には約6個のヒ
スチジン残基)を含むタンパク質を、アフィニティ・クロマトグラフィーにより
、固定化したニッケル樹脂またはコバルト樹脂上で精製する。例えば、フーチュ
リ他、Bio/Technol.、第6巻、1321〜1325ページ、1988年を参照のこと。グルタ
ミン酸−グルタミン酸タグを含むタンパク質は、従来法に従って免疫アフィニテ
ィ・クロマトグラフィーにより精製することができる。例えば、グルッセンメイ
ヤー他、前記文献を参照のこと。マルトース結合タンパク質融合体は、従来法に
従ってアミロース・カラムで精製する。
【0076】 本発明のzil1a4タンパク質は、炎症やその他の免疫プロセスを調節するのに用
いることができる。特に興味深いのは、zil1a4をアンタゴニストの形態(例えば
配列番号:14)にして炎症を抑制することである。つまり、所定のzil1a4タンパ
ク質を用いると、慢性または急性の炎症疾患、例えば関節リューマチ、変形性関
節炎、ライム関節炎などの関節炎や乾癬の治療および予防;虚血後の組織の損傷
の低減;敗血症ショック、移植片対宿主病、白血病の治療が可能になるかもしれ
ない。zil1a4タンパク質によって調節することのできる可能性のあるこれ以外の
疾患としては、ガン、貧血、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、急性および慢性の神
経病、ショック、急性呼吸疾患症候群、再狭窄、エイズが挙げられる。この明細
書で用いる“治療する”や“治療”という用語は、症状の低減や、裏に隠れてい
る病気プロセスに対する効果を含むものと理解する。アンタゴニストは、IL-1受
容体アンタゴニスト(IL-1ra)と同様の生体内活性を有する可能性がある。なお
、このIL-1raは、関節リューマチ(カンピオン他、Arthritis and Rheumatism、
第39巻、1092〜1101ページ、1996年)、移植片対宿主疾患(アンティン他、Bloo
d、第84巻、1342〜1348ページ、1994年)、敗血症ショック(フィッシャー他、J
AMA、第271巻、1836〜1843ページ、1994年)、白血病(ディナレロ、Blood、第8
7巻、2095〜2147ページ、1996年)を治療するための臨床試験において有望な結
果を示している。実験データによれば、IL-1の活性を拮抗することが、炎症性腸
疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎を含む)(ヘンデル他、Exp. Opin. Invest. D
rugs、第5巻、843〜850ページ、1996年に概説がある;コミネッリ他、Gastroent
erology、第103巻、65〜71ページ、1992年も参照のこと)、インスリン依存性糖
尿病(マンドラップ−プルセン他、Cytokine、第5巻、185〜191ページ、1993年
に概説がある;デイヤー−メトロス他、Eur. J. Clin. Inv.、第22巻、A50ペー
ジ、1992年も参照のこと)、急性膵臓炎(ノーマン他、Ann. Surg.、第221巻、6
25〜634ページ、1995年)、糸球体腎炎(ラン他、Kidney Int.、第47巻、1303〜
1309ページ、1995年)、脳性虚血(レルトン他、Exp. Neurology、第138巻、206
〜213ページ、1996年;ロディック他、Biochem. Biophys. Res. Comm.、第234巻
、211〜215ページ、1997年)の治療において有効であろうことも示唆される。ア
ゴニストは、IL-1が成長因子の分泌と細胞増殖に効果をもたらすことを考慮する
と、傷の治癒を促進する可能性がある。アゴニストはまた、感染症、特に胃腸感
染症の治療に役立つ可能性がある。
【0077】 zil1a4タンパク質は、疾患のモデル動物で試験することができる。乾癬のモデ
ル動物には、成熟したマウスの尾の表皮の組織学的変化(ホフバウアー他、Brit
. J. Dermatol.、第118巻、85〜89ページ、1988年;ブレイドン他、Arch Dermat
ol. Res.、第277巻、121〜125ページ、1985年)が含まれる。このモデルにおい
ては、抗乾癬活性は、尾の表皮のつなぎ目にある鱗領域に粒子状の層と真性角化
症が誘起されることでわかる。通常は、局所軟膏を毎日7日間にわたって塗布し
、動物を殺して尾の皮膚を組織学的に調べる。別のモデルは、乾癬にかかったヒ
トの皮膚を先天性無胸腺症(ヌード)マウスに移植することにより得られる(ク
ルーガー他、J. Invest. Dermatol.、第64巻、307〜312ページ、1975年)。この
ような移植により、11週まで特徴的な組織が維持されることがわかっている。マ
ウスの尾のモデルにおけるのと同様、試験用組成物を1〜数週間にわたって所定
の間隔で皮膚に塗布する。その期間が終了すると動物を殺し、皮膚移植片を組織
学的に調べる。第3のモデルは、フレットランド他(Inflammation、第14巻、727
〜739ページ、1990年;この明細書に参考として組み込んである)が記載してい
る。要するに、フォルボール・エステル(フォルボール-12ミリスタート-13-酢
酸塩;PMA)を局所的に塗布することによりモルモットの表皮に炎症を起こす。
フォルボール・エステルは典型的にはアセトンに約2g/mlの割合で溶かし、一方
の耳に塗布する。反対側の耳には賦形剤を塗布する。試験用組成物はPMAと同時
に塗布するが、経口投与してもよい。PMAを塗布してから96時間後に組織学的解
析を行なう。このモデルは、浮腫、炎症性の細胞漏出および細胞侵入、高レベル
のLTB4、表皮増殖など、ヒトの乾癬における多くの症状を再現している。脳性虚
血は、モデル・ラットで研究することができる。これについてはレルトン他(前
掲文献)とロディック他(前掲文献)が記載している。傷の治癒モデルとしては
、ムストー他(Science、第237巻、1333ページ、1987年)の皮膚の直線的な切り
傷モデルがある。典型的な方法は、6cmの傷を成熟したラットの背中に作り、ク
リップで閉じるというものである。最初に傷を閉じる前に(溶液、ゲル、または
粉末の形態にした)試験用物質と対照を塗布する。塗布は1回だけにすることが
好ましいが、何日にもわたって傷の下にある何ヶ所かの部位に注意深く注射して
もよい。傷を作ってから3日後〜21日後まで、閉じた傷の強度を評価した。第2の
モデルでは、ウサギの耳に多数の小さな深い切り傷を作る。耳の軟骨が傷に対し
て添え木の役目を果たすため、傷が収縮するという変数が、閉じた傷の評価から
除かれる。実験用の薬剤と対照を塗布する。傷部位の形状と構造のため、細胞の
内部成長と上皮の移動に関して信頼性のある定量化ができ、しかも傷の生化学的
