【発明の詳細な説明】
膀胱癌の決定およびモニタリング発明の分野
本発明は、個体における膀胱癌の存在または非存在を決定する方法、ならびに
個体の身体における膀胱癌を処置するため、および膀胱癌の過程のモニタリング
のための方法論の有効性のモニタリングの方法に関する。ヒト絨毛性ゴナドトロ
ピン(hCG)のβサブユニットのコアフラグメントである、尿中ゴナドトロピンペ
プチドがマーカーとして使用され、泌尿生殖器系の良性疾患または正常性とは対
照的な膀胱癌を識別する。そして、癌の処置の前後での膀胱癌の経過のモニタリ
ングが可能になる。発明の背景
膀胱癌は、全世界で発生率が高く、そしていくつかの国(例えば、エジプト)で
は、男性の悪性疾患のもっとも普遍的な型である;そして女性においては、発生
率は乳癌のすぐ次の順位である。この疾患は、当該分野で公知であり、中東およ
び極東において、局所的に進行した病変の高発生率、および扁平上皮癌の高発生
率によって特徴づけられている。Khaled,H.M.1993,The Cancer J.,6,65-7
1 Bladder Cancer and Bilharziasis Today。先進国では、膀胱癌の優勢な形態
は、移行上皮癌であり、そしてこれらの症例の70%が、表面性で、非侵襲性であ
る。従って、膀胱癌の病理は、特定の集団と相関して変化し得、そして組織型に
関わらず、予後を左右する主な因子は、病期、段階、および膀胱外組織への腫瘍
の広がりである。地理および/または集団と相関する膀胱癌の自然の歴史の差異
に関わらず、腫瘍マーカーは、疾患の管理を補助するために使用し得る。少なく
とも最初には、各集団について、正常な個体および良性疾患の患者についての腫
瘍マーカーの値の範囲は、悪性疾患の患者を識別するカットオフの決定を可能に
するために、決定されなければならない。一般に、腫瘍マーカーについてのカッ
トオフ値(これ未満に95%の正常被験体および良性の被験体が入る)は、正常性と
悪性との間を区別する点として選択される。この95%信頼区間は、悪性疾患の検
出において、種々の腫瘍マーカーの感受性の比較に有用である。
種々の腫瘍マーカーが、膀胱癌を検出するために評価されていて、それらは感
度および特異性の様々な結果および限界点を有する。組織ポリペプチド抗原(TPA
)は、最も信頼性の高いマーカーの1つであり、そして癌性胚抗原(CEA)およびフ
ェリチンとTPAとの使用によって、膀胱癌の検出におけるTPAの診断値が上昇した
。ごく最近では、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット(β-hCG)の尿中レベ
ルが、エジプト人の膀胱癌患者および良性の尿路異常の患者で評価された。この
マーカーは、癌患者の60.3%で上昇したが、良性疾患の患者の29.7%でも、正常
対照群の限界を上回って上昇した。従って、以前の研究は、β-hCGが個体におい
て膀胱癌を決定およびモニタリングする方法として有用であることは決定しなか
った。別の研究において、血清βhCGのレベルの上昇は、移行上皮膀胱癌の患者
の47%で起こることが示されている(I.Marcillacら、Free Human Chorionic Go
nadotropin beta subunit in Gonadal and Nongonadal Neoplasms.Cancer Rese
arch 52,3901-3907,1992)。別の研究において、ヒト絨毛性ゴナドトロピンであ
るβhCG、およびβコアフラグメントは、転移移行上皮癌の患者の一部の血清お
よび尿中に存在する優占種であることが示された(R.K.Ilesら、Composition o
f intact hormone and free subunits in the human chorionic gonadotropin-l
ike material found in serum and urine of patients with carcinoma of the
bladder.Clinical Endocrinology,32,355-364,1990)。
1994年10月18日に発行された米国特許第5,356,817号(METHODS FOR DETECTING
