JP2002517738A - 糖尿病患者が糖尿病に伴う病状を経験するリスクの評価方法 - Google Patents

糖尿病患者が糖尿病に伴う病状を経験するリスクの評価方法

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Abstract

(57)【要約】 新たに発見された代謝経路のATP依存反応においてフルクトース−リジンのフルクトース−リジン−3−リン酸への酵素的変換を阻害する化合物のクラスを開示する。この経路の通常の機能により、フルクトース−リジン−3−リン酸(FL3P)は分解されて遊離リジン、無機リン酸および3−デオキシグルコソン(3DG)を形成し、後者は反応性タンパク質修飾剤である。3DGは3−デオキシフルクトース(3DF)への還元によって無毒化されるか、内在性タンパク質と反応して、糖尿病合併症の発生に寄与すると考えられている、後成的糖化最終産物修飾タンパク質(AGE−タンパク質)を形成する。また、かかる阻害剤を用いてAGE−タンパク質の形成を抑制し、これによって糖尿病合併症を減少させ、抑制し、遅延させる治療方法、ならびに合併症を発症する糖尿病患者のリスクの評価方法、およびフルクトース−リジン−含有食品の経口投与後の生物学的サンプル中の3DFに対する3DGの比率を測定することによる開示した阻害剤治療の有効性の決定方法も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 U.S.C. §202 (C)に従い、国立保険研究所の資金を用いて一部なされた本明細
書記載の発明において合衆国政府が一定の権利を有することをここに承認する(G
rand Nos. DK44050, DK50317およびDK50364)。
【0002】 技術分野 本発明は、糖尿病患者の治療用、特に糖尿病合併症およびその他の関連する病
因の疾患の発症の予防、抑制または遅延化用の治療薬およびその使用に関する。
より詳細には、本発明は、糖尿病合併症に至る生化学的機構における重要な段階
であると考えられているフルクトースリジン(FL)のフルクトース−リジン−
3−リン酸(FL3P)への酵素的変換を阻害する一連の酵素阻害剤に関する。
本発明はまた糖尿病合併症を経験する糖尿病患者のリスクの評価方法ならびに糖
尿病合併症の発症の予防、抑制または遅延化における治療処置の有効性の決定方
法にも関する。
【0003】 4つの特に重大な糖尿病の合併症、すなわち糖尿病性腎症または腎障害;網膜
の破壊により失明の原因となる糖尿病性網膜症;末梢神経機能の損失に関与する
糖尿病性神経症;および毛細血管の損傷による循環の不具合がある。網膜症と腎
症の両方はこの病状に関連する一般的な循環の不具合に包含されると考えられる
。最近、糖尿病の後期における微小血管の機能障害の役割の概要が開示された(T
ooke, Diabetes, 44: 721 (1995))。この開示によれば「糖尿病に伴う病状(diab
etes-associated pathologic conditions)」なる用語および同意語は、様々な周
知の腎症、神経症、網膜症、巨大血管障害(macroangiopathic)、およびその他の
糖尿病の合併症を包含することを意味する。
【0004】 糖尿病から生じる病状と加齢の結果生じる病状との間の類似性が詳細に報告さ
れている。複数の研究により、多くの糖尿病に伴う病状が臨床学的に通常加齢に
関連する病状に極めて似ていることが示されている。例えば、糖尿病患者におい
ては、血管および関節が早期に硬化し、肺の弾性および血管の容量が早い時期に
減少する。さらに、糖尿病患者においては、アテローム性動脈硬化、心筋梗塞お
よび卒中が、同年齢の非糖尿病個体よりも頻繁に生じる。また糖尿病患者は糖尿
病患者はより感染症にかかり易く、また高血圧である可能性がより高く、骨の損
失がより早く、骨関節症である可能性が高く、より若年でT細胞機能が損なわれ
る。
【0005】 糖尿病に伴う病状と加齢との間の類似性は明らかに共通の機構原理を示唆する
。糖尿病に伴う病状と加齢の双方についての共通の生化学的原理として様々な機
構が提唱されている。ヒト対象からのデータによってもっとも強く支持されてい
る仮説は非酵素的グリコシル化機構を前提とする。この仮説によれば、加齢プロ
セスと上記のような糖尿病に伴う病状は、少なくとも部分的に、メイラード反応
を介するグルコースおよびグルコース誘導代謝物によるタンパク質修飾と架橋に
よって引き起こされる(Monnierら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 583 (198
4)およびLeeら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 123: 888 (1984))。かかるグ
リコシル化反応の結果生じた修飾タンパク質を、本明細書中、後生的糖化最終産
物修飾タンパク質(advanced glycation end product-modified proteins)(AG
E−タンパク質)と称する。3−デオキシグルコソン(3DG)が、AGE−タ
ンパク質形成に至る、複数の段階がある反応の順序における主要な中間体である
ことは広く認められている。3DGは、コラーゲンや基底膜のような細胞内およ
び細胞外タンパク質の双方の架橋に至る蛋白質と反応できるグルコース誘導代謝
物である。
【0006】 糖尿病合併症の場合、この疾病に関連する慢性的高血糖によって、AGE−タ
ンパク質に至る反応は動態的に加速されると考えられる。この機構を指示する証
拠には、糖尿病対象由来のコラーゲンや水晶体のような長命のタンパク質が同年
齢の正常な対照由来のものよりも有意に多くのAGE−タンパク質を含有するこ
とが含まれる。したがって、比較的若年齢の糖尿病患者における白内障の異常な
発生は水晶体の修飾および架橋の割合の増加によって説明できる。同様に、糖尿
病患者において観察される関節および動脈の硬化の早期の発生ならびに肺の容量
の損失は主要な構造タンパク質であるコラーゲンの修飾および架橋の割合の増加
によって説明できる。なぜなら、これらのタンパク質は長命であり、修飾の結果
が蓄積し易いからである。
【0007】 糖尿病合併症と高血糖症との間の因果関係を証明するもう一つの要素は高血糖
症性の記憶(memory)である。この現象の印象的な一例は、初めは糖尿病であり、
ついで治療されて正常な血中グルコースレベルにもどったイヌにおける重篤な網
膜症の発症である。そのイヌの目は治療時には組織学的に正常であったが、正常
化されたグルコース濃度にも関わらず、時を経てこれらの動物に糖尿病性網膜症
が発生した(Engermanら, Diabetes, 36: 808(1987))。したがって、目への潜在
的なダメージは、初期の高血糖の期間、臨床的な症状が明らかになる前に不可逆
的に生じた
【0008】 糖尿病のヒトおよび動物は正常よりも高い濃度の初期および後期の糖修飾AG
E−タンパク質を有している。実際、AGE−タンパク質の増加は血中グルコー
スレベルの増加よりも大きい。AGE−タンパク質の濃度は、ある割合の糖分子
が再編成されてタンパク質結合蛍光分子を生産するので、蛍光測定によって評価
できる。
【0009】 AGE−タンパク質の病原的役割は糖尿病に限定されない。タンパク質糖化は
アルツハイマー病に関連している(Harringtonら, Nature, 370: 247 (1994))。
タンパク質蛍光の増加は加齢でも見られる。実際、いくつかの理論は加齢プロセ
スをたどり、酸化ダメージおよび糖誘導タンパク質修飾の組み合わせに至ってい
る。したがって、AGE−タンパク質形成を抑制する治療は、他の病因論的に類
似するヒト疾病状態に有益であり、またおそらく加齢プロセスを遅らせることが
できる。
【0010】 一般的に、AGE−タンパク質の形成はタンパク質アミノ基と糖、主にグルコ
ース、との反応によって開始すると考えられている。ある典型的な論文の引用は
「リジンのε−アミノ基の糖化によって形成された付加物はアマドリ化合物、フ
ルクトースリジン・・・・である。糖化はメイラードまたは褐変反応として集合
的に知られ、最終的に架橋され、沈殿し、酸化され、褐色および蛍光性のタンパ
ク質に至る複雑な一連の反応における開始ステップである。」と述べている。K.
J. Knechtら, Archives of Biochem. Biophys., 294: 130 (1992)。
【0011】 糖からのAGE−タンパク質の形成は、フルクトース−リジン含有タンパク質
を生産する初期の糖との可逆的反応を含む多段階プロセスである。これらの修飾
タンパク質は引き続き反応して不可逆的に修飾されたAGE−タンパク質を生じ
る。AGE−タンパク質に対して生じた抗体はフルクトース−リジンと反応しな
いので、AGE−タンパク質は糖化リジン残基含有タンパク質と同一ではないこ
とは明らかである。AGE−タンパク質が多様な化学種として存在することもま
た明らかである;ただしほどんど同定されていない。最近の研究において、化学
種(ε−アミノ−(カルボキシメチル)リジンは重要な最終AGE−タンパク質
構造の一つとして同定されている(Reddyら, Biochem., 34: 10872 (1995)および
Ikedaら, Biochemistry, 35: 8075 (1996))。この研究では、修飾部位の約50
%を構成するもう一つのAGE−タンパク質エピトープを化学的に同定すること
はできなかった。近年、リボースからのAGE−タンパク質形成の速度論を研究
する方法が開発されている (Khalifahら, Biochemistry, 35: 4645 (1996))。し
かし、この研究はAGE−タンパク質形成においてリボースが生理学的な役割を
果たし得ることを提唱し、下記の糖化リジンおよびフルクトース−リジンの比較
的広範な定義を支持している。
【0012】 他の文献は糖化リジン残基を含有するタンパク質とAGEタンパク質との間の
違いを指摘している、「シッフ塩基およびアマドリ生産物の平衡レベルはそれぞ
れ数時間および数週間で到達される。初期のグリコシル化生産物のこの可逆的、
平衡の性質は重要である。なぜなら、このことはかかる生産物の全量が、非常に
長命のタンパク質においてさえも、短期間で定常状態プラトーに達する....
..慢性糖尿病において、これらの初期の糖化産物は、コラーゲンおよびその他
の安定な組織タンパク質に数年にわたり引き続き蓄積はしないので、それらの濃
度が糖尿病性網膜症の存在または重篤度に相関しないことは驚くことではない.