解析(例えばコラーゲンの含有量の解析)もできる。ムストー他、J. Clin. Inv
est.、第87巻、694ページ、1991年を参照のこと。ウサギの耳モデルを変更して
虚血性の傷環境を生み出すことができる。このほうが、臨床状況により近い(ア
ーン他、Ann. Plast. Surg.、第24巻、17ページ、1990年)。第3のモデルでは、
ブタまたはモルモットの皮膚に作った傷の治癒を評価する(ルグラン他、Growth
Factors、第8巻、307ページ、1993年)。実験用の薬剤を毎日、軟膏の上または
下に塗布する。傷を作ってから7日後、肉芽組織の厚さを測定する。このモデル
は投与量応答研究にとって好ましい。というのも、傷の治癒に関する他のインビ
ボ・モデルと比べてより定量性があるからである。深い切り傷モデルを用いるこ
ともできる。このモデルでは、表皮と真皮を囓歯類では肉様層の位置まで、ブタ
では皮下脂肪の位置まで除去する。実験用の薬剤を軟膏の上または下に塗布する
。望むならば薬剤を毎日塗布することができる。傷は、収縮と細胞の内部成長と
増殖が組み合わさることによって閉じる。測定可能な終点としては、傷が閉じる
までの時間、組織学的な傷痕、傷を受けた組織の生化学的パラメータがある。従
来技術では悪化した傷の治癒モデルも知られている(例えば、クロマック他、Su
rgery、第113巻、36ページ、1993年;ピアース他、Proc. natl. Acad. Sci. USA
、第86巻、2229ページ、1989年;グリーンハーフ他、Amer. J. Pathol.、第136
巻、1235ページ、1990年)。傷の治癒プロセスの遅延または延長は、ステロイド
を用いた治療によって薬理学的に引き起こされたり、傷部位の照射または併発症
状(例えば糖尿病)によって誘発されたりする可能性がある。直線的な切り傷ま
たは深い切り傷が実験的な傷としては最もよく用いられる。終点は、それぞれの
タイプの傷について上に記載した通りである。皮下移植を利用して、傷の治癒に
おける初期段階で作用する化合物を評価することができる(ブロードレー他、La
b. Invest.、第61巻、571ページ、1985年;スプルーゲル他、Amer. J. Pathol.
、第129巻、601ページ、1987年)。インプラントを多孔性で比較的炎症を起こさ
ない容器(例えば、ウシのコラーゲンを充填したポリエチレン製スポンジまたは
発泡ポリテトラフルオロエチレン製インプラント)の中で調製し、マウスまたは
ラットの皮下に入れる。インプラントの内部には細胞はなく、すでに存在してい
る組織から分離可能な、輪郭がはっきりした“傷空間”がそこに生まれる。この
構成により、細胞の流入と細胞のタイプを評価できるだけでなく、血管新生と細
胞外マトリックスの生成の測定が可能になる。ジョヴシック他(Leukemia、第10
巻、546〜549ページ、1996年)が記載しているように、造血前駆細胞の増殖は、
IL-1のレベルに関係する。IL-1とそのアゴニストならびにアンタゴニストの効果
は、亜致死量の放射線を照射した試験動物(例えばマウス)を用いて測定するこ
とができる。要するに、試験用化合物を放射線を照射したマウスに直接投与する
か、あるいは骨髄細胞を試験用化合物とともにあらかじめ培養しておき、放射線
を照射したマウスに移植する。増殖効果および反増殖効果を、対照と比較したコ
ロニー形成における変化として見ることができる。虚血に対する寛容の誘起は、
スナネズミで測定することができる。これについてはハーレンベック、Neurolog
y、第49巻(補4)、S5〜S9ページ、1997年に記載されている。
【0078】 動物におけるzil1a4タンパク質の発現は、生体内でのタンパク質の活性の過剰
促進または抑制の生物学的効果をさらに研究するためのモデルを提供する。zil1
a4をコードしているポリヌクレオチドは、ウイルス・ベクターまたは裸のDNAを
用いてマウスなどの試験動物に導入することができる。すなわちトランスジェニ
ック動物を作ることができる。
【0079】 本発明のタンパク質を生体内で調べる1つの方法は、ウイルス・デリバリー系
を用いることである。この目的に使用できるウイルスの具体例としては、アデノ
ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、種痘ウイルス、アデノ関連ウイ
ルス(AAV)が挙げられる。二本鎖DNAウイルスであるアデノウイルスは、現在の
ところ、異種核酸を送り届けるための遺伝子トランスファー・ベクターとしては
最もよく研究されているものである。概説としては、ベッカー他、Meth. Cell B
iol.、第43巻、161〜189ページ、1994年;ダグラスとクリエル、Science & Medi
cine、第4巻、44〜53ページ、1997年を参照のこと。アデノウイルス系には利点
がいくつかある。アデノウイルスは、(i)比較的大きなDNA挿入物に対する適合
性があり、(ii)高力価にすることができ、(iii)幅広いタイプの哺乳類の細
胞に感染させることができ、(iv)普遍的プロモータ、組織特異的プロモータ、
制御可能なプロモータなどの異なった多くのプロモータとともに用いることがで
きる。アデノウイルスは血流中で安定であるため、静脈内注射により投与するこ
とができる。アデノウイルスは、健康な動物に静脈内投与した場合、主に肝臓を
ターゲットにする。アデノウイルス・デリバリー系がE1遺伝子を欠いている場合
には、アデノウイルスは宿主細胞の中で複製を作ることがきない。しかし宿主の
組織(例えば肝臓)は異種タンパク質を発現してそのタンパク質を作る(シグナ
ル配列が存在している場合には、さらにそのタンパク質を分泌する)ことになる
。分泌されたタンパク質は高度に血管が発達した肝臓の中を循環するため、感染
した動物に対する効果を測定することができる。
【0080】 別の実施態様では、zil1a4遺伝子をレトロウイルス・ベクターに導入すること
ができる。そのための方法は、例えば、アンダーソン他、アメリカ合衆国特許第
5,399,346号;マン他、Cell、第33巻、153ページ、1983年;テミン他、アメリカ
合衆国特許第4,650,764号;テミン他、アメリカ合衆国特許第4,980,289号;マル
コヴィッツ他、J. Virol.、第62巻、1120ページ、1988年;テミン他、アメリカ
合衆国特許第5,124,263号;ダガーティ他、WIPO公開WO 95/07358;クオ他、Bloo
d、第82巻、845ページ、1993年に記載されている。
【0081】 別の方法では、リポソームを用いた“リポフェクション”によりベクターを生
体内に導入することができる。マーカーをコードしている遺伝子を生体内にトラ
ンスフェクトするためのリポソームを調製するには合成カチオン脂質を用いるこ