THE ONSET,PROGRESSION,AND REGERSSION OF GYNECOLOGICAL CANCERSと題され
る)は、女性における婦人科の癌の進行および退行を検出するための、ヒト絨毛
性ゴナドトロピンβサブユニットコアフラグメント(HCGとは異なる)の使用を示
唆した。従って、このマーカーは、特定の婦人科の癌のマーカーとして知られて
おり、そして尿のような血液以外の体液のモニタリングによる女性における婦人
科の癌の検出について知られている。これは、癌を検出するためのマーカーとし
ては、いくつかの場合には、しばしば使用されない。なぜなら、血液体液から決
定されるレベルは、正確な決定のためには、不十分であるからである。このマー
カーは、妊娠中の尿の主要成分であり、そして種々の非栄養膜の腫瘍(直腸癌、
膵癌、胆管癌、胃癌、および肺癌を含む)の患者の尿中に生じることが知られて
いる。研究により、これは種々の主要素式に発現することが実証されている。こ
のマーカーは、子宮頸癌、子宮内膜癌、外生殖器の癌、および卵巣癌の患者の尿
中に病期に依存する様式で発現される。発明の要旨
本発明の目的は、悪性疾患の検出に対して特異性および感度が良好な、個体に
おける膀胱癌の存在または非存在を決定する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、身体での膀胱癌の経過をモニタリングするための方法、
および/または膀胱癌の処置のための方法論の有効性を決定するための方法を提
供することである。
本発明のなお別の局面は、先の目的に従って、非侵襲性でありかつ血液以外の
体液(尿を含む)を使用して、不便さが最低でかつ正確性が良好に行われ得る、方
法を提供することである。
本発明によれば、個体において膀胱癌の存在および非存在を決定する試験方法
は、血液以外の体液サンプルを個体から得る工程、次いでサンプルの体液中の尿
中ゴナドトロピンペプチド(UGP)レベルを決定する工程を包含し、正常なレベル
を超えて上昇したレベルは、膀胱の癌を示し、そして正常なレベルは、癌の非存
在を示す。好ましくは、体液は、尿であり、そして従来のアッセイ技術が、尿中
ゴナドトロピンペプチド(UGP)の量を検出および定量するために使用される。
本発明の別の方法において、個体は、膀胱癌を有すると知られている個体の身
体において、膀胱癌を処置するための方法論の有効性についてモニターされる。
本方法によれば、第1段階では、個体は、膀胱癌を軽減するかまたは処置するた
めの任意の公知の方法論で処置される。次の段階で、個体の血液以外の体液のUG
Pレベルが、処置の成功の尺度を示すためにモニターされる。好ましくは、癌の
処置の前に、血液以外の体液サンプルは、最初のUGPレベルを決定するために試
験され、次いで試験が処置後に行われて次のUGPレベルが決定される。処置後、
経時的に首尾良く測定された場合、UGPレベルの低下から、ある程度処置が首尾
良く行われたことが示される。レベルの上昇によって、癌の再発および増殖が示
される。一方で、正常値の維持は、処置の成功の励みになる。
なお別の方法において、上記の試験および/または他の医学的手順のいずれか
の結果として膀胱癌を有することが知られている者は、膀胱癌の経過についてモ
ニターされ得る。成功した処置後の膀胱癌の再発もまた、決定され得る。UGPレ
ベルは、尿または他の血液以外の体液から経時的に決定され、その変動は、体内
の癌の活性の上昇および低下を示す。
本発明の特徴は、標準的なアッセイ技術が、UGPレベルをモニターするための
公知の方法において使用され得ることである。本発明の別の特徴には、UGPの陽
性のレベルの確立が含まれ、このレベルより上で良性の泌尿器系疾患から膀胱癌
を区別し得る。このレベルは、好ましくは1.4fmol/mlを上回るが、0.7fmol/ml程
度に低くてもよい。UGPレベルについての本発明の試験は、試験される患者また
は個体に与える不快感を最小にして、非侵襲的に行われ得る。1回の試験で、問
題のレベルの上昇が示され得るが、一方、一定の期間にわたる延長された試験が
、個体のモニタリングおよび/または標準的な膀胱癌の処置の有効性のモニタリ