.....しかしながら、コラーゲンおよびその他の血管壁の長命なタンパク質
におけるいくつかの初期グリコシル化生産物は解離しない。そのかわり、それら
は遅く、複雑な一連の化学的再編成をうけて、不可逆的な後生的グリコシル化最
終生産物を形成する」。M. Brownleeら, New England Journal of Medicine, 31
8: 1315 (1988)。科学文献に記載されている、これらの修飾タンパク質生産の唯
一の経路はタンパク質と糖分子との間の開始反応を伴う。
【0013】 多くの文献が、AGE−タンパク質形成が多段階経路を通じて起こること、お
よび3−デオキシグルコース(3−DG)がこの経路の主要な中間体であること
を指摘している。M. Brownlee, Diabetes, 43: 836 (1994); M. Brownlee, Diab
etes Care, 15: 1835 (1992); T. Niwaら, Nephron, 69: 438 (1995); W.L. Dil
ls, Jr., Am. J. Clin. Nutr., 58: S779 (1993); H. Yamadatら., J. Biol. Ch
em., 269: 20275 (1994); N. Igakiら., Clin. Chem., 36: 631 (1990)。一般的
に認められている、糖とタンパク質との反応からの3DG形成の経路を図1に示
す。図1から分かるように、糖(グルコース)分子は初めにタンパク質−リジン
アミノ基(I)とともにシッフ塩基を形成する。ついでシッフ塩基が転移してフ
ルクトース−リジン修飾タンパク質(II)を生産する。(II)に至る反応は
可逆的である。(II)は再編成されて3DGと遊離タンパク質リジンを生じう
る。その次の3DGとタンパク質との間の反応はAGE−タンパク質形成におけ
る最初の不可逆的ステップである。
【0014】 知られている範囲では、3DGが副経路によって生産され得ること、または実
際、3−DGの主なソースが図1に示す非触媒反応に由来するのではなく酵素触
媒代謝経路に由来することは報告されていない。
【0015】 糖尿病患者は非糖尿病患者よりも血清中に有意に多くの3DGを有する(12.7
8±2.49μM 対 1.94±0.17μM)。(Toshimitsu Niwaら, Nephron, 69: 438 (
1995))。それにもかかわらず、この毒性化合物は正常で健康な個体において見
出される。したがって、その身体がこの分子に対して無毒化経路を発達させたこ
とは驚くことではない。これらの反応の一つは、これを尿中に効率よく排出され
る3−デオキシフルクトース(3DF)に還元することにより3DGを無毒化す
るアルデヒドレダクターゼによって触媒される(Takahashiら, Biochem, 34: 14
33 (1955))。もう一つの無毒化反応は、3DGを3−デオキシ−2−ケトグル
コン酸(DGA)に酸化する(Fujiiら, Biochem. Biophys. Res. Comm., 210:
852 (1995))。
【0016】 現在までの研究の結果は、これらの酵素のうちの少なくとも一つ、アルデヒド
レダクターゼ、の効率が糖尿病患者において逆に作用することを示す。正常なラ
ット肝臓から単離した場合、この酵素のフラクションはリジン67、84および
140において部分的に糖化され、正常な非修飾酵素と比較して低い触媒効率を
有する(Takahaskiら, Biochem., 34: 1433 (1995))。糖尿病患者は正常血糖の
個体より高い割合の糖化タンパク質を有するので、それらはより高いレベルの3
DG、および抑制された、この反応性分子を3DFに還元して無毒化する能力の
双方を有すると思われる。
【0017】 アルデヒドレダクターゼの機構は研究されている。これらの研究は、この重要
な無毒化酵素がアルドーズレダクターゼ阻害剤(ARIs)によって阻害される
ことを確定した(Barskiら, Biochem., 34: 11264(1995))。ARIsは現在、そ
れらの糖尿病合併症を抑制する能力についての臨床試験下にある。これらの化合
物は、クラスとして、短期の糖尿病合併症に同じ効果を示す。しかし、それらは
長期の糖尿病合併症における臨床的効果に欠け、またそれらは高タンパク質食を
与えたラットにおいて腎機能を悪化させる。下記で明らかにするように、この知
見はリジン回収について新たに発見された本発明の基礎となる代謝経路と一致す
る。高タンパク質食は、腎リジン回収経路によって3DGへの変換を受けるフル
クトース−リジンの消費を増加させる。その結果生じる3DGの3DFへの還元
による無毒化は、結果として腎損傷の増加に至るARIs治療によって、ARI
sを受けていないラットに比べて阻害されるであろう。これは、ARIsによる
アスドースレダクターゼの阻害は3DGおよび3DFを還元するアルドースレダ
クターゼの有効性を抑制するであろうからである。
【0018】 以下に要約した特許の概観から認識されるように、ヒト疾病への貢献における
3−DGの役割は既に明白にされている。
【0019】 Ulrichらの米国特許第5,476,949号にはアミノ安息香酸および誘導体を用いる
AGE−タンパク質形成阻害方法が記載されている。これらの化合物は、おそら
く、それがタンパク質と反応してAGE−タンパク質形成の不可逆的段階が始ま
る前に、3−DGと反応し、系からそれを除去することによって作用する。
【0020】 Ceramiらの米国特許第4,798,583号および第5,128,360号には、AGE−タンパ
ク質形成および糖尿病が誘導する動脈壁タンパク質架橋を妨げるためのアミノグ
アニジンの使用が記載されている。アミノグアニジンは、初期グルコシル化生産
物と反応することが示された。この初期生産物は、本明細書で定義した3DGで
ある。これらの特許は3−DG形成阻害の可能性を予期するものではない。それ
らは専らこの毒性分子と複合体を形成することに焦点を合わせている。
【0021】 Franceらの米国特許第5,468,777号には、口腔におけるタンパク質の非酵素的
褐変によって生じる歯の変色の予防方法および薬剤が記載されている。システイ
ンおよびシステイン誘導体がこれらの適用に特に有益であるとして記載されてい
る。
【0022】 Ulrichらの米国特許第5,358,960号には、アミノ置換イミダゾールを用いるA
GE−タンパク質形成の阻害方法が記載されている。これらの化合物は、初期グ
リコシル化産物(3DG)と反応することが示されている。この特許においては
、3DGの代謝ソースが存在しうることは言及されていない。この特許は専ら3
DGがタンパク質の非酵素的褐変における中間体としてつくられることを構想し
ている。
【0023】 Ulrichらの米国特許第5,334,617号にはAGE−タンパク質形成の阻害剤とし
て有益なアミノ酸が記載されている。リジンおよびその他の二機能性アミノ酸は
この点で特に有益であるものとして記載されている。これらのアミノ酸はグルコ
ースとタンパク質との反応に由来する初期グリコシル化生産物と反応するものと
して記載されている。この特許に記載されている初期のグリコシル化生産物が3
DGであることは明白である。
【0024】 Ulrichらの米国特許第5,318,982号には阻害剤として1,2,4−トリアゾー
ルを用いるAGE−タンパク質形成の阻害が記載されている。この特許に記載さ
れている阻害剤は複合体3DGと反応する位置にあるジアミノ−置換基を含む。
この特許は、これらの化合物を初期グルコシル化生産物(本明細書で定義する3
DG)と反応するものとして記載している。
【0025】 Ulrichらの米国特許第5,272,165号には2−アルカリデン−アミノグアニジン
のAGE−タンパク質形成阻害剤としての使用が記載されている。この特許に記
載の阻害剤は3DGと高度に反応性であると述べられている。この特許では3D
Gの代謝的形成の阻害については言及していない。
【0026】 Ulrichらの米国特許第5,262,152号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めのアミドラゾンおよび誘導体の使用が記載されている。この特許に記載されて
いる化合物はα−エフェクトアミン(α-effect amines)である。W. P. Jencks,
3版, McGraw Hill, New York。このカテゴリーの化合物はジカルボニル化合物
、例えば3DGと反応することが知られている。
【0027】 Ulrichらの米国特許第5,258,381号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めの2−置換−2−イミダゾリンの使用が記載されている。この特許に記載の化
合物は3DGと容易に反応できる近接したアミノ基を含む。
【0028】 Ulrichらの米国特許第5,243,071号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めの2−アルキリデン−アミノグアニジン(2-alkylidene-aminoguanidies)化合
物の使用が記載されている。この特許に記載の化合物は3DGに高い反応性を有
し、この反応性、毒性分子との複合体形成により作用する。
【0029】 Ulrichらの米国特許第5,221,683号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めのジアミノピリジン化合物の使用が記載されている。特に有益であると記載さ
れているジアミノピリジン化合物は3DGと反応し、安定な、6員環を含む複合
体を形成する。
【0030】 Ulrichらの米国特許第5,130,337号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めのアミドラゾンと誘導体の使用が記載されている。この特許に記載されている
阻害剤は、当業者に既知のように、3DGと迅速に反応し安定な複合体を形成す
るα−エフェクトアミンである。
【0031】 Ulrichらの米国特許第5,130,324号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めの2−アルキリデン−アミノグアニジンの使用が記載されている。この特許に
記載されている化合物は、グルコースのタンパク質との反応に由来する初期グル
コシル化生産物(3DG)との反応によって作用する。
【0032】 Ulrichらの米国特許第5,114,943号にはAGE−タンパク質形成を阻害するた
めのアミノ置換ピリミジンの使用が記載されている。この特許に記載されている
化合物は、3DGと迅速に反応して無毒化する。
【0033】 上記特許には、糖尿病合併症を予防する治療処置の手段としての3DGの代謝
的形成の阻害は示唆されていない。実際、これらの特許には、3DGの生産にお
ける酵素経路の関与を示唆するものさえない。
【0034】 Ulrichらの米国特許第5,108,930号には生物学的試料中のアミノグアニジンの
レベルの検出方法が記載されている。このアッセイはアミノグアニジン排出時間
の測定による腎機能の決定における潜在的有用性を有するものとして記載されて
いる。この特許に記載されているアッセイ方法について意図された主な有用性は
、アミノグアニジンの組織レベルの測定にある。よってAGE−タンパク質形成
阻害に十分な投与は動物およびヒトの研究において維持され得る。この特許には
尿3DG、3DFまたはDGA比率を用いて合併症についてのリスクでの糖尿病
患者の測定についての言及はない。
【0035】 Szwergoldらの米国特許第5,231,031号には糖尿病に伴う病状のリスクの評価方
法およびこれらの合併症治療の有効性の決定方法が記載されている。この特許に
は、糖尿病患者の赤血球における2つのリン酸化化合物の測定が記載されている
。この特許において、これらの2つの化合物は化学的に同定されていない。しか
し、どちらの化合物も3DGまたは3DFではなく、それらのレベルは本発明の
診断の具体例において尿中で測定される。
【0036】 グリコシル化最終生産物の測定による糖尿病患者における代謝調節のモニター
方法は既知である。先行する数週間、グリコシル化ヘモグロビンの濃度が平均血
中グルコース濃度に影響することは知られている。A. Ceramiらの米国特許第4,3
71,374号には、尿中のグリコシル化タンパク質、より詳細には非酵素的グリコシ
ル化アミノ酸およびペプチドの分解産物の定量によるグルコースレベルのモニタ
ー方法が記載されている。この方法は、グリコシル化最終産物に見出された同一
平面状のシス−ジオール基を有する特異的複合体の形成にアルカリ性ホウ酸の親
和性を利用してかかる最終産物を分離し定量することを意図する。
【0037】 A. Ceramiらの米国特許第4,371,374号には、褐変したポリペプチド、例えばウ
