JP2002522394A - 中枢神経系虚血または外傷の上皮増殖因子様ポリペプチドによる治療 - Google Patents

中枢神経系虚血または外傷の上皮増殖因子様ポリペプチドによる治療

Info

Publication number
JP2002522394A
JP2002522394A JP2000563296A JP2000563296A JP2002522394A JP 2002522394 A JP2002522394 A JP 2002522394A JP 2000563296 A JP2000563296 A JP 2000563296A JP 2000563296 A JP2000563296 A JP 2000563296A JP 2002522394 A JP2002522394 A JP 2002522394A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
egf
polypeptide
growth factor
injury
binding fragment
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2000563296A
Other languages
English (en)
Inventor
セス ピー. フィンクルスタイン
Original Assignee
ザ ジュネラル ホスピタル コーポレーション
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ザ ジュネラル ホスピタル コーポレーション filed Critical ザ ジュネラル ホスピタル コーポレーション
Publication of JP2002522394A publication Critical patent/JP2002522394A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/475Growth factors; Growth regulators
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明は、中枢神経系(CNS)の損傷により生じる神経欠損を予防、減少、または消失させる方法を特徴とする。この方法は、例えば上皮増殖因子(EGF)ファミリーのポリペプチドを該欠損を有する患者に投与することにより、実施することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】関連出願の相互参照 本出願は、本明細書に参照として組入れられている、1998年8月7日に出願され
た米国特許出願第60/095,830号の恩典を請求するものである。
【0002】発明の分野 本発明は、中枢神経系の損傷により生じる神経欠損の治療に関する。
【0003】発明の背景 神経栄養因子は、神経系の適切な発達に必要なポリペプチドである。神経成長
因子(NGF)として発見された第一の神経栄養因子は、それから間もなく発見され
た上皮増殖因子(EGF)と共に、巨大な増殖因子ファミリーの一部であることが現
在わかっている。EGFファミリーは、EGF、トランスフォーミング増殖因子-α(TG
F-α)、ワクシニア増殖因子(VGF)、アンフィレグリン(AR)、ヘパリン結合性EGF(
HB-EGF)、ベータセルリン(BTC)、エピレグリン、ニューレグリン-1(NRG-1、これ
はNeu分化因子(NDF)、ヘレグリン(HRG)、アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)
およびグリア細胞増殖因子(GGF)とも称される)、およびニューレグリン-2(NRG-2
)を含む。これらのポリペプチドは、共通のアミノ酸モチーフであるEGFドメイン
を含み、これは、下記のように配置された6個の高度に保存されたシステイン残
基を含む、約40〜45個のアミノ酸残基からなる:CX7CX4CX10CXCX8C (配列番号:
3;ここでCはシステインであり、かつX7は任意の7個のアミノ酸、X4は任意の4
個のアミノ酸等である)。この6個のシステイン残基は、HB-EGFの有糸分裂促進活
性に必須の3個の分子内ジスルフィド結合を形成している(配列番号:3の第一シ
ステイン残基と第三システイン残基との間、第二システイン残基と第四システイ
ン残基との間、および第五システイン残基と第六システイン残基との間)。
【0004】 別のEGFファミリーポリペプチドに共通の特徴は、これらが膜貫通前駆体分子
として合成され、次にタンパク質分解処理を受け、成熟増殖因子を細胞表面から
可溶性の形で放出することである。
【0005】 発達中の動物における細胞増殖および分化を支えるポリペプチド増殖因子の能
力は次第に明らかになってきているが、それらの成熟動物における、特に神経系
における役割はほとんどわかっていない。このことは、成熟動物において神経が
損傷または死滅した場合に、永久的な運動性および認知性の欠損が生じるため残
念なことである。何らかの形の大脳の虚血エピソードを患った患者は、例え時間
をかけて一部回復したとしても、中等度から重度に衰弱したままであることが多
い。
【0006】発明の概要 本発明は、中枢神経系(CNS)の損傷によって生じる神経欠損(すなわち、認知ま
たは感覚運動の欠損)を予防、減少、または消失させる方法を特徴とする。これ
らの方法は、上皮増殖因子(EGF)ファミリーのポリペプチドを、このような欠損
を患っているまたはそれを発症する危険性のある患者に投与することにより行う
ことができる。EGFファミリーのポリペプチドは、本明細書においては(下記にさ
らに定義するように)「EGF様ポリペプチド」と称する。
【0007】 本発明の方法は、損傷が発生した後(すなわち欠損を引き起こすか、もしくは
、欠損を早めるような損傷の後)に神経欠損を減少または消失させるために適用
することができる。これは、このような損傷の発生は予測する方法がないことが
多いので有益である。例えば、自動車事故もしくはスポーツ時に生じるような外
傷性損傷、ならびに卒中の全ての型が、予測不可能である。驚くべきことに、EG
F様ポリペプチドは、損傷が発生してから長時間経過後に投与が開始された場合
ですら、感覚運動または認知の欠損を減少または消失させることができる。例え
ば投与は、損傷発生の6時間以降、12時間以降、24時間以降、48時間以降、また
は72時間以降に開始することができ、依然として有意な利益を提供する。実際に
、投与を損傷発生後数週間後、数か月後または数年後に有益に開始することがで
きる。当然のことながら損傷の直後に投与を開始することもできる。さらに驚く
べきことに、本発明の利点は、投与を間隔をあけて行うことができ;本発明のEG
F様ポリペプチドは血液−脳関門があるにもかかわらず有効である。
【0008】 従って本発明は、中枢神経系損傷を罹患した患者において、患者の神経欠損を
減少させるのに有効な量のEGF様ポリペプチドを患者に投与することにより、神
経欠損を減少させる方法を特徴とする。この損傷は、虚血エピソード(例えば、
限局性または全身性の虚血エピソード)または外傷性損傷であることができる。
本明細書に記されたEGF様ポリペプチドは、EGF;TGFα;VGF;AR;HB-EGF;BTC
;エピレグリン;ニューレグリン;もしくはEGF受容体結合断片またはそれらの
類似体(例えば、これらのEGF様ポリペプチドのいずれかのEGFドメイン)であるこ
とができる。断片に加えて、1種以上の保存的アミノ酸置換を含むEGF様ポリペプ
チドは本発明の範囲内である。
【0009】 特に定義しない限りは、本明細書において使用される技術用語および科学用語
は全て、本発明が属する技術分野の技術者に通常理解されているものと同じ意味
を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記されたものと類似ま
たは同等の方法および材料を用いることができるが、適当な方法および材料は以
下に記載する。本明細書において言及される全ての出版物、特許出願、特許およ
び他の参考文献は、その全体が参照として組入れられる。矛盾がある場合には、
定義を含めて本明細書が優先する。加えて材料、方法および実施例は、単なる例
示であり、限定を意図するものではない。
【0010】 本発明の他の特徴および利点は、下記の詳細な説明および特許請求の範囲から
明らかになると思われる。
【0011】詳細な説明 神経欠損は、脳または脊髄の損傷により引き起こされうる。以下に説明するよ
うに、このような損傷を被った患者は、EGF様ポリペプチドにより治療すること
ができ、生じた欠損または生じると予測される欠損を予防、減少、または消失さ
せる。適当なポリペプチド、適当な投与様式、治療され易い損傷、および治療方
式により得られた結果の分析手段を、下記に説明する。
【0012】A. ポリペプチド 本発明の状況において有用なポリペプチドは、EGFファミリーのポリペプチド(
EGF様ポリペプチド)である。当業者は、このファミリーのポリペプチドを同定す
ることができ、これは、認識可能なEGFドメイン(前述のコンセンサス配列CX7CX4 CX10CXCX8C(配列番号:3))またはEGF受容体を活性化する能力を有している。
【0013】 4種のEGF受容体ファミリーのメンバーが同定されており、HER(ヒトEGF受容体)
またはerbB命名法を用いて命名されている。これらの受容体は、以下のものであ
る:古典的EGF受容体(EGFR)、HER1またはerbB1としても公知;HER2またはerbB2
、pl85またはneuとしても公知;HER3またはerbB3;ならびに、HER4またはerbB4
。EGF受容体は、EGFファミリーのポリペプチドが結合している1個のエクトドメ
イン、1個の膜貫通ドメイン(membrane spanning domain)、および細胞質に固
有のキナーゼドメインを含んでいる。リガンド結合時に、これらのモノマー受容
