JP2002507113A - Rath遺伝子およびポリペプチド並びに免疫疾患の治療および診断方法 - Google Patents

Rath遺伝子およびポリペプチド並びに免疫疾患の治療および診断方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、第一に、Tヘルパー(TH)細胞およびTH細胞亜集団の活性化を含むがこれらに限らないT細胞活性化に関係したGタンパク質介在シグナル伝達の調節、コントロールおよび/またはモジュレーションに関与する、RATHと称する新規な核酸分子、および前記核酸分子またはその縮重変異体によりコードされるRATH遺伝子産物の同定に関する。詳細には、本発明の核酸分子はRATH1.1遺伝子を含めた哺乳動物RATH遺伝子に相当する遺伝子を含む。配列解析により、RATH遺伝子は、Gタンパク質介在シグナル伝達に関係した遺伝子産物をコードする遺伝子ファミリーであるRGS("regulator of G-protein signalling":Gタンパク質シグナル伝達調節物質)遺伝子ファミリーに属する新規遺伝子であることが示される。

Description

【発明の詳細な説明】 RATH 遺伝子およびポリペプチド 並びに免疫疾患の治療および診断方法 本出願は、1996年10月4日付けの米国特許出願第08/726,228号の一部継続出願 である。 1. 本発明は、第一に、Tヘルパー(TH)細胞およびTH細胞亜集団の活性を含むが これらに限らないT細胞活性の調節(モジュレーション)に関与する新規な核酸 分子、および前記核酸分子またはその縮重変異体によりコードされるポリペプチ ドに関する。かかる核酸およびポリペプチドは、例えば、診断薬や介入療法のた めのターゲットを開発するうえで重要である。詳細には、本発明の核酸分子は、 本明細書中でRATH遺伝子ファミリー(RATH1.1遺伝子と称する新規遺伝子を含む がこれに限らない)と呼ばれる新規な哺乳動物遺伝子ファミリーに相当する遺伝 子を含む。配列解析により、RATH遺伝子はRGS(“regulator of G-protein signa lling”:Gタンパク質シグナル伝達調節物質)遺伝子ファミリーに属する新規遺 伝子であることが示され、このRGS遺伝子ファミリーは受容体/Gタンパク質相 互作用またはGタンパク質αサブユニットそれ自体のレベルでGタンパク質介在 シグナル伝達を抑制するように働く、Gタンパク質介在シグナル伝達に関与する 遺伝子産物をコードしでいる。本明細書中では、RATH1.1遺伝子産物はシグナル 伝達現象のメディエーターとして作用することが実証される。さらに、RATH1.1 遺伝子産物はインテグリン介在細胞接着の調節に関与するように作用し、また、 カルパクチン(細胞性シグナル伝達や多くの他の細胞性プロセスに影響すること が知られた分子)と強力に相互作用することが実証される。RATH1.1遺伝子の発 見は、T細胞特異的--、さらに特定すると、Tヘルパー(TH)細胞亜集団特異的 --RGS遺伝子および遺伝子産物の最初の同定に相当する。本発明はさらに、TH細 胞およびTH細胞亜集団の活性化を含むがこれらに限らないT細胞活性化を伴う免 疫疾患の診断評価、予後検査および治療方法に関する。かかる免疫疾患とし て、慢性の炎症性疾患および障害、例えばクローン病、反応性関節炎(例:ライ ム病)、インスリン依存性糖尿病、器官特異的自己免疫疾患(例:多発性硬化症 、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、グレーブ病)、接触皮膚炎 、乾癬、移植拒絶反応、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー症状、例 えば喘息およびアレルギー(例:アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む胃腸 アレルギー)、好酸球増多症、結膜炎、糸球体腎炎、ある種の病原体罹病性、例 えば寄生虫(例:リーシュマニア症)およびある種のウイルス感染症(例:HIV )、および細菌感染症(例:結核、らい腫らい)を挙げることができるが、これ らに限らない。本発明はさらに、RATHタンパク質および/またはRATH遺伝子活性 を調節する化合物を投与することによる上記疾患の治療方法に関する。本発明は さらに、RATH遺伝子産物を調節(アンタゴナイズまたはアゴナイズ)する化合物 の同定方法に関する。 2.発明の背景 2つの別個のタイプのTリンパ球、すなわちCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL) とCD4+ヘルパーTリンパ球(TH細胞)が認められている。CTLは表面に外来抗原 を表示する細胞を認識して死滅させる。CTL前駆細胞は、クラスI MHC分子と共に 、他の細胞表面上の外来タンパク質由来のプロセシングされたペプチドを認識す るT細胞受容体を表示する。この認識プロセスが前駆細胞CTLの活性化、成熟お よび増殖を引き起こし、異物として認識される抗原を提示する細胞を破壊できる CTLクローンを生じさせる。 ヒトおよびマウスのTH細胞は体液性と細胞性の両形態のエフェクター免疫応答 に係わっている。体液性すなわち抗体免疫応答に関して、抗体はTH細胞との相互 作用を介してBリンパ球により産生される。マウス細胞では、細胞外抗原が抗原 提示細胞(APC)によりエンドサイトーシス(飲食作用)で取り込まれ、プロセシ ングされ、そして優先的にクラスII主要組織適合複合体(MHC)分子と結合してCD4+ クラスII MHC-制限TH細胞に提示される。次にこれらのTH細胞はリンパ球を活性 化して抗体を産生させる。 細胞が介在する、すなわち細胞性の免疫応答は、細胞内に存在する微生物を中 和するように機能する。例えばウイルス抗原のような外来抗原は感染細胞内で合 成され、クラスI MIIC分子と結合して感染細胞の表面に提示される。その後、CD 8+クラスI MHC-制限CTLがこれにより刺激される。 結核やらい病を引き起こすミコバクテリアのような、いくつかの病原菌はマク ロファージにより取り込まれ、タンパク質分解酵素や他の毒性物質を含有する液 胞内でプロセシングされる。これらのマクロファージ成分は大部分の微生物を殺 して消化することができるが、ミコバクテリアなどの病原菌は生き残って増殖す る。けれども、病原菌の抗原はマクロファージによりプロセシングされ、優先的 にクラスII MHC分子と結合してCD4+クラスII MHC-制限TH細胞に提示され、TH細 胞はインターフェロンγを分泌するように刺激され、続いてマクロファージが活 性化される。このような活性化の結果として、細胞の殺菌能が高まる。 マウスTH細胞はTH1およびTH2細胞亜集団と呼ばれる少なくとも2つの異なった 亜集団から構成される。証拠からは、TH1およびTH2サブタイプは高度に極性化さ れたTH細胞集団に該当することが示唆される。かかる亜集団はマウス系で最初に 発見された(Mosmann,T.R.and Coffman,R.L.,1989,Ann.Rev.Immunol.7:1 45に概説)が、TH1-およびTH2-様の亜集団の存在はヒトにおいても確立されてい る(Del Prete,A.F.ら,1991,J.Clin.Invest.88:346;Wiernenga,E.A.ら ,1990,J.Imm.144:4651;Yamamura,M.ら,1991,Science 254:277;Robinson ,D.ら,1993,J.Allergy Clin.Imm.92:313)。TH1-およびTH2-様細胞は最も 極性化されたTH胞亜集団に相当するが、THO細胞(Firestein,G.S.ら,1989,J .Imm.143:518)のような他のTH細胞亜集団もTH1およびTH2細胞亜集団の特徴を 備えたTH細胞に該当する。 TH1-およびTH2-様細胞は免疫系の異なるエフェクター機能の役割を担っている ようである(Mosmann,T.R.and Coffmann,R.L.,1989,Ann.Rev.Imm.7:145) 。詳細には、TH1様細胞は細胞性免疫の発生を指令し、食細胞介在宿主防御を開 始させ、そして遅延型過敏症と関連している。したがって、細胞内微生物による 感染はTH1様の応答を引き出す傾向がある。TH2細胞は体液性免疫応答を指令し、 例えば、ある種の寄生虫に対する防御と関連しており、抗体およびアレルギー反 応に係わっている。 異なる免疫エフェクター応答を指令する異なるTH細胞型の能力は、特定のTH細 胞亜集団内で発現されるサイトカイン類の排他的な組合せによるものであること が注目されている。例えば、TH1細胞はインターロイキン-2(IL-2)、インターフ ェロン-γ(IFN-γ)およびリンホトキシンを分泌することが知られているが、TH2 細胞はインターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)およびインターロ イキン-10(IL-10)を分泌する。 最近、CD4+TH細胞に加えて、ある条件下ではCD8+CTLもTH1-およびTH2-様サイ トカインの様相を呈することが判った(Seder,R.A.ら,1995,J.Exp.Med.18 1:5-7;Manetti,R.ら,1994,J.Exp.Med.180:2407-2411;Maggi,E.ら,199 4,J.Exp.Med.180:489-495)。このようなCD8+TH様細胞の正確な機能は目下の ところ不明であるが、これらの細胞亜集団はウイルスや細胞内寄生虫のような病 原体に対する免疫応答に深く関係しているようである。 感染過程のコントロールまたは解明の失敗はしばしば不適切な免疫応答より生 じる。このような不適切な免疫学的応答には、例えば、喘息、アレルギー(例: アレルギー性鼻炎)などのアトピー症状(すなわち、IgE媒介アレルギー症状) 、皮膚炎(例:乾癬)、病原体感受性、慢性の炎症性疾患、器官特異的自己免疫 疾患、移植拒絶反応および移植片対宿主病などが含まれる。寄生虫による感染を 解明できないことは不適切な免疫応答をもたらし得る症状の一例である。 さらに、多くの病原性微生物に対するTH1-媒介炎症反応は有益であるが、自己 抗原に対するかかる応答は通常有害である。TH1-様応答の優先的活性化は多発性 硬化症やインスリン依存性糖尿病のようなヒト炎症性自己免疫疾患の病因の中心 をなすことが示唆されている。例えば、TH1-型サイトカインは多発性硬化症患者 の脳脊髄液、インスリン依存性糖尿病患者の膵臓、橋本甲状腺炎患者の甲状腺お よびクローン病患者の腸に顕著であり、このことは、かかる患者が前記疾患の病 因に係わる抗原に対してTH1-様応答(TH2-様応答ではない)を高めていることを 示唆している。 したがって、薬物介入療法のターゲットとして使用するために、T細胞特異的 遺伝子、遺伝子産物、特にTH細胞およびTH細胞亜集団特異的遺伝子および遺伝子 産物を同定することが次第に重要になってきている。 3.発明の概要 本発明は、第一に、Gタンパク質介在シグナル伝達現象を含むがこれに限らな いシグナル伝達現象の調節に関与する新規な核酸分子、および前記核酸分子また はその縮重変異体によりコードされるタンパク質の同定に関する。例えば、この ような遺伝子はTヘルパー(TH)細胞およびTH細胞亜集団の活性を含むがこれら に限らないT細胞活性に関与しうる。詳細には、本発明の核酸分子は、本明細書 中でRATH遺伝子ファミリー(RATH1.1遺伝子と称する遺伝子を含むがこれに限ら ない)と呼ばれる哺乳動物遺伝子ファミリーに相当する遺伝子を含む。 特に、本発明の組成物は、新規RATH遺伝子産物をコードする組換えDNA分子 、クローン化遺伝子またはその縮重変異体、とりわけ天然の変異体、を含めた核 酸分子(例えば、RATH遺伝子)、およびRATH遺伝子産物またはその保存変異体も しくは断片に対する抗体を包含する。本発明の組成物はさらに、本発明の核酸分 子を含有する発現ベクターを含めたクローニングベクター、およびかかる核酸分 子で形質転換された宿主を包含する。 マウスRATH1.1(femtR11ともいう)遺伝子の核酸配列を提供する。2278bpのRA TH1.1cDNAは1996年7月30日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション( ATCC)に寄託され、ATCC受託番号98116を有する。推定された全長RATH1.1遺伝子 産物のアミノ酸配列は認識しうる膜貫通ドメインもシグナル配列も含まず、RATH 1.1遺伝子産物は細胞内または膜結合型の遺伝子産物であることが示唆される。R ATH1.1遺伝子は約3kbの転写産物をもたらし、分子量が約22.6kDの201アミノ酸 からなるタンパク質(その配列を提供する)をコードしている。転写産物は刺激 されたTH細胞亜集団においてTH1-特異的様式で検出された。 ヒトRATH1.1遺伝子の核酸配列も提供する。マウスRATH1.1遺伝子産物と同様に 、ヒトRATH1.1は認識しうる膜貫通ドメインもシグナル配列も含まず、細胞内ま たは膜結合型の遺伝子産物をコードする。ヒトRATH1.1遺伝子産物は202アミノ酸 残基からなるタンパク質(その配列を提供する)をコードしている。 配列解析により、RATH遺伝子はRGS(regulator of G-protein signalling)モチ ーフを有する新規遺伝子であることが示される。RGSモチーフは図1A-Cに示したR ATH1.1遺伝子産物においてほぼアミノ酸残基60からアミノ酸残基169、さ らに特定するとほぼアミノ酸残基68からアミノ酸残基176、および図2A-Bに示し たRATH1.1遺伝子産物においてほぼアミノ酸残基61から180、さらに特定するとほ ぼアミノ酸残基69から177、さらにより特定するとほぼアミノ酸残基69からアミ ノ酸残基171に見いだされる。 RATH1.1遺伝子は本明細書中でRATH遺伝子ファミリーと称する遺伝子ファミリ ーに属し、Gタンパク質介在シグナル伝達に関与するRGS-含有遺伝子産物をコー ドする。この遺伝子産物は受容体/Gタンパク質相互作用またはGタンパク質α サブユニットそれ自体のレベルでGタンパク質介在シグナル伝達を抑制するよう に働く。RATH遺伝子ファミリーのRATH1.1遺伝子はT細胞特異的--、さらに特定 すると、Tヘルパー(TH)細胞亜集団特異的--RGS遺伝子および遺伝子産物の最 初の同定に相当する。 本明細書において示した哺乳動物RATH遺伝子は高度に調節および制限された様 式で発現される。特にマウスRATH1.1は高度にTH1-誘導可能な様式で発現される 。すなわち、RATH1.1遺伝子は刺激されたTH細胞亜集団(すなわち、TH1-およびT H2-様細胞亜集団)において高度にアップレギュレーションされ、他の細胞型に は存在しないか、きわめて低いレベルで存在するようである。 哺乳動物RATH遺伝子産物は、Gタンパク質介在シグナル伝達を含むがこれに限 らないシグナル伝達のメディエーターとして作用することが本明細書において実 証される。さらに、哺乳動物RATH遺伝子産物のエフェクター機能の一つは、イン テグリンに関係した細胞接着の調節物質として作用することにあることを本明細 書において実証する。加えて、哺乳動物RATH遺伝子産物はカルパクチン(多くの 重要な細胞性プロセスに影響することが知られている分子)と強く相互作用する ことが示される。 本発明はさらに、TH細胞およびTH細胞亜集団の活性化を含むがこれらに限らな いT細胞活性化を伴う免疫疾患の診断評価および予後検査方法に関する。かかる 免疫疾患として、慢性の炎症性疾患および障害、例えばクローン病、反応性関節 炎(例:ライム病)、インスリン依存性糖尿病、器官特異的自己免疫疾患(例: 多発性硬化症、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、グレーブ病) 、接触皮膚炎、乾癬、移植拒絶反応、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アト ピ ー症状、例えば喘息およびアレルギー(例:アレルギー性鼻炎、食物アレルギー を含む胃腸アレルギー)、好酸球増多症、結膜炎、糸球体腎炎、ある種の病原体 感受性、例えば寄生虫感染(例:リーシュマニア症)およびある種のウイルス感 染(例:HIV)、および細菌感染(例:結核、らい腫らい)を挙げることができ るが、これらに限らない。本発明はまた、前記症状への素因を有する被験者の確 認方法に関する。例えば、本発明の核酸分子は診断用のハイブリダイゼーション プローブとして、またはRATH遺伝子突然変異、対立遺伝子変異およびRATH遺伝子 の調節欠陥を同定する診断用PCR分析のためのプライマーとして使用することが できる。 さらに、上に挙げたような、TH細胞およびTH細胞亜集団の活性化を含むがこれ らに限らないT細胞活性化を伴う免疫疾患を治療するための方法および組成物を 提供する。また、Gタンパク質介在シグナル伝達現象を含むがこれに限らないシ グナル伝達-関連または誘導細胞現象を調節するための方法および組成物も提供 する。かかる現象として、細胞移動、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、細胞活性 化、因子放出、エンドサイト−シス、エキソサイト−シス、細胞骨格再配列、膜 輸送、および仮足形成などの細胞膜の性質の変化といった細胞性プロセスが挙げ られるが、これらに限らない。このような方法および組成物は、RATH遺伝子発現 のレベルおよび/またはRATH遺伝子産物活性のレベルを調節することが可能であ る。 さらに、本発明は、RATH遺伝子発現および/またはRATH遺伝子産物の活性を調 節する化合物を同定するためのRATH遺伝子および/またはRATH遺伝子産物の使用 方法に関する。この種のアッセイとして、RATH mRNAおよび/または遺伝子産物 のレベルを測定するアッセイ、およびRATH遺伝子産物活性のレベル、例えばGタ ンパク質のGαサブユニットでのGTPからGDPへの置換速度を促進するRATH遺伝子 産物の能力、インテグリン介在細胞接着に及ぼすRATH遺伝子産物の効果、および カルパクチンと結合するRATH遺伝子産物の能力、を測定するアッセイがあるが、 これらに限らない。 この種の化合物は免疫疾患を含めた疾患をコントロールし、予防し、治療し、 かつ/またその重症度を軽減する(以後「コントロールする」という)ための、 および/または上に挙げたようなシグナル伝達介在細胞性プロセスといった細胞 性プロセスを調節するための薬剤として使用することができる。 4.図面の説明 図1A-C:マウスRATH1.1ヌクレオチドおよびアミノ酸配列。上のライン:RATH1 .1アミノ酸配列;下のライン:RATH1.1ヌクレオチド配列。アミノ酸残基の上に ある星印はRGSモチーフドメイン内に性質的に保存されているアミノ酸残基をさ す。アミノ酸残基の上の垂直線はRGSドメイン内に同一性により保存されている アミノ酸残基をさす。 図2A-B:ヒトRATH1.1ヌクレオチドおよびアミノ酸配列。上のライン:RATH1.1 アミノ酸配列;下のライン:RATH1.1ヌクレオチド配列。アミノ酸残基の上にあ る星印はRGSモチーフドメイン内に性質的に保存されているアミノ酸残基をさす 。アミノ酸残基の上の垂直線はRGSドメイン内に同一性により保存されているア ミノ酸残基をさす。 5.発明の詳細な説明 本発明において開示するのは、新規な哺乳動物遺伝子の同定で、RATH1.1遺伝 子を含むRATH遺伝子の内容であり、これらは、限定するものではないが、TH細胞 及びTH細胞亜集団活性を含むT細胞活性を調整することにより免疫疾患を制御す ることに関与する。そのような免疫疾患としては、限定するものではないが、慢 性炎症疾患及び障害、例えばクローン病、反応性関節炎、例えばライム病、イン スリン依存性糖尿病、臓器特異性自己免疫、例えば多発性硬化症、関節リウマチ 、炎症性腸疾患、橋本甲状腺炎、及びグレーブス病、接触性皮膚炎、乾癬、移植 片拒絶、移植片対宿主疾患、サルコイド症、アトピー性症状、例えば喘息及びア レルギー、例えばアレルギー性鼻炎、胃腸管アレルギー、例えば食物アレルギー 、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある種の病原体感受性、例えば寄生虫病 (例えばリーシュマニア症)及びある種のウイルス感染症、例えばHIV、及び細菌 感染、例えば結核及びらい腫らい等が挙げられる。前記のような遺伝子及び遺伝 子産物は、細胞プロセスの調整にも関与し、例えばシグナル形質導入(シグナル トランスダクション)関連あるいは誘導性細胞プロセス、例えば、限定するもの ではないが、G-タンパク質媒介シグナル形質導入(シグナルトランスダクション )事象に関与する。そのような事象としては、限定するものではないが、細胞移 動、細胞接着、細胞増殖、細胞分化、細胞活性化、因子放出、エンドサイトーシ ス、エキソサイトーシス、細胞骨格再配列、膜トラフィッキング、細胞膜特性の 変化、例えば偽足形成等の細胞プロセスが含まれる。 具体的に記載するのは、組換え哺乳動物RATH DNA分子、クローン化遺子、 あるいはその縮退変異体である。本発明の組成物はさらにRATH遺伝子によりコー ドされるRATH遺伝子産物(例えばタンパク質)を包含する。また、RATH遺伝子産物 (例えばタンパク質)に対する抗体、あるいはその保存変異体もしくは断片、及び RATH遺伝子変異の同定に有用な核酸プローブ、及び、例えば上記に挙げたTH細胞 及びTH細胞亜集団活性化を含むT細胞活性化が関与する免疫疾患などの診断にお ける、そのような核酸プローブの使用も本明細書に開示する。 さらにRATH遺伝子産物の活性を調整する化合物の同定におけるRATH遺伝子及び /またはRATH遺伝子産物の使用方法も開示する。RATH遺伝子発現及び/また は活性を調整することによる、TH細胞及びTH細胞亜集団活性化を含むT細胞活性 化が関与する免疫疾患の治療方法も開示される。 本発明のRATH1.1核酸組成物は以下に6の項において示す実施例に記載する。R ATH遺伝子及び遺伝子産物の機能的特性化(キャラクタライゼイション)は7〜 9の項の実施例に示す。 5.1 RATH 遺伝子 図1A〜C、及び2A〜Bに示すRATH遺伝子は、TH-限定的な形態、具体的にはTH1あ るいはTH-1様誘導可能形態で制御される新規なRGS遺伝子である。RATH1.1は例示 的なRATH遺伝子であり、T細胞特異的RSG-含有遺伝子、特にTH細胞亜集団特異的 遺伝子の最初の例を示すものである。それ自体、RATH遺伝子はTH細胞及びTH細胞 亜集団活性化を含むT細胞活性に関与することができる。 同定されたRATH遺伝子の核酸配列は本明細書に記載する。本明細書で使用する 「RATH遺伝子」は、(a) 図1A〜C(配列番号1)もしくは図2A〜B(配列番号3)に示 すDNA配列を含む遺伝子か、あるいはAmerican Type Culture Collection(ATC C)に1996年7月30日に寄託され、ATCC受託番号98116を有する大腸菌femtR11A内 のcDNAクローンに含まれるDNA配列を含む遺伝子、(b) 図1A〜C(配列番号 5)もしくは図2A〜B(配列番号6)に示すアミノ酸配列をコードする任意のDNA配 列、あるいはATCCに寄託された大腸菌femtR11A(ATCC受託番号98116)内のcDN Aクローンによりコードされるアミノ酸配列をコードする任意のDNA配列、(c ) 高度にストリンジェントな条件、例えば65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸 ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中での、フィルターに結合したDNAに対するハイ ブリダイゼーション及び68℃で0.1 x SSC/0.1% SDS中での洗浄(Ausubel F.M.ら 、eds.,1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,Green Publ ishing Associates,Inc.,and John Wiley & sons,Inc.,New York,p.2.10. 3)の条件下で図1A〜Cもしくは図2A〜Bに示すアミノ酸配列をコードするDNA配 列の相補物、あるいはATCCに寄託された大腸菌femtR11A(ATCC受託番号98116)内 のcDNAクローンに含まれるDNA配列の相補物にハイブリダイズする任意の DNA配列、あるいは(d) より低いストリンジェンシー 条件、例えば中程度にストリンジェントな条件、例えば42℃で0.2 x SSC/0.1%SD S中での洗浄(Ausubelら、eds.,1989、上出)の条件下で図1A〜Cもしくは図2A〜B に示すアミノ酸配列をコードするDNA配列の相補物、あるいはATCCに寄託され た大腸菌femtR11A(ATCC受託番号98116)内のcDNAクローンに含まれるDNA 配列の相補物にハイブリダイズし、大腸菌femtR11A内のcDNAクローンに含ま れる配列あるいは図1A〜Cもしくは図2A〜Bに示す配列によりコードされるRATH遺 伝子産物に機能的に等価な遺伝子産物をコードする任意のDNA配列をいう。 本明細書で使用する用語「RATH遺伝子」は、(a)〜(d)のDNA配列の断片及び /または縮退変異体、特にその天然に出現する変異体も包含し得る。そのような 断片としては、例えば、RATH遺伝子産物機能性ドメインに対応する本発明のRATH 遺伝子産物の部分をコードするヌクレオチド配列が挙げられる。そのようなRATH 遺伝子断片の一つの態様は、図1A〜Cに示すアミノ酸配列あるいは図2A〜Bに示す アミノ酸配列(配列番号8)内に含まれるRGSドメインをコードする核酸分子を含 む。別のRATH遺伝子産物機能性ドメインとしては、限定するものではないが、例 えばカルパクチンのようなRATH遺伝子産物インタラクターに結合するRATH遺伝子 産物ドメインが挙げられる。 RATH遺伝子断片はまた、例えば、本発明のRATH遺伝子産物の部分をコードする ヌクレオチド配列を含み得、そのような遺伝子産物は1以上のRATH遺伝子産物機 能性ドメインを欠いているものである。そのようなRATH遺伝子断片の1つの態様 は、図1A〜Cあるいは2A〜Bに示したアミノ酸配列をコードする核酸分子を含むも のであって、アミノ酸配列がそこに記載されたRSGドメインを欠くものである。 そのようなRATH遺伝子断片の別の態様は、図1A〜Cあるいは2A〜Bに示したアミノ 酸配列をコードする核酸分子を含むものであって、アミノ酸配列がそこに記載さ れたカルパクチン結合ドメインを欠くものである。 RATH遺伝子配列は好ましくは図1A〜Cに示した核酸配列に対してヌクレオチド レベルで全体で少なくとも約80%の類似性を示すものであり、より好ましくは図1 A〜Cの核酸配列に対して全体で少なくとも85〜90%の類似性を示すものであり、 最も好ましくは図1A〜Cの核酸配列に対して全体で少なくとも約95%の類似 性を示すものである。 1つの態様においでは、本発明のRATH遺伝子はTH特異的あるいは増強形態で発 現され、より好ましくはTH細胞亜集団(例えばTH1あるいはTH1様細胞亜集団)特異 的、限定的あるいは増強形態で発現される。 本発明のRATH遺伝子配列はさらに、高度にストリンジェントな条件あるいは中 程度のストリンジェントな条件下で、(a)〜(d)のRATH遺伝子配列の、少なくとも 約6、好ましくは少なくとも約12、より好ましくは少なくとも約18の連続したヌ クレオチドにハイブリダイズする単離された核酸分子を含む。 本発明はまた、好ましくは、上の段落に記載したDNA配列(a)〜(d)にハイブ リダイズする、すなわちその相補物である核酸分子、好ましくはDNA分子を包 含する。そのようなハイブリダイゼーション条件は上記したように高度にストリ ンジェントなものあるいは中程度にストリンジェントなものとし得る。核酸分子 がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合は、高度にストリンジェ ントな条件とは、例えば、37℃(14-塩基オリゴについて)、48℃(17-塩基オリゴ について)、55℃(20-塩基オリゴについて)、あるいは60℃(23-塩基オリゴについ て)において6 x SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中での洗浄をいうものとし得 る。これらの核酸分子は、RATH遺伝子アンチセンス分子をコードし、あるいはそ れとして作用し得、これは例えば、RATH遺伝子調節(例えばRATH遺伝子核酸配列 の増幅反応におけるアンチセンスプライマーとして)に有用である。RATH遺伝子 調節については、そのような技術は例えばT細胞活性化あるいは阻害のようなGタ ンパク質媒介シグナルトランスダクション事象のようなシグナルトランスダクシ ョン媒介事象の調整に使用できる。 さらに、そのような配列は、リボザイムの部分及び/または三重ヘリックス配 列として使用し得、同様にRATH遺伝子調節に有用である。さらに、そのような分 子は診断方法の構成要素として使用することができ、それにより例えば、T細胞 活性化が関与する免疫疾患を引き起こしもしくはその素因を生成するものである 、特定のRATH対立遺伝子の存在、あるいは別の形態にスプライシングされたRATH 転写物の存在を検出することができる。 さらに本発明は、限定するものではないが、本明細書に記載する酵母2ハイブ リッド系等の人工の酵母系でのスクリーンの部分としてRATH遺伝子配列も包含す る。 また本発明は、(a) 前記RATH配列及び/またはその相補物(例えばアンチセン ス)のいずれかを含むDNAベクター、(b) コード配列の発現を起こす調節エレ メントと機能可能なように結合した、前記のRATHコード配列のいずれかを含むD NA発現ベクター、及び(c) 遺伝子工学的に製造された宿主細胞であって、前記 のRATHコード配列のいずれかとそれが機能可能なように結合した、そのコード配 列の前記宿主細胞中での発現を起こす調節エレメントとを含む宿主細胞も包含す る。本明細書で使用する調節エレメントは、限定するものではないが、誘導性あ るいは非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーター及び当業者に知ら れた、発現を駆動し調節するその他のエレメントが含まれる。そのような調節エ レメントとしては、限定するものではないが、サイトメガロウイルスhCMV前初期 遺伝子、SV40アデノウイルスの初期あるいは後期プロモーター、lac系、trp系、 TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコート タンパク質の調節領域、3-ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター、酸性ホ スファターゼのブロモーター、及び酵母α-交配因子のプロモーター等が含まれ る。 