シ血清アルブミンおよびポリ−L−リジン、に存在するクロモフォアの単離およ
び精製が記載されている。このクロモフォア、2−(2−フルオリル)−4(5
)−2(フロイル)−1H−イミダゾール(FFI)は2分子のグルコースと2
つのリジン−由来のアミノ基の縮合により生じた共役複素環である。この特許に
はさらに、タンパク質試料の「加齢」(後生的グリコシル化の程度)の測定方法
におけるFFIの使用が記載されている。ここで試料の「年齢」は試料中の上記
クロモフォア量を測定し、ついで標準(試料の「年齢」に較正されたFFI量を
有するタンパク質試料)に対してこの測定を比較することによって決定される。
【0038】 糖尿病に伴う病状の発現のリスクがあるものを同定し、治療処置によってかか
る状態の発症を予防、抑制または遅延化し、ならびにかかる治療処置の利益を決
定するための有効な手段についての、糖尿病患者の現存する治療法における長年
にわたる満たされていない要求がある。
【0039】 発明の概略 本発明は、糖尿病によって影響を受ける器官中のFLのFL3Pへの酵素媒介
変換に関与し、また比較的高濃度の3−デオキシグルコソン(3DG)を生産す
る代謝経路の発見から生まれた。その後の、この新たに発見された経路の生化学
的機能の研究はそれが糖尿病性腎疾患の病因に重要な役割を有していることの示
唆する傾向にある。またこの経路は様々な既知の糖尿病に伴う病状の発症に寄与
すると推測される。
【0040】 この発見は、一態様においては、酵素阻害活性を有し、フルクトース−リジン
のフルクトース−リジン−3−リン酸への酵素的変換を有効に阻害する化合物の
クラスを提供する本発明の実際的な適用に至った。本発明の化合物の関連した酵
素阻害活性はアッセイによって容易に測定できる。このアッセイ方法は、フルク
トース−リジン、アデノシン3リン酸(ATP)、フルクトース−リジン−3−
リン酸キナーゼのソースおよび阻害活性を示すのに十分な量の本発明の化合物の
水性溶液の提供、その結果得られた溶液を、上記キナーゼ、フルクトース−リジ
ンおよびアデノシン3リン酸の相互作用の産物としてのフルクトース−リジン−
3−リン酸およびアデノシン2リン酸の形成を促進する条件にさらすこと、なら
びに、少なくとも1種のかかる生産物、一定量のかかる生産物を還元する本発明
の化合物の生産を、本発明の化合物無添加の同じ相対量のフルクトース−リジン
、アデノシン3リン酸およびフルクトース−リジン−3−リン酸キナーゼのソー
スと比較して測定することを含む。ここに記載したアッセイ方法も本発明の範囲
内である。
【0041】 もう一つの態様により、本発明は、活性成分として上記のように本発明の化合
物と、医薬上許容されるビヒクルとを含有する、糖尿病患者における糖尿病合併
症の発症の予防、抑制または遅延化用の、医薬製剤を提供する。
【0042】 本発明のさらなる態様によれば、糖尿病合併症を発症するリスクがある患者に
おける糖尿病合併症の発症の予防、抑制または遅延方法であって、フルクトース
−リジンのフルクトース−リジン−3−リン酸への酵素的変換を阻害するのに有
効な量の本発明の化合物を患者に投与することを含む方法が提供される。この同
じ方法を、他の病因学的に類似の病状の予防または治療にも用いることができ、
これについては本明細書中以下にさらに記載する。
【0043】 さらにもう一つの態様により、本発明は糖尿病に伴う病状を経験する糖尿病患
者のリスクの評価方法を提供する。この方法は予め決定した投与量の糖化リジン
残基を与える量の糖化リジン残基のソースを患者に投与すること、および患者か
ら得られた3−デオキシグルコソンの3−デオキシフルクトースに対する比率を
、正常な対象(例えば、非糖尿病対象または糖尿病の臨床的症状を有していない
者)における3−デオキシグルコソンの3−デオキシフルクトースに対する比率
と比較して測定することを含む。無症候性の対象における3−デオキシグルコソ
ンの3−デオキシフルクトースに対する比率と比較した、糖尿病患者におけるよ
り高い比率は糖尿病患者が糖尿病に伴う病状を経験するより高いリスクを有して
いることを示す。
【0044】 本発明はまた糖尿病合併症の予防における治療処置の有効性の評価方法も提供
する。この方法は糖尿病患者から得た生物学的試料における3−デオキシグルコ
ソン、3−デオキシフルクトースおよびフルクトース−リジンの濃度を治療措置
の開始前後の両方で測定することを含む。つづいて試料中の3−デオキシグルコ
ソンおよび3−デオキシフルクトース濃度の合計をフルクトース−リジン濃度と
比較する。フルクトース−リジン濃度に関係する、治療処置の開始前に採取した
生物学的試料中の3−デオキシグルコソンおよび3−デオキシフルクトース濃度
と比較した治療処置の開始後に採取した生物学的試料中のこれらの濃度の減少は
治療措置の有効性を示す。
【0045】 さらにもう一つの本発明の態様によれば、食品が糖尿病に伴う病状の発症に寄
与する可能性を糖尿病患者に知らせる方法が提供される。この方法は食品中の糖
化リジン残基の含有量の測定およびこの情報の糖尿病患者への提供(例えば、食
品のパッケージ上や刊行物において)を含む。
【0046】 本発明に従い、生物学的試料(例、尿)中の3DFレベルの上昇が糖尿病合併
症の有意なリスクに関連することが発見された。したがって、本発明のさらなる
具体例は、患者が糖尿病合併症を発症するかどうかの見込みの指標としての、1
以上の予め決定した3DFのベースラインレベルと比較した糖尿病患者の生物学
的試料における3DFの存在の測定に基く、糖尿病患者の糖尿病に伴う病状を経
験するリスクの評価方法を提供する。
【0047】 (発明の開示) 以下の定義を本発明の理解を容易にするために以下のさらなる詳細な記載のよ
うに提供する。 1.糖化リジン残基 − 本明細書中「糖化リジン残基」なる表現は、還元糖
およびリジン含有タンパク質の反応によって生成した安定な付加物の修飾リジン
残基をいう。 主なタンパク質リジン残基は正電荷アミノ酸について予想されるようにタンパ
ク質表面に位置する。したがって、血清その他の生物学的流体と接触するタンパ
ク質上のリジン残基は溶液中の糖分子と自由に反応できる。 この反応は複数のステージで起こる。最初のステージはリジン フリー アミノ
基と糖ケト基との間のシッフ塩基形成を伴う。この最初の生産物はついでアマド
リ転移を受けて安定なケトアミン化合物を生産する。
【0048】 この一連の反応は様々な糖と起こりうる。関与する糖がグルコースの場合、最
初のシッフ塩基産物はグルコースのC−1上のアルデヒド部位とリジンε−アミ
ノ基との間のイミン形成を伴う。アマドリ転移によってフルクトースのC−1炭
素に結合したリジン、1−デオキシ−1−(ε−アミノリジン)−フルクトース
、本明細書中フルクトース−リジンまたはFLと称する、が形成される。
【0049】 他のアルドース糖、例えばガラクトースおよびリボースと、同様の反応が起こ
るだろう(Dills, Am. J. Clin. Nutr., 58: S779(1993))。本発明の目的につい
て、修飾糖分子の厳密な構造に関わらず任意の還元糖とタンパク質リジンのε−
アミノ残基との反応の初期生産物は糖化−リジン残基に包含される。
【0050】 また、糖化リジン残基、糖化タンパク質およびグリコシル化タンパク質または
リジン残基なる用語は本明細書中、このような表現が頻繁に交換可能に用いられ
る科学雑誌での現在の使用に一致して交換可能に用いられる。
【0051】 2.フルクトース−リジン − 「フルクトース−リジン」(FL)なる用語
は本明細書中、タンパク質/ペプチドに含まれているか、タンパク質分解消化に
よってタンパク質/ペプチドから放出されているかいずれかの糖化リジンを示す
ために用いられる。この用語は一般的にフルクトース−リジンと称され、タンパ
ク質リジン残基とグルコースの反応によって形成されると報告されている化学構
造に特に限定されるものではない。上記のように、リジンアミノ基は広範囲の糖
と反応できる。実際、グルコースが試験した16種の異なる糖の群の中で最小の
糖であることを示す報告がある(Bunnら, Science, 213: 222 (1981))。したがっ
て、ガラクトースとリジンから形成されたタガトース−リジンは本明細書中フル
クトース−リジンなる用語が挙げられていることに関わらず、グルコースと同様
にして、全てのその他の糖の縮合化合物と同じように、天然に存在するか否かに
関わらず、包含される。本明細書の記載からプロテイン−リジン残基と糖との間
の反応は複数の反応段階を含むことが理解されよう。この連続反応の最終段階は
タンパク質の架橋および、AGE−タンパク質として知られ、そのいくつかは蛍
光性である多量体の生産を含む。かかる修飾タンパク質のタンパク質溶解性消化
では糖分子に共有結合したリジンは得られない。したがって、これらの種は本明
細書で用いられる用語としての「フルクトース−リジン」の意味には含まれない
【0052】 3.フルクトース−リジン−3−リン酸 − この化合物は高エネルギーリン
酸基のATPからFLへの酵素的な移動によって形成される。本明細書で用いら
れるフルクトース−リジン−3−リン酸(FL3P)なる用語は遊離しているか
タンパク質に結合しているかに関わらず酵素的に形成できる全てのリン酸化フル
クトース−リジン部分を含む。
【0053】 4.フルクトース−リジン−3−リン酸キナーゼ − この用語は上記で定義
したようにさらに高エネルギーリン酸のソースが供給された場合に酵素的にFL
をFL3Pに変換できる1以上のタンパク質をいう。
【0054】 5.3−デオキシグルコソン − 3−デオキシグルコソン(3DG)は遊離
のリジンおよび無機リン酸を産生するFL3Pの分解で形成される1,2−ジカ
ルボニル−3−デオキシ糖(3−デオキシヘクスロソンとしても知られる)であ
る。本明細書の記載の目的について、3−デオキシグルコソンなる用語は、上記
FL3Pの広い定義を有するFL3Pの分解で形成される全ての可能なジカルボ
キシル糖を包含する。
【0055】 6.FL3Pリジン回収経路 − リジン回収経路はヒト腎臓およびおそらく
は他の組織にも存在し、遊離アミノ酸またはポリペプチド鎖に取り込まれた非修
飾リジンを再生する。さらに下記で説明するようにこの経路は糖尿病合併症に寄
与する重要な要素である。
【0056】 7.AGE−タンパク質 − 「AGE−タンパク質」(後生的糖化最終生産
物修飾タンパク質(Advanced Glycation End-product modified protein))なる
用語が科学雑誌で用いられており、本明細書においては、糖とタンパク質との間
の最終生産物をいうために用いられる(Brownlee, Diabetes Care, 15: 1835(199
2)およびNiwaら, Nephron, 69: 438(1995))。反応、例えばタンパク質リジン残
基とグルコースとの間、フルクトース−リジンの形成で停止しないことは明らか
である。FLは複数の脱水素および転移反応を受けて非酵素的3DGを生産でき
、これは再び遊離のアミノ基と反応して、タンパク質の架橋および褐変に至る。
実際、上記で定義した3DGがこの修飾の中心的な中間体であることの合理的な
証明がある。
【0057】 9.「糖化食餌」 − 本明細書中で用いられる場合、この表現は、通常のタ
ンパク質の一部が糖化タンパク質に置き換えられている任意の与えられた食餌を
いう。「糖化食餌」および「糖化タンパク質食餌」なる表現は本明細書中交換可
能に用いられる。
【0058】 少なくとも一部、多分全ての糖尿病合併症はグルコースおよびその他の反応性
糖によるタンパク質の共有結合性修飾に帰する。M. Brownlee, Diabetes, 43: 8
36(1994)。上記のように、糖尿病のヒトおよび動物は正常よりも高い糖修飾タン
パク質濃度を示している。実際、糖尿病に関連するAGE−タンパク質の増加は
血中グルコースレベルの増加より大きい。
【0059】 従来、一般に、インビボの3DGの源は糖化リジン残基を含有するタンパク質
に由来すると考えられてきた。また、一般に、これらの糖化リジンはアミノ酸ソ
ースとしては用いられないとも考えられてきた。本明細書中、以下で明らかにす
るが、前者の考えは誤りであった。
【0060】 上記のように、本発明は従来知られていなかった酵素触媒反応で3DGを生産
する代謝経路の発見から案出された。この酵素的経路は酵素的阻害が可能であり
、それにより毒性3DGの生産を抑制できる。
【0061】 糖尿病の腎臓での一連の研究の進行の間、ストレプトゾトキシン誘導糖尿病ラ
ット由来の腎臓の過塩素酸抽出物31P NMR スペクトルはNMRスペクトル中
に異常な新しいピークを現した。本発明者らによる従来の研究はラットの水晶体
およびヒトの赤血球におけるフルクトース−3−リン酸の存在を示した(A. Pete
rsenら, Biochem. J., 284: 363-366 (1992); Lalら, Arch. Biochem. Biophys.