体は、他のEGFRファミリーのメンバーとホモダイマーまたはヘテロダイマーを形
成し、この過程はトランスモジュレーションとして公知であり、かつ細胞質ドメ
イン内部の特異的チロシン残基をリン酸化する。これらのリン酸化されたチロシ
ン残基は、エフェクター分子のドッキング部位として作用し、シグナル伝達経路
の活性化をもたらす。4種のEGF受容体サブタイプは高度の相同性を共有しており
、最も注目されるのは290個のアミノ酸の細胞質チロシンキナーゼドメインであ
る。細胞外リガンド結合ドメイン中の2個のシステインに富む領域も保存されて
いる。対照的にリガンド結合後の細胞内シグナル伝達経路の活性化に必須である
C末端の1OO個のアミノ酸中には相同性はほとんど存在しない。
【0014】 EGF様ポリペプチドは、EGF受容体との結合および活性化において様々な特異性
を示している(表1参照)。EGF、トランスフォーミング増殖因子-α(TGP-α)およ
びアンフィレグリン(AR)はHER1と結合し;ニューレグリン-1(NRG-1)およびニュ
ーレグリン-2(NRG-2)はHER3およびHER4に結合するが、HER4しか活性化せず;HB-
EGFおよびBTCは、HER1およびHER4の両方に結合し両方を活性化する。これまでの
ところ受容体HER2についてのリガンドは、同定されていない。
【0015】 EGF受容体を、特異的結合および配列情報、シグナル伝達、および受容体トポ
ロジーを含むものについて検証する際には、例えばMcInnesおよびSykes(Biopoly
mers、43:339-366 (1997))、Boonstraら(Cell Biol. Intl.、19:413-430 (1995)
)、またはGill(Mol. Reprod. Dev.、27:46-53 (1990))を参考にすることができ
る。
【0016】 本明細書に使用される用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は両方とも
、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)には関らず、ア
ミノ酸残基の任意の鎖を意味する。本発明において有用なポリペプチド増殖因子
は「実質的に純粋」であり、これはポリペプチドを含有する組成物は、目的のポ
リペプチド、例えばHB-EGFのようなEGF様ポリペプチドが、少なくとも60重量%(
乾燥質量)であることを意味する。好ましくはポリペプチド含有組成物は、目的
のポリペプチドが少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、および最も
好ましくは少なくとも99重量%である。純度は、例えばカラムクロマトグラフィ
ー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはHPLC分析など、任意の適当な標準的
方法により測定することができる。
【0017】 EGF受容体に結合し活性化する任意のEGF様ポリペプチドを、CNS虚血または外
傷により生じた感覚運動欠損を治療する(すなわち、予防、減少または消失させ
る)のに使用することができる。本明細書において使用される用語「結合し活性
化する」とは、神経欠損の予防または減少に寄与する生体反応を引き起こすのに
十分なシグナル伝達を生じるEGF様ポリペプチドとEGF受容体との間の特異的相互
作用を意味する。本発明のEGF様ポリペプチドは、天然のEGFファミリーメンバー
のその同起源の受容体への結合親和性の少なくとも50%、より好ましくは少なく
とも70%、および最も好ましくは少なくとも90%(例えば、95%、97%、または9
9%、100%、または100%以上であることさえも)に相当する親和性で、EGF受容
体に結合すると考えられる(リガンド-受容体結合パートナーを表1に示す)(例え
ば、EGF受容体に対するVGF、TGFα、およびEGFの結合親和性の比較については、
Twardizikら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82:5300-5304 (1985)を参照のこと
)。
【0018】
【表1】 EGFファミリーのポリペプチドおよびそれらの受容体
【0019】 当業者は、EGF様ポリペプチドを容易に同定することができる。受容体結合お
よび活性化のアッセイ法は、当技術分野において日常的に行われている。本発明
の状況において、これらのアッセイ法は、例えばマウスおよびヒトEGFの両方が
、ヒト包皮繊維芽細胞上の結合部位で125I-標識したmEGFと競合する能力を基に
することができる。例えば125I-標識したmEGFの結合および競合アッセイ法は、
ヒト包皮繊維芽細胞の単層培養物上で(例えばおよそ1 x 106細胞/60mm Falcon
皿)、標準量の125I-標識したmEGFを、漸増量の競合ペプチド(例えば、EGF様ポリ
ペプチド並びにそれらの置換および欠失変異体)を含有するアリコートの刺激存
在下で、37℃で1時間インキュベーションすることにより行うことができる。結
合培地は、アルブミンを含有する改変ダルベッコ培地1.5mlからなることができ
る。結合していない125I-標識mEGFを洗浄により除去し、0.5M NaOH 1mlを添加し
て細胞を可溶化することができる。その後γ線検出装置(例えばNuclear-Chicago
社から入手できる)により放射活性を測定することができる。その後置換された1 25 I-標識mEGFの割合を適用されたポリペプチド量に対してプロットすることによ
り検量線を作成する(CohenおよびCharpenter、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、72
:1317-1321 (1975))。
【0020】 同様に、放射性受容体アッセイ法を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中10%ホル
マリンにより24穴プレート上に固定されたA431細胞の単層上で行うことができる
。ホルマリン−固定された細胞は、固定されていない細胞よりも容易に剥がれ落
ちることはなく、従って反復実験値は比較的一貫している。これらのアッセイ条
件下で、125I-EGF(1 x 1010 cpm/nmol)は、3nMで結合アッセイを飽和し;このア
ッセイ法は飽和値10%で行うことができる(Twardzikら、Proc. Natl. Acad. Sci
. USA、82:5300-5304 (1985))。
【0021】 本発明は、本明細書に記されたポリペプチド増殖因子(すなわち、当技術分野
において公知のEGF様ポリペプチドおよび表1に列記したもの)の1種以上の生物
学的機能または活性を有する「機能的EGF様ポリペプチド」を包含している。こ
れらの機能または活性は、CNSに対する損傷に起因した神経欠損を減少させるた
めに必要なものである(すなわち、感覚運動欠損、言語障害、視覚障害、認知機
能喪失、または正確な記憶を形成する能力の喪失を減少または消失させるような
それらの機能または活性)。従ってEGF様ポリペプチドの別の分子形態は、本発
明の範囲内である(例えば野生型EGF様ポリペプチドと比べて、1個以上の保存的
アミノ酸置換を伴う断片および変異体、ならびに類似体)。
【0022】 EGF様ポリペプチドの生物活性(特にEGF様ポリペプチドの感覚運動欠損を予防
、減少または消失させる能力)を破壊することのない1つまたは複数の保存的アミ
ノ酸置換を含むEGF様ポリペプチドが有用である。保存的アミノ酸置換は、下記
の群内の置換を含む:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、および
ロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン
;セリンおよびトレオニン;リシンおよびアルギニン;並びにフェニルアラニン
およびチロシン。従って、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を(好ましくは、
EGFドメインの6個の保存されたシステイン残基以外の位置に)含むEGF様ポリペプ
チドは本発明の範囲内である。
【0023】 表1に列記した完全長ポリペプチドの1種の変異体からなるEGF様ポリペプチド
は、本明細書に記した結合アッセイ法のひとつにおいて、所定の濃度で、EGF様
ポリペプチドが、野生型ヒトEGFポリペプチドと同程度の125I-標識mEGFの少なく
とも50%、好ましくは少なくとも70%、およびより好ましくは少なくとも90%(
例えば、95%、97%、または99%でさえも)置換される場合に本発明の範囲内で
ある。例えばこれは、前述のような標準的受容体結合アッセイ法を行うことによ
り決定することができる(CohenおよびCarpenter、Proc. Natl. Acad. Sci. USA
72:13l7-132l (1975)も参照のこと)。
【0024】 本発明の変異体EGF様ポリペプチドは、表1に列記された完全長ポリペプチド
の断片であってよい。例えば変異体EGF様ポリペプチドは、EGF様ポリペプチドの
EGFドメイン(すなわちコンセンサス配列CX7CX4CX10CXCX8C (配列番号:3)に順
ずるドメイン、例えば配列番号:2のアミノ酸残基108〜143)またはEGFドメイン
ならびにEGFドメインに隣接する1個以上のアミノ酸残基からなることができる。
切断型ポリペプチド(すなわち1個以上のアミノ酸が、EGF様ポリペプチドの1個以
上の末端に残留しているEGF様ポリペプチド断片)を用いて、本発明を実施するこ
とができる。例えば、EGF、TGF-α、AR、HB-EGF、BTC、エピレグリン、またはニ
ューレグリンのアミノ末端および/またはカルボキシ末端からの1、2、5、10個
またはそれ以上のアミノ酸残基の欠失は、本発明において有用な変異体EGF様ポ
