【発明の詳細な説明】
発明の名称
カチオン交換可能なアルミノケイ酸塩材料を介した気体の接触転化
発明の属する技術分野
本発明は、一酸化二窒素、一酸化窒素及び二酸化窒素を含む混合気体(通常、「
NOx」と称される)を初めとする混合気体及び/又はSOx、CO2、CO、ダイ
オキシン類及び多環式芳香族炭化水素(通常、「PAH」と称される)ならびに
それらの混合物などの(それらに限定されるものではないが)他の汚染物気体の
接触転化及び/又は吸着へのアルミノケイ酸塩材料の使用に関する。本発明はさ
らに、微粒子も含む上記混合気体又は気体に関するものでもある。
これらの有毒気体又は汚染物気体は通常、多くの工業的工程(例:石炭の燃焼
、化成品の製造)及び内燃機関における燃焼工程の生成物として生じ、その割合
は多様である。NOxの場合、これらのアルミノケイ酸塩材料によって、環境上
有害な化学物質が窒素及び/又は水及び/又は酸素などの無害な気体に転化され
る。
本明細書に記載したようなある種のアルミノケイ酸塩材料が、これらの気体又
は混合気体の接触転化用の触媒として機能するか、あるいはそれらの気体又は混
合気体を吸着することが明らかになっている。これらの化学工程は、200℃〜
850℃という高温にて、広い範囲の気体流量及び気体組成条件で行うことがで
きる。
発明の背景
現在、工業用煙突からのNOxの除去には、2種類の商業的方法が通常行われ
ている。第1の方法はアンモニアによるNOxの選択的接触還元を促進するチタ
ニア触媒の使用に基づくものであり、バナジア、タングステン、鉄、モリブデン
、コバルト、マンガン、ウラン、銅、クロムもしくはニオブの酸化物によって促
進される場合が多く、それについての包括的総説がある(ジーシーボンド、エス
エフタヒア(G.C.Bond and S.F.Tahir),1991年,Appl.Catal.,第71巻,1ペー
ジ;H.Bosch and F.Janssen,1988年,Catal.Today,第2巻,369ページ)。この
商業的方法の反応は、以下の式によって表すことができる。
4NO+4NH3+O2=4N2+6H2O
この後者の触媒系は300〜400℃の温度範囲で作用するのが普通であり、
排気ガス中のSOx存在下での触媒の力の低減に対して良好な耐性を示す。商業
的には、触媒は、微粒子による触媒床の塞栓を低減する効果のある並流式で運転
されるプレート型又はハニカム型のモノリスとして提供される(エフ ナカジマ
、アイ ハマダ(F.Nakajima and I.Hamada),1996年,Catal.Today,第29巻,
109ページ)。この触媒は所望の生成物に対して良好な選択性を示すが、実用面で
はいくつかの欠点を有する。その欠点には、耐摩耗性に乏しく、低い反応温度(
<425℃)での使用に限定されること、ならびにコストが高いことなどが挙げ
られる。さらに、アンモニア反応物が系で生成するフライアッシュを汚染するた
め、工業地域での長期的有効使用がさらに困難になる。さらに、アンモニア自体
も可燃性で有毒であることから保管が困難であり、従って、住宅地域で使用する
のは望ましくない。
上記後者の材料の性能を向上させることを目指した最近の開発には、酸化チタ
ン及びバナジウム化合物もしくは銅化合物を含む粘土鉱物層間化合物の製造など
がある(エヌ ヨシダ、ジェイ カトウ(N.Yoshida and J.Kato),1996年,日
本公開特許公報第08,117,597号)。同様に、ヤンとリー(R.T.Yang and W.Li,
1995,J,Catal.,第155巻,414ページ)は、Fe3+イオン交換TiO2柱状粘
土の性能について調査した。WO3/V2O5/TiO2触媒はSO2及びH2O(工
業的煙道では一般的な成分)の存在下で若干触媒の力が損なわれるが、柱状粘土
材料の活性は、SO2及びH2Oの存在によって促進される。それについては、S
O2及びH2Oにより、触媒反応の中心部分と考えられる触媒表面でのブレンステ
ッド酸部位の濃度上昇が起こるからであると推定されている。
第2の方法では、ゼオライト材料を用いて、アンモニアと一酸化窒素との間の
上記の反応を触媒する。ただし、この例では、最適運転温度はかなり高い(約5
00℃)。例えば、ファモスら(Famos et al.,米国特許第5,451,387号)によっ
てイオン交換ゼオライト(例:ZSM5)の使用が報告されており、ファン・デ
ン・ブリークら(van den Bleek et al.,オランダ特許第9,302,288号)によっ
て、セリウム交換モルデナイトゼオライト類が報告されている。サリバンら(Su
llivan et al.,1996年,App.Catalysis B:Environmental 7巻,415-417ページ
)によって、Cu−ZSM5が従来のバナジア/チタニアSCR触媒に匹敵する
活性を示すことが明らかにされており、コマツら(Komatsu et al.,1995年,J.
Phys.Chem.,第99巻,13053ページ)は赤外分光測定法から、ゼオライト表面で
生成した硝酸化合物が、次にアンモニアと反応して生成物の窒素を生じると推定
している。
過去数十年にわたり、一酸化窒素を直接分解してその構成元素とすることは、
科学者にとって重大な課題となってきた(エム シェレフ(M.Shelef),1995年
,Chem.Rev.,第95巻,209-224ページ)。この反応は、追加の反応物を必要とし
ないことから、現在の汚染問題に対する特に興味深い解決法である。
NO(g)→1/2N2(g)+1/2O2(g)ΔG=−20.7kcal/
mol(298K)
この反応は熱力学的には好ましいが、イワモトら(Iwamoto et al.,1986,J.