, 318: 191(1995); Szwergoldら, Science, 247: 451(1990)およびLalら, Inves
tigative Opthalmology and Visual Science, 36(5): 969(1995))。初期の研究
はラット水晶体における他の異常なリン酸化糖を同定した(Szwergoldら, Diabet
es, 44: 810 (1995)およびKapplerら, Metabolism, 44: 1527(1995))。したがっ
て、この新たに同定されたピークは別のリン酸化糖であるとする仮説は合理的で
あった。さらに、多数の研究室の調査はこの新たな化合物が単糖ではなく、フル
クトース成分の3−位でリン酸化されたフルクトース−リジンであることを明ら
かにした。
【0062】 この同定は、2つの方法によって確認した。標準フルクトース−リジン−3−
リン酸(FL3P)を下記の実施例2に記載の方法によって合成し、糖尿病のラ
ット腎臓において、ピークを有する31P NMRで共通の共鳴を示した。合成フ
ルクトース−リジンもまた非糖尿病ラットに注入した。これらのラットは、この
注入後、腎臓におけるFL3Pレベルの実質的な増加を示した。
【0063】 2つの実験はFL3Pが酵素触媒反応においてFLから直接得られることを示
すように計画された。フルクトース部のC3位で重水素標識されたフルクトース
−リジンを合成し、ラットに注入した。注入の3時間後、これらのラットの腎臓
を取出し、過塩素酸で抽出した。NMR分光法によりこれらのラットから単離し
たFL3P物質はフルクトース部のC3位の重水素標識を含有することが明らか
になった。さらに、ラット腎臓のホモジネートはATPとフルクトース−リジン
の両方を要求する反応においてFL3Pを生産する能力を示した。生理的条件下
ではフルクトースリジンおよびATPのみを一緒にインキュベートした場合には
FL3Pは形成されないので、この最後に述べた実験は、特異的なFL3Pキナ
ーゼの存在を確認するものである。腎皮質の再分化を伴うさらなる実験は、この
キナーゼ活性が腎臓において一様に分配されてはおらず、ヒトおよび動物の糖尿
病の腎臓において損傷を示す最も初期の解剖学上の部位の一つである近位尿細管
に集中していることを示した。
【0064】 FL3Pは水性溶液中では安定ではない。これは急速に分解して3DG、リジ
ンおよび無機リン酸を形成する。この反応はインビボでも起こる。現時点ではイ
ンビボのFL3Pの分解が自発的な反応か酵素触媒反応かは不明である。しかし
ながら、フルクトース−リジンからの3DGの生産は無処置の腎臓において極め
て迅速に起こるので酵素的触媒が関与することは強く推測される。
【0065】 FL3Pリジン回収経路における反応段階を図2に示す。第1の段階では、F
L3Pキナーゼによって触媒される反応においてフルクトース−リジンとATP
が反応してフルクトース−リジン−3−リン酸(FL3P)およびADPを形成
する。リン酸化はフルクトース部の3位で起こり、フルクトースリジン分子の脱
安定化に至る。その結果生じたFL3Pは、ついで分解されて3−デオキシグル
コソン(3DG)、無機リン酸、およびタンパク質合成に利用できる非修飾、遊
離、再生リジンを生じる。アルデヒドリダクターゼは尿中に排出される3−デオ
キシフルクトース(3DF)への還元によって3DGを無毒化する。
【0066】 図2はもっとも有力な糖化リジン、フルクトース−リジンを用いるこの経路を
示すが、広範な類似分子がこの経路を流れ得ることは当業者にとって既に明らか
であろう。実際、下記でより詳細に説明するように、FL3Pリジン回収経路の
基質選択性はかなり広く、上記の用語の広い定義を正当化する。
【0067】 さらなる実験は、リジン回収経路がヒツジ、ブタ、イヌ、ウサギ、ウシ、ネズ
ミおよびニワトリを包含する広範な動物種で見出されることを示した。この経路
はヒトにも存在する。FL3Pリジン回収経路の遍在は、リジンがほとんどの食
物に比較的低濃度で存在する必須アミノ酸であるとすれば、理解できる。さらに
、食物中のかなりの割合のリジン残基が糖化型で存在し、また食物を調理した場
合この修飾リジンの割合は増加する。これらの糖化リジン残基はタンパク質合成
に利用できないのでリジンの回収経路は非常に有益であり、またそれを有する生
体に選択的な有意性を与える。
【0068】 糖尿病はリジン回収経路に2つの効果を有する。血液タンパク質は、糖尿病患
者から単離した場合、非糖尿病個体から単離した場合よりも糖化リジンの濃度が
高い。したがって、糖尿病患者は非糖尿病患者よりも大きなリジン回収経路を通
じた流れを受ける。さらに、糖尿病患者および正常体の尿中の3DGおよび3D
Fの比率における予備的な観察から、糖尿病患者はこの経路を介して生産される
3DGを無毒化する能力が低下しているようである。糖尿病患者ではこれらの2
つの要素が結合してより高い濃度の3DGを生産する(図7参照;およびLalら,
Arch. Biochem. and Biophys., 342(1): 254-60 (1997))。
【0069】 リジン回収経路に関する因子(agent)は腎臓の他、他の組織、具体的には赤血
球、結晶体、および末梢神経系において同定されている。これらの全ての組織は
糖尿病合併症によって影響を受ける。赤血球における位置は糖尿病の微小血管合
併症、例えば、糖尿病性網膜症に相関する。腎臓の位置は糖尿病性腎症に相関し
、末梢神経系における位置は糖尿病性末梢神経障害に相関する。これらの因子は
膵臓にも見出される。皮膚におけるこれらの因子の存在を決定する実験が進行中
である。存在することが見出された場合、それらの有害な影響は、適切なビヒク
ル中の本発明の阻害化合物を用いた局所的処置によって改善され、コラーゲンの
架橋を防止し、それによって皮膚の弾性を改良できると考えられる。
【0070】 ヒトが経口的に摂取した糖化リジン残基含有タンパク質から3DGおよび3D
Fの両方を生産することを証明する実験を行った。これを下記に詳細に記載し、
リジン回収経路がヒトに存在することを納得のいくように示す。これらの実験は
わけのわからない現象、すなわち、糖尿病合併症を発症する糖尿病患者がいる一
方で、乏しい血糖調節でさえ、かかる合併症を発症しないということも解明した
。この現象の理由は本明細書中に示すデータから明らかである。糖尿病患者は異
なる3DG無毒化の能力を有する。糖尿病の集団のうちの一部は大多数の糖尿病
患者よりも明らかに比較的高いアルデヒドレダクターゼ活性を有する。その結果
、これらの個体は正常より高いレベルの3DGを有効に無毒化することにより、
リジン回収経路の増加した流れを処理することができる。減損した能力しか有さ
ない他者はそれらの上昇した3DGレベルの無毒化がより少ししかできず、その
結果糖尿病合併症のリスクがより高い。
【0071】 以下により詳細に記載するようにリジン回収経路の刺激は糖化タンパク質食餌
の使用を通じて生じうる。上記のFLの場合と同様に、糖化タンパク質食餌を与
えた試験動物においてFL3P、3DGおよび3DFの上昇が観察された。
【0072】 本発明の酵素阻害化合物はFL3Pからの毒性3DGの形成を妨げ、リジン回
収経路をブロックする。
【0073】 以下に適切な酵素阻害剤が本発明の実施のために表示すべき一組の示量性標準
と、推定の阻害剤がこの基準にあうかどうかを決定するための一定試験を記載す
る。本発明に関して使用するための候補キナーゼ阻害剤は植物または微生物から
単離された天然産物であってもよい。別法として、それらは酵素反応およびその
機構の合理的知識から導かれた合成分子であってもよい。阻害剤は、組み合わせ
法によって合成してもよい。組み合わせライブラリーは、ランダムな開始点から
生じさせることができる。さらに、組み合わせ法を用いて標的FL3Pキナーゼ
の既に同定した阻害剤に関連する広範な化合物を生じさせることができる。
【0074】 推定阻害剤のソースに関わらず、下記に列挙した全ての基準に適合しない化合
物は、リジン回収経路を阻害でき、それによって糖尿病合併症の開始または関連
する病因の疾患を予防し、抑制しまたは遅延化できる有益な治療薬剤であるとは
考えられない。
【0075】 1.阻害剤は低分子であり、細胞によって迅速に取り込まれるものであるべき
である。この基準に適合するため、阻害剤は2,000以下の分子量を有してい
なければ成らず、さらに理想的には約1,000ダルトン以下である。
【0076】 2.阻害剤は、FL3Pキナーゼの拮抗、非拮抗または自殺阻害を示さなけれ
ばならない。阻害剤が拮抗または非拮抗阻害剤である場合、阻害定数Kiは約1
mMより小さくなければならない。理想的には、100μM未満であり、より理
想的には40μM以下である。阻害が自殺的またはその他の不可逆的阻害である
場合、阻害定数についてのこの要求は議論の余地がある。
【0077】 3.阻害剤は水性溶液に可溶性であり、かつ生理学的pHの水性溶液中で安定
でなければならない。この溶解性についての要求は、阻害剤または阻害剤の塩が
10μM以上の濃度で生理食塩水または血清に溶解できる場合にのみ満たされる
。この安定性の要求は37℃で生理食塩水中に溶解した阻害剤の溶液が1時間イ
ンキュベートした後に50%以上の活性が残存している場合にのみ満たされる。
理想的には阻害剤は1日以上のインキュベーションにおいて50%以上の活性が
残存していなければならない。
【0078】 4.阻害剤は許容される薬物動態を示さなければならない。すなわち、薬剤の
投与後少なくとも1時間、治療上有効な濃度で残存しなければならない。理想的
には、少なくとも8時間有効濃度が維持されなければならない。さらに理想的に
は1日に1回の投与が、阻害剤の治療濃度の維持に必要な全てであるべきである
。この要求は阻害剤が最初の投与後に治療濃度を確立できなければならないこと
は意味しない。医薬の有効性が長期の投与においてのみみられる医薬の多くの成
功例が存在する。この基準は、一旦効力のある濃度に達した場合、この濃度が最
後の薬物投与後1時間以上維持されるべきことを意味する。
【0079】 5.阻害剤は非毒性でなければならない。この基準は治療上の投与量で投与し
た場合に阻害剤がヒト毒性を示さないことを意味する。理想的には、阻害剤が治
療上の効果に必要なレベルの2倍の血液および/または標的組織レベルで存在し
た場合に毒性が明らかであってはならない。さらに理想的には、治療上の範囲の
6倍以上のレベルで毒性が測定不能であるべきである。糖尿病合併症は長期阻害
剤処置によってのみ予防できる。したがって、非毒性の要求は急性毒性および延
長された長期の使用を通して明らかになりうる慢性毒性の双方を包含しなければ
ならない。候補分枝の毒性は確立された動物実験を用いて用意に評価できる。ヒ
ト毒性はステージ1臨床試験で評価される。
【0080】 本発明の実施において有益な化合物は式:
【化1】 [式中、Xは−NR’−または−O−を表わし、R’はHおよび直鎖または分枝
鎖アルキル基(C1−C4)および非置換または置換アリル基(C6−C20)また
はアラルキル基(C7−C10)からなる群から選択される;RはH、アミノ酸残
基、ポリアミノ酸残基、ペプチド鎖、直鎖または分枝鎖脂肪族基(C1−C8)か
らなる群から選択される置換基であり、該脂肪族基は非置換または少なくとも1
の窒素もしくは酸素含有置換基で置換されおよび少なくとも1の−O−、−NH
−、または−NR''−基が挿入され、R''は直鎖または分枝アルキル基(C1
6)および非置換または置換アリル基(C6−C10)またはアラルキル基(C7
−C10)である。但し、Xが−NR’−を表わす場合、RおよびR’はこれらが
結合している窒素原子と一緒になって置換または非置換の5〜7員の複素環を表
わしてもよく、該環中少なくとも1の窒素および酸素が単一のヘテロ原子であり
、上記アリル基(C6−C10)またはアルキル基(C7−C10)および上記複素環
置換基はH、アルキル(C1−C6)、ハロゲン、CF3、CN、NO2および−O
−アルキル(C1−C6)からなる群から選択される;R1は1〜4個の直鎖炭素
原子を有するポリオール基であり、Yはカルボニル基
【化2】 またはヒドロキシメチレン基
【化3】 である;Zは−H、−O−アルキル(C1−C6)、−ハロゲン、−CF3、−C
