JP2002518061A - T110関連タンパク質ファミリーの新規な分子及びその使用 - Google Patents

T110関連タンパク質ファミリーの新規な分子及びその使用

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JP2002518061A
JP2002518061A JP2000556055A JP2000556055A JP2002518061A JP 2002518061 A JP2002518061 A JP 2002518061A JP 2000556055 A JP2000556055 A JP 2000556055A JP 2000556055 A JP2000556055 A JP 2000556055A JP 2002518061 A JP2002518061 A JP 2002518061A
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polypeptide
protein
acid molecule
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JP2000556055A
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アンドリュ ディー. グッディール
Original Assignee
ミレニアム ファーマシューティカルズ インク.
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    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/705Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants

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Abstract

(57)【要約】 新規なT110ポリペプチド、タンパク質、および核酸分子を開示する。単離した完全長のT110タンパク質に加えて、本発明はさらに、単離したT110融合タンパク質、抗原性ペプチドおよび抗T110抗体も提供する。本発明はまた、T110核酸分子、本発明の核酸分子を含む組換え発現ベクター、その発現ベクターを導入した宿主細胞、およびT110遺伝子が導入または破壊された非ヒトのトランスジェニック動物も提供する。本発明の組成物を用いる診断方法、スクリーニング方法、および治療方法も提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】関連出願の相互参照 本出願は1998年6月22日に出願された出願第09/102,705号の一部継続出願であ
る。
【0002】発明の背景 本発明は新規な細胞表面または分泌タンパク質及び該タンパク質をコードする
遺伝子に関する。
【0003】 例えば、サイトカインのような多くの膜関連及び分泌タンパク質は細胞増殖、
細胞分化、及び様々な特異的細胞反応の制御における重要な役割を担う。エリス
ロポエチン、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、ヒト成長ホルモン及び
様々なインターロイキンを含む多くの医学的に有用なタンパク質は、分泌タンパ
ク質である。従って、新規な治療の設計及び開発における重要な目標は、膜関連
及び分泌タンパク質ならびにそれらをコードする遺伝子の同定及び特徴分析であ
る。
【0004】 多くの膜関連タンパク質はリガンドに結合し細胞間シグナルを変換するレセプ
ターであり、様々な細胞反応を引き起こす。そのようなレセプターを同定し特徴
分析することで、レセプター及び細胞内分子に結合するリガンド、ならびにレセ
プターに関連するシグナル伝達経路の両方が同定でき、例えばレセプターアゴニ
スト又はアンタゴニスト及びシグナル伝達のモジュレーターのような、レセプタ
ー活性のモジュレーターの同定又は設計が可能となる。
【0005】発明の概要 本発明は、T110をコードする遺伝子の発見に少なくとも部分的に基づく。T110
タンパク質はキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のfj(four-
jointed)タンパク質に関連する。T110はII型膜タンパク質スーパーファミリー
のメンバーであると推測される。このようなタンパク質は通常内部シグナル配列
として膜貫通ドメインを有する。このようなタンパク質のアミノ末端は通常細胞
内にあり、カルボキシ末端は通常細胞外にある。しかしながら、II型膜タンパク
質には細胞から分泌されるものもあり、一方、まず細胞表面で発現し、その後プ
ロセシングされて、可溶性断片を放出するものもある。
【0006】 下記のヒトT110 cDNA(配列番号:1)は、437アミノ酸タンパク質(配列番号
:2)をコードする1311ヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(配列番
号:1のヌクレオチド131から1441まで、配列番号:3)を有する。図8は上記のヒ
トT110cDNAの可能な別の翻訳産物を示す(配列番号:4)。この別の翻訳産物は
完全長ではない可能性がある。当業者は下記の方法を用いて、さらに5’コーデ
ィング配列を有する完全長クローンを単離できる。
【0007】 下記のマウスT110 cDNA(配列番号:5)は450アミノ酸タンパク質(配列番号
:6)をコードする1350ヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(配列番
号:5のヌクレオチド103から1452まで、配列番号:7)を有する。図6は上記マウ
スT110 cDNAの可能な別の翻訳産物を示す(配列番号:8)。この別の翻訳産物は
完全長ではない可能性がある。当業者は下記の方法を用いて、さらに5’コーデ
ィング配列を有する完全長クローンを単離できる。
【0008】 ラットT110 cDNAの一部を下記に示す(配列番号:9)。169アミノ酸ペプチド
(配列番号:10)をコードする507ヌクレオチドのオープンリーディングフレー
ム(配列番号:9のヌクレオチド1から507まで)を有する。当業者は下記の方法
を用いて、さらに5’コーディング配列を有する完全長クローンを単離できる。
【0009】 本発明のT110分子は、例えば細胞増殖及び/または細胞分化等の様々な細胞過
程の制御における変調剤として有用である。従って、一つの局面では本発明はT1
10タンパク質をコードする単離された核酸分子、またはそれらの生物学的に活性
な部分、及びT110をコードする核酸の検出のためのプライマーまたはハイブリダ
イゼーション用プローブに適した核酸断片を提供する。
【0010】 本発明は、配列番号:1に示す塩基配列の少なくとも400(450、500、550、600
、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400または1420)ヌクレオチ
ドの断片もしくはそれらに相補的な配列、または配列番号:3に示す塩基配列の
少なくとも200(250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、90
0、1000、1110、1200、1300、1400または1420)ヌクレオチドの断片もしくはそ
れらに相補的な配列、または配列番号:5もしくは7に示す塩基配列の少なくとも
450(500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400また
は1450)ヌクレオチドの断片もしくはそれらに相補的な配列を含む核酸分子を特
徴とする。
【0011】 好ましい態様では、T110核酸分子は配列番号:1、または配列番号:3、または
配列番号:5、または配列番号:7に記載の塩基配列を有する。
【0012】 また、配列番号:2もしくは配列番号:4、又は配列番号:6もしくは配列番号
:8のアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片、または配列番号:2もしくは配
列番号:4の少なくとも70(80、90、100、120、140、160、180、200、250、300
、350、400、450、又は480)の連続したアミノ酸を有する断片、または配列番号
:6もしくは配列番号:8の少なくとも150(160、170、180、200、250、300、350
、400、450、又は480)の連続したアミノ酸を有する断片をコードする核酸分子
も本発明の範囲内である。
【0013】 本発明はストリンジェントな条件下で、配列番号:1もしくは配列番号:3、又
は配列番号:5もしくは配列番号:7から成る核酸分子とハイブリダイズする、配
列番号:2もしくは配列番号:4、又は配列番号:6もしくは配列番号:8のアミノ
酸配列から成るポリペプチドの天然の対立遺伝子変異体をコ−ドする核酸分子を
含む。
【0014】 ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号:3、配列番
号:7、又は配列番号:9の塩基配列を有する核酸分子とハイブリダイズする塩基
配列を有する核酸分子にコードされる単離T110タンパク質も本発明の範囲内であ
る。
【0015】 ストリンジェントな条件下で、配列番号:1、もしくは配列番号:3、又は配列
番号:5もしくは配列番号:7から成る核酸分子とハイブリダイズする核酸分子に
コードされるポリペプチドで、配列番号:2もしくは配列番号:4、又は配列番号
:6もしくは配列番号:8のアミノ酸配列を有するポリペプチドの天然の対立遺伝
子変異体である、ポリペプチドも本発明の範囲内である。
【0016】 本発明の別の態様は、特異的にT110核酸分子を検出するT110核酸分子を特徴と
する。例えば、ある態様において、T110核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3
、配列番号:5、もしくは配列番号:7の塩基配列、又はそれらに相補的な配列を
含む核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。また別の態様
では、T110核酸分子は、少なくとも440(450、500、550、600、650、700、800、
900、1000、1100、1200、1300、1400または1420)塩基の長さであり且つ配列番
号:1に示す塩基配列もしくはそれらに相補的な配列を有する核酸分子にストリ
ンジェントな条件下でハイブリダイズする、又は、少なくとも220(250、300、3
50、400、450、500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300
、1400または1420)塩基の長さの断片であり且つ配列番号:3に示す塩基配列も
しくはそれらに相補的な配列を有する核酸分子にストリンジェントな条件下でハ
イブリダイズする、又は、少なくとも450(500、550、600、650、700、800、900
、1000、1100、1200、1300、1400または1420)塩基の長さの断片であり且つ配列
番号:5もしくは配列番号:7に示す塩基配列またはそれらに相補的な配列を有す
る核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。別の態様におい
て、本発明は、T110核酸のコード鎖に対してアンチセンスである単離核酸分子を
提供する。
【0017】 本発明の別の局面は、本発明のT110核酸分子を含む、例えば組換え発現ベクタ
ー等のベクターを提供する。また別の態様では、本発明はこのようなベクターを
含む宿主細胞を提供する。本発明はまた、T110タンパク質を産生するように、組
換え発現ベクターを含む本発明の宿主細胞を適切な培地で培養することにより、
T110タンパク質を生産する方法を提供する。
【0018】 本発明の別の局面は単離された又は組換えT110タンパク質及びポリペプチドを
特徴とする。好ましいT110タンパク質及びポリペプチドは、例えば細胞増殖の変
調のような、天然のヒトT110が保持する、少なくとも一つの生物活性を保持して
いる。一つの態様においては、単離されたT110タンパク質は細胞外ドメインを有
し、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを両方とも持たない。別の態様では、単
離されたT110タンパク質は、生理的条件下で可溶性である。
【0019】 本発明のT110タンパク質、又はそられの生物学的に活性な部分を非T110ポリペ
プチド(例えば、非相同アミノ酸配列)に操作可能に連結させ、T110融合タンパ
ク質を形成できる。さらに本発明は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗
体のような、T110タンパク質に特異的に結合する抗体を特徴とする。さらに、T1
10タンパク質又はそれらの生物学的に活性な部分は、薬学的組成物に組み込むこ
とができ、該薬学的組成物は薬学的に許容される担体を任意に含む。
【0020】 別の局面では、本発明は、T110活性の指標を検出できる薬剤に生物検体を接触
させて生物検体内のT110の活性の存在を検出することによる、生物検体内のT110
の活性又は発現の存在を検出する方法を提供する。
【0021】 別の局面では本発明は、細胞におけるT110の活性又は発現が改変されるように
、T110の活性又は発現を変調(抑制または刺激)する薬剤と細胞とを接触させる
ことを含む、T110の活性を変調する方法を提供する。ひとつの態様では、薬剤は
T110タンパク質に特異的に結合する抗体である。別の態様で薬剤は、T110遺伝子
の転写、T110 mRNAのスプライシング、又はT110 mRNAの翻訳を変調することによ
り、T110の発現を変調する。また別の態様では、薬剤は、T110 mRNAまたはT110
遺伝子のコード鎖に対してアンチセンスである塩基配列を有する核酸分子である
【0022】 一つの態様では、本発明の方法を用いて、T110モジュレーターである薬剤を被
験者に投与することにより、異常なT110タンパク質活性または核酸発現を特徴と
する疾患を有する被験者を治療する。一つの態様ではT110のモジュレーターはT1
10タンパク質である。また別の態様では、T110のモジュレーターはT110核酸分子
である。別の態様では、T110モジュレーターは、ペプチド、ペプチド模擬体、ま
たは他の小分子である。好ましい態様では、異常なT110タンパク質または核酸発
現を特徴とする疾患は、新形成、不適切な新脈管形成、又は創傷後の不適切な組
織再生である。
【0023】 本発明は又、(i)T110タンパク質をコードする遺伝子の異常な修飾又は突然
変異(部分的または完全な欠失または増幅を含む)、(ii)T110タンパク質をコ
ードする遺伝子の誤制御、及び(iii)T110タンパク質の異常な翻訳後修飾の少
なくとも一つを特徴とする遺伝子の損傷または突然変異の有無を同定する診断ア
ッセイ法であって、該遺伝子の野生型がT110活性を有するタンパク質をコードす
る、診断アッセイ法を提供する。
【0024】 別の局面では、本発明はT110タンパク質に結合する又はT110タンパク質の活性
を変調させる化合物を同定する方法を提供する。一般的には、このような方法は
試験化合物の存在下、又は非存在下でのT110タンパク質の生物活性の測定、及び
T110タンパク質の活性を変化させるこれらの化合物の同定を伴う。
【0025】 本発明はまた、化合物の存在下、又は非存在下でのT110の発現を測定すること
により、T110の発現を変調させる化合物を同定する方法を特徴とする。
【0026】 ヒトT110をコードするDNAを有するプラスミド及びマウスT110をコードするDNA
有するプラスミドを1998年6月22日に、20110-2209、バージニア州、マナサス(M
anassas)、ユニバーシティ・ブールバード(University Boulevard)10801に所
在のアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託し、それぞれATCC
受入番号 及び を付与された。寄託は特許手続きの目的のための微生
物寄託の国際承認におけるブタペスト条約の条項に従い行われた。ヒトDNAを含
むプラスミドは大腸菌(菌株名称Epfthb 110d)内に寄託され、プラスミドベク
ターpZL1内にヒトT110のDNAを有する。マウスDNAを含むプラスミドは大腸菌(菌
株名称Epftmb 110g)内に寄託され、プラスミドベクターpZL1内にマウスT110のD
NAを有する。寄託は単に当業者の都合上行われ、35USC§112下での寄託が必要で
あるということの承認ではない。
【0027】 本発明はATCC寄託番号 を有するcDNAの塩基配列、該cDNAのコーディング
配列(即ちATCC寄託番号 を有するcDNA)またはそれらに相補的な配列を有
する核酸分子を含む。同様に、本発明はATCC受入番号 を有するcDNAの塩基
配列、該cDNAのコード配列(即ちATCC受入番号 を有するcDNA)、またはそ
れらに相補的な配列を含有する核酸分子を含む。
【0028】 本発明は上記の核酸分子のコーディング配列、即ちATCCに寄託され、ATCC受入
番号 及び が付与された核酸分子内に含まれる配列にコードされるポ
リペプチド、及びそれらの生物学的に活性な断片を含む。さらに、本明細書に記
載の全てではないが多くの方法は、上記のATCCに寄託された核酸分子(またはそ
れらの相補配列もしくは断片)、および/またはこれらの分子にコードされるポ
リペプチド(またはそれらの断片)を、所与の配列番号:を付して本明細書に記
載されている通りに実施できるように、それらを用いて実施できることが当業者
には認識されると思われる。
【0029】 本発明のその他の特徴および利点は以下の詳細な説明および特許請求の範囲か
ら明らかとなると思われる。
【0030】詳細な説明 本発明は、II型膜タンパク質スーパーファミリーのメンバーであるヒトT110を
コードするcDNA分子の発見に基づく。ヒトT110タンパク質をコードするヌクレオ
チド配列を図1に示している(配列番号:1;オープンリーディングフレームだけ
からなる配列番号:3)。T110タンパク質の推定アミノ酸配列も図1に示す(配列
番号:2)。このタンパク質は約28アミノ酸の推定シグナルペプチド(配列番号:2
の1位アミノ酸から約28位アミノ酸)を含む。推定成熟タンパク質は、配列番号:
2の約29位アミノ酸から437位アミノ酸に及ぶ(配列番号:14)。
【0031】 図1のヒトT110のcDNA(配列番号:1)は、非翻訳領域を含む約2401ヌクレオ
チドの長さで、分子量約48kDaを有するタンパク質アミノ酸をコードする(翻訳
後修飾を除く)。
【0032】 ヒトT110タンパク質およびキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)fj(fo
ur-jointed)タンパク質は多くの主要な特徴を共通して有する。それらは同様の
サイズのタンパク質であり、両者ともN末端付近に位置する単一の推定疎水性領
域を含み、それらはシグナル配列よりむしろ膜貫通ドメインであると考えられる
。したがって、1〜28位(または7〜30位)アミノ酸の疎水性領域は中間部シグナ
ル配列として作用する膜貫通ドメインであると考えられる。各タンパク質は、二
対の保存されたシステイン残基を含み、一対(cys161およびcys178)は分子の中
央付近に、もう一対は分子のC末端付近(cys365およびcys427)に存在する。二
つのタンパク質間の最も高い同一性を示す領域は、細胞外ドメインの二対のシス
テインを取り囲んでいる。各タンパク質はまた、推定N-グリコシル化部位を含み
、それらのうち2つはほぼ同じ部位、すなわち2対のシステインの間(アミノ酸
残基248〜251およびアミノ酸残基277〜280)に存在する。ヒトT110タンパク質お
よびキイロショウジョウバエfjタンパク質の配列アラインメントは図6に示す。
このアラインメントにおいて、ヒトT110タンパク質およびキイロショウジョウバ
エfjタンパク質は約30%の同一性および約36%の類似性を示す。
【0033】 約2.4kbのヒトT110 mRNA転写物は、脳、心臓、胎盤、および膵臓において高レ
ベルで発現する。低レベルのこの転写物は、肝臓、骨格筋、および腎臓で観察さ
れている。肺においては検出不可能である。胚の発現は、8〜9週目の胎児、20週
目の肝臓および脾臓の混合組織において見られる。胚の発現はまた、神経組織で
も観察される。
【0034】 ヒトT110はある保存された構造的及び機能的特徴を有する分子ファミリー(「
T110ファミリー」)のメンバーの一つである。本発明は、「T110ファミリー」の
様々なメンバー、例えばヒトT110、マウスT110、およびラットT110の詳細な説明
を提供する。用語「ファミリー」が、本発明のタンパク質及び核酸分子を示す場
合には、ここに定義されるような共通の構造的ドメイン及び十分なアミノ酸また
は核酸配列の同一性を有する複数のタンパク質または核酸分子を意味することを
意図する。このようなファミリーのメンバーは天然に発生することができ、また
同種または異種からも発生する。例えば、ファミリーはヒト由来の1番目のタン
パク質及びマウス由来の同タンパク質の相同体、及び、特定のヒト由来の2番目
のタンパク質及びマウス由来の同タンパク質の相同体を含むことができる。ファ
ミリーのメンバーはまた共通の機能的特徴を有することもある。
【0035】 本発明の好ましいT110のポリペプチドは、ヒトT110タンパク質の共通アミノ酸
配列と十分に同一なアミノ酸配列を有する。本明細書で使用される「十分に同一
な」という用語は、二番目のアミノ酸または塩基配列と十分にまたは最小な数が
同一な、または同等な(例えば類似の側鎖を有するアミノ酸)アミノ酸残基また
はヌクレオチドを含む一番目のアミノ酸または塩基配列を意味し、1番目と2番
目のアミノ酸または塩基配列が共通の構造的ドメイン及び/または共通の機能活
性を有するものである。例えば、約65%、好ましくは75%、より好ましくは85%
、95%、あるいは98%の同一性を有する共通の構造的ドメインを含むアミノ酸ま
たは塩基配列を、「十分に同一な」とここでは定義する。
【0036】 本明細書で互換的に使用される「T110活性」、「T110の生物活性」、または「
T110の機能活性」は、常法に従いインビボまたはインビトロで測定されたT110反
応性細胞内のT110タンパク質ポリペプチドまたは核酸分子により働く活性を意味
する。T110活性は、二番目のタンパク質との関連または二番目のタンパク質内の
酵素活性のような直接的活性、またはT110タンパク質と2番目のタンパク質との
相互作用により仲介される細胞シグナル活性のような間接的活性であることがで
きる。ひとつの好ましい態様においては、T110の活性は次にあげる活性の少なく
とも一つまたは複数を有する:(i)T110シグナル伝達経路におけるタンパク質
との相互作用能、(ii)T110リガンドまたは受容体との相互作用能、(iii)細
胞内標的タンパク質との相互作用能、および(iv)細胞増殖または分化に関与す
るタンパク質との相互作用能。
【0037】 したがって本発明の別の態様は、T110活性を有する単離されたT110タンパク質
及びポリペプチドを特徴とする。
【0038】 本発明の様々な局面を以下の章でさらに詳しく説明する。
【0039】I. 単離核酸分子 本発明の一つの局面は、T110タンパク質、またはそれらの生物活性部分をコー
ドする単離核酸分子、及びT110をコードする核酸(例えばT110 mRNA)を同定す
るためのハイブリダイゼーションのプローブとして使用するに十分な核酸分子、
及びT110の核酸分子を増幅または変異させるためにPCRプライマーとして使用す
るための断片に関する。本明細書で使用されるように、「核酸分子」という用語
はDNA分子(例えばcDNAやゲノムDNA)、RNA分子(例えばmRNA)、及び核酸類似
体を用いて作製されたDNAまたはRNAの類似体を含むことを意図する。核酸分子は
一本鎖でも二本鎖でよいが好ましくは二本鎖DNAである。
【0040】 「単離された」核酸分子は核酸の天然の発生源に存在する別の核酸分子から分
離されたものである。好ましくは、「単離された」核酸(好ましくはタンパク質
をコードする配列)は、核酸が由来する生物のゲノムDNA内で該核酸に自然に隣
接する配列(例えば核酸の5'及び3'末端に位置する配列)を含まない。例えば、
様々な態様では、単離されたT110核酸分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA
内で核酸分子に自然に隣接する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、又は0.1kb
より短い塩基配列を含むことができる。さらに、cDNA分子のような「単離された
」核酸分子は、実質的に細胞材料を、あるいは組換え技術により作製された場合
は他の培地材料を、または、化学的に合成された場合には化学的前駆体または他
の化学物質を実質的に含まない。