とができる(フェルグナー他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第84巻、7413〜74
17ページ、1987年;マッキー他、Proc. natl. Acad. Sci. USA、第85巻、8027〜
8031ページ、1988年)。外来性遺伝子を生体の特定の器官に導入するのにリポフ
ェクションを利用することには実際的な利点がいくつかある。例えば、リポソー
ムを特定の細胞に分子ターゲッティングできるという利点がある。特定のタイプ
の細胞にトランスフェクションできることは、膵臓、肝臓、腎臓、脳などの細胞
異種性を有する組織において特に有利である。脂質は、ターゲッティングのため
に他の分子と化学的に結合させることができる。ペプチド(例えばホルモンまた
は神経伝達物質)、抗体などのタンパク質、あるいは非ペプチド分子などの標的
は、化学的にリポソームと結合させることができる。
【0082】 別の実施態様では、標的細胞を動物から取り除き、DNAを裸のDNAプラスミドと
して導入する。次に、形質転換されたその細胞を再びその動物の体内に移植する
。裸のDNAベクターは、従来技術で知られている方法を用いて望みの宿主細胞に
導入することができる。方法としては、例えば、トランスフェクション、電気穿
孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン
酸カルシウム沈降、遺伝子銃またはDNAベクター輸送体の使用などがある。例え
ば、ウー他、J. Biol. Chem.、第267巻、963〜967ページ、1992年;ウー他、J.
Biol. Chem.、第263巻、14621〜14624ページ、1988年を参照のこと。
【0083】 zil1a4遺伝子を発現するように遺伝子を改変されたトランスジェニック動物と
、zil1a4遺伝子の機能を完全に欠いているために“ノックアウト・マウス”(ス
ナウアート他、Science、第257巻、1083ページ、1992年)と呼ばれている動物を
作ることができる(ローウェル他、Nature、第366巻、740〜742ページ、1993年
)。ブリンスター他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第85巻、836〜840ページ、
1988年;パーミター他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第88巻、478〜482ページ
、1991年;ホワイトロー他、Transgenic Res.、第1巻、3〜13ページ、1991年;W
IPO公開WO 89/01343とWO 91/02318も参照のこと。zil1a4を発現するトランスジ
ェニック動物を作るのに用いるポリヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のイン
トロンを含んでいることが好ましい。したがってポリヌクレオチドよりはゲノム
配列のほうが好ましい。
【0084】 アンチセンス法を利用するとzil1a4遺伝子の転写が抑制されるので、生体内に
おけるその抑制の効果を調べることができる。zil1a4をコードしているポリヌク
レオチド(例えば配列番号:1のポリヌクレオチド)の断片と相補的なポリヌク
レオチドを設計してzil1a4をコードしているmRNAと結合させ、そのmRNAの翻訳を
抑制する。
【0085】 zil1a4タンパク質の活性は、シリコンをベースとしたバイオセンサー・マイク
ロフィジオメータを用いて測定することができる。この測定器は、細胞外酸性化
度、あるいは受容体の結合とそれに続く細胞の生理学的応答に関連した陽子の排
出を測定する。そうした測定器の一例として、モレキュラー・デバイス社(サニ
ーヴェイル、カリフォルニア州)が製造しているCytosensor(登録商標)マイク
ロフィジオメータが挙げられる。細胞増殖、イオン輸送、エネルギー産生、炎症
反応、調節作用、受容体活性など、さまざまな細胞応答をこの方法で測定するこ
とができる。例えば、マッコンネル他、Science、第257巻、1906〜1912ページ、
1992年;ピッチフォード他、Meth. Enzymol.、第228巻、84〜108ページ、1997年
;アリミッリ他、J. Immunol. Meth.、第212巻、49〜59ページ、1998年;ファン
・リーフデ他、Eur. J. Pharmacol.、第346巻、87〜95ページ、1998年を参照の
こと。zil1a4のアンタゴニストは、試験化合物の存在下および不在下で細胞をzi
l1a4タンパク質と接触させることにより同定することができる。zil1a4により促
進された活性が低下することが、試験化合物中のアンタゴニストに活性があるこ
とを示している。
【0086】 医薬として用いるため、本発明のタンパク質を、従来法に従って、局所用に、
あるいは非経口用、例えば静脈内用、皮下用、腹腔内用に処方する。静脈内投与
は、注射または点滴による。多くの場合、点滴または1日に多数回の注射を数日
から数週間にわたって行なうことによりそのタンパク質を投与することが好まし
かろう。ときには適量1回分を事前に注射してみることがある。一般に、薬理学
的処方物は、zil1a4タンパク質を、医薬として許容される賦形剤と組み合わせた
形で含むことになる。賦形剤としては、生理的食塩水、緩衝生理的食塩水、水に
溶かした5%デキストロースなどがある。この処方物はさらに、1種類またはそれ
以上の添加物、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、ウイルスの表面でタンパク質の損失
を防ぐためのアルブミンなどを含んでいてもよい。処方物を調製する方法は従来
技術で周知であり、例えば、レミントン『薬学の科学と実際』、ジェンナロ編、
マック出版、イーストン、ペンシルバニア州、第19版、1995年に記載されている
【0087】 すでに説明したように、IL-1の活性を抑制するにはアンタゴニストのモル数を
はるかに過剰にする必要がある。zil1a4アンタゴニスト・タンパク質の投与量は
、一般に非常に多くなるであろう。特に、生命が危機に瀕している人を治療する
ときに多くなる。Il-1raは大量に投与しても安全であるように見える。したがっ
てzil1a4アンタゴニスト・タンパク質の投与量には幅があり、少ない場合には患
者1人につき1日に10mgであり、多い場合には1時間に100mgまたはそれ以上の割合
で何日間にもわたって点滴することになる。臨床試験において効果が見られたIl
-1raの投与量は、関節リューマチでは患者1人につき1日に70mg、移植片対宿主病
では患者1人につき1日に3,400mgのケースがあった。正確な投与量は、治療すべ