N、−COOH、および−SO32、および所望により−OHからなる群から選
択される。]で示される化合物ならびに該化合物のアイソマーおよび医薬上許容
される塩を含む。
【0081】 窒素または酸素含有「R」置換基の例は、γ−アミノ−α−ヒドロキシ酪酸(
−(CH22−CHOH−COOH)、1,2,4−トリアミノブタン(−(C
22−CHNH2−CH2NH3−)、3,6−ジアミノ−5−ヒトロキシヘプ
タン酸(−CH2−CH(OH)−CH2−CH(NH2)−CH2−COOH)な
どを包含する。式Iの構造は不斉中心を有し、ラセミ体、ラセミ混合物および種
々の立体異性体として生じえ、かかる異性体型の全ておよびその混合物が本発明
の範囲内である。上記式Iの構造を有するいくつかの化合物は既知であるが、そ
の他は新規であり、これらは本発明の範囲内であり、またインビボの3DGの酵
素触媒生産の阻害のための式Iの全ての化合物の使用も本発明の範囲内である。
【0082】 上記式の阻害剤は適当な糖、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、
リボース、キシロースまたはそれらの誘導体とアミノ酸またはその他の適当な1
次もしくな2次アミンとの反応によって製造でき、カルボニル基(例、Y =
−C(=O)−)を有する阻害剤が得られる。別法として、NaBH3CNのよ
うな選択的にシッフ塩基中間体をアミンに還元する試薬の存在化で、糖(例、グ
ルコース、ガラクトース、マンノース、リボース、キシロースなど)を本明細書
に記載の型のアミノ−またはヒドロキシル−置換反応体と反応させ、それによっ
てアルコール基(例、Y = −CH(−OH)−)を有する阻害剤を得てもよ
い。アミノ酸反応物の反応部は、これが用いられる場合、α炭素上のアミノ基ま
たは酸側鎖上のアミン基もしくはヒドロキシル基であってもよい。適当なアミノ
酸は必須アミノ酸を包含する。詳細な例は、これらに限定するものではないが、
グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、
メチオニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジンおよび
トリプトファンである。他の適当な反応体はより広範なクラスのアミノカルボキ
シル酸、例えば、ピログルタミン酸、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、ε−アミ
ノカプロン酸などに由来する。所望により、ホルミルリジンのような上記のアミ
ノ酸のN−アシル誘導体を用いることもできる。
【0083】 他の適当な反応資材には、限定するものではないが、非置換または置換アリー
ル(C6−C10)化合物[置換基はアルキル(C1−C3)、アルコキシ、カルボ
キシ、ニトロまたはハロゲン基とすることができる];非置換または置換アルケ
ン(置換基は少なくとも1つのアルコキシ基とすることができる);または非置
換または置換窒素含有複素環化合物[置換基はアルキル(C1−C3)、アリール
(C6−C10)、アルコキシ、カルボキシ、ニトロまたはハロゲン基とすること
ができる]が挙げられる。最後に記載した反応資材の基の例としては、m−メチ
ル、p−メチル−、m−メトキシ−、o−メトキシ−およびm−ニトロ−アミノ
ベンゼン、o−およびp−アミノ安息香酸;n−プロピルアミン、n−ブチルア
ミン、3−メトキシプロピルアミン;モルホリンおよびピペリジンが挙げられる
【0084】 上記式を有する代表的な阻害剤化合物を表Aに示す。本発明の実施において阻
害剤として使用できる公知の化合物の例としては、限定するものではないが、メ
グルミン、ソルビトールリジンおよびマンニトールリジンが挙げられる。 本明細書に記載する阻害剤化合物は、種々の無機または有機酸または塩基と医
薬上許容される塩を形成できる。適当な塩基には、例えば、アルカリ金属塩、ア
ルカリ土類金属塩、アンモニウム、置換アンモニウムおよび他のアミン塩が包含
される。適当な酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸およびメタンスルホン酸が包
含される。 式Iの化合物の医薬上許容される塩は、当業者によく知られた方法で製造でき
る。
【0085】 FL3Pキナーゼを阻害する化合物の能力は種々のキナーゼ活性分析法を用い
て測定できる。1つの有用な分析法には、該可能性のある阻害剤を、腎臓ホモジ
ネートまたは他の酵素供給源の存在下にフルクトース−リジンおよびATPと共
にインキュベートすることが包含される。分析成分の溶液を調製する。これは典
型的には、本発明の阻害剤化合物の1ミリモル以下、1〜10ミリモルの範囲の
フルクトース−リジン、0.1〜10ミリモルの範囲のATPおよびFLをフル
クトースリジン−3−ホスフェートに変換するに十分な量の該酵素供給源を含む
。インキュベーションは4.5〜9.5のpH範囲、理想的には中性または近中
性pHで行なう。インキュベーションは、酵素活性に適合する、4〜40℃の間
の温度で行なう。理想的には、インキュベーションは生理学的温度で行なう。イ
ンキュベーションの後、タンパク質の酸沈澱で反応を停止し、FL3Pの産生を 31 P−NMR分光法で測定する。阻害剤を含まない対照試料と比較すると、阻害
剤化合物を含む試料において、FL3P産生が減少または排除される。 他の分析法も酵素阻害の迅速な測定に利用される。そのような分析法の1つに
、フルクトース−リジンおよびγ−標識32Pまたは33P−ATPの使用が含まれ
る。FL3PはDow−1と結合しないが、ATPおよび他の大部分のホスフェ
ートは結合するので、予め定めた反応時間、典型的には10分後、分析溶液をD
ow−1樹脂のカラムに通すことにより、残った反応混合物から生成物FL3P
を分離することが可能である。得られた溶液をシンチレーション液の容器、例え
ば、Ecoscint Aに入れ、計数して生じて放射能の量を測定する。 大量のヒト組織を得るのは困難なので、イー・コリ(E. coli)のような発現
系でクローンしたキナーゼの組換えバージョンを用いることが好ましい。クロー
ンしたキナーゼは、組織特異的cDNAライブラリーの「ショットガン」クロー
ニングで容易に得ることができる。例えば、Clontech, Palo Alto, CAから得る
ことができる。構想したショットガンクローニングは、San Diego, CAのStratag
enから商業的に入手できるラムダクローニングシステムを使用して実施できる。
このクローニングキットにはその使用のための詳細な指示が含まれている。
【0086】 本発明の医薬製剤は、活性成分として、上記した1つ以上の化合物を、医薬上
許容される担体媒体または補助剤と組み合わせて含んでいる。 これらの成分は、液体および固体の両方を含む種々の投与形態に調製すること
ができる。すなわち、製剤は錠剤、キャプレット、ピルまたはドラジェーの形態
とすることができ、あるいはカプセルのような適当な容器、または、懸濁液の場
合、瓶に入れることができる。本明細書で用いる「医薬上許容される担体媒体」
なる用語には、所望の個々の投与形態に適した、いずれもの、全ての溶媒、希釈
剤、または他の液体ビヒクル、分散剤または沈澱防止剤、界面活性剤、等張剤、
粘着防止剤または乳化剤、保存料、固体バインダー、滑剤等が包含される。適当
な担体媒体の代表的な例としては、ゼラチン、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネ
シウム、タルク、植物および動物油脂、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙
げられる。Remington's Pharmaceutical Sciences, 15ed., E. W. Martin (Mack
Publishing Co., Easton, PA, 1975)は医薬組成物の処方に使用される種々の
担体およびその調製のための技術を開示している。公知の担体媒体が、いずれか
の望ましくない生物学的影響を生じたり、その他、医薬製剤の他の成分と有害な
相互反応するような、本発明の酵素阻害剤と適合しない場合を除いて、その使用
は本発明の範囲内のものである。
【0087】 本発明の医薬製剤において、活性成分は、担体媒体および/または、存在すれ
ば、補助剤を含め、製剤の全量に基づき、少なくとも5重量%、一般には98重
量%より多くない量で存在させることができる。好ましくは、活性成分の割合は
、組成物の65〜95重量%の間で変動する。 好ましい補足活性剤は、in vivoで3DGと結合するものである。この群の化
合物には、限定するものではないが、アミノグアニジン、アミノベンゼンおよび
その誘導体、システインおよびその誘導体、アミノ置換イミダゾール、1,2−
ジ置換ベンズイミダゾール、置換1,2,4−トリアゾール、ジアミノピリジン
およびその誘導体、アミノ置換ピリミジン、アミノアルコール、ジアミンなどが
含まれる。本発明の医薬製剤の補足活性剤には、特に、アンギオテンシン変換酵
素(ACE)阻害剤を含め、抗高血圧薬も含めることができる。 必要により、または、望ましい場合には、活性化合物を胃における酸分解から
保護するための、または活性化合物の血流への吸収を促進するための化合物のよ
うな補助剤も含めることができる。そのような補助剤としては、例えば、ホウ酸
塩または胃の酸性状態を部分的に相殺する他の塩のような錯体形成剤が挙げられ
る。活性化合物を脂肪酸の塩としてデリバリーすることにより、吸収を増加でき
る(この場合、活性化合物は1つ以上の塩基性官能基を有する)。 本発明の化合物は、他の補足活性成分と共に、FL3Pリジン回収経路の阻害
に有効ないずれかの投与量および投与経路で投与できる。かくして、本明細書に
おける「治療有効量」なる表現は、糖尿病合併症を打ち消すための、または他の
医学的理由による3DGの代謝産生を阻害するための、老化の影響またはAGE
タンパク産生が原因となる他のヒトの疾患状態の減少ような、所望の治療を与え
る酵素阻害剤の非毒性かつ十分量をいう。必要な正確な量は種、年齢、患者の全
体的状態、合併症の性質、個々の酵素阻害剤および投与様式等によって変化しう
る。
【0088】 本発明の化合物は、好ましくは投与の容易な、均一な用量の投与形態に処方さ
れる。本明細書における投与単位形態は、治療すべき患者に適した酵素阻害剤の
物理的に分離したユニットをいう。各用量は、それ自体で、または選択した医薬
担体媒体と共に、所望の治療効果を生ずるように計算された量の活性材料を含む
。典型的には、本発明の化合物は、製剤の重量によって、化合物の約1mg〜約
2500mg、好ましくは約5mg〜約250mgを含む投与単位で投与される
。 本発明の化合物は、治療すべき糖尿病合併症に応じて、経口または、筋肉内注
射、腹腔内注射、静脈内注入などの非経口で投与できる。本発明の化合物は約0
.7μg〜約20mg、好ましくは、約30μg〜約3.5mg/kg患者体重
/日の用量レベルで、1日1回以上経口的または非経口的に投与し、所望の治療
効果を得る。 経口活性酵素阻害剤が特に好ましく、ただし、経口用量は治療活性な阻害剤の
レベルを血液および/または標的組織で生じさせることのできるものである。当
業者は、血液、腎臓および他の組織の脱タンパクした試料中の小分子阻害剤のレ
ベルを容易に測定できる。これらの試料中の阻害剤の濃度を予め定めた阻害定数
と対比できる。阻害定数より非常に低い組織レベルは治療活性の欠けることを示
唆する。不可逆性阻害剤の場合、この欠如は、各組織のFL3Pキナーゼレベル
の分析により確認または論駁できる。全ての場合において、治療活性はグリコ(
glycated)リジン残基またはフルクトース−リジンに富んだ食物をヒトまたは動
物対象に与え、それらの尿中の3DGおよび3DF量を食事前後の両方で測定す
ることにより評価できる。これらの系に治療活性阻害剤を有する対象は、以下に
さらに詳しく記載するごとく、阻害剤治療前の同じ対象による分泌レベルと比較
して、3DGおよび3DFの両方の分泌の減少およびフルクトース−リジンの尿
分泌の増加を経験する。
【0089】 本発明の化合物は、典型的には、選択した阻害剤に応じて1日1回から1日4