本発明は、本明細書に記載したDNA配列のいずれかの断片を包含する。本発 明はさらに、RATH遺伝子産物及び下記5.2の項に記載するRATH遺伝子産物融合物 をコードする核酸配列を包含する。本発明はさらに、限定するものではないが、 本明細書に記載した核酸分子と等価のペプチド核酸類似体のような核酸類似体を 包含する。この文で使用される「等価」は、上記に記載した核酸分子と同じ一次 塩基配列を有する核酸類似体をいうものである。核酸類似体及び核酸類似体を合 成するための方法は当業者に周知である。例えば、Egholm,Mら、1993,Nature 365:566-568;及びPerry-O'Keefe,Hら、1996,Proc.Nalt.Acad.Sci.USA 93: 14670-14675を参照。これらはいずれも引用によりその全体を本明細書の一部と する。 上記したRATH遺伝子配列に加えて、他の種に存在するRATH遺伝子産物の1以上 のドメインにかなりの相同性を示す、そのような配列の相同体は、当分野で周 知の分子生物学的技術により過度の実験をすることなく同定及び容易に単離する ことができる。さらに、RATH遺伝子産物の1以上のドメインにかなりの相同性を 示すタンパク質をコードするゲノム内のその他の遺伝子座に相同体遺伝子が存在 し得る。これらの遺伝子も同様な技術により同定し得る。さらに、RATH1.1遺伝 子の別の形態でスプライシングを受けた変異体も存在し得る。 例として、本明細書に記載したように単離されたネズミRATH遺伝子配列を使用 してヒトRATH遺伝子相同体あるいは変異体をクローン化するためには、そのよう なネズミRATH遺伝子配列を標識し、対象とする生物(この場合ヒト)の適当な細胞 または組織(例えば抹消リンパ球、活性化T細胞、好ましくは活性化TH細胞)から 得たmRNAから構築したcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用 する。そのようなヒトRATH相同体のクローニングについては、例えばヒト活性化 T細胞cDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用することができる。 特に、そのようなcDNAライブラリーは、フィトヘマグルチニン(PHA)で48時 間刺激されたヒト抹消リンパ球から製造され得るものである。 使用するハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、cDNAライブラリーが標 識した配列を得たものとは異なる生物の種類から得たものである場合は、低いス トリンジェンシーのものとすべきである。低いストリンジェンシー条件は当業者 に周知であり、ライブラリーと標識配列を得た特定の生物により変化するが、予 測可能なものである。そのような条件の指針としては、例えばSambrookら、1989 ,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y. ;及びAusubelら、1989、Current Protocols in Molecular Biology,Green Publ ishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.を参照。 ヒトRATH相同体のクローニングに関しては、例えばネズミRATH1.1配列を使用 して、DNAハイブリダイゼーションを促進する種々のストリンジェンシー条件 を使用することができる。例えば、約45℃における6 x SSC中のハイブリダイゼ ーションとその後の50℃における2 x SSCにおける洗浄をすることができる。あ るいは洗浄段階における塩濃度は50℃における約5 x SSCの低いストリンジェン シーから、50℃における約2 x SSCの中程度のストリンジェンシー、さらに50℃ における約0.2 x SSCの高いストリンジェンシーの範囲とすることが できる。さらに洗浄段階の温度は、室温の低いストリンジェンシー条件から、約 42℃の中程度のストリンジェンシー、さらに約65℃における高いストリンジェン シーに高めることができる。その他の条件としては、限定するものではないが、 68℃での0.5M NaHPO4(pH7.2)/1mM EDTA/7% SDS中でのハイブリダイゼーション、 あるいは50%ホルムアミド/0.25M NaHPO4(pH7.2)/0.25M NaCl/1mM EDTA/7% SDS中 でのハイブリダイゼーションをし、その後50℃で40mM NaHPO4(pH7.2)/1mM EDTA/ 5% SDS中での洗浄あるいは50℃で40mM NaHPO4(pH7.2)/1mM EDTA/1% SDS中での洗 浄が挙げられる。温度と塩の両者を変化させることができ、あるいは一方の可変 値を一定として他方を変化させることができる。 あるいは、標識された断片を使用して、同様に当業者に周知の適当なストリン ジェンシー条件を使用して、対象とする生物から得たゲノムライブラリーをスク リーニングすることができる。 さらに、RATH遺伝子相同体は、本明細書中に記載したRATH遺伝子産物内のアミ ノ酸配列に基づいて設計された2種の縮退オリゴヌクレオチドプライマープール を使用してPCRを行うことにより、対象の生物の核酸から単離することができる 。反応の鋳型としては、例えば、RATH遺伝子対立遺伝子を発現することが知られ ているか予測されるヒトもしくは非ヒト細胞系あるいは組織から調製されたmR NAの逆転写により得たcDNAがある。 PCR産物をサブクローン化し、配列決定して増幅された配列がRATH遺伝子核酸 配列の配列を表していることを確認することができる。その後PCR断片を使用し て、種々の方法により完全長cDNAクローンを単離することができる。例えば 、増幅された断片を標識し、例えばバクテリオファージcDNAライブラリーの ようなcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用することができる。 あるいは、標識断片を使用して、ゲノムライブラリーのスクリーニングによりゲ ノムクローンを単離することができる。 PCR法は完全長cDNA配列を単離するのに利用することができる。例えば、 適当な細胞または組織ソース(例えば、RATH遺伝子を発現することが知られてい るものあるいは予測されるもの、例えばリンパ球及び活性化T細胞、特に活性化T H細胞)から標準的な方法によりRNAを単離することができる。逆転写反応は 、第1鎖合成を開始するための増幅断片の5'最末端に特異的なオリゴヌクレオチ ドプライマーを使用してRNAについて行うことができる。次いで得られたRN A/DNAハイブリッドについて標準的なターミナルトランスフェラーゼ反応を 使用してグアニンにより「テイル形成」し、ハイブリッドをRNAアーゼHで消 化し、その後ポリ-Cプライマーにより第2鎖の合成を開始することができる。こ のようにして、増幅断片の上流のcDNA配列は容易に単離することができる。 使用し得るクローニング方法の概観については、例えば上出のSambrookら、1989 を参照。 RATH遺伝子配列はさらに、変異体RATH遺伝子対立遺伝子を単離するのに使用で きる。そのような変異体対立遺伝子は、TH細胞及びTH細胞亜集団活性を含むT細 胞活性が関与する免疫疾患、例えば上記に挙げたものの症状を起こす遺伝子型を 有することが知られているかあるいは有するとされている個体から単離すること ができる。変異体対立遺伝子及び変異体対立遺伝子産物は、本明細書に記載した スクリーニング、治療及び診断系に使用することができる。さらにそのようなRA TH遺伝子配列は、前記のような免疫疾患に影響を及ぼすRATH遺伝子調節(例えば プロモーター)欠陥を検出するのに使用することができる。 変異体RATH遺伝子のcDNAは、例えば、当業者に周知の技術であるPCRによ り単離することができる。この場合、第1のcDNA鎖は、オリゴ-dTオリゴヌ クレオチドを、変異体RATH対立遺伝子を有すると推定される個体において発現さ れることが知られているか予測される組織から単離されたmRNAにハイブリダ イズさせ、新たな鎖を逆転写酵素により延長することにより合成することができ る。そしてcDNAの第2鎖を、正常な遺伝子の5'末端に特異的にハイブリダイ ズするオリゴヌクレオチドを使用して合成する。これらの2種のプライマーを使 用して、産物をPCRにより増幅し、適当なベクター中にクローン化し、当業者に 周知の方法によりDNA配列分析する。変異体RATH対立遺伝子のDNA配列を正 常なRATH対立遺伝子のものと比較することにより、変異体RATH遺伝子産物の機能 の喪失や変化に係わる変異を確認することができる。 あるいは、変異体RATH対立遺伝子を有すると推定されるか知られている個体か ら得たDNAを使用してゲノムライブラリーを構築することができ、あるいは 変異体RATH対立遺伝子を発現すると知られているか推定される組織から得たRN Aを使用してcDNAライブラリーを構築することができる。そして正常なRATH 遺伝子あるいはその適当な断片を標識しプローブとして使用してそのようなライ ブラリー中の対応する変異体RATH対立遺伝子を同定することができる。変異体RA TH遺伝子配列を含むクローンはその後精製して当業者に周知の方法により配列分 析することができる。 さらに、例えば、変異体RATH対立遺伝子を有すると推定されるか知られている 個体においてそのような変異体RATH対立遺伝子を発現することが知られているか 予測される組織から単離されたRNAから合成されたcDNAを用いて発現ライ ブラリーを構築することができる。この方法により、推定上の変異体組織により 生成された遺伝子産物を発現させ、標準的な抗体スクリーニング法を正常なRATH 遺伝子産物に対して生成された抗体とともに下記5.3の項に記載するように使用 してスクリーニングすることができる(スクリーニング法については、例えば、H arlow,E及びLane,eds.,1988,"Antibodies:A Laboratory Manual",Cold Spr ing Harbor Press,Cold Spring Harborを参照)。RATH変異により発現された遺 伝子産物の機能が変化する場合には(例えばミスセンスまたはフレームシフト変 異の結果)、抗-RATH遺伝子産物抗体のポリクローナルなセットは変異体RATH遺伝 子産物と交差反応しやすい。そのような標識抗体との反応により検出されたライ ブラリークローンを精製し、当業者に周知の方法により配列分析することができ る。 5.2.RATH 遺伝子のタンパク質産物 本発明は、限定するものではないが、RATH1.1遺伝子産物、またはそのペプチ ド断片などのRATH遺伝子産物に関する。そのような遺伝子産物またはそのペプチ ド断片は、種々の使用のために調製され得る。例えば、かかる遺伝子産物、また はそのペプチド断片は、診断アッセイにおける、例えば、TH細胞およびTH細 胞亜集団活性化のような、例えば、TH細胞およびTH細胞亜集団活性などのT 細胞活性化のようなT細胞活性のモジュレーション(modulation)に関係するその 他の細胞遺伝子産物の同定、またはRATH遺伝子および遺伝子産物の発現および/ または活性をモジュレートする化合物の同定のための抗体の産生に用いることが できる。 図1A〜C(配列番号2)に示したアミノ酸配列は、RATH遺伝子産物、特にマ ウスRATH1.1遺伝子産物を表すものである。図2A〜B(配列番号4)に示した アミノ酸配列は、RATH遺伝子産物、特にヒトRATH1.1遺伝子産物を表すものであ る。本明細書で「RATHタンパク質」という場合もあるRATH遺伝子産物には、さら に、上記の第5.1節に記載したRATH遺伝子配列によってコードされる遺伝子産 物が含まれ得る。 さらに、RATH遺伝子産物には、機能的に等価な遺伝子産物であるタンパク質が 含まれ得る。そのような等価なRATH遺伝子産物は、上記の第5.1節に記載した RATH遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列内にアミノ酸残基の欠失、付 加または置換を含み得るが、それらはサイレント変更であり、よって機能的に等 価なRATH遺伝子産物を産生するものである。アミノ酸の置換は、関与する残基の 極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に 基づいてなされ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、 ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファ ン、およびメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリ ン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙 げられ;正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リシン、およびヒス チジンが挙げられ;そして負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸お よびグルタミン酸が挙げられる。 特定の実施態様においては、RATH遺伝子産物には、図1A〜Cに示したアミノ 酸配列内に含まれるRGSモチーフドメインが含まれる。RGSモチーフは、図 1A〜Cに示したRATH1.1遺伝子産物の、アミノ酸残基約60からアミノ酸残基約1 69に、より特定的にはアミノ酸残基約68からアミノ酸残基約176に見出される。 別の特定の実施態様においては、RATH遺伝子産物には、図2A〜Bに示したア ミノ酸配列内に含まれるRGSドメインが含まれる。RGSモチーフは、図2A 〜Bに示したRATH1.1遺伝子産物の、アミノ酸残基約61〜180に、より特定的には 、アミノ酸残基約69〜約177に、さらにより特定的にはアミノ酸残基約69〜アミ ノ酸残基約171に見出される。 いくつかのアミノ酸の変更は、RATH RGSドメイン内でなされ得る。RGSドメ イン内の保存アミノ酸残基に関するガイドラインは下記のとおりである。一般的 に、図1A〜Cまたは2A〜Bに示されたアミノ酸残基の上にある縦線は、その 同一性が図1A〜Cまたは2A〜BのRGSドメイン内の対応する位置で保存さ れている残基を意味するものである。さらに、図1A〜Cまたは2A〜Bに示さ れたアミノ酸残基の上にあるアステリスクは、図1A〜Cまたは図2A〜BのR GSドメイン内の対応する位置に特性的様式(property-wise fashion)で保存さ れている残基を意味するものである。 「機能的に等価な」とは、本明細書で用いられる場合、上記の第5.1節に記 載されたRATH遺伝子配列によってコードされる内因性RATH遺伝子産物とin vivo またはin vitroで実質的に同様の活性を示すことが可能なタンパク質を意味する 。RATH遺伝子産物の活性とは、本明細書で用いられる場合、RATH遺伝子産物が適 当な細胞型に存在する場合に生理学的刺激に対して細胞を脱感作する能力を意味 する。例えば、適当なT細胞型にあるRATH遺伝子産物は、細胞を、例えば、アレ ルギー性炎症疾患または自己免疫疾患において生じ得るようなT細胞関連生理学 的刺激に対して脱感作するであろう。また、かかる活性は、RATH遺伝子産物が適 当な細胞型に存在する場合にインテグリン介在細胞接着の調節(正または負)に 貢献する能力も意味するものである。さらに、そのような活性は、RATH遺伝子産 物がカルパクチン分子と結合し、相互作用する能力も意味するものである。 さらに、「機能的に等価な」とは、RATHの酵母相同体であるSST2遺伝子産物と 酵母においてin vivoで実質的に同様の活性を示すことが可能なタンパク質を意 味する。SST2における突然変異は、酵母α因子接合フェロモンに対する感受性を 増大させ、脱感作を不完全なものにする。α−因子は、G−タンパク質共役受容 体に結合し、細胞を細胞周期のG1期に停止させる。阻害アッセイのゾーンは、 フェロモン感受性および脱感作を判断するものである(Dohlmanら,1995,Mol. Cell Biol.,15:363(5-3643)。このアッセイでは、α因子を含浸させたフィル ターディスクを試験されるMATa酵母株の細胞のローン(lawn)の頂部に置いた。α 因子は、このディスクからα因子濃度のグラジエントを作り出す寒天内に拡散す る 。野生型細胞と比べて、SST2突然変異体はより大きな増殖阻害のゾーンを有して おり、これらの輪の中の細胞は、増殖を再開することによってフェロモンシグナ ルに対して脱感作しない。「機能的に等価な」RATHとは、限定するものではない が、本明細書に記載した酵母ツーハイブリッドシステムにおいて実質的に同様の ポリペプチドと相互作用する能力などの酵母SST2突然変異を与える能力を有する タンパク質を意味する。 また、機能の変更が望ましい場合、欠失または非保存的変更を誘導して変更RA TH遺伝子産物を産生することができる。そのような変更により、例えば、RATH遺 伝子産物の、上記のような生物学的機能の1以上を変更することができる。さら に、そのような変更は、発現のために選択された宿主細胞における発現、スケー ルアップなどにより適したRATH遺伝子産物を作製するように選択することができ る。例えば、システイン残基は欠失させることができ、またはジスルフィド架橋 を除去するために別のアミノ酸残基で置換することができる。 RATH遺伝子産物配列は、好ましくは図1A〜Cに示したアミノ酸配列に対して アミノ酸レベルで少なくとも約80%の総合的な類似性を示し、より好ましくは図 1A〜Cのアミノ酸配列に対して少なくとも約90%の総合的な類似性を示し、最 も好ましくは図1A〜Cのアミノ酸配列に対して少なくとも約95%の総合的な類 似性を示す。 RATH遺伝子産物には、本節に記載したように、非相同の、例えば、ペプチド成 分に作動可能なように結合したRATH遺伝子産物配列も含まれ得る。非相同成分と しては、限定するものではないが、融合タンパク質の単離および精製を促進する 配列、または標識成分が挙げられ得る。そのような単離および標識成分は、当業 者には周知である。 RATH遺伝子産物またはそのペプチド断片は、当技術分野で周知の技術を用いて 組換えDNA技術によって産生され得る。したがって、RATH遺伝子配列を含む核 酸を発現させることによって本発明のRATH遺伝子ポリペプチドおよびペプチドを 調製する方法が本明細書に記載されている。当業者に周知の方法を用いることに よってRATH遺伝子産物コード配列ならびに適当な転写および翻訳調節シグナルを 含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝的組換えが挙げられる。 例えば、Sambrookら,1989,上記同様およびAusubelら,1989,上記同様を参照 されたい。一方、RATH遺伝子産物配列をコードすることが可能なRNAは、例え ば、シンセサイザーを用いて化学的に合成され得る。例えば、“Oligonucleotid e Synthesis”,1984,Gait,M.J.編,IRL Press,オックスフォード(これは参 照により本明細書に含まれるものである)に記載された技術を参照されたい。 種々の宿主発現ベクター系を利用することによって本発明のRATH遺伝子コード 配列を発現させることができる。そのような宿主−発現系は、目的とするコード 配列を産生させ、続いて精製させ得る媒介物(vehicles)であるが、適当なヌクレ オチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合、in situで本 発明のRATH遺伝子産物を発現し得る細胞でもある。これには、限定するものでは ないが、RATH遺伝子産物コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プ ラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例え ば、大腸菌(E.coli)、B.サブチリス(B.subtilis))などの微生物;RATH遺伝子 産物コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、 サッカロミセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia));RATH遺伝子産物コード配 列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させ た昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウ イルス、CaMV);タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させたか、ある いはRATH遺伝子産物コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、 Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムから誘 導したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動 物ウイルスから誘導したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期(late)プロ モーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有 する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)が含 まれる。 細菌系においては、いくつかの発現ベクターが、RATH遺伝子産物が発現するこ とを意図した使用に依存して都合よく選択され得る。例えば、大量のそのような タンパク質を、RATHタンパク質の医薬組成物の製造のため、またはRATHタンパク 質に対する抗体を生じさせるために産生させる場合、容易に精製される高レベル の融合タンパク質産物の発現を誘導するベクターが望ましくあり得る。そのよう なベクターとしては、限定するものではないが、融合タンパク質が産生されるよ うにRATH遺伝子産物コード配列がlacZコード領域を有するフレームにおいてベク ターに個別に連結され得る大腸菌発現ベクターpUR278(Rutherら,1983,EMBO J .2:1791);pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.13:31 01-3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.264:5503-5509)などが 挙げられる。グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タン パク質として外来ポリペプチドを発現させるために、pGEXベクターが使用され得 る。一般的に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタ チオン−アガロースビーズに吸着および結合させ、その後遊離グルタチオンの存 在下で溶出させることによって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEX ベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物がGST部分から放出され得る ように、トロンビンまたはXa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される 。 昆虫系においては、オートグラファ カリフォルニカ(Autographa californica )核多角体病ウイルス(AcNPV)が外来遺伝子を発現させるためのベクター として使用される。このウイルスは、スポドプテラ フルギペルダ(Spodoptera f ruglperda)細胞中で増殖する。RATH遺伝子コード配列は、ウイルスの非必須領域 (例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングされ、AcNPVプロモ ーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。RATH遺伝 子コード配列の挿入がうまくいくとポリヘドリン遺伝子が不活性化され、非収蔵 (non-occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコード されるタンパク質コートが欠けているウイルス)が産生されるであろう。次いで 、これらの組換えウイルスを用いて、挿入された遺伝子が発現されるスポドプテ ラ フルギペルダ細胞に感染させる(例えば、Smithら,1983,J.Virol.46:584 ;Smith,米国特許第4,215,051号を参照されたい)。 哺乳動物宿主細胞においては、いくつかのウイルスに基づいた発現系が利用さ れ得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、目的とするRATH 遺伝子コード配列は、アデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば、後期プロ モーターおよび3部からなるリーダー配列(tripartite leader sequence)に連結 され得る。次いで、このキメラ遺伝子は、in vitroまたはin vivo組換えによっ てアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば 、領域E1またはE3)における挿入によって、生存能力があり、感染宿主にお いてRATH遺伝子産物を発現する能力がある組換えウイルスが得られるであろう( 例えば、Logan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3655-3659を参 照されたい)。また、挿入されたRATH遺伝子産物コード配列の効率的な翻訳には 、特異的開始シグナルも必要であり得る。これらのシグナルには、ATG開始コド ンおよび隣接配列が含まれる。独自の開始コドンおよび隣接配列を含む完全RATH 遺伝子が適当な発現ベクターに挿入される場合、さらなる翻訳調節シグナルは必 要とされない。しかしながら、RATH遺伝子コード配列の一部のみが挿入される場 合、恐らく、ATG開始コドンなどの外因性翻訳調節シグナルを付与する必要があ る。さらに、開始コドンは、完全挿入物を確実に翻訳させるために所望のコード 配列のリーディングフレームを有する相(phase)内にある必要がある。これらの 外因性翻訳調節シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源のも のであり得る。発現の効率は、適当な転写エンハンサーエレメント、転写ターミ ネーターなどを含有せしめることによって高められ得る(Bittnerら,1987,Met hods in Enzymol.153:516-544を参照されたい)。 さらに、挿入配列の発現をモジュレートするか、または所望の特異的様式で遺 伝子産物を修飾し、プロセシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産 物のそのような修飾(例えば、グルコシル化)およびプロセシング(例えば、切 断)は、タンパク質の機能には重要であり得る。宿主細胞は、それぞれタンパク 質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に対する特徴的且つ特異的 機構を有する。適当な細胞系または宿主系を選択することによって、発現される 外来タンパク質を正確に修飾およびプロセシングすることができる。この目的の ために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリ ン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。そのような 哺乳動物宿主細胞としては、限定するものではないが、CHO、VERO、BH K、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38、ならびに、特に 、例えばJurkat、CTLL、HT2、Dorris、D1.1、AE7、 D10.G4およびCDC25のようなT細胞系が挙げられる。 組換えタンパク質の長期間の高収量産生のためには、安定な発現が好ましい。 例えば、RATH遺伝子産物を安定に発現する細胞系が誘導され得る。ウイルスの複 製起点を含む発現ベクターを用いるというよりも、宿主細胞は、適当な発現調節 エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター 、ポリアデニル化部位など)および選択可能なマーカーによってコントロールさ れるDNAで形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作された細胞は、富化 培地中で1〜2日間増殖され得るものであり、次いで選択培地に切り換えられる 。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を与えるもの であり、細胞の染色体にプラスミドを安定に組み込ませ、成長させてフォーカス を形成させ、次いでクローニングされて細胞系に広がり得るものである。この方 法は、RATH遺伝子産物を発現する細胞系を誘導するのに都合よく使用され得る。 そのように操作された細胞系は、特に、RATH遺伝子産物の内因性活性に影響を及 ぼす化合物のスクリーニングおよび評価に有用であり得る。 限定するものではないが、単純へルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら ,1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフ ェラーゼ(Szybalska & Szybalski,1962,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202 6)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,1980,Cell 22:817)遺伝子などのいくつかの選択系が用いられ得るものであり、それぞれ、 tk-、hgprt-、またはaprt-細胞において用いることができる。