き症状の性質や重篤度、患者の特性などを考慮しつつ、認められている基準に従
って臨床の医師が決定することになる。投与量の決定は、当業者の能力範囲内で
ある。このタンパク質は、急性症状の治療において1週間未満の期間投与するこ
とができるが、数週間から数ヶ月またはそれ以上にわたって投与する必要がある
慢性症状の治療において用いられることもしばしばあろう。一般に、治療におい
て効果があるzil1a4タンパク質の量は、治療している疾患において適切な1つ以
上の標準的な指標が臨床的に有意に改善されるのに十分な量である。治療の終了
時点は、当業者には明らかであろう。
【0088】 zil1a4タンパク質は、アゴニストとアンタゴニストの両方とも、IL-1とIL-1イ
ンヒビターのアッセイにおける基準として用いることができる。そのようなアッ
セイとしては標準的な形式のものが多数があるが、例えば、ラジオレセプターア
ッセイやELISAが挙げられる。基準となるzil1a4タンパク質は、放射性同位元素
、酵素、フッ化リン、あるいは検出可能な信号を発生させる他の化合物を用いて
標識された形態にすることができる。このタンパク質はキットの形態にパッケー
ジすることができる。そのようなキットは、zil1a4タンパク質のほか、オプショ
ンとして、希釈剤、抗体、標識した結合タンパク質などを入れた1つまたはそれ
以上の小瓶を備えている。
【0089】 アッセイ用キットを研究室で使用して、培養した細胞または試験動物が産生し
たIL-1とIL-1インヒビターを検出することもできる。 zil1a4タンパク質は、研究用試薬としても役立つ。例えば、zil1a4アゴニスト
・タンパク質は、繊維芽細胞、平滑筋細胞、メサンギウム細胞など、IL-1に反応
する細胞の成長を促進するための細胞培養成分として用いることができる。アゴ
ニストは、IL-3やそれ以外のサイトカインと結合させてCD34+末梢血細胞を増や
したり、IL-3やIL-6と結合させて幹細胞の増殖を促進させたりすることができる
【0090】 zil1a4タンパク質とこのタンパク質のエピトープを有する部分を用いると、zi
l1a4に特異的に結合する抗体を生み出すことができる。“エピトープ”とは、1
つのタンパク質において抗体が結合できる領域のことである。例えば、ガイセン
他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第81巻、3998〜4002ページ、1984年を参照の
こと。エピトープは、線状でもよいし、立体構造を有していてもよい。後者の場
合、その構造は不連続な複数の領域で構成されており、タンパク質が折り畳まれ
るときにそれらの領域がエピトープとなる。線状のエピトープは、一般に、長さ
が少なくとも6アミノ酸残基である。タンパク質配列の一部を真似た比較的短い
合成ペプチドは、当然、一部を真似たそのタンパク質と反応する抗血清を引き出
すことができる。サトクリッフェ他、Science、第219巻、660〜666ページ、1983
年を参照のこと。短い線状のエピトープを認識する抗体は、ウエスタン・ブロッ
ト法など、変性されたタンパク質を用いた解析および診断の用途(トビン、Proc
. natl. Acad. Sci. USA、第76巻、4350〜4356ページ、1979年)、あるいは固定
された細胞または組織のサンプルの解析で特に役に立つ。線状エピトープに対す
る抗体は、例えば体液または細胞の培地に含まれるzil1a4の断片を検出するのに
も役立つ。
【0091】 エピトープを有する抗原性ポリペプチドは、zil1a4タンパク質(例えば配列番
号:2)のうちの少なくとも6個、好ましくは少なくとも9個、さらに好ましくは1
5〜約30個の連続したアミノ酸残基を含んでいる。zil1a4タンパク質のより大き
な部分を含むポリペプチド、すなわち30〜50個の残基から全配列までを含むポリ
ペプチドも用いることができる。エピトープを有するポリペプチドのアミノ酸配
列は、水性媒質に実質的に可溶になるように選択することが好ましい。すなわち
、配列が比較的親水性のある残基を含み、疎水性残基を実質的に避けるようにす
ることが好ましい。添付の図1を参照のこと。プロリン残基を含む配列が好まし
い。特に好ましい領域としては、配列番号:2の残基122〜127、残基123〜128、
残基147〜152が挙げられる。
【0092】 この明細書では、“抗体”という用語には、ポリクローナル抗体、モノクロー
ナル抗体、これら抗体の抗原結合断片であるF(ab')2断片やFab断片、一本鎖抗体
などのほか、遺伝子組み換えによる抗体も含まれる。ヒト由来でない抗体は、ヒ
ト由来でないCDRだけをヒトの構造体と定常領域に移植することによって、ある
いはヒト由来でない可変領域をすべて組み込むこと(オプションとして、露出し
た残基を置換することによってヒト様の表面を用いてヒト由来でない可変領域を
“隠す”と、結果は“上張りされた”抗体になる)によって、ヒト化することが
できる。場合によっては、ヒト化された抗体は、固有の結合特性を強めるため、
ヒトの可変領域の構造体ドメイン内にヒト由来でない残基を保持していてもよい
。抗体をヒト化することにより、生物学的半減期が長くなる可能性があり、ヒト
に投与したときに不都合な免疫反応が起こる可能性が少なくなる。当業者であれ
ば、個々の抗体の定常領域と関連したさまざまな免疫機能を促進または抑制する
ために、特異的なさまざまな定常領域(すなわち異なるIgサブクラス)を有する
ヒト化された抗体を作ることができよう。役に立つ抗体を作ったり選択したりす
る別の方法としては、リンパ球を生体内でzil1a4タンパク質に接触させ、ファー
ジまたは同様のベクターの中で抗体提示ライブラリを選択する方法がある(その
ためには例えば固定化または標識したzil1a4タンパク質を用いる)。抗体が特異
的に結合すると言えるのは、対照となる(zil1a4ではない)ポリペプチドに対す
る結合アフィニティと比べるとzil1a4タンパク質に対しては少なくとも10倍大き
なアフィニティを持つ場合である。抗体は、結合アフィニティ(Ka)が106M-1
上であることが好ましい。さらに好ましいKaの値は107M-1以上であり、それ以上
に好ましいのは108M-1以上であり、最も好ましいのは109M-1以上である。モノク
ローナル抗体のアフィニティは、当業者であれば容易に測定することができる(
例えばスカッチャード、Ann. NY Acad. Sci.、第51巻、660〜672ページ、1949年
を参照のこと)。
【0093】 ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の調製方法は従来技術において
周知である(例えば、ハレル, J.G.R.編、『モノクローナル・ハイブリドーマ抗