【0041】 例えば配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、またはこれ
らの任意の核酸配列の相補配列を有する核酸分子のような本発明の核酸分子は、
分子生物学の常法および本明細書で提供される配列情報を用いて単離することが
できる。配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5または配列番号:7の全てま
たは一部を、ハイブリダイゼーション用プローブとして使用し、ハイブリダイゼ
ーション及びクローニングの常法(例えば、Sambrookら編集、Molecular Clonin
g; A Laboratory Manual、 第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spr
ing Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載のように
)を用いて、T110核酸分子を単離することができる。
【0042】 本発明の核酸を、PCR増幅技術の常法に従い、鋳型としてcDNA、mRNA、もしく
はゲノムDNAを、また適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、増幅する
ことができる。増幅した核酸は適切なベクターにクローニングし、DNA配列分析
により解析できる。さらにT110の塩基配列に対応するオリゴヌクレオチドは、例
えば自動DNA合成機を用いるなどして、標準的合成方法により作製できる。
【0043】 別の好ましい態様においては、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1、
配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7に示す塩基配列の相補配列、またはそ
れらの一部である核酸分子を有する。任意の塩基配列に相補的な核酸分子は、任
意の塩基配列にハイブリダイズできるに十分に任意の核酸配列に相補的で、ハイ
ブリダイズして安定な二本鎖を形成する分子である。
【0044】 さらに、本発明の核酸分子は、T110をコードする核酸配列の一部だけを有する
こともでき、例えば、プローブまたはプライマーとして利用できる断片、または
T110の生物活性部分をコードする断片を有することもできる。ヒトT110遺伝子の
クローニングから決定された塩基配列を使用して、例えば、別の組織のような別
の細胞のタイプでのT110相同体、ならびに他の哺乳動物からのT110相同体の同定
及び/またはクローニングに使用するために設計されたプローブ及びプライマー
を作成できる。該プローブ/プライマーは典型的には実質的に精製されたオリゴ
ヌクレオチドを有する。オリゴヌクレオチドは典型的には、配列番号:1、配列
番号:3、配列番号:5、配列番号:7のセンスもしくはアンチセンス配列、また
は配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7の天然に生じる変異
配列の少なくとも約12個、好ましくは約25個、より好ましくは約50、75、100、1
25、150、175、200、250、300、350または400の連続ヌクレオチドと、ストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列の領域を有する。
【0045】 ヒトT110塩基配列に基づくプローブは、同一のまたは類似なタンパク質をコー
ドする転写産物またはゲノム配列を検出するために使用できる。該プローブは例
えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子のような、それに結
合する標識基を有する。このようなプローブは、T110タンパク質を誤発現する細
胞または組織の同定のための診断試験キットの一部として、例えば被験体からの
細胞の検体内のT110コード核酸のレベルを、例えば、T110のmRNAのレベルを検出
する、またはゲノムT110遺伝子が突然変異もしくは欠失を起こしているかどうか
を決定するなどして測定することにより使用することができる。
【0046】 「T110の生物活性部位」をコードする核酸断片は、T110の生物活性を有するポ
リペプチドをコードする配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:
7の一部を単離し、T110タンパク質のコードされた部分を発現(例えばインビト
ロでの組換え発現により)し、T110のコードされた部分の活性を測定することに
より調製できる。
【0047】 本発明はさらに、遺伝コードの縮重により、配列番号:1、配列番号:3、配列
番号:5、もしくは配列番号:7の塩基配列とは異なり、従って配列番号:1、配
列番号:3、配列番号:5、もしくは配列番号:7に示す塩基配列によりコードさ
れるタンパク質と同じT110タンパク質をコードする核酸分子を有する。
【0048】 配列番号:1および配列番号:3に示すヒトT110塩基配列に加えて、T110のアミ
ノ酸配列内に変化を引き起こすDNA配列の多型が集団内(例えばヒトの集団)に
存在する可能性があることを当業者は認識すると思われる。このようなT110遺伝
子における遺伝子多形は、天然の対立遺伝子変異体により一つの集団内の個々の
間に存在する可能性がある。対立遺伝子は、所与の遺伝子座に二者択一的に生じ
る遺伝子のグループの一つである。本明細書で使用されるように、「遺伝子」及
び「組換え遺伝子」という用語は、T110タンパク質、好ましくは哺乳動物T110タ
ンパク質をコードするオープンリーディングフレームを有する核酸分子を示す。
このような天然の対立遺伝子変異体により、典型的にはT110遺伝子の塩基配列に
おいて1〜5%の変異が生じる。二者択一の対立遺伝子は、いくつかの異なる個体
において関心対照となる遺伝子の配列を決定することにより同定することができ
る。これは、T110配列を認識するハイブリダイゼーションプローブを用いて容易
に達成され、さまざまな個体において同じ遺伝子座を同定することができる。天
然の対立遺伝子変異体の結果であり、またT110の機能活性を変化させないT110内
のいくつかおよび全てのこのような核酸変異とその結果のアミノ酸多型は本発明
の範囲内であることが意図される。
【0049】 さらに、他の種(例えばT110相同体)由来のT110タンパク質をコードする核酸
分子は、ヒトT110の塩基配列とは異なった塩基配列を有しており、本発明の範囲
内であることが意図される。本発明のT110 cDNAの天然の対立遺伝子変異体およ
び相同体に対応する核酸分子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条
件下で、ハイブリダイゼーションの常法を用い、ヒトcDNAまたはその一部をハイ
ブリダイゼーション用プローブとして用いて、本明細書で開示されたヒトT110核
酸との同一性に基づき単離することができる。例えば、可溶性ヒトT110 cDNAは
、ヒト膜結合型T110との同一性に基づいて単離することができる。同様にヒトT1
10の膜結合型をコードするcDNAは、可溶性ヒトT110との同一性に基づいて単離す
ることができる。
【0050】 したがって、また別の態様では、本発明の単離核酸分子は少なくとも400(450
、500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、もし
くは1420)ヌクレオチド長であり、配列番号:1に示す塩基配列もしくはその相補
配列を有する核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする;また
は、該単離核酸分子は少なくとも220(250、300、350、400、450、500、550、60
0、650、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、もしくは1420)ヌク
レオチド長であり、配列番号:3に示す塩基配列もしくはその相補配列を有する核
酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする;または該単離核酸分
子は少なくとも450(500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、
1300、1400、もしくは1450)ヌクレオチド長であり、配列番号:5もしくは配列番
号:7に示す塩基配列またはその相補配列を含む核酸分子にストリンジェントな条
件下でハイブリダイズする。
【0051】 本明細書で用いられるように「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズす
る」という用語は、少なくとも60%(65%、70%、好ましくは75%、85%、もし
くは95%)互いに同一な塩基配列が典型的には互いにハイブリダイズしたままで
ある、ハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を示すことを意味する。このよ
うなストリンジェント条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molec
ular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989)の6.3.1-6.3.6において見い
だせる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な
例としては、約45℃での6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハ
イブダイゼーション、50〜65℃での、一回または複数回の0.2X SSC及び0.1%SDS
での洗浄がある。好ましくは配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、もしく
は配列番号:7の配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする本発明
の単離された核酸分子は、天然の核酸分子に対応する。本明細書で使用されるよ
うに、「天然の」核酸分子とは、自然に発生する塩基配列を有するRNAまたはDNA
分子(例えば天然のタンパク質をコードする)を意味する。
【0052】 集団において存在する可能性のあるT110配列の天然に生じる対立遺伝子変異体
に加えて、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、もしくは配列番号:7の
塩基配列へ突然変異により変異を導入し、それによりコードされたT110タンパク
質のアミノ酸配列を、T110タンパク質の機能に変化を及ぼすことなく、変化させ
られることを当業者はさらに認識すると思われる。例えば、「非必須」アミノ酸
残基でのアミノ酸の置換につながるヌクレオチドの置換を行うことができる。「
非必須」アミノ酸残基とは、生物活性の変化を伴わず、T110(例えば配列番号:
2、または配列番号:6の配列)から変化させることができる残基で、一方、「必
須」アミノ酸残基は生物活性に不可欠である。例えば、 T110タンパク質の様々
な種間で保存されるアミノ酸残基は、とりわけ変化に従わないことが予測される
【0053】 例えば、本発明の好ましいT110タンパク質は少なくとも細胞外ドメインの2対
の保存されたシステインを含む。このような保存されたアミノ酸は突然変異に従
いにくい。しかしながら他のアミノ酸残基は(例えば様々な種のT110間で保存さ
れていないまたは半保存されたアミノ酸残基)は、活性に不可欠ではないかもし
れず、従って変化に依存しやすい。
【0054】 別の例において、本発明の好ましいT110タンパク質は、ヒトT110とマウスT110
との間で同一な残基を含む。このようなヒトT110とマウスT110との間で保存され
たアミノ酸は構造的にまたは機能的に有意である可能性が高い。したがって、タ
ンパク質の安定性または活性を減少させたくなければ、これらの保存された残基
を保存することが好ましい。
【0055】 したがって、本発明の別の局面は、活性に必須でないアミノ酸残基内の変化を
含むT110タンパク質をコードする核酸分子に関する。このようなT110タンパク質
は、アミノ酸配列が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号
:8とは異なるが、依然として生物活性を保持している。別の態様においては、
単離された核酸分子は、配列番号:2、4、6、または8のアミノ酸配列と少なくと
も約65%同一な、75%、85%、95%または98%同一なアミ酸配列を有するタンパ
ク質をコードする塩基配列を含む。
【0056】 配列番号:2、4、6または8の配列とは異なる配列を有するT110タンパク質をコ
−ドする単離核酸分子は、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配
列番号:7の塩基配列への一つまたは複数の塩基の置換、付加、又は欠失を導入
することにより作製され、従って一つまたは複数のアミノ酸の置換、付加、又は
欠失がコードされたタンパク質が作製される。突然変異は、部位特異的変異誘発
やPCR媒介性変異誘発のような常法により導入できる。好ましくは、保存的アミ
ノ酸置換は、一つまたは複数の推定非必須アミノ酸残基でおこる。「保存的アミ
ノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される
ものである。類似の側鎖を有するのアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定
義されている。これらのファミリーは塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、
ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性
側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロ
シン、システイン)、非電極側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロ
イシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝
側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えばチ
ロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を
含む。従ってT110内の推定される非必須アミノ酸は好ましくは同じ側鎖ファミリ
ーの別のアミノ酸残基と置換される。また、例えば飽和変異誘発などを用いてT1
10をコ−ドする配列の全てまたは一部にランダムに突然変異を導入でき、得られ
た突然変異体でT110の生物活性を選抜し、活性を保持する変異体を特定すること
ができる。変異誘発後、コードされたタンパク質を組換えて発現させ、タンパク
質の活性を測定できる。
【0057】 また別の好ましい態様では、変異体T110タンパク質の(1)タンパク質の形成
能:T110シグナル伝達経路内でのタンパク質間の相互作用;(2)T110リガンド
または受容体への結合能;(3)細胞内標的タンパク質との結合能;または(4)細
胞増殖もしくは分化に関与するタンパク質との相互作用能を測定できる。
【0058】 本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、例えば二本鎖cDNA分子のコード
鎖に相補的、あるいは、mRNA配列に相補的などの、タンパク質をコードするセン
ス核酸に相補的な分子を含む。アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合する。
アンチセンス核酸は、例えばタンパク質をコードする領域(またはオープンリー
ディングフレーム)の全て、または一部のように、T110の全コード鎖に相補的ま
たは、それらの一部とのみ相補的であることができる。アンチセンス核酸分子は
T110をコードする塩基配列のコード鎖の非コーディング領域にアンチセンスであ
ることもできる。非コーディング領域(「5'及び3'非翻訳領域」)はコーディン
グ領域に隣接するが、アミノ酸へは翻訳されない5'及び3'配列である。
【0059】 本明細書で開示されたT110をコードするコード鎖配列(例えば配列番号:1ま
たは配列番号:3)が得られれば、本発明のアンチセンス核酸をワトソンとクリ
ックの塩基対の法則にしたがって設計できる。アンチセンス核酸分子はT110のmR
NAの全コーディング領域と相補的であることができるが、しかしより好ましくは
、T110のmRNAのコーディング領域または非コーディング領域の一部にのみアンチ
センスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオ
チドは、T110のmRNAの翻訳開始部位の周辺領域と相補的であることもできる。ア
ンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45
または50ヌクレオチドの長さである。本発明のアンチセンス核酸は当技術分野で
周知の方法を用いた化学合成及び酵素連結反応を用いて構築できる。例えば、ア
ンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、自然発生する塩
基、または該分子の生物学的安定を促進するため、またはアンチセンス及びセン
ス核酸間に形成された二本鎖の安定を促進するために設計された様々な修飾塩基
を用いて化学的に合成でき、例えばホスホロチオエート誘導体やアクリジン置換
塩基を用いることができる。アンチセンス核酸を作製するために使用できる修飾
塩基の例には5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨ
ードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボ
キシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ
ウリジン、5-カルボキメチルアミノメチルウラシル、ジヒドウラシル、β-D-ガ
ラクトシルケオシン、イノシン、N6- イソ-ペンテニルアデニン、1-メチルグア
ニン、1-メチルイノシン、2,2-ジ-メチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチ
ルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグ
アニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラ
シル、β-D-マンノシルケオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メ
トキシウラシル、2-メチル-チオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキ
シ酸酢(v)、ワイブトコシン、シュードウラシル、ケオシン、2-チオシトシン
、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4--チオウラシル、5-メチルウラ
シル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5
-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル
、(acp3)w、及び2,-6ジアミノプリンが含まれる。また、核酸がアンチセンス
の方向にサブクローニングされた発現ベクターを用いて、アンチセンス核酸を生
物学的に作成することができる(すなわち、次のサブセクションで詳しく述べる
ように、挿入核酸から転写されたRNAは対象の標的核酸に対してアンチセンス方
向となる。)
【0060】 本発明のアンチセンス核酸分子は、特徴的に被験物に投与されるか、またはT1
10タンパク質をコードする細胞mRNA及び/またはゲノムDNAにハイブリダイズす
るまたは結合するようにインサイチューで作製され、例えば、転写または翻訳を
阻害するなどして、該タンパク質の発現を阻害する。ハイブリダイゼーションは
従来のヌクレオチド相補性により行われ、安定な二本鎖を形成し、または、例え
ばDNA二本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主グルーブ
内での特定の相互作用による。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例に
は、組織部位への直接注入が含まれる。また、アンチセンス核酸分子を修飾し、
選択した細胞を標的とし全身投与できる。例えば、全身投与の場合、例えば細胞
表面レセプターや抗原に結合するペプチドや抗体にアンチセンス核酸分子を結合
させるなどして、選択した細胞表面で発現するレセプターや抗体に特異的に結合
するようにアンチセンス核酸分子を修飾できる。アンチセンス核酸分子は、また
、ここで表記するベクターを用いて細胞に運搬できる。アンチセンス分子の十分
な細胞内濃度を得るために、アンチセンス核酸分子が強力なpol IIまたはpol II
Iプロモーターの制御下に置かれたベクターの構築物が好ましい。
【0061】 本発明のアンチセンス核酸分子はまたαアノマー核酸分子であることもできる
。αアノマー核酸分子は相補的RNAとの特定の二本鎖ハイブリッドを形成し、そ
こでは通常のβユニットとは逆で、鎖がお互いに平行である(Gaultierら、1987
、Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた2'-o-メ
チルリボヌクレオチド(井上ら、1987、Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)ま
たは、キメラRNA-DNA類似体(井上ら、1987、FEBS Lett. 215: 327-330)を含む
ことができる。
【0062】 本発明はまたリボザイムを含む。リボザイムは、mRNAのような、相補的な領域
を有する一本鎖核酸を切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子で
ある。従って、リボザイム(例えばHaselhoffとGerlach、1988、Nature 334: 58
5-591に示されるハンマーヘッドリボザイムなど)を利用して、触媒的にT110 mR
NAの転写産物を切断し、T110 mRNAの翻訳を阻害できる。T110をコードする核酸
への特異性を有するリボザイムを本明細書に開示するT110 cDNAの核酸配列(例
えば配列番号:1、配列番号:3)に基づき設計することができる。例えばT110を
コードするmRNAにおいて、活性部位の塩基配列が切断される塩基配列と相補的で
あるテトラヒメナ(Tetrahymena)L-19 IVS RNAの誘導体を構築することができ
る。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号、Cechら、米国特許第5,116,742号
参照。または、T110 mRNAを用い、RNA分子のプールから特異的なリボヌクレアー
ゼ活性を有する触媒RNAを選抜できる。例えばBartelとSzostak、1993、Science
261: 1411-1418参照。
【0063】 本発明はまた三重螺旋構造を形成する核酸分子を含む。例えば、T110の調節領
域(例えばT110のプロモーター及び/またはエンハンサー)に相補的な塩基配列
を標的として、標的細胞内のT110遺伝子の転写を阻害する三重螺旋構造を形成さ
せ、T110遺伝子の発現を阻害することができる。一般的なものとして、Helene、
1991、Anticancer Drug Des. 6 (6): 569-84; Helene (1992)、Ann. N. Y. Acad
Sci. 660:27-36; 及びMaher、1992、Bioassays、 14 (12): 807-15参照。
【0064】 好ましい態様においては、本発明の核酸分子は塩基部分、糖部分、または燐酸
バックボーンで修飾でき、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション、あ
るいは溶解度を改変できる。例えば、核酸のデオキシリボース燐酸バックボーン
を修飾し、ペプチド核酸を作製できる(Hyrupら、1996、Bioorganic & Mdeical
Chemistry 4 (1): 5-23参照)。ここで使用される「ペプチド核酸」や「PNA」と
いう用語は、デオキシリボースリン酸バックボーンが擬似ペプチドバックボーン
に置換され、わずか4つの元来の核塩基のみが残っている、例えばDNA模倣物など
の、核酸模倣物を意味する。PNAの中性バックボーンは、低いイオン強度条件下
では、特異的なDNA及びRNAのハイブリダイゼーションを可能にすることが示され
ている。Hyrupら(1996、上記); Perry-O' Keefeら、1996、Proc Natl. Acad.