また、抗代謝産物 耐性は、下記の遺伝子:メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler ら,1980,Natl.Acad.Sci.USA 77:3567;O'Hareら,1981,Proc.Natl.Acad .Sci.USA 78:1527);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulliga n & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072);アミノグリコシドG −418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapinら,1981,J.Mol.Bio l.150:1);およびヒグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerreら ,1984,Gene 30:147)に対する選択の基礎として用いることができる。 また、あらゆる融合タンパク質は、発現される該融合タンパク質に特異的な抗 体を利用することによって容易に精製され得る。例えば、Janknechtらによって 記載された系によれば、ヒト細胞系において発現される非変性融合タンパク質の 迅速な精製が可能である(Janknechtら,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88 :8972-8976)。この系においては、目的とする遺伝子を、遺伝子のオープンリ ーディングフレームが6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳上融 合されるようにワクシニア組換えプラスミドにサブクローニングする。組換えワ クシニアウイルスを感染させた細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸−アガロー スカラムに加え、ヒスチジンタグ付きタンパク質を、イミダゾール含有緩衝液で 選択的に溶離させる。 哺乳動物細胞がヒト細胞である場合、本発明のRATH遺伝子配列が発現され得る 発現系にはヒト人工染色体(HAC)系がある。そのような技術は、当業者には 周知である(例えば、Harringtonら,1997,Nature Genetics 15:345-355を参照 されたい。これは参照により本明細書に含まれるものである)。HACにおける RATH遺伝子発現には内因性または異種RATH転写および/または翻訳配列が利用さ れ得る。 また、RATH遺伝子産物はトランスジェニック動物においても発現され得る。限 定するものではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミクロブ タ(micro-pigs)、ヒツジ、ヤギ、および非ヒト霊長類、例えばヒヒ、サル、およ びチンパンジーなどのあらゆる種の動物がRATHトランスジェニック動物の作製に 用いられ得る。「トランスジェニック」という用語は、本明細書で用いられる場 合、異なる種由来のRATH遺伝子配列を発現する動物(例えば、ヒトRATH遺伝子配 列を発現するマウス)ならびに内因性(すなわち同種)RATH遺伝子配列を過剰発 現するように遺伝子操作された動物または内因性RATH遺伝子配列をもはや発現し ないように遺伝子操作された動物(すなわち、「ノックアウト」動物)およびそ れらの子孫を意味する。 当技術分野で公知のいずれかの技術を用いることにより、動物にRATH遺伝子導 入遺伝子を導入してトランスジェニック動物の創始系を産生することができる。 そのような技術としては、限定するものではないが、前核マイクロインジェクシ ョン(Hoppe,P.C.おはびWagner,T.E.,1989,米国特許第4,873,191号);生殖 細胞系へのレトロウイスル介在遺伝子導入(Van der Puttenら,1985,Proc.Na tl.Acad.Sci.,USA 82:6148-6152);胚幹細胞における遺伝子ターゲティング( Thompsonら,1989,Cell 56:313-321);胚のエレクトロポレーション(Lo,1983 ,Mol Cell.Biol.3:1803-1814);および精子介在遺伝子導入(Lavitranoら,19 89,Cell 57:717-723)などが挙げられる。そのような技術の概略については、Go rdon,1989,Transgenic Animals,Intl.Rev.Cytol.115:171-229を参照され たい。これは参照により本明細書に含まれるものである。 当技術分野で公知のいずれかの技術を用いることにより、例えば、休止させた 培養された胚、胎児、または成体細胞由来の核の除核卵母細胞への核移入のため に、RATH導入遺伝子を含むトランスジェニック動物クローンを産生し得る(Camp bellら,1996,Nature 380:64-66;Wilmutら,1997,Nature 385:810-813)。 本発明は、全細胞にRATH導入遺伝子を有するトランスジェニック動物ならびに いくつかの、全てではない細胞に導入遺伝子を有する動物、すなわちモザイク動 物を提供する。導入遺伝子は、単独の導入遺伝子として、またはコンカテマー、 例えば頭部−頭部縦列もしくは頭部−尾部縦列として組み込まれ得る。また、導 入遺伝子は、例えばLaskoらの教示にしたがって特定の細胞型に選択的に導入さ れ、活性化され得る(Lasko,M.ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:62 32-6236)。そのような細胞型特異的活性化に必要な調節配列は、目的とする特 定の細胞型に依存するものであり、当業者には明白であろう。RATH遺伝子導入遺 伝子が内因性RATH遺伝子の染色体部位に組み込まれることが望まれる場合、遺伝 子ターゲティングが好ましい。簡単に言うと、そのような技術が利用される場合 、内因性RATH遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含むベクターが、染 色体配列による相同的組換えによって内因性RATH遺伝子のヌクレオチド配列に組 み込まれ、その機能を妨害する目的で設計される。また、導入遺伝子は、特定の 細胞型にも選択的に導入され得るものであり、よって例えばGuらの教示にしたが ってその細胞型においてのみ内因性RATH遺伝子を不活性化しすることが可能であ る(Guら,1994,Science 265:103-106)。そのような細胞型特異的不活性化に 必要な調節配列は、目的とする特定の細胞型に依存し、当業者には明白であろう 。 選択された組込み部位を有する単コピートランスジェニック動物の作製方法も 当業者には周知である。例えば、Bronsonら(Bronson,S.K.ら,1996,Proc.N atl.Acad.Sci.USA 93:9067-9072。これは参照により本明細書に含まれるもの である。)を参照されたい。 トランスジェニック動物が作製されたら、組換えRATH遺伝子の発現を標準技術 を用いてアッセイし得る。初期スクリーニングを、サザンブロット分析またはP CR技術により行って、動物組織を分析して導入遺伝子の組込みが生じているか どうかをアッセイする。トランスジェニック動物の組織における導入遺伝子のm RNA発現のレベルも、限定するものではないが、動物から得られた組織試料の ノザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、RT−PCRなど の技術を用いて評価され得る。また、RATH遺伝子発現組織の試料も、RATH導入遺 伝子産物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価され得る。 5.3.RATH 遺伝子産物に対する抗体 本明細書には、1以上のRATH遺伝子産物エピトープまたは該RATH遺伝子産物の 保存変異体またはペプチド断片のエピトープを特異的に認識することができる抗 体の産生方法が記載されている。 そのような抗体としては、限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モ ノクローナル抗体(mAbs)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフ ラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフ ラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、および上記のいずれかのエピト ープ結合性フラグメントが挙げられ得る。そのような抗体は、例えば、生物試料 中のRATH遺伝子産物の検出に用いられ得るものであり、したがって患者をRATH遺 伝子産物の異常レベルおよび/またはそのような遺伝子産物の異常体の存在につ いて試験し得ることによって診断または予後技術の一部として利用され得るもの である。また、そのような抗体は、例えば、RATH遺伝子産物レベルおよび/また は活性における試験化合物の効果の評価についての下記の第5.4.2節に記載 した、化合物スクリーニングスキームとともに利用され得るものである。さらに 、そのような抗体は、例えば、患者に導入する前に正常および/または操作され たRATH発現細胞を評価するための、下記の第5.4.3節に記載した遺伝子治療 技術とともに使用することができる。 抗RATH遺伝子産物抗体は、さらに、異常RATH遺伝子産物活性の阻害方法として 使用され得る。したがって、そのような抗体は、免疫疾患治療方法の一部として 利用され得る。 RATH遺伝子産物に対する抗体を産生させるために、種々の宿主動物がRATH遺伝 子産物またはその一部分を注射することによって免疫感作され得る。そのような 宿主動物としては、限定するものではないが、いくつか挙げるとすると、ウサギ 、マウスおよびラットが挙げられ得る。限定するものではないが、フロイントア ジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの無機質ゲル、リゾ レシチン、プルロニックポリオール(pluronic polyols)、ポリアニオン、ペプチ ド、油性乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノールなどの 界面活性物質、ならびにBCG(カルメットゲラン杆菌)およびコリネバクテリ ウム パルブム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用なヒトアジュバ ントなどの種々のアジュバントを用いることによって、宿主種に依存して、免疫 応答を増大させ得る。 ポリクローナル抗体は、RATH遺伝子産物などの抗原またはその抗原機能誘導体 で免疫感作された動物の血清から誘導された抗体分子の異種集団である。ポリク ローナル抗体の産生のために、上記のような宿主動物は、上記のようなアジュバ ントを補給したRATH遺伝子産物を注射することによって免疫感作され得る。 モノクローナル抗体は、特定の抗原に対する抗体の同種集団であり、培養にお いて連続細胞系により抗体分子の産生をもたらすいずれかの技術によって得られ 得る。これには、限定するものではないが、KohlerおよびMilsteinのハイブリド ーマ技術(1975,Nature 256:495-497;および米国特許第4,376,110号)、ヒトB 細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら,1983,Immunology Today 4:72;Coleら,19 83,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026-2030)、およびEBV−ハイブリド ーマ技術(Coleら,1985,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Alan R .Liss,Inc.,pp.77-96)が含まれる。そのような抗体は、IgG、IgM、I gE、IgA、IgDなどのいずれかの免疫グロブリンクラスおよびそのいずれ かのサブクラスに含まれ得る。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養され得る。in vivoでmAbが高力価で産生されるの で、これは、目下好ましい産生方法である。 さらに、適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を適当な生物学的活 性のヒト抗体分子由来の遺伝子とともにスプライシングすることによって「キメ ラ抗体」を産生させるために開発された技術(Morrisonら,1984,Proc.Natl. Acad.Sci.,81:6851-6855;Neubergerら,1984,Nature,312:604-608;Takedaら ,1985,Nature,314:452-454)を使用することができる。キメラ抗体は、マウ スmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するものな どの、個々の部分が異なる動物種に由来する分子である(例えば、Cabillyら, 米国特許第4,816,567号;およびBossら,米国特許第4,816,397号を参照されたい 。これらは両方とも参照により本明細書に含まれるものである。)。 さらに、ヒト化抗体の産生についての技術が開発されている(例えば、Queen ら,米国特許第5,585,089号を参照されたい。これは参照により本明細書に含ま れるものである。)。免疫グロブリンLまたはH鎖可変領域は、相補性決定領域 (CDR)と称する3つの超可変性領域によって分断された「フレームワーク」 領域からなる。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、正確に規定されてい る(例えば、“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,Kabat, E.ら,U.S.Department of Health and Human Services,1983を参照されたい) 。簡単に言うと、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1以上のCDRおよびヒト免疫 グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子であ る。 また、一本鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4,946,778号;Bi rd,1988,Science 242:423-426;Hustonら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;およびWardら,1989,Nature 334:544-546)を用いることによっ てRATH遺伝子産物に対する一本鎖抗体を産生することができる。一本鎖抗体は、 アミノ酸架橋によってFv領域のHおよびL鎖フラグメントを連結し、一本鎖ポリ ペプチドを生じさせることによって形成される。 特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術によって作製さ れ得る。例えば、そのようなフラグメントとしては、限定するものではないが、 抗体分子のペプシン消化によって産生され得るF(ab')2フラグメントおよびF(ab' )2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製され得るFabフ ラグメントが挙げられる。また、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラ グメントの同定を迅速且つ容易にするために、Fab発現ライブラリーを構築する ことが可能である(Huseら,1989,Science,246:1275-1281)。 5.4.RATH遺伝子、遺伝子産物、および抗体の使用 RATH遺伝子、RATH遺伝子産物(そのペプチド断片を含む)、およびR ATH遺伝子産物およびそのペプチド断片に対する抗体の種々の応用を説明する 。 本発明の遺伝子ファミリーを例示するRATH1.1遺伝子(しかし、これに 限定されない)を含むRATH遺伝子ファミリーは、Gタンパク質介在シグナル 伝達のようなシグナル伝達介在現象の調節に関与する。例えばRATH1.1遺 伝子(しかし、これに限定されない)などのこのような遺伝子は、T細胞活性が 関与する免疫障害のコントロールに関与する。さらに、具体的なRATH遺伝子 産物活性には、Tヘルパー細胞活性化(TH細胞およびTH細胞亜集団の活性化 を含む)における役割がある。このような遺伝子はまた、細胞移動、細胞接着、 細胞増殖、細胞分化、細胞活性化、因子放出、エンドサイトーシス、エキソサイ トーシス、細胞骨格再配置、膜トラフィッキング(trafficking)、および細胞 膜の性質の変化(例えば、偽足形成)を含む(しかし、これらに限定されない) 細胞プロセスのモジュレーションにも関与する。 このような応用には、例えば第5.4.1節で後述するように、T細胞および TH細胞亜集団活性化を含むT細胞活性化が関与する免疫障害の予後的および診 断的評価、およびこのような障害に対する素因を有する被験者の同定がある。 さらにこのような応用には、例えば第5.4.2節で後述するように、このよ うな免疫障害の治療、RATH遺伝子介在シグナル伝達のモジュレーション、お よびRATH介在エフェクター機能のモジュレーションのための方法がある。 さらにこのような応用には、例えば第5.4.3節で後述するように、RAT H遺伝子の発現および/またはRATH遺伝子産物の活性をモジュレートする化 合物の同定のためのアッセイがある。このような化合物には、例えば、T細胞活 性化(特にT細胞のGタンパク質介在シグナル伝達に関するプロセス)に関与; RATH介在シグナル伝達に関与;またはRATH遺伝子産物のエフェクター機 能(例えば、インテグリン介在細胞接着および/またはカルパクチン(calpacti on)のようなRATH相互作用物質への結合)に影響する、他の細胞性産物また は小分子化合物などの化合物があるが、これらに限定されない。これらの化合物 は、例えば、T細胞活性化(TH細胞およびTH細胞亜集団活性化を含む)に関 与する免疫障害の緩和法(しかし、これらに限定されない)を含む、本明細書に 記載の治療法およびモジュレーション法で使用することができる。 5.4.1.免疫障害異常の診断 T細胞(TH細胞およびTH細胞活性化を含むが、これらに限定されない)活 性化(例えばT細胞活性化)に関与する免疫障害の診断的および予後的評価に、 種々の方法を使用することができる。このような免疫障害としては、クローン病 、反応性関節炎(ライム病を含む)、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症を 含む器官特異的自己免疫、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、橋本病およびグレ ーブス病のような慢性炎症性疾患および障害、接触皮膚炎、乾癬、移植拒絶反応 、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性症状(例えば、喘息および、 アレルギー性鼻炎、食物アレルギー等の胃腸アレルギーを含むアレルギーなど) 、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、嬬虫(例えば、リーシュマニア症)やウ イルス感染症(HIVを含む)、および細菌感染症(結核およびらい腫らいを含 む)のような一部の病原菌感受性が挙げられるが、これらに限定されない。 このような方法は、例えば、第5.1節に記載のRATH遺伝子ヌクレオチド 配列、および第5.2節に記載のようなRATH遺伝子産物(そのペプチド断片 を含む)に対する抗体のような試薬を利用する。具体的には、このような試薬は 、例えば:(1)RATH遺伝子突然変異の存在の検出、または非免疫障害状態 に対するRATH遺伝子mRNAの過剰発現または過少発現の検出、または一部 の免疫障害、またはこのような体の障害に対する感受性に相関するRATH転写 物の選択的にスプライスされた型の定性的または定量的検出;および(2)非免 疫障害状態に対するRATH遺伝子産物の過剰または過少の検出、または免疫障 害状態または免疫障害状態への進行に相関する修飾された(例えば、完全長より 小さい)RATH遺伝子産物の存在の検出、に使用することができる。 本明細書に記載の方法は、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つの特異的 RATH遺伝子核酸または抗RATH遺伝子抗体試薬を含む、あらかじめパッケ ージングされた診断試験キット(これは、例えば臨床の場での使用に便利である )を使用して、免疫障害異常を示す患者をスクリーニングおよび診断するため、 ならびにこのような免疫障害異常に対する素因を示す個人を識別するために、行 うことができる。 RATH突然変異の検出のためには、ゲノム核酸の出発供給源として有核細胞 を使用することができる。RATH転写物またはRATH遺伝子産物の検出のた めには、RATH遺伝子が発現されている任意の細胞タイプまたは組織(例えば 活性化TH細胞等の活性化T細胞)を使用することができる。 核酸ベースの検出法は、以下の第5.4.1.1節に記載されている。ペプチ ド検出法は、以下の第5.4.1.2節に記載されている。 5.4.1.1.RATH遺伝子核酸分子の検出 RATH遺伝子内の突然変異または多形は、多くの方法を使用して検出するこ とができる。任意の有核細胞由来の核酸は、このようなアッセイの出発点として 使用され、当業者に公知の標準的核酸調製法に従って単離される。 ゲノムDNAは、点突然変異、挿入、欠失および染色体上の再配置などの、R ATH遺伝子構造が関与する異常を検出するための、生物的試料のハイブリダイ ゼーションまたは増幅アッセイに使用される。このようなアッセイとしては、直 接配列決定(Wong,C.ら.,1987,Nature 330:384-386)、1本鎖コンフォメー ション多形解析(SSCP;Orita,M.ら.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.US A 86:2766-2770)、ヘテロ2本鎖分析(Keen,T.J.ら.,1991,Genomics 11:19 9-205;Perry,D.J.& Carrell,R.W.,1992)、変性勾配ゲル電気泳動(DGG E;Myers,R.M.ら.,1985,Nucl.Acids Res.13:3131-3145)、化学的ミスマ ッチ切断(Cotton,R.G.ら.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397-440 1)、およびオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(Wallace,R.B.ら., 1981,Nucl.Acids Res.9:879-894;Lipshutz,R.J.ら.,1995,Biotechnique s 19:442-447)が挙げられるが、これらに限定されない。 患者試料または他の適当な細胞供給源中のRATH遺伝子特異的核酸分子の検 出のための診断法には、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR;実験例は、Mull is,K.B.,1987,米国特許第4、683、202号に記載されている)と、これに続い て、増幅した分子を、例えば前記したような当業者に公知の方法を用いて分析す ることによる、特異的遺伝子配列の増幅がある。このような分析技術を使用して 、増幅される核酸を、RATH遺伝子の正常なコピーのみを含有する場合に予測 されるようなものと比較して、RATH遺伝子突然変異が存在するかどうかを決 定することができる。 さらに、RATH遺伝子自身の突然変異のすぐ近傍にある多形を分類するため に、公知のゲノタイピング法を行うことができる。これらの多形は、突然変異を 有するファミリーの個人を特定するのに使用することができる。多形が、RAT H遺伝子に突然変異を有する連鎖的不平衡を示すなら、これは、突然変異を有す る可能性のある一般的集団中の個人を特定するのに使用することができる。こう して使用できる多形には、制限断片長多形(RFLP)(これは、制限酵素標的 配列中に配列変化を含む)、単一塩基の多形、および単純配列反復多形(SSL P)がある。 例えば、Weber(米国特許第5、075、217号、これは参考のためその全体が本明 細書に組み込まれる)は、(dC−dA)n−(dG-dT)nショートタンデム リピート(short tandem repeats)のブロック中の鎖長多形に基づくDNAマー カーを記載している。(dC−dA)n−(dG−dT)nブロックの平均分離 は、30,000〜60,000塩基対であると推定される。非常に密接に配置されたマーカ ーは、高頻度の同時遺伝(co-inheritance)を示し、遺伝子的突然変異(例えば 、RATH遺伝子内の突然変異)の同定ならびにRATH突然変異に関連した疾 患および障害の診断に極めて有用である。 また、Caskeyら(米国特許第5、364、759号、これは参考のためその全体が本 明細書に組み込まれる)は、短いトリおよびテトラヌクレオチド反復配列のため のDNAプロファイリングアッセイを記載している。この方法は、目的のDNA (例えば、RATH遺伝子)を抽出し、抽出したDNAを増幅し、そして反復配 列を標識化して、個人のDNAの遺伝子型地図を作成する、ことを含む。 RFLPを直接同定するために、さらにRATHプローブを使用することもで きる。さらに、RATH配列から得られるRATHプローブまたはプライマーを 使用して、YAC、BAC、PAC、コスミド、ファージまたはプラスミドのよ うなゲノムクローンを単離するすることもできるであろう。これらのクローン中 に含有されるDNAは、標準的ハイブリダイゼーションまたは配列決定法を使用 して、単一塩基多形または単純配列鎖長多形(SSLP)についてスクリーニン グすることができる。 RATH遺伝子特異的突然変異または多形の検出のための別の診断法としては 、例えば、試料(例えば、患者試料または他の適当な細胞供給源から得られる) から得られる組換えDNA分子、クローン化遺伝子またはその縮重変異体などの 核酸を、第5.1節に記載のように組換えDNA分子、クローン化遺伝子または その縮重変異体などの1つまたはそれ以上の標識核酸試薬に、これらの試薬をR ATH遺伝子内の相補的な配列へ特異的にアニーリングするのに好ましい条件下 で、接触させ、そしてともにインキュベートすることを含む、ハイブリダイゼー ション法がある。好ましくは、これらの核酸試薬の長さは、少なくとも15〜3 0ヌクレオチドである。インキュベーション後、アニーリングしなかったすべて の核酸は、核酸:RATH分子ハイブリッドから除去される。次に、ハイブリダ イズした核酸(もしあれば)の存在を検出する。このような検出スキームを使用 して、目的の細胞タイプまたは組織からの核酸を、例えば膜またはプラスチック 表面(例えば、マイクロタイタープレートまたはポリスチレンビーズ)のような 固体支持体に固定化することができる。この場合、インキュベーションの後に、 第5.1節に記載のタイプのアニーリングしなかった標識核酸試薬は、容易に除 去される。残存するアニーリングした標識RATH核酸試薬の検出は、当該分野 で公知の標準的方法により行われる。核酸試薬がアニーリングしたRATH遺伝 子配列を、正常なRATH遺伝子配列から予測されるアニーリングパターンと比 較して、RATH遺伝子突然変異が存在するかどうかを決定することができる。 RATH遺伝子発現の定量的および定性的側面もアッセイすることができる。 例えば、前記したハイブリダイゼーションまたはPCR法を使用して、RATH 遺伝子を発現することが知られている、または疑われる細胞タイプ(例えば、活 性化TH細胞を含む活性化T細胞)または組織からRNAを単離し、試験する。 単離細胞は、細胞培養物または患者から得られる。培養物から取った細胞の分析 は、細胞ベースの遺伝子治療法の一部として使用されるための、またはRATH 遺伝子の発現に及ぼす化合物の影響を試験するための、細胞の評価における必須 の工程かも知れない。このような分析により、RATH遺伝子の発現パターン( RATH遺伝子発現の活性化または不活性化、および選択的にスプライスされた RATH転写物の存在)の定量的および定性的側面の両方が明らかになるかも知 れない。 このような検出スキームの1つの実施態様において、cDNA分子が目的のR NA分子から合成される(例えば、RNA分子からcDNAへの逆転写により) 。次に、得られるcDNAのすべてまたは一部を、核酸増幅反応(例えば、PC R増幅反応など)の鋳型として使用する。この方法の逆転写および核酸増幅工程 で合成開始試薬(例えば、プライマー)として使用される核酸試薬は、第5.1 節に記載のRATH遺伝子核酸試薬の中から選択される。このような核酸試薬の 好適な長さは、少なくとも9〜30ヌクレオチドである。 増幅産物の検出のために、放射能標識または非放射能標識したヌクレオチドを 使用して、核酸増幅を行ってもよい。あるいは、標準的臭化エチジウム染色また は他の任意の核酸染色法を使用して、増幅産物が視覚化できるように、充分な増 幅産物を作製してもよい。 このようなRT−PCR法を使用して、正常または異常な選択的スプライシン グに帰因するかも知れないRATH転写物の差を検出することができる。さらに 、標準的方法を用いることによりこのような技術を実施して、免疫障害を示す個 人またはこのような免疫障害に対する素因を示す個人に対して、正常な個人で検 出される完全長および/または選択的にスプライスされたRATH転写物のレベ ルの差を定量的に検出することができる。 選択的にスプライスされた特定の分子種の検出が所望の場合は、そのような配 列の不存在下では増幅が起きないように、適当なプライマーおよび/またはハイ ブリダイゼーションプローブを使用することができる。あるいは、図1A〜Cに 記載の配列データを利用してプライマー対を選択して、使用されるRATH転写 物に特定のエキソンが存在するかまたは欠如しているかによって、異なるサイズ の断片を与えるプライマーを選択してもよい。 充分な量の適当な細胞が得られるなら、増幅法の代わりに標準的ノーザン解析 を実施することができる。