ングのために用いられ得る。尿は、身体からの採取後即座に試験され得るか、ま
たは相当の時間の後に試験され得るが、この試験の良好な感度および正確性はな
お維持されている。図面の簡単な説明
本発明の上記および他の目的、利点は、以下の明細書を添付の図面と合わせて
読むことによってよりよく理解される。この図面は、正常な被験体、良性の泌尿
器系疾患の患者、および膀胱癌の患者のUGP値の分布を例示する。各群について
の、被験体数および平均UGPレベル(fmol/ml)が示される。各集団平均についての
95%信頼区間は、菱形で示す。好ましい実施態様の説明
本発明の方法は、生きている哺乳動物、好ましくはヒトまたは動物における、
膀胱癌の存在または非存在のマーカーとしてのUGPの試験を必要とする。UGPまた
は尿中ゴナドトロピンペプチドはまた、尿中ゴナドトロピンフラグメント(UGF)
、ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットコアフラグメント、およびβコアフ
ラグメントとしても知られる。UGPは、Birken,S.ら、Endocrinol.123,572-58
3(1988)、The Structure of Human Chorionic Gonadotropin Beta Core Fragmen
t from Pregnancy Urineに報告されるように、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
のβサブユニットの残基6〜40および52〜92に同一な1次配列を有する10.5キロ
ダルトンの糖タンパク質である。公知のように、UGPの炭水化物部分は、hCGとは
極めて異なり、すべてのO連結種を欠き、そしてコアマンノースのみを保持して
いる。N-Acetylglucosamine,and fucose residues Blithe,DLら、Endocrinol
.125,2267-2272(1989),Carbohydrate Composition of Beta Core。本明細書
中で用いられるUGPは、上記のように尿中ゴナドトロピンペプチドを意味する。
UGPは尿中で測定され、そして血液以外の体液において測定され得る。尿が好
ましい。なぜなら、身体での非侵襲的技術において採取が容易であるからである
。UGPは尿中で非常に安定であり、そして妊娠中の尿を用いた研究によって、サ
ンプルは、4℃または25℃で21日間、または-20℃で6ヵ月間保存し得ることが
示されている。臨床サンプルの安定性を維持するためには保存料は必要ではない
。UGPは、循環から迅速にクリアランスされるので、血清中では測定は容易でな
い。UGPは妊娠中の尿の主要成分であり、そして妊娠個体が試験される場合は、
試験は、妊娠の決定もまた行われなければ、膀胱癌の検出については、正確でな
いかもしれない。妊娠が検出された場合、この即席の試験は、UGPの指標として
は使用され得ない。
UGPの上昇が見出された場合、現在までは、婦人科の癌の同定の懸念があるの
みであった。しかし、現在では、UGPレベルの上昇が見出された場合、医者は、
婦人科の癌および膀胱癌の両方の存在を調査すべきである。
本発明の試験は、(存在する場合は)悪性疾患の管理において用いるためのUGP
レベルを決定するために、侵襲性膀胱癌および/または良性の泌尿器系疾患の患
者の手術前および術後において、および正常個体において、UGPの発現を評価す
るに十分である。
UGPレベルを決定するための試験は、従来のアッセイ技術であり得る。例とし
て、1つのアッセイは、hCGβフラグメントおよびβサブユニットのレベルを決
定し、次いでC-末端ペプチド(このフラグメントには存在しない)について試験す
ることによる、UGPのレベルの決定を含み得る。好まいしアッセイとしては、hCG
βフラグメントまたはβサブユニットのいずれかを認識するモノクローナル抗体
またはポリクローナル抗体の使用が挙げられる。本発明に有用な公知のアッセイ
としては、尿中のUGPの試験および定量的測定のための、CIBA Corning Diagnost
られる。
異なる抗原性部位に対する酵素標識ポリクローナル抗体を利用する、2部位酵素