Sci. USA 93: 14670-675が示す固相ペプチド合成の常法により、PNAオリゴマー
を合成できる。
【0065】 T110のPNAを治療及び診断へ応用できる。例えば、PNAをアンチセンスまたは抗
原剤として用い、例えば転写の促進または翻訳停止または複製を阻害するなどし
て、遺伝子発現を配列特異的に修飾できる。T110のPNAはまた、例えば、S1ヌク
レアーゼ(Hyrup、1996、上記)等の他の酵素と組み合わせて用いる場合には「人
工制限酵素」として、またDNA配列決定及びハイブリダイゼーションのためのプ
ローブやプライマーとして、(Hyrupら、1996、上記; Perry-O' Keefeら、1996
、Proc Natl. Acad. Sci. USA 93: 14670-675)例えばPNS特異的PCRクランピン
グにより、遺伝子内の単一塩基対の突然変異を分析することなどに利用できる。
【0066】 また別の態様に於いては、親油性または別のヘルパー基をPNAに付着させたり
、または、PNA-DNAのキメラを形成して、あるいは、当技術分野で既知のリポソ
ームや別の薬物運搬方法を用いて、T110 PNAを修飾して、例えば、それらの安定
性や細胞への取込みを向上させることができる。例えば、T110のPNA-DNAキメラ
を作製し、PNA又はDNAの有利な形質を組み合わせることができる。このようなキ
メラを用い、PNA部分が高い結合親和性や特異性を与える一方で、例えばRNAse H
やDNAポリメラーゼ等のDNA制限酵素がDNA部分に作用することができる。PNA-DNA
のキメラは、塩基のスタッキングや、核塩基間の結合数、方向(Hyrup、1996、
上記)に基づき選択された適切な長さのリンカーを用いて結合させることができ
る。Hyrup、1996、上記やFinnら、1996、Nucleic Acids Research 24 (17): 335
7-63に記載のようにして、PNA-DNAのキメラを合成できる。例えば、標準的なホ
スホルアミダイトカップリング化学や修飾ヌクレオシド類似体を用いて固相支持
体上に合成することができる。5'-4(-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-
チミジンホスホルアミダイトなどの化合物を、PNAとDNAの5'末端との結合として
用いることができる(Magら、1989、Nucelic Acid Res. 17: 5973-88)。PNAモ
ノマーをその後段階的にカップリングさせ、5' PNAセグメント及び3' DNAセグメ
ントを有するキメラ分子を作製できる(Finnら、1996、Nucleic Acid Res. 24 (
17): 3357-63)。また、5' DNAセグメント及び3'PNAセグメントを有するキメラ
分子を合成することもできる(Peterserら、1975、Bioorganic Med. Chem. Lett
. 5: 1119-11124)。
【0067】 別の態様においては、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えばインビボで宿
主細胞レセプターを標的にするために)、または細胞膜間の輸送を容易にする薬
剤(例えばLetsinger ら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 6553-6556;
Lemaitreら、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 648-652; PCT国際公開公
報第88/09810号参照)、もしくは血液−脳関門(例えばPCT国際公開公報第89/10
134号参照)の輸送を容易にする薬剤等の他の付属基を含む。さらに、オリゴヌ
クレオチドはハイブリダイゼーション刺激切断剤(例えばKrolら、1988、Bio/Te
chniques 6: 958-976参照)、または挿入剤(例えばZon、1988、Pharm. Res. 5:
539-549参照)などで修飾できる。このために、オリゴヌクレオチドは、例えば
ペプチド、ハイブリダイゼーション刺激クロスリンカー剤、輸送剤、ハイブリダ
イゼーション刺激切断剤等の別の分子に接合させることも可能である。
【0068】II. 単離T110タンパク質、及び抗T110抗体 本発明の一つの局面は単離されたT110タンパク質、それらの生物活性部位、及
び抗T110抗体を作成するための免疫原としての使用に適したポリペプチドの断片
を含む。一つの態様では、天然のT110タンパク質は、タンパク質精製の常法によ
り、適切な精製の計画で細胞または組織源から単離できる。また別の態様では、
T110タンパク質は、組換えDNA技術で製造できる。組換え発現の代わりに、T110
タンパク質またはポリペプチドはペプチド合成の常法により化学合成できる。
【0069】 「単離された」または「精製された」タンパク質、またはそれらの生物活性部
位は、実質的に細胞材料またはT110タンパク質が派生する細胞もしくは組織材料
に汚染されたタンパク質を含まない、または化学合成された場合には、化学的前
駆体もしくは別の化学物質を実質的に含まない。「実質的に細胞材料を含まない
」という用語は、T110がそこから単離または組換えて生産された細胞の細胞構成
物質からタンパク質が単離される、T110タンパク質の調製品を含む。従って、細
胞材料を実質的に含まないT110タンパク質には、非T110タンパク質(本明細書で
はまた「汚染タンパク質」とも称される)を約30%、20%、10%、または5%未
満有するT110タンパク質の調製品が含まれる。T110タンパク質、またはそれらの
生物活性部位が組換えて製造される場合、好ましくは培地を実質的に含まず、す
なわち培地は、タンパク質調製品の体積の約20%、10%、または5%未満である
。T110タンパク質を化学合成する場合、好ましくは、化学的前駆体や別の化学物
質を含まず、すなわち、タンパク質の合成に関係した化学的前駆体や別の化学物
質から分離される。従って、このようなT110タンパク質の調製品は、約30%、20
%、10%、5%(乾燥重量に基づく)未満の化学的前駆体または非T110化学物質
を含む。
【0070】 T110タンパク質の生物活性部位にはT110タンパク質のアミノ酸配列と十分に同
一な配列、またはT110タンパク質のアミノ酸配列から派生したアミノ酸配列(例
えば配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号:8に記載のアミ
ノ酸配列等)を有するペプチドが含まれ、それらは、全長T110タンパク質より少
数のアミノ酸を含むか、あるいはT110タンパク質の少なくとも一つの活性を示す
。典型的には生物活性部分はT110タンパク質の少なくとも一つの活性を有するド
メインまたはモチーフを有する。T110タンパク質の生物活性部位は、例えば、10
、25、50、100またはそれ以上の長さのアミノ酸を有するポリペプチドである。
好ましい生物活性ポリペプチドには、一つまたは複数の同定されたT110構造ドメ
イン、例えば、細胞外ドメイン(配列番号:4および配列番号:8)が含まれる。
【0071】 さらに、別の生物活性部位には、タンパク質の別の領域が欠失しているものが
あり、これらは組換え技術により調製でき、天然のT110タンパク質の一つまたは
複数の機能活性を評価できる。好ましいT110タンパク質は配列番号:2または配
列番号:6に記載のアミノ酸配列を有する。他の有益なT110タンパク質は、天然
の対立遺伝子変異体または変異誘発により、アミノ酸配列は異なっているものの
、配列番号:2または配列番号:6と実質的に同一で、また、配列番号:2または
配列番号:6のタンパク質の機能活性を保持している。したがって、有用なT110
タンパク質は、配列番号:2または配列番号:6に記載のアミノ酸配列と少なくと
も約45%、好ましくは55%、65%、75%、85%、95%または99%同一なアミノ酸
配列を含み、配列番号:2のT110タンパク質の機能活性を保持しているタンパク
質である。別の例としては、T110タンパク質は、T110細胞外ドメイン(配列番号
:4または配列番号:8)と55%、65%、75%、85%、95%または98%同一なアミ
ノ酸配列を有するタンパク質である。別の好ましい態様では、T110タンパク質は
配列番号:2または配列番号:6のT110タンパク質の機能活性を保持している。
【0072】 二つのアミノ酸配列または核酸配列の同一性割合を決定するために、配列は最
適な比較を目的として整列化される(例えば、二番目のアミノ酸または核酸配列
との最適な整列のために、第一のアミノ酸または核酸配列にギャップが導入でき
る)。その後、対応するアミノ酸の位置、または塩基の位置でのアミノ酸残基ま
たは塩基を比較する。最初の配列のある位置が二番目の配列内の対応する位置と
同じアミノ酸残基または塩基で占められている場合、この位置での分子は同一と
なる。二つの配列間での同一性の百分率は同一な位置の数を配列で割った関数で
ある(すなわち、同一性%=同一な位置の数/重複する位置の総数x100)。この
ましくは、二つの配列は同じ長さである。
【0073】 二つの配列間の相同性百分率は数学的アルゴリズムを用いて決定できる。二つ
の配列の比較に使用する数学的アルゴリズムの、好ましく且つ非限定的な例とし
て、KarlinとAltschul(1990、Proc Nat'lAcad Sci. USA 87: 2264-2268)のアル
ゴリズムで、KarlinとAltschul(1993、Proc Nat'lAcad Sci. USA 90: 5873-587
7)によって改変されたものがあげられる。このようなアルゴリズムは、Altschul
ら(1990、J. Mol. Biol. 215: 403-410)のNBLAST及びXBLASTプログラムに取り
入れられた。BLAST塩基検索をスコアー=100、単語数=12でNBLASTのプログラム
で行い、本発明のT110核酸分子と相同な塩基配列を得ることができる。BLASTタ
ンパク質検索は、スコアー=50、単語数=3でXBLASTプログラムを用いて行われ
、本発明のT110タンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較
のためのギャップのある配列を得るために、Altschulら(1997、Nucleic Acids
Res. 25: 3389-3402)に記載のように、ギャップBLASTを用いることができる。B
LAST及びギャップBLASTプログラムを使用する場合は、それぞれのプログラムの
不履行パラメーター(例えばXBLAST及びNBLAST)使用できる。http://www.ncbi.
nlm.nih.gov.参照。配列の比較に使用する数学的アルゴリズムの、好ましく且つ
非限定的な別の例としては、MyersとMiller、CABIOS(1989)のアルゴリズムがあ
る。このようなアルゴリズムはGCG配列アライメントソフトウエアのパッケージ
の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)へ取り込まれる。アミノ酸配列
の比較のためにALIGNプログラムを使用する場合は、PAM120ウェイト残基表、12
のギャップ長ペナルティー、及び4ギャップ長ペナルティーを使用できる。
【0074】 二つの配列間の同一性百分率は、ギャップありかまたはなしで先述の方法に類
似の方法で決定できる。同一性百分率を計算する場合、正確な一致のみを数える
【0075】 本発明はT110のキメラまたは融合タンパク質も提供する。本明細書において使
用されるT110の「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非T110ポリ
ペプチドと機能的に結合したT110ポリペプチドを有する。「T110ポリペプチド」
とは、T110に対応するアミノ酸配列を有するポリピペプチドを意味し、一方、「
非T110ポリペプチド」とは、T110タンパク質と実質的に同一でないタンパク質に
対応するアミノ酸配列を有するポリペプチド、例えば、T110タンパク質とは異な
るタンパク質、及び同じまたは異なる生物由来のタンパク質に対応するアミノ酸
配列を有するポリペプチドを意味する。T110融合タンパク質間では、T110ポリペ
プチドは、T110タンパク質の全てまたは一部に対応し、好ましくは少なくとも、
T110タンパク質の生物活性部位の一つに対応する。融合タンパク質間では、「機
能的に結合する」という用語はT110ポリペプチドと、非T110ポリペプチドがフレ
ーム内で互いに融合していることを意味する。非T110ポリペプチドはT110ポリペ
プチドのN末端またはC末端と融合することができる。
【0076】 有用な融合タンパク質の一つとしては、GST配列のC末端とT110配列が融合して
いるGST-T110融合タンパク質がある。このような融合タンパク質は組換えT110の
精製を容易にする。
【0077】 また別の態様では、融合タンパク質は、T110の全てまたは一部が、イムノグロ
ブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列と融合しているT110-イ
ムノグロブリン融合タンパク質である。本発明のT110-イムノグロブリン融合タ
ンパク質を薬学的組成物中に取り入れ、被験者に投与し、細胞表面でのT110リガ
ンドとT110タンパク質との相互作用を阻害し、それによりインビボでのT110を介
するシグナル伝達を阻害することができる。T110イムノグロブリン融合タンパク
質は、T110の同種リガンドの生体利用性に作用するように使用できる。T110リガ
ンド/T110相互作用の阻害は増殖及び分化の異常の治療、及び細胞生存の調整(
例えば促進または阻害)にとって、治療上有効である可能性がある。さらに、本
発明のT110イムノグロブリン融合タンパク質を免疫原として使用し、被験者体内
で抗T110抗体を生産し、T110のリガンドを精製し、スクリーニング解析において
T110とT110リガンドとの相互作用を阻害する分子を同定できる。
【0078】 好ましくは、T110のキメラ又は融合タンパク質は組換えDNAの常法により製造
できる。例えば、異なったポリペプチド配列をコードするDNA断片を、例えば、
結合用の平滑末端または付着末端を用い、制限酵素消化により適切な末端を設け
、適切に付着末端を埋め、アルカリホスファターゼ処理で望ましくない結合を避
け、酵素連結を行うなど従来の方法に従ってインフレームで連結できる。また別
の態様では自動DNA合成機などの従来の方法で、融合遺伝子を合成できる。また
、アニールして再増幅された二つの連続した遺伝子断片間で相補的オーバーハン
グを産出するアンカープライマーを用いて遺伝子断片を増幅し、キメラ遺伝子配
列を作製できる(例えばCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら
編、John WileyとSons:1992参照)。さらに、すでに融合部分(例えばGSTポリ
ペプチド)をコードする多くの発現ベクターを購入できる。T110コード核酸はこ
のような発現ベクターにクローニングされ、融合部分はT110タンパク質とインフ
レームで連結する。
【0079】 本発明はまた、T110のアゴニスト(模倣物)またはT110のアンタゴニストのい
ずれかとして機能するT110タンパク質の変異体(すなわち、天然T110の配列とは
異なる配列を有するタンパク質)にも関する。例えばT110タンパク質の点突然変
異もしくは短縮等の変異誘発によりT110タンパク質の変異体を作製できる。T110
タンパク質のアゴニストは、天然のT110タンパク質の形態と実質的に同じ生物活
性、またはそれらのサブセットを維持できる。T110タンパク質のアンタゴニスト
は、例えば、T110タンパク質を含む細胞シグナル伝達カスケードの下流または上
流メンバーへの競合的結合等により、T110タンパク質の天然型の一つまたは複数
の活性を阻害することができる。従って、限定的な機能の変異体と共に処理する
ことによって特異的な生物学的作用を誘起できる。該タンパク質の天然型の生物
活性のサブセットを有する変異体によって被験者を治療することにより、T110タ
ンパク質の天然型での治療と比較して、被験者への副作用を軽減できる。
【0080】 T110のアゴニスト(模倣物)またはT110のアンタゴニストとして機能するT110
タンパク質の変異体を、例えばT110タンパク質のアゴニストまたはアンタゴニス
トの活性においてT110タンパク質のトランケーション変異体等の、変異体のコン
ビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより同定できる。一つの
態様において、T110の変異体の種々のライブラリーは、核酸レベルでのコンビナ
トリアル変異誘発により生産され、様々な遺伝子ライブラリーでコードされる。
様々なT110の変異体ライブラリーは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を
遺伝子配列へ酵素を用いて結合し、可能性のあるT110配列の縮重セットを個々の
ポリペプチドとして、あるいはT110配列の集合を含む、より大きな融合タンパク
質の集合体(例えばファージディスプレイのため)として発現可能な様式で生産
できる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能性のあるT110変異体のライブラリ
ーを作製するために用いることのできる様々な方法がある。自動DNA合成機で縮
重遺伝子配列を化学合成し、合成遺伝子を適切な発現ベクターに結合させる。遺
伝子の縮重セットを用いて、可能性のあるT110配列の所望のセットをコードする
全ての配列を、一つの混合物として提供できる。縮重オリゴヌクレオチドの合成
方法は当技術分野では公知である(例えば、Narang、1983、Tetrahedron 39:3、
Itakuraら、1984、Annu. Rev. Biochem. 53: 323; Itakuraら、1984、Scicence
198: 1056; Ikeら、1983、nucleic Acid Res. 11: 477参照)。
【0081】 さらには、T110タンパク質をコードする配列の断片のライブラリーを用いて、
様々なT110断片の集団を作製し、T110タンパク質の変異体をスクリーニングしそ
の後選抜できる。一つの態様では、T110コード配列の二本鎖PCR断片を、一分子
につきニックが約一回だけ生じる条件下でヌクレアーゼ処理し、二本鎖DNAを変
性させ、DNAを復元し、異なったニック産物からのセンス/アンチセンス対を含
む二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼ処理で、復元した二本鎖から一本鎖の部
分を削除し、得られた断片を発現ベクターに結合して、コード配列断片のライブ
ラリーを作製できる。この方法で、T110タンパク質のN末端及び様々な大きさの
内部断片をコードする発現ライブラリーができる。
【0082】 点突然変異またはトランケーションで作製されたコンビナトリアルライブラリ
ーの遺伝子産物をスクリーニングし、また、選択された形質を有する遺伝子産物
をcDNAライブラリーからスクリーニングする幾つかの方法が当技術分野では周知
である。このような方法はT110タンパク質のコンビナトリアル変異誘発で産出さ
れた遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適応する。最も広く使われて
いる、高処理量分析が容易な、大きな遺伝子ライブラリーのスクリーニング方法
には、典型的に、複製可能な発現ベクターへの遺伝子ライブラリーのクローニン
グ、得られたライブラリーベクターの適切な細胞のトランスフォーメーションと
、望ましい活性の検出によって、その産物が検出された遺伝子をコードするベク
ターの単離を容易にする条件下でのコンビナトリアル遺伝子の発現とが含まれる
。ライブラリー内の機能的変異体の頻度を増加させる方法である、リカーシブア
ンサンブル変異誘発(Recursive ensemble mutagenesis: REM)を、スクリーニ
ング解析と共に用いて、T110変異体を同定できる(ArkinとYourvan、1992、Proc
. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7877-7815; Delgraveら、1993、Protein Engineer
ing 6(3): 327-331)。
【0083】 単離されたT110タンパク質、またはその一部もしくは断片を免疫原として用い
、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体作成の常法で、T110に結合する
抗体を作製できる。また、全長T110タンパク質を用い、代替的には本発明により
、T110の抗原ペプチドの断片を作成し、免疫原として使用できる。T110の抗原ペ
プチドは、配列番号:2または配列番号:6に記載のアミノ酸配列の少なくとも8
個(好ましくは、10、15、20又は30個)のアミノ酸残基を含み、且つT110のエピ
トープを含有し該ペプチドに対して生産された抗体がT110と特異的な免疫複合体
を形成する。
【0084】 抗原ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、例えば親水性領域等の、該タ
ンパク質の表面に位置するT110の領域である。他の重要な基準として、末端配列
が好ましいこと、高い抗原指数(例えばJameson-Wolfのアルゴリズムにより予測
されるもの)、ペプチド合成が容易であること(例えばプロリンの削除)や表面
の可能性が高いこと(例えばEminiのアルゴリズムにより予測されるもの)を含
む。
【0085】 T110の免疫原を利用し、典型的に、適当な被験者(例えばウサギ、ヤギ、マウ
スや他の哺乳動物)を免疫原で免疫して抗体を作製できる。適切な免疫原の調整
品としては、例えば、発現されたT110組換えタンパク質、または化学合成T110ポ
リペプチドを含む。調製品はさらに、例えばフロイントの完全または不完全アジ
ュバント等のアジュバント、または類似の免疫促進剤を含む。適切な被験者の免
疫原T110調製品による免疫は、抗T110のポリクローナル抗体反応を促進する。
【0086】 したがって、本発明の別の局面は抗T110抗体に関する。「抗体」という用語は
本明細書では、イムノグロブリン分子や、イムノグロブリン分子の免疫学的に活
性な部分、すなわち、T110のような抗原に特異的に結合する抗原結合部位をもつ
分子を指す。T110に特異的に結合する分子はT110に結合する分子ではあるが、例
えば元来T110を有する生物検体等の検体内のような試料中の別の分子とは実質的
に結合しない分子である。イムノグロブリン分子の免疫学的に活性な部分には、
ペプシンなどの酵素で抗体を処理することにより生産できるF(ab)及びF(ab')2
片が含まれる。本発明によりT110に結合するポリクローナル抗体およびモノクロ
ーナル抗体が提供される。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または
「モノクローナル抗体組成物」という用語は、T110の特定のエピトープと免疫作
用できる抗原結合部位を一種のみ有する抗体分子の集団を示す。従ってモノクロ
ーナル抗体組成物は典型的には、モノクローナル抗体が免疫反応する特定のT110
タンパク質への単一結合親和性を示す。
【0087】 抗T110ポリクローナル抗体は、上記のように適切な被験者をT110免疫原で免疫
することにより調製できる。免疫された被験者体内の抗T110抗体の力価は、例え
ば、固定化T110を用いて固相酵素免疫検定法(ELISA)等の常法に従い、経時的
に測定できる。必要であれば、T110に対する抗体分子を哺乳動物(例えば血液)
から単離し、例えばタンパク質Aクロマトグラフィーのような周知の方法でさら
に精製し、IgG分画を得ることができる。免疫後の適切な時、例えば、T110抗体
の力価の最大時に、抗体産生細胞を被験者から得て、常法、例えば最初にKohler
とMilstein(1975、Nature 256: 495-497)に示されたハイブリドーマ法、ヒトB
細胞ハイブリドーマ法(Kozborら、1983、Immunol Today 4: 72)、EBV-ハイブ
リドーマ法(Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan
R. Liss, Inc., pp. 77-96)またはトリオーマ法を用いて、モノクローナル抗
体を調製できる。様々な抗体およびモノクローナル抗体ハイブリドーマを作製す
る方法は周知である(一般的なものとしてCurrent Protocols in Immunology、1
994、Coliganら編、John WileyとSons、Inc.、New York、NY参照)。手短には、
不死の細胞系(典型的にはミエローマ)を、先述のように、T110免疫原で免疫し
た哺乳動物からのリンパ細胞(典型的には脾臓細胞)と融合させ、得られたハイ
ブリドーマ細胞の培養上清を選抜し、T110に結合するハイブリドーマ産生モノク
ローナル抗体を同定する。
【0088】 抗T110モノクローナル抗体を生産する目的のために、リンパ細胞と不死化細胞
株を融合させる多くの周知の方法のいずれかを用いることができる(例えば、Cu
rrent Protocols in Immunology、上記、Galfreら、1977、Nature 266: 55052;
R. H. Kennith、Monoclonal Antobodies: A new Dimension In Biological Anal
yses, Plenum Publishing Corp.、New York、New York、1980;及びLerner 1981
、Yale J. Biol. Med., 54: 387-402)。さらには、一般的な当業者は有効な多
くのこのような方法の変法があることに気付くと思われる。典型的には、不死化
細胞株(例えばミエローマ細胞株)は、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。
例えばヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培地(「HA
T培地」)に感受性のミエローマ細胞株等の、不死化したマウス細胞株と本発明
の免疫原性調製物で免疫したマウスからのリンパ球を融合させることにより、例
えばマウスハイブリドーマを作成できる。例えば、p3-NS1/1-Ag4-1、p3-x63-Ag8
.653またはSp2/O-Ag14ミエローマ細胞系のような、多くのミエローマ細胞系のい
ずれの細胞系も、常法に従い融合相手として利用できる。これらのミエローマ細
胞系はATCCより入手可能である。特に、HAT感受性マウスミエローマ細胞を、ポ
リエチレングリコール(「PEG」)を用いてマウス脾臓細胞に融合させる。そし
て該融合で得られたハイブリドーマ細胞をHAT培地で選抜し、HAT培地により非融
合及び非生産的に融合したミエローマ細胞が死滅する(非融合脾臓細胞は、形質
転換されていないので、数日後に死滅する)。本発明のモノクローナル抗体を産
生するハイブリドーマ細胞は、例えばELISAの常法で、T110に結合する抗体につ
いて培地上清をスクリーニングすることによって検出される。
【0089】 モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代わりに、抗T110モノクロ
ーナル抗体を同定し、T110を用いて組換えコンビナトリアルイムノグロブリンラ
イブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニン
グすることにより単離し、それによりT110に結合するイムノグロブリンライブラ
リーのメンバーを単離できる。ファージディスプレイライブラリーの産生及びス
クリーニングのキットは市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage
Antibody System、カタログ番号27-9400-01、及びStratagene SurfZAP(商標) Ph
age Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラ
リーの生産及びスクリーニングにおける使用が特に可能な方法及び試薬の例は、
例えば、米国特許第5,223,409号; PCT国際公開公報第92/18612号;PCT国際公開
公報第91/17271号;PCT国際公開公報第92/20791号;PCT国際公開公報第92/15679
号;PCT国際公開公報第93/01288号; PCT国際公開公報第92/01047号; PCT国際
公開公報第92/09690号;PCT国際公開公報第90/02809号; Fuchsら、1991、Bio/T
echnology 9: 1370-1372; Hayら、1992、Hum. Antibod. Hybridomas 3: 81-85;
Huseら、1989、Science 246: 1275-1281; Griffithsら、1993、EMBO J 12: 725-
734に見出すことができる。
【0090】 さらに、ヒト及び非ヒトの部分を含み、組換えDNA技術の常法により作成でき
る、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような、組換え抗T110抗体は、本発
明の範囲内である。このようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、例えば
、PCT国際公開公報第87/02671号; 欧州特許出願第184,187号; 欧州特許出願第17
1,496号; 欧州特許出願第173,494号; PCT国際公開公報第86/01533号; 米国特許
第4,816,567号; 欧州特許出願第125,023号; Betterら、1988、Science 240: 104
1-1043; Liuら、1987、Poc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443; Liuら、198
7、J. Immunol. 139: 3521-3526; Sunら、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8
4: 214-218; Nishimuraら、1987、Canc. Res. 47: 999-1005; Woodら、1985、Na
ture 314: 446-449; 及びShawら、1988、J. Natl. Cancer Inst. 80: 1553-1559
; Morrison、1985、Science 229: 1202-1207 Oiら、1986、Bio/Techniques 4: 2
14; 米国特許第5,225,539号; Jonesら、1986、Nature 321: 552-525; Verhoeyan
ら、1988、Science 239: 1354; 及びBeidlerら、1988、J. Immunol. 141: 4053-
4060に記載の方法を用いて、当技術分野で周知の組換えDNA技術により産出でき
る。
【0091】 ヒト完全抗体は、患者を治療的処置をするために特に望ましい。このような抗
体は、内因性の免疫グロブリンの重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を発現する能力はない
が、ヒトの重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を発現できるように形質転換したマウスを用
いて産生され得る。このトランスジェニックマウスを、選択した抗原、例えばT1
10のすべてまたは一部を用いて通常の様式で免疫化する。その抗原に対して誘導
されるモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることがで
きる。トランスジェニックマウスが有しているヒト免疫グロブリン導入遺伝子は
B細胞の分化の際に再配列し、したがってクラススイッチの転換や体細胞突然変
異が起こる。したがって、このような技術を用いると、治療上有用なIgG、IgAお
よびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するこの技術の概論
についてはLonbergおよびHuszar(1995, Int. Rev. Immunol. 13: 65〜93)を参照
されたい。ヒト抗体やヒトモノクローナル抗体を産生するための技術、およびそ
のような抗体を産生するためのプロトコールについての詳細な説明は、米国特許
第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,569,825号、米国特許5,6
61,016号、および米国特許第5,545,806号を参照するとよい。さらに、Abgenix,
Inc. (Freemont, CA)のような会社によって、選択された抗原に対して誘導され
るヒト抗体を先に記載したのと同様の方法を用いて提供されるように契約しても
らうとよい。
【0092】 選択されたエピトープを認識するヒト完全抗体は、「誘導選別法(guided sel
ection)」と呼ばれる技術を用いて作製することができる。この方法では、選択
された非ヒト抗体である、例えばマウスの抗体が、同じエピトープを認識するヒ
ト完全抗体の選別を誘導するために用いられる。
【0093】 まず、選択された抗原(エピトープ)を結合する非ヒトモノクローナル抗体、
例えばT110の活性を阻害する抗体を同定する。非ヒト抗体の重鎖と軽鎖をクロー
ニングして、Fab断片を示すファージを作成するために用いられる。例えば重鎖
遺伝子をプラスミドベクターにクローニングすることによって、その重鎖が細菌
から分泌されるようにすることができる。軽鎖がファージの表面で発現できるよ
うに、ファージのコートタンパク質の遺伝子に軽鎖遺伝子をクローニングしても
よい。ファージに融合したヒト軽鎖のレパートリー(無秩序な集団)を非ヒト重
鎖を発現する細菌に感染させるために用いる。その結果得られる子孫ファージは
、ハイブリッド抗体(ヒト軽鎖/非ヒト重鎖)を示す。選択された抗原は、その
抗原に結合するファージを選択するためのパンニングスクリーニングで用いられ
る。そのようなファージを確認するためには、選別を数サイクル行う必要がある
かもしれない。次にヒト軽鎖遺伝子を、選択された抗原を結合する選択されたフ
ァージから単離する。続いてこれらの選択されたヒト軽鎖遺伝子が、以下のよう
にヒト重鎖遺伝子の選別を誘導するために用いられる。選択したヒト軽鎖遺伝子
を、細菌によって発現させるようにベクターに挿入する。選択したヒト軽鎖を発
現する細菌を、ファージに融合したヒト重鎖のレパートリーを用いて感染させる
。得られる子孫ファージはヒト抗体(ヒト軽鎖/ヒト重鎖)を示す。
【0094】 次に、選択された抗原は、その抗原を結合するファージを選択するための選別
スクリーニングで用いられる。この段階で選択されたファージは、初めに選択さ
れた非ヒトモノクローナル抗体によって認識されたのと同じエピトープを認識す
ることができるヒト完全抗体を示す。重鎖と軽鎖の両方をコードする遺伝子は容
易に単離することができ、ヒト抗体の産生をさらに操作するために利用すること
ができる。この技術はJespersら、(1994, Bio/technology 12: 899〜903)に記載
されている。
【0095】 抗T110抗体(例えばモノクローナル抗体)は、T110を単離するためにアフィニ
ティークロマトグラフィーまたは免疫沈降法のような標準的な方法を用いること
ができる。抗T110抗体によって、細胞から得られる天然型T110および宿主細胞で
発現させた組換え産生物であるT110を、容易に精製することができる。さらに、
抗T110抗体を用いれば、T110タンパク質の発現の発生量および発現パターンを評
価するためにT110タンパク質(例えば、細胞可溶化物や細胞の上澄みに含まれる
)を検出できる。抗T110抗体は、例えば、所定の治療レジメの効果を調べるため
などの臨床上の検査手法の一部として、組織におけるタンパク質レベルを診断的
にモニターするために用いることができる。検出は、抗体を検出可能な物質に結
合させることによって容易にすることができる。検出可能な物質の例には、種々
の酵素、補欠分子団、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射活性物質
が含まれる。適当な酵素の例としては、セイヨウワサビパーオキシダーゼ、アル
カリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラー
ゼが挙げられ;また適当な補欠分子団の例としては、ストレプトアビジン/ビオ
チンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適当な蛍光物質としてはウンベリフ
ェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジ
クロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエ
リトリンが挙げられ;発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、生物発光物
質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ
;ならびに適当な放射活性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げ
られる。
【0096】III.組換え発現ベクター及び宿主細胞 本発明の別の局面はベクターに関連し、好ましくはT110(またはそれらの一部
)をコードする核酸を含む発現ベクターである。本明細書で用いられる「ベクタ
ー」という用語は、それが結合されている別の核酸を輸送する能力のある核酸分
子を意味する。ベクターの一タイプが「プラスミド」であり、それに別のDNAセ
グメントを連結できるような環状の二本鎖DNAループを意味する。もう一つのタ
イプのベクターにはウイルス性のベクターがあり、これでは別のDNAセグメント
がそのウイルスのゲノムに結合できる。ある種のベクターは宿主細胞で自律複製
ができ、その細胞にそれらベクターが導入される(例えば、細菌性の複製起点を
備えた細菌性ベクター及びエピソーム性哺乳類ベクターである)。他のベクター
(例えば、非エピソーム性哺乳類ベクター)は宿主細胞に導入されると哺乳動物
のゲノムに組み込まれ、それによって宿主のゲノムとともに複製される。さらに
ある種のベクター、即ち発現ベクターは、それらが機能的に結合した遺伝子の発
現を促す能力がある。一般に組換えDNA法で用いられる発現ベクターは、プラス
ミド(ベクター)の形態であることが多い。しかしながら本発明は、等価の機能
を有する発現ベクターの他の形態、例えばウイルス性ベクター(例えば複製欠損
性レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)のような発現ベク
ターを含むことを意図している。
【0097】 本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において核酸を発現させるために適
した形態の本発明の核酸を含んでおり、つまり組換え発現ベクターが、発現のた
めに利用される宿主細胞に基づいて選択され、発現されるべき核酸配列に機能的
に結合している一個またそれ以上の調節配列を含んでいることを意味している。
組換え発現ベクターにおいて「機能的に結合する」とは、対象の核酸配列が調節
配列に、核酸配列の発現が可能になるような様式(例えば、インビトロでの転写
/翻訳系における様式、またはベクターが宿主細胞に導入された場合にその宿主
細胞における様式)で結合していることを意味すると解釈される。「調節配列」
という用語には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現調節要素(例えば、
ポリアデニル化シグナル)が含まれると解釈される。このような調節配列は、例
えばGoeddelの「遺伝子の発現技術(Gene Expression Technology)」:Methods
in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990)に記載さ
れている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞において核酸配列の構成的発
現を誘導する配列や、ある種の宿主細胞においてのみ核酸の発現を誘導する配列
(例えば組織特異的な調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換
される宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベルなどの因子に応じて異
なることが当業者によって認識されると思われる。本発明の発現ベクターが宿主
細胞に導入されることによって、本明細書に記載されたような核酸にコードされ
る、融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドが産生でき
る(例えば、T110タンパク質、T110タンパク質の突然変異体、融合タンパク質な
ど)。
【0098】 本発明の組換え発現ベクターは、例えば大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バ
キュロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞などの原
核細胞または真核細胞において、T110を発現できるように設計すればよい。好ま
しい宿主細胞についてもさらに、Goeddelの「遺伝子の発現技術(Gene Expressi
on Technology)」:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego,
California (1990)に記載されている。また、組換え発現ベクターはインビトロ
で転写及び翻訳が可能であり、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラー
ゼを用いて行う。
【0099】 原核細胞におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク
質のいずれかを発現させる構成的プロモーターまたは誘導プロモーターを含むベ
クターを用いて大腸菌で行うことが最も多い。融合ベクターは、それにコードさ
れるタンパク質に、通常はその組換えタンパク質のアミノ末端に、多くのアミノ
酸を付加する。このような融合ベクターは典型的には次の三つの目的を達成する
:1)組換えタンパク質の発現を増加させる、2)組換えタンパク質の溶解性を高
める、及び3)アフィニティー精製法でリガンドとして作用させることによって
組換えタンパク質の精製を促進させる。しばしば、融合発現ベクターでは、タン
パク質溶解切断部位が融合部分と組換えタンパク質との連結部に導入して、融合
タンパク質を精製すべく融合部分の配列から組換えタンパク質を分離することが
できる。このような酵素、またそれらと同じ性質の認識配列には、Xa因子、トロ
ンビン及びエンテロキナーゼが含まれる。代表的な融合発現ベクターとしては、
pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson (1988) Gene 67: 31〜40)
、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)及びpRIT5(Pharmacia, Piscataw
ay, NJ)が挙げられ、それらは標的組換えタンパク質にグルタチオンS-トランス
フェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはタンパク質Aがそれぞ
れ結合している。
【0100】 適した誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc(Amannら、 (1988) G
ene 69: 301〜315)及びpET 11d(Studierら、「遺伝子の発現技術(Gene Expre
ssion Technology)」:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Die
go, California (1990) 60〜89)が挙げられる。pTrcベクターからの標的遺伝子
の発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターから宿主のRNAポリメラーゼ転
写に依存する。pET 11dベクターからの標的遺伝子の発現は、同時に発現したウ
イルス性RNAポリメラーゼ(T7 gnl)によって仲介されたT7 gn10-lac融合プロモ
ーターからの転写に依存する。このウイルス性ポリメラーゼは、宿主の菌株BL21
(DE3)またはHMS174(DE3)によって、lacUV5プロモーターの転写調節下でT7 g
nl遺伝子を有する内因性λプロファージから供給される。
【0101】 大腸菌において組換えタンパク質発現を最大にするための戦略の一つは、組換
えタンパク質をタンパク質分解によって開裂させる修復能力を持つタンパク質を
宿主細菌中に発現させることである(Gottwsman, 「遺伝子の発現技術(Gene Ex
pression Technology)」:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San
Diego, California (1990) 119〜128)。別の戦略は、それぞれのアミノ酸に対
する個々のコドンが大腸菌で優先的に用いられるようなアミノ酸のコドンとなる
ように、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を変化させることである(Wa
daら、(1992) Nucleic Acids Res. 20: 2111〜2118)。本発明の核酸配列に対す
るこのような変更は、標準的なDNA合成法によって遂行できる。
【0102】 別の態様では、T110発現ベクターは酵母の発現ベクターである。酵母S.セレビ
シエ(S. Cerivisae)で発現するためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari
ら、 (1987) EMBO J. 6: 229〜234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz, (1982)
Cell 30: 933〜943)、pJRY88(Schultzら、 (1987) Gene 54:113〜123)、pYES
2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)、及びpicZ(InVitrogen Corp, S
an diego, CA)が挙げられる。
【0103】 またT110は、バキュロウイルスの発現ベクターを用いて昆虫細胞中に発現させ
ることができる。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)においてタンパク質を発現
させるのに有用なバキュロウイルスベクターには、pAc系列(Smithら、(1983) M
ol. Cell Biol. 3: 2156〜2165)及びpVL系列(LucklowおよびSummers (1989) V
irology 170: 31〜39)が含まれる。
【0104】 さらに別の態様においては、本発明の核酸は哺乳動物の発現ベクターを用いて
哺乳動物細胞において発現する。哺乳動物の発現ベクターの例には、pCDM8(See
d (1987) Nature 329: 840)、及びpMT2PC(Kaufmanら、(1987) EMBO J. 6: 187
〜195)が含まれる。哺乳動物の細胞において使用する場合、発現ベクターの調
節機能はウイルスの調節要素によって提供されることがよくある。例えば、共通
して用いられるプロモーターとしては、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイト
メガロウイルス及びシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の
両方に対して好適な他の発現系は、Sambrookら (同上文献)の第16章及び17章を
参照されたい。
【0105】 別の態様において、哺乳動物の組換え発現ベクターに、特定の細胞型で優先的
に核酸を発現させる能力がある(例えば、組織特異的調節要素がその核酸を発現
させるために用いられる)。組織特異的調節要素は当技術分野では既知である。
適当な組織特異的プロモーターに関する非限定的な例には、アルブミンプロモー
ター(肝臓特異的、Pinkertら(1987) Genes Dev. 1: 268〜277)、リンパ特異的
プロモーター(CalameおよびEaton (1988) Adv. Immunol. 43: 235〜275)、特
定するならばT細胞受容体のプロモーター(WinotoおよびBaltimore (1989) EMBO
J. 8: 729〜733)及び免疫グロブリン(Banerjiら、(1983) Cell 33: 729〜740
、QueenおよびBaltimore (1983) Cell 33: 741〜748)、神経細胞特異的プロモ
ーター(例えばニューロフィラメントプロモーター、ByrneおよびRuddle (1989)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473〜5477)、膵臓特異的プロモーター(Ed
lundら、 (1985) Science 230: 912〜916)、及び乳腺特異的プロモーター(例
えば、ミルクホエー(乳清)プロモーター、米国特許第4,873,316号及び欧州特
許出願第264,166号)が挙げられる。発達時に調節されるプロモーターも含まれ
、例えばマウスのホックス(hox)プロモーター(KesselおよびGruss (1990) Sc
ience 249: 374〜379)及びαフェトプロテインプロモーター(CampesおよびTil
ghman (1989) Genes Dev. 3: 537〜546)も含まれる。
【0106】 本発明はさらに、アンチセンス配向でその発現ベクターにクローニングされた
本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターを提供する。即ちこのDNA分子は、T1
10 mRNAにアンチセンスであるRNA分子が発現(DNA分子の転写によって)できる
ような様式で調節配列に機能的に結合している。アンチセンス配向でクローニン
グされた核酸に機能的に結合された調節配列を使用することが可能であり、それ
はさまざまな細胞型でアンチセンスRNA分子の構成的発現を誘導する。例えばウ
イルスのプロモーターやエンハンサー、もしくは調節配列を選択することが可能
で、それはアンチセンスRNAの組織特異性、または細胞型特異性の構成的発現を
誘導する。このアンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミド
または弱毒化ウイルスの形態にすることができ、そこではアンチセンスな核酸は
非常に効率的な調節領域の制御を受けて産生され、その活性はベクターが導入さ
れた細胞タイプによって決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いた遺
伝子発現の調節に関する考察については、Weintraubら、(Reviews-Trends in Ge
netics, Vol. 1(1) 1986)参照のこと。
【0107】 本発明のもう一つの局面は、本発明の組換え発現ベクターが導入される宿主細
胞に関連する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で
は互換的に用いられる。このような用語は、特定の対象とした細胞だけでなく、
そのような細胞の子孫や潜在的な子孫にも関連している。突然変異や環境の影響
のいずれかに起因して後代にある種の変化が起きる可能性があるため、実際には
このような子孫は親細胞と同一でないかもしれないが、それでも本明細書で用い
たような用語の範囲に含められる。
【0108】 宿主細胞は原核細胞であっても真核細胞であってもよい。例えばT110タンパク
質は、大腸菌などの細菌性細胞、昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞(例えば
チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)において発現させる
ことができる。この他にも適当な宿主細胞が当業者に周知である。
【0109】 ベクターDNAは、従来の形質転換法またはトランスフェクション法によって原
核細胞あるいは真核細胞に導入することができる。本明細書で用いられる「形質
転換」及び「トランスフェクション」という用語は、外来の核酸(例えば、DNA
)を宿主細胞に導入するための技術的に認められたさまざまな方法を指すと解釈
され、それには燐酸カルシウムもしくは塩酸カルシウムとの共沈降法、DEAE-デ
キストラン-仲介性トランスフェクション法、リポフェクション法、またはエレ
クトロポレーション法が含まれる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクシ
ョンする適切な方法は、Sambrookら(同上文献)、及び他の実験マニュアルにて見
出すことができる。
【0110】 哺乳動物細胞の安定的なトランスフェクションでは、用いた発現ベクターとト
ランスフェクション法によって、わずかな細胞の分画のみが外因性DNAをそれら
のゲノムに組みこむことできることが知られている。これらの組み込みを同定し
選択するために、選択マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺
伝子を対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入することが一般的である。好ましい
選択マーカーには、例えばG418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのよう
な薬物に対する抵抗性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核
酸は、T110をコードするベクターと同一のベクターで宿主細胞に導入してもよい
し、あるいは別個のベクターで導入してもよい。導入された核酸を用いて安定的
にトランスフェクションした細胞は、薬物選択法によって同定することができる
(例えば、選択マーカー遺伝子を導入した細胞は生存し、これに対して他の細胞
は死んでしまう)。
【0111】 本発明の宿主細胞は、例えば培養物中に含まれる原核宿主細胞または真核宿主
細胞であるが、それはT110タンパク質を産生(即ち、発現)できる。したがって
本発明はさらに、本発明の宿主細胞を用いてT110タンパク質を産生する方法も提
供する。一態様においてこの方法は、本発明の宿主細胞(それにT110をコードす