体:技術と応用』、CRCプレス、ボカ・ラトン、フロリダ州、1982年を参照のこ
と)。当業者には明らかなように、ポリクローナル抗体は、さまざまな温血動物
に産生させることができる。温血動物としては、例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒ
ツジ、イヌ、ニワトリ、ウサギ、マウス、ラットが挙げられる。zil1a4タンパク
質の免疫原性は、alum(水酸化アルミニウム)、フロイント完全アジュバント、
フロイント不完全アジュバントなどのアジュバントを用いることによって強化で
きる可能性がある。免疫を確立するのに役立つポリペプチドとしては、融合ポリ
ペプチドも挙げられる。例えば、zil1a4タンパク質またはその一部と免疫グロブ
リン・ポリペプチドとの融合体、あるいは、zil1a4タンパク質またはその一部と
マルトース結合タンパク質との融合体である。ポリペプチド免疫原は、完全長の
分子でもよいし、その一部でもよい。ポリペプチドの一部が“ハプテン様”であ
る場合には、その部分を巨大分子輸送体(スカシガイのヘモシアニン(KLH)、
ウシ血清アルブミン(BSA)、破傷風トキソイドなど)と結合またはリンクさせ
るとよい。
【0094】 当業者に知られている多数のアッセイ法を用いてzil1a4タンパク質に特異的に
結合する抗体を検出することができる。アッセイ法の例は、『抗体:実験室マニ
ュアル』、ハーロウとレーン(編)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラ
トリー・プレス、1988年に詳しく記載されている。代表的なアッセイ法としては
、競合的免疫電気泳動法、ラジオイムノアッセイ、放射免疫沈降法、固相酵素免
疫検定法(ELISA)、ドット・ブロット法、ウエスタン・ブロット法、抑制また
は競合法、サンドイッチ法が挙げられる。
【0095】 zil1a4に対する抗体の用途としては、zil1a4タンパク質をアフィニティ精製す
ること;診断のためにzil1a4タンパク質の循環レベルを測定すること;隠れてい
る異変または疾患のマーカーとして可溶性zil1a4タンパク質を検出または定量す
ること;免疫診断への応用も含め、動物の体全体または各組織で免疫局在化を行
なうこと;免疫組織化学;発現ライブラリのスクリーニング;当業者には明らか
であろうその他の用途が可能である。インビトロおよびインビボでの診断など特
定の用途においては、標識した抗体を用いることが好ましい。適切な直接的なタ
グまたは標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光
マーカー、化学発光マーカー、磁性粒子などが挙げられる。間接的なタグまたは
標識としては、ビオチン−アビジンのペアまたはそれ以外の補体/アンチ補体ペ
アを媒体として用いることができる。
【0096】 本発明により、診断用のポリヌクレオチド試薬も提供される。例えば、zil1a4
遺伝子、zil1a4のDNAまたはRNAを含むプローブ、あるいはその部分配列を用いて
、zil1a4遺伝子がヒト患者の第2染色体に存在しているかどうか、あるいは突然
変異が起こったかどうかを調べることができる。zil1a4の遺伝子座において検出
可能な染色体異常としては、異数性、遺伝子複製数の変化、挿入、欠失、制限部
位の変化、再構成などが挙げられるが、これだけに限定されるわけではない。こ
うした異常は、本発明のポリヌクレオチドを用い、分子遺伝学の方法により検出
することができる。分子遺伝学の方法としては、例えば、制限断片長多型(RFLP
)解析、PCR法を利用した短い縦列反復(STR)解析、従来技術で知られているそ
の他の遺伝子連鎖解析法がある(サムブルック他、前掲文献;オースベル他、前
掲文献;A.J. マリアン、Chest、第108巻、255〜265ページ、1995年)。
【0097】 以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明がこれら実施例に限定
されることはない。 実施例 実施例1 発現した1つの配列タグ(EST)がIL-1ファミリーのタンパク質との相同配列を
含んでいたため、公開データベースで同定された。第1のESTと重なっている第2
のESTは、私的なデータベースで同定された。
【0098】 第2のESTに対応するクローンを解析することにより、イントロンがそのESTの5
'末端に存在していることがわかった。2つのESTから導き出した共通配列に基づ
き、6つのプライマーを設計した。これらプライマーのうちの1つのペア(zc20,0
38、配列番号:32と、zc20,039、配列番号:33)を用い、PCR法に基づいて組織
の検査を行なった。市販されているキット(Marathon(登録商標)cDNA増幅キッ
ト;クロンテック・ラボラトリーズ社、パロ・アルト、カリフォルニア州)を用
い、合計で23のヒトcDNAライブラリをさまざまな組織から調製した。これらライ
ブラリーをPCR法のテンプレートとして用いた。各cDNAライブラリを3μl(1/100
に希釈)と、オリゴヌクレオチド・プライマーzc20,038(配列番号:32)とzc20
,039(配列番号:33)をそれぞれ20ピコモルと、1UのTaq DNAポリメラーゼ(Ex
Taq(登録商標);パンヴェラ社、マディソン、ウィスコンシン州)とを、25μl
の反応混合物の中で用いた。この反応混合物には、94℃で2分間;次に、94℃で2
0秒間、63℃で30秒間、72℃で30秒間を35サイクルという反応をさせ;最後に72
℃で2分間培養した。このPCR産物をゲルにかけた。適切なサイズのバンドが、骨
髄、ダウディ細胞、胎児の脳、胎児の肺、グリオブラストーマ、HUVEC、リンパ
節、単球に見られたが、CD4+細胞、CD8+細胞、腎臓、肝臓、ランゲルハンス島、
膵臓、唾液腺、骨格筋、脾臓、胃、精巣、子宮には見られなかった。 実施例2 上記の組織分布情報に基づき、zil1a4のcDNAを、5'RACEと3'RACEを利用した入
れ子式PCR法を用いてクローニングした。
【0099】 5'RACEを、骨髄、ダウディ細胞、胎児の脳、胎児の肺、グリオブラストーマ、
HUVEC、リンパ節、単球、精巣に対して行なった。各cDNAライブラリを3μl(1/1
00に希釈)と、オリゴヌクレオチド・プライマーzc9739(配列番号:34)とzc20
,042(配列番号:35)をそれぞれ20ピコモルと、Taq DNAポリメラーゼとアンチT
aq抗体(TaqStart(登録商標);クロンテック・ラボラトリーズ社)の1:1混合
物(Ex Taq/Taq抗体が1:1)1Uとを、25μlの反応混合物の中で用いた。この反
応混合物には、94℃で2分間;次に、94℃で20秒間、69℃で1分間を5サイクル;9