イムノアッセイである。
マウス抗UGPでコートしたポリスチレンチューブを、尿標本または適切な標準
物質(Calibrator)またはコントロールとともに、インキュベートする。このイン
キュベーションの間、標本、標準物質、およびコントロール中に存在するUGP分
子は、固相上で抗体に結合する。標本中に存在する結合しなかった物質を、チュ
ーブの洗浄によって除去する。第2の工程において、西洋ワサビペルオキシダー
ゼと結合したポリクローナル抗UGPを、チューブに添加する。UGP分子が標本中に
存在する場合は、抗UGP結合体は、チューブ上でUGPに結合する。結合しなかった
結合体は、チューブ洗浄によって除去する。次に、チューブをTMB基質溶液(過酸
化水素および3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)と共にインキュベートして、
結合した抗UGP-結合体の量の測定値となる色を発色させる。発色した色の強度は
、450nmに設定した分光光度計で読みとる。色の強度は、アッセイの作用範囲内
では、標本中のUGP濃度に比例する。標準曲線は、吸光度に対して標準物質のUGP
濃度をプロッティングすることによって得る。標本およびコントロールのUGP濃
度は、標準物質とともに動き、標準曲線から決定され得る。尿中分析物の濃度は
、サンプル間で変動し得るので、尿中のクレアチニンレベルを、この変動を補正
するために用い得る。この実施例において、UGP値を、そのそれぞれのクレアチ
ニン値で割って、正規化した値を得る(fmol UGP/mgまたはmmolクレアチニン)あ
るいは、24時間尿サンプルを使用し得るか、または尿を、他の要素(例えば、比
重)
によって、標準化し得る。
本発明の特定の実施例において、450人の個体を3群に分け、そして試験を行
って膀胱癌の存在または非存在を決定した。
本研究は、3群に分類された450個体を含んでいた。第1群には、Egyptian Na
tional Cancer Instituteに収容された泌尿器膀胱癌を有する237人の患者が含ま
れていた。この群は、24歳〜70歳の年齢の範囲の171人の男性および66人の女性
からなっていた。リンパ節の関連は、32人の患者に存在したが、205人の患者に
存在しなかった。腫瘍組織の組織病理学的試験によって、134の扁平上皮細胞癌
、83の移行上皮癌、10の腺癌、2つの疣贅癌、2つの平滑筋肉腫、および6つの
未分化癌が示された。病期の相関として、14人の患者はTI期およびTII期であり
、179人の患者はTIII期であり、そして44人の患者はTIV期であった。段階に分類
した場合、41人の患者は1度であり、118人の患者は2度であり、そして78人の
患者は3度であった。ビルハルツ住血吸虫卵は、143の腫瘍において同定され、
そして94の腫瘍では存在しなかった。病期分類および段階分類は、それぞれ、確
立されたTNMおよびWHOシステムに従って行われた。
第2の群には、泌尿器科の外来病院であるKasr EL-Aini Hospital,Egyptから
募集された良性尿路疾患を有する97人の患者からなり、そして、20歳〜63歳の年
齢の範囲の90人の男性および7人の女性が含まれていた。この良性疾患の範疇に
は、尿路ビルハルツ住血吸虫症を有する83人の患者、および他の良性障害(良性
前立腺過形成、腎結石、精索静脈瘤、および膀胱潰瘍を含む)を有する14人が含
まれる。第3の群には、臨床的研究および研究所調査により証明された、疾患を
有さない116人の正常な健康なコントロールが含まれた。この群は、Al-Azhar Un
iversity,Calro,Egyptの学生および労働者から募集された、20歳〜52歳の年齢
の範囲の107人の男性および9人の女性からなっていた。
全ての個体に、24時間尿を採集するように頼んだ。約10mlの各尿サンプルは、
2000〜3000×gで10分間遠心分離され、そして上清は、分析されるまで−80℃で
凍結された。
尿採集は、24時間サンプルに限定されなかった。例えば、151人の女性からの
早朝尿サンプルおよび24時間サンプルにおけるUGPレベルが比較され、そして2
つの型のサンプル間の有為な相関が見出された(r=0.934)。