このような方法を使用して、RATH転写物の間の定 量的ならびにサイズに関連した差を検出することもできる。 さらに、核酸の精製が必要無いように、「in situ」で、すなわち生検または 切開により得られる患者組織の組織切片(固定および/または凍結されている) に直接、そのようなRATH遺伝子発現アッセイを実施することが可能である。 第5.1節に記載したような核酸試薬は、このようなin situ法のプローブおよ び/またはプライマーとして使用してもよい(例えば、Nuovo,G.J.,1992,「 PCR in situハイブリダイゼーション:プロトコールと応用」("PCR In Sit u Hybridization:Protocols And Applications")、Raven Press、ニューヨーク 州を参照されたい。)。 5.4.1.2.RATH遺伝子産物の検出 上記第5.2節に記載の、野生型または突然変異RATH遺伝子産物、または その保存変異体もしくはペプチド断片に対する抗体は、本明細書に記載の免疫障 害診断薬および予測薬として使用してもよい。このような診断法は、RATH遺 伝子発現のレベル、またはRATH遺伝子産物の構造および/または時間的、組 織、細胞、もしくは細胞下の位置の異常を検出するのに使用してもよい。本明細 書に開示の証拠は、RATH遺伝子産物は細胞内遺伝子産物であることを示すた め、以下に記載する抗体および免疫測定法は、本明細書に記載のような免疫障害 の治療の有効性を評価するためには、重要なin vitro適用を有することを示す。 以下に記載するような抗体またはその抗体の断片は、RATH遺伝子発現および RATHペプチド産生に及ぼすその影響を測定するための、in vitroで治療的に 有効な可能性のある化合物をスクリーニングするのに使用してもよい。免疫障害 に対して有効性を有する化合物を同定し、その治療上有効量を決定することがで きる。 例えばT細胞活性化(TH細胞およびTH細胞亜集団活性化を含む)が関与す る免疫障害の、細胞ベースの遺伝子治療の有効性を評価するために、in vitro免 疫測定法も使用できる。RATHペプチドを産生するように遺伝子操作した細胞 中で達成されるRATH遺伝子発現のレベルを測定するために、RATHペプチ ドに対する抗体をin vitroで使用してもよい。本明細書に開示された証拠は、R ATH遺伝子産物が細胞内遺伝子産物であることを示すことを考慮すると、この ような評価により、好ましくは、細胞溶解物、膜会合画分または抽出物を使用し て行われる。このような分析により、in vivoでの治療的有効性、ならびに遺伝 子置換プロトコールの最適化を達成するのに必要な、形質転換細胞の数の測定が 可能になるであろう。 分析される組織または細胞のタイプは、一般的にRATH遺伝子を発現するこ とが知られているか、疑われるもの(例えば、活性化T細胞)を含む。本明細書 で使用されるタンパク質単離法は、例えば、Harlow and Lane(Harlow,E.and Lane,D.,1988,「抗体:実験室マニュアル」("Antibodies:A Laboratory Man ual")、コールドスプリングハーバーラボラトリー、コールド・スプリング・ハ ーバー、ニューヨーク州)(これは参考のためその全体が本明細書に組み込まれ る)に記載されているようなものである。単離細胞は、細胞培養物または患者か ら得られる。培養物から取った細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子治療法の一部 として使用されるための、またはRATH遺伝子の発現に及ぼす化合物の影響を 試験するための、細胞の評価における必須の工程であり得る。 RATH遺伝子産物またはその保存変異体もしくはペプチド断片の検出のため の好適な診断法としては、例えば、RATH遺伝子産物または保存変異体(選択 的にスプライスされた転写物の結果である遺伝子産物またはそのペプチド断片を 含む)が、抗RATH遺伝子産物特異的抗体との相互作用により検出される免疫 測定法がある。 例えば、本発明において有用な抗体または抗体フラグメント(例えば、第5. 3節に記載のもの)は、RATH遺伝子産物またはその保存変異体もしくはペプ チド断片を定量的または定性的に検出するのに使用してもよい。本発明において 有用な抗体(またはそのフラグメント)は、さらに、RATH遺伝子産物または その保存変異体もしくはペプチド断片のin situ検出のために、免疫蛍光または 免疫電子顕微鏡法におけるように、組織学的に使用してもよい。in situ検出は 、患者から組織試料を採取し、ここに本発明の標識抗体を適用することにより行 われる。抗体(またはそのフラグメント)は、好ましくは生物試料の上に標識抗 体(またはフラグメント)を重層することにより行われる。このような方法の使 用により、RATH遺伝子産物またはその保存変異体もしくはペプチド断片の存 在のみでなく、調べた組織中のその分布を調べることができる。本発明を使用す ることにより、このようなin situ検出を実施するために、広範囲の組織学的方 法(例えば、染色法)を改変することができることを、当業者は容易に理解する であろう。 RATH遺伝子産物またはその保存変異体もしくはペプチド断片の免疫測定法 は、典型的には、生物学的液体、組織抽出物、新鮮な採取細胞、または細胞培養 物中でインキュベートされた細胞の溶解物のような試料を、RATH遺伝子産物 またはその保存変異体もしくはペプチド断片を同定することができる、検出可能 に標識した抗体の存在下でインキュベートし、そして結合抗体を当該分野で公知 の多くの方法のいずれかにより検出する、ことを含んでなる。 生物試料は、ニトロセルロース、または細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパ ク質を固定化することができる他の固体支持体のような固相支持体または担体に 、接触またはその上に固定化される。次に該支持体を適当な緩衝液で洗浄し、次 に検出可能に標識されたRATH遺伝子特異的抗体で処理する。次に該固相支持 体を緩衝液で2回目の洗浄を行って、非結合抗体を除去する。次に該固体支持体 上に結合した標識物の量を、従来法で検出してもよい。 「固相支持体または担体」という用語は、抗原または抗体に結合することがで きる任意の支持体を意味する。公知の支持体または担体としては、ガラス、ポリ スチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラー ゼ、天然および改質セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱が挙 げられる。担体の性質は、本発明の目的のために、ある程度可溶性であるかまた は不溶性である。支持体材料は、結合分子が抗原または抗体に結合することがで きる限り、任意の可能な構造的配置を取ることができる。すなわち支持体の配置 は、ビーズのように球形、または試験管の内表面もしくはさおの外表面のように 円筒形でもよい。あるいは、表面は、シート、試験ストリップなどのように平面 的でもよい。好適な支持体としては、ポリスチレンビーズが挙げられる。当業者 は、抗体または抗原に結合する他の多くの適当な担体を周知しており、日常的実 験によりこれを確認することができるであろう。 抗RATH遺伝子産物抗体の特定のロットの結合活性は、公知の方法に従って 測定される。当業者は、日常的な実験を使用して、各測定の操作および最適測定 条件を決定することができるであろう。 RATH遺伝子ペプチド特異的抗体を検出可能に標識する方法の1つは、これ を酵素に結合させ、酵素免疫定量法(EIA)で使用することである(Voller, A.、「固相酵素免疫検定法(ELISA)」(The Enzyme Linked Immunosorben t Assay(ELISA))、1978,Diagnostic Horizons 2;1-7,Microbiological Asso ciates Quarterly Publication,Walkersville,メリーランド州);Voller,A .ら.,1978,J.Clin.Pathol.31:507-520;Butler,J.E.,1981,Meth.Enzym ol.73:482-523;Maggio,E.(編),1980,酵素免疫定量法(Enzyme Immunoassa y)、CRC Press,Boca Raton,フロリダ州;Ishikawa,E.ら.,(編)、1981、 酵素免疫定量法(Enzyme Immunoassay)、化学書院,東京)。抗体に結合した酵 素は、適当な基質(好ましくは発色性基質)と、例えば分光学的、蛍光的、また は視覚的に検出できる化学的残基を産生するように、反応する。抗体を検出可能 に標識するのに使用される酵素としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィ ロコッカルヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコー ルデヒドロゲナーゼ、アルファーグリセロホスファターゼ、デヒドロゲナーゼ、 トリオースホスフェートイソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ 性ホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラ クトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6− リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ がある。検出は、酵素の発色基質を用いる比色法により行われる。検出はまた、 基質の酵素反応の程度を、同様に調製した標準物質と比較することによっても行 われる。 検出はまた、種々の他の免疫測定法の任意の方法を使用して行われる。例えば 、抗体または抗体フラグメントを放射能標識することにより、RATH遺伝子ペ プチドをラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して検出することができる(例 えば、Weintraub,B.,「ラジオイムノアッセイの原理、放射性リガンド測定法 についての第7回目のトレーニングコース」(Principles of Radioimmunoassay s,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques)、The Endocr ine Society,1986年3月、これは参考のため本明細書に組み込まれる)。ラジ オアイソトープは、ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターを用 いる方法、またはオートラジオグラフィーにより検出することができる。 また蛍光化合物を用いて抗体を標識することもできる。蛍光標識した抗体を正 しい波長の光に当てると、蛍光によりその存在が検出される。最も一般的に使用 される蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミ ン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、O−フタルアル デヒド(o-phthaldehyde)およびフルオレサミンがある。 抗体はまた、152Eu、またはランタニド系列の他の金属のような蛍光を発す る金属を使用して、検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチ レントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA) のような金属キレート基を使用して、抗体に結合させることができる。 抗体はまた、これを化学発光化合物に結合することにより、検出可能に標識す ることができる。次に化学発光タグ付き抗体の存在が、化学反応の経過中に発生 する発光の存在を検出することにより測定される。特に有用な化学発光標識化合 物は、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル(theromatic acr idinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルで ある。 同様に、本発明の抗体を標識するのに生物発光化合物を使用してもよい。生物 発光は、生物系で見られるタイプの化学発光であり、触媒タンパク質が化学発光 反応の効率を増加させる。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出する ことにより測定される。標識を目的とする重要な生物発光化合物は、ルシフェリ ン、ルシフェラーゼ、およびエクオリンである。 5.4.2.RATH活性をモジュレートする化合物のスクリーニングアッセイ 下記のアッセイは次のものを同定するように設計される:(i)RATH遺伝 子産物に結合する化合物;(ii)RATH遺伝子産物と相互作用する他の細胞内 タンパク質に結合する化合物;(iii)RATH遺伝子産物と他の細胞内タンパ ク質との相互作用を妨害する化合物;および(iv)RATH遺伝子の活性をモジ ュレートする化合物(すなわち、RATH遺伝子発現のレベルをモジュレートお よび/またはRATH遺伝子産物活性のレベルをモジュレート)。このようなア ッセイの1つの好適な実施態様は、細胞内G−αサブユニットへのRATHの結 合を改変する化合物を同定するように設計されるアッセイを含む。このようなア ッセイの別の好適な実施態様は、カルパクチンへのRATHの結合を改変する化 合物を同定するアッセイを含む。このようなアッセイのさらに別の好適な実施態 様は、RATH介在インテグリン結合細胞接着を改変する化合物を同定するアッ セイを含む。 RATH遺伝子調節配列(例えば、プロモーター配列)に結合する化合物を同 定するアッセイが、さらに使用される。例えば、Platt,K.A.,1994,J.Biol. Chem.269:28558-28562(これは参考のためその全体が本明細書に組み込まれる )(これは、RATH遺伝子発現のレベルをモジュレートする)を参照されたい 。このような化合物は、例えばRATH遺伝子発現レベルに影響を与え得る。 本明細書において同定される化合物としては、例えば、可溶性ペプチドおよび 小さい有機または無機分子があるが、これらに限定されない。 本明細書で同定される化合物は、例えばT細胞活性(TH細胞およびTH細胞 亜集団活性化を含むが、これらに限定されない)が関与する免疫障害のコントロ ールに使用される。このような免疫障害としては、クローン病、反応性関節炎( ライム病を含む)、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症を含む器官特異的自 己免疫、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、橋本病およびグレーブス病のような 慢性炎症性疾患および障害、接触皮膚炎、乾癬、移植拒絶反応、移植片対宿主病 、サルコイドーシス、アトピー性症状(例えば、喘息および、アレルギー性鼻炎 、食物アレルギー等の胃腸アレルギーを含むアレルギーなど)、好酸球増加症、 結膜炎、糸球体腎炎、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)やウイルス感染症(H IVを含む)、および細菌感染症(結核およびらい腫らいを含む)のような一部 の病原菌感受性が挙げられるが、これらに限定されない。 本明細書で同定される化合物は、例えば、細胞移動、細胞接着、細胞増殖、細 胞分化、細胞活性化、因子放出、エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、細 胞骨格再配置、膜トラフィッキング(trafficking)、および細胞膜の性質の変 化(例えば、偽足形成)を含む(しかし、これらに限定されない)細胞プロセス のモジュレーションにも関与する。 本明細書に記載のようなアッセイにより同定される化合物は、例えば、RAT H遺伝子産物の生物学的機能の研究、および免疫障害の症状の緩和に有用である 。例えば第5.4.2.1〜5.4.2.3節に記載のような方法により同定さ れる化合物の有効性を試験するための測定法は、以下の第5.4.2.4節で考 察される。本発明の組成物は、そのような方法により同定される1つまたはそれ 以上の化合物を含む医薬組成物を含むことに注意されたい。このような医薬組成 物は、例えば以下の第5.6節で考察されるように、製剤化することができる。 5.4.2.1.RATH遺伝子産物に結合する化合物のインビトロスクリーニ ング測定法 本発明のRATH遺伝子産物と相互作用(例えば、結合)することができる化 合物を同定するために、インビトロ系を設計してもよい。同定される化合物は、 例えば野生型および/または突然変異RATH遺伝子産物の活性を調節するのに 有用であり、RATH遺伝子産物の生物学的機能を研究するのに有用であり、正 常なRATH遺伝子産物の相互作用を破壊する化合物を同定するためのスクリー ニングで使用されるか、またはそれ自身がそのような相互作用を破壊してもよい 。 RATH遺伝子産物と相互作用する化合物を同定するために使用される測定法 の原理は、RATH遺伝子産物と試験化合物の反応混合物を、2つの成分が相互 作用(例えば結合)して複合体(これは、一過性複合体であり、除去できるかお よび/または反応混合物中で検出される)を形成するための条件および時間、調 製することを含む。これらの測定法は、種々の方法で行われる。例えば、そのよ うな測定法を行う1つの方法は、RATH遺伝子産物または試験物質を固相に固 定し、反応の最後に固相に固定されたRATH遺伝子産物/試験化合物複合体を 検出することを含む。そのような方法の1つの実施態様において、RATH遺伝 子産物は固相上に固定され、固定されない試験化合物は、直接または間接に固定 され、標識され得る。 測定法の具体的な実施態様において、使用されるRATH遺伝子産物は、図1 A−Cまたは図2A−Bに示すアミノ酸配列内に含有されるRGSドメインを含 む。 実際には、固相としてマイクロタイタープレートの使用が便利である。固定さ れた成分は、非共有結合的または共有結合的に固定化されてよい。非共有結合は 、固相表面をタンパク質の溶液で被覆して乾燥するだけで行われる。あるいは固 定化抗体(好ましくは、固定化されるタンパク質に特異的なモノクローナル抗体 )は、固相表面にタンパク質を固定するのに使用してもよい。表面は、あらかじ め作成して保存しておいてもよい。 測定を行うために、非固定化成分を、固定成分を含有する被覆表面に添加する 。反応が完了した後、未反応の成分を、形成された複合体が固相表面上に固定化 されて留まるように、除去(例えば、洗浄により)される。固相表面に固定され た複合体の検出は、多くの方法で行われる。あらかじめ固定化しなかった成分が あらかじめ標識される場合、表面上に固定化された標識物の検出は、複合体が形 成されたことを意味する。あらかじめ固定化しなかった成分があらかじめ標識さ れない場合、表面上に固定された複合体を検出するために間接的標識物が使用さ れ、例えばあらかじめ固定化しなかった成分に対して特異的な標識抗体が使用さ れる(この抗体は次に、直接標識されるかまたは、標識された抗Ig抗体により 間接的に標識される)。 あるいは反応は液相中で行われ、反応生成物は未反応成分から分離され、そし て複合体が検出される、例えば、RATH遺伝子産物または試験化合物に特異的 な固定化抗体を使用して、溶液中で形成された複合体を固定し、可能な複合体の 他の成分に特異的な標識抗体を使用して、固定された複合体を検出する。 これらの測定法の具体的な実施態様において、測定が、RATH遺伝子産物に 結合してこれと複合体を形成するG−αおよび/またはGα−Iサブユニットア ミノ酸配列を同定するように、試験化合物は、G−αまたはGα−Iサブユニッ トタンパク質の少なくとも1部を含有する。試験したG−αおよび/またはGα −Iサブユニット配列は、好ましくはT細胞中に存在するG−αおよび/または G−α−Iサブユニットから得られ、最も好ましくはT細胞特異的G−αおよび /またはG−α−Iサブユニットから得られる。G−αおよび/またはG−α− I核酸およびアミノ酸配列は、当業者に周知である(例えば、Gilman,A.,Ann .Rev.Immun.を参照されたい、これは参考のためその全体が本明細書に組み込 まれる)。 これらの測定法の別の具体的な実施態様において、測定が、RATH遺伝子産 物に結合してこれと複合体を形成するカルパクチンアミノ酸配列を同定するよう に、試験化合物は、カルパクチン分子の少なくとも1部を含有する。カルパクチ ン核酸およびアミノ酸配列は、当業者に周知である(例えば、Waisman,D.A.,1 995,Mol.Cell.Biochem.,149/150:301-322およびそこに引用されている文献 を参照されたい)。 5.4.2.2.RATH遺伝子産物と相互作用する細胞内タンパク質の測定 RATHタンパク質−細胞内タンパク質相互作用を同定するために、タンパク 質−タンパク質相互作用を検出するための適切な任意の方法が使用される。 使用される伝統的な方法には、同時免疫沈降、架橋および勾配もしくはクロマ トグラフィーカラムによる同時精製がある。これらの方法を使用すると、RAT H遺伝子産物と相互作用する細胞内タンパク質の単離が可能になる。いったん単 離されると、このような細胞内タンパク質は同定可能であり、次に標準的方法を 用いて、相互作用する追加のタンパク質を同定するのに使用することができる。 例えば、RATH遺伝子産物と相互作用する細胞内タンパク質のアミノ酸配列の 少なくとも一部は、例えばエドマン分解のような当業者に周知の方法を使用して 確認することができる(例えば、Creighton,1983,「タンパク質:構造および 分子的原理」("Proteins:Structures and Molecular Principles")、W.H.Fre eman & Co.,ニューヨーク州、pp.34-49を参照されたい)。得られるアミノ酸 配列は、そのような細胞内タンパク質をコードする遺伝子配列についてスクリー ニングするために使用することができる、オリゴヌクレオチド混合物の作成のた めの指針として使用される。スクリーニングは、例えば標準的ハイブリダイゼー ション法またはPCR法により行われる。オリゴヌクレオチド混合物の作成とス クリーニングのための方法は、周知である(例えば、Ausubel,前述、および、 「PCRプロトコール:方法と応用への指針」(PCR Protocols:A Guide to Met hods and Applications)、1990,Innis,M.et al.編、アカデミックプレス社 (Academic Press Inc.)、ニューヨーク州、を参照されたい)。 さらに、RATHタンパク質と相互作用する細胞内タンパク質をコードする遺 伝子の同時同定を行う方法を採用することができる。これらの方法では、例えば 、λgt11ライブラリーの抗体プローブ結合の周知の技術に類似の方法でRA THタンパク質を使用して、発現ライブラリーを標識RATHタンパク質とプロ ーブ結合させることを含む。 インビボでタンパク質相互作用を検出する1つの方法である2ハイブリッド系 を、詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。この系の1つは 既に記載されており(Chien et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9 578-9582)、Clontech(パロアルト、カリフォルニア州)から市販されている 簡単に説明すると、このような系を使用して、2つのハイブリッドタンパク質 をコードするプラスミドを構築する:1つはRATH遺伝子産物に融合した転写 アクチベータータンパク質のDNA結合ドメインからなり、他の1つは、cDN Aライブラリーの一部としてこのプラスミドに再度組合せられたcDNAにより コードされる未知のタンパク質に融合した、転写アクチベータータンパク質の活 性化ドメインからなる。DNA結合ドメイン融合プラスミドおよびcDNAライ ブラリーは、レポーター遺伝子(例えば、HBSまたは1acZ)(この制御領 域は転写アクチベーター結合部位を含有する)を含有する酵母サッカロミセス・ セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の株に形質転換される。いずれのハイ ブリッドタンパク質も単独では、レポーター遺伝子の転写を活性化することはで きない(DNA結合ドメインハイブリッドは、活性化機能を提供しないため、そ してその活性化ドメインハイブリッドは、アクチベーター結合部位に局在化でき ないため、できない)。2つのハイブリッドタンパク質の相互作用は、機能性ア クチベータータンパク質を復元し、レポーター遺伝子が発現され、これはレポー ター遺伝子産物についての測定法により検出される。 2ハイブリッド系または関連する方法は、「おとり(bait)」遺伝子産物と相 互作用するタンパク質について活性化ドメインライブラリーをスクリーニングす るのに使用し得る。例えば(しかし限定するものではないが)、RATH遺伝子 産物はおとり遺伝子産物として使用される。総ゲノムまたはcDNA配列は、活 性化ドメインをコードするDNAに融合される。このライブラリー、およびDN A結合ドメインに融合したおとりRATH遺伝子産物のハイブリッドをコードす るプラスミドは、酵母レポーター株中に形質転換され、得られる形質転換体は、 レポーター遺伝子を発現するものについてスクリーニングされる。例えば(しか し限定するものではないが)、おとりRATH遺伝子配列(例えば、図1A−C に記載のような、RATH遺伝子のオープンリーディングフレーム)は、GAL 4タンパク質のDNA結合ドメインをコードするDNAに翻訳的に融合するよう に、ベクター中にクローン化される。これらのコロニーは精製され、レポーター 遺伝子発現に関与するライブラリープラスミドが単離される。次にDNA配列決 定を使用して、ライブラリープラスミドにコードされるタンパク質を同定する。 おとりRATH遺伝子産物と相互作用する、検出されるタンパク質からの細胞 株のcDNAライブラリーは、当該分野で日常的に使用されている方法を使用し て作成することができる。本明細書に記載の具体的な系によれば、例えばcDN A断片は、GAL4の転写活性化ドメインに翻訳的に融合するように、ベクター 中に挿入される。このライブラリーは、おとりRATH遺伝子−GAL4融合プ ラスミドとともに、酵母株(GAL4活性化配列を含有するプロモーターにより 指令されるlacZ遺伝子を含有する)中に同時形質転換される。GAL4転写 活性化ドメインに融合した、おとりRATH遺伝子産物と相互作用するcDNA にコードされるタンパク質は、活性GAL4タンパク質を復元し、こうしてHI S3遺伝子の発現を指令する。HIS3を発現するコロニーは、ヒスチジンが欠 如した半固体寒天ベースの培地を含むシャーレ上の増殖により検出することがで きる。次にcDNAはこれらの株から精製され、当該分野で日常的に使用されて いる方法を使用して、おとりRATH遺伝子相互作用タンパク質を産生し単離す るのに使用される。 具体的な実施態様において、2ハイブリッド系は、RATH遺伝子産物に結合 するG−αおよび/またはG−α−Iサブユニットアミノ酸配列を同定するのに 使用することができる。このような実施態様においてRATH「おとり」は、G −αおよび/またはG−α−Iサブユニット断片をコードするライブラリーに関 連して使用される。G−αおよび/またはG−α−Iサブユニット配列は、好ま しくはT細胞中に存在するG−αおよび/またはG−α−Iサブユニットから得 られ、最も好ましくはT細胞特異的G−αおよび/またはG−α−Iサブユニッ トから得られる。G−αおよび/またはG−α−Iサブユニット核酸およびアミ ノ酸配列は、当業者に周知である(例えば、Gilman,A.,Ann.Rev.Immun.を 参照されたい、これは参考のためその全体が本明細書に組み込まれる)。 別の具体的な実施態様において、2ハイブリッド系は、RATH遺伝子産物に 結合するカルパクチンアミノ酸配列を同定するために使用することができる。こ のような実施態様において、RATH「おとり」は、カルパクチン断片をコード するライブラリーに関連して使用される。カルパクチン核酸およびアミノ酸配列 は、当業者に周知である(例えば、Waisman,D.A.,1995,Mol.Cell.Biochem .149/150:301-322、およびそこに引用されている文献を参照されたい)。 5.4.2.3.RATH遺伝子産物/細胞内巨大分子相互作用を妨害する化合 物の測定 本発明のRATH遺伝子産物は、インビボで1つまたはそれ以上の細胞内巨大 分子(例えば、タンパク質)と相互作用する。このような巨大分子は、第5.4 .2.2節で前述のしたような方法により同定される核酸分子およびそれらのタ ンパク質があるが、これらに限定されない。本考察の目的において、このような 細胞内巨大分子は、本明細書において「相互作用性パートナー」と呼ぶ。こうし てRATH相互作用を破壊する化合物は、RATH遺伝子産物(突然変異RAT H遺伝子産物を含む)の活性を制御するのに有用であるかも知れない。このよう な化合物には、例えば上記第5.4.2.1節に記載したようなペプチドなどの 分子(これは、細胞内RATH遺伝子産物に接近することができるであろう)が あるが、これらに限定されない。 RATH遺伝子産物とその細胞内相互作用性パートナーとの相互作用を妨害す る化合物を同定するために使用される測定系の基本的原理は、RATH遺伝子産 物と相互作用パートナーとを含有する反応混合物を、2つが相互作用し結合する 条件下及びそのために充分な時間調製し、こうして複合体を形成することからな る。阻害活性について化合物を試験するために、反応混合物を、試験化合物の存 在下および非存在下で調製する。試験化合物は、最初に反応混合物中に含めるか 、またはRATH遺伝子産物とその細胞内相互作用パートナーの添加後のある時 点で加えてもよい。対照の反応混合物は、試験化合物無しかまたはプラセボとと もにインキュベートする。次にRATH遺伝子タンパク質と細胞内相互作用性パ ートナーとの間の複合体の形成を検出する。対照反応中の複合体の形成(試験化 合物を含有する反応混合物中ではない)は、その化合物がRATH遺伝子タンパ ク質と相互作用性パートナーの相互作用を妨害することを示す。