Chem.Soc.Chem.Comm.,1272)が最近示すまで、あまり高い収率は示されなかっ
た。Cu−ZSM5ゼオライトが500℃にてかなり大きな速度で、NOxをそ
の構成元素に分解できるという発見により、大幅な進展が見られた。現在のとこ
ろ、Cu−ZSM5は、アルミノケイ酸塩に基づく材料の中で唯一の結果がでる
ものと考えられている。しかしながら、Cu−ZSM5触媒は実用においては活
性が不十分であると考えられている(コマツら(Komatsu et al.),1995年,J.P
hys.Chem.,第99巻,13053ページ)。さらに、実用化又は商業的使用を達成する
上で必要な1〜2桁の活性上昇をCu−ZSM5について行うことができる方法
はないように思われる(ボグナーら(Bogner et al.),1995年,Applied Catal
ysis B:Environmental 7,153-171ページ)。活性上昇に通常用いられる方法では
運転温度を高くするが、そうするとCu−ZSM5の活性は低下する(Bogner et
al.,1995,前出)。シェレフ(Shelef,1995,前出)によれば、Cu−ZSM5
の活性がこのように比較的低い主要な原因には、Cu−ZSM5の結晶構造と、
該構造により触媒反応に対しCu含浸孔が示されていることとが関係している。
直接NOx分解に対して若干の活性を示すことが報告されている別の系には、イ
ットリウム−バリウム−酸化銅超伝導体(YBCO)(シマダら(Shimada et al
.),1988年,Chem.Letts.,.1997ページ)及びケイ酸塩骨格にセリウムイオンも
しくはランタニウムイオンが組み込まれた層状ケイ酸アルミニウム構造、特に雲
母(E.Hums,PCT国際出願公開第96/00016号)などがある。関連する一酸化二
窒素(N2O)の窒素ガス及び酸素ガスへの分解は、アルカリ金属又はアルカリ
土類金属などの活性化剤を含むハイドロタルサイト類、シェーグレナイト類(sj
ogrenites)及びピロオーライト類(pyroaurites)などのアニオン系粘土鉱物を
使用することで行うことができる(ファリスら(Farris et al.),米国特許第5,47
2,677号)。
直接NOx分解反応の工業的利用に好適な触媒を生成することが困難なために
、
各種炭化水素によるNOxの選択的接触還元(SCR)についての研究が広く深
く行われている。炭化水素は、NOx汚染物とともに排気ガス流中に認められる
場合が多い。詳細には、自動車分野におけるさらに燃料効率の高い希薄燃焼エン
ジンの開発は、排気ガスの酸化性が非常に高くなるということであり、従って課
題となるのは、過剰の酸素存在下でNOxを選択的に還元できる触媒を作ること
である。アルミナ薄膜上に白金、ロジウム及びセリアの混合物を有する現在市販
されている三元触媒では、正味の(net)還元条件下で充分にNOxを還元できる
ものではない(ケイ シー テイラー(K.C.Taylor),1993年,Catal.Rev.Sci.E
ng.,第35巻,457ページ)。豊富に供給され、比較的安価であり、通常は利用可
能であることから、メタンの使用が注目されるようになっている(ジェイ エヌ
アモール(J.N.Amor),1995年,Catal.Today,第26巻,147ページ)。これまで
、炭化水素によるNOxの選択的還元に対して活性を示す材料は多くの場合、金
属交換ゼオライトであった(Komatsu et al.,1995,前出;K.C.Taylor,1993,
前出;Bogner et al.,1995,前出)。しかしながら、多くの場合、工業的排ガス
の2つの代表的成分であるSO2及びH2Oが触媒活性に対して有害であることが
認められており(K.C.Taylor,1995,前出)、現在の推算では、商業的に使用する
には、ゼオライト系は活性が4桁程度も低い(K.C.Taylor,1995,前出)。従って
、NOxの選択的接触還元のように最も有望な利用分野であっても、ゼオライト
基質や金属交換ゼオライトは商業的に使用されていない。
国際出願公開第WO/9500441号には、該出願に記載のカオリン誘導体に関して、
該誘導体が、原料のカオリンと比較して、45m2/g〜400m2/gという高
い比表面積を有し、アンモニウムイオンの交換に関して50〜450meq/1
00gという高いカチオン交換能力を有することが記載されている。さらに、そ
のような性質により、該カオリン誘導体は、炭化水素の転位及び転化において使
用されるような従来の触媒に対する有用な代替品となり得ると推測されている。
別の用途では、メタノールの脱水素によるギ酸メチル生成などの還元−酸化触媒
反応において、カオリン誘導体にランタニド元素及び/又は遷移金属を負荷した
ものが使用される。該出願には、前記カオリン誘導体の使用に関する具体的実施
例もあり、そこでは、高温でのメタノールの脱水素によるギ酸メチル生成及び高
温でのエタノールの脱水素によるアセトアルデヒドの生成に関して、アルカリ金
属カチオンを銅と交換している。しかしながら、国際出願公開第WO95/00441号で
は、メタノール蒸気とエタノール蒸気の接触反応について言及されているのが、
接触反応に使用した場合の金属交換カオリン誘導体使用の唯一の例である。
しかしながら、選択的接触還元及び/又は直接分解による、NOxならびにC
O、CO2、SOx、ダイオキシン類及びPAHなどの他の有毒ガスの環境的に無
害な物質への転化に関して、国際出願公開第WO95/00441号に記載のようなカオリ
ン非晶質誘導体を含めた本明細書に記載のアルミノケイ酸塩材料を利用できるこ
とを本発明者らは見出した。NOxガスの接触転化の場合のような接触反応の機
構には、アルミノケイ酸塩誘導体によって保持した場合の交換可能な金属イオン
の電子配置が関与するように思われ、該アルミノケイ酸塩誘導体は、触媒の全体
的活性に対して驚くべき効果を有するように思われる。
発明の概要
本発明で使用されるアルミノケイ酸塩材料は、主として四配位のアルミニウム
を有し、室温の水溶液中で1meq/100g以上のカチオン交換能力(CEC
)を有する。好ましくは該材料は、以前の開示(例:国際出願公開第WO96/18576
号及び第WO96/18577号)に規定された測定方法を用いて、100meq/100
gより大きいCECを有し、より好ましくは160〜900meq/100gの
CECを有し、最も好ましくは350〜450meq/100gのCECを有す