リペプチドを生じると考えられる。例えば、本発明において有用なHB-EGFポリペ
プチドは、アミノ酸残基2〜208;6〜208;11〜208;100〜208;100〜145;1〜20
7;1〜202;1〜198;などを含むもの(全て配列番号:2)を含む。従って本発明
において有用なEGF様ポリペプチドは、EGFファミリーのポリペプチドの活性断片
からなり得る。「活性断片」とは、前述のような受容体結合アッセイ法において
試験した場合に、そうでない場合は受容体に結合すると思われるリガンドの少な
くとも50%が置換されているようなEGF様ポリペプチドの任意の部分を意味する(
例えばHB-EGFの断片が野生型ヒトEGFポリペプチドと同程度の125I-標識mEGFの少
なくとも50%置換されるならば、これはHB-EGF活性断片である。)。EGF様ポリ
ペプチドの活性断片または機能性断片も、外傷性または虚血性損傷に続発する神
経欠損(すなわち認知および感覚運動欠損)を改善するそれらの能力について評価
することができる。任意の所与のEGF様ポリペプチドがこれらの欠損を改善する
能力は、当業者に周知の認知および運動技能試験により評価される。臨床試験の
前に、神経欠損を改善するEGF様ポリペプチドの効能は、動物モデルにおいて評
価することができる(以下に説明する、前肢踏直り試験、後肢踏直り試験、変更
されたバランスビーム試験(modified balance beam test)、および姿勢反射試験
を参照のこと)。活性断片は、完全長ポリペプチドの利益の少なくとも40%、好
ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも7O%、および最も好ましく
は少なくとも90%(100%以上を含む)を生じるであろう。任意の所与のポリペプ
チドまたはその断片の活性は、かなり多くの方法で容易に決定することができる
。例えばEGF様ポリペプチドの断片が本明細書に記載の本発明の方法に従って投
与された時、機能試験において完全長EGFポリペプチドの投与によりもたらされ
る効果と同等の効果をもたらすことが示される場合、この断片はEGF様ポリペプ
チドの「活性断片」であり、本発明に包含される。EGF様ポリペプチドが、例え
ばサイズとは関り無く、完全長の野生型EGF様ポリペプチドの機能活性を保持し
ているかどうかを決定することは、十分当業者の能力の範囲内である。
【0025】 特定のEGF様ポリペプチドの説明を以下に示す。
【0026】1.ヘパリン結合性上皮増殖因子 ヘパリン結合性EGF(HB-EGF)は最初に、マクロファージ様U-937細胞の馴化培地
(CM)において同定された(Higashiyamaら、Science、251:936-939 (1991))。これ
は、Balb/c 3T3細胞および平滑筋細胞(SMC)に対しては有糸分裂促進性であるが
、内皮細胞(EC)に対してはそうではない固定されたヘパリンに対して強力な親和
性のある増殖因子である。HB-EGFは、マクロファージ様ヒトU-937細胞のCMから
、ヘパリン−アフィニティクロマトグラフィーおよび逆相液体クロマトグラフィ
ーを用いて精製され、U-937細胞cDNAライブラリーからクローニングされている
。HB-EGF cDNAの分析により、推定シグナルペプチド、プロペプチド、成熟HB-EG
F、ならびに膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを含むアミノ酸208個の主な翻
訳産物(配列番号:2)が推定されるオープンリーディングフレームが明らかとな
っている(例えば米国特許第5,811,393号を参照のこと)。ヒトHB-EGFの構造組織
および染色体割当ての説明については、Fenらの論文を参照のこと(Biochem.、32
:7932-7938 (1993))。
【0027】 様々なHB-EGF型が本発明において有用である。例えば、66個のアミノ酸型(配
列番号:2のアミノ酸残基82〜147)、86個のアミノ酸型(配列番号:2のアミノ
酸残基63〜148)、完全長の208個のアミノ酸型(配列番号:2)、さらには翻訳後
修飾またはプロセッシングを受けたHB-EGFの任意のEGF受容体結合型を、本発明
の実施に使用することができる。このような翻訳後修飾は、プロセシングされた
アミノ末端、例えば、シグナル配列の全てもしくは一部またはプロ配列の全ても
しくは一部の除去;プロセシングされたカルボキシ末端、例えば、膜貫通ドメイ
ン(membrane spanning domain)の全てもしくは一部または細胞質ドメインの全
てもしくは一部の除去;O-結合したグリコシル化;または、それらの任意の組合
せを含むが、これらに限定はされない。
【0028】 HB-EGFの一つの供給源は、ヒトの組織球のリンパ球細胞株U-937であり、これ
はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(マナサス、VA)から寄託番号
CRL 1593で入手することができる。精製法は、当業者には公知である(HB-EGFの
精製の具体的な指針については、米国特許第5,811,393号を参照のこと)。本発明
のHB-EGFおよび他のEGF様ポリペプチドは、組換えによるかまたは合成により作
出することもできる。従って、本発明において有用なポリペプチド増殖因子は、
天然、合成または組換え分子であることができ、かつひとつの部位が例えばEGF
様ポリペプチドであり第二の部位が別のポリペプチド(例えばアルブミンまたは
免疫グロブリンの一部のような巨大分子)であるような、ハイブリッドまたはキ
メラポリペプチドからなることができる。EGF様ポリペプチドを、生物検体から
精製し、化学的に合成し、または常法により組換え産生する方法は周知である(
例えば、Ausubelら、分子生物学の最新プロトコル(Current Protocols in Mole
cular Biology)、ニューヨーク、John Wiley and Sons、1993年;Pouwelsら、C
loning Vectors: A Laboratory Manual、1985、前掲、1987年を参照のこと)。
【0029】 HB-EGF遺伝子は、通常肺、心臓、および骨格筋を含む様々な組織で発現される
。HB-EGFは、胚盤胞移植、創傷治癒、SMC過形成、腫瘍増殖、およびアテローム
硬化症のような、様々な正常および異常なプロセスへの関与が暗示されている(
例えばFenら、前掲を参照のこと)。
【0030】 HB-EGFは、哺乳類の脳においても発現されている。特にHB-EGF mRNAは、ラッ
ト前脳の皮質、海馬および他の深部構造において見出されている。神経細胞およ
び希突起神経膠細胞は通常HB-EGFポリペプチドを発現すると考えられるのに対し
て、本試験は、以下に説明するようにHB-EGF mRNAが、限局性脳損傷(または「卒
中」)発生後数日以内にアップレギュレーションされることを示唆している。こ
のアップレギュレーションは、限局性脳創傷または梗塞を取り囲んでいる組織に
おいて明らかである。従ってCNS損傷の前または直後に投与されたHB-EGFは、神
経保護的作用を発揮するであろうと予想することは理にかなっている。しかし、
本発明者らは、限局性虚血性損傷の後、梗塞容積を減少する点ではHB-EGFが無効
であることを発見した。さらに以下に説明するように、EGF様ポリペプチドは、C
NSへの虚血性または外傷性損傷を罹患した患者に、かなりの時間が経過した後で
あっても、投与することができる。驚くべきことに、EGF様ポリペプチドの投与
は、損傷発生後6時間もしくは12時間以上経過してから始めることができる。HB-
EGF(または本発明に係る任意のEGF様ポリペプチド)の投与事象が、この時点また
はそれ以降に開始される場合(すなわち、脳の神経細胞またはグリア細胞が虚血
により有害な影響を受けた後)、このポリペプチドは、異なる機構で作用するこ
とができる(すなわち、梗塞容積減少とは異なる機構)。例えば、EGF様ポリペプ
チドは、減少性または随伴性細胞死を減少させ、および/または、神経の新芽形
成およびシナプス形成を刺激することができる。
【0031】2.ベータセルリン ベータセルリン(BTC)は当初、マウス膵臓の腫瘍細胞株の馴化培地から精製さ
れた。BTC cDNAのヌクレオチド配列は、178個のアミノ酸のペプチドと予想され
、これはタンパク質分解的にプロセッシングを受け、可溶性の80個のアミノ酸で
あるBTCタンパク質を、BTC-発現細胞から放出する。ノーザンブロット分析によ
って、肺、子宮、腎臓、胸腺、心臓、肝臓、脾臓、小腸、膵臓、筋および精巣に
おける比較的高い発現が明らかにされている。
【0032】3.ニューレグリン ニューレグリン(ヘレグリン、NDG、GGF、ARIA)は、単独遺伝子の選択的にスプ
ライシングされたアイソフォームとして発現されている、分泌されかつ膜に付着
したEGF様増殖因子の巨大なグループである。これらは、神経細胞および間葉細
胞により産生され、かつ細胞増殖、生存、および分化のような様々な栄養性反応
を誘発する。これらのポリペプチドの分泌型は、約34〜44kDaである。一般に、
ニューレグリンは、神経細胞により産生され、かつ他の種類の受容体を生じる細
胞、例えばグリア細胞および骨格筋細胞に対しそれらの作用を発揮する。ニュー
レグリンを欠いているマウスは、心臓の形成、および脳幹に発生する構造である
菱脳形成において欠損を示す。これらの動物は、シュワン細胞前駆体も欠いてい
る。
【0033】B.治療方式 本発明の方法を実施するために適当な治療方式は、治療量のEGF様ポリペプチ
ドを適当な経路を介して、かつ適当な期間で投与することを実行した場合に、患
者のCNSに対する損傷により生じる神経欠損を予防、減少、または消失するよう
な任意の方式である。この治療方式は、患者の運動技能(例えば、姿勢、バラン