る組換え発現ベクターが導入されている)を、T110タンパク質が産生されるよう
な適当な培地中で培養する段階を含む。別の態様では、この方法はさらに、T110
を培地または宿主細胞から単離する段階を含む。
【0112】 本発明の宿主細胞はまた、非ヒトトランスジェニック動物を作製するためにも
用いることができる。例えば一態様において、本発明の宿主細胞は受精卵母細胞
または胚幹細胞であり、それにT110コード配列が導入されている。次にこのよう
な宿主細胞を用いることによって、外因性のT110配列がゲノム中に導入されてい
る非ヒトトランスジェニック動物や、内因性のT110配列が変化している相同的組
換え動物を作製することができる。このような動物はT110の機能や活性を研究す
るために用いることができ、また、T110活性のモジュレーターを同定したり評価
したりするために用いることもできる。本明細書で用いられる「トランスジェニ
ック動物」とは非ヒト動物であり、好ましくは哺乳類、さらに好ましくはラット
やマウスのようなげっ歯類であって、その動物の一つまたは複数の細胞が導入遺
伝子を含むものである。トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒトの霊
長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両性類などが含まれる。導入遺伝
子とは、細胞のゲノム中に組み込まれ、トランスジェニック動物を生育させ、か
つ成熟した動物のゲノムに残ることによって、トランスジェニック動物の一つま
たは複数の細胞型もしくは組織でコードされる遺伝子産物を発現させるような外
因性DNAである。本明細書で用いられる「相同的組換え動物」とは、非ヒトの動
物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはマウスであって、内因性のT110遺伝
子が、内因性の遺伝子と、その動物の細胞、例えばその動物の胚細胞にその動物
が発生する前に導入された外因性のDNA分子との間で相同的組換えを行うことで
改変されている動物である。
【0113】 本発明のトランスジェニック動物は、T110をコードする核酸を受精した卵母細
胞の雄の前核に導入することによって、例えばマイクロインジェクション法、レ
トロウイルスの感染、及びその卵母細胞を偽妊娠させた雌の仮親動物において成
長させることによって作製することができる。T110 cDNA配列は、例えば(配列
番号:1、配列番号:3、、配列番号:5、および配列番号:7)の配列であり、非
ヒト動物のゲノムに導入遺伝子として組み込むことができる。また、ヒトT110遺
伝子の非ヒト相同体は、導入遺伝子として用いることが可能である。ヒトT110に
おける非ヒト相同体は、T110 cDNAへのハイブリダイジェーションを基にして単
離することができる。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルもまた、導
入遺伝子における発現の効率を高めるために含まれ得る。組織特異的調節配列は
、T110タンパク質が特定の細胞で発現するようにT110導入遺伝子に機能的に結合
されている。胚の操作やマイクロインジェクションによって、トランスジェニッ
ク動物、特にマウスのような動物を発生させるための方法は、当技術分野では慣
例的であり、例えば米国特許第4,736,866号及び第4,870,009号、米国特許第4,87
3,191号並びにHogan「マウスの胚操作(Manipulating the Mouse Embryo)」(Co
ld Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor N. Y., 1986)に記載
されている。類似の方法が他のトランジェニック動物を作製するために用いられ
る。トランスジェニック発端動物は、ゲノム中のT110遺伝子の存在、および/ま
たは動物における組織または細胞中のT110 mRNA発現に基づいて同定される。ト
ランスジェニック発端動物は、その後、T110導入遺伝子を有する別の動物と繁殖
させるために使用することができる。またT110をコードする導入遺伝子を有する
トランジェニック動物は、他の導入遺伝子を有する他のトランジェニック動物と
さらにかけあわせてもよい。
【0114】 相同的組換え動物を作製するために、少なくとも一部分のT110遺伝子(例えば
、マウスT110遺伝子のようなT110遺伝子のヒトもしくは非ヒト相同体)を含み、
それに欠失、付加または置換が導入されたことでT110遺伝子が例えば機能的に破
壊するなどの変化を有するベクターを調製する。好ましい態様においてはこのベ
クターは、相同的組換えを行って内因性T110遺伝子が機能的に破壊している(即
ち、もはや機能的タンパク質をコードしない。「ノックアウト」ベクターとも言
われる)ように設計されている。またこのベクターは、相同的組換えを行って内
因性T110遺伝子が変異したり他の様式で改変されているが、機能的タンパク質は
コードするように設計することができる(例えば、上流側の調節領域を改変する
ことによって内因性T110タンパク質の発現を変化させることができる)。相同的
組換えベクターでは、ベクターによって輸送される外因性T110遺伝子と、胚幹細
胞中の内因性T110遺伝子との間で相同的組換えが起こりうるように、T110遺伝子
の変化部分は、その5'末端及び3'末端がT110遺伝子の付加的な核酸と隣接してい
る。この隣接している付加的なT110核酸は、内因性遺伝子と相同的組換えを成功
させるのに十分な長さである。典型的には数キロベースの隣接するDNA(5'末端
及び3'末端の両方で隣接する)がベクターに含まれる(例えば、相同的組換えベ
クターについて記載したThomasおよびCapecchi (1987) Cell 51: 503参照)。こ
のベクターは胚幹細胞系に導入され(例えば、エレクトロポレーションによって
)、そしてその導入されたT110遺伝子が内因性のT110遺伝子と相同的組換えを行
った細胞が選択される(例えば、Liら(1992) Cell 69: 915参照)。続いてその
選択された細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞に注入することによって、凝
集キメラを形成することができる(例えば、Bradley「奇形癌と胚性幹細胞(Ter
atocarsinomas and Embryonic Stem Cells)」: A Practical Approsch, Robert
son, ed. (IRL, Oxford, 1987) pp.113〜152参照)。次にキメラの胚を適当な偽
妊娠させた雌性仮親動物に移植することができ、その胚は出産日に至る。生殖細
胞に相同的組換えDNAを有している子孫は、導入遺伝子を生殖系で伝達させるこ
とによって全ての細胞に相同的組換えDNAを含む動物を繁殖させるために利用で
きる。相同的組換えベクターと相同的組換え動物を構築する方法は、[Bradley (
1991) Current Opunion in Bio/Technology 2: 823〜829]及びPCT国際公開公報
第90/11354号、第91/01140号、第92/0968号、及び第93/04169号にさらに説明さ
れている。
【0115】 別の態様においては、導入遺伝子の調節された発現が可能になるよう選択され
た系を備えたトランジェニック非ヒト動物を作製できる。このような系の一例は
、バクテリオファージP1のcre/loxP組換え酵素系である。このcre/loxP組換え
酵素系についての説明は、例えば[Laksoら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
89:6232〜6236]参照のこと。組換え酵素系の別の例では、サッカロマイセス・
セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLP組換え酵素系がある(O'Gorman
ら、 (1991) Science 251:1351〜1355)。cre/loxP組換え酵素系が導入遺伝子
の発現を調節するために用いられる場合、Cre組換え酵素と選択されたタンパク
質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が必要である。このような動物は、
「二重」トランジェニック動物を構築、例えば一方は選択されたタンパク質をコ
ードする導入遺伝子を有し、もう一方は組換え酵素をコードする導入遺伝子を有
するような二種類のトランジェニック動物を掛け合わせることによって提供する
ことができる。
【0116】 本明細書で記載した非ヒトトランジェニック動物のクローンは、Wilmutら(199
7) Nature 385:810〜813並びにPCT国際公開公報第97/07668号及び第97/07669号
に説明されている方法に従って作製することもできる。簡単に説明すると、トラ
ンジェニック動物から例えば体細胞などの細胞を取り出し、増殖周期を脱してG0 期に入るように誘導することができる。続いてその静止細胞を、例えば電気パル
スを使用して同種の動物から得られる核を除去した卵母細胞に融合し、そこから
静止細胞を単離することができる。次にこの再構築した卵母細胞を培養して桑実
胞または胚盤胞に成長させ、それを偽妊娠した雌性仮親動物に移植する。この雌
の仮親動物が生んだ子供は、例えば体細胞などの細胞が単一である動物のクロー
ンとなる。
【0117】IV.薬学的組成物 本発明のT110核酸分子、T110タンパク質、及び抗T110抗体(本明細書では「活
性化合物」とも言われる)は、投与するにふさわしい薬学的組成物に組み入れる
ことができる。このような組成物は通常、核酸分子、タンパク質、または抗体と
、薬学的に許容される担体とを含んでいる。本明細書で用いられる「薬学的に許
容される担体」という用語には、任意の溶媒および全ての溶媒、分散媒体、被膜
剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延化剤など、薬学的投与で相互作
用を及ぼさないものが含まれる。薬学的活性物質に対するこのような媒体や添加
剤の使用は当技術分野では周知である。任意のよく用いられる媒体または添加剤
が、活性化合物と不適合でない限り、組成物において使用することができる。補
助的な活性化合物もその組成物に組み入れることが可能である。
【0118】 本発明の薬学的組成物は、投与する予定の経路と適合するよう処方される。投
与経路の例には、非経口投与、例えば静脈内投与、皮内投与、皮下投与や、経口
投与(例えば吸入)、経皮投与(局所)、粘膜経由投与、及び直腸内投与が挙げ
られる。非経口投与、経皮投与、または皮下投与に用いられる溶液または懸濁液
には、次の成分を含んでいてもよい:注射のための水などの滅菌性の希釈剤、食
塩水、固定化オイル、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコ
ールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールやメチルパラベンのような抗酸化
剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩ま
たは燐酸塩のような緩衝剤;塩化ナトリウムやブドウ糖のような等張性を調整す
る添加剤。pHは酸または塩基、例えば塩酸や水酸化ナトリウムを用いて調節すれ
ばよい。非経口投与用の製剤は、ガラス製かプラスチック製のアンプル、使い捨
ての注射器、または多数回分の用量が入った容器に封入することができる。
【0119】 注射に適した薬学的組成物には、滅菌した注入可能な溶液または分散剤を即時
調製するための滅菌性の水性溶液(水溶性の場合)または分散剤と滅菌性の粉末
とが含まれる。静脈内投与のための適当な担体として、生理食塩水、静菌性の水
、クレモホール(Cremophor)EL(登録商標)(BASF; Parsippany, NJ)または
燐酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合でも組成物は滅菌され
るべきであり、かつ容易に注射可能な出口を出て広がる液体であるべきである。
製造や保存の条件下では安定であることが必要で、細菌や真菌のような微生物か
らの汚染作用から保護されなくてはならない。担体は溶媒または分散剤であり、
例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコー
ル、及び液状のポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適当な混合液が含
まれる。適切な流動性は、例えばレシチンのような被膜剤を使用することによっ
て、分散剤の場合には必要とされる粒子の大きさを保守することによって、また
表面活性剤を使用することによって維持できる。微生物の作用の抑制は、例えば
パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロザールなど
のような種々の抗菌剤及び抗真菌剤によって達成することができる。多くの場合
、例えば糖、マンニトールのようなポリアルコール類、ソルビトール、塩化ナト
リウムなどの等張化剤を組成物に含ませることが好ましいと考えられる。注射可
能な組成物の持続的な吸収のためには、例えばアルブミンモノステアリン塩とゼ
ラチンのような吸収を遅らせる添加剤を組成物に含有させることによって達成で
きる。
【0120】 注入可能な滅菌溶液は、活性化合物(例えば、T110タンパク質または抗T110抗
体)を適当な溶媒中で必要な量だけ、上記に列挙した成分の一つまたはそれらの
成分を組み合わせたものと一緒に組み入れ、必要に応じて、その後、濾過滅菌し
て調製できる。一般に分散剤は、活性化合物を、ベースの分散媒と上記に列挙し
た成分のなかから必要とされる成分とを含む滅菌性の溶剤に組入れて調製する。
滅菌性の注入可能な溶液を調製するために滅菌性の粉末を使用する場合、好まし
い調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、これによって得られた活性成分と予
め濾過滅菌した溶液に由来する望ましい添加成分を混合する。
【0121】 経口投与用の組成物は一般に、不活性な希釈剤または食用に適した担体が含ま
れる。それらはゼラチンカプセルに封入してもよいし、圧縮して錠剤にしてもよ
い。経口での治療薬投与の目的で活性化合物は賦形剤とともに調合してもよく、
錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の剤形にすればよい。経口組成物はまた、
口腔洗浄剤として用いる場合には液状の担体を使用して調製すればよく、その際
、液状担体中に含まれる化合物が経口的に供給され、すすがれ、および吐き出さ
れるか、または飲み込まれる。薬学的に適合性である結合剤および/またはアジ
ュバント剤をその組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、カプセ
ル剤、トローチ剤などの薬剤は、以下の成分のいずれか、またはそれと同様の性
質を有する化合物を含むことができる:微結晶のセルロース、トラガカントガム
もしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンや乳糖などの賦形剤;アルギン酸、プ
リモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグ
ネシウムもしくはステローテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド二酸化珪素な
どの潤化剤;ショ糖やサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル
酸メチル、もしくはオレンジ香料などの着香料である。吸入によって投与する場
合、その化合物は適当な発射剤、例えば二酸化炭素のようなガスを含む加圧容器
、もしくはディスペンサーから、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で
供給される。
【0122】 また全身投与は、経粘膜または経皮膚手段によっても行うことができる。経粘
膜または経皮膚投与方法では、透過させるべき障壁に対して適した浸透剤を製剤
に用いる。このような浸透剤は一般に当技術分野では公知であり、例えば経粘膜
投与のための洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与
は、鼻腔用スプレーや坐薬を利用して行うことができる。経皮投与では、活性化
合物は一般的に当技術分野で知られているような軟膏、膏薬、ゲル、またはクリ
ームに製剤化される。
【0123】 またこの化合物は、直腸に送達するための坐薬(例えば、ココアバター及び他
のグリセライドのような従来よりある坐薬の基剤とともに)または滞留浣腸の形
態として調製してもよい。
【0124】 一つの態様において、活性化合物は、該化合物が体内から急速に消失するのを
防ぐ担体とともに調製され、それは例えば、移植片やマイクロカプセル化した送
達系などの放出を制御する製剤である。生分解性であり、生体適合性である、例
えばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドライド類、ポリグリコール酸、コ
ラーゲン、ポリオルトエステル類、及びポリラクチン酸のようなポリマーを用い
ることができる。このような製剤の調製方法は当業者には明らかであると思われ
る。またこれらの材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals, Inc.
から商業的に入手してもよい。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノク
ローナル抗体を感染させた細胞を標的とするリポソームを含む)も薬学的に許容
される担体として用いることができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811
号に記載されているように、当業者に公知の方法に従って調製できる。
【0125】 投与を容易にし、かつ一用量を均一にするために、用量単位形態で経口または
非経口組成物を製剤化することが特に都合がよい。本明細書で用いられる用量単
位形態とは、治療を受ける被験者にとって単一用量として適した物理的に別々の
単位を意味し、そのそれぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連して望ま
しい治療効果を生み出すように計算された予め決められた量の活性化合物を含ん
でいる。本発明の用量単位形態についての特定化は、活性化合物の特有の特徴及
び達成される特定の治療効果、並びに個体の治療のためにこのような活性化合物
を複合化するという当技術分野における固有の制限に指示され、それらに直接的
に依存する。
【0126】 本発明の核酸分子をベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして用いること
ができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注入、局所投与(米国特許第5,
328,470号)によって、または定位への注入(例えば、Chenら(1994) Proc. Natl
. Acad. Sci. USA 91: 3054〜3057参照)によって患者に供給することができる
。この遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤中にその遺伝子
治療ベクターを含有させてもよいし、あるいはその遺伝子輸送のための溶剤が埋
め込まれた徐放性基質を構成してもよい。また、完全な遺伝子輸送ベクターが例
えばレトロウイルスベクターのような組換え細胞からそのまま産生できる場合、
薬学的製剤はその遺伝子輸送系を産生する1個または複数の細胞を含んでいれば
よい。
【0127】 この薬学的組成物は、投与説明書とともに、容器、パッケージ、またはディス
ペンサー中に含まれ得る。
【0128】V.本発明の使用及び方法 本明細書に記載された核酸分子、タンパク質、タンパク質相同体、及び抗体は
以下の方法の一つまたは複数の方法で用いることができる。即ち、a)スクリー
ニング解析、b)検出アッセイ法(例えば、染色体マッピング、組織タイピング
、法医生物学)、c)予測的医学(例えば、診断解析、予後解析、臨床試験のモ
ニタリング、及び薬理遺伝学)、ならびにd)治療方法(例えば、治療用または
予測用)である。T110タンパク質などの他の細胞のタンパク質と相互作用し、そ
のため(i)細胞増殖の調節、および(ii)細胞分化の調節のために使用するこ
とができる。本発明の単離核酸分子は、T110タンパク質を発現させるため(例え
ば、遺伝子治療に適用する際、宿主細胞中の組換え発現ベクターを介して)、T1
10 mRNA(例えば、生物試料に含まれる)またはT110遺伝子における遺伝的障害
を検出するため、かつT110の活性を調節するために用いることができる。さらに
T110タンパク質は、T110タンパク質の不十分な産生、もしくは過剰な発現によっ
て、またはT110野生型タンパク質に比べて減少した活性、もしくは異常な活性を
有するT110タンパク質型が産生されることによって特徴づけられる疾患を治療す
るために用いられ、ならびにT110の活性や発現を調節する薬物または化合物をス
クリーニングするためにも用いられる。さらに、本発明の抗T110抗体は、T110タ
ンパク質を検出して単離するため、そしてT110の活性を調節するために用いるこ
とができる。
【0129】 本発明はさらに、上記のスクリーニング解析によって同定された新規の薬物、
及び本明細書に記載されたような治療の目的でそれらを使用する方法にも関連す
る。
【0130】 A.スクリーニング解析 本発明は、モジュレーター、即ち、T110タンパク質に結合したり、もしくは例
えばT110の発現またはT110の活性に対する刺激作用または阻害作用を有する候補
もしくは試験化合物または薬物(例えば、ペプチド、ペプチド擬似体、小分子、
または他の薬物)を同定するための方法(本明細書では「スクリーニング解析」
とも称する)を提供する。
【0131】 一態様において本発明は、膜結合型T110タンパク質もしくはペプチドか、また
はそれらの生物学的活性部分に結合するか、またはそれらの活性を調節する候補
または試験化合物をスクリーニングするための方法を提供する。本発明の試験化
合物は、当技術分野で既知の組合せライブラリー法で非常に多くの方法のうちの
いずれかを用いて得ることができる。そのライブラリーには、生物学的ライブラ
リー、空間的にアドレス可能な平行な(spatially addressable parallel)固相
ライブラリーまたは液相ライブラリー、デコンボレーションを必要とする合成ラ
イブラリー法、「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリー法
、及びアフィニティークロマトグラフィー選別法を利用する合成ライブラリー法
が含まれる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定さ
れるが、これに対して他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー
または小分子の化合物ライブラリーに適用可能である(Lam (1997) Anticancer
Drug Des. 12: 145)。
【0132】 分子ライブラリーを合成するための方法の例は、当技術分野で周知であり、例
えばDeWittら(1993) Proc, Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6909、Erbら、(1994)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422、Zuckermannら、(1994). J. Med. Che
m. 37: 2678、Choら、 (1993) Science 261: 1303、Carrellら、(1994) Angew.
Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059、Carellら、 (1994) Angew. Chem. Int. Ed. E
ngl. 33: 2061、及びGallopら、(1994) J. Med. Chem. 37: 1233に見出される。
【0133】 化合物のライブラリーは溶液で存在していてもよいし(例えば、Houghten (19
92) Bio/Techniques 13: 412〜421)、またはビーズ上(Lam (1991) Nature 354
: 82〜84)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555〜556)、細菌(米国特許
第5,223,409号)、胞子(特許第5,571,698号、第5,403,484号、及び第5,223,409
号)、プラスミド(Cullら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865〜1869
)、もしくはファージ(ScottおよびSmith (1990) Science 249: 386〜390、Dev
lin (1990) Science 249: 404〜406、Cwirlaら(1990) Proc. Natl. Acad. Sci.
87: 6378〜6382、及びFelici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301〜310)に存在し
ていてもよい。
【0134】 一態様におけるアッセイ法においては、膜結合型のT110タンパク質、またはそ
の生物学的活性部分をその細胞表面に発現する細胞を試験化合物と接触させ、お
よびその試験化合物がT110タンパク質に結合する能力を測定する、細胞ベースの
アッセイ法である。細胞は例えば、酵母細胞や哺乳動物起源の細胞であってもよ
い。T110タンパク質に対する試験化合物の能力を測定するには、例えば、放射性
標識または酵素標識と試験化合物とを結合させて、T110タンパク質またはそれら
の生物学的活性部分への試験化合物の結合を、複合体に含まれる標識化合物を検
出することによって測定することが可能となる。例えば試験化合物を直接的また
は非直接的のいすれかで125I、35S、14C、または3Hで標識してもよく、その放射
性同位元素を放射電磁波を直接計数したり、またはシンチレーション計数管で計
数したりして検出できる。また、試験化合物を、例えばセイヨウワサビパーオキ
シダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはルシフェラーゼで酵素的に標識して
もよく、または、適当な基質が生成物に変換することを調べることによって検出
される酵素的標識で酵素的に標識してもよい。好ましい態様において、本アッセ
イには、膜結合型T110タンパク質、またはそれら生物学的活性部分をその細胞表
面に発現する細胞を、T110と結合してアッセイ混合物を形成する既知の化合物と
接触させる段階と、そのアッセイ混合物を試験化合物と接触させる段階と、既知
の化合物と比較してT110またはその生物学的活性部分に好んで結合する試験化合
物の能力を測定する段階を含む、T110タンパク質と相互作用する試験化合物の能
力を検出する段階とが含まれる。
【0135】 別の態様において、アッセイは、膜結合型のT110タンパク質、またはその生物
学的活性部分を細胞表面で発現する細胞を試験化合物と接触させる段階、および