〜5回まで投与される。1日1回の投与スケジュールが好ましいが、糖尿病患者
は彼等の病状に十分な注意を払うことに慣れているので、必要により、上記の1
日用量をデリバリーするより頻度の高い投与スケジュールを容易に受け入れる。
しかし、本明細書に記載する化合物および組成物の投与療法は、治療すべき個々
の患者の要求、処置投与のタイプ、医者の判断に基づくことが必要である。本明
細書で用いる「患者」にはヒトおよび動物の両方が含まれる。 本明細書に記載する阻害剤化合物は糖尿病合併症、特に、糖尿病の40%以上
が冒され、透析および移植を必要とする末期腎疾患の主な原因である糖尿病腎障
害を打ち消すのに有用である。加えて、これらの阻害剤は、高血圧、発作、アル
ツハイマー型の老人性痴呆のような神経変性疾患、循環系疾患、アテローム性動
脈硬化症、骨関節症、老化による全体的衰弱(general debilitating effects)
のようなAGEタンパク生成に起因する他の病状の予防および治療にも使用でき
る。 主な研究は、グリコタンパク質の長期の消費を介するリジン回収経路の刺激か
ら健康に対する重篤な悪影響がもたらされることを示している。FLの場合と同
様に、FL3P、3DGおよび3DFの評価がグリコタンパク食で飼育したテス
ト動物で観察された。表B参照。以下の実施例10でさらに記載するように、そ
のような食事で8ヶ月後、糖尿病の腎臓に見られるのと類似した腎臓病態の明ら
かな証拠が動物に見出された。少量のグリコタンパク質を食べたヒトボランティ
アの尿において、3DGおよび3DFレベルの短期評価も観察された。
【0090】
【表1】
【0091】 新たに見出したリジン回収経路の刺激が全身的3DGレベルの実質的増加を招
くので、グリコ食が妊娠に著しい影響をもたらすが否かを決定するために調査を
行なった。これまで得られた結果は、以下の実施例から明らかなように、この経
路に基づく非常に強い影響があることを示唆した。 さらに、ラットおよびマウスの罹患しやすい種において、早期(離乳後)の動
物を養う食事がタイプI糖尿病の発生に、発生率10〜90%の範囲で著しい影
響を有し得ることが良く知られている。過去10年間にわたって、この現象の調
査にかなりの努力が払われてきた。例えば、Diabetes, 46(4):589-98 (1997)お
よびDiabetes Metab. Rev., 12(4):341-59 (1996)ならびにその引用文献参照。
本発明者らの何人かにより、糖尿病誘発の極端な2つの食事についての調査が行
なわれた。AIN−93(Dyets, Inc.)は、糖尿病の発生の最も少ないもので
あり、尿3DF/クレアチニン(1.0)が見られるが、当該比率の最低比を生
じる。ピュリナ(Purina)500は、糖尿病の最大発生率を誘発し、3DF/ク
レアチニンの比率の2.5倍増加を生じる。FL3P、3DGおよび3DFがラ
ットの膵臓で見られるので、フルクトースリジンキナーゼおよびこの代謝経路の
代謝産物がタイプI糖尿病の進行に関与しているようである。このタイプの糖尿
病に罹患しやすい動物(ヒトにおけるインスリン依存性またはタイプI糖尿病の
モデルとして有用)は、膵臓のβ−細胞において発達する未知の抗原に対して彼
等を感受性とする異常な免疫系を有しており、そのβ−細胞上の当該動物の自己
免疫系による自己免疫攻撃をもたらされる。ついで、これにより細胞の破壊がも
たらされ、当該動物からインスリン産生能を喪失させる。タンパク質と反応する
3DGが新しい抗原部位を生じることが良く知られている。すなわち、種々の食
事の抗原的特性の供給源は、膵臓におけるフルクトースリジン−3−ホスフェー
トの分解による3DGの創生であると考えられる。 また、3DGは、一般的にアミンと相互反応することが知られており、架橋タ
ンパク質と同様、DNAと相互反応し、突然変異誘発および発癌性能力を示しう
る。
【0092】 FL3Pリジン回収経路の発見が、糖尿病人口を分別し、どの人口のサブセッ
トが糖尿病合併症に進行しうるかを決定することを最初に可能とする。この決定
は、テスト対象の、尿、血液フラクション(特に血漿または血清)、リンパ液、
間質液等の生物学的液体で都合よく行なうことができる。 一夜絶食後、ヒト対象に比較的高い濃度のグリコリジン残基を含有する食物源
を与える。例えば、この食物は、実施例5に記載のようなカゼイン/砂糖クッキ
ーの形あるいは他の適当な、グリコリジンまたは合成フルクトース−リジンの供
給源とすることができる。グリコリジン残基を含むタンパク質を利用する場合、
グリコ−リジンの含量は、好ましくは総タンパクアミノ酸の0.02〜10%、
さらに好ましくは約0.2〜0.4%である。経口用量中のグリコリジン残基の
総量は約0.3gとする。好ましくは、尿試料を、グリコリジン供給源の消費前
、ついで、1、3および5時間後、あるいは個々の臨床症状で保証されうるよう
な他の適当な時間に採取する。 これら尿試料中の3DGおよび3DFレベルを測定し、これら代謝物の比率を
計算する。この測定に利用する個々の方法は本発明の実施に必須ではない。所望
により、以下の実施例5に記載のGC法を使用できる。別法として、当業者に自
明のごとく、比色法、免疫分析法も使用できる。 糖尿病が直面する主なリスク因子は、最近完了した糖尿病コントロールおよび
合併症トライアルによって明らかに示されるように、血糖症コントロールである
。しかしながら、糖尿病合併症の発生は血糖レベルだけでは説明できず、糖尿病
合併症の発生を履歴的な血糖レベルと比較すると、かなりの分散が見られる。 糖尿病合併症進行について最もリスクのある糖尿病人口のサブセットを決定す
るための1方法が本発明の特に顕著な態様である。この方法は、グリコリジンの
供給源の摂取前および、所望により摂取後にFL、3DGおよび3DFの測定を
含む。
【0093】 例えば、正常な対象は、絶食時の尿中の3DFに対する3DGの比は、約0.
025であり、これに対して、糖尿病では、5倍以上上昇した高い比率を有する
。これは図7のデータによって示され、これは、正常血糖は、0.025(1/
39.77)の3DG/3DF比を有し、この値の周辺で詰まった分散を示して
おり、対して、糖尿病は2倍以上の平均比率(平均0.069)を有し、平均の
周囲に広く分散している。 本明細書に示すように、糖尿病は3DGの産生が増加する。したがって、糖尿
病合併症に対する耐性には、この毒性代謝物の除去が非常に要求される。本明細
書の記載によって計算された3DFに対する3DGの比率は、3DG解毒経路の
効力の評価を可能にする。低い比率の個体は一般に糖尿病合併症の進行に耐性で
ある。正常域に含まれる比率を含め、高い比率の個体はリスクが多く、一方、正
常域より上の高い比率の個体は特にこれらの合併症の進行についてのリスクがあ
る。 4つの異なったラット血統の血漿および尿におけるフルクトースリジン(FL
)の最近の測定は、それら各々の腎臓が血中のFLを処理する様式によってかな
り変動することを示している。4つの血統のうち、2つにおいて(Long Evans、
Brown Norway)、この化合物およびその代謝物とクレアチニンとの比率に基づ
き、腎臓によって濾過されるFLの実質的に全てが尿中に見られた。他の2つの
血統(Spraque Dawley、Fischer)において、クレアチニン濾過との比較に基づ
いて、血漿中FLの10〜20%が尿中に見られた。これらの測定は、哺乳類の
腎臓におけるFLプロセッシングにおける主要な変異性を示唆する。齧歯動物と
ヒトの腎臓の機能的等価性についての公知事実に基づき、同様なFLプロセッシ
ングの変化がヒトにおいても存在すると仮定することは合理的である。FLはフ
ルクトースリジン回収経路の主なインプットであるので、大量のFLが限外濾過
液から吸収され、腎臓における、また、同様に体全体にわたる全身的3−デオキ
シグルコソン(3DG)の高い局所レベルを招くヒトにおいて、経路全体が実質
的に刺激されることがありうる。この観察は、尿試料と同時に得られた血漿また
は血清試料の比較が、FLの腎臓への流動および尿に見られる該流動のフラクシ
ョンを測定する診断テストの基礎として供しうる。この値が実質的に1より低い
個体は、限定するものではないが、糖尿病腎障害(ネフローゼ)、老人における
腎不全および腎癌腫を含む種々の腎臓病態の進行のリスクがある。 本発明のキナーゼ阻害剤の治療効能を、リジン回収経路のテストを使用して容
易に、安全に測定できる。このテストプロトコールは、上記したものと同じであ
るが、ただし、尿3DGおよび3DFレベルに加えて尿フルクトースリジン・レ
ベルを測定する。このテストを、FL3Pキナーゼ阻害テストの前および後の両
方に行なうことが有用である。3DGおよび3DFの尿レベルを各時点でまとめ
、同じ試料で測定したフルクトース−リジンレベルと比較する。
【0094】 グリコリジン残基に富んだ食物摂取後の尿に見られる3DGおよび3DFのピ
ークレベルがリジン回収経路の活性から誘導されたものである。これらの代謝物
の未反応フルクトース−リジン(ヒトの尿の正常な成分である)に対する比率が
この経路の活性を反映している。リジン回収経路の阻害は排出される3DGおよ
び3DFの量の減少と、フルクトース−リジンの排出レベルの増加を引き起こす
。すなわち、キナーゼ阻害剤の治療効能は、治療開始後の(3DG+3DF)/
フルクトース−リジン比の減少を測定することにより定量化できる。代謝物の比
率のみを考慮するので、尿量または代謝物濃度はこの分析を解釈する上での因子
ではない。 以上の記載から、高濃度のグリコ−リジン残基を含む経口消化食物が腎および
血清3DG産生を招くことは明らかであろう。腎疾患、例えば、糖尿病のリスク
を個人に注意し、これらの高い濃度を有する食物を避けることは合理的である。
グリコ−リジン残基の濃度は種々の方法を用いて測定できる。そのような方法の
1つを以下の実施例4に記載する。しかし、グリコ−リジン残基のレベルを正確
に測定できるいずれの方法も、以下に例示する分析法に代えることができる。特
に意図する分析法の例は、限定するものではないが、比色法および免疫学的方法
である。 用いた測定法に関わりなく、調製した食物中のグリコ−リジン残基含量を測定
し、これらの測定の腎臓機能不全に進行するリスクを個体の知らせ、個体にグリ
コ−リジン含量の高い食物の摂取を控えさせることも本発明の範囲のものである
【0095】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は説明
の目的のみであり、本発明を限定するものではない。 実施例1 FL3Pの単離、同定 糖尿病ラット腎臓の過塩素酸抽出物の31P NMR分析は、6.24ppmに
新しいモノホスフェート共鳴を示した。これは、非腎臓組織では見られず、非糖
尿病腎では非常に減じたレベルで存在する。微結晶セルロースカラム上で、1−
ブタノール−酢酸−水(5:2:3)を溶出液として用いて抽出物をクロマトグ
ラフィーに付すことにより観察された共鳴に相当する化合物を単離した。プロト
ン2D COSYによりフルクトース−リジン3−ホスフェートと構造決定した
。これは、後に、上記と同様にして(FinotおよびMauson, Helv. Chim. Acta. 5
2: 1488 (1969))調製したFLと共に動物に注射し、FL3Pへ直接リン酸化さ
れたことにより、確認した。3位が特異的に重水素化されたFLを使用し、炭素
−3におけるホスフェート位置を確認した。これは、カップルおよびデカップル
の両方の31P NMRスペクトルを分析することにより行なった。正常なP−O
−C−HカップリングはFL3PにおいてJ値が10.3Hzのダブレットを生
じるが、3−重水素化FL3Pで見られるように、P−O−C−Dはカップリン
グがなく、カップルおよびデカップルの両方でシングレットを生ずる。FL3P
の特有の特性は、水素化ホウ素ナトリウムで処理した場合、マンニトールおよび
ソルビトール−リジン3−ホスフェートに対応する5.85および5.95pp
mにおける2つの共鳴に変わることである。
【0096】 実施例2 FL3Pの合成 ジベンジルグルコース1ミリモルおよびα−カルボベンゾキシリジン0.25
ミリモルをメタノール50ml中で3時間還流した。この溶液を水100mlで