4℃で20秒間、64℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクルという反応をさせ;最後
に72℃で2分間培養した。それぞれ1/30に希釈した第1のPCR産物1μlを、入れ子
式(nested)PCR法のテンプレートとして用いた。オリゴヌクレオチド・プライマ
ーzc9719(配列番号:36)とzc20,043(配列番号:37)をそれぞれ20ピコモルと
、Ex Taq/Taq抗体が1:1の混合物1Uとを、25μlの反応混合物の中で用いた。こ
の反応混合物には、94℃で2分間;次に、94℃で20秒間、67℃で1分間を5サイク
ル;94℃で20秒間、64℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクルという反応をさせ
;最後に72℃で1分間培養した。このPCR産物をアガロース・ゲルにかけた。明ら
かなバンドが、ダウディ細胞、胎児の脳、胎児の肺、グリオブラストーマ、リン
パ節から得られた。次に、シリカゲル膜(QIAquick(登録商標)ゲル抽出キット
;キアジェン社、ヴァレンシア、カリフォルニア州)を収容したスピン・カラム
でバンドを精製し、配列を決定した。PCRバンドから決定した配列によると、第1
のESTの5'末端が伸長していたが、イントロンを5'末端に含むと考えられている
第2のESTクローンとは一致しなかった。
【0100】 第2のESTクローンの3'末端が第1のESTとは異なっていたため、3'RACEを行なっ
た。3種類の組織(ダウディ細胞、胎児の脳、リンパ節)から(上記のようにし
て調製した)cDNAをテンプレートとして用いた。各cDNAを3μl(1/100に希釈)
と、オリゴヌクレオチド・プライマーzc9739(配列番号:34)とzc20,040(配列
番号:38)をそれぞれ20ピコモルと、Ex Taq/Taq抗体が1:1の混合物1Uとを、25
μlの反応混合物の中で用いた。この反応混合物には、94℃で2分間;次に、94℃
で20秒間、70℃で30秒間を5サイクル;94℃で20秒間、64℃で30秒間、72℃で30
秒間を25サイクルという反応をさせ;最後に72℃で2分間培養した。各PCR産物の
1/30希釈物1μlを、入れ子式PCR法のテンプレートとして用いた。オリゴヌクレ
オチド・プライマーzc9719(配列番号:36)とzc20,041(配列番号:39)をそれ
ぞれ20ピコモルと、Ex Taq/Taq抗体が1:1の混合物1Uを、25μlの反応混合物の
中で用いた。この反応混合物は、94℃で2分間;次に、94℃で20秒間、68℃で30
秒間を5サイクル;94℃で20秒間、64℃で30秒間、72℃で30秒間を30サイクル;
最後に72℃で2分間培養した。このPCR産物をアガロース・ゲルにかけた。明らか
なバンドが、ダウディ細胞と胎児の脳で得られた。次に、シリカゲル膜(QIAqui
ck(登録商標)ゲル抽出キット;キアジェン社、ヴァレンシア、カリフォルニア
州)を収容したスピン・カラムでバンドを精製し、配列を決定した。PCRバンド
から決定した配列は、元のESTの3'末端まで伸長していたが、第2のESTクローン
とは一致しなかった。共通DNA配列、6つの5'RACE産物からなる複合体、2つのEST
、2つの3'RACE産物を配列番号:1に示す。 実施例3 zil1a4をコードしている全領域を、pCR(登録商標)2.1ベクター(インヴィト
ロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)に挿入した。ダウディ細胞、
胎児の脳、胎児の肺、グリオブラストーマ、リンパ節、精巣からのcDNAをそれぞ
れ1/100に希釈したものを3μlと;オリゴヌクレオチド・プライマーzc20,308(
配列番号:40)とzc20,309(配列番号:41)をそれぞれ20ピコモルと;Taq DNA
ポリメラーゼとPfu DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフ
ォルニア州)と抗Taq抗体(TaqStart(登録商標);クロンテック・ラボラトリ
ーズ社)の4:1:4混合物(Ex Taq/Pfu/Taq抗体が4:1:4)1Uとを25μlの反応
混合物の中で用いてPCR法を行なった。この反応混合物には、94℃で2分間;次に
、94℃で20秒間、62℃で30秒間、72℃で30秒間を35サイクルという反応を行なわ
せ;最後に72℃で4分間培養した。このPCR産物をゲルにかけ、シリカゲル膜(QI
Aquick(登録商標)ゲル抽出キット;キアジェン社、ヴァレンシア、カリフォル
ニア州)を収容したスピン・カラムでバンドを精製した。ゲルで精製したPCR産
物の断片6μlを、市販されているクローニング・キット(TA Cloning(登録商標
)キット;インヴィトロジェン社)を用いて2μlのpCR(登録商標)2.1ベクター
(インヴィトロジェン社)と連結させ、16℃にて一晩培養した。連結混合物1μl
を10μlの大腸菌宿主細胞(Electromax DH10B(登録商標)細胞;ライフ・テク
ノロジーズ社、ゲサースバーグ、メリーランド州)と混合し、電気穿孔し、400
μlのLBと混合し、37℃にて30分間撹拌した。細胞100μlを、0.1MのIPTG80μlと
20mg/mlのX-galを80μlとともにLB/ampプレートの上に置き、そのプレートを37
℃にて一晩培養した。テンプレートをcDNAの代わりにバクテリアのコロニーにし
たことと、酵素混合物をEx Taq/Taq抗体が1:1のものにしたこと以外は上の実施
例と同じ条件のもとで、PCR法により白色のコロニーをスクリーニングした。挿
入断片を有するコロニーを選択し、配列を決定した。 実施例4 一連のノーザン・ブロット(ヒトのいろいろな組織のブロットI、II、III、ヒ
トRNAのマスター・ブロット、ヒト胎児MTN II;クロンテック・ラボラトリーズ
社、パロ・アルト、カリフォルニア州)を用いてノーザン・ブロット法を行なっ
た。第2のESTクローンをテンプレートとして用い、ゲルで精製したPCR産物から
プローブを作った。PCR法を実施する条件は実施例1に記載したのと同じである。
市販されているキット(Rediprime(登録商標)IIランダムプライム標識系;ア
マーシャム社、アーリントン・ハイツ、イリノイ州)を製造会社の指示に従って
用い、DNAを放射線で標識した。このプローブを、市販されているプッシュ・カ
ラム(NucTrap(登録商標)カラム;ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフォ
ルニア州;アメリカ合衆国特許第5,336,412号を参照のこと)を用いて精製した
。市販されているハイブリダイゼーション用溶液(ExpressHyb(登録商標)ハイ