さらに試験化合 物および正常のRATH遺伝子タンパク質を含有する反応混合物内の複合体形成 はまた、試験化合物と突然変異RATH遺伝子タンパク質を含有する反応混合物 内の複合体形成と比較される。突然変異RATH遺伝子タンパク質(正常なRA TH遺伝子タンパク質ではない)の相互作用を破壊する化合物を同定することが 所望の時は、この比較は重要である。 RATH遺伝子産物と相互作用性パートナーとの相互作用を妨害する化合物に ついての測定は、不均一または均一フォーマットで行うことができる。不均一測 定法では、RATH遺伝子産物または結合パートナーを固相に固定し、反応の最 後に固相に固定された複合体を検出する。均一測定法では、全反応を液相中で行 う。いずれのアプローチでも、反応物の添加の順序を変えると、試験される化合 物について異なる情報が得られる。例えば、RATH遺伝子産物と相互作用性パ ートナーとの相互作用を(例えば、競合により)妨害する試験化合物は、反応を 試験化合物の存在下で、すなわち試験物質を、RATH遺伝子産物及び細胞内相 互作用性パートナーの前に、または同時に加えることにより同定される。あるい は、あらかじめ形成した複合体を破壊する試験化合物(例えば、複合体から成分 の1つを置換する高い結合定数を有する化合物)は、複合体が形成された後に、 試験化合物を反応混合物に加えることにより試験することができる。種々のフォ ーマットを簡単に後述する。 不均一測定系では、RATH遺伝子産物または相互作用性パートナーのいずれ かが固相表面に固定され、固定されない分子種は直接または間接に標識される。 実際には固相としてマイクロタイタープレートの使用が便利である。固定された 分子種は、非共有結合的または共有結合的に固定化されてよい。非共有結合は、 固相表面をRATH遺伝子産物または相互作用性パートナーの溶液で被覆して乾 燥するだけで行われる。あるいは、固定される分子種に対して特異的な固定化抗 体は、固相表面に分子種を固定するのに使用してもよい。表面は、あらかじめ作 成して保存しておいてもよい。 測定を行うために、固定化分子種のパートナーを、試験化合物を用いて又は用 いずに被覆した表面に暴露する。反応が完了後、未反応の成分を除去(例えば、 洗浄)すると、形成された複合体は固相表面に固定化されて残存するであろう。 固相表面に固定された複合体の検出は、多くの方法で行われる。非固定化成分が あらかじめ標識される場合、表面上に固定化された標識物の検出は、複合体が形 成されたことを意味する。非固定化成分があらかじめ標識されない場合、表面上 に固定された複合体を検出するために間接的標識物が使用され、例えば非固定化 成分に対して特異的な標識抗体が使用される(この抗体は次に、直接標識される かまたは、標識された抗Ig抗体により間接的に標識される)。反応成分の添加 順序に依存して、複合体形成を阻害する、またはあらかじめ形成された複合体を 破壊する試験化合物を検出することができる。 あるいは、反応は液相中で試験化合物の存在下または非存在下で行われ、反応 生成物は未反応成分から分離され、そして複合体が検出される、例えば、相互作 用性化合物の1つに特異的な固定化抗体を使用して、溶液中で形成された複合体 を固定し、他のパートナーに特異的な標識抗体を使用して、固定された複合体を 検出する。再度、液相への反応物の添加順序に依存して、複合体を阻害する、ま たはあらかじめ形成された複合体を破壊する試験化合物を同定することができる 。 本発明の別の実施態様において、均一測定法を使用することができる。このア プローチでは、RATH遺伝子産物またはその相互作用性パートナーのいずれか は標識されているが標識物により発生するシグナルは複合体形成により消失する 際に、RATH遺伝子タンパク質と相互作用性パートナーとのあらかじめ形成さ れた複合体を調製する(例えば、免疫測定法のためにこのアプローチを使用する Rubensteinの米国特許第4,109,496号を参照されたい)。あらかじめ形成された 複合体からの分子種の1つと競合しこれを置換する試験物質の添加は、バックグ ランド以上のシグナルを発生させる。こうして、RATH遺伝子タンパク質/細 胞内相互作用性パートナー相互作用を破壊する試験物質を同定することができる 。 具体的な実施態様において、RATH遺伝子産物は、上記第5.1節に記載の 組換えDNA技術を使用して、固定化のために調製することができる。例えばR ATHコード領域は、得られる融合タンパク質中でその相互作用活性が維持され るように、融合ベクター(例えば、pGEX−5X−1)を使用してグルタチオ ン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子に融合させることができる。細胞 内相互作用性パートナーは精製し、当該分野で日常的に行われている上記第5. 2節に記載の方法を使用して、モノクローナル抗体を作成するために使用するこ とができる。この抗体は、例えば当該分野で日常的に実施されている方法により 、ラジオアイソトープ125Iを用いて標識することができる。不均一測定法では 、例えばGST−RATH融合タンパク質は、グルタチオン−アガロースビーズ に固定することができる。次に細胞内相互作用性パートナーは、相互作用(例え ば、結合)が起きるような方法で、試験化合物の存在下または非存在下で添加す ることができる。反応期間の最後に、非結合物質を洗浄除去し、系に標識モノク ローナル抗体を加え、複合体になった成分に結合させる。RATH遺伝子タンパ ク質と細胞内相互作用性パートナーとの間の相互作用は、グルタチオン−アガロ ースビーズに結合して残存する放射能の量を測定して検出することができる。試 験化合物により相互作用がうまく阻害されると、測定される放射能が低下するで あろう。 あるいは、GST−RATH遺伝子融合タンパク質および細胞内相互作用性パ ートナーとともに、固体グルタチオン−アガロースビーズの存在下、液体中で混 合することができる。試験化合物は、分子種が相互作用できる間又は後のいずれ かに添加することができる。この混合物を固体グルタチオン−アガロースビーズ に添加し、非結合物質を洗浄除去することができる。再度RATH遺伝子産物/ 相互作用性パートナー相互作用の阻害の程度は、標識抗体を添加し、ビーズに結 合した放射能を測定することにより検出することができる。 具体的な実施態様において、1つの相互作用性パートナーはRATH遺伝子産 物配列であり、第2の相互作用性パートナーはG−α−IサブユニットまたはR ATHに結合するサブユニットの一部である。このような実施態様により同定さ れる試験化合物は、RATH/G−α−Iサブユニット複合体形成を阻害する化 合物である。 別の具体的な実施態様において、1つの相互作用性パートナーはRATH遺伝 子産物配列であり、第2の相互作用性パートナーは、カルパクチン分子またはカ ルパクチン分子のRATH遺伝子産物結合性部分である。このような実施態様に より同定される試験化合物は、RATH/カルパクチン複合体形成を阻害する化 合物である。 本発明の別の実施態様において、RATHタンパク質および/または細胞内相 互作用性パートナーの結合ドメインに対応するペプチド断片を、完全長タンパク 質の1つまたは両方の代わりに使用して、これらの同じ方法を使用することがで きる。当該分野で日常的に行われる任意の数の方法を使用して、結合部位を同定 および単離することができる。これらの方法には、タンパク質の1つをコードす る遺伝子の突然変異誘発、および同時免疫沈降測定法における結合の破壊のため のスクリーニングがあるが、これらに限定されない。次に、複合体中の第2の分 子種をコードする遺伝子中の代償性突然変異を選択することができる。各タンパ ク質をコードする遺伝子の配列分析は、相互作用(例えば、結合)に関与するタ ンパク質の領域に対応する突然変異を明らかにするであろう。あるいは、この節 で前記したような方法を使用して、1つのタンパク質を固相表面に固定し、トリ プシンのようなタンパク質分解酵素で処理した標識相互作用性パートナーと相互 作用(例えば、結合)させることができる。洗浄後、相互作用性(例えば、結合 性)ドメインを含む短い標識ペプチドは、固体物質に結合して残存し、これは単 離し、アミノ酸配列決定により同定することができる。また細胞内結合パートナ ーをコードする遺伝子が得られれば、タンパク質のペプチド断片を発現するよう に短い遺伝子セグメントが操作され、次にこれは結合活性について試験され、精 製されるかまたは合成される。 例えば(しかし限定するものではないが)、RATH遺伝子産物は、この節で 上記したようにGST−RATH融合タンパク質を作成することにより固体物質 に固定することができ、グルタチオンアガロースビーズに結合させることができ る。細胞内相互作用性結合パートナーは、32Sのようなラジオアイソトープで標 識することができ、トリプシンのようなタンパク質分解酵素で切断することがで きる。次に切断生成物を、固定されたGST−RATH融合タンパク質に添加し て、結合させることができる。非結合ペプチドを洗浄除去した後、細胞内相互作 用性パートナー結合ドメインを表す標識した結合物質は、溶出し、精製し、そし て周知の方法によりアミノ酸配列について分析することができる。こうして同定 されたペプチドは、合成されるか、または組換えDNA技術を使用して適切な促 進性タンパク質に融合することができる。 別の実施態様において、2ハイブリッドスクリーニング測定法を使用して、R ATHとG−α−Iサブユニットとの相互作用をブロックする薬物を同定するこ とができる。この方策は、L−ヒスチジンが欠如した合成完全培地上での増殖が 、RATHとその同起源のG−α−Iサブユニットに依存する2ハイブリッド含 有酵母株を用いるであろう。このような実施態様の1つの例では、L−ヒスチジ ンが欠如した合成完全培地で作成されたプレート上で、薄いマットで株を広げる 。試験化合物を含有するフィルターディスクを、プレートに添加する。ほとんど の試験化合物は、RATHとその同起源のG−α−Iサブユニットとの相互作用 に影響を与えず、従ってこのような化合物を含浸させたディスクの周りではコン フルエントな酵母が増殖するであろう。RATHとその同起源のG−α−Iサブ ユニットとの相互作用を阻害する化合物は、これらを含有するフィルターディス クの周りの酵母株の増殖を阻害し、増殖阻害のゾーンを引き起こすであろう。こ れらの化合物は次に、野生型酵母に対して試験して、これらが静真菌性または殺 真菌性ではないことを確認する。このような実施態様はまた、培養中の細胞増殖 を測定するための既知の方法を使用して、液体培養で行うことができる。 このような実施態様の変形態様において、阻害性ペプチドを同定することによ り、この方法がRATH遺伝子産物と相互作用するサブユニットの一部を同定す るように、試験化合物はG−αまたはG−α−Iサブユニットの部分を含んでも よい。 さらに別の実施態様において、2ハイブリッドスクリーニング系を使用して、 RATHとカルパクチンとの相互作用をブロックする薬物を同定できるであろう 。この方策は、L−ヒスチジンが欠如した合成完全培地での増殖が、RATHと その同起源のカルパクチン結合部分との物理的相互作用に依存する2ハイブリッ ド含有酵母株を用いるであろう。このような実施態様の1つの例では、L−ヒス チジンが欠如した合成完全培地で作成されたプレート上で薄いマットで、株を広 げる。試験化合物を含有するフィルターディスクを、プレートに添加する。ほと んどの試験化合物は、RATHとその同起源のカルパクチンとの相互作用に影響 を与えず、従ってこのような化合物を含浸させたディスクの周りではコンフルエ ントな酵母が増殖するであろう。RATHとその同起源のカルパクチンとの相互 作用を阻害する化合物は、これらを含有するフィルターディスクの周りの酵母株 の増殖を阻害し、増殖阻害のゾーンを引き起こすであろう。これらの化合物は次 に、野生型酵母に対して試験して、これらが静真菌性または殺真菌性ではないこ とを確認する。このような実施態様はまた、培養中の細胞増殖を測定するための 周知の方法を使用して、液体培養で行うことができる。 このような実施態様の変形態様において、阻害性ペプチドを同定することによ り、この方法がRATH遺伝子産物と相互作用するサブユニットの一部を同定す るように、試験化合物はカルパクチン分子の部分を含んでもよい。 5.4.2.4.RATH活性を調節する化合物の同定のための細胞ベースの測 RATH活性を調節することにより、免疫障害を治療することができる、およ び/またはRATH介在シグナル伝達および細胞プロセスを調節することができ る化合物を測定するための、細胞ベースの方法を本明細書に示す。具体的には、 このような測定法では、RATH依存性Gタンパク質介在シグナル伝達プロセス に影響を与える化合物を同定する。。このような方法により同定される化合物は 、例えばT細胞(TH細胞およびTH細胞亜集団を含む)活性(例えば、T細胞 活性化)が関与する免疫障害の治療方法に使用することができる。 ある実施態様において、細胞ベースの測定法は、酵母細胞中でRATH遺伝子 産物を発現するRATH遺伝子配列を含有する酵母細胞を含む。酵母では、RG SファミリーメンバーとしてのRATHは、フェロモン応答経路を介して誘導さ れるシグナル伝達を調節する。ある場合には、このような調節は、外部刺激に対 してシグナル伝達経路を「鈍くする」または脱感作することである(例えば、酵 母の場合は、α因子交配フェロモン)。このような調節は、多くの方法で容易に スコア化することができ(例えば、Weiner,J.L.et al.,1993,J.Biol.Chem .268:8070-8077、これは参考のためその全体が本明細書に組み込まれる)、R ATH活性を調節する化合物を同定するために使用することができる。すなわち このような酵母細胞ベースの測定法は、シグナル伝達経路のRATH調節に影響 を与える試験化合物を容易に同定することができる。 このような測定法で使用される酵母細胞は、酵母細胞中で発現可能な、前記第 5.1節に記載のようなRATH遺伝子配列を含有する。酵母細胞は、例えば交 配フェロモンに超感受性の突然変異酵母細胞(例えば、sst2欠失突然変異( sst2Δ)のようなsst機能欠失突然変異体)であってもよい。あるいはこ の測定法では、酵母細胞中で発現可能なRATH遺伝子配列を含有する野生型酵 母細胞を使用することができる。このような酵母細胞中で遺伝子配列を発現する 方法は、当業者に周知である。 試験化合物の存在下または非存在下でのフェロモンに対する酵母細胞の感受性 は、例えば増殖停止(ハロー)測定法を使用して試験することができる。これら の増殖停止測定法は、増加するレベルの酵母フェロモンを含有するフェロモンデ ィスクに、酵母細胞のマットを暴露することを含む。フェロモン感受性は、増殖 阻害の領域を示すディスクの周りに出現するクリアなゾーンを測定することによ り定量することができる。RATH含有酵母細胞は、フェロモンに対する感受性 が低下しており、従ってフェロモンディスクの周りのクリアなゾーンは、RAT Hを含有しない同じタイプの酵母細胞により形成されるものより小さいはずであ る。 RATH活性を調節する化合物を同定する測定法では、前記RATH含有酵母 細胞を、酵母細胞マットを形成するのに充分な時間、フェロモンと試験化合物に 接触させて、この時フェロモン供給源の周りのクリアなゾーンを測定する。クリ アなゾーン領域が、試験化合物の非存在下で同じタイプの酵母細胞により産生さ れるマット内の同じ濃度のフェロモンの周りのクリアなゾーン領域と異なるなら 、試験化合物はRATH活性を調節し、免疫障害の治療の候補である。 対照として、同じタイプの酵母であるがRATHを含有しない細胞をフェロモ ンと試験化合物に暴露して、非RATH特異的調節物質を同定し廃棄する。 調節性試験化合物がクリアなゾーンの増加を与えるなら、試験化合物はRAT H活性を阻害するかまたは抑制する。調節性試験化合物がクリアなゾーンの減少 を与えるなら、試験化合物はRATH活性を増加させるかまたは増強する。各免 疫障害に依存して、これらの2つのタイプの調節性化合物のいずれかが、治療法 の一部として使用できるであろう。 別の実施態様において、フェロモン誘導性レポーター遺伝子をさらに含有する 前記酵母細胞は、RATH活性を調節する試験化合物を同定するために使用する ことができる。このようなフェロモン誘導性レポーター遺伝子は、当業者に周知 であり、例えばその発現がフェロモン誘導性である比色的レポーター配列(例え ば、lacZ)がある(例えば、Druey,K.M.et al.,1996,Nature 379:742-7 46を参照されたい)。 このような測定法において、酵母細胞は試験化合物およびフェロモンと接触さ れる。フェロモンの存在下でのレポーター遺伝子発現は、試験化合物の存在下ま たは非存在下で測定される。試験化合物の存在下でのレポーター遺伝子発現が異 なるなら、試験化合物はRATH活性を調節し、免疫障害の治療の候補である。 対照として、同じタイプの酵母であるがRATHを含有しない細胞をフェロモ ンと試験化合物に暴露して、非RATH特異的調節物質を同定し廃棄する。 調節性試験化合物がレポーター遺伝子発現の増加を与えるなら、試験化合物は RATH活性を阻害するかまたは抑制する。調節性試験化合物がレポーター遺伝 子発現の減少を与えるなら、試験化合物はRATH活性を増加させるかまたは増 強する。各免疫障害に依存して、これらの2つのタイプの調節性化合物のいずれ かが、治療法の一部として使用できるであろう。 別の実施態様において、哺乳動物Gタンパク質共役受容体経路インヒビターの 発現クローニングは、酵母細胞内でRATH遺伝子産物を発現するRATH遺伝 子配列を含有する酵母細胞内で行ってもよい。アルファ因子のような交配フェロ モンのその受容体への結合は、細胞増殖を停止させる。アルファ因子受容体を発 現するMATa酵母株は、酵母発現ベクター中でクローン化したマウスまたはヒ トcDNAのライブラリーで形質転換することができる。次に酵母形質転換体を 、形質転換体を選択し野生型酵母細胞の増殖を阻害することが知られている濃度 の交配フェロモンを含有する増殖培地上に広げる。増殖可能な形質転換体が単離 され、これらが含有するライブラリープラスミドが単離される。擬陽性を排除す るために、単離されたプラスミドをもとのMATa株に再導入して、上記スクリ ーニングを繰り返す。増殖可能な酵母細胞は、宿主株上の交配フェロモンに耐性 を付与することができるプラスミドを含有する。こうして単離されたcDNAを 配列決定し、生物学的に性状解析する。 別の実施態様において、後述の第7節に記載のMAPキナーゼ測定法のような 測定法を使用して、RATH活性に影響を与える化合物を同定することができる 。例えば、そのような測定法は、シグナル伝達(例えば、Gタンパク質介在シグ ナル伝達)によるシグナル伝達を「鈍らせる」RATHの能力を調節(アゴナイ ズするかまたはアンタゴナイズする)化合物を同定することができるであろう。 さらに別の実施態様において、後述の第7節に記載のGAPキナーゼ測定法の ような測定法を使用して、RATH活性に影響を与える化合物を同定することが できる。例えば、そのような測定法は、Gタンパク質のG−αサブユニット上の GTPのGDP置換の本質的速度を加速するRATHの能力を調節(アゴナイズ するかまたはアンタゴナイズする)化合物を同定することができるであろう。 別の実施態様において、後述の第8節に記載の細胞接着測定法のような測定法 を使用して、インテグリン共役細胞接着を制御するRATHの能力を調節(アゴ ナイズするかまたはアンタゴナイズする)化合物を同定することができる。 さらにRATH遺伝子の発現を調節する化合物を同定する測定法を利用するこ とができる。例えばそのような方法は、細胞外シグナル伝達(例えば細胞性活性 化)に応答してRATHのアップまたはダウンレギュレーションに影響を与える 化合物を同定することができる。そのような測定法は、活性化シグナル(例えば 、T細胞活性化シグナル)に応答してRATH mRNAまたはタンパク質レベ ルを測定する方法を含む。 5.5.T細胞疾患の症状の改善方法 免疫疾患および免疫疾患症状を治療するための方法および組成物を以下に記載 する。こうした免疫疾患として、限定するわけではないが、クローン(Crohn)病 などの慢性炎症疾病および疾患、ライム(Lyme)病を含む反応性関節炎、インスリ ン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、橋本甲状腺 腫およびグレーブ(Grave)病を含む器官特異的自己免疫、接触皮膚炎、乾癬、移 植片拒絶、移植片宿主相関病、類肉腫症、喘息およびアレルギー(例えば、アレ ルギー性鼻炎、胃腸アレルギー(例えば、食品アレルギー))などのアトピー状 態、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ぜん虫(例えばリーシュマニア症)お よびある種のウイルス感染症(例えば、HIV)などのある種の病原体感受性、な らびに細菌感染症(例えば、結核、らい腫らい)が含まれる。 これらの方法は、RATH遺伝子産物の機能によって仲介または調節されるどんな 疾患または細胞プロセスの治療またはモジュレーション(modulation)にも利用す ることができる。すなわち、限定するわけではないが、RATHによって仲介される シグナルの誘導現象(例えば、G-タンパク質によって仲介されるシグナル誘導) を、本明細書に記載する方法によってモジュレートすることができる。さらに、 インテグリンが連結した細胞の付着などのRATHエフェクター機能を、これらの方 法によってモジュレートへすることができる。また、RATHが、例えば、カルパク チン(calpactin)(多数の重要な細胞プロセスに影響を及ぼすことが知られてい る分子である)と相互作用する能力についても同様にモジュレートすることがで きる。 こうした方法として、RATH遺伝子および遺伝子産物の活性をモジュレートする 方法が含まれる。ある場合においては、治療にRATH活性の増加、上昇調節または 活性化が必要であり、また別の場合には治療にRATH活性の減少、下降調節または 抑制が必要になる。「増加」および「減少」は、 モジュレート治療をしない場合における、目的の細胞系中のRATH活性と比較した 、RATH活性の差異を称する。RATH活性の減少方法は下記の5.5.1節で考察す る。RATH活性の増加方法は下記の5.5.2節で考察する。この方法を実行する 特定のやり方に応じてRATH活性の増加または減少のいずれかを実施する方法は下 記5.5.3節で考察する。 5.5.1 RATH 活性の減少方法 上記考察のように、RATH活性の減少をもたらす技法によって、ある種の免疫疾 患の好成績の治療を実施することができる。活性は、例えば、RATH遺伝子産物の 活性を直接減少させること、および/またはRATH遺伝子の発現レベルを減少させ ること、によって減少させることができる。 こうした免疫疾患に随伴する症状を改善するために、本発明にしたがって、例 えば、上記の5.4節に記載したアッセイによって同定されたような、RATH活性 を減少させる化合物を使用することができる。上記第5.4節で考察したように 、こうした分子として、限定するわけではないが、可溶性ペプチドを含むペプチ ド、ならびに有機または無機の小さな分子が含まれ、これらをRATHアンタゴニス トと称することができる。こうした化合物の有効用量の決定および投与のための 技法は以下の5.6節に記載する。 さらに、RATH遺伝子発現レベルを低下させ、それによって存在するRATH遺伝子 産物のレベルを効果的に低下させ、その結果としてRATH活性レベルを減少させる ために、本発明にしたがって、RATH遺伝子の発現を阻害する、アンチセンスおよ びリボザイム分子を使用することもできる。さらにまた、RATH遺伝子活性レベル を低下させるのに、三重らせん分子を利用することができる。こうした分子を、 野性型、または適当ならば変異標的遺伝子の活性を低下または阻害するように設 計することができる。こうした分子の製造および使用のための技法は当業者に周 知である。 アンチセンス手法には、RATH遺伝子mRNAに相補的なオリゴヌクレ オチド(DNAまたはRNAのいずれか)の設計が関与する。このアンチセンス オリゴヌクレオチドが相補的なRATH遺伝子mRNA転写物に結合して翻訳を妨害 することになる。完全な相補性は、好ましいものではあるが、必要ではない。本 明細書中で称する、あるRNAの一部分に「相補的な」配列とは、そのRNAと ハイブリダイズして安定な二重らせんを形成するのに十分な相補性を有する配列 を意味する。二重鎖アンチセンス核酸の場合には、その二重らせんDNAの一本 鎖を試験するか、または三重らせんの形成をアッセイしてもよい。ハイブリダイ ズする能力は、そのアンチセンス核酸の相補性の程度および長さの両方に応じて 決まる。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、RNAとのミスマッチ 塩基を多く含有するが、それでもなお安定な二重らせん(または場合によって三 重らせん)を形成する。当業者は、標準的な操作法の使用により、ハイブリダイ ズした複合体の融点を測定すれば、寛容される程度のミスマッチを確定すること ができる。 翻訳を阻害するには、メツセージの5'末端(例えばAUG開始コドンまで、およ びこれを含む、5'非翻訳配列)に相補的なオリゴヌクレオチドが最も効果的に作 用するはずである。しがし、mRNAの3'非翻訳配列に相補的な配列が同様にm RNAの翻訳の阻害に効果的であることが最近示された。一般的には、Wagner,R .,1994,Nature 372:333-335を参照されたい。このように、内在性RATH遺伝子m RNAの翻訳を阻害するためのアンチセンス手法において、例えば図1A〜Cに 示したような、RATH遺伝子の5'−または3'−非翻訳、非コーディング領域のいず れかに相補的なオリゴヌクレオチドを使用することができるはずである。 mRNAの5’非翻訳領域に相補的なオリゴヌクレオチドはAUG開始コドンの 相補体を含む必要がある。mRNAコーディング領域に相補的なアンチセンスオ リゴヌクレオチドは効果が劣る翻訳阻害剤であるが、本発明にしたがって使用す ることもできる。標的または経路遺伝子mRN Aの5'、3'またはコーディング領域のいずれにハイブリダイズするように設計す るにしても、アンチセンス核酸は長さが6以上のヌクレオチドとすべきであり、 また好ましくは長さが6から約50のヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドで ある。特定の場合において、オリゴヌクレオチドは10ヌクレオチド以上、17ヌク レオチド以上、25ヌクレオチド以上または50ヌクレオチド以上である。 標的配列の選択にかかわりなく、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドの遺伝 子発現を阻害する能力を定量するために、in vitro研究を最初に実施することが 好ましい。これらの研究には、アンチセンス遺伝子の阻害とオリゴヌクレオチド の非特異的な生物学的効果とを識別する対照を利用するのが好ましい。また、こ れらの研究では標的RNAまたはタンパク質レベルを内部の対照RNAまたはタ ンパク質のレベルと比較することも好ましい。その上、アンチセンスオリゴヌク レオチドを使用して得られた結果を、対照オリゴヌクレオチドを使用して得られ たものと比較することも意図される。対照オリゴヌクレオチドは試験オリゴヌク レオチドと大体同じ長さであって、そのオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列 は標的配列との特異的ハイブリダイズを妨害するのに必要な以外には、アンチセ ンス配列異ならないことが望ましい。 オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の、DNA若しくはRNAまたは キメラ混合物、あるいはそれらの誘導体または修飾変異体とすることができる。 オリゴヌクレオチドは、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーションその他を 改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格の位置で修飾することが できる。オリゴヌクレオチドには(例えばin vivoで宿主細胞レセプターを標的 とするための)ペプチドなどのその他の付加基、または細胞膜(例えば、Letsin gerら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553-6556;Lemaitreら、1987,Proc .Natl.Acad.Sci.84:648-652;PCT公開No.WO88/09810、1988年12月15日公開、 を参照されたい)若しくは血液脳関門(例えば、PCT公開No.WO89/10134、1988年 4月25日公開、を参照されたい)を通過する輸送を促進する薬剤、ハイブリダイ ゼーションが誘因となる切断薬剤(例えば、Krolら、1988,BioTechniques 6:958 -976を参照されたい)または挿入剤(例えば、Zon,1988,Pharm.Res.5:539-549、 を参照されたい)を含ませることもできる。オリゴヌクレオチドを、その末端で 別の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーションが誘因となる交差結合剤、 輸送剤、ハイブリダイゼーションが誘因となる切断薬剤、その他と複合させるこ ともできる。 アンチセンスオリゴヌクレオチドは限定するわけではないが、以下のものを含 む群から選択される1以上の修飾塩基部分分子を含んでもよい:5-フルオロウラ シル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチ ン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラ シル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチル アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イ ノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2 ,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシ ン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチ ルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオ シン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチル チオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(V)、ウィブトキソシ ン(wybutoxosine)、シュード(pseudo)ウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、 5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシ ル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酊酸(V)、5-メ チル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp 3)w、および2,6-ジアミノプリン。 