T110タンパク質またはその生物学的活性部分の活性を調節する(例えば、刺激ま
たは阻害する)試験化合物の能力を測定する段階とを含む細胞ベースのアッセイ
である。T110の活性またはそれらの生物学的活性部分の活性を調節する試験化合
物の能力を測定するには、例えば、T110標的分子に結合したり、その標的分子と
相互作用したりするT110タンパク質の能力を測定することによって行うことがで
きる。
【0136】 本明細書において用いられている「標的分子」とは、T110タンパク質が天然で
結合したり相互作用したりする分子であり、例えばT110タンパク質を発現する細
胞の表面にある分子、二次細胞の表面にある分子、細胞外環境にある分子、細胞
膜の内表面に関連する分子、または細胞質分子である。T110標的分子は非T110分
子であってもよいし、または本発明のT110タンパク質もしくはポリペプチドであ
ってもよい。一態様におけるT110標的分子は、細胞膜を通って細胞に入る細胞外
シグナル(例えば、膜結合性T110分子に化合物が結合することによって生じるシ
グナル、または細胞の受容体にT110の可溶型が結合することによって生じるシグ
ナル)の伝達を容易にするシグナル伝達経路の一構成要素である。この標的は例
えば、触媒活性を持つ二次的な細胞間タンパク質であってもよいし、また下流の
シグナリング分子とT110との関連を容易にするタンパク質であってもよい。
【0137】 T110タンパク質がT110標的分子と結合、または相互作用するT110タンパク質の
能力の測定は、直接的に結合を測定する前記の方法の一つによって行うことがで
きる。一つの好ましい態様においては、T110標的分子と結合するか、またはそれ
らと相互作用するT110タンパク質の能力の測定は、標的分子の活性を測定するこ
とによって行うことができる。例えば標的分子の活性は、その標的の細胞内二次
メッセンジャー(例えば、細胞内Ca2+、ジアシルグリセロール、IP3など)の誘
導を検出することによって、適当な基質上で標的の触媒/酵素活性を検出するこ
とによって、リポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼのような検出可能なマ
ーカーをコードする核酸に機能的に結合したT110応答性調節要素)の誘導を検出
することによって、または例えば細胞の分化もしくは細胞の増殖のような細胞の
反応を検出することによって測定することができる。
【0138】 さらに別の態様では、本発明のアッセイ法は、T110タンパク質またはそれら生
物学的活性タンパク質を試験化合物と接触させる段階と、T110タンパク質または
その生物学的活性なタンパク質(例えば、T110の細胞外ドメイン)に結合する試
験化合物の能力を測定する段階とを含む無細胞アッセイ法である。T110タンパク
質への試験化合物の結合は、上述したように直接的または非直接的のいずれかに
よって検出することができる。好ましい態様において、このアッセイには、T110
タンパク質またはその生物学的活性部分を、T110と結合してアッセイ混合物を形
成する既知の化合物と接触させる段階と、アッセイ混合物を試験化合物と接触さ
せる段階と、既知の化合物と比較してT110またはその生物学的活性部分に好んで
結合する試験化合物の能力を測定する段階を含む、T110タンパク質と相互作用す
る試験化合物の能力を検出する段階とが含まれる。
【0139】 別の態様におけるアッセイ法は、T110タンパク質またはそれらの生物学的活性
部分を試験化合物と接触させる段階、及びT110タンパク質またはそれらの生物学
的活性部分の活性を調節(例えば、刺激または阻害)する試験化合物の能力を検
出する段階を含む無細胞アッセイ法である。T110の活性を調節する試験化合物の
能力の検出は、例えば、T110標的分子に結合するT110タンパク質の能力を、直接
的な結合を検出するための上記に記載した方法のうちの一つにおいて検出するこ
とによって行われる。他の態様では、T110の活性を調節する試験化合物の能力の
検出は、T110標的分子をさらに調節するT110タンパク質の能力を検出することに
よって達成できる。例えば適当な基質上の標的分子の触媒/酵素活性は前述した
ように測定すればよい。
【0140】 さらに別の態様では、無細胞アッセイ法には、T110タンパク質またはそれらの
生物学的活性部分を、T110と結合してアッセイ混合物を形成する既知の化合物と
接触させる段階、そのアッセイ混合物を試験化合物と接触させる段階、及びT110
タンパク質と相互作用する試験化合物の能力を検出する段階を含むアッセイ法で
あって、T110タンパク質と相互作用する試験化合物の能力を検出する前記段階に
は、T110標的分子に優先的に結合したりその活性を優先的に調節したりするT110
タンパク質の能力を検出する方法が含まれる。
【0141】 本発明の無細胞アッセイ法は、可溶型T110と膜結合型T110のどちらに使用して
も感受性が高い。膜結合型T110を含む無細胞アッセイ法の場合には、膜結合型T1
10が溶液中に維持されるように可溶化薬剤を使用することが望ましいと考えられ
る。このような可溶化薬剤の例には、以下の非イオン性界面活性剤が含まれる:
例えば、n-オクチルグルコシド、n-ドデシルグルコシド、n-ドデシルマルトシド
、オクタノイル-N-メチルグルカミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、トリト
ン(登録商標)X-100、トリトン(登録商標)X-144、テジット(登録商標)、イ
ソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3-[(3-クロラミドプロピ
ル)ジメチルアミニオ]-1-プロパンスルホン酸(CHAPS)、3-[(3-クロラミド
プロピル)ジメチルアミニオ]-2-ハイドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CHAPSO
)、またはN-ドデシル=N,N-ジメチル-3-アミニオ-1-プロパンスルホン酸。
【0142】 本発明の上記のアッセイ法の一つ以上の態様では、T110かあるいはその標的分
子のいずれかを固定することによって、アッセイの自動化に適用できるという点
はもちろんのこと、それらのタンパク質の一方または両方ともが複合していない
形態から複合した形態を分離するのが容易であるという点において望ましい。T1
10への試験化合物、または候補化合物の存在下、または非存在下においてのT110
と標的分子との相互作用は、反応物を含むのに適した任意の容器中で達成され得
る。このような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管、及び微
量遠心分離管が挙げられる。一つの態様において、一つまたは両方のタンパク質
を基質に結合させるドメインを追加する融合タンパク質が提供される。例えば、
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/T110融合タンパク質またはグルタチオン-
S-トランスフェラーゼ/標的融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビー
ズ(Shigma Chemical; St. Louis, MO)またはグルタチオンを誘導させたマイク
ロタイタープレートに吸着させ、続いてそれを試験化合物と結合させたり、また
は試験化合物と非吸着標的タンパク質もしくはT110タンパク質のいずれかと結合
させ、次にその混合物が複合体を形成できるような伝導性条件(例えば、塩類及
びpHについては生理学的条件で)下でインキュベートするとよい。インキュベー
トに続いてそのビーズまたはマイクロタイタープレートのウェルを洗浄して非結
合成分を除去し、かつ例えば上記に記載されたように直接的または非直接的のい
ずれかで複合体形成を測定した。また、この複合体は基質と無関係にすることが
でき、T110の結合または活性のレベルを標準的な方法を用いて検出した。
【0143】 基質上にタンパク質を固定化する他の手法も本発明のスクリーニング解析とし
て用いることができる。例えば、T110またはその標的分子のいずれかは、ビオチ
ン及びストレプトアビジンの組合せを用いて固定化することができる。ビオチン
化T110または標的分子は、当技術分野で周知の方法(例えば、ビオチン化キット
Pierce Chemicals; Rockford, IL)を用いてビオチン-NHS(N-ハイドロキシ-
サクシンイミド)から調製でき、そしてストレプトアビジンをコーティングした
96穴プレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化することができる。また、T
110または標的分子と反応するが、T110タンパク質がその標的分子に結合するの
を妨害しない抗体が、そのプレートのウェルに誘導体化され、非結合標的分子ま
たはT110を抗体複合体によってウェル中で捕捉されることもできる。GST-固定化
複合体について上記の方法とは別に、このような複合体を検出するための方法に
は、T110または標的分子と関連した酵素活性の検出に依存している酵素結合解析
、ならびにT110または標的分子と反応する抗体を用いた複合体の免疫検出法が含
まれる。
【0144】 別の態様においては、T110の発現のモジュレーターは、細胞を候補化合物と接
触させ、その細胞中におけるT110 mRNAまたはタンパク質の発現を検出する方法
において同定される。候補化合物が存在する場合のT110 mRNAまたはタンパク質
の発現レベルは、候補化合物が存在しない場合のT110 mRNAまたはタンパク質の
発現レベルと比較される。次にこの比較結果に基づいて、候補化合物をT110の発
現のモジュレーターとして同定することができる。例えば、T110 mRNAまたはタ
ンパク質の発現が、候補化合物が存在下において非存在下よりも多い(統計学的
に有意に多い)場合、その候補化合物がT110 mRNAまたはタンパク質発現の刺激
物質として同定される。またT110 mRNAまたはタンパク質の発現が、候補化合物
の存在下において非存在下よりも少ない(統計学的に有意に少ない)場合、その
候補化合物がT110 mRNAまたはタンパク質発現の阻害物質として同定される。細
胞内でのT110 mRNAまたはタンパク質の発現レベルは、T110 mRNAまたはタンパク
質を検出するための本明細書に記載された方法によって検出することができる。
【0145】 本発明のさらに別の局面において、T110タンパク質は、ツーハイブリッドアッ
セイ法またはスリーハイブリッドアッセイ法(例えば、米国特許第5,283,317号
、Zervosら(1993) Cell 72:223〜232、Maduraら(1993) J. Biol. Chem. 268: 12
046〜12054、Bartelら(1993) Bio/Techniques 14: 920〜924、Iwabuchiら(1993)
Oncogene 8: 1693〜1696、及びPCT国際公開公報第94/10300号参照)において「
ベイト(bait)タンパク質」として用いることができ、T110と結合したり、また
はそれらと相互作用する他のタンパク質(「T110結合性タンパク質」もしくは「
T110-bp」)を同定することができ、またT110の活性を調節することができる。
またこのようなT110結合性タンパク質も、例えばT110経路の上流または下流の要
素としてT110タンパク質によるシグナルの増幅に関与している可能性が高い。
【0146】 ツーハイブリッドシステムは、分離できるDNA結合ドメインと活性化ドメイン
からなる、最も多い転写因子の調節性質(module nature)に基づいている。簡
単に言うとこのアッセイ法は、2種の異なるDNA構築物を使用する。一つの構築物
ではT110コード遺伝子が、既知の転写因子(例えば、GAL-4)のDNA結合ドメイン
をコードする遺伝子に融合される。他方の構築物では、未同定のタンパク質(「
プレイ(prey)」または「試料」)をコードしており、DNA配列のライブラリーに
由来するDNA配列が、既知の転写因子の活性化ドメインをコードしている遺伝子
に融合される。「ベイト(beit)」タンパク質及び「プレイ」タンパク質が生体
内で相互作用してT110依存性複合体を形成する場合、転写因子のDNA結合ドメイ
ンと活性化ドメインはきわめて近接するようになる。このような近接は、転写因
子に応答する転写調節部位に機能的に結合するリポーター遺伝子(例えば、LacZ
)の転写を可能にする。リポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的
な転写因子を含む細胞コロニーが単離でき、かつT110と相互作用するタンパク質
をコードするクローン遺伝子を得るために用いることができる。
【0147】 本発明はさらに、前記のスクリーニング解析によって同定された新規の薬物、
及び本明細書に記載したような治療のためのその使用方法に関する。
【0148】 B.検出アッセイ法 本明細書において同定したcDNA配列の一部または断片(および対応する完全な
遺伝子配列)を、ポリヌクレオチド試薬として多くの方法で使用することができ
る。例えばこれらの配列を用いて:(i)それらの各遺伝子を染色体上にマッピン
グし、それにより遺伝性疾患に関連した遺伝子領域を特定する;(ii)微小生体試
料から個体を同定する(組織タイピング);ならびに(iii)生体試料の法医学的
鑑定を補助することができる。これらの用途については、以下のサブセクション
において説明する。
【0149】1. 染色体地図の作成 遺伝子の配列(または配列の一部)が単離されると、この配列を用いて染色体
上の遺伝子の位置をマッピングすることができる。従って、本明細書で説明され
たT110核酸分子、またはそれらの断片を用いて、染色体上のT110遺伝子の位置を
マッピングすることができる。染色体に対するT110配列のマッピングは、これら
の配列を疾患に関連した遺伝子と関連付ける際の重要な第一工程である。
【0150】 簡単に述べると、T110遺伝子は、T110配列からPCRプライマー(好ましくは長
さ15〜25bp)を調製することによって、染色体にマッピングすることができる。
T110配列のコンピュータ解析を用いて、ゲノムDNAにおいて1個以上のエクソン
に及ぶことのないプライマーを迅速に選択することができ、その結果増幅過程を
複雑にする。次にこれらのプライマーを、ヒト個体のヒト染色体を含む体細胞ハ
イブリッドのPCRスクリーニングに使用することができる。T110配列に相当する
ヒト遺伝子を含むそれらのハイブリッドのみが、増幅断片を生じる。
【0151】 体細胞ハイブリッドは、様々な哺乳類由来の体細胞(例えばヒト細胞およびマ
ウス細胞)の融合により調製される。ヒト細胞およびマウス細胞のハイブリッド
が増殖および分裂すると、これらは次第に無秩序な順番でヒト染色体を失ってい
くが、マウス染色体は維持し続ける。特定の酵素を欠いているためにマウス細胞
は増殖できないがヒト細胞は増殖できるような培地を使用することによって、必
要とされる酵素をコードしている遺伝子を含む1種のヒト染色体が維持されると
考えられる。様々な培地を使用することによって、ハイブリッド細胞株のパネル
を確立することができる。パネル中の各細胞株は、 単一のヒト染色体または少
数のヒト染色体のいずれか、およびマウス染色体の完全なセットを含み、特定の
ヒト染色体に個々の遺伝子をマッピングすることが容易になる(D'Eustachioら、
Science, 220:919〜924(1983))。ヒト染色体の断片のみを含む体細胞ハイブリッ
ドは、転座および欠失を伴うヒト染色体を使用して作製することもできる。
【0152】 体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の配列を特定の染色体に割付け
る迅速な方法である。1回の熱サイクルで、1日に3種以上の配列を割付けるこ
とができる。オリゴヌクレオチドプライマーをデザインするためにT110配列を使
用し、特異的染色体由来の断片のパネルにより仮位置確認(sublocalization)を
行うことができる。T110配列をその染色体にマッピングするために同様に使用さ
れる他のマッピング戦略は、インサイチューハイブリダイゼーション(Fanら、P
roc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6223〜27(1990))、標識したフロー分取された(
flow-sorted)染色体による予備スクリーニング、および染色体に特異的なcDNAラ
イブラリーへのハイブリダイゼーションによる予備スクリーニングを含む。
【0153】 さらに中期染色体塗沫標本(spread)に、DNA配列の蛍光インサイチューハイブ
リダイゼーション(FISH)を、1工程で正確な染色体位置を提供するために使用す
ることができる。染色体塗沫標本は、紡錘体を破壊するコルセミドのような化学
物質により分裂が中期で停止された細胞を使用して作製することができる。これ
らの染色体は、短時間トリプシン処理し、その後ギムザ染色することができる。
各染色体に明暗のバンドパターンが出現し、その結果これらの染色体を個別に同
定することができる。FISH技法は500または600塩基のような短いDNA配列で使用
することができる。しかし、1,000塩基より大きいクローンは、簡単な検出に十
分なシグナル強度を持つ独自の染色体位置に結合している可能性がより高い。妥
当な時間で良好な結果を得るには、好ましくは1,000塩基、より好ましくは2,000
塩基で十分であると考えられる。この技法を検証するためには、Vermaらの著書
「ヒト染色体:基本技術マニュアル(Human Chromosomes:A Manual of Basic Te
chniques)」(ペルガモン出版社、ニューヨーク、1988年)を参照のこと 。
【0154】 染色体マッピングのための試薬を個別に使用し、1個の染色体または染色体上
の一部位に印をつけるか、もしくは、試薬のパネルを用いて複数部位および/ま
たは複数の染色体に印をつけることができる。実際に遺伝子の非コード領域に対
応する物質がマッピングを目的とする場合に好ましい。コード配列は、遺伝子フ
ァミリーにおいて恐らく保存されており、その結果染色体マッピングの間に交差
ハイブリダイゼーションする機会が増大する。
【0155】 配列が正確な染色体位置にマッピングされると、染色体上の配列の物理的位置
を遺伝子地図データにより関連づけることができる(このようなデータは、例え
ばV. McKusickの著書、「ヒトのメンデル遺伝(Mendelian Inheritance in Man
)」、(オンライン上のジョンポプキンス大学のWelch Medical Libraryから入
手可)を参照。その後同一染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患の間の関
係を、連鎖解析により同定することができ(物理的に隣接する遺伝子は結びつい
て遺伝する)、これについてはEgelandらの論文(Nature, 325:783〜787(1987)
)に記されている。
【0156】 さらにT110遺伝子に関連した疾患に罹患した個体および罹患していない個体と
の間のDNA配列の差異を決定することができる。変異が罹患した個体の一部また
は全部において認められるが罹患していない個体では全く認められない場合には
、この変異が恐らくその特定疾患の起因物質であると考えられる。罹患した個体
および罹患していない個体の比較は一般に、最初に染色体の構造的変動、例えば
染色体塗沫標本から認めることが可能な、もしくは、そのDNA配列を基にしたPCR
によって検出可能な欠失または転座などを探すことに関連している。最終的には
、いくつかの個体に由来する遺伝子の完全な配列決定が行われ、変異の存在を確
認し、かつ多型から変異を識別することができる。
【0157】2. 組織タイピング 本発明のT110配列を用いて、微小生体試料から個体を同定することもできる。
例えば米軍では、兵士の識別に制限断片長多型(RFLP)の使用を考慮している。こ
の技術では、個体のゲノムDNAを、1種以上の制限酵素で消化し、サザンブロッ
ト法においてプローブとし、識別のための独自のバンドを得る。この方法は、紛
失、交換、または盗難の可能性があり明確な識別を行うことが困難である現行法
の「ドッグタッグ」のような欠点がない。本発明の配列は、RFLPの追加DNAマー
カーとして有用である(米国特許第5,272,057号に開示されている)。
【0158】 さらに、本発明の配列を用いて、個体ゲノムの選択された部分の実際の塩基毎
のDNA配列を決定する代替技術を提供することができる。従って、本明細書に記
したT110配列を用いて、この配列の5'および3'末端から2種のPCRプライマーを
調製することができる。その後これらのプライマーを用いて、個体DNAを増幅し
、引き続きそれを配列決定することができる。
【0159】 各個体は対立遺伝子の相違に起因するようなDNA配列の独自のセットを有する
ので、前述の方法で作成された個体に由来する対応するDNA配列のパネルは、独
自の個体の識別を提供することができる。本発明の配列を用し、個体および組織
から、このような識別配列を得ることができる。本発明のT110配列は、ヒトゲノ
ムの一部を独自に示している。対立遺伝子の変動は、これらの配列のコード領域
にはある程度生じ、非コード領域により多く生じる。ヒト個体間の対立遺伝子の
変動は、500塩基当たりおよそ1個の頻度で生じると推定される。本明細書に記
した各配列は、識別を目的として、個体由来のDNAを比較するための標準として
かなり使用される。非コード領域により多くの多型が生じるので、個体の識別に
必要な配列は非常に少ない。配列番号:1の非コード配列は、各々が100塩基の
増殖された非コード配列を生じるおそらく10〜1,000個のプライマーのパネルに
より、明確な個体の同定を容易に提供することができる。配列番号:3のような
推定コード配列が使用される場合、明確な個体識別にとってより適切な数のプラ
イマーは、500〜2,000であると考えられる。
【0160】 本明細書に記したT110配列由来の試薬のパネルを用いて個体に関する独自の識
別用データベースを作成する場合、個体由来の組織を同定するために、これらの
同じ物質を後に使用することができる。独自の識別用データベースを使用し、生
死にかかわらず個体の明確な識別を、極めて少量の組織試料により行うことがで
きる。
【0161】3. 法医生物学における部分的T110配列の使用 DNAベースの識別法は、法医生物学においても使用することができる。法医生
物学とは、例えば犯罪加害者の明確な識別の手段として、犯罪現場で見つかった
生物学的証拠の遺伝子タイピングを使用する科学的分野である。このような識別
をするために、PCR法が用いられ、例えば犯罪現場で見つかった毛髪もしくは皮
膚などの組織、または血液、唾液もしくは精液などの体液のような非常に小さい
生体試料から得られたDNAが増幅される。その後増幅された配列は、標準と比較
され、それにより生体試料の起源の識別が可能になる。
【0162】 本発明の配列を用いて、ヒトゲノムの特定の座を標的化したポリヌクレオチド
試薬、例えばPCRプライマーなどを提供することができ、これは、例えば別の「
識別マーカー」(すなわち、特定の個体に特有の別のDNA配列)を提供すること
によって、DNAベースの法医学的識別の信頼性を増すことができる。前述のよう
に、実際の塩基配列情報を、制限酵素が作出した断片によって形成されたパター
ンに対する正確な代用物として識別に用いることができる。配列番号:1の非コ
ード領域を標的化した配列は、より多数の多型が非コード領域に生じるので、こ
のような使用に特に適しており、この方法を用いることで個体識別がより簡便と
なる。ポリヌクレオチド物質の例は、T110配列もしくはそれらの一部を含み、例
えば少なくとも20〜30塩基長を有する配列番号:1または配列番号:5の非コー
ド領域に由来する断片を含む。
【0163】 さらに本明細書に記したT110配列を使用して、例えば脳組織のような特定の組
織を識別するためのインサイチューハイブリダイゼーション法などにおいて使用
することができるようなポリヌクレオチド試薬、例えば標識または非標識のプロ
ーブなどを提供することができる。これは、法医病理学者が出自が明らかでない
組織を提示した場合に非常に有用である。このようなT110プローブのパネルを用
いて、種別および/または臓器型別に組織を同定することができる。
【0164】 同様の方法で、これらの物質、例えばT110プライマーもしくはプローブなどは
、組織培養物の夾雑物に関するスクリーニングに使用することができる(すなわ
ち培養物中の異なる細胞種の混在のスクリーニング)。
【0165】 C. 予測医学 本発明はさらに、予後判定(予測)を目的とした、診断解析、予後判定解析、
薬理遺伝学(pharmacogenomics)、および臨床試験のモニタリングを使用し、これ
により個体に予防的治療を行う、予測医学の分野に関する。従って本発明のある
局面は、生体試料(例えば血液、血清、細胞、組織)に関して、T110タンパク質
および/または核酸の発現、さらにはT110活性を測定し、これにより異常なT110
の発現または活性に関連した疾患または障害に個体が罹患しているかどうか、も
しくは、障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するような診断解析に関す
る。本発明はさらに、個体にT110タンパク質、核酸の発現または活性に関連した
障害を発症するリスクがあるかどうかを決定するための診断(または予測的)解
析法を提供する。例えば、T110遺伝子の変異は、生体試料中で解析することがで
きる。このような解析は、予後判定または予測を目的として使用することができ
、これによりT110タンパク質、核酸の発現または活性に関連していることを特徴
とする障害が症状発現する前に個体の予防的治療を行うことができる。
【0166】 本発明の別の局面は、個体においてT110タンパク質、核酸の発現もしくはT110
の活性を測定し、これによりそのような個体に適した治療的物質または予防的物
質を選択する方法を提供する(本明細書においては「薬理遺伝学(pharmacogeno
mics)」と称する)。薬理遺伝学は、個体の遺伝子型(例えば個体の特定の物質
に対する応答能力を決定するために試験した個体の遺伝子型)を基にした個体の
治療的または予防的処置のための物質(例えば薬剤)の選択を可能にする。
【0167】 さらに別の本発明の局面は、臨床試験におけるT110の発現または活性に対する
物質(例えば薬剤または他の化合物)の影響をモニタリングすることに関する。
【0168】 これらおよび他の物質は、下記のセクションでより詳細に説明する。
【0169】 1. 診断解析 生体試料中のT110の有無を検出する方法の例は、被験者から生体試料を得て、
この生体試料をT110タンパク質またはT110タンパク質をコードしている核酸(例
えばmRNA、ゲノムDNA)を検出することが可能な化合物または物質と接触させ、
その結果T110の存在を生体試料中で検出することに関する。T110 mRNAまたはゲ
ノムDNAを検出するための物質は、T110 mRNAまたはゲノムDNAとハイブリダイゼ
ーション可能な標識された核酸プローブであった。この核酸プローブは、例えば
完全な長さのT110核酸、例えば配列番号:1、3、5、もしくは7、または、その一
部、例えば長さが少なくとも15、30、50、100、250または500個のヌクレオチド
であり、かつストリンジェントな条件下でT110 mRNAまたはゲノムDNAに特異的に
ハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断解