ブリダイゼーション用溶液;クロンテック・ラボラトリーズ社、パロ・アルト、
カリフォルニア州)を、予備ハイブリダイゼーションと、ブロット法用のハイブ
リダイゼーション用溶液として用いた。ハイブリダイゼーションを65℃にて一晩
行なわせ、次にブロットを、2×SSCと0.05%のSDSの中で55℃にて3回洗浄し、さ
らに0.1×SSCと0.1%のSDSの中で55℃にて2回洗浄した。ほとんどの組織で明ら
かな信号は見つからなかった。ただし、弱い信号が、RNAマスター・ブロット上
の精巣と胎盤に検出された。 実施例5 選択的スプライシングされたzil1a4のcDNAをヒト胎児の肺ライブラリーからク
ローニングした。このクローンのDNA配列とアミノ酸配列を配列番号:8と9に示
す。このクローンは、配列番号:1と比べると、183bp短くなっていた。 実施例6 スタンフォードG3放射線照射ハイブリッド・マッピング・パネルの市販バージ
ョン(リサーチ・ジェネティックス社、ハンツヴィル、アラバマ州)を用いてzi
l1a4をヒトの第2染色体にマッピングした。このパネルは、ヒト・ゲノム全体の
放射線照射ハイブリッド・クローン83個のそれぞれから得られたPCR可能なDNAと
、2つの対照DNA(RMドナーとA3レシピエント)を含んでいる。公開されているWW
Wサーバー(http://shgc-www.stanford.edu)により、マーカーの染色体上の位
置を決めることができる。zil1a4をマッピングするため、反応混合物20μlをPCR
が可能な96ウエルのマイクロタイター・プレート(ストラタジーン社、ラ・ジョ
ラ、カリフォルニア州)の中にセットし、サーマル・サイクラー(RoboCycler(
登録商標)Gradient96;ストラタジーン社、ラ・ジョラ、カリフォルニア州)を
使用した。 85ある反応混合物のそれぞれは、バッファー(10×KlenTaq PCR反応バッファー
;クロンテック・ラボラトリーズ社、パロ・アルト、カリフォルニア州)2μlと
、dNTP混合物(それぞれ2.5mM;パーキン−エルマー社、フォスター市、カリフ
ォルニア州)1.6μlと、センス・プライマー(配列番号:43)1μlと、アンチセ
ンス・プライマー(配列番号:44)1μlと、密度増加剤と観察用染料(RediLoad
、リサーチ・ジェネティックス社、ハンツヴィル、アラバマ州)2μlと、市販さ
れているDNAポリメラーゼ/抗体混合物(50×Advantage(登録商標)KlenTaqポ
リメラーゼ混合物;クロンテック・ラボラトリーズ社)0.4μlと、個々のハイブ
リッド・クローンまたは対照からのDNAを25ナノグラムと、全体量が20μlとなる
ように加えるxμlのddH2Oとからなる。混合物を等量の鉱物油で覆い、シールし
た。PCRは、最初に94℃での変性を5分間;94℃での変性を45秒間、60℃でのアニ
ーリングを45秒間、72℃での伸長を75秒間を35サイクル;最後に72℃での伸長を
7分間とした。2%のアガロース・ゲル上で反応生成物を電気泳動により分離した
。その結果、zil1a4遺伝子はヒトの第2染色体のフレームワーク・マーカーAFMa0
37xf1と連鎖しており、LODスコアが12.5、マーカーからの距離が8.60cR#10000と
なっていることがわかった。周囲の遺伝子/マーカーを用いることにより、zil1
a4が染色体の2q14領域に位置していることがわかった。 実施例7 His6タグ/マルトース結合タンパク質(MBP)という二重アフィニティ融合系
を用い、ヒト組み換えzil1a4を大腸菌の中で産生させた。この系についての概説
はプライアーとライティング、Proc. Expr. Pur.、第10巻、309〜319ページ、19
97年に記載されている。トロンビン切断部位が、アフィニティ・タグとzil1a4配
列の接合部に位置している。
【0101】 この融合構造体をpTAP98ベクターの中で組み立てる。このベクターは、大腸菌
や酵母の中で複製と選択を行なうための配列と、大腸菌tacプロモーターと、MBP
-His6-トロンビン部位をコードしている配列のすぐ下流に位置する独自の小さな
部位とを備えている。ベクターの配列と相同な40bpの配列と、cDNAとアニールす
る25bpの配列とをそれぞれが含むプライマーを用い、zil1a4のcDNA(配列番号:
1)をPCR法により増幅する。反応は、Pwo DNAポリメラーゼ(ベーリンガー・マ
ンハイム社、インディアナポリス、インディアナ州)を用い、94℃で30秒間、60
℃で60秒間、72℃で60秒間を30サイクル行なわせる。得られた断片1マイクログ
ラムを、小さく切断した100ナノグラムのpTAP98と混合し、この混合物を用いて
酵母を形質転換し、相同組み換えによりベクターを組み立てる(オルデンバーグ
他、Nucl. Acids Res.、第25巻、451〜452ページ、1997年)。Ura+形質転換体を
選択する。
【0102】 プラスミドDNAを酵母形質転換体から調製し、それを用いて大腸菌MC1061を形
質転換する。次に、プレート全体をこすった後にミニプレップ法を用い、MC1061
形質転換体からプラスミドDNAのプールを調製する。Nco IとEcoR Iを用いた制限
部位切断により、プラスミドDNAを解析する。 zil1a4を発現させるのに大腸菌株BL21を用いる。細胞は、電気穿孔で形質転換
し、カザミノ酸とアンピシリンを含む最少グルコース・プレート上で成長させる
。より大規模な産生のためには、アンピシリンを含む含む液体培地の中で細胞を
成長させる。37℃にして1時間後、IPTGを添加して最終的な濃度を1mMにする。細
胞は、37℃でさらに2〜3時間成長させる。ガラス・ビーズを用いて細胞を破壊し
、従来法で抽出物を調製する。 実施例8 組み換えzil1a4融合タンパク質をアフィニティ・クロマトグラフィーにより精
製する。固定化したコバルト樹脂(Talon(登録商標)樹脂;クロンテック・ラ
ボラトリーズ社、パロ・アルト、カリフォルニア州)を結合用バッファー中で平
衡化する。タンパク質50mgにつき1mlの樹脂をチューブの中で澄んだ状態のタン
パク質溶液と化合させ、このチューブにふたをしてシールする。このチューブを
4℃にしてロッカーの上に一晩置く。次にこの樹脂を4℃で遠心分離することによ
りペレット化し、結合用バッファーで3回洗浄する。0.2Mのイミダゾールを含む
結合用バッファーでタンパク質を溶離する。樹脂と溶離に用いたバッファーを4
℃にて少なくとも1時間混合して樹脂をペレット化し、上澄み液を除去する。ア
リコートをゲル電気泳動によって分析し、濃度を推定する。アミロース樹脂をア
ミロース結合バッファー(20mMのトリスHCl、pH7、100mMのNaCl、10mMのEDTA)