また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは限定するわけではないが、アラビノ ース、2-フルオロアラビノース、キシルロースおよひヘキソースを含む群から選 択される1以上の修飾糖部分分子を含んでもよい。 さらに別の態様においで、アンチセンスオリゴヌクレオチドはホスホロチオエ ート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート 、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、 およびホルムアセタール、またはそれらの類似体からなる群から選択される、1 以上の修飾リン酸骨格を含む。 また別の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα−アノマーオリ ゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のβ−単位と は逆に、鎖が互いに平行した、相補的RNAと特殊な二重鎖ハイブリッドを形成 する(Gautierら、1987,Nucl.Acids Res.15:6625-6641)。このオリゴヌクレオ チドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoueら、1987,Nucl.Acids Res.15:6131- 6148)、またはキメラRNA−DNA類似体(Inoueら、1987,FEBS Lett.215:32 7-330)である。 本発明のオリゴヌクレオチドは、当業界で既知の標準的な方法、例えば自動D NA合成装置(Biosearch,Applied Biosystemsその他から市販されているものな ど)の使用によって、合成してもよい。例をあげると、Steinらの方法によって ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを合成することができ(1988,Nucl.Acid s Res.16:3209)、制御された細孔を有するガラス製ポリマー支持体の使用によ って、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドを調製することができる(Sarin ら、1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:7448-7451)、などである。 in vivoでRATH遺伝子を発現する細胞にこのアンチセンス分子を送り込む必要 がある。アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送り込むためには、多数の方 法が開発されている;例えば、アンチセンス分子を組織部位に直接注入するか、 あるいは所望の細胞を標的とするように設計 された、修飾アンチセンス分子(例えば、標的細胞の表面に発現されるレセプタ ーまたは抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結されたアンチセンス )を組織的に投与することができる。 しかし、内在性mRNAの翻訳を抑制するのに十分なアンチセンスの細胞内濃 度を達成するのは困難なことが多い。したがって、好ましい手法としては、アン チセンスオリゴヌクレオチドが強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの制御 下に置かれるような組換えDNA構築物を利用する。こうした構築物を使用して 患者の標的細胞にトランスフェクトすると、内在性RATH遺伝子転写物と相補的な 塩基対を形成することになる一本鎖RNAの十分な量が転写され、そしてそれに よってRATH遺伝子mRNAの翻訳が妨げられる。例えば、細胞に取り込まれてア ンチセンスRNAの転写を誘導するようなベクターをin vivoで導入する。こう したベクターは、転写されて所望のアンチセンスRNAを産生するならば、エピ ソームのままでも、または染色体中に組み込まれてもよい。こうしたベクターは 当分野で標準的な組換えDNA技術によって構築することができる。ベクターは プラスミド、ウイルス、または当分野で既知の、哺乳類細胞中で複製および発現 のために使用されるその他のものでもよい。アンチセンスRNAをコードする配 列の発現は、哺乳類、好ましくはヒト細胞中で作用する、当分野で既知のどんな プロモーターによってもよい。こうしたプロモーターは誘導性でも構成性でもよ い。こうしたプロモーターとして、限定するわけではないが、以下のものが含ま れる;SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,1981,Nature 290:304 -310)、ルー肉腫ウイルスの3'長末端反復中に含まれろプロモーター(Yamamoto ら、1980,Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner ら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子 の調節配列(Brinsterら、1982,Nature 296:39-42)、その他。組織部位中に直 接導入することができる 組換えDNA構築物を調製するために、どんなタイプのプラスミド、コスミド、 YACまたはウイルスベクターでも使用することができる。あるいは、所望の組織 に選択的に感染するウイルスベクターを使用することもできる。 リボザイムはRNAの特異的な切断を触媒することができる、酵素作用がある RNA分子である(総説として、例えばRossi,J.,1994,Current Biology 4:469- 471、を参照されたい)。リボザイムの作用機構には、相補的標的RNAへのリ ボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションと、その後のヌクレオチド内 部の切断が関与する。リボザイム分子の組成には標的遺伝子mRNAに相補的な 配列が1以上含まれなければならず、また、mRNAの切断を担う周知の触媒配 列を含む必要がある。この配列については、U.S.特許No.5,093,246を参照された い。この全文を本明細書中に参照として引用する。このように、標的遺伝子タン パク質をコードするRNA配列のヌクレオチド内切断を特異的かつ効果的に触媒 する、加工されたハンマーヘッド(hammerhead)モチーフリボザイム分子は、本発 明の範囲内のものである。 RATH遺伝子mRNAの翻訳ならびに標的または経路遺伝子の発現を妨げるため に、RATH遺伝子mRNA転写物を触媒作用で切断するように設計されたリボザイ ム分子を使用することもできる(例えば、PCT国際公開WO90/11364、1990年10月 4日公開);Sarverら、1990,Science 247:1222-1225、を参照されたい)。RATH 遺伝子mRNAを破壊するために、部位特異的認識配列位置でmRNAを切断す るリボザイムを使用することができるが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が好 ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的な塩基対を形成す るフランキング領域によって指令される位置で、mRNAを切断する。唯一の要 件は標的mRNAが次の2塩基配列:5'-UG-3'を有することである。ハンマーヘ ッドリボザイムの構築および製造は当分野で周知であり、また Haseloff and Gerlach,1988,Nature,334:585-591、にさらに十分に記載されてい る。好ましくは、切断認識部位がRATH遺伝子mRNAの5'末端近くに位置するよ うに、すなわち、効率を増大させ、かつ機能性がないmRNA転写物の細胞内蓄 積を最少にするように、加工される。 本発明のリボザイムとして、(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)Tet rahymena Thermophila中に天然に生起し、Thomas Cechおよび共同研究者によっ て広範囲に記載されたものなどの、RNAエンドリボヌクレアーゼ(これ以後、 「Cech型リボザイム」と称する)も含まれる(Zaugら、1984,Science,224:574-5 78;Zaug and Cech,1986,Science,231:470-475;Zaugら、1986,Nature,324:429- 433;公開された国際特許出願No.WO 88/04300(University Patents Inc.);Been and Cech,1986,Cell,47:207-216)。このCech型リボザイムは標的RNA配列と ハイブリダイズする8塩基対の活性部位を持ち、これに続く標的RNAの位置で 切断が実施される。本発明はRATH遺伝子中に存在する8塩基対の活性部位を標的 とするCech型リボザイムを包含する。 アンチセンス手法におけると同様に、リボザイムを(例えば安定性、ターゲテ ィングその他を改善するために)修飾オリゴヌクレオチドで構成することができ 、これはin vivoでRATH遺伝子を発現する細胞に送り込むべきである。好ましい 送り込み方法には、強力な構成性pol IIIまたはpol IIプロモーターの制御下で リボザイムを「コードする」DNA構築物の使用が関与し、これによってトラン スフェクトされた細胞が十分な量のリボザイムを産生し、内在性RATH遺伝子メッ セージを破壊して翻訳を阻害するようにする。リボザイムはアンチセンス分子と は異なって、触媒作用を有するので、効果をあげるために必要な細胞内濃度はよ り低い。 変異遺伝子の発現を阻害するために本明細書に記載するアンチセンス、リボザ イム、および/または三重らせん分子を利用する場合において、 この技法は、正常な標的遺伝子の対立遺伝子によって産生されるmRNAの転写 (三重らせん)および/または翻訳(アンチセンス、リボザイム)をも効果的に 低下させるか、または阻害することが可能である。ここでは存在する正常な標的 遺伝子産物濃度が正常な表現型について必要とされるよりも低いという可能性が 生じ得る。このような場合、実質的に正常な標的遺伝子活性レベルが維持される ことを確実にするため、したがって、アンチセンス、リボザイムまたは三重らせ んのどの治療を利用するにしても、これに感受性がある配列を含有しない遺伝子 治療方法によって、正常な標的遺伝子活性を表す標的遺伝子ポリペプチドをコー ドし、かつ発現する核酸分子を細胞中に導入することができる。あるいは、細胞 外タンパク質をコードする標的遺伝子による場合において、標的遺伝子活性の必 要なレベルを維持するために、正常な標的遺伝子タンパク質を同時に投与するこ とも好ましい。 本発明のアンチセンスRNAおよびDNA、リボザイム、ならびに三重らせん 分子は、DNAおよびRNA分子の合成のための当分野で既知のいずれの方法に よっても調製することができる。これには、例えば固相ホスホルアミダイト化学 合成などの、当分野で周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびオリゴリボ ヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれる。あるいは、アンチセンスRN A分子をコードするDNA配列のin vitroおよびin vivo転写によって、RNA 分子を作製することができる。こうしたDNA配列は、T7またはSP6ポリメラー ゼプロモーターなどの好適なRNAポリメラーセプロモーターを組み込んだ、様 々なベクター中に組み込むことができる。あるいは、使用するプロモーターに応 じて、アンチセンスRNAを構成的に、または誘導的に合成する、アンチセンス cDNA構築物を細胞系中に恒常的に導入することができる。 細胞内の安定性および半減期を増大させる手段として、DNA分子に 対して各種の周知の修飾を導入することができる。可能な修飾として、限定する わけではないが、分子の5'および/または3'末端へのリボ−またはデオキシ−ヌ クレオチドのフランキング配列の付加、あるいはオリゴデオキシリボヌクレオチ ド骨格内のホスホジェステラーゼ連結をしないためのホスホロチオエートまたは 2'O-メチルの使用が含まれる。 内在性RATH遺伝子発現は、標的相同的組換えを使用して、標的および/または 経路遺伝子、あるいはそのプロモーターの不活性化または「ノックアウト」によ っても低下させることができる(例えば、Smithiesら、1985,Nature 317:230-23 4;Thomas & Capecchi,1987,Cell 51:503-512;Thompsonら、1989,Cell 5:313-3 21を参照されたい。これらのそれぞれの全文を本明細書中に参照として引用する )。例えば、選択マーカーおよび/またはネガティブ選択マーカーを共に使用ま たは使用しないで、内在性RATH遺伝子(RATH遺伝子のコーディング領域または調 節領域のいずれか)に相同なDNAに隣接する、変異または非機能性RATH遺伝子 (または完全に無関係なDNA配列)を使用して、RATH遺伝子をin vivoで発現 する細胞にトランスフェクトすることができる。標的相同的組換えを経由したD NA構築物の挿入の結果、RATH遺伝子が不活性化する。こうした手法は、不活性 RATH遺伝子を有する動物の子孫を産生させるために、ES(胚幹)細胞の修飾を使 用することができる、農業分野において、特に適している(例えば、上記のThom as & Capecchi 1987およびThompson 1989、を参照されたい)。こうした技法を 免疫疾患動物モデルの産生に利用することもできる。この手法は、適切なウイル スベクター、例えばヘルペスウイルスベクター、を使用して、組換えDNA構築 物をin vivoで必要な部位に直接投与するかまたはその部位を標的とし得る場合 に限って、ヒトにおいての使用に適することに注意しなければならない。 あるいは、体内の標的細胞中でのRATH遺伝子の転写を妨げる三重らせ ん構造を形成させるために、RATH遺伝子の調節領域(すなわち、RATH遺伝子プロ モーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配 列を標的とすることによって、内在性RATH遺伝子発現を低下させることができる (一般的に、Helene,C.1991,Anticancer Drug Des.,6(6):569-84;Helene,C.ら 、1992,Ann.N.Y.Acad.Scl.,660:27-36;およびMaher,L.J.,1992,Bloassays 14(1 2):807-15、を参照されたい)。 5.5.2.正のモジュレート技法 上述のように、RATH活性のレベルを増加させる技法によって、ある種の免疫疾 患の好成績の治療を実施することができる。活性は、例えば、RATH遺伝子産物の 活性を直接増加させること、および/またはRATH遺伝子発現レベルを増加させる ことによって、増加させることができる。 免疫疾患および免疫疾患症状を治療するために、例えば、上記5.4節に記載 したアッセイによって同定されたものなどの、RATH活性を増加させる化合物を本 発明にしたがって使用することができる。上記5.4節で考察したように、こう した分子として、限定するわけではないが、可溶性ペプチドを含むペプチド、お よび有機または無機の小分子が含まれ、これらはRATHアンタゴニストと称するこ とができる。 例えば、ある化合物を免疫疾患および症状を治療するのに十分なレベルで、こ うした症状を示す患者に投与することができる。こうした投与のためには、下記 の5.6節で考察する技法のいずれでも利用することができる。当業者は下記5 .6.1節に記載するような技法を利用して、化合物の有効か一つ非毒性用量の 濃度の決定方法を容易に知るであろう。 投与する化合物がペプチド化合物である場合は、免疫疾患症状を示す患者に、 ペプチド化合物をコードするDNA配列を、例えば多発性硬化症などの免疫疾患 の症状を改善するのに十分なペプチド化合物レベルを産生するために十分な濃度 で、直接投与することができる。こうしたD NA分子の投与のためには、例えばリポソーム投与などの、化合物の細胞内投与 を達成させる、下記5.6節に記載する技法のいずれでも利用することができる 。DNA分子は、例えば、周知の組換え技術によって産生することができる。 細胞外で作用するペプチド化合物の場合は、ペプチドの十分な循環濃度が免疫 疾患症状の低減をもたらす場合に限って、そのペプチドをコードするDNA分子 を任意の細胞型に取り込ませて、発現させることができる。細胞内で作用する化 合物の場合は、こうしたペプチドをコードするDNA分子を目的のT細胞集団に 取り込ませて、免疫疾患の低減をもたらすのに十分なレベルで発現させなければ ならない。 したがって、細胞内で作用するペプチドをコードするDNA分子については、 DNA分子を目的のT細胞集団に選択的に適用するのに役立つどんな技術も好ま しいが、例えば、送達用複合体を介するものがある。 こうした送達用複合体には適切な核酸分子およびターゲディング手段を含ませ ることができる。こうしたターゲティング手段には、例えば、ステロールリピド 、ウイルスまたは標的細胞特異的結合剤を含ませることができる。ウイルスベク ターとして、限定するわけではないが、リポソームなどの、DNAを細胞中に導 入するその他の粒子とともに使用する、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、 およびレトロウイルスベクターが含まれる。例えば喘息の場合、肺組織内に常在 するT細胞サブ集団に分子を選択的に投与する技法が好ましい。 さらに、TH細胞サブ集団に関連する疾患に異所性RATH遺伝子が関与する場合は 、遺伝子置換療法によって患者を治療することができる。正常なRATH遺伝子、ま たはRATH遺伝子機能を有して、正常なRATH遺伝子タンパク質の産生を誘導する、 この遺伝子の部分の1以上のコピーを、例えば送達用複合体を介して細胞中に挿 入することができる。 こうした送達用複合体には適切な核酸分子およびターゲティング手段 を含ませることができる。こうしたターゲティング手段としては、例えば、ステ ロールリピド、ウイルスまたは標的細胞特異的結合剤を含ませることができる。 ウイルスベクターとして、限定するわけではないが、リポソームなどの、DNA を細胞中に導入するその他の粒子とともに使用する、アデノウイルス、アデノ随 伴ウイルス、およびレトロウイルスベクターが含まれる。例えば、こうしたRATH 遺伝子配列は図1A−Cに示すアミノ酸配列内に含まれるRATH RGSドメインを含 むペプチド配列をコードすることができる。こうした遺伝子置換技法はin vivo またはin vitroのいずれかで実施することができる。RATH遺伝子は細胞内で作用 する遺伝子産物をコードするので、この遺伝子を目的のT細胞集団で発現させな ければならない。したがって、目的の細胞型の中での発現を選択する技法が好ま しい。in vivoでは、こうした技法として、例えば、RATH遺伝子配列の適切な局 所投与が含まれる。 RATH活性の全体的なレベルを増加させるために使用することができる別の方法 として、適切なRATH遺伝子を発現する細胞、好ましくはオートロガス細胞を、対 象とする免疫疾患の症状を改善するのに十分な部位に十分な数で、患者に導入す ることが含まれる。こうした細胞は組換え体または非組換え体のいずれでもよい 。患者のRATH遺伝子発現の全体的レベルを増加させるために投与することができ る細胞として、RATH遺伝子を発現する正常な細胞がある。細胞を身体中の解剖学 的な意味での発現部位に投与するか、または組織移植片の一部として異なる部位 に局在させることができる。こうした細胞に基づく遺伝子治療技法は当業者に周 知である。例えば、Andersonら、U.S.特許No.5,399,349;Mulligan & Wilson,U .S.特許No.5,460,959を参照されたい。 RATH遺伝子配列をin vitroでオートロガス細胞中に導入することができる。そ の後、疾患が治療されてその疾患の症状が改善されるまで、目的のRATH遺伝子配 列を発現するこれらの細胞を患者中に、好ましくは静 脈内投与によって再導入することができる。 5.5.3 その他のモジュレートへ技法 本節に記載するのは、利用する特定の適用に応じて、上記のような免疫疾患の 改善を導くように、RATH活性レベルを増加または減少のいずれかをもたらすこと ができる、モジュレート技法である。 免疫疾患を改善するために、モジュレート能力を示す抗体を利用することがで きる。特定の抗体に応じて、モジュレート効果はRATH活性の増加または減少とな る。こうした抗体として、上記5.3節に記載した標準的技術を使用して、野性 型若しくは変異RATHタンパク質の全長に対するもの、またはこのタンパク質の部 分に相当するペプチドに対するもの、を作製することができる。この抗体として 、限定するわけではないが、ポリクローナル、モノクローナル、FAb断片、一本 鎖抗体、キメラ抗体などが含まれる。 RATHは細胞内タンパク質であるので、細胞内部に取り込ませる(internalizing )抗体が好ましい。しかし、抗体またはRATH遺伝子産物エピトープに結合するFab 領域の断片を細胞内に送り込むために、リポフェクチン(lipofectin)またはリポ ソームを使用することができる。抗体の断片を使用する場合は、RATHタンパク質 の結合ドメインに結合する、最も小さい阻害性断片を使用するのが好ましい。例 えば、RATHタンパク質に結合する抗体の種々の領域ドメインに相当するアミノ酸 配列を有するペプチドを使用することができる。こうしたペプチドは当分野で周 知の方法を使用して、化学的に合成するか、または組換えDNA技術によって産 生させることができる(例えば、Creighton,1983、上記;およびSambrookら、19 89、上記、を参照されたい)。あるいは、中和性抗体などの、細胞内エピトープ に結合する、一本鎖抗体を投与することもできる。こうした一本鎖抗体を、例え ばMarascoら(Marasco,W.ら、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:7889-7893)に よって記載されたような技術を利 用して、例えば一本鎖抗体をコードする核酸配列を標的細胞集団内で発現させる ことによって、投与することができる。 5.6.医薬製品および投与方法 免疫疾患、例えばTH細胞関連疾患を治療または改善するために、本明細書に記 載した化合物および核酸配列を治療上有効な用量で患者に投与することができる 。治療上有効な用量とは、免疫疾患の症状の改善をもたらすのに十分な化合物ま たはTH細胞集団の量、あるいは免疫疾患の症状の改善をもたらす濃度のRATH遺伝 子産物を発現するのに十分な核酸配列の量、である。 5.6.1.有効量 化合物の毒性と治療有効性は、例えばLD50(集団の50%致死量)及びED50(集 団の50%治療有効量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準 の薬学的方法により測定することができる。毒性と治療効果との用量比が治療指 数(therapeutic index)であり、比LD50/ED50で表すことができる。大きな治療 指数を示す化合物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を使うことは可能であ るが、未感染細胞への損傷の可能性を最小限にし、それにより副作用を抑制する 目的で、かかる化合物を患部組織に標的指向させる送達系を設計することに注意 を払うべきある。 細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータは、ヒトに使用するための 用量範囲を処方する際に使うことができる。かかる化合物の用量は、好ましくは 、毒性が少ないかまたは無いED50を含む循環濃度範囲内にある。用量はこの範囲 内で、使用する剤形及び利用する投与経路に依って変化し得る。本発明の方法に 使用されるどの化合物も、治療有効量は、最初は細胞培養アッセイから予測する ことができる。動物モデルでは、細胞培養で決定したIC50(すなわち、症候の1 /2最大抑制(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物濃度)を含む 循環血漿濃度範囲を達成するように用量を処方することができる。かかる情報は 、ヒトに有用な用量をより正確に決定するために使うことができる。血漿中のレ ベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。 5.6.2.製剤及び使用 本発明に従って使用する医薬組成物は、通常の様式で1種以上の生理学的に許 容される担体または賦形剤を使って製剤化することができる。 従って、該化合物とその生理学的に許容可能な塩及び溶媒は、吸入(inhalati on)または吹入(insufflation)(口または鼻を通して)または経口、バッカル 、非経口または直腸投与用に製剤化することができる。 経口投与には、医薬組成物は、例えば結合剤(例:糊化トウモロコシデンプン 、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤 (例:ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤 (例:ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例:ジャガ イモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例:ラウ リル硫酸ナトリウム)のごとき製薬上許容される賦形剤と共に通常の手段により 調製した錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。錠剤は当分野で周知の 方法によりコーティングしてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば溶液剤、 シロップ剤または懸濁剤の形をとることができ、または使用前に水または他の適 切なビヒクルで調合する乾燥製品として提供することができる。かかる液体製剤 は、通常の手段により、懸濁化剤(例:ソルビトールシロップ、セルロース誘導 体または水素化食用油);乳化剤(例:レシチンまたはアラビアゴム);非水性 ビヒクル(例:アーモンド油、油状エステル、エチルアルコールまたは分留植物 油);及び保存剤(例:p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、また はソルビン酸)のごとき製薬上許容される添加剤を用いて調製することができる 。該製剤はまた、適宜に緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤を含むことができる 。 経口投与用の製剤は、活性化合物の徐放を与えるよう適切に製剤化することが できる。 組成物のバッカル投与用には、通常の方法で製剤化した錠剤またはロゼンジ剤 の形をとることができる。 吸入による投与用に本発明により使用する化合物は、加圧パックまたは噴霧器 から適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメ タン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを使っ てエーロゾルスプレー供給の形で送達するのが便利である。加圧エーロゾルの場 合、用量単位は、計測した量を供給するバルブを提供して決定することができる 。吸入器または吹入器に使用する、例えばゼラチン製の、カプセルとカートリッ ジは、該化合物とラクトースまたはデンプンのごとき適切な粉末基剤との粉末混 合物を含有するように製剤化することができる。 該化合物は、例えば、ボーラス注射または連続輸液経由の注入による非経口投 与(すなわち、静脈内または筋内)用に製剤化することができる。注射用の製剤 は単位剤形、例えばアンプルでまたは複数回投与容器で、保存剤を添加して提供 することができる。該組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液また は乳化物の形をとることができ、懸濁化剤、安定剤及び/または分散剤のごとき 配合剤を含有することができる。あるいはまた、該活性成分は、使用前に適切な ビヒクル、例えばパイロジェンフリーの滅菌水で調合する粉末形態であることが できる。TH細胞亜集団細胞は患者に静脈投与経由で導入されるのが好ましい。 該化合物はまた、例えばカカオ脂または他のグリセリドのごとき通常の座薬用 基剤を含有する座薬または保持浣腸のごとき直腸用組成物に製剤化することがで きる。 上述した製剤に加えて、該化合物はまた、デポー製剤として処方することもで きる。かかる長時間作用製剤はインプラント(例えは皮下または筋内)または筋 内注射により投与することができる。かくして、例えば、該化合物は、適切なポ リマーまたは疎水性材料(例えば許容される油中エマルジョンとして)またはイ オン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤化する ことができる。 所望であれば、該組成物は、有効成分を含有する一つ以上の単位剤形を含み得 るパックまたは分配器具で提供される。パックは、例えばブリスターパックのご とき金属またはプラスチック箔を含む。パックまたは分配器具は投与説明書を付 けておくことができる。 6.実施例:T細胞活性に関わる新規遺伝子ファミリー(RATH)の同定 RATH遺伝子ファミリーと呼ぶ新規遺伝子ファミリーの同定と特性決定をここに 記述する。