析における使用に適した他のプローブを本明細書に記す。
【0170】 T110タンパク質の検出のための好ましい試薬は、T110タンパク質に結合するこ
とが可能な抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体であることができる。
抗体は、ポリクローナル抗体、またはより好ましくはモノクローナル抗体であり
得る。完全抗体、またはその断片(例えばFabまたはF(ab')2)を使用することが
できる。プローブまたは抗体に関する「標識した」という用語は、プローブまた
は抗体を検出可能な物質へ結合(すなわち、物理的連結)することによりプロー
ブまたは抗体を直接標識することに加え、直接標識された別の物質との反応性に
よりプローブまたは抗体を間接的に標識することを包含することが意図されてい
る。間接的標識の例は、蛍光標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出、およ
び蛍光標識したストレプトアビジンで検出できるビオチンによるDNAプローブの
末端標識を含む。「生体試料」という用語は、被験者から単離された組織、細胞
および生物学的液体に加え、被験者に存在する組織、細胞および液体を含むこと
が意図されている。すなわち、本発明の検出法は、生体試料中のT110 mRNA、タ
ンパク質、またはゲノムDNAをインビトロに加えインビボにおいても検出するた
めに使用することができる。例えば、T110 mRNAのインビトロ検出法は、ノーザ
ンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションを含む
。T110タンパク質のインビトロ検出法は、固相酵素免疫検定法(ELISA)、ウェス
タンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法を含む。T110ゲノムDNAのインビ
トロ検出法は、サザンハイブリダイゼーションを含む。さらにT110タンパク質の
インビボ検出法は、被験者への標識した抗T110抗体の導入を含む。例えば、この
抗体は、被験者におけるその存在または位置を標準の造影法で検出することがで
きるような放射性マーカーで標識することができる。
【0171】 ある態様において、生体試料は、被験者に由来するタンパク質分子を含む。あ
るいは生体試料は、被験者に由来するmRNA分子または被験者に由来するゲノムDN
A分子を含む。好ましい生体試料は、被験者から常法により単離された末梢血白
血球試料である。
【0172】 別の態様において、この方法はさらに、対照被験者から対照生体試料を得るこ
と、対照試料をT110タンパク質、mRNAまたはゲノムDNAを検出可能な化合物また
は物質と接触し、該生体試料中のT110タンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在
を検出し、かつ対照試料中のT110タンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在を、
被験試料中のT110タンパク質、mRNAまたはゲノムDNAの存在と比較することを含
む。
【0173】 本発明はさらに、生体試料(被験試料)中のT110の存在を検出するためのキッ
トを包含している。このようなキットは、被験者が、T110の異常な発現に関連し
た障害(例えば免疫障害)を罹患しているかどうか、もしくは、発症するリスク
が増大しているかどうかを決定するために使用することができる。例えばこのキ
ットは、生体試料中のT110タンパク質またはmRNAを検出することが可能な標識さ
れた化合物または物質、ならびに試料中のT110の量を測定する手段(例えば、抗
T110抗体、もしくは、T110をコードするDNAに結合するオリゴヌクレオチドプロ
ーブ、例えば配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配列番号:7)で
構成することができる。キットはさらに、T110タンパク質またはmRNAの量が正常
値以上または以下である場合に、被験者がT110の異常な発現に関連した障害に罹
患しているか、もしくは、発症するリスクがあるかどうかを観察するための説明
書を含んでも良い。
【0174】 抗体ベースのキットは、例えば以下を含み得る:(1)T110タンパク質に結合す
る一次抗体(例えば、固相支持体に付着したもの);および、選択的に、(2)T11
0タンパク質もしくは一次抗体に結合し、かつ検出可能な物質に複合される異な
る二次抗体。
【0175】 オリゴヌクレオチドベースのキットは、例えば以下を含み得る:(1)オリゴヌ
クレオチド、例えば検出できるように標識されたオリゴヌクレオチドであって、
これはT110核酸配列とハイブリダイズするもの、または(2)T110核酸分子の増幅
に有用なプライマー対。
【0176】 このキットはさらに、例えば緩衝剤、保存剤、またはタンパク質安定化剤を含
んでも良い。さらにこのキットは、検出可能な物質の検出に必要な成分(例えば
酵素または基質)を含んでも良い。このキットはさらに、アッセイしかつ含まれ
た被験試料と比較することができる一種の対照試料または一連の対照試料を含ん
でも良い。キットの各成分は、通常個別の容器に封入されており、様々な容器の
全てを被験者がT110の異常な発現に関連した障害に罹患しているか、もしくは、
発症するリスクがあるかどうかを観察するための説明書と共に様々な容器の全て
を単一のパッケージ内に収めている。
【0177】 2. 予後判定解析 本明細書に記した方法はさらに、異常なT110の発現または活性に関連した疾患
または障害を発症しているまたはそのリスクがある被験者を同定するための診断
または予後判定解析として使用することができる。例えば本明細書に記した診断
前解析または診断後解析のようなアッセイ法を、例えば細胞増殖障害のようなT1
10タンパク質、核酸の発現または活性に関連した障害を発症しているか、または
そのリスクがある被験者を同定するために使用することができる。あるいは、診
断解析を、このような疾患または障害を発症しているまたはそのリスクがある被
験者を同定するために使用することができる。従って、本発明は、被験試料を被
験者から得て、かつT110タンパク質または核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検
出する方法であって、ここでT110タンパク質または核酸の存在が、被験者が異常
なT110の発現または活性に関連した疾患または障害を発症しているまたはそのリ
スクがあるかどうかの診断となるような方法を提供する。本明細書で用いられる
「被験試料」とは、問題の被験者から得られた生体試料を意味する。例えば被験
試料は、生物学的液体(例えば血清)、細胞試料、または組織である。
【0178】 さらに本明細書に記した予後判定解析は、異常なT110の発現または活性に関連
した疾患または障害を治療するために、被験者に、物質(例えば、アゴニスト、
アンタゴニスト、ペプチド擬似体、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、また
は他の薬剤の候補)を投与することができるかどうかを決定するために使用する
ことができる。例えば、このような方法は、被験者が、特定の物質または物質の
クラス(例えば、T110活性を減じる型の物質)によって有効に治療され得るかど
うかを決定するために使用することができる。従って、本発明は、被験試料が得
られ、かつT110タンパク質または核酸が検出された場合に、被験者が、異常なT1
10の発現または活性に関連した障害に関する物質により効果的に治療されるかど
うかを決定する方法を提供する(例えばT110タンパク質または核酸の存在は、異
常なT110の発現または活性に関連した障害を治療するための物質を投与すること
ができる被験者について診断される)。
【0179】 本発明の方法はさらに、T110遺伝子の遺伝的病変または変異を検出し、これに
より病変した遺伝子を有する被験者が、異常なT110発現または活性、例えば異常
な細胞増殖および/または分化を特徴とする障害のリスクを有するかどうかを決
定するために使用することができる。好ましい態様において、本方法は、被験者
由来の細胞試料中の、T110タンパク質をコードしている遺伝子の完全性に影響を
及ぼす変更、またはT110遺伝子の誤発現の少なくともひとつを特徴とする遺伝的
病変または突然変異の有無を検出することを含む。例えば、このような遺伝的病
変は、以下の少なくともひとつの存在を確認することで検出することができる:
1)T110遺伝子由来の1個以上のヌクレオチドの欠失;2)1個以上のヌクレオチド
のT110遺伝子への付加;3)T110遺伝子の1個以上のヌクレオチドの置換;4)T110
遺伝子の染色体再編成;5)T110遺伝子のmRNAの転写レベルでの変更;6)T110遺伝
子の異常な修飾、例えばそのゲノムDNAのメチル化パターンの異常な修飾;7)T11
0遺伝子のmRNAの転写の非野生型スプライシングパターンの存在;8)非野生型T11
0タンパク質のレベル;9)T110遺伝子の対立遺伝子の喪失;10)T110タンパク質の
不適当な転写後修飾;ならびに11)T110遺伝子の増幅。本明細書に記したように
、T110遺伝子の病変の検出に使用することができる当技術分野において公知の非
常に多くのアッセイ法がある。
【0180】 ある態様において、前述の病変の検出は、アンカーPCRまたはRACE PCRのよう
な、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば米国特許第4,683,195号および第4,683,
202号を参照のこと)、あるいは、ライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Land
egranら、Science, 241:1077〜1080(1988);およびNakazawaら、Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA, 91:360〜364(1994)を参照のこと)におけるプローブ/プライマ
ーの使用に関連しており、後者は特に、T110遺伝子における点突然変異を検出す
るために有用である(例えば、Abravayaら、Nucleic Acids Res., 23:675〜682(
1995)を参照のこと)。この方法は、患者から細胞試料を採取する段階、試料細
胞から核酸(例えばゲノム、mRNAまたは両方)を単離する段階、この核酸試料を
T110遺伝子と特異的にハイブリダイズする1種以上のプライマーとT110遺伝子(
存在する場合)のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で接
触させる段階、ならびに増幅産物の有無を検出するか、もしくは、増幅産物の大
きさを検出しかつ対照試料の長さと比較する段階を含んでいる。PCRおよび/ま
たはLCRは、本明細書に記した変異の検出のために使用されるいずれかの技法と
組合わせて、主要増幅工程として使用することが望ましいことは予想される。
【0181】 別の増幅法は、自己維持された配列の複製(Guatelliら、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 87:1874〜1878(1990))、転写増幅システム(Kwohら、Proc. Nati. Ac
ad. Sci. USA, 86:1173〜1177(1989))、Q-βレプリカーゼ(Lizardiら、Bio/Te
chnology, 6:1197(1988))、または他の核酸増幅法を含み、その後、当業者には
周知の技術を用いて、増幅された分子を検出する。これらの検出スキームは、核
酸分子が非常に少ない数存在する場合の核酸分子の検出に特に有用である。
【0182】 別の態様において、試料細胞由来のT110遺伝子の変異は、制限酵素切断パター
ンの変化によって同定することができる。例えば、試料および対照DNAを単離し
、増幅し(任意)、1種以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、かつ断片長サ
イズを、ゲル電気泳動により決定し比較する。試料および対照DNA間の断片長サ
イズの差異は、試料DNAにおける変異を示している。さらに、配列に特異的なリ
ボザイムを使うと(例えば米国特許第5,498,531号を参照のこと)、リボザイム
切断部位の出現または消失により、特異的変異の存在のスコアとして使用するこ
とができる。
【0183】 別の態様において、T110遺伝子変異を、試料および対照核酸、例えばDNAまた
はRNAの、数百から数千のオリゴヌクレオチドプローブを含む高密度アレイ(arra
y)へのハイブリダイゼーションにより同定することができる(Croninら、Human
Mutation, 7:244〜255(1996);Kozalら、Nature Medicine, 2:753〜759(1996))
。例えば、前記Croninらの論文に記載されたように、T110の遺伝子変異は、光に
より生成された(light-generated)DNAプローブを含む2次元アレイにおいて同定
することができる。簡単に述べると、プローブの第一のハイブリダイゼーション
アレイを用いて、試料および対照中のDNAの長い伸張をスキャニングし、順番が
重複するプローブの線状アレイを作成することによってこれらの配列間の塩基の
変化を同定することができる。この工程は、点突然変異の同定を可能にする。こ
の工程には、第二のハイブリダイゼーションアレイが続き、これは、検出された
全ての変種または変異に対し相補的なより小さい特定のプローブアレイを用いる
ことにより、特異的変異の特徴づけを可能にする。各変異アレイは、並行のプロ
ーブセットで構成され、一方は野生型遺伝子に対し相補的であり、他方は変異体
遺伝子に対して相補的である。
【0184】 さらに別の態様において、当技術分野において公知の様々な配列決定反応のい
ずれかを用いて、T110遺伝子を直接配列決定し、かつ試料のT110配列を、対応す
る野生型(対照)配列と比較し、変異を検出することができる。配列決定反応の
例は、MaxamおよびGilbertが開発した技術(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:5
60(1977))またはSangerが開発した技術(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74:546
2(1977))を基にしたものを含む。診断解析を行う場合に、様々な自動配列決定
法のいずれか(Bio/Techniques, 19:448(1995))を用い、これはを質量スペクト
ルによる配列決定(例えばPCT国際公開公報第94/16101号;Cohenら、Adv. Chrom
atogr., 36:127〜162(1996);およびGriffinら、Appl. Biochem. Biotechnol.,
38:147〜159(1993))を含むことも意図されている。
【0185】 T110遺伝子中の変異を検出する他の方法は、切断物質からの保護を用いて、RN
A/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖においてミスマッチの塩基を検出する方法を含
む(Myersら、Science, 230:1242(1985))。一般に、「ミスマッチ切断」法によ
って、野生型T110配列を含む(標識された)RNAまたはDNAの、組織試料から得ら
れた可能性のある変異体RNAまたはDNAとのハイブリダイゼーションによって作成
されたヘテロ二重鎖が提供される。この二本鎖の二重鎖(double-stranded duple
xes)は、試料鎖および対照鎖の間の塩基対合のミスマッチのために存在すると思
われるこの二重鎖の一本鎖領域を切断する物質で処理される。RNA/DNA二重鎖をR
Naseで処理し、ミスマッチ領域を消化し、およびDNA/DNAハイブリッドをS1ヌク
レアーゼで処理し、ミスマッチ領域を消化することができる。別の態様において
、DNA/DNAまたはRNA/DNA二重鎖のいずれかを、ヒドロキシルアミンまたは四酸化
オスミニウムで処理し、かつピペリジンで処理し、ミスマッチ領域を消化する。
ミスマッチ領域の消化後、得られる材料を、変性ポリアクリルアミドゲル上でサ
イズ別に分離し、突然変異部位を決定する。これについては例えばCottonら、Pr
oc. Natl Acad Sci USA, 85:4397(1988);Saleebaら、Methods Enzymol., 217:2
86〜295(1992)を参照のこと。好ましい態様において、対照DNAまたはRNAを検出
のために標識することができる。
【0186】 さらに別の態様において、ミスマッチ切断反応は、細胞試料から得られたT110
cDNAにおける点突然変異の検出およびマッピングのための限定されたシステム
において、二本鎖DNA中でミスマッチした塩基対合を認識する1種以上のタンパ
ク質(いわゆる、「DNAミスマッチ修復」酵素)を使用する。例えば、大腸菌のm
utY酵素は、G/Aミスマッチ部位でAを切断し、かつHeLa細胞由来のチミジンDNAグ
リコシル化は、G/Tミスマッチ部位でTを切断する(Hsuら、Carcinogenesis, 15:
1657〜1662(1994))。実施態様に従って、例えば野生型T110配列のような、T110
配列を基にしたプローブは、被験細胞由来のcDNAまたは他のDNA産物にハイブリ
ダイゼーションされる。この二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、必要な
らばその切断産物を電気泳動プロトコールなどにより検出することができる。こ
れについては例えば、米国特許第5,459,039号を参照のこと。
【0187】 別の態様において、電気泳動移動度の変化によって、T110遺伝子の変異を同定
することができる。例えば、一本鎖の立体配座多型(SSCP)を用いて、変異体と野
生型の核酸の間の電気泳動移動度の差異を検出することができる(Oritaら、Pro
c Natl. Acad. Sci USA, 86:2766(1989)、Cotton、Mutat. Res., 285:125〜144(
1993);Hayashi、Genet Anal Tech Appl, 9:73〜79(1992))を参照のこと。試料
および対照のT110核酸の一本鎖DNA断片は、変性し、かつ再生することができる
。一本鎖核酸の二次構造は、配列に応じて変動し、生じる電気泳動移動度の変更
は、1個の塩基の変化であっても検出することが可能である。このDNA断片は、
標識するか、または標識されたプローブで検出することができるる。このアッセ
イ感度は、(DNAよりもむしろ)RNAを使用することで増強され、この場合二次構
造は、配列の変化に対してより敏感になる。好ましい態様において、対象の方法
は、電気泳動移動度の変化を基に二本鎖ヘテロ二重鎖分子を分離するために、ヘ
テロ二重鎖の分析を使用する(Keenら、Trends Genet, 7:5(1991))。
【0188】 さらに別の態様において、変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲル中
の変異体または野生型の断片の移動は、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を用いてア
ッセイされる(Myersら、Nature, 313:495(1985))。分析法としてDGGEを使用す
る場合、PCRによる高融解の(high-melting)GCが豊富なDNAのおよそ40bpのGCクラ
ンプを添加することにではDNAが完全に変性されないことを保証するように、DNA
は修飾されると考えられる。さらなる態様において、対照および試料DNAの移動
度の差異を確認するために、変性勾配の代わりに温度勾配が使用される(Rosenb
aumおよびReissner、Biophys Chem, 265:12753(1987))。
【0189】 点突然変異を検出する別の技術の例としては、選択的オリゴヌクレオチドハイ
ブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸張を含むが、これ
らに限定されるものではない。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、公知
の変異を中央に配置し、その後完全な一致が認められた場合にのみハイブリダイ
ゼーションを可能にするような条件下で標的DNAとハイブリダイゼーションする
ことで、調製することができる(Saikiら、Nature, 324:163(1986);Saikiら、P
roc. Natl Acad. Sci USA, 86:6230(1989))。このような対立遺伝子に特異的な
オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション膜に結合
される場合はPCRで増幅された標的DNAまたは多くの様々な変異にハイブリダイズ
され、かつ標識された標的DNAでハイブリダイズされる。
【0190】 あるいは、選択的PCR増幅によって決まる対立遺伝子に特異的な増幅技法を、
本発明と共に使用することができる。特異的増幅のためにプライマーとして使用
されるオリゴヌクレオチドは、分子の中央に問題の変異を保持するか(その結果
増幅は、ディファレンシャルハイブリダイゼーションによって決まる)(Gibbs
ら、Nucleic acids Res., 17:2437〜2448(1989))、または適当な条件下でミスマ
ッチが、ポリメラーゼ伸張を妨害、または低下するような一つのプライマーの3'
最末端(extreme 3' end)に問題の変異を保持することができる(Prossner、Tibt
ech, 11:238(1993))。加えて、この変異領域に新規制限酵素部位を導入し、切
断に基づき検出ができるようにすることが望ましい(Gaspariniら、Mol. Cell P
robes, 6:1(1992))。特定の態様において、増幅は、増幅用Taqリガーゼを用い
て行うことができると予測される(Barany、Proc. Natl. Acad. Sci USA, 88:18
9(1991))。このような場合、ライゲーションは、5'側配列の3'末端で完全に一
致する場合にのみ生じ、増幅の有無を調べることによって特定の部位での公知の
変異の存在の検出が可能となる。
【0191】 本明細書に記した方法は、例えば本明細書で説明したプローブ核酸または抗体
試薬を少なくとも1種含み、例えばT110遺伝子に関する疾患または疾病の症状を
示すかまたは家族歴を有するような患者を診断するために臨床の環境において簡
便に使用することができるような、あらかじめパッケージングされた診断キット
を用いて行うことができる。
【0192】 さらに、T110が発現されているあらゆる細胞型または組織、好ましくは末梢血
白血球を、本明細書に記した予後判定解析において使用することができる。
【0193】 3. 薬理遺伝学 本明細書に記したスクリーニング解析によって同定されるような、T110活性(
例えば、T110遺伝子発現)に対する刺激または阻害の作用を有する物質、または
モジュレータは、異常なT110活性に関連した障害(例えば増殖障害)を(予防的
または治療的に)処置するために個体に投与することができる。このような治療
と組合わせて、個体の薬理遺伝学(すなわち、個体の遺伝子型と個体の外因性化
合物または薬剤に対する反応の間の関係の研究)が考察されている。治療薬の代
謝における差異は、薬学的活性のある薬剤の用量と血中濃度の関係の変化によっ
て、重度の毒性または治療失敗につながり得る。従って、個体の薬理遺伝学によ
り、個体の遺伝子型の考察を基にした予防的または治療的処置に関する有効物質
(例えば薬剤)の選択が可能になる。このような薬理遺伝学はさらに、適切な用
量および治療法の決定に使用することができる。従って、個体におけるT110タン
パク質の活性、T110核酸の発現、またはT110遺伝子の変異含量を決定することが
でき、これにより、個体の治療的または予防的処置のための適当な物質が選択さ
れる。
【0194】 薬理遺伝学は、作用を受けた個体における変更された薬剤の生体内動態および
異常な作用に起因した、薬剤に対する反応の臨床的に重大な遺伝的変動に対処す
るものである。これについては例えば、Linder、Clin. Chem., 43(2):254〜266(
1997)を参照のこと。一般に、2種類の薬理遺伝学的条件を区別することができ
る。生体に対し薬剤が作用する方法を変更する単一の因子として伝達される遺伝
的条件を「変更された薬剤作用」条件として呼ぶ。生体が薬剤に作用する方法を
変更する単一の因子として伝達される遺伝的条件を「変更された薬剤代謝」条件
とよぶ。これらの薬理遺伝学的条件は、稀な欠損または多型のいずれかとして生
じることができる。例えば、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PD
)は、主要な臨床合併症が酸化剤(抗マラリヤ薬、スルホンアミド、鎮痛薬、ニ
トロフラン)摂取および豆類(fava beans)の摂食後の溶血であるような、よくあ
る遺伝される酵素病である。
【0195】 例証的な態様において、薬剤代謝酵素の活性は、薬剤作用の強度および持続期
間の主要決定要素である。薬剤代謝酵素(例えばN-アセチルトランスフェラーゼ
2(NAT 2)ならびにシトクロムP450酵素であるCYP2DGおよびCYP2Cl9)の遺伝的多
型の発見は、一部の患者では、薬剤の標準の安全な用量を摂取後に、期待される
薬剤作用を得ることができないか、もしくは、過大な薬剤作用および重篤な毒性
を示す理由を説明している。これらの多型は、集団において、過剰な代謝体(met
abolizer)(EM)および貧弱な代謝体(PM)の2種の表現型で示される。PMの有病率
は様々な集団間において異なる。例えばCYP2D6をコードしている遺伝子は高い多
型性があり、およびいくつかの変異がPMにおいて同定されており、それらは全て
機能性CYP2D6の欠損につながっている。CYP2D6およびCYP2Cl9の貧弱な代謝体は
、標準用量で摂取された場合に過剰な薬物反応および副作用を経験することが極
めて多い。代謝物が治療活性のある部分であるならば、PMは治療的反応を示さず
、これはそのCYP2D6が生成した代謝物モルヒネによって媒介されたコデインの鎮
痛作用で示される。別の過剰な代謝体は、標準用量では反応しないようないわゆ
る超即効型代謝体(ultra-rapid metabolizers)である。最近になって、超即効型
代謝の分子的基礎が、CYP2D6の遺伝子増幅に起因するものであることが確定され
た。
【0196】 従って、個体においてT110タンパク質の活性、T110核酸の発現、またはT110遺
伝子の変異含量を決定し、これによって、個体の治療的または予防的処置に適し
た薬剤を選択することができる。加えて遺伝薬理学的研究は、個体の薬剤反応性
の表現型を確定するために、薬剤代謝酵素をコードしている多型対立遺伝子の遺
伝子型決定を適用する際に用いることができる。本明細書において例証したスク
リーニング解析の一つで同定されたモジュレータのようなT110モジュレータで被
験者を治療する場合に、この知識が用量決定または薬剤選択に適用されるならば
、有害反応または治療の失敗を避けることができ、結果的に治療的または予防的
効能を増強することができる。
【0197】 4. 臨床試験時の作用モニタリング T110の発現または活性(例えば異常な細胞の増殖および/または分化を調節す
る能力)に対する物質(例えば薬剤、化合物)の影響のモニタリングは、基本的
な薬剤スクリーニングのみではなく、臨床試験においても適用することができる