尿中ゴナドトロピンペプチド(UGP)は、新たに溶解した尿サンプルにおいて測
定された。UGPは、酵素結合イムノアッセイを用いて測定された(Triton UGP EIA
,Ciba Corning Diagnostics,Alameda,Calfornia)。Triton UGP EIAは、二重
決定基(double-determinant)酵素イムノアッセイである。このアッセイは、コー
トされたチューブに固定化したモノクローナル捕獲抗体、および検出抗体として
西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したアフィニティ精製ポリクローナル抗体を
利用する。このアッセイは、0.1fmol/mlの最小検出可能濃度を有する。尿サンプ
ルに加えられた既知量のUGPの回収率は、86%〜109%の範囲である(平均96%)
。内部アッセイおよび外部アッセイの再現性は、アッセイの範囲にわたって、そ
れぞれ、4.12%〜4.95%、および6.07%〜7.85%の範囲である。病理学的尿サン
プルは、0.999の平均相関係数に伴って、直線的な希釈応答を示した。
このアッセイは、以下のモル交差反応性を示す、UGPに高度に特異的である:
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG、0.11%)、hCGβサブユニット(0.043%)、h
CGαサブユニット(0.009%)、ヒト黄体形成ホルモン(hLH、0.001%)、hLHβサ
ブユニット(0.005%)、ヒト甲状腺刺激ホルモンおよびβサブユニット(hTSHお
よびhFSH-βサブユニット、<0.001%)、ならびにヒト卵胞刺激ホルモンおよび
βサブユニット(hFSHおよびhFSH-βサブユニット、<0.001%)。このアッセイ
は、尿中に存在する黄体形成ホルモン由来のフラグメントとの交差反応を排除す
るために最適化されている。以下の尿分析物は、以下の濃度までのレベルでアッ
セイを妨害しない;尿素(5g/dL)、尿酸(150mg/dL)、クレアチニン(500mg/dL)、
クレアチン(200mg/dL)、ビタミンC(500mg/dL)、ウロビリン(4mg/dL)、グル
コース(30mg/dL)、およびヘモグロビン(10mg/dL)。尿サンプルの受容可能なpH範
囲は、約5.5〜約8.5である。
さらなる改変は、当業者に明らかである。以下の実施例は、本発明の種々の局
面を例示するが、その有用性を限定することを意図しない。実施例1
UGPレベルを、正常な個体、良性泌尿器科疾患を有する被験体、および侵襲性
膀胱癌を有する被験体由来の、450回の時間を設定した24時間尿サンプルにおい
て測定した。正常、良性疾患コントロール、および癌患者群は、男性が優勢であ
り、それぞれ107人(92%)、90人(93%)、および171人(72%)の男性被験体か
らなっていた。これらの被験体範疇におけるUGP値の分布を図に示す。UGP値を、
fmol/ml(24時間尿サンプル)の単位で報告する。統計学的分析を、JMPソフトウ
ェア(SAS Institute)を用いて行った。集団平均を、Tukey-Kramer HSD法を用い
て比較した。正常な被験体における0.06fmol/mlおよび良性泌尿器科疾患患者に
おける0.11fmol/mlと比較して、膀胱癌患者における平均UGPレベルは、4.86fmol
/mlであった。これらの集団における平均UGPレベルは有意に異なる(P<0.01)。
この集団における悪性疾患と良性疾患および正常な個体との区別におけるUGP
アッセイの臨床成績を評価するために、2つのカットオフ(cutoff)を用いた。第
1のカットオフは0.7fmol/mlであり、良性疾患集団の平均UGPレベルを上回る2
標準偏差に基づいて算出された95%特異的なレベルであった。第2のカットオフ
は、同じ集団におけるUGP値の分布に基づく100%特異的なレベルであった、1.4f
mol/mlであり、これらのカットオフを用いて、膀胱癌を検出するためのUGPの疫
学的感受性を、種々の臨床的パラメーターに従って評価した。
表Iは、116人の正常被験体および良性泌尿器科疾患を有する97人の患者におけ