希釈し、ピリジニウム形のDow−50カラム(2.5×20cm)上でクロマ
トグラフィーに付し、まず、水200mlで、ついで緩衝液(0.1Mピリジン
および0.3M酢酸)で溶出した。標的化合物は、水洗浄の最後および緩衝液洗
浄の初めに溶出した。cbzおよびベンジルブロッキング基を5%Pd/Cで、
20psiの水素にて除去し、収率6%でFL3Pを得た。
【0097】 実施例3 FLおよびATPからのFL3Pの酵素的製造および阻害剤スクリーニング用
の分析 まず、31P NMRを使用して腎皮質におけるキナーゼ活性を測定した。新し
いブタ腎皮質の試料3gを、150mM KCl、5mM DTT、15mM
MgCl2を含有するpH7.5の50mMトリス塩酸中でホモジナイズした。
これを10000gで30分間遠心分離した。硫酸アンモニウムを60%飽和ま
で加えた。4℃にて1時間後、沈澱を遠心分離によって集め、最初の緩衝液5m
lに溶解した。この溶液2mlを10mM ATPおよび10mM FL(上記
実施例1と同様にして調製)と共に37℃で2時間インキュベートした。反応を
300μlの過塩素酸で停止し、遠心分離してタンパク質を除去し、セファデッ
クスG10のカラム(5×10cm)で脱塩した。反応混合物の31P NMR分
析でFL3Pの形成を検出した。 かくして得られたキナーゼ活性の証拠に基づいて、放射能分析を行なった。こ
の分析は、FL3PのDow−1アニオン交換樹脂への結合欠如の利点を活かす
ように設計された。このFL3Pの特徴はその単離の間に見出された。大部分の
ホスフェートがこの樹脂に結合するので、ATPと結合する全ての化合物および
過剰のATPが結合し、FL3Pが溶液中に残ると推測された。第1工程は分析
中のATPを除くに必要な樹脂の量を決定することであった。これは、混合物を
200mgのDow−1の水0.9ml懸濁液にピペットで入れ、撹拌し、遠心
分離して樹脂をパックすることにより行なった。この上澄液0.8mlを、新し
い乾燥樹脂200mgにピペットで加え、撹拌し、遠心分離した。上澄液0.5
mlをEcoscint A10mlにピペットで加え、計数した。残った計数は85cp
mであった。この操作を分析に用いた。粗皮質ホモジネートの60%硫酸アンモ
ニウム沈澱からの沈澱物を4℃にてホモジネート緩衝液に再溶解した。分析は、
50mM トリス塩酸0.1ml中、10mM γ33P−ATP(40000c
pm)、10mM FL、150mM KCl、15mM MgCl2、5mM
DTTを含有する(pH7.5)。FL3P生成速度と酵素濃度の関係を、1
、2および4mgのタンパク質を用い、37℃において30分間、三連測定で測
定した。同時に行なったFLを含まないブランクを差引き、データを記録した。
観察された活性は、約20ナノモル/時/mgタンパク質のFL3P合成速度に
相当した。
【0098】 実施例4 メグルミンおよび種々のポリオールリシンによる3−デオキシグルコソン形成
阻害 a.一般的ポリオール合成 糖(11ミリモル)、α−カルボベンゾキシ−リジン(10ミリモル)および
NaBH3CN(15ミリモル)をメタノール−水(3:2)50mlに溶解し
、25℃で18時間撹拌した。この溶液を過剰のDow−50(H)イオン交換
樹脂で処理して過剰のNaBH3CNを分解した。この混合物(液体+樹脂)を
Dow−50(H)カラム(2.5×15cm)に移し、水でよく洗浄して過剰
の糖およびホウ酸を除去した。カルボベンゾキシ−ポリオールリジンは5%NH 4 OHで溶出した。蒸発させて得られた残渣を水−メタノール(9:1)に溶解
し、10%パラジウム−炭素触媒を用い、水素ガス(20psi)で還元した。
濾過し、蒸発させてポリオールリジンを得る。
【0099】 b.ソルビトールリジン、マンニトールリジンおよびガラクチトールリジンに
よる尿および血漿3−デオキシグルコソンの減少用の実験プロトコール 6尾のラットから3時間尿を集めた。血漿試料も得た。ついで、動物に腹腔内
注射により10マイクロモルの、ソルビトールリジン、マンニトールリジンまた
はガラクチトールリジンのいずれかを与えた。さらに3時間尿を集め、この3時
間の最後に血漿試料を得た。 これらの試料中の3−デオキシグルコソンを以下の実施例5の記載に従って測
定し、変動する容量をクレアチニンに対して標準化した。尿3−デオキシグルコ
ソンの平均減少は、ソルビトールリジンで50%、マンニトールリジンで35%
、ガラクチトールリジンで35%であった。血漿3−デオキシグルコソンは、ソ
ルビトールリジンで40%、マンニトールリジンで58%、ガラクチトールリジ
ンで50%減少した。 c.尿3−デオキシグルコソン減少のためのメグルミンの使用 上記のリジン誘導体の代わりにメグルミン(100マイクロモル)を腹腔内注
射する以外は、上記bと同様に3尾のラットを処理した。注射3時間後、尿中の
平均3−デオキシグルコソン濃度は42%減少した。
【0100】 実施例5 グリコタンパク質摂取後のヒトにおける尿FL、3DGおよび3DFの評価 a.グリコタンパク質含有食品の調製 カゼイン260g、グルコース120gおよび水720mlを混合して均一な
混合物を得た。この混合物を金属板に載せ、65℃で68時間調理した。得られ
たケーキを殺菌して粗い粉末とした。 この粉末は、キエールダール法で測定したタンパク質60%を含有していた。 b.グリコリジン含量の測定 上記工程aで調製した粉末1gを6N塩酸と共に20時間還流して加水分解し
た。得られた溶液をNaOH溶液でpH1.8に調整し、100mlに希釈した
。フルクトースリジン含量を、アミノ酸分析器で、フルクトースリジンの酸加水
分解生成物であるフロシンとして測定した。この方法で、ケーキが5.5%(w
/w)のフルクトースリジンを含有することを測定した。 c.実験プロトコール ボランティアがフルクトースリジンを含まない食事て2日間を過ごし、ついで
上記した食品22.5gを消費、すなわち、フルキトースリジンの用量2gを有
効に受けた。2時間間隔で14時間尿を採取し、24時間の時点で最終の採取を
行なった。 d.尿中のFL、3DGおよび3DFの測定 46℃、1 ml/分にて、アセトニトリル−メチルアルコール−水(45:
15:40)からアセトニトリル−酢酸ナトリウム−水(6:2:92)へのグ
ラジエント溶出系で、Waters C18 Free Amino Acidカラムを用いるWaters 996ダ
イオード・アレイによるHPLCでFLを測定した。定量にはメグルミンの内部
標準を用いた。 試料を脱イオン化した後、HPLCにより3DFを測定した。PA1カラム(
Dionex)を用いるDionex Dx-500 HPLC系で、1 ml/分にて32mM水酸
化ナトリウムで溶出してこの分析を行なった。定量は、合成3DFを用いて毎日
得た標準曲線から行なった。 試料を脱イオン化した後、GC−MSにより3DGを測定した。3DGはPB
S中、10倍過剰のジアミノナフタレンで誘導体化した。酢酸エチルでの抽出に
より、塩を含まないフラクションを得、これをTri−Sil(Pierce)でトリ
メチルシリルエーテルに変換した。Hewlett-Packard5890選択イオンモニタ
ーGC−MS系で分析を行なった。GCは、溶融シリカキャピラリーカラム(D
B−5、25m×0.25mm)上、以下の温度プログラムを用いて行なった。
注入ポート:250℃、開始カラム温度:150℃、1分間保持、16℃/分で
290℃まで昇温、15分間保持。3DGの定量は、U−13C−3DGの内部
標準を用いる選択イオンモニターで行なった。 図3に示すグラフは、1人のボランティアのグリコタンパク質消費後の尿中の
FL、3DFおよび3DGの産生を表わしている。これら3種全ての代謝物の急
速な出現が明らかに示されている。3DFおよび3DGの両方が24時間後も少
し上昇している。 図4に示すグラフは7人のテスト群の各人の3DF産生を表わす。全ての場合
において、同様なパターンが見られた。図4から明らかなごとく、3DF分泌は
FL巨丸の約4時間後ピークとなり、巨丸の24時間後でも3DFのわずかな上
昇を認めることができる。
【0101】 実施例6 飼育実験 N−アセチル−β−グルコースアミニダーゼ(NAGase)は、糖尿病にお
いて尿中に高濃度で排出される酵素である。これは、尿細管損傷の初期のマーカ
ーと考えられているが、尿におけるNAGase増加の病因はよく理解されてい
ない。糖尿病におけるNAGaseの尿排泄増加は、細胞の破壊よりも、尿排泄
の増加を伴う、糖尿病によって誘発される近位尿細管のリソゾーム活性によるも
のと提案されている。 この実施例で得られた結果は、全ての対比において、対照に比し、実験群で3
DFおよびNAGaseレベルが上昇していることを示している。すなわち、グ
リコタンパク質で飼育した動物は、糖尿病で得られた結果と同様に、尿に過剰の
NAGaseを排出する。対照動物と比べて、約50%のNAGase排出増加
がある。これらの動物はまた、対照と比べて5倍の尿3DF増加を有している。
尿3DFは、図5および6から判るように、3DGとよく相関している。両方の
化合物は、再吸収なしに糸球体濾過速度で血漿から除去されるようである。
【0102】 実施例7 腎臓タンパク質のSDS GEL 2尾のラットに毎日、5日間、FLまたはマンニトール(対照として使用)の
5マイクロモルを注射した。動物を殺し、腎臓を摘出し、皮質と髄質に切開した
。組織を、150mM KCl、15mM MgCl2および5mM DTT含
有するpH7.5の50mM トリス塩酸5容中でホモジナイズした。1000
0gで15分間遠心分離して細胞片を除き、ついで、上澄液を150000gで
70分間遠心分離した。可溶性タンパク質を、12%ポリアクリルアミドゲル上
ならびに4〜15%および10〜20%グラジエントゲル上でのSDS PAG
Eで分析した。全ての場合において、マンニトールを注射した動物と比べ、FL
を注射した動物の腎臓抽出物からは低分子バンドが消えるか、視覚的に減少して
いた。
【0103】 実施例8 3−O−メチルフルクトースの合成 無水3−O−メチルグルコース19.4g(0.1モル)および重亜硫酸ナト
リウム1gのメタノール30mlおよびグリセロール15ml中懸濁液を30分
間還流し、ついでα−カルボベンゾキシ−リジン0.035モルおよび酢酸4m
lを添加した。この溶液を3時間還流した。溶液を1容の水で処理し、ピリジニ
ウム形のDowex−50カラム(4×50cm)上でクロマトグラフィーに付
し、まず、水、ついで酢酸ピリジニウムで溶出した。純物質を含むフラクション
を合し、蒸発させた。得られた物質を水−メタノール(9:1)50mlに溶解
し、10%パラジウム−炭素触媒を用い、水素ガス(20psi)で還元した。
濾過し、蒸発させて3−O−メチルフルクトースリジンを得た。 構造式(I)を有する他の具体的な化合物は、当該分野でよく知れた方法に従
って、例えば、アミノ酸、ポリアミノ酸、ペプチド等であってよい選択した窒素
または酸素含有出発物質を、化学的に修飾されていてもよいフルクトースのよう
なグリケーション剤でグリケーションすることにより製造できる。
【0104】 実施例9 FL3Pキナーゼ活性のさらなる分析 a.ストック液の調製 分析用緩衝液を調製した。これは、10mM ATP、2mM MgCl2
5mM DTT、0.5mM PMSFを含むpH8.0の100mM HEP
ESであった。フルクトシル−スペルミン・ストック液を調製した。これは2m
M フルクトシル−スペルミンHClであった。2mM スペルミンHClであ
るスペルミン対照液を調製した。 b.フルクトシル−スペルミンの合成 公知の方法(J. HodgeおよびB. Fisher, Methods Carbohydr. Chem., 2: 99-1
07 (1963))を用いてフルクトシル−スペルミンの合成を行なった。メタノール−
水(1:1)50ml中、スペルミン500mg、グルコース500mgおよび
ピロ亜硫酸ナトリウム80mgの混合物を8:4:1のモル比(スペルミン:グ
ルコース:ピロ亜硫酸ナトリウム)で調製し、12時間還流した。生成物を水2
00mlで希釈し、Dow−50のカラム(5×90cm)に載せた。未反応グ
ルコースを2カラム容量の水で除去し、生成物および未反応のスペルミンを0.