RATH遺伝子ファミリーのメンバーは、RGS(「Gタンパク質シグナル 伝達調節物質」)ドメインを含有し、T細胞、TH細胞またはTH細胞亜集団特異的 または亢進性発現パターンを示し、T細胞活性化のごときT細胞活性の調節に関 わる。RATH1.1と名付けられたRATH遺伝子ファミリーの一メンバーの同定、特性 決定を以下に記述する。 6.1.TH 細胞亜集団の遺伝子差次的発現遺伝子同定の例 ディファレンシャルディスプレー(differential display)技術は、公知のポ リメラーゼ連鎖反応(PCR;Mullis,K.B.,1987,米国特許第4,683,202号に示さ れた実験様態)を用いる方法であり、差次的に(differentially)発現される遺 伝子から誘導された配列の同定を可能とする。以下の第6.2節に記載したごとく 、かかる技術を、免疫疾患状態、例えばTH細胞亜集団に関係した疾患状態に関わ る、及び/または、TH細胞亜集団の分化、維持及びまたはエフェクター機能に関 わる遺伝子配列の同定に使用した。 簡単に言えば、適切な抗原によりTH細胞亜集団を活性化し、その後、例えばTH 1対TH2及び/または活性化対非活性化細胞の発現パターンを分析した。第6.2節 に詳細に記載したように、活性化及び非活性化のTH1及びTH2細胞系をかかる方法 に従って分析した。 刺激の後、RNAを単離し、当業者に公知の標準的技術を使って一本鎖cDN Aに逆転写する。次に、以下に記載したPCRプライマー対が、所与の細胞内に存 在するRNA転写産物の再現可能なサブセットを提示するクローンの定量的増幅 を可能とする。異なるプライマー対を使うと、細胞に存在するプライムド(prime d)mRNA転写産物のそれぞれの増幅を可能とする。かかる増幅転写産物中に、 差次的に発現した遺伝子から産生した転写産物を同定することができる。 二つの異なる細胞タイプのmRNAの逆転写と増幅から生じたクローンのパタ ーンを表示(display)し、配列決定ゲル電気泳動により比較した。差次的に発 現した遺伝子は二つのバンドパターンの差によって示される。一度同定されると 、該バンドを精製して、全長cDNAクローン用ライブラリーをスクリーニング するプローブとして使用することができる。かかる技術を使用して、以下に記載 したように、RATH1.1遺伝子の同定に成功した。 6.2誘導可能なTH1特異的遺伝子配列の単離 以下の節は、TH1特異的様式で差次的に発現した新規な遺伝子配列の同定を記 載する。 6.2.1刺激、細胞培養及びTH1及びTH2 RNAの調製 TH細胞亜集団に差次的に発現した遺伝子配列を同定するために、先の第6.1節 に記載したディファレンシャルディスプレー技術を使用した。TH1及びTH2クロー ン細胞系を刺激し、細胞系からRNAを単離した。2つのTH1(D1.1及びDorris) 及び2つのTH2(Dax及びCDC25)細胞系を使った。 標準培養のため、新たに単離したMHCの一致した抗原を提示する細胞を用いて 、特定の抗原(D1.1:ウサギγグロブリン,Sigma;Dorris:HELリゾチーム,Sigma ;Dax:Helリゾチーム,Sigma;CDC25:ウサギγグロブリン,Sigma)と組み合わせ て、ヘルパーT細胞を10〜14日毎に刺激した。更に、培養物に2〜3日毎に新鮮なI L-2(Boehringer Mannheim)を補給した。細胞を標準プロトコル(Coliganら, 編,1995,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.)に従 って培養した。 刺激に先だって、細胞を抗原(少なくとも10日)及びIL-2(2〜3日)両方の不 足状態となし、生細胞をリンパ球分離培地(Organon Teknika)で精製した。細 胞を2群に分離した。1群は無刺激のままとした。1群は、1.5μg/mlの抗マウスCD 3εモノクロナール抗体(145-2C11ハイブリドーマ由来のハイブリドーマ上清;P armingen,Inc.,San Diego CA)を含むPBS中37℃で1時間コートしたプラスチッ ク培養皿にプレートして、6時間刺激した。 全細胞RNAを、それぞれの群(無刺激または抗CD3刺激)の細胞から次の通 り単離した。特に、細胞をドライアイス上で急速に凍結し、乳捧と乳鉢により液 体窒素下で一緒にホモジナイズし、全細胞RNAを細胞からRNAzolTM(TEL-TEST ,Inc.,Friendswood TX)で製造者の説明書に従って抽出した。簡単に言えば、 細胞を適切な量のRNAzolTM中で可溶化し、可溶化したサンプルに1/10 v/vクロロ ホルムを加えた後、ほぼ15秒間激しく振とうしてRNAを抽出した。その後、混 合物を15分間12,000gで遠心分離し、水相を新しいチューブに移した。RNAを イソプロパノールで沈降させた。生じたRNAペレットを水中に溶解し、等容量 のクロロホルムで再抽出して残留フェノールを除去した。抽出した容量を、150m M酢酸ナトリウムの存在下で2倍容量のエタノールで沈降させた。沈降したRNA を水中に溶解し、濃度を分光分析(A260)で測定した。 RNAseを含まないDNAse I(Boehringer Mannheim)により30分間37℃で消化し て、残留DNAを除去した。フェノール/クロロホルムによる抽出及びエタノー ル沈降の後、RNAをDEPC(ピロ炭酸ジェチル)で処理した水中に溶解した。 Delta RNAフィンガープリンティングキット(Clontech ♯PT1173-1)を製 造 者のプロトコルに従って使用し、2つの異なる刺激及び非刺激TH1およびTH2細胞 系由来のRNA集団を比較した。 6.2.2 TH1 特異的遺伝子配列の同定 第6.2.1.節に記載したごとくTH1及びTH2細胞に対して単離したRNAを、定量 的に増幅し、細胞の遺伝子発現パターンを本明細書に記載したごとく分析した。 分析結果は、ほぼ220bpを差次的に発現したcDNA遺伝子配列を生じ、興味深 いことに、該配列は試験した2つのTH1クローン中に専ら発現したが、非刺激TH1 クローン中及び試験した全てのTH2クローン中には存在しなかった。 詳細には、2つの独立TH1クローンと2つの独立TH2クローンに由来するDNAを 含まないRNA(上記)を使ってcDNA合成を実施した。それぞれのサンプル に対して、2μgの全RNA及び1μlのオリゴdTプライマー(1μM)を使い、製造 者のプロトコルに記載したごとく、cDNA合成を実施した。cDNAサンプル を-20℃で保存し、次の25bp 5'(Pプライマー)及び30bp3'(Tプライマー)の 様々な組み合わせを使い、PCR増幅に使用した: PCR増幅を、提供されたプロトコルに従い、CLONTECH Advantage cDNA PCR Cor e Kit(K1905-1)を使って実施した。3回の低ストリンジェンシーPCRサイクル( アニーリング温度40℃)に続いて22〜25回の高ストリンジェンシーPCRサイクル (アニーリング温度60℃)を行い、そして、PCR産物を、変性PAGEにより5%ポリ アクリルアミド/8M尿素ゲルを使って分離し、そして、PCR産物をオートラジオ グラフィーにより可視化した。差次的に発現したバンドを乾燥ゲルから切り出し 、元のプライマーを使って再増幅した。再増幅産物を、TAクローニングキット( Invitrogen)を使ってpCR2.1にクローン化し、個々の分離物を配列決定した。 6.3 新規なTH1特異的遺伝子RATH1.1のクローニング及び特性決定 以下の小節は、RATH1.1と名付けられる遺伝子の単離と特性決定を記述する。R ATH1.1は、先の第6.2節に記載した220bpのcDNA断片でTH1特異的cDNAラ イブラリーをスクリーニングすることにより取得した。配列分析は、RATH1.1がR GSドメインを含有する産物をコードする新規な遺伝子であることを示した。発現 分析は、RATH1.1がTH1特異的遺伝子に相当し、T細胞活性に関わり得ることを確 証した。RATH1.1は、RATH遺伝子ファミリーと名付けれる新規遺伝子ファミリー の1メンバーを表すと思われ、該メンバーはRGSドメインを含有し、T細胞に制限 される様式で発現され、例えばT細胞活性化のごときT細胞活性に関わり得る。 6.3.1 TH1 特異的ライブラリーの作製およびスクリーニング 上記の第6.2節で同定した220bp配列に対応する全長配列を得る目的で、TH1特 異的cDNAライブラリーをスクリーニングした。TH1特異的cDNAライブラ リーは、TH1細胞系Dorris(抗CD3で刺激)から単離したポリA+RNAを用い、F ast Track 2.0キット(Invitrogen)を使って作製した。cDNAは、オリゴdT プライマーを使って作製し、λZIPLOXファージアーム(GIBCO BRL 15394-018) にSal IおよびNot Iクローニング部位を用いてクローン化した。 TH1特異的ファージライブラリーは、上の第6.2節に記載したディファレンシャ ルディスプレー法により得た再増幅220bp断片から作製した標識付きプローブを 使ってスクリーニングした。簡単に言えば、プラークをプローブで一夜、65℃、 チャーチ(Church)緩衝液(7%SDS;250mM NaHPO4,3μM EDTA,1% BSA)中でス クリーニングした。翌日、フィルターを、2 x SSC/1% SDS中で30分、50℃で洗浄 した。陽性プラークを同じ条件で再スクリーニングした。 取得した最大の陽性クローンは2278bpであり、推定分子量22.6kDを有する201 アミノ酸をコードする一つの完全なオープンリーディングフレームを含有した。 該遺伝子/タンパク質を、今回、RATH1.1と呼ぶ。RATH1.1ヌクレオチドとアミノ 酸配列を図1A〜Cに示す。 RATH1.1配列を既知の遺伝子(Altschul,S.F.ら,1990,J.Mol.Biol.215: 403-410)と比較すると、RATH1.1は、Gタンパク質介在シグナル伝達に関わる産 物をコードすると思われる遺伝子ファミリー(例えば、Druey,K.M.ら,1996, Nature 379:742-746を参照)であるRGS(regulator of G-protein signalling ) ファミリーの新規メンバーであることを示す。例えば、RATH1.1は、RGS4遺伝子 産物に対してほぼ50%の同一性及び70%の類似性を示す。RGSドメインは、図1A〜C に示したRATH1.1アミノ酸配列のほぼアミノ酸残基60〜アミノ酸残基179に位置す る。RGS領域内の保存アミノ酸残基は、図1A〜Cの説明で述べたごとく同定した。 6.3.2.RATH 遺伝子の発現 RATH1.1転写産物のサイズ及びRATH1.1発現の組織分布を決定するために、ノー ザンブロットを実施した。以下に記載するごとく、発現分析は、TH1特異的RATH1 .1遺伝子発現パターンを確証し、更に、この遺伝子がほぼ3kbの転写産物を生成 することを示した。 マウス組織のノーザンブロット分析のため、様々なマウス組織(脾臓、胸腺、 リンパ節、筋肉、心臓、肝臓、腎臓、脳、子宮及び精巣)由来の全細胞RNAを 、第6.2節に記載したRNA精製技術を使って単離した。試験した細胞系は次の ものを含む:WEHI-3B骨髄性単球、Pu5-1.8骨髄性単球、P388D1単球−マクロファ ージ、IC-21マクロファージ、AKR.G2胸腺腫、BaF3プロB細胞、EL-4リンパ腫、NF S-1.0 C-1 B細胞リンパ腫、SOT胚性線維芽細胞、EOMA内皮及びBMS-12骨髄。 刺激した及び非刺激のTH1クローンD1.1、Dorris及びAE7、及びTH2クローンD10 .G4、DAX及びCDC25もまた試験した。TH1及びTH2クローンを培養し、第6.2.1.節 に記載したように刺激した。 RNAサンプルを、3%ホルムアルデヒドを含有する1〜1.5%アガロース(SeaKe mTM LE,FMC BioProducts,Rockland,ME)を含有する変性アガロースゲル中で 電気泳動した。造血細胞系のノーザン分析には、合計約20μgの全RNAをレー ン当たりにローディングし、他の全ての細胞系には、合計約15μgの全RNAを レーン当たりにローディングした。示した量の全RNAを含有するサンプルを変 性ローディング溶液(72%脱イオンホルムアミドとブロモフェノールブルー)と 混合し、70℃に5分間加熱した。サンプルを氷上におき、直ちにゲルにローディ ングした。ゲルは1x MOPS緩衝液(100mM MOPS,25mM酢酸ナトリウム,5mM EDTA )中で泳動させた。電気泳動後、エチジウムブロミドでゲルを染色し、紫外光で 可視化した。 電気泳動完了後、ゲルを50mM水酸化ナトリウム中に浸漬して、RNAを軽く切 断するために約30分間穏やかに攪拌した。ゲルを水中で2回すすぎ、その後、0.1 M Tris-HCl(pH7.5)中に約30分間浸漬して中和した。ゲルを20x SSC(3M塩化ナ トリウム、0.3Mクエン酸ナトリウム)で短時間平衡化し、その後、HybondTM,-N ,(Amersham,Inc.,Arlingon Heights,IL)またはZeta-Probe(Bio-Rad,Inc ,Hercules,CA)のごときナイロン膜に一夜、20x SSC中で移行させた。移行し たRNAを含有する膜を80℃で2時間ベーキングしてRNAを固定した。 220bp RATH1.1プローブは次の通り作製した。簡単に言えば、50ngの精製DN A断片をプローブ作製に使った。該断片を、ランダムヘキサマーとヌクレオチド dCTP、dGTP、及びdTTPの混合物(それぞれの最終濃度25μMで)を含有する20μl のランダムヘキサヌクレオチドラベリング反応液(Boehringer Mannheim,Inc. ,Indianapolis,IN)に加えた。反応混合物を100℃で10分間、熱変性し、その 後、氷上で冷却した。5μlのα-32P-dATP(50μCi;Amersham,Inc.,Arlington Heights,IL)及びKlenowDNAポリメラーゼ(2単位;Boehringer Mannheim,I nc.,Indianapolis,IN)を加えた。反応物を37℃で30分間インキュベーション した。インキュベーションの後、30μl水をラベリング反応液に添加し、それか ら反応液をBioSpin-6TMクロマトグラフィーカラム(Bio-Rad,Inc.,Hercules, CA)を通過させて、取り込まれなかったヌクレオチドを除去した。特異的な取り 込みをシンチレーションカウンターを使って定量した。ハイブリダイゼーション 混合物1ml当たり1〜5x105cpmを使った。 固定化RNAを含有するナイロン膜を製造者の説明書に従ってプレハイブリダ イズした。放射標識したプローブを70℃、50%脱イオンホルムアミド中で10分間 、熱変性し、その後、ハイブリダイゼーション混合物(50%ホルムアミド、10%デ キストラン硫酸、0.1%SDS、100μg/ml剪断したサケ精子DNA、5x SSC、5x Den hardt溶液、30mM Tris-HCl(pH8.5)、50mM NaPO4(pH5))に加えた。ハイブリ ダイゼーションは42℃で一夜行った。その後、ナイロン膜は、2分間、0.2x SSC と0.1%SDSの洗浄液中に、室温で浸して残留するハイブリダイゼーション溶液の 殆どを除去した。その後、この膜を新しい42℃加温洗浄溶液中に20分間2回浸し た。フィルターをプラスチックラップで覆い、オートラジオグラフのフィルムに 露光 して結果を可視化した。 ノーザンブロット分析は、RATH1.1遺伝子が刺激されたTH1細胞中で高度にアッ プレギュレーションされることを実証した。第一に、3つの個々のTH1クローンと 3つの個々のTH2クローンのノーザンブロット分析は、刺激されたTH1中で高度に アップレギュレーションされるが、試験した他の全てのサンプルからは得られな いほぼ3kbのRNAを明らかにした。 細胞クローンのデータと一致して、RATH1.1メッセージは、分析したマウス組 織の全て(すなわち、脾臓、胸腺、リンパ節、筋肉、心臓、肝臓、腎臓、脳、子 宮及び精巣)からは得られないようであったが、RATH1.1プローブは明らかに自 身とハイブリダイゼーションした。第三に、ノーザンブロット分析はまた、マウ ス造血細胞系のパネルについても行われた。RNAは、刺激してないまたは適切 な抗原(すなわち、先に第1節で記述したように、PMAまたはLPS)で刺激した様 々な細胞系から得た。RATH1.1 RNAは、試験した細胞系のいくつか(Pu51.8、 STO、EOMA及びBMS12)で検出されたが、発現レベルは抗CD3刺激TH1細胞にみられ たより著しく低かった(すなわち、3日間の露光後に弱いシグナルが検出された だけであった)。 6.4.RATH1.1 遺伝子の染色体マッピング RATH1.1遺伝子の染色体マップ位置を決定するために、一本鎖コンホメーショ ン多型(Single Stranded Conformational Polymorphism:SSCP)ゲル電気泳動の 技術を使用した。より詳細には、RATH1.1のMus spretusの対立遺伝子の遺伝子分 離を、交雑(C57B1/6J x Mus spretus)F1雌 x C57B1/6J雄の188戻し交雑子孫に ついてフォローした。 PCRプライマーはRATH1.1 cDNAのコード配列から設計した。次のRATH1.1か ら誘導したPCRプライマーをマウスのゲノムDNAの増幅に使った: PCR反応混合物は6μlのテンプレートDNA(10ng/μl)、1.4μlの10x Perki n Elmer(Norwalk,CT)PCR緩衝液、1.12μlのdNTPs(2.5mM)、1.05μlのフォ ワードプライマー(6μM)、1.05μlのリバースプライマー(6μM)、0.38μlの H2O及び3μlのAmplitaq HotstartTMポリメラーゼ(Perkin Elmer;0.5U/μl)を 含んでいた。 増幅プロフィルは次の通りであった:94℃、2分、この時AmplitaqTMを添加し た;その後94℃、40秒;55℃、50秒;及び72℃、30秒を30サイクル。 サンプルを(a) 45W、室温、3時間での非変性8%アクリルアミドゲル条件及び(b ) 20W、4℃、2.5時間での非変性10%アクリルアミドSSCP(一本鎖コンホメーショ ン多型)ゲル条件の両方で電気泳動した。両方のタイプのゲルをSYBRグリーンI で染色し、MDフルオルイメージャー上で走査し、解読可能な結果を得た。プライ マーはC57B1/6J Mus spretusゲノムDNAから159bp断片を増幅し、これはRATH1 .1cDNAの2つのプライマー間の塩基対の長さと一致した。 Mus spretus対立遺伝子の分離パターンを、この戻し交雑パネルにマップされ た226の他の遺伝子座の分離パターンと比較した。RATH1.1と他のマーカー間の多 重クロスオーバーの数を最小化することにより、RATH1.1はマウスの第1染色体 のD1MIT12の9.8cM遠位及びD1MIT17の29.2cM近位に(2つのMITマイクロサテライ トマーカー;Research Genetics)マップされることが判明した。 6.5 RATH1.1 はGタンパク質がメディエートするシグナル伝達を変化させる RGSを含有する遺伝子産物をコードしているsst2遺伝子における変異は、α因 子交配フェロモンによって誘導されるシグナル伝達に対して、感受性を増大させ 、不完全な脱感作を起こす。下記の結果は酵母中のsst2変異をRATH1.1タンパク 質が相補することを示している。これらの結果は、RATH1.1はGタンパク質がメ ディーエートするシグナル伝達を変化させるということを証明している。RATH1. 1がsst2の変異を機能的に相補することから、RATH1.1機能の酵母ベースの簡便な バイオアッセイとして用いうる。このようなバイオアッセイは、例えば、RATH1. 1のアゴニストあるいはアンタゴニストとなる分子の同定に用いうる。 RATH1.1をコードずる配列を含むプラスミドは次のように構築した。RATH1.1を コードする配列を酵母の発現ベクターpYADE4及びpYPGE2にクローン化した。pYAD E4はADH2プロモーターを含み、pYPGE2はPGKプロモーターを含む。この実験で用 いた培地などのようなブドウ糖が唯一の炭素源である培地では、PGKプロモータ ーはADH2プロモーターより17倍強力であると報告されている(BrunelliとPall,1 993,Yeast,9:1299-1308)。 オリゴヌクレオチドD1(5'-AGC GGA TCC AAA AAA ATG ACC ATG ATT ACG CCA A GC TCT AAT AC-3')及びD2(5'-AGC AAT CGA TGG AGG CTC AAG TGT GTG AAG GCT CAG-3')を、201個(プラス停止コドン)のアミノ酸を有するタンパク質をコード すると予測されるRATH1.1の606塩基対の完全長予測コード配列を増幅するために 用いた。RATH1.1タンパク質をコードするPCR断片を酵母発現ベクターpYADE4及び pYPGE2中にクローニングするため、制限エンドヌクレアーゼ切断部位BamHI及びC laIをオリゴヌクレオチド中に挿入した(BrunelliとPall,1993,Yeast,9:1299- 1308)。さらに、AAAAAA配列を開始コドンであるATGのすぐ上流に、酵母中での効 率的な翻訳を促進するために導入した(HinnebuschとLiebman,1991,The molecu lar Biology and Cellular Biology of the Yeast Saccharomyces:Genome Dynam ics,Protein Synthesis,and Energetics,Cold Spring Harbor Laboratory Pr ess,627-735)。RATH1.1をコードするPCR産物を、BamHIとClaIで二重に消化し 、ア ガロースゲルで精製した後、BamHIとClaIで二重に消化したpYADE4及びpYPGE2に 連結した。連結反応産物を大腸菌株DH5α(Gibco BRLカタログ)中に形質転換させ た。pYADE4中にRATH1.1をコードする配列を含む大腸菌のクローンを一つ単離し 、pMB135と名付け、pYPGE2中にRATH1.1をコードする配列を含む大腸菌のクロー ンを一つ単離しpMB136と名付けた。 L-トリプトファンを欠く合成完全培地を含む標準酵母培地を調製し、酵母の遺 伝子操作を既報(Sherman,1991,Meth.Enzaymol.,194:3-21)に従って行った。 酵母の形質転換は標準的なプロトコール(Gietzら,1992,Nucleic Acids Res.,2 0 :1425.Itoら,1983,J.Bacteriol.,153:163-168)に従って行った。 相同ゲノム性のSST2+(MF42)株とsst2-(MF41)株をpYADE4、pYPGE2、pMB135、及 びpMB136で形質転換した。形質転換体を、L-トリプトファンを欠く合成完全培地 で選択した。各回の形質転換操作から形質転換体を取り出し以後の実験に用いた 。形質転換体は次のように名付けた: pYADE4で形質転換したMF41(MF167);pYPGE2で形質転換したMF41(MF168);pMB1 35で形質転換したMF41(MF169);pMB136で形質転換したMF41(MF170);pYADE4で形 質転換したMF42(MF171);pYPGE2で形質転換したMF42(MF172);pMB135で形質転換 したMF42(MF173);pMB136で形質転換したMF42(MF174)。 MF41及びMF42形質転換体は脱感作アッセイにかけた。アッセイは次のとおり行 った。MF41とMF42形質転換体を、L-トリプトファンを欠く液状合成完全培地中で 一晩、飽和するまで増殖させた。各培養液を、2mlの液状合成完全培地(L-トリプ トファンを欠く)に1:40となるように希釈し、それを2mlの1%(w/v)寒天を水で溶 解させた液に加え、50℃に加熱した。この結果得られた細胞懸濁液を合成完全培 地(L-トリプトファンを欠く)プレートに播種し、固化させた。滅菌済BBLブラン クペーパー1/4インチディスク(BBL Microbiology System)に合成α因子(Sigma)1 0mg、1、0.1、あるいは0.01mgをスポットし、固化した寒天培地の上に並べた。 α因子を含有するフィルターディスクの周囲の増殖停止細胞のハローを増殖24時 間後に撮影し、その直径を計測した。 脱感作アッセイで得られた結果を表1に示す。10μgのα因子は、pYADE4又はp YPGE2のいずれかで形質転換させたSST2+株(MY171及びMY172)に約1.8cmの増殖阻 止帯を形成させる。10μgのα因子は、RATH1.1をADH2プロモーターの制御下に発 現しているSST2+株(MY173)に1.6cmの増殖阻止帯を形成させ、強力なPGKプロモー ターの制御下にRATH1.1を発現しているSST2+株(MY174)には増殖阻止帯を形成し なかった。強力なPGKプロモーターで発現させたRATH1.1は、フェロモン応答経路 を劇的にネガティブに制御しており、この研究で用いられたアッセイにおいては 、RATH1.1は10μgのα因子によって作られるシグナルの伝達を完全に阻止した。 RATH1.1はRGSタンパク質であり、RGSタンパク質はGAP(GTPase Activating Prote ins:GTP分解酵素活性化タンパク質)として機能すると考えられているので、酵母 中で発現させた高レベルのRATH1.1によって起こるフェロモンシグナル伝達の阻 害は、GPA1タンパク質、それは酵母中のα因子受容体と結合しているGタンパク 質αサブユニットであるが、その上のGAPとして働いているものと考えられる。 10μgのα因子は、pYADE4あるいはpYPGE2のいずれかで形質転換させたsst2-株 (MY167及びMY168)に約3.7cmの増殖阻止帯を形成させる。10μgのα因子は、ADH2 プロモーターの制御下にRATH1.1を発現しているsst2-株(MY169)に1.8cmの増殖阻 止帯を形成させ、これはSST2+株(MY171及びMY172)で10μgのα因子が示した約1. 8cmの増殖阻止帯と同様であった。従って、ADH2プロモーターの制御下にあるRAT H1.1は、sst2-の変異を機能的に相補するものである。このようなRATH1.1による sst2-変異の相補はRATH1.1がGPA1に対し、より一般的にはGタンパク質のαサブ ユニットに対してGAP活性を持つことの強力な証拠である。 10μgのα因子は、強力なPGKプロモーターの制御下にRATH1.1を発現しているs st2-株(MY170)に増殖阻止帯を形成しない。この実験結果は、SST2タンパク質が 存在しなければ、RATH1.1は10μgのα因子によって産生されるシグナルの伝達を 完全にブロックすることができることを示し、RATH1.1がGPA1上でGAPとして働く という考えを支持している。また、この実験結果は、RATH1.1発現プラスミドに よって与えられるα因子抵抗性表現型はRATH1.1発現レベルの関数であること、 すなわ ちより強力なPGKプロモーターは、より弱いADH2プロモーターより強力な表現型 を作ることを示している。 表1 異なる量のα因子を浸透させたフィルターディスクによって形成され た増殖阻止帯の直径(cm)を、各α因子濃度の下にcmで示す。 6.6 ヒトRATH1.1遺伝子のクローニング ヒトRATH1.1遺伝子をここに記載のとおリクローン化した。ヒトRATH1.1核酸配 列及びアミノ酸配列は図2A-Bに示した。 クローニングのために、次の各種のライブラリーから得たヒトRATH1.1クロー ンをPCRで増幅した:ヒト胎児脳(Stratagene,La Jolla,米国カリフォルニア州) 、ヒト肝(Stragene)、及びU937骨髄細胞(Clonetech,Palo Alto,米国カリフォ ルニア州)。増幅のために用いた正方向プライマーは:5'ACCATCCTGCCTACTACG-3' 、逆方向プライマーは5'-AGAACCTGCTCCCACAC-3'である。PCRはPerkin Elmer 960 0サーマルサイクラーで、温度94℃で30秒間の変性、温度55℃で30秒間のアニー リング、及び温度72℃で30秒間の伸長を1サイクルとして35サイクル行った。 PCR産物を1.2%アガロースゲル上で電気泳動させ、切り取り、TAクローニング キ ット(Invitrogen,San Diego,米国カリフォルニア州)から得たpCRIIベクター中 にサブクローン化した。クローンの配列を標準自動蛍光ジデオキシヌクレオチド 配列決定法(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,米国カリフォルニア州) を用いて調べた。 マウスのRATH1.1遺伝子産物と同様に、ヒトRATH1.1も識別可能なトランスメン ブレンドメイン、シグナル配列を共に含んでおらず、細胞内あるいは膜に付着し た遺伝子産物をコードしている。ヒトRATH1.1遺伝子産物は、図2A-Bに示す20 2個のアミノ酸残基から成るタンパク質をコードしている。 ヒトRATH1.1遺伝子産物は、一つのRGSドメインを、図2A-Bに示すRATH1.1遺 伝子産物中のおおよそアミノ酸残基61から180の位置に、より特異的にはおおよ そアミノ酸残基69から177の位置に、より一層特異的にはおおよそアミノ酸残基6 9からおおよそアミノ酸残基171の位置に含む。 7.実施例:RATH1 遺伝子産物はシグナル伝達のメディエーターとして働く 本節の実施例は,RATH1遺伝子産物がシグナル伝達に際して細胞内メディエータ ーとして機能することを示すRATH1の機能に関するデータを提出するものである 。簡単に述べれば、ここに提出したデータは、第一に、RATH1がGタンパク質のG- αサブユニット上でのGTPのGDPへの置換の内因性速度を加速することを示してい る。第二には、このデータはRATH1がIL-8受容体あるいはM1/M2受容体を経由して のシグナル伝達を無効にすることがこのデータで示され、そのことからRATH1がG タンパク質でメディエートされるシグナル伝達の機能的制御因子であることを示 している。第三に、ノーザン及びウエスタン分析をここに示しているが、その分 析では特定の細胞系統への刺激は、RATH1遺伝子の発現刺激をもたらすことを示 している。 7.1 材料と方法 GAP アッセイ:GAPアッセイはBermanら,1996,J.Biol.Chem.271:27209-27 212、及びBermanら,1996,Cell 86:445-452に記載の方法に従って行った。 MAP キナーゼアッセイ:MAPキナーゼアッセイはDrueyら,1996,Nature 379:74 2-745に記載の方法に従って行った。 