る。
該アルミノケイ酸塩材料が主として四配位のアルミニウムを有するということ
は、27Alマジック角回転(MAS)によって55〜58ppm(FWHM=約
23ppm)にAl(H2O)6 +3に関連する単一ピークが得られることからわか
る。
本発明で使用されるアルミノケイ酸塩材料には、アルカリ土類金属Mg2+、C
a2+、Sr2+及びBa2+;遷移金属Cr3+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、
Zn2+、Ag+;重金属Pb2+、Cd2+、Hg2+;ランタニド類La3+及びNd3 +
;あるいはアクチニドUO2 2+のうちのいずれかより選択される二次金属によっ
て部分的又は完全に交換されていても良いアンモニウムイオン又はアルカリ金属
カチオンである交換可能カチオンも含まれる。
1態様において、本発明で使用されるアルミノケイ酸塩材料は非晶質であり、
従って国際出願公開第WO95/004411号に記載のカオリン非晶質誘導体又はKAD
、若しくは国際出願公開第WO96/18576号又は第WO96/18577号に記載のアルミノケ
イ酸塩誘導体(ASD)を含む。これらの非晶質材料は、あまり長い範囲の構造
的秩序を持たず、CuKα X線照射において14°〜14°2θ(又は場合に
よっては22°〜32°2θ)という広いハンプ(hump)を有する。不純物に由
来するもの以外、鋭い回折ピークは認められない。そのようなKAD又はASD
は、原料のアルミノケイ酸塩化合物をMOH及び/又はMX(Mはアルカリ金属
であり、Xはハライドである)と反応させることで得ることができる。そのよう
な化合物は、下記一般式の化学組成を有し得る。
MpAlqSi2Or(OH)sXt・uH2O
式中、0.2≦p≦2.0、0.5≦q≦2.5、4.0≦r≦12、0.5
≦s≦4.0、0.0≦t≦1.0及び0.0≦u≦6.0、Mはアンモニウム
イオン又はアルカリ金属カチオン、Xはハライドであり、NH4 +、Na+、K+、
Li+、Rb+はCsとしてのMは上記の二次金属のいずれかによって交換可能で
ある。
別の態様において、本発明で使用されるアルカリ金属アルミノケイ酸塩材料は
、原料のアルミノケイ酸塩化合物か含酸化アルミニウム化合物及び含酸化ケイ素
化合物の組み合わせかを、含酸化アルカリ試薬又は含水酸化アルカリ試薬とを反
応させることで得られる、充填(stuffed)シリカ多形体関連構造を有する非晶
質若しくはわずかに又は部分的に結晶化したアルミノケイ酸塩化合物を含有し得
る。そのような充填シリカ多形体には、カルシライト、カーネギエイト(Carnegi
eite)、ユークリプタイト又はカスミ石などがある。これらの多形体は、リンケ
イ石、クリストバライト又は石英構造の充填誘導体である。そのような材料につ
いては、国際出願公開第WO96/12678号に記載されている(該出願の開示内容は、
本明細書に文献援用される)。
本発明で使用されるアルミノケイ酸塩材料には、カオリン類鉱物から製造する
ことができる変性カオリン類などもあり、それにはカオリン類鉱物の層の膨張及
び収縮が含まれ、それらの層は、Si四面体シート1枚及びAl八面体シート1
枚を有する。そのような変性カオリン類及びそのカチオン交換可能アルミノケイ
酸塩誘導体については、国際出願公開第WO97/15427号に記載されている(該出願
の開示内容は、本明細書に文献援用される)。
本発明の1形態によれば、上記のようなアルミノケイ酸塩材料を用いて、炭化
水素存在下に、NOxの安定な接触転化を行ってN2及びH2Oとすることで、選
択的接触還元(SCR)を行うことができる。これらの材料は、多様な孔径及び
表面構造で得ることができ、NOxの転化に対して活性な銅、鉄、セリウム又は
コバルトなどの表面結合金属をかなりのレベルで含有することができる。別法と
して、国際出願公開第WO95/00441号、WO96/18576号、WO96/18577号、及び
WO96/12678号に記載のようなカチオン交換可能材料も、低レベルの転化ではある
が、この接触転化に効果を及ぼし得る。さらに、ガス流中にNOxの転化に活性
な金属イオンが所定量含有されている場合、上記のいかなる形のアルミノケイ酸
塩化合物も転化に効果を及ぼし得る。この形態では、ガス流由来の金属イオンが
アルミノケイ酸塩基質に吸着され、そこで炭化水素存在下に、同様の選択的NOx
接触還元が起こる。
金属イオンの交換性ならびに金属負荷基質についての表面積値(BET値>4
0m2/g)が高いことは、後の接触反応成績に関してアルミノケイ酸塩材料に
望ましい性質である。例えば表1には、国際出願公開第WO95/00441号、第96/185
76号、第WO96/18577号に記載されているアルミノケイ酸塩材料についての値と比
較した、ZSM5、カオリン粘土及び柱状粘土などの従来のアルミノケイ酸塩材
料についてのカチオン交換能力(CEC)及び表面積の値を示す。
本明細書に記載のアルミノケイ酸塩材料によって得られた表1に示した値の範
囲は、NOx還元用の触媒として他の技術者が行った試験下での範囲よりかなり
大きい。このような特性の組み合わせ及び800℃を超える温度に対する熱的安
定性から、NOxとの上記の接触反応についての好ましい条件が得られる。本発
明の好ましい形態では、これら材料は、他の材料の場合には600℃以下の温度
で水が存在すると競合生成物の分解が起こり得る熱水条件で安定である。
驚くべきことに、NOx、ダイオキシン類及び/又はPAHあるいはそれらの
組み合わせなどの有害ガスの転化に関するこれら材料の触媒挙動に影響するのは
、金属交換イオンの形、すなわち電子の状態又は結合価である。本明細書では、
これら電子状態の性質について、当業者に公知の分光法及び吸着/脱着法を用い
て、表2に代表的な例を示す。個々のデータセットについて、等価な金属交換ゼ
オライト類の電子状態との比較を行う。
本発明の別の形態では、SOxの存在による触媒性能の明らかな低下を起こす
ことなく、SOxなどの有毒ガス存在下で、これら材料をNOxと反応させること
もできる。
本発明の別の形態では、ダイオキシン類及び多環式芳香族炭化水素(PAH)
などの気体の有機化合物とこれら材料を反応させることもできる。
これら新規なアルミノケイ酸塩材料の製造方法は、以前の国際出願公開第WO95
/00441号、WO96/18576号、WO96/18577号、及びWO96/12678号に記載されており、