1M NH4OHで除去した。生成物のピークフラクションをプールし、凍結乾
燥し、生成物の定量13C NMRスペクトルにおけるC−2フルクトシルピーク
の積分値(45°パルスで集めたNMRデータ、10秒緩和遅延、NOEデカッ
プリングなし)を測定することにより、フルクトシル−スペルミンの濃度を測定
した。 c.精製用のキナーゼ分析 酵素製剤10μg、分析緩衝液10μl、33P ATP1.0μCi、フル
クトシル−スペルミン・ストック液10μlおよび水70μlを含むインキュベ
ーション混合物を調製し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベ
ーションの終わりに、試料90μl(2×45μl)を2つの2.5cm径セル
ロースホスフェート・ディスク(Whatman P-81)にスポットし、乾燥させた。こ
れらのディスクを十分に水洗した。乾燥後、ディスクをシンチレーションバイア
ルに入れ、計数した。 各酵素フラクションを、適当なスペルミン対照と共に2連で分析した。
【0105】 実施例10 グリコタンパク食によるテスト動物で見られる腎臓病理 3尾のラットを、グリコタンパク食(総タンパク質20%、3%グリケーショ
ン)で8ヶ月飼育し、対照食で飼育した同年齢の9尾のラットと比較した。主な
所見は、グリコタンパク食で飼育した動物の損傷糸球体の実質的な増加であった
。これらの動物に見られる典型的な病変は、ボーマン膜への付着、壁上皮の尿細
管形成異常および腸線維症を伴う糸球体小体の分節性硬化症であった。グリコタ
ンパク食で飼育した3尾の動物全て、および対照食で飼育した動物の1尾のみが
13%以上の損傷糸球体を示した。偶然によってこれが起こる確立は2%より少
ない。糸球体に見られる病理に加えて、尿細管内に多数の円柱(hylinated cast
s)が見られた。量的に表わしていないが、これらの多くは、グリケーション食
で飼育した動物に見られた。NAGaseレベルの増加もグリケーション食で飼
育した動物に見られた。 この実験の結果から、グリケーション食は、糖尿病腎臓で見られると同様な一
連の組織学的病変をテスト動物に起こさせると考えられる。
【0106】 実施例11 妊娠に対するグリケーション食の影響 予備的な実験において、5ペアのマウスをグリケーション食(総タンパク質1
8%、3%グリケーション)で飼育し、7ヶ月にわたって6回出産させた。6回
の妊娠により、つぎの数の生きた子が産まれた:17、23、13、0、3およ
び0。3回目の出産後の、この生きた子の数における急激な低下に鑑み、10ペ
アの2組づつを、各々、グリケーション食(総タンパク質13%、3%グリケー
ション)または対照食(総タンパク質13%、0%グリケーション)で飼育した
。これまでで、2組の子が4回産まれ、両方の組とも同じような結果が得られた
。1回目の妊娠で49/20(グリケーション/対照)の子が産まれた。2回目
で18/41、3回目で37/27、4回目で20/30の子が産まれた。5回
目の妊娠は現在進行中である。血中グルコース・レベルは、実験および対照群で
、各々、120および112mg/dlである。 マウスの尿の3DFレベルの予備測定は、予期したごとく、本明細書に記載し
たグリケーション食で飼育した場合、全身的3DFの実質的な上昇(約5〜10
倍を示した)。
【0107】 実施例12 フルクトシルリジン経路の発癌性影響 フルクトシルリジン経路で形成された代謝物の発癌性能力を調べるため、腎臓
癌腫に非常に罹患しやすいラットの血統を用いて実験を行なった。4尾のラット
をグリコタンパク食で、3尾のラットを対照食で飼育した。飼育10日後、動物
を殺し、腎臓を調べた。グリコタンパク食で飼育した4尾の動物全てにおいて、
1mm以上のサイズの腎臓癌腫が見られたのに対し、対照動物ではこの大きさの
病変は見られなかった。偶然にこれが起こる確立は2%より少ない。このデータ
は、動物の食事中のグリコタンパク質から由来する過剰のフルクトースリジンに
起因する、腎臓尿細管細胞(大部分の腎臓癌腫の起源細胞として知られる)中の
3DGレベルの上昇が、細胞DNAと相互反応し、種々の突然変異原事象、究極
的には発癌事象を招きうることを示している。この過程がヒトの腎臓等の癌の進
行に重要である可能性がある。
【0108】 実施例13 3−デオキシ−フルクトースの尿排出がタイプI糖尿病の患者における微アル
ブミン尿症の進行の指標であること 上記したごとく、糖尿病においては、グリケーション中間体である、3−デオ
キシクルコソン(3DG)およびその還元性解毒生成物、3−デオキシフルクト
ース(3DF)の血清レベルが上昇する。これらの化合物のベースラインレベル
と、微アルブミン尿症(MA)進行後の関係を、Joslin Diabetes Centerの、イ
ンスリン依存性真性糖尿病(IDDM)および微アルブミン尿症(1990〜1
993から始めた2年間のベースラインの複数回測定に基づく)の、ACE阻害
剤を用いていない患者の予期集団からの39人の群で試験した。 ランダムに採取した少量(spot)の尿における3DFおよび3DGのベースラ
インレベルをHPLCおよびGC−MSで測定した。つぎの4年間で高レベルの
MAまたはタンパク尿症の進行した個体(n=24)は、進行しない個体(n=
15)と比べてlog3DF/尿クレアチニン比の有意に高いベースラインレベル
を有していた(p=0.02)。この研究で測定したベースラインレベルは、進
行した者で約0.24マイクロモル/mgクレアチニンであるのに対し、進行し
ない者で約0.18マイクロモル/mgクレアチニンであった。ベースライン3
DG/尿クレアチニン比は群の間で相違しなかった。HgATC(グルコシル化ヘ
モグロビンの主要フラクション)のベースラインの調整は、これらの所見を実質
的に変えるものではなかった。これらの結果は、糖尿病における尿3DFと、腎
臓合併症の進行を関連させるさらなる証拠を与える。
【0109】 A.3−デオキシフルクトースの定量 テスト試料0.3mlを、0.15mlのAG 1−X8および0.15ml
のAG 50W−X8樹脂を含むイオン交換カラムに通して試料を加工した。こ
のカラムを0.3mlの脱イオン水で2回洗浄し、遊離液体を吸引し、0.45
mmミリポアフィルターで濾過した。 処理した試料を注入し(50μl)Dionex DX500クロマトグラフィーシステム
を用いて分析した。carbopac PA1アニオン交換カラムを用い、16%水酸化ナト
リウム(200mM)および84%脱イオン水で溶出した。パルス電流検出器を
用い、電気化学的に3DFを検出した。予定した3DF濃度をスパンする標準3
DF溶液を、各未知試料の前後に流した。
【0110】 B.尿クレアチニンの測定 プレートリーダーを用いるように修飾した終点比色法(Sigma Diagnostic kit
555-A)により、尿クレアチニン濃度を測定した。クレアチニン濃度は、尿中に
ある代謝物レベルの測定のために尿容量で標準化して評価した。 C.尿中のアルブミンの測定 テスト対象の尿中のアルブミンレベルを評価するため、少量の尿を採取し、N
−アルブミン・キット(Behring)を用いBN100装置上で免疫比濁法を実施
した。抗アルブミン抗体は商業的に利用できる。尿中のアルブミンレベルは、限
定するものではないが、ELISA分析、放射免疫分析、ウエスタンおよびドッ
トブロッティングを含むいずれかの適当な分析法で評価できる。 Joslin Diabetes Centerの患者の研究で得られたデータに基づき、糖尿病にお
ける微アルブミン尿症の進行に尿3DFの高いレベルが伴うと考えられる。この
所見は、糖尿病に悩まされる患者における重篤な腎臓合併症の進行しやすさを評
価するための新たな診断パラメータを提供する。 以上、本発明の具体例を記載し、および/または実施例を挙げたが、上記の開
示から、種々の他の具体例が当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、
上記した具体的な記載および/または実施例に限定するものではなく、特許請求
の範囲から逸脱せずに、かなりの変形および修飾が可能である。
【0111】
【表2】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は不可逆的に修飾されたAGE−タンパク質に至る多段階に
含まれる反応開始ステップを示す。
【図2】 図2はリジン回収経路に関する反応を示す。
【図3】 図3は2gのFLを与え24時間経過観察した単一の個体由来の
3DF、3DGおよびFLの経時変化を示す尿の性質のグラフ表示である。
【図4】 図4は2gのフルクトースリジンを与えた7人のボランティア由
来の3DFの経時的な尿の排出のグラフ表示である。
【図5】 図5は対照動物群と0.3%糖化タンパク質含有食餌を維持した
試験群との間の3DFとN−アセチル−β−グルコサミン(NAG)の比較のグ
ラフを示す。
【図6】 図6は対照食餌または糖化タンパク質強化食餌のいずれかを与え
たラットの尿における3DFレベルと3DGレベルとの間の正比例を示すグラフ
である。
【図7】 図7Aおよび図7Bは、正常体および糖尿病患者の尿中の断食3
DGレベルの断食3DFレベルに対してプロットしたグラフ表示である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB ,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,GE,G H,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 フランシス・カプラー アメリカ合衆国19149ペンシルベニア州フ ィラデルフィア、ダイアストン・ストリー ト3034番 (72)発明者 ベンジャミン・シュワーゴールド アメリカ合衆国03755ニューハンプシャー 州ハノーバー、ポスト・オフィス・ボック ス951 (72)発明者 サンディープ・ラル アメリカ合衆国19466ペンシルベニア州ラ ンズデイル、ハイポイント・サークル1116 番 (72)発明者 バンギン・ス アメリカ合衆国19111ペンシルベニア州フ ィラデルフィア、ソリー711番、ファース ト・フロアー Fターム(参考) 2G045 AA16 AA25 CB03 DA36 DA38 DA77 FB01 JA01 JA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 患者の糖尿病合併症が進行しうるか否かの指標として、少な
    くとも1つの予め定めた3DFのベースラインレベルに対して、患者からの生物
    学的試料の少なくとも1つの3DFレベルを測定することを特徴とする糖尿病患
    者が糖尿病に伴う病状を経験するリスクの評価方法。
  2. 【請求項2】 生物学的試料が尿である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 病状が微小アルブミン尿症である請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 病状がタンパク尿である請求項1記載の方法。
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