るUGPの発現を示す。疾患コントロール患者の大多数(N=83.86%)は、良性尿
性ビルハルツ住血吸虫症を有していた。正常および疾患コントロール集団におけ
る平均UGPレベルは同様であり、そして0〜0.13fmol/mlの範囲であった。1%未
満の正常個体、および6%の良性疾患を有する患者は、0.7fmol/mlカットオフを
超えるUGPレベルを有した。良性ビルハルツ住血吸虫症の群は7.2%で、0.7fmol/
mlカットオフを超える患者数が最大であることを示した。いずれの患者も1.4fmo
l/mlカットオフを超えていなかった。
表IIは、疾患の組織学的型の相関としての膀胱癌患者におけるUGPの発現を示
す。全ての患者に対する平均UGP値は4.86fmol/mlであった。扁平上皮細胞癌(SCC
)および移行上皮癌(TCC)を有する患者は、それぞれ、4.84fmol/mlおよび5.40fmo
l/mlの最も高い平均UGPレベルを有した。他の組織学的型の悪性疾患(腺癌、未
分化癌、疣贅癌、および平滑筋肉腫を含む)を有する患者は、2.76fmol/mlの
平均UGPレベルを有した。これらの組織型間の平均UGPレベルにおける差異は、統
計学的に有意でなかった(p>0.05)。両方のカットオフを超える患者のパーセ
ントがTCCおよびSCC患者に類似し、例えば、65%のSCC患者および71%のTCC患者
は、0.7fmol/mlのカットオフを超えた。他の組織学的型の疾患を有する患者は、
全ての症例の50%において両方のカットオフを超えた。
疾患の病期による膀胱癌患者の分析を表IIIに示す。TI期患者およびTII期患者
については3.22fmol/mlから、TIII期患者については4.64fmol/mlへ、TIV期患者
については6.24fmol/mlへのUGP値の増加が観察された。病期の進行に伴って、平
均UGPレベルが増加する明らかな傾向にかかわらず、これらの平均値は有意に異
ならなかった(p>0.05)。同様に、カットオフレベルを超える患者のパーセント
は、病期と相関して増加した。0.7fmol/mlのカットオフで、TI期患者およびTII
期患者の64%、TIII期疾患を有する患者の71%、およびTIV期患者の81%がこの
カットオフを超える。1.4fmol/mlカットオフを超える患者の数はこの同じ傾向に
従うが、TI期およびTII期の患者の57%からTIV期の患者の73%の範囲で一致して
より低かった。
膀胱癌患者が疾患の段階に従って分類される場合(表IV)、平均UGPレベルは
、1度の患者について最も低く、2度および3度の患者についてはより高かった
が、類似していた。1度の患者は、2.93fmol/mlの平均UGPレベルを有し、そして
2度および3度の患者は、それぞれ、5.67fmol/mlおよび4.66fmol/mlの平均UGP
レベルを有した。平均UGPレベルにおける差異は、1度と2度および3度の疾患
の組合せとの間でのみ有意であった(p<0.05)。UGP値の過剰発現は、0.7fmol/m
lのカットオフで全ての段階について類似し、1度の患者の66%、ならびに2度
および3度の患者のそれぞれの75%および73%がカットオフを超えた。1.4fmol/
mlのより高いカットオフで、このカットオフを超える1度の疾患を有する患者の
パーセントは、44%であり、2度(66%)の患者および3度(59%)の患者より
有意に低かった。
結節状態に従った癌患者の分類および腫瘍組織におけるビルハルツ住血吸虫卵
の存在を表Vに示す。両方の範疇について、ネガティブおよびポジティブの場合
の両方における平均UGPレベルは、互いにおよび全ての癌患者の平均値に実質的
に同一であり、4.82〜4.88fmol/mlの範囲であった。同様に、両方のカットオフ
での過剰発現の割合は、互いにおよび全ての癌患者の値に実質的に同一であり、
0.7fmol/mlカットオフで72〜73%の範囲であり、そして1.4fmol/mlカットオフで
58〜62%の範囲であった。最終的に、性に従った膀胱癌患者の分類は、平均UGP
レベルにおいて差異を示さなかった。(表VIにおけるデータを参照のこと。)
上記の実施例は、UGPもまた侵襲性膀胱癌を有する患者の大多数において過剰