国際出願公開第97/15427号に記載のような別経路によっても得ることもできる。
当業者にとっては、これら以前の出願公開に開示のような製造方法又は製造方法
の組み合わせを適切に選択することで、この新規材料群から、主要な物理的・化
学的特性を広く選択することができる。その主要な物理的・化学的特性には、表
面積、カチオン交換能力、部位の利用性、半孔性及び微孔性部位の相対的パーセ
ントならびにSi/Al比などがある。この記載に関しては、以下の表2のまと
めで、具体的な試料番号によって以下に例示した形の新規材料を製造するための
各種一般法を示す。
当業者に公知の従来の方法を用いて、生成物又は中間化合物に手を加えること
で、表2に示したこれら各種試料内及び該試料間でのバルク特性をわずかに変え
ることができる。例えば、表2に示した硝酸銅溶液を用いる二次工程で得られる
カチオン交換の程度は、硝酸銅溶液のモル濃度及び/又は交換反応速度を変える
ことで、かなり増減することができる。別法として、酢酸コバルト及び酢酸銅(
又はそれらの組み合わせ)などの他の含金属溶液を用いて、適切なレベルの銅及
び/又はコバルト交換アルミノケイ酸塩材料を得ることができる。これら金属交
換アルミノケイ酸塩材料は、気体の接触転化に好適な材料である。
アルミノケイ酸塩化合物表面の金属イオンの性質は、X線光電子分光法(XP
S)によって最も明確となる。例えば、銅交換KAD材料についてのXPSの研
究から、触媒表面には2種類の銅化合物が存在することがわかる。933.5e
Vにあるサブバンドによって表されるものは酸化銅化合物を示すものであり、9
35.5eVにあるサブバンドによって表されるものはアルミノケイ酸塩骨格に
組み込まれたCu+イオンを典型的に示すものである。調べた全試料の部分集合
について表3に示したXPSデータから、KAD基質の構成、従ってKAD材料
の製造方法によって、各種銅化合物の相対濃度が制御されることが明らかである
。
接触反応材料の分野の当業者によって確認される一般的な特性は、接触反応又
は分解反応に対して活性部位を提供する基質材料の化学組成に関係する。これら
材料の組成は、バルク又は表面の化学で記述することができる。これら新規材料
の一般的なバルク化学組成は、上記の以前の開示に記載されている。これらバル
ク組成は、原子吸光分光分析及び/又は誘導結合プラズマ分光分析を用いる、電
子顕微分析及び湿式化学分析などの公知の方法によって測定した。
これら新規材料の表面化学は、X線光電子分光法(XPS)の分野における当
業者であれば容易に把握することができる。概してこの方法は、触媒材料の上表
面層を調べるものであり、較正標準組成物に対するスペクトルピーク高さを比較
することによって定量的データが提供される。表4には、以下に挙げたガスの利
用に関して試験・開発した広範な触媒材料についての表面化学組成を示す。これ
らのデータは、触媒としての試験を行う前の粉末材料のmm単位の領域にわたる
走査の平均として得た。
これらのデータから、元素比などの他の重要な特性を求めることができる。従
って、本開示に挙げた範囲のサンプルにおけるSi/Al、K/Al及びCu/
Al比がXPS測定によって得られ、これを表5に示した。
重要な点として、表5に示したデータからわかるように、NOxに対して好適
な触媒活性を示す、あるいは好適な温度でNOxを直接分解する全試料について
、Si/Al比は1.0〜1.5の範囲である。それとは対照的に、NOxの排
気接触反応に推奨のゼオライトでは通常、Si/Al比は>15である(ヨシム
ラら(Yoshimura et al.),日本特許出願公開第JP-08,108,043号(96,108.043))
。表5には、Cu−ZSM5についての比の例も挙げてある。表5に示したよう
に、本開示で詳細に記載の新規材料は、従来のゼオライト製造方法によっては容
易に得られない非常に低いSi/Al比を有する。
理論に拘束されるものではないが、金属交換アルミノケイ酸塩材料の上記特性
は、NOxなどの有毒な無機ガス及びダイオキシン類や多環式芳香族炭化水素な
どの有毒な有機ガスの効果的な化学転化(接触反応による)、分解又は吸着に必要
な材料に代表的なものである。
これらのアルミノケイ酸塩材料は、従来のセラミックス形成技術を用いて加工
することで、特徴的な形状又はモノリスに形成できる。しかしながら、これまで
のこの材料についてのほとんどの試験において、粉末又はペレットを利用してお
り、500℃で2時間にわたって流動空気中で高温焼成することで前処理を行っ
ている。
本発明の方法は、200〜650℃の温度での有機反応物存在下のNOx還元
に適しており、その場合NOxはアルミノケイ酸塩材料によって吸着される。有
機還元剤には、アルカン類、アルケン類などの炭化水素、ベンゼンなどの芳香族
化合物及び多環式炭化水素ならびにアルコール類及びアルデヒド類などの含酸素
有機化合物などがある。
200〜650℃という温度は、選択した有機還元剤によって決まる。この方
法は、炉、焼却炉又は自動車排気系からの排気ガスの処理関係で使用可能である
。
この反応の方法は、アンモニア及び尿素などの含窒素還元剤を用いたNOxの
還元にも利用可能である。アンモニアの使用には200〜650℃の温度が使用
可能であり、尿素の使用には350〜500℃の温度が使用可能である。
本発明の方法は200〜850℃でのNOxの直接分解による窒素生成にも使
用可能である。この特定の利用分野用のアルミノケイ酸塩材料は、Fe、Cu又
はAg若しくは実施例8に記載のような他の金属を含む。
CO2の方法に関しては、CaO及びMgOなどの塩基性酸化物又は他のアル
カリ土類金属酸化物ならびにCuO、ZnO又は鉄酸化物などの遷移金属酸化物
を不純物として含むかあるいはそれらを含有するASDを用いる。これは、硝酸
塩もしくはハライドなどの適当な酸化物の可溶性塩とアルミノケイ酸塩材料(以
下、アルミノケイ酸塩誘導体又はASDと称する)とを反応させ、次に乾燥及び
加熱することで行うことができる。
CO2を含有するガス又はCO2そのものをASDに通すことで、CO2をAS
Dに吸着させる。好適な温度は、室温から300℃の範囲である。
CO2に関して前述したものと同様の方法を、SO2を含むSOxの処理に適用
することもでき、その場合SOxをASDに通過させ、ASDによって吸着させ
るか又は還元して硫黄とする。SO2吸着の温度は通常0〜500℃であり、よ
り好適には室温から150℃である。ASDには、上記のような塩基性金属酸化