。例えば、本明細書に記したようなスクリーニング解析によって決定された物質
が、T110の遺伝子発現を増大し、タンパク質レベルを増大し、またはT110の活性
をアップレギュレーションする有効性は、T110の遺伝子発現の減少、タンパク質
レベルの減少、またはT110の活性のダウンレギュレーションを示す被験者の臨床
試験でモニタリングすることができる。あるいは、スクリーニング解析によって
決定された物質が、T110の遺伝子発現を減少し、タンパク質レベルを減少し、ま
たはT110の活性をダウンレギュレーションする有効性も、T110の遺伝子発現の増
大、タンパク質レベルの増大、またはT110の活性のアップレギュレーションを示
す被験者の臨床試験でモニタリングすることができる。このような臨床試験にお
いて、T110の、ならびに好ましくは細胞増殖性疾患などに関連している他の遺伝
子の発現または活性を、特定の細胞の免疫応答の「読み取り値(read out)」また
はマーカーとして使用することができる。
【0198】 例えば、 限定を意図しない例として挙げる、T110活性(例えば本明細書に記
したスクリーニング解析により同定される)をモジュレートする物質(例えば化
合物、薬剤または小分子)による処理により、細胞でモジュレートされるT110を
含む遺伝子を同定することができる。従って、臨床試験などにおいて細胞増殖性
疾患に対する物質の作用を研究するために、細胞を単離し、RNAを調製し、かつT
110ならびに該疾患に関連した他の遺伝子の発現レベルを分析することができる
。遺伝子発現のレベル(すなわち遺伝子発現パターン)は、本明細書に記したノ
ーザンブロット分析またはRT-PCRにより、あるいは、産生されたタンパク質量を
測定すること、または本明細書に記された方法のひとつにより、またはT110また
は他の遺伝子の活性のレベルを測定することにより、定量することができる。こ
の方法では、遺伝子発現パターンは、マーカー、物質に対する細胞の生理的反応
の指標として利用することができる。従って、この反応状態は、個体の該物質に
よる治療の前、および治療の様々な時点で、決定することができる。
【0199】 好ましい態様において、本発明は、物質(例えば、アゴニスト、アンタゴニス
ト、ペプチド擬似体、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または本明細書に
記したスクリーニング解析によって同定された他の薬剤候補)による被験者の治
療の有効性をモニタリングする方法で、(i)物質を投与する前に被験者から投与
前試料を得る段階;(ii)投与前試料中のT110タンパク質、mRNA、またはゲノムDN
Aの発現レベルを検出する段階;(iii)被験者から1個以上の投与後試料を得る段
階;(iv)投与後試料中のT110タンパク質、mRNA、またはゲノムDNAの発現または
活性のレベルを検出する段階;(v)投与前試料中のT110タンパク質、mRNA、また
はゲノムDNAの発現または活性のレベルを、投与後試料中のT110タンパク質、mRN
A、またはゲノムDNAと比較する段階;および、(vi)これに従って被験者への物質
の投与を変更する段階を含む方法を提供する。例えば、T110の発現または活性を
、検出された時点よりもより高いレベルに増大するため、すなわち物質の有効性
を増大するためには、物質の投与を増量することが望ましい。あるいは、T110の
発現または活性を、検出された時点よりもより低いレベルに減少するため、すな
わち物質の有効性を減少するためには、物質の投与を減量することが望ましい。
【0200】 C.治療方法 本発明は、T110の異常な発現または活性に関連する疾患のリスクを有する(す
なわち疾患に罹患しやすい)被験者またはT110の異常な発現もしくは活性に関連
する疾患を有する被験者を治療する予防方法と治療方法とを提供する。そのよう
な障害は、新形成、不適合血管形成、または不適合な組織再生を含む。
【0201】 1.予防的方法 一つの局面において、本発明は、T110の発現またはT110の少なくとも一方の活
性を調節する薬剤を被験者に投与する段階によって、T110の異常な発現または活
性に関連する疾患または状態から被験者を保護する方法を提供する。T110の異常
な発現または活性によって生ずる疾患、またはT110の異常な発現もしくは活性に
起因する疾患のリスクのある被験者は、例えば、本明細書に記載する診断法また
は予後アッセイ法のいずれかまたは組み合わせによって同定することができる。
疾患または障害を予防する、または進行を遅延するようにT110の異常を特徴とす
る症状の発現の前に予防薬の投与を実施することができる。T110の異常の種類に
応じて、例えば、T110アゴニストはまたT110アンタゴニストを被験者を治療する
ために使用することができる。本明細書に記載するスクリーニング解析法に基づ
いて適当な薬剤を決定することができる。
【0202】 2. 治療的方法 本発明の別の局面は、治療目的のためにT110の発現または活性を調節する方法
に関する。本発明の調節方法は、細胞に関連するT110タンパク質活性の活動の1
つ以上を調節する薬剤を細胞に接触させる段階を含む。T110タンパク質の活性を
調節する薬剤は、核酸またはタンパク質、T110タンパク質の天然型同源リガンド
、T110ペプチド模倣物または他の小分子などの本明細書に記載する薬剤であって
もよい。一態様において、薬剤はT110タンパク質の生物活性の1つ以上を刺激す
る。このような刺激剤の例には活性T110タンパク質および細胞内に導入されてい
てT110をコードする核酸分子が含まれる。別の態様において、薬剤はT110タンパ
ク質の生物活性の1つ以上を阻害する。このような阻害剤の例にはアンチセンスT
110核酸分子および抗T110抗体が含まれる。このような調節方法はインビトロ(
例えば、細胞を薬剤と共に培養する段階によって)またはインビボ(例えば、薬
剤を被験者に投与する段階によって)において実施することができる。このよう
に、本発明は、T110タンパク質または核酸分子の異常な発現または活性によって
特徴づけられる疾患または障害に罹患した個体を治療する方法を提供する。一態
様において、本発明の方法は、薬剤(例えば、本明細書に記載するスクリーニン
グ解析法によって同定される薬剤)またはT110の発現または活性を調節する(例
えば、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーション)薬剤の組み合わ
せを投与する段階を含む。別の態様において、本発明の方法は、T110の発現また
は活性の低下または異常を補償する治療としてT110タンパク質または核酸分子を
投与する段階を含む。
【0203】 T110活性の刺激は、T110が異常にダウンレギュレーションされている場合およ
び/またはT110活性の増加が有用な影響を与える可能性がある場合には望ましい
。対照的に、T110活性の阻害は、T110が異常にアップレギュレーションされてい
る場合、および/またはT110活性の低下が有益な作用を有するような状態におい
て望ましい。
【0204】 本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、これらは限定するもの
と解釈されるべきではない。本出願全体にわたって引用されている全ての参考文
献、特許および公開されている特許出願の内容は参照として本明細書に組み入れ
られている。
【0205】 実施例 実施例1:ヒトT110 cDNAの単離及び特徴分析 神経栄養性因子(NGF)の非存在下で12時間培養したラットPC12細胞(PC6-3亜
系統)から単離したPolyA mRNAからcDNAライブラリーを調製した。ランダム5’
シーケンシングによりキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)fj遺伝子と
相同性を有する単一のクローンが産出された。このラット部分クローンを用い、
マウス及びヒト胎児脳cDNAライブラリーをスクリーニングした。これらのスクリ
ーニングにより、マウスT110及びヒトT110を含むクローンが産出された。
【0206】 ヒトT110クローンの塩基配列を完全に決定すると、新規な分泌タンパク質、即
ちヒトT110をコードすることが予想される1311塩基対のオープンリーディングフ
レームを有する約2.4kbのcDNAインサートが確認された。マウスT110クローンの
塩基配列を完全に決定すると、新規な分泌タンパク質、即ちマウスT110をコード
することが予想される1350塩基対のオープンリーディングフレームを有する約2.
1kbのcDNAインサートが確認された。マウス及びヒトタンパク質の配列は約85%同
一である。N末端に向かって、主な相違領域が見られる。
【0207】 図6はヒトT110の可能な別の翻訳産物のcDNA配列(配列番号:1)及び推定アミ
ノ酸配列(配列番号:4)を示す。オープンリーディングフレームはヌクレオチ
ド2から1411に渡る(配列番号:1)。
【0208】 図8はマウスT110の可能な別の翻訳産物のcDNA配列(配列番号:5)及び推定ア
ミノ酸配列(配列番号:8)を示す。オープンリーディングフレームは配列番号
:5のヌクレオチド1から1452に渡る。
【0209】 実施例2:T110 mRNAのヒト組織内での分布 ノーザンブロットハイブリダイゼーションを用いてT110の発現を分析した。ラ
ットの成体組織でノーザンブロット分析を行ったところ、脳及び腎臓で最も高い
発現が見られた。発現は心臓及び肺でも観察された。脾臓、肝臓、骨格筋、また
は精巣では、mRNAは検出されなかった。
【0210】 ヒトT110の組織分布を調べるために、ノーザンブロット分析用のプローブとし
てラットcDNAの部分配列を用いた。Prime-Itキット(Stratagene; La Jolla, CA
)を用いて提供者の指示に従い32P-dCTPでcDNAを放射性標識した。製造者の推奨
に従い、ExpressHybハイブリダイゼーション溶液(Clontech, Palo Alto, CA)
中でヒトmRNA(MINI及びMTNII: Clontech; Palo Alto, CA)を含むフィルターを
プローブし、高ストリンジェンシーで洗浄した。
【0211】 これらの研究により、ヒトT110は、約2.4キロベースペアの転写産物として脳
、心臓、胎盤、及び膵臓で高レベルに発現することが判明した。肝臓、骨格筋、
及び腎臓では低レベルの転写産物が見られた。肺では、転写産物は検出されなか
った。8〜9週目の胎児及び20週目の肝臓及び脾臓混合組織で、胚性の発現が見ら
れた。
【0212】 マウスの胚でインサイチュー発現アッセイ法を行ったところ、T110は神経系で
発現していることが判明した。成体マウスでインサイチュー発現アッセイ法を行
ったところ、T110は小脳及び嗅球を含む脳の離散した領域ならびに膵臓の非島細
胞で発現することが判明した。
【0213】 実施例3:T110タンパク質の特徴分析 上記のように単離したヒトT110 cDNA(図1、配列番号:1)は437アミノ酸タン
パク質(図1、配列番号:2)をコードする。図2にT110のハイドロパシープロッ
トを示す。このプロットにより、シグナル配列(アミノ酸1〜28)及び内部シグ
ナル配列として作用する膜貫通ドメイン(アミノ酸7〜30)を示す可能性のある
疎水性領域の存在が示される。
【0214】 図7は可能な別のヒトT110タンパク質(配列番号:4)の推定される構造的特徴
を示すプロットである。この図は推定アルファヘリックス領域(Garnier-Robson
及びChou-Fasman)、推定ベータシート領域(Garnier-Robson及びChou-Fasman)
、推定ターン領域(Garnier-Robson及びChou-Fasman)、推定コイル領域(Garni
er-Robson)、推定親水性、推定アルファ両親媒性領域(Eisenberg)、推定ベー
タ両親媒性領域(Eisenberg)、推定柔軟領域(Karplus-Schultz)、推定抗原性
指数(Jameson-Wolf)、及び表面確率(Emini)を示す。
【0215】 ヒトT110タンパク質及びキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)のfjタ
ンパク質の配列アラインメントを比較すると、図6に示すように、両タンパク質
は大きさが類似しており、膜貫通配列及び内部シングナル配列として単一の推定
疎水性領域を含み、二つの保存システイン残基対を有する大きな細胞外ドメイン
を含むことが判明した。ギャップを含むこのアラインメントでは、両タンパク質
は20.7%同一で、35.9%類似していた。
【0216】 成熟ヒトT110タンパク質は推定分子量48kDaを有し、翻訳後修飾を含まない。
【0217】 分泌アッセイを行うと、T110は分泌タンパク質であることが判明した。シグナ
ルペプチド(アミノ酸1〜28)又は内部シグナル配列として作用する膜貫通領域
(アミノ酸7〜30)を用いて分泌される可能性がある。
【0218】 実施例4:T110タンパク質の調製 様々な発現系で組換えT110を生産できる。例えば、成熟T110ペプチドを組換え
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として大腸菌内で発
現させ、融合タンパク質を単離し特徴分析できる。具体的には、上記のように、
T110をGSTに融合し、この融合タンパク質を大腸菌株PEB199内で発現させること
ができる。PEB199内でのGST-T110融合タンパク質の発現をIPTGで誘導できる。誘
導PEB199株の粗細菌溶菌液からアフィニティークロマトグラフィーを用いて組換
え融合タンパク質をグルタチオンビーズ上で精製できる。
【0219】等価物 当業者は、通常の実験から、本明細書に記された本発明の具体的な態様の多く
の等価物を認めるか、もしくは確かめることができると思われる。このような等
価物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はヒトT110のcDNA配列(配列番号:1)及び推定アミノ酸配列
(配列番号:2)を示す。配列番号:1のオープンリーディングフレームはヌクレ
オチド131からヌクレオチド1441に渡る(配列番号:3)。
【図2】 図2はヒトT110のハイドロパシープロットである。推定膜貫通ド
メイン(TM)、及び細胞外ドメイン(OUT)の位置、ならびにシステイン(cys;
縦棒)及び可能性のあるグリコシル化部位(Ngly;縦棒)の位置を示す。相対的
疎水性は破線上に、相対的親水性は破線下に示した。
【図3】 図3はマウスT110のcDNA配列(配列番号:5)及び推定アミノ酸配
列(配列番号:6)を示す。配列番号:5のオープンリーディングフレームはヌク
レオチド103からヌクレオチ1452に渡る(配列番号:7)。
【図4】 図4はマウスT110のハイドロパシープロットである。推定膜貫通
ドメイン(TM)、及び細胞外ドメイン(OUT)の位置、ならびにシステイン(cys
;縦棒)及び可能性のあるグリコシル化部位(Ngly;縦棒)の位置を示す。相対
的疎水性は破線上に、相対的親水性は破線下に示した。
【図5A】 図5AはラットT110(配列番号:9)のcDNAの部分配列を示す。
【図5B】 図5BはラットT110の推定アミノ酸配列(配列番号:10)を示す
。配列番号:10のコード領域は配列番号:9のヌクレオチド1からヌクレオチ507
に渡る。
【図6】 図6はヒトT110の可能な別の翻訳産物のcDNA配列(配列番号:1)
及び推定アミノ酸配列(配列番号:4)を示す。オープンリーディングフレーム
は配列番号:1のヌクレオチド2からヌクレオチ1411に渡る(配列番号:12)。
【図7】 図7はヒトT110の可能な別の翻訳産物のハイドロパシープロット
である。推定膜貫通ドメイン(TM)、及び細胞外ドメイン(OUT)の位置、なら
びにシステイン(cys;縦棒)及び可能性のあるグリコシル化部位(Ngly;縦棒
)の位置を示す。相対的疎水性は破線上に、相対的親水性は破線下に示した。
【図8】 図8はマウスT110の可能な別の翻訳産物のcDNA配列(配列番号:5
)及び推定アミノ酸配列(配列番号:8)を示す。オープンリーディングフレー
ムは配列番号:5のヌクレオチド1からヌクレオチ1452に渡る(配列番号:13)。
【図9】 図9はマウスT110の可能な別の翻訳産物のドロパシープロットで
ある。推定膜貫通ドメイン(TM)、及び細胞外ドメイン(OUT)の位置、ならび
にシステイン(cys;縦棒)及び可能性のあるグリコシル化部位(Ngly;縦棒)
の位置を示す。相対的疎水性は破線上に、相対的親水性は破線下に示した。
【図10】 図10はヒトT110タンパク質(配列番号:2)を有するキイロシ
ョウジョウバエ(D. melanogaster)のfjタンパク質(配列番号:11)の配列ア
ラインメントを示す。
【図11】 図11は可能な別のヒトT110タンパク質の推定される構造的特徴
を示すプロットである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12P 21/02 C12Q 1/68 A 4H045 C12Q 1/02 C12N 15/00 ZNAA 1/68 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,G H,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,Z W Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA43 BA63 DA02 GA11 4B063 QA01 QA18 QQ42 QQ53 QQ79 QQ96 QR32 QR48 QR55 QR62 QS33 QS34 QX02 4B064 AG20 AG27 CA19 CC24 DA01 DA13 4B065 AA87X AA93Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA44 CA46 4C057 BB05 MM04 MM09 4H045 AA10 AA11 BA10 CA40 DA50 EA20 EA50 FA74

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)配列番号:1の核酸配列またはその相補配列の少なくとも
    450個のヌクレオチド断片を含む核酸分子; b)配列番号:3の核酸配列またはその相補配列の少なくとも220個のヌクレオ
    チド断片を含む核酸分子; c)配列番号:5もしくは配列番号:7の核酸配列、またはその相補配列の少な
    くとも450個のヌクレオチド断片を含む核酸分子; d)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配
    列を含むポリペプチドをコードする核酸分子; e)配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
    をコードする核酸分子であって、該断片が配列番号:2または配列番号:4の少な
    くとも70個の連続するアミノ酸を含む核酸分子; f)配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
    をコードする核酸分子であって、該断片が配列番号:6または配列番号:8の少な
    くとも150個の連続するアミノ酸を含む核酸分子;および g)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配
    列を含むポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体ポリペプチドをコード
    する核酸分子であって、該核酸分子が配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5
    、または配列番号:7を含む核酸分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリ
    ダイズする核酸分子 からなる群より選択される単離核酸分子。
  2. 【請求項2】 a)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、もしくは配列
    番号:7、またはその相補配列のヌクレオチド配列を含む核酸分子;および b)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号:8のアミノ酸
    配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子、 からなる群より選択される、請求項1記載の単離核酸分子。
  3. 【請求項3】 ベクターの核酸配列をさらに含む、請求項1記載の核酸分子
  4. 【請求項4】 異種のポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請
    求項1記載の核酸分子。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  6. 【請求項6】 哺乳動物の宿主細胞である、請求項5記載の宿主細胞。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の核酸分子を含む、非ヒトの哺乳動物宿主細胞
  8. 【請求項8】 a)配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を含むポ
    リペプチドの断片であって、該断片が配列番号:2または配列番号:4の少なくと
    も70個の連続するアミノ酸を含む断片; b)配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
    であって、該断片が配列番号:6または配列番号:8の少なくとも150個の連続す
    るアミノ酸を含む断片;および c)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配
    列を含むポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体であって、該ポリペプ
    チドが配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配列番号:7を含む核酸
    分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコー
    ドされる対立遺伝子変異体 からなる群より選択される単離ポリペプチド。
  9. 【請求項9】 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6または配列番号:8
    のアミノ酸配列を含む、請求項8記載の単離ポリペプチド。
  10. 【請求項10】 異種のアミノ酸配列をさらに含む、請求項8記載のポリペ
    プチド。
  11. 【請求項11】 請求項8記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
  12. 【請求項12】 a)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列
    番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチド; b)配列番号:2または配列番号:4のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
    であって、該断片が配列番号:2または配列番号:4の少なくとも70個の連続する
    アミノ酸を含む断片; c)配列番号:6または配列番号:8のアミノ酸配列を含むポリペプチドの断片
    であって、該断片が配列番号:6または配列番号:8の少なくとも150個の連続す
    るアミノ酸を含む断片;および d)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番号:8のアミノ酸
    配列を含むポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子変異体であって、該ポリペ
    プチドが配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配列番号:7を含む核
    酸分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコ
    ードされる対立遺伝子変異体 からなる群より選択される、ポリペプチドを製造する方法であって、 核酸分子が発現される条件下で、請求項5記載の宿主細胞を培養する段階を含
    む方法。
  13. 【請求項13】 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、または配列番
    号:8のアミノ酸配列を含む、請求項8記載の単離ポリペプチド。
  14. 【請求項14】 a)請求項8記載のポリペプチドに選択的に結合する化合物
    と試料を接触させる段階;および b)該化合物が該試料に含まれるポリペプチドに結合するか否かを測定する段
    階 を含む、試料中の請求項8記載のポリペプチドの存在を検出する方法。
  15. 【請求項15】 ポリペプチドに結合する化合物が抗体である、請求項14記
    載の方法。
  16. 【請求項16】 請求項8記載のポリペプチドに選択的に結合する化合物お
    よびその使用説明書を含むキット。
  17. 【請求項17】 a)請求項1記載の核酸分子に選択的にハイブリダイズする
    核酸プローブまたはプライマーと試料を接触させる段階;および b)該核酸プローブまたはプライマーが該試料中の核酸分子に結合するか否か
    を測定する段階 を含む、試料中の請求項1記載の核酸分子の存在を検出する方法。
  18. 【請求項18】 試料がmRNA分子を含み、かつ核酸プローブと接触させる、
    請求項17記載の方法。
  19. 【請求項19】 請求項1記載の核酸分子に選択的にハイブリダイズする化
    合物およびその使用説明書を含むキット。
  20. 【請求項20】 a)請求項8記載のポリペプチド、または該ポリペプチドを
    発現する細胞を試験化合物と接触させる段階;および b)該ポリペプチドが該試験化合物に結合するか否かを測定する段階 を含む、請求項8記載のポリペプチドに結合する化合物を同定する方法。
  21. 【請求項21】 試験化合物とポリペプチドとの結合が、 a)試験化合物/ポリペプチド結合における直接的検出による結合の検出; b)競合的結合アッセイ法を用いる結合の検出; c)T110を介するシグナル伝達の測定法を用いる結合の検出 からなる群より選択される方法によって検出される、請求項20記載の方法。
  22. 【請求項22】 請求項8記載のポリペプチド、または該ポリペプチドを発
    現する細胞を、該ポリペプチドに結合する化合物と、該ポリペプチドの活性を調
    節するのに十分な濃度で接触させる段階を含む、請求項8記載のポリペプチドの
    活性を調節するための方法。
  23. 【請求項23】 a)請求項8記載のポリペプチドと試験化合物を接触させる
    段階;および b)該ポリペプチドの活性に対する試験化合物の効果を測定し、それによって
    該ポリペプチドの活性を調節する化合物を同定する段階 を含む、請求項8記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を同定する方法。
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