ノーザン分析:マウスの脾細胞を、Current Protocols in Immunology Sectio n 3.1(Colliganら編,1992,Greene Publlshing Assoc.& Wiley-Interscience ,John Wiley & Son,米国ニューヨーク州)の方法に従って単離した。脾細胞混 合物から赤血球を除去し、5x107個の細胞を抗CD3をコートしたプレートに添加し 、種々の時間保持した。プレートから細胞を掻き取り、RNAを上記の6.2.1節 に記載の方法で調製した。各経過時点で総RNAの10μgを取り、分析した。ノ ーザン分析はSambrookらのマニュアル(1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring H.arbor Press,米国ニューヨーク州)の7.43ページに記 載のプロトコールに従って行った。用いたプローブは上記の6.2.2.節に記載の22 0bpのcDNAである ウエスタン分析:標準的手法を用いて、マウスRATH1.1タンパク質のペプチド に対するポリクローナル抗体を作製した。特定して述べれば、次のRATHペプチド (アミノ末端からカルボキシ末端へ記載)に対する抗体を作製した:DEYIRSEADKEVN ID;EKDSYPRFLKSPAY;及びSPAYRDLAAQASATS。標準的なウエスタンブロッティング 手法を用いた。 7.2 結果 GAP アッセイ:Gタンパク質を結合したGTP分子に対するRATH1遺伝子産物(特にR ATH1.1遺伝子産物)の効果を調べるために、GAPアッセイを上記7.1節に記載の方 法で行った。これらの実験結果はRATH1.1タンパク質は、Gαサブユニット上での GTPからGDPへの加水分解の内因性速度を加速する機能を有することを示している 。特定すれば、この加速はGαIクラスのGαサブユニット、すなわち、Gαi1,i2 ,i3,及びoで見られるが、GαSでは見られない。MAP キナーゼアッセイ:Gタンパク質によってメディエートされるシグナル伝達 に対してRATH1遺伝子産物が効果があるか調べるため、MAPキナーゼアッセイを上 記の7.1節に記載の方法で行った。IL-8受容体あるいはM1/M2ムスカリン受容体で 安定的にトランスフェクトさせた293個の細胞を、RATH1遺伝子産物を発現する遺 伝子配列で一時的にトランスフェクトした。これらのアッセイから得られた結果 は、RATH1遺伝子産物がこの293細胞系統においてIL-8受容体及びM1とM2のムスカ リン受容体のどちらを経由するシグナル伝達をも無効にする能力を有することを 示している。従って、これらのデータはRATH1が機能的RGSをコードすることを示 している。ノーザン及びウエスタン分析 :RATH1発現のノーザン分析は上記の6.1節に記載の 方法で行った。この分析で得られた発現に関するデータは、RATH1遺伝子発現が 脾細胞刺激によって脾細胞中でアップレギュレートされたことを示している。混 合脾細胞を刺激することにより、刺激から2時間以内に、CD3の架橋を経由して2. 3kb RATH1メッセージのアップレギュレーションが行われたことを示している。 マウス細胞系統AE7(TH1)及びD10G4(TH2)を抗CD3モノクローナル抗体で架橋す ることにより刺激した。0時間、5時間後、及び一晩後の各時点で、抗RATH抗体を 用いたウエスタン分析で細胞のRATHタンパク質発現を調べた。0時間ではシグナ ルは検出されなかったが、5時間後には明瞭なシグナルが認められ、このシグナ ルは一晩後にも認められた。このシグナルは約28-30kDに認められた。 これらのノーザン及びウエスタン分析データは、刺激に応じてRATH1遺伝子発 現(RNA及びタンパク質の発現の双方とも)の増加が起こることを示しており、 これはRATH1のシグナル伝達におけるメディエーターとしての役割を支持してい る。 8.実施例:RATH1 はインテグリンがカップルした細胞接着のレギュレーターと して働く ここに提示した実施例は、RATH1遺伝子産物のエフェクター機能の一つである シ グナル伝達メディエーターとしての機能は、インテグリンの結合が関与する細胞 接着を低減させることであることを示している。 8.1 材料と方法 接着アッセイ:ウシ血清から得たフィブロネクチン(Sigma,セントルイス,米 国ミズーリ州)を5μg/ml含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を、Nunclon Microwe ll Terasakiプレート(No.136528,Nunc,Naperville,米国イリノイ州)上に、 一晩4℃でコートした。プレートにPBSを多量注ぎ、吸い取ることにより3回洗っ た。次いで、プレートを0.5%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBSで1時間室 温でインキュベートした。再度、プレートをPBSで3回洗った。 細胞を収集し、細胞培養培地RPMI-1640‐1%ウシ胎児血清(FCS)で1回洗った。 細胞数を数え、トリパンブルーの染色で死細胞を除外することにより生存細胞数 を調べた。細胞をRPMI-1%FCS中に8x104個/mlとなるように再懸濁した。 Terasakiプレートの各ウエルにRPMI-1%FCSを5μlずつ添加した。次いで、細胞 を5μlずつウエルに添加した。プレートを37℃で45分間インキュベートした。結 合していない細胞を除去するためプレートを2回洗った。各ウエルに2%パラホル ムアルデヒドを添加することにより細胞を固定させた。 4連のウエルそれぞれの0.24mm2の面積中の細胞数を計測した。細胞の計測数 の平均を取り、平方mmあたりの接着細胞数で示した。 8.2 結果 ここに提示した結果は、RATH1遺伝子産物がインテグリンのカップルした細胞 接着をネガティブに制御することを示している。RATH1遺伝子発現がJurkat T細 胞系統のフィブロネクチンとの細胞接着に及ぼす影響について分析する実験を行 った。このような細胞接着はα4BI及びα5BIインテグリンによってメディエート される。 細胞を、RATH1をコードする配列を含むベクター(cDNA3)あるいは、cDNA3ベク タ ーのみで安定的にトランスフェクトさせた。RATH1を含む細胞はベクターのみの 対照と比較すると、フィブロネクチンとの接着の減少(約50%)を示した。 同じベクターで安定的にトランスフェクトさせたBaF/3 pre B細胞系統の細胞 は、上記と同様のフィブロネクチンに対しての接着パターン(すなわち約50%の減 少)を示した。 さらに、トランスフェクトされた細胞をインテグリン活性化剤である12-ミリ スチン酸13-酢酸ホルボール(PMA,Sigma;10-8M)で刺激すると、接着のレベルはR ATH1のある場合とそうでない場合が同様であった。従って、この結果は、RATH1 発現は非特異的な毒性の様式で働くのではないことを示しており、そこではPMA はRATH1の存在下においてすら活性化を増加させる。 これらの結果は、RATH1のTH1拘束性の発現パターンとあわせ考えると、例えば 、RATH1が、炎症関連の細胞遊走、接着及び走化性などの免疫関連の細胞プロセ スを含む多数の細胞のプロセスにおいて、その変化をメディエートすることを示 唆している。 9.実施例:カルパクチンは強力なRATH1相互作用剤である この節で提示した実施例は、RATH1が、例えばエンドサイトーシス、エキソサ イトーシス、細胞骨格の再編成、細胞接着及びシグナル伝達などの多数の重要な 細胞のプロセスに影響を与えることが知られている分子であるカルパクチンと強 く相互作用することを示している。この知見は、これらの2種のタンパク質間の 相互作用がそれらの内の一方又は双方の活性を変化させうることを示唆している 。 9.1 材料と方法 酵母株、培地、及び微生物学的技法 合成完全培地(L-ロイシン、L-トリプトファン、及びL-ヒスチジンを欠く)を含 む標準酵母培地を調製し、酵母の遺伝子操作を既報(Sherman,1991,Meth.Enzy mol.194:3-21)に従って行った。酵母の10回の形質転換は標準的なプロトコール (Gietzら,1992,Nucleic Acids Res.20:1425;及びItoら,1983,J.Bacteria l.153:163-168)を用いて行った。プラスミドDNAは標準的な方法(HoffmanとW inston,1987,Gene 57:267-272)を用いて酵母株から単離した。Two hybrid スクリーニング及びRATH相互作用因子の同定 :RATH1(アミノ酸1-202) をpGBT9(Clontech)中にクローン化した。このクローンをpGB-RATH1と呼び、two- hybridスクリーニング株HF7c(Feilotterら,1994,Nucl.Acids Res.22:1502-1 503)中に形質転換させた。その形質転換体をHF7c:GB-RATHIと呼ぶ。RATHIがHF7c 中に存在するHIS3あるいはlaczレポーターを活性化しないことが確認された。HF 7c:GB-RATH1から得たタンパク質抽出物を下記のとおり、ウエスタンブロット分 析にかけた。GAL4結合ドメイン(BD)-RATH1融合タンパク質をtwo hybridスクリー ニングに十分な量、発現させた。 マウスTH1/TH2 two-hybrid cDNAライブラリーで形質転換したHF7c:GB-RAT H1の3つの異なる単離体で3回の異なるスクリーニングを行った。cDNAは上 記の6.2.1節に記載の方法で、Stratagene cDNA synthesisを製造者のプロトコー ルに従って用いて単離したRNAから調製した。そのcDNAをpACT2ベクター( Baic & Elledge,S.J.,1995,Methods in Enzymol.273:331-347)に連結した。 合計725万個の形質転換体を得た。それらの形質転換体からRATH1-相互作用タ ンパク質をコードするcDNAライブラリープラスミドを発現する形質転換体を 選択するため、合成完全培地(ロイシン、トリプトファン及びヒスチジンを欠く) のプレートに播種した。選択的プレート上で増殖したコロニーの全てについて、 フィルターβガラクトシダーゼアッセイを用いてβガラクトシダーゼの発現を分 析し、各スクリーンから最も強力なβガラクトシダーゼ発現プラスミドを分析し た。 26個の強力な相互作用因子を得た。それらの配列を分析して、GALA4 BDとの7 種の異なる融合体中にあるこれら全てがマウスカルパクチン軽鎖(p11)(SWISS-PR OT Accession ♯PO8207)であることが明らかとなった。 ウエスタンブロッティング:GALA DNA-結合ドメインRATH1融合タンパク質の発 現を確認し、質的な評価をするために、HF7c:GB-RATH1の総タンパク質抽出物の ウエスタンブロッティング分析を行った。タンパク質抽出物を、合成完全培地(L -トリプトファンを欠く)(Shermanら,1991,Meth.Enzymol.194:3)中でHF7c:GB -RATH1をOD600が1となるまで増殖させることによって、調製した。4.5mlの培地 液から遠心によって酵母細胞を採取し、細胞ペレットを1mlの0.25 M NaOH、1%の βメルカプトエタノールで再懸濁し、4℃で10分間インキュベートした。その懸 濁液に50%TCAを160μl添加した。混合後、その懸濁液を4℃で10分間インキュベ ートした。その懸濁液を4℃で10分間微量遠心し、上清フラクションを廃棄し、 ペレットを冷アセトンで洗い、風乾し、135μlの2x tris-グリシンSDSサンプル 緩衝液(Novex,San Diego,米国カリフォルニア州)中に再懸濁し、1xとなるよう に脱イオン水で希釈した。サンプルの15μlを2分間煮沸し、10% tris-グリシンS DSポリアクリルアミドゲル(Novex,San Diego,米国カリフォルニア州)上で電気 泳動し、immobilon PYDF膜(Millipore,San Francisco,米国カリフォルニア州) に移した。用いた一次抗体はウサギ抗酵母GAL4 DNA結合ドメインポリクローナル 抗体(Upstate Biotechnology Inc.;Lake Placid,米国ニューヨーク州)であり、 二次抗体はロバ抗ウサギIg(ペルオキシダーゼを結合させた種特異的完全抗体)(A mersham Life Science;Cleveland,米国オハイオ州)を用いた。ウエスタンブロ ッティングの操作手順は基本的にはSambrookら(1989,Molecular Cloning,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press)が記載した方法に従って行い 、タンパク質の抗体との相互作用はECL検出システム(Amersham Life Sciences) を用いて、基本的には製造者によって記載された方法で可視化した。GAL4 DNA結 合ドメインRATH1融合タンパク質の発現を検出した。 βガラクトシダーゼアッセイ:フィルターディスクβガラクトシダーゼ(β-ga l)アッセイは基本的には既報の方法(Brillら,1994,Mol.Biol.Cell 5:297-31 2)に従って行った。簡単に記せば、供試株をその実験に必要な適当な培地上で細 胞のパッチとして30℃で一晩増殖させた。細胞のパッチあるいはコロニーを、ペ トリ皿中の供試培地に置いておいたWhatman #50ろ紙(Schleicher & Schuell,#5 76;Keene,米国ニューハンプシャー州)上に写し取った。30℃で一晩増殖させた 後、ペーパーディスクをプレートから取り除き、その上に載っている細胞をすぐ に液体窒素に30秒間浸漬することにより、透過性とした。この処理の後、ペーパ ーディスクを室温で20秒間融解し、Whatman #3ろ紙(Schleicher & Schuell,#59 3)のディスクを入れてある2.5mlのZ緩衝液(色素産生性のβ-galの基質であるX-g alの2%(w/v)液を37μl含有する)で飽和させたペトリ皿中に置いた。ペーパーデ ィスク上で透過性とした株を30℃でインキュベートし、各時間経過後にこのアッ セイにおけるβ-gal活性の指標である青色を調べた。細胞のパッチのあるペーパ ーディスクを除去し、それを風乾させることによってアッセイを停止させた。 9.2 結果 細胞内のシグナル伝達のメディエーターであるRATH1の特性をさらに調べるた めに、RATH1遺伝子産物を酵母two hybrid systemスクリーンの一部として用いた 。そのスクリーンにはGAL-4結合ドメイン(BD)RATH1融合タンパク質"bait"及びマ ウスTH1/TH2ライブラリークローンの共発現を含むものである。この種の3つの 異なるtwo hybridスクリーンから、26の強力な相互作用因子を得た。興味深いこ とには、強力な相互作用因子をコードするクローンの配列を調べると、それらの それぞれがマウスのカルパクチン軽鎖(p11)をコードしていることが明らかとな った。 カルパクチン(p11)はアネキシンIIヘテロテトラマー(例えば、Waisman,D.A. ,1995,Mol.Cell.Biochem.149/150:301-322を参照せよ)の一部分である。カル パクチンの生物学的役割は次のとおり多岐にわたる:エキソサイトーシス及びエ ンドサイトーシス(Emansら,1993,J.Cell Biol.120:1357-1369;及びGolazら ,1996,J.Cell Biol.133:1217-1236)、細胞骨格の再編成と接着(Waisman D.A .,1995,Mol.Cell.Biochem.149/150:301-322;Tresslerら,1993,J.Cell B iol.53:265-276;Albiezら,1993,Differentiation 52:229-237)、及びシグナ ル伝達(Duboisら,1995,Biochem.J.310:243-248;及びCifoneら,1996,Cell .Imm.170:274-282)。 第6節から第8節の実施例で示したとおり、RATH1はTH1拘束性の様式で発現され 、シグナル伝達のメディエーターとして働く。さらに、RATH1が示すエフェクタ ー機能の一つとしてインテグリンのメディエートする細胞接着に対する影響があ る。RATH1の強力なカルパクチンとの相互作用は、カルパクチンの示すRATH1.1類 似の機能と共に、この2種のタンパク質間の相互作用が一方あるいは双方のタン パク質の活性に変化を与えるように働きうることを示唆している。 10.微生物の寄託 下記の微生物をAmerican Type Culture Collection(ATCC),Rockville,米国メ リーランド州に1996年7月30日付で寄託し、下記に示す受託(accession)番号が 指定された。 微生物 ATCC accession No. E.coli,femtR11A 98116 本発明は本明細書中に記載した特別な実施態様、それは本発明の個々の態様の 一つを例示することを意図したものであるが、その範囲に限定されるものではな く、機能的に同等な方法及び構成要素は本発明の範囲に含まれるものである。本 明細書中に示した、及び記載したものに加えて本発明に各種の変更を施すことは 当業者であれば先の記載及び付属図面から自明のものとなろう。そのような変更 は本発明の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 45/00 A61K 47/44 47/28 47/48 47/44 48/00 47/48 A61P 37/00 48/00 C07K 14/00 A61P 37/00 19/00 C07K 14/00 C12N 1/19 19/00 1/21 C12N 1/19 C12P 21/02 C 1/21 C12Q 1/68 A 5/10 G01N 33/53 M C12P 21/02 33/566 C12Q 1/68 C12N 15/00 ZNAA G01N 33/53 5/00 B 33/566 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AU ,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CN, CU,CZ,EE,GE,GH,HU,ID,IL,I S,JP,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LT,LV,MD,MG,MK,MN,MX,NO, NZ,PL,RO,RU,SG,SI,SK,SL,T J,TM,TR,TT,UA,UZ,VN,YU (72)発明者 ギメノ,カルロス,ジェイ. アメリカ合衆国 02116 マサチューセッ ツ州,ボストン,コモンウェルス アベニ ュー 250,アパートメント 23

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.(a) 図1A-Cまたは図2A-Bのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする ヌクレオチド配列; (b) (a)のヌクレオチド配列の相補体; (c) ATCC受託番号98116に含まれるRATH遺伝子またはRATH遺伝子の相補体; および (d) (a)、(b)または(c)の核酸分子とハイブリダイズでき、前記核酸分子に 対して少なくとも80%の同一性を有する核酸分子; を含んでなる単離された核酸分子。 2.請求項1に記載の核酸とハイブリダイズし、天然のRATHポリペプチドをコー ドするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。 3.図1A-Cのヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。 4.ゲノミックである、請求項1に記載の単離された核酸分子。 5.cDNAである、請求項1に記載の単離された核酸分子。 6.RNAである、請求項1に記載の単離された核酸分子。 7.図1A-Cに示したRATH1.1遺伝子の少なくとも6個の連続ヌクレオチドとハイブ リダイズする、請求項1に記載の単離された核酸分子。 8.標識をさらに含む、請求項7に記載の単離された核酸分子。 9.請求項2に記載の核酸分子およびターゲティング手段を含んでなるデリバリ ー複合体。 10.ターゲティング手段がステロール、脂質、ウイルスまたは標的細胞特異的結 合剤よりなる群から選択される、請求項9に記載のデリバリー複合体。 11.異種タンパク質またはペプチドをコードするヌクレオチド配列に停止コドン によって中断されずに連結された、請求項1に記載の核酸とハイブリダイズし かつRATHタンパク質の活性を有するポリペプチドまたはその断片をコードする ヌクレオチド配列を含んでなる、単離された核酸分子。 12.(a) RATHの欠失変異体をコードするヌクレオチド配列;または(b) 前記ヌク レオチド配列の相補体を含んでなる核酸分子。 13.RATHのRGSドメインを欠失している、請求項12に記載の核酸分子。 14.(a) RGSドメインに対応するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列; または(b) 前記ヌクレオチド配列の相補体を含んでなる核酸分子。 15.請求項1、2、3、4、5、6、7または11に記載のヌクレオチド配列を含 有する組換えベクター。 16.宿主細胞内での請求項1、2、3、4、5、6、7または11に記載のヌクレ オチド配列の発現を制御する転写および翻訳調節情報を含む調節ヌクレオチド 配列に機能しうる形で結合された、請求項1、2、3、4、5、6、7または 11に記載のヌクレオチド配列を含有する発現ベクター。 17.請求項16に記載の発現ベクターおよびターゲティング手段を含んでなるデリ バリー複合体。 18.ターゲティング手段がステロール、脂質、ウイルスまたは標的細胞特異的結 合剤よりなる群から選択される、請求項17に記載のデリバリー複合体。 19.請求項1、2、3、4、5、6、7または11に記載のヌクレオチド配列を含 有する遺伝子操作された宿主細胞。 20.宿主細胞内での請求項1、2、3、4、5、6、7または11に記載のヌクレ オチド配列の発現を制御する転写および翻訳調節情報を含む調節ヌクレオチド 配列に機能しうる形で結合された、請求項1、2、3、4、5、6、7または 11に記載のヌクレオチド配列を含有する遺伝子操作された宿主細胞。 21.原核細胞である、請求項20に記載の遺伝子操作された宿主細胞。 22.真核細胞である、請求項20に記載の遺伝子操作された宿主細胞。 23.(a) 適切な培地中で請求項21に記載の細胞を培養してRATHポリペプチドを産 生させ、そして (b) そのRATHポリペプチドを単離する、 ことを含んでなるRATHポリペプチドの調製方法。 24.(a) 適切な培地中で請求項22に記載の細胞を培養してRATHポリペプチドを産 生させ、そして (b) そのRATHポリペプチドを単離する、 ことを含んでなるRATHポリペプチドの調製方法。 25.RATHポリペプチドのエピトープと特異的に反応する抗体調製物。 26.請求項1に記載の核酸を含むトランスジェニック動物。 27.機能性RATHポリペプチドをコードするゲノム配列の発現が防止または抑制さ れている、トランスジェニック動物。 28.請求項1に記載の核酸分子によりコードされる実質的に純粋なポリペプチド 。 29.図1A-Cに示すような、実質的に純粋な哺乳動物RATHポリペプチド。 30.図1A-Cに示すポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有する、請求 項29に記載のポリペプチド。 31.請求項30に記載のポリペプチドおよび検出可能な標識またはマトリックス結 合ドメインである第2のポリペプチドを含んでなる融合タンパク質。 32.治療上有効な量の請求項28に記載のポリペプチドおよび製薬上許容される担 体を含有する薬学的製剤。 33.サンプルを請求項1に記載の核酸分子と接触させ、そして野生型または変異 型RATH核酸の有無および/または量の指標としての標識を検出および/または 定量する各ステップを含んでなる、サンプル中の野生型または変異型RATH核酸 分子を検出および/または定量するための検査キット。 34.サンプルを請求項25に記載の抗体と接触させ、そして野生型または変異型RA TH核酸の有無および/または量の指標としてのポリペプチド−抗体複合体を検 出および/または定量する各ステップを含んでなる、サンプル中の野生型また は変異型RATH核酸分子を検出および/または定量するための検査キット。 35.(a) 請求項1に記載の核酸を発現する細胞に被験化合物を接触させ、そして (b) 前記被験化合物がRATH活性を調節するか否かを判定する、 ことを含んでなる、免疫疾患を調節する化合物の同定方法。 36.(a) 請求項1に記載の核酸に被験化合物を接触させ、そして (b) 前記被験化合物が請求項1に記載の核酸と相互作用するか否かを判定す る、 ことを含んでなる、免疫疾患を調節する化合物の同定方法。 37.RATHとそのコグネイトG-α-Iサブユニットとの相互作用を抑制する化合物の 同定方法であって、 (a) 請求項28に記載のペプチドまたはその生物反応性断片、G-α-Iポリペプ チドおよび被験化合物を、ペプチド/G-α-Iポリペプチド複合体の形成に適し た条件下で混合し、そして (b) ペプチド/G-α-Iポリペプチド複合体の量を測定し、その量を、同一条 件であるが被験化合物の非存在下で形成させたペプチド/G-α-Iポリペプチド 複合体の量と比較し、その際、被験化合物の存在下で形成させたペプチド/G- α-Iポリペプチド複合体のより少ない量は、その被験化合物がRATHタンパク質 とG-α-Iサブユニットとの相互作用のインヒビターであることを示すものであ る、 各ステップを含んでなる上記方法。 38.RATHとそのコグネイトG-α-Iサブユニットとの相互作用を増強する化合物の 同定方法であって、 (a) 請求項28に記載のペプチドまたはその生物反応性断片、G-α-Iポリペプ チドおよび被験化合物を、ペプチド/G-α-Iポリペプチド複合体の形成に適し た条件下で混合し、そして (b) ペプチド/G-α-Iポリペプチド複合体の量を測定し、その量を、同一条 件であるが被験化合物の非存在下で形成させたペプチド/G-α-Iポリペプチド 複合体の量と比較し、その際、被験化合物の存在下で形成させたペプチド/G- α-Iポリペプチド複合体のより多い量は、その被験化合物がRATHタンパク質と G-α-Iサブユニットとの相互作用の増強剤であることを示すものである、 各ステップを含んでなる上記方法。 39.(a) 被験化合物を、RATH調節エレメントと機能しうる形で結合されたリポー ター遺伝子を含む細胞または細胞溶解物に接触させ、そして (b) 前記リポーター遺伝子産物の発現を検出する、 ことを含んでなる免疫疾患を調節する化合物の同定方法。 40.(a) 被験化合物を、RATH転写産物を含有する細胞または細胞溶解物に接触さ せ、そして (b) RATH転写産物の翻訳を検出する、 ことを含んでなる免疫疾患を調節する化合物の同定方法。 41.(a) 請求項1の核酸分子を含む酵母細胞をフェロモンおよび被験化合物に接 触させ、そして (b) 前記酵母細胞の増殖抑制を測定し、その際、酵母細胞の増殖を抑制する 被験化合物はRATH活性を阻害または抑制するものである、 各ステップを含んでなるRATH活性を調節する化合物の同定方法。 42.(a) 請求項1の核酸分子を含む酵母細胞をフェロモンおよび被験化合物に接 触させ、そして (b) 前記酵母細胞の増殖抑制を測定し、その際、酵母細胞の増殖を抑制でき ない被験化合物はRATH活性を増加または増強するものである、 各ステップを含んでなるRATH活性を調節する化合物の同定方法。 43.活性化ドメインをコードするDNAに融合された全ゲノムまたはcDNA配 列を、DNA結合ドメインに融合されたRATHをコードするDNAと共に酵母リ ポーター株に同時形質転換させ、リポーター遺伝子の発現について形質転換体 をスクリーニングすることを含んでなる、RATHと相互作用するタンパク質の同 定方法。 44.被験者に治療上有効な量のRATHポリペプチドを投与することを含んでなる、 被験者における免疫疾患の調節方法。 45.被験者がヒトである、請求項44に記載の方法。 46.被験者に有効量の請求項17に記載のデリバリー複合体を投与することを含ん でなる遺伝子治療法。 47.RATHの活性を調節することを含んでなる、免疫疾患の治療方法。 48.有効量の、RATHの活性をアゴナイズまたはアンタゴナイズする化合物を投与 することを含む、請求項47に記載の方法。 49.前記化合物がRATHを活性化し、Tヘルパー細胞の活性化を引き出す、請求項 47に記載の方法。 50.前記化合物がRATHに結合してそれを活性化するアゴニストである、請求項48 に記載の方法。 51.前記化合物がRATHの活性化を抑制し、Tヘルパー細胞の活性化を阻止する、 請求項48に記載の方法。 52.有効量の、RATHの発現を低下させる化合物を投与することを含んでなる、免 疫疾患の治療方法。 53.前記化合物がRATH転写産物をターゲティングして翻訳を抑制するアンチセン スまたはリボザイム分子をコードするオリゴヌクレオチドである、請求項52に 記載の方法。 54.前記化合物がRATH遺伝子のプロモーターと三重らせんを形成して転写を抑制 するオリゴヌクレオチドである、請求項52に記載の方法。 55.有効量の、RATHの発現を増加する化合物を投与することを含んでなる、免疫 疾患の治療方法。 56.RATHを活性化または抑制する化合物を、製薬上許容される担体と混合して含 有する免疫疾患治療用の薬学的製剤。 57.RATHとカルパクチンとの相互作用を抑制する化合物の同定方法であって、 (a) 請求項28に記載のペプチドまたはその生物反応性断片、カルパクチンポ リペプチドおよび被験化合物を、ペプチド/カルパクチンポリペプチド複合体 の形成に適した条件下で混合し、そして (b) ペプチド/カルパクチンポリペプチド複合体の量を測定し、その量を、 同一条件であるが被験化合物の非存在下で形成させたペプチド/カルパクチン ポリペプチド複合体の量と比較し、その際、被験化合物の存在下で形成させた ペプチド/カルパクチンポリペプチド複合体のより少ない量は、その被験化合 物がRATHタンパク質とカルパクチンとの相互作用のインヒビターであることを 示すものである、 各ステップを含んでなる上記方法。
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