物又は遷移金属酸化物を不純物として添加することができる。
本発明の方法はSO2の酸化によるSO3の生成に利用することもでき、その場
合、Pt、Pd、Ag、Cu、Co、Mn又はCrを含むASDを150〜65
0℃の温度で使用する。COの酸化によるCO2の生成にも、同様の方法を用い
る。
ダイオキシン類又はPAHの処理では、ASDにPt、Pd、Ag、Cu、C
o、Mn又はCrが含まれ、好適な温度は250〜650℃である。ダイオキシ
ン類は、H2O、HCl及びCO2に転化することができる。ダイオキシン類の処
理に関する例は実施例9に示す。
PAHについては、本発明の方法を行う好適なガスとしては、アントラセン、
フルオレン、ピレン、ペリレン、クリセン及びナフタセンなどがある。
上記の例では、本発明の触媒によって処理されるガス流の転化率又は該ガスか
らの除去率は、使用される温度によって決まり、使用する温度が高いほど、ガス
流からの汚染物気体の除去がより有効になる。
発電所、化学処理プラント、炉などの設置型煙道の場合、約200〜250℃
の温度では、約30〜40%の転化率もしくは除去率を得ることができる。この
転化率は、350℃の場合には60%まで上昇し得る。
自動車の場合、450〜500℃の温度で80%を超える転化率を得ることが
でき、これはディーゼルにも適用可能であり、その場合は200〜600℃の温
度とすることができる。
以下の実施例は、高温燃焼から生じた気体の接触転化に関しての、これらアル
ミノケイ酸塩材料の各種特性を示すものである。
実施例 実施例1
NOxの分解
NOx還元の予備試験を行えるよう改良した固定床マイクロリアクタ系で、実
験室規模の実験を行った。マイクロリアクタの各種構成要素である固定床リアク
タ、オンラインの質量分析装置、ガスクロマトグラフィー装置及びガスクロマト
グラフ−FTIR補助装置に組み付けられたインサイトウ透過FTIRセル及び
DRIFTSセルを図1に示す。
NOx分解に対する活性に関して、5種類の銅交換材料の挙動を調べた。室温
で、pH6.5の硝酸銅水溶液に適切な量のK−KADを加え、2時間攪拌した
。これらの実験では、反応パラメータは以下の通りとした。
・触媒温度:550℃
・初期NOx濃度:2000ppm
・流量(1時間当たりガス空間速度(GHSV)):15000/h-1
これらの実験についての図2の転化データから、100%NOx転化率が55
0℃及び商業的条件に近い流量で得られていることから、銅交換触媒Cu−KA
D3−1は、優れた直接NOx分解能力を示すことがわかる。銅交換触媒材料に
ついてのこれら予備試験で用いた条件は、Cu−ZSM5についての以前の試験
で用いられている条件(N.Yoshida and Y.Kato,1996,前出)よりかなり厳しい
。イワモトら(1986,前出)が示しているデータとこれら予備試験に関するケイ
酸とを比較すると、上記の同じ条件下で、銅交換触媒材料の方が、Cu−ZSM
5より1桁以上活性が高いことがわかる。
Cu−KAD(又はCu−ASD)の触媒活性向上及び失活に対する優れた耐
性は、触媒表面に存在する銅化合物の性質に関連している。インサイトゥFTI
R試験から、図3に示したように、Cu−KADやCu−ASDと比較して、C
u−ZSM5上においてNOx/O2曝露後に存在する吸着化学種の構造にかなり
の差があることがわかる。重要な点として、Cu−KAD又はCu−ASD触媒
は、吸着硝酸化合物、ニトロ化合物及びニトリト化合物の形成を促進する。最近
のアーデルマンらの報告(Adelman et al.,1996年,Appl.Cat.B,第11巻,L1)
には、Cu−ZSM5ゼオライト上でのアルカンによるNOxの選択的還元につ
いての機構がまとめてあり、その反応において吸着される硝酸化合物及びニトロ
化合物の重要性がかなり強調されている。同様に、センチら(Centi et al.,19
96年,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.,第92巻,5129ページ)も、13CMAS N
MR、FTIR、反応性試験及びUV−VIS−NIR反射分光分析を併用して
、吸着した硝酸化合物と炭化水素との間の反応で最初に、触媒反応で非常に重要
な有機ニトロ化合物が生成することを確認している。結果的に、Cu−KAD触
媒又はCu−ASD触媒上で吸着されたNOxの濃度が高くなり、それが接触反
応工程で有効である。
実施例2 銅交換及びカリウム交換アルミノケイ酸塩のスペクトル分析
NOx及びO2の相互作用についてのFTIR研究を、銅交換及びカリウム交換
KAD材料について行い、そのスペクトルデータを、以下のように表6及び7に
まとめた。これらのデータは、これら新規材料について利用可能な種類の表面部
位の性質ついて、及びNOxガスを用いた接触反応及び/又は分解反応における
前記部位での活性化学種の役割についての基礎データを提供する。比較のため、
Cu−ZSM5についての同様のデータも表にした。
赤外データから、カリウム交換触媒及びカリウム型から製造した銅交換触媒の
両方に、約1390〜1400cm-1及び1360cm-1のバンドが存在するこ
とから、これらの触媒には、カリウム化合物と銅化合物が組み合わせて存在して
いることがわかる。XPS研究で、全ての銅交換試料にカリウムが存在すること
が明らかであることから、その結論が裏付けられる。しかしながら、交換カリウ
ムをほとんどもしくは全く含まない銅交換試料も同様に、これらの接触反応又は
直接分解反応に好適な材料であると考えられる。実施例3
NOxを用いた反応時におけるCo交換アルミノケイ酸塩材料のスペ
クトル分析
コバルト交換アルミノケイ酸塩化合物は、本来的に表面積が大きいことを特徴
とし、アルミノケイ酸塩基質を有し、「過剰交換」反応を起こす可能性を示すとい
う点で、Cu−KAD又はCu−ASDと同様である。本明細書に記載の実施例
7の方法に従って、K−KADと硝酸コバルト溶液を接触させることで、Co−
KADを製造した。触媒表面にNOx/O2混合ガスを曝露させた後に室温で記録
したFTIRスペクトルを調べると、従来のコバルト交換ゼオライト類(例:C
o−ZSM5)と比較して、コバルト交換KAD材料の方が吸着性が優れている
ことがわかる。図4には、これらスペクトルデータをまとめた。
吸着されたニトロ化合物及びニトリト化合物の形に割り当てるのが最も妥当で
あるCo−ZSM5についてのバンド強度(アーデルマンら(Adelman et al.)