の中で平衡化し、コバルト樹脂からの上澄み液と化合させる。混合比は、樹脂1m
lにつき融合タンパク質2mgである。結合ステップと洗浄ステップはすでに説明し
たようにして行なう。あとで濃縮することができるだけ必要ないようにするため
、10mMのマルトースを含むアミロース結合バッファーをできるだけ少量用いてタ
ンパク質を溶離する。溶離したタンパク質は、ゲル電気泳動にかけ、BSA基準を
用いてクーマッシー・ブルーで染色し、抗MBP抗体を用いてウエスタン・ブロッ
ト法を行なうことにより解析する。
【0103】 この明細書では、本発明を明確にするために特別な実施態様について説明した
が、以上の記述から、本発明の精神と範囲においてさまざまな変更が可能である
ことは明らかであろう。したがって本発明が添付の請求の範囲に限定されること
はない。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1A】 配列番号:2に示したアミノ酸配列のホップ/ウッズ親水性プロファイルであ
る。このプロファイルは、6残基ウインドウをスライドさせる方法に基づいてい
る。隠れているG、S、T残基と露出しているH、Y、H残基は無視した。図で
はこれら残基を小文字で表示した。
【図1B】 図1Aの続きである。
【図1C】 図1Bの続きである。
【図1D】 図1Cの続きである。
【図1E】 図1Dの続きである。
【図1F】 図1Eの続きである。
【図2】 ヒトzil1a4(配列番号:2と配列番号:9)に関する2通りの選択的スプライシ
ング形態をアラインメントした図である。アミノ酸残基は標準的な1文字記号で
表示した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/19 C12P 21/02 K 1/21 C12N 15/00 ZNAA 5/10 5/00 A C12P 21/02 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD ,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL, PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,S L,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN ,YU,ZA,ZW (72)発明者 シェパード,ポール オー. アメリカ合衆国,ワシントン 98053,レ ッドモンド,ノースイースト セカンド ストリート 20717 (72)発明者 ガオ,ゼレン アメリカ合衆国,ワシントン 98052,レ ッドモンド,ワンハンドレッドセブンティ ーナインス ノースイースト プレイス 9502 #3 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA26 CA01 FA02 FA07 FA18 GA16 HA01 4B064 AG04 CA19 CC24 DA01 4B065 AB01 AC14 CA24 CA44 4C084 AA02 AA06 BA01 BA22 NA14 ZB07 4H045 AA10 AA30 BA50 DA03 EA22 FA74

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号:7のアミノ酸残基番号60〜218と、 配列番号:10のアミノ酸残基番号1〜157と、 からなる群から選択されたアミノ酸残基の配列を含む単離されたタンパク質。
  2. 【請求項2】 配列番号:2の残基番号200に対応するアミノ酸残基がLys
    である請求項1に記載の単離されたタンパク質。
  3. 【請求項3】 配列番号:2の残基番号200に対応するアミノ酸残基がAsp
    である請求項1に記載の単離されたタンパク質。
  4. 【請求項4】 配列番号:2の残基番号200に対応するアミノ酸残基がGlu
    である請求項1に記載の単離されたタンパク質。
  5. 【請求項5】 前記タンパク質が配列番号:11の残基番号60〜218を含む請
    求項1に記載の単離されたタンパク質。
  6. 【請求項6】 前記タンパク質が配列番号:14又は配列番号:2の残基番号6
    0〜218を含む請求項5に記載の単離されたタンパク質。
  7. 【請求項7】 前記タンパク質が配列番号:11の残基番号1〜218又は配列番
    号:12の残基番号1〜157を含む請求項1に記載の単離されたタンパク質。
  8. 【請求項8】 前記タンパク質が、 配列番号:14の残基番号1〜218; 配列番号:2の残基番号1〜218; 配列番号:15の残基番号1〜157;又は 配列番号:9の残基番号1〜157 を含む請求項7に記載の単離されたタンパク質。
  9. 【請求項9】 前記タンパク質が、157〜1500アミノ酸残基の長さである1〜
    8のいずれかに記載の単離されたタンパク質。
  10. 【請求項10】 アフィニティ・タグをさらに含む請求項1〜9のいずれか
    に記載の単離されたタンパク質。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質をコードする
    単離されたポリヌクレオチド。
  12. 【請求項12】 DNAである請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチ
    ド。
  13. 【請求項13】 作用可能に結合した以下の要素: (a)転写プロモーターと、 (b)請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質をコードするDNA断片と、
    (c)転写ターミネーターと、 を含む発現ベクター。
  14. 【請求項14】 前記DNA断片と作用可能に結合した分泌シグナル配列をさ
    らに含む請求項13に記載の発現ベクター。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載の発現ベクターを含む培養細胞。
  16. 【請求項16】 タンパク質を生産する方法であって、 請求項15に記載の細胞を、前記DNA断片が発現される条件下で培養し;そし
    て、 前記DNA断片によりコードされるタンパク質を回収すること を含む方法。
  17. 【請求項17】 動物において免疫応答を調節する方法であって、該動物に
    、請求項1〜10のいずれかに記載のタンパク質を含む組成物を、医薬として許容
    されるビヒクルと組み合わせて投与することを含む方法。
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