発現されることを証明した。
この研究集団において、UGPは、悪性疾患に感受性かつ特異的なマーカーであ
ることを証明した。UGPは、正常個体由来のサンプルおよび良性泌尿生殖器系疾
患を有する患者のサンプルにおいてわずかに上昇したのみであった。膀胱癌を有
する患者における平均UGPレベルは、正常個体および良性疾患を有する患者にお
ける平均UGPレベルより、それぞれ81倍および44倍高かった。95%および100%の
特異的レベルで、それぞれ、73%および60%の全感受性が観察された。UGPレベ
ルと組織学的型、病期、段階、結節の関連、またはビルハルツ住血吸虫の付随と
の統計学的に有意な相関は証明し得なかったが、疾患の病期に伴って平均UGPレ
ベルが増加する傾向が観察された。
エジプト人の膀胱癌患者のこの集団における悪性疾患を検出するためのUGPの
感受性は、他の腫瘍マーカーの感受性に匹敵するか、またはより良好であった。
95%および100%の特異性で、それぞれ73%および60%の感受性が観察された。U
GPは、良性尿路障害を有する患者において極度に低い陽性を示した。
良性疾患を有する患者と膀胱癌患者との間のUGPレベルにおける極度な差異に
より、UGPは、これらの疾患の鑑別診断に有用である。
UGPの使用は、尿(容易に得られかつ非侵襲性であるサンプルである)におい
て測定可能な高度に安定なマーカーであるという事実により容易にされる。
上記の実施例により、良性泌尿器疾患について試験されたヒトにおける膀胱癌
(すなわち、良性疾患由来の悪性疾患(または膀胱癌)である)を区別するため
のレベルが確立された。このレベルは、0.07fmol/mL以上のレベルが、良性疾患
からの悪性癌(本明細書中では膀胱癌)の明快な区別点を定義する1.4fmol/mL以
上のレベルを有する区別点として有意であることを示す。もちろん、女性を試
験する場合、尿は、膀胱癌以外の癌の存在を示す機会があるかもしれない。従っ
て、女性を試験する場合、試験結果が陽性である女性は、さらに試験するか、ま
たは他の形態の癌または妊娠を除外するために予め試験しなければならない。生
検を使用し得、同様に、他の癌の非存在または膀胱癌の存在を確認するための他
の公知の方法を使用し得る。同様に、妊娠において、いくつかの場合において、
UGPのレベルがより高ければ、膀胱癌の指標が確実であることをさらに試験する
必要があり得る。膀胱癌と良性疾患との区別のためのレベルは、集団の間で変動
し得るが、上記の実施例は、UGPの使用を異なる集団に適用する方法、またはさ
らに、クレアチニンまたは他の型の標準化を必要とする尿収集の他の方法(例え
ば、スポット尿)と共に適用する方法を示す。
UGP測定を、膀胱癌のスクリーニング試験として使用し得る。膀胱癌(すなわ
ち、悪性疾患)と良性疾患との間には明らかな区別がある。
さらに、UGP発現は、膀胱癌の組織学的型から独立している。従って、これを
、任意の組織型の疾患(特に、移行上皮癌および扁平上皮癌)の検出、モニタリ
ング、またはスクリーニングに使用し得る。
膀胱癌の存在または非存在についての合理的な程度の確実性を有する試験(す
なわち、スクリーニング試験)に加えて、男性および女性の尿におけるUGPの測
定を使用して、膀胱癌を有することが知られている個体の膀胱癌の進行をモニタ
ーし得る。より高いレベルのUGPが、進行した病期および段階において観察され
、そして1期および2期の疾患を、3および4の疾患と統計学的に区別し得る。
例えば、UGPレベルを、膀胱癌を有することが知られている個体において、別
の方法で測定し得る。膀胱癌の決定を、生検を用いてまたは用いずに本発明の方
法により行い得る。従って、上昇したレベルでの第1のUGPレベルを膀胱癌患者
において確立している場合、そのレベルを、24時間、4日、1週間、毎月、また
は他の期間でモニターして、疾患の進行または退行を測定し得る。ここで、より
高いレベルは増大した癌を示し、そしてより低いレベルは低減した癌を示し、そ
して正常なレベルは疾患の非存在を示す。正常なレベルとして、24時間尿サンプ
ルを測定する場合、尿中の0.7fmol/mL以下または少なくとも1.4fmol/mL以下の任
意のレベルが考慮される。しかし、正常な個体および良性疾患を有する個体と、
悪性疾患を有する個体とを区別するための最適のカットオフを、研究されている
各集団について決定する必要があり得る。他の血液以外の体液(例えば、間質液
など)、リンパ液、または個体の尿路に見出された他の液体もまた、UGPレベル
を測定するために使用し得る。
個体における疾患の進行または退行をモニターするために、UGPレベルを、上
キットを用いて測定する。サンドイッチアッセイまたは競合アッセイフォーマッ
トにおけるモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を利用する他
のアッセイ技術を同様に使用して、UGPレベルを測定し得る。さらに、患者を、
膀胱癌を低減する方法論を用いて処置し得る。任意の公知の方法論(例えば、X
線処置、化学的処置、膀胱内化学療法、レーザー治療、免疫治療、手術など)を
使用し得る。このような処置の後、個体の身体を、処置後さらに悪性疾患の存在
または非存在を示す、再度見出されたレベルで尿をモニターすることにより、UG
Pレベルについてモニターし得る。従って、以前に議論されたレベル以上のレベ
ルは、悪性疾患を示す。レベルの低下は、癌の減少を示すが、レベルの増加は癌
の増殖および進行を示す。正常なレベルは、おそらく患者の回復を示す。
癌治療による処置後の患者のモニタリングを、任意の選択された所望の期間で
のUGPレベルの定量的測定を行うことにより達成し得る。実施例2
患者の第2の群(早期膀胱癌を有する患者をより多く含む)を、UGPについて
評価し、この結果を表VIIに示す。TI期およびTII期疾患におけるUGPレベルは、
正常およびコントロール集団を上回って有意に上昇し、そして侵襲性TIII期疾患
を有する患者におけるレベルと有意に異ならなかった。従って、このデータは、
UGPがまた、早期膀胱癌の信頼のある指標であることを示す。実施例3
患者における癌の経過をモニターする特定の実施例において、T3期の膀胱癌を
有する患者を手術により処置する。
患者の尿中のUGP定量レベルを、4.8fmol/mLのレベルで処置の前に測定した。
処置後、患者を一ヶ月間隔でモニターし、術後の1ヶ月、2ヶ月、および3ヶ月
で0.3fmol/mLのレベルを有することを見出した。これは、患者に疾患が残存しな
かったことを示す。
この理論的な実施例において、患者は、UGPが正常まで低下する。これは、処
置の成功および少なくともその期間の間の患者の正常への回復を示す。値の上昇
または元の値は、処置が成功しなかったことの指標である。
しかし、定量的試験は異なる病期の癌を示すことに注意しなければならない。
従って、UGPレベルと1期、2期、3期、4期または癌の他の病期との間になさ
れ得る相関が存在する。癌の種々の病期は、当該分野で公知であり、そして「Cl
inical Oncology」,M.D.Abeloffら編、Management of Specific Malignancies
と称する章、66 Bladder 1422-1433,1955に記載される。
本発明の特定の実施態様を上記に記載するが、多くの改変が可能である。全て
の場合において、本発明は、膀胱癌の存在または非存在を示すため、およびそれ
と尿性疾患とを区別するため、および/または膀胱癌を有する患者の処置をモニ
ターするための、UGPレベルの測定を包含する。
表I 正常被験体およびコントロール被験体におけるUGPの発現 a107人の男性、9人の女性。b90人の男性、7人の女性。c良性前立腺肥大症、腎
結石、精索静脈瘤、膀胱潰瘍。
表II 膀胱癌の患者におけるUGPの発現:組織学による分類
a腺癌、未分化癌、疣贅癌、平滑筋肉腫。b171人の男性、66人の女性。
表III 膀胱癌の患者におけるUGPの発現:病期による分類表IV 膀胱癌の患者におけるUGPの発現:段階による分類
表V 膀胱癌の患者におけるUGPの発現:結節状態およびビルハルツ住血吸虫症
による分類表VI 膀胱癌の患者におけるUGPの発現:性による分類
表VII 膀胱癌の異なる病期におけるUGP
*p<0.05でTIIIと有意に異なる。
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