,1996年,J.Catal.,第158巻,327ページ)は、図示したいずれのCo−KAD
材料における強度よりかなり弱いことがわかる。やはり、約1390及び136
0cm-1でのバンドから、Co化合物及びカリウム化合物の存在が裏付けられる
。実施例4
焼却炉からのNOxの選択的接触還元及び直接分解
K、Co及びCuに基づく触媒材料の試験を、オーストラリアのブリズベーン
にある公共の焼却炉から出る排ガス流について行った。一次燃焼室、焼却炉の着
火ゾーン及び二次燃焼室の全てからの排ガス流について、燃焼条件によってかな
り高いレベルでNOxが発生するような高酸素含有量排ガスに関する試験を行っ
た。この焼却炉システム及びガス流のサンプリング箇所の略図を図5に示す。留
意すべき点として、サンプリングは、排気用煙突の頂部からではなく、高レベル
の標的ガス(例:NOx、水蒸気、SOxなど)が発生する箇所で行う。
試験当阻ラーギピッチ(Lurgi Pitch;アルミナ精錬会社提供の廃棄材料)を
燃焼させた。この材料を燃焼させることで、かなりの量の炭化水素及び酸素(N
Ox以外に)が燃焼室内に発生した。これらのガス流内には、高濃度の水蒸気、
炭化水素(主として軽炭化水素)及びSOxがあるのが普通である。ただしこれ
らの実験では、いずれの場合でも正確な濃度は計測しなかった。炭化水素濃度に
関するデータは、二次燃焼室で得られるが(約3ppm)、一次燃焼室内での炭化
水素濃度は急速に変動するため、測定が困難である。そうではあっても当業者で
あれば、一次燃焼室での炭化水素濃度が500ppmを超えていると考えられる
ことは理解できよう。
いずれの実験においても、図6に示した配置を用いた。この配置では、長さ9
00mmの石英管の中央に触媒材料の充填物(径が約5.0〜5.5mmで、長
さ60〜70mm)が挿入してあり、石英ウールを用いて固定されている。基準
値測定のため、石英ウールのみが充填された並列の石英管にガス流を通した。
試料K−KAD5−15を除くいずれの場合においても、温度500℃(±5
0℃)で860mmリンドバーグ(Lindberg)炉内に反応管を固定した。試料K
−KAD5−15の場合には、反応は400℃(±50℃)で行った。次に、乾
燥機を用いて(Perma Pure dryer)ガス流のコンディショニングを行って、微粒
子及び水分を除去した。Analytical Developments Company社製の0〜2000
ppmの赤外線NOx検出器を用いてNOx濃度を監視した。
毎分1.0〜1.2リットルの速度で触媒材料にガスを通した(1時間当たり
ガス空間速度(GHSV)は約60000/h)。全ガスについてのサンプリン
グ時間は、20分〜30分の範囲であった。
触媒材料についてのこれら現場試験から、使用した流量及び温和な温度で、N
Oxの還元はかなり進み、実現可能であることがわがる。調べた一連の触媒材料
の中では、試料K−KAD3−8が90%未満の転化効率を示しているが、他の
試料はいずれも90%を超える転化効率を示している。各種温度ならびに炭化水
素及び/又は水蒸気の各種組み合わせを用いてこれら触媒を使用すると、各種レ
ベルの転化効率が得られるであろう。例えば、試料K−KAD3−8について示
したように、二次燃焼室で炭化水素が比較的少ない状態では、この触媒材料で処
理されるガス流中のNOx濃度低下が相対的に小さくなる(転化率約11.5%)
。しかしながら、この場合のように炭化水素が比較的少ないことで、500℃(
±50℃)であっても、この触媒材料でNOxの直接分解が起こり得ることがわ
かる。炭化水素濃度がかなり高いと仮定される一次燃焼室及び着火ゾーンからの
ガスについて挙げた例では、新規材料の存在下でのNOxの還元が、選択的接触
還元工程によって起こる。該材料は約750℃まで安定であり、それより低い温
度(例:400℃まで)で使用可能であることは明らかであることから、広範囲
の使用条件下で、比較的高い転化効率が得られるよう、これら材料を至適化でき
る可能性がある。実施例5
ディーゼルエンジン排気ガス中のNOxの選択的接触還元
ディーゼルエンジンからの排ガス流について、Co及びCuに基づく触媒材料
の試験を行った。いずれの実験でも、図6に示した配置を用いた。この配置では
、長さ900mmの石英管の中央に触媒充填物(径が約5.0〜5.5mmで、
長さ60〜70mm)が挿入してあり、石英ウールを用いて固定されている。基
準値測定のため、石英ウールのみが充填された並列の石英管にガス流を通した。
いずれの場合においても、温度500℃(±50℃)の860mmリンドバーグ
炉
内に反応管を固定した。次に、乾燥機を用いて(Perma Pure dryer)ガス流のコ
ンディショニングを行って、微粒子及び水分を除去した。Analytical Developme
nts Company社製の0〜2000ppmの赤外線NOx検出器を用いてNOx濃度
を監視した。毎分1.0〜1.2リットルの速度で触媒材料にガスを通した(1
時間当たりガス空間速度(GHSV)は約60000/h)。全ガスについての
サンプリング時間は20分であった。
表9は、ディーゼル排気ガスからのNOxの転化について、5種類のCu及び
Coに基づく触媒材料の現場試験に関する生データ及び編集データを示す。
触媒材料についてのこれら現場試験から、使用した流量及び温和な温度で、N
Oxの還元はかなり進み、実現可能であることがわかる。調べた一連の触媒材料
の中では、試料Co−KAD3−5が91%という最も低い転化率を示し、他の
試料はいずれも91%を超える転化効率を示している。各種温度ならびに炭化水
素及び/又は水蒸気の各種組み合わせを用いてこれら触媒を使用すると、種々の
レベルの転化効率が得られるであろう。これらと同じ材料について、24時間以
上の冷却・休止期間後に、追加試験を行った。次に、表9に示したデータについ
て示した条件と同様の条件下で試験を行ったところ、長期間にわたって室温及び
周囲湿度の条件下に置いた後に、ディーゼルエンジン排気ガスからのNOx濃度
を低下させる能力をこれら新規材料が保持していることが明らかになった。実施例6
プロペン又はディーゼル燃料を用いたディーゼルエンジン排気ガス中
のNOxの選択的接触還元
運転エンジンからの排気ガスをガス注入システムと組み合わせたKUBOTA
GV1120ディーゼルエンジンについて実験を行った。プロペンの窒素中混合
物として、あるいはディーゼル燃料として、追加の炭化水素を排気ガス流に加え
る。次にその混合物を、図6に略図で示すものと同様の配置を用いて加熱炉中に
配置された反応管内にある適切な量の触媒と接触させる。次に処理したガスを、
FTIRガスセルと、除湿器通過後に専用の赤外線NOx分析装置との両方を用
いて分析する。
最初の較正試験のため、プロペン流を存在させず、排気ガスを空の配管から抜
き取るようにした。380℃〜550℃の範囲の温度で、試料Cu−KAD3−
7及びCo−KAD3−7という2種類の触媒についての試験を行った。これら
の試験中、エンジンへの負荷は約75%で一定に保つ。負荷なしで、エンジンを
始動させると、ガス流中の酸素濃度は14.9%であるが、75%負荷のエンジ
ンでは、酸素濃度は13.0%である。これらの適用条件下では、直接分解によ
るNOx転化率値は10%以下のままであった。しかしながら、排気ガス分析流
にプロペンを加えることが、これらの触媒を用いた場合のNOx転化率値に対し
て極めて有効であることがわかる。図7には、ガス流中の各種プロペン量に対す
る試料Cu−KAD3−7での相対的NOx転化率を明らかにする一連の実験を
示す。この条件下で最も高い転化率を得るためのNOxに対するプロペンの最適
比率は、約4:1であることが示される。
代表的な排気ガス条件下でのこれら触媒の長期安定性についても調べ、Co−
KAD3−7の試料について図8に示す。数時間にわたり(13時間まで)、NOx
転化レベルは安定して80%より高く、重要な点として、所定時間(例:約1
.5時間)にわたって350℃以下の温度まで冷却することで運転休止した後に
、これらの触媒は同様のレベルの活性(すなわちNOx転化率)を有している。
所定時間後にこのように再活性化するため、車のディーゼルエンジン又は据置型
のディーゼルエンジンでの通常の使用形態に適している。
プロペンの保管に関連する懸念から、ディーゼルエンジンを使用するある種の
用途には、プロペンの使用は適さない場合があろ。従って、排気ガス流中へのデ
ィーゼル燃料注入を行って、これら触媒のNOx転化効率を評価する同様の試験
も行った。図9に示したように、上記の標準的運転条件下でディーゼル燃料を加
えることで、NOx転化効率は約70%となった。実施例7
NH3によるNOxの選択的接触還元
以下の方法で、触媒を製造した。最初に、K−KADをNH4+KADに転化
し、TiCl4と混合し、アンモニア水を加えることでTiCl4を加水分解した
。最後に、Ti−KADを120℃で乾燥し、500℃まで焼成した後、適切な
量の硝酸鉄、塩化ニオブ、塩化スズ、メタバナジウム酸アンモニウム又はメタタ
ングステン酸アンモニウム水溶液をTi−KADに含浸させた。この材料を再度
500℃で焼成してから、図10に示した微量リアクタで用いた。上記のFe−
Ti−KAD、Fe−Sn−Ti−KAD、Fe−W−Ti−KAD、Fe−N
b−Ti−KAD、V−Sn−T1−KAD及びV−W−Ti−KAD触媒の製
造を表10に示し、脱NOx活性の測定値を表11に示す。鉄に基づく触媒の活
性の温度依存性を図11に、バナジウムに基づく触媒の温度依存性を図12に示
す。実施例8
直接NOx
K−KADを、硝酸鉄及び/又は硝酸鉄と硝酸セリウムのいずれかの水溶液で
交換することで、Fe−KAD触媒を製造した。交換した鉄及び/又はセリウム
の濃度を高めるため、溶液を窒素で取り除いて、溶存酸素を除去した。pHを2
〜4の間で変化させることで、図13に示したような別の鉄−KAD触媒を製造
した。NOxの直接分解にそのような触媒を使用した結果を図13に示す。実施例9
排気ガス流からのダイオキシン類の還元はじめに
多くの場合「ダイオキシン」と総称される多塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシ
ン類(PCDD)及び多塩素化ジベンゾフラン類(PCDF)は、デノボ合成と
して知られるプロセスを介して、ガスが冷却されるにつれて燃焼室の下流で生成
され得る。これは、塩素供給源存在下での不完全燃焼生成物間の反応によって2
50〜400℃の温度範囲で起こる。ある種の物質が、その再形成反応において
触媒として作用し得る。しかしながら、現在の研究から、いくつかの物質がダイ
オキシン及びその他の有機微量汚染物を無毒な副生成物に転化し得ることが示唆
されている。
特に興味深いものは、NOx還元触媒であり、文献によると、ダイオキシン及
び関連する微量汚染物の濃度を低下させる能力を有することが報告されている。
ガス流中のダイオキシン低減にKADを使用可能か否かを調べるため、多管式
熱交換器及びバッグハウスを取り付けたパイロット規模の有害(pathological)
廃棄物焼却炉で、一連の実験を行った。実験装置
焼却炉は2室設計となっており、固体廃棄物の燃焼のための一次燃焼室と、一
次燃焼室から放出される可燃性ガス及び粒子状物の酸化のための二次燃焼室/再
燃焼装置から構成されている。
一次燃焼室は、灰を完全に燃焼させるために一連のラムを用いて焼却炉に廃棄
物をゆっくり送り込む静止炉床型である。二次燃焼室は、一次燃焼室で生成した
すべての排出物を0.3〜0.5秒間の滞留時間で温度800〜900℃に維持
することができる。
一次燃焼室は、還元(空気不足)条件下で運転される。その工程を空気不足と
することで、廃棄物の揮発性成分がガス化する。生成した可燃性ガスは燃料とし
て挙動し、空気と混合され、二次燃焼室で完全に酸化される。両方の燃焼室での
補助燃料として、天然ガスを用いる。
二次燃焼室を出た排気ガスは、空冷熱交換器に入り、ガス温度は200℃まで
低下する。これは、デノボ過程によるダイオキシン生成を最大とするためである
。次に、それらのガスはバッグハウスに入り、そこでフィルター処理されてから
、煙突を通って放出される。
以下の2つを主な理由として、実験設計にバッグハウスを組み入れろことを決
定した。
(1)工業的条件をシミュレーションするため(最良の利用可能技術を用いる
最新の焼却プラントにはバッグハウスが取り付けられている)。
(2)KAD前のガス流をフィルター処理することで、KADの濾過効果によ
って誤った結果が得られる可能性を低くするため。
焼却システムを図14に示す。
試験中、焼却炉には10分ごとに、平均供給速度10kg/時にて、特別に製
造した廃棄物をバッチ式で投入した。この廃棄物は、30%PVC、60%破砕
新聞紙及び10%水(重量比)から成るものとした。
接触反応実験については、ガス出口空間速度(ガス流量(mL/時)/触媒体
積(mL))を60000/時として試験を行った。石英管の中央に、KAD材料
充填物を挿入し、石英ウールを用いて所定の位置に保持した。基準値実験用に、
石英ウールのみが入った並列の石英管にガス流を通した。接触反応試験と基準試
験の両方を同時に行った。
並列の石英反応管を、温度450℃(±20℃)とした長さ860mmのリン
ドバーグ炉中で固定した。温度はユーロサーム(Eurotherm)コントローラで調
節
した。各試験について、系を60分間コンディショニングしてから、サンプリン
グを行った。次に、60〜90分にわたってサンプリングを行った。試験方法
ダイオキシン
PCDD及びPCDFについてのサンプリングは、2連USEPA変法5サン
プリング機構を用いるUSEPA方法23「据置型発生源からの多塩素化ジベン
ゾ−p−ダイオキシン類及び多塩素化ジベンゾフラン類の測定」に従って行った
。各機構では、ノズル、石英プローブ、加熱粒子フィルター、冷却管、XAD−
2吸着剤モジュール、衝突バンク、隔膜ポンプ及びガス量計という構成要素を直
列で配置した。
石英プローブをリンドバーグ炉に通過させてから粒子フィルターに送ることで
、接触反応実験装置をサンプリング機構に組み入れることが可能となった。
試料と接触する機構構成要素はいずれも、使用前に精製溶媒で十分に洗浄した
。XAO−2樹脂には、サンプリング前に、放射性同位元素で標識したPCDD
及びPCDF代替標準品を加えた。フィルター、樹脂及び衝突溶液は有機溶媒で
抽出し、抽出液を化学的処理及び固相クロマトグラフィー法によって精製した。
抽出及び精製の方法は、USEPA方法3540(固相のソックスレー抽出)、
3545(固相の加圧流体抽出)、3510(水相の液/液抽出)、3620(フロ
リジル(Florisil、登録商標)カラム)及び3640(気相クロマトグラフィー
)に従った。
USEPA方法8280に従って、高分解能のガスクロマトグラフィー及び低
分解能の質量分析法を用いて、PCDD及びPCDFの測定を行った。この方法
から、各同族体群(テトラからオクタ)についての、全ての有害な2,3,7,
8−塩素化PCDD類及びPCDF類に関すろデータならびに2,3,7,8以
外の塩素化PCDD類及びPCDF類の総量に関するデータが得られる。各同類
化合物についての総毒素当量(I−TEQ)を、NATO(国際)毒素当量係数
(I−TEF)を用いて計算した。
サンプリング/実験装置は図15に示す。
窒素酸化物
テスト(Testo)350シリーズNO/NO2/NOx分析装置を用い、標準分
析法(Victorian EPA Standard Analytical Procedure B12-"Total Nitrogen Ox
ides")に従って、窒素酸化物のモニタリングを行った。それを、NATA保証
一酸化窒素(NO)スパンガスを用いて較正し、機器用窒素を用いてゼロ調整を
行った。
酸素
テスト350シリーズ分析装置を用い、標準分析法(Victorian EPA Standard
Analytical Procedure BIO-"Oxygen(Instrumental)")に従って、窒素酸化物の
モニタリングを行った。それを、環境空気を用いて較正し、機器用窒素を用いて
ゼロ調整を行った。
推定精度は±5%である。
ダイオキシン及びNOxの結果を表12及び13にまとめた。ダイオキシンに
ついての総合的結果を表14〜27に示す。
以上の実施例は、NOx及びダイオキシン類に関する触媒としてのアルミノケ
イ酸塩材料の使用について具体的に説明したものであるが、留意すべき点として
、
アルミノケイ酸塩材料とNOx及びダイオキシン類に対するそれらの触媒作用は
、不均一系触媒作用(例えば、Chemistry,Fjfth Edition by Raymond Chang,p
ublished by McGraw-Hill Inc.,1994に定義されたもの)の例として挙げたもの
である。そのような触媒反応は、気相反応系で固体触媒を用いることで、ダイオ
キシン類の場合には酸化反応が起こり、NOxの場合には還元反応が起こること
を示すものである。同様にして、本発明のアルミノケイ酸塩材料は、上記のよう
なSOx、上記のようなCOもしくはCO2、ならびにPAH類に対して触媒作用
を行う。
PAHについて具体的に述べると、PAHへの本発明のアルミノケイ酸塩材料
の使用に、同様の条件を用いて実施例9を適用することもできる。 図表の説明
表12
Sm3=0℃、101.3kPa及び11%O2での乾燥立方メートル単位のガ
ス容積
表13
Nm3=0℃、101.3kPa及び7%O2での乾燥立方メートル単位のガス
容積
表14〜27
ng=ナノグラム(10-9グラム)
Sm3=0℃、101.3kPa及び11%O2での乾燥立方メートル単位のガ
ス容積
I−TEF=国際毒素当量係数
I−TEQ=2,3,7,8−TCDD化合物類に基づく国際毒素当量
図1
複合微量分析/振動分光装置を組み合わせた装置。
図2
(a)Cu−ZSM5(四角形)と(b)Cu−KAD3−1(円形)につい
てのNOx分解の比較。
図3
(a)Cu−ZSM5及び(b)Cu−KAD3−5へのNOx(1300p
pm)/O2(1.7%)の曝露後に得られたFTIRスペクトル。
図4
(a)CoKAD3−1、(b)CoKAD3−5、(c)CoKAD3−7
、(d)CoKAD1/2−13、(e)CoKAD5−16及び(f)Co−
ZSM5(Si/Al比40:1)へのNOx(1300ppm)/O2(1.7
%)の曝露後に得られた吸着物のFTIRスペクトル。
図5
焼却炉配置及びガスのサンプリング箇所を示す略図。
図6
現場試験のための実験配置の略図。
図7
燃焼されたプロペンの関数としてのディーゼルエンジンからのNOx転化率。
図8
ディーゼルエンジン運転時の触媒効率についての寿命試験。
図9
ラインにディーゼル燃料を注入した場合の触媒成績。ディーゼル燃料添加を行
った場合と行わない場合のディーゼル排気ガスからのNOx転化率。
図10
脱NOx試験に用いた微量反応システム。
図11
鉄に基づく触媒を用いたNH3によるNOx還元。
図12
バナジウムに基づく触媒を用いたNH3によるNOx還元。
図13
NOxの直接分解。
図14
パイロット規模での焼却システム。
図15
触媒リアクタを組み込んだUSEPA MM5サンプリング機構を有するサン
プリング/実験装置。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML,
MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K
E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM
,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM)
,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,
BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D
K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR
,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,
KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L
V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ
,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,
SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U
S,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ミラー、グレーメ ジョン
オーストラリア国 4067 クイーンズラン
ド州 セント ルシア カーモディー ロ
ード 2/104
(72)発明者 ヘンビル、キム
オーストラリア国 4160 クイーンズラン
ド州 オーミストン ゴードン ストリー
ト 58