ス、把握反射、または歩行)、認知技能、言語、または感覚認知(視覚、味覚、嗅
覚、および固有感覚)の1種以上を試験することにより評価し、かつEGF様ポリペ
プチドによる治療後に感覚運動、認知または他の技能が改善したかどうかを判定
することができる。
【0034】 EFG様ポリペプチド投与は、静脈内、経口または脳内(例えば、脳室内、鞘内、
または槽内)を含む任意の公知の投与経路で行うことができる。槽内投与は、例
えば、0.1〜100μg/kg/EGF様ポリペプチド注射(例えばHB-EGFまたはその活性断
片)を用いて、および単回注射または反復注射の投与により行うことができる。
当業者は、体重を基にした用量決定の代わりに、ヒト脳表面積を基に脳脊髄液に
必要量を容易に投与することができる。この事象において、ヒト患者は、典型的
にはEGF様ポリペプチド0.01〜1000mg(例えば、0.1、1、10、100、250、500、700
、800、または900mg)で治療される。槽内投与は、例えば損傷後24時間で与えら
れる単回適用、例えば損傷後24時間および48時間後に与えられる1対の適用、ま
たは必要ならば例えば虚血エピソードの後24時間またはそれ以降に開始される治
療方式において1.0mgを所定の週2回与えられる(例えば3〜4日毎)一連の適用から
なることができる。この治療方式は数週間維持され得る。あるいは槽内投与は、
虚血エピソードの6、12、24時間またはそれ以降に開始される治療方式において
、例えば1.0mgが1回、2回または例えば週2回与えらるような、一連の適用からな
ることができる。
【0035】 あるいは、ポリペプチド増殖因子は、静脈内投与することができる。典型的に
は、静脈内投与の用量は、槽内投与の用量よりも多く、例えばEGF様ポリペプチ
ド1〜1,000μg/kgが投与される。好ましくは、EGF様ポリペプチドは、濃度1〜10
0μg/kg/時の範囲で静脈内投与される。
【0036】 より詳細に述べると、EGF様ポリペプチドは、下記のように決定される治療有
効用量(すなわち、ポリペプチドを投与することなしに予想される回復を越える
機能の回復を生じるのに十分な用量)で患者に投与することができる。
【0037】1.有効量 任意の所定のEGF様ポリペプチドの毒性および治療効能は、LD50(集団の50%の
致死をもたらす用量)およびED50(集団の50%で治療効能を発揮する用量)を決定
するための細胞培養、動物実験、またはこれら両方のいずれかを用いて、標準の
薬学的手法により決定することができる。毒性作用と治療作用の間の用量比は、
治療指数であり、これはLD50:ED50の比で表される。大きい治療指数を示すEGF
様ポリペプチドが好ましい。しかし、毒性副作用を示すEGF様ポリペプチドも、
送達システムがこのようなポリペプチドを限定された方法(すなわち、影響を受
けない細胞における可能性のある損傷が最小であり、かつこれによる有害副作用
が許容できるまで減少する方法)で影響を受けた組織部位に標的化する限りは依
然使用することができる。
【0038】 細胞培養アッセイ法および動物実験、特に以下に説明するラットの研究から得
られたデータは、ヒトにおいて使用するための用量範囲の製剤化に使用すること
ができる。このようなポリペプチドの用量は、ほとんどまたは全く毒性を伴わな
いED50を含む循環血中濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、使用される
剤形および投与経路に応じて、この範囲内で変動することができる。本発明の方
法において使用される任意のEGF様ポリペプチドについては、治療有効量を最初
に以下に説明する哺乳類脳において外科的に誘導された虚血における研究から推
定することができる。
【0039】 用量は、動物モデルにおいて、以下に説明したインビボ試験において決定され
たようなIC50(すなわち、回復の最大半分の誘導を達成する被験ポリペプチドの
濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように製剤化することができる。この
ような情報を使用して、必要ならば、より正確にヒトの治療有効量を決定するこ
とができる。さらに医学分野において、任意のある患者の用量は、その患者の全
身の健康状態、性別、体重、体表面積、および年齢に加えて、投与される特定の
化合物、投与の時間および経路、並びに併用投与される他の薬物を含む多くの要
因によって左右されることは周知である。最適用量および投与経路の決定は、当
技術分野の医師の能力内であることは自明である。
【0040】2.製剤および使用 本発明に従い使用するための薬学的組成物(すなわちEGF様ポリペプチドを含有
する組成物)は、通常の方法で、1種以上の薬学的に許容できる担体または賦形剤
を用いて製剤することができ、その多くは当業者に公知である。例えば本発明の
薬学的組成物を脳内または静脈内に投与する場合に、賦形剤を使用することがで
きる。別のポリペプチド増殖因子bFGFが静脈内投与された場合に、血管脳関門を
通過し、かつ虚血性脳組織に侵入することができることも公知である(Fisherら
、J. Cereb. Blood Flow Metab.、15:953-959 (1995);Huangら、Amer.J. Physi
ol.、印刷中)。適当な賦形剤は、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝
剤、酢酸緩衝剤、および炭酸水素緩衝剤)、アミノ酸、尿素、アルコール、アス
コルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリ
ウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含む。
【0041】 前述の投与の好ましい経路に加え、EGF様ポリペプチドは、経口、動脈内、皮
下、筋肉内、脳室内、被膜内、髄腔内、槽内、または経粘膜的に投与することが
できる。従って、EGF様ポリペプチドは、吸入または通気による(口または鼻のい
ずれかを通って)投与、または経口、頬内、点鼻、膣内、点眼、非経口、または
直腸内投与用に製剤化することができる。
【0042】 EGF様ポリペプチドは、投与経路に応じて、様々な方法で製剤化することがで
きる。例えば経口摂取または注射のためには、液状溶液を形成することができ;
経口摂取、吸引または局所塗布のためには、ゲルまたは粉末を形成することがで
きる。経口投与のためには、薬学的組成物は、例えば薬学的に許容できる賦形剤
、例えば、結合剤(例えば、プレゼラチン化した(pregelatinised)トウモロコ
シデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス);充填剤(例えば、乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);
滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例え
ば、ジャガイモデンプン、またはスターチグリコレートナトリウム);または、
湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)と共に常法により調製された錠剤また
はカプセル剤等の形態で摂取することができる。錠剤は、当技術分野において周
知の方法により被覆することができる。経口投与のための液体製剤は、例えば、
液剤、シロップ剤または懸濁剤の形で摂取することができるか、またはこれらは
水または他の適当な溶剤と共に使用前に構成するための乾燥製品として提供する
ことができる。このような液体製剤は、例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシ
ロップ、セルロース誘導体、または水素化された食用脂肪);乳化剤(例えば、レ
シチンまたはアラビアゴム);非水性溶剤(例えば、アーモンド油、油性エステル
、エチルアルコール、または分留された植物油);並びに保存剤(例えば、メチル
またはプロピル-p-ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸) のような、薬学的に
許容できる添加剤と共に常法により調製することができる。これらの調製物は、
さらに緩衝剤塩、香料、着色剤および甘味剤を適宜含むこともできる。このよう
な製剤の製造法は周知であり、かつ例えば、「レミントン薬科学(Remington's
Pharmaceutical Sciences)」に見ることができる(A. Gennaro編、Mack Publ.、
199O年)。
【0043】 EGF様ポリペプチドは、所定の用量を一度に全て、または時間をかけて徐々に
(例えば、移植可能な徐放装置からの連続注入による)のいずれかで提供される
ように、投与のために製剤化することができる。従って、注射用製剤は、保存剤
を添加した、例えばアンプルまたは反復投与用容器などの中の単位剤形で提供す
ることができる。これらの組成物は、油性または水性溶剤中の懸濁剤、液剤、ま
たは乳剤などの形態で服用することができ、かつ懸濁化剤、安定化剤および/ま
たは分散剤のような製剤用物質を含むことができる。あるいは、この有効成分は
、例えば滅菌パイロジェン非含有水のような適当な溶剤で使用前に構成するため
の粉末剤形であることができる。緩徐な放出が望ましい場合、EGF様ポリペプチ
ドは、デポ剤形として製剤化することができる。このような長期作用型製剤は、
移植により(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することがで
きる。従って、例えばこれらの化合物は、適当な高分子または疎水性物質(例え
ば、許容できる油中の乳剤)もしくはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導
体として、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
【0044】 望ましい場合には、EGF様ポリペプチドは、有効成分を含有する単位剤形1回分
以上を含むことができる、パックまたはディスペンサー装置内に入れて提供する
ことができる。パックは、例えば金属箔またはブリスターパックのようなプラス
チックホイルを含むことができる。パックまたはディスペンサー装置は、投与に
関する指示書を添付することができる。
【0045】C.治療に適している状態 本発明の方法は、状態が虚血エピソードに関連しているならば、任意の様々な
状態の結果である中枢神経系損傷の有害な結果(すなわち、感覚運動または認知
の欠損)を治療するために使用することができる。「虚血エピソード」とは、血
液の組織への供給不足を生じる任意の状況を意味する。中枢性虚血エピソードは
、脳への血液供給欠乏の結果である。中枢神経系の一部である脊髄も同様に、血
流減少により生じる虚血になり易い。虚血エピソードは、血栓または塞栓により
生じる、血管の狭窄または閉塞により引き起こさせ得る。あるいは、虚血エピソ
ードは、前述のような、心停止を含む損なわれた心機能の任意の形により生じ得
る。本発明は、頭部または脊椎の強打ような力学的力により引き起こされた中枢
神経系の損傷の治療にも有用であることが予想される。外傷は、擦過傷、切開、
挫傷、刺傷、圧迫などのような組織傷害に関連し、例えば頭部、頚部または脊柱
の任意の位置への、または付属部位(appurtant)への外部物体の外傷性接触から
生じる。外傷性損傷の別の形は、体液の不適当な蓄積によるCNS組織の狭窄また
は圧迫から生じ得る(例えば正常な脳脊髄液もしくは硝子体液の産生、代謝回転
、もしくは容積調節の遮断または機能不全、または硬膜下もしくは頭蓋内の血腫
または浮腫)。同様に外傷性狭窄または圧迫は、転移性または原発性腫瘍のよう
な、異常な組織塊の存在により生じることがある。
【0046】 他の損傷は、高血圧、高血圧性脳血管疾患、動脈瘤破裂、血管腫、血液悪液質
、心不全、心筋梗塞、心源性ショック、敗血症性ショック、頭部外傷、脊髄外傷
、発作、腫瘍からの出血、または他の血液喪失により起こり得る。
【0047】 虚血が卒中に関連している場合、これは全身または限局性虚血のいずれかであ
る。中枢神経系に関連して本明細書において使用される「限局性虚血」とは、脳
または脊髄に血液を供給している1本の動脈の遮断から生じる状態を意味し、そ
の動脈によって供給される領域の全ての細胞要素の死(汎壊死(pan-necrosis)
)がもたらされる。中枢神経系に関連して本明細書において使用される「全身性
虚血」は、全脳、前脳、または脊髄への血流の全般的減少から生じる状態を意味
し、これによってこれらの組織を通じての選択的に易損性の領域の壊死が引き起
こされる。これらの各症例の病理は、極めて異なっており、臨床と相関している
。限局性虚血のモデルは、限局性脳梗塞患者に適応できる一方、全身性虚血モデ
ルは心停止の類似物であり、全身性低血圧の別の原因である。
【0048】D.実験モデル 1.中大脳動脈閉塞 中大脳動脈(MCA)閉塞は、限局性虚血エピソードのモデルとしてよく受け入れ
られており、かつヒトにおいて卒中後に生じる事象を模倣しているとみなされて
いる(Kawamataら、J. Cereb. Blood Flow Metab.、16:542-547 (1996);Gottiら
、Brain Res.、522:290-307 (1990))。このモデルを齧歯類で作成するには、例
えば、雄のスプラーグ−ダルウェイ(Sprague Dawley)ラットで体重250〜300g
のものを使用することができる。外科的手法については、動物を7O%NO2/3O%O2 中2%ハロタンで麻酔し、かつ尾動脈にカニューレ挿管し、血液ガス値および血
糖値をモニタリングする。体温は、直腸探針を用いてモニタリングすることがで
き、かつ例えば動物を加温パッドの上に置くことにより、37±0.5℃に維持され
なければならない。近位右側中大脳動脈(MCA)を、Tamuraらの方法(J. Cereb. Bl
ood Flow Metab.、1:53-60 (1981)) の変法を用いて永久結紮する。簡単に述べ
ると、近位MCAを、頬骨弓を取り除かずに経頭蓋的に、または顔面神経を横に切
断することで露出する。次に双極ミクロ凝固装置を用いて、嗅索直近から下大脳
静脈へと、動脈を電気凝固し、その後横に切断する(Bedersonら、Stroke、17:47
2-476 (1986))。動物は、覚醒し、かつその後自分の檻に戻ることができるよう
になるまで観察することとする。抗生物質セファゾリンナトリウム(40mg/kg、i.
p.)を、感染症を防ぐために、卒中手術の前日および直後に全ての動物に投与す
る。
【0049】2.総頚動脈の閉塞 先の齧歯類の麻酔の項に説明した手技を用いて、MCA閉塞の代わりに、総頚動
脈を露出し、かつ異なる時点(典型的には、閉塞は2〜5分間適用される)で閉塞す
る(例えば滅菌縫合糸による)。この手技は、全身性虚血エピソードを模倣してい
る。
【0050】3.外傷性頭部損傷 当業者には、動物の頭蓋に特定の(すなわち限定された)力を加えることにより
、外傷性頭部損傷を誘導することを熟知し、かつこれを惹起することができる。
同様に、脊髄を、外科的吸引またはその他の当業者に公知の方法に従う切断(sev
ering)により損傷することができる。
【0051】E.神経学的技能評価 実験動物を行動/機能試験に必要な操作に馴化させるために、これらを手術前
に例えば3日間、毎日10分間操作することができる。
【0052】 下記に、CNS損傷後に感覚運動および反射機能を評価するために使用すること
ができる5種の行動/機能試験を簡単に説明する。これらの試験の十分な詳細に
ついては、他を参照のこと(Bedersonら、Stroke、17:472-476 (1986);DeRyckら
、Brain Res.、573:44-60 (1992);Markgrafら、Brain Res.、575:238-246 (199
2);Alexisら、Stroke、26;2338-2346 (1995))。当業者は、感覚運動欠損を当技
術分野において公知で日常的に使用されている他の試験によっても良好に評価す
ることができる。
【0053】1.前肢踏直り試験 簡単に述べると前肢踏直り試験は、3種のサブ試験からなる。各前肢について
、個別のスコアが得られる。視覚性踏直りサブ試験については、研究者が動物を
垂直に掲げ、かつテーブル表面に接近させる。テーブル上での通常の肢の踏直り
を、スコア「0」とし、遅延した踏直り(<2秒)をスコア「1」とし、かつ非常に
遅延した踏直り(>2秒)をスコア「2」とした。個別のスコアは、動物が前方へ動
く際に最初に得て、次に再度動物がテーブルの側方に動く際に得る(最大スコア
/肢=4;各場合で、より大きい数値は、より大きい欠損を意味する)。触感踏直
りサブ試験については、動物は、テーブル表面が見えないか、またはひげで触れ
ないように保たれる。動物が最初に前方へ動く際に、背側前足(dorsal forepaw)
でテーブル表面を軽く触れさせ、次にテーブル側方へ移動させる。各時点での踏
直りは、前述のようにスコア化した(最大スコア/肢=4)。固有受容性踏直りサ
ブ試験については、動物を前方にのみ移動させ、かつより大きい圧力を背側前足
にかけ;踏直りを、前述のようにスコア化した(最大スコア/肢=2)。これらの
サブスコアを足し算し、総前肢踏直りスコア/肢を算出した(範囲=0〜10)。
【0054】2.後肢踏直り試験 後肢踏直り試験は、前肢踏直り試験と同様の方法で行ったが、後肢については
、触感および固有受容サブ試験のみを行った(各々、最大スコアは4および2;総
スコア範囲=0〜6)。
【0055】3.変更されたバランスビーム試験 変更されたバランスビーム試験は、動物が長く幅が狭いビーム(30 x 1.3cm)上
で60秒間バランスを取った場合の、前庭運動反射活動を試験する。ビーム上でバ
ランスをとる能力は、以下のようにスコア化した:1=動物はビーム上に4本全て
の肢でバランスをとる;2=動物は、ビームの側方に足を置くかまたはビーム上
で揺れる;3=1または2本の肢を、ビームから滑らせる;4=3本の肢をビームか
ら滑らせる;5=動物は、肢でビーム上でバランスを取ろうと試みるが落下する
;6=動物は、ビーム上でだらりとなり、その後落下する;7=動物はバランスを
取ろうとせずに落下する。動物には、手術前にトレーニングのための訓練を受け
させることができる(例えば、3回のトレーニング訓練)。
【0056】4.姿勢反射試験 姿勢反射試験は、反射および感覚運動機能の両方を測定する。動物は最初に、
床の上に尾で吊り下げられる。両前肢で床に大して対称性で届く動物は、スコア
「0」とする。異常な姿勢を見せる動物(肢の屈曲、体の回転)は、その後プラス
チックで裏打ちした紙のシート上に置いた。これらの動物で、緩やかな側方圧力
による並行移動に抵抗することができるものを、スコア「1」とし、このような
移動に抵抗できないものをスコア「2」とした。全ての機能/行動試験は、手術(
または損傷を誘発する他の手段)の直前に実施し、その後、例えば第1日目から例
えば第31日目まで隔日で実施する。各セッション時、動物は試験開始前の30分間
試験室に適応させる。
【0057】5.モリスの水迷路 齧歯類において、認知技能および記憶を、水のプール中に静められた台の位置
を記憶する動物の能力を試験するモリスの水迷路により日常的に評価する。
【0058】F.損傷したCNSの組織学的分析 1.梗塞容積の決定 CNSに対する損傷後(例えばMCA閉塞後31日目)に、動物をペントバルビタールで
深麻酔し、かつヘパリン処理した生理食塩水、その後10%緩衝ホルマリンで経心
臓的に灌流する。その後脳を摘出し、3個の切片に切断し、かつ10%緩衝ホルマ
リン中で貯蔵し、その後脱水しかつパラフィン中に包埋する。対照切片(5μm)を
、スライディングミクロトーム上で切断し、ガラススライド上に載せ、かつヘマ
トキシリンおよびエオシンで染色する。7個の各切片の脳梗塞面積(例えばブレグ
マに対して+4.7、+2.7、+0.7、-1.3、-3.3、-5.3、および-7.3)は、コンピュー
タ−インターフェース画像システム(Bioquant、R&M Biometnix社、ナッシュビル
、TN)を用いて決定することができる。総梗塞面積/切片は、下記の「間接法」
で決定する:[無傷の対側性の半球面積]−[無傷の同側性半球の面積]、処理時の
脳萎縮について補正する(Swansonら、J. Cereb. Blood Flow Metab.、10:290-29
3 (1990))。その後梗塞容積を、望ましいならば、無傷の対側性半球容積の割合
として表す。皮質および線条における梗塞容積も、これらの方法を用いて個別に
決定する。
【0059】 理想的には、槽内注射を行い、行動を試験しかつ組織学的分析を行う実験担当
者は、全てのデータの収集が終了するまでは、割り当てられた処置について盲検
化されている。データは、平均±SDまたは平均±SEMで表し、かつ反復測定の分
散分析(ANOVA)により分析し、引き続き多重比較のためのボンフェロニ補正を行
い、適当な対応のない両側t検定を行うことができる。
【0060】2.増殖関連タンパク質-43の免疫染色 増殖関連タンパク質-43(GAP-43)は、末梢神経および中枢神経系の両方におい
て新たな軸索増殖時に選択的にアップレギュレートされる神経膜および成長円錐
のリンタンパク質成分である(Skene、Ann. Rev. Neurosci.、12:127-156 (1989)
;Aignerら、Cell、83:269-273 (1995);Woolfら、Neuroscience、34:465-478 (
1990);Benowitzら、Mol. Brain Res.、8:17-23 (1990))。GAP-43は、脳発達時
、その後の脳損傷または虚血時の、新たな軸索増殖の信頼できるマーカーとして
使用されている(Stroemerら、Stroke、26:2135-2144 (1995);Benowitzら、前掲
;Vaudanoら、J. Neurosci、15:3594-3611 (1995))。GAP-43免疫反応性(IR)は、
EGF様ポリペプチドを受け取る限局性梗塞を伴う動物、または受取らない限局性
梗塞を伴う動物のいずれかにおいて試験することができる(前述のMCA閉塞により
形成された)。
【0061】 組織学的分析について、例えば卒中手術(MCA閉塞による)後3、7、または14日
目に、通常の生理食塩水、その後0.1Mリン酸緩衝液中に2%ホルムアルデヒド、0
.01Mメタ過ヨウ素酸ナトリウム、および0.075M L-リシン一塩酸塩を含む溶液(p
H7.4 PLP溶液)による経心臓的灌流固定により、動物を屠殺する。これらの脳を
摘出し、後固定し、かつ40μm切片にビブラトーム(vibratome)で切断する。切片
を凍結防止する。
【0062】 浮動切片を、20%の正常ヤギ血清、GAP-43に対するマウスモノクローナル抗体
(1:500、クローン91E12、Boehringer-Mannheim、インディアナポリス、IN)、お
よびラットIgGに吸着されたビオチン化したウマ抗-マウスIgG(45μl/10ml;Vect
or、バーリンゲーム、CA)中で、連続的にインキュベーションした。次に切片を
、スライドガラス上に載せ、風乾し、エタノール勾配に浸漬し、かつカバーで覆
った。この時点で全ての動物から得た脳切片(すなわち、卒中手術後3、7、また
は14日目に屠殺した動物)は、同時に免疫染色した。対照切片を、一次抗体を除
いて処理したところ、非特異的染色を示した。
【0063】 免疫染色後、脳梗塞に沿った2種の標準の冠状切片を試験することができる;
例えば、ブレグマに対して+0.2mmの位置の「前方」切片およびブレグマに対して
-2.8mmの位置の「後方」切片。GAP-43免疫反応性(IR)の強度および程度の相対変
化は、例えば2種の異なる方法による、コンピュータ−インターフェース画像形
成システム(Bioquant、ナッシュビル、TN)を用いて定量化することができる。常
法によりヘマトキシリンおよびエオシンで染色した隣接する脳切片を、梗塞の程
度を同定するために使用することができる。相対的に低いGAP-43 IRの領域(脳梁
)の光学濃度(O.D.)は、各切片の「バックグラウンド」値とみなすことができる
【0064】 測定は2種の方法で行うことができる。一つの方法は、バックグラウンドO.D.
の少なくとも1.5倍のO.D.を示す全ての脳領域を確定しかつ強調することができ
る。側背の感覚運動皮質の強調された領域の面積(mm2)を、各薄片について測定
し、かつ各群の動物間で平均する。第二の方法においては、側背の感覚運動皮質
の特異的領域を、公表された標準のラット脳アトラス(Paxinos and Watson、The
Rat Brain in Stereotaxic Coordinates、Academic Press、サンディエゴ、CA)
を用いて同定した。「前方」脳切片について、これらは同側半球の内側梗塞周辺
皮質(medial peri-infarct cortex)(梗塞境界から≦1mm)、および前頭皮質領域1
および2(FR1、2)、ならびに両半球の皮質の前肢(FL)領域を含んでいる。「後方
」切片について、これらは同側半球の内側梗塞周辺皮質に加え、FR1、2、ならび
に両側性の皮質の後肢(HL)領域を含んでいる。各切片の各領域についてO.D.を測
定し、かつバックグラウンドに対して標準化した。各方法について、擬似処置ま
たは溶剤処置した動物のデータ、および擬似処置またはbFGF-処置した動物のデ
ータも測定する。全ての群のデータは、卒中/溶剤で処置された動物に対する比
で表している。
【0065】実施例 実施例1:HE-EGE mRNA発現 HB-EGFをコードしているメッセンジャーRNA(mRNA)が、中枢神経系(CNS)におい
て発現されることはわかっている。本試験において、HB-EGF mRNAおよびタンパ
ク質の発現をノーザン分析、インサイチューハイブリダイゼーション、および免
疫組織化学により試験した。ノーザン分析によって、正常なラット脳の全ての領
域においてHB-EGFの転写物が明らかにされた。インサイチューハイブリダイゼー
ション試験は、皮質、海馬、および深部構造を含む様々な領域の神経細胞が、HB
-EGF mRNAを発現していることを示した。陽性標識した細胞も白質に存在し、こ
のことは神経細胞およびグリア細胞の両方がHB-EGF mRNAを発現していることを
示した。
【0066】 HB-EGFの膜貫通型であるproHB-EGFに特異的な抗体による免疫組織化学試験は
、白質の神経細胞およびグリア細胞における偏在性の免疫反応性を明らかにした
。中枢神経系神経細胞における認知受容体EGFRの広範な発現に関して、これらの
結果は、HB-EGFが、中枢神経系におけるEGFRの内因性リガンドであり、かつ生理
的状態において重要な役割を果たし得ることを示唆している。
【0067】実施例2:受容体結合試験 皮質性神経細胞に結合した125I-増殖因子を使用する日常的な架橋結合分析は
、以下のことを明らかにした:(1)EGFはHER1に結合する、(2)NRGはHER4に結合す
る、ならびに(3)HB-EGFおよびBTCは、HER1およびHER4の両方に結合する。
【0068】実施例3:血清飢餓状態の大動脈平滑筋細胞のHB-EGF処置は、塩基性繊維芽細胞
増殖因子(bFGF)遺伝子発現を誘発する HB-EGFは、内皮細胞、SMC、単球/マクロファージ、およびTリンパ球により発
現される血管平滑筋細胞(SMC)の有糸分裂因子および走化因子である。膜に固定
されたHB-EGF前駆体および分泌された成熟HB-EGFタンパク質は共に、生物学的活
性があり;従って、HB-EGFは、オートクリン、パラクリンおよびジャクスタリン
機構によりSMC増殖を刺激することができる。
【0069】 血清飢餓状態の大動脈SMCのHB-EGF処置は、繊維芽増殖因子(FGF)-2(塩基性FGF
)遺伝子発現を誘発したが、しかしFGF-1(酸性FGF)遺伝子発現は誘発しなかった
。増加したFGF-2 mRNA発現は、HB-EGF添加の1時間後に最初に検出可能であり、
かつ最大FGF-2 mRNAレベルは、発現のおよそ46倍の増加に相当し、これは4時間
後に存在した。FGF-2 mRNAレベルに対するHB-EGFの作用は、主に転写機構により
媒介され、かつ新規の合成されたタンパク質が必要であるように思われる。ウェ
スタンブロット分析は、HB-EGFを処理したSMCも増加量のbFGFタンパク質を産生
することを示した。
【0070】 FGF-2 mRNAレベルのHB-EGF誘導は、抗炎症グルココルチコイドであるデキサメ
タソンまたはグリコサミノグリカンであるヘパリンを細胞に処理することによっ
て阻害された。これらの結果をあわせて、インビボにおける血管損傷または炎症
部位でのHB-EGF発現が、SMCによるFGF-2産生をアップレギュレーションし得るこ
とを示した。
【0071】他の態様 本発明は、その詳細な説明と共に説明されているが、前述の説明は本発明の例
証のためであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は添付の特許請
求の範囲によってのみ定義されることが理解されるはずである。
【0072】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ヒトヘパリン結合性上皮増殖因子(HB-EGF)の核酸配列(
配列番号:1)およびアミノ酸への翻訳(配列番号:2) を表している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/52 C07K 14/71 14/71 A61K 37/24

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中枢神経系損傷に罹患した患者における神経欠損を減少させ
    る方法であって、患者の神経欠損を減少させるのに有効な量の上皮増殖因子様(E
    GF様)ポリペプチドを患者に投与することを含む方法。
  2. 【請求項2】 損傷が虚血エピソードを含む、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 虚血エピソードが限局性虚血エピソードである、請求項2記
    載の方法。
  4. 【請求項4】 虚血エピソードが全身性虚血エピソードである、請求項2記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 損傷が外傷性損傷を含む、請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 EGF様ポリペプチドが、上皮増殖因子もしくはEGF受容体結合
    断片またはそれらの類似体である、請求項1記載の方法。
  7. 【請求項7】 EGF様ポリペプチドが、トランスフォーミング増殖因子-α(T
    GF-α)、ワクシニア増殖因子(VGF)、アンフィレグリン(AR)、ベータセルリン(BT
    C)、エピレグリン、またはニューレグリンである、請求項1記載の方法。
  8. 【請求項8】 EGF様ポリペプチドが、ヘパリン結合性EGF(HB-EGF)もしくは
    EGF受容体結合断片またはそれらの類似体である、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 EGF受容体結合断片が、HB-EGFのEGFドメイン(配列番号:3)
    を含む、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 EGF受容体結合断片が、HB-EGFのアミノ末端またはカルボキ
    シ末端からの1、2、5または10個のアミノ酸残基の欠失を含む、請求項8記載の
    方法。
  11. 【請求項11】 EGF受容体結合断片が、配列番号:2のアミノ酸残基2〜208
    、6〜208、11〜208、100〜208、100〜145、1〜207、1〜202、または1〜198を含
    む、請求項10記載の方法。
  12. 【請求項12】 EGF受容体結合断片が、配列番号:2のアミノ酸残基82〜147
    または配列番号:2のアミノ酸残基63〜148を含む、請求項10記載の方法。
  13. 【請求項13】 EGF受容体結合断片が、1個の保存的アミノ酸置換を伴うHB-E
    GF(配列番号:2)を含む、請求項8記載の方法。
  14. 【請求項14】 EGF様ポリペプチドの投与が、損傷後6時間以上経過してから
    開始される、請求項1記載の方法。
  15. 【請求項15】 EGF様ポリペプチドの投与が、損傷後12時間以上経過してか
    ら開始される、請求項14記載の方法。
  16. 【請求項16】 EGF様ポリペプチドの投与が、損傷後24時間以上経過してか
    ら開始される、請求項14記載の方法。
  17. 【請求項17】 EGF様ポリペプチドが、静脈内投与される、請求項1記載の
    方法。
  18. 【請求項18】 EGF様ポリペプチドが、槽内投与される、請求項1記載の方
    法。
  19. 【請求項19】 中枢神経系損傷に罹患した患者における神経欠損の減少に使
    用するための、EGF様ポリペプチド。
  20. 【請求項20】 EGF様ポリペプチドが、上皮増殖因子もしくはEGF受容体結合
    断片またはそれらの類似体である、請求項19記載のポリペプチド。
  21. 【請求項21】 EGF様ポリペプチドが、トランスフォーミング増殖因子-α(T
    GF-α)、ワクシニア増殖因子(VGF)、アンフィレグリン(AR)、ベータセルリン(BT
    C)、エピレグリン、またはニューレグリンである、請求項19記載のポリペプチド
  22. 【請求項22】 EGF様ポリペプチドが、ヘパリン結合性EGF(HB-EGF)もしくは
    EGF受容体結合断片またはその類似体である、請求項19記載のポリペプチド。
  23. 【請求項23】 EGF様受容体結合断片が、HB-EGFのEGFドメイン(配列番号:
    3)を含む、請求項22記載のポリペプチド。
  24. 【請求項24】 神経欠損の治療のための医薬品の製造を目的とする、EGF様
    ポリペプチドの使用。
JP2000563296A 1998-08-07 1999-08-06 中枢神経系虚血または外傷の上皮増殖因子様ポリペプチドによる治療 Withdrawn JP2002522394A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US9583098P 1998-08-07 1998-08-07
US60/095,830 1998-08-07
PCT/US1999/018022 WO2000007611A1 (en) 1998-08-07 1999-08-06 Treatment of central nervous system ischemia or trauma with epidermal growth factor-like polypeptides

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002522394A true JP2002522394A (ja) 2002-07-23

Family

ID=22253781

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000563296A Withdrawn JP2002522394A (ja) 1998-08-07 1999-08-06 中枢神経系虚血または外傷の上皮増殖因子様ポリペプチドによる治療

Country Status (4)

Country Link
EP (1) EP1100523A4 (ja)
JP (1) JP2002522394A (ja)
CA (1) CA2337964A1 (ja)
WO (1) WO2000007611A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006518352A (ja) * 2003-02-21 2006-08-10 マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ Egfレセプターシグナル伝達の調節のためのtaceまたはアンフィレグリンの阻害

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2472282A1 (en) 2002-01-08 2003-07-17 Chiron Corporation Gene products differentially expressed in cancerous breast cells and their methods of use
US20170072016A1 (en) * 2014-03-06 2017-03-16 Children's National Medical Center Treatment of neonatal brain injury with hb-egf

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE69132530D1 (de) * 1990-10-16 2001-03-15 Childrens Medical Center Heparin bindendes mitogen mit homologie zum epidermis wachstumsfaktor (egf)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006518352A (ja) * 2003-02-21 2006-08-10 マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ Egfレセプターシグナル伝達の調節のためのtaceまたはアンフィレグリンの阻害
JP4723474B2 (ja) * 2003-02-21 2011-07-13 マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ Egfレセプターシグナル伝達の調節のためのtaceまたはアンフィレグリンの阻害
JP2011148798A (ja) * 2003-02-21 2011-08-04 Max-Planck-Ges Zur Foerderung Der Wissenschaften Ev Egfレセプターシグナル伝達の調節のためのtaceまたはアンフィレグリンの阻害

Also Published As

Publication number Publication date
EP1100523A1 (en) 2001-05-23
CA2337964A1 (en) 2000-02-17
EP1100523A4 (en) 2005-02-02
WO2000007611A1 (en) 2000-02-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4847634B2 (ja) 中枢神経系の虚血または外傷の機能的回復を増大させる方法
US6723698B2 (en) Methods and compositions for the treatment of motor neuron injury and neuropathy
JP5346657B2 (ja) 組織形態形成および活性を評価するための方法
CA2709007A1 (en) Methods for inhibiting scarring
US6680295B1 (en) Method and pharmaceutical composition for prevention and treatment of brain damage
WO1996009064A1 (en) Method and pharmaceutical composition for prevention and treatment of brain damage
US20110262432A1 (en) mutated netrin 4 proteins, fragments thereof and their uses as drugs
US20050220794A1 (en) Growth/differentiation factor of the TGF-beta family
JP2002522394A (ja) 中枢神経系虚血または外傷の上皮増殖因子様ポリペプチドによる治療
US6171584B1 (en) Method of treatment with growth/differentiation factors of the TGF-β family
SK2694A3 (en) Pharmaceutical agent for treatment of motor neuron diseases
EP1057489A1 (en) Preventives or remedies for ischemic diseases
JP2001518449A (ja) アポリポタンパク質e/成長因子複合体およびその使用法
US8106009B2 (en) Pharmaceutical composition for preventing or treating ischemic diseases
AU2003200309B2 (en) Pharmaceutical Composition for Preventing or Treating Ischaemic Diseases
JPH08283174A (ja) 脊髄損傷後の神経障害に対する治療剤
WO1994016721A1 (en) Methods of treatment using ciliary